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新年も爆発するカフェと魔法検定試験
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・荒らしはスルー
・他キャラの向こう側には自キャラと同じようにプレイヤーが居ます、思いやりの心を忘れずに
・自分の不快感は分身である自キャラの不快感、嫌だと思ったらキャラクターの行動として出してみよう
・一人じゃ出来ないと思ったら他のプレイヤーに助力を求めてみよう
・長いイベント、遅いレスは他PCを長期間拘束している事を知っておきましょう、イベントを幾つかに区切るのがお勧めです
・上記のイベント、レスは長期化すればするほどグダグダになりやすいので覚えておきましょう
・カップル成立等キャラ同士の恋愛は禁止していませんが、利用規約の範囲内で、節度を持って行動しましょう
・キャラ、組織は成長します。発生しないことが一番ですが、もし矛盾が生じた場合、後付けの設定を優先します
・疑問に思ったらその時に空気を気にせず聞きましょう。聞かずに禍根を残したり他スレへ行って争う方が空気を悪くしています
まとめwiki:ttp://www40.atwiki.jp/mahoken/
うpろだ:ttp://www6.uploader.jp/home/mahoken/
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15943/1440852946/
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>>195
「そりゃ奇遇」
サクラもマイペースで返す。
少年も徒労を感じているのだろうか。
どうもそうは見えない気がする。
前回別れたあと、サクラの心境に変化があったのだろう。
【炎巨人の里】
「参ったな、何も考えてなかった」
腕組みして足を止める。
声を張り上げるのは疲れるから嫌だ。
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>>196
「元々人間のほうが勝手に依頼を出した、いわばお節介検定ですからね〜」
流石に拡声器を常備しているわけではない。だが音を出すだけなら何とかなりそうだ。
鞄からホイッスルを取り出して吹いてみる。だが巨人は気付かない。高い音は巨人の可聴領域から外れているようだ。
「……低い音のでる楽器持ってません?」
鞄を覗き込みながら問いかけてくる。いよいよ最終手段なのかスタングレネードまで取り出し始めた。
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>>197
「ガイドをここまで連れてくればよかったかな」
後ろを振り返るも、随分歩いてきてしまった。
いずれにしても勝手気ままにやるだけだ。
「・・・・持ってないよ」
横目でクオンを見つつ、拳を握る。
「もしかして、それ使う気?」
そういうサクラもデバイスを展開しかけている訳だが。
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>>198
「巨人相手ならそんなに酷いことにはならないと思うので」
そんなわけで使用に踏み切る。目を庇い口を開け耳を軽く塞ぐ。
そして轟く短い叫び声。何が起こったのかと巨人が周囲を見回している。アピールして気付いてもらう。
「何だ! 人間がいきなり何のようだ!」
低く大きな音で聞き取りづらいが、巨人に気付いてもらえたようだ。
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>>199
「あー、隣の無作法者がどうもすみません」
「ボクに攻撃の意志はありません、隣のは分かりませんけど」
両手を上げて主張する。
本人に至ってはまったく悪びれてない。
「何かお困りごとがあると伺ったのですが、よろしければお話を聞かせて頂けないでしょうか」
クオンが型破りなアプローチを仕掛け、サクラが丸め込む。
そういうスタイルが確立されつつある。
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>>200
「私だってちゃんと検定でここにきているんですよ?」
しかしクオンの声は巨人に届かない。
「困ったこと? あぁ害獣が出たんだよ。小さくてすばしっこくて食い物を盗んでいくから困ってるんだ」
巨人にとっての小さいがどの程度か、しかし問題はシンプルであるらしい。
「害獣駆除、ということなら特に何も問題はなさそうですが……前回の妖精の里のトラブルと関係あるのでしょうか?」
前回の検定のログは調べていたらしい。
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>>201
「妖精の里の方は分からないけど、どんな内容だったの?」
クオンに尋ねてみる。
巨人の言う“小さくて素早い”というキーワードに嫌な予感がする。
「まさか・・・ね」
腕組みして巨人にも尋ねた。
「それで、何かそちらの方で対策を講じていたりはするんでしょうか」
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>>202
「どうやら妖精の攻撃手段では撃退不能な鏡張りのアルマジロが出没していたみたいです」
「アルマジロ? それならとっ捕まえて食っちまえばいいんだがな」
顔を寄せて耳を澄ましてくれている巨人が語る。
「あいつら少しの隙間も体を変形させて通り抜けてきやがるし、食えるところがねぇ」
「変形? ……スライムか何かでしょうか。関係なかったのですかね?」
一応食料庫を改修したり見張りを付けたり自分たちなりに駆除はしているようだが、未だ解決しないようだ。
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>>203
「どうでしょう、ボク等を雇ってみませんか?」
少年は考えた末、巨人に商談を持ち込んだ。
要は用心棒として、二人を雇わないかという相談だ。
「自分の目で見てみるのが一番てっとり早いだろ」
クオンの耳元で呟いて、一応了承を得ることにする。
ここで別行動を取ることになったとしても、サクラは一人でこの依頼を受けるつもりでいた。
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>>204
「了解ですよ。でも一度食料庫の隙間を塞ぎに行ってからでいいですか?
巨人では塞げないような部分でも私が地属性魔法を使えば普通に塞げるでしょうし」
スライム相手にどの程度対応できるかはわからないが少なくとも今よりは随分マシになるだろう。
「もちろんこっちとしてはかまわないが、こっちは小人と違って器用に物を作るのが苦手だからな。
対価は家畜くらいしか払えないんだよ。現に協会から鉄を買うときも物々交換だしな」
……協会と交流があるようだ。
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>>205
「じゃあ、そっちは任せた」
「巨人との交渉はボクが受け持つよ、段取りはそちらで組んでもらって構わない」
サクラはクオンのプランを承諾した。
やるからには確実性を重視したい。その点に於いてはサクラもクオン寄りの思考だ。
「そうですね・・・報酬は腕利きの職人を紹介していただくという事でいかがでしょうか?」
「ボク等は職業柄、魔導体や呪物を得ることも少なくありません、ですが加工まで自分でやるとなると話は別です」
「巨人族の方には鍛冶や宝飾に秀でた人材が多いと聞きいています」
「そのパイプを、報酬として頂けないでしょうか」
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>>206
「じゃあ行ってきますね〜食料庫の場所は勝手に見当を付けてきます。
警備を強めている場所があったらたぶんそこだと思いますし」
クオンが一時離脱した。
「あ〜いや、確かに職人はいるが、小人サイズの物が作れるとしたら少ないな。
俺はしがない家畜番、エリート職人様にゃ繋ぎはとれねぇ、いや里全体のことだから別に俺が紹介しなくていいのか? ん?」
何か勝手に混乱し始めたが、了解ということでいいようだ。
何か質問があれば答えてくれるだろう。そして今回の件で一時同行してくれるらしい。
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>>207
「その辺りは依頼が成功してからということで、口添えしていただくだけでも助かります」
一先ずは交渉成立のようだ。
元は、家畜なんか貰っても処理に困るからと考えついた代案だが、うまく転べばいい収穫になるかもしれない。
クオンを見送り、早速だが巨人に質問を投げかけてみる
「妖精族と具体的な交流はあるんですか?」
「仲が悪いわけでは無さそうですが、ここでは姿を見かけないと思いまして」
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>>208
「妖精? ……あぁ、なんか最近あんまり見ないな。
前は勝手に俺らの糞を持っていくのを毎日のように見たけど」
巨人にとってはアリの観察的な感覚しかなかったらしい。
交流を持とうにもサイズの問題で人間との交流以上の障害があるのだろう。
お互いが勝手に共生しているという感覚が近いようだ。
クオンはまだ合流しない。食料庫も巨人サイズで補修に手間取っているのかもしれない。
「一応肥溜めから糞が減ってたりするから今でも持っていってるんだろうけどな」
妖精は巨人の排泄物を肥料として利用していたのだろうか。
ただ肥料として使うだけなら家畜の糞でもよさそうなものだが、どうやら巨人の糞ばかりを持っていくらしい。
鋭い勘が働いたのならば、今の話題に何かこの森の問題の原因の一端がありそうだとわかる。
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>>209
「何に使うんでしょうね」
自分でも思考をしながら巨人にも振ってみる。
何かが引っかかるが、いまいち繋がらない。これはクオンが戻って来たら聞かせてみよう。
そろそろ彼女も戻る頃だろうか。
「なんだ・・・普通に会話出来てるじゃないか、ボク達」
少し肩の力を抜こうと、少しだけ歩み寄ってみようと、理解してみようと、そう思った結果だ。
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>>210
「ん? あぁ、元は俺たちに言葉を教えたのは小人だからな」
そういった意味で言ったのではないのだが、新事実発覚。
「何に使うかはわかんねぇな。俺らの糞は長いこと放置しないと火のマナが抜けないから肥料にもなりにくいんだけどなぁ」
ますますわからない。とここでクオンが戻ってきたようだ。
