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【R-18】断章のグリムif 『カエルの王子さま』【非安価】

1 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/03(日) 22:36:09 ID:J.wPzR7Y


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                  【R-18】断章のグリムif 『カエルの王子さま』【非安価】




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.|      , ≦彡ニニ/ニニニニニニニニ.ヽ!  ヽ /                        /二 ∧|/}/\l :|/                 厂
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≦≪<ニニニニニ/ニニニニニニニニニニニニニ} ヽ                    -=ニニニ{ニニニニニニ≧=‐-   -‐=ニ二´ニ∧
.三三三/ニ /ニニニニニニニニニニニニニニ,’                      -=ニニニニ{二二二二ニニニニニニニニニニニニ∧
.三三/ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニ,i                      -=ニニニニニ\ニニニニニニニニニニニニニ,,..。s≦ニ\
.三/ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニニリ                 -=ニニニニニニニ≧s。 二二二二ニニ,,..。s≦二ニニニニ≧=‐-ミ
./ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニ}                    -=ニ二二ニニニニ/ニニニ ≧=‐--‐=≦ニニニニニニニニニニニニ丶
.ニ /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ{                   -=ニ二二二二ニニ/二二二二二ニニニニニニニニニニニニニニニニニ \



●注意事項
 ・本作は甲田学人著『断章のグリム』二次創作です。独自解釈等も含まれるので御留意ください。
 ・文章+AA挿絵形式の非安価スレです。
 ・本作は「いが ◆K/oR.weXaA 」と「ice ◆53Ok1gX4xs 」の合作となります。
 ・やや刺激に強い表現が入る可能性があります。
 ・断章のグリム(甲田学人/三日月かける)は電撃文庫より全17巻発売中(完結済)。読め。

○作者現行雑談スレ
【R-18】いが ◆K/oR.weXaA の饅頭的駄弁り場 7軒目
ttp://yaruos-ark.sakuratan.com/test/read.cgi/reppua7m1/1452696758/

【R18】ice ◆53Ok1gX4xsの雑談・短編所 二冊目
ttp://yarufox.sakura.ne.jp/test/read.cgi/FOX/1525319551/

12 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:38:36 ID:2NJtIABc
どうも、片割れです。
導入だけってのもアレかなーと思うので一話だけ先行で投下しておきます。
二話(或いは饅頭の一話)は後々をお待ち下さい。

では、始めます。

13 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:39:36 ID:2NJtIABc



                                 /イi:i:i:乂 _⌒           八(⌒
                                  }八i:i:i:i:i:i:ト.       ´ `   /
                                   ⌒}人i:i:i:i',::....
                                      ヽi:i{     >   イ
                                   }ハ       /^{__   __   ----ミ、
                                   //ハ    r<   jニ「ニニニ7ニニニ=-
                                    //. : :.   }: V  /ニ{ニニニ/ニニニニニV/
                                      __「\: : }  /: :∧ /ニニVニ=- -=ニニニニニV/
                                   -=ニ∧: : 〉ノ _////∨ニニニ〉ニ=- -=ニニニニニ∧
                                r<ニニ/ニ}/{⌒{ //'//-=ニ/ニ=- -=ニニニニ/ニ}
                                }ニニ=-/ニニ{: ..\j_//.: /=-<ニニニ=- -=ニニ/ニニ/ニニ∨/
                            -=ニニ〈ニ=-j: . 「//」.: ,-=ニニ\-=ニ7ニニニ/ニニ{ニニ=- 、
                                {ニニニニ> {  L//.:/ -=ニニニ/-=ニ{\-=ニニニニニニニ∧
                                iニニ=-〈ニニⅥ  /^{.:/ '-=ニニ/-=ニニVニ\-=ニニニニニ/ニV/
                                |ニニ=-∨ニニ} {//|:'  {ニニ=-/-=ニニ=- 、ニ>、-=ニニニニニニV/


二二二二>=‐-..,,_____,,.ィ 二ニ=く⌒}ー____                _____________――― ―
二二二二二二二二二二二二二二二',二二二二jノ⌒ヽ厂r-ヘ、__  ∠====================――
.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ二二 ̄ ̄ ̄ ̄)二二二二ー‐く二二二二二二二二ア´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー=二二(__√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                             /side 『眠り姫』

二二二二>=‐-..,,_____,,.ィ 二ニ=く⌒}ー____                _____________――― ―
二二二二二二二二二二二二二二二',二二二二jノ⌒ヽ厂r-ヘ、__  ∠====================――
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ二二 ̄ ̄ ̄ ̄)二二二二ー‐く二二二二二二二二ア´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー=二二(__√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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14 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:41:36 ID:2NJtIABc

かつん、かつん、かつん。

ありがとうございました、という店員の声を背中に受け。
店の外へと足を踏み出した。
未だ熱気が残す残暑……というにも長過ぎるほど。
少しずつ寒さがやって来始めているとはいえ、異常気象に少しばかり空を睨みつける。
空は、少しずつ赤みを帯び始めた夕暮れ時。

