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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第九章

100崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2022/11/25(金) 10:34:11
>おはよう。準備は出来てるか、モンデンキント――焦らなくてもいい。少し早く来すぎたかもしれない

「おはよ、エンバース。ううん、大丈夫だよ……今さっき準備ができたところだから」

エンバースにノックされ、部屋のドアを開ける。
今日の服装は姫騎士の鎧でも流水のクロースでもない。キトンという亜麻色の一枚布を身体に巻いて群青色の腰布を締めた、
ノースリーブミニワンピースのような出で立ちだ。脛まである編み上げのサンダルを履いたその姿は、
古代ギリシャやローマの民のように見えるだろう。
前日の夜、エンバースから予定を空けておいて欲しいとのメッセージを貰ったなゆたはすぐに『いいよ!』と返事を送った。
四日後の決戦まで、パーティーは各々自由時間を取ることに決まった。きっとエンバースのことだから、
この四日間をフルに使ってじっくりと装備の選別に費やすのに違いない。
エンバースの正体がかつて日本のブレモンシーンを大いに沸かせたリューグークランのリーダー、
ハイバラだというのは周知の事実であったし、そんなエンバースに同行して彼の行う下準備を見たなら、
きっと大いに勉強になるだろうと思ったのだ。
エーデルグーテにはアルフヘイムで流通しているほぼ全てのものが手に入る。聖都の中で用事を済ませるなら、
きっと戦闘に至ることはないだろうとの判断から、防御力のある装備でなく動きやすい薄着にしたのだった――けれど。

>よし。それじゃ――ヒノデに行こう。エンデはどこだ?近くにいるんだよな?

「いるよ」

ひょこ、と眠たげな表情のエンデがなゆたの背後から顔を覗かせる。
その腕にはポヨリンがまるで抱き枕のように抱えられている。どうやらなゆた(とシャーロット)のパートナー同士、
仲良く眠っていたらしい。

「ヒノデ?」

>〈ヒノデ?何故また、そんな所まで……〉

なゆたとフラウの声がハモる。
てっきりエーデルグーテの中を歩くとばかり思っていたなゆたは、不思議そうに小首を傾げた。

>理由なら幾つかある。まず第一に……今の俺は正直言って力不足だ。
 ダインスレイヴとハンドスキルだけじゃ、この先の戦いは多分乗り切れない。
 デッキを組み直す必要がある……が、俺のカードファイルはほぼ全て焼失しちまってる

>〈カードが必要なら、パーティの皆さんに譲ってもらえばいいのでは?〉

>ガチャ産じゃないユニークアイテムの殆どは、トレード機能の対象外なんだよ。
 当面、俺が絶対に確保しておきたいカードもそうだ。それに――
 そういうのは、ちゃんと自力で入手しないとだろ?

「なるほど」

納得した。かつて、グランダイトを懐柔するためにはテンペストソウルが必要と言われたときのことを思い出す。
当時は事前にゲーム内で手に入れていたテンペストソウルを渡そうとインベントリを漁ったものの、
確かに存在していたはずのソウルはなぜかインベントリの中から忽然と消滅してしまっていた。
それと同じように、ストーリーのイベント絡みだったり一定のレアリティを持つユニークアイテムの類は、
きちんとこの世界で段取りを踏まなければ手に入らないらしい。
自分で使うものは人から譲られるのではなく自らの力で手に入れたいという、
いかにもゲーマーらしいエンバースの言い分も分かる。
エンバースは他にも幾つかヒノデに行く理由を挙げたが、なゆたとしては特に拒絶する理由はない。
元々アウトドアの好きな気質だ、旅行気分で遠出するのもいいと思っている。
そして――

>それと……これが一番大事な事なんだが」
>俺がお前とつるんで、どっか行きたいから……とか

「え……」

意外な一言に、ぱちぱちと目を瞬かせる。

>ほら……こないだヒノデに行こうって話をした時は結局ポシャっちまっただろ?
 俺、あの時結構楽しみにしてたんだよ。だから今からでもどうかな……なんて

まさかエンバースの口からそんな言葉が聞けるとは思っておらず、戸惑ってしまう。
けれども決して不快という訳ではない。
元々、ヒノデに行こうと提案したのは自分だ。あのときはオデットの意向によって聖都に軟禁されてしまい、
遠出の計画もそのまま頓挫してしまっていたのだが、まさかエンバースがそれを密かに楽しみにしていたなんて知らなかった。
おまけにそれを今でも覚えていて、この機会に一緒に行こうと誘ってくれるなんて――。

「……あは」

なゆたは両手で頬を押さえ、にやけそうになる口許を何とか堪えた。
エンバースが鍔広帽を弄びながら返答を待っている。クールで皮肉屋のエンバースだけれど、そんな様子は可愛らしいと思う。
込み上げる嬉しさと気恥ずかしさ、照れくささの綯い交ぜになった感情を抑えるのにひどく梃子摺り、
なゆたはたっぷり十秒ほどの時間をおくと、

「うん。行こ」

エンバースの顔を見上げ、はにかみながら応えた。


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