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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

53螺子と歯車は噛み合わない ◆F9bPzQUFL.:2013/08/13(火) 00:22:43 ID:HPUKKgWw0
どれくらい、走り続けただろうか。
ちりちりと痛む火傷の傷跡に沁みる汗を堪えながら、馨はただひたすらに走っていた。
全身のあちらこちらに広がる火傷を処置するには、ぬるい飲み水をかける程度ではダメだった。
もっと量が多くて冷たい水が必要であると馨は考える。
幸運にも彼は、そんな水が豊富な場所を知っている。
この地で目を覚ました初めの場所、彼の始まりであり終わりの場所。
正確に言えば、今向かっているところは初めの場所ではない。
ただ、そこに流れる川は同じ。
自分のこの手でナイフを突き刺し、一人の男を突き落とした、あの川が流れているであろう方向へ。
馨は、立ち止まることなく走り続ける。
己の傷を、癒すために。

しばらく走り続け、ようやくたどり着いた"始まりの川"。
たどり着くや否や荷物を投げ飛ばし、服を脱ぐこともなく川にざぶざぶと入り込んでいく。
ひんやりとした水が、火傷の痕にゆっくりと沁み渡る。
汗の塩分の痛みとはまた違う、癒しの感覚。
痛みが完全に引いたわけではないが、それでも確実にマシな状況にはなってきていた。
「こんな感じに、流れていったのかな」
ふと、その時に思い出したのは始めに"殺した"人間のことだ。
ナイフで一突きして、川に思いっきり蹴落とす。
それだけで終わってしまった、あっけない出来事。
今の自分のように、ぷかぷかと川に浮かびながら流れていく男の姿を見て、初めは確信していた。
人を殺すことは、簡単だと。
守れる、このちっぽけな両手で、光のことを守ってやれる。
そう、信じてやまなかった。
けれど、その思いはすぐに砕かれた。
自分よりも二つか三つほど年下である少年に、意図も容易く出し抜かれてしまった。
おまけに今もヒリヒリと痛む火傷まで負わされている。
原因は考えるまでもなく、自分だ。
自分の心の中に、油断、慢心があった。
こんなに簡単なら、すぐにたどり着けると思っていた。
けれど、現実はそうではないことを知った。
まるでマジックのように炎を出して見せた少年のように、現実では考えられない事が簡単に起こるのかもしれない。
もっと、気を引き締めなくては。
光に出会い、光の剣となり、光の盾となるまでは。
この身を滅ぼすわけにはいかないのだから。
「……そろそろ、いいか」
そこまで考えたところで思考を止め、ゆっくりと川から上がっていく。
ずぶ濡れの制服が、重石となり馨の動きを鈍くしていく。
躊躇うことなく上着を脱ぎ捨てる、どうせ替えならいくらでもある。
それに、血のついた服をいつまでも着ているわけにはいかない。
自分は油断せず、相手の油断を誘って殺していく。
出来る限り安全な手段を取った方がいい。
油断すれば、また先ほどのようになってしまうから。
頬を数回叩き、意識を集中させていく。
そして、首輪探知機に目を通していく。
画面に表示されていたのは、「2」と「14」の二つの点。
それをみて馨は、次の一手を考える。


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