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中・長編SS投稿スレ その2

1名無しさん:2011/02/24(木) 02:44:38
中編、長編のSSを書くスレです。
オリジナル、二次創作どちらでもどうぞ。

前スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9191/1296553892/

824earth:2011/09/23(金) 09:00:08
 ガトランティス帝国軍がシリウスから撤退する準備を開始した頃、α任務部隊は補給と整備に追われていた。
 尤も指揮官である古代守は、これ以上無茶をするつもりはなかった。

「敵の3分の1は削ったんだ。十分だろう。あとは地味な嫌がらせで十分だ」

 彼らは『無理』をすることなく哨戒艦、輸送船を通り魔的に撃破、撃沈していった。
 そしてその行為はガトランティス帝国軍の撤退を遅延させる効果があった。
 バルゼーは甲羅の中に引篭もるかのように防御を固めれば、多少時間が掛かっても何とかなると判断したのだがその判断は
些か、いやかなり甘かった。
 ガトランティス帝国軍が撤退を本格的に撤退を開始する直前、プロキオンから駆けつけた第51任務部隊がシリウスに着いたのだ。
(さらに土方率いる本隊もプロキオンを完全に片付け、シリウスに向かっていた)
 
「敵が撤退を?」
「はい。α任務部隊の報告によれば敵はすでに総兵力の3分の1を失っているとのことです。これ以上の損害には耐えられないと
 判断したと思われます」

 第51任務部隊司令官兼旗艦レキシントン艦長はヤマトとムサシの暴れっぷりを聞いて驚愕するが、すぐに頭を切り替える。

「α任務部隊は?」
「嫌がらせ程度の追撃をすることを提案しています」
「……そうか。ならばこの際、我々も参加させてもらおう。嫌がらせではなく本格的な追撃に」

 α任務部隊の支援……それを名目に第51任務部隊は参戦する。
 かくしてバルゼーの受難が始まった。

825earth:2011/09/23(金) 09:01:03
 撤退しようとするバルゼー艦隊に、α任務部隊と第51任務部隊の双方から発進したコスモタイガーが襲い掛かる。
 第51任務部隊の攻撃隊は総数も多いが、雷撃機仕様のコスモタイガーも多数含まれていた。
 このため、対艦攻撃能力は非常に高かった。加えて対艦ミサイルも波動エネルギーを使った新型ミサイルだった。
そんな凶悪なミサイルを叩き付けられたガトランティス帝国軍艦隊は次々に沈んでいく。

「密集隊形をとれ! 対空砲火を密にするんだ!!」

 バルゼーは懸命に艦隊を纏めて撤退しようとするが、執拗な攻撃によって思うようにいかない。
 
「ここを耐え凌げばアンドロメダ星雲へ帰還できる! 踏ん張り時だ!!」

 だがそう言った直後、旗艦メダルーザにも3発のミサイルが直撃する。
 
「左舷に被弾!」
「火炎直撃砲損傷!!」
「ぐぅ……うろたえるな!! 体勢を立て直せ!!」
 
 5度の空襲に耐え切ったバルゼー艦隊は、被害が大きい艦艇を遺棄して再び撤退を開始しようとする。
 だがその彼らの前面に信じられない光景が広がる。

「12時の方向に、地球艦隊が!?」
「何?!」

 そうプロキオンから駆けつけた地球防衛艦隊が先回りして、彼らの針路を塞ぐように陣取っていたのだ。
 後方にはヤマトとムサシ、そして第51任務部隊、前面には地球防衛艦隊の戦艦部隊。袋のネズミだった。
 
「ええい、こうなれば突撃だ! いくら波動砲が強力でも分散していれば何とかなる!」

 ヤマトの波動砲を知るが故の判断だった。彼は不幸なことに拡散波動砲に関する知識がなかった。

「敵、突撃してきます」
「勇敢だ。だが……無謀でもある。拡散波動砲発射!!」

 土方の命令を受け、アンドロメダを含む24隻の戦艦から放たれた拡散波動砲によってガトランティス帝国軍艦隊は全滅。
 こうして後にガトランティス戦役と呼ばれる戦いは終結した。

826earth:2011/09/23(金) 09:06:00
あとがき
ここまで一方的に負ける白色彗星帝国があっただろうか……。
でも防衛艦隊は壊滅を免れたので、デザリウム戦役でも無様な真似はさらさずに
済む可能性が高くなりました。
まぁボラーがどう出るか……それでは。

827earth:2011/09/23(金) 14:33:54
第27話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第27話

 シリウスとプロキオンに展開していたガトランティス帝国軍を、地球防衛軍が撃滅したとの情報は地球だけではなく
ボラー連邦にも届けられた。
 一般大衆が喜ぶ中、参謀長など政治に関わる、又は精通している人間達は今後のボラーの動きに神経を尖らせた。
 防衛軍司令部の執務室で報告書を読んでいた参謀長はため息を漏らすと呟くように言った。

「ボラー連邦がどう動くかが問題だ。万が一に備えて改アンドロメダ級。いや『タケミカヅチ』の建造を急ごう」

 原作では『しゅんらん』という名になるはずだったこの艦は、世界各地の神話上の軍神から名前を取る事になった。
 そして喧々囂々の末、日本で建造されるこの超弩級戦艦の1番艦は『タケミカヅチ』と名づけられたのだ。

「タケミカヅチ、続いて2番艦の建造も準備中だ。各州もヤマトを参考にした新型戦艦の建造を発表している。
 空母部隊の実力が示されたことで、機動部隊の整備も急ピッチで進む。本格的な正規空母の建造も認められるはずだ。
 あと1年で防衛艦隊は、いや地球連邦の戦力は飛躍的に強化される。しかし問題は……」
「ボラーが指をくわえて待つか、そして我が連邦の政治家達と防衛軍高官ですね」

 部下の言葉に参謀長は頷く。

「そうだ。防衛軍は勝ちすぎた。おかげで自信をもってボラーと交渉することを主張する馬鹿が増えている。
 まぁガミラスに逆転勝利。ガトランティスには完全勝利(主力艦損失0)。これでは過信してもおかしくない」
「そして強硬派は勝利に献策した参謀長を担ごうと目論み、穏健派は防衛軍の組織を改変し統制を強化。
 さらに政府とも仲が良い参謀長を要職に据えて防衛軍の抑えに使おうと目論んでいる」
「……欝になることを言わないでくれ。ただでさえ、華やかな出番がさらに遠ざかる可能性が高いのに」

 参謀長の言葉に部下は言葉に出さず突っ込んだ。

(ひょっとしてそれはギャグで言っているんですか?)

828earth:2011/09/23(金) 14:34:25
 一方、ボラー連邦ではべムラーゼ首相の怒りが爆発していた。
 
「これはどういうことだね?」

 べムラーゼの視線を受けた軍高官たちは震え上がった。ちなみに、責任者はすでに問答無用で処刑済みだ。
 
「我々政府は、一辺境国家の引き立て役にするために軍に予算を与えているわけではないのだ。判っているのかね?」
「も、申し訳ございません」
「言い訳や侘びはいい。何故、こうなったのだ?」

 べムラーゼの問いに対して、軍高官は慌てて答える。

「は、はい。ボラー連邦艦隊が敗北したのは予期せぬ敵の新兵器のためです。
 これに対して地球は我が軍とガトランティスの戦いから十分な情報を収集して打って出ました。
 加えて我が軍との戦いでガトランティス側も消耗していたはずです。この差かと」
「艦隊決戦では『運悪く』旗艦が早期に撃沈され指揮系統が混乱しました。これが無ければうまく混戦に持ち込めました」
「空母戦では互角以上に戦っています。我々が弱いわけではありません」

 だがべムラーゼの機嫌は直らない。

「空母戦闘だが、今回は敵に対して数で優勢な戦力をもってしても、辛勝しか出来なかったようだが?」
「彼らはアンドロメダ星雲で侵略戦争をしてきた歴戦の部隊です。地球防衛軍もガミラスと戦ってきました。
 一方、我が連邦は偉大な首相閣下による指導の下で平和を謳歌してきました。よって全員が『戦争処女』です。
 これは大きな差になります」

 首相を必死に持ち上げるボラー軍高官。しかしべムラーゼは相変わらず冷たい視線を浴びせる。
 
「それにしても地球の戦艦はよほど優秀なようだな。我がボラーのものとは比較にならない位に」
「せ、設計思想の差かと。我がボラーの戦艦は単艦の戦闘能力よりも数を揃えることを優先しているので」

829earth:2011/09/23(金) 14:34:55
 ボラー連邦はその広大な領土を維持するために、膨大な数の宇宙船を必要としていた。
 勿論、宇宙での覇権を支えるために必要となる宇宙戦闘艦の数もそれ相応の数になる。よって量産性を重視され1隻あたりの
性能は抑えられていた。軍はイザとなれば数で質の面の劣勢をカバーするつもりだったのだ。

「ふむ。では我がボラーがその気になれば、彼らに打ち勝てる艦を作れるとでも?」
「勿論です。地球人が作ったものよりはるかに優秀な艦を作ってみせます! 彼らに出来て我々に出来ないことはありません!!」

 実際にはボラーの技術は地球に負けるものではないし、機動要塞を建造できることを考えれば一部では地球を凌駕していた。
 だがこうまで地球人の戦闘能力の高さを見せ付けられ、さらに自軍の負けが続くと誰もそうは思わなくなる。

「地球との技術交流(というか技術の強奪)も必要なのでは?」

 一部の人間からは真剣にそんな声が出ていた。
 べムラーゼも、もしもヤマトに匹敵する艦が作れないのであれば、それも必要になると考えていた。
 しかし即座に実力行使を含む強硬路線に出ることも躊躇われた。

「狂戦士のような地球人類を屈服させるには、ボラー連邦軍を総動員するしかないのではないか?」

 ボラー連邦軍と政府内部ではそんな声さえ囁かれていた。
 彼らは戦争に勝てないとは思っていない。やれば勝てる……しかし、そこまでして勝つだけの意味があるのかという疑問が
出ていたのだ。地球を滅ぼしたものの、ボラーも疲弊した挙句に内乱に陥るという悪夢は誰もが避けたかった。

「もはやボラーの威信を回復するにはアンドロメダ星雲に攻め込み、ガトランティス軍に痛打を浴びせるしかない。
 遠征を始める前までに、必ずボラーの象徴となりえる新型戦艦を、あのヤマトに打ち勝てる艦を建造せよ!」

 同時にボラー連邦は本格的に地球を脅威と見做すようになる。
 彼らにとって地球は取るに足らない新興国ではなく、小さいながらもボラーと張り合うプレイヤーだった。

「地球人の目に見えるように軍事演習を行え。それと未開発の地域の探索と開発も急がせろ。
 反乱分子への締め付けも忘れるな。とくにシャルバート教徒などの宗教狂いの狂信者共は徹底的に取り締まるのだ」

 かくして俄かにボラー連邦の動きが活発化することになる。

830earth:2011/09/23(金) 14:38:37
あとがき
ボラーにも面子というものがあるので……。
というわけでプ○ジェクトXばりにボラー軍は新型戦艦建造に着手です。
(まぁ並行して色々と地球に圧力を加えますが……)
尤も彼らが新型を建造する前に新たな嵐がおきそうですけど(邪笑)。

タケミカヅチ……恐らく転生者の一部の方が猛プッシュしたんでしょう(爆)。

832earth:2011/09/23(金) 21:54:19
風雲急(?)を告げる第28話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第28話

 ガトランティス戦役終了後、地球連邦政府は地球防衛軍の再編に乗り出した。
 シリウス、プロキオンの攻略によって支配地域が急速に拡大したため、従来の組織では軍の有機的運用が難しいと
連邦政府が判断したというのが発表された理由だった。

「それで、何故、私が統合参謀本部議長に就任することになるんだ?」

 参謀長、もとい新たに創設された統合参謀本部の議長(以後、議長と呼称)に就任することになった男は執務室で嘆息した。
 ぶつぶつと不平を漏らす議長を秘書(参謀長と同じく防衛軍司令部から異動した元部下の転生者)が宥める。 

「良いじゃないですか、大出世じゃないですか」
「どうせなら、方面軍司令官のほうが良かったよ。私にさらに地味な仕事を増やすつもりか?」
「……いや、まぁ参謀長の能力が買われているってことなのでは?」
「こっちの希望とは真逆だよ。艦隊司令官どころか、一兵も指揮できない立場になるとは」
 
 統合参謀本部は議長、副議長、宇宙軍軍令部長、空間騎兵隊総司令官、地上軍参謀総長の5人から構成される。
 彼らは作戦計画の立案や兵站要求などの仕事に当る。しかし彼らに兵を直接指揮する権限はない。
 統合参謀本部が出した案を大統領(又は防衛会議)が承認すると、それが正式な命令書となり防衛軍司令長官が
その作戦を遂行するという形になった。
 といっても現場を指揮する人間は議長と仲が良かったり、議長のシンパが多いので、いざと言うときには統合参謀本部の威光と
議長個人のコネで多少は融通が利くと思われた。

「各方面軍を統括する統合軍司令官である防衛軍司令長官……あっちのほうが断然良かった」

 防衛軍司令長官は太陽系、シリウス、プロキオンなどの各方面軍(宇宙軍、空間騎兵隊、地上軍の三軍の統合軍)を統括
指揮する統合軍司令長官となった。これは実戦部隊の長でもあることを意味する。ちなみに司令長官には藤堂が横滑りしている。

833earth:2011/09/23(金) 21:55:02
「各方面軍が必要な戦力や物資の分配案。あと今回のシリウスの件から現場と上との意思疎通の徹底。
 これにボラーを仮想敵にした戦略の作成。おまけにデザリウム戦役への備えを並行してやれ、だと? 
 過労死させるつもりか!?」

 ボラー連邦はガトランティス戦役以後、地球連邦と交流を深めつつも、露骨に軍事力を誇示するようになった。
 よって地球連邦政府はボラーと協調する傍らで、対ボラー戦争計画の策定を決定したのだ。

「まぁ議長一人で仕事をされるわけではないですし」
「一人でなくても死ねる仕事量だ! どいつもこいつも面倒ごとばかり持ってきやがって! 
 そのくせ、華々しい出番は皆無とは一体全体、どういう了見だ?!」

 よほど不満が溜まっているのか、果てしなく愚痴は続く。

(そんなに艦隊指揮がとれないのが不満ですか……)

 秘書官は乾いた笑みを浮かべる。 

「まぁまぁ。それに防衛会議に手を回して、非常時には内惑星艦隊、いえ地球本土防衛艦隊だけでも統合参謀本部の直接指揮下に
 入れるというのは?」
「そうだな。あとは実験艦隊、例の試験運用をはじめる予定の無人艦隊。あのラジコン艦隊だけでも当面の指揮下に入れよう。
 有人艦は……旗艦と直属の護衛部隊で10隻あれば良い。手持ちの部隊があれば不測の事態があっても手が打てる」
「旗艦と言うことは、無人艦艇を制御できるように?」
「そうだ。地上施設がやられたら即全滅では役に立たん。それに無人艦は有人艦艇と組み合わせてこそ役に立つものだ。
 タケミカヅチで本格運用する前に小規模でも良いから試験運用するのが適当だ」
「アンドロメダは各艦隊旗艦になるので実験艦隊に回すのは無理かと」
「主力戦艦を改造すれば良い。武装を減らせば何とかなる。問題があるなら波動砲そのものも撤去して良いだろう。
 艦隊旗艦に必要なのは武装ではなく指揮統制能力だ」

 かくして議長(元参謀長)の苦闘が始まる。

834earth:2011/09/23(金) 21:55:37
 面子を大いに傷つけられたボラー連邦は、屈辱の倍返しのためにガトランティス帝国本国のあるアンドロメダ星雲への侵攻を
目論み準備を進めた。
 新型艦の建造や補給基地の整備などやることは幾らでもある。だがそれをやる前にやることも多かった。
 その一つが国内の反乱分子の弾圧だった。

「容赦するな!」

 各地では中央政府から檄を飛ばされた秘密警察や軍が動き、反体制派を弾圧した。
 特にシャルバート教には厳しい弾圧が加えられた。何しろあちこちに勢力が浸透している彼らはボラーにとっても脅威だった。
 続いてボラーからの独立を図る各地のゲリラ組織が弾圧された。

「ガルマン人共が歯向かうなら、見せしめに街ごと消しても構わん!!」

 ガミラスの先祖であったガルマン民族は、ボラーの支配に抵抗を続けていた。故にこの度、ボラー連邦の激しい弾圧に見舞われた。
 一部のボラー人からも「やりすぎでは?」という声が挙がるほどだった。しかし総督府や現場の役人はそんな声を気にしない。

「そんな声を気にして手心を加えたら、ノルマが達成できないだろうが!」
「俺達に死ねと言うのか?!」

 彼らも命が惜しかった。
 こうして原作ではデスラーが来訪するまで持ち堪えたガルマン人だったが、本気になって押し潰しに来たボラー連邦に歯向かうのは
困難を極めた。そしてそれは他の惑星でも同じようなものだった。 

「逃げるしかない」

 一部のゲリラ、特に宇宙船を保有している勢力の中には未開の惑星に脱出する者も出た。
 勿論、ボラー連邦はこれらを追撃したので、各地で戦闘が行われた。だがそれは新たな国家との遭遇と戦いを呼ぶことになる。

「領空を侵犯する愚か者を殲滅せよ!」
「了解しました、父上」 
 
 前ヤマト艦長(完結編では地球艦隊司令官)が見たら、顔を引きつらせることが確実な新たな勢力が盤面に出現する。

835earth:2011/09/23(金) 21:57:43
あとがき
1日に三話連続更新……新記録達成ですね(笑)。
さてあの帝国の登場です。外道さでは定評のあるあの国です。
歴史が変わったゆえに敵の出現順番にも変化が出たということでしょう。

まぁ本格的に地球防衛軍と敵対するのはまだ先になるでしょうけど。

837earth:2011/09/24(土) 17:03:03
第29話です。今回は短めです。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第29話

