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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13

1リリカル名無しA's:2010/03/29(月) 23:42:31 ID:lCNO3scI0
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。

注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。

・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/

詳しいルールなどは>>2-5

244誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:16:48 ID:dR2I84lo0

(ケッ……オレ様が言うのも何だが、こいつは壊れ過ぎてやがる)

 そう。今のかがみに、まともな判断は出来ないだろう。
 見境なしに他者を殺し回って、自殺することしか考えていない。
 冗談では無い。自殺なんてされたら困るのだ。
 こっちはゲームに勝ち残ってでも、相棒の元に帰らねばならない。
 それなのに、相棒の元に帰る前に宿主が死んでしまっては話にならない。

(こりゃそろそろ本気で他の宿主を探した方がいいな)

 これ以上壊れ過ぎたかがみと共に行動するのは御免だ。
 こいつの考えをもう少しまともな状態まで戻せるのなら話は別だが、それでなくたってこいつは役立たず過ぎる。
 スバルには逃げられる。浅倉にはデッキを奪われる。カリスには惨敗する。
 かがみがまともにバクラの望む結果を導き出せた事など皆無と言っていい。
 今回の戦いは、態々アドバイスまでしてやったのに負けたのだから、尚更始末に負えない。

(何でもっと上手い戦い方が出来なかった? 人質でも取りゃ状況は変わっただろうがよ)

 それはつい先日までは一般の女子高生として過ごしていたかがみには酷な評価であった。
 そもそも、かがみの身体能力では例えホッパーに変身してもカリスに勝つ見込みなど無いに等しいのだ。
 まともな戦い方すらも知らない素人が、本物の戦士であるカリスに勝てる訳が無い。
 そんな事は最初から解り切ってはいた。
 だが、だからこそクロックアップの使い方は間違えて欲しく無かった。
 あそこをああすれば良かったとか、そんな事を考え出したらキリが無い。
 それ程にかがみの戦闘は落ち度だらけだった。
 上手く立ち回れば、状況はいくらでも変わった筈なのだ。

(いや……今の宿主サマじゃ無理か)

 かがみは只でさえ連戦で疲労が溜まっていた。
 続いてカリス、スバル、ヴァッシュとの乱戦、直後のクロックアップ。
 この時点でかなりの疲労が蓄積されていたであろう。それは仕方が無い。
 だが、その直後にもう一度クロックアップを使ったのは誤算でしかなかった。
 ライダーシステムは、使用者の身体に負荷が掛る前にクロックオーバーを告げる。
 疲れ切った身体でクロックアップを使っても、加速出来る時間はたかが知れているのだ。
 それをカリスへの一撃の為に使用。それも、その一撃で仕留めきれなかった。
 後は知っての通り、圧倒的な戦闘力の差でカリスに敗北し、気絶してしまった。
 挙げるとするならクロックアップ辺りがミスだったと言えるだろうか。
 気絶状態のかがみから身体を奪う事は出来るが、このダメージではまともに動けないだろう。

(だが、これはチャンスかも知れねぇ)

 誰にも見えはしない笑みを浮かべ、考える。
 かがみは気絶してしまったが、現状でかがみを殺そうという人間はいない。
 スバルもヴァッシュも甘ちゃんだし、カリスも悪ぶってはいるが悪にはなりきれない。
 ならば、こいつらは気絶したかがみをどうするだろう。
 考えるまでも無い。まず間違いなく、かがみの戦力を奪って拘束する筈だ。
 後は千年リングを誰かになすりつける事さえ出来れば、めでたく宿主交代。
 バクラもこんな思いをしなくて済む……のだが、問題が一つ。

(スバルの奴……オレ様に気付いてなきゃいいが)

 そう、スバルだけはバクラの存在に気付いているのだ。
 千年リングの存在にさえ気付かれなければ、後はどうとでもなる。
 これは掛けにも近いが、果たして――。

245誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:23:14 ID:dR2I84lo0





「仮面ライダー!!」

 全てが終わった後、カリスの傍らへと歩み寄って来たのは、スバル・ナカジマであった。
 その表情にはやけに嬉しそうな色が浮かんでいるが……何を考えているのか、解るのが嫌だった。
 こいつはまず間違いなく、あの時のギンガと同じように自分と組もうとするだろう。
 だが、それは早計だ。カリスとしては、まだ人間になったつもりはないのだから。
 何せ、自分は人間とは呼べない程、今まで無駄な戦いを繰り返してきた。
 自分は、人間ではないし、アンデッドでも無い。それで十分だ。
 もしも変な勘違いをしているのならば、迷惑極まりない事だ。

「勘違いするな。俺は人間になったつもりはない」
「ううん、違う……貴方は人間だよ。言い逃れなんてさせない」
「……ギンガに似て、面倒臭い奴だな」

 だが、今までとは何かが違うのも確か。
 不思議と頭ごなしに否定をする気にはならないのだ。
 これが人間であるという感覚であるのなら、それも悪くは無いかもしれない。
 人間らしい感情とは不思議な物で、あれだけ燻っていたジョーカーを抑え込む事が出来たのだ。
 それに、今の戦闘で内から湧き上がってきた力は、今まで感じた事のない物だった。
 ギンガの強さ……それは、人間の心。少しだけ、理解出来た気がする。
 だけど、だからこそ悩む。化け物の自分が、そんな心を持って何になるのだろう。
 そんな事を考えていた始の耳朶を叩いたのは、一人の男の声だった。

「俺も、あんたは人間だと思うぜ」
「お前は……」

 にこやかな笑顔と共に現れた男の名は、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
 エンジェルアームの使用制限が限られている上、仮面ライダーが相手では銃など意味を成さない。
 それ故に、今の戦いでは静観に徹するしかなかったのだが、プラントとしての本来の力は計り知れない。
 化け物の強さと、人間としての心の強さ。その両方を兼ね備えているのが、ヴァッシュという男。

「ああ、俺の名前はヴァッシュ・ザ・スタンピード。で、あんたの名前は?」
「相川……始」
「じゃあ始、これからは俺達と一緒に、戦ってくれるって事でいいんだよね?」
「何だと……?」

 人懐っこい笑顔には、何の影も見られない。
 こいつは本気で自分を信用して、自分と一緒に戦おうというつもりなのだ。
 何て御人好しだろうと、始は思う。否……こいつもギンガと同じ、馬鹿なのかも知れない。

「断る。俺は誰とも組まない」
「そんな……! もう残った人数だってそんなに多くないんです。
 目的が同じなら、一緒に行動した方がいいに決まってる!」
「俺とお前達の目的が同じだとは限らない」
「まだそんな事を……」

 やれやれとばかりに、ヴァッシュが溜息を吐いた。
 だけど、スバルの言い分は確かに始にも理解出来る。
 残り少ない参加者が組むことで安全がより確保されるのは間違いない事だ。
 だけど、始は素直にこいつらと組む気になれずにいた。

「そうだ。そいつと組むのは止めておいた方がいい。そいつは死神だからな」

 次に言葉を発したのは、新たにやってきた第三者であった。
 咄嗟に身構える一同をよそに、眼鏡を掛けた優男は不敵な笑みを崩さない。
 始は思う。ああ、またしてもこの男と出会ってしまった、と。
 そして、出会ってしまったからにはもう、戦いは避けられない。

246誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:27:56 ID:dR2I84lo0
 
「貴様……カテゴリーキング!」
「久しぶり……でもないな、ジョーカー」

 スバルとヴァッシュを差し置いて、二人が言葉を交わす。
 カリスの赤い複眼と、眼鏡の奥の金居の視線が交差する。
 視線に込められているのは、周囲にも伝わる程にピリピリとした殺気。
 カリスの怒りと、金居の憎悪にも似た感情がぶつかり合っていた。
 そんな金居が、まるで嫌味でも言う様に呟いた。

「何だ、随分と疲れているようじゃないか、ジョーカー?」
「関係無い。貴様を倒すにはこれで十分だ」
「ほう……随分とナメられたものだな? いいだろう、ここで決着を付けてやる!」

 刹那、金居の身体に異変が起こった。
 黄色のハイネックに、黒のジャケット。それら衣服の下から溢れ出す、黄金の輝き。
 やがて金居の身体を覆い尽くした光が、もう一つの姿を象って行く。
 それは、もう何度も目撃して来た、宿敵たるアンデッドの姿。
 頭部の仮面から覘く二つの黄金の角は、まさしくクワガタムシのもの。
 ギラファノコギリクワガタの祖たる不死生物、ギラファアンデッド。
 両手に双剣を構え、深く息を吐いた――その刹那。

「ストップ! ストーップ!」
「止めて下さい、二人とも!」

 戦場に響く、場違いな声。
 男の声と女の声が、ほぼ同時に周囲の者の耳朶を打った。
 だけど、それについてはもう考える必要もない。
 こんな事を言う人間は、ここには二人しかいないからだ。

「スバル、ヴァッシュ……お前たちは手を出すな!」
「そういう訳には――」
「手を出すなッ!!」

 低く、ホテルのロビーに響き渡る様な怒号。
 漆黒の仮面の下、カリスが凄まじいまでの剣幕で声を荒げたのだ。
 流石にこの人声には驚いたのか、スバルとヴァッシュが黙り込む。

「いいな、手を出すなよ……」

 今度は少しだけ穏やかな語調で告げる。
 スバルはまだ何か言いたげにこちらを見ていたが、言葉が出て来ないのか黙り込んだままだ。
 ヴァッシュはヴァッシュで、カリスとギラファの間の空気から何かを感じ取ったのか、それ以上何も言わなくなった。
 こういう時、いくつもの修羅場をくぐり抜けて来た男はやはり状況の理解が早いものだ。

「……OK、始。ただ一つ約束してくれ」
「何だ」
「誰も死人は出さない。それだけだ」
「ああ、俺は誰も“殺さない”」

 それを聞いたヴァッシュの表情が僅かに綻んだ。
 本当に御人好しなんだな、とカリスは思う。
 だけど、一応嘘は言っていないつもりだ。
 そもそもアンデッドに死と言う概念は無い。
 カードに封印される事はあっても、本当の意味で死んでしまう事は永久に無いのだ。

「だからお前たちはそこの女を連れて、ここから立ち去れ」
「そんな……! ギン姉の事だって、始さんの事だってまだ聞いてないのに……!」
「いいから行けッ!」

 気絶したままのかがみへと一瞬視線を流し、カリスが絶叫した。
 スバルにヴァッシュの二人がかがみを連れて移動してくれるなら、もう憂いは無い。
 何にも気を使う事無く、全力でカテゴリーキングと戦う事が出来るからだ。
 だけど、スバルにとってそれは不本意らしい。

247誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:33:31 ID:dR2I84lo0
 
「私は貴方から聞き出さないと行けない事がまだ沢山ある! ここでお別れなんて出来ません!」
「……戦いになれば、俺の身体は俺の意志とは関係なく動く。どうなっても知らないぞ」
「大丈夫です。私は、そう簡単には死にません」
「ならば勝手にしろ……どうなっても知らないぞ」

 もう、こう言うしか無かった。
 このスバルという人間は、ギンガと同じだ。
 言った所で人の自分の信念を曲げたりはしない。
 ならばギンガの時の様に勝手に着いて来られるよりもマシだ。
 最初からスバルが居ると解って居るなら、スバルに危害が及ばないくらいには気を配れるだろう。
 あとはヴァッシュ達がそれでもいいと言ってくれれば、話は纏まるが。