食糧番の巨人に協力を仰げたらしい。その巨人の身なりは多少家畜番の巨人よりも綺麗だ。
「補修済ませてきましたよ〜」
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>>211
「ええ?そうなんですか?」
持ちつ持たれつの関係は随分前から始まっていたようだ。
「(と、言うことは原因が仲違いってわけじゃ無さそうだな)」
サクラは正直その線を疑っていた。
考えてみればWINWINの関係をどちらかが一方的に崩すとは考えづらい。
「戻ってきたみたいです、早速ですが移動しましょう」
サクラは会話を一端切ると、クオンが目星をつけた現場へ赴くことにした。
「クオン、ちょっといいかな」
「さっき興味深話を聞いたんだけど――」
サクラはクオンに先程巨人と会話した内容を伝える。
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>>212
「……?」
クオンが何かを考え込んでいる。
「前回の検定の報酬、火のマナの結晶が出たんですよね。
妖精は巨人の排泄物からマナを取り出す手段を持っているのだと思います。
そしてそれが妖精の里の通貨になっている。つまりは火のマナ結晶は妖精が働いたという証、ということ……?」
クオンが何やら考察している。
「……これ以上はちょっとわからないですね。害獣の現物が見られればもう少しわかるかもしれませんが」
「へぇ、妖精も同じようなことをしているのか。うちの里の通貨も本人の努力の証、つまりレンガだ」
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>>213
「(通貨、うんこかよ・・・)」
厳密にはそのものでは無いのだろうが、先入観は中々消えてくれない。
本来なら、この素晴らしいサイクルに賞賛を送るべきなのだろうが。
「うんこの事はクオンに任せた」←うんこって言いたいだけ
「ボクにはそちら方面には疎いけど、クオンはうんこの事詳しそうだし」←うんこって言いたい
突然思考レベルが小学生になってしまったサクラ。
だが、安心して欲しい。その言動はクオンにだけ向けられている。
「努力の証とレンガにどういう関係が?」
ふと疑問に思ったことを巨人に尋ねてみる。
レンガというとあの煉瓦だろうか?
サクラが想像する煉瓦の使用法は主に建築だ。
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>>187
「模擬戦……って割には、ぼろぼろだな」
しんと静まり返った闘技場。男の疲れ切った声だけが、やけに響いてきたもので。
「…今回ばかしは、引き分けって事にしといてやってもいいぜ?」
大の字に転がったトームは、どうやら身体も動かせるような状態ではないらしい。だが、軽口を叩く気力だけは十二分にある様子で。
「………んで? 何か掴めるもんはあったかよ」
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>>214
「私の専攻は魔法薬ですよ?」
少し物言いに不満があるらしい。
「調べてみたい、っていうのでしたら肥溜めで妖精を待ち伏せして話を聞いてきますけど……
待ち伏せする分の時間がもったいない気もします」
クオンとしては害獣の方に興味が向いているらしい。
「炎巨人は職人が多い。靴職人、盾職人、短剣職人、製油職人、槍職人、火ばさみ職人、炭職人。
その多くで炉は使われる。炉のレンガは使っていれば熱でダメになる。だからレンガはしっかり焼かないといけない」
「ご先祖様の中で炉の修理が一番上手かった方が今の長老のご先祖様なんだ」
「職人としての腕が悪いと家畜番に回されるがな」
「うるせぇ食糧番」
この里ではレンガは消耗品。職人としての腕を錆び付かせたくなければレンガは絶やしてはいけない。
巨人のサイズで良質な耐火レンガを焼くならば、丁寧に丁寧に作る必要があるのだろう。
あと二人のやり取りを聞いているとどうにも家畜番などは地位が低く見られがちであるらしい。
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>>216
「“知ってる”よ」
「褒めているんだ、もっと自信持ちなって」
サクラはクオンに向けて口の端をニイッと釣り上げてみせる。
“理解した上でからかっている”そういう表情だった。
「それにはボクも少し興味があるけど、今は食料庫の様子がどんな感じだったか聞きたいな」
「しかし、こうして歩くと巨人族との体格差が改めて実感できるよ」
巨人の足では大した距離ではないのだろうが、随分と歩いている気がする。
正直歩くのにうんざりしていたサクラは、巨人の話を聞くと顔色が変わった。
「ああ、それでレンガか!成る程・・・このシステムは実に理に適ってる!」
凄いよクオン!と目を輝かせて喜ぶサクラ。
疲労はどこかに飛んでいってしまったようだ。
「労働に優劣はありませんよ」
「能力に関しては残念ながらそうとは言い切れませんが、適材適所という言葉もあります」
「現にボク等はあなた方の知識を必要としている訳ですし」
地雷を踏んでしまったかどうかは兎も角、フォローを入れるサクラ。
「(ああ・・・マジで面倒くさいな・・・そのヒエラルキーが一体どの程度のものなのか理解すらしていない癖に)」
自分の上と下しか見えない連中に何を言っても無駄だろうと、内心毒づきながらも表情を殺して歩いた。
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>>215
「まだ終わってない、引き分けなんて……と言いたいが、流石に無理だ、今はこれが限界だ」
「正直、決着どころか帰宅できる自信がない」
突っ伏すように倒れたまま、返事だけはする。
生身だったら呼吸が乱れてこれだけの事すら出来なかっただろう、今ばかりは死んでいて良かったと思う。
「ん、何となくだがね」
「理屈で言うなら今の自分の限界を理解出来たのは大きい、感情で言うなら、少し吹っ切れる事が出来た気がする……どっちにしても、何か掴めたよ」
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>>215>>218
【闘技場】
機を見計らうかのようにベルンの周囲の空間が歪む。
その歪みから、腕が、足が、胸が、顔が、そうしてヒトのカタチが――ゆっくりと姿を現す。
それは少女の姿をしていた。僧衣を纏った褐色の少女。
王の針子、王に傅(かしず)く者。
「我が王、なんてお姿でしょう」
ソレは表情を変えずに鈴のような声で鳴いた。
膝を付き頭を垂れ、その名の通りベルンの側に傅く。
「お戻りが遅いと思い来てみれば――我が王、なんてお姿でしょう」
そのまま口を閉ざすと立ち上がり、今度はトームに向かって一礼する。
「無粋なれどお許しを、私は居ないものとお考え下さい」
少女は両の手を腹のあたりで重ね姿勢を正すと、ベルンの後ろにちょこんと立った。
どうやら話が終われば、ベルンを引きずって連れて帰るらしい。
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>>218
「俺もだよ、馬鹿。意地とかでも立ち上がれるようなダメージじゃねぇだろうよ、お互いに」
笑う声は力がなかったが、何がおかしいかくつくつと喉を鳴らしていた。それはベルンの折れぬ闘志に対するものか、はたまた
同じようにまだ闘いたいとする自分の気持ちにか。
ここまでの無理が通せたのは、互いが死人ならではという条件が付いてこそだ。人の身のままであれば、
ここまでの立ち回りを演じることさえもできなかったに違いない。もっとも、死人だからとは言えここまでする必要性などないだろうが。
「……それなら、勝負は継続……決着は次回へ持ち越しってところか」
「まぁ掴めたもんがあんなら、そいつぁ重畳」
頷く声は確かに満足気で。
>>219
「あ、お嬢さん。俺とお付き合いを前提に結婚してくれませんか」
いないものと考えろと言われたばかりだと言うに。
しかし普段ならば、速攻で歩み寄ってもおかしくはなかったのだがやはり動かないことを見るにこの男も正真正銘の限界らしい。
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>>217
「食料庫ですが、中には魔物の肉と植物油、それと炭や木材がありましたね。
肉はともかく植物油も炭も木材も、全て少しずつ魔物に手を出されているようでした」
「肉も美味いが炭も美味い」
「あと意外と隙間は大きくて複数ありましたね。低い位置の物ばかり食べられていたので害獣に飛行能力はないと思います」
どうやら害獣の食性は炎巨人の物と近いらしい。
「レンガ作りだけは廃れてはいけないから技術を分散させる必要があったというのもあるのでしょうね〜」
「そりゃ向いてない奴が物作ったって碌なことにならねぇけどな」
「最近は食糧番もできねぇのかってどやされて……」
落ち込んだように槍を手に持って俯く。槍は突くためだけの、ゴールデンダックとよばれる簡易槍。
注視してみるとよくわかる。槍は何度も欠けては叩き磨き形を整えている。
害獣退治で地面に向けて突くから欠けやすいのだろう。
「そろそろ警備隊の詰め所につくぞ。隊長は女だがすげぇおっかねぇんだ」
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>>221
「節操ないな。消化出来さえすればなんでもいいのか・・・」
巨人の話と照らし合わせて、害獣は不定形の軟体生物と予測している。
隙間が複数ということは群れで行動している可能性も高い。
「・・・巨人族のごちそうなら害獣も満足でしょう」
皮肉か擁護かよく分からないフォローを入れつつ、気がつけば目指す食料庫が見えてきた。
「ボク等は警備隊の指示に従います。ある程度戦闘もこなせますので足手まといにはなりませんよ」
組織立って行動する巨人も居るのか、とサクラは感心しているようだ。
基礎能力の高さから、集団での戦闘行動は非効率的だと無意識に決めつけていたらしい。
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>>222
「そりゃいいんだが、小人の戦い方なんて俺ら知らねぇしどう指揮したもんか」
「指揮すんのはお前じゃなくてアミリーナだろうが」
巨体であるため生活範囲が広い。そして場所が広いならその分小さな生物が入り込んでくる。
毒も罠も使わずにアパートからネズミを排除する、と考えれば確かに連携がとれなければ無理というものだろう。
「コルーゼにトマーク? お前ら持ち場を離れて何をやっているんだい!」
「ヒィッ」
しどろもどろになりながらも害獣駆除のために協力するということを伝え終わる。
害獣駆除が順調でないことを考えてか、警備隊のほうで正式に協力することになった。
「害獣を見つけ次第駆除するよ。炎はあんまり効かないし森が火事になるから使うんじゃないよ?
