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剣―TURUGI―

312森間 登助 ◆t5lrTPDT2E:2012/05/27(日) 12:20:30 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
 またも久々なコメント、元ライナーの森間です。

 ついに獅子座の方が出ましたか。しかも意外な登場 Σ(°0°) 読者に不意を突かせると言う点ではずば抜けて凄いですね……感心いたします^^
 にしても魁斗が熱いですね! お前こそ本当の男だよとか言いたくなるレベルの((
 バトル展開が楽しみですが、正直魁斗のモノホンの剣がそろそろ見たいですねー、読者としてはw いつ頃出るんでしょうか……

 簡単にアドバイスをしますと、、「〜『UFOを見た!』の一点張り〜……」の部分ですが、シリアスな雰囲気を壊してしまうので、注意が必要ですね。場の雰囲気に合わせた比喩表現を心がけてみては如何でしょう?

 では、続きを待っておりますw

313竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/05/27(日) 21:15:21 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
森間登助さん>

コメントありがとうございます。
そして、お久しぶりです。

気付ける人は気付いたと思いますよw 下の名前に『獅』って入ってますしねw
まあこの方は初めて出そうという時から、しし座の『十二星徒』に決定していました。
魁斗VS葛城、のカードはもうちょい後かと((
いやぁ、このままじゃ魁斗がボロ負けしそうな感じがします。ので、ちょっと準備期間ですね。
魁斗の剣は『祓魔の爪牙』で決定です。
レナからもらったものなので、彼はこれを一生使い続けるかと((

思いついた表現がそれだったので……比喩表現については僕もまだまだ修行が足りんなぁ、と思わされるところがありますw
以後、気をつけますね。

はい、続きも頑張らせていただきます^^

314竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/01(金) 22:47:10 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十六閃「七日の余暇」

 魁斗は鋭い眼光で、敵と化した葛城を睨みつける。
 天草は自分のために立ち上がってくれた魁斗を見つめており、一方で葛城は構えもせず刀を下に向けたまま余裕を見せている。
 魁斗が今まさに足を踏み出そうとした瞬間、葛城は刀を指輪に戻して、くるっと背中を向けた。
 その行動に、魁斗は勿論納得できない。
「……何のマネだよ」
「何って、撤退だよ。今日は君と戦うつもりはない。結果は見えてるからね」
 その言葉に魁斗が反応する。
 確かに、相手が強いのは言わなくても分かる。現に、先程も不意を突かれたとはいえ、かわせなかった。かわすことが出来なかった。かわすという思考すら出せなかった。
 不意を突かれなければかわせた、とも断言できない。
「……結果は見えてるって……やってみなきゃ分からねぇだろ!」
「分かるよ。君と私では実力に差が開きすぎている。それはもはや君の得意な根性論じゃどうにもならないんだよ」
 葛城は優しい口調で語った。
 だが、いくら言葉を重ねられたところで魁斗の意志は揺るがない。
「だから、やってみなきゃ……!」
「……勝てないっさよ」
 食い下がる魁斗を止めたのは、意外にも天草の言葉だった。
「勝てないっさ。私でも、葛城には勝ててないっさ。私相手に苦戦してるカイト君は、奴には天地がひっくり返っても勝てないっさ。……今の状況じゃ」
 分かったろう、と葛城は息を吐く。
 葛城は振り返らずに、背中だけで語る。
「天草の制止もあるんだ。とりあえず、私は君と戦わない」
 魁斗は、葛城と天草の言葉に刀を下ろす。
 しかし、葛城の言葉は終わらなかった。それは、魁斗が勝てないと示すような言葉ではなく、ただの宣戦布告だ。
「七日間、君に時間を与えよう。ま、せいぜいすぐにやられないように腕を磨きたまえ」
 そう言って、葛城は姿を消した。
 現場に残ったのは魁斗と天草の二人のみ。妙な静寂が二人を包む。
 魁斗は思い出したように、携帯電話を開いて電話をかける。かけた相手は人間界の人物ではなく、天界の人物だ。
 電話が繋がり、この静寂をぶち壊すようなド派手で可愛らしい声が飛んできた。

『ハッアーイ! いっつもニコニコ貴方のために働く女です! 可愛い可愛い貴方だけのメルティちゃんですよ!』

 とんでもない挨拶だ。
 だが、今はそれを気にしている暇ではない。魁斗はいつもならツッコむ相手の言葉を無視して、一方的に用件を伝える。
「ああ、メルティ。忙しいってのは分かってるんだけど、一つ頼まれてくれないか?」
 メルティはしばらく黙って、言葉を紡いだ。
『……えーっと、意外だねぇ。カイト君が私に頼みだなんて……まあいいでしょう。調べも一通り済んで、丁度することがないしね。カイト君の頼みは断る理由がないよ』
 魁斗はホッとしたような表情を浮かべると、用件を話し出す。
「そうか、話が早いよ。じゃあ、突然で悪いんだが……一週間、俺の師匠になってくれ」
『…………………………………………はい?』
 メルティの驚愕の言葉は、魁斗の受話器に空しく響く。
 更に、メルティは言葉を重ねた。

『はい?』

 先程と何も変わらない、彼女にしては珍しい間の抜けた声を。

315森間 登助 ◆t5lrTPDT2E:2012/06/03(日) 08:33:57 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
 コメント失礼します、森間です。

 久々のメルティ登場ですね、最近は簡単な描写でしか見なかったので完全に忘れていました((

 ちょっと気付いたんですが、『十二星徒』の目的が主人公のシャインを狙うためという事になっていますが、わざわざ強くなるまで待つのでしょうか? それにシャインの目的もまだ主人公達の予想段階でしかないような気がしますし。
 何故強くなるまで待つのか明確な理由が欲しいところですね。確かに少年漫画によくある手法だったりしますが、安易に使い過ぎかと思います……
 それと魁斗の剣は『祓魔の爪牙』で決定とありますが、魁斗に天界の過去があるなら専用の剣があっても良いような…… 少し残念です。
 さらに進行具合から言わせていただきますと、悪の組織を倒すと言う単純な作りになっているため、読んでいる内に物足りなさが少々。魁斗の過去が不明になっているならば、それを物語の中に入れても良いような気がします。ですので、もっとバトル以外のストーリー要素を入れられるようになると良いかな〜なんて((

 全体的に纏めて言わせていただきますと、全体的なストーリーの流れをキャラクターが動かせていないと思います。
 この小説はライトノベル寄りだと思いますので、キャラクターが大切だと思うのです。ですので、なるべくキャラクターの性格を軸にストーリーを書いてみては?

