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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

269明神 ◆9EasXbvg42:2020/02/03(月) 02:06:27
降って湧いたなにもかもを解決する光明に、ガザーヴァは大きく瞠目する。
肉体がある。カザハ君のものをぶんどらなくたって、ちゃんと自分だけの身体を手にできる。
幻魔将軍を、取り戻せる。

ガザーヴァにとっては喉から手が出るほど欲しい『未来』だったろう。
その一方で俺は、ぞわぞわしたものがうなじで燻るのを感じた。

……こんなものを、いつの間に用意してやがった?
見たところ臓物の中の胎児めいた物体は、それが"胎児だと分かる"程度に成長している。
俺とガザーヴァの話を聞いてちょっぱやでこしらえたんじゃ計算が合わない。

王都でカザハ君の中のガザーヴァと再会したのはたった数日前。
その時からこうなることを見越していたとしても、あまりに動きが早い。

つまりバロールは、ずっと前からガザーヴァの肉体製造に着手したことになる。
何の為に?ガザーヴァを作り出したのは『魔王』バロールだ。
師を失っていない、十三階梯筆頭継承者のバロールが、三魔将の製造に手を出すことはないはず。

>「……ボクのこと。ほんの少しだけでも……愛してくれますか……?」

ふらり、ふらりとバロールに意識を向けるガザーヴァ。
それは、かつてすれ違った親子が改めて絆を結び直す、美しい光景なんだろう。
だけど俺にはガザーヴァが、目の前にちらつかされたエサに寄ってくる、哀れな魚に見えた。

このまま二人を会わせるのはマズいと、直感が警鐘を鳴らす。
だがなんて言って止めりゃいい?ずっと親の愛を渇望していた子供に、第三者が割り込めるのか?

>「でも、ダメだよパパ……騙されないよ、だって……」

ガザーヴァの足が止まる。
カザハ君そっくりの、人好きのする相好が……氷の如く冷え切った。

>「パパの目、全然……笑っていないもの――」

バロールは、依然として微笑んでいる。
だけど俺にも分かった。極彩色の双眸に、ガザーヴァの姿は映っていない。
それが理解出来たのは、多分俺とバロールが同じ目的を持っているからだ。

――カザハ君を助ける。
そしてそのために、"不純物"であるガザーヴァを排除する。

カザハ君の『混線』は、バロールにとっても意図しないエラーだったはずだ。
切り捨てたガザーヴァが、執念だけで一巡目のカザハ君に取り引きを持ちかけ、応じられてしまった。
世界がリセットされて、失敗した被造物の介在しない、純粋なカザハ君との邂逅が約束されていたのに。
因果をいくつも捻じ曲げて、ガザーヴァは未だバロールに取り縋っている。

『以前の失敗を繰り返してはならない』……か。
その失敗ってのはつまり、"カザハ君を手に入れられなかった"ことにかかってんだな。

でっち上げた新たな肉体にガザーヴァが素直に入れば、純粋なカザハ君だけを手にできる。
だけどその後、ガザーヴァはどうなる?
またぞろ良いように扱って、使い倒して、適当なところで切り捨てるのか?
一巡目と、同じように。

俺は一巡目に起きたことなんざ知らねえし、ぶっちゃけ興味もそんなにない。
俺にとってのガザーヴァは、ゲームで死闘を繰り広げた幻魔将軍ただ一人だ。


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