 銀河で新たな戦乱の機運が高まっている頃、地球連邦は獲得した新たな領地の開発に力を入れていた。
 地球本星では開発に必要な船舶や機材が生産され、植民惑星では地球本星から送られてきた資材を使ってテラフォーミングと
植民都市が建設される。
 
「新たなフロンティアは宇宙にある!」

 マスコミはそう煽りたて、連邦政府、財界も関連する分野に投資を行った。
 宇宙開発はガミラス戦役によって中断を余儀なくされていたのだが、ガミラス、ガトランティス戦役終了に伴い、再開する
ことが出来たのだ。
 加えてボラー連邦という巨大な外圧が生まれたこともあり、人類は地球連邦の下で自分達の生存圏の拡大のために団結する
ことが出来た。これによって宇宙開発は急ピッチで進むことになる。
 
「人口の8割近くを失う戦争が終って、2年もしないうちにでこれだけ復興、いや飛躍できるって……」
「気にしたら負けですよ、議長」
「……そうだな」

 某所でそんな会話が行われていたが、そんなことはお構い無しに人類は勢力圏の拡大に勤しんだ。 
 そして同時に防衛軍の再編も急がれた。各方面軍が創設され、命令指揮系統が変更されていく。
 勿論、必要な事務処理は膨大なものとなり、防衛省や防衛軍の官僚達はその処理に忙殺された。議長もその一人だった。

「再編は何とか進んでいる。
 あと非常時には地球本土防衛艦隊と地上軍、各州軍を統合参謀本部の直接指揮下に入れることが何とか認められた」

 議長はそう呟くと議長室の椅子に背を預けた。
 それを見た秘書は議長の疲れを少しでも癒すためにお茶を用意した。

「これで万が一の時に、参謀本部独自に身動きが取れます」
「まぁ、そんな事態がないようにするのが参謀本部と防衛軍司令部の仕事だろう。本土決戦など悪夢でしかない」

 地球本土決戦となれば経済に途方もない悪影響が出る。
 戦争には勝ったが経済は崩壊しました……では洒落にならない。まぁ種族が絶滅するよりかはマシかもしれないが。
 
「太陽系で戦うとすれば11番惑星などの外惑星で、最悪でも土星圏で敵を食い止めたいが……」

838earth:2011/09/24(土) 17:03:52
「しかし次に相手になるのは、暗黒星団帝国。そこまで上手くいくでしょうか?」
「判っている。だからこそ、暗黒星団帝国を敵に回すのを嫌がる人間が多いんだ」

 転生者たちの中でも、イスカンダル救援に行くかどうかでは賛否両論があった。
 いくら恩人だからといって、二重銀河を支配する怪物国家を悪戯に敵に回すのは危険すぎるという声もあれば
イスカンダル救援後に先手必勝として二重銀河に攻め込んで逆に彼らを殲滅すれば良いと主張する者もいる。
 特にテレサという強力なジョーカー(超能力者)が居ることも好都合だった。

「議長としては?」
「デザリウム戦役は可能な限り避けたいが……放置していて予期せぬタイミングで攻め込まれるのは拙い。それに」
「それに?」
「放置したら、ヤマトが勝手に何かしそうで怖い」
「……た、確かに」

 秘書も乾いた笑みしか浮かべられない。

「で、では?」 
「原作どおり開戦が適当だろう。ただデスラーと和解していないから、イスカンダルの危機を事前に知るのは難しい。
 口実がいるだろう」
「どのような口実を?」
「なぁに。丁度良い口実があるじゃないか。アンドロメダ遠征の練習という口実がな」

 地球連邦としてはボラーの面子に配慮するために、アンドロメダ星雲への反攻作戦に限定的に付き合うことを
考えていた。しかしこれほどまでの長距離遠征。それも艦隊規模での遠征は例がない。

「α任務部隊、そして新たに編成する艦隊でイスカンダルへの表敬訪問を兼ねた練習航海をさせる。
 ついでに旧ガミラス星の調査という名目もつければいい。妨害が無ければ片道3ヶ月程度で済むだろう」
「なるほど。そしてその経験を基にして、二重銀河遠征も?」
「そうだ。無駄にはならない。それに二重銀河に行かなかったとしても、防衛艦隊にとっては良い経験になる」
  
 かくして防衛軍は新たな艦隊の整備に着手することになる。

839earth:2011/09/24(土) 17:05:40
あとがき
閑話的なお話でした。
イスカンダルへ向けて1個艦隊をでっち上げて艦隊が出撃します。
α任務部隊も同行します……また大暴れするかも(爆)。
それでは失礼します。

840earth:2011/09/24(土) 22:04:27
第30話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第30話

 ガトランティス戦役と呼ばれる戦いで、地球防衛軍は遺棄されていたガトランティス帝国軍艦艇を多数鹵獲した。
 鹵獲した艦艇の多くは調査された後に解体され、資源として再利用された。だが利用する価値があると思われた
艦艇については改装された後、防衛艦隊に編入されることになる。
 その中でも特に目立ったのが、4本滑走路を持つ大型空母と高速の中型空母であった。

「シナノ建造の前に本格的空母のノウハウを学習できるのは大きい……」

 ドックの中で改装を受ける元ガトランティス軍の空母を見て、議長は満足げに頷く。 
 空母戦力の重要性は理解されたものの、本格的空母の建造と運用となると問題も多かった。
 ムサシのデータは蓄積されていたが、やはり本格的な正規空母のデータが取れるに越したことはない。
 まぁそれ以外にも問題があったのだが。

「予算の問題もありますからね……宇宙開発で思ったよりも予算が必要でしたし」 

 秘書の突っ込みを聞いて、議長はジト目で睨む。 

「……それを言うな」 

 地球連邦政府は宇宙開発を重視するにつれて、防衛予算の際限のない増額に歯止めを掛けた。
 産業を育成して国と国民を豊かにしたいというのが政治家達の主張だった。
 おまけに急速に支配領域が拡大したせいで、防衛軍は質よりも、とりあえずは量を求められていた。
 このために決戦を志向した高コストのシナノより、とりあえずは急場を凌げる鹵獲空母の整備が重視されたのだ。
正規空母シナノ建造を望んでいた転生者たちは悔しがったが、どうしようもなかった。 

「まぁ長距離航海に適したガトランティス軍空母を運用するというのは悪くない。『今後』のことを考えるとな」

 議長はそう言って肩をすくめる動作をする。

(シナノ、いや信濃は当面は横須賀基地のドックで放置だな。何とかディンギル戦までには手を付けたいが……)

841earth:2011/09/24(土) 22:05:04
 ハードの整備を進める傍らで、政治的意図を考慮しない将校の暴走をどう防止するかで防衛軍上層部は頭をひねった。
 土方の行動は政治的には色々と問題が多いが、命令違反ではないし、戦術的に言えば間違っていないからだ。

「死地に向かった味方を支援するな、とは言えんからな……」

 ただでさえ人的資源が困窮する地球において土方の行動は当然だったし、下手に叱責したら後が面倒になる。 
 今後はボラーと付き合う必要があるので、政治的な思惑を理解して動いてもらう必要もあるのだが、どうやって理解して
動いてもらうかとなると問題が山済みだった。 
 当面は政治が苦手な将兵は地球や太陽系防衛に振り向け、政治が理解できる、又は再教育して短期間で校正する可能性が
ある将兵を新たに獲得した領域、他の勢力と接触する可能性が高い場所に振り向けることになった。
 
「下手に再教育すると、彼らの特性や長所を殺すことになりかねない」
「ガミラス戦役のときの弊害が出ましたな」
「全くだ。あの時は戦場で勝てばよかったからな」

 議長は密談の席で苦い顔で言う。これに他の転生者たち、特に外交部門の人間が噛み付く。

「しかし戦争は政治の延長であることを理解してもらわないと困ります。こっちがどれだけ胃が痛い思いをしたと……」
「だが配慮しすぎて戦闘に大敗したらどうする? まぁ指揮官の苦手分野をサポートするのが幕僚なんだが、現状では
 満足に艦隊司令部に幕僚を置けない。そんなに人がいない。下手なのを配備しても戦場では邪魔になるだけだ」
「「「………」」」

 相変わらず地球防衛軍の懐は苦しかった。

「これ以上、ボラーの機嫌を損なわないように高度な判断ができる提督を、前に出すしかないだろう。
 とりあえず土方提督は本土防衛に専念してもらう。あとは気長に政治について理解してもらう。無理なら再教育した
 若い人間を補佐に付かせる。まぁこちらは少し時間が掛かるだろうが」
「しかし、そんな人材が戦死されたら堪りませんな……」
「勿論、作戦は慎重にする。人を無駄死にさせる余裕は防衛軍にはない」
「それは民間も同じですよ。正直、防衛軍から人を戻して欲しいくらいです。まぁ無理なのは判っていますが」 

 彼らは原作よりもマシな状況にも関わらず、地球連邦が零細国家であることを改めて思い知った。
 
「こんな状況でデザリウム戦役に挑むなんて無謀すぎません?」
「しかし、やるしかないだろう。下手に放置して二正面作戦なんてことになったら目も当てられん。
 それに奴らが今行っている星間戦争を片付けた後、地球に目を向けないとも限らない。
 そしてその時にボラーが地球の味方をするとも限らない」
 
 議長の意見に不満は漏れるが反対意見は出なかった。

842earth:2011/09/24(土) 22:05:57
「こうなったらヤマトクルーが使えるときに、脅威になる連中は叩いておくに限る。勿論、地球防衛も手は抜かない」
「好戦的過ぎるのでは?」 
「いつもオーバーキルするような連中だ。それなら存分に暴れてもらうさ。まぁ今でも十分に無双伝説状態だが」
「確かに」

 ガミラス帝国軍の名だたる将兵達(ドメルやシュルツ等)とその艦隊とガミラス本星、白色彗星、ガトランティス帝国軍前衛艦隊の
3分の1がヤマト(ガトランティス艦隊はムサシと共同だが)によって葬られている。
 第三者からすれば無双といっても過言ではない。

「ではイスカンダルへ?」
「α任務部隊とアンドロメダ級2番艦『ネメシス』、主力戦艦『加賀』、宇宙空母2隻、巡洋艦4隻、パトロール艦4隻、駆逐艦12隻を
 考えている」
「ネメシスをつけると?」 
「収束型波動砲搭載艦はヤマトとムサシで十分だろう。あとは敵艦隊を効率よく掃討できる艦で良い筈だ。
 最悪の場合はガミラスの残党も叩いてもらう必要があるからな。それに、これ以上は出せない……」
「司令官は?」
「山南提督を、と言いたいところだが、ここは彼に出てもらう」

 議長が目を向けた先には原作ではヒペリオン艦隊司令官を務めた男の姿があった。

「は? 何の冗談です?」
「冗談じゃない。派遣が正式決定になったらネメシス艦長兼イスカンダル派遣艦隊司令官に任命するから……頑張ってくれ」
 
 こうしてイスカンダルへの艦隊派遣が進められることになる。
 しかしそんな中、転生者たちにとっては寝耳に水とも言うべき情報が飛び込む。

「ディンギルだと? 間違いないのか?」
 
 議長は統合参謀本部で何度も確認させたが、虚報ではなかった。

(早すぎる。何が起こっている?)

 転生者たちにも全く予期できなかった『ディンギル帝国』とボラー連邦との戦争。
 それはボラーの本当の恐ろしさを地球人にはっきりと示すことになる。

843earth:2011/09/24(土) 22:07:57
あとがき
次回、ディンギルVSボラーの予定です。
ボラー連邦軍名誉挽回のとき……かも(笑)。
狂犬国家VS独裁国家。実に救いようが無い組み合わせです。

844earth:2011/09/25(日) 11:12:57
ボラー軍大活躍(?)な第31話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第31話

 ディンギル帝国を名乗る国家と偶発的な戦闘を切っ掛けに大規模な戦闘に陥ったとの報告は即座に首都の中央政府と
そのトップであるべムラーゼにも届けられた。
 本来なら辺境の小国など気にもしないのだが、ガトランティス帝国に痛い目に合わされ、辺境の新興国がトンでもない
強敵であることを思い知った直後であったので、ボラー連邦政府首脳は事態を軽視しなかった。

「全力をもって叩き潰すのだ! 機動要塞、プロトンミサイル、それに新開発したワープミサイル。あらゆる物で潰せ!!」
「了解しました!」

 べムラーゼはディンギル帝国の殲滅を、そう制圧ではなく殲滅を命じた。
 また情報収集の結果、ディンギルが宗教国家であることが判明すると、べムラーゼはディンギルへの嫌悪を露にする。

「シャルバート教と結びついたら手を焼くだろう。
 狂信者共が神の名の下に戦うのなら、奴らの望むとおりに奴らが崇める神の御許に送ってくれる。女子供も容赦するな。
 生き残ったとしても、新たなテロリストになるだけだ」
「で、では捕虜はどうされます?」
「捕虜もいらん! ディンギルは見せしめのために民間人諸共、根こそぎ殲滅するのだ。何も残すな!!
 それと地球人共にボラー連邦の恐ろしさを見せ付けるのだ!!」
「防衛軍に参戦を要請すると?」
「参戦ではない。武官なり役人を機動要塞に搭乗させるか、それとも2、3隻の小艦隊をボラー艦隊に同行させるのだ!
 そして我がボラーの恐ろしさを直に見せ付けるのだ!!」
「了解しました!」

 べムラーゼの厳命は直ちに前線部隊に伝達された。
 地球防衛軍によって面子を潰されたこともあり、今度活躍しないと大粛清になることを理解している軍人達は本気だった。

「全軍出撃!!」

 小国と言えども、油断は出来ない。
 これが嫌と言うほど理解している男達は、悪戯に戦力を逐次導入することなく、機動要塞を中心とした大機動部隊を集結させ
それをもってディンギルの母星がある恒星系へ侵攻を開始する。

845earth:2011/09/25(日) 11:13:39
 本気になったボラー連邦軍はディンギル帝国軍の実に6倍もの数の艦船でディンギル本星がある恒星系に押し寄せた。

「ワープミサイル発射!」

 敵の監視網を察知し、自力で小ワープすることでそれを突破するというボラー連邦期待の新型ミサイルは期待通りディンギル帝国軍の
監視網を突破した。そして5個の弾頭ミサイルに分離すると次々にディンギル帝国軍の前線基地に降り注いだ。
 
「一体どこから現れたというのだ?!」
「わ、判りません!」
「とりあえず、本星に救援要請を!」

 だが彼らは本星からの援軍を見ることは無かった。
 ボラー軍はディンギル帝国軍の前線基地がある惑星をワープミサイルによる奇襲で大打撃を与えた後、プロトンミサイルで星ごと
消し飛ばした。周辺に居たディンギル艦隊は爆発に巻き込まれて壊滅した。
 だがその光景を見ても、ボラー軍の指揮官達は気を抜かない。

「偶発戦闘で生き残った艦からの報告では、連中は極めて強力な対艦ミサイルを保有しているらしい。
 戦艦クラスでさえ一撃で撃沈する破壊力を持っている。油断は禁物だ」

 二度も痛い目に合っているボラー軍は、相手を侮ることはなかった。
 
「艦載機を発進させ、周囲を厳重に警戒せよ! 敵の大型機(水雷艇のこと)の接近を許すな!!」

 ボラー軍は持ち込んだ大量の空母や戦闘空母から常に警戒機を発進させ、ディンギル帝国軍の決戦兵器であるハイパー放射ミサイルを
防ごうとする。いくらハイパー放射ミサイルが強力でも制空権を奪われ、奇襲さえできない状況では発射母機である水雷艇ごと撃破され
何の役にも立たない。またハイパー放射ミサイルでは艦船は撃破できても機動要塞は潰せなかった。
 ディンギル軍が誇る移動要塞母艦はボラー自慢のブラックホール砲によって、一撃で周辺の艦隊ごと破壊されてしまう。
 
「力業だな」

 防衛軍から派遣されてきたパトロール艦隊とそのパトロール艦からの映像を見ていた防衛軍首脳は慄然とした。  
 勿論、議長もその一人だ。しかし彼は冷静に次の手も考えていた。

(さすがソ連がモデルの国だけはある。ミサイルと人海戦術で押し寄せられたら、ディンギルも堪らないな。
 いやむしろ彼らを他山の石として新兵器開発と軍備強化を進めるのが良いだろう。
 ハイペロン爆弾対策も兼ねたプロトンミサイルの防御策を構築すれば、一石二鳥だし。
 まぁディンギル帝国には、せいぜい頑張ってもらって防衛軍強化の踏み台になってもらおう)

846earth:2011/09/25(日) 11:14:30
 ボラー連邦軍は真綿で締めていくように、ディンギル帝国軍を追い詰めた。
 当然、降伏してきた者もいたが、ボラーは情報を取った後はさっさと裁判にかけて処刑していった。

「ボラーの敵に容赦は不要だ!」
 
 勿論、ディンギルも似たようなものだった。捕虜となったボラー軍人は国民の前で公開処刑されていく。
 ボラーが神を信じぬ者たちであるということがディンギル人の反感を煽り立てていたので殆ど文句は無かった。

「これは聖戦である!」

 大神官大総統であるルガールはそう言って国民を鼓舞した。しかし戦況は変わらず、彼らはジリジリと追い詰められた。
 こうしてディンギル帝国は最後の賭けとして、残存する艦隊を掻き集めて、母星周辺宙域で決戦に出た。
 ルガールは宇宙艦隊の指揮権を自身の長男であるルガール・ド・ザールに任せた。
 
「神を信じぬ愚か者共を生かして帰してはならぬ!」

 ルガールは自身の長男にそう言うと、司令部に戻っていった。
 その姿を見送った後、ルガール・ド・ザールは巨大戦艦ガルンボルストに乗って出撃した。
 ガルンボルストを含むドウズ級戦艦、カリグラ級巡洋戦艦を中心とした大艦隊はボラー艦隊を迎え撃つべく出撃した。
 ディンギルの総力を挙げた艦隊であり、その規模は地球防衛艦隊に勝るとも劣らない規模であったが、それでもボラー艦隊の
規模に比べるとお寒い限りだった。
 しかしディンギル帝国軍に後退は許されなかった。何しろ後方には母星があり、ここで敗れることは自分達の滅亡を意味する。
  
