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渡来船2

1カサブタ:2012/03/06(火) 22:56:29
※注 この小話は、過去に愛璃さんが某サイトにて投稿したシリーズを私が脚色したものです。
オリジナルの渡来船2とは一部設定が異なります。

2カサブタ:2012/03/06(火) 22:57:27
とある夏の夜、ここはハンガリーの片田舎ホロウ・クイ。ある夜、この人里離れた寒村の中心にある古城で盛大なパーティが開催されました。

宮殿の豪華な広間では紳士淑女たちが軽やかにステップを踏んで、
華やかに仮面舞踏会が繰り広げられていた。
その中でも一際めだったカップルが広間の中央で踊っていた。

一人はこの城の城主であり、仮面舞踏会の主催でもあるキルシュ伯爵である。由緒正しい貴族の血を引く伯爵であり、有数の大富豪でもある彼は、この古城でまさに中世の貴族さながらの悠々自適な生活を送っていた。彼は道楽好きで知られ、今では村の数少ない行事であるこの仮面舞踏会も元々は彼の思いつきで始められたものだった。

身長が180センチくらいある大柄な体格の持ち主であり、豊かな黒い髪は腰のあたりまで長く伸び、顔立ちも端正ですごく凛々しかった。きめ細かな白い肌に厚みのある口唇は、真っ赤で力強さが感じられた。

もともと病弱だった彼は、数年前まで病気療養中で暫くこの舞踏会にも姿を現さないでいたものの。今ではそれが嘘であったかと思うくらいに回復して周囲を驚かせたものでした。

黒い燕尾服の上に黒いマントを羽織り、そして黄金仮面の奥の瞳は優しく淑女を見つめていた。
そんな瞳に見つめられるとどんな女性でも彼に魅了されることだろう
事実、この仮面舞踏会に出席している大半の女性は彼のファンだった

今宵、伯爵の相手となった淑女の方は、危なっかしいステップで彼についていこうと必死で踊っていた。彼女にとって今日は、記念すべき舞踏会デビューの日でもあった。
今年数え年で17歳になり、名前はマリアといいます。町にある宿屋を死んだ両親に代わって姉とともに切盛りするしっかり者の少女であり、チャーミングで器量よしの看板娘だ。 もちろん、普段はこんな舞踏会とは無縁で、仕事以外では、読書することと絵を描くことくらいが楽しみのごく普通の町娘でした。実は今回の舞踏会も、招待状は姉に届いたのですが、優しい姉は彼女にチャンスを譲ってくれたのだった。

彼女にとってキルシュ伯爵とダンスをするなんて夢のような状況でした。
彼女の今まで知っている伯爵というのは、まわりの女性達が黄色い声をあげては噂しあっている、そんな姿だけでした。
男性を知らない彼女にとっては、初めて憧れた男(ひと)でもあったのです。

3カサブタ:2012/03/06(火) 22:59:24
「よりによって舞踏会デビューの日に、伯爵様のお相手だなんて・・・」

嬉しくて飛び上がって喜びたい反面、回りの女性達からの厳しい視線を仮面越しからでも感じられます。
そんなプレッシャーの中、彼女のかわいいフリルのついた純白のドレスは、室内の熱気と冷や汗でぐっしょりと濡れてしまいました。

「きゃあ!」

伯爵とリズムをあわせようと必死だった彼女だったのですが、微妙にタイミングが狂ったのです。
足を床に下ろした瞬間、自分のドレスのスカートを踏んで、バランスをくずしてしまったのです。

「おっと、大丈夫ですか?お嬢さん」

「あッ、大丈夫です!」

広間の床に倒れそうになった彼女を伯爵が支えて優しく抱きしめたのでした。

「踊り疲れたみたいですね!私も疲れたから、すこし中庭でやすもう」
「・・・はい、伯爵さま」
まわりの女性達から冷ややかなそして妬ましい視線を感じる中、両肩を優しく抱く伯爵さまの手からは、
白い絹の手袋ごしでも温もりを感じることができたのです。

