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【R-18】断章のグリムif 『カエルの王子さま』【非安価】

1いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 22:36:09 ID:J.wPzR7Y


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                  【R-18】断章のグリムif 『カエルの王子さま』【非安価】




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      .レ \ ` <_::::::::::::::::::::::::::::::::::∩::::::;                        ||  / /  ∧乂{          ′
.l> ___/__.\≦彡ニニニニニニくヽ::::l\:|ノ Ⅴ                        /ニ|| ,/ /l /  ゝ-          L _,,
.|      , ≦彡ニニ/ニニニニニニニニ.ヽ!  ヽ /                        /二 ∧|/}/\l :|/                 厂
 __.. ≦彡彡ニニ./ニニニニニニニニニニニl>、                       -‐=≦/二ニ≧s。           ≧=‐-  -‐='′
≦≪<ニニニニニ/ニニニニニニニニニニニニニ} ヽ                    -=ニニニ{ニニニニニニ≧=‐-   -‐=ニ二´ニ∧
.三三三/ニ /ニニニニニニニニニニニニニニ,’                      -=ニニニニ{二二二二ニニニニニニニニニニニニ∧
.三三/ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニ,i                      -=ニニニニニ\ニニニニニニニニニニニニニ,,..。s≦ニ\
.三/ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニニリ                 -=ニニニニニニニ≧s。 二二二二ニニ,,..。s≦二ニニニニ≧=‐-ミ
./ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニ}                    -=ニ二二ニニニニ/ニニニ ≧=‐--‐=≦ニニニニニニニニニニニニ丶
.ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ{                   -=ニ二二二二ニニ/二二二二二ニニニニニニニニニニニニニニニニニ \



●注意事項
 ・本作は甲田学人著『断章のグリム』二次創作です。独自解釈等も含まれるので御留意ください。
 ・文章+AA挿絵形式の非安価スレです。
 ・本作は「いが ◆K/oR.weXaA 」と「ice ◆53Ok1gX4xs 」の合作となります。
 ・やや刺激に強い表現が入る可能性があります。
 ・断章のグリム(甲田学人/三日月かける)は電撃文庫より全17巻発売中(完結済)。読め。

○作者現行雑談スレ
【R-18】いが ◆K/oR.weXaA の饅頭的駄弁り場 7軒目
ttp://yaruos-ark.sakuratan.com/test/read.cgi/reppua7m1/1452696758/

【R18】ice ◆53Ok1gX4xsの雑談・短編所 二冊目
ttp://yarufox.sakura.ne.jp/test/read.cgi/FOX/1525319551/

2いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 22:37:53 ID:J.wPzR7Y
板お借り致します。

間もなく導入の方を投下させて頂きます。

3小さな名無しさん@この板は300レスまで:2018/06/03(日) 22:45:50 ID:/C8NAok6
わくわく

4いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 22:51:35 ID:J.wPzR7Y
それでは導入の方、投下致します。

5いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 22:52:15 ID:J.wPzR7Y




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                 かえるの王子さま フロッシュケーニッヒ


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6いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 22:54:16 ID:J.wPzR7Y



 クリック? クラック!

 今日のお話は、「かえるの王子さま」。



 ある時代、ある国のお姫様が森に遊びにでかけ。
 そこで大切な金の鞠を泉に落としてしまいました。

 お姫様が泣いているとカエルが現れ、

「自分をお姫様の友人にし、同じ皿から食事をし、同じベッドで寝かせてくれるのなら拾ってこよう」

 そう、声を掛けてきたのです。
 お姫様はカエルはゲコゲコ鳴くしかできないだろうと心の中で思ったけれど、口では約束しお願いしました。
 すると泉に潜ったカエルはあっさりと鞠を咥えて戻ってきて、お姫様に返してくれました。