「ここで食い止めるのだ!」
 
 ルガール・ド・ザールはそう勢い込んだが、ボラーは実に情け容赦が無かった。
 ハイパー放射ミサイルによる損害をものともせずに、物量にものを言わせた波状攻撃を実施。
 これによって一時的に本星の守りが薄くなったのを見ると、プロトンミサイルの飽和攻撃を実施したのだ。  

「ディンギル人どもよ、ボラー連邦からのプレゼントだ。有難く受け取るが良い。
 そして地球人よ、これがボラーの力だ。思い知れ」

 首相官邸で前線の映像を見ていたべムラーゼはニヤリと笑う。
 そして彼が笑った直後……ディンギル本星は実に5発ものプロトンミサイルの直撃を受けて、宇宙の塵となった。

847earth:2011/09/25(日) 11:16:03
あとがき
ディンギル帝国が……
まぁこれが超大国ボラーの本気と言ったところでしょう。
こんなのと遣り合ったら普通に死ねます。
でもこれで完結編のフラグは折れたとも言えます(爆)。

848earth:2011/09/25(日) 18:24:28
第32話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第32話

 地球と似た規模の国家である『ディンギル帝国』がボラー連邦の猛攻によって、僅か1週間で消滅したことは地球に衝撃を与えた。
 ブラックホール砲、プロトンミサイル、ワープミサイルなどの戦略兵器群はどれも地球には無いものであった。

「あんな兵器で飽和攻撃されたら防衛艦隊は全滅するぞ」

 防衛軍の某高官はそう呟いて頭を抱えた。
 超大国『ボラー連邦』の真の恐ろしさを思い知った人間達は、ボラーがガミラス以上にトンでもない相手ではないのかとさえ考えた。

「ガミラスではなく、ボラーが攻めてきていたら人類は終っていたかもしれない」
「敵には回せませんな」
「ガトランティスに完敗したのに、すぐにあれだけの艦隊を揃えられるなんて……化物か?」

 連邦政府が震え上がる中、議長を筆頭にした転生者たちは元気に動き回っていた。
 議長は連邦政府大統領府で熱心に説いて回った。

「当面はボラー連邦には低姿勢で臨むべきです。その間に対抗手段を探りましょう」
「そのようなことが可能なのかね?」
「不可能ではありません。人類の総力を結集すれば絶対に克服できます! しかし今だけは屈辱に耐え宥和に徹するべきです。
 幸い、先方はこちらとの友好関係を崩すつもりは無いと言っています。最大限、それを利用するべきです」
「………」 
「ボラー連邦はアンドロメダ星雲への侵攻を目論んでいます。これに協力することを表明すれば向こうの歓心は買えるでしょう」 
「艦隊規模の遠征になるぞ。犠牲も少なくない」
「1、2個艦隊の犠牲で地球が守れるなら十分実行する意味があります。ただこの手の遠征は経験がありません」

 そう言って議長はイスカンダルへの艦隊派遣を提案する。

「この手の大遠征はヤマトしか経験がありません。この航海は防衛軍全体にとっても有益なものになるでしょう。
 さらにガミラス星に残された技術を接収できるかも知れません」

 反対意見は出なかった。
 かくして後日、防衛会議の席でイスカンダルへの表敬訪問とガミラス星調査を兼ねた艦隊の派遣が決定されることになる。

849earth:2011/09/25(日) 18:24:59
「藤堂長官、前線部隊には迷惑を掛けますが、宜しくお願いします」

 防衛会議の後、議長は実戦部隊を統括する藤堂に頭を下げる。
 原作よりもマシな状況とは言え、アンドロメダ級やヤマト級を含む戦艦3隻、機動戦艦1隻、宇宙空母2隻を中心とした30隻の
艦隊を遥々イスカンダルに送るのだ。それだけ前線の負担は大きくなる。

「頭を下げなくても良いよ、議長。私も今回の派遣の必要性は理解している」
「はい」
「しかしボラーに頭を下げ続ければ、我々は良いように使い潰されるぞ。そうなれば、いずれは完全な従属の道しかなくなる」
「勿論承知しています。ですがジリ貧を避けるために破滅を選択するのは愚かなことです。
 幸い、ボラーは敵対すればこちらを破滅させようとしますが、味方である姿勢をしめせば話を聞いてくれます。
 味方であることをアピールし、その間に彼らに対抗できる力を身につけることが必要です」
「『今日の屈辱に耐える』か。沖田君も同じ事を言っていたな」
「それこそが今の地球に必要なことなのでしょう。何を譲歩し、何が譲れないかを政府と協議する必要があるでしょう」
「ふむ」
「防衛軍は地球人類を守る盾であり矛でもあります。しかし武器である以上、消耗しますし、使い方によっては自らを傷つけます。
 持ち主が正しく武器を使用できるようにサポートするのも我々の仕事です」
「そうだな。全く、ガミラス戦役の時とは大違いだ」
「時代の変化なのでしょう。私のようにガミラス戦役からの生え抜きは、前線での仕事のほうが向いていると思うのですが」

 この言葉に藤堂は笑う。

「君が議長を務まらないのなら、今の防衛軍で統合参謀本部を統括できる人間はいない。自信を持ちたまえ」
(私としては、こんな仕事は嫌なんですけどね。地味だし)

 心のうちでため息をつく議長。
 だが彼の心情など、藤堂が知る由も無い。

「実戦部隊の皆も議長を信用している。これからも(後方で)頑張ってくれ」

 まだダメなのか……と、SAN値が減る議長だった。

850earth:2011/09/25(日) 18:25:49
 SAN値が減った議長であったが、実験艦隊が統合参謀本部の指揮下に入ることが正式に決まると少しは持ち直した。
 まぁ実際には防衛省とも話をする必要があるのだが、それでも自分が乗り込める艦があるというのは議長のテンションを
上げさせた。

「よし。みなぎってきた!」

 議長はとりあえず実験艦隊『第01任務部隊』を立ち上げた。
 旗艦として白羽の矢が立ったのは、建造中の主力戦艦『アイル・オブ・スカイ』だった。
 
「旗艦としての機能が低いから改造する必要があるだろう」
「武装を減らして無人艦の指揮機能を強化すると?」

 だがこの秘書の言葉に、議長は首を横に振る。

「いやここは本格的に改造しておきたい。実験艦ということもある。この際、色々な新装備も載せれるようにしたい」
「……誰に改造を任せるおつもりで?」
「勿論、地球が誇るマッドサイエンティスト、もとい技術者の真田さんか大山さんだろう」
(嫌な予感しかしませんが……)

 秘書は冷や汗を流す。

「二重銀河に行く前にヤマトは改装するんだし、そのテストになる艦があってもおかしくないだろう?
 まぁ真田さんは忙しいからダメかもしれないが……」
「はぁ……(ダメだ、この議長)」

 こうして不幸(?)なことに『アイル・オブ・スカイ』は大改装されることになる。

851earth:2011/09/25(日) 18:34:34
あとがき
魔改造は男の浪漫です。
議長が乗る戦艦についてはまだ決めていません。さてどんな艦にするか……。
次回以降、ディンギル戦役に突入する予定です。
尤もリアルの事情と、展開にある程度区切りが付いたこと、もうそろそろ憂鬱本編を
書く予定なので更新速度が落ちるかも知れませんのでご了承ください。

852earth:2011/09/25(日) 19:42:11
すいません。ディンギルじゃなくてデザリウム戦役でした(汗)。

853earth:2011/09/27(火) 21:59:07
何か出来てしまったので掲載します。33話です。
あとデザリウム戦役に本格的に突入できませんでした(汗)。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第33話

 ディンギル帝国の終焉を見せ付けられた地球連邦政府は、ボラー連邦の圧倒的力に震え上がった。
 このため議長が主張したように、表向きだけでもボラー連邦に服従しつつ密かに力を蓄えることを決意した。  
 
「ボラーに対する抑止力の整備。これが重要です!」

 こうした声に押されて、ガトランティス帝国軍から得た潜空艦と破滅ミサイルの技術を組み合わせた艦の建造が
計画された。

「現代(?)に蘇った戦略原潜といったところだな」

 計画案を見た議長がそう呟いたように、この艦は防衛軍が初めて建造する報復攻撃用の艦だった。
 ステルス化した艦体で敵の警戒網を突破し、艦首に格納された破滅ミサイル(のデットコピー)で相手の主要惑星を
破壊するというのが、この艦のコンセプトだ。

「MAD。相互確証破壊をこの世界で目論むとは……」

 密談の席で転生者の一人はそう嘆息する。

「実に夢も希望もないですね」
「まぁボラーのワープミサイルもMIRVっぽいですし、ある意味、現実(?)に追いついたということでしょう」
「しかし本当に抑止力になるんですか? ボラーの首都は地球から見て銀河の反対側ですよ?」

 この疑問に議長は渋い顔で答える。

「ないよりはマシだろう。生存性もある。
 あとこの艦は別に使えなくても良い。地球を滅ぼすと大打撃を受けると相手に思わせれば、作る意味がある」
「ボラーをいたずらに刺激するだけでは? それに予算は?」
「完成しても即座に公開はしない。時期を見て行う。
 予算については現在の主力戦艦の建造を打ち切りにしてひねり出す。主力戦艦建造計画はカモフラージュとして残すが」

 この言葉に全員がショックを受ける。

854earth:2011/09/27(火) 21:59:54
「い、良いのですか? それでは防衛軍の増強が……」
「ガトランティス戦役での消耗が少なかったから問題ない。
 それに次期主力戦艦の建造が計画中だ。この艦の整備が終れば、すぐに新型戦艦の建造に取り掛かる」
「新型戦艦? タケミカヅチではなく?」

 全員の脳裏に、ハイパー放射ミサイルで呆気なく撃沈されていった防衛艦隊の姿が映し出される。 

「まさかと思いますが、あの爆雷、いえ拡大波動砲を装備したダンボール戦艦ですか?」
「いや、あのやられっぷりからすると、あの装甲を『ダンボール』と言うのは『ダンボール』に失礼だろう。
 むしろ……薄紙?」
「竹と紙で出来た戦艦と言われても、納得するやられっぷりだったからな……」

 曲がりなりにも主力戦艦なのに、ミサイル数発で木っ端微塵に吹き飛ばされていく様はあまりにも印象的だった。
 
「その拡大波動砲搭載艦だ。一応、『ナガト』級という名前だ」
「ナガトですか? むしろ新型の対艦兵器に爆沈される様からすると『ローマ』のほうが……」
「不吉だからそれは無しだ。それに今回のナガト級の建造にはアンドロメダ級の運用データや各国が建造している
 改ヤマト級のデータも使われる」

 各州で建造されている戦艦はヤマトやムサシのデータを参考にして建造されている。
 スペックではヤマトを凌駕していると言って良い。これで乗員のスキルを上げれば強力な戦力になる。
 このことを理解した転生者たちは少しは明るい顔になった。

「それなら、何とかなるかも知れませんね」
「防衛艦隊主力は健在だし、各州の戦艦が加われば大幅に戦力UPだ」
「それにヤマトの系譜とあれば、ボラーも無視できないでしょうし」

855earth:2011/09/27(火) 22:00:36
 仲間の表情が明るくなったのを見て、議長は話を続けた。

「あと主力戦艦の改装も進める。今の砲戦能力では不足だからな。それに速度も上げておきたい」
「出来るのですか?」
「何とかなるだろう。しかしデザリウム戦役までに全てを改装するのは無理だろう」
「……」
「だが改装の完成度は高くなるはずだ。実験艦も作るからな」
「……わざわざ参謀本部の指揮下において、データ収拾の名目で自分が乗れる戦艦を魔改造と?」

 この突っ込みに議長は視線をそらす。
 
「何を言っているんだ。これは必要なことだぞ。それに、これがうまくいけばヤマトの能力は原作以上に強化できる」
「……まぁ良いですが」
「そういえば、この艦は無人艦隊の旗艦としての能力もあると聞きましたが、大丈夫なんですか?」

 転生者の中には無人艦隊は『直前まで敵の接近に気付かず奇襲され、良いところ無く全滅した〈ヤマト世界最弱の部隊〉』
という印象があった。 

「この世界では太陽系内外には厳重な警戒網を敷いている。そう簡単に奇襲はされない。重核子爆弾を阻止できれば尚更だ。
 それに無人艦隊のコントロール機構は、十分な試験運用の後にタケミカヅチやアンドロメダ級4番艦に設置される。
 運用実績も十分だし、改アンドロメダ級のタケミカヅチの防御力は高いから、すぐに撃沈されて制御不能にはならない」

 この言葉に誰もが納得して引き下がった。
 こうして地球防衛軍はボラーへの備えを考慮しつつ、デザリウム戦役に向けて軍備の整備を進めた。

856earth:2011/09/27(火) 22:04:08
あとがき
次回以降こそ、デザリウム戦役に突入できたらいいなと思っています。
拡大波動砲のあの戦艦もいずれは登場する予定です。
憂鬱本編は完成率50%。改行も改善中です。
何とか10月には掲載したいと思っています。それでは。

857earth:2011/09/28(水) 22:43:56
第34話です。いよいよデザリウム戦役です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第34話

 地球防衛軍イスカンダル派遣艦隊こと第8艦隊(臨時編成)は、ヤマトのテーマソングをバックにして地球から旅立った。
 港で第8艦隊出航を見送っていた議長に、不思議そうな顔で秘書が尋ねる。 

「それにしても誰が作詞作曲したことになっているんです?」
「旧日本国財務官僚にして連邦政府某高官だ。あと他にも何人かが関わっていたらしい」
「暇人ですか。というかガミラス戦役のころから何をやっているんですか?」
「知るか……全く、そんな暇があるんだったらこっちの頼みを聞いて、もっと融通を利かせて欲しいものだ。
 こっちは相変わらずモブキャラ一直線なのに、真面目に仕事をしているというのに」
(真面目ですか? アイルオブスカイの例を見ると……)

 アイルオブスカイは魔改造されつつあった。
 もはやこの艦は防衛軍の第一線で活躍している主力戦艦と同型艦とは思えないものとなっている。

「まぁ良い。彼らが戻ってくるころにはアイルオブスカイもドックから出ている。ふふふ、宇宙で直接彼らを出迎えてやるさ」
「仕事を片付けてからにしてください。ちなみに、この式典のあとは、ボラー連邦軍との会談なので」
「……逃げちゃダメかね?」

 冗談半分の言葉だったが、秘書はきっぱり却下した。

「ダメです。ヤマト建造の功労者にして、地球でも有数の軍略家である『議長閣下』との会談を先方も楽しみにしておられます」
「……胃薬を用意しておいてくれ」
「頭痛薬も準備しておきます」
「頼む」

858earth:2011/09/28(水) 22:44:34

 議長が『あー!』と叫びたくなるような激務に晒されている頃、第8艦隊司令官になった転生者(ヒペリオン艦隊司令官)は
ネメシスの艦橋で来るべき暗黒星団帝国、いやデザリウムとの戦いを考えていた。

(戦力的には十分……だろう。ヤマト、ムサシ、ネメシス、加賀の4隻。それに宇宙空母が2隻も居る。
 護衛の巡洋艦、駆逐艦を入れればデザリウム艦隊を封殺できる。巨大戦艦がいくら逃げても数で押し潰せるだろう)

 卑怯も糞もなかった。
 数の優位で一気に押し潰すことを第8艦隊司令官兼ネメシス艦長は考えていた。

(α任務部隊以外は脇役、いやサポートに徹するのが良いだろう。下手に目立つと死亡フラグだからな)

 他力本願極まれりだが司令官は本気だった。 
 そんなことを考えて黙りこんでいる司令官に疑問を感じたのか、艦橋のスタッフが尋ねる。

「司令?」
「ああ、すまない。各艦に通信を繋げてくれ」
「了解」

 通信兵が通信回線をつなげる。それを確認すると司令官は口を開いた。

「イスカンダルへの表敬訪問に加えて、これは艦隊規模の遠洋航海の経験をつむ航海でもある。
 ヤマトという先駆者が道を開いたとは言っても、油断はできない。順次、訓練は行うので各艦、用意は怠るな」
「「「了解しました」」」 

 ガトランティス戦役で被害らしい被害が出ていないため防衛軍の人材は原作より恵まれていた。
 おかげで司令官は加藤兄弟や山本、坂本といった豪華すぎるメンバーによる模擬空戦を眼にすることになる。

(これならいける。イスカンダルに付く頃には練度も相当に上がっているだろう)

859earth:2011/09/28(水) 22:45:54

 だが世の中、そうは上手くいかない。
 第8艦隊がイスカンダルに向かう中、マゼラン星雲ではすでに戦乱の機運が高まっていた。
 崩壊する都市帝国から運よく脱出したデスラーは、ガミラス帝国の残存部隊を糾合して一度ガミラス本星に戻っていた。
それは転生者たちが知る歴史よりも早い時期であった。
 戦闘空母の艦橋で、デスラーは死の大地と化したかつての母星を見ながら、副官のタランに語った。
 
「ヤマトへの復讐を遂げるには、ガミラスを再興し力を蓄える必要がある」
「はい。地球人はかなり力を蓄えています。
 ヤマトの準同型艦、それにヤマトを遥かに超える大型戦艦も配備されていると」
「加えてボラーという後ろ盾も得ている。奴らを倒すのは簡単ではない」

 デスラーは、ボラー連邦という一大星間国家と手を結んだ地球とヤマトを現状で打ち破るのは難しいと判断した。
 故にマゼラン星雲周辺で生き残っていた旧ガミラス帝国の残党や本星から脱出できた人々を結集させ、新たな新天地の
獲得を目論んでいた。