 長くなり、またうざったい内容を書いているなと思われたでしょうが、参考にしていただけたら有り難いです。
 ではではwww

316竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/03(日) 10:58:42 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
森間登助さん>

コメントありがとうございます。

自分としてもメルティは確かに久々ですね。
魁斗が一番修行のしやすい相手を選んだ、といった感じですね。レナやハクアの人間界メンバーは現在複数で行動しているため、魁斗も修行を頼み辛かったんでしょうね。

『十二星徒』の明確な目的は後から判明します。
実際葛城は『十二星徒』のリーダーからちゃんとした目的を聞かされていません。だから葛城の魁斗への敵意も『少し興味があるので、成長した彼と戦ってみたい』という感覚ですね。
ぶっちゃけると、『十二星徒』のリーダーと面識があるのは、メンバー内でほとんどいません。
魁斗の天界でのことは、十二星徒編が終わった後にちょこっとだけ話させていただきます。
といっても、真相までは明らかにならないんですが。
魁斗専用の剣は、コメントを頂いてから出そうと考えています。が、かなり後になる恐れが……。

こっから魁斗の修行に入るので、ちょこっとバトル以外のストーリーが入れられると思います。
自分も、バトル描写よりも日常描写の方が結構好きだったりしますので……あ、また魁斗が空気になる予感しかしなi((

ああ、それは自分でも反省すべき点が……。
実際この作品のキャラって動かし辛い奴ばっk(( 戯言は置いといて、キャラを上手く動かせていないということは、自分でもまだキャラの性格をはっきりと認識できていないのか? と思っていたり。
キャラクターの性格を軸に……ですか。難しいですが、やってみます。

いえいえ。いつも参考になるようなアドバイスばかりでありがたいです。
小説をただ読んで、『良い』や『悪い』を表現するだけでは、こちらとしてもどう改善した良いのか、どこの雰囲気を持っていったらいいのか分かりませんし。
続きも頑張らせていただきます^^

317竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/08(金) 21:15:56 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 魁斗の修行の相手として呼び出されたメルティは、かつてアギトと戦った河川敷で、魁斗と数メートル離れて向かい合っていた。
 正直、魁斗の修行相手になるのをメルティ本人は潔しとしない。
 理由は二つあるが、その内の一つは明らかに私情である『魁斗が好きだから戦いたくない』である。誰でも好きな人と争ったりするのは嫌だろう。メルティの心中にもあることで、異常な程までに魁斗に恋心を寄せているメルティとしては『力になりたいが、自分は戦いたくない』といったところだろうか。
 そして理由のもう一つは、自分の本気が出せない事である。これは相手が好きだから、という理由ではなくキルティーアとの戦闘で『時の皇帝(タイムエンペラー)』が暴走したのが大きな理由である。
 メルティはキルティーアとの戦いで暴走してから、『時の皇帝(タイムエンペラー)』の使用を控えていた。その証拠に、現在は十六歳の姿で、以前『十二星徒(じゅうにせいと)』に襲われた時だって、十六歳の姿で挑んでいる。
 以上の点を踏まえ、メルティは溜息をついて魁斗に言う。
「……あのさぁ、カイト君。これは忠告になっちゃうんだけど……私手加減できないよ?」
「それでいい。いや、むしろそっちの方がいい。お前が本気にならないと、意味がないんでな」
 それでもメルティは乗り切らない。
 乗り切らない、というより彼とは本気で戦えない。そう思ってるからこそ、相手が『本気でいい』と言っているのに、戦えない証拠だ。
「俺は、葛城から皆を守れるくらい強くなりたいんだ。だから、一番強いお前で来い」
「……はぁ。どうなっても知らないからね」
 そこで、メルティは『時の皇帝(タイムエンペラー)』を解放する。
 綺麗で長い銀髪を後ろで束ねた、ハルバートを手にした女性。二十五歳のメルティだ。
「……お前、十年近くでかなり変わるんだな」
「まーね。いつまで経っても子供じゃいられないでしょ? さってと、じゃあ始めるけど……いい?」
「ああ、すぐにでも―――」
 言おうとした瞬間、魁斗視界からメルティが消える。
 魁斗がその光景に驚いている間に、姿を消したメルティは魁斗の背後に移動していた。
(―――速ッ?)
 
