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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

24明神 ◆9EasXbvg42:2020/04/07(火) 06:09:36
ガタゴトガタゴト揺れる馬車。
真新しい轍と、一面に広がる銀世界ならぬ金世界は、もう何日も代わり映えしない。
幌に背中を預けながら、俺は本日何度目かの大あくびをした。

「暇だよぉぉぉぉぉん……」

後方警戒を任じられた俺だったが、ぶっちゃけ何かやるべきことがあるわけでもない。
穀倉都市デリンドブルクはアルメリアの中でもかなり平和な地域で、敵対的なモンスターも少ない。
あぜ道を進んでいく馬車を、わざわざ追いかけてまで襲撃するような存在はそもそも居ないのである。

そして、敵性モンスターにかち合うとすれば、それは馬車の進行方向。
つまりカザハ君とエンバースの受け持ちであって、俺の出番はやっぱりなかった。
まぁ平和なのは良いことですわ。レベリングのために狩りしてるわけでもねえしな。

これが船旅なら、まだのんびり釣り糸でも垂れてれば良かった。
しかし見渡す限りの麦畑に釣り針を投げたって、作物にたかる虫ぐらいしか引っかからないだろう。
かといって幌の中に引きこもって警戒を疎かにするわけにもいかず、まったくの手持ち無沙汰だ。

こうも揺れてちゃ、スマホ弄るのも難しい。
俺三半規管弱い人だし。ソッコーで乗り物酔いしそう。

そういうわけで、空前絶後のヒマに襲われた俺は、見張りがてら魔法の練習をしていた。
アコライトの戦いじゃたった2回魔法使っただけでガス欠になっちまった。
魔力の節約、効率の良い使い方の研究、基礎的な魔力量の向上……こなすべき課題は多い。
ジョンが引きこもっちまってる以上、護身術の訓練は出来ない。その分の時間を、有効活用すべきだ。

バロールの魔法マニュアルを読破し、アコライトのオタク殿たちにも相談にのってもらって、
まず魔力の性質について理解を深めることにした。
ここ4日くらい魔力を引き出してはこねくり回す中で、大体どういうものかわかってきた。

魔力は、あらゆる生き物が体内に有する、カロリーとは別のエネルギーだ。
意志によって自在にコントロールでき、肉体を活性化させたり、体の外に引きずり出すこともできる。
生物と同様、大地にも膨大な魔力が巡っていて、これを抽出・加工したものがいわゆる成形クリスタル。

体外に出した魔力は、形状や性質を自在に変えられる流動体のように振る舞う。
そのまま発射すれば弾丸となり、武器に纏わせれば強固な被膜と化して威力を引き上げる。
そして、呪文や魔法陣によって独自の性質(属性)を付与し、特定のはたらきをもたせる技術が、『魔法』だ。

「ジョン、いるか?」

幌を開けて中に軟禁されてるジョンに声をかける。
こいつはアコライトの牢屋から馬車の中までずっと隔離されたままでいた。
今はおとなしくしてるようだが、そのうち暇すぎて発狂しちまうかもしれねえからな。
何かしらの娯楽は必要だろう。

「不肖明神、一発芸やります。御覧ください」

練り上げた魔力を糸状に変化させ、あやとりのように指の間へ張り巡らせる。
先端に掌サイズの円盤をふたつくっつけた、ヨーヨー状の物体を生成。
巡る糸同士の間をぶらぶらと揺れるヨーヨー、その姿こそすなわち!

「――ストリングプレイ・スパイダーベイビー!
 ……以上です。ご観覧ありがとうございました」


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