「今夜の月はいつにもまして輝いている。
お譲さんのその美しさが、月の女神アルテミスを嫉妬させるのだろう・・・」

「そんな嫉妬だなんて・・・」

「だって、そうだろう。私達が広間から出るとき、あそこにいたすべての女達の想いがわからなかったのかい?」

「・・・・・」

伯爵はワイングラスに赤ワインを注ぐと、私に手渡したのでした。
その時の私の気持ちは複雑にゆれ動いていた・・・。

「美しくなるには、どうしたらいいと思う?」

私は伯爵さまに質問されたが、なんて答えていいのかわからず、グラスに注がれたワインを見つめていた。

「美しい」ってどういうことだろう?・・・今までそんな事すら考えもしなかった。
伯爵は答えに窮してる私をみていたのだが、おもむろに庭先に行くとたくさんある赤い薔薇を1本摘んできた。

「答えは、目の前にあるよ」

そう言うと私に薔薇を渡してくれました。
私はおもむろにそれを受け取ったのです。

4カサブタ:2012/03/06(火) 23:00:37
「痛ッ!」

無用心に受け取ったので、なんと薔薇のトゲで右手の人差し指を刺してしまったのです。
人差し指から血がにじみはじめてきたのです。
それをみた伯爵さまは私の前に跪くと、傷ついた右手をつかんできました。
その時です!
私の血を見た伯爵さまは不気味に笑い出したのでした!!

「ふふふッ、ふはははッ!」

そして、私の顔を見上げたのです!
あーなんてことでしょう・・・神様・・・!
あの優しかった仮面の奥の瞳は真っ赤に充血し、厚みのある口唇からは2本の長く大きな牙が伸びていたのでした!!

「きゃあ!」

私はびっくりして伯爵さまのつかんでいる右手をふりほどこうとしましたが、できませんでした。
人間の力ではない信じがたいような力を感じたからです。
すると伯爵さまはつかんでいる私の右手を、おもむろに自分の口唇に押し付け、血を吸い始めたのです。
伯爵さまに吸血されるたびに、私は今までに味わった事のない感覚が全身を襲ってきました。

「ああん・・・」

「おかしくなりそう・・・」

イッてもイッってもその感覚がさざなみのようにやってくるのです。

「・・・はッ、はく・・しゃく・・・さ・・・ま・・・」

黒く揺れ動く伯爵さまの長い髪をみつづけながら、
私の視界は真っ白になって、気を失いました・・・。

5カサブタ:2012/03/06(火) 23:01:53
2

「う、ううっ・・・」

少女が意識を取り戻したのは、あたりの闇がまた一段と濃くなった頃でした。
呻き声を発しながら上半身を起こした少女は、キョロキョロとあたりを見回しました。

「・・・ん」

マリアが見たものは窓が一つもない石造りの部屋でした。
部屋の中は冷たく張り詰めた空気が漂っていました。
部屋の四方には松明の明かりが煌々と照らしだされていて、
樹脂が焦げるかすかな音だけが聞こえてきました。
マリアは静寂に息苦しさを感じ、ごくりと唾を飲み込んだのでした。

「ここはどこ?」

なんとマリアが寝かせられていた場所は、大きな石の上だったのです。

(なぜ私、こんな所で寝ていたんだろう?
そうだわ!私は憧れていた伯爵様とダンスして踊ったんだっけ!そして・・・)

マリアは優しかった伯爵様が欲望を剥き出しにして変身していく姿を思い出して身震いするのでした。
そして、さらに自分の身体が震えているのは恐怖の為だけではないことに気づきました。
(え・・・? な・・・なにこれ)

シーツが掛けられていたために分かりませんでしたが、起き上がって冷たい空気に触れたことで自分が裸である事にようやく気づくのでした。
(わ・・・わたし、何をされるんだろう・・・。 怖い・・・。なぜわたしがこんな酷い目にあわないといけないの・・・)

その時でした!
2つの黒い影が部屋に入ってきたのです。
それは床に引きずるほどの長く黒いマントにすっぽり身を包んでいました。
1人はキルシュ伯爵本人で、もう1人は深くフードをかぶっているため顔までは見えませんでしたが、
姿から見て女性であることは想像がつきました。