「ヴァッシュさん、スカリエッティのアジトに向かえば、きっと私の仲間がいます。
 私も後から始さんを連れて向かうから……ヴァッシュさんを信じて、あの子を任せます」
「……約束するよスバル。君の仲間は、死なせない」
「ありがとう、ヴァッシュさん。それから、かがみさんのデイバッグを私に下さい」
「これかい?」

 言いながらヴァッシュが投げ渡してくれたのは、柊かがみが持って居たデイバッグ。 
 スバルの考えはこうだ。まずデイバッグを預かることで、かがみから戦力を奪い、自分の戦力を確保。
 かがみが危険人物である事はヴァッシュも解っているだろうから、拘束は怠らない筈だ。
 後はヴァッシュとかがみの二人に先行してアジトへ向かって貰い、こなたと合流。
 上手くいけばこなたがかがみを説得してくれる……と、信じたい。
 まずは投げられたそれを右腕で掴み取り、中身の確認をする。
 使えそうなものは……レヴァンティンとライディングボードのみ。
 どちらも使い慣れた武器ではないが、無いよりはマシだろう。
 それから、あと二つ……どうしても気になる装備がある。

「それから、かがみさんが巻いてるベルトと首からかけてるリング。
 ベルトは私に。リングは……十分気を付けた上で何処かへ処分して下さい」
「リング……? これに何かあるのかい?」

 投げ渡されたのは、無機質な銀色のベルト。
 ZECTと描かれたそのバックルに視線を落とし、それをデイバッグに突っ込んだ。
 それから、かがみの首に未だかけられたままのリングに視線を向ける。
 先程かがみと交戦した際に感じ取った、もう一つの意思。
 かがみを戦いに追い込んだのであろう、邪悪な意思。
 それが宿っているであろうリングを、放っておく訳には行かない。

「そのリングには何者かの……多分、かがみさんをここまで追い込んだ奴の人格が宿っています。
 迂闊に触って意識を乗っ取られたりしないように十分気をつけて、二度と誰も触れないように処分して下さい」
「OK、わかった……こいつは俺が責任を持って処分する」
「それから、アジトに行けばかがみさんの友達がいます。その子ならきっと、かがみさんを元に戻せるから……
 その子に会ったら、こう伝えて下さい。『かがみさんをよろしく。私もすぐに向かう』と」
「わかった……死ぬなよ、スバル」

 ハイ、と一言返しながら、スバルは再び身構える。
 目前に居る二人の脅威。仮面ライダーカリスと、黄金のギラファアンデッド。
 いつ飛び出してもおかしくないこの状況、どちらも動かずに様子を見ているのは自分達に気を使っているのだろうか。
 どちらが先に動く? そんな事を考えながら戦況を眺めるスバルの耳朶を叩いたのは、ギラファの声だった。

「待て、そこの……ヴァッシュだったか?」
「……!?」

 ギラファから、呼びかけられた。
 瞬間、反射的にスバルとヴァッシュの動きが止まる。
 今まさに柊かがみを背負って駆け出そうとしていたヴァッシュと。
 いつどちらが先に動いても対応出来るように身構えていたスバル。
 いきなり現れた相手に、いきなり呼び掛けられる義理などは無い筈だ。
 二人とも、何事かとギラファアンデッドに視線を向ける。

「あんたたちの仲間からの伝言だぜ。このホテルの外で待ってるから、合流しよう……との事だ」
「何……!?」
「八神はやてと言えば解るか。つい先ほどまで、一緒に行動していたんでね」
「八神部隊長と……!? 何でお前が……殺し合いに乗ってるんじゃないのか!?」
「生憎、俺が興味を持つのはそこにいるジョーカーだけなんでね」

 片手に持った双剣をカリスに向けながら、悠然と語る。
 どうやらこの化け物は、今すぐに自分達を殺すつもりはないらしい。
 何故なら、こいつの目的はどういう訳か相川始ただ一人だから。
 だが、それならそれでハイそうですかと許す訳にはいかない。
 カリスからは、まだ聞かねばならない事が山ほどあるのだから。

248誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:38:38 ID:dR2I84lo0
 
「さぁ、これで前座は終わりか。始めようぜ、ジョーカー……俺達の戦いを」
「望むところだ……俺とお前は、戦うことでしか解り合えないッ!」

 腰を低く落とし、醒弓を構えるカリス。
 双剣を振り上げ、戦闘態勢へと移行するギラファ。
 二人の不死生物のバトルファイトが、ここに始まろうとしていた。
 闘争本能の赴くままに戦いを始めてしまえば、二人はもう止まらない。
 だけど、カリスには今までに無かった力がある。
 人間としての心。人の想い。人の愛情。
 栗原晋が託してくれた、家族への愛。
 ギンガが託してくれた、妹と仲間達への愛。
 それらがカリスを突き動かす限り、こんなアンデッドには負けない。
 嫌……負ける訳には行かないのだ。
 ここで決着を付けて、全ての宿命を断ち切る。
 その為に、仮面ライダーカリスは走り出した。


【1日目 夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ1階ロビー】

【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】変身中(カリス)、疲労(小)、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、ジョーカー化への欲求徐々に増大
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:?????????
 1.カテゴリーキングを叩き潰す。
 2.スバルの事は絶対に死なせたくない。
 3.エネル、赤いコートの男(=アーカード)を優先的に殺す。アンデッドは……。
 4.アーカードに録音機を渡す?
 5.どこかにあるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 6.ギンガの言っていたなのは、はやてが少し気になる(ギンガの死をこのまま無駄に終わらせたくはない)。彼女達に会ったら……?
 7.何やら嫌な予感が近付いてきているのを感じる。
【備考】
※ジョーカー化の欲求に抗っています。ある程度ジョーカーを抑え込めるようになりました。
※首輪の解除は不可能と考えています。
※赤いコートの男(=アーカード)がギンガを殺したと思っています。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。

【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、変身中(ギラファUD)、ゼロ(キング)への警戒
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、
    デザートイーグル@オリジナル(5/7)、首輪(アグモン、アーカード)、
    アレックスのデイパック(支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)
    【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、
    ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
    【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3))
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.ジョーカーとの決着を付ける。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
 4.同行者の隙を見てUSBメモリの内容を確認する。
 5.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。

249誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:41:22 ID:dR2I84lo0
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】戦闘機人モード、疲労(小)、全身ダメージ小、左腕骨折(処置済み)、ワイシャツ姿、若干の不安と決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.始と金居の戦闘を見届ける。どちらも殺させはしない。
 2.戦いが終われば、始を連れてスカリエッティのアジトへ向かう。
 3.六課のメンバーとの合流。つかさとかがみの事はこなたに任せる。
 4.準備が整ったらゆりかごに向かいヴィヴィオを救出する。
 5.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 6.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 7.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
 8.ヴァッシュと始の件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

250誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:50:17 ID:dR2I84lo0
 ホテルの外は、未だに漆黒の闇に包まれていた。
 だけど、物陰に潜む八神はやてに危害は及んでいない。
 輝く雷は一片たりともはやてには届いていない。
 雷鳴もまた、遠くで鳴り響いているのみであった。

「頼むでヴィヴィオ……もう少し持ち堪えてや」

 祈る様に呟く。
 鬼神たるエネルに今現在立ち向かっているのは、同じく鬼神たる存在。
 とうに優しさを枯らしてしまった、最強最悪の魔道師。
 それは、古代ベルカにおける聖王(ザンクトカイザー)の姿を取り戻した者。
 純粋な戦闘力だけで考えれば、なのはですらも勝てるかどうか解らない程の猛者。
 聖王・ヴィヴィオ。それがエネルと戦闘を繰り広げている少女の名前だった。

 さて、はやてがここで待って居るのには、理由がある。
 周囲の電気を吸収したエネルが現れた時には、万事休すかと思った。
 冷静に考えて、明らかに勝てる訳が無いのだ。
 魔力もまともに残って居ない自分と、あんな優男(金居)一人では戦力が乏しすぎる。
 仮面ライダー二人までなら相手に出来ると豪語しながらも、金居はエネルとの戦闘を避けた。
 その辺りからも金居はエネルに敵わないのだという事は容易に想像できた。
 ならばどうする。スバルは味方に引き入れたいが、乱戦中。
 かと言ってホテルの外にはエネルが待ち受けている。
 このままスバルの戦いが終わるのを待っている内にエネルに殺されてしまえば話にならない。

 そんな時、現れたのが聖王ヴィヴィオであった。
 現れたヴィヴィオは、何の迷いもなくエネルとの戦闘を開始した。
 当初はヴィヴィオでも勝てないのではないかと思ったが、それは大きな見当違いだ。
 今のヴィヴィオの戦闘能力は、どういう訳かエネルにも匹敵するポテンシャルを引き出していた。
 それどころか、傍から見ればヴィヴィオの方が有利なのではないかと思える程であった。
 またコンシデレーションコンソールで狂わされたのか、誰かの死を切欠に壊れたのかは知らないが……。

 一方で、ヴィータとはヴィヴィオを守るとの約束した覚えもある。
 だけど、今がそんな事を言っている場合ではないのは明らかだ。
 まず第一に、助けが必要なのであればあんな化け物と戦わないで欲しい。
 第二に、現状では確実にヴィヴィオの方が自分たちよりも強いのだ。
 最早自分が態々守ってやる必要もないだろう。
 ともすれば、これは大きなチャンスと鳴り得る。
 ヴィヴィオが時間を稼いでくれるし、上手くいけばヴィヴィオがエネルを倒してくれるかもしれない。

251誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:51:34 ID:dR2I84lo0
 
 と、そんな状況下で、金居はすぐに次の作戦を立案した。
 金居の目的はスバル達と戦っている黒いライダーだけだという。
 他の奴と戦うつもりはないし、黒のライダーが居る以上、スバル達にも興味は無い。
 故に、ヴィヴィオがエネルを引き付けてくれている間に、金居がホテルに潜入。
 機を見計らって、黒いライダーに戦闘を吹っ掛ける。
 その際スバル達には、「外ではやてが待っている」などと伝えて貰う。
 そしてこの場での戦闘は金居に任せて、スバル達には先に離脱を促す。
 簡単な作戦だが、この状況ではこれが最善の策だと思えた。

 そして数分後、ホテルから出て来たのは、一人の少女を背負った男であった。
 まるで箒のような、黒髪トンガリ頭にサングラス。赤いコートを靡かせて、男は走る。
 何者かと目を細めるはやてに、先に声を掛けて来たのは男の方であった。

「やぁ、あんたが八神はやてかい!?」
「え……えぇ、そうですけど……」

 男はとても悪人とは思えない、ともすれば馬鹿とも思えるような口調だった。





 時は数分前に遡る。
 ヴァッシュを殺す為に、参加者を皆殺しにする為に。
 それだけを目的にホテルの目前までやってきたエネルは、一人の少女と出会った。
 全身を漆黒で塗り固めた、金髪の少女。緑と赤のオッドアイには、気味が悪い程の虚が宿っていた。
 闇に溶けるその姿は、まるで周囲を凍てつかせるような気迫を放って居た。
 そんな第一印象を抱いた後に、エネルは自分の考えを否定した。
 神たる自分が、こんな小娘一人に何を考えているのだ。
 一撃で殺して、終わりにしてやればいいだけの話ではないか。

 そう判断して、エネルは片腕を挙げた。
 同時に、エネルの腕は雷と化し、天を埋め尽くす雷雲へと昇って行く。
 それから間もなく、空全体がぴかりと光って――計り知れない威力を秘めた雷が、少女へと降り注いだ。
 ごろごろ、ごろごろと。周囲の電気を自分の電気を合わせた一撃は、生半可な威力では無い。
 アスファルトを焼いて拡散した電力は、再び自分の身体へと舞い戻る。
 無限ループの雷地獄。あんな小娘一人が耐えきれる訳が無い。
 そう思っていた。