 ドッ!! と魁斗の横っ腹に鈍い衝撃が走る。

 魁斗はそのまま数メートル飛ばされ、最終的に地面に身体を滑らせるような感じで止まる。
「……そりゃ、いつまでも子供じゃいられないよ。カイト君にだけは無垢で可愛い私をみせていたかったけど、仕方ないな」
 魁斗h半分睨みつける様な視線で、メルティを見つめている。
 ハルバートを肩に担ぐように持ったメルティは、そんな魁斗を冷たい瞳で見つめながら言葉を放つ。
「カイト君の次の相手はカツラギシローだっけ? 『十二星徒(じゅうにせいと)』の中でもかなり強いんでしょ? 相手が私でよかったね。さっきの一撃がカツラギシローだったら、お前死んでるよ」
 メルティが、今まさに教官とかした瞬間を魁斗は見た。

318竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/10(日) 11:26:12 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 魁斗とメルティが修行開始とほぼ同時刻、天草は沢木の家の前で、沢木と話していた。
 魁斗は葛城獅郎が与えた七日という猶予をフルで修行に費やすそうで、ハクアが提案したチーム編成が出来なくなったのだ。そのため、魁斗から『サワなら泊めてくれると思う』と言われ、彼女のところに頼みに来ていた。
「全然大丈夫です。むしろ、私も人が増えた方が楽しいですし」
 答えは案の定オーケーだった。
 ほっと安堵の息を吐いて、天草は家の中に上がる。
 家のリビングには、ハクアとレナが座っていた。レナは、天草へ一度視線を向けると、僅かに不機嫌になってから目線を逸らした。
「まー、カイト君ならこーなるんじゃないかと思ってたけど、まさか予想通りになるとはね」
「……それより、葛城獅郎……という名のしし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』と遭遇したというのは、本当のようですね」
 レナの問いに天草は頷いた。
 魁斗と天草が葛城と出会ってから、魁斗はレナと桐生、更に天界にいる何人かにも情報を伝達していた。しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』の正体を。
 それを聞いた時、沢木は驚いたようだったが、彼女も何故わざわざ自分達に接触してきたのか、何となく分かってきたようだ。
「……カイト君は今メルティって人と修行してるさ。……大丈夫だと思う?」
 天草は心配そうな表情でレナ達に問いかけた。
 そして、ハクアと沢木が間髪いれずに答えを出した。
「んまあ、大丈夫でしょ。メルティさんなら」
「はい。心配はいりませんよ」
 二人の早すぎる解答に天草は目を丸くした。
 二人はメルティが魁斗にそれなりの好意を抱いている事に感づいている。だが、それを差し置いてもメルティなら大丈夫だと断言した。
 何故なら、
「メルティさんなら、カイト君の事をよーく見てるから。限界になったら休憩挟むだろうし、心配要らないよ」
「でも―――」

「大丈夫だと言っているでしょう」
 天草の言葉をレナが遮った。

 天草はレナに視線を向けると、レナは息を吐いて、
「ちゃんと、カイト様だけではなく、私達も信頼してください。『秤さん』」
 信頼の証、となるようなものをレナは口にした。
 普通なら、信頼できないような相手にを下の名前で呼ぶことはないだろう。だが、レナは不器用なりに『天草を信用している』という証明のため、彼女の名前を呼んだ。
 苗字ではなく、下の名前で。
 レナの言葉に天草は表情を綻ばせて、力強く頷いた。
「……うん!」
 その光景を見ていたハクアが、レナの耳元で囁くように話しかける。
「(……うふふ、レナってもしかしてツンデレ?)」
「(……なっ、貴女が『仲良くしなさい』とか言うからでしょう!?)」
「(……あららー、人のせいにしちゃって。でも、よくやったんじゃない?)」
「(……褒めるなら、もうちょっと分かりやすくお願いします)」

319森間 登助 ◆t5lrTPDT2E:2012/06/10(日) 14:37:26 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
 コメント失礼します、森間です^^

 ついに修行編、楽しみにしております。
 それと、沢木宅のガールズトークがなんか和みますね。

 >>316で引っ掛かったところがあったので、少し意見させて貰いますね。
 葛城の『少し興味があるので、成長した彼と戦ってみたい』という動機ですが、少々不純かなと思いました。動機というのは本来読者に共感を訴えるものですから、それだけでは読者が納得してくれません。もっと一般人が納得できるような理由を混ぜるといいと思います。
 また、リーダーが仲間内でも不明なのはちょっと…… と思ってしまいました。まず、姿の知れない強大な力を持った何者かなんて着いていきたいと思うのでしょうか?
 まだ脅しを掛けられているから脱退できない、とかなら分かりますが、裏付けさえもされていないので不安定かなと。

 主人公の出番が無いのはズバリ言っちゃいますと、その主人公が動かしにくい性格に設定してしまっているということです。
 厳しいことを言っちゃいますと、動かしにくいキャラは主人公向きではありません。こういう場合は、もっと単純なキャラ(極端に熱血、クールなど)にした方が動かしやすいですよ^^

 ではでは、ご参考までにw

320名無しさん:2012/06/10(日) 17:06:12 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>1
中二臭いよ中坊www

321竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/23(土) 00:36:51 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
森間 登助さん>

コメントありがとうございます。

修行編……ぶっちゃけ魁斗が本気のメルティ相手に死なないか不安でいっぱいです((
レナとハクアの会話は書いてても、何だか和みます。さてさて、天草がどう入っていくか……。
ガールズトークの輪に入れない、恋音とカテリーナ(( 桐生がハーレムじゃねぇk((

次に書こうと思っていたところをご指摘いただきました。
いや、葛城さんの戦いたい理由の方じゃなく、『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーの話ですね。
ぶっちゃけ、葛城さんはリーダーさんに弱みを握られています。
ただ、素顔を知らないだけで、面識自体はあるので(>>285参照 この場にいるのは、リーダーとその側近と葛城、天草です)。