「新天地で国家を樹立し力を蓄えた後、必ず奴らに鉄槌を下す。これは誓いだ」

 だがそんなデスラーの前に、ガミラシウムとイスカンダリウムを得るために送り込まれてきた暗黒星団帝国軍が現れる。
 派手に星間戦争をしていた彼らにとって、無主の地と化していたマゼラン星雲は絶好の狩場だった。
 勿論、かつての帝国の版図を食荒らそうとする暗黒星団帝国を名乗るハイエナ共を、デスラーが容認できるはずがなかった。
 加えてガミラス本星にまでその食指を伸ばそうとする姿勢は、デスラーだけでなく、他のガミラス軍将兵の怒りを買う。

「叩き潰せ!」

 デスラーの号令の下、旧ガミラス帝国軍と暗黒星団帝国軍の間で戦闘が開始されることになる。

860earth:2011/09/28(水) 22:47:54
あとがき
白色彗星を早めに叩いた影響が出ました。
相変わらず地球防衛軍は蚊帳の外で激戦です(爆)。
ヤマト世界の星間国家は、大半が好戦度MAXですから……。

861earth:2011/09/29(木) 20:02:38
第35話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第35話


 ボラー連邦大使や駐在武官との会談を終えた議長は、執務室に戻るとソファーに突っ伏した。

「何なんだ、あの評価は?」

 議長の名声(笑)は、地球だけに留まらずボラー連邦にさえ届いていた。
 ボラー連邦からすれば、議長はガミラス戦役の勝利と地球連邦という新興国の躍進を支えてきた功労者の一人であり
その知略でもって現在も防衛軍を支えている非常に優秀な参謀畑の軍人であった。
 
「正当な(笑)評価なのでは?」

 秘書の言葉に、議長はムッとした顔になるが、すぐに諦めたような顔になる。

「……私の輝かしい出番が。安○先生、艦隊指揮を執りたいです」
「とっくの昔に試合は終っています。夢見てないで仕事してください。ただでさえやることは多いんですから」
「防衛軍の人不足は深刻だな……」
「優秀な官僚や将校は畑からは取れません。議長が頑張ってもらわないと。それと後身の教育も」
「やることだらけだな。重要だが地味なものばかりとは」
「役職柄仕方ないかと。おまけに、我々はもともと……モブですし」

 顔を背けながら言う秘書。どうやら彼も思うところはあるようだ。

「それを言うなよ……悲しくなる」
 
 こうして議長の仕事は再開される。 

「くそ、絶対、アイルオブスカイで宇宙に出てやる〜! 幸い、建造は順調だし、自動戦艦の建造も進んでいる。
 実験艦隊が地球周辺に遊弋する日は遠くない!!」
 
 自動戦艦『クレイモア』。
 アンドロメダと同等の火力(拡散波動砲2門、51センチショックカノン12門)を持つ10万トン級自動艦は
防衛軍(あと議長)の期待の星であった。何しろ無人ゆえに無茶な運用が出来る。また人手不足の解消にもなる。 

「議長、叫ぶのも良いですが、手を止めないでください」
「……ああ」

862earth:2011/09/29(木) 20:03:16
 仇敵である地球防衛軍の統合参謀本部でそんな脱力満点の会話がされていることなど、露も知らないデスラーは
暗黒星団帝国軍と壮絶な殴り合いをしていた。
 当初、ガミラス軍は航空戦力と得意の高速機動で暗黒星団帝国軍で圧倒した。
 暗黒星団帝国軍の巡洋艦部隊は戦闘空母や三段空母から発進した攻撃機によって翻弄された上、デストロイヤーから
ビームとミサイルを叩き込まれて散々な目に合った。
 
「地球人のほうが余程、手強かったぞ」

 ガミラス軍人はそう言って暗黒星団帝国軍を嘲笑した。
 だがそのまま黙っている暗黒星団帝国ではなかった。

「生意気な。滅んだ国が今更、我が国の邪魔立てをするとは!」

 マゼラン方面第1艦隊司令官デーダーは、猛将らしく乗艦の巨大戦艦プレアデスを先頭に立ててガミラス軍へ猛攻を加えた。
 ヤマトの主砲さえ防ぐ堅牢な戦艦を前に、さすがのガミラスも分が悪かった。
 加えて事態を憂慮したマゼラン方面軍総司令官メルダースが要塞『ゴルバ』を前線に出すと戦局は暗黒星団帝国側に
傾いていった。
 デスラー砲さえ跳ね返すゴルバに、ガミラス軍は手出しできなかった。ガミラス艦や三段空母が次々に撃沈されていく。

「何と言う火力と防御力だ」

 さすがのデスラーもゴルバの圧倒的な攻防能力には手を焼いた。
 赤いカラーリングの戦闘空母の艦橋では、ゴルバの戦闘映像を見て誰もが息を呑んだ。
 
「総統……」
「判っている」

 タランの言葉をデスラーは遮った。

「だが、このまま逃亡するような真似をする指導者に、兵士達が付いてくると思うかね?」
「それは……」

 だが、そんなデスラーをさらに窮地に追いやる報告が入る。

863earth:2011/09/29(木) 20:03:47
 かつてデスラーが侵略戦争に明け暮れていた頃、ガミラス帝国は多くの国を敵に回していた。
 これらの国々が、デスラーの帰還と旧ガミラス帝国軍の集結という事態を見過ごすわけが無かった。
 加えてデスラー率いるガミラス帝国軍残党は、暗黒星団帝国に苦戦を強いられている。これは絶好のチャンスだった。
 彼らは連合を組んでガミラス軍の横っ面を殴りつけた。

「おのれ!」

 デスラーはこの横槍に憤怒したが、完全に自分の自業自得であった。
 
「戦線を立て直す!」

 だがデスラーの手腕をもってしても暗黒星団帝国軍と、反ガミラス連合軍との二正面作戦は厳しかった。
 しかも反ガミラス連合軍の存在を知った暗黒星団帝国軍司令官メルダースは、彼らに取引を申し込んだ。

「旧ガミラス帝国全土を併合するつもりはない。我々が最も欲しいのはガミラスとイスカンダルの資源だ」

 反ガミラス連合軍は全面的にそれを信用することはなかったが、デスラーよりかは話が通じる相手と判断し
彼らと手を結ぶことに同意する。
 反ガミラス連合軍の回答を聞いて、メルダースは満足げに頷く。
 
「これでガミラス星の制圧は時間の問題だな」

 ある程度連携が取れた二大勢力に挟まれて戦線が完全に崩壊しなかっただけでもデスラーの手腕が如何に優れているかが判る。 
 だが戦線の崩壊そのものは時間の問題でもあった。暗黒星団帝国軍はガミラス本星があるサンザー太陽系の外縁部まで迫っており
彼らが侵入してくるのは時間の問題となっていた。

「ヤマトに復讐を遂げることなく、終わるというのか」

 デスラーがそう零すほどに、ガミラス帝国軍残党は追い込まれていた。

864earth:2011/09/29(木) 20:06:43
あとがき
デスラー大ピンチ。
まぁ因果応報ということで。劇中からも幾つか戦線を抱えていましたし。
でも所詮はモブ以下。この話でも輝かしい(?)出番はないでしょう。多分(笑)。

866earth:2011/09/30(金) 20:43:15
閑話の35.5話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第35.5話

 デスラーが追い込まれている頃、議長は自宅に知人達(転生者)を招いて麻雀大会を開いていた。
 参加者は統合参謀本部議長、与党の長老政治家、連邦の財務次官、某財閥総帥というマスコミに知られたらゴシップ記事でも
書かれそうな面々であった。

「たまには、遊ばないと」
「アナログゲームばかりだがな。まぁこの歳になってゲーセンに行くことはないが」
「いやゲームセンター自体まだ殆ど無いじゃないですか。そもそもTVゲーム自体が……」
「まぁガミラス戦役の影響で、そういった娯楽が潰れたから仕方ない。とりあえず過去の作品の再現でも始めとこう。
 たとえば、そうインベー○ーゲームとか」
「総帥、あなた前世で何歳だったんですか?」 
 
 長く続いたガミラス戦役の影響は、娯楽にまで影響を与えていた。
 経済の大半は軍需に傾いていたし、戦争後半になると娯楽にかまける余裕などなかった。このため娯楽産業の多くが衰退した。
 地球連邦は復興と飛躍の道を進んでいるとは言え、娯楽産業の本格的な復活はまだ遠かった。

「それで、レートは?」
 
 財務次官の質問に総帥がニヤリと笑いつつ答える。

「デカリャンの2万4万で」

 しかしその提案に、議長が異を唱える。

「そんな玄人みたいな賭けはお断りだ。というかバレたら拙いだろう」
「だな。というか政治活動はただでさえ金が要るのに、こんなところで無駄遣いできるか。
 というか次官、何でそんなに金を持っているんだ?」
「ははは秘密です。それにしても、議長も長老もノリが悪いですね……」
「まぁ余り毟るのも可哀相だ。先ほどのレートの10分の1でやるか」
「「総帥……」」

867earth:2011/09/30(金) 20:43:58
「さっさとはじめるぞ。時間もない」
「「やれやれ」」
 
 こうしてゲームは始まる。
 それぞれが勝つべく思考を巡らせつつも、何故か話題は仕事や社会情勢にシフトしていく。

「完全に平和になったら戦略シミュレーションゲームでも作りたいものだ。潤いがあれば社会にもっと余裕が生まれる」
「ヤマトを元ネタにした奴か? ゲームバランス崩壊は確実だな。それと議長、防衛機密の関係もあるぞ」
「宇宙戦争の定番である銀○伝は無理でしょう。宇宙戦艦の形が違いすぎる」
「もっと一般受けするほうが良いな。投資するなら資金を回収したい。こちらとしてはスポーツの復興も進めて欲しい」
「総帥の意見には政治家としても同意するな。ゲーム作るよりは賛同者も多いだろう。健全な魂は健全な肉体に宿るとも言う」
「確かに……尤も我々が言っても説得力皆無では?」
「「「議長、それを言ったらお終いだろう(ですよ)」」」

 話をしている最中にも、付けっぱなしにしていたラジオから音楽が聞こえてくる。
 そこにはガミラス戦役の頃の悲壮さは無かった。

「何はともあれ、平和は良いことだ。子供達に夢と希望を与えられる」
「大人の仕事だからな」
「尤もその大人の数も減ってしまって大変ですよ。戦災孤児の問題もある。これでまた戦争は勘弁してもらいたいですが」

 財務次官がさりげなく対デザリウム戦に苦言を呈する。これに議長と長老が苦い顔で答える。

「仕方ないだろう。連中を放置していたら脇腹を刺される危険が高い」
「それに二重銀河を潰しておかないと銀河交差が起こらない可能性がある。あのボラーが強大なままで存続されると面倒だ。
 まぁそのボラーとの関係が些か微妙になったのは、防衛軍のせいだが」

 長老の冷たい視線に、議長はわざとらしく咳をして誤魔化す。

868earth:2011/09/30(金) 20:44:35
「……ボラーは?」
「(誤魔化したな)ディンギル吹き飛ばした後は、アンドロメダ星雲侵攻にご執心だよ。
 向こうはアンドロメダ星雲への侵攻を成功させるために、こちらが得たガトランティスの技術や情報に興味を示している」

 長老の言葉に全員が顔を顰める。

「やはり」
「そう来るでしょう」
「まぁ当然だな」

 全員とも当然という顔になった。

「連邦政府はボラーの申し出があったら、断れないと考えている。あっさり無条件に呑めば舐められるから交渉には持ち込むが」
「向こうがどこまで話に乗ってくれるかは微妙ですね」
「次官の言うとおりだ。まぁこちらには『暴れん坊の』防衛軍とヤマトがいるから、少しはハッタリが通用するかもな」
(まだ言うか……)

 実際、ガトランティス軍を打ち破った防衛軍の実力はボラーで評価されていた。『一惑星の国軍』としては破格であると。

「まぁ暫くは我慢でしょう。ボラーと交流を持ちつつ、現在はボラーの支配下の国家や衛星国とも接触しないと」
「だな。復活編までには多少は地盤を固めておかないと」
「軍も準備を急ぎます。しかし、遊んでいるのに話が仕事関係ばかりというのは……」
「議長、仕方ないよ。職業病みたいなものだ」

 こうして夜は更けていく。
 
「俺達の出番、これだけ?」
「メタ発言は良いから、さっさと打て」

869earth:2011/09/30(金) 20:47:05
あとがき
議長たち、モブキャラ達の動き(?)でした。
麻雀で誰が勝ったかはご想像にお任せします(笑)。
次回は再びマゼラン星雲での戦いになる予定です。
議長の出番は……後になるでしょう。

870earth:2011/10/03(月) 22:27:16
第36話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第36話

 暗黒星団帝国軍による猛攻を受けて、旧ガミラス帝国軍はガミラス本星近辺にまで追い込まれていた。
尤も精強で知るガミラス軍の必死の抵抗により、暗黒星団帝国軍も多大な被害は受けており、開戦前と比べて
その陣容は寂しくなっていた。

「何としても、ガミラシウムとイスカンダリウムを手に入れなければならない」

 メルダースはそう言って部下を鼓舞した。実際、それほどまに多くの労力がつぎ込まれていた。
 だがガミラス星の守りが堅いと見るや、メルダースはとりあえずイスカンダリウムだけでも得るべく、イスカンダルで
資源採掘を行うことを決意する。
 
「女王が居るようですが?」
「女王一人しかいない国に、遠慮する必要は無い。いや、治めるべき国民がいない国家など国家ではない。
 あれはすでに滅んだ無人同然の星なのだ」

 メルダースはそう言って資源採掘を命じる。
 この指示を受けた第1艦隊司令官データーは船団をイスカンダルに降下させる準備を進めた。

「準備を急がせろ。それと邪魔な地上構造物は破壊してしまえ。資源採掘の邪魔だ」
「了解しました」

 データーはイスカンダルの上空から容赦のない艦砲射撃を地表に加え、あらゆる人工物を灰燼にしていく。
  
「この星の動力炉(波動エンジン)は我々にとって有害だ。何も残してはならぬ!」

 イスカンダルが猛火に包まれる様は、ガミラス星上空の戦闘空母からも見ることが出来た。

「イスカンダルが! スターシアとの通信は?!」
「ダメです。繋がりません」
「くっ……予備部隊を出せ。私が直接指揮を執る!」

 これを聞いてタランが慌てて止める。
 
「しかし、それでは防衛線が崩壊しかねません! それに総統に万が一のことがあれば」
「どけ、タラン! 私は行かなければならん」
「どきません!」 
 
 総統とその副官の緊迫したやり取りが続く。その中、信じられない報告が飛び込む。

「ヤマトが現れました!」

871earth:2011/10/03(月) 22:27:50
 イスカンダルが猛火に包まれる様子は、第8艦隊でも見ることが出来た。
 メインパネルに映されるイスカンダルの悲惨な光景に、第8艦隊の宇宙戦士たちはいきり立つ。

『司令官!』『艦長!』『司令!』

 第8艦隊旗艦ネメシスに全艦から通信が殺到する。
 勿論、ネメシスの艦橋にいる人間達も全員が司令官に目を向けていた。

「司令……」

 青コートの幕僚が司令官に決断を迫った。
 イスカンダル女王スターシアは、全人類にとって恩人だ。彼女が居なければ人類は滅亡していただろう。
そんな恩人が攻撃され、イスカンダルは炎の海に沈んでいる。見過ごせる人間はいなかった。
 一方の司令官は原作と乖離した光景に少し絶句するも、すぐに最善の手を考える。

(いきなり先制攻撃をする、いやそれだと、だまし討ちか?
 開戦する予定とは言え、開戦責任を問われる事態は避けなければならない。ボラーとの関係もある。
 だが穏便な手はとれないし、下手をすればヤマトが動きかねない)

 というか、もはやヤマトは暴走寸前であった。
 ヤマトクルーはイスカンダルへの蛮行に激怒していた。古代進がまだ思いとどまっているのも、古代守が制止して
いたからに他ならない。だがその守でさえ腸が煮えくり返る思いであった。

(是非も無し、か)

 腕を組み口を瞑っていた司令官は、目を見開くと同時に命じる。

「イスカンダルを攻撃中の国籍不明艦隊に攻撃停止を勧告しろ。コスモタイガーを3機ほど差し向けろ」
「勧告するだけですか?」
「向こうが無視するようなら……友好国への攻撃を見過ごすわけにはいかん。『武力』で阻止する。全艦戦闘配備!」
「了解しました!」

872earth:2011/10/03(月) 22:28:35
 防衛艦隊出現の報告は、暗黒星団帝国軍を驚かせた。さらに攻撃停止勧告は彼らを激怒させた。
 
「くそ。ガミラス残党が居なければ、あのような艦隊、簡単に捻り潰せたものを!」
「如何しますか?」
 
 データーは兵士の問いに、当たり前だといわんばかりに吼えた。

「勿論無視だ! 全戦闘機隊発進! 我が艦隊も出るぞ!! まずはあの煩いハエを追い払え!」

 暗黒星団帝国軍艦隊が勧告を無視したどころか、こちらへの敵意を露にしたことから、第8艦隊はすぐに
攻撃を開始する。
 2隻の宇宙空母とヤマト、ムサシからコスモタイガー隊が次々に発進していく。
 暗黒星団帝国軍も攻撃隊を出したが……結果は無残なものだった。
 士気では暗黒星団帝国軍に勝り、質でも数でも原作よりも遥かに優れたコスモタイガー隊は、敵航空隊を
あっという間にコテンパンにしていった。
 コスモタイガー隊を突破した敵機は第8艦隊前方に展開していたヤマトとムサシに攻撃を加えるが、パルスレーザーに
よって返り討ちにあう。

「一方的だな……(というか強すぎてワロタ)。引き続き攻撃続行。
 我が艦は、拡散波動砲を用意。コスモタイガー隊の攻撃終了後、敵前衛を殲滅する」
 
 司令官はそう命じる。尤も拡散波動砲で始末するほどの敵前衛は残らなかった。
 第8艦隊に迫っていた暗黒星団帝国軍の巡洋艦は雷撃機仕様のコスモタイガーⅡから放たれた
対艦ミサイル(波動エネルギー入り)の飽和攻撃を受けたのだ。その結果は……言うまでも無かった。
 暗黒星団帝国軍艦隊の巡洋艦部隊は1隻残らず宇宙の塵を化した。
 あまりにあっさり前衛が壊滅して呆然状態のデーターだったが、自身が乗るプレアデスにヤマトの砲撃を
受けて我に変える。

