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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

260崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/01/28(火) 21:14:42
「ぉ、ぐ……ゥッ……!?」

アジ・ダハーカが『戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)』の力を吸収し、劇的なパワーアップを果たした直後。
突如として、帝龍がスーツの胸を掻きむしって苦しみ始めた。
それだけではない。不意に右の鼻の穴から一筋の鼻血が垂れる。
今まで、余裕ぶった態度を一貫して崩さなかった帝龍が。
現在も攻撃を喰らうどころか、絶対的な優勢を微塵も崩していない帝龍が。

『アジ・ダハーカがパワーアップした瞬間に苦悶し、鼻血を出した』のである。

儀式を終えたマホロは魔皇竜から離れると、狼狽する帝龍を見遣った。

「思った通りね……帝龍!」

「これ……これは、いったい……? 何をした、ユメミマホロォォォ……!」

憎悪に歪んだ眼差しで、帝龍がマホロを見る。
そんなふたりのやり取りを、ジョンや守備隊たちと一緒に見ていたなゆたは、そこでやっと状況を理解した。
あのマホロが命よりも大切に守り通してきた口付けを、どうしていとも簡単に捨ててしまったのか。
超強化されて一層優位に立ったはずの帝龍が、どうして攻撃を受けてもいないのに苦しみ、鼻血を出したのか。
その理由を、遅まきながら把握した。

「……そういう……ことか……!」

地球でブレモンをプレイしていた時には分からなかったが、アルフヘイムへ来て分かるようになったということは沢山ある。
その中のひとつに『デュエルをすると疲れる』というものがある。
正確には『モンスターを召喚すると疲れる』と言えばよいだろうか。
モンスターを召喚すると、クリスタルが消費される。
レアリティの高いモンスターになればなるほど、消費されるクリスタルの量も増加する。
が――クリスタル以外にも『異邦の魔物使い(ブレイブ)』がモンスター召喚時に支払っているものがあるのである。
それは、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』自身の体力。精神力。
モンスターを召喚し、地上に繋ぎとめておくにはクリスタルが必要だが、
モンスターそのものを制御し、自分の手足のように使役するためには、召喚者の体力と精神力が必要不可欠なのだ。
そして。
消費する体力と精神力の幅もまた、モンスターのレアリティによって増減する。

なゆたを始めとするアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の連れ歩いているモンスターには、低レアが多い。
従って、召喚してもほとんど体力を消耗することはない。
一方でみのりはかつてアジ・ダハーカにも比肩しうる六芒星の魔神、パズズを召喚したものの、
その際の召喚時間はきわめて短時間であり、疲労を覚える暇もなかった。
だが、帝龍は違う。帝龍がアジ・ダハーカを召喚してから、すでに30分以上が経過している。

確かに、蓄えに蓄えたクリスタルは超レイド級モンスターを23時間現界させておくことが可能なほど豊富なのだろう。
しかし――
その超レイド級を従える煌 帝龍という男の体力と精神力は、クリスタルほどには潤沢ではなかったのである。

モンスターそのものがどんな攻撃も通さないほどに強いなら、その召喚者を狙えばいい。
だが、それは当然帝龍も何らかの対抗措置を取っているだろう。
単に遠距離攻撃や魔法で狙ったところで、きっとスペルカードなどで弾かれるか、逸らされてしまうのがオチだ。
……とすれば。

「おのれ……! おのれおのれおのれ! マホロォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」

帝龍が激高する。
六芒星の魔神という決定的な切り札を持っていながら、帝龍がそれをずっと見せなかった理由がこれだった。
帝龍はクリスタルの消費と同等、いや、それ以上に、自分の体力と精神力の損耗を避けていたのである。
そして――マホロはアジ・ダハーカに『戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)』を与え、一度きりのスキルを消費した。
純潔を喪った。戦乙女属の特権、たったひとつの大切なものを――永久に喪失した。

「キサマ! なんてことを! 最大の商材を! 価値を! キサマをもっとも高く売ることのできる要素を!
 よくも! こんな愚かなことに!! よくもよくもよくもよくもよくもォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」

「愚かかどうかは、あたしが決める。あたしの口付けの価値の使いどころは、あたしだけが決めていい。
 そして……今がそのときだって。そう思ったのよ。
 さあ、帝龍。あなたが気絶するまで、あと何分かしら?」

「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃ……! アジ・ダハーカ! 『活火山島の神息(ボルカニック・ゴッド・ブレス)』!
 この女にもう商品価値はない! もういい……消し炭にしてしまえ!」

いつもの余裕ぶった語尾の協和語をかなぐり捨て、激怒した帝龍が叫ぶ。
宙に浮かぶマホロめがけ、三つの巨大な竜頭が口を開く。火山の噴火のような、神の一撃がチャージされてゆく。


マホロにそれを防ぐ術は、ない。


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