単純なキャラ……結構熱血だと思うんですけどね……。
アイツ、いまいち熱くなりきれてないのか。松岡○造の力が必要d((

貴重なアドバイスありがとうございました。

322竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/23(土) 00:58:57 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 電気が全くついていない暗い部屋の中で、一人の少女が顔を机に突っ伏して、睡眠を取っていた。
 そんな彼女の首元に、スッとナイフの刃が寄せられる。
 ナイフを握る人物が、彼女の首を掻こうとした瞬間、後ろから唐突に声を掛けられる。
「……何をしている?」
 後ろから掛けられた声は割りと若く、大体高校生くらいの少年の声だろう。
 仮面をつけているため、顔までは確認できないが、黒髪の痩身であることは見た目で分かる。
 ナイフを握っていた男も、仮面をつけており、表情は確認できない。
 だが、
「参ったね。まさか、君がいるとは予想外だったよ」
 特徴的な声のせいで、仮面の効果が全くない。
 ナイフを持っていたのは葛城獅郎だ。
 葛城はナイフを床に放り捨て、少年から距離を取る。
「……貴様、まさか殺そうとしたのか?」
「まさか。彼女がその程度で殺せるわけないだろう。さっきので私が殺せたら、既に『十二星徒(じゅうにせいと)』の誰かが殺してるさ」
「そーゆーこと」
 いつの間にか、葛城が殺そうとしていた少女が彼の背後に立っている。
 音も無く、誰にも気付かれず、本当に『いつの間にか』だ。
 葛城は仮面を外し、少女へと視線を向ける。
 少女は、仮面をつけたまま、腕を組み愉しそうな口調で告げた。
「さっきのアンタの話だと、私って相当嫌われてるみたいね。まったく、どいつもこいつも……私の何が気に食わないんだか」
 少女は伸びをしながらそう言った。
 隙だらけだ。無防備で、無邪気で、無垢で。今なら殺せそうな気がしないでもない。
 だが、葛城にはどうしても彼女を殺せない理由があった。
「そーいえば、そろそろなんじゃない? アンタの娘が転校するのって」
「ああ、そうだね。私は娘の保身のために君らに協力しているんだ。娘が危険な目に遭ったら……その時は分かってるね?」
「あーはいはい。分かってるってば」
 少女は面倒くさそうに答える。
 それからしばらく考えて、彼女は少年の方に質問をした。
「ねぇ、向こうで残ってる奴らって誰がいたっけ?」
 向こう、というのは恐らく魁斗達の戦力の事だろう。
 少年は僅かに逡巡し、答えを導き出す。
「天界でなら、エリザ、ザンザ、クリスタ、ルミーナ、ゲイン、フォレストの六人。どれも厄介な奴らです。人間界では、切原魁斗、レナ、ハクア、桐生仙一、藤崎恋音、カテリーナ、メルティ、そして天草秤です」
「……そ♪」
 少年の言葉に、少女は面白そうに返事をした。
 彼が天草の名前を出したのは、恐らくもう彼女の事をどうとも思っていない理由だろう。仲間でなければ、ただの抹殺対象。そうう認識しか、彼らには出来ないのだ。
 少女は、出口へ向かって歩き出し、室内にいる二人に告げるように言う。
 独り言のような一言を。
「……葛城が与えた猶予って、確か七日よね。七日後、葛城。アンタは真っ先に天草を狙いなさい」
 指名された葛城は、ニッと笑みを浮かべて、最終確認のように問いかけた。
「裏切り者は即刻排除、ですか?」
 少女は間髪いれずに答えた。

「当たり前じゃない」

 驚くほど、感情の篭っていない無表情で無感情な声で。

323竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/08(日) 14:28:12 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 現在、桐生の家にはその家の住人である桐生仙一とハクアの組み分けにより、彼と行動を共にする事になった、藤崎恋音の二人だけである。
 本当はカテリーナなども居候していたのだが、今はいない。いつもなら学校から帰ってきたら、おもむろに部屋の中を(何か食べながら)物色しているのだが。
 今日は家に帰ると、彼女の代わりにテーブルの上に彼女の残したであろう置手紙が置かれてあった。
 『エリザ様から召集かかっちまったぜ! てなわけでバイビー』と書かれてあった。
 文面だけでもイラッときたが、とりあえずいなくなってくれてよかった。
 桐生はそう思っていたが、一人だけこの二人きりの状況を良く思っていない人物がいた。

 言うまでもなく、藤崎恋音だ。

 実を言うと、彼女は桐生とペアになった時点でどきどきしており、カテリーナがいてくれた事により、その心臓の鼓動を抑えていたのだが。
(もー、カテリーナさんの馬鹿ー! これじゃ結局同じじゃん! 二人になると余計に意識しちゃうんだってば!)
 彼女の頭の選択肢には『意識しない』という解答はないようだ。
 藤崎は顔を赤くしながら、桐生との距離を空けながらソファにちょこん、という効果音が似合いそうな様子で座っている。
 彼女の顔が赤いことに気付いた桐生は、心配そうな表情をして、
「大丈夫かい、藤崎さん? 顔が赤いけど……熱でもあるの?」
「へ!? べ、別に……私は全然大丈夫だけど……」
「そうか。……何かあったら言ってよ。遠慮とかしないでいいから」
 桐生のその言葉に藤崎はこくりと頷く。
 部屋に再び沈黙が訪れる。

 そんな中、桐生はいろんな事を頭の中で考えていた。
(……しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』との戦いに備え、切原くんはメルティさんと修行してるって聞いた……。ということは、彼は自分の力の足りなさを感じているということか。……また、置いていかれてしまうかもな)
 桐生は魁斗より戦っている期間は長い。
 しかし、最近ではその魁斗よりも自分の方が弱いと感じてしまう。
 『死を司る人形(デスパペット)』との決戦では、自分はスノウと戦ったが、彼はそのスノウより強いディルティールと戦い勝利を収めている。
 やはり、置いていかれている。
「……僕は一体、切原くんに何が出来るんだろう……?」
 言葉が、口から出ていた。
 その言葉を聞いた藤崎が、口を開く。