「ははは。その程度の砲撃が効く物か!」
 
 嘲笑するデーター。だが直後、兵士の悲鳴のような報告に、その顔は凍りつく。

「敵旗艦に高エネルギー反応!」
「ま、拙い。イスカンダルを背にしろ!」
「間に合いません!!」

 かくして巨大戦艦プレアデスは大して活躍することなく残っていた巡洋艦3隻と共に拡散波動砲の直撃を受けて
消滅することになる。

873earth:2011/10/03(月) 22:30:39
あとがき
暗黒星団帝国軍涙目(爆)。
援軍が来る時間すら稼げずデーター提督の第1艦隊は塵となりました。
次回、ゴルバ登場予定です。でもどこまで抵抗できることやら。

874earth:2011/10/04(火) 21:07:28
第37話です。

 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第37話

 データーの第1艦隊が壊滅するのはガミラス本星上空の艦隊からも見ることが出来た。

「あの巨大戦艦と艦隊が10分足らずで……」

 タランがあまりの光景に息を呑む。
 この前までガミラスの宇宙艦隊に手も足も出なかった地球人類が作り上げた宇宙艦隊とは思えないほどの
戦闘力だった。
 幾らガミラスとの戦いで暗黒星団帝国軍が消耗しているとは言え、ここまで一方的な展開になると予想できる
人間はいない。

「……」
 
 デスラーは黙り込んだままだった。
 スターシアを助けられたかも知れないことは喜ばしいことだが、ヤマトを含む地球艦隊の高い戦闘力を見ては
一概には喜べない。
 しかしそれだけで凹む総統ではなく、今回の戦闘から拡散波動砲の特徴をいち早く掴んだ。

(さしずめアレは散弾銃といったところか。射程はヤマトの波動砲よりも短いだろう)

 デスラーはそう考えた後、兵士から新たな報告が告げられる。

「敵要塞、イスカンダルに向かいます!」
「我らよりも、ヤマトと地球艦隊が脅威と見做したのか」

 戦術的にはガミラスにとって好ましかったが、この扱いはデスラーのプライドを傷つけるものだった。
 しかしその直後、さらに信じられない光景が広がることになる。

「て、敵要塞、消滅しました……」

875earth:2011/10/04(火) 21:07:59

 データーを撃破されたメルダースはガミラス星の包囲を他の部隊に任せて、自らゴルバで地球艦隊に向かった。
 尤も最初は地球艦隊に撤退を勧告しようとしていた。わざわざ自分達が暗黒星団帝国の大マゼラン方面軍であること
などを名乗った挙句、先に手を出したことなど気にもせずに告げる。

「速やかに手を引け」
 
 第8艦隊の返答は、一言で言えば「寝言は寝て言え」だった。
 イスカンダルと音信が途絶し、さらに地表の多くが灰燼に帰しているため、スターシア救援のためには地上に
降下して救助作業をせざるを得ない。そのためには安全を確保しなければならない。
 また、もう一つ受託できない理由があった。
 
『我々が停戦したとしても、戦闘が継続しガミラス星が崩壊するようなことがあれば、イスカンダルは危機に陥ります。
 ガミラスとイスカンダルは兄弟星。片一方が消滅すればもう片方は軌道を外れます』

 真田のこの進言、そして原作知識からそれが事実であると知っていた司令官に残された道は暗黒星団帝国軍の完全撃滅か
暗黒星団帝国軍の完全撤退の要求しかなかった。
 そして司令官は前者を選んだ。
 
「全艦、波動カードリッジ弾を装填。あの砲口を狙え!」  

 司令官は通信を切ると同時に、イスカンダルを砲撃するため開いていたゴルバの砲門への攻撃を命じた。

「1番、2番砲塔、撃て!」
「発射!」
「砲撃開始!」
「撃ち方始め!」

 司令官の命令を受けてヤマト、ムサシ、ネメシス、加賀が波動カードリッジ弾を一点集中砲火とばかりに叩き込む。
 勿論、全てが直撃したわけではなかったが(ヤマトが放った砲弾は全弾命中)、ゴルバに破滅を齎すには十分だった。

「ば、馬鹿な! このゴルバが?!」

 誘爆に加えて、波動融合反応が起こり、ゴルバは文字通り木っ端微塵になった。 
 ゴルバが木っ端微塵になったのを見た暗黒星団帝国軍の残存艦隊は慌てて逃げ出していく。
 戦いに決着がついた瞬間だった。

876earth:2011/10/04(火) 21:08:30

「「「………」」」

 ガミラス艦隊の攻撃を弾き返してきた敵の宇宙要塞が、見事なまでに木っ端微塵に吹き飛ぶ光景を見たガミラス軍の
将兵は絶句した。
 同時に彼らは思い出す。ヤマトがどれだけ恐ろしい相手であったかを。

(これがガミラスの精鋭を蹴散らし、ガミラス星を破滅させ、大帝が乗る白色彗星を単独で砕いた実力か……)

 客観的に見ると無双どころか、ネタとしか思えないほどの活躍ぶりだった。
 勇猛なことには定評のあるガミラス兵でさえ絶句するほどの戦果と言えるだろう。

「……地球艦隊は?」
「こちらを警戒しつつ、イスカンダルへ降下していきます」

 兵士の報告にデスラーは沈黙する。これを見たタランが尋ねる。

「如何しますか?」
「今、奴らを攻撃すればスターシアを巻き込みかねない。それにこちらが消耗しすぎている」
「では……」
「奴らが手出しするまでは静観だ。まずは反ガミラス連合を叩きのめす」
「はい」

 第8艦隊はスターシアの捜索と救援に忙しく、また暗黒星団帝国軍残党による襲撃を危惧してイスカンダルを
離れなかった。このため地球とガミラスは睨みあいをしつつ奇妙な休戦状態となる。
 そして暗黒星団帝国軍が壊滅したことで、手が空いたガミラス艦隊は未だにサンザー太陽系外にいた反ガミラス連合軍に
襲い掛かった。
 纏まりに欠ける連合軍は側面を突かれて瞬く間に潰走し、サンザー太陽系周辺での戦いは一旦終局を迎える。

877earth:2011/10/04(火) 21:11:40
あとがき
ゴルバがあっという間に木っ端微塵です。
ここまで呆気なくやられたゴルバがあっただろうか(笑)。
暗黒星団帝国にとって災厄の時が訪れるのも近いでしょう。
ガミラス、ガトランティスに続いて犠牲者(?)に名を連ねる日も近いかも。

878earth:2011/10/05(水) 22:38:24
体調が悪いのに、何故かネタSSは書けてしまう不思議……。
というわけで第38話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第38話

 イスカンダルに降下した第8艦隊と空間騎兵隊は瓦礫の下から何とかスターシアを救出した。
 しかしこのとき、スターシアは重傷を負い意識不明であった。司令官は急いでスターシアを旗艦ネメシスに搬送した後に
艦隊から腕利きの軍医(佐渡先生も呼ばれた)を集めて緊急手術を行った。
 12時間もの大手術の末、スターシアは何とか助かった。

「ご苦労様。さすがだよ。ヤマト世界のブラッ○ジャックの異名は伊達じゃないな。
 ああ気分は楽にして、ソファーにでも座ってくれ。口調も気にして無くて良い」

 報告のための艦長室を訪れたネメシスの軍医(転生者仲間)を司令官は労った。
 これを聞いて軍医はソファーに座った後、ぐったりした顔で答える。

「苦労したぞ。『新たなる旅立ち』みたいなBADエンドは御免だから頑張ったが……PS版ほどハッピーじゃない」 
「そうだな。だがこれで『ガミラスと戦う』という選択肢を取らなくてすむ。陛下を抱えたまま戦うなんて出来ないからな」
「確かに」

 地球人類からすればガミラスは怨敵。実際、第8艦隊の中にはガミラス残党軍も掃討すべしという声はあった。

「『上』はデザリウム、いや暗黒星団帝国との戦いに向けて戦力を極力温存したいと?」
「あとはボラーへの備えだな。尤もあの物量を考えると、どこまで防衛軍が持ち堪えられるかは判らないが」
「ふむ。だからこそ、今回のデータが役に立つと? テレサ嬢が居るだろうに」
「外様に何時までも頼ってばかりはいられないだろう。自前で超能力者を用意できるなら、それに越したことは無い。
 まぁ彼女には遠く及ばないだろう。彼女を倒すには超人ロ○クでも連れて来るしかない」 

 スターシアを救うため手術は行った。
 だがそれと並行してスターシアの身体は徹底的に調査された。勿論、手術のためという名目があったので不審には
思われなかった。
 そして、これによって超能力者の資質を持つイスカンダル人の情報を防衛軍は入手することが出来た。

879earth:2011/10/05(水) 22:39:36

「コスモクリーナーDや波動エンジンだけでは飽き足らず、ドサクサにイスカンダルに残された技術や資源を回収か。
 全く盗人猛々しいな。問題ないのか?」
「これは救助活動と並行した調査だ。暗黒星団帝国がどのような攻撃をしたのか、という名目のな。
 その過程でいくつかのサンプルを回収するのは非難されることではない。議長も文句は言わないだろう」

 司令官は何の問題もないとばかりに言い放つ。
 暗黒星団帝国軍がこの会話を聞けば「お前達(地球人)のほうがよっぽど悪辣だ」ということは請合いだった。

「ついでに周辺宙域も調査すると? 索敵を名目に?」
「勿論だ。暗黒星団帝国軍の残骸とガミラス軍の残骸。これを回収しておきたい。
 後のデザリウム戦役のため、そして……今回の戦いでの出費を少しでも回収するために」
「財務省か?」
「ああ。輸送船があるから、ある程度なら持ち帰れる」

 第8艦隊には戦闘艦艇の他に、高速輸送船を含めた非戦闘艦が同行していた。
 勿論、持ち帰れる量は多くないが、それでも無いよりはマシだった。
 宇宙開発と防衛艦隊の整備を進める地球連邦には希少資源は1グラムでも多く必要なのだ。このためガトランティスの
遺産とも言える大量のスクラップ(元都市帝国、元艦隊)の再利用を積極的に進めていた。

「人が生きていくには、色々と金がかかるんだそうだ」
「世知辛いことで。でもヤマトクルーには関係なさそうだ」
「汚い仕事や地味な仕事で、『主人公』を支えるのがモブキャラなのだろう」

 遠い目で言う司令官。軍医も乾いた笑みを浮かべることしかできない。
 実に救いようが無い結論だった。

880earth:2011/10/05(水) 22:40:31

「話を戻そう。ガミラス艦を探せば、捕虜を確保できるかも知れない。
 うまくすればデスラーと交渉する材料になるかも知れない」
「デスラーと話し合うと? 綺麗なデスラーでないのでは?」
「何はともあれ情報は必要、そういうことだ。彼がまだ危険な人物なら相応の戦略を議長が用意しなければならない」
「それもそうか」

 ガミラス残党の驚異的粘りや通信傍受から、デスラーが生きていることを第8艦隊は掴んでいた。
 転生者としては、原作でもヤマト並に補正持ち(実際にこの世界のデスラーは都市帝国から脱出成功)であるデスラーの
様子を確認しておきたかった。 
 何しろガミラスの動向は、絶対と言って良いほど地球連邦に影響を与えるからだ。

「それにしても『総統閣下』との交渉か。全く……面倒を通り越しているな」
「頑張ってください、としか言えないな。古代弟に任せるわけにはいかないし」
「アレに任せたら後が怖い。というか外交担当者が怒鳴り込んでくる結果しか見えない」
「……ははは。確かに」

 戦闘指揮については兎に角、ほかの事では古代進は信用されていなかった。

「愚痴くらいは聞いてくれ。あとで良いから」 
「……精神安定剤か、議長も愛用している胃薬かを用意しておきましょう」

 こうしてヤマト以外の地球防衛軍が、デスラーと公式に接触することになる。

881earth:2011/10/05(水) 22:46:10
あとがき
防衛軍が原作と違って真っ黒です。
でも格上の侵略者と戦うには、強かでないと困ります。
というかすぐにやられてしまいます。原作の防衛軍のように(核爆)。

……ちなみに作者は別に黒くありませんよ。普通の善良な市民です(棒読)。

882earth:2011/10/07(金) 19:07:29
少し長くなってしまいましたが、第39話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第39話


 破壊されたり、遺棄されていたガミラス艦を調査したものの、防衛軍はガミラス人の捕虜は得られなかった。
 しかし暗黒星団帝国軍の物と思われる艦艇の残骸を調査した結果、防衛軍は有益な情報を入手できた。
 特に暗黒星団帝国がデザリアム帝国と呼ばれている国であり、デザリアム星と呼ばれる星を母星にしている
こと、そしてそれが地球から40万光年、大マゼラン星雲から57万光年離れた位置にある二重銀河にあるという
情報は第8艦隊首脳を大いに満足させた(詳細な位置についてはまだ判明していないが)。
 しかし同時に危機感も持たせる。

『かなり遠くから来たようですな』
『しかし57万光年さえ乗り越えてこられるということは地球にも攻め込めるということだ。注意が必要だろう』
『それにしても、乗員の全員が脳を除いて機械だったとは……』
『高度な機械文明ということでしょう。だからこそ、これだけの長距離侵攻が出来たとも考えられます』
 
 通信機越しにネメシスからの連絡を受けた各艦の艦長たちは、予想以上に高度な文明を持つ敵国に危機感を持つ。
 そんな中、司令官は新たな事実を告げる。

「ただ真田技師長の報告では、彼らの物質は波動エネルギーと反応、『波動融合反応』とも言うべき反応を起こすそうだ。 
 これは反物質と常物質が接触した際の反応に近い。つまり、敵の防御を突破すれば、大打撃を与えられる」
『『『おお』』』
「だが向こうからすれば、その波動エネルギーを持つ我々は天敵であると言える。つまり戦争になる可能性は高い」
『……ガミラスとは戦わないほうが良いと?」

 対ガミラス強硬派だった宇宙空母『グラーフ・ツェッペリン』の艦長は顔を顰めて言う。
 この艦長は家族と親戚全員、訓練学校の同期を悉くガミラス戦役で失っていたので、特に反ガミラス感情が強かった。

「そうだ。確かにガミラスは怨敵だが、交渉は必要だろう。この情報と艦隊を無事に地球に持ち帰るためにも」
『……判りました』

883earth:2011/10/07(金) 19:08:27

 ガミラス帝国総統『デスラー』。
 ガミラス戦役で地球人類を絶滅寸前にまで追いやったこの人物は、地球人類にとっては当に『怨敵』だった。
 『原作』でもヤマトのライバルキャラとして出張った男であり、その能力(運込み)は世界有数である。 
 そんな男と正面から話をしなければならない司令官は……会談開始前に胃の痛みを感じていた。

(も、モブキャラの俺が何でこんな大仕事を……)

 議長を呪いつつ、司令官はデスラーが乗る戦闘空母との通信回線を開く。

「こちら地球防衛軍第8艦隊司令官……」

 かくして歴史に残る会談が始まった。
 司令官は最低限の挨拶を終えると、すぐに本題に入る、

「暗黒星団帝国は地球、ガミラス、イスカンダルの三者にとって共通の敵となるでしょう。
 我々は大恩あるイスカンダルとスターシア陛下を守るために、そしてこの脅威に関する情報を少しでも多く地球に
 持ち帰るために暫定的な停戦を行う事、そしてお互いに得ている情報の交換を望んでいます」
『ふっ、理解できないな。何故停戦を行うことがイスカンダルとスターシアを守ることに繋がる?』
「スターシア陛下は暗黒星団帝国の爆撃に巻き込まれ重傷を負われていました。
 緊急手術で一命は取り留めましたが、暫くは絶対安静が必要です」

 司令官はスターシアに好意を寄せているデスラー向けのジャブを放つ。 

『……』
「ですが我々は何時までもイスカンダルに留まることは出来ません。
 我々は女王陛下の回復を待った後、陛下の認可を受けてからイスカンダリウムを弄って、戦争に使えない物質にしてから
 引き上げることを考えています。
 彼らも使えない物質を得るために遥々、大マゼラン星雲に来るほど暇ではないでしょう」
『そんなことが可能なのかね?』
「可能です。私個人の意見としては女王陛下の安全を確保するために地球に来ていただきたいと思っています。
 何しろ、戦闘が続けばいつイスカンダルに飛び火するか判りません。そしてイスカンダルの軍事力はなきに等しい状態。
 これでは安全は確保できないのは目に見えています」

 言外で、『ガミラス軍ではイスカンダルとスターシアを守りきれないのでは?』と告げる司令官。

887earth:2011/10/07(金) 20:16:43
『……我々が同じ失態をするとでも?』
「するとは言いません。ですが、無いとも言えません。ならば少しでも安全な方策を採るべきです。
 貴方方も我々と同じ立場なら、陛下を守れる方法を模索するのではないですか?」
『ふむ。スターシアの安全を確保するための作業を地球人の手で安全に行いたいと』
「その通りです。それに、これはガミラスにとっても『国益』になると思いますが?」

 ガミラスも今回の戦いで消耗している。ここで地球と再度開戦するほど余裕は無いはずだった。

『確かに理解は出来る。だが我々にとっても地球は怨敵であり脅威だと思うが?』

 ガミラス本星を壊滅したことを暗に指摘するデスラー。
 だが司令官は動じない。

「それは我々も同じです。かつて100億以上を誇った人類は、貴国の無差別攻撃で今や20億足らず。
 失われた人命、財産、文化は数え切れない。だからこそ、これ以上の惨禍は避けなければならないのです。 
 そしてそれは貴方方も同様なのでは?」

 ガミラスも本星が壊滅したことで国力は衰えている。残党を集結させたものの、今回の戦いで消耗してしまった。
 大小マゼラン星雲に散らばっている勢力を掻き集めて復興を急がなければならない。

『地球のような新興国と違って、我々には星間帝国の誇りと面子がある』
「面子のために国を滅ぼすと?」
『誇りもなく、周辺国に舐められ、惨めに衰退するよりは良いだろう。それに私の矜持もある』
(プライド高すぎ……だが、新興国の戦艦1隻に負けたとなるとガミラスの面子丸つぶれだからな。
 あと多少は『1』のときより性格は丸くなったが、まだ『綺麗な』デスラーにはなっていないな)

888earth:2011/10/07(金) 20:17:15
 司令官はそう考えると再び切り出す。

「ですが暗黒星団帝国は、ガミラシウムとイスカンダリウムを狙って再び来るでしょう。
 加えて先ほどまで戦っていた勢力には暗黒星団帝国以外の勢力もあったようですが、その二者に備えることと
 我々と再戦すること、この2つを両立すると? ガミラス軍が勇者ぞろいであることは承知していますが厳しいのでは?
 勿論、我々は挑戦を受ければ断りませんが」
『大した自信だ』
「それだけの実績を上げてきましたので。勿論、貴方方、ガミラス人のように偉大な星間帝国を築くほどではありませんが
 奴隷のように卑屈になるほど弱くもありません」
『ほぅ?』

 デスラーが目を細める。司令官は胃が痛くなるのを感じる。

(こんな仕事は名前ありのキャラの仕事だろうが!)

