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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

1名無しさん:2013/05/30(木) 21:45:38 ID:eKlMnmjk0
このスレは少女漫画のキャラクターによるリレーSS企画、少女漫画キャラバトルロワイアルの本スレです。
クオリティは特に求めません。話に矛盾、間違いがなければOK。
SSを書くのが初めての方も気軽にご参加ください。

企画の性質上残酷な内容を含みますので、閲覧の際には十分ご注意ください。
また、原作のネタバレが多々存在しますのでこちらもご注意ください。

前スレ
少女漫画キャラバトルロワイアル
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1284816080/

【避難所】ttp://jbbs.livedoor.jp/comic/5978/
【まとめWiki】ttp://w.livedoor.jp/girlcomic/
【参加者名簿】ttp://w.livedoor.jp/girlcomic/d/%bb%b2%b2%c3%bc%d4%cc%be%ca%ed
【ルール(書き手ルール含む)】ttp://w.livedoor.jp/girlcomic/d/%a5%eb%a1%bc%a5%eb

41"守"の"理"とは ◆F9bPzQUFL.:2013/07/21(日) 23:22:57 ID:rNes25qE0

【C-3/市街地・西部/昼】
【須王環@桜蘭高校ホスト部】
[状態]: 左肩に銃創
[服装]:桜蘭高校制服
[装備]:
[道具]:基本支給品、スタングレネード×2(デイバックの中)、不明支給品(0〜2、未確認?)
[基本行動方針]: 主催屋の居場所を突き止め、説得(接客)して殺し合いを止める。 
[思考]おお、お客様第二号発見だ!
0: 仲間を集める、ホスト部員を優先して探す。
1: 殺し合いに対する恐怖。特にホスト部員が死んでしまったりしたら、どうしたらいいかわからないほどの恐怖。
[備考]
 ※参戦時期はハルヒ入部より後です。その他の細かな時期は、のちの書き手さんにお任せします。

【本郷唯@ふしぎ遊戯】
[状態]:健康
[装備]:モンキーレンチ、しんさんのMTB@ハチミツとクローバー
[道具]:基本支給品
[思考]……はあ
基本:惑わない、殺し合いを止める
1:朱理と情報交換
[備考]
※本編終了後より参戦

【朱理@BASARA】
[状態]:平常
[装備]:朱雀の刀@BASARA
[道具]:基本支給品(ランダムアイテム0〜2個)、44マグナム
[思考]なんだありゃ
基本:儀式に反抗する仲間を集める
1:唯と情報交換
2:透とともに行動する
3:更紗や、仲間になりそうな人間を探す
4:温泉に向かう
 [備考]
  ※出典時期は14巻前後。少なくとも更紗の正体を知る前です

【本田透@フルーツバスケット】
[状態]:平常
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(ランダムアイテム1〜3個)
[思考]ふぇっ!?
基本:儀式に反抗する仲間を集める
1:朱里とともに行動する
2:夾や由希、その他仲間になりそうな人間を探す
[備考]
  ※出典時期は21巻(慊人との崖の上での会話)以降のどこかです。

【C-3/市街地/午前】
【小林輪@ぼくの地球を守って】
[状態]: 通常、サーチェスなし(?)、擦り傷
[装備]:44マグナムの弾薬
[道具]:基本支給品(ランダム支給品0〜2個)
[思考]――――?
基本:亜梨子のために、他の参加者を殺害する
1:例えサーチェスが無くても、別の方法で他の参加者を殺害する。
2:亜梨子のために、他の参加者を殺害する
3:能力者の存在にもっと注意し、情報収集を怠らないようにする
[備考]
※盗みのアリスによってサーチェスが抜き取られました。
 柚香のアリスのように完全に抜き去られたどうかは、不明です。

以上で投下終了です。

42"守"の"理"とは ◆F9bPzQUFL.:2013/07/21(日) 23:24:06 ID:rNes25qE0
あと、拙作にて数点ミスを発見したので、Wikiにて修正しておきました。
収録していただいた方にご迷惑をお掛けしましたことを、お詫び申し上げます。

43名無しさん:2013/07/22(月) 22:29:38 ID:iM3QodUc0
投下乙ですー
大きなものを背負い守ろうとする朱理の器は圧倒的に大きいなぁ。
彼を前にすると輪もますますただの子供だ

透と環…確かに更紗もあーや的な意味で透と同じような状況になってるw
環透朱理唯とそれぞれバラバラな性格の四人が集まったのも期待大です

44ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:28:47 ID:9869nyvs0
あの日、彼女を背負って歩いた家路を、昨日のことのように思い出す。
俺の背中に圧し掛かる体温はまるで子供のように少し高めで、
首筋に落ちてきた涙の底冷えのするような冷たさとの対比が、どうしてかおかしかった。
薄ぼんやりとした月明かりは、何処までも優しい暖かな光で頭上を照らすのに、
俺と彼女の間には、それでも拭いようのない闇が横たわっていて。

いつも俺たちを叱咤する力強いそれとはまるで違う幼子のような声が、咽喉を震わせて紡がれる。
「好き」「好きなの」「大好き」と、繰り返し何度もそう言われる度に、
俺はただただ馬鹿みたいに「うん」と、たった一つの言葉だけを返し続けた。
あの時はそれ以外に答えようがなかったから。
安易な肯定や慰めなど自分にはできなかったし、してはいけないと思ったから。



……けれど、けれどもし今、漫画みたいな奇跡が巻き起こって、あの瞬間に戻ったとしたら。
その時俺は、一体どんな言葉を彼女にかけてやるのだろうか。



     ○     ○     ○

45ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:29:17 ID:9869nyvs0
緊張しているのだろう。差し出したこちらの手を握り返してきた男の指先は、酷く冷たかった。
当然か、と思う。こんな状況で平然としていられるのは、根っからの殺人狂くらいのものだ。
そして自分も目の前の男も、そういった『螺子の緩んだ』類の人種とはまるでかけ離れている。
むしろ常識と秩序と平穏を愛し、ごくごく真面目で手堅い人生を送りたがるタイプだろう。
真山は自分がそうだからこそ、対する相手の人となりが手に取るように理解できた。
尤もだからといって、自分と彼を同一視して、無駄な共感や同情を抱くつもりはない。
彼はあくまでも一時的に手を組んだだけの共犯者に過ぎないのだから、
互いに裏切りや切り捨てを当然の行為と念頭に置いたうえでの行動が不可欠となる。

「……で、これからどうする?」
「そうですね」

問いかけてきた男と共に今後の計画を練ろうとしたところで、足元に倒れ伏している彼女が目に入る。
幸い、という単語が正しいのかは分からないけれど、胸にぽっかりと空いた穴以外、
彼女の身体は平時と何一つ変わらなくて、まるで長い眠りについているだけのように見えた。

「こいつの墓、作ってやってもいいですか」
「……ああ。分かった」

こちらの申し出に相手が頷いたのを確認してから、横たわっていた彼女を背負う。
まだ温かいその身体は、魂が抜け落ちている筈なのにも関わらず、以前にも増して重く感じられた。
こりゃ、あの時同様、明日は腰痛と筋肉痛のフルコースだろうなぁと吐息する。

「……あー、重っ」

ついそう呟いてしまってから、もし今目が覚めでもされたら大変だなと小さく苦笑した。
「だぁれが重いってーっ!??」と、降り上げられた脚で思い切り踵落としを喰らわされて、
そのまま呆気なく失神……というお決まりの光景が、手に取るような鮮明さで目に浮かんだからだ。
鉄人・山田あゆみの足技を受けてなお立ち続けられるものなど、むくつけき男衆ですらそうそう存在しないだろう。
真山自身、長い大学生活の中で、何度彼女に殴られ蹴られては、声すら出せずその場に蹲ったか、最早憶えていない。
その痛みを思い出して苦々しく顔を顰めた後、けれど酷く重大なことを思い出し、「ああ」と呻いて天を仰いだ。


――――彼女が起き上がることは、もう二度とないのだ。


あの夜とはまるで違う、生気の感じられない骸を背負いながら、真山は砂浜を真っ直ぐに進んでいく。
いくら己の掌を血に染め、目的のため殺人者になると誓ったところで、
人間、そうそう簡単に、自分の持ち得る全てを捨てて、別人のように生まれ変われるものでもない。
当然真山も同様で、今死んだばかりの知人の遺体をそのままにしておけるほど、冷酷非情にはなりきれなかった。
本来なら、余計な雑事に時間や体力を使うべきではないのだと、分かりきっている。
何を選んで何を切り捨てるのか。己の小さな両手で掬い取れるものは限られていて、だからこそ無駄なものに手を伸ばす暇はない。
それを痛いほどに理解していて、それでも尚、彼女をこの場に放っておくことはとても出来なかった。
恋愛対象としてではなく、それでも彼女を大切に思うこの感情には、一体何という名前が正解だったのか。
友情、仲間意識、庇護欲、独占欲……。失った今でさえ、その問いに対する明確な答えは出なかった。

