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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

258崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/01/28(火) 21:06:37
ジョンとなゆた、そしてアコライト外郭守備隊の奮戦によって、フィールドにいるドゥーム・リザードとヒュドラは一掃された。
状況は少し前の絶望的劣勢から、徐々にアルフヘイム側有利へと推移しつつある。
が、優位と言ってもそれはほんの僅かな差に過ぎない。
スペルカードによってアジ・ダハーカを決戦空間に封印した、ユメミマホロの戦術あったればこその状況である。
もしマホロが敗れ、決戦空間が崩壊すれば、アジ・ダハーカはふたたび『異邦の魔物使い(ブレイブ)』に牙を剥く。
ガザーヴァが味方に付かない限り、アルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』に勝機はない。
いや、たとえガザーヴァを味方につけたとしても、勝てる保証などないが――
それでも。どんな細い糸でも、今は縒り合わせなければならないのだ。

「はあっ! はあっ、はぁっ……ク、ふ……!」

自ら創り出した『河原へ行こうぜ!(オマエモナカナカヤルナ)』の結界の中で、マホロが浅い息を繰り返す。
その身体はもうボロボロだ。精緻で美しかった甲冑は右肩や腰当てが砕け、胸鎧にも大きなヒビが入っている。
剥き出しの二の腕や太股、整った顔立ちの頬にも裂傷が刻まれている。
通常のデュエルならばもう撤退のタイミングだ。――しかし、マホロは逃げない。
明神達がなんとかガザーヴァを説得するまで、ここで自分がアジ・ダハーカを釘付けにする。そう決めている。
……それで命を落とすことになっても。

「いい加減にするアル、マホロ……! オマエがどう頑張ったところで、勝ち目などないアル!
 他の連中のために時間稼ぎを買って出たのは大したものアルが、これ以上商品価値を落とすようなことはやめろアル!」

満身創痍でなおも戦意を喪失しないマホロに対し、帝龍が苛立たしげに言う。
帝龍にとってマホロは敵であると同時、是が非でも手に入れたい金の卵を産む牝鶏である。
帝龍がこの異世界で莫大な富を得るためには、マホロの存在は必要不可欠なのだ。
それゆえに、帝龍は本気を出してマホロに攻撃することができない。マホロという商品が傷物になることを怖れている。
そこに、付け入る隙がある。マホロはその高い機動力を『限界突破(オーバードライブ)』でさらに底上げし、
決戦空間内を飛び回ってアジ・ダハーカを攪乱し続けた。
とはいえ、それももう限界に近い。
アジ・ダハーカと自分とではレベルが違いすぎる。帝龍の手加減の攻撃さえ、当たれば致命打となりうるのだ。

「あんたこそ……手を引きなさいよ……!
 ニヴルヘイムなんて、ストーリーモードの完全な悪役じゃない……!
 あんたは、それでも『異邦の魔物使い(ブレイブ)』なの!? ブレモンのプレイヤーなの……!?
 プレイヤーなら、みんな……ニヴルヘイムが悪者だって知ってる!
 誰だって、アルフヘイム側でプレイしたいものでしょう!」

「ハッ」

マホロの反論に対し、帝龍はメガネのブリッジを右手中指で持ち上げると、嘲るようにせせら笑った。

「何が……おかしいのよ……!」

「これが笑わずにいられるかアル。やはり、オマエはアイドルアルネ……ただ上に言われるままに歌い踊るのがお仕事の、
 外見だけで頭カラッポの愚か者アル。
 『ニヴルヘイムが悪者』? くふふ! 確かにゲームの中ではそういう扱いだったアルが――
 ここは現実の世界! ゲームの中の常識や設定がそのまま通じる世界ではないアルネ!
 オマエは何を根拠に! 自分の所属する陣営が正義の味方だと言っているアル……?」

「……それは……」

帝龍の追及に、マホロは束の間返す言葉を失って立ち尽くした。

「くふふふ! ワタシのようにマクロなものの考え方ができないから、自分の立ち位置さえ分からない!
 だが、それでいいアル。オマエはワタシに言われるまま、指定されたステージで! 指定された歌を歌っていろアル!」

「……そうかもね。あたしには、大企業のCEOをやってるあんたみたいな視界の広さはないでしょう。
 高層ビルの最上階から下界を眺め見るあんたと違って、あたしは……地べたから空を見上げることしかできない」

「やっと、自分の分限というものが理解できたアルか……まったく梃子摺らせてくれたアルネ。
 さあ……もう遊びは終わ――」

「それなら!!」

マホロを連れ去ろうと身じろぎしかけた帝龍を、マホロの鋭い声が制する。
帝龍は不快に眉を顰めた。

「……?」

「あたしは! あたしの中の信念と、あたしが正しいと思う正義に従って行動するだけよ!
 あたしはこのアコライト外郭のみんなが好き。あたしの歌で、トークで、動画で、楽しんでくれるファンの人たちが大好き!
 だから――あたしからそんなファンを取り上げようとするあんたを……絶対に許さない!
 アルフヘイムとニヴルヘイム、どっちが正義で悪かなんてわからないけれど――
 少なくとも、あんたは! あたしの敵だ!!」

「まだ、そんな戯れ言を――!
 ええい! さっさとワタシの軍門に下れアル! やれ、アジ・ダハーカ!!」

帝龍の命令に応じ、巨竜がマホロを攻撃しようとそのあぎとを開く。
が。

「ぐ……、ぐぐぐ……ッ!」

アジ・ダハーカが行動を再開したそのとき、『浮遊(レビテーション)』のスペルカードで宙に浮いた帝龍が、
ほんの一瞬であるがバランスを崩してふらついたのを、マホロは見た。


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