「そんな、気負う事ないよ」
 いつの間にか、彼女は自分のすぐ隣にまで来ていた。
 藤崎は桐生をじっと見つめたまま、彼の左手にそっと自分の右手を重ねる。
「何でもできる。力になることも、隣で一緒に戦うことも、傍で支えてがえることも。桐生くんなら何でも出来るよ」
「……藤崎さん……」
「自分に自信を持って! その方が、桐生くんらしいって、私は思うよ!」
 にっこりと笑いながら、彼女は伝えてくれた。
 桐生はフッと笑みをこぼしながら、藤崎を見つめて一言だけ告げた。
「ありがとう。何だか、自分への自信と、元気をもらったよ」
「いやいや、力になれてこっちも良かったよ!」

 一方、天界でも動きがある。
 敵の、ではなくエリザ達の動きだ。
 現在この場には、エリザ、ザンザ、カテリーナ、クリスタとフォレストが集まっていた。
 代表のエリザが口を開く。
「しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』の撃退は、とりあえずカイト君達、人間界の人達に回そう。私達は、彼らがしし座を倒した後、すぐに残りの奴らを倒せるようにアジトを探す」
「まあ、その方がいいだろうな。その方が私達も人間界と天界とを右往左往せずに済むだろうしな」
 エリザの言葉に、腕を組んだまま聞いていたクリスタが同意した。
 次に、カテリーナに抱きかかえられ、不機嫌な顔をしているフォレストが口を開く。
「ですが、実際どうすんですか。情報収集に特化しているメルティさんは、現在天子の修行に大忙し。僕らだけで特定できるような場所に陣を構えているとも考えられませんが」
「うん。だから最初にこの事を伝えておいたルミーナとゲインには先に捜索に当たってもらってるんだけど……中々連絡が来ないのよね」
「そう簡単に見つかっちまっても面白くねェしなァ」
 エリザはしばらく考えて、結論を出す。
「だから私達も手分けして情報を集めるわよ。私とザンザ。カテリーナとクリスタとフォレストちゃんで、分かれるわよ」
 その提案に異を唱えるものはいない。
 五人は二組に分かれて、捜索を開始する。

 エリザとザンザの二人に、黒い影が迫っている事は誰も知らない。

324計ちゃん:2012/07/11(水) 18:02:25 HOST:ntfkok253193.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
アナタ、シコシコ文章、いつもご苦労様ですね。
あなたのシコりには、感動させられました。

325計ちゃん:2012/07/11(水) 18:03:57 HOST:ntfkok253193.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
もちろん、良い意味でのことですよ。
悪い意味で言うような、浅はかな女等どもとは違いますから。

326竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/08(土) 21:05:40 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

ハクア「ひっさびさのハクアお姉さん登場ー!!
いやぁー、このレス随分ご無沙汰ですなぁ。駄目な作者がずっと放置しててごめんねー。
つーわけで、今日からちょこっとやる気出すらしいわ。実のところ『こっからどうすっかなー』って考えてたらしいから。
しかしこっから始めても、もっかい読み直すのツライじゃん?
ってなわけで、簡単なあらすじを紹介するわ。
紹介っていっても、私がやるわけじゃないのよ? 『説明なら私にお任せ! 動く広辞苑』ことレナちゃんに頼むわ!」

レナ「どんだけ適当なやり方ですか! もう、いいです。やる気がないようですし。
この物語は、私とカイト様が出会うところから始まります。
脚力が高いことだけが自慢のごく平凡なイケメン高校生カイト様は―――」

魁斗「オイコラ。誰がイケメン高校生だ。変な属性追加すんじゃねーよ」
レナ「あら、違いました?」
恋音「つーかこれじゃ一向に進まないわよ? 本当に大丈夫?」
仙一「大丈夫じゃないだろうね。君ら知ってる? これって文字制限あるんだよ」
魁斗「それを早く言えよ! あー、まともにあらすじ紹介してねぇじゃねぇか!!」
レナ「ですから、最初から私がやった方が―――」
ハクア「いやー、今のは無いと思うわー」
レナ「責任を丸投げした貴女に言われたくありません!!」

メルティ「ねーねー、再開だって言うから来たのにさ、いつになったら私の出番?」
フォレスト「ずっと準備してんですけど。もう僕ら待ちくたびれてますよ」
エリザ「私らも来たんだよー? ね、ザンザ。カテリーナ」
カテリーナ「そうだよー。私らの出番くれくれー!」
ザンザ「つーかこれさ、番外編みてーに全員集合してるけどいいのか? いい加減本編始めようぜ」

沢木「では、あらすじは私が!
脚力が高い少年、切原魁斗は天界からやって来た女性・レナと出会い、自分が天界の王の子、天子であることと、自分の身体の中に『シャイン』があると知らされる。
彼はレナやハクア、その他大勢の仲間達と死闘を繰り広げ、『死を司る人形(デスパペット)』をついに倒したのだ!
しかし、次に現れたのは『六道輪廻』! さらには『十二星徒(じゅうにせいと)』とも戦うことに!
カイト君は最強の『十二星徒』葛城獅郎と戦うために、修行を開始したのですっ!!」

全員「あらすじ言われたぁぁぁっ!!」



すいません、おふざけで書きました。
次レスから再開いたしますm(_ _)m

327竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/08(土) 21:28:26 HOST:180.5.55.152
第七十七閃「約束は破るために」