「ほう……?」

 雷が止んだ後、小娘はそこに変わらず立ち尽くしていた。
 エネルが殺そうとした相手・聖王ヴィヴィオは、聖王の鎧という先天固有技能を持っている。
 それはあらゆる障害から聖王を守る、強固な盾となりて、雷からヴィヴィオを救った。
 エネルは知らない。ヴィヴィオの命を削るレリックが、同時にヴィヴィオを強くする事を。
 身体に深刻なダメージを与える一方で、ヴィヴィオの命の炎を燃やし尽くさんと稼働している事を。

「まずはお前から殺してやる……!」

 ヴィヴィオが、憎悪を吐き出すように絶叫した。
 瞳には僅かな涙を浮かべて、その表情を醜く歪ませて。
 虹色の魔力光を宿した鬼神・ヴィヴィオの命はもう、長くは持たない。
 消えゆく命の輝き。その恐ろしさを、出会った参加者全てに刻みつける。
 そして、愛する者を傷つけた全ての参加者を血祭りにあげてやる。
 例え死んでも構わない。例え地獄に落ちても構わない。
 それだけの決意が、ヴィヴィオを動かしているのだ。

252誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:52:05 ID:dR2I84lo0
 
「神に対して、何たる不遜。ならば教えてやるぞ小娘よ……神の恐怖を!」

 今度は、エネルが腕を突き出した。
 刹那の内に、エネルの腕が極太の雷へと変化した。
 それは周囲全ての電力を吸収し、瞬く間に膨れ上がる。
 放たれたのは、アスファルトを抉る程の威力を秘めた電撃。
 神の裁き――エル・トール。

「ハァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 ヴィヴィオから吐き出される、咆哮。
 放たれるは、眩い閃光。ヴィヴィオの命の輝きを体現したような虹色の輝き。 
 それらが同じく、極太の奔流となってエネルの雷を打ち消したのだ。
 これには流石のエネルも驚かずには居られない。
 何たることかと、大口を開けるエネルに対し、先に行動したのはヴィヴィオ。

「ママ……ママ……ママ……ママ……!」

 狂ったような笑み。狂ったように叫ぶ、愛しい人の名前。
 アスファルトを蹴って、ヴィヴィオがエネルへと一直線に走る。
 それを阻止せんと、周囲の雷雲が無数の電撃を放電するが……。

「解ったよ……ママ!」

 右へ跳び、左へ跳び、上空へ跳び上がり、回転する。
 見事なステップ、見事な動きで、エネルの攻撃を全て回避。
 いくつか小さな攻撃が命中するが、そんなものは聖王の鎧の前には無意味だ。
 虹色の輝きが電撃を弾き、ヴィヴィオの前進を手助けする。

「ママが……私を守ってくれてる! 私を見てくれてる!」

 口元を大きく歪め、狂った笑いを作り出す。
 なのはママの気配を感じる。フェイトママの気配を感じる。
 それだけじゃない。ザフィーラや、死んでいった他の人間。
 それら皆が、ヴィヴィオのすぐ傍に付いてくれている。
 だからヴィヴィオは、何も恐れはしない。

「ずっと……ずっと……一緒に居てくれたんだね……なのはママ!!」
「消え去るがいい……!!」

 愛する者の名を絶叫しながら、エネルの眼前まで迫る。
 今度はエネルが両手を掲げ、その電力を放出する。
 エネルの電撃の前には、何も残らない。アスファルトも、周囲の建物も。
 全てを焼き尽くす神の閃光が、至近距離でヴィヴィオへと放たれる。

「うぁぁぁぁあああああああああああああああああああッ!!」
「ひぃ……ッ!?」

 だけど、ヴィヴィオは止まらない。
 今度の雷は、確かに聖王の鎧を貫いた。
 ヴィヴィオの漆黒の騎士甲冑を焼き、インナーを露出させる。
 全身にダメージを負いながらも、ヴィヴィオの猛攻は止まらない。
 これが、死さえも恐れぬ聖王の力。エネルには絶対に不可能な芸当。
 例え自分が死に、地獄に落ちる事さえ厭わない究極の聖王の姿。
 虹色の魔力を拳に宿らせて、ただ力任せに振り抜いた。

253誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:52:41 ID:dR2I84lo0
 
「地獄聖王(ヘルカイザー)を、ナメるなぁぁぁぁぁッ!!」
「わぶ……っ!?」

 最早自分は、聖王(ザンクトカイザー)などでは無い。
 ザンクトカイザーをも超えた、最強にして究極の闇。
 神すらも、地獄すらも恐怖の対象には鳴り得ない。
 その想いをぶつける様に、振り抜いた拳をエネルの顔面に叩き込んだ。
 情けない声を上げながら、エネルの身体が後方へと吹っ飛んで行く。
 何度も何度も硬いアスファルトに身体をぶつけながら、エネルの身体が醜く舞う。

「第二打ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいい!?」

 逃がしはしない。すぐにエネルに追い付いたヴィヴィオが、その脚を振り上げた。
 虹色の魔力光を宿した一撃が、エネルの腹を両断せんと振り抜かれる。
 咄嗟に雷によるバリアを張るが、そんなものは気休めだ。
 ヴィヴィオの威力を殺すには至らず、エネルの身体が遥か上空へと舞う。
 だけど、まだヴィヴィオの気は済まない。こんなものでは、ママの無念は晴らせない。
 半ば八つ当たりにも近い想いで、ヴィヴィオは飛び上がった。

「第三打……第四打ッ!!」
「ぐ……ぅ……!」

 一撃目は、跳びひざ蹴り。
 空中で受身など取れる訳もないエネルの腹部に、その膝を叩き込んだ。
 その口から夥しい量の鮮血を吐血し、エネルが白眼を剥いた。だけど、まだ終わらない。 
 両手の指を硬く絡ませて作り出したハンマーを、矢継ぎ早にエネルの背中目掛けて振り下ろした。
 比較的筋肉の多い背中で受ける分、まだダメージは少ないが、それでも今のエネルには十分過ぎる一撃。
 エネルの身体が、真下のアスファルトに向かって加速。
 どごぉん! と、馬鹿でかい破砕音と共に、エネルの身体がアスファルトを抉った。
 これで殺してやる。

「五連打ァァッ!!」

 アスファルトへと着地するよりも先に、ヴィヴィオが両手を突き出した。
 眩く輝く輝きは、聖王だけに許された最高純度の魔力光。
 それらを解き放つように、エネルに向かって発射――する、筈だった。

「う……ぐ、ッ!」

 ヴィヴィオの動きが止まった。
 吐血だ。エネルにも負けず劣らず、明らかに命に関わる量の鮮血。
 同時に、ヴィヴィオの胸を襲う激痛。心臓が鼓動する度に、痛みが募る。
 咄嗟に心臓を抑えた事で、空中で体勢を崩してしまった、その刹那。

「この……不届き者がぁぁぁぁああああああああああああああッ!!!」
「な……ぐ、あぁぁあああああああああああああああ!?」

 遥か頭上の天空から。エネルのいる真下から。周囲の雷雲から。
 ほぼ360度から、目を眩ます程の輝きがヴィヴィオを襲った。
 それらは体調を崩した今のヴィヴィオが受け切るには、あまりに協力過ぎる。
 聖王の鎧である程度はダメージを軽減できても、それがヴィヴィオにとって大きな一撃となる事は間違い無かった。

 閃光が晴れた後に、どさりと音が鳴る。
 ヴィヴィオの身体が、アスファルトへと落下した音だ。
 あれだけの一撃を受けたのだ。最早五体を動かす事すらもままならないだろう。
 ……否、緑と赤のオッドアイはまだ見開かれていた。
 憎々しげにエネルを睨むその表情に、確かな憎悪が込められていた。

「ほう……まだ戦えるか。いいだろう、ヴァッシュより先に、貴様から裁いてくれる」

 赤い剣をその手に構え、エネルがヴィヴィオに視線を送る。
 対するヴィヴィオも、まだ戦意を失ってはいない。まだ輝きを消してはいない。
 その眼は未だにギラギラと光り輝いているし、滲みだす戦意だって生半可ではない。
 痛む身体に鞭を打って、もう一度二本の足で立ち上がった。

「お前なんかに負けてられない……ママが、見てるのに……!!」

 現実も、五感も、思考も、遠のいていく。
 ただ沸き上がる憎悪と怒りに身を任せるままに、ヴィヴィオは再び拳を構える。
 心臓の痛みは、もう引いている。
 今は只、全身が心臓になったように鼓動を鳴らしているだけだった。

254誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:53:43 ID:dR2I84lo0
 

【1日目 夜中】
【現在地 F-8 東側(ホテル付近)】

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】究極聖王モード、血塗れ、洗脳による怒り極大、肉体内部に吐血する程のダメージ(現在進行形で蓄積中)
【装備】レリック(刻印ナンバー不明/融合中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式、フェルの衣装、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:なのはママとフェイトママの敵を皆殺しにする、その為に自分がどうなっても構わない。
 1.エネルを殺して先に進む。
 2.天道総司を倒してなのはママを助ける。
 3.なのはママとフェイトママを殺した人は優先的に殺す。
 4.頃合を見て、再びゆりかごを動かすために戻ってくる。
 5.ヴィヴィオにはママがずっとついてくれている。
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※ヴィヴィオに適合しないレリックが融合しています。
 その影響により、現在進行形で肉体内部にダメージが徐々に蓄積されており、このまま戦い続ければ命に関わります。
 また、他にも弊害があるかも知れません。他の弊害の有無・内容は後続の書き手さんにお任せします。
※副作用の一つとして、過剰なまでに戦闘力が強化されています。しかし、力を使えば使う程ダメージは大きくなります。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。

【エネル@小話メドレー】
【状態】ダメージ・疲労(極大)、激怒、『死』に対する恐怖
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0〜2
【思考】
 基本:主催含めて皆殺し。この世界を支配する。
 1.神の威厳を守るため、ヴィヴィオを殺す。
 2.ヴァッシュに復讐する。
 2.ヴィヴィオに対する恐怖。
【備考】
※黒い鎧の戦士(=相川始)、はやてと女2人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています。
※なのは(StS)の事はうろ覚えです。
※なのは、フェイト、はやてがそれぞれ2人ずついる事に気付いていません。
※背中の太鼓を2つ失い、雷龍(ジャムブウル)を使えなくなりました。
※市街地と周囲の電力を取り込み、常時雷神(アマル)状態に近い放電状態になりました。
※吸収した電力で、僅かな傷や疲労は回復しています。

255誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:54:17 ID:dR2I84lo0
 

 森林の中を駆け抜ける影が二つ。
 一つは、紫髪の少女を背負った赤コート。ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
 一つは、管理局の制服に身を包んだ若き部隊長。八神はやて。
 少女を一人背負う事で、ヴァッシュの走る速度は著しく低下していた。
 だけど、魔法を抜けば一般人と変わり無いはやての速度に合わせるという意味では、それくらいが調度良かった。
 二人が目指す先は同じ。このマップ上に示された、スカリエッティのアジトだ。
 そこにスバルが言う仲間がいる。
 では、その仲間とは一体全体誰の事であろうか。
 生き残っている参加者から考えると、高町なのは辺りであろうか?
 もしもそうであれば、これ以上心強い物はない。が、必ずしもそうとは限らない。
 アジトに居るのがなのはなら、仲間などという間接的な表現を取る必要は無い筈だ。
 ストレートに「なのはさんがそこに居る」と言えば伝わるのだから。
 それらを踏まえて考えると、アジトに居るのははやても知らない第三者である可能性が高い。