 しかしお姫様は鞠を受け取ると走って逃げてしまい、カエルは置いていかれてしまいました。



 しかし次の日、お姫様が王様やお妃様と食卓についていると、
 ドアの向こうから何者かのノックと声が聞こえてきました。

「お姫様、お姫様、僕にドアを開けてください」

 昨日のカエルがやってきて約束通り自分を食卓に上げて欲しいと言うのです。

 お姫様は怯えて怖がってしまい、様子がおかしいのに気づいた王様が何があったか尋ねました。
 王様はお姫様から事情を聞くと

「約束は守らなくてはならないよ」

 と、お姫様に言うとおりにするよう言い、お姫様は嫌々ながら
 カエルを食卓に上げ、自分の皿から食べ物をカエルに食べさせました。



 食べ終わったカエルは眠くなったとベッドに案内して欲しいと言いました。
 お姫様は泣き出してしまうほどに嫌がりましたが
 王様に助けてくれた人を嫌がってはならないと叱られて、
 仕方なくお姫様はカエルを寝室へと連れて行きました。

 ですがお姫様は寝室の隅に置いて自分だけベッドに入ってしまいました。
 カエルが

「僕は疲れている、僕を持ち上げて君のように眠らせてくれ、でないと君のお父さんにいいつけるよ」

 と言いました。
 それに怒ったお姫様はカエルを持ち上げると壁に投げつけてしまいました。

 しかし、壁にぶつかったカエルが落ちた時には美しい王子様になっていました。

 王子様は話し出します。悪い魔法使いに魔法をかけられカエルにされていたこと、
 魔法を解けるのはお姫様が自分を友人にして夫としなければならなかったこと、
 魔法が解けたのに気づいた自分の部下が明日迎えに来るだろうことを。



 二人が眠りにつき朝になると、白馬の引く馬車がお城にやってきました。
 馬車の後ろには王子様の部下のハインリヒがいました。

 ハインリヒは王子様がカエルに変えられた時とても悲しかったので、
 悲しみで心が破裂しないよう心臓の周りに三本の鉄帯を巻いていました。

 ハインリヒは王子様が無事元に戻れたことを喜びながら、
 王子様の国に戻るため王子様とお姫様を馬車へと載せて出発しました。

 帰る道中、突然バチンと大きな音が響いて、王子様は驚いて言いました。

「おいハインリヒ、何の音だ。馬車が壊れたのではないか」

「違います、違います、王子様。馬車ではなく、私の心臓の輪の外れる音です。
 あなたがカエルになって泉に閉じ込められた時、
 あまりに心苦しいので張り裂けぬように巻いたのです」

 二度目、三度目と音が鳴り、その度に王子様は馬車が壊れたのかと心配しましたが
 しかしそれは王子様が自由になり幸せになったことを喜ぶ
 ハインリヒの心臓から弾ける鉄帯の音だったのです。



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7いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 22:56:08 ID:J.wPzR7Y




…………………………………………。



 僕達人間とこの世界は、《神の悪夢》によって常に脅かされている。

 神は実在する。全ての人間の意識の遥か奥、集合無意識の海の深みに、神は確かに存在している。
 この概念上「神」と呼ばれるものに最も近い絶対存在は、僕等人間の意識の遥か奥底で有史以来ずっと眠り続けている。
 眠っているからこそ僕たち人間には全くの無関心で、それ故無慈悲で公平だ。

 ある時、神は悪夢を見た。
 神は全知なので、この世に存在するありとあらゆる恐怖を一度に夢に見てしまった。
 そして神は全能なので、眠りの邪魔になる、この人間の小さな意識では見ることすらできない程の巨大な悪夢を、切り離して捨ててしまった。

 捨てられた悪夢は集合無意識の海の底から泡となって、幾つもの小さな泡に別れながら、上へ上へと浮かび上がっていった。
 
 上へ――――僕たちの、意識へ向かって。

 僕等の意識へと浮かび上がった《悪夢の泡》は、その「全知」と称される普遍性故に僕等の意識に溶け出して、個人の抱える固有の恐怖と混じり合う。
 そしてその《悪夢の泡》が僕等の意識よりも大きくなった時、悪夢は器を溢れて現実へと漏れ出すのだ。

 かくして神の悪夢と混じり合った僕等の悪夢は、現実のモノとなる。



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8いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 23:01:39 ID:J.wPzR7Y
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 ぽちゃん、と池に黒いゴミ袋が沈んでいく。

