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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

102崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/11/01(金) 20:00:40
「親友はつらいことも、悲しいことも、痛いことも全部分かち合うものなんだ。
 どっちかが守りっぱなしとか。守られっぱなしとか。そんなの親友じゃない、友達でさえないよ。
 そういうんじゃない。そういうんじゃないんだ……」

ふる、とかぶりを振る。一拍を置いて、長い髪が揺れる。
なゆたはジョンの顔をまっすぐに見詰めると、

「自分だけが痛みを独り占めするなんて、ずるいよ」

と、言った。

「ね。わたしたちにも、あなたを守らせてよ。あなたの痛みを背負わせてよ。
 わたしも明神さんと一緒に、あなたと親友になりたい。わたしが守られるのと同じだけ、あなたのことも守りたいの。
 あなたのことがもっと知りたい。テレビや新聞で語られるジョン・アデルじゃなくて、ありのままのあなたが。
 だから……歩いていこうよ。わたしたちを守るって、気を張って先に行かないで。肩を並べて……さ」

なゆたはにっこりと満面の笑みを浮かべた。屈託ない、無垢な笑顔だった。
そして、右手を差し伸べる。

「ジョンはまだ『異邦の魔物使い(ブレイブ)』になって日が浅いから。
 これからは、わたしや明神さん。エンバースくらい筋金入りのゲーマーになって貰わなくっちゃね!
 その手始めに、わたしと約束! 『殺す』なんて言葉は、金輪際使っちゃダメ!
 そういうときは『やっつける』って言う! オーケイ?
 親友との約束! 守れるわよね?」

ぱちんと茶目っ気たっぷりにウインクすると、ジョンの右手の小指に自分の小指を絡ませる。

「指切りげんまん、ウソついたら針千本飲ーますっ! 指切った!」

勢いよく指を振って離す。やや一方的ながらもジョンとの約束を果たすと、なゆたはまた笑った。

「さぁさぁ、お話はおしまい! 明日は早いんだから、ジョンも少しだけでも休んでおいて!
 わたしはまだ星空を見てるから……って、空ばっかり見てたら夜哨にならないか! アハハ……。
 じゃっ! おやすみなさい!」

ジョンの背中を押し、螺旋階段へと歩いて行かせる。
ジョンが去り、ひとりになると、なゆたは誰もいなくなった螺旋階段の方を見遣り、小さく息をついた。

「………………」

明日は帝龍との決戦だ。みのりが帝龍の本拠地を特定し、バロールが魔法機関車を送り届けたら、すぐに作戦開始だ。
自分たち『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を含む300余人の兵士を乗せた魔法機関車が、帝龍の本陣へと爆走する。
しかし――なゆたはその作戦に言い知れぬ不安を抱いていた。
みのりは帝龍の本陣を見つけ出すだろう。バロールは遅滞なく魔法機関車を届けるはずだ。
ローウェルの指輪を持った明神は必ずこの戦場全体を濃霧で包み込むだろうし、ジョンは明神を守り抜くに違いない。
カザハはいつも通りのはずだし、エンバースも……。
だが、自分は?
自分はどうだ? この戦いにおける役目を遂行できるか? 皆の役に立てるのか?
生きて、戦場からこの城壁の内側へと戻ってくることができるのか――?

「……どうだろう」

帝龍は何かを持っている。
あのトカゲの大軍団よりも、『進撃する破壊者(アポリオン・アヴァンツァーレ)』よりも恐ろしい何かを。
確証はない。裏付けも根拠も何もない。ただ『そんな気がする』。
それは所謂第六感、女の勘とでも言うべきもの。
しかし、それが時としてどんな分析よりも的確に真実を暴き出すことを、なゆたは知っている。

「リーダーが。……頑張らないとね、真ちゃん」

だが、逃げることはできない。リーダーは常に先陣を切り、仲間たちに勇気を見せなければならない。
……たとえ、それで命を喪うことになっても。
夜風に弄ばれる髪を軽く右手で押さえながら、なゆたは小さく呟いた。


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