「で、その子はどうするんですか?」
「スバルの仲間と会わせなきゃならない。俺はそうスバルと約束したから」
「わからへん……そんな危険人物を合わせる事に、意味があるんですか?」
「ああ、きっとね。スバルは無駄なお願いはしない……と思う」

 走りながら、はやては大きなため息を吐いた。
 何度か言葉を交わして解った。こいつもスバル同様御人好しタイプだ。
 態々「その子を仲間に会わせろ」と言うからには、何らかの策はあるのだろう。
 スバルの事だ、危険人物を改心させたいとか、大方そんな所だろう。
 だが、だとしたらそれは少々楽観視し過ぎではないだろうか?
 話を聞く限りでは、かがみという人間は相当な危険人物らしいが……。
 そんな不安を抱えたまま、はやて達は走り続けるのであった。


【1日目 夜中】
【現在地 D-9 森林】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、融合、黒髪化九割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish、アイボリー(5/10)@Devil never strikers
【道具】なし
【思考】
 基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。
 1.スバルを信じて、スカリエッティのアジトへ向かう。
 2.柊かがみから戦力を奪った上で、スバルの仲間(=泉こなた)に会わせる。
 3.こなたに出会ったら、スバルからの伝言を伝える。
 4.首輪の解除方法を探す。
 5.アーカード、ティアナを警戒。
 6.アンジールと再び出会ったら……。
 7.千年リングには警戒する。
【備考】
※制限に気付いていません。
※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。
※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。
※暴走現象は止まりました。
※防衛尖翼を習得しました。

256誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:54:49 ID:dR2I84lo0
 
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(中)、魔力消費(大)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、
【道具】支給品一式×3、コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、
    トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、
    デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる
    首輪(セフィロス)、デイパック(ヴィータ、セフィロス)
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
 1.スカリエッティのアジトへ向かう。
 2.柊かがみは本当に大丈夫なのか……?
 3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
 4.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
 9.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
 10.金居の事は警戒しておく。怪しい動きさえ見せなければ味方として利用したい。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
 基本:ゼストに恥じない行動を取る
 1.…………
 2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する
 3.金居を警戒
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。

257誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 19:55:20 ID:dR2I84lo0

【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】気絶、疲労(極大)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、自分以外の生物に対する激しい憎悪、やさぐれ
【装備】千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、ホテルの従業員の制服
【道具】無し
【思考】
 基本:みんな死ねばいいのに……。
 1.………………。
 2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.そろそろ宿主サマを変えたい
 2.キャロが自分の世界のキャロなのか確かめたい。
 3.こなたに興味。
 4.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 5.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

258 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 20:03:34 ID:dR2I84lo0
これにて投下終了です。
言うなれば究極地獄聖王(アルティメット・ヘルカイザー・ヴィヴィオ)でしょうか。
調度ヴィヴィオもカイザーで身体にダメージ蓄積だったので、ずっとやりたかったんです。

今回の元ネタは仮面ライダーW風サブタイトルのみ。
「H激戦区/人の想いとは」「H激戦区/ハートのライダー」の二つがカリスメイン。
「H」は「HOTEL」の意と、「HEART」の意です。後はこじつけ臭いけど、「HUMAN(人)」とかもありかも知れません。
「誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE」「誕生、Hカイザー/神と聖王」の二つはヴィヴィオメイン(?)。
こちらの「H」はヘルカイザーの「HELL」の意です。単純です。

それでは、指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

259リリカル名無しA's:2010/07/09(金) 20:43:24 ID:CWO1f34M0
投下乙です。
うぉぉぉ、激戦未だ終わらずか!
遂に仮面ライダーとなった始、最終目的こそ未だ不明だけどひとまずギンガの想いが報われた気がする。
とはいえ、金居をどうにかしない事には先はないんですけどね。ジョーカー化の危険も消えたわけじゃないしなぁ。
一方、GX組は全滅したのにヘルカイザーは登場というわけでヴィヴィオ。そういや、GXのヘルカイザーも似たような状態だったなぁ。五連打か……なるほどキメラテック・フォートレス・ドラゴン(ヘルカイザーの切り札の1つ)じゃねーの。
エネルすら圧倒はしているけど内部からのダメージが深刻化しているのが……まぁエネルが勝とうがヴィヴィオが勝とうがマーダーである事に代わりはないんですけどね。
そしてバクラに見放されたアレ……というか、ヴァッシュもスバルもこなたに会わせれば大丈夫ってそんなの幻想だぞーそういう意味でははやてが正しいぞー、こなたオワタ……。
状況を整理すると

ホテル内部……スバル&始vs金居
ホテル近く……アルティメット・ヘルカイザー・ヴィヴィオvsゴッド・エネル
アジトへ移動中……ヴァッシュ&はやて&アギト他1名

……結局今回誰も死ななかったけど、危険は終わらないか……とりあえずスバルとこなた伏せやー! アレ(とU・H・Vと神エネル)は下手なマーダーよりも危険だー!

260リリカル名無しA's:2010/07/09(金) 21:35:01 ID:PgCNRaus0
投下乙です

激戦区の激闘はまだこれからって感じだな
始はとうとう仮面ライダーに目覚めたか。だが金居も一筋縄ではいかないんだよな
ヴィヴィオはお前はアスカかよw まずい、敗北フラグが立ったとしか見えねえw
どぐされかがみんは…とりあえずこなたと出合っても…でも何がが起こる悪寒がするわw

261リリカル名無しA's:2010/07/10(土) 01:02:36 ID:5h2am3/E0
五連打ってグォレンダァ!ってやつが元ネタ?

262リリカル名無しA's:2010/07/10(土) 01:11:01 ID:aNCwsSVkO
というよりグォレンダァの元ネタが五連打

263リリカル名無しA's:2010/07/12(月) 01:35:12 ID:P43ebYt.0
投下乙です
ついに始が仮面ライダーとして覚醒か
まだジョーカー化の可能性も残っていて予断を許さない状況だが感慨深いな
それにしてもはやて危なかったな
>海楼石はこちらにある。倒せない事はないだろうが、今はまだその時ではない。
頼りの海楼石はクアットロに奪われているでしょうがw

264 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/12(月) 02:18:13 ID:xJXYGvhs0
>>263
しまった……クアットロに奪われた事を完全に忘れていたorz
その一文に関しては、wiki編集の際にこちらの方で編集しておきます。
また、読み返してみたところ誤字脱字が多く、色々と思うところがありましたので、
今回も自分で細かな編集をした上でwikiに収録しておこうと思います。

265 ◆gFOqjEuBs6:2010/07/12(月) 02:21:25 ID:xJXYGvhs0
おっと……もう編集されていたのか。
度々申し訳ありません、後日細かな編集を加えておこうと思います。

266 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 15:52:00 ID:GPV1PITo0
八神はやて(StS)、柊かがみ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード分投下します。

267Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 15:54:30 ID:GPV1PITo0
「む……」
 意識を取り戻した時に真っ先に感じたのは口の中に広がる違和感、
 次に感じたのは肌を滑る風の冷たさ、
 周囲を見回すとそこは何も見えない平野であった。
「ふぐ……」
 喋ろうとしても声が出ない。何かを口に詰め込まれている様だ。
 身動きを取ろうとしても両手両足を何かに拘束されている為動けないでいた。
「はんはのほ……ふぇ!?」
 そして自分の姿を見て驚いた。身に着けている物を全て剥ぎ取られていたのだ。
 どうやら自分の身に着けていたホテルの服で拘束している様だった。
 当然、先程まで身に着けていた千年リングとベルトも無くなっている。
「ひゃぁほれは……」
 そして今自分の口に詰め込まれている物が何か気が付いた。それは――自分が身に着けていた下着である。
「はにはほほっはほ!!」
 怒り苛立つ中、

「お目覚めか?」
 目の前にはスバルと同じ制服を身に着けていた女性が小刀を構えて立っていた。
「おはよう、かがみん」
「はっ……はんはがははひを!」
「そう怖い顔するなや、ちょっと『お話』しようと思っているだけや」



 その女性の笑みはどことなく冷たかった――

268Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 15:58:45 ID:GPV1PITo0




















(はぁ……本当にどうしたもんかな……)

 八神はやては内心で頭を抱えたかった。その理由とは――

 今現在置かれている状況を整理しよう。
 先程ホテルアグスタ周辺に自分を含め8人もの参加者が集結した。
 その8人ははやて、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ、金居、相川始、エネル、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、柊かがみだ。
 ある者達はホテル内で戦い、ある者達はホテル外で戦い、またある者達は状況の動きを見ていた。
 その後、はやてとヴァッシュはかがみを連れてホテルを離脱しスバルの仲間が待つらしいスカリエッティのアジトへと移動していた。
 ちなみに、今現在もホテルでの戦いは続いている。

 次に、今現在も生き残っている参加者をはやての視点から整理しよう。
 放送時点で残り19人、その後ヴィータとアーカードの死亡を確認し残りは17人。
 なお、はやては気絶していた為先程の放送自体は聞き逃しているが、金居から大まかな内容である死亡者の名前と御褒美の話は聞いていた。
 では、はやて自身を除く残り16人を整理しよう。

 まず、現状殆ど情報が無い参加者がアレックス、アンジール・ヒューレー、泉こなた、天道総司、ヒビノ・ミライの5人。残念ながら敵か味方かの判断は不可能だ。
 次に高町なのはとユーノ・スクライア、断言こそ出来ないがこの両名が殺し合いに乗る可能性は低い。更に言えばその能力は高く是非とも合流し味方に付けたい所だ。
 問題人物の1人としてクアットロがいる。真面目な話、彼女のスタンス自体はある程度理解しているし、彼女と決裂したのもある種自業自得だったのも理解はしている。
 だがあの女の事、なのは達と合流して自分の悪評を振りまいている可能性が高く、自分達との対立は不可避だ。故に自身の目的達成の障害にしかなり得ない。何とかして排除したい所だ。

 ホテルでの戦いに関係のない9人の内これで8人。あとの1人に関してはある理由からひとまず外す。

269Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 15:59:45 ID:GPV1PITo0

 ここから7人は先の戦いの関係者だ。まずその内5人について整理しよう。

 まず、現在ヴァッシュに背負われているかがみだ。ヴァッシュによると殺し合いに乗っており先の戦いでスバル達3人を圧倒した緑の仮面ライダーという話だ。もっとも変身する為のベルトはスバルが預かっているらしい。
 ヴァッシュからの証言だけなので詳しい事は不明だがこの場に来てから各所で酷い目に遭い続け、妹である柊つかさも無惨に殺されたそうだ。
 それ故に殺し合いに乗ったと好意的に解釈する事も出来なくはない。しかし、一方で彼女がお人好しなヴァッシュ達を騙している可能性……いや、確実に騙していた。
 何しろ、スバルが危険人物という偽情報を伝えヴァッシュとの無用な戦いを起こし、乱戦に入った時には掌を返し皆殺しにしようとしたのだ。
 こんな危険人物を信用する事などはやてには無理だ。聞いた所、自暴自棄になり皆殺しにして自殺すると言い張っている。
 迷惑極まりない、そんなに死にたいなら誰にも迷惑かけずに1人で死ねと言いたい。
 スバルとヴァッシュによるとアジトで待つスバルの仲間ならばかがみを説得出来るらしいが、正直それも全く信用していない。
 どうせまた、こちらが隙を見せた所を裏切り自分達を一掃するのがオチだろう。
 真面目な話、早々に彼女を斬り捨てた方が良い。とはいえ、それをやろうとすればヴァッシュやスバル達と対立するのは明白、故にむやみに行うわけにはいかないのが辛い所だ。