 普段から濁ったままの、自宅の裏山の中程の。
 それこそ汚い沼のような池。
 ずっと昔、それこそ私が――――この土地に縛られ続ける前から、こんな様子だったのだと。
 幼い頃、祖母は語りかけるように教えてくれたのを思い出す。。


 荒い息をしながら、目の前の義弟――――章吾と共に。
 行った犯罪行為を忘れようと、首を振りあった。


 元々、私達夫婦は反りも合わなかった。

 親が決めた進路。
 親が決めた見合い。
 親が決めた人生を、ただ歩かされ続けるだけ。

 旦那が振るう暴力も、全て私が我慢すればいいだけ。
 旦那が造る借金も、全て私が工面すればいいだけ。

 事なかれで、全てを私任せで。
 何時まで耐えれば良いのか。
 それを考えるのも苦痛になり始めた頃、唯一旦那に敵対してくれたのが義弟だった。

 男と女の関係というわけでもない。
 ただ、極めて単純に、人間らしく。
 それだけで、歯向かったくれた義弟はその日も何時も通りに旦那と揉み合いになり。

 ――――倒れた拍子に、旦那は頭を打って起き上がらなくなった。


 警察に行くべきだろう、と私は言った。
 居なくなってもわからないはずだ、と彼は言った。
 長い長い口論の末――――結局、旦那は。
 誰も知らない、沼へと沈んでいく。


 知るのは二人。
 私と、義弟だけ。
 義父母も、既にいない。
 ――――借金で蒸発したのだろう、と思ってくれる。
 そんな甘言に騙された、と思ってしまうのは。
 それこそ、不義理に当たるのだろうけれど。


 けれど。

 既に影も見えなくなった、そのゴミ袋の行く先を見て。

 げこり、と。

 季節外れの、蛙の鳴き声を聞いた。


 そんな、気がした。




.

9いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 23:04:55 ID:J.wPzR7Y




※※※


                        バブル・ベリル
 神の悪夢の泡による異常現象、それを曰く《泡禍》と呼ぶ。

 全ての怪奇現象は神の悪夢の欠片であり、この恐怖に満ちた減少はたやすく人の命と正気を喰らうが、

              ほうか
 ごくまれに存在する《泡禍》より生還した人間には、巨大なトラウマと共に《悪夢の泡》の欠片が心の底に残ることがある。
          フラグメンツ
 彼等自身によって《断章》と呼ばれるその悪夢の断片は、心の中から紐解くことで自らの経験した悪夢的現象の片鱗を現実世界に喚び出すことが出来る。

 世界にはそんな《悪夢の泡》からの生還者が多数存在し、
 そしてその中でも恐るべきトラウマと共に悪夢の欠片を精神に宿してしまった者たちが集まって、生きるために助け合い、新たな被害者を救おうと活動している。

 英国で発祥した《ロッジ》と呼ばれる小さな活動拠点を各地に散らす、《悪夢》の被害者同士の互助会結社。
 彼等は世界の裏で被害者同士助け合いながら、同時にこの世界に浮かび上がる悪夢の中から人々を助け出し、そして神の悪夢の存在と、
       だんしょう
 神の悪夢の《断章》を持つ自分たちの存在を人々の目から隠し続けている。


    オーダー・オブ・ザ・フラグメンツ
 名を、  《断 章 騎 士 団》   という。



かくしてまた、さらなる《童話》が始まる。




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10いが ◆K/oR.weXaA:2018/06/03(日) 23:08:06 ID:J.wPzR7Y
以上、導入でした。

次回投下をお待ち下さいませ。

11小さな名無しさん@この板は300レスまで:2018/06/03(日) 23:17:50 ID:0J9NcLEU


12ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:38:36 ID:2NJtIABc
どうも、片割れです。
導入だけってのもアレかなーと思うので一話だけ先行で投下しておきます。
二話(或いは饅頭の一話)は後々をお待ち下さい。