・ ・ ・ ・ ・ ・
首に巻き付けた子供向けのマフラーを服の中へと投じながら、夕食を仕入れに。
周囲の奇異的な視線を受け流しながら、街中を彷徨い始めていた。

『楽しそうね。』

ふと、声がする。
すぐ傍で囁かれたような。
けれど、息など感じさせないような不可思議な音域で。
努めて、聞こえないように足を進める。
……一歩、更に一歩。

『昔は貴方ともこうして歩いたわね。 お互い、もっと小さかったけれど。』

けれど、声の主はそれすら楽しそうに囁きを続ける。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
たった一人、街中を歩いているだけの彼の耳元に。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
耳元は愚か、隣にすら誰もいないはずなのに。

15 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:44:15 ID:2NJtIABc



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                  -_-_-_-_-_-_-_ヽ              /ニニニ=-=≦\   〈〉   \-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-∨       〈〉   /{.    . : v   \        -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-
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                  -_-_-_-_-_-_-_-_-.∨     -=<   ./: : : : : : /:. : ::/{:::∨          \-_-_-_-_-_-_-_-_
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-ゝ―=</     /> =- ´⌒`¨¨/{::::::∨     〈〉     \-_-_-_-_-_-_-
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                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ /  〈〉   //     /     /〉/  \八          '-_-_-_-_-_-_
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-       ./_ ____  , ' {__ノ)/ \\  〈〉     /{-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-_-_- '       //     /゚~¨´   - '〉{   \\     / :{-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-_-_/     〈〉 '\      〉__ __¨フ ∨    \\  /   :{-_-_-_-_-_-
                  -_-_-_-_-_-_-/  〈〉    / /___ノ     |    ∨      \レ     :{-_-_-_-_-_-


視界の隅に、白く霞んだ何かが映る。
見たくない。
けれど、視界に入ってくる。
花嫁衣装にも似た、白く彩られたような服装で。
何処か怪しげな、蠱惑的な表情を浮かべながら。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
宙に舞う、人型でありながらヒトではないナニカ。

「随分楽しそうだな、リーチェ。」

……少しずつ、少しずつ。
視界の中に映る量が増えてくる。
声も、更に耳の中。

       ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
文字通り、鼓膜に直接響くような距離まで近づいて来て、漸く。
俺は、彼女を直接見ないようにしながら、囁いた。

『それはそうよ。 なんだか懐かしくなっちゃったから。』
「無駄口ばっかり叩きやがって…。」
『あら、無駄とは何よ無駄とは。』

事実だろ、と吐き捨てれば。
小憎らしくなっちゃって、雫、と。                      ・ ・
傍目から見れば独り言を呟いているようにしか見えないレベルでの会話。

一度小さく舌打ち。
決して意識を彼女には向ける事無く、手近なジャンクフード店へと足を踏み入れた。
街中で、彼を気にするような人物など。
誰一人として、いなかったけれど。

※※※

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16 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:46:35 ID:2NJtIABc


      ふかたにしずく
俺――――深谷 雫は。
文字通りに何処にでもいる、趣味に走ったような民俗学を学ぶ一介の大学生に過ぎない。

たった二つだけ、常人より不幸な事があるとするならば。
両親も、親戚も失った天涯孤独の身である事と。
《断章》を抱えた《騎士》である、という事。
その二つを持ってしまっている以上。
恐らく、不幸という言霊からは逃れられないのだろうけれど。

珈琲だけを頼み、隅の椅子へと座り込む。
別口で貰った水道水を前に、ポケットから幾つもの錠剤や粉薬。
そして、それを飲み込む為の子供向けの補助用のゼリーを取りだして、口に含む。
いつまでも変わらない、薬独特の苦みと安っぽい薬臭さに辟易しながらそれを飲み干して、一息。
唐突に味が変わられても困るけれど、それはそれとしてもどうにかならないものだろうか。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三食三度、欠かせば命に関わるからこそ止められない。
ジャンクフード独特の肉が焼ける匂いに顔を顰める。

肉も、野菜も、或いは魚や米に至るまで。
焼けた物、臭いが強いものは口に運べない、食べられない。
《断章保有者》にしか分からない、各々が抱えたトラウマの断片。
それからは逃れられないからこそ、生きていく為に。
そういったサプリメントや薬剤から、一生離れられない体になってしまった。

噂に聞く限りでは、【雪の女王】も似たような状態だとは聞いたことは有る。
結局、大なり小なり【保有者】は何かを抱えているのが普通という事に過ぎない。

『どんな味なの?』
「苦い味以外どう言えと……。」

無理矢理に飲み干し、後味を大量の砂糖と牛乳を混ぜ込んだ珈琲で洗い流す。

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17 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:48:45 ID:2NJtIABc


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                  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
一息を付いて、向かいの席に浮いた顔を見ないようにしながら顔を見た。

リーチェ、俺の抱えた《断章》。
昔の――――生前の名前は、クラリーチェ。

ずっと昔。
まだ、互いに小学校にも上がる前の幼い頃。
子供ながらの、純粋な。 或いは何も考えない約束で。
「大人になったら結婚しよう」と。
約束しあった俺達の、遭遇した《悪夢の泡》の断片。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
未だに終わっていないと、心のどこかで確信し続ける《泡禍》の結末が、彼女だった。

だからこそ、彼女の顔は直接見られない。
だからこそ、彼女の声は可能な限り無視をする。
けれど。
俺が抱えた《断章》の《効果》の関係上。
《騎士》としての道を選んだ以上、見ざるを、聞かざるを得ない。
それが、今の俺達の互いの関係性だった。

※※※

.