けど突くだけでも効かないから一時エンチャントで攻撃するんだ。いいね?」
「炎が効かない……?」
炎属性のスライムなのだろうか。あるいは有効な火力を求めると巨人の匙加減では山火事になってしまうからだろうか。
とにかく警備が始まった。
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>>223
「デバイス起動・・・って・・・炎が効かないだって?」
紅蓮の燐光と火のマナを纏って召喚されたデバイス。
異形のガントレットとして召喚された力に言い渡された突然の戦力外通知。
「ブレード展開」
サクラは一瞬迷った後、内蔵式の煌燐鋼ブレードを展開させた。
本来ならば蓄熱させて使用するヒートブレードなのだが、素の状態ではただの実体剣。
炎が使えないとなると、攻撃手段がかなり制限される。
「状況は把握しました。いつでもいけます」
「クオン、害獣の分析頼めるかな?」
サクラはクオンだけに聴こえる程度の声量で伝える。
「炎が効かないってところも含めて、弱点とか分かったら文句ないんだけど」
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>>224
「炎は効かない、物理も効かない、エンチャントで対応……あぁ、なんとなく予想はできました。
実物を見るまでは確定じゃないですけど」
「ん? 何か動いた……奴らだ! 構えろ!」
クオンが同じく小声で返すと、タイミングよく害獣がやってきたらしい。
見渡す範囲が広すぎて一瞬どの場所に現れたのかはわからなかった。だがすぐにわかる。
赤い軟体が草の大地をうごめいている。しかもタコのように八本の足を生やして。
その素早い動きはタコというよりも昆虫、アレに近いものだったが。
「――」
クオンが物凄く妙な表情をしているのを尻目に巨人たちは槍に火を灯して地面に突き刺す。
だがタコスライムはするする逃げ回り食料庫の壁に取り付こうとする。
壁に張り付くと槍で突いて壁を崩すわけにもいかないからグリーブに火を灯し踏みつけにかかる。
当然槍より遅いその攻撃をあざ笑うようにタコスライムは逃げていく。
「……」
クオンがサブマシンガンをフルオートで放つが、効果は薄いようだ。
サブマシンガンの宝玉に触れて水と氷の魔弾に変更して撃ってみるとスライムは簡単に弾ける。
その場に残されているのは、火のマナ結晶だけだ。
「これは効いて、こっちは?」
今度は砂の鞭を振るう勢いで石の刃を飛ばす。これもタコスライムに効果があった。少し反応は遅かったが。
次に鞄から水の入ったペットボトルを取り出して蓋を開けて投げてみるが、こちらは効果なし。
ただ水をかければいいのなら巨人たちももっとうまくやっているだろう。
「ん〜純粋な火の魔法と物理的な火、それとただの物理攻撃だけが効かない、って感じですかね。
魔力の宿った物理攻撃なら効果がある。魔力ダメージに弱いタイプですかね」
極端な話魔法の武器で切りつけるか、火以外の属性の魔法が弱点なのだろう。
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>>219
「あ……ええと、うん、無茶をして悪かった」
「けれど、これは多分俺にとって"必要な事"だったんだ、迷惑を掛けるのは悪いと思っているけど、止める訳にはいかなかった――赦してくれ」
「……駄目だこれ、この絵面じゃあ、何言っても説得力が微塵も無い」
地面に頭から倒れ込んだままのみっともない状態で、綺麗に話を纏めようと頑張ってみる。
が、本人も無駄な努力だと察したのだろう、諦めるように溜め息を吐いて。
>>220
「今戦いを続けても、見苦しいだけだろうからなあ……よちよち歩きの赤ん坊に代役を任せた方が幾分か見れる試合になりそうだ」
「だから、惜しいがここまでにしておこう、次回はしっかりと決着を付けてやるさ」
ふ、と笑ってやりたいがそれすら面倒で仕方がない、こんな状況になるまで付き合ってくれたトームには、今は感謝せざるを得ない。
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>>220
「私の身体は細胞の一片まで、全て我が王の所有物」
リンと鈴のような声。
表情を変えず器用に口だけを動かし続ける。
「残念ながら、貴方様の要求にお応えする訳には参りません――それに」
少女は一拍置くと、じつとトームを見る。
まるで見透かされるような琥珀の瞳。
「貴方様の心の中には、既に別のお方がいらっしゃるのではありませんか?」
「既に充足を尽くした生を得ておりますが、まだまだ畜生に蹴られて死ぬわけには参りません」
少女なりの冗談のつもりなのだろう。
>>226
「ベルン様」
僅かに叱責を含むような強い声音だった。
「ベルン様は、ただ一言・・・こうおっしゃれば良いのです」
「“任せる”――と」
王に傅くものとして、王の言葉は絶対。
その言葉に説得力など必要なかった。
言葉そのものが力。献身を超えた隷属、信頼を超えた盟約。
「おめでとうございますベルン様、また一つ王に相応しきご活躍を成されました」
「我らが機織りを代表して、ここに礼賛を」
再び膝を付き、恭しく頭を垂れた。
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>>225
「――ッ!」
サクラはブレードを展開したガントレットを構えた。
ガサガサと生理的嫌悪を抱かせる歩みで這いずってくるソレに、一撃を叩き込む――が
「・・・手応えが、ない?」
グニュリとすり抜けるような感触。
衝撃で吹き飛ばしたものの、直ぐ様体勢を立て直して動き出すタコスライム。
「クオン!ごめん!抜けたっ」
慌ててクオンの方へ視線を移すと、先程逃したタコスライムが結晶に変わる所だった。
クオンは、この短時間で対処法を導き出したらしい。
場数は向こうのほうが踏んでいるのだろう、こういう機転は流石と言うべきだ。
「火が駄目、物理が駄目・・・か」
サクラは炎特化の術士だ。
唯一の攻撃手段とも思われた実体剣も効果がないときた。
では少年はただの足手まといか?否。
「でかしたクオン。それだけ判れば――充分だ」
口元に笑みを浮かべ犬歯を覗かせる。
サクラは拳に炎を纏わせると吼えた。
「焔よ!来たれ十二神将!」
紅蓮の拳が、三節の術式を砕く。
破棄された術式から飛び出すのは12の光点。天穹十二神将。
「単騎十二将、天御剣!」
光点はガントレットの刀身を包むように展開。点は結びつき面と成る。
サクラの持つ唯一の光属性術式。
本来ならば我が身を守る盾を形成する術式であるが、応用することで光の剣を纏わせたのだ。
「擬似的なエンチャントだね。これなら――」
一回り大きく展開した光の剣を迫ってくるタコスライムに叩きつける。
“斬る”のではなく“叩き潰す”強固な盾は、同時に強固な武器だった。
「どうだッ!」
其処には物言わぬ結晶が一つ、転がっているだけだった。
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>>228
巨人たちが少しずつ狙いを付けてタコスライムを駆除している間に二人は恐ろしい活躍をした。
遠ければ石の刃が貫き、食料庫に取り付かれれば光の刃が閃く。
反応速度にリソースを割り振っているからか戦局的判断能力が低いらしく、タコスライムは次々に押し寄せ、駆除されていく。
「スゲェ、小人強ぇ」
警備隊の下っ端らしき巨人が呆然とカフェメンバーの無双ぶりを見下ろす。
強さというよりは適正なスケールの仕事をしているというだけ、巨人が弱いわけではない。
しかし巨人たちが苦戦した害獣は程なくして姿を見せなくなった。火のマナ結晶だけがその場に残る。
「……この近くに火山とかあります?」
「え? いや、ないけど」
近くに火山などはない。火のマナ結晶が自然発生するような環境ではない。これは妖精の生み出したマナ結晶だ。
だが、妖精と巨人は元々薄い共生関係でしかない。妖精が巨人に敵対する理由はない。
そもそもあのサイズのタコスライムを妖精が運用するのには無理がある。特に花妖精という属性と、知性の低い火のスライムとでは。
「……? 結晶は自然発生じゃなくて、でもスライムは妖精が作ったとは思えない……」
クオンはますます理解できないと難しい顔で考え込んでいる。
検定自体はこれでクリアといっていいだろう。だが、まだ謎は残っている。
検定内容を協会に報告し、追加検定『妖精と巨人の橋渡し解決編』を提唱しますか?