では、始めます。

13ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:39:36 ID:2NJtIABc



                                 /イi:i:i:乂 _⌒           八(⌒
                                  }八i:i:i:i:i:i:ト.       ´ `   /
                                   ⌒}人i:i:i:i',::....
                                      ヽi:i{     >   イ
                                   }ハ       /^{__   __   ----ミ、
                                   //ハ    r<   jニ「ニニニ7ニニニ=-
                                    //. : :.   }: V  /ニ{ニニニ/ニニニニニV/
                                      __「\: : }  /: :∧ /ニニVニ=- -=ニニニニニV/
                                   -=ニ∧: : 〉ノ _////∨ニニニ〉ニ=- -=ニニニニニ∧
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                                |ニニ=-∨ニニ} {//|:'  {ニニ=-/-=ニニ=- 、ニ>、-=ニニニニニニV/


二二二二>=‐-..,,_____,,.ィ 二ニ=く⌒}ー____                _____________――― ―
二二二二二二二二二二二二二二二',二二二二jノ⌒ヽ厂r-ヘ、__  ∠====================――
.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ二二 ̄ ̄ ̄ ̄)二二二二ー‐く二二二二二二二二ア´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー=二二(__√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                             /side 『眠り姫』

二二二二>=‐-..,,_____,,.ィ 二ニ=く⌒}ー____                _____________――― ―
二二二二二二二二二二二二二二二',二二二二jノ⌒ヽ厂r-ヘ、__  ∠====================――
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ二二 ̄ ̄ ̄ ̄)二二二二ー‐く二二二二二二二二ア´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー=二二(__√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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14ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:41:36 ID:2NJtIABc

かつん、かつん、かつん。

ありがとうございました、という店員の声を背中に受け。
店の外へと足を踏み出した。
未だ熱気が残す残暑……というにも長過ぎるほど。
少しずつ寒さがやって来始めているとはいえ、異常気象に少しばかり空を睨みつける。
空は、少しずつ赤みを帯び始めた夕暮れ時。

・ ・ ・ ・ ・ ・
首に巻き付けた子供向けのマフラーを服の中へと投じながら、夕食を仕入れに。
周囲の奇異的な視線を受け流しながら、街中を彷徨い始めていた。

『楽しそうね。』

ふと、声がする。
すぐ傍で囁かれたような。
けれど、息など感じさせないような不可思議な音域で。
努めて、聞こえないように足を進める。
……一歩、更に一歩。

『昔は貴方ともこうして歩いたわね。 お互い、もっと小さかったけれど。』

けれど、声の主はそれすら楽しそうに囁きを続ける。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
たった一人、街中を歩いているだけの彼の耳元に。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
耳元は愚か、隣にすら誰もいないはずなのに。

15ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:44:15 ID:2NJtIABc



                     /´ >'⌒¨¨ 〈〉            :}-  ':\  〈〉    ,'-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-
                    /-_-_\                    :} {⌒} .ヽ     .人-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-
                  /-_-_-_-_-\     〈〉          'ニ乂ノニ彡}_   /  \-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_
                  -_-_-_-_-_-_-_ヽ              /ニニニ=-=≦\   〈〉   \-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-∨       〈〉   /{.    . : v   \        -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-_.∨         /  ,': .  . . . : ,: : . . : 八      〈〉 \-_-_-_-_-_-_-_-_-_
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-.∨     -=<   ./: : : : : : /:. : ::/{:::∨          \-_-_-_-_-_-_-_-_
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-ゝ―=</     /> =- ´⌒`¨¨/{::::::∨     〈〉     \-_-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-./   〈〉 ,'}三三三三三彡/ {::::::::}              \-_-_-_-_-_
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ '      /,'     ,'      八:::::}        〈〉  人-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ /  〈〉   //     /     /〉/  \八          '-_-_-_-_-_-_
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-       ./_ ____  , ' {__ノ)/ \\  〈〉     /{-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_- '       //     /゚~¨´   - '〉{   \\     / :{-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-_/     〈〉 '\      〉__ __¨フ ∨    \\  /   :{-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-/  〈〉    / /___ノ     |    ∨      \レ     :{-_-_-_-_-_-