歩を進めるごとに、砂を踏みしめる音がざりざりと足下から鳴り響く。
永遠に続いているのではないかと思える海岸線を淡々とひたすらに歩き、見通しのいい開けた場所へ向かった。
頬に当たる風がべた付いた潮の香りを纏わせ始めたのを感じながら、辿り着いた海をぼんやりと眺める。
いつか見たうすら寒い真冬のそれとは違い、日光を反射して煌めく海岸は一枚の絵画のように美しかった。

46ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:29:47 ID:9869nyvs0
「……山田、ほら海だぞ」

首を後ろに捻って背中の彼女に視線を注ぎながら、そう話しかける。
柔らかい声は二度と返ってこないけれど、それでも彼女へ言葉を紡ぐ行為は止められなかった。

「昔さ、五人でクソ寒い中、わざわざ水上バス乗って臨海公園の辺りまで行ったよな。
 それで二人で観覧車乗って……、あー、もう思い出すだけで気まずいわ」

ははっと失笑して、あの世界一長かった地獄の17分間を回想する。
振った人間と振られた人間が密室に閉じ込められて、地上に降りるまで二人だけの空間を強制されたのだ。
お互い、居た堪れないわばつが悪いわで、どうしようもなくぎくしゃくした空気ばかりが張りつめていた
あの時も今も、二人の関係は変わっていない。真山には愛する女性がいて、それでも山田は真山のことが諦められなくて。
片思いの連鎖なんて言えばドラマみたいで聞こえはいいけれど、現実には辛くて苦しくてぎこちないだけだった。
青春スーツを脱げないままな自分たちの恋愛模様は、当人からすればシリアスな悲劇なだった筈なのだけど、
恐らく傍から見れば、精一杯がむしゃらになった全ての日々が、笑えない三流コメディでしかないのかもしれない。

「お前さ、馬鹿だよ。俺なんかのために大学四年間費やして、挙句の果てに死んじまって。  
 ……俺、お前に好きになってもらえるほど出来た人間じゃないってのに。
 なあ、ずっと言ってたろ。俺はお前のことなんか好きにならないし、とっとと諦めろってさ。
 なのに、結局最後までこんな風に勝手なことして……」

下唇を前歯で噛んで、いくらでも溢れ出てきそうな彼女への言葉を無理やりに封じ込めた。
このまま口を開いていては、馬鹿だと詰ることしか出来そうになかったからだ。
尤も本当に馬鹿なのは山田ではなくて、彼女の死を前にしてすら己の決断を変えられない真山自身の方なのだろうが。




「……ごめんな、山田」



結局、最後に選んだのはそんな陳腐な言葉で、こんな時でしか謝ることしか出来ない自分が最低だと思った。
けれど「俺も愛してた」なんて嘘を言えるほど器用ではないし、そんな口先だけの空事に彼女が喜ぶとも思えない。
だからせめて、最後は飾ることない混じり気なしの本心でお別れしたかった。

ろくに取り柄も無いような、ごくごくフツーの俺。
そんな自分が唯一誇れることがあるとするならそれはきっと、
美人で美脚で男前で肝っ玉がでかくて一途で一生懸命で友達思いな最高にいい女が、
――――あの山田あゆみが、好きだと言ってくれたことだと、そう思うから。


 お前の気持ちは受け入れられないけど……、それでも、好きって言ってくれて嬉しかった。

47ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:30:38 ID:9869nyvs0



     ○     ○     ○



玲の眼前で、青年がさくさくと砂浜を掘り返しながら、友人を埋葬するための墓を掘り進めていく。
主催者側がこんな事態を見越していたのかは不明だが、真山と名乗った青年の支給品の中には大ぶりなスコップが含まれていた。
この辺りの地面がさらさらとした軽い砂地であることもプラスされて、穴を掘ることそれ自体は、さほど難しくないようだ。
一応の礼儀として、玲も「手伝おうか」と声をかけたのだが、その提案は無言で首を横に振られてしまった。
尤も相手からすれば、それは当たり前の心情と言えるだろう。
なにせ少女を撃ち殺したのは、玲自身であるのだ。そんな男の手など借りたくないに決まっている。
「……はぁ」
疲労からだろうか。そう吐息した真山が、額から垂れ落ちてくる汗を鬱陶しそうに手の甲で拭う。
それでも休もうとする素振りすら見せないまま、彼は黙々と一心不乱に同じ行為を続けていた。
半刻もしないうちに十分な深さの穴を掘り終えると、恭しい手つきで少女の身体をかき抱き、穴の中へと横たわらせる。
注がれる視線はとても複雑な色をしていて、玲はそこに彼と彼女の間に織り成されたであろう男女の関係を想像した。

「一つ、聞いてもいいかな。その子と君は……」

突然かけられた玲からの問いかけに、真山がはっとしたような顔でこちらへ振り向いた。
強張っていた顔面がゆっくりと表情を形作り、泣き笑いに似た、どこか困ったような笑みを見せる。

「……恋人、とかじゃないですよ。ただの大学の同級生です」
「そうは見えなかったけどね」
「あいつは、俺のこと好きでしたから。
 俺なんかの何処が良かったのか、最後まで分からなかったですけど」

恋人同士でなかったということに少しだけ驚くが、そういえば先ほど二人は末期の会話で「りかさん」がどうこうと言っていた。
あれだけの美人に片思いされて、それでも別の女性への思いを貫き通すとは、なかなか一本気な若者だ。
とはいえ、いくら恋人ではなかったとはいっても、少女が真山の友人であることに変わりはない。
それも、ただの女友達ではなく、自分のことをずっと好いてくれていた異性なのだ。
共闘を提示してきてから現在まで表面上は落ち着いた様子を見せているが、彼が自分を憎んでいるのは当前のことだろう。
そんな玲の内心の思考を読み取ったわけではないだろうが、汗で張り付いた前髪をくしゃりと掻き上げると、真山はぼそっと呟いた。

「相模さん、俺、貴方のこと恨んでません」
「……は?」

告げられたのはあまりに予想外な台詞で、取り繕う事すら忘れてしまう。
ひどく間抜けな声を上げた玲に、対する相手は視線を足元へと向けたまま、ぽつぽつと言葉を続けた。

48ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:31:23 ID:9869nyvs0
「だって貴方のおかげで、俺は自分の手であいつを殺さずに済みました」
「それは……」
「俺、さっき完全に殺すつもりであいつに近づきました。
 相手が女だとか友達だとか、俺に惚れてることとか全部関係なく、むしろそれも利用しようとして。
 ……でも、おかしいんですよね。実際会ってあいつの顔を見たらやっぱり怖くて、手が、震えて」

そう口にする真山の掌は、まるでその瞬間を思い出したかのように、指先がかたかたと震えていた。
蒼褪めた顔を持ち上げてこちらを見据える表情は、まるで幽霊か何かのようだ。
恐らく、恐怖や後悔や羞恥や悲しみや自己否定や、ありとあらゆる感情に押し潰されかけているのだろう。
当然だ。大切な友人を殺そうとしたという事実は、枷として付けるにはあまりにも重すぎる。

「だからあいつが撃たれたとき思ったんです。「ああ、良かった」って。
 俺はともかくあいつが……山田が、惚れた男に殺されるなんて最低の死に方しなかったから」

そこで一旦言葉を区切ると、真山は玲へと真っ直ぐに向き直り、頭を深く折ってその場で一礼した。
地へ向けられた顔から、彼の表情を窺い知ることは出来ない。
けれど、伏せた瞳からぽたぽたと透明な滴が落ち、首筋を伝っていく姿だけは、玲からもよく見えた。


「……ありがとう、ございました」


まさか、人を殺して感謝されることがあるとは思わなかった。
出来ることならば二度とあってほしくない経験なのだけれど、
もしかしたらこの殺し合いの場では、そんな「まさか」が何度も起こり得るのかもしれない。
実際、彼のように「生き残りたい」と「けれど出来れば殺したくない」が同居しているような参加者は多いだろう。
玲自身、羽山や直澄といった紗南の友人たちは、なるべくなら他の人間の手にかかっていてほしいと思っている。

「君の友人はあと何人いる?」
「三人ですね。転んだだけで死にそうな子と、何度転んでも起き上がる後輩と、
 転んだ拍子に地面に落ちた小銭を一枚でも多く拾おうとするような先輩の三人です」
「彼らを見捨てても……、殺してでも、最後の一人になりたい、と?」