 次に現在の同行者であるヴァッシュ、まだ詳しい情報交換はしていない為、その全貌は掴みきれてはいない。
 しかし、強敵とも言える先の仮面ライダーとの戦いでのダメージが殆ど無い事からその実力はトップクラスと言えよう。
 思考に関しても馬鹿すぎる程のお人好しなのは把握した。つい先程まで自分を殺そうとしていた相手を殺さず保護していたからだ。
 だが気になる事もある。殺し合いに乗らない人物でなおかつ凶悪的なパワーを持つ人物をそのまま殺し合いに放り込む事をするだろうか? 何かしらのデメリットを抱えてはいないだろうか?
 ヴァッシュ自身の頭髪にも違和感を覚えた。黒髪に約1割の金髪が混じるという不自然な髪色だ。何故彼はそんな不自然な髪型をしているのだろうか?
 これが今後にとって致命傷になる可能性はある。もっとも、これは現状些細な事ではあるが。
 むしろ問題なのはお人好しという点だ。折角敵にトドメを刺せる状況になってもこの男ならばそれを強引にでも止めかねない。
 それ自体は善行と言える。だがこの場では少々不味いと言わざるを得ない。危険人物を残しておいてその逆襲を受けて此方の戦力が削られるならむしろ逆効果だろう。
 とはいえ、ヴァッシュの思考そのものはなのは達に近い。下手にそれを咎めると自分が孤立するのは明白、故に現状ではその事について口出す事は出来ないだろう。

270Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:00:30 ID:GPV1PITo0

 続いてホテル外で戦闘中のエネルだ。言うまでもなく殺し合いに乗っている危険人物でその実力もトップクラス。
 真面目な話現状のはやて達に手の打ち様が無い以上、ヴィヴィオが倒してくれる事を期待するしかない。

 だが、そのヴィヴィオに関しても大きな問題を抱えている。
 何が原因かは不明だが彼女は聖王状態となっておりエネルに匹敵する力を持っていた。だがそれは必ずしも自分達にとって良い事ばかりではない。
 その最大の理由がヴィヴィオがほぼ無差別に殺意を向けていたという事だ。一歩間違えれば自分達にその殺意が向けられていた可能性がある。エネルとの戦いに入った事はむしろ幸運だったのかも知れない。
 一応、ヴィータからヴィヴィオを助けてと頼まれた事もあり、それが無くてもなのはの娘である彼女を助ける事についてはさほど異論はない。
 だが、あの状態のヴィヴィオを止めるなど自殺行為以外の何物でもない。悪いが今のヴィヴィオを助ける事は不可能と言って良い。
 とはいえ倒す事もまず不可能だ。エネルと同等もしくはそれ以上の強敵を倒す手など今の自分にはない。
 勿論、弱点も幾つかある。遠目で見たところ、今のヴィヴィオは感情の赴くままに全力で戦っていた。
 あんな状態で戦い続けて負担がかからないわけがない。断言も出来ないし何時になるかは不明ではあるが、戦い続ければその内ヴィヴィオは自滅するだろう。
 もう1点気になる事がある。それはヴィヴィオが持っていた鎌の様な武器だ。どことなく今自分が所持している憑神刀と雰囲気が似ていた。
 同系列の武器ならば、前述の仮説がより裏付けられる事になる。なにしろ憑神刀も強い力を発揮する反面、消耗が大きい武器だからだ。
 そういえば、クアットロが大きな鎌を持ったキャロに襲われたと言っていた。もしかするとあの鎌はキャロが持っていたものかもしれない。

 何にせよ、ヴィータやなのは達には悪いが両名の戦いにおける理想の決着は共倒れだ。
 仮にどちらかが勝った場合、勝者はそのままホテルに突入する可能性が高い。疲弊しているとはいえホテル内の連中にとってもそれは同じ。避けたい結末である事に違いはない。

 次はホテル内の金居と始の戦いの場に残ったスバルだ。
 残った理由は始を、いや始も金居も死なせずに戦いを収める為らしい。勿論、スバルの性格を考えるならばその行動自体は理解出来る。
 だが、正直悪手以外の何物でもない。金居の話から察するに両名の戦いは相手を完全に滅するものだ、両名とも死なせずという事はまず不可能だ。
 それでなくても金居と始がスバルに牙を剥けないとは言い切れないし、戦いの余波に巻き込まれて命を落とす可能性もある。
 運良くそれをどうにか出来たとしよう。だが、その後素直にアジトへ向かってくれるだろうか?
 いや、もしホテル近くでヴィヴィオが戦っている事を知ったら彼女を助けに向かうのは明白だ。
 なのはや自分ですら勝てない相手に向かうなど自殺行為以外の何者でもない。戦力としてはアテにできるのにどうしてこんな頭を抱える様な行動ばかり取るのだろうか?

271Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:01:15 ID:GPV1PITo0

 続いて金居だ。金居の実力については本人の言葉を信じるならば仮面ライダーに匹敵すると考えて良い。エネル程ではないとしても強者には違いないだろう。
 そして現状では自分達に協力する素振りを見せている事から利用出来ると考えて良いが、クアットロと似た性格である金居を完全に信用は出来ない。水面下では自身の優勝を目指す為に暗躍している可能性がある。
 状況証拠として、先程持っていなかった筈の銃がある。金居自身は拾ったと言っていたが、もしかすると密かに誰かを殺してそのボーナスで得た銃という可能性もある。
 とはいえ、現場を押さえたわけではない為これ以上は追求は出来ない。とりあえずボーナスで得たなら殺した人物は自分達の仲間ではない事を祈るしかない。
 何にせよ、金居自身も此方が警戒しているとわかっているならば下手な動きは見せないだろう。具体的に手を下すのは動きを見せた時だ、今はひとまずそれで良い。

 その金居が『人類全ての敵』と言っていたのが始だ。あの戦いの様子やヴァッシュの証言からも彼がスバル達と対立していた事は間違いない。
 しかし、その始がスバル達を助けあの戦いでの敵であったかがみを倒した事実がある。同時にスバルやヴァッシュの証言から彼は現状他の参加者を殺すつもりはないという話だ。
 つまり、金居の証言と違い味方になり得る可能性が高いという事だ。はやて自身金居の証言を鵜呑みにしているわけではない、貴重な戦力、得られる物ならば得たい所である。
 だが、『人類全ての敵』という言葉に引っかかりが無いわけではない。金居が無用な嘘を吐くとは思えない、その言葉の解釈次第では始が自分達に牙を剥く可能性は十分にあるだろう。
 月並みな言葉ではあるが始に対しても警戒はしておいた方が良い。元々敵対していたわけだ、不満を言われる筋合いはない。

 何にせよ、両名の戦いは不可避だ。どちらかが退場する可能性が高いだろうが、はやてとしてはそれでも構わないと思っている。
 どちらにも危険な要素がある以上片方が潰れる事はむしろ都合が良い。スバルさえ巻き込まなければ正直それで良いと考えている。

 だが、理想を言えば片方には生き残って欲しい。その理由がこれまで言及を避けてきたキングの存在だ。
 キングははやてが最初に出会った相手で彼に翻弄されたお陰でヴィータと仲違いをし、更に開始6時間を殆ど無為に過ごす結果を引き起こした。
 あの後、奴の動きは全く見受けられない。だが逆を言えば自分の知らない所でかき回しているという事だ。
 つまり、今現在もホテルの戦いに関わっていない8人の内の誰かに仕掛けているという事だ。クアットロといった危険人物を潰す事については一向に構わないが、なのは達を潰されるのは非常に不味い、何とかして早々にキングを排除したい所だ。
 では、キングを排除する手段に関してはどうだろうか? 実の所1つ気になる事があった。
 金居と話してわかったことだが、金居の口ぶりからどうやらキングを知っている様だった。確証こそ無いが元々の世界で敵対していた可能性もある。少なくても味方という事はないだろう。
 となればこういう話は成り立たないだろうか? 金居、キング、始の3名は互いを知っていてなおかつ敵対しているという事だ。
 つまり、金居と始のどちらかをキングに対するカウンターにすれば良いという事だ。
 幸い、金居も始も味方になりそうな感じではある。キングが元々の敵であるならばキングを倒す為に協力してくれる可能性は高いだろう。
 故に金居と始の戦いでは共倒れではなく片方に生き残って貰いなおかつスバルも無事な状態でホテルから離脱して欲しいという事だ。
 だが、その為にはどちらにしてもエネルもしくはヴィヴィオとの戦いを避けなければならない。とはいえ、金居はともかく始とスバルが素直に離脱してくれるとは思えないわけだが。

272Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:02:00 ID:GPV1PITo0







(全く頭が痛いなぁ……)

 ここまでの話だけでも現状が非常に厳しい事は理解出来ただろう。
 前述の通りホテルの戦い次第では貴重な戦力とも言えるスバル、始、金居の3名がエネルもしくはヴィヴィオによって潰される可能性が高いのだ。
 残り人数の少ない状況でこれ以上戦力が潰されるのは痛い。はやてが頭を抱えるのも理解出来るだろう。
 真面目な話、スバルぐらいはホテルから離脱して欲しかったというのが本音だ。アジトに仲間を1人向かわせているという話ならばなおの事だ。
(まぁ、私も全く失敗していないわけやないけどな)
 勿論、はやて自身にも全くミスがないわけではない。
 実はこうやって移動している最中に気付いた事だが、シャマルとクアットロと情報交換した際に罠ではないという結論を出していた事を思い出していた。つまり、金居に魔法陣が罠だと説明した際にはその事を忘れていたという事だ。
(その後、色々ありすぎて私自身も整理ついていなかったからな……嫌な夢も見たし)
 もっとも、魔法陣に関しては金居の助言があったので別段大きな問題はなかった。むしろ、その際に金居とキングの関係のヒントを得られた為、その意味では幸運だったのかも知れない。

