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避難用作品投下スレ4

688十一時五十七分/奇跡が起こるような、そんな:2009/04/13(月) 14:53:13 ID:NaKun74s0

*** 7. -10sec


吹く風すらもが燃え尽きたように止まった蒼穹の下、ただ砧夕霧の唄だけが響いている。
最早、遮るものはない。
遂に開けた最後の道へと、蝉丸が地を蹴った。

距離は数十歩。
目印など何もない。
だが、分かる。
そこには力が満ちている。
満ちた力が夕霧を導くように、或いは夕霧の求めに応えるように、その場所が呼んでいる。

走る。
時が満ちようとしていた。

駆ける。
ほんの数秒。
僅かに、勝った。

踏み出す。
夕霧を抱いた腕に、力を込めた。
その、刹那。

「―――届かないのは、君たちだ」

聲が、哂った。

止まらない疾走の中で、蝉丸の目が、何かを映していた。
正面、遥か遠く。
方角は西。
背後には雲ひとつない晴天を従えて、何かが立っている。
瓦礫。
崩れ落ちた、二刀の像。
その瓦礫の中。
小さな、小さな影が、立っていた。
つがいの、童子。
二人の童子の手に、一杯に引き絞られた弓。
鋭い、鏃が、見えた。

坂神蝉丸が、砧夕霧を庇うように身を投げ出したのは、半ば本能のなせる業である。
ほんの一瞬、間を置いて。
その背を二本の矢が、穿った。

疾走が、止まった。


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