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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

89明神 ◆9EasXbvg42:2019/10/28(月) 00:26:52
「待てよ。確かに接吻を使わずに腐らせ続けるのは合理的じゃない。
 スキルの消費が帝龍にさえバレなければ、『人質』としての接吻の効果も維持できるだろう。
 だけどそれは、ユメミマホロが『みんなのアイドル』じゃなく、誰か一人に傅く戦乙女になるってことだ」

帝龍と、やってることは何も変わらない。
帝龍という脅威を交渉材料にして、マホたんから戦力を接収することに他ならない。

「オタク殿たちは、300人の兵士たちは、マホたんの為に命懸けでここまでアコライトを護ってきたんだ。
 故郷に残した家族の顔も見れず、死んでいった人間だって二桁じゃあ済まねえだろう。なのに……」

結局、俺は自分が唾棄してきたヒューマニズムを、偽善を、捨てることができないらしい。
この期に及んで、言うべきことなんかじゃなかった。それでも、言わずにはいられなかった。

「――アイドルを失っちまったら、彼らは今までなんのために戦って、死んでいったんだ」

アコライトにおけるユメミマホロの存在は、単なる戦地慰問の為のアイドルなんかじゃない。
もっと原義でのアイドル、偶像、崇拝対象として、兵士たちの心の拠り所だった。
『祝福』そのものであるユメミマホロを、俺は彼らから奪うことができない。

>『マホロ・・・君が『戦乙女の接吻』を出し渋って、この中の一人でも・・・
 もし欠けるような事になったら・・・その時は帝龍の後に僕が君を殺すぞ』

ジョンの底冷えがするような声音を、俺は初めて聞いた。
いつも陽気で、俺たちのことを気にかけていて、微笑みを絶やさなかったこいつの――『殺意』。
俺に向けられたものじゃなくても、全身の毛穴が開くのを感じた。

「お前……」

わかったのは、俺がジョン・アデルという人間を、ちっとも理解できてやしなかったって事実だ。
こいつは自衛官で、ヒーローで、マホたんと同じように過酷な環境に『救い』で在り続けた。
この戦いでも、変わらず皆を鼓舞する存在であってくれると、無根拠に信じ切っていた。

だけど……こいつは自分で言ってたじゃねえか。
クーデターのときに、腹の中身を見せてくれたじゃねえか。

>『ブライトゴッド・・・君が羨ましいよ・・・本気で人を想える君が・・・』
>『僕はね・・・本当は君が思ってるほどいい奴じゃないんだ、自分の事しか考えていないクソ野郎なんだよ』

こいつは俺が思うような聖人君子じゃない。
英雄のガワを被って、偶像を押し付けられて、喘ぎながら、絶望しながら、光を求めて這いずっていた。

アイドルを完璧にこなすユメミマホロに相対して、こいつは一体何を感じたんだ?
俺たちは、こいつが静かに上げる悲鳴を……何度聞き逃してきたんだ?

>「僕はなゆ達を必ず守ると誓おう」

ジョンが守ると誓ったそこに、マホたんはおろかアコライトの全ての者たちが入っていない。
親友になりたいとこいつが言った、俺たちだけを……こいつは誠実に守ろうとしている。
守れもしないのに、何でも守るなんて喧伝して回るのは、ただの不実でしかないのだから。

>「……待て。結論を出すのは……まだ、早い」

何も言えなくなった俺の代わりに、エンバースが二の句を継いだ。
その両眼の炎は呼吸するように大きくなったり小さくなったり、安定しない。
知ってる。こいつが何か妄念じみたものに頭を支配されるとき、こんな揺れ方をするのだ。

>「要約しよう。求められる条件は、こうだ……第一に、兵士と街は見捨てられない」

エンバースの語りは、俺たちの反応を待たない。
矢継ぎ早に重ねる言葉は、まるで二人の人間が交互に喋っているかのようだ。


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