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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

314崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/03/10(火) 19:50:04
「……マホたん……」

以前のパートナーが死んだから、すぐに次に乗り換えた。そう取る者もいるかもしれない。
変わり身が早いと、死んだモンスターへの哀悼の気持ちはないのかと非難する者も――しかし、そうではない。
ブレモンのプレイヤーならば、すぐに分かるはずである。
金を、時間を、そして何より愛情をかけ、手塩にかけて育ててきたパートナーモンスターが喪われる、その悲しみが。

ペットロスという言葉がある通り、ペットの犬や猫はもちろん、亀や熱帯魚が死んでも深く傷つく人は多い。
まして、マホロは地球でVtuberとして活動してきたころから苦楽を共にしてきたマスターとモンスターだ。
ふたりは家族よりも親密に、二人三脚どころか一心同体でユメミマホロという存在として活動してきたのである。
その片方が死んだ。それは残されたもう片方にとっては、肉体を真っ二つに引き裂かれるほどの苦しみであろう。
ならば。その死を悲しむこと。悼むこと。
それだけが、マホロの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』にとっては何よりの癒しになったはずだ。

けれど――

皆に悼んでもらうことよりも、マホロの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』はまだファンのために偶像を続けることを選んだ。
何よりもかけがえなく愛した、慈しんだパートナーの死を。悲しみを。嘆きを。
たった独りで抱え込むことを選んで。
ファンに希望を、光を、笑顔を与えることこそが、アイドルの役目。
マホロは今なお、それを続けようとしている。
それが『笑顔で鼓舞する戦乙女(グッドスマイル・ヴァルキュリア)』。
この異世界に召喚された自分のできる、たったひとつの冴えたやり方だということを理解している。

「さあ、みんな! 今日はパーッと派手に騒ぎましょ!
 祝勝会よ! これからはもう、トカゲやイナゴに悩まされることもないんだ!
 あたしたちは――勝ったんだから! ってことで、勝利を祝して……
 かんぱ――――――いっ!!」

「お――――――――――――――――っ!!!」

マホロが音頭を取り、エールをなみなみと注いだジョッキを掲げる。
守備隊の面々がそれに倣い、乾杯を始める。
かくして――『異邦の魔物使い(ブレイブ)』と守備隊が手当や入浴を終えた後、食堂でささやかな戦勝会が催された。
城郭に残っていた女衆が食糧庫の備蓄を惜しみなく開放して料理を運んでくる。
これからは、王都からの物資も定期的に送られてくるようになるだろう。もうトカゲを狩って食べる必要もない。
そもそもトカゲはもう出現しないのだが。

「いやぁ〜、労働の後のお酒はおいしいねぇ! ホント、このために生きてるって感じだとも!
 あ、バターケーキのお代わり貰えるかな? はっはっはっ!」

バロールがちゃっかり同席して、エールを鯨飲している。紅茶好きで下戸かと思ったら酒もいけるらしい。
しかも胸焼けするほど甘いバターケーキをつまみにして飲んでいる。
昼間に明神が言った質問に関しては、バロールはのらりくらりと話をはぐらかして明言を避けた。
挙句、まずは勝利をお祝いしよう! 無粋なことは後回しさ! と言ってエールを呷り始める始末である。
こうなってしまっては、無理強いもできないだろう。

「では、ここで一曲! あたしが披露しましょうとも!
 月子先生、一緒に歌お! モンデンキントとユメミマホロ、一夜限りのコラボレーションだー!」

「え、えっ!? わたし!?」

マホロが急遽用意されたステージに上がり、それまでちびちびとワイン代わりに葡萄のジュースを飲んでいたなゆたを指名する。
突然ふたりで歌おうと誘われ、なゆたは仰天した。
断る暇さえない。もごもご言っているうちになゆたは兵士たちに手を引かれ、ステージまで押し上げられてしまった。

「いよっ、待ってました!」

ジョッキを片手にバロールが無責任な歓声をあげる。完全に出来上がっていた。
そうこうしているうちにイントロが流れ始める。もちろん曲は『ぐーっと☆グッドスマイル』だ。
身体を軽く揺らしてリズムを取っているマホロの隣でマイクを持ち、しばらく所在なさげに突っ立っていたなゆただったが、

「ええ〜いっ! もう、破れかぶれよっ!」

と気合を入れると、マホロに合わせて振付を始めた。
実は地球ではしっかりマホロの配信を観ていたなゆたであった。


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