18 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:50:45 ID:2NJtIABc

『学校は?』
「……行けたら行くが、どうなるだろうな。」

氷が解け、味が薄れた珈琲を啜る。
何しろ、今年に入ってからの東日本側の《騎士団》の状況は激変した。

  アノニマス
俺が《名無し》から聞いた限りでも、少なくとも5つ以上の《童話》化した《泡禍》の発生。
                           かがりや
その幾つか、或いは全てに関わったとされる《鹿狩屋ロッジ》の新人達。
関東圏の巨大な範囲での事件後の処理を担当していた《葬儀屋》の消滅。
《叢草ロッジ》での騒動、管理人の入れ替わり。
そして、《鹿狩屋》の暴走による幾つものロッジ、及び《騎士》の死亡。
《鹿狩屋》当人は、新人の持つ《断章》によって死亡したと聞く。

確か……そう、《目醒めのアリス》。
そんな名前を持つ、断章保有者に拠って。

《ロッジ》の壊滅騒ぎで、俺自身が所属していた《ロッジ》も多大な被害を受けた。
《ネットロッジ》の《チェシャ猫》、リカの死亡。
それに伴い、現在の役割は手近な範囲で発生した《泡禍》の対処と行動圏内も縮小。
日々、平穏という名の無味な時間を浪費するだけの日常となっていた。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『だったら早く私を迎えに来てくれればいいのに。』

発言を無視する。
いや、正確に言うなら無視しなければならない。
だからこそ、言葉を発するのを止めて。
底に残った、溶けた氷で出来た水を舐めるように飲んだのとほぼ同時刻。

.

19 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:52:09 ID:2NJtIABc

ぴりり、と。
無機質な。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
登録外であることを示す、電話の音がポケットから鳴り響いた。
周りに少しだけ視線を回しながら、それを取り。

「…もしもし?」
『えー、っと。 深谷さんの電話番号で間違いないですか?』

電話越しに聞こえる声は、若い男性の物。
何かしらの勧誘だと厄介だな、と。
そんなどうでもいいことを考えながら言葉を発する。

「そうだけど……。」
『俺は木之崎と言います。 《ロッジ》の世話役を、やっているものです。』

木之崎。
何処かで、聞いた覚えがある。
けれど、何処だったかはすぐには浮かばずに。

『《木之崎ロッジ》から、依頼です。 ――――《泡禍》の疑いがある現象が、発見されました。』

その単語に、意識を即座に切り替えた。
詳しく、と。
声を投げかけようとした。

.

20 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:53:42 ID:2NJtIABc

――――けれど。

返ってきた言葉は。
……男とも、女とも理解しがたい。
形容しがたい、囁き声。

黒板を掻き毟るような。
何かを引き摺るような。
硝子を割るような。
何かが焦げ付くような。

到底理解出来ない。
精神そのものに語り掛けるような。


そう、まるで。
リーチェが呟く、終わりへと誘うような誘い声。

.

21 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:54:02 ID:2NJtIABc




『かえるのおうじさま』。




そんな声が。
魂の中に、鳴り響いた。

/side2に続く


.

22 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/03(日) 23:54:20 ID:2NJtIABc
以上です。 次回をお楽しみに。

23 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/03(日) 23:55:29 ID:/C8NAok6
乙です
原作終了後なのか……

24 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/04(月) 01:02:25 ID:RiIvlsQo


25 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/04(月) 12:56:04 ID:ArhArfmc

交互に投下してくんすね
すっごい意味深というか意味不明なんだけど、原作もこんな不思議な感じなんですか?

26 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/04(月) 13:17:14 ID:/RLJXIzw
わりとダークメルヒェン系っていうか
ハマる人はハマるけど、わりかし人を選ぶ内容ではある
(グロ注意とも言うが……)

マンガ版の試し読みをちょっとぺたししてみる
tp://comip.jp/Z/cbs/c565/c52-765/

27 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/04(月) 14:12:05 ID:2lrcv5rY
すんげーざっくり言うとグリムって
童話の暗黒面的なモノに浸食された犠牲者兼加害者を滅ぼす話だから……
少なくとも原作は静かな狂気系で割と救い無いから注意

28 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/04(月) 18:32:35 ID:J2eR53i.
乙〜
原作を知らないと、専門用語が多すぎて意味不明かも?
原作は、チラッと話に出た新人が主人公だから、先輩からの説明で世界観は解説されるけど

ここまでの感じだと、このスレで説明を受ける新人役は居なさそう

29 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/05(火) 18:37:42 ID:J9qosJ7w
乙ありです。

次回は私側の第一話を、金曜19時頃から投下致します。

30 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/06(水) 13:39:44 ID:8oFfqim6
断章スレとは期待

31 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/07(木) 20:00:15 ID:He2csr/c
断章のグリムとは懐かしいものを見つけた…

32 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 18:46:21 ID:5hGPSAsM
(準備中)

33 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:02:20 ID:5hGPSAsM
はい、おまたせ致しました。やっていこうと思います。

クリック?

