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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

48ヒーロー失格  ◆o.lVkW7N.A:2013/08/10(土) 00:31:23 ID:9869nyvs0
「だって貴方のおかげで、俺は自分の手であいつを殺さずに済みました」
「それは……」
「俺、さっき完全に殺すつもりであいつに近づきました。
 相手が女だとか友達だとか、俺に惚れてることとか全部関係なく、むしろそれも利用しようとして。
 ……でも、おかしいんですよね。実際会ってあいつの顔を見たらやっぱり怖くて、手が、震えて」

そう口にする真山の掌は、まるでその瞬間を思い出したかのように、指先がかたかたと震えていた。
蒼褪めた顔を持ち上げてこちらを見据える表情は、まるで幽霊か何かのようだ。
恐らく、恐怖や後悔や羞恥や悲しみや自己否定や、ありとあらゆる感情に押し潰されかけているのだろう。
当然だ。大切な友人を殺そうとしたという事実は、枷として付けるにはあまりにも重すぎる。

「だからあいつが撃たれたとき思ったんです。「ああ、良かった」って。
 俺はともかくあいつが……山田が、惚れた男に殺されるなんて最低の死に方しなかったから」

そこで一旦言葉を区切ると、真山は玲へと真っ直ぐに向き直り、頭を深く折ってその場で一礼した。
地へ向けられた顔から、彼の表情を窺い知ることは出来ない。
けれど、伏せた瞳からぽたぽたと透明な滴が落ち、首筋を伝っていく姿だけは、玲からもよく見えた。


「……ありがとう、ございました」


まさか、人を殺して感謝されることがあるとは思わなかった。
出来ることならば二度とあってほしくない経験なのだけれど、
もしかしたらこの殺し合いの場では、そんな「まさか」が何度も起こり得るのかもしれない。
実際、彼のように「生き残りたい」と「けれど出来れば殺したくない」が同居しているような参加者は多いだろう。
玲自身、羽山や直澄といった紗南の友人たちは、なるべくなら他の人間の手にかかっていてほしいと思っている。

「君の友人はあと何人いる?」
「三人ですね。転んだだけで死にそうな子と、何度転んでも起き上がる後輩と、
 転んだ拍子に地面に落ちた小銭を一枚でも多く拾おうとするような先輩の三人です」
「彼らを見捨てても……、殺してでも、最後の一人になりたい、と?」

その質問に一瞬だけ言葉を詰まらせると、しかし真山はきっぱりとした声音で言い切った。

「そうですね、……戻って逢いたい人がいるんです」

そう口にする真山の表情に躊躇いは無かった。それを見て、玲はその人物こそが真山の愛する相手なのだと悟る。
自分を一途に想う女性を捨ててでももう一度逢いたいひと。恐らく先刻の「りかさん」とやらだろう。

「そっちが恋人かい?」
「だといいんですけど……、今のところはまだそこまでは」

情けなさそうな声でそう返すと、真山が苦笑しながら、今度はこちらに質問を向けてくる。


「相模さんはどうなんですか」
「……ああ、俺も同じだよ。大切な人のために、この殺し合いに乗ることを決めた」


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