 だが引けない。モブにはモブのプライドがある。引き立て役だけで終りたくはないのだ。
 会談は尚続いた。

889earth:2011/10/07(金) 20:17:49
あとがき
というわけでヒペリオン艦隊司令官大活躍(?)。
議長の後釜は君だ(爆)。いやまずは防衛艦隊司令長官か……。
名無しのモブキャラだって譲れない意地があるんです(苦笑)。

あと誤字について修正しました。

890earth:2011/10/07(金) 23:26:37
平日ですが連続更新(爆)。
久しぶりに議長の出番です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第39.5話

 第8艦隊が暗黒星団帝国軍をフルボッコにしている頃、地球では2隻の戦艦が産声を上げていた。
 1隻は転生者待望の改アンドロメダ級、いや実質的には超アンドロメダ級戦艦1番艦『タケミカヅチ』だ。
 議長はタケミカヅチの完成式典の中、ドックに横たわる艦体を見て呟く。

「拡散波動砲3門、51センチ砲4連装5基20門、31センチ砲4連装3基12門。排水量15万1000トン。
 地球史上最大の大戦艦か……普通ならこれで安泰と思えるんだが」
「これでも不足と?」

 秘書の問いに頷く。

「足りないだろう。そのためのクレイモア級やモーニングスター級の無人戦艦だ」

 クレイモア級はアンドロメダ級を無人化したような10万トン級戦艦。
 そしてモーニングスター級は集束型波動砲2門を搭載した改クレイモア級戦艦だった。

「あれの量産と引き換えに、アンドロメダ級は5隻で打ち止めだが」
「金が掛かりますから。それに基本的にアンドロメダ級は艦隊旗艦。今では改アンドロメダ級もあります」
「まぁ改アンドロメダ級2隻、アンドロメダ級5隻の7隻。あと旗艦用に改造された主力戦艦があれば足りるからな」

 さすがに原作より強化された地球連邦とは言え、揃えられる戦力には限りがあった。
 尤も原作を知る人間からすれば豊富すぎる戦力であった。

「戦闘空母『大鳳』、『イラストリアス』、『ラングレー』、ガトランティス軍の大型空母2隻(『プロキオン』『シリウス』)と
 中型空母2隻(『ホワイトスカウトⅠ、ホワイトスカウトⅡ)がさらに加わる。これでシナノが加われば鬼に金棒だが」
「しかし現状ではデザリアム戦役には間に合わないのでは?」
「ああ。民間も宇宙船が必要だからな。それに宇宙戦士に人材をとられたら民間が立ち行かない。
 まぁ準備だけはしておいたほうが良いだろう。イザとなれば復活編で役に立つ」

 希少資源を必要としているのは防衛軍だけではなかった。
 急速に拡大を続ける連邦の勢力圏を支える宇宙船建造のためにも資源は必要だった。勿論、人的資源も。

891earth:2011/10/07(金) 23:27:40

「あとは質を向上させるしかない」  
「『アイルオブスカイ』ですか……しかしあれは、もう実質的に新型艦なのでは?
 いえ、より正確に言えば2分の1サイズの『タケミカヅチ』と言えるのでは……」

 財務官僚の冷たい視線を思い出すと議長は乾いた笑みを浮かべる。

「気にするな。あれがうまくいけばさらにヤマトは強くなる。次の新型主力戦艦も。
 それに空母部隊の打撃力も大幅に向上できるだろう。何しろデスラー戦法を自前で出来るようになるんだ。
 まぁ艦載機を送り込むより、戦艦や破滅ミサイルでも送り込んだほうが効果的だが……」 

 『アイルオブスカイ』は大改造された上で『タケミカヅチ』と同時期に完成していた。
 当初、波動砲を撤去するというプランがあったが、真田と大山の二大マッドサイエンティストによって波動砲は撤去される
ことなく大改造された。
 拡散波動砲1門こそ変わらないものの、新型ジェネレーターによってチャージ時間は短縮。波動エンジンも巡洋艦のものが
増設され出力は大幅に強化されている。
 新型の40センチショックカノン3連装3基(1基は艦底部に設置)が搭載され、元々は第3砲塔があった部分には無人艦艇
を指揮する施設が設置された。
 だが驚くべきのはそれだけではなかった。何とデスラー艦から鹵獲し、試作段階であるがコピーに成功した瞬間物質移送装置
やディンギル帝国の恐るべき対艦ミサイル『ハイパー放射ミサイル』の存在から急遽は開発された対大型ミサイル防御兵器も
試験的に搭載している。
 尤も秘書の言うように、これらの魔改造によって艦体は大型化しており、排水量はヤマトを超えて8万トンに達している。
タケミカヅチのほぼ半分ほどの大きさだ。 

「まぁ拡張性の余地はある。万が一のときには移動する統合参謀本部としても機能できる。問題はない」

 第3砲塔を撤去して作られた司令室の能力は高く、暫定的なら宇宙を移動する参謀本部としても機能できるほどだ。
 議長からすれば万が一の場合、現場で指揮を執れるという優れものに見えた。

「……それは財務次官にも言ってください」
「……」

892earth:2011/10/07(金) 23:28:28

 こうして地球防衛軍は戦力の増強に努めた。
 一方、ボラー連邦軍もアンドロメダ星雲侵攻を目論む傍らで、対ヤマト級戦艦とも言うべき新型戦艦の建造を急いでいた。
 しかしヤマトの戦績を聞いたボラー連邦の技術者達は頭を抱えていた。

「何で6万トン級の宇宙戦艦があれだけの活躍が出来るんだ?」
「波動砲という戦略砲のおかげなのでは?」
「いや、波動砲はチャージに時間が掛かりすぎるなど欠点も多い。
 拠点攻撃には適しているかも知れないが艦隊決戦となると制約が多い兵器だ。それにあの程度なら機動要塞で防げる」
「攻撃の的確さを見るに、分析システムが優秀なのかも知れない」
「後は、あの謎の防御力か」
「ああ。普通なら轟沈してもおかしくない攻撃を受けているはずだ。にも関わらず戦闘能力を維持している」
「防御機構に何か秘密があるのかも知れない。いや、余程優秀な自動修復機構を搭載しているのかも」
「ガミラスの酸の海でも活動できた程だからな」
「むむ。否定できん。しかしあのコンパクトな艦のどこに、必要な資材を載せていたのだ?」
「何か特別な方法でもあるのだろうか?」

 転生者の間でも謎な『いつの間にか生える第三艦橋』は、ボラー人からすれば複雑怪奇だった。

「攻撃精度の高さも気になる。あれだけ被弾したなら、その影響で命中率は大きく落ちるはずだが」
「優秀なFCSがあるということだろう」
「しかし地球人は、ヤマトを越えるアンドロメダ級戦艦に加えて、さらにそれを超える新型戦艦を建造したらしいぞ」
「我々はそれらを凌駕する戦艦を建造しなければならないか……ボラーの意地にかけて」
「ということは排水量は20万トンを超えるかも知れないな」
「予算は?」
「べムラーゼ首相は確約してくれている。それに何百隻も作るわけではない。少なくて50隻。多くても100隻程度だろう」
「なら、豪華な艦が出来るな」

 議長達が聞けば卒倒しそうな会話を続けながら、ボラーは新型戦艦建造を急いでいた。

893earth:2011/10/07(金) 23:30:58
あとがき
タケミカヅチとアイルオブスカイ完成。
原作とは比較にならないほど充実した防衛艦隊です。
下手をすれば暗黒星団帝国軍は沖田、土方、山南、古代兄弟という面子の
迎撃に遭うでしょう……気の毒過ぎる(爆)。

894earth:2011/10/08(土) 09:56:42
第40話です。


『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第40話

 
 デスラーは不遜な第8艦隊司令官の発言に目を細めたが、気分を切り替える。

『だが我々がガミラス星を放棄したらどうするのだ? ガミラス星に奴らは群がるぞ。
 ガミラシウムを採掘しすぎれば星の寿命は縮み、結果としてイスカンダルは滅亡の危機にさらされる』
「少なくとも貴方方が何もせずにガミラス星を放棄するとは思えませんが?」
『ふっ。他力本願だな』
「いえいえ。ガミラスの能力については信頼しているのですよ。我々も嫌と言うほど思い知っていますから」

 ガミラスによって多大な被害を受けた筈の地球は、特に防衛軍の一部は、対戦相手であったガミラスをよく
理解していた。
 
「それで如何されます?」
『良いだろう。我がガミラスも停戦を活かして星の安全を確保するために必要な作業を行うとしよう。
 だが情報交換だが……』
「担当者を、そちらに派遣しましょう」
『担当者の名前は?』
「……古代守と真田志郎。この2名でどうです?」
『古代守?』
「はい。ヤマト艦長代理の古代進の兄です。中々に優秀な宇宙戦士です。『弟も』優秀でしたが、引けはとりません」

 心にも無いことをシレっと言う司令官。

『良いだろう。待っている』
「それでは失礼します」

 こうして会談は終った。
 この会談が終った後、必要な仕事を終えると司令官は医務室に直行した。

「……疲れた」

 胃薬を飲んでベットに横たわった司令官は弱弱しい声色でそう零した。それほどまでに疲れていた。

「お疲れ様」

895earth:2011/10/08(土) 09:57:39
 
 軍医の言葉に司令官は頷くだけだ。
 そんな司令官を見て、言葉を選ぶように軍医は続ける。

「しかし古代兄と真田さんを担当者にするとは」
「古代兄には成長してもらわないといけないだろう。古代弟と違って政治について多少は理解があるからな」
「弟はバーサーカー。昔で言うヤ○ザの鉄砲玉が関の山と……」
「そうだ。まぁ多少成長すれば使い物になるかもしれないが、落ち着いた頃には退役なんて可能性がある」
「ははは。確かに」

 復活編を知る人間としては否定できなかった。

「女王陛下は?」
「まだ意識が戻らない」
「どの程度で意識が戻る? あまり長居はできないぞ」
「まぁここ数日内には何とかなるはず。その件については大船に乗った気で」
「悲観的に考えて、楽観的に行動するのが鉄則だよ。常に最悪の事態も考えなければならないのが司令官の仕事だ。
 君らの腕を疑っているわけではないのだがね」
「……」

 軍医はお気の毒に、とばかりに肩をすくめる動作をする。

(イスカンダリウムの無害化(?)作業を進めよう。あとは暗黒星団帝国軍の逆襲への警戒だな。
 逃げ出した艦があるから、他の部隊がいてもおかしくは無い)

 予想以上の大部隊が現れた場合には、第8艦隊は速やかに撤退するつもりだった。
 いくら何でも部隊を全滅させるわけにはいかない。まぁヤマトとムサシで無双させることも考えたが、その場合
第8艦隊は壊滅してしまう危険があった(法則的に)。
 必要なら1個艦隊を犠牲にすることもあるだろう。だがここで艦隊を1個壊滅させるのはマイナスが大きかった。

(真田さんには過労死を覚悟で頑張ってもらおう。ゲーム版でも頑張ってくれたんだ。何とかなるさ)

 本人が聞けば噴飯物の考えだったが、司令官は半ば本気だった。

896earth:2011/10/08(土) 09:58:33

 会談の後、スターシアは漸く意識を取り戻した。その彼女の了承を得たことで、作業は一気に進められた。
 こうして第8艦隊はイスカンダリウムの無害化を進めていった(ちゃっかりサンプルも獲得)。
 
「お世話になります」

 病室でスターシアに頭を下げられた司令官は慌てて首を振る。

「いえ。この程度は手間のうちにも入りません。返しきれない大恩のある陛下に、多少なりとも恩を返さないといけませんし」
「気にしなくても良いのですよ」
「いえいえ。我々を破滅の淵から救ってくださったのですから、この程度は当然です。
 それよりも陛下、提案なのですが、地球に移民されるつもりはありませんか? 暗黒星団帝国軍、いえデザリアム帝国は
 このマゼラン星雲で活動しています。ガミラスもいずれサンザー太陽系を離れ、ここは無主の地となります。
 奴らが再び来ればイスカンダルは危険です」
「イスカンダリウムは使えなくするのでは?」
「彼らがどんな思考をしているかは不明な点が多いのです。それに我々はイスカンダル救援の際に彼らと戦端を開きました。
 彼らが地球に復讐を挑むために陛下を人質として利用するということも考えられます」
「……」
「イスカンダリウムは手に入れられなかったとしても、他の資源や技術を強奪していくことも考えられます。 
 反ガミラス勢力の中にも、ガミラスに対抗できるこの星の技術を得ようと動く者がいるかも知れません」
 
 これ以上、スターシアがこの星に留まるのは戦争の元になると主張する司令官。
 しかしあまり追い詰めるのも拙いので別の方向からも攻める。

「陛下と『サーシア』殿下によって救われた地球の様子を見ていただきたいのです」
「……」
「それに陛下が共に来てくださればイスカンダルの思想や記録は、地球だけで無く他の国家にも伝わるでしょう。
 イスカンダル本星がなくなったとしても、その影響は残ります。それは望ましいことだと思います」

 司令官、そして古代進やヤマトクルーの説得によって、スターシアは地球行きに同意することになる。

897earth:2011/10/08(土) 10:01:57
あとがき
ついに40話突入。ネタSSなのに更新が早いな(汗)。
あとスターシア生存フラグ来ました。
ヤマトのメインキャラにとっては優しい世界になるかも……。

898earth:2011/10/08(土) 23:01:43
第41話です。

『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第41話


 第8艦隊はイスカンダリウムを戦争に使えない物質に変換し、さらにイスカンダルに残されていた技術や資源を
片っ端から回収した後に地球に向けて発進した(ちなみに真田さんは過労で倒れ掛かった)。

「遥々、イスカンダルに来てスクラップや資源を回収。帰りは真珠湾攻撃の『飛龍』みたいに物資山積みか」

 司令官はそうぼやいたものの、成果は大きかった。
 これらを持ち帰った暁には地球の技術力を大幅に向上できることが期待できたし、スターシアが地球に移り住むことを
決めたので、スターシアを想うデスラーが率いるガミラスと再戦する危険を多少なりとも減らすことが出来た。
 さらに地球の大恩人であるスターシアを救出し地球に連れ帰るということで、防衛軍の地位向上も期待できる。
 何しろ移民すると言ってもスターシア一人。何万、何十万人もいるなら大問題だが、彼女一人なら問題は起こらないし
世論の受けも良い。

「まぁ連邦議会と防衛会議、それに議長や藤堂長官の仕事は増えるが……我慢してもらおう」

 このとき議長は衛星軌道でテスト中のアイルオブスカイを視察していたのだが、急に猛烈な寒気を覚えたと後に語っている。
 だが今後のことを考えている司令官と違って、ガミラス軍(停戦中だが)と対峙している他の人間は気が気でなかった。

「警戒は怠るな。コスモタイガー発進。直掩機は欠かすな」

 宇宙空母『グラーフ・ツェッペリン』では艦長がそう指示を出していた。
 勿論、表向きはデザリアム帝国を警戒してのことなのだが、実際にはガミラス軍の不意打ちを警戒してのことだった。
 確かに組織的に攻撃される可能性は低いが、一部の過激分子の攻撃がないとは言い切れなかった。何しろヤマトはかつて
ガミラス本星を壊滅させていたのだ。  
 自分達がガミラスを憎むように、自分達を憎んでいるガミラス人が居ないとは言い切れない……艦長はそう考えていた。

「それにしても、これがガミラスの本気か。停戦していなかったら大変なことになっていたな」

 ガミラス軍も各地の残党や植民惑星の生き残りを集めた。集結しつつある艦船の数は彼らの想定を超えている。
ボラー、ガミラスといった星間国家の力を防衛軍の宇宙戦士たちは改めて認識させられた。
 多数のガミラス艦に見送られて、第8艦隊は地球への帰途に着いた。

899earth:2011/10/08(土) 23:02:43

 地球人からすれば怨敵と言っても良い『デスラー』。
 だがその彼の思考はヤマトや地球への復讐よりもデザリアム帝国や反ガミラス連合に向けられていた。

「盗掘者と火事場泥棒共へ鉄槌を下すのが先だ」
「しかし総統、現状の戦力では……」
「判っているよ。タラン。まずはガミラスの再興だ。これは変わらない」

 デスラーはそういうと、戦闘空母の艦橋にあるスクリーンに星域図を表示させる。

「大マゼラン星雲、小マゼラン星雲。この2つの星雲には我々を受け入れる場所はないだろう」

 反ガミラス連合が形成されることから、周辺国は敵だらけであることは明らかだった。
 実際、ガミラス本星が健在なときは小マゼラン星雲にいくつも戦線を抱えていた。
 
「そこで我々は別銀河に本拠を求める。第一の候補としては銀河系だ」
「しかし総統、銀河系にはボラーが居ます。我々はもともとガトランティスと同盟を組んで奴らと敵対しました。
 今更、我々を見逃すでしょうか?」
「判っている。しかし他の銀河となると遠すぎるし、情報も少なすぎる。
 それにボラー連邦が巨大とは言え、銀河系全てを支配している訳ではあるまい。
 もしもそうなら、地球など当の昔に彼らの配下になっているはずだ」
「つまり辺境から調査していくと」
「そうだ。そしてまず仮の本星を設置する」
「仮の?」
「仮住まいとは言え、本星があるかどうかは重要だ。仮の本星は『ビーメラ星』とする。
 銀河系への前線基地があったバラン星にも近い故に、銀河系進出の拠点にも向いている。
 遊星爆弾による改造も短期間で出来るだろう。それに奴らは裏切り者だ。叩き潰すには十分な理由だ」