34 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/08(金) 19:05:36 ID:.p4x32lk
クラック!

35 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:11:18 ID:5hGPSAsM





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             断章のグリムif 『カエルの王子さま』 side:大城恵


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36 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:13:05 ID:5hGPSAsM






TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTト、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ゙̄ヾト、
丕丕丕丕丕丕丕丕丕丕丕丕丕丕丕丕丶|ヾ
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丁了丁了丁了丁了丁了丁了丁了丁了>| |
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同同:| | l///| | | ┌───┐| | rtヘ. |≡| | |/K|三|::::
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エ二エ二エ二エ二エ二エ二エ二エア ̄ ̄ ̄ ̄´  ノ    ヽ._
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               ∠二二二二二二二二ヽ
              ∠二二二二二二二二二二ヽ
            ∠ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ






 くすんだ内壁の駅舎を一歩出ると、ひやりとした秋風が身体を包んだ。
 僅かに目を細め、周囲をゆっくりと見回す。

 都心から電車で一時間余り。
 郊外というほど近くはなく、辺境というほど離れてもいない関東の片田舎。
 観光地ではないせいか日曜日だというのに人は疎ら。
 腰の曲がった老婆が、車を押して目の前をゆっくりと通り過ぎていく。
 軽く会釈を交わして彼女が通りの向こうへと去って行くのを見届け……懐から携帯電話を取り出した。

 電話帳を呼び出してコールする。二回ほど鳴り、ぶつりと繋がった。

『はい、こちら木之崎』

「もしもし、大城です。現地に着きました」

『ああ了解。……どう?』

 敢えて言葉を抜いた問い掛けに、改めて駅前を眺める。
 閑散とした駅前広場を木枯らしが吹き抜ける。
 街路樹は枯葉が目立ち、チチチ、と鳥が鳴くくらいのものだ。

「まだ何とも。ただの田舎街って感じです」

 元々さほど気配に敏い方ではなく、また感知系の<断章>でもないのであくまで第一印象であるが。
 <泡禍>の進行した街は妙な印象を覚えることもあるのであながち無駄でもない。

『そうか。何かあったら、些細なことでもすぐに報告してくれ』

「ええ、勿論。……何もなくとも、夜にはまた一報入れます」

 木之崎の念押しは何も大袈裟なものではない。
 それだけの危機がこの街にはある。

「―――『童話』ですからね」

 現状を再認識し、通話を切る。

 ひゅるり、と秋風が首筋を撫でて、反射的にぶるりと身体を震わせる。

 人のいない駅前に漠然とした不安を覚え、拭い去るように懐から煙草を取り出して咥えた。






 この世に浮かび上がる神の悪夢―――<泡禍>。
 有形無形の怪異として現出するこの災害は、時に強い法則性を持つことがある。

 曰く、人間の根源的恐怖。
 曰く、集合無意識。

 ―――『童話』をなぞる<泡禍>として。




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37 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:16:01 ID:5hGPSAsM





          /   /   /      ヽ    ', ',     '     ',
       /   /   /   ノ     ヽ     i       ',  i  iヾ
.       /,ィ   i   /   /i!             l     i  l i l
     ノ'´ l      /   /:::i!       i    l     l  l l l
        l  i    i   /:::::::i!       l    l      l l-i l
         //l    l   /::::::::::::i!        .l   !l     li i!´ll从
       }/ .l l      /::::ー---',         !     l    .l i!-' l
          { l  ,   /ー、fォ,-ミ、.}           l   i   iノ 〉 }
         ヘ!ハl', 从l`ー::¨--:'ヽ!! ,i!    ,    l  i! .ノ //
          i、ヽヽl i!:::::::::::::::::::::::::ヾlヽト  i lヽ  /ll  /l/i!ノ /_
            l/ヽ、'::::::::; '´  ::::::::::::::::l   ∨'  ', / リ l /  /,/lヽニ=-
       , <=从lハ::::::.    ヽ:::::::::::l       ソ   '  ,'从ヽニl三三三=、
   , -=ニ三l三三=Yハ:::::.       ヽ:::::::!             ハl'三三l三三三三ニ-
-ニ二三三三l:三三ニl ヘ:::::.      `   ´           / l三三ニl三三三三三二-
:ニ三三三三l三三三l  l:::::::.  , -一ー---- 、       /  .l三三三l三三三三三三三ニ 、
=三三三三l三三三l   | ヘ/            `ー-、  イ.  l三三三=l三三三三三三三三ニ-
ニニ三三三l:=ニ三三l  . /    ,.:':i::i¨¨¨¨ヽ. _ ノ, ' l.   l三三三ニヽ三三三三三三三三ニ=、
三三三三lニ三三三li  i  _...... -´一l::l`ー--- 、. / /.  ,l三三三三:ヽ三三三三三三三三三=
=三三三/三三三三l.!ノ        l:::l      ヽ、'_   /l三三三三三ヽ三三三三三三三三三=
=ニ三三/=三三三三/.   ー--<´l::::lー-- 、  ヽ___ .} ./ /三三三三三ニヽ三三三三三三三三二-