「ふふふッ。 お目覚めかなお嬢さん。我が城へようこそ。」

伯爵の声をきいたマリアは背筋が凍る思いでしたが、勇気を出して言い返しました。

「私をどうするつもり・・・? どうしてこんなことをするの?!」

「おやおや・・・、これは驚いた。 大抵の娘達は恐怖のあまり声すらも上げられないというのに。
これは有望かもしれないな、ローズよ。」

伯爵に寄り添う、ローズと呼ばれた女性はクスリと笑いました。

この女も伯爵とグルなのか・・・。彼と同じ黒いマントを着ている所をみると彼女も吸血鬼?
一体、彼らはどうして私を連れてきたのだろう? まさか、私の血を吸うために?

「ふふふッ、この状況にあっても思考することをやめないか。実に素晴らしい娘だ。
どうして私がダンスの相手にあなたを選んだかお答えしましょうか?」

・・・!!
(なぜ私が考えている事が、伯爵様に伝わったのだろう・・・
伯爵様が本当にヴァンパイアだから・・・?)
そんな疑問をよそに、伯爵は真相を打ち明けたのでした。

「あなたのご察知のとおり、私はヴァンパイアなのだよ。とはいえ、元々は人間だがね…。

知ってのとおり、ヴァンパイアは人間とは違う。
人間以上に完全に近い存在だ。人間では持ち得ない強大な力を持ち、他の生き物のように死ぬことも無い。素晴らしいとは思わないかね?
私もかつてはおとぎ話だと思っていた。しかし、私はこのローズと出会ったことがきっかけでヴァンパイアが実在することを知り、その魅力に心を奪われてしまったのだ。
しかし、残念なことに今世界にいる多くのヴァンパイアは到底、知的とは言い難い、醜く、荒々しい化物だ。 

ここにいるローズも私もそんな現状を憂慮している。本来、ヴァンパイア達は彼女のように美しく、神に等しい崇高な存在であるべきなのだ。」

伯爵は、揚々と演説を続ける。ローズは黙っていたが、その目はまるで品定めをするようにマリアに注がれている。

6カサブタ:2012/03/06(火) 23:03:47
「私は、恥知らずなヴァンパイアが増えている原因の一つは、彼らを統率する存在がいない為だと考えている。 そこで私は彼女に提案したのだ。本当にヴァンパイアに変える価値のある者だけを選定し、その者達でいわゆる支配層を作ろうとな。

では、その価値ある者たちの基準とは何かと考えた時、私とローズは一つの結論に達した。
人の生血の中でも最高の質を持つ者たち・・・。すなわち若い娘こそが相応しいと考えたのだ。
そう、例えば君のような・・・。」

マリアは衝撃を受けた。 私の血を吸うことが目的ではなく、私を仲間にするのが目的だったなんて。

「古今東西の吸血鬼に関する物語では、処女が犠牲になることが多いのは知っているね? それにはちゃんとした理由があるのだよ。
純潔な娘は生命の根源に近い存在。
我々、ヴァンパイアの生命の力は質のいい純潔な娘の生き血をいただくことによって、より長く生き長らえることができるのだ。 そして同様に、女性がヴァンパイアに変わると、総じて強い魔力を持つことが私の研究により分かっている。 美しく汚れのない体こそ、強い生命力が溢れ、ヴァンパイアの素体として絶好なのだよ。

今夜のパーティは町の娘たちの中でも一際美しく芳醇な血を持った者を選定するために開いた。
そして、君は並居る美しい少女達の中から見事に選ばれたのだ。
光栄に思っていいぞ・・・ふふふッ

