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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

154embers ◆5WH73DXszU:2019/11/25(月) 06:39:56
【ステップ・トゥ・ルイン(Ⅰ)】

意識を取り戻した焼死体は彷徨うような足取りで、しかし問題なく待機地点へと辿り着いた。
霊的強度の深化によって変質した知覚は、生命の気配を半無意識的に感知出来た。
世界は闇色に染まって見える/命は単なる熱分布として処理される。

《お待ちどうさ〜ん。注文の帝龍本陣やけど、だいたいの目星はついたで〜》

「……流石だな、みのりさん。これで後は、俺達が帝龍と遊んでやればいい訳だ」

軽口を叩く/平静を装う――そこに遅刻を誤魔化している以上の意味を見出す者など、いない。

『……ってことで。いい?エンバース。もう一度言うね……」

「面白いな、今の。チュートリアルを飛ばそうとボタン連打してたら、よくなるやつだろ。
 もう一回教えてって……何?違う?本当に俺が作戦を聞いてなかったと思ってたのか?」

背後から少女の声が聞こえた/振り返る/見下ろす――様子を伺う。
焼死体は“燃え残り”が如何なるモンスターであるかを知らない。

「――実のところ、その通りだ。よく分かったな」

少女はどうか――己の進化の兆候は、見抜かれているだろうか。

『今回は、ちょっと無茶しなくちゃいけないかもだから。……ゴメンね、あなたまで付き合わせちゃって』

「無茶をしなくちゃいけない。なるほど、お前にとってはそうかもな。
 だが俺にとっては――煌帝龍なんてのは精々、新コンボの練習台だ」

『でも……叶えてくれるんでしょ? わたしの願い――。
 『だれも死なせずに、この戦いに勝つ』。わたしはそれがしたいの。
 ね。わたしに見せてよ、エンバース。
 みんなで勝ったぞ! 生き残ったぞ! って……この場にいるみんなが笑ってる光景を』
 
「……お前がそれを望むなら、そうしよう」

亡霊の視覚では、少女の表情は殆ど読み取れない。
だが見えずとも視える――王宮のあの夜、少女が見せた微笑みが。
報恩と、贖罪を成す/あの微笑みを、守る――その誓いを翻すつもりはなかった。

『……頼りにしてるぞ』

「ああ、正しい選択だ。俺以上に強いプレイヤーなんて、存在しないんだからな」

『ところで、あなた何か雰囲気変わったね? 口では説明できないんだけど、なんとなく。
 なんだろー。どうしてだろー。う〜ん?』

「――なるほどな」

どうやら“燃え残り”の生態――もとい死態は、少女にも勘付かれていないようだった。
不可解な事ではない――燃え残りは、かつての未実装エリアから発生したモンスターだ。
その進化形態が、ゲーム本編において未だ未実装だったとしても、何もおかしくはない。

『俺はいいと思うよ!その何か……紫っぽい目元とか!マジで何よそれ?カラコン入れた?』

「知らないのか?明神さん。これは熱膨張……いや、粉塵爆発――――そう、炎色反応だ。
 お察しの通りカラコンを入れてみたら秒で燃え尽きた上に――気付けばこうなっていた」

明神に関しても同様――ならば己の現状を、敢えて告げる理由はない。
未練と執着が不死者を別の何かへと変えるのなら――その変化は実質、不可避だ。
――分かっている。全て終わった事だと。それでも……“最強”は、俺だったんだ。譲れない。
――分かっている。俺はモンスターだ。俺は容易く、俺以外の存在へと変容し得る。だが、それがなんだ?



――どうせ、一度死んだ身だ。俺がどうなろうと、こいつとの約束に抵触する事はない。


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