提唱する場合連続検定となります。提唱しない場合でもカフェの検定とは別で協会が事態解決に動きます。
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>>227
「え…?」
意表を突かれたか、きょとんと、それはもう鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってしまった。
心当たりがない訳でもないのか、若干の間を空けて答えを導き出した。
「別の方……。ま、まさか……ベルン…?」( ω//)
ないない。それはない。
冗談の返しにしても、どうにも精彩を欠いたそれは、トームの疲労っぷりを表しているという事なのだろう。
>>226
「はは……そりゃ、良い。次が楽しみだ」
応じる男の声はテンポを落としつつ、そのトーンも沈んでいった。
「お前になら……任せられるかもなぁ……」
ぽつりと漏らされた言葉は、思わず考えたことが突いて出てしまったのかのようなものだったのか。
零れた言葉が、最後に”後始末を”と綴ると、それを発した男はと言えばそれはもう、遊び疲れた童子の様に寝こけてしまっていた。
続く言葉の代わりに、ただただいびきだけが、静まり返った闘技場に響いていた。
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>>227
「――ああ、そうだったな」
「手間を掛けさせて悪いが“任せる”よ、俺もそうだが、まずはトームを……そうだな、カフェで良いか、取り敢えず運んでやってくれ」
王と言われるのはまだ慣れない、元々そんな柄ではないし実力も未だに足りていないと思う。
ただ……その恩恵をこうして貰っている以上、無責任ではいられないだろう。
「……ん、ちょっと待ってくれ、褒められるのは嫌いではないけれど、賛辞を貰うような事をやった覚えはないぞ?」
>>230
「一度見た技は俺には通用しない……なんて事はないけれど、しっかりと対策はさせて貰う」
「次の戦いまでに互いに手札を増やして、質も上げて、万全の状態で決着、といきたいなあ」
徐々にトーンが落ちるトームの声を聞き、改めて今夜の馬鹿騒ぎの終わりを感じる。
疲労し磨耗し散々な状態になりはしたけれど……やはり、こういう競い合いは純粋に楽しい。
だからこそ、次を求めずにはいられなくて。
「……『後始末は自分でしろ』なんて事を言う気はないさ、長い付き合いではないけれど、お前が無責任な男じゃない事は知っているんだ」
「そんな奴が後始末の一つすら出来ない状態なら……うん、誰かがやってやらなきゃいけないだろうしな」
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>>229
「一先ず報告かな」
何か気になる様子のクオンを横目に、結晶の一つを拾い上げる。
透かすようにそれを眺め、クオンに問う。
「これの純度ってさ、妖精の時の報酬と同じくらい?」
「二つの事件に何か繋がりがあるとしたら――」
サクラは結論を口にしなかった。
あくまで可能性。
「まだ、ボク達にはやるべき事が残っているんじゃないのか?」
サクラとクオンは話し合った結果、新たな検定を提唱する事になった。
先に待つ真実とは、一体どんなものなのだろうか。
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>>232
一度協会に報告するということで巨人たちと別れた。
協会に戻ると検定クリアとなり報酬が渡される。巨人サイズの象牙の指輪に巨人サイズのヘアピン。
「これ人間からみたら冠と刃のない剣ですよね」
これはもう装備というよりも素材だ。報酬である小物のサイズが妖精よりも大きい。
「……最後の最後まで、これは研究者の性ですよね」
あの二つの里に何が起こっているのか。真実を求めて。
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>>230>>231
「かしこまりました」
むんず、とトームの襟首を掴む。
引きずって行くらしい。
「今のベルン様の相手が勤まる御仁はそうそう居ないでしょう」
「バベル様も、ベルン様と対峙しておられる時はとても愉しそうでした」
無表情の琥珀の瞳がベルンを見つめる。
「今ならば、理解できるような気がします」
「貴方が孤独でなくて、私は嬉しい」
最後の言葉は、明らかに王に対してではなくベルンという青年に対しての言葉だった。
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>>234
「ありがとう、けれどトームも一応怪我人だから……それなりに丁重にな?」
彼女はバブイルの従者だった訳だし、きっと相応の存在の筈、首が絞まって悶絶して起きる、なんて可哀想な展開を引き起こす事は無いと信じたい。
「そうか……言われてみれば、最低限のやり取りくらいはしたが、それだけだったな」
「俺と戦っている時に愉しそうだったのは、当事者だし流石に解っていたが、普段どうしていたのか、どんな感じだったのか……今まで全然知らないままだった」
「……そうだな、自分で言うのもおかしな話だが、本当に良かった、恵まれていると今なら思える」
「無くしたものが無いわけじゃない、痛みが無いと言えば嘘になる、けれど未だに俺には父のような師がいて、馬鹿騒ぎに付き合ってくれる友がいて、突然湧いて出た慇懃無礼な憎めない弟分もいる」
「ああ、それに引き継いだお節介な従者も、だな、本当に――こういう時間が有ってくれる事が嬉しいよ」
過去の光を捨てる気は無い、抱えて進むと誓ったのも嘘ではない、けれど、今がそれと同じくらい愛おしい時間になってくれるのならば、それは、きっととても幸せな事なのだと素直に思える。
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>>235
「心得ております」
先程の砕けた様子はどこかへ、再び慇懃に会釈する。
よくよく目を凝らしてみると襟首を掴んだ手には力が入っておらず、僧衣の袖から何か薄っすらと輝くものが無数、トームの身体に巻きついていた。
その輝くものの正体は“霊糸”
霊糸アリアスと呼ばれる細く強靭な霊力の糸はトームの身体を傷つけること無く“地面から僅かに浮かして支えているのだ”それも片腕で。
王の針子という二つ名は伊達ではないようだ。
「私達“機織り(キルシュヴァッサー)”は元々、水子の魂」
「生まれることすら許されなかった私達に、バベル様は器と役目を与えて下さいました」
淡々と語る口調はまるで他人事の様。
「歪んだ救済、と言われれば否定は出来ません」
「それでも私達は、王に感謝しています。私達を造った先王と、私達を従える役目を継いだ貴方を」
それでは、と再び一礼し踵を返す。
そうして音も無く、カフェの方角へと遠ざかって行くのだった。
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【カフェのスクリーン】
本日の検定内容_
‘妖精と巨人の橋渡し解決編’
〔ジャンル〕
調査
〔推薦適性値〕
不明
〔開催地〕
果物の森美術区域
〔概要〕
説明しよう。果物の森美術区域とは巨人の植林と妖精の力が組み合わさり生まれた観光名所である。
しかしながら実際には巨人と妖精には力を合わせたという意識があまりなかった。何故か?