しかし、本当は君の美しい姉を招待した筈なのだが、どういう因果か君が来てみたら姉以上に優れた資質を持っているとはな。 どうやら君は運命に導かれたようだ。」

それを聞いたマリアは毅然とした態度でいいかえした。

「だったら何なのよ! わたしにこんな思いさせるなんて、許せない!!
何が運命よ!! 早くお家に返して!!」

「ここまで聞いてもなお物怖じせんか。 なんて聡明なお譲さんだ。
君はきっと素晴らしいヴァンパイアになるだろうよ。・・・ふははは!」

「バカにしないで!! 私は貴方と違って貧しい家の出だけど誇りはあるわ。
吸血鬼になんか絶対になるつもりは無いわ。」

「そうか・・・、ならばよかろう・・・。 まずは君にヴァンパイアになることの素晴らしさを教えてあげるとしよう。 ローズよ、任せてもいいかな?」

「はい、わかりました伯爵さま」

キルシュ伯爵の隣にいたローズという黒マントの女は、フードをあげるとマリアを見たのだった。

「・・・・・」

フードをあげたと同時に、ローズの長い髪の毛がサラサラとなびいた。
腰まであるそのしなやかな黒髪は、美白の肌とあいまってとても美しかった。
そして美白肌の顔は化粧をしているのだろう・・・目蓋を紫色に染め、口唇はまっ赤に塗っていた。
年の程はマリアの姉と大差無いように見えるが、その化粧のために妖しい美しさが漂っている。
憂いを含んだ暗い表情は、その神秘性をいっそう際立たせていた。
闇の誘惑に魅せられた者の美しさだ。

「マリア・・・。あなたはここで儀式を受けるのよ・・・。そして私達の仲間になるの・・・。」

女はマリアの瞳を見つめはじめたのでした。

「いけない・・・」

マリアは身の危険を感じたのですが、時既に遅し・・・体が金縛りにあって動けなくなったのでした。

「うふッ、恐がらなくていいのよ、マリア」

ローズの瞳はまっ赤に充血して口唇からは大きな2本の牙が伸びてきたのです。
そして妖しく微笑みながら、マントの裾を掴んで両手を広げてみせました。
なんと黒マントの下は全裸だったのです!

7カサブタ:2012/03/06(火) 23:05:26
病的なまでに白い彼女の肌は、月明かりを帯びて青白く不気味に輝いていました。

「うふッ、かわいらしい子。あなたがあんまりカワイイから
もうこんなに濡れてきちゃったわ…。」

ローズは股間に手を宛てがうと、マリアの目の前で陰部を拡げて見せた。
そこは彼女の白い身体の中にあって彼女の唇に負けず劣らず赤く輝いており、溢れ出た汁でしっとりと濡れていました。

「な・・・何をする気なの?」

マリアはまだ強がって見せますが。自分に迫ってくる不気味な女に恐怖を隠せないでいました。

「ふふふッ、流石に自分と同じ女に犯されることには戸惑いを隠せまい。
安心しろ。彼女は並の男とは比べ物にならないくらい女の悦ばせ方を知っている。
ローズよ。この娘をおまえの虜にしてやるがよい!」

「うふふふ・・、言われずとも・・・、 こんな可愛らしい子を目の前にしては、私の疼きも抑えようがありませんわ。」

ローズはマントを大きく広げると、そのまま覆い被さるようにマリアの身体を包み込み、抱き竦めました。

「きゃああっ!!」

黒いマントがマリアの身体を隙間無く巻き込み動きを封じます。ローズの肌がマリアに密着し、またその温もりと匂いはマントを通して、マリアの全身を包み込んできたのです。

「まぁ・・・、なんて滑らかなのかしら・・・。 それに温かいわぁ。 
とても若々しさに満ちて、いつまでも抱きしめていたくなるわ・・・。」

「あッ・・あ」

シュルル・・・サワ、 シュル・・・シュルル・・・

ローズが身体を上下に揺するたびに彼女の肌やマントが擦れあい、マリアの身体はぴくッ、ぴくッっと反応してしまいます。同じ女に、しかも吸血鬼に抱かれる、おぞましい状況だというのに最初に感じていた嫌悪感はだんだんなりを潜め、代わりになんともいえぬ気持ちよさを感じ始めました。

(なに・・・・・・、この感じ・・・・・・っ!! そんな・・・どうして私、こんな気持ちになるの・・・。)

