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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

327明神 ◆9EasXbvg42:2020/03/16(月) 04:21:45
>「このスキルは色々謎に包まれてるんだけど・・・習得する上で一つだけ分かっている条件があるんだ」

俺はどこか上の空でバロールの解説を聞いていた。
だが、もったいぶるように一段落とした声色だけは、否応なしに頭蓋を直撃した。

>「人を・・・殺した事があるかどうか」 

頭の中で何かがつながるような感覚。
堰を切ったように溢れ出した記憶は、前線へ向かう途中でジョンが口にした言葉。

――>『大丈夫さ・・・人を殺すのはこれが始めてじゃない』

「……マジかよ」

過去のジョンの言動と、いま奴を蝕む現状が、一本の線で結ばれた。
ブラッドラストの習得条件は、殺人経験の有無。
そしてジョンはその口で、かつて人を殺したと、そう語った。

俺はあの時、ジョンの告白は敵に回ったカザハ君を呵責なく殺すための方便だと思っていた。
だけどあの言葉が、なんの比喩でもなく、純粋に人を殺した罪の吐露なのだとしたら。
俺達は、人殺しとパーティ組んで旅をしてきたことになる。

人を、殺した。
地球にいた頃なら、その事実だけで社会から隔離されるべき危険因子だ。
現代社会は同胞殺しを決して許すことはないし、そう扱われるべき大罪に違いない。

アルフヘイムに召喚された今なら事情は変わる。
着の身着のままでほっぽり出されて、野盗なんかに襲われて、正当防衛的に相手を殺したのかもしれない。
街中ならともかく、荒野で殺った殺られたなんてのは日常茶飯事だろう。
なんなら俺達だって、一歩踏み込んでりゃミハエルも帝龍も殺していた。

だが、ジョンの怯えようは、錯乱ぶりは、その手の『正当性のある』殺しに対するものには見えない。
深い罪悪感と罰への恐れは、まさに殺人が罪になる世界の感覚だ。
こいつは一体――どこで、誰を殺したっていうんだ。

>「どれも例外なく最後は赤い血で塗れる事になる・・・だからこのスキルを知っている者はみな
 血の最後・・・もしくは血を渇望する者という意味を込めてブラッドラストと呼ぶようになった」

バロールはなおも饒舌に語る。
スキル習得者はみな、凄絶で陰惨な最期を辿る……血塗れの終焉、故に『ブラッドラスト』。

「最後(last)で渇望(lust)ね。癪に障るくらい小洒落たネーミングだぜ。
 そんで行き着くところはみな血の錆(rust)ってわけか?ぞっとしねえな」

>「君は僕が殺したはずだ!!あの時僕が!この手で殺した!仕方なかったんだ!だってあれは・・・」

こうしてバロールの解説を聞いてる間にも、ジョンは虚空へ向かって叫び続けている。
かつて自分が殺した相手に、弁明している。その姿はあまりにも痛ましい。

「……もう見てらんねえよ。どうにかなんねえのかバロール」

>「もうすでに手遅れじゃなければ・・・このスキルを使わせないよう説得できるかもしれない
 私としてもこんな事で人数が減るなんていう事は避けたいからね」

「"こんな事"じゃねえよ。……俺達にとってはな」

こいつの超絶超然上から目線にはもう慣れっこだけど、俺は釈然としない気持ちでいっぱいだった。
ジョン・アデルは、ただのアルフヘイムの駒なんかじゃない。『人数』で語れる存在じゃない。
俺達の大事な仲間で――俺の数少ない大親友だ。


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