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Purincess*
25
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/06(金) 19:28:17 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「…………っく……………!」
いきなり後ろから聞こえた痛々しい声と共に、倒れるような音。羽音ちゃんがまさかという表情でくるりと振り向いたので、他のみんなも一斉に振り向いた。すると、そこには苦しそうななつの姿があった。
「な、つ……? なつ、なつっ! や………きゃああああああああぁぁあぁぁああぁあっ!」
* * *
ぽつんと真夜中、薄暗い病院に一人。わたしはなつのお見舞いに来ている。正直なつが倒れたということはよく理解できてないんだけど、病室のプレートに佐藤那月様って書いてあることで、段々理解出来るような気がしてた。付き合うまで知らなかったなつの苗字も、今では知らなきゃ良かったって後悔してる。ぼーっとしていると、病室から先生が出てきて、その瞬間に見える病室の中に苦しそうななつの姿を見つけてしまった。それも知らずに、先生はなつの症状を話し出す。
「那月くんは幼い頃から喘息の症状を持っていたようで、別の病院に通っていたようですが、その病院では治療はまだいらないだろうと思われていたようですなあ……前の病院から来た看護師さんに聞いてみたところ、この短期間でかなり悪化しているらしいですよ。倒れた原因は呼吸困難だと思われます。これから呼吸困難が何回も続きますが、あまりにも酷いと死に至る場合もあるのでその覚悟はしておいてください。」
突然告げられた事実にまたぼーっとする。なつが死んじゃうなんて今まで有り得なかったから。喘息のことだって、羽月ちゃんの方が知ってた。何か、今まで自分が何を分かっていたんだろうって不安になってくる。
「……死ぬ覚悟は、なつは出来ているんですか………。」
力無く聞くわたしの微かな声に、先生は深く頷いて、なつの言葉を代わりに告げた。
「那月くんはゆりちゃんのことをとっても大事に思っていたねえ……。「俺は死ぬ覚悟、出来てるけど、ゆりは俺が死ぬことを理解出来てないと思うんで、しばらくそっとしておいてください。」と言っていたよ。………先生も、あんな若い人を簡単に死なせたりしないから安心しなさいな。」
そう言われ、わたしは何を理解したのかも知らずにこくりと頷き病院を去った。
* * *
家に着き、眠りにつこうとすると、ざわざわと胸騒ぎがして、ダメだ。
「病院に電話しよ……。」
少しでもなつの様子が知りたくて、そっと受話器を手に取ってみる。すると、病院から早く出て! とでもいうように電話がきた。不思議そうに電話に出ると、ある事実を伝えられた。
「もしもし、○×病院ですけれども、ゆり様でしょうか? 那月様の様子が急変したのですぐ病院に来てください!]
「え……………!」
もう、無我夢中に走っていた。早くなつに会いたくて、死んでほしくなくて。だからなつ、生きてて……!
* つづく *
26
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/06(金) 20:33:39 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「先生っ! なつは……なつはっ!」
病院に着いたわたしは、やっとなつが倒れたという事実を理解したように先生に聞く。勿論、望むのは「生きている」という答えのみ。今此処で「死んでしまった」という答えを聞いたらわたしも自殺するような勢いでいた。だから、生きてて! そう願っていたのに、先生はとっても静か。きっと悪い報告なんだろうな、とは思ったけれど、それはただ「苦しいのが悪化した」ぐらいにしか思ってなかった。
「……………落ち着いて、お聞きください。那月くんは、13時46分に―――――――――――…………………
お亡くなりになられました。」
この言葉を聞いた瞬間、わたしは「ああ、死ぬんだ。」って思った。それは、なつのことじゃなくて自分のこと。どうせなら同じ時間に、一緒に死にたかったね。
さようなら、リリーちゃん。可愛くて、実はずっと憧れてたよ。さようなら、羽月ちゃん。喧嘩しても、大好きだったよ。さようなら、フリル。実は素直でいい子だったね。さようなら、りあ。自己中で嫌いだったけど、可愛いところもあったね。さようなら、スター。王子っぽくなかったよね。さようなら、ふわり姫。疑ってごめんなさい。さようなら、璃羽。璃羽にたくさん支えられたよ。さようなら、遊。これは落とし穴じゃなく、「運命」だから。
みんなみんな、大好きだよ。
先生の目の前で、ナイフをぎゅっと握り自分の胸に突き刺そうとした、そのとき!
「やめて……! 叶がいるからには、そう簡単に死なせないわ………!」
見知らぬ女の子の声とともに、一気に泣き崩れた。わたしは間違ってたんだ。なつが死んだからって、わたしが死ぬことないじゃない! わたしはわたしの人生を生きるんだ……!
「なつうっ……なつ! うわあああああああああぁぁぁああぁんっっ!」
* * *
しばらくすると、泣き崩れるわたしの前にたくさんの人が来た。遊達だ……! みんな、泣いている。突然現れた叶っていう子が口を開くのを待つように。
「……皆さん、初めまして。月夜叶という者です。今回は那月の死と聞いて慌てて来たの。……あ、叶は姫決定戦の審査員をやっていました。皆さんに質問ですが、那月を生き返らせたいですか?」
「当たり前だよ……!」
羽月ちゃんが即答して、みんなも頷いた。けどわたしだけは違かった。
「やだ……!」
すると、みんなが正気?! とでも聞くように驚いていた。当たり前だよね。でも……!