マリアの身に今まで感じたことのない疼きが生じました。あそこから熱い汁が溢れてきてローズの身体にも飛び散ります。皮膚の上を伝って落ちる温かい液体に、ローズはマリアの心が傾き始めていることを感じとりました。

「い・・いや・・・・・・、 あぁ・・・。」

「うふふ・・・、すぐに慣れろとはいわないわ・・・。 ゆっくりと私の温もりに沈めてあげる・・・。」

ローズはまるで我が子を労るように優しくマリアを抱きしめ続けました。彼女の顔を引き寄せて自分の乳房の中に埋めると、マリアの震えはだんだんと小さくなって行きます。

マリアは精一杯の抵抗をこころみても体はもうローズの虜、豊満な美肉の誘惑にかないませんでした。我慢できなくなったマリアはとうとうローズの大きな乳房に頬を擦り付け乳首をくわえ込むと、
頭を左右に振りながら乳首を力強く吸っては舌で舐めあげたのです。

「あんッ・・いい・・気持ちいいわ・・マリア・・」

「んぁ・・・、ああ・・・っ わたしも気持ちいい・・・、もっと抱きしめてください・・・・・・。」

見た目は若い身体だというのに、ローズの赤い乳首の先からは濃い母乳がとっぷりと流れ出てきました。マリアはそれをごくごくと飲み込んでいきます。ですが乳房を口いっぱい頬張っても、そこから溢れ出るミルクを飲み込んでも、今のマリアには全然ものたりず、もっともっとローズの胸が、身体が欲しかったのです。

とうとうマリアはヴァンパイアの手に落ちたのでした・・・。

8カサブタ:2012/03/06(火) 23:09:40
3

それから2年後、日本にて

「ヴァンパイアとは孤独であり、永遠の愛のさすらい人・・・ヴァンパイア・キス」

わたしはいかにもありがちな映画広告から目をそむけると、
ミントの香るタバコの煙を胸いっぱいに吸い込んだ。
ふぅーッ!

「そうよね、ヴァンパイアほど魅力的で美しい存在はないものね! しかし・・・」

ここは東京は下北沢の一角にあるBAR渡来船。
わたしはこのBARの女船長で穂積みゆき。
もちろん船長っていっても、本物の船を操縦するわけではありません。
ちなみにこのお店は、かつて私の両親が経営していましたが、今は私が総支配人です。
店内は15、16世紀の渡来船をイメージしたつくりになっています。
女の子船員達(クルー)の制服は海軍のセーラー服風にできていて可愛く、
お客さまに大人気なのです。
常連客の中には、この制服姿の女の子を見たいがために通っている方もおられるらしいのですが・・・。

「ねー、カズ君!」

わたしの表の顔は女船長ですが、じつは裏の顔も持っているのです。

「ヴァンパイア・ハンター!!」

わたしの住む世界には「ヴァンパイア」はあたりまえのように存在し実在しているのです!
あたりまえのように存在すると言っても、裏の世界を知っている特殊な存在きりこの事実は知らないのです。
表世界の住人達にしてみれば「ヴァンパイア」という知識はあるのですが、
存在しているという事実はもちろん知りません。

わたしの職業である「ヴァンパイア・ハンター」はお祖母さん、母親、そしてわたしへと受け継がれてきました。
代々直属の女系に受け継がれてきているのです。

なぜ、女ばかりかって…? そりゃぁ、吸血鬼達は乙女の生血が大好物だからです。 自らの若々しい身体と生血をエサに吸血鬼達を誘き寄せて、油断したところを一気に突くのが我が家秘伝の猟法なのです。

とはいえ、別にヴァンパイア・ハンターだけがヴァンパイアを狩っているわけではありません。
世界中の宗教団体、特にキリスト、ユダヤ、イスラムといった教会には、公にはされていないものの大抵「化け物狩り」専門の戦闘集団を有しています。
その規模と戦闘能力たるや恐るべきもので、一国の軍隊にも匹敵すると言われています。

一方、ヴァンパイア・ハンターはと言うと、教会のような大きな組織に依存するわけでもなく、信仰する神がいるわけでもありません。
単純に日銭を稼いで生計を立てるため、もしくはヴァンパイアに対する私怨のために魔物狩りを営んでいる者達が多いのです。

前者が軍隊ならば、後者はいわば傭兵。 
依頼があればすぐに駆けつけて魔物をやっつけます! 