それは互いのサイズ差があまりにも激しすぎて強い関心を抱ける対象になりえなかったからである。
実のところ奇跡的バランスでこの果物の森美術区域は成り立っていた。
だがそんな状態がいつまでも続くとは思えない。現に問題が起こってしまった。
それも妖精側にも、巨人側にも同時に問題が起こってしまった。
二つの里は両方害獣に悩まされていることが判明した。そしていくつかの謎が残った。
さあ真実を解き明かし二つの里に平和をもたらしましょう。
〔ヒント、その他〕
二つの里を自由に行き来して真相を解き明かしましょう。
〔失格行為〕
・里や森を大規模に破壊する行為、基本的に器物損壊や建造物損壊の罪となります。
・里や森での窃盗行為や密漁行為、希少な環境ですのでそれを壊す行為はやめましょう。
・森への外来種の持ち込み、環境保護のためこれは厳守してください。
・現地住民への過剰な迷惑行為や他の参加者の殺害、当然認められていません。
・里同士の関係を決裂へ導く行為、今現在の環境が限界だとしても良い方向への変化を望みます。
・検定に関係のない犯罪行為全般、常識の範囲で行動しましょう
〔BOSS〕
・真実
《PRESENT》
☆火の果実☆
分類:食品
食べると血の代わりに火が体を廻るようになるという伝説を持つ果実。
実際は特殊能力や魔力や適正、火に関する何を得るか個人差もあり全く不明という代物。
真実を突き止め問題を解決した場合にひとつだけ与えられます。
《検定開始時刻》
>>20:30
《終了予定時刻》
>>0:30
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>>237
転送装置が動いているというのに過去の検定ログを見つめている。
小型の液晶モニターが貸し出され妖精の里での検定の映像と巨人の里での検定の映像を確認する。
「……どちらの検定でもピンポイントにお互いの種族で対応しづらい害獣に悩まされていて、
少なくともタコスライムは自然発生というには無理があって、ミラーアルマジロも、自然発生とは思えないですね……」
コアがその森で自然発生しない火のマナ結晶だったタコスライム。
そして花妖精以外に光魔法を使う存在がいないのに光魔法に対応した変異の確認されたアルマジロ。
どちらもただの自然発生というには不自然だ。
「、確認しに行くしかないですね」
ようやく席を立ち、転送装置で検定会場へと向かっていく。
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>>238
妖精の里と巨人の里を自由に行き来できるように妖精サイズになる魔導具が放置してあった。
早速妖精の里を確認しに行くため使用する。
「お〜サイズが違うと景色が別物っぽいですね」
砂に乗りふよふよと浮かびながら妖精の里、をスルーして害獣との戦闘跡地へ直行する。
そしてさらに奥へと進んでいく。何かの痕跡はないかと目を配りながら。
「……? 変な穴が開いてますね」
地面に間隔をあけて無数に開いた随分大き目の穴。
綺麗に円錐の形に開いているがその奥、円錐の頂点の部分は別の何かで掘られたように乱れている。
「方向的には、こっちに進むと巨人の里の近くですけど」
首をかしげながら悩む。
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>>239
無数に開く穴を調べ続ける。呪術検査では火属性の残渣が感知された。
「火属性、この森でその残渣が出せるとしたら巨人か妖精かタコスライムですよね。
何かしら今回の件に関わっている穴、ってことですかね」
しばらく調べていると巨大な草を掻き分けて赤く透き通る巨大な触手が現れた。
タコスライムだ。妖精サイズで見ると恐ろしく大きい。だが、タコスライムは遠隔攻撃手段を持っていない。
高度を保ちつつ水と氷の魔弾でバースト射撃を繰り返す。それだけで単体のスライムを狩るのは簡単にできた。
「ふむむ、タコスライムの活動圏内なんですね。二つの里の害獣の活動圏が重なっているんですか」
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>>240
一度転送装置にまで戻ると元のサイズに戻る。そして先ほどまでいた場所を、今度は人間サイズで調べる。
「、この足跡、巨人のものですね」
妖精サイズでは気付かないスケールの足跡に改めて気付く。
人間の体で探し回ると妖精サイズでは気付かないものが見えてくる。
少なくとも無数に開く穴はただ動物が巣穴にするために掘ったものではない物だということ。
色々調べまわっているとアルマジロを見かける。鏡張りではない普通のアルマジロだ。
「ふむ、」
何か考え込む。少しずつ真実に近づいている感覚。答えは既に自分の中にある。ただ結びついていない。
アルマジロを捕まえて観察してみる。艶のある綺麗なアルマジロだ。完全に丸まっている。
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>>241
しばらくアルマジロを観察することにした。人間サイズなら気をつけていれば襲われることもない。
アルマジロは地面を転がりながら移動していく。通常のアルマジロとは異なる生態であるらしい。
穴に落ちた後は四足歩行で這い出てくる。落ちたところを覗いてみると穴の奥を少し掘ってから這い出る。
「……?」
何度か穴に落ちた後、穴の奥から何か硬質なものを砕く音が聞こえる。そしてアルマジロが這い出てくる。
何かを考える。鞄から巨大なヘアピンを取り出すと砂で削り一部を切断した。
その聖火の鉄の欠片をアルマジロに差し出すと、アルマジロはそれを食べる。
「なるほど」
クオンは何かに気付いたようだ。
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>>242
「さて、森の管理人さん。今回の件の解決策はとりあえず考えてきましたよ」
クオンは真実よりも先に解決策を報告する。
「まず各害獣への対処なんですけど、これお互いの種族的に対応しづらいだけなんですよね。
だから火以外の魔力ダメージに弱くて飛べないタコスライムは花妖精が光魔法で対処する。
ミラーアルマジロは金属食べるみたいなので巨人が餌付けと躾して家畜にしてしまえばいいです」
妖精と巨人の薄い共生を一歩進める。それだけで害獣問題自体は解決する。
だが、それは謎の解決ではない。害獣発生の謎が解けていないのに解決策は単純。
仮に人為的に害をなそうとした事件であったのならば、間が抜けている。
仮に種族間を取り持とうとした一手であったのならば、乱暴がすぎる。
「この検定の真実、本当は知っていたんですよね? 管理人さん」
森の管理人、この森を一番よく知る人間。彼と向き合う。
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>>243
「あのタコスライムは火のマナ結晶をコアにして生まれています。コアは妖精が作っているみたいですけど、運用は別。
あのタコスライムは妖精の手から離れたマナ結晶から自然発生するものなんですよね? それも、本当ならそんなに大きくないタコスライムが」
おそらくは普通のスライムがマナ結晶を取り込むなどのルートで昔から少しは存在していたはずだ。
火のマナ結晶を消費することなく通貨として使い、火のマナ結晶を作り続ける妖精。それなら魔物が発生しないほうがおかしい。
「ただ、今回は大きなタコスライムが大量発生します。その理由は、あのミラーアルマジロ。
あれに襲われて普段持ち歩いているマナ結晶が森に放置されることが多くなってタコスライムが大量発生した」
「そして、タコスライムの駆除の為に巨人が槍で地面を突くと、槍が欠けて金属片が残される。
それをアルマジロが食べてミラーアルマジロに変異する、という悪循環」
巨人たちの槍は、たしかに欠けた物を何度も修繕した跡があった。
どうしても地面ごと突くから仕方のないことなのだろう。だが害獣駆除が増えればその分金属片は多く残る。
「今まで問題にならなかったのは管理人さんが処置をしていたから。
今回こんなに急激に問題が激化したのは、管理人さんがそうなるように仕向けたから」
「いえ普通に処置できないレベルの大きさになったからですけど」
「……あれ? えっ、じゃあなんで真実を始めから話さなかったんですか?」
「怒られるのが怖くて……」
乾いた風が吹いた。
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>>244
真実を突き止め解決策を提示したクオン。その手には報酬である火の果実。
だがクオンは完全に気が抜けている。
「……私は火とあまり相性よくないですし、というより食べてうっかり人間止めちゃったりするかもしれませんし……」
自分で食べる気はないようだ。
-
【カフェ】
自分自身に流れる吸血鬼の血を殺してから血を飲む必要がなくなった。
昔はお世話になっていた飲み物欄の輸血パック。それを懐かしそうに眺める。
あの時隣にいた家族を取り戻すために今は力を磨いている。
様々な形で力をつけるのに検定も活用している。今も検定でも出ないかと休みながらスクリーンを眺めている。
本当はもっと必死に自分を追い詰めて努力するべきなのかもしれない。
だがいつ本番を迎えるかわからない中、練習で力を使い果たすわけにはいかない。
理屈で納得していながらも、感情はついてこない。思考が宙に浮く感覚ばかりが頭を支配する。
「……何もしないのって、暇ですね」
クオンのように本を持ち歩いていたりすることはない。ただ、体を休めながら待っていた。
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>>236
「別に歪んでいるとは思わないさ、それに、お前の境遇を否定するのは俺自身を否定するのと大差無いからな……思いたくもない」
そう、他ならぬ自分も幻影みたいなものだ、彼女達が日の光の下に出れなかった存在ならば、自分はかつて日の光の下に居た男の影のようなもの。
もう一度会いたい、一緒に居たい、離れたくない、消えたくない、強すぎた想いを――未練を抱えていた故にこの世界に“焼き付いた”過去の幻像のようなものだ。
そして、そんな情けない存在でも先に進む事が出来るのは自分が誰よりも知っている、だからこそ自分の否定など絶対にしない、誰にもさせない。
「礼を言うのはこっちなんだがなあ、手を貸してくれてありがとう、それと、今までおっさんを支えてくれてありがとう」
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カフェにいた。そして検定を待っていた。ところがいつの間にか転送装置が動いていた。
スクリーンの故障だろうかと思いマスターに確認するも、マスターは時が止まったかのように微動だにしない。
転送先で話を聞くしかない。そう思い転送装置に飛び込んだ。
今の主人に拾われる前、過ごした町はゾンビに飲まれ死の町と化した。
己の過ごした日常が壊れるのを、一度体験していた。一度起きたことが二度起きないとは限らないというのに、それを考えなかった。
その罰だろうか。転送装置の光は消えた。周囲を見ても転送装置はない。唐突に人気のない場所に放り出された。
タヌキであるこの身では利用することがなかったであろう、知らない施設。人の手が入った場所だ。だが、人がいない。
異様な雰囲気すら感じる。ここは、どこだろうか――?