その質問に一瞬だけ言葉を詰まらせると、しかし真山はきっぱりとした声音で言い切った。

「そうですね、……戻って逢いたい人がいるんです」

そう口にする真山の表情に躊躇いは無かった。それを見て、玲はその人物こそが真山の愛する相手なのだと悟る。
自分を一途に想う女性を捨ててでももう一度逢いたいひと。恐らく先刻の「りかさん」とやらだろう。

「そっちが恋人かい?」
「だといいんですけど……、今のところはまだそこまでは」

情けなさそうな声でそう返すと、真山が苦笑しながら、今度はこちらに質問を向けてくる。


「相模さんはどうなんですか」
「……ああ、俺も同じだよ。大切な人のために、この殺し合いに乗ることを決めた」

49ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:32:05 ID:9869nyvs0
玲の言葉に偽りはなかった。玲は確かに、『大切な人のため』に、『殺し合いに乗』っている。
けれどそれは、真山のそれとは意味合いが違っていた。
真山が『大切な女性の元に戻るため』に、自分が最後の一人になることを目的としているのに対し、
玲は『大切な女の子を元の世界に戻すため』に、彼女を最後の一人にすることを最終目的と定めている。
そしてそれを実現させるためには、当然ながら最後には玲自身も命を絶つ必要があるのだ。

けれど玲はそれでもいいと思っていた。
何せ自分は、既に一度死んだも同然の身なのだ。
彼女にフられ受験に失敗し両親が事故死して、人生のどん底で世捨て人のように暮らしていた。
住む家も金も無く、ホームレスとしてその日暮らしをするしかなかった自分に、けれど手を伸ばしてくれた少女がいた。
彼女と出会って、玲はもう一度笑うことが出来るようになった。やり直そうと思うことが出来た。

……だから、構わない。あの子を守るためなら、あの子に生き延びてもらうためなら、自分の命など惜しくない。
なにせ本当なら路上でのたれ死んでいたかもしれないのだ。今日まで生きてこれただけでも儲けものだろう。

玲にはよくよく理解っていた。
自分とあの子。二人の命を天秤にかけたとき、より重いのはどちらか……、なんてことは、そりゃもう明白に。
そして何より、自分が『誰に一番生きていてほしいか』という問いの答えにも。

その決断は揺るがないはずだった。少なくとも、玲自身は悩むことなど無いと思っていた。けれど。
――――この場にはいない、何処かで待っている『彼女』は、果たして玲の想いを支持してくれるだろうか。
恩人の女の子なんてどうでもいいから、ただ最愛の恋人に、『相模玲』に生き残ってほしいと、そう願いはしないだろうか。


「麻子……」

無意識のうちに自然と口を突いて出たのは、玲の愛する女性の名だった。
このまま己の決意を貫き通せば、もう二度と逢うことができないであろうひと。
その涼やかな目元を、形のいい唇を、手触りのいい髪の感触を思い出し――、その全てを振り払った。


「……ごめんな、麻子」


なあ、麻子。お前には悪いけど、俺は、真山君のようにはなれないよ。
お前とあの子と、どっちが大切か訊かれたら、きっとお前だって答えると思う。
もし二人のどちらかしか助けられないなら、俺は多分、迷った末にお前を生き残らせる。

……でも、今は違うから。

俺の犠牲であの子が助かる可能性があるって、そう思ったら、やっぱり、さ。
それにほら、お前は美人だしいい女だから、俺なんかよりいい男がいくらでも見つかるだろ。
そもそもお前が俺無しでもやっていけるのは、経験済みで既に分かってるしな。だから。


 お前のことを誰よりも愛してる。……けれどそれでも、もう隣にはいてやれない。

50ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:32:22 ID:9869nyvs0
【E-8/砂浜/昼】
【真山巧@ハチミツとクローバー】
[状態]:健康
[装備]:グロック26@現実、予備弾薬(9mmパラベラム弾)
[道具]:基本支給品一式、毒薬、スコップ、ランダムアイテム0〜4個
[基本行動方針]:どんな手を使ってでも生き残る方法を探す
[思考]原田理花の所に戻る、なんとしてでも。
1:相模玲と協力、人を減らす。
2:自身の命が危なくない範囲で脱出が可能ならば、それに乗る。

【相模玲@こどものおもちゃ】
[状態]:健康
[装備]:ワルサーPP@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考]
基本:倉田紗南の護衛、最終的には優勝させる。
1:真山と協力し、人を減らす。
2:できれば積極的に殺していく。が、深追いはしない。
3:紗南の友達は一先ず保留。

51名無しさん:2013/08/10(土) 21:20:45 ID:8AY6JzxI0
投下乙です!!
似た者同士だけど「自分が残って想い人の元に戻る」と
「あの子を残すために自分は想い人の元には戻ることはできない」の違いはかなり大きい…
>それでも、好きって言ってくれて嬉しかった。
この一文が泣ける。覚悟を決め冷徹になろうとしたには違いないけれど
実際に目の前にすると心が揺れてしまってあの結末に安堵してしまう、その描写が非常に丁寧で

52名無しさん:2013/08/10(土) 21:37:35 ID:jjl.Razo0
投下乙です!
真山ぁ、くそぅ、青春スーツ野郎めえええ……
ほんとにこの二人は不器用だよなあ。
目的は一緒で、けれど微妙に違って。うむぅ……

53螺子と歯車は噛み合わない ◆F9bPzQUFL.:2013/08/13(火) 00:22:43 ID:HPUKKgWw0
どれくらい、走り続けただろうか。
ちりちりと痛む火傷の傷跡に沁みる汗を堪えながら、馨はただひたすらに走っていた。
全身のあちらこちらに広がる火傷を処置するには、ぬるい飲み水をかける程度ではダメだった。
もっと量が多くて冷たい水が必要であると馨は考える。
幸運にも彼は、そんな水が豊富な場所を知っている。
この地で目を覚ました初めの場所、彼の始まりであり終わりの場所。
正確に言えば、今向かっているところは初めの場所ではない。
ただ、そこに流れる川は同じ。
自分のこの手でナイフを突き刺し、一人の男を突き落とした、あの川が流れているであろう方向へ。
馨は、立ち止まることなく走り続ける。
己の傷を、癒すために。

しばらく走り続け、ようやくたどり着いた"始まりの川"。
たどり着くや否や荷物を投げ飛ばし、服を脱ぐこともなく川にざぶざぶと入り込んでいく。
ひんやりとした水が、火傷の痕にゆっくりと沁み渡る。
汗の塩分の痛みとはまた違う、癒しの感覚。
痛みが完全に引いたわけではないが、それでも確実にマシな状況にはなってきていた。
「こんな感じに、流れていったのかな」
ふと、その時に思い出したのは始めに"殺した"人間のことだ。
ナイフで一突きして、川に思いっきり蹴落とす。
それだけで終わってしまった、あっけない出来事。
今の自分のように、ぷかぷかと川に浮かびながら流れていく男の姿を見て、初めは確信していた。
人を殺すことは、簡単だと。
守れる、このちっぽけな両手で、光のことを守ってやれる。
そう、信じてやまなかった。
けれど、その思いはすぐに砕かれた。
自分よりも二つか三つほど年下である少年に、意図も容易く出し抜かれてしまった。
おまけに今もヒリヒリと痛む火傷まで負わされている。
原因は考えるまでもなく、自分だ。
自分の心の中に、油断、慢心があった。
こんなに簡単なら、すぐにたどり着けると思っていた。
けれど、現実はそうではないことを知った。
まるでマジックのように炎を出して見せた少年のように、現実では考えられない事が簡単に起こるのかもしれない。
もっと、気を引き締めなくては。
光に出会い、光の剣となり、光の盾となるまでは。
この身を滅ぼすわけにはいかないのだから。
「……そろそろ、いいか」
そこまで考えたところで思考を止め、ゆっくりと川から上がっていく。
ずぶ濡れの制服が、重石となり馨の動きを鈍くしていく。
躊躇うことなく上着を脱ぎ捨てる、どうせ替えならいくらでもある。
それに、血のついた服をいつまでも着ているわけにはいかない。
自分は油断せず、相手の油断を誘って殺していく。
出来る限り安全な手段を取った方がいい。
油断すれば、また先ほどのようになってしまうから。
頬を数回叩き、意識を集中させていく。
そして、首輪探知機に目を通していく。
画面に表示されていたのは、「2」と「14」の二つの点。
それをみて馨は、次の一手を考える。