 大城恵は特定のロッジに所属しない<騎士>である。
 応援依頼を受けては調査に赴くのが大城の日常だ。

 とはいえ特別に優れていたり便利であったりという立場ではない。

 大城は保有する<断章>の性質上、怪しい地域へ飛んで調査に徹する方が働けるだけのこと。
 戦闘力を持たず、事後処理も出来ないとあれば、やれることは限られるものだ。

 立場の軽さを活かして調査に飛び、解決に適した能力を持つ<騎士>へ申し送る。
 それが大城恵のいつものスタイル。

 今回の要請は関東圏に属する群草ロッジから。
 今年の春から夏にかけての、童話を象る<泡禍>の連鎖的発生により、関東圏の<騎士>は大きく減少した。
 その中にはロッジの管理者も複数含まれるというから被害は甚大だ。

 そのためフリーランスの大城もこのところは関東圏をメインに動いてるのだが……




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38 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:18:38 ID:5hGPSAsM




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 <ロッジ>が用意したセーフハウスに荷物を置くと、大城は街へと繰り出した。

 事前に受け取った資料を捲りながら早足に往く。

「直近一ヶ月で、行方不明者が……多いな」

 こういった街において、報告される行方不明者というのは殆どが単なる徘徊老人だ。すぐに解決する。
 それだけならばさほど気にしないのだが。
 今回は些か数が多い。年齢層も若めである。
 <泡禍>の犠牲者である可能性は高い。

「この数だと……最悪の場合も考えられるか」

 行方不明者の殆どが<泡禍>に巻き込まれていると仮定したら―――事態は相当に進展している。

 誤解を恐れず言ってしまえば……死体になるだけなら、まだいい。
 不審死として処理することが可能だ。
 恐れるべきは<異形>となっていること。特に人を襲うタイプは最悪だ。

 そうならないように……あるいは、そうなってしまっても最低限で済ませられるように。
 対処するのが<騎士>の役割である。




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39 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:21:32 ID:5hGPSAsM




               /                  .\
              /    -―              ハ
            /                       ハ
           ./    /           ヽ:::       ハ
           //  . /             ヽ:::  ヽ    .メ
            ´/ / /   ,、           ヽ:::. |.     l
            / /     ヘ              |   _ ト
           / ハ /  / ヘ              .|   |ヽ
          .'/| / .|  /  |  ヽ             |.  メ.ヘi
            |/ |  / ―-ヽ   .ヽ         /  ,i ソ | i
             |/ヘ./i 、___ヽ/ヽ  .ハ  . ハ i   /i/リ //
              |/|,i   ̄  .|  \| | / .レ /ヽ/|/ | ノ/i/`i
              ' |      |             | リ ./ ヽ
              メ     /             ハ:/  /
            _ / ヽ     ヽ  _ _        /:::/  /
         -―   //:/ヽ               /:::/.  リ
       /     //::/ iヽ             /:::/  リ  |
     /       |::/  .| ヽ  ―――-,,,‐‐  /::::/   ノ /
    /.           |/   |  ヽ、    \\ ./::::::/   リ /
  /          |   .|   ト::`:::ー::::-:::::| 」:::::::/   /
                           ''''''





「…………ふう」

 大城は書類を仕舞い込み、ゆるりと目を閉じた。

 息を大きく吐く。

 ゆっくりと吸う。

 意識を沈める。

 暗く深い水の底。こぽり、こぽり、と沈んでいく。

 意識の底―――その底の底から僅かに浮かび上がる泡を掬い上げる。

 解き放ってしまわぬよう、悪夢の泡をしっかりと留め―――意識を揺さぶる言葉を発した。

「―――<きっと良いことがあるから>」

 ずぐり。
 意識が軋みを上げる。
 胸に緩く爪を立てながら、目を見開くと。

「にゃあお」

 通りの角に、猫がいた。
 どこにでもいそうな三毛。尻尾の先までが闇に浸したように真っ黒だ。
 首に下がった黄金色の鈴だけが強く自己主張をしている。

 りりん。

 鈴を揺らして、身を翻す。

 大城は驚くこともなく、猫を追った。




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40 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:25:58 ID:5hGPSAsM







