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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

343embers ◆5WH73DXszU:2020/03/23(月) 23:22:45
【フィロソフィカル・バーンド・コープス(Ⅰ)】


焼死体の肉体が燃え尽きていく/その末端から中心に向けて、灰化の進行は止まらない。

〈マスター。あなたはもう助からない。誰を呼んだところで、もう間に合わない〉

「……ああ、そうだな」

〈だから……私をサモンして下さい。まさか、このまま顔も合わせずにお別れするつもりですか?〉

暫しの逡巡――焼死体の灰化した指先が、ひび割れた液晶に触れた。
魔力の燐光が渦を巻く/小さな騎士の輪郭を描く。
そして純白の騎士が、主を見上げた。

〈これが、あなたのエンディングですか〉

「どうやら、そうらしいな」

〈これが、あなたの望んだエンディングですか〉

「……さあ、どうだろうな。だけど、そんなに悪いエンディングじゃない気がするよ」

焼死体はあと数分もしない内に、■■■■の未練を果たす為だけの何かになる。
新しい仲間達を守り/己の強さを証明し――未来に待つ一周目を変える。
物語は続く――ただ、そこに宿る主観が消えるだけで。

〈あなたにとっては、そうかもしれませんが。でも私にとっては違う。
 一巡目だとか、二周目だとか、そんな事は関係ないのですよ。
 今ここにいる私の主は、今ここにいる、あなただけなんだ〉

瞬間、純白の閃き――灰化の及んでいない、焼死体の胸を貫く。

〈だから、あなたの欠片を下さい。いつか、あなたを呼び覚ます為に〉

「……ずっと前から思ってたけどさ」

〈……なんですか〉

「お前、俺には勿体ないパートナーだよな」

その言葉を最後に――焼死体は完全に灰と化した/なおも燃え続ける未練の炎。
遺灰に満たされた闇狩人のコートが――独りでに立ち上がる。
スマホを操作/黒手袋を装備/フードを目深に被った。

「――行こう、フラウ」

そして――いつもと変わらない/唯一無二の相棒への声色。

〈……それは、どうも。ですが……あなたは、最低のマスターだ。
 そんな事、今言われたって――喜べる訳がないでしょうが〉

純白の騎士は吐き捨てるように呻いて、スマホの液晶に姿を消した。


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