54螺子と歯車は噛み合わない ◆F9bPzQUFL.:2013/08/13(火) 00:22:57 ID:HPUKKgWw0



「ねえねえー、そんなにムスっとしてないで、お話ししようよー」
子供には子供っぽく、ということか。
浅葱は無邪気に蜜柑へと話しかける。
けれど、蜜柑の表情は一切晴れることはなく、それどころか浅葱をジッと睨み続けている。
詳細名簿には載っていない情報、アリスという能力の正体、その他諸々、蜜柑には聞いておきたいことが山ほどある。
何とかして蜜柑の口を割りたいのだが、暴力的な手段に出るわけにもいかない。
彼女は浅葱にとって未知の能力、"アリス"を防ぐことが出来るのだから。
その力を役立てて貰うには、彼女に生きていて貰わなければいけない。
盾として使おうにも、死んでいては意味がないのだ。
だから、こうやって遠回しな方法で彼女に"問いかけている"のだ。
「ねーえー、ちょっとくらい教えてよー」
けれど、蜜柑は決して口を割らない。
こいつにだけは屈したくないという意志と、友を守りたいという思い。
それらを反抗の証として、目つきに表しているだけなのだ。
だが、一向に口を割らない蜜柑に対し、浅葱も同じ手段を続けるほどバカではない。
「そう、どうしても喋らないんだね、じゃあ」
ふっ、と表情を冷ややかにした後、肘から先が残像を伴うかのように消えていく。
「君は"生かされてる"って事を、思い出させてあげないとね」
「えっ――――」
ほぼ同時に、蜜柑の体に走る痛み。
腹部から少し上、深々と突き刺さる浅葱の拳。
耐えきれない痛みに、蜜柑はその場にうずくまってしまう。
「君が大地を踏みしめて生き続けてられるのは、君に価値が有るからだよ。
 なんの価値もないただの女の子を手元に置いておくほど、僕は変態趣味じゃない」
うずくまる蜜柑の頭を踏みつけながら、浅葱はつらつらと言葉を並べる。
自分が生きる、そのためにならどんなものですら利用してみせる。
たったそれだけ、けれどそれが浅葱を動かす全てなのだ。
「分かった? 返事が欲しいんだけど」
上から下へ、全てを凍らせるほどの冷ややかな目線のまま、浅葱は蜜柑に問いかける。
ふわりと蜜柑の頭から足が離れていく。
けれど、蜜柑の次の言葉次第でその足がどう動くか変わっていくだろう。
「……はい」
悔しい気持ちを必死に堪え、けれど心が完全に服従しきってしまわないように。
仮初めの気持ちだけを、浅葱に告げる。
「分かってるならいいよ」
小さく振り上げられた足は、そのまま地面にすとんと落ちる。
その頃には痛みもようやく引いてきていた。
蜜柑は強く思う。
この状況を、早く何とかしなければ、と。
けれど、今は思うことしかできない。
自分一人では、どうすることも出来ないのは分かっているから。
ふと、頭に一人の少年の姿が過ぎる。
こんな状況に現れて、自分を助けてくれそうな一人の少年。
「棗――――」
その名前を浅葱に聞こえないよう小さく呟いたと同時に、蜜柑は見つける。
浅葱と同年代、いや少し下ほどの一人の男が、目の前に倒れていることを。
「あ……」
だが、蜜柑は迷ってしまう。
傷ついた人間が倒れていると言うことを、奴に伝えるべきなのかどうか。
いや、伝えるべきではない。
あの男は間違いなくとどめを刺すだろう。
なんの、躊躇いもなく。
しかし、蜜柑は考えてしまう。
ひょっとすれば、自分の状況が変わる"チャンス"になるかも知れないと。
彼を助ければ、何かが変わるかもしれない。
そんな些細な希望を抱かずには居られない。
だから、少しだけ足を止めてしまったのだ。
「ん? どーしたの?」
無邪気な顔で浅葱が振り向く。
あわてて平静を取り繕うも、もう遅い。
浅葱の目にはしっかりと、蜜柑が見つけた男の姿が映っていたのだから。
ずいっと足を動かし、浅葱が男に近づいていく。
手には銃を持ったまま、ふらふらとした足取りで。
駄目と言いたくても、口は動かなくて。
きっとそれを言ってしまえば、望みも何もかもが無くなってしまうから。
これから起こることを、ただじっと見ていることしかできない。

55螺子と歯車は噛み合わない ◆F9bPzQUFL.:2013/08/13(火) 00:23:17 ID:HPUKKgWw0

「おーい、生きてるぅー?」
声をかけながら、浅葱は男の体を揺すっていく。
けれど、反応はない。
「ダメだ、死んでるねこりゃ」
早々に判断し、くるりと蜜柑の方を振り向いて浅葱は言う。
その瞬間、空気がざわりと動いた。
びしょぬれだった男が、突如として起きあがり腕を振るっていく。
手に持ったマチェットを高速で浅葱の頭めがけて振り下ろす。
あっ、と声が漏れる。
それは浅葱が死んでしまう事に対しての声だったのか、それとも男の身を案じての声だったのか。
ただ、見ているだけしかできなかった蜜柑は、声を漏らすことしかできない。
そうして、マチェットは振り下ろされる。
「はーっ、それで上手くいくと思ってたの?」
空を切るマチェットと、浅葱の呆れたような声。
倒れていた男が違和感を認識すると同時に、手首を掴まれて捻りあげられる。
「血の臭いと武器を握る手に力が入ってるのを見れば、誰でもそういうことだって事ぐらい分かるよ、バカだなあ」
ギリギリと骨が軋む音と共に、浅葱は男にささやいていく。
男は初めは反抗的な目つきを見せていたものの、腕を取られている状況からそうそうに観念したのか、視点が少しずつ落ちていく。
「……でさ、このまま腕折られたい? それとも五体満足で生きたい?
 聞きたいんだけど、こういう事するって事は、つまり君はそう言うことでいいんだよね?」
優勢を保ったまま浅葱は男に問いかけていく。
余計な反応を返すことは、死とほぼ同義。
自分に残された選択肢が少ないことを認識しながら、男はゆっくりと頷く。
そして、浅葱はニヤリと笑い。
「僕と一緒に行かない?」
「なっ……」
同行の申し出を、男に向けて放つ。
男は突然のことに動揺してしまうが、すぐに平静を取り戻す。
「僕も、生き残りたいからね。
 近接戦闘は君がする、遠距離援護は僕がする、未知の能力は彼女が守ってくれる。
 これって最高の布陣だと思うけど、それでも今死ぬのを選ぶ?」
口では都合のいいことを言っているが、要するに男を自分の"盾"として扱いたいのだ。
危険な前衛を任せて、自分は安全な後衛から支援に徹する。
どう考えても男には不利な条件なのだが、ここで断れば腕を失うという事が確定している。
果たして、片腕だけで守ることが出来るのか。
そもそも、これを断っても男は生かしてくれるのか。
「……わかった」
「う〜ん、物分かりがよくて助かるよ」
さんざん考えたあげく、男は服従を選ぶ。
その瞬間、縛られていた手がふわりと軽くなる。
攻撃に転じることも出来るが、今の状況では勝ち目がない。
折角拾った命、己の目的のために使わなくてはいけない。
歯をグッと噛みしめ、この状況を堪えていく。
「僕、浅葱。あっちの女の子が佐倉蜜柑。君は?」
「馨、常陸院馨」
「そう、よろしくね」
けろっと笑う浅葱に対し、馨は無表情で自己紹介を返す。
差し出された手も、軽く弾きとばす。
「つれないなぁ、もう」
少しひりひりする手を押さえながら、浅葱はぺろりと笑う。
そのまま自由の身となった馨が、蜜柑の横にぴたりと立つ。
「ひっ」
蜜柑が思わず声を上げる。
新しい"仲間"から放たれる、異様な気を感じてしまったからか。
とにかく、怯えずにはいられなかった。
馨が放っている、異色の気配に。
「じゃー、ちょっと休んだら行こっかぁ」
そんな気配を知ってか、知らずか、浅葱ののんきな声が響く。
三人は肩を並べて歩く、いや。
そのうち二人は肩を並べて歩かされている。
ただ一人、ほくそ笑んでいる浅葱に従わされるように。

向かうのは、南。

56螺子と歯車は噛み合わない ◆F9bPzQUFL.:2013/08/13(火) 00:23:41 ID:HPUKKgWw0

【D-5/橋の近く/昼】
【浅葱@BASARA】
[状態]:平常
[装備]:拳銃(ベレッタM92、残弾不明)、輪のアリスストーン@少女漫画ロワ
[道具]:基本支給品、詳細名簿No,2
[思考]
基本:最後の一人になったうえで、主催すらも利用し返す
1:蜜柑と馨を利用しつつ生き残る。反抗の意志が見えたら即殺
2:最後の一人になるため行動(無茶はしない)
3:詳細名簿1〜5までを全部集めたい
4:月との同盟はとりあえず守る?
 
