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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

158embers ◆5WH73DXszU:2019/11/25(月) 06:45:19
【ステップ・トゥ・ルイン(Ⅴ)】

鎧戸から飛び降りる/霧の底に偶然いたトカゲの頭部へ着地/刺殺――視線を前方、上方へ。
多頭蛇の眼光は、既に焼死体を捉えている/焼死体は動じない――物理的にも、精神的にも。

「完全召喚はクリスタルの消耗が激しすぎる。剣を握るのは俺だ。
 新しい体には、もう慣れたか?まだなら、ここで慣らしておけ」

ヒュドラが、その頭部の一つを振り上げる。
次なる行動は明白/対する焼死体の行動は、たった一つ。
左手を、己を叩き潰さんと唸る蛇頭の大槌へとかざす――それだけ。
響く轟音/揺らぐ大地/濃霧が迸る衝撃を可視化する。
だが――ヒュドラの一撃は、外れていた。

ただ立ち尽くしていた獲物を何故、叩き潰す事が出来なかったのか。
ヒュドラには理解出来なかった――恐らくは、誰にも理解/認識出来なかった。
焼死体の左手――より正確には左手首から一瞬、純白の触腕が奔り、先の一撃を弾いていたとは。

「……問題なさそうだな」

狩装束の左手首には、革帯と鋲によって――画面の割れたスマホが固定されていた。

「みんなが心配だ。さっさと終わらせるぞ」

迫る次なる一撃/左手を掲げ/奔る触腕――ヒュドラの首に爪を掛け、同時に収縮。
燃え落ちた肉体は素早く軽やかに宙へ/だが多頭蛇の通常攻撃は、一度ではない。
左手を翳す――触腕が、追撃に牙を剥く蛇頭を、初撃の頭と一纏めに括り付ける。
怒りの咆哮/触腕を引き千切るべく荒ぶる双頭――拘束は数秒と続かずに解けた。
解かれたではなく、解けた/瞬間――焼死体が風を切り、宙空に大きく弧を描く。
双蛇の抵抗を、慣性として逆利用した、振り子運動――終着点は、決まっている。

「――よし、よくやった。列車に戻るぞ、フラウ」

急所に突き刺した愛剣を引き抜く/血振りを一閃――感慨も余韻も必要ない。
魔法機関車へ左手を伸ばす/触腕が焼死体を引き寄せる――着地を果たす。

「……みんな、無事みたいだな」

生命反応に陰りはない/故に焼死体は仲間の無事を確信する。
例えその内の一人が、夥しい量の血に塗れていたとしても。


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