-
【謎の施設】
ふと、向こう側から強い光が見えた。目が潰れるかと思うほどの強い光だ。
けたたましい金属音を響かせ、巨大な細長い構造物が、独りでにこちらに向かってくる。
それはゆっくりと速度を落とし、この謎の施設のすぐ脇に隙間なくぴたりと停止した。
「きさらぎ、 きさらぎでご...いま.....お忘れ物の無いよう....」
窓の多い構造物だ。全て明かりがついていて、中は椅子と輪っかのような物がぶら下がっている。
窓から見える中には、誰も居ない。
見慣れない開き方をする一番奥の扉から、一人の少年...?が降りてきた。
狐のような尖った耳。その先端は仄かに燃えている。
「・・・・・?」
少年はタートに気づいた様子だったが、特に話しかけるわけでもなく階段を下りていこうとする。
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>>249
飛行機、船は経験と知識があるものの鉄道に関しては無知なタヌキ。
だが乗り物という概念は知っている。おそらくはこの乗り物を運用するための場所だろうとは理解できた。
少し急いで少年に追いつこうとする。声帯が異なるため声で引き止めることはできない。
幻術で文字を出すことによる筆談。それがタートのコミュニケーションツールだ。
可能なら「少し尋ねたいことがあるのだが、時間よろしいだろうか?」と訊ねるだろう。。
-
<<ドアが閉ま...ま...>>
酷くかすれた声で扉が閉まる。「電車」はまたゆっくりと速度を上げ、闇の向こうへと消えていった。
再び訪れる静寂。不気味なほど周囲には音が無い。
ボロボロの木の壁、やけに古びた張り物。コンクリートは所々ひび割れススキを生やしている。
駅舎にぶら下がった看板には「きさらぎ」とあり、その下には、「やみ」「かたす」という文字がある。
「なんとオメ珍しいもん使うでねか?」
どうやら文字には気づいてくれたらしい。
「化け狸?んだども化けてもねし、なんとしたんだ?オェも暇でねど?」
・・・かなり強烈な訛りだ。辛うじて聞き取れるレベルだろう。
少し長めの黒髪を持つ少年。狐目で狐の耳(燃えてる?)を持ち、黒い着物を着ている。
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>>251
筆談のため文字はある程度習熟していた。読むことはできる。
「恥ずかしながら魔獣にも妖怪にもなりきれていないしがないタヌキだ。
転送事故か何かで突然ここに放り出されたものでな。ここがどこかもわからずにいる」
まずはこの場所がどこか、そして帰る方法。これを確認しないことには自由行動も悪手だ。
カフェメンバーとして相手がどんな容姿でも話が通じるのならば偏見を持たないようにする。対話は力なり。
-
「てんそー?だか何だがわがねども・・・あー、んだばオメ、あえだべな」
狐は術を解くと、黒い狐になってタートと目線を合わせる。
黒いと言っても、目は炎のように赤く、耳と尻尾は燃えている。
「此処きさらぎっつんだどもよ、此処よ、ヒトの来るとごでねのに最近ヒトがくんだ。」
「さっきオェ電車さ乗って歩ってきたべ?電車が外のヒト連れでくんのよ、オメももしかして電車さ乗ってきたが?」
どうやら狐の言うことには、事態はあまり芳しくない。
この辺りに来れるのは基本的に「黄泉」や「冥土」を行き来する者だと言う。
ましてや、迷い込んだ人間が何処に言ったかなど知る由もないとの事だ。
「オェは”根”さ用事があるんだども、オメ何とすんだ?根さきたっで帰れねど?」
「まぁ畜生のよしみで付き合うどもよ、この辺の山だばまだ”この世の内”だから何となるかもしぇねど」
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>>253
「……電車、いや……」
十全に現在の状況や話を理解できたわけではない。だが、彼岸というものは知っている。
死ならばそれを傍から見た。それも大切な人の死を。
「……帰れる範疇で、故人と会うことはできるだろうか? 会いたい人がいるのだ」
-
「なんと、随分ヒトに慣れたタヌキだでゃ」
「根さは・・・ちょっと無理だな、オェみてに・・・こう」
狐の上半身が黒い液体になって溶け、それは形を取ると、先ほどの黒髪の少年に戻る。
彼は「油々火狐(ユユヒコ)」という、人間が言うところの稲荷神の一種であるそうだ。
曰く、「根」に行くには実体と寄り代を分離し、地面に溶けていくほどに魂を変えなければならないらしい。
「まぁ、ヨモツヒラサカまでだば行けるから・・・ヒト居るかはわがねども、行ぐか?」
線路を降りた隣のトンネルに、その場所があるという。
どっちにしろ、きさらぎ周辺には何もないとの事だ。
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>>255
「そうか」
無論未だタヌキの範疇であるタートにそこまでのことはできない。
「そうだな、元より無理は承知の言葉。帰れる範疇でなら行ける所まで行こうと思う」
たまには愚かな冒険もいいだろう。そう、決めた。これはある種試練であり、機会でもあると。
-
「んだが。あべ、あっこだ」
そう言って、二匹の獣がプラットフォームを降りた―――ー
――――トンネルはやけに長く、獣二匹の足音だけが小さく響く。
<<おーい>>
途中、声が聞こえた。
「(・・・返事すでねど)」
狐も、テレパシーじみた物を使っている。
<<おーい、線路の上歩いちゃあぶないよ>>
それは老いた男の声だったが、後ろから聞こえてくるというのに一向に遠ざかる気配がない。
その男には片足が無い。
「(良くね奴だ、関わるこたねぇ)」
声はどんどん近づき・・・気づいたときには、片足の男がすぐ隣に迫っていた。
こちらを、じーーーーーっと見つめている。
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>>257
飼われタヌキとなった今、野生は随分と擦り切れている。
それでもなんとなく、それが振り向くことすら危うい存在であると理解できた。
目を見れば相手が嫌な考えをしているかわかったりするものだというが、目を合わせることができない。
本能がそれを拒否している。今までにない経験に困惑するが、無理にその本能に逆らおうとも思わない。
ただひたすらに歩く。
-
片足の老人を隣にくっつけたまま、トンネルを抜ける。
出口に近づくと、男はそれ以上追ってはこなかった。
トンネルを抜けても周囲は闇に包まれている。特に狐や狸は夜目が効くので苦ではないが、それにしたって暗い。
抜けてきたトンネルには「伊佐貫」とある。
「この先に外のヒトが迷い込んだばもう駄目だな」
「ま、オメはヒトでねから何とでもなんだども」
線路を外れると、林の中に民家が点々とする場所があった。
周囲には、道祖神のような石象も所々にある。途中に落ちていた新聞には、昭和○○年、とある。
太鼓と鈴のような音が、どこかから聞こえる。別の方角からはお経のようなものも聞こえる。
林の間から、潰れた顔面の女の顔のような物がこちらを見て笑っている。
「・・・一応聞いとくけどよ、最低限身ぃ守れる事はできるべ」
顔は、何かを食っていた。それが何なのかは、正直想像はしたくない。
そのおぞましい雰囲気から目を背けたとたん、顔のいた方角から何かが音を立ててこちらへ向かってくるのが聞こえるだろう。
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>>259
「一応確認するが、雷は有効であろうか?」
流石に異様な雰囲気が強まったことはわかるらしい。
多くの見慣れぬ物に物凄い勢いで悪印象が植えつけられてしまっている。
そして、ただの動物である自身に霊的な因子が芽生え始めたのを自覚する。
音のする方向へ大雑把に視線を向ける。またあの老人のような何かが近づいてきているのだろうか。
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「なんもだ、此処のは何でも効く、細けぇこた何もね」
直後、潰れた顔の四つんばいの化け物が茂みから飛び出し、油々火狐に噛み付く。
油々火狐は再び黒い液体となって、化物の手と歯からするりと逃れると、地面に染み込んで距離を取る。
潰れ、歪んでいるその顔は見るに耐えない。唇の無い歯からは涎と血がだらだらと垂れている。
小さな目がその視線を、今度は狸に向けてくる。
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>>261
「なんでも、か」
細かいことは何もない、何でも効く。その言葉通りならば対応できるだろう。
尻尾が膨らみ電気を溜め込む。いつでも放てるように。そして同時に、幻術の矢を放った。
攻撃の意思を乗せて殺傷力のない幻影による攻撃を行う。普通ならば牽制以上の意味はないが……?
-
<<い゛い゛い゛い゛いい゛いい゛いい゛い>>
幻影の矢が当たると同時に、顔は狸に飛び掛ってきた。
一切の躊躇を持たないそれは、獣の思考ですらない。
何か、強い意思を持った動きだ。
「あや、よいでねな」
しかし、その突進は狸までは届かない。
細長い化物の手足を、黒い液体が絡め取り、もがけばもがくほどその体を地面に沈めていく。
「・・・ほれ、ビシッといけビシッと」
(狸に攻撃を促している)
-
>>263
「なるほど」
電磁加速により化け物の上へと飛び、尻尾より落雷を起こす。
そして同じ軌道で電磁加速し元の場所に着地する。
「……幻術でも効いて、いたのだろうか」
さすがに物理的にダメージを与えていたようには見えなかったが、命中に反応していた。
この場では精神への攻撃がデフォルトとなっているのだろうか。あるいは、ただのタヌキから外れてきているのだろうか。
-
狐は、痙攣している化物に牙を立て、容赦なく首を食いちぎる。
そうして、完全に動かなくなった化物は、黒い液体に包まれて沈んでいった。
狐が再び元の姿に戻ると、先ほどより火の勢いが増している。
「ヒトん体を乗っ取った怨霊だべな、たぶんな。こういうのは燃してしまった方がいい」
「・・・こっちゃさけ」
狐は、そのままお経の方へ進む。
木々はより深くなり、森の向こうに大きな寺が広がっていた。
お経はかなり大きい。というか、うるさい。声がかき消されてしまいそうだ。
「あの寺は...入っても何もいい事ねども、丁度あっこの裏にな...」
「あった」
それは、かなり大粒の数珠。狸には首輪にしたほうが丁度よさそうだ。
「これはよ、外の空気が入れてあんだ。こいつを持って・・・んだな」
「・・・やみ駅までいけば「あの世」の連中と会える、線路を伝っていけばいい」
鈴と太鼓の音も、段々大きくなってきている。
「もうだいぶ太鼓もでっけくなってるっけ、あンまし・・・こさ居るとあぶね」
-
>>265
筆談とテレパシーにはあまり影響はないだろうが、その音量は純粋に耳が痛くなるほどだった。
導かれるままに歩くが、顔をしかめるのは避けられなかった。
「やみえき、どちらの方向だろうか? 何にせよ、色々感謝する」
かなり大きく成長しているタヌキが大きな数珠を首にかけていると、いかにも人を化かしそうな見た目になった。
-
「こっちゃさ」
森を下り、再び線路に下りる。
段々と両脇の傾斜がきつくなっていき、山が深くなっているのがわかる。
かなり時間が経った気がするが、一向に辺りが明るくなる様子はない。
歩いていると、線路は大きな谷を挟んで鉄橋に繋がっていた。向こう側に、駅らしき明かりがみえる。
「・・・オェは此処までだ、其処を渡るんだば数珠が要る」
「待っててやっから、行ってこい」
-
>>267
山を歩くことなど久しくないことだった。だが動物の体は山を楽に移動できるようにできているらしい。
「わかった。行ってくる」
ここまできたのだから信じて進もう。今の生活に不満などない。だが、ただ一言あの老人に、前の主人に会いたい。
別れを告げ、今が幸せであると伝えたい。既に転生してしまっているのかもしれない。だがそうでないなら、伝えたい。
それがタヌキとしての己のケジメだと思うのだ。それまでは、ただのタヌキをやめることもできない。そんな気がした。
鉄橋を渡る。より世界から死の気配が強く感じられるようになってくる。
-
やみ駅は、やはり同じようにボロで、同じように薄暗い
しかし、きさらぎ駅とは打って変わって、大勢の人間がいた。
・・・いや、彼らは人間「だった」と言うべきか。
その姿は人間でこそあれど、とても希薄な存在に見えた。恐らく、普通の人間には見えない代物だ。
大勢が、身じろぎひとつせずプラットフォームの上で静かに電車を待っている。
もしかするとこの中に「居る」のかもしれない。
皆、足元は透けており、人混みでありながらぶつかる事はなかった。人を探すのは楽だろう。
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>>269
透けた足に邪魔されることのない低い視線。それが今はありがたかった。
無言で身じろぎすらしない彼ら。あの落ち着いた声は、もうはっきりとは思い出せない。
声をかけて探すこともできない。動物の身では、それどころか筆談も成立するか怪しい。
彼らはこちらを認識できているのだろうか。反応するのだろうか。
自然を切り開く、文明を己に教えてくれた人。自然では生きられなかった自分を救ってくれた人。
不安を抱きながらも探し続ける。ゾンビに成り果てる前の姿も思い出しながら、懸命に年老いた男性だけを探し続ける。
-
<<プァン!!>>
電車の音が静寂の駅に響いた。
「やみ やみ 忘れ物にご注意ください」
そのドアが開くと同時に、ぽつぽつと人が降りてくる。
とは言っても、やはり足は透けている。
プラットフォームの人々が続々と乗り込んでいく。声をかけるには間に合わない。
しかし、乗り込んだ電車のドアからは、乗客の顔がよく見えている。
-
>>271
一列に並んだ顔。端から端まで走りながら全てに目を通す。
それでも、あの顔を見ることはできなかった。もう何年も前のこと、そして彼も大した未練などなかった。
タヌキを拾ったのも寂しさからの手慰みのようなもの。いつまでもこんな場所に留まる理由などない。
「……」
きっと、天国か転生か、どちらかの道へ逝ったのだろう。今となっては確かめようがないが。
心のどこかで、こんな場所に爺様がいなくてよかった、と思う部分を自覚した。
帰ろう。いつの間にか、尻尾から風の音が聞こえるようになっていた。
元きた鉄橋を渡る。その間にも霊の力というのだろうか、冥界、異界の力がその身に馴染むのを感じる。
「今、戻った。会うことはできなかったが……満足した。世話になったな」
-
先ほどと同じ場所に、かがり火のように仄かに燈る狐が座っていた。
「―――んだが」
狐は納得した様子だった。
「さっと、オメんとこどごさ帰・・・」
バギャン!!!