[備考]
  ※詳細名簿について
詳細名簿は、名前・顔写真・簡単なプロフィールが記載されています。
学園アリス勢のアリス能力や、ぼく球勢の前世などについてまで載っているかは今のところ不明。
名簿はあいうえお順で五冊に分かれている可能性が高く、それぞれにナンバーが振ってあります。
ちなみに今作で浅葱に支給された名簿に記載されているのは、
倉田紗南、小泉月、小林輪、坂口亜梨子、相模玲、佐倉蜜柑、更紗、四道の八人です。

【佐倉蜜柑@学園アリス】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:特になし
[道具]:基本支給品(ランダム支給品1〜3個)
[思考]
基本:友人を探す/輪ちゃんを守りたい
1:浅葱に従う、心まで服従したつもりは無い。
2:輪の元へ戻らな……
3:蛍や棗など、友人たちを探したい

【常陸院馨@桜蘭高校ホスト部】
[状態]:強固な決意(?)、全身に火傷(暫定処置済み)、上着なし
[装備]:滑り止め付き軍手、マチェット、血糊、首輪探知機
[道具]:基本支給品*2
[思考]
基本:光のために他の参加者を皆殺しにする
1:浅葱に従いながら人を殺す。
2:首輪探知機については黙っておきたいが……
3:浅葱の銃が欲しい

57 ◆F9bPzQUFL.:2013/08/13(火) 00:24:02 ID:HPUKKgWw0
以上で投下終了です。

58名無しさん:2013/08/13(火) 00:58:48 ID:5/nPcUl20
投下乙です
はわわ、浅葱に続いて馨まで蜜柑と一緒に・・・
棗はもう…

59名無しさん:2013/09/03(火) 23:42:48 ID:BTYqRpQc0
投下乙です

久々に来たら投下来てた
まとめ読みしようと…

60 ◆F9bPzQUFL.:2013/09/15(日) 01:34:00 ID:/bHjbKdw0
月報集計お疲れ様です。
少女漫画. 38話(+ 3) 33/40(- 0) 82.5(- 0.0)

61名無しさん:2013/09/25(水) 23:12:29 ID:iks5P8tI0
ここの参加作品は昔家にあった漫画が多くて
懐かしいなー、読み返したいなーとなって今もう一度集め直してます
最近BASARAを全巻読み終えたんですがまさに名作でした
支援絵投下
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0252.png
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0253.png

62名無しさん:2013/09/26(木) 11:59:34 ID:PE7YkV4Y0
うおおおお!
支援乙です!
しかし鬼宿も浅葱も悪い顔してんな……w

63激走! トマランナー! ◆F9bPzQUFL.:2013/10/10(木) 00:55:12 ID:lhe/urCI0
「貴様……"アリス"の持ち主か」
痛む腕を押さえながら、ペルソナは自身に蹴りを入れた男へと問う。
学園が把握していないアリスは相当数居るが、その中に無効化のアリスの持ち主が居るのは予想外だった。
しかし、男はきょとんとした顔をしてから、ふふんと鼻を鳴らす。
「ん? ああ、そういう設定? じゃあ、多分……俺が最強だな」
アリスという能力を知らず、生まれ育ってくる人間もいる。
故に、アリスという単語に反応できない能力者が居るというのも、何ら不思議ではない。
へらっ、と笑う男がそうである可能性も、無いわけではない。
「よくわかんねーけど、とにかく正義の鉄拳を食らえぇぃっ!!」
先ほどと同じように、男が無計画に突っこんでくる。
握り拳を作りながら、ただ、まっすぐに。
それを撃退しようにも、腐食の力は使えない。
だが、"それ以外"ならある。
ペルソナは素早くそれを構え、男へと突きつけていく。
あとは、引き金を引くだけで良い。
「ほほう、そんなヘボヘボの銃でこの森田様を倒そうってか」
引き金に指を当てたとき、男は不適に笑った。
怖じることもなく、銃口を見つめたまま。
「支えとなるべき片腕はない、肩で呼吸をするほど疲れてる。
 ってのに精密に急所を撃ち抜ける自信があるなら、大したもんだ」
男の言うことも尤もだ。
ペルソナは、銃を扱うスペシャリストではない。
先ほどは至近距離に近かったが故に当てることが出来たが、今の距離感で確実に撃ち抜ける自信はハッキリ言って、ない。
辺りの炎が揺らめき、視界を曲げていく。
「クッ……」
苦しみの声を出したとき、男の後ろから先ほどの二人の少年少女がこちらに向かってくるのが見える。
少女はともかく、少年は何かしらのアリスを持っている。
今の状況で戦闘になれば、苦戦を強いられることは間違いない。
下手に手を出すより、ここは逃走を選んだ方がいい。
くるり、と身を翻し、まだ動く足を動かしてその場から逃走を図る。
自身の能力を察しているのか、男は追ってくる気配はない。
助けられる形になっているのは気にくわないが、ここで死ぬわけにはいかない。
そう、まだ。
こんな所で死ぬわけにはいかないのだから。



「……あの男は?」
「逃げたよ」
ようやく追いついた時、森田の側に先ほどの男の姿はなかった。
亢宿の問いかけに特に悪びれる様子もなく、森田は答えていく。
「逃がしたんですか?」
「いや、勝手に逃げた。そういう流れなんだろ」
重ねて放った問いかけにも、即座に回答が返ってくる。
が、その回答は少し引っかかる点があった。
「――――そういう流れなんだろ」
亢宿は気にしていなかったが、側にいた紗南はその言葉にどうしても引っかかっていた。
紗南がそれを問いかけようとしたとき、後ろで張り裂けそうなほど大きな音が響く。
振り返れば、燃え上がる炎が巨木を飲み込み、耐えきれなくなった体が爆音とともに倒れ込んでいたのだ。
猛る炎は、未だに弱まる気配がない。
「こりゃやっべーな、熱い熱いと思ったらマジのヤツじゃねえか。
 ったく……あのクソ監督、リアルにも限度ってもんがあんだろ。
 巻き込まれない内に、早く逃げ……あー」
ぶつぶつと言いながら、森田は早々にその場を立ち去ろうとする。
が、ついてくるのは中学生ほどの年齢の少年少女。
大学生(と表現して言い生命体なのかどうかはさておき)の森田の走りについてこれるわけもない。
かといってそのままなら間違いなく火事に巻き込まれるだろう。
せっかくライダーキックまでかましたのに、か弱い子供をおいて逃げてしまっては主役としてみっともない。
一瞬の思考の後、森田は突然後ろの二人へと振り向く。
ぎょっとしたままの二人を、有無をいわさず両脇に抱えていく。
「揺れるからな! 舌噛むなよ!」
そう言って、己の出せる全力全開を出して、広がる火の手から逃げ出していった。
こういうのはスタントマンの役目なのだが、と思いながらも、森田はひたすらに走り続ける。
抱えている二人がなにやら言っているが、それは耳には入らない。
ただ、森田が思っているのは。
映画の主役も楽じゃないな、ということ。

64激走! トマランナー! ◆F9bPzQUFL.:2013/10/10(木) 00:57:19 ID:lhe/urCI0



しばらくして。
森田とよい子のみんな達は火事の現場から大きく離れることには成功した。
――――森田の体力という(すぐに蘇る)犠牲を伴って。
全身から噴き出している汗、上半身全てを動かして行われる呼吸。
「はーっ……はーっ……あ"あ"あ"あ"疲れたぁぁぁぁ!!」
最後に、叫び。
言ってしまえば40〜50kgを片手ずつに抱えて全力疾走したのだ。
本物の火事から逃げるために必死になっていたために、いろいろとトんで居たが、落ち着いてみればそれらが瞬時にのしかかってくる。
ばたりと倒れ込んだ森田はぴくりとも動く気配を見せない。
「あ、あの」
「ごめん無理会話する気力もない今から寝るから後で起こして」
「えっ」
声をかけようとした紗南の言葉を遮り、一息で吐いた言葉を皮切りに気絶した。
その間、コンマ数秒。
「何なの、この人……」
「さ、さあ……」
あまりの事態に何がどうなっていて、何をどうすべきなのか分からずにいる二人。
けれどまあ、このままほったらかしにしておく訳にも行かないし、亢宿の傷の手当てもある、ということでその場に残ることにした。