しかし、同業者だからといって仲がいいわけではなく、金のために魔物狩りをする私達を、教会は快く思ってはいないようです。
かくいう私もある事情から教会とは犬猿の仲なのですが・・・。

あと私達の仕事は、ヴァンパイアをこの世から抹殺(=存在をなくす)することを目的としてはいません。
教会のように大きな組織の中にはそれを目標としている所もありますが、我々はちょっと違います。
ハンターの仕事は悪さをするヴァンパイアをその都度討伐するという形になることが主で、表世界に生きる住人をいかにヴァンパイアの魔の手から守るかが問題なのです。

9カサブタ:2012/03/06(火) 23:13:30
ヴァンパイアは「永遠の若さ」を求めて、獲物の生き血や精気を吸うことにより、
この世に存在しつづけられるのです。その為には、あらゆる手を使って人間から「永遠の若さの源」を奪うのです。
それが「ヴァンパイアの意思」でもあるがゆえ、ヴァンパイア本体は人の形をしているとは限らないのです。

前回の事件がそうでした・・・。
ヴァンパイアの本体は黒いサテンのマント。
そのマントのなかに「ヴァンパイアの意思」が秘められていたのです。
事件の主犯だった黒百合は、まったくその事実を知りませんでした。
知りようがなかったからです・・・。

黒百合・・・、本名、黒川由里子は政界や経済界の重鎮も御用達の高級コールガールでした。
彼女は元々は普通の人間でしたが、このマントを羽織ったがために「ヴァンパイアの意思」に体が強く支配されて、女吸血鬼と化してしまったのです。
黒百合にとってみれば天から災が降り注いだようなものです。
女吸血鬼となった黒百合は、表の人間を無作為に襲っては「永遠の若さの源」を奪っていったのでした・・・。
どうしてヴァンパイアの本体が黒いサテンのマントに乗り移ったのか、また黒百合がどこでそれを手に入れたのかはわかりません。それは目下調査中なのです!

ただ心強いことに、こちらにはヴァンパイアの存在をいち早く察知できる切り札があります。
それはずばり「ヴァンパイアの意思」を感じ取ることができる仲間の存在です。
今ここにはいませんが、そろそろひょっこり顔を出す頃では無いでしょうか。

そして頼れるかは分からないけど中々役に立つ仲間がもう一人、もっともこいつは有事の時意外はまったくのダメ人間なのですが・・・。
前回の事件で彼を囮に使ったことが、わたしにとって間違いでないと考えたいですけどね。

「ね〜、みゆきさ〜ん。なに考え事してんの〜? 話に加わってよー。」

前回の事件ではかなり頑張ってもらったけど・・・、
わたしって男をみる目がないのかしら・・・(泣)。

わたしの目の前のカウンター席に座って、楽しそうにビールを飲んでる男ッ!

「美樹ちゅわ〜ん、お酌して〜〜。」

そー、こいつ。 カウンターを挟んで目の前に座ってるから嫌でも目に飛び込んでくるこいつ! 
こいつは飲めもしないのにお酒好きで、可愛い女の子さえいればどこにでもほいほい遊びに行く奴なのです。
最近、会社からリストラされたらしく暇なものだから、毎日うちの店に入り浸りだし・・・。
さっきから女の子船員(クルー)にあおられながら飲めもしないお酒を懲りずに飲んでるし・・・、みてるだけで頭痛が・・・。