視界の隅に、白く霞んだ何かが映る。
見たくない。
けれど、視界に入ってくる。
花嫁衣装にも似た、白く彩られたような服装で。
何処か怪しげな、蠱惑的な表情を浮かべながら。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
宙に舞う、人型でありながらヒトではないナニカ。

「随分楽しそうだな、リーチェ。」

……少しずつ、少しずつ。
視界の中に映る量が増えてくる。
声も、更に耳の中。

       ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
文字通り、鼓膜に直接響くような距離まで近づいて来て、漸く。
俺は、彼女を直接見ないようにしながら、囁いた。

『それはそうよ。 なんだか懐かしくなっちゃったから。』
「無駄口ばっかり叩きやがって…。」
『あら、無駄とは何よ無駄とは。』

事実だろ、と吐き捨てれば。
小憎らしくなっちゃって、雫、と。                      ・ ・
傍目から見れば独り言を呟いているようにしか見えないレベルでの会話。

一度小さく舌打ち。
決して意識を彼女には向ける事無く、手近なジャンクフード店へと足を踏み入れた。
街中で、彼を気にするような人物など。
誰一人として、いなかったけれど。

※※※

.

16ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:46:35 ID:2NJtIABc


      ふかたにしずく
俺――――深谷 雫は。
文字通りに何処にでもいる、趣味に走ったような民俗学を学ぶ一介の大学生に過ぎない。

たった二つだけ、常人より不幸な事があるとするならば。
両親も、親戚も失った天涯孤独の身である事と。
《断章》を抱えた《騎士》である、という事。
その二つを持ってしまっている以上。
恐らく、不幸という言霊からは逃れられないのだろうけれど。

珈琲だけを頼み、隅の椅子へと座り込む。
別口で貰った水道水を前に、ポケットから幾つもの錠剤や粉薬。
そして、それを飲み込む為の子供向けの補助用のゼリーを取りだして、口に含む。
いつまでも変わらない、薬独特の苦みと安っぽい薬臭さに辟易しながらそれを飲み干して、一息。
唐突に味が変わられても困るけれど、それはそれとしてもどうにかならないものだろうか。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三食三度、欠かせば命に関わるからこそ止められない。
ジャンクフード独特の肉が焼ける匂いに顔を顰める。

肉も、野菜も、或いは魚や米に至るまで。
焼けた物、臭いが強いものは口に運べない、食べられない。
《断章保有者》にしか分からない、各々が抱えたトラウマの断片。
それからは逃れられないからこそ、生きていく為に。
そういったサプリメントや薬剤から、一生離れられない体になってしまった。

噂に聞く限りでは、【雪の女王】も似たような状態だとは聞いたことは有る。
結局、大なり小なり【保有者】は何かを抱えているのが普通という事に過ぎない。

『どんな味なの?』
「苦い味以外どう言えと……。」

無理矢理に飲み干し、後味を大量の砂糖と牛乳を混ぜ込んだ珈琲で洗い流す。

.

17ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:48:45 ID:2NJtIABc


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                  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
一息を付いて、向かいの席に浮いた顔を見ないようにしながら顔を見た。

リーチェ、俺の抱えた《断章》。
昔の――――生前の名前は、クラリーチェ。

ずっと昔。
まだ、互いに小学校にも上がる前の幼い頃。
子供ながらの、純粋な。 或いは何も考えない約束で。
「大人になったら結婚しよう」と。
約束しあった俺達の、遭遇した《悪夢の泡》の断片。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
未だに終わっていないと、心のどこかで確信し続ける《泡禍》の結末が、彼女だった。

だからこそ、彼女の顔は直接見られない。
だからこそ、彼女の声は可能な限り無視をする。
けれど。
俺が抱えた《断章》の《効果》の関係上。
《騎士》としての道を選んだ以上、見ざるを、聞かざるを得ない。
それが、今の俺達の互いの関係性だった。

※※※

.

18ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:50:45 ID:2NJtIABc

『学校は?』
「……行けたら行くが、どうなるだろうな。」

氷が解け、味が薄れた珈琲を啜る。
何しろ、今年に入ってからの東日本側の《騎士団》の状況は激変した。

  アノニマス
俺が《名無し》から聞いた限りでも、少なくとも5つ以上の《童話》化した《泡禍》の発生。
                           かがりや
その幾つか、或いは全てに関わったとされる《鹿狩屋ロッジ》の新人達。
関東圏の巨大な範囲での事件後の処理を担当していた《葬儀屋》の消滅。
《叢草ロッジ》での騒動、管理人の入れ替わり。
そして、《鹿狩屋》の暴走による幾つものロッジ、及び《騎士》の死亡。
《鹿狩屋》当人は、新人の持つ《断章》によって死亡したと聞く。

確か……そう、《目醒めのアリス》。
そんな名前を持つ、断章保有者に拠って。

《ロッジ》の壊滅騒ぎで、俺自身が所属していた《ロッジ》も多大な被害を受けた。
《ネットロッジ》の《チェシャ猫》、リカの死亡。
それに伴い、現在の役割は手近な範囲で発生した《泡禍》の対処と行動圏内も縮小。
日々、平穏という名の無味な時間を浪費するだけの日常となっていた。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『だったら早く私を迎えに来てくれればいいのに。』

発言を無視する。
いや、正確に言うなら無視しなければならない。
だからこそ、言葉を発するのを止めて。
底に残った、溶けた氷で出来た水を舐めるように飲んだのとほぼ同時刻。

.

19ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:52:09 ID:2NJtIABc

ぴりり、と。
無機質な。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
登録外であることを示す、電話の音がポケットから鳴り響いた。
周りに少しだけ視線を回しながら、それを取り。

「…もしもし?」
『えー、っと。 深谷さんの電話番号で間違いないですか?』

電話越しに聞こえる声は、若い男性の物。
何かしらの勧誘だと厄介だな、と。
そんなどうでもいいことを考えながら言葉を発する。

「そうだけど……。」
『俺は木之崎と言います。 《ロッジ》の世話役を、やっているものです。』

木之崎。
何処かで、聞いた覚えがある。
けれど、何処だったかはすぐには浮かばずに。

『《木之崎ロッジ》から、依頼です。 ――――《泡禍》の疑いがある現象が、発見されました。』

その単語に、意識を即座に切り替えた。
詳しく、と。
声を投げかけようとした。

.

20ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:53:42 ID:2NJtIABc

――――けれど。

返ってきた言葉は。
……男とも、女とも理解しがたい。
形容しがたい、囁き声。

黒板を掻き毟るような。
何かを引き摺るような。
硝子を割るような。
何かが焦げ付くような。

到底理解出来ない。
精神そのものに語り掛けるような。


そう、まるで。
リーチェが呟く、終わりへと誘うような誘い声。

.

21ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:54:02 ID:2NJtIABc




『かえるのおうじさま』。




そんな声が。
魂の中に、鳴り響いた。

/side2に続く


.

22ice ◆53Ok1gX4xs:2018/06/03(日) 23:54:20 ID:2NJtIABc
以上です。 次回をお楽しみに。

23小さな名無しさん@この板は300レスまで:2018/06/03(日) 23:55:29 ID:/C8NAok6
乙です
原作終了後なのか……

24小さな名無しさん@この板は300レスまで:2018/06/04(月) 01:02:25 ID:RiIvlsQo


25小さな名無しさん@この板は300レスまで:2018/06/04(月) 12:56:04 ID:ArhArfmc

交互に投下してくんすね
すっごい意味深というか意味不明なんだけど、原作もこんな不思議な感じなんですか?

26小さな名無しさん@この板は300レスまで:2018/06/04(月) 13:17:14 ID:/RLJXIzw
わりとダークメルヒェン系っていうか
ハマる人はハマるけど、わりかし人を選ぶ内容ではある
(グロ注意とも言うが……)

マンガ版の試し読みをちょっとぺたししてみる
tp://comip.jp/Z/cbs/c565/c52-765/

27小さな名無しさん@この板は300レスまで:2018/06/04(月) 14:12:05 ID:2lrcv5rY
すんげーざっくり言うとグリムって
童話の暗黒面的なモノに浸食された犠牲者兼加害者を滅ぼす話だから……
少なくとも原作は静かな狂気系で割と救い無いから注意


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