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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章
283
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2020/02/13(木) 19:03:16
「おのれッ……おのれェェェ! ユメミ……マホロォォォォォォォォ!!」
胸元を掴み、額に血管を浮き上がらせながら、顔面蒼白になった帝龍が絶叫する。
帝龍がこのアルフヘイムで最も欲しがっていた、何よりも価値ある商材――ユメミマホロ。
それが、死んだ。
マホロの心を折り、覇者の貫録を見せつけて勝利する――そんな帝龍の方針がこの結果を招いた。
今や帝龍の面子は丸つぶれだ。啖呵を切ったイブリースにも顔向けできまい。
マホロは帝龍の最も重視していたプライドや面子、体裁といったものを根こそぎ道連れにしていった。
アジ・ダハーカの頭上に『STUN!』の文字が浮かんでいる。
マホロの自爆によって弱点の中枢神経を痛打され、行動不能に陥っているのだ。
この強大な超レイド級、六芒星の魔神、邪竜を仕留めるには、今しかない。
だが――
「なんで……、どうして、こんな……」
なゆたはまだ、マホロの死という衝撃的な光景から立ち直れずにいた。
どんな崇高な理由があっても。どんなにその戦術が有効であっても。
命を犠牲にしていいことはないし、その上で勝利を得られたところでそんなもの、誰も幸せになれないと思っている。
それがどれだけか細い糸であっても。ごくごく可能性の低い作戦であろうとも。
全員が助かる道があるなら、迷わずそれを選ぶ。それがなゆただった。
なのに。
「わた、しっ……うぅ……ッぐ、ぅ……ふ、ゥッ……!」
ぼろぼろと涙が頬を伝い、顎先から地面に零れる。
そうだ。
一方で、とっくに理解していたのだ。マホロが最初から命を捨てるつもりだったということは。
分かっていたのに止められなかった。いや、『止めなかった』。
この絶望的な状況を打開するには、マホロの犠牲が必要だったということを理解していたから。
本当は止めるべきだったのに。マホロを縛り上げてでも、単騎特攻を阻止するべきだったのに。
リーダーとしての、戦術家としてのなゆたは、マホロの死を看過したのだ。
マホロの死を悼みながら、心の隅で『これで戦況が有利になった』とも思っている。
それは、なんと自分勝手で。醜くて。おぞましい心の綾なのだろう。
そんな身勝手な思考が自分の中にあるのが堪らなく憎らしく、恥ずかしく、呪わしい。
大切な仲間の死と自分自身の忌まわしさに、なゆたは歯を食い縛って泣いた。
>泣くな、モンデンキント
そんななゆたの肩を、エンバースが掴む。
なゆたは涙にぬれた顔をゆっくり上げ、エンバースを見た。
「……エン……」
>しっかりしろ……いいか。あいつは、自分の為に死んだんだ。
俺達を守る為に、あの兵士達を守る為に、命を懸けてもいい。
そう考える自分の為、自分の望みの為に、ああしたんだ――
「自分の……ために……」
そうだ。マホロは誰に言われたのでもなく、自分の意思で。自分がそうしたいと思うがゆえ、この道を選んだ。
自分の命と引き換えにしてでも、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を守りたい。ファンを守りたい。
それが叶うなら、自分などどうなってもいい――そう願ったから。
エンバースの強い言葉が、なゆたの萎えかかった心を鼓舞する。
ああ、キングヒルでの明神との戦いでもそうだった。挫けかかったなゆたの心を奮い立たせたのは、エンバースの声だった。
それがまた、ここでも繰り返されている。
エンバースの言葉はいつだって勇気をくれる。なゆたはただ、声もなくエンバースを見つめた。
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