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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

97崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/11/01(金) 19:58:35
ジョンの告げる非情な作戦に、食堂は騒然となった。
特に、『戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)』を今すぐ誰かに使え――という提案に、マホロは暗い表情で奥歯を噛みしめる。
帝龍はマホロを狙っている。ブレモンきってのステイタスである彼女の唇を。
それを。戦いのために捨てろと言うのだ。

>うおおおおおおおっ!

何を思ったか、カザハが突然なゆたの傍にいたポヨリンを担ぎ上げ、雄叫びをあげてマホロに突撃しようとした。
その狙いは明らかだ。マホロの接吻をポヨリンに与えようというのだろう――が。

『…………ぽよっ!!』

ポヨリンは憤怒の表情を浮かべると、カザハに向かって渾身の頭突きを繰り出した。至近距離のカザハに避ける術はあるまい。
ゴギンッ!!という音が鳴り響き、カザハの顔面にポヨリンの額が炸裂する。カザハの頭上に『CRITICAL!』という表示が出る。
カザハからぴょんと飛び降りると、ポヨリンはすぐになゆたの許に戻った。
なゆたも両手を広げてポヨリンを迎え、胸に抱きしめる。
ポヨリンはなゆたに抱きしめられながら、カザハへ向かって非難がましい声をあげた。

『ぽよっぷぅ〜! ぽよっぽよよっ! ぷぅぷぅ!』

「カザハ、減点10。
 ポヨリンにキスしていいのはわたしだけ! わたしがポヨリンの恋人なんだから!
 あなたのやろうとしたことは、マホたんにも。ポヨリンにも。わたしにも。そして兵士のみんなにも失礼なこと。
 どんな有効な作戦だって、人の心をないがしろにすることは絶対にやっちゃいけないんだ」 

そう。カザハのやろうとしたことは、誰の心をも踏みにじる行為だ。
ただただ効率とか、目的だとかのために、皆の心を無視した蛮行だ。
例え冗談のような行動であっても、いや、冗談めかしているからこそ、なゆたにはそれを承服することはできなかった。
同様に。ジョンの提案もまた、なゆたには到底肯定できるものではない。
一見有効なようなその作戦は、持たざる者の立場に立っていない。
それは持ちうる者の感覚に基づいた提案だった。自分がもし、持たざる者の立場だったなら。見捨てられる兵士の側だったなら。
帝龍の提示した条件が『戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)』でなく、守ると誓ったなゆたたちの命だったなら。
最愛の部長と引き換えに兵士たちを助ける、などという内容であったなら――
彼は、今ほど冷徹な判断が下せただろうか?

「そう。人の心を考えない作戦は、絶対にやっちゃいけない……」

その後も作戦会議は続いた。
明神がジョンに食って掛かり、エンバースが新たな作戦を提示して力尽き、多くの作戦が浮かんでは消える。
そして、あらかたの議論が出尽くした末に。
その総括をすべく、なゆたは荘重に口を開いた。

「――わたしたちは、ここへ何をしに来たのかな」

一同を見渡し、そう問うてみる。

「わたしたちは、世界を救いに来たんだよ。その手始めに、アコライト外郭を助けに来た。
 じゃあ、世界ってなんだろう? アコライト外郭を守るって、どういうことなんだろう?
 ね……みんな、それをもう一度考えてみてよ」

なゆたは噛んで含めるように皆に対して告げる。
抱いていたポヨリンをそっと下ろし、長机に手をついて、パーティーの仲間たちひとりひとりに語り掛けてゆく。

「わたしは思うんだ。世界ってさ……人のことなんだって。
 ヒュームだけじゃない、エルフも、ドワーフも、シルヴェストルもみんな……このアルフヘイムに住むすべての人たち。
 その人たちが手を取り合って、絆を作って、その輪がどんどん大きく繋がっていく……。
 それが世界なんだって。単にこの空と大地を、自然だけを守ったって、そこに生きる人がいなくなってしまったら。
 わたしたちの世界を守ったっていうことにはならないんだよ」

静かに、しかし決然とした様子で、なゆたは言葉を紡ぐ。


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