(そんなことはひとまずどうでもええか……それに……)
 先程万一に備え武器を探した際に夜天の書を構えようとしていた。しかし、それに触れた瞬間何か嫌な予感がしたのだ。気のせいだろうと思ってはいたが、脳裏にある危惧が浮かんだのだ。
(あの餓鬼……夜天の書にいらん細工せんかったか?)
 思い出せばジュエルシードのエネルギーは全て使い切られていた。はやて自身はそれで安全に使えると考えており深くは考えていなかった。
 だが、こういう解釈は出来ないだろうか。夜天の書を使っていた人物、はやて自身名前は知らないが天上院明日香が夜天の書を自分に都合の良い風に使う為にジュエルシードを利用したという事だ。
 分かり易く言えば、かつての闇の書の様に改変を行った可能性があるという事だ。
(あの餓鬼は異常なまでに力を欲しがっていた……その辺の力を蒐集出来る様に改変した可能性は無いとは言い切れん……)
 力への渇望そのものははやて自身も望む事がある為それ自体を咎める気はない。しかしその為によりにもよって夜天の書を改変しようとした事が問題なのだ。
 かつての夜天の書が改変された闇の書は多くの深い悲しみを生んだ。はやて自身もその管制人格であるリインフォースとの辛い経験をしている為、それを痛い程理解している。
 長きの時間苦しみ続けて最後に散ったリインフォースの為にも二度と闇の書を生み出してはならないのだ。
(冗談や無い……そんな事許してたまるか……! あんな餓鬼の自分勝手な都合で闇の書が生み出されてなんてたまるか……!)
 心情的な問題はともかく、実際に改変された場合、殺し合い云々以前の問題になる可能性がある。
 勿論、プレシア・テスタロッサがデスゲームを壊す事態を許すわけはないだろうが、どちらにしても自分達の障害となる可能性は否定出来ない。
 少なくてもアーカード戦の時に使った際には別段問題は無かった。だが、夜天の書の安全が保証されたわけではない。表面上はそう見えても中枢が改変されている可能性はある。
 下手に改変された場合破壊したタイミングで周辺一帯を破壊に巻き込む可能性もあり安易に処分するという選択は取れない。もっとも、大事な夜天の書を安易に処分するという選択肢もないわけだが。
 理想は改変された部分を元に戻す事だ。今の夜天の書ははやて自身が作ったからそれ自体は可能だ。あとはそれを行える大規模な施設が必要となる。
 勿論、何の問題もない可能性もあるがはやて側から見た場合、専門の設備で調べなければそれも出来ないだろう。何しろジュエルシードによる改変だ、どうなっているかは想像も付かない。
(まぁ、私の考えすぎという説もある……というかそうであって欲しいけどな)
 勿論、夜天の書の改変云々ははやての過剰な警戒という説もある。だが、闇の書事件の当事者であるはやてがそれを警戒するなと言うのも無理だろう。
 どちらにせよ、夜天の書に関しては何処か専門の施設で安全を確かめる必要がある。運が良ければアジトでそれを行える可能性はある。

273Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:03:15 ID:GPV1PITo0

(まぁ、そのアジトが何事も無く使えるとも思えないのが問題やけど)
 今現在はやて達はアジトでスバルの仲間と合流する事が目的となっていた。同時にかがみにその人物と会わせてかがみを説得し改心させる手筈となっている。
 正直それがそのまま上手く行くとは思えなかった。そもそもスバルの仲間が無事にアジトに辿り着いている保証もないし、そのアジトが危険人物によって潰されている、もしくは牛耳られている可能性もある。
 仮に以上の問題が無くてもかがみの説得が上手く行くとは思えない。大体、スバルとヴァッシュは何をもって改心出来ると確信しているのだろうか?
 話せばわかるという単純かつ馬鹿な理由もあるだろう。だが、幾らスバルでも何の考えも無しに危険人物と他人を遭遇させるなんて考えない筈だ。つまり、高確率で説得出来る相手がいるという事だ。
(真っ先に考え付くのは家族……けど、彼女の家族らしき人物は死亡している……となると友達か?)
 はやてはその人物がかがみの友人だと推測した。ヴァッシュが名前を聞いていなかった為その人物が誰か全くわからないわけだが。
 では、説得は可能なのだろうか? 確かに説得出来る可能性は0ではない。しかし成功する可能性も100ではないのだ。
 スバルやヴァッシュと言った参加者を陥れる様な危険人物だ、説得された様に見せかけて隙を見せた所を一網打尽にする可能性が高い。
 それでも説得を繰り返すという理論もあるだろうが正直人の生死が懸かっている以上そんな余力は全く無い。たった1人の危険人物を改心させる為に何人もの貴重な戦力を減らす意味など無い。
(けどなぁ、絶対に私の方が間違っているって言われるに決まっているからな……)
 客観的に見ればはやての考えはある種正しい。しかし、スバルやヴァッシュははやての考えを否定し危険人物も絶対に殺したりはしないだろう。
 同時に恐らくはなのはやユーノもスバル達の考えを指示するのは想像に難くなく、かつてのはやてもスバル達の考えを指示していただろうというのは自分でも理解している。
 つまり、危険人物だからと言ってかがみを排除する事は現状難しいという事だ。かといって、説得が成功する保証も無く、どちらにしてもはやてが望まない展開となる可能性が高いとなる。

(胃薬が欲しくなってきたな……)







「……んでだよ……なんでアイツが……」
 そんな中、はやての傍で声が響く。
 声の主は融合騎である烈火の剣精アギトだった。ヴィータの死後ずっと彼女の死を悲しみデイパックの中で泣いていたのだ。
 いや、それだけではなく先の放送で彼女の仲間であるゼスト・グランガイツとルーテシア・アルピーノの死亡も伝えられていた。そのショックから完全に抜け出せてはいなかったのだろう。
 故にはやては現状アギトに関してはこのままにしていた。だが、そのアギトがいきなり口を出してきたのだ。
「少し黙っていてくれるか、今色々考えて……」
「おい、はやて! 何でアイツを連れているんだよ!」
「……アイツってどっちや? ヴァッシュさんか? それともかが……」
「紫の髪した女の事だよ! 見てわからねぇのかよ!」
 紫髪の女といえばかがみの事だ。アギトの口ぶりが確かならかがみと何処かで面識があったというのだろうか?
 そういえばヴィータと合流した時、自分の側の説明はしたがヴィータ側、特にアギトの事情はあまり深い所まで聞いていない事に今更ながら気が付いた。
 いや、そもそもアギトは最初からヴィータと同行していたのかも不明瞭だ。最初に接触した時には見かけなかったからだ。
 何にせよ、アギトが何か知っている可能性が高い。
「なぁ、紫髪の女が何かしたんか?」
「アイツが……○○○○を殺したんだ!」
「なん……やって……」

274Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:06:15 ID:GPV1PITo0







 その一方、ヴァッシュもある事を考えていた。
(どっかで会った気がするけど……)
 そう、ヴァッシュ自身、はやてを見た記憶があったのだ。しかし、ヴァッシュ自身それに関して強い確証が無かったのである。

 結論から言えば、ヴァッシュ自身はやてと面識は全く無い。しかし、はやてとその家族についての記憶は確かにあったのだ。
 思い出して欲しい、今のヴァッシュは自身の兄であるミリオンズ・ナイブズと融合している事を。
 融合した際に彼の記憶と動向をヴァッシュは把握した。この殺し合いでなのはを含む4人を殺した事を、そして元の世界での彼の記憶をだ。
 そう、この殺し合いに連れて来られる直前のナイブズの記憶もまた例外ではなかったのだ。
 ヴァッシュがなのはに保護されたのと同様に、ナイブズもまたはやてに保護されていた。その際に彼女の家族であるヴィータ達とも出会っていたのだ。
 では、何故ヴァッシュは確証を持てなかったのだろうか?
 まず、記憶のはやてとこの場にいるはやてが似ていたとはいえあまりにも違いすぎたのだ。ここにいるはやては20歳の女性、記憶の中のはやては9歳の車椅子の少女なのだから。
 また、そもそもナイブズがはやてに保護されてという記憶がヴァッシュにはある意味現実味が薄かったのだ。ナイブズが何度と無く人間を虐殺するのをヴァッシュは見ていたのだから。
 そして、融合以降約10時間前後力の暴走とそれによりフェイト・T・ハラオウンを殺したショックからヴァッシュ自身それどころでは無くなっていた。
 以上の事からヴァッシュははやての記憶を持ちながらもそれについての確証が持てなかったのである。

 とはいえ現状それは大きな問題ではない。いち早くアジトに向かい背負っているかがみをスバルの仲間に会わせる事が今の最優先事項だ。

 と、気が付いたらはやてよりも数十メートルも先行していた事に気が付いた。
「ちょっとー!!」
 最初の放送直後、ヴァッシュは自身のデイパックを奪われており以降地図も磁石も持たずに行動していた。その為、はやての道案内無しにアジトへ向かえる道理は無い。
 ともかく、ヴァッシュははやての所に戻り、
「はやて! ……ってあれ?」
 口を出そうとしたが、はやての傍に見慣れない小人がいた事に気が付きあっけに取られた顔をした。
「あ、すみません、ちょっと考え事していたんで」
「それはいいけど……って君は?」
「あたしは……」
「ああ、この子は仲間のアギトです。それよりヴァッシュさん、少し貴方とお話したいんですけど」
 はやての口から発せられたのは情報交換の提案だ。
「え、でもそれはアジトに行ってからゆっくりやれば……」
 確かにアジトまではそう遠くない。ここで無理に行わずともアジトに付いてからスバルの仲間を交えて行えば済む話ではある。しかし、
「ここ数時間殆ど休みらしい休みを取ってないんです、ヴァッシュさんもホテルでの戦いから休んでないですよね? 休憩がてら貴方の事情を聞きたいんやけど。
 それにアジトについてすぐに戦いになる可能性も否定出来ません。万全な状態にしておくべきやと思いませんか?」
「うーん……」
 はやての言い分は理解出来る。しかしヴァッシュとしては一刻も早くアジトへ向かい、かがみをスバルの仲間に会わせたかった。故に素直に提案を受け入れられなかったが、
「こう言っては失礼かも知れませんけど、私は貴方を完全に信じたわけやないです。仲間達の命が懸かっている以上、信用出来ない相手に背中を任せるわけにはいきません。
 勿論、全部話してとは言いません。知り合いやこの場に着てから何をしてきたかを話してくれればそれで良いです」
「……わかった」

275Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:07:00 ID:GPV1PITo0







 まず、ヴァッシュは自分が管理局に属していてこの場に大切な仲間達がいる事を説明した。
「なのはちゃんにフェイトちゃん、ユーノ君とクロノ君……1つ確認したいんですけど、なのはちゃんとフェイトちゃん何歳ぐらいでした?」
「確か10歳ぐらい……って、はやての口ぶりだとなのは達を知っている様に聞こえるんだけど」
「それについて後ほど、とりあえず続けて」
 はやての言葉が気になるもののヴァッシュは説明を再開した。更に、危険人物としてナイブズが参加している事を説明した。
 まずヴァッシュは最初にアレクサンド・アンデルセンと出会い彼と行動を共にしていた事を話した。アンデルセンの話ではアーカードが危険人物でティアナ・ランスターがアーカードによって吸血鬼になったという話である。
 ちなみに、はやて達は既にアーカードが死亡している事を知っているがそれに関してはヴァッシュに伝えなかった。
 その後、2人は家族を守る為に殺し合いに乗っていたアンジールと遭遇し彼を無力化した。そしてアーカードの放送が響き渡りその場所へ向かったが――
「(そうか、あの時乱入したのがアンデルセンだったんだな……)ん、でアンタはアーカードの所に行ったのかよ?」
「いや……」
 ヴァッシュはアンデルセンを見失い、その後ナイブズの存在を察知し彼を止める為、アンジールを近くのビルに置いて1人その場所へ向かったが――
「アイツは死んでいた――」
 その後、気が付いたら何者かに襲われ左腕を斬り落とされ――
「じゃあその左腕は何なんです?」
「信じられない話かも知れないが聞いてくれ――ナイブズが俺の左腕になった――」
「1つになった……っていう解釈で良いんですね?」
「……って、妙にあっさり受け入れている!?」
 確かに驚きではあるし詳しくは聞きたい所だ。しかし今はそこの説明に必要以上の時間を取られるわけにはいかない。最低限把握出来れば十分なので、話を進める事にした。
「こういう事には慣れていますから。で、その後どうなりました?」
 ヴァッシュの口調は重いものの話は続けられた。
「アイツと一つになった事で宿った力を僕は制御出来なかった……それで……フェイトを殺した……」
「そう……ですか」
 その後、自身の制御出来ない力に他者を巻き込まない様に彷徨い神社へ辿り着きそこで新庄・運切と出会った。
 新庄を死なせまいと離れる様に言ったものの彼はそれを聞かずヴァッシュの傍にいたのだ。
 そして2度目の放送の後、雷を放ち自らを神と名乗る男が2人を襲撃してきた際にヴァッシュ自身が制御出来ない力で彼を殺しそうになった事があった。ヴァッシュは名前を知らなかったがその特徴はエネル以外に有り得ない。
「な……エネルに勝ったというんか……」
 その後、新庄がエネルを監視する名目で同行し、ヴァッシュは新庄の為に禁止エリアとなっていた神社から離れた。
 そして気が付いたら海に落ち、海から上がった後、アンジールと再会した。
 忌まわしき力はアンジールを殺さんと暴走したものの、アンジールのお陰で遂に暴走は収まった。
 その後、ヴァッシュはホテルへ移動しそこでかがみと出会ったのだ。その後、スバルと遭遇した際に放送が鳴り響き、新庄の死のショックで再び左腕が暴走しスバルと交戦する事となった。そして――
「……何とか暴走が収まりスバルと落ち着いて話そうと思ったらかがみと始が来て混戦状態になったわけですね……ちょっと整理しに行って良いですか?」

276Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:08:00 ID:GPV1PITo0







 はやてとアギトはヴァッシュから少し距離を置き、
「はやて……どうするんだ?」
 ヴァッシュの人格そのものに関してはアギトも信じて良いとは思っている。だが、左腕が暴走した際の危険性は否定出来ない。
「確かに暴走は怖い……けど、その実力は確かやし性格に関しても十分すぎるぐらいのお人好しや。あのエネルを殺せるのに殺さへんかった事からもそれは明らかや
 (そのお人好しさ加減のお陰で誰か死なせているけどな。十中八九新庄を殺したのはエネルや、全く……あの場で仕留めてくれれば良かったんに……まぁ、その場合ヴィヴィオを相手にせなあかんかったけどな)」
「そんなにエネルってヤバイのかよ?」
「アギトはデイパックの中にいたからよくわからんかも知れんけど、あそこの雷全部アイツの仕業や」
「確かに厄介そうだな……」
「暴走さえ除けば十分信頼出来ると思う」
「はやてがそう言うんだったらいいけどよ……」
(それに……幾つか面白い事も聞けたからな)
 その1つがアンジールの存在だ。アンデルセンはヴァッシュと出会う前にアンジールと交戦していたらしい。詳しい事情は不明だがアンデルセンがアンジールの家族に害を及ぼすという話なのだ。
 ここで、はやてはある話を思い出す。クアットロがこの場に来て神父らしき男に襲われたという話があった。その神父がアンデルセンである可能性が高い。
 彼女を助ける為にアンジールが現れアンデルセンと交戦した可能性があるという事だ。何の為に? それはアンジールからみてクアットロが家族だからだろう。
 それを裏付ける証拠として、アンジールは青いスーツの女達を探していた。これは言うまでもなくクアットロ達ナンバーズだ。故に、アンジールから見てクアットロ達は家族という事になる。

(けど、これだけやと根拠として弱いな……)
「そうだ、アンジールと言えば……」
「何かあったんか?」
「ああ、もう1人のお前殺していたぜ」
「って、見ていたんか!? そういう大事な事は先に言えや!」
「そんな余裕無かっただろ……」
「ていうか、ヴィータ何してたんや……」
「その時、セフィロスのデイパックの中だったんだよ。そういやアンジールとセフィロス知り合いみたいだったな」
「それ本当か? そうか、それなら……」

 アギトの話からはやてはある仮説を立てた。
 クアットロがアンデルセンに襲われた際、アンジールがクアットロを助けアンデルセンを退けた。
 その後、クアットロはアンジールを利用して参加者を殲滅しようと目論んだ。故にはやて達に対しアンジールの存在を伏せておいた。
 そして、クアットロがはやてを斬り捨てた際に強気だったのは、セフィロス対策にもなる確実な味方のアンジールがいたという事になる。
 勿論、これは推測でしかない。しかしこれまでの証言からその可能性は高いだろう。
(となると、アンジールは敵ということになるな。クアットロと敵対する以上交戦は避けられん……)

277Yな戦慄/烈火剣精は見た! ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:08:45 ID:GPV1PITo0







 話し合いを終えたはやて達がヴァッシュ達の所に戻って来る。
「フェイトちゃんを殺した事に関しては決して許される事やないです。それが貴方の意志によるものやなかったとしてもや」
「ああ……それは……」
 ヴァッシュがフェイトを殺した罪の重さは今もヴァッシュは決して忘れない。
「せやけど……本当に悔やんでいるんやったらその力を……今度は人々を守る為に使ってくれませんか?」
「はやて……」
「だから約束してくれませんか、もう二度と決してその力を暴走させへん事を」
「……わかった」
「それなら貴方を仲間として迎えます。なのはちゃん達と力合わせて何とかこのゲームを止めましょう」
「ありがと……ん、ちょっと待って、はやての口ぶりだとなのはが生きている様に聞こえるんだけど……?」
 それは有り得ない。放送で名前も呼ばれていたし、ナイブズがなのはを殺す記憶をヴァッシュは見ている。だが、
「18時の放送でもフェイトちゃんの名前が呼ばれていた事に気付いてました?」
「えぇ!?」
 ホテルでの放送の時、新庄の名前が呼ばれた時点でヴァッシュの思考が停止していた為、フェイトの名前が呼ばれていた事を知らなかった。というより、フェイトの名前が呼ばれたのは12時の放送だった筈だ。一体何を言っているのだろう?
「名簿になのはちゃんとフェイトちゃん、私の名前が2つずつ乗ってます」
「そういえばそうだった様な……」
「それにですね、私の知り合いのなのはちゃん達も20歳ぐらいなんです。これらから考えて、私らは異なる平行世界から連れて来られているって事になるんです」
「あ、成る程」
 ヴァッシュ自身、なのは達にいる地球が自分の元々の世界の地球とは異っていた事を把握していた事から平行世界に関しては容易に理解出来た。
「せやから、此処にいるなのはちゃん達がヴァッシュの知る彼女達とは限らないという事になります。とはいえ、絶対に無いとは言い切れないし、別世界の別人だからってみんなの命を守る事に変わりはないですけどね」
「ああ」
 そう、仮に異なる平行世界の存在だとしても、なのはがナイブズに殺され、フェイトを自分が殺した事実に違いはなく、同時に守るべき命である事に変わりはない。結局の所、ヴァッシュにとってはさほど重要な問題ではないのだ。







「それじゃあ暫くアギトと色々話してくれますか?」
 と、アギトがヴァッシュの方へ移動する。
「ん? どういうこと?」
「私はちょっとその子と少し今後の事について『お話』しようと思いまして」
 つまり、はやてとかがみの2人きりにして話をするという事だ。
「ちょっと待ってくれ、それこそアジトに行ってからでも」
「いや、今のこの子は誰彼構わず憎しみをぶつけてきます。そんな状態で彼女の友達と会わせて取り返しのつかない事になっても困る、せやから彼女を落ち着かせた上で事情を一度説明しておこうかと思いまして」
「成る程……だったら僕も」
「ダメです、ついさっきまで命のやり取りしていたヴァッシュさんやったら彼女も警戒します。

 それに……女の子同士やないと話せない話もあると思いません?」

 その妖艶な笑みを浮かべるはやてに対し、
「そ、そうだね……」
 素直に頷くしかないヴァッシュであった。そしてヴァッシュの背からかがみが降ろされ、
「そうそう、これをどうにかしないと」
 と、彼女の首にかかっていた千年リングを外した。
「そのリングがどうしました?」
「ああ、スバルの話じゃこのリングに宿る人格がかがみをここまで追い込んだらしい。乗っ取られたりしない様に気をつけて処分してくれって言っていた」
 それを聞いたアギトが不思議そうな表情をしていたのをはやては見逃さなかった。
「ヴァッシュさんが乗っ取られたら困るんですけど大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫。絶対に乗っ取られたりなんてしないから!」
 力強い声でそう答えた。そして、はやてがかがみを背負い、
「それじゃ、決して覗いたりなんかしない様に」
 そう言って、深い森林の奥へと消えていった。

「はやて……大丈夫か……」
「大丈夫だって、リングも手元にあるから」
「(そうじゃねぇんだよ……)」
「あ!」
「何かあったのかよ」
「いや、ちょっとはやての喋り聞いていたらアイツの事を思い出しただけだから」
「アイツって誰だよ……」
 ヴァッシュの脳裏には関西弁を喋る牧師の姿が浮かんでいた。

278Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:13:30 ID:GPV1PITo0
「おははひって……はひもははふほほはんへはいはほ!」
 はやてによって拘束されたかがみははやてに対しまくし立てる。
「ああ、流石にこの状態じゃ何も答えられんな」
 と言って、かがみの口から下着を取り出す。
「こんな事やって只で済むと思っ……」
 その瞬間、かがみの首に憑神刀が突き付けられる。
「助けを呼ぼうとしても無駄や、周囲には誰もおらんし仮に誰かが来るとしてもそれより早くあんたの命が終わる……少しでも長生きしたいんなら大人しく『お話』しようや」
 その表情からかがみはこの女が本気だと思った。

「お話って言われてもアンタに話す事なんて何もないわよ……殺してやる……」
 人を全裸にして下着を口に詰める様な変態に話す事はない。そう答えるかがみだったが、
「ところで、さっき青い髪のロングヘアのあんたぐらいの女の子殺したんやけど」
 そんな人物などかがみの知る限り1人しかいない。
「なっ……あんたこなたを殺したの!?」
「ほう、こなたっていうんか。そうか……」
「許さない……」
「ああ、ちなみに今の嘘や」
「え!?」
 この女はさっきから何を言っているのだろうか? 何故こなたを殺したという嘘を吐くのだろうか?
「実は、今私達は移動していたんや。あんたを説得する人物のいる場所にな」
 はやてはかがみに彼女を説得出来る人物がいるスーパーへ移動中だという事を話した。
「あんたを説得出来るという話やから多分あんたの友人って事まではわかったんやけど名前がわからなかったからこうやって聞き出したわけや。普通に聞いても答えへんと思ったからな」
 ちなみに、こなたの外見についてはヴァッシュがホテルへ移動する最中、スバルを見かけた際にこなたらしき人物も一瞬だが見かけていた為、それを聞く事で把握出来た。

「このタヌキ……」
「褒め言葉やな」
(なんなのよコイツ……それに、何処かで会った様な……)
 はやてを何処かで見た記憶があった。しかしそれが何処かまでは思い出せないでいた。

「1つ聞きたいんやけど……こなたが殺し合い止めてくれって言ってくれたら殺し合いやめてくれるんか?」
「はぁ!? そんなのやめるわけないでしょ!」
「友達が説得しても応じるつもりはないって事か?」
「どうせ別世界のこなたでしょ、関係なんて無いわよ!」
 そう、スバルに何度も話した通り、ここのこなたは別世界の他人。友達でない以上言う事を聞く必要は全く無い。
「そうか……そういうか……ははっ……」
 はやての笑いが何処か恐ろしいものに見えた。
「で、何人殺した?」
 と、憑神刀を突き付けながらかがみにそう問いかける。
「覚えてないわよ、誰を何人殺したかなんて」
 そう答えた瞬間、はやてが怖い顔をして、
「……答えろや、答えなかったらその首斬り落とす」
 そう言い放つはやてに対し、かがみはゆっくりと口を開く。
「エリオと眼帯の女の子……後は覚えていないわ……」
「そうか……じゃあ、質問を変えようか。あんた……ここに来てからどうやって殺し回ってきた?」
「は?」
「この場に来てから何をしてきたかって聞いているんや、覚えている範囲全部答えて貰う」
「だから覚えていないって言って……がばっ!」
 腹部に蹴りが叩き込まれた。
「頭悪いな……覚えている範囲と言ったやろ……」
 と、はやては右手で憑神刀を構え左手で下着ごとかがみの口を押さえ込み――