「わたしは、生き返らせた偽物みたいななつ、やだよ……! それに、なつが死ぬ覚悟をしていたのは知ってるから、こうしてみんながいるだけでなつは幸せだとおもう………!!」
「そうだね……! 那月くんは、それが一番の幸せだと思うよ。」
「無理に生き返らせても、気まずいだろうしね。」
みんな口々にわたしに賛成してくれた。初めて自分の意見を言えたような気がして、嬉しかったよ。
* つづく *
27
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/07(土) 13:48:05 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「なつ、暑いね!」
(だな……ついこの間まで寒かったのに。)
わたしは綺麗な砂浜に座り、一人でハートの中に色んな色で光るダイヤの入ったネックレスを見つめ話す。まるで目の前になつがいるみたいで、少しでも心がやすらぐから。でも、もう傍になつがいないのは苦しいよ、辛いよ。
「はやく、かえってきてよおっ……………!」
ぽろぽろと涙が流れ落ちる。知ってるよ、なつが死んだことくらい。だから本当はわたしも死にたい。そのために此処に来たんだから。前は叶さんに止められちゃったけど、やっぱり死んだ方がまし。
さよなら、だよ。
ボチャンッ!
冷たい水の中に飛び込んだ。できるだけ、深いところに行かなきゃ。待っててね、なつ。もうすぐ逝くから……。そのとき、後ろから誰かに抱きしめられた気がした。
「死なないで!」
* つづく *
28
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/07(土) 17:44:42 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「きゃ………!」
抱き締めてくる相手は遊だった。遊は焦りつつもわたしを砂浜へ投げるように突き飛ばした。二つに分かれた髪がふわりと宙に舞う。わたしの格好は半袖なのに、遊は分厚いパーカーを着ていた。何で、今は夏なのに……。
「ばか……そんな格好じゃ暑いでしょ? もう夏なんだから、いくら寒がりの遊でもパーカーくらい脱ぎな。」
生きた感じのしない笑みに遊はビクビクしてる。それに、わたしの頭が可笑しいとでも言うように額に遊の大きな手を当てた。その後大きな声で叫ぶ。
「ばかはゆりの方だよ! 今はまだ冬! それに、今日が一番冬で寒い日だよ?! 熱もあるし、家に帰ろうよ!」
「い、や………わたし、なつをまたせてる、の……っはやく、いかなきゃ…………!」
遊、今は夏なのに。わたしは熱なんてないよ。ただ暑くてこうなってるだけだもん。だから心配しないで……………ね。
* * *
暖かい……此処は一体何処なの? 天国かな………あれ、誰かがわたしのことを呼んでる……? なつの声だ……行かなきゃ!
わたしはぼーっとする意識の中必死に光の方へと歩いた。すると、不思議と段々意識が戻っていくのだ。
「………ん……な、つ?」
夢から目覚めると、自然となつの名前を呼んでいた。暖かいのは毛布だったんだな、なんて思っていると、右手は遊がぎゅっと握り締めていた。わたしが目覚めたのに気づき、遊は嬉しそうに笑う。
「ゆりー! よかったあ………。」
「あ、れ……? なつは………?」
わたしは遊なんか求めていない。なつだけを求めている。なつは死んでいるって、頭では理解しているのに心が言うことをきかなくて、死んだなつは何処にいるのかと聞いてみる。きっとまた、不思議がられるんだろうなあ。
「ゆり、そのことなんだけどね。………那月くんは、「ゆりのためにもっと強くなって帰ってくる。」って言って、修行しに行ったよ。楽しみだね! 那月くんが帰ってくるの。」
え………? 今までの、病院でのことは嘘だったの……? 違う、よね。これはただの遊の気遣いだって、分かってる。それは嬉しいけど、なつが死んだのは本当で、寂しくて寂しくてたまらなくなってくる。わたしが涙を零したそのとき、遊が優しく抱き締めてくれた。
「ねえ、やっぱり俺、こんなゆりを見守るのは辛いよ。振られたって分かってても、やっぱり好きなままなんだ。俺さ、頑張って那月くんみたいに強く、かっこよく、優しくなるから。こうやってゆりが寂しいときに抱き締めてあげたいよ。…………ダメ、かな。」
ばか、そんなこと言われちゃ、嬉しくなっちゃうじゃん。……わたしはもし生きていたとしたなら、もう付き合ったりしないって決めてたのに。遊は、わたしの寂しいタイミングもよく知ってて、すぐ慰めてくれる。だから、もうなつのことは忘れよう。さようなら、なつ。
「付き合って………わたしと付き合って、ください……。」
「………! はい。」
ねえ、なつ。わたし、これから遊と幸せな人生を歩んでいくよ。そして、幸せにおばあちゃんになって、なつに会いに行くからね。だから、何十年もの長い間、わたし達を見守っててね。だいすきだよ………!
* * *
「「おめでとー!」」
学校の友達と、リリーちゃん達を呼んでわたしと遊の付き合って一カ月のパーティー。友達に報告するのに一カ月も掛かったのは、わたしも遊も恥ずかしがって言わなかったからなんだけど………。だけど、
「ありがとう! わたし、今すごく幸せだよっ!」
天国にいるなつにこの声が届きますように。って気持ちを込めて、大きな声で言った。恥ずかしさと嬉しさで頬が赤くなる。
みんな、ありがとう。
* おわり *
最後までぐだぐだですみません;
でもこれでおわるのは正直寂しいので、番外編を書いていこうかなーと思います。
そちらも読んで頂けると嬉しいです*
29
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/08(日) 19:45:28 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
番外編を書くのはちょっぴり遅れるかも。
三日に一回程度でちょこまか書いていくのでよろしくね☆((黙
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