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避難用作品投下スレ3

483幸せな固執:2008/04/08(火) 23:23:41 ID:yrmGipuE0
「ごめんなさい氷上君、五分だけ頂戴。五分だけ、あなたの時間を貸して」

シュンの返答を待つことなく、香奈子は勢いのままシュンの胸倉を引き寄せそこに顔を押し付けた。
当初シュンが着用していたセーターは河野貴明の元に置いてきている、シャツごしに伝わるシュンの温度は香奈子が想像していたよりもずっとリアルに伝わってくるだろう。
筋肉の硬さも贅肉の柔らかさも感じないシュンの病的に骨ばった胸板、しかし今の香奈子にとってはどこよりも安心できる場がそこだった。
それと同時に感じるせつなさに酔う前に、香奈子は願いを口にする。

「五分だけ、思いっきり抱きしめて」

断ち切ったはずの月島拓也への思い。
それでもあっさりと過去を切り捨てられるほどの強さを、香奈子は持っていない。
そんな軽い執着でもない。
そんな香奈子の前に現れた光景は、過去の自分を彷彿させるものだった。
簡単に表そう。彼女の奥底にあるのは、ちょっとした不安にすぎない。
その不安が彼女の精神を軽い混乱に陥らせようとし、疲弊させた。
しかし今、それら全ては解消されることになる。

ゆっくりと回されたシュンの腕、その居心地の良さが香奈子のそれを消していった。
安心という言葉の意味を、ここにきて再び香奈子は痛感した。





ちょうど香奈子が落ち着いた頃だろうか。
第一回目の放送が行われ、二人は放送にて呼ばれた人数に唖然となる。
幸いシュンの会うことが目的となっている人物等はまだ生存しているらしいが、それも時間の問題だろう。

「この先に学校があるのは確かだと思う。当初の予定通り、まずはそこに行こう」
「ええ」


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