 ビーメラ星の親ガミラス(傀儡)政権は革命によって崩壊していた。
 
「直ちに用意しろ!」
「了解しました」

900earth:2011/10/08(土) 23:03:34

 ガミラスが新天地獲得に向けて動き出した頃、見るも無惨に艦隊を撃滅されたデザリアム帝国も動き出していた。

「聖総統閣下。残念ながら大マゼラン方面軍はほぼ壊滅した模様です。残存部隊が応援を求めているようですが」

 側近であるサーダの報告に、聖総統は動揺を見せることなく尋ねた。

「我が軍を打ち破ったのはどこの国だ?」
「地球、銀河系辺境にある星の艦隊のようです」
「地球だと? 確かガミラスを打ち破った国であったな」
「最近ではガトランティス帝国を打ち破ったとの情報もあります。加えてかの銀河系の大国と友誼を結んだとも」
「ふむ……」

 二重銀河を支配する暗黒星団帝国、いやデザリアム帝国の頂点に君臨する聖総統スカルダートは考え込むかの
ように暫く黙り込む。

「ふむ。徹底的に調査を行え。
 ガトランティス帝国とズォーダー大帝を打ち破っただけでなく、大きな後ろ盾を得たとなると一筋縄ではいかん。
 それと大マゼラン星雲だが、現状でこれ以上戦力を投入すれば他の戦線に悪影響が出る。
 大マゼラン方面については戦線を一旦縮小せよ」
「では、そのように」

 議長達にとって第三の試練となるデザリアム戦役の開幕が迫っていた。

901earth:2011/10/08(土) 23:06:57
あとがき
連続更新……体調が良くないのに何をしているのだろうか(汗)。
さて、第三の戦役の本格的開幕が迫っています。
尤もあれだけ強化された(まだ強化中ですが)防衛軍(下手をすればボラーとも)と
戦争となると地球侵攻部隊は無事に地球にたどり着けるのだろうか……。

902earth:2011/10/09(日) 11:20:08
第42話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第42話


 イスカンダルから帰還してきた第8艦隊からスターシアがネメシスに同乗していること、そしてスターシアが
イスカンダルを離れざるを得なかった理由が連邦政府に告げられると、連邦政府及び防衛会議は大混乱となった。
 新たな敵・デザリアム帝国の存在はそれほどまでに大きなショックを彼らに与えたのだ。

「騒いでいても話は進まん。
 とりあえず、サーシア殿下への墓参りとして、スターシア陛下が乗られているネメシスを火星に誘導。
 残りの艦はただちに月の防衛軍基地に帰還させる。物資や資源については細かい調査を月でした後に
 地球に持ち込むのが良いだろう」
 
 防衛会議の席での議長の提案はすぐに承認され、ネメシスと護衛のパトロール艦1隻、駆逐艦3隻の5隻は火星へ
向かい、残りの艦は月面の防衛軍基地に向かった。
 議長は必要な仕事を終えると、すぐに転生者たちとの密談を行った。尤も最近はレストランで密談をするよりは
連邦議会ビルの一室で行うのが主流になっていた。

「報告にあったとおり、いよいよデザリアム戦役が迫っている」

 議長は室内に入るや否や、そう告げる。

「幸い、デスラーとの間に暫定的ながら停戦を結ぶことが出来た。
 あとスターシア陛下を確保できたおかげで、彼女を仲介にすればある程度の交渉は可能になったと言えるだろう」

 これには財務次官が喜び、外交担当者はため息を漏らす。

「無駄な戦争が減らせるかもしれません。それにイスカンダルから得られたものも大きい」
「おかげでこちらの仕事は倍増ですが……まぁ仕方ないか」
「……まぁそのあたりは耐えて欲しい。
 問題はガミラスの横槍を恐れることなく、デザリアム戦役に専念できるということだ。尤もボラーの目があるが」
「ボラーを共に諌めてくれる国がないのが痛いですね」

 ボラー連邦は露骨に軍事演習を行い、さらに新型戦艦の建造も進めている。
 表向きはアンドロメダ星雲侵攻のためなのだが、実際には地球への牽制が含まれていることを彼らは察していた。
 地球連邦はこれに対応するために戦力増強に努める傍らで、ボラーの傘下の国家に接触していた。銀河系中心に
ある国々の中には、内心では反ボラーの国も少なくなかったが、実際に手を取り合えるかどうかは別だった。
 ボラーと地球では地力が違いすぎた。また方や超大国、方や漸く宇宙に進出した新興国。ブランドが桁違いだ。

903earth:2011/10/09(日) 11:20:58

「二重銀河を吹き飛ばせば銀河交差が起こる。それまでの我慢だ。
 まぁ戦力は充実している。原作ほど無様なことにはならないだろう」

 議長の言うとおり、防衛軍の戦力は大幅に拡充されていた。
 ヤマト、ムサシという2大戦艦に加え、タケミカヅチやアンドロメダ級5隻。8隻もの戦略指揮戦艦が揃っている。
 ガトランティス戦役で1隻も戦没することなかった主力戦艦もある。これに10万トン級の無人戦艦も加わる。
 まぁ主力戦艦の装甲はダンボールなので、正面から撃ち合うとなればどれだけ犠牲がでるかは判ったものではなったが。

「防衛拠点や哨戒網も充実しているから奇襲されることもない。重核子爆弾さえ対処できれば何とかなる」

 都市帝国の残骸、もとい下半分の小惑星は地球を守る最終防衛拠点となっている。
 コスモタイガー隊が配備されるだけでなく、ガミラスの冥王星基地にあった反射衛生砲を再現したものを搭載しており
防衛能力は高い。
 さらに遺棄されたガトランティス軍艦艇を資材にしてパトロール艦や哨戒機、各種索敵用機材が生産され、濃密な哨戒網が
太陽系に張り巡らされている。

「これだけあれば何とかなるでしょう。いや何とかしてもらわないと予算が無駄になる」

 財務次官の言葉に議長は頷く。

「判っている。まぁアイルオブスカイについては問題が多いが、迎撃や万が一の保険になるとなれば、そちらの不満も
 解消されるだろう」

 この言葉を聞いて前ヤマト艦長が思い出したかのように口を開く。

「エアフォースワンならぬ、コスモフォースワンと?」

 この言葉に誰もが納得する。幾ら勝算が高くなっているかと言って保険を用意するのは重要だった。

「しかしここまで充実すると敵が来ない可能性があるのでは?」

904earth:2011/10/09(日) 11:21:32

 外交担当者の言葉に一部の人間が凍りつく。
 だが議長が首を横に振ってそれを否定する。

「こちらを調査すればするほど、奴らは早期に地球を攻めようとするだろう。
 何しろこちらは天敵の波動エネルギーを使う文明だ。自分達の肉体を手に入れたいことも考慮すれば放置は出来ない。
 それに我々は太陽系の外に向けて膨張を続けている。ゆえに今のほうがまだ手薄と判断するだろう」

 シリウス、プロキオン、αケンタリウス等の新領土の防衛、それに地球と新領土を結ぶ輸送船団の護衛も防衛軍の任務であった。

「集団疎開を兼ねた移民計画も良いかも知れませんね」

 財務次官の言葉に誰もが頷く。
 特に復活編でブラックホールが来ることを知っている者からすれば、わざわざ他国の領土を間借りするなど御免被る事態だった。

「妨害がないうちに進めよう。銀河交差の混乱も利用できれば、SUSに対抗できる勢力を築ける」
「輸送船が大量に要りますね。やれやれ造船業界がまた儲けるのか」
「建設業界もだ。いやインフラ全般というべきか。しかしこうも忙しいと、潤いを与える娯楽産業も必要か」
「パンとサーカスを与えれば、市民は政府を支持しますからね」

 新たな儲け話に転生者たちは盛り上がる。軍隊と違って、投資すれば大きなリターンが期待できるのだ。
 掛け捨ての軍事予算より実入りが大きいと言える。

「レギュラー陣には見せられん様子だな」

 議長の言葉に財務次官は肩をすくめる仕草をする。

「汚い仕事をするのもモブの仕事ですよ。
 いっそのこと、我々のことは『舞台裏モブキャラ同盟』とでもしたらどうですかね」
「……開き直っているな。あとそのセンスはどうかと思うが」
「冗談の一つでも言わないと、やってられませんよ」

 こうして地球もデザリアム戦役に向けて着々と準備を進める。

905earth:2011/10/09(日) 11:24:34
あとがき
デザリアムは飛んで火にいる何とやらになる可能性が……。
しかしこうなると復活編はSUS、地球連邦、ガミラス帝国の三国志のような
光景が広がりそうです。
いやいっそのことSUSは早期にガミラスに潰されて、第二次ガミラス戦役と
いうこともあるかも……。
それでは。

906earth:2011/10/09(日) 18:54:14
続けて第43話です。


『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第43話

 サーシアの墓参りを済ませたスターシアは、ネメシスに乗って地球に向かい、連邦首都メガロポリスに降り立った。
 スターシアは余り派手な歓迎は好まなかったのだが、連邦政府や司令官の懇願もあり、連邦にとって恥かしくない
セレモニーがひらかれた。
 地球最大の巨大戦艦であるタケミカヅチが、国家元首であるスターシアを迎えるための21発の礼砲が放つ。
 さらに軍楽隊による演奏が始まる。報道陣は数こそ少ないが、入場を許可された記者達はこぞってカメラをネメシスに
向けてシャッターチャンスを逃すまいとする。

「こんなに大規模な式典なんて……」

 ネメシスの艦橋で様子を見ていたスターシアは眉を顰める。
 これを見た司令官は深々と頭を下げて詫びた。

「真に申し訳ございませんが、必要なのです。
 地球人全員の大恩人であるイスカンダルの女王陛下を歓迎しないなど、連邦政府の威信と信用に関わります」
「……」
「陛下がこのような式典をお嫌いなのは判っております。ですが、どうかご容赦の程を」

 スターシアがネメシスから降りると防衛軍、連邦政府高官が次々に頭を下げて彼女に礼を言うと同時に地球への
移住を歓迎した。 
 
「このたび、地球にとっての大恩人である陛下をお迎えできたことを光栄に思います」

 連邦大統領の演説に始まって、連邦首相、主要政党政治家、防衛軍高官(議長と藤堂長官)の挨拶が入る。
 尤も長旅の陛下のためとして挨拶は非常に短いものであったが。

907earth:2011/10/09(日) 18:54:57

「陛下を迎賓館へ」
「了解しました」
「マスコミは国営放送を除いてシャットアウトしろ。これ以上陛下に心労は掛けれん」
 
 大統領の指示によってスターシアはメガロポリスにある迎賓館に向かった。
 一方、この様子を見ていたヤマトクルーはお疲れ気味のスターシアを見て、連邦政府のやり方に不満を抱く。

「もう少し静かに迎えれば良いのに」

 古代進の意見に何人かのヤマトクルーが頷く。
 これを近くで聞いていた(というか聞き耳を立てていた)議長は目をむく。

(こ、この連中は……)

 議長は少し心を落ち着かせると、ヤマトクルーに声を掛けた。

「ご、ご苦労だった。ヤマトの諸君」
「議長?」

 議長の姿を見た古代弟や島、南部などが慌てて相次いで敬礼する。

「ま、まぁ君達の気持ちも判らないでもない。陛下もお疲れなのだから」
「だったら」
「最後まで聞いてくれ。
 次々に侵略者を迎え撃たなければならない連邦政府としては、威信や求心力を高めるものが必要なのだ」
「それがこの式典だと?」
「そうだ。国民の士気を上げるためには重要だし、ボラーや他の国家へのメッセージにもなる。
 少なくとも地球はイスカンダルの女王陛下が身を預けるに十分と判断する力をもっていると思ってくれるだろう」
「それは利用しているというのでは?」
「確かにそういった面もあるだろう。
 だがデザリアム帝国なる侵略者さえ地球に来る可能性があるのだ。
 そして彼らがガトランティス帝国以上の軍団を持っていないとは断言できん」
「……」

908earth:2011/10/09(日) 18:55:29

「もしも地球が弱いと思われたら、その隙に付け込もうとする輩もいるかも知れない。それは防がなければならない。
 君達が強いことは十分承知している。頼りになることも。だが物量に物を言わせて全方位から地球を攻撃されたら堪らない。
 敵は分断し各個に撃破する。これは戦場の基本だ。諸君も訓練学校で習ったはずだ」

 島や南部は納得した顔をする。古代も少し不満そうだが文句は言わなかった。

「私達年寄りが非力だから、こうなった。それは申し訳ないと思っている。だからこそ、君達若い世代に期待している。
 これからも『頑張ってくれ』」

 議長はそういうと敬礼する。古代はこれを見て慌てて答礼すると同時に元気よく答える。

「勿論です。お任せください!」
(いや、君達が負けるとは思っていないさ。
 でもこちらが全力で、誠心誠意で処理すれば、何とかなる範囲で勝負をつけてもらうと非常に助かるんだ。
 って言っても判ってくれないだろうな〜)

 議長が乾いた笑みを浮かべる理由など露も知らない古代弟だった。
 一方、古代守はこの式典の意味を察していた。

「土方さん。ボラーはどうでると思います?」
「私のような船乗りには判らん。だが地球という国家への箔が付くのは間違いないだろう」
「……第8艦隊司令や議長を見ると、これからの防衛軍は政治への理解も必要になるのが判ります」
「私もそうだ。今後のためにも訓練学校のカリキュラムを変更する必要がある。山南とも話をしてみる」
「時代の流れ……でしょうか」
「そうだな。だが君はまだ若い。頭の切り替えも早いだろう。議長が言うように次は君達、若者の時代だ」
 
 そういった後、土方の頭に有望な若者達の顔が浮かぶ。

「だが彼らが成長するまで、負けるわけにはいかん。私も沖田も次世代のためなら命を投げ出す覚悟だ」

 それは古い人間である土方の揺ぎ無い覚悟であった。

909earth:2011/10/09(日) 18:57:37
あとがき
ヤマトクルーも少しは成長していくでしょう。
まぁ古代弟が成長して使い勝手が良い指揮官になってくれれば言うこと無しですが。
もうそろそろ沖田艦長復帰です。
デザリアム帝国は防衛軍の豪華メンバーでお出迎えになるでしょう。

910earth:2011/10/10(月) 19:00:58
第44話です。


『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第44話


 デスラー率いるガミラス帝国残党はビーメラ星に無差別攻撃を敢行した。
 もはや嗜好品など嗜んでいられる余裕が無くなったガミラスにとって、この星を温存しておく意味などなかった。
 革命によって体制をひっくり返した者たちは、かつて自分達を支配していた主人が帰ってきたことさえ知る事無く
ガミラス軍が無慈悲に落としてくる遊星爆弾によって消し炭と化していく。

「何故、このようなことが……」

 漸く自由を勝ち取ったビーメラ星人たちは己の不幸を嘆くが、どうしようもなかった。
 弱かった。それゆえに彼らは滅ぶのだ。
 ヤマトクルーが何と言おうと、この世界は弱肉強食だった。

「所詮は通信機さえ使えない原始人と言うわけか。地球人とは比較にならん」

 デスラーはそう嘲笑する。だがすぐに表情を引き締める。

「ビーメラ星人の遺伝子情報は残っているのだろう?」
「はい。いずれ余裕ができれば、『家畜』として復元させるのも可能でしょう」

 タランは人類が考えている『人道』とはかけ離れた報告を平然と行う。だがそれを咎める者はいない。

「なら良い。今度は余計なことを考えることもなく、ただの食糧として生かしといてやろう。
 環境改造をした後は、すぐに『臨時』帝都建設を行う。準備を急げ」
「了解しました」

 降り注ぐ遊星爆弾によって吹き飛ばされ、直撃を免れても重度の放射能汚染によってビーメラ星人は次々に死に絶えていった。
 そして瓦礫と死体(又は肉片)の上にガミラス艦隊は降下し、かつてあった文明の痕跡を消し去って新たな文明を構築していく。

「これなら、数ヶ月で仮帝都は建設できるな」

911earth:2011/10/10(月) 19:01:32

 ビーメラ星が呆気なく死滅し、ガミラスの第二帝都(仮)が建設されつつある頃、銀河系調査のために派遣されたガミラス艦隊は
予期せぬ勢力と接触することになった。

「ガルマン民族だと?」
「はい。我々に非常に近い民族のようです」

 兵士の報告を聞いたガミラス艦隊司令官は逡巡した後、決断を下す。
 
「むむむ、銀河系辺境にそんな民族がいたとは。よし接触と調査を続けよ。ガミラス復興の手がかりになるやも知れない」

 ガミラス星人はもともと銀河系中心部から移民してきたガルマン民族の末裔だった。
つまりガミラス人は遠いご先祖様と遭遇したことになるのだ。勿論、接触当初は眉唾ものであったが各地でガルマン民族とガミラス人を
関係付ける証拠(主に遺跡)が発見されるにようになると、疑いを持つ者は急速に減っていた。
 だがすると次の問題が浮上した。そうガルマン民族の現状についてだ。

「ガルマン民族はボラー連邦の圧政下に置かれており、母星は完全に植民地化され市民は奴隷階級に落とされている。
 抵抗していた者たちは辺境に築いた拠点に逃れていたが、どれも消耗している……か」

