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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章
4
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2019/09/24(火) 22:19:16
古今東西、籠城戦というものは酸鼻を極めたものになりがちである。
孤立無援で増援も物資の供給も断たれ、それでも持ち場を死守して戦わなければならない。
食糧は枯渇し、雑草をむしって食べる者、軍馬を殺して食べる者もいる。――いや、それならばまだマシな方だ。
中には進退窮まり、死んだ仲間の亡骸を貪ったり土を食べる者まで出始める。
激戦で埋葬する手が足りず、戦死者の亡骸がその場に放置されるということも珍しくない。
そんなとき、何が起こるかと言えば――死体の腐敗による疫病の発生だ。
不潔な環境は爆発的に伝播してゆき、生きている者たちは敵の他に死んだ仲間にも苦しめられる羽目になる。
日々精神的に追い詰められ、極限状態で死に瀕してゆくことを自覚することの恐怖もまた、筆舌に尽くしがたい。
中には、恐怖のあまり精神に異常をきたす者もいるくらいだ。
まさにこの世の地獄。そして、そんな籠城戦の最後はたいてい餓死か、敵も道連れの玉砕と決まっている。
アコライト外郭からの定期連絡はすでに途絶えて久しく、誰も内部の様子を知る者はない。
だが、その状況が決して楽観視できないものということだけは、容易に想像がつく。
歴史が示す通り、きっとこの城郭の中も埋葬されない屍があちこちに横たわり、汚泥の散らばる惨憺たる有様なのだろう――
と、思ったが。
「……はれ?」
仲間たちと一緒にアコライト外郭内に入ったなゆたは、思わず目を丸くした。
そう。
てっきり、城郭の中は酷い有様になっていると思っていた。亡骸のひとつやふたつ、いや十や二十はあると覚悟していた。
城郭に入ったらすぐさまインベントリの限界まで持ってきた物資を放出し、ひとりでも多くの人を救わなければ……と。
そう思っていたのだが。
「なんか、キレイ……」
なゆたは小さく呟いた。
片付いている。
むろん、戦場である。相応に破壊の跡や補修の形跡はあるものの、予想よりも遥かに状態がいい。
まるで、地球の有名な戦跡のような。観光地のような片付きっぷりである。
いや。このアコライト城郭の異様さは、そんなところにあるのではない。
『デコられている』。
無骨な城壁のあちこちに、大小さまざまな羊皮紙に描かれた似顔絵がずらりと貼られている。
一瞬、賞金首を捜索するための人相書きかと思ったが、違う。
ポップな書体で『MAHORO YUMEMI Absolutely Live in ACOLITE!!』と書いてある、その羊皮紙は――
「……ポスターだ」
そう。
これは賞金首の人相書きなどではない、紛れもないイベント告知のポスター。
そして、そのポスターにでかでかと描かれた、『キラッ☆彡』とばかりに茶目っ気たっぷりにポーズを決める人物は――。
「おぉ〜っ! お待ちしておりました!」
呆気に取られてポスターを見ていると、不意に背後で声がした。
振り返ってみると、ひとりの男が立っている。
見知らぬ顔だ。『異邦の魔物使い(ブレイブ)』パーティーでない。とすればこのアコライト外郭の兵士なのだろう。
……たぶん。
「え……えーと……」
男のいでたちを見て、なゆたは口元を引き攣らせた。
簡素な兜とチェインメイルを着込んでいる辺り、兵士であろうとは思う……が、それ以外の付属品が常軌を逸している。
額には『マホロ命』と書かれたハチマキを巻き、リングアーマーの上に蛍光ピンクの法被を羽織っている。
手に持っているのは剣や盾ではなく、ただの棒である。――いや、ただの……ではない。光っている。
そう。
どこからどう見ても、男はオタクだった。
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