「……」
 ザンザはエリザと歩きながら、どこからどう見ても、十人中十人が分かるくらい不機嫌な顔をしていた。
 彼の視線の先には傍らにいるちっこい上司に向けられたものではなく、横や後ろの方へと巡らされている。
 彼の視線に気付いた上司であるエリザは、ごく軽い調子で彼に訊ねた。
「どうしたの、ザンザ。随分と不機嫌かつ警戒してるわね」
 まさかコイツ気付いてないのか、みたいな視線をしたザンザはエリザの方を見ずに、前を見ながら歩いている。
 彼の不機嫌さは一向に晴れない。むしろ足を前に進ませれば進ませるほどに彼の不機嫌は募っているようにも見える。だが、上司のエリザを話す時だけは、僅かに苛立ちを緩和させて、落ち着いた口調で話す。
「……いや、なんつーか……」
 その様子にエリザは子供らしくくすくすと可愛らしく笑う。
 自分の前に萎縮する部下を見て可愛らしいと思っているのだろう。彼女はおそらくドが付くSだ。
「……随分楽しそうに笑ってんなァ。まさかエリザ様、気付いてねェわけじゃねェだろ?」

 ぴくっと、エリザの肩が動く。

 ザンザの言葉に彼女は楽しそうに口の端を歪めながら、辺りをきょろきょろと見回している。
 恐らくは敵の位置を見つけようとしているのか、彼女はちょっとだけふざけて手をかざしながら『どこかなー?』などと言っている。この程度の挑発では敵も乗ってこないだろう。
「オイ、そんなんじゃダメダメだってのッ!!」

 ザンザは背負っている巨大な刀を振り回す。
 ザン!! と鈍い音を立てて、木が三本切り倒される。大きな音を立てながら巨大な木が地面へと落ちる。

「とっとと出て来ねェと、ここの木全部切り落とすぞ!!」
「やめなよザンザ―――」
 彼が再び刀を振り回した瞬間、
 ガァン!! という金属と金属の鈍い音が辺りに響き、彼の斬撃がエリザの槍によって阻まれる。

「―――あァ?」
「え?」

 止めているエリザ自身も驚いていた。
 二人は状況を把握するため、数秒固まっていたがザンザが落ち着いた口調で問う。
「―――どういう事っすか、エリザ様」
 彼の目は怒ってはいなかった。
 むしろ『止めるなら口で言ってください』と言っているような。
 しかしエリザは弁解する。自分の意志でやったんじゃない、と。
「い、いや違う! 今のは私がやろうとしたんじゃなくて、何がなんだか分からないけど身体が勝手に―――!」

 ズン!! と何かを貫く気味の悪い音。
 ザンザの腹部から血が流れ、彼の腹部にはエリザの槍が深々と突き刺さっていた。刺したのは言うまでも無い、エリザ本人だ。
 彼女の幼女らしい小さな手が、しっかりと槍の柄を握っている。

328竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/09(日) 21:28:21 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「「……え……?」」
 エリザとザンザは同じ声を同時に漏らした。寸分の狂いも無く、小さい頃から一緒にいる親友のように、以心伝心してるとでも思わせるような、ズレが全く無い、本当に声が揃っていた。
 ザンザの腹部にはエリザの槍が、刃の根元まで突き刺さっている。その腹部からは赤い鮮血がぽたぽたと森の地面に生えた草を赤く染めていく。
 刺されている側のザンザも、槍の柄を握ったままのエリザも状況が把握出来ていないような表情のまま固まっている。
 『何故自分は今刺されている?』というのがザンザの心情で、『何で自分は部下を刺している?』というのがエリザの心情であった。
 ザンザは口の端から、一筋の血を流しながら、
「……オイ、どォいうことだよ……ッ!」
「わ、分からないよ……! 私だって、いつの間にか貴方を刺してて―――」
「んな冗談が、通じると思ってんのかよ……ッ!」
 ザンザがエリザを睨みつける。
 部下から信用されなくなったとほぼ同じ感覚に陥ったエリザは何も言うことが出来なかった。
 そんな中、がさっと草を踏みしめる音が二人の耳に届くと同時、若い男の声が届く。

「彼女は嘘をついてなどいない。主を信ずることこそが―――臣の務めではないか?」

 現れたのは、高校生ぐらいの少年だ。黒髪の痩身で、一見すると優男という印象を与える少年だ。彼は『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーの側にいる少年だ。
 そのことを知らない二人は、キッとその少年を睨みつける。
 少年は余裕さえを感じさせる笑みを浮かべながら、自分の首からぶら提げているネックレスへと視線を落とした。
「しかし、あの方から頂いたこの神具(しんぐ)の効果は本物だ。『使用者の姿が対象者に見えていなければ、対象者の動作を自在に行える。しかし、自害のみ不可能』。それがこの『動作の決定権(コントロール)』という神具だ」
 エリザは眉間にしわを寄せ、少年を睨みつける。
 十歳前後の少女とは思えないほど、鋭く怖ささえも感じさせる眼光で。
「……つまり、これはアンタがやったってこと? ザンザの攻撃を防がせたのも、今彼を刺しているのも!」
「今更気付いたか、低脳な小娘め。実力は本物でも知能までは浅ましいただの餓鬼と同じようだな」
 少年は僅かに笑みを浮かべながらそう言った。
 辛辣な言葉に、エリザは表情を変えることは無い。ただ、彼女は槍の柄から手を離し、手に幅の広い刀を握る。
「……アンタが姿を見せたってことは、もう神具の能力は使えないってことよね。判断を見誤ったわね。貴方は、今姿を晒すべきじゃなかった!」
「……ならばどうする。まさか貴様のそのオンボロ刀で私を倒せるとでも?」
「倒す、じゃないわよ。殺す!!」
 エリザが言った瞬間だった。

 ドッ!! と彼女の背中から腹へと刀が貫いた。
 エリザは背後に立つ犯人の顔を確認する前に、地面に倒れこみ意識を失う。

「うおおおおおおおおあああああああああッ!!」
 自身の上司を倒されたザンザは、巨大な刀を背後の襲撃者に向かって振り回す。前に、
 背後からの襲撃者が一瞬でザンザの目の前に現れ、彼の身体を切り裂いた。
 地面に横たわる二つの身体を見ながら、少年は呆れたように呟く。
「……動くな、と言ったはずですが? 運動不足を理由にしないでくださいよ?」
「えー、言い訳封じられた……。まあ、理由をつけるとしたらそうねー……『約束は破るためのものだから』かな?」
 背後からの襲撃者は女子だった。
 『十二星徒』のリーダーの声だ。彼女は気持ちよさそうに伸びをしながら、そう答えた。
「でもこれって、切原魁斗を焦らせることも出来るんじゃない?」