    _
  ―――
. /―――‐ ノ
/―――/
―――/
――‐/
ニニニ
二二{
二二{                                                |二__
二二{                                                |二二__
二二{                                                |二二二__
二二{                                                |二二二二__
二二Λ                                                  |二二二二二
二二. Λ                                  ∨ニ-           .ノ二二二二二
二二二Λ                                    ∨二二-      __-ニニニニニニニ
二二二ニ\                   __  ―――  __ ∨二二二-v/ニニニニ二二二二
二二二二二\            _-=二二二二二二二二二二=-_ ニニニニニニニニ二二二二
\二二二二二ニ=- __  _ -二二二二二二二二二二二二二二二二二-__ ニニニ二二二二二二
  `''<二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二-__ ニニニニ二二二二
     `''<二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニニニ二二二二
        `''<二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二\ニニニニ二
           `~"''''''冖//⌒二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二\ ニニニ二
               /     彡二二二二二二二 \二二二二二二二二二二二二二二}二--/
                   二  V)  -ニノニニニニニニニΛ二二二二二二二二二二二二二 }--/
                二     -ニノニニニニニニニニΛニニニニニニニニニニニニニニ{
                   二      -ノニニニニニニニニニ}ニニニニニニニニニニニニニニ{



 <泡禍>に巻き込まれて生還した者には、神の悪夢の欠片が残ることがある。
 それは神の悪夢であるが故に超常的な現象を引き起こす。
 この欠片を俗に<断章>と呼び、<断章>を用いて<泡禍>に立ち向かう者を<断章騎士>という。

 大城恵は<断章>を持つ<騎士>である。

 抱いた<断章>は『長靴を履いた猫』と名付けられた。
 主を導き、城と地位を齎した幸運の猫である。

 その名を聞いた時、思わず笑ってしまった。

 『幸運を齎す断章』など笑い話以外の何物でもない。

 まるで童話の通りのように、この黒猫は大城を導く。その先に待つのは主の求めるものだ。

 ―――今は、まだ。



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41 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 19:27:12 ID:5hGPSAsM
以上。side:大城恵の第一話でした。

次回投下までゆるりと御歓談下さいませ。

42 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/08(金) 20:11:20 ID:DGBP0DG6


43 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/08(金) 20:49:12 ID:40mIKdCU
もはやAAいらないこれ

44 いが ◆K/oR.weXaA :2018/06/08(金) 20:49:48 ID:5hGPSAsM
はい。

45 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/08(金) 21:01:38 ID:cv/jXSMY
おつおつ

46 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/08(金) 21:51:00 ID:q3Ll4j06
乙ー
原作もカラー部分と章の区切りの最後にあるくらいだからね……
まあ、話読んでるとこれくらいでよかったと思いたくなるけどw

47 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 20:50:18 ID:0EnU3l7k
はいこんばんは。
いい加減書かないと怒られそうなので二話を21時からぶん投げます。

48 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:02:53 ID:0EnU3l7k
では始めます。

49 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:03:04 ID:0EnU3l7k



二二二二>=‐-..,,_____,,.ィ 二ニ=く⌒}ー____                _____________――― ―
二二二二二二二二二二二二二二二',二二二二jノ⌒ヽ厂r-ヘ、__  ∠====================――
.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ二二 ̄ ̄ ̄ ̄)二二二二ー‐く二二二二二二二二ア´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー=二二(__√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                             /side 『眠り姫』2

二二二二>=‐-..,,_____,,.ィ 二ニ=く⌒}ー____                _____________――― ―
二二二二二二二二二二二二二二二',二二二二jノ⌒ヽ厂r-ヘ、__  ∠====================――
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ二二 ̄ ̄ ̄ ̄)二二二二ー‐く二二二二二二二二ア´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー=二二(__√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



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50 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:04:52 ID:0EnU3l7k


《グランギニョルの索引引き》。


それが、俺に聞こえた声の正体。
《断章》名だと。
虚勢半分、混乱半分の俺に。
電話越しの《世話役》は、彼の知る限りの情報を伝えてくれた。


曰く、『童話化する《泡禍》を告げる《断章》。』
曰く、『予言された対象は、配役として巻き込まれる事が確定する。』
曰く、『その《泡禍》の解決には、予言された《童話》について追求する事を強く勧める。』


何故そこまで詳しいのか。
それに関しては、若干言葉を濁らせながらも返ってきた返答が一つ。
彼……木之崎自身も、以前に関わった事があり。
そして、その《断章》の保有者を現在預かっている為なのだと。

51 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:10:30 ID:0EnU3l7k

そこまで聞いて、漸く彼の名前を思い出した。
嘗ての《叢草ロッジ》での騒動での、主要人物。
何処で聞いたのか、或いはなぜ俺に教えるのか。
その問いを全て、猫の様な小憎らしい笑顔で封殺していた《チェシャ猫》は、もういない。

