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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

54螺子と歯車は噛み合わない ◆F9bPzQUFL.:2013/08/13(火) 00:22:57 ID:HPUKKgWw0



「ねえねえー、そんなにムスっとしてないで、お話ししようよー」
子供には子供っぽく、ということか。
浅葱は無邪気に蜜柑へと話しかける。
けれど、蜜柑の表情は一切晴れることはなく、それどころか浅葱をジッと睨み続けている。
詳細名簿には載っていない情報、アリスという能力の正体、その他諸々、蜜柑には聞いておきたいことが山ほどある。
何とかして蜜柑の口を割りたいのだが、暴力的な手段に出るわけにもいかない。
彼女は浅葱にとって未知の能力、"アリス"を防ぐことが出来るのだから。
その力を役立てて貰うには、彼女に生きていて貰わなければいけない。
盾として使おうにも、死んでいては意味がないのだ。
だから、こうやって遠回しな方法で彼女に"問いかけている"のだ。
「ねーえー、ちょっとくらい教えてよー」
けれど、蜜柑は決して口を割らない。
こいつにだけは屈したくないという意志と、友を守りたいという思い。
それらを反抗の証として、目つきに表しているだけなのだ。
だが、一向に口を割らない蜜柑に対し、浅葱も同じ手段を続けるほどバカではない。
「そう、どうしても喋らないんだね、じゃあ」
ふっ、と表情を冷ややかにした後、肘から先が残像を伴うかのように消えていく。
「君は"生かされてる"って事を、思い出させてあげないとね」
「えっ――――」
ほぼ同時に、蜜柑の体に走る痛み。
腹部から少し上、深々と突き刺さる浅葱の拳。
耐えきれない痛みに、蜜柑はその場にうずくまってしまう。
「君が大地を踏みしめて生き続けてられるのは、君に価値が有るからだよ。
 なんの価値もないただの女の子を手元に置いておくほど、僕は変態趣味じゃない」
うずくまる蜜柑の頭を踏みつけながら、浅葱はつらつらと言葉を並べる。
自分が生きる、そのためにならどんなものですら利用してみせる。
たったそれだけ、けれどそれが浅葱を動かす全てなのだ。
「分かった? 返事が欲しいんだけど」
上から下へ、全てを凍らせるほどの冷ややかな目線のまま、浅葱は蜜柑に問いかける。
ふわりと蜜柑の頭から足が離れていく。
けれど、蜜柑の次の言葉次第でその足がどう動くか変わっていくだろう。
「……はい」
悔しい気持ちを必死に堪え、けれど心が完全に服従しきってしまわないように。
仮初めの気持ちだけを、浅葱に告げる。
「分かってるならいいよ」
小さく振り上げられた足は、そのまま地面にすとんと落ちる。
その頃には痛みもようやく引いてきていた。
蜜柑は強く思う。
この状況を、早く何とかしなければ、と。
けれど、今は思うことしかできない。
自分一人では、どうすることも出来ないのは分かっているから。
ふと、頭に一人の少年の姿が過ぎる。
こんな状況に現れて、自分を助けてくれそうな一人の少年。
「棗――――」
その名前を浅葱に聞こえないよう小さく呟いたと同時に、蜜柑は見つける。
浅葱と同年代、いや少し下ほどの一人の男が、目の前に倒れていることを。
「あ……」
だが、蜜柑は迷ってしまう。
傷ついた人間が倒れていると言うことを、奴に伝えるべきなのかどうか。
いや、伝えるべきではない。
あの男は間違いなくとどめを刺すだろう。
なんの、躊躇いもなく。
しかし、蜜柑は考えてしまう。
ひょっとすれば、自分の状況が変わる"チャンス"になるかも知れないと。
彼を助ければ、何かが変わるかもしれない。
そんな些細な希望を抱かずには居られない。
だから、少しだけ足を止めてしまったのだ。
「ん? どーしたの?」
無邪気な顔で浅葱が振り向く。
あわてて平静を取り繕うも、もう遅い。
浅葱の目にはしっかりと、蜜柑が見つけた男の姿が映っていたのだから。
ずいっと足を動かし、浅葱が男に近づいていく。
手には銃を持ったまま、ふらふらとした足取りで。
駄目と言いたくても、口は動かなくて。
きっとそれを言ってしまえば、望みも何もかもが無くなってしまうから。
これから起こることを、ただじっと見ていることしかできない。


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