 少女は二人の血を使い、紙切れにメッセージを残しその場を去っていった。

329竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/14(金) 19:19:11 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 河川敷で金属と金属がぶつかり合うような、ずっと聞いていたら耳が痛くなるような音が響いている。
 いるのは二人。
 一人はメルトイーア、通称メルティ。彼女は十六歳の姿で、身長よりも長いハルバートを両手で軽々と振り回している。
 もう一人は切原魁斗。彼は二本の刀『祓魔の爪牙(ふつまのそうが)』で、メルティに必死に対抗している。
 すると魁斗が押し負け、後方へと飛ばされてしまう。地面を数回バウンドし彼は呻きのような声を漏らした。普通なら相手を休ませるためにここで止めてもいいのだが、メルティはそんな甘い考えをしてなどいなかった。
「ほら、立て! カイトくん『十二星徒(じゅうにせいと)』を倒すんでしょ!? 奴らならここで止まらない、さらに追い討ちをかけてくる! 死ぬ気でいかなきゃ本当に死ぬよ!?」
 魁斗は今自分の守りたいものを思い浮かべる。
 たくさん出てくるが、まず出てきたのは仲間だ。
 レナ、ハクア、桐生、藤崎、メルティ、フォレスト、沢木、そしてエリザやザンザ、カテリーナ達元『死を司る人形(デスパペット)』のメンバー。魁斗は彼らを思い浮かべ、ポツリと、
「……負けらんねぇよな……」
 彼は呟く。
 きつい言葉を浴びせるメルティも、相手を思っているからこそ口から出る言葉だった。
 魁斗は一本の刀を杖のようにして身体を支えながら立ち上がる。彼女の言葉が励みになったのか、彼の瞳に再び闘志が宿る。
 その表情に満足したのか、メルティは再びゆったりとした動きでハルバートを構える。
 しかしそこへ、

「あ、見つけました! 天子さん、メルティさん!」

 僅かに聞き覚えのある控えめそうな少女の声が聞こえてきた。
 魁斗を『天子』と呼ぶのは天界の人間。天界出身で控えめそうな顔馴染みの人物。一人しかいないのだが、魁斗には名前が思い出せなかった。
 振り返ると、そこにいたのは肩までの赤髪にアホ毛が真下に垂れ下がっている、十歳前後に見える少女。
 魁斗が名前を思い出そうとしていると、名前を覚えていたメルティが彼女の名前を呼んだ。
「ありゃ、ルミーナちゃんじゃん。人間界に来るなんて、一体どしたの?」
 ああ、そんな名前だった、と魁斗が納得し、ルミーナの言葉に耳を傾ける。
 彼女は息を切らしており、急いでこっちに来たことは一目瞭然だ。一体どうしたんだろう、と魁斗とメルティが思っているとルミーナの口からとんでもないことを告げられた。
「い、今すぐ天界に来てくれませんか? ザンザさんとエリザさんが敵に襲われて重傷なんですっ!!」
「な……っ!?」
 その言葉に魁斗とメルティは目を大きく見開き驚愕した。とりあえず、彼女の言うとおり二人は一度天界へと向かうことにした。

 ルミーナの先導に従い、二人は目的地へと走っていく。
 魁斗とメルティは走りながらルミーナの言葉を聞いていた。
「……実は、天子さんが葛城獅郎と戦うまでの七日間を無駄にしないために、私達は私達で敵のアジトを掴もうと手分けして探そうとしたんです。それで、二人の帰りが遅かったから探しに行くと、ゲインさんが傷だらけの二人を見つけて……」
 なるほど、とメルティが納得したように言う。
 魁斗は走りながら、ルミーナに質問した。
「二人が襲われたのって、二人でいたからって理由なのか?」
「……真偽は定かではありませんが、直結はしてると思います。あと、エリザさんが仮にも私達の司令塔だから、とも考えられます」
 理由を聞いたメルティは、
「理由としてはそっちが大きそうね。このことを他の人間界の人達には?」
「伝えに行ってもらってます。桐生さんと藤崎さんのところへはカテリーナさん、沢木さん達のところへはゲインさんとクリスタさんが。必ず戻ってきたら皆を連れて、フォレストさんの家に集まってと言ってありますから、大丈夫です」
 そう言っている間に、見覚えのある家が見えてきた。
 
 目的地である、フォレストの家だ。

330竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/10/12(金) 22:57:41 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「ザンザ!!」
 魁斗はフォレストの家の扉を勢いよく開けた。
 そこには身体に包帯を巻いて、無理矢理に身体を動かそうとしているのを止めているフォレストがいた。
 魁斗の到着に気付いたフォレストはほっとしたような、安心した表情を浮かべ、それに反してザンザは小さく舌打ちをした。
 全快ではないだろうが、とりあえず無事でよかった。魁斗は心から安心すると、
「おはようの挨拶は、必要か?」
「見りゃ分かんだろォが、馬鹿」
 とりあえず、いつものザンザでよかった。

