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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

200崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/01/06(月) 22:50:32
>……その傷は、致命傷だ。槍を引いて、マスターに助けを求めろ

ざんっ! とエンバースが剣を一閃し、ロイヤルガードの胸部装甲をまるでバターのように切断する。
それでもロイヤルガードは斧槍を振り上げ、エンバースに肉薄しようとしたが、歴戦の焼死体の方が技量は上であった。
ロイヤルガードの動きが停まり、一瞬びくん! と痙攣したかと思うと、その内側から触手が飛び出す。
既にエンバースの――フラウの攻撃は、ロイヤルガードの中枢を破壊していたのである。
炯々と輝いていたバイザーの奥の双眸がフッと消え、重厚な騎士鎧はバラバラに分解して地面に転がった。
勝負ありだ。

>さて……邪魔者はいなくなったな。それで、さっきの話の続きなんだが――
>――俺の記憶が正しければ、世界王者はあのミハエルとかいう奴なんだろ?
 お前、あいつに負けたんだよな?なのに――なんで、そんな偉そうなんだ?

勝利したエンバースがここぞとばかりに煽る。
しかし、護衛を撃破されたというのに帝龍の表情は変わらない。

「オマエ、底抜けのバカアルか? 偉そう、ではなく実際に偉いアルネ。
 世界王者? 禁止カードだらけでルールに縛られたママゴト大会の王者が、本当に強いとでも思ってるアルか?
 ひょっとして、プロレスはガチ! とか大真面目に信じちゃってるタイプアル?」

>まぁ……一応、代表選手だったのは覚えてるから、相手はしてやるけどさ。
 あんまり、強い言葉を使わない方がいいと思うぜ――弱く、見えるからな

「下級国民が、上級国民であるワタシの相手? のぼせ上がるんじゃないアル。
 第一……オマエたちはひとつ、大きな勘違いをしているアルヨ」

くくッ、と帝龍は右手で軽く口許を押さえて嗤った。
とはいえ、もうロイヤルガードはいない。
周りにいる者はせいぜいが人間の兵士たちくらいで、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の相手にはならない。
帝龍に打つ手はないはず。もう、手詰まりのはずなのだ。
……というのに。

「おぉ〜っ! 明神さんとジョン君も来てくれたんだね! これで百人力ってやつ!?
 さあ、なゆちゃん! ボクたち『異邦の魔物使い(ブレイブ)』全員で、こいつを八つ裂きにしちゃおう!」

ロイヤルガードが倒れ、残るは帝龍のみとなった本陣内で、カザハが口を開く。
カザハは明神とジョンの方を向き、能天気な様子でぶんぶんっと大きく右手を振った。

『カザハの意思とは関係なく』。

《クク……なんにも驚くには値しないだろー? だってさ、ボクたちは『ひとつ』なんだから。
 キミの身体はキミだけのものじゃない。ボクのものでもあるんだ。
 キミはボクの力を自分のもののように使った。なら、ボクがこの身体をボクのもののように使ったって何も問題ないよね?》

カザハの意識の中で、ガザーヴァがにたあ……と嗤う。

《さあ、手助けしてあげるよ。それがキミの望みだろ……?
 もっともっとボクの力を使ってさぁ。そしたら、ボクの希薄だった存在はこの世界で確固たる基盤を確保できる。
 この世界にボクが、ガザーヴァが存在するっていう、存在定義の碇を投錨することができるんだよ。
 ホラホラぁー……何ボケッとしてるのさ? 戦えよなぁ……戦え! ボクの力を使えよ! 強くなりたかったんだろォ?
 くれてやるよ、力を! キミの食べたがってたおいしいニンジンが、目の前にぶら下がってるンだ!
 馬なら食べなきゃソンだろォ!? あ、馬なのはボクらじゃなくてガーゴイルの方か! くひッ、あっははははははッ!!》

ガザーヴァは一巡目の世界で『異邦の魔物使い(ブレイブ)』に敗北し、死亡した。
しかし、その瀕死の魂はなんとかカザハの前世のシルヴェストルに憑依し、融合することで消滅を免れた。
とはいえ、復活するには現段階では存在が希薄になりすぎている。このままでは、遠からず寄生先のカザハに吸収されてしまう。
そこで。
ガザーヴァはカザハに力を貸し、『ガザーヴァの力を使っている』と認識させることで、自己の存在を確立しようとした。
カザハがガザーヴァ由来の魔力を使えば使うほど、ガザーヴァという存在はこの世界でその色彩を濃くしてゆく。
そうして自身の存在証明を確保してから、ゆくゆくはカザハの肉体の主導権を奪い復活する――
それが、幻魔将軍ガザーヴァの狙いだった。

「さぁーて……明神さん、ジョン君。キミたちにも『烈風の加護(エアリアルエンチャント)』をかけてあげるね!
 この敵はみんなで殺らなきゃダメだ。全員で仲良く息の根を止めてあげなくちゃね!
 キミもそう思うだろォ〜? 明神さアアアアアアアアアアアん!!!」

まるで有明月のように口許を歪ませ、カザハは嗤いながら明神の名を呼んだ。
そして、右手の人差し指を伸ばして明神とジョンのふたりに『烈風の加護(エアリアルエンチャント)』を付与する。
しかし――明神とジョンは気付くだろうか。
今、カザハは『スペルカードを使用しなかった』。
だというのにバフは効力を発揮している。つまり――
今使った『烈風の加護(エアリアルエンチャント)』は『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の力ではない、ということだ。

ガザーヴァはカザハの望むままに力を与えている。それは間違いない。
だが、カザハがガザーヴァの力を使えば使うほど、ガザーヴァはこの世界で復活の下地を整えてゆく。
そして。

奇しくも先ほどカザハ本人が言った通り、本当の勝負はここからだったのだ。


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