 デスラーは眉を顰めた。
 何しろ彼にとって第一に復讐するべきはデザリアム帝国軍、そして火事場泥棒を働いた反ガミラス連合の者たちだ。
 ここで地球と付き合いがあるボラーと争えば、ヤマトを再び敵にしかねない。それは好ましくない。物事には順序というものがある。

「ガルマン民族を出来る限り脱出させよ。辺境地域には幾つか拠点がある。そこに収容するのだ。ただしボラー連邦に気付かれるな」

 こうしてガミラス帝国は銀河系中心部で零落していたガルマン民族を配下に加えていった。
 さらにこの件で、ガミラス人はガルマン民族の遺伝子情報から、自分達が放射能がない状態でも生きていける方法を発見した。
 こうしてガミラス人は放射能汚染なくして活動できるようになっていった。
 
「これなら新天地を獲得しやすくなる」
 
 デスラーは久しぶりに上機嫌だった。

912earth:2011/10/10(月) 19:02:03

 だがこの動きは、ボラー連邦軍によって察知されつつあった。

「ガミラス軍残党だと? 『ガトランティス』と同盟していたあの男が率いる軍勢か」

 側近からの報告にべムラーゼは苦い顔をする。何しろガトランティスと言ったらボラーの面子を潰した怨敵。
 そしてその同盟国となればボラーにとっては大敵だった。

「叩き潰せ。ガルマン民族とガミラス人が組むのなら、情け容赦はいらん! 本国艦隊も出して叩き潰すのだ!!」
「はい!」
「ああ、それと例の新型宇宙戦艦がロールアウトするころだと思うのだが」
「『スターレン』級ですか」
「あのテストを行いたまえ。実験には丁度良い相手だ。ガミラスはかつてヤマトに負けた。
 これを打ち破れば、少なくとも『スターレン』級がヤマトと互角以上に戦える船であることが証明できる。そうだろう?」
「ですが『スターレン』級はまだ初期タイプが6隻あるだけですが」
「構わん。6隻あれば十分だろう? ヤマトはただの1隻でガミラスを滅ぼし、白色彗星さえ砕いたのだ。
 それと互角以上の艦が6隻。これだけあればガミラスを完全に滅亡させても尚、お釣りが来るはずだ。そうだろう?」
「わ、判りました。『スターレン』級6隻を出撃させます」
「吉報を期待しているぞ」

 こうして超ヤマト級を目指して建造されたボラー連邦軍期待の超大型戦艦『スターレン』が発進していく。
 そのシルエットはボラーの艦とは異なり、むしろ地球の艦に近かった。
 大口径(56センチ)の砲を3連装5基(前後に2基、艦底に1基)に加え、中央には丸みを帯びた塔型の艦橋が備え付けられている。
 艦首には威力の強化とチャージ時間の短縮化を両立させた新型のボラー砲が搭載されており、艦底部には艦載機発進口が設置されている。
この他にも50門ものミサイル発射管があり、火力面ではアンドロメダどころかタケミカヅチを超えるものだった。
 加えて艦橋周辺には多数のセンサーやレーダーが設置され、高い索敵能力があることが判る。
 この排水量21万トンもの巨大戦艦、いや戦闘空母は関係者に見送られ、ガルマン民族とガミラス軍が居ると思われる宙域に向かった。

「我がボラーがその気になれば、ヤマトなど比較にならない戦艦を揃えられることを思い知るが良い」

913earth:2011/10/10(月) 19:04:20
あとがき
というわけでガミラスVSボラーです。新型戦艦も出撃します。
しかし相手はデスラー総統。どうなることやら……。
『スターレン』は……まぁ元ネタはお分かりですから敢えて言いません(爆)。

914earth:2011/10/11(火) 06:19:29
第46話です。


『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第46話


 ボラー連邦とガミラス帝国が戦端を開こうとしていた頃、デザリアム帝国は地球に関する情報の収集を必死に行っていた。
 その結果、地球がトンでもない国であることに気付かされていた。

「地球人類は狂戦士の集団なのかね?」
「……否定できません」 

 スカルダートの冗談半分(半分は本気)の言葉を、サーダは否定できなかった。
 何しろ地球人類は人口の8割を失っても抗戦し、波動エンジン関連技術を得た途端にガミラス相手に逆転勝利(相手の本星壊滅)。
さらに最近ではガトランティス帝国の移動首都(白色彗星)を1隻の戦艦で葬り、残った艦隊も無傷で殲滅したというのだ。 
 
「確かに、あの適合率と生命力とバイタリティは惜しいが……」

 さすがの聖総統閣下も躊躇する。
 機械化によって殆ど失われた筈の本能が告げるのだ。「彼らに手を出すべきではない」と。

「しかし聖総統、彼らを放置しておけば後に禍根になるかと」
「ふむ」

 今は自国のほうが技術レベルでは上回っている。しかしそれが続くとは断言できない。
 何しろデザリアム人は種として衰えつつある。一方の地球人は信じがたいほどのバイタリティで星間国家への道を突っ走っている。
 逆転されないと言い切るほど彼は楽観的ではなかった。

「ボラー連邦は?」
「支配している星の数に見合った生産力を持っています。ガトランティスに大敗したにも関わらず、戦力を回復させています。
 ですが内政面では問題が多いようです。付け込む隙はあるかと」
「ふふふ。『魔女』のお前らしいな。地球やボラーを正面から攻めるのではなく、搦め手でいくと?」
「はい。策はあります。ただしさらに情報の収集が必要ですが」
「判っている。存分にやれ。必要なものがあれば参謀本部に私の名前を出して言えば良い」

915earth:2011/10/11(火) 06:20:54

 デザリアムに対抗するべく地球防衛軍も軍拡を急いでいた。
 イスカンダルから得た技術や資源に加え、デザリアム帝国軍やガミラス軍の残骸は連邦にとっても色々と有益だった。
 強固な偏向シールドや装甲版などを回収したことで、従来の宇宙戦艦の砲撃力が非力であることが明らかに出来た。
議長と藤堂は防衛会議を動かして臨時の防衛予算を調達し、防衛艦隊の大改装計画を進めた。

「完成した戦略攻撃用潜宙艦は訓練航海を。ただし新規建造は遅らせて、その分の資材を戦艦群の改装に当てるのが良いだろう」
「了解しました」
「それと、藤堂長官、ヤマトはイカロスで改装させるのが良いかと。万が一のときも考えると……」
「ふむ。確かに」 

 議長の意見に藤堂は頷く。何かあったときの保険、それがヤマトの意義だった。

「ムサシはタイタン基地のドックで改造を急げ。本土防衛の穴はアイルオブスカイと実験艦隊で埋めれる」
 
 かくして防衛艦隊の艦船は順次ドックに入り、必要な工事を受けていった。
 特に主力戦艦の初期生産型は新型砲への換装や機関部の大改造(もはや新造)を受けることになった。
 一部の艦はヤマトと同様に46センチショックカノンを搭載(連装3基6門)すると言う魔改造が行われた。
 これによって敵の巨大戦艦の装甲を確実に撃ちぬける砲撃力や連続ワープにも耐えうる航行能力が手に入る。

「コスモタイガーⅡにかわる新型機の配備も急ぐ必要がある。制空権の有無こそ戦いの趨勢を決めるからな」

 ガトランティスやイスカンダルの技術を多く得ていたこと、ボラーという仮想敵がいたことにより、航空機の開発は急ピッチで
進められていた。
 これによってコスモタイガーⅡにかわる新型機、原作には無かった『コスモファントム』が配備されることになった。
 コスモパンサーほどではないが、高い戦闘能力と汎用性、そしてステルス性を兼ね備えた機体だ。
 これによって防衛軍空母部隊の攻撃力は大幅に向上することになる。尤も空母については艦の分類が変更されることになった。
 宇宙空母と呼ばれていた艦を攻撃型空母と分類することにしたのだ。

「いずれ配備される本格的な宇宙空母(正規空母)と混同されるのは拙いからな」

 議長はそう理由を述べた。

916earth:2011/10/11(火) 06:27:18

「あとは敵巨大要塞の攻略だが、ハイパー放射ミサイルの技術をボラーから得るのが良いだろう。
 引き換えに我々が得たガトランティスの技術や情報を提供する。まぁ出すものはこちらのほうが多くなるだろうが」

 このように新兵器開発を進める一方で、人的資源の保全も急がれた。
 デザリアム帝国のサイボーグ技術は医療において非常に価値があった。このためこの手の技術開発が急がれた。
また被弾した場合、従来の戦闘服では生存性が低いことも問題視された。

「これ以上、人が減ったら堪ったものじゃない」

 防衛軍高官の意見は、後方を担当する者にとって真理だった。
 一部の人間はあまり装備をすると迅速な戦闘行動に支障が出るということで反対したのだが、最低でも被弾した際に
発生するかも知れない毒ガスなどから身を守るためとして、戦闘時にはヘルメットだけでも着用することが決められた。
 さらに空間騎兵隊用にパワードスーツの開発も進められた。

「今の装備じゃ『死んで来い』と言ってるも同然だろう」
「でもこれって元ネタはボト○ズじゃ……」
「気にするな。使えるんだったら問題ない。モビ○スーツは大きすぎて使えないし、バル○リーは整備が大変になる」

 転生者たちはそう話し合いつつ(一部の人間は血涙を流したが)、新兵器開発を急いだ。 
 この新兵器開発と並行して、超能力の実験も進められた。
 尤もあまり露骨な人体実験はできないので、細々としたものだったが、それでも将来的には防衛軍の一翼を担う分野で
あると思われていた。 

「沖田艦長、土方艦長、山南艦長といった歴戦指揮官。さらに戦死していないヤマトクルー。
 これで新装備と超能力者があれば、ボラーともある程度張り合えるだろう……これだけ強化しても、私の華やかな出番はないのか」
「諦めてください。観艦式くらいなら出来ますよ」 

 秘書の突っ込みに議長は沈黙した。

「………世知辛いな」
「議長は後方で必要にされる人ですから。何せ防衛軍は前線も後方も人がいないので」
「……畜生〜!」

 議長の苦闘は続く。

917earth:2011/10/11(火) 06:29:17
あとがき
強化(もはや狂化(?))されつつある防衛軍。
一方、デザリアムは原作とは少し違った手を打つ可能性が出てきました。
べムラーゼ首相の上に死兆星が見える気がするのですが気にしない(笑)。

919earth:2011/10/12(水) 21:19:06
第47話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第47話

 一言で言えばガルマン・ガミラス連合軍は初戦から一方的な敗退を余儀なくされた。
 6隻のスターレン級に加えて、自軍の5倍以上の兵力を叩きつけられては、いくら精強で知るガミラス軍も一溜まりもなかったのだ。
 ガルマン民族の抵抗拠点は次々に潰滅し、脱出途中だった大勢のガルマン人は冥府に追いやられた。

「ボラーに逆らう者の末路だ!」

 機動要塞を預けられたボラー連邦軍参謀総長であるゴルサコフは、非戦闘員に対しても容赦なかった。
 多数の難民が乗る輸送船団に向けてマイクロブラックホール砲を撃ちこみ、周辺の少数の護衛部隊諸共根こそぎ殲滅。
さらに惑星の拠点にはワープミサイルとプロトンミサイルを撃ち込んで粉砕していった。 

「本星(仮)の本隊が銀河系に展開していれば……」

 ガミラス艦隊司令官は悔しがったが、どうしようもない。
 元々、銀河系に展開しているガミラス軍はあくまでも安全に調査を行うための部隊なのだ。ボラーと真っ向から勝負を
するのは分が悪すぎた。
 機動要塞とスターレン級戦艦6隻を中心とした大艦隊は物量を生かしてガルマン・ガミラス連合軍を押し潰すかのように
襲い掛かった。
 
「一旦、引け! 銀河系外縁にまで撤退し、本隊からの援軍を待つぞ!!」

 こうしてガルマン・ガミラス連合軍は後退していく。
 戦艦スターレンに乗るボラー連邦軍前衛艦隊司令官バルコムは、撤退していく連合軍を見て嘲笑すると追撃を命じる。

「追うのだ! 奴らを逃してはならない!!」
「了解しました」
  
 こうしてボラー連邦艦隊による猛烈な追撃戦が始まった。

920earth:2011/10/12(水) 21:19:45

 ボラー軍は量での優越に加え、新規に開発した航空機を投入して各地で優位に立った。尤も新型機の姿を見たら議長が吹き出した
のは間違いなかった。何しろその新型機はディンギル軍のそれに酷似していたからだ。
 可変翼の単発戦闘機はガミラス軍戦闘機と互角に戦い、水雷艇を小型化したような攻撃機は俊敏な動きで連合軍艦艇にミサイルを
見舞っていく。
 これらは、本来なら喜ぶ光景なのだが、バルコムは苦い顔だった。

「多少格好はつかないが、仕方あるまい」
 
 ボラー軍はディンギルに勝った。だが受けた損害も少なくなかった。故に彼らはディンギルの優れた点を取り入れたのだ。
 強化された圧倒的航空戦力、さらにスターレン級の新型ボラー砲が連合軍に振り下ろされていった。  
 しかしガルマン人も意地を見せる。

「反撃しろ!」

 ガルマン民族の抵抗組織の幹部であったダゴン(連合軍結成に伴い将軍になっている)は、驚異的粘りで戦線の完全崩壊を防ぎつつ
起死回生の切り札として辺境の抵抗拠点で開発された次元潜航艇がボラーの側面を突く。
 突如として行われた亜空間からの攻撃にボラー艦隊は大混乱に陥った。

「どんな手品を使ったというのだ?」

 バルコムは歯噛みするが、対抗手段がない以上、どうしようもない。
 だがそれでもスターレン級は撃沈されなかった。技術者達が太鼓判が押した防御力が発揮された瞬間だった。
 従来の戦艦なら最低でも大破、下手をすれば轟沈していてもおかしくない攻撃を受けても尚、戦闘能力を継続する姿はボラー軍の
意地を見せ付けるものだった。

「素晴らしい、これがスターレン級か。ふふふ、この艦が量産された暁にはガトランティスや地球など物の数ではないな」

921earth:2011/10/12(水) 21:20:18

 一方の連合軍にとっても。このスターレン級の打たれ強さは驚きだった。

「何と言う防御力だ」
 
 フラーケンは驚嘆するが、すぐに思考を切り替える。

「奴らの後方を徹底的に撹乱し、味方を援護する」

 後にガルマンウルフと称されるようになる活躍によってボラー連邦軍前衛艦隊は少なからざる打撃を被り、進撃速度を
落さざるを得なくなる。
 
「小癪なガルマン人共め!」

 報告を受けたゴルサコフは忌々しげに、はき棄てるように言った。
 だがそこには粛清に対する恐怖も見え隠れしていた。ディンギルを潰して多少は面目を取り戻したとはいえ、所詮相手は
一恒星系の国家に過ぎない。ボラーからすれば格下も良いところなのだ。
 ここで再び躓けばボラー連邦軍は三流の烙印を押される。そうなれば軍制服組のトップである彼は粛清対象になる。

「バルコムを急かせろ! いや機動要塞も前に出せ!! 力押しだ!!」

 一方、デスラーは本星(仮)からガミラス艦隊主力を引き連れて出撃し、銀河系に急行していた。

「奴らの鼻っ面を叩き折り、味方を救出する」
 
 デスラーはボラー軍の大軍や戦いぶりを見て、士気を喪失するどころか逆に戦意を高めた。
 要塞攻略のために威力を高めた新型デスラー砲の試作品(ハイパーデスラー砲のプロトタイプ)を搭載したデスラー艦、ボラーの
物と同等の威力を持つプロトンミサイルなどを装備したガミラス艦隊が銀河系に来襲しようとしていた。

922earth:2011/10/12(水) 21:23:57
あとがき
ボラーに色んなフラグが立っている気がするが……多分、気のせいです(爆)。
次回、デスラー参戦。銀河大戦前倒しでしょうか……。
それでは。

923earth:2011/10/13(木) 23:58:42
短めの閑話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第47.5話

「タケミカヅチに続いて、北米州の戦艦アリゾナ、アイオワも配備された。主力戦艦が改装に回されている状況では有難い」

 執務室で報告を受けた議長は、久しぶりに機嫌がよさそうな顔で頷いていた。
 
「それに、これらの艦のデータがあれば、次世代の戦艦建造にも弾みが付くな」

 ボラー連邦がガルマン・ガミラス連合軍を押し潰している頃、地球防衛軍は次世代の戦闘艦艇の開発に余念が無かった。
 ガミラスとは一時的に停戦したが再戦する可能性はゼロではないし、ガトランティス帝国は侵攻部隊主力と首脳部が壊滅したとは
言ってもアンドロメダ星雲の本国は健在。今は友好国だがボラーだって何時、敵に回るか判ったものではない。

「平和は次の戦争への準備期間に過ぎないのです」

 防衛会議の席で議長が言った台詞は真理だった。
 連邦政府は防衛予算の際限のない増額には歯止めを掛けつつも、外患に対応するために可能な限り予算を出していた。
加えて『原作』よりも消耗が少ないことも、防衛軍に余裕を持たせており、十分な時間を掛けた設計や試験運用を可能にしている。
 
「これで新型戦艦はダンボールどころか、風船みたいに爆発しないで済みそうだ」

 集束モードと拡散モードを使い分けられる『拡大』波動砲を搭載した新型戦艦。
 完結編ではディンギルの奇襲戦法によって呆気なく殲滅され、一部の転生者にとってはトラウマ物のこの艦は、防衛軍の期待の星だ。
 何しろ拡散波動砲搭載艦と集束型波動砲搭載艦を両方配備し続けていくのは面倒だったのだ。
 既存の戦艦の改装は、この戦艦で使われる各種装備のテストという一面もある。
 一方で巡洋艦についてはひと悶着起きていた。
 イスカンダルへの航海から「既存の巡洋艦以下の艦艇は遠洋航海には適していないのでは?」と言う意見が台頭していた。
 波動エンジンによって長大な航続距離は確保できたが、長距離航海は乗組員への負担は大きいのだ。

「さてさて、どうするべきか……」




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