 とりあえずザンザを上の階でエリザと一緒に寝かせ、魁斗とメルティはフォレストの話を聞くことにした。
 しかし、彼女自身も他人から話を聞いたので、詳しくは分かっていないらしい。こういう時に第一発見者であるゲインがいればいいのだが、彼は現在人間界のメンバーを呼んできているところだ。まだ帰ってはこないだろう。時間を無駄にしないために、とフォレストが説明役をしてくれた。
 彼女は二人の前にお茶を出し、向かいに座ると話を始めた。
「まず犯人の方ですが、当然というか……まだ情報は掴めていません。ザンザさんとエリザさんの傷口を調べたんですけど……」
 フォレストが言いにくそうに言葉を切る。
 その様子にメルティは眉をひそめて、
「……けど、何よ」
「はい。二人の傷口は全くの別のもの。つまり、二人は違う人間にやられたということです」
「ッ!?」
 魁斗とメルティが言葉を失った。
 フォレストは続ける。
「ザンザさんからはエリザさんと同じ傷口が見られましたが、彼は他にも違う傷口がありまして。それはおかしなことに、エリザさんの『剣(つるぎ)』と一致していたんです」
「……どういうことだよ?」
「こういうことよ」
 よく理解できていない魁斗に、メルティが説明する。

「エリザとザンザを倒したのは、恐らく同一人物。あの二人を一人で相手取るのは相当難しいだろうけど、同じ傷口があるってことはそう考えるのが妥当。そしてあの二人がやられるってことは、仲間割れでもした……とか?」

 ザンザにはエリザの『剣(つるぎ)』で傷つけられたと思われる傷がある。しかし、フォレストは捜索に向かう前は仲が悪いようには見えなかったと語っている。真相は謎のままだ。
 すると、フォレストが思い出したように手紙を差し出す。
 その紙に書かれていたのは英文だ。英語が全く出来ない魁斗には読めず、メルティも首を傾げていた。フォレストも読めなかったようだ。
 すると、後ろから声がかかる。
「『約束は破るためにある』って書かれてるんだよ、それ」
 後ろから言ったのは桐生仙一だ。
 やはり、彼にかかれば英文の解読など楽勝だったのか。
「これは挑戦状だよね?」
 桐生の後ろにいた藤崎がそう言う。
 彼は小さく頷くと、
「切原くん。もう時間はない。彼らは、七日も待ってくれないかもしれない」

331一護/泪/恭弥/当麻/高塚凛/亜梨子/安心院紅羽/疾風やみゆ ◆u7pJ1aUXto:2012/11/09(金) 21:45:18 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十八閃「鬼再び」

 魁斗とメルティはゲインとクリスタが呼びに行ったレナ達が来るより早く、人間界へと戻り修行を再開していた。
 敵がエリザとザンザに重傷を負わせ、挑発的なメッセージを残した。これ以上誰にも傷ついて欲しくない魁斗は一刻も早く強くなる必要があった。しかし、強さとはそう簡単に手に入るものではない。彼が今まで戦ってきたザンザやエリザ、ディルティールだって血の滲むような努力をしてきたに違いない。
 こういう時に思い知らされる。
 自分は本当にまぐれのみで勝ってきたのだと。
 今魁斗の目の前にいるのは修行の相手であるメルトイーア。彼女は伸びをしながら軽く体操のような動きもしている。
 彼女はハルバートを軽く片手で振りながら、
「カイトくん、再開するけど準備はおっけー? ダメでもやるけど」
 魁斗は二本の刀を真っ直ぐに構えて、
「ああ、来い!」

 瞬間、メルティの姿が視界から消える。
 自分の目を疑った刹那、メルティが背後に忽然と現れ、鋭い膝蹴りを魁斗のこめかみにヒットさせる。

 魁斗の身体は横向きのまま三メートル程飛ばされ、彼のこめかみから頬にかけて一筋の血が伝っている。
 彼は苦しい表情をしたまま刀を杖代わりに立ち上がる。
 再び視界に移したメルティは腰まで銀髪を伸ばした、まだ見たことの無い年齢のメルティだった。
「二五歳。今私がなれる年齢の上限だよ。気ィ抜くと『アイツ』がまた出てくるから、本当は使いたくなかったんだけどな。カイトくんに『アイツ』の私見られるの嫌だし」
 アイツ? と魁斗は首を傾げる。
 彼が知らないのも無理はない。彼女の言う『アイツ』とはキルティーアとの戦いで『時の皇帝(タイムエンペラー)』の暴走により出現した、なれる年齢の上限を超えた二八歳のメルティのことだ。
 彼女はあの時の、二八歳の自分の出現に恐れ、年齢を上げるのにかなり抵抗していた。だが、
(今までに無い以上に向上心を見せてる。だったら私も協力しなくちゃね! 私が気を抜かなければいいだけだもん! きっと、カイトくんなら大丈夫!)
 魁斗とメルティの修行が再開した。

 一方で、ゲイン達が連れてきたレナ達もエリザとザンザの容態を見るなり、ホッと一安心して帰ってしまった。
 ザンザは面倒くさそうに溜息をつきながら、
「チッ。何で怪我人なのにアイツらは容赦っつーモンがねェんだ!! これじゃ回復しようにも出来ねェぞ!!」
「まーまー、大勢でお見舞いに来てくれたんだし。私はよくなる気がしてきたよ」
 ザンザはもう一度舌打ちをした。
 エリザは子供を見てるような親のように笑って見せた。
 その様子を見ていたフォレストは壁に背を預けながら、
「とか悪態ついて、実は超嬉しかったりするんでしょ? あー、もういいです。その面倒くせぇツンデレは」
「ざっけんなッ! 何で俺がアイツらが来た程度で喜ばなきゃ―――ッ!」
 叫んだザンザは傷口が開いたのか、腹を押さえながらベッドの上で悶える。
「怪我人は大人しくしててください。ちっとはエリザさんを見習えです」
 エリザはきちんと布団をかぶって寝ている。怪我人というよりは病人に見えてきた。
 ザンザはもう一度舌打ちをした。

「……逆に安心は出来たがな。アイツらの顔見てよ」


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