「なぁーに美樹ちゃーん、さっきクルーのコに聞いて驚いたんだけどぉー。
最近、彼氏と結婚したんだってー!?」

「あー誰だー、カズ君にわたしが結婚したこと教えたのぉー!」

「ありゃ!?マジに結婚したんだぁー!おめでとーッ!!
えーとそれじゃあー、美樹ちゃんを祝してどーんっと俺がクルーみんなの分のビールおごちゃう!!」

「きゃーごちそーさま!ありがとうカズ君」

「えーとそれじゃあー、美樹ちゃんと彼氏・・・じゃなかった旦那さまの幸せにッ!乾杯ッ!!!」

「かんぱーい!!」

「ごくッ、ごくッ、ぷはーッ!最高にうまいっす!」

そんなお調子者のカズ君を見ていた みゆきが我慢できなくなったのだろう、嗜めた。

「ほらカズ君ったら、あんたそんなに飲めないんだから、ほどほどにしときなさい!(怒)」

「美樹ちゃーんの幸せのために、オレのんでるっす!だから大丈夫っす!オレも幸せっす!」

「はいはい!」

今までカズ君のことを心配してたあたしがバカだったか・・・はぁー!
まー酔っ払い相手にマジになってもしゃーないし。

「ところでカズ君、この映画広告はどうしたの?」

さっきカズ君がヴァンパイア映画を見に行こう!とわたしを誘ってくれたものでした。

「もちろん みゆきさんと映画みたいから映画館からもらってきたんですよぉー!
その広告には割引券もついているからぁー、お得なんですよぉー!
それにぃー」

意味ありげな視線を 私に投げかけるカズ君・・・。 も〜言葉なんて必要ないくらい下心丸出し。

はぁー!(ため息)

軽い眩暈を覚える みゆきだった。

10カサブタ:2012/03/06(火) 23:19:41
「こんばんはー」

おっと、あの声は・・・

「あら、いらしゃいアイ。今帰り?」

「そーでーす、みゆきさん。
あたし朝から何も食べてないの・・・だから、もーふらふらなのー。
みゆきさんの手作り料理で、体があたたまる美味しいもの食べたいなぁー」
ばたむ!

「ありゃ!?アイ、手作り料理ならお金を出してくれれば何でも食べさせてあげるわよ。
ただお店の入り口でへこまれても困るわよー!カズ君、アイんとこ手伝ってあげてやって!」

(私も少女時代は自分のボディーラインが気になってよく食事減らしたりしてたっけ。
母さんからは、食わないと力が出ないぞとか説教くらってたわね。)
みゆきは藍ちゃんの様子を伺いながらも、純情だった頃の自分を重ね合わせては苦笑いするのでした。

「アイちゃん、だいじょーぶー?」

よっぱらった赤い顔のカズ君が心配そうに藍ちゃんに声をかけました。

「あッ、カズ君」

「ほら、そんな所にいると他の人が通れないよ」

カズ君は優しく藍ちゃんを助け起こしました。

我らが「渡来船」のヒロインでありマドンナでもある吸血娘、水無月 藍ちゃん。
彼女は有名私立女子高、蓮見台女子高校に通う2年生のお嬢様。
学校では17歳で通っているのですが、ハーフ・ヴァンパイアなもので詳しい生年月日は彼女自身も把握していないのです。

実は彼女と私はかなり長い付き合いで、一時期一緒に暮らしてもいたのですが、彼女の希望によって現在は明大前あたりに一人暮らししています。
毎週火曜と木曜は学校帰りに駅前の劇場内の書店でアルバイトをしており、仕事上がりにちょくちょく顔を出してくれるのです。

そして、さっき言っていた我らが切り札こそほかならぬ彼女であります。彼女はヴァンパイアであることを生かして、私には到底出来ないことを色々やってくれます。
例えば、前回の事件の原因となったマントは彼女の魔力により封印され、厳重に保管されています。
もし、人間である私が触ってしまったら今度は私がマントに心を支配されかねませんが彼女なら平気なのです。
藍ちゃんの魔力は並のヴァンパイアとは比較にならない程強く、他のヴァンパイアの意思に支配されることはまずありません。

また、彼女はヴァンパイアの意志を感じることができます。これはハンターである私にとって非常に助けになる能力です。
なにしろ、人の中に紛れたヴァンパイアを見つけることは困難であり、大抵のハンターは犠牲者が出てから存在に気づくことが多いのです。
しかし、私は彼女のおかげで事件を事前に防ぐことができます。 まさに、ハーフ・ヴァンパイアさまさまですね。


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