『童話に関して、詳しい《騎士》が一人いる。』
『直ぐに連絡を取ってみる。 連絡先を伝えておいても構わないか?』

了承の意を告げた。

もう一人か二人、送れる《騎士》を送る、と。
その言葉を最後に、彼との話は途切れた。

残ったのは、胸に残る異様な――――《泡禍》に関わった時特有の。
吐き気と、後悔と、絶望を綯い交ぜにしたような胸糞悪さ。

そして、目の前で俺を見つめる《悪夢の泡の残滓/リーチェ》。

52 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:14:31 ID:0EnU3l7k
 ・ ・ ・ ・ ・
『どうするの?』

分かりやすい程の、悪意と善意が同居した顔。
真正面から決して見据えられない。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ずっと昔から変わらない、変われない子供特有の笑顔を浮かべている彼女。

無言で,ゴミを抱えて立ち上がった。
机に潜り込むように、彼女は下を擦り抜けて耳元で囁いた。

『頑張って、私の《王子/騎士》様。』

その言葉は、俺にとっての呪いだった。
決して逃れられない、悪夢からの呪いであり。
生前の少女から遺された、呪いだったから。

※※※

53 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:17:42 ID:0EnU3l7k

急いで帰り、その場所に向かおうとしたけれど時間的に。
そして本当に数少ない対人関係上の問題もあり、出発出来たのは翌々日の朝方だった。

幾つかの着替え、膨らんだ財布。
そして相反したような、くすんだ色の髪飾りと首に巻き付けたマフラー、小さな指輪。
それらをポケットに入れた上で、新幹線に乗りながら右手の携帯を操作した。

「かえるのおうさま」。
或いは「蛙の王子様」「鉄のハインリヒ」。

グリム童話第一冊目の、初めに記載された童話の形。
名前すらも聞いたことは無かったが、俺には文明の利器、携帯電話がある。
どちらかと言えば実際の紙での読書派ではあるが、この際細かい所に気を配る余裕もない。
幾つかヒットした中で、一番最初に開いたページにはこう書かれていた。

54 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:19:31 ID:0EnU3l7k

『あるところに一人の王様がおりました。
この王様には幾人もの美しいお姫さまがおりましたが、中でも末娘の姫君の美しさといったら太陽でさえその顔を照らすたび驚いてしまうほどのものです。
お姫さまは森の泉のほとりで、ひとり金の鞠を高く投げたり受け止めたりして遊ぶのが好きでした。

ある日のこと。
お姫さまがいつものように金の鞠を投げ上げて遊んでいると、うっかりと受け損なって鞠を泉の中に落としてしまいました。
泉はとても深く、鞠の沈んだ水底は少しも見えません。
大切な金の鞠を失くしてしまったお姫さまは悲しくなって、泉のそばにしゃがみこんで泣きました。
そうしてお姫さまが泣いていると、泉の中から呼びかける声があります。

「どうしたんですかお姫さま。そんなに泣いていると石たちまで心配して泣いてしまいますよ。」
見ると、一匹の気味の悪いカエルが泉の中から顔を出していました。

「カエルさん。私ね、大切な金の鞠を泉の中に落としてしまって、泣いているのよ。」
「もしも私がその鞠を取ってきてあげたら、貴女は私に何か下さいますか?」

カエルが言うので、姫は頷いて答えます。

「貴方の欲しいものは何だってあげるわ。私の着物だって真珠だって宝石だって。この金の冠だってあげる。」
「そんなものは何もいりません。それよりも私を貴女のお友達にして下さい。貴女の食卓に並んで座らせて、貴女の金のお皿で食べ貴女の可愛い杯で飲ませて下さい。
そうして夜になったら、貴女の小さなベットで寝かせて下さい。もしこれだけの事を約束して下さるのなら、泉に潜って金の鞠を取ってきましょう。」
「ええいいわ!鞠を取ってきてくれるなら、何でも約束してあげる。」

お姫さまは約束しましたが、心の中では

(おバカさんのカエルね。人間のお友達になろうなんてとんでもないわ)

とひどい事を考えていました。
そんな事も知らず、カエルはすぐに泉に潜ると約束通りお姫様の金の鞠を持って浮かび上がってきます。
お姫さまは喜んで、金の鞠を胸に抱くとそのままお城へ駈け戻ってしまいました。

「待って下さいお姫さま!私はそんなに早く走れません」

カエルが騒ぎましたが、お姫さまは後ろを振り返りもせず走ります。
そうしてカエルとの約束なんて、すっかり忘れてしまったのでした。

それからしばらくして、お姫さまが王様や姉のお姫さまたちと食事をしていると、ぺたりぺたりと大理石の階段を上ってくる者がありました。
足音は一番上まで上がりきると、とんとんと戸を叩きながら言いました。

「お姫さま、一番下のお姫さま。約束をお忘れですか?早くここを開けて下さい。」

55 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:26:08 ID:0EnU3l7k

それを聞いたお姫さまは真っ青になって、胸は不安でどきどきと早く拍ち始めます。

「どうしたね姫。外にいるのは誰だい?恐ろしい大男でもやって来てお前をさらって行こうとでもいうのかね。」

王様が笑って訊ねるとお姫さまは慌てて、泉に金の鞠を落としてしまいカエルに拾ってもらった事を話ました。

「だからお友達にしてあげるって約束してしまったの。だってカエルが水の中から出てこられるだなんて思わなかったんですもの。」
「一度した約束はきちんと守らなくてはいけないよ。さあ早く戸を開けておあげ。」