気がつけば、足が震えている。
怖い、怖いのだ。
先ほど直面した、死の恐怖。
初めて味わう感覚が、こんなにも怖いものだなんて。

……また、あれを味わう羽目になるのだろうか。

この場所には、人を殺すことを何とも思わない人間がいる。
それを、証明されてしまった以上、可能性は0ではなく、寧ろ100に近い。
次、その場面に立ち会ったとき。

自分は、どうするのだろう。

ただ、一つ言えるのは。
「紗南」
隣にいてくれる、彼は。
「大丈夫」
今この場で、自分にとって唯一頼れる支えであるという、こと。

そう、まだ、前を向ける。

怖くは、ない。

聞こえないように小さくつぶやき、自分に少しだけ強く、言い聞かせた。

65激走! トマランナー! ◆F9bPzQUFL.:2013/10/10(木) 00:57:30 ID:lhe/urCI0
【B-5/森林/昼】
【ペルソナ@学園アリス】
[状態]:左腕遺失、軽い火傷
[装備]:ゾラキ 925(22/25)
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜5、棗の物を含む)
[思考]
基本:人を殺す

【C-5/キャンプ場/昼】
【森田忍@ハチミツとクローバー】
[状態]:め っ ち ゃ 疲 れ た 、気絶
[装備]:無効化のアリスストーン@学園アリス
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考]
基本:正義のヒーローとして振舞う
1:寝
[備考]
※バトルロワイアルのことをよく理解していないです
※というかピーター・ルーカスの映画撮影だと思ってます

【倉田紗南@こどものおもちゃ】
[状態]:健康、困惑
[装備]:制服(私物)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考]
基本:とりあえず生き残る
1:どうしよう
[備考]
※参戦時期は本編終了後

【亢宿@ふしぎ遊戯】
[状態]:右目の辺りが腐食、脇腹を負傷
[装備]:リコーダー、包帯
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考]
基本:紗南と行動を共にする 
1:どうしよう
2:青龍七星士として呼ばれたのか?
3:朱雀の巫女、鬼宿と会ったら…
[備考]
※参戦時期は川で流された後、美朱と再会前

----
投下終了です。

66名無しさん:2013/10/26(土) 23:15:27 ID:HsEjXxcM0
遅くなりましたが投下乙乙。
いやー森田さんが自重しないなーwおまえさーまじさー…w睡眠でどんだけ時間使うんだwwww
ペルソナさん勝手に誤解して退散したけど結果的に双方よかったのかもしれないと思わせる森田さんぱない
亢宿が徐々に覚悟を決めてきているがはたしてどうなるか期待

67 ◆F9bPzQUFL.:2013/11/15(金) 00:45:45 ID:wJ76rJhQ0
月報集計お疲れ様です。
少女漫画. 39話(+ 1) 33/40(- 0) 82.5(- 0.0)

68 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/11(土) 15:45:47 ID:D2U2vMHA0
投下します

69魂の迷い子 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/11(土) 15:46:16 ID:D2U2vMHA0
 自分が目覚めたのがデパートであったのは、不幸中の幸いだった。
 ドライバーを始めとした工具は、日用品レベルのものなら手に入るからだ。
 工具さえ手に入ってしまえば、あとはこっちの物だ。
 デパートの一角に置かれた家電とパソコンを、片っ端から分解していく。
 あらかたの家電とパソコンを部品に戻した所で、いざ、と言いたいが。
 手元にある工具は、あくまで日用品レベルだ。
 本格的にモノを作るのだとすれば、これでは少し心細い。
 だから、まずは"工具"を生み出していく。
 ひとつ、ひとつ、またひとつと組み合わせていくことで、急ごしらえの"工具"を作っていく。
 一つ工具ができれば、作れるものの幅が広がる。作れるものの幅が広がれば、作れる工具も増えていく。
 ひとつ、ひとつ、けれど確実に進めていくことで、可能性は広がっていく。
 可能性が広がれば、それは自分の力になる。

「よし、と」

 一息つき、汗を拭う。
 気がつけば、このデパートにあった殆どの家電を分解していた。
 これほどまでに集中できたのは、やはり殺しあいという異常事態だからだろうか。
 生み出した工具の数もさながら、数時間の時を経て完成したそれは、なかなかの力作だ。
 見た目こそ不思議な生き物だが、その正体は即興のパワードスーツだ。
 予想よりも出来が良くなったのは、近年の家電が高性能化しているおかげだろう。
 それに感謝をしつつ、蛍は出来上がったそれを見上げる。
 珍しく考えこむポーズを取り、しばらくした後、何かを閃いたかのように口を開く。

「モゲ太……そうね、これの名前は、モゲ太よ」

 そう、それはなんとなしに付けた名前だった。
 家電からパーツをもいで作ったから、モゲ太。
 そんな単純な理由だった。
 よもや、それと同じ名前のキャラクターが居ることなど知るわけもなく。
 まして、そのキャラクターとスーツの外見が、酷似していることなど、気づくわけも無かった。

「ひとまず、動作確認よね」

 名付けも終わった所で、蛍はモゲ太へと乗り込んでいく。
 コクピットは自分が乗り込むことしか考えていなかったため、ギリギリのサイズだ。
 だが、逆を返せば自分にフィットしているとも取れる。
 欲しい情報は、手を伸ばせば直ぐ手に入るようになっているのは、我ながら惚れ惚れする出来だ。
 ふっ、とニヒルな笑みを浮かべた後、蛍はゲームコントローラで代用した操縦桿を握り、モゲ太を動かし始めた。

70魂の迷い子 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/11(土) 15:46:38 ID:D2U2vMHA0
 


「くそっ、見失った……」

 脱兎の如く逃げ出した少女を追って、由希はデパートへと足を踏み入れた。
 一階に広がっていたのは、婦人用のファッション用品の数々。
 展示された宝石、無数のマネキンたちと、綺麗な服が多数かけられたハンガーラック。
 少女一人が隠れる分の隙間は、いくらでもある。
 途方も無いことだとは思うが、探していくしか無い。
 せめて、何か手がかりがあればいいのだが。
 そう思いながらも、一つ一つ物陰を探し始めた時だった。

「うぎゃーーーーーーーーーーーーっ!?!?」

 別の階で響いたの、叫び声。
 間違いない、さっきの少女の声だ。
 どうやらこのデパートには、先客が居たようだ。
 そして、別の階に逃げ込んでいた少女は、その先客と鉢合わせした。
 願わくば、その先客が"そういう人間"で無いことを祈りながら。
 階段を駆け登った先、そこで由希が見たもの、それは。

「えっ……」

 思わず、そんな言葉が漏れる。
 いや、声を漏らさずにいられる訳がなかった。
 何故も何もない、そこに立っていたのは。

「モゲ……太……?」

 由希もよく知っている、アニメキャラだったのだから。
 しかも、成人男性よりも一回りほど大きい。
 アニメよりゴテゴテとした外見なにが少し気になるが、と思っていた時だ。
 なんと、モゲ太が迷いもなくこちらへ向かってくるのだ。
 まさか、モゲ太が敵だと言うのだろうか。
 ちょっと理解が追いつかないが、最悪のケースを想定しつつ、由希は散弾銃を構える。
 まさかこんな事になろうとは、そういえば映画でもモゲ太は人を襲っていた気がする。
 いや、本当にモゲ太が存在するとでもいうのか、馬鹿馬鹿しい。
 そう思っているうちにも、モゲ太はどんどんこちらへ近づいてくる。
 どうする、どうする、どうすべきだ、思考が回る――――

『あの』

 その時に聞こえたのは、機械を通したような、別の少女の声だった。

『手伝ってくれませんか、怪我してる女の子がいるんです』

 そう言って、モゲ太はぺこりと頭を下げる。
 思考が、ストップする。
 もはや何がどうということなのか、考えられなくなっていた。
 銃を構える余裕などあるわけもなく、ただ単に、ぼうっとモゲ太の姿を見ていた。
 すると、モゲ太の傍から一人の少女が現れ、由希の目の前へと足を進めてきた。

「初めまして、今井蛍と申します。お願いです、手を貸してくれませんか?」

 少女、蛍の名乗りに、ようやく意識を現世に戻した由希は、ゆっくりと肯定するように頷いた。

71魂の迷い子 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/11(土) 15:46:54 ID:D2U2vMHA0



 予想通り、といえば予想通りだった。
 怪我をしている少女というのは、先ほど由希を見て一目散に逃げ出していった、あの少女のことだった。
 聞けば、モゲ太は蛍が作ったパワードスーツ(なんて言葉を使うとは思っていなかったが)らしく、それの動作確認をしていた時に、少女と鉢合わせてしまったらしい。
 自分の顔を見るや否や逃げ出すほど追い詰められていた少女が、傍から見れば怪物にも見えるそれを見て、気を保っていられるわけもなく。
 気を失ってしまった少女を見て、どうするべきかと悩んでいた時に、由希が現れたのだという。
 それから、モゲ太を作ったのは蛍であること、アリスと呼ばれる超能力の話を含め、由希は蛍の話を聞いていた。
 超能力なんて信じてはいなかったが、目の前で見せられては流石に信じざるを得なかった。

