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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

285崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/02/13(木) 19:09:48
エンバースの身体が、燃えてゆく。
今までも燃えてはいたけれど、それは決して彼自身の肉体を消滅させるものではなかった。なのに――
今は違う。エンバースの身体が、焼却されようとしている。

「エン……バ……」

双眸を見開いたまま、なゆたはただそれを見ていることしかできない。
エンバースの肉体を中心に、烈風が巻き起こる。エンバースの肉体が燃えてゆくほどに、風は強さを増してゆく。

>……この世界のモンスターは「自分の体と定義されたモノ」を完全に操る事が出来る。
 全てのモンスターがそうかは分からないが、少なくとも四体、実例が確認出来ている

そうだ。モンスターたちは進化、ないし退化した時点でそのとき所有しているスキルを十全に運用できる。
ポヨリンはG.O.D.スライムになれば口からレーザーを撃てるようになるし、アブホースになれば津波も起こせる。
それは、ノーマルのポヨリンのときには使用できない特性だ。それと同様――
エンバースも形態変化することで、今まで使えなかった攻撃が可能になる。

>お前に理解出来るか? 煌帝龍。俺が何をしているのか

「……な……にィィィ……?」

左手で額を押さえて呻きながら、帝龍は眼下のエンバースをねめつけた。

>DPSの概念は流石に分かるよな?その応用である、時間を火力に変換するという発想はどうだ?
 つまり――例えば極めて限定的な気流操作能力を用いて、上昇気流の外側に風の渦を作るんだ。
 渦は熱波を巻き込みながら、熱をその内側に閉じ込める。増幅された熱は更に気流を強化する

エンバースが選んだのは、【烈風の加護】を受けた自らの肉体を燃やし尽くすことで熱波の嵐を作るという戦術だった。
肉体という外殻が消滅し、かつて肉体だった灰が嵐と融合すれば、嵐そのものがエンバースの疑似的な肉体となる。
その状態で、臨界点に達した熱量をコントロールしアジ・ダハーカにぶつける。
まさに捨て身、命を賭した大技だ。

>嵐だけが、大樹を倒すのさ

エンバースの身体が灰になる。失われた部位を、フラウの形作った純白の鎧が補う。
全身、墨を落としたように黒かったエンバースの肉体は、ほとんどが純白の鎧と化した。
その手には、半ばから溶け落ちた剣が握られている。
本来ならば用をなさないはずの剣。ただのガラクタに過ぎないはずの武具。
それが――巨竜を穿つ魔剣となる。

>さあ、行くぞ。いつまで寝惚けてる?始原の魔剣よ。俺の呼び声に、応えてくれ……いや、応えろ――
>――【ダインスレイヴ】

エンバースの呼びかけに応えるように、嵐が剣に収束してゆき風の刃を形成する。
臨界点に達した嵐の刀身がアジ・ダハーカの強固な鱗を薄紙のように貫き、熱波が臓腑を灼く。

「ギィィィィィィオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

魔皇竜は再度悲鳴を上げた。ジョンとエンバースの捨て身の攻撃によって、その肉体はすでに崩壊しかかっている。
だが、まだ倒れてはいない。あと一歩、もう一歩が――足りない。

「……ま……だ……! まだ、だ……!
 俺は帝龍だぞ……、世界に名だたる帝龍有限公司のCEO! この世の帝王だ……!
 その俺が! こんな! 地を這う虫ケラ共に……負けていいはずがない……!!」

ごふ、と口から血を吐きながら、帝龍が唸る。
アジ・ダハーカの受けた甚大なダメージは、マスターである帝龍にもフィードバックされているはずである。
常人ならばとっくに気絶しているだろう。が、帝龍はまだ倒れない。
世界の帝王として君臨する自身の強烈すぎるプライドが、限界を超えてなお意識をこの地に繋ぎとめている。

「あと……1ターン……!
 あと1ターンで、スタンが切れる……魔皇竜は復活する……!
 そうすれば、『活火山島の神息(ボルカニック・ゴッド・ブレス)』で……貴様らはおしまいだ……!
 どんなに命を費やそうと! 捨て身で挑もうと! 王には勝てん……絶対に! 勝てんのだ! ハハハハッハハハ――」

アジ・ダハーカの肉体が蠢動する。エンバースの一撃で受けたダメージが、再生によって徐々に治癒しようとしている。
ジョンが斬り落とした首の切断面がボコボコと盛り上がり始める。首もまた、蘇生を開始しようとしているらしい。
このまま手をこまねいていては、遠からず邪竜は回復してしまうだろう。
そして1ターンが経過し、スタンから復帰すれば、すべてが終わる。


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