王様に言われ、お姫さまは席を立って戸を開けました。
するとカエルが飛び込んできて、お姫さまの足元にぴったりとくっつくと言いました。

「さあ約束ですお姫さま。私を食卓に上げて下さい。」

お姫さまがぐずぐずとしていると、王様がまたそうしてあげなさいとたしなめます。
仕方なくお姫さまがカエルを食卓の上に乗せると、

「二人で一緒に食べられるように、そのお皿をもっとこちらへ寄せて下さい。」

カエルは図々しく言いました。
お姫さまは嫌で嫌で仕方ありませんでしたが、カエルはとても美味しそうに皿の上のごちそうを食べます。
そうして食べるだけ食べると、

「ああお腹がいっぱいになってくだびれました。さあ私を貴女の寝室に連れて行って、二人で眠れるように絹のベットを整えて下さい。」

と言うものですから、お姫さまはとうとう泣き出してしまいました。
けれども王様は怒って言いました。

「困っている時に助けてくれた者に、後になって知らん顔をするのはいけない事だ。」

お姫さまは嫌々二本の指でカエルを摘むと、寝室へ連れて行って部屋の隅に置きました

それから一人でベットに横になると、またもやカエルが傍へ寄って来て言います。
「私も貴女のようにゆっくりくつろいで眠りたいです。早く寝台に上げて下さい。そうして下さらないと、お父様に言いつけますよ。」

それを聞くとお姫さまはついにすっかり怒ってしまって、カエルを乱暴に掴み上げるとありったけの力を込めて壁に投げつけました。

「本当にいやらしいカエルね。これで楽に寝れるわよ!」

しかしどうでしょう。
壁にぶつかったカエルは床に落ちた時にはもうカエルではなくなって、優しい瞳をした美しい王子様に変っていたのです。
王子様は悪い魔法使いに呪いをかけられカエルの姿にされていたのでした。

「あの泉から助け出してくれたのは君だけだったんだ。おかげで呪いが解けた。有難う。」

王様のはからいで王子様はお姫さまのお婿さんになり、末永く幸せに暮らしたという事です。』

56 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:27:25 ID:0EnU3l7k

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
この中身を見るに、ハインリヒが出る話と出ない話で書き換えが行われている。

念の為出る方の話も調べ、ページを画像として保存しておく。
――――どちらの話にしても、出てくるのは「蛙」、そして「姫」と「王」。

人が蛙になる。 蛙が人に戻る。
人と動物が入れ替わる、変えられる話というのは世界中に存在している。

                           アーキタイプ
言ってしまえばそれらは異類婚姻譚に類する【原型】としてはオーソドックスなもの。
日本で言えば鶴の恩返し、或いは浦島太郎等。
動物そのまま、というよりは人として変化した、化身として姿を現す話は日本に多く見られる。
外国であれば――専門というわけではないのだけど――どちらかと言えば、動物そのものが行動を起こすケースが多く見られる気がする。

それらを根底に添えた、《泡禍》であるのならば。
起こり得るのは……やはり、『蛙』という事になるのだろうか。
《異端》であるのか。
《潜有者》であるのか。
それは、調べてみるまでは分からないけれど。

くすり、とリーチェが微笑みを漏らす。
対面の席、誰もいない事を良い事に――或いは、誰かが居たとしても――席に腰掛け、こちらを見つめている。

57 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:29:04 ID:0EnU3l7k

・ ・ ・ ・
視界の隅でそれを捉えながら、子供舌だと笑われる要因の一つであるように。
砂糖と牛乳を大量に使用した珈琲を一口呷る。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
彼女が見ている限り、俺は絶対に狂えない。
《断章》が抱える副次的な効果による他の《泡》への耐性でなく。
既に死ぬ寸前まで至った精神の歪み故でなく。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
出会ってしまった《泡禍》の結末で、狂って逃げ出そうとしても逃げ出せなかった事に寄る、もうひとつの《効果》故に。


逃げ出すことは出来ず。
立ち向かう事も、人の身では限度があり。
それでも尚、少女の形を持った《断章》は。
俺を未だに、《王子/騎士》として縛り続ける。
彼女を救えなかった王子として。
共に眠る事を望まれた騎士として。

      ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――――彼女と生涯を共にする王子として。

『次は――――。 ――――。 お降りのお客様は……。』

だからこその。
眠り続ける姫を、迎えに行けない『眠り姫』。
それが――俺を定義する名前だった。

/ side3に続く

58 ice ◆53Ok1gX4xs :2018/06/11(月) 21:30:20 ID:0EnU3l7k
以上です。
次の話ははつかねずみがやってきた頃に。

59 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/11(月) 21:33:26 ID:DOsA6oB6


60 小さな名無しさん@この板は300レスまで :2018/06/11(月) 22:31:32 ID:Ee0nTz4Q


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