「由希さんは、これからどうするんですか」

 デパートの一角の薬局から拝借してきた薬を掛けあわせ、一通り治療が終わった所で、蛍は由希へと語りかける。
 答えは分かりきっている、今更という気持ちもあるが、それでも蛍はちゃんと聞いておきたかった。
 少しの沈黙を経て、由希はゆっくりと蛍へ語る。

「決めたんだ。僕はこの殺し合いに抗う、誰も殺したくないし、死にたくもない。みんなで生き残りたいんだ」

 今は眠る、少女の姿を見て決めたこと。
 天秤をひっくり返す、日常を取り戻す。
 誰かを傷つけること、ましてや人を殺すことなんて、出来るわけもなかった。

「本当に、そんなことが出来ると思いますか」

 その答えを聞いた蛍が返したのは、そんな言葉だった。

「……こんな小さな子が追いつめられて、気を失ってしまうくらいだというのに。
 それでも由希さんは、"その気"の人間まで殺さずにいられますか」

 小学生とは到底思えない落ち着きで、蛍は口を開き続ける。
 その言葉に、由希もはっとする。
 そう、ここは殺し合いの場。
 人が人を殺し続けないと生き残れない、そう告げられている場所。
 その言葉に乗せられて、既にその気になっている人間も少なくはないだろう。
 そんな人間に襲われても、自分は"不殺"を貫けるだろうか。
 他人の幸せを奪おうとしている人間の幸せさえも、守ることが出来るだろうか。

「戦わなくちゃいけない時だって、あるんです」

 そんな心を見透かされているかのように、蛍の言葉が続く。
 言葉を詰まらせる由希をじっと見つめながら、蛍はその姿を"彼女"と重ねる。
 無鉄砲で、ハチャメチャで、でも人を思いやる優しい心をもつ少女は、この場所のどこかで人殺しを止めようとしているのだろう。
 そしてきっと彼女も、彼と同じように悩んでいるのだろう。
 その時自分は、彼女の言葉を聞けるだろうか。
 彼女の命を脅かす存在さえも、守ろうとする彼女の言葉を。
 それとも、彼女を守るための動くことを優先するだろうか。

 現実は、重い。
 気づいてしまった、気づかせてしまった、故に二人は足を止める。
 掲げた理想と目標を達成するためには、何かを捨てなくてはいけないのだろうか。
 もし、そうだとすれば。

 その時、自分は"何"を選ぶのだろうか。

72魂の迷い子 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/11(土) 15:47:14 ID:D2U2vMHA0
 
【F-2/デパート内・家電売場/昼】
【今井蛍@学園アリス】
[状態]:健康
[服装]:学園の制服
[装備]:スタンガン、自作パワードスーツ(モゲ太型)、癒しのアリスストーン@学園アリス
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(本人確認済み、自分の発明品・工具は無い)
[基本行動方針]:人殺しには乗らずに蜜柑(たち)と生き残る、ルールには乗らない
[思考]
基本:殺し合い以外で助かる方法を模索する
1:由希と行動、少女(はぐみ)が起きるまで待つ。
2:蜜柑、棗と合流する。
3:ペルソナ、小泉月の危険度を教える。
[備考]
※参戦時期は16巻終了直後です
 ・小泉月のアリスが人を操れること、蜜柑に盗みのアリスが潜在していることを知っています

【草摩由希@フルーツバスケット】
[状態]:左手負傷(手当済み)
[装備]:ウィンチェスター M1887(5/5、予備弾10)@現実
[道具]:基本支給品、アリス学園高等部制服@学園アリス、「水の館」の台本@こどものおもちゃ
[思考]
基本:絶対に生き残る。
1:蛍と行動、少女(はぐみ)が起きるまで待つ。
[備考]
※参戦時期は本編終了後

【花本はぐみ@ハチミツとクローバー】
[状態]:気絶、恐怖
[装備]:
[道具]:基本支給品(不明支給品1〜3個)
[思考]
基本:友人を探す
1:――――

※はぐの怪我はアリスストーンで完治させました

---
以上で投下終了です。

73名無しさん:2016/06/13(月) 21:56:50 ID:AP39A43Q0
投下乙―!
蛍の能力はロワでも利便性高いなあ。っていうか、モゲ太……w
こういうクロスオーバーもロワの花だよね!
一方での由希君も、ロワではある種定番の悩みにぶち当たり、さて。
定番だと思う反面、大事な人、大切な人がいる舞台での取捨選択も少女漫画っぽくていいよなあ。
由希君だけでなく、蛍も、そしてはぐみも。

74束の間の休息 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/16(木) 23:57:08 ID:sqxrrFNA0
 何度も何度も、飽きるほどに毎日聞いた、良く知った声。
 当たり前に聞けると思っていた、日常の欠片。
 何気ないそれが、日常が崩れ去った今は、この上なく嬉しい。
 だが、そんな感傷に浸っている時間はない。
 そうしているうちにも火は燃え上がり、次々に木々を飲み込んでいく。

「とにかく、ここはヤバイ。逃げるよ!!」

 再会を悠長に祝いあっている時間はない。
 ここでそんなことをしていれば、あっという間に丸焦げ死体が二体出来上がりだ。
 燃え上がる炎を背に逃げるなんて、映画でしか見たことがなかったが、まさか自分がそんな状況に陥るとは考えもしなかった。
 こんなにも熱いのならば、一度限りで御免被りたいものだ。
 そんな事を考えながらも、走りだしていた光の耳に、少し弱々しい声が届く。

「待っ、ひか……待っ……」

 そうだ、藤岡ハルヒという人間は、運動音痴が服を着て歩いているような、運動神経の持ち主だ。
 自分の全力の走りになんて、着いてこれるわけもない。
 いつもなら「トロいやつだな」と馬鹿にする場面だが、今はそんなことを言っていられない。

「ああっ、もうっ!!」

 半ば自棄になりながら、光はハルヒの体をひょいと抱える。
 正直、軽くはないが、見捨てることになるより、何倍もマシだ。
 人間追いつめられたら、普段の何倍もの力が出るとは聞いたことがあるが、多分これもその一種なのだろう。

「捕まってろよ!!」

 彼女を救うのは、キングの仕事だろう。
 そんな事を思いながら、光は一目散に走りだした。

75束の間の休息 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/16(木) 23:57:37 ID:sqxrrFNA0



「はあっ……はあっ……はあっ……」

 途切れ途切れの上がりきった息と、水が静かに流れる音。
 体力の限界を迎え、あたりに構わず倒れ伏した光を、ハルヒは心配そうに見つめている。
 そんなハルヒに対し、光はにっと笑顔を作る。

「……ありがとう」
「気に、すんなよ」

 途切れ途切れの息では、会話も難しいか。
 こんな他愛もない会話をこなすのが難しいくらいには、疲れているということか。
 それでも、光は会話ができることが嬉しかった。

「おい、泣く奴が、あるかよ」

 ふと、ハルヒの顔を見て気がつく。
 そう、彼女は自分の顔を見つめたまま、ぼろぼろと大粒の涙を流していたのだ。

「だって、だってッ……」

 拭っても拭っても、涙が止まらない理由、それは。

「怖かった、怖かったんだよ!!」

 恐怖。
 殺し合いという異常な事態の中で、少し弱っていた精神には、火事という現象はいつもよりも怖く見えた。
 それは、少女の心を少し壊すには、十分すぎる恐怖だった。

「……俺だって、怖かっ……たさ」

 その言葉を受けて、光は思い出してしまう。
 火事から逃げ出していた先ほどまでの光景、ではなく。
 この殺し合いが始まってから、初めに出会った人間の事。
 錯乱しながら、自分に刺さったナイフを引き抜いて襲ってきた時の、顔。
 あれほど恐ろしいものを、光は今まで知らなかった。
 これから先、またあんな顔の人間に出会ってしまうのだろうか。
 その時、自分は正気を保っていられるのだろうか。
 そんな事を、考えてしまう。
 だから今は、彼女の顔をしっかりと見ておこうと思った。
 今だけだったとしても、この安心感を胸から離したくはなかったから。
 光は、ハルヒの顔を見て、もう一度笑った。

【C-6/橋の近く/昼】
【常陸院光@桜蘭高校ホスト部】
[状態]:少し安心、制服は返り血塗れ、疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考]
基本:とにかく馨に会いたい
1:休息