 そのまま両足首に憑神刀をなぞらせた――

「がばぁぁぁ!」

 両足首に激痛が奔る、叫びたかったが腹の痛みと口を押さえられていた事により声にならなかった。

「本当に良く斬れるな」
 かがみの両足首からは血が流れている。アキレス腱が切断されたのだ。そして口から下着を持った手が離れ、
「あ……あんた……」
「これで私がスバル達みたいなお人好しと違うって理解出来たな。あんたが下手な事すれば今度はその首が飛ぶで」
「わかったわよ……」
 勿論、かがみ自身最後には死ぬつもりだった。だからこのまま突っぱねても別段問題はない。
 しかし、この女を殺さなければ気が済まない、故に今は従うしかない。後で絶対にコイツを殺してやる……そう考えかがみはこの場に来てからの事を語り出した。

279Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:14:15 ID:GPV1PITo0







 まず、殺し合いに放り込まれたショックから自分を保護しようとしたエリオを撃った。
 その血から自身の支給品にあった仮面ライダーに変身出来るカードデッキに宿る蛇の怪物が現れエリオが喰われた事を話した。

「どうせ、エリオも後で私を裏切るつもりだったんでしょ……今となっては後悔なんて無いわ……」

 その後、自殺しようとした所を友人だったなのはに助けられたがなのはは自分の事を知らないと言い放ち裏切った。
 そして今度はクワガタの怪物が現れ自分に襲いかかった。死にたくなかった自分はなのはの支給品にあったベルトを使い黒い仮面ライダーに変身した。
 その後の事はあまり覚えていない。その後暫くは2つの変身ツールを使い無差別に暴れ回った事は覚えている。その過程で誰か殺した奴もいたかもしれない。

「そうよ、なのはが悪いのよ! 私を裏切ったなのはが!!」

 気が付いたら今度はLと名乗る男に拘束されていた。何とか逃げだしたものの奪われたデッキのモンスターに追われ殺されかけた。

「私は悪くない! 悪いのはLよ!!」

 その後、万丈目準に保護されたが今度はその万丈目に参加者を餌にしなければ自分が喰われるカードデッキを押しつけられたのだ。

「バクラが言ってた通りアイツは悪人だった! 私はまた裏切られたのよ!!」

 続きを話そうとしたかがみだったが、

「ちょっと待て、1つ確認したいがバクラってのはもしかしてリングの中に宿った人格の事か?」
「それがどうかしたの?」
「もう1つ、あんたがリングを手に入れたのは万丈目に会った時って事でええな?」
「ええ、バクラも万丈目には困っていたわ。そういえば眼帯の女の子を襲ったって言っていたわ」
「そうか……続けてくれ」

 制限時間の迫ったカードデッキの餌を探そうとする中、ある男を餌にする為襲撃したが、その男は銀色の戦士メビウスに変身しモンスターが撃破された。
 そしてモンスターを倒され力を失い逃げた所、Lに奪われた荷物を見つけ回収した。その中にはカードデッキはあったがもう1つのベルトは無くなっていた。

「あんたまさかまたそれ手にしたって言うんか?」
「そうよ、他人を殺す為には力が必要でしょ」

 その後、ホテルで休憩をとりデュエルアカデミアに向かいスバルと出会った。
 その際にスバルから参加者が異なる平行世界から連れて来られている事を知り、こなたやつかさも別の世界から来ている事を知った。
 故にこなたやつかさも殺しても問題ないと考え、まずはスバルをモンスターの餌にしようとしたがその時に眼帯の少女を喰った。
 スバルとの交戦後、昇る煙を見てレストランに向かい、黒いライダーと緑の怪物の2つの姿を持つ男と、浅倉と戦った。
 その時にカードデッキは浅倉に奪われたもののどういうわけかは不明だが緑のライダーに変身する為のベルトを手に入れた。
 そして再びホテルへと向かったが、そこで浅倉によって再びレストランの方に連れて行かれ――

「浅倉が目の前でつかさを……! アイツ……私が殺してやるはずだったのに……!」

 そして再び浅倉と戦おうとしたが気が付いたらホテルに戻っていた。その後ヴァッシュと出会い、彼にスバルが危険人物だと伝えスバルと戦わせようとして――

「で、始とあんたを交え4人で戦った所、あんたは敗れて今に至るってわけか」
「とりあえず覚えている事は全部よ……」
「最後に1つ確認してええか、あんたは自分の行動を悪いと思っているんか?」
「は!? そんなわけないでしょ! 悪いのはなのはやL、それに万丈目や浅倉、それにスバル達よ! アイツらが私をこんな目に――」
「そうか」
「あんたの知りたい事は全部答えたわ、さっさとこの拘束解きなさいよ!」

 拘束を解いた隙を突いてデイパックを奪い、逆に仕留める。ダメージは大きいが喉仏に噛みつくと言った手段はまだ使える――そう考えていたが、

280Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:15:00 ID:Ij..ItUo0



「ああ、わかった――」



 と、再度下着でかがみの口を塞ぎ――今度は手首に憑神刀をなぞらせた



「――――――!」



 声にならない叫びが漏れた。両手首の腱を斬られた激痛から、何時しか股間からは黄色い液体が流れていた――



「あんたが救いようのない阿呆餓鬼ということがな――」



 口から下着を持った手を離したはやての声は変わらず冷たいものであった――そして再び腹部に蹴りを入れる。



「な……何を……」
 かがみの両手首と両足首からは血が止めどなく流れており、目からは涙が溢れている。声を出そうとしても大きな声は出せないでいる。
「今更理解出来るとも思えへんけどな……教えてやる。全部が全部と言うつもりは無いが、あんたの行動の殆どは決して許されん悪行や」
「違う……私は悪くない……悪いのは……」
「エリオもなのはちゃんもあんたを救おうとした、その善意をあんたは裏切ったんや! 不可抗力によるものもあったんやろうけど、後から幾らでも悔いる事は出来た筈や!」
「違う……あの2人は私を……」
「違わない! 私はあんた以上にエリオもなのはちゃんも知っている! あの2人があんたを陥れる事なんてありえへん!」
「違う……」
「Lにしてもそうや、その前にあんたずっと暴れていたんやろ? 危険人物として拘束して当然や。まぁ、保護の為にモンスターを使って追わせたのは完全な失策やったけどな」
「そんなわけない……」
「万丈目に関しては完全な嵌められたといえるが……けど、あんただって同じ事考えていたやろ。万丈目を餌にしようと考えていたんと違うん? それがわかっていて素直に餌にされるアホもいないと思わん?」
「それは……」
 確かにかがみ自身万丈目を餌にしようとはしていた。だがそれは万丈目が悪人だったからだ、少なくても自分は悪くない筈だ。
「それからメビウスっちゅう奴にモンスターを倒された時点で自分が喰われる危険から解放されたんやろ、なのになしてまたそんな危険の漂うデッキを手にするんや?」
「殺さなきゃ生き残れないからよ……」
「で、スバルはあんたを保護しようとしたにも拘わらず……あんたはそれを裏切り殺そうとした。スバルが何時あんたを裏切った?」
「これから裏切るつもりだったのよ……そうに決まって……」
「スバルの事も知らんで偉そうに語るな馬鹿が! 今度はヴァッシュを騙してスバルと戦わせたっちゅうんか? 本当に救いようのない極悪人やな!」
「違う、ヴァッシュも私を裏切……」
「最初から決めつけてかかっていたんやろ。警戒するなとは言わんがあまりにも凝り固まり過ぎや……」
「違う違う違う……」
「もしかしたらバクラに騙されていたという可能性もあったわけやけど……あんたの口ぶりからそれはなさそうやな」
「それは……」
 確かにバクラは他人を殺す為のサポートを続けてくれた。しかし、覚えている限りバクラは自分を助けてくれただけで重要な決断の殆どは自分がしていた。







「本当に救われんな……こんな阿呆餓鬼にシグナムが殺されたなんてな……」
「シグナ……まさか……」
 この瞬間、かがみはシグナムを殺した時の事を思い出した。確かに桃髪の剣士を仕留めた覚えがある、そして目の前の女がシグナムと呼んでいた様な気がする。しかし何かがおかしい――
「そうや……あんたがベルトの力で暴走している時に殺したのが私の大事な家族のシグナムや!」
「違う……あれはベルトの……」
「そのベルトなら私も一度確認した。説明書さえ見ればそれがどんだけ危険なものかわかる。そしてベルトを身に着けたのはあんたの意志によるもの、暴走なんて言い訳は通用せん」
「私は悪くない……私は……」
「そういってスバルやなのはちゃんの良心に付け込んでまた騙すつもりか? いい加減にしろ! 例えどんな理由があってもあんたが私の家族を殺した事に変わりは無い!」
「くっ……そうよ、どうせシグナムって人も別の世界の人間に……」
「それはひょっとしてギャグで言っているのか? あんた、自分の家族や友人が殺されたと言われた時キレていたやん。別世界の人物だって言っておきながらな。
 その一方で友達とか家族とか言った時は別世界の人物だから関係ないって……自分に都合の良い解釈も大概にしろ!」
「それは……」
「結局の所、あんたは自分を正当化する為にそうやってずっと言い訳し続けて来ただけって事や」
「違う……私は間違ってなんか……」
「それに、別世界のシグナム達であっても私にとっては家族に変わりはない……」
「あんたもそんな甘い事を……」
「甘い……そうやな……せやけど……!」

281Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:17:45 ID:GPV1PITo0





 その瞬間、はやては下着をかがみの口の奥へ押し込み憑神刀で腹部を一瞬で貫いた。





「頭ではどんなに別人だってわかっていても割り切れるものやない……!」
 憑神刀が抜かれた瞬間、かがみの腹部からは血が溢れ出てくる。
「がば……」
 両手足、腹部の出血は大きく、かがみはただもがく事しか出来ない。
「これで終いや……運良く誰か来れば命は助かるかも知れんが……まぁ、死にたいんやったらそれでも構わん……けど……死ぬなら1人で死ね、あんたの都合にこれ以上私等を巻き込むな……」





 そう言い放ち、はやてはかがみの前から去っていった。





 そして、そこには1人、両手足と腹部を切られ、自らの服で拘束された少女が残されていた――





(違う……私は……間違ってなんか……)





 助けてくれる者も無く、少女は未だに自らの過ちを認めずにいた――





 放送まで約1時間――





 時の流れに呼応するかの様に――血と共に彼女の命も流れ――





 それが尽きる瞬間は確実に近付いていた――





【1日目 真夜中】
【現在地 D-1】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】両手首の腱及び両アキレス腱切断(出血中)、腹部に深い刺し傷(出血中)、疲労(極大)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、自分以外の生物に対する激しい憎悪、やさぐれ
【装備】全裸(両手両足をホテルの従業員の制服で拘束、口には下着が詰められている)
【道具】無し
【思考】
 基本:みんな死ねばいいのに……。
 1.私は……悪くない……。
 2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※出血が激しい為、すぐにでも手当てをしなければ命に関わります。

282Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:18:45 ID:GPV1PITo0











(全く、これからどうしたものか……)
 バクラの予想通り、スバル達はかがみを殺す事はしなかった。しかし危惧した通りスバルがヴァッシュに自分の存在を伝え処分を頼んだのだ。
 その