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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章
46
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2019/10/11(金) 22:48:29
《オマエがワタシの軍門に下り、『戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)』を捧げるなら、助命を受け入れてやるアル。
このまま、ジリ貧で疲弊してゆき惨めに全滅するより、よほどいい条件だと思うアルが? くふふ……》
「だ……、誰がッ!
あなたなんかにあたしの純潔を捧げるくらいなら、死んだ方がマシよ!」
《オマエの意地のために、300人の兵士を犠牲にしてもいいということアルか?》
「…………!!」
痛いところを突かれ、マホロは俯いた。
敵である帝龍に『戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)』を捧げるなど、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の矜持が許さない。
いや、それ以前に女として生理的に無理である。帝龍は蛇のように陰湿で、残酷で、無道な男だ。
しかし、といって自分の意地や嫌悪でアコライトを守備する兵士たちの命を危険に晒すことはできない。
《素直になるアル、マホロ。
オマエがワタシのところに来るだけで、すべてが解決するアル。
嫌なのは最初だけアル……すぐに、ニヴルヘイムの方が居心地がいいとわかるアルよ?
そんな死に体の世界など見捨てて、オマエもこちらに来るアル。
ニヴルヘイム最強の我が軍団の庇護下にあれば、オマエはもう何も思い煩うことはなくなるアル!
そんなくだらん城塞で! ゴミのような兵士相手に歌い! 踊り! 媚を売ることもなくなる!》
「………………」
俯いたまま、マホロはぎゅぅ、と強く強く拳を握りしめた。血が出るほどに強く唇を噛む。
《ワタシの歌姫になるアル、マホロ!
オマエの歌声は、煌めく姿は、最強の『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の許にいてこそ光り輝く――!
さあ――この世界でも! ワタシがオマエをスターダムにのし上げてやるアルよ、ユメミマホロ!!》
帝龍が哄笑する。
確かに、条件としては悪くないのだろう。マホロひとりを引き換えに、300人の兵士たちを助命する。
一時的にでも帝龍が軍を引けば、その間はアルメリアも体勢を立て直す猶予が生まれる。
単純に損得を考えた場合、帝龍の提案を飲むことは決して悪いことでは――
「…………ふざけるなッ!!!」
なゆたが叫ぶ。
「多勢に無勢で城塞を取り囲んで、真綿で首を締めるみたいに追い詰めて!
助けてやるですって? 自分のものになれですって? その代わりにみんなを助ける? 冗談言わないで!
あなたのやっていることは、ただの卑劣な謀略よ!」
《フン。勇ましいことアルネ……『異邦の魔物使い(ブレイブ)』。
ならどうするアル? この圧倒的な戦力差! 単純な数の差はどうあっても埋められないアルよ》
「それを覆すために、わたしたちはここへ来た。
兵力の多寡なんて関係ない! これから、それをたっぷり思い知らせてあげる――!
マホたんがそっちに行く必要なんてないわ。これから……わたしたちがそっちへ行ってやる!
ご自慢のトカゲ軍団を、全部蹴散らしてね!」
びしぃっ! と右手の人差し指で空中の帝龍を指す。
帝龍は愉しそうに嗤った。
《ほぉ〜。それは、死にたいですという意思表示アルか? 面白い!
であればワタシも手加減はしないアル。そんなチンケな城塞、一日あれば破壊できるということを証明してやるアル。
バロールやガザーヴァの力がなくとも……アル!
マホロの前で頼みの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を皆殺しにして、心を折ってやるのもいいかもしれないアルネ!》
帝龍の言いようはいかにもサディストといった風である。
やると言ったなら、帝龍は本当にやるだろう。地球でも目的のためには手段を選ばず、黒い噂の絶えなかった男だ。
《今日の戦闘はもう終わりアル、侵攻は改めて明日の正午から始めるアル。
それまで遺書を書くなり、今生の別れを惜しむなりするがいいアル……くふふッ!》
終始圧倒的優位にある者の余裕を見せつけたまま、帝龍は通信を切った。
その顔が霧のように薄れてゆき、やがて消える。
束の間の会談は終わった。
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