【藤岡ハルヒ@桜蘭高校ホスト部】
[状態]:疲労(中)
[装備]:防火服
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考]
基本:とにかく、人殺しはしない。
1:休息
2:他のホスト部員との合流。
3:森田はひとまず保留

76 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/16(木) 23:58:14 ID:sqxrrFNA0
投下終了

77錯綜する、心 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/18(土) 01:59:57 ID:5PiEMPPc0
 雨は降っていないのに、ざあざあとノイズが響く。
 時が凍りついたかのように、何も動かない。
 一つの死体を挟んで向かい合う、二人を除いて。

「何やってんねんって、聞いてんねん」

 今の状況を理解するのは簡単だが、理解したくないという感情が勝っている。
 当たり前だ、知っている人間が"殺人"に手を染めているなど、認めたいわけがない。
 だから、風花は両手を赤に染めている直澄に問いかける。
 再び沈黙が続き、空気が次第に重くなっていく。
 少しの間を置いて、直澄はゆっくりと口を開く。

「……突然この人が現れて、それで、死んだ」
「そんなん、信じろって言うんか」

 直澄がようやく振り絞った言葉を、風花は即座に切り捨てる。
 この殺しあい自体が、信じられないような現象であるのは確かだ。
 しかし、だからといってそんなマジックのような話を、おいそれと信じられる訳も無かった。

「そうとしか、僕からは言えないよ」

 だが、直澄からすれば、それが事実なのだ。
 まるでアニメや漫画のような話だと、自分でも思う。
 けれどそれが現実なのだから、そう語るしか無いのだ。

「せやったら、証明してや」
「え……?」

 半ば諦めていた直澄に突き刺さる、風花の言葉。
 どういうことだ、といった表情を浮かべる直澄に、風花は表情を変えずにそのまま続ける。

「あんたが人を殺してへん、殺すつもりもあれへんって事を証明して。
 うちの所に、あんたの袋を投げてよこすくらい、出来るやろ」

 風花の要求は、シンプルだ。
 武器や道具の入った袋を投げて渡す、たったそれだけのこと。
 本当に人殺しではないというのならば、それが出来るはずだと、風花は思っていた。

「……できないよ」

 だが、少しの間を置いて帰ってきたのは、否定の言葉だった。
 眉をひそめ、風花は直澄の顔を睨みつける。

「なんでや」
「だって、ここは殺し合いをする場所だ」

 風花の問いに、直澄は即答する。

「僕だって、死にたくはない……」

 そして、目をそらす。
 そう、ここは人と人が殺し合う、地獄のような場所だ。
 そんな場所で武器を失うということは、どういうことか。
 万が一、誰かに襲われた時に、抵抗する手段が無くなるということだ。
 誰だって、死にたくはない。だから、道具を手放すことが出来なかった。

78錯綜する、心 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/18(土) 02:00:10 ID:5PiEMPPc0

「はっ、そういう事かいな」

 だがその答えは、この場においては最悪の事態を招く。
 風花からしてみれば、武器を手放すつもりがないということは、人殺しであると認めたことにも等しい。
 だから、風花は蔑むような目で、直澄を見つめる。
 お前は人殺しだ、自分とは違う、と言い聞かせるように。

「ち、違う! 本当に僕じゃない!!」
「近寄んな人殺し!!」

 弁明しようと声を上げる直澄に、風花はついに刀を向ける。
 風花にとっては、今の直澄は人殺しとしてしか映らなくなっていた。
 もし、普段の彼女であれば、もう少しまともな判断が出来たかもしれない。
 だが、直澄は知らない、知る由もない。
 間接的にとは言え、彼女が既に一人の人間を殺していることを。
 その事実が、彼女の精神を摩耗させきっていたことを。

「うちはアンタとは違う! 人殺しなんてまっぴら御免や!!」
「分かってる、僕も同感だ」

 自分は人殺しだと認めたくない、だから人殺しに近寄られたくない。
 認めたくない、認めたくないから、近寄られたくない。
 だから、風花は拒絶するように、刀を振るう。

「来んな!! 来んなって言ってんねん!!」

 型もへったくれもなく、ぶん、ぶんと大振りに振るう。
 女子のそれとはいえ、鋭利な刃物が振るわれているのは怖い。
 だから近寄れず、少し遠くから風花の様子を見ていた。

 もしこの時、直澄が体を張って止めていれば。
 もし少し前、直澄が袋を投げ飛ばしていれば。
 もし初めに、風花が人を殺していなければ。

 そして今、風花は闇雲に刀を振るっている。
 初めて見た死体から、全速力で逃げ出したが故に彼女の体力は落ちている。
 擦り切れた精神では、それを判断できるほどの思考能力は残されている訳もなく。

 もしと、今。
 細かな全てが、積み重なり。
 それは、招かれた。

79錯綜する、心 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/18(土) 02:00:23 ID:5PiEMPPc0

「え」

 するり、と風花の手から滑って抜けた刀が。

 直澄の胸に、深々と突き刺さっていた。

「あ――――」

 はっきりと映ったその光景は、風花の意志を崩壊させるには十分で。

 声にならない声を絞り出しながら、風花はその場から逃げ出した。

「あ、っちゃ…………」

 ごふり、と血を吐き出しながら、直澄はその場に倒れこむ。
 投げ飛ばされた勢いも相まって、刀は思っていたよりも深く突き刺さっている。
 手当すれば間に合うかもしれないが、そんな人間なんてどこにも居ない。
 そんなことを考えているうちにも、血は流れていくし、感覚はどんどんと失われていく。
 少しずつ、体の自由が奪われていく感覚が、はっきりと分かる。
 演技でもなく、欺瞞でもなく、本当の"死"という感覚。

「……怖い、な……」

 初めて味わうそれを、しっかりと噛み締めながら。
 直澄は、ゆっくりと目を閉じた。

【加村直澄@こどものおもちゃ 死亡】
【残り32人】

※白虎の刀@BASARAが胸部に突き刺さったままです。
※支給品袋は遺体傍に放置されています

【G-2/南西部/昼】
【松井風花@こどものおもちゃ】
[状態]:吐き気、震え、殺人に対する恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、黒板セット@現実
[思考]
基本:――――――

80錯綜する、心 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/18(土) 02:00:33 ID:5PiEMPPc0
投下終了です

81第一回放送 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/18(土) 02:29:08 ID:5PiEMPPc0
「儀式に招かれし贄達よ、定刻だ。
 死者と禁止エリアを告げる、一度しか言わぬ故に聞き逃すことのないようにな。
 まず、禁止エリアを告げる。

 14:00 B-3、D-7
 16:00 C-1、E-2
 18:00 F-1、G-2

 以上、六ヶ所だ。
 次に、この六時間の間に捧げられた、贄達の名を告げよう。

 草摩依鈴
 竹本祐太
 小椋迅八
 草摩夾
 日向棗
 笠間春彦
 山田あゆみ
 加村直澄

 以上、八名だ。
 ふむ……首尾は順調のようだな。
 だが、用意された椅子は一つ、夢々忘れることのないようにな」



「慊人様。時間ですので、報告に参りました」

 放送を終え、心宿は個室で休んでいる慊人に同じ内容を報告する。
 禁止エリアには興味を示していなかったが、死者の名前を読み上げている時、慊人は笑っていた。
 八人、全体の五分の一。六時間の間に上がった成果にしては、上々だろう。

「これなら紫呉様も――――」

 そして、続いた心宿の言葉に、慊人はピクリと反応する。

「紫呉? 紫呉が何だって?」
「いえ、何も」

 失言だったか、と心宿は慌てて取り繕う。

「まあいいや、紫呉は僕が殺したんだ、そうさ……フフフ」

 だが、慊人は特に気にする様子もなく、一人で笑い出し始める。
 そう殺した、自分の手で、殺したのだと、笑う。
 そんな姿を見つめながら、心宿は慊人に一礼をし、個室を後にしていった。

「……困るねえ」

 その出先で待ち構えていたのは、他でもない紫呉だ。

「あんまり勝手なこと、言わないでよね」

 意味深な笑みを浮かべたまま、彼はそれだけを心宿に言い残して、立ち去っていく。
 全く、理解できない。
 そう思いながら、紫呉の後ろ姿を少し見つめ、心宿は彼に背を向けて、どこかへと向かって行った。

【残り32人】

82 ◆F9bPzQUFL.:2016/06/18(土) 02:29:33 ID:5PiEMPPc0
投下終了です。
禁止エリアは独断で決めました、問題ありそうなら対応します。

83 ◆F9bPzQUFL.:2016/07/15(金) 00:41:03 ID:trjlr7FU0
月報集計お疲れ様です。
少女漫画  43話(+ 4) 32/40 (-1) 80.0 (-2.5)


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