「ひゃー!」
唐突に、転送装置の光が線路に空いた。
というより、固く閉じられていたものが突然開いたという表現が似合う開き方だった。
まるで、何かから許しを得たように。
「いんやびっくらこいた、なんだなんだ」
-
>>273
「、あぁ、帰り道ができたようだ」
光の手前まで進む。そして数珠を返そうとしながら文字を浮かべる。
「次に会えたときは、恩を返そう。本当に世話になった」
-
「なんもなんも、持ってけ、それくれぇ幾らでもこさえる」
「数珠はな、ホントに役目果たしたら勝手に消えるもんなんだ」
「今消えねかったって事はまだ何かあんだでゃ、それまで取ってけれ」
「へば、まんず」
狐はそう言うと、火を揺らしながら森の向こうへと消えていく。
鈴と太鼓の音は、かなり近くまで来ていた。
-
>>275
「そうか、わかった。何から何まで本当にありがとう。感謝する」
背を向け消え行くその姿を見ながら、今ならできる気がした。
「感謝するっ!!」
幻術による聴覚干渉、テレパシーもどき。タートは幻の上ではあるが、声を手に入れた。
再び数珠を首にかけ、鈴と太鼓の音に背を向け転送装置の光へ飛び込んだ。
大きな音の中に三味線の音まで混じったように聞こえたが、次の瞬間にはカフェに放り出されていた。
勢いよくカフェの床に叩きつけられる。痛みが、先ほどまでのことを夢ではないと訴えかけていた。
尻尾は雷と風を纏う。自分の中に魔力ではない異質な力が目覚めているのを感じ取る。そして、数珠が首にかかっている。
「……不可解な体験だった。だが、きっと必然だった」
-
【根の国の数珠】
火狐の油(黒い液体)を幾重にも固めて大ぶりの数珠にしたもの。
行き倒れた人間たちに僅かに残った「外の気」を封じ込めてある。
これがあるといわゆる「あの世」に極めて近い場所でも安定して活動できる。
数珠は霊的なものであり、「本当の役目」を終えると持ち主の前から消えると言われている。
-
【カフェのスクリーン】
本日の検定内容_
‘はなみ’
〔ジャンル〕
裏方
〔推薦適性値〕
高高度耐性B
熱干渉B
広域魔法A+
〔開催地〕
カフェ提供特設花見会場
〔概要〕
花見がしたいけど雨が降っている。そんなことありませんか?
桜の木の根にダメージを与える花見などするなと天が告げているかのようです。
ならば、当然神へ反逆の狼煙を上げる。それが人という物。
桜は植物魔法で保護し、雲は火により蹴散らして、自然を切り開き花見をしよう。
諸君、私は花見が好きだ! 好きで好きで堪らない! 神への反逆の次に花見が好きだ!
(以下テンションの高い文章が羅列されている)
〔ヒント、その他〕
雲を散らす方法は自由です。風でも火でも水でもなんでもかまいません。
桜の保護係の方は桜を外敵から守ることも仕事のうちです。流れ弾に注意しましょう。
〔失格行為〕
・故意に桜を傷つける行為、また環境の大規模破壊も失格行為となります。
・それ以外の全ては不問となります、が、犯罪とならないよう常識の範疇で動きましょう。
〔BOSS〕
・大規模低気圧
強い雨と風が桜を襲うかもしれません。なんとか対処しましょう。
《PRESENT》
☆桜餅☆
分類:食品
参加賞です。カフェのマスター特製のおいしい桜餅です。
☆桜吹雪の組紐☆
分類:魔導具
桜の花びらを大量に飛ばす目晦まし用の魔導具です。低燃費です。
《検定開始時刻》
>>21:45
《終了予定時刻》
>>1:30
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スクリーンを粗方読み終えると、桜賛美の言葉で頭がくらくらした。さくらくらくら。
少しのクールダウンを置いて、さて自分には何ができるかと考えた女は、一度カフェを後にする。
(数分後)
断ち切ったばかりの白い布、使い古しのウェス、とにかく布を両手に、背中でドアを押して戻ってきた。
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>>279
何やら転送装置前に小さな妖精が浮かんでいる。参加するらしい、が大した用意をしているようには見えない。
いや、妖精サイズで何を持ち込めるのかと言われれば何も言い返せないのだろうが。
そして注意力散漫なのか大量に布を抱えて近づいても気付かない。転送装置の前で浮いている。サイズは小さいが少し邪魔だ。
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>>280
女は抱えた荷物で視界が危うい。
布がとにかく積み重なっており、ぶつかれば痛くはないもののうわべが崩れ白い波頭が襲うだろう
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>>281
衝突、埋もれる。しかし妖精は軽いのでそのまま運ばれてしまった。
【花見特設会場】
ドシャ降りだった。テントの下ではあるが物凄い音を立てている。そして普通に水が跳ねてくる。
風が吹いたら完全に水浸しになるだろう。当然花見客など一人もいない。桜はもう散りそうだ。
そして雪妖精が近くにいるので随分冷える。
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>>282
「これ桜雨なんてもんじゃないだろおい」
ぼやく声も雨音にかき消されていく。
そして妙に肌寒い。雨で冷えているのだろうか
テントの下の長机に布を置く。動けば見つけられるかもしれない。
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>>283
一応もぞもぞと動いてみる。このまま水で布が濡れると氷付けになり出られなくなると思ったのかもしれない。
布の端のほうへ端のほうへ動き、何とか脱出する。振り返り状況を確認、目が合った。
「……」
ジッと見ている。特に何か感情が見えるわけでもない。周囲はテントだ。
隣のテントには高高度突入のための、人間大砲らしき物が置いてある。大きく「安全」と書かれている。
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>>284
(じっ
じー
じーー
「応」
白い布に線を引こうとチャコを用意しながらも、目を離さない。ちょっと怖い。
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>>285
「……?」
てるてる坊主を作る工程が珍しいのか寄ってきた。
本来なら高高度で広域魔法を使い雲を散らしにかかるべきなのだろうが、こちらに夢中になっている。
不思議そうな表情にしか見えないが、一応関心は向いている、のだろう。
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>>286
「遠い国の原始魔術だ」
妖精の視線の先が自分の手元に移ると、にやりと笑う。
裾をきれいにするために丸く切るようだ
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>>287
「、川ノ音消エ寝、寒空ガ降リ、」
短い歌唱詠唱。氷の鋏が妖精の手に生じる。
が、冷気により空気中の水分が付着し凍り、どんどん不恰好な形になっていく。これでは切れない。
諦めたのか鋏を消してしまう。ただ見ていることにしたらしい。
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>>288
女は妖精の奮闘を横目でとらえていた。
夏以外は生きるのが大変そうだ……
冷気に冷えながらも普通の裁ちばさみを滑らせ、ウェスを丸めて載せていく。
ぷつんと抜いたばかりの髪の毛も巻き込み包み、麻ひもでくくれば一丁上がりだ。
だが、材料はまだまだ残っている。何体か作るようだ
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>>289
作る工程を一通り見て、とりあえず切れ端で妖精サイズのものを作ってみることにしたらしい。
裁ちバサミの代わりに糸きり鋏を使って切れ端を切っていく。チャコは芯だけ削って使ってみるらしい。
同じように作っていくが、雪妖精の髪を使って作ると呪物になって雪になる気もする。本人は気にしていないようだが。
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>>290
そうして、大小のてるてる坊主が出来たのであった。
出来たてるてるたちを片手に向かうは砲台。使い方を確かめながらメアリーに声をかけた。
飛ぶか、と
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>>291
単身で飛べるが、高高度に達するならばこれを使うしかないだろう。
質量の軽い妖精単身で射出されても高高度には届かないだろうが。
何も言わずにしがみつき、てるてる坊主と離れないように一部分だけ自分の手ごと凍らせた。
準備はできた。砲台が起動し上空を向く。そして背中にパラシュートが具現化された。
高度が上がってから一定以上に下がると自動でパラシュートが開く仕掛けらしい。あとは発射だけだ。
それだけであの雲の上へと、到達する。
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>>292
「さ、て、と。これで雲の上から月が見えれば雪月花だな」
などと笑う声もざぁざぁと上塗りされる中、
どごん!
と地面が揺れるもかくや。二人は空の其の彼方。
ただ、澄んだ青と太陽があった
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>>293
妖精の飛行能力もあり、よほどの強風がなければ落ちることもないだろう。
青々と澄んだ寒空の、それほど登ってもまだ遠い太陽。遥か遠くには、少し暗い空すらも見える。
「綺麗……」
心の幼い妖精にも、何か感じるものがあったらしい。
少しの間、検定のことも忘れ空を見上げた。
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>>294
耳に静寂が染みる中、女のサングラスので同じ色が煌めいて。
ふわ、と浮上が終われば落ち始める。
重力にとらわれるのはこの星に生きている証だ、と女は笑った。
ば、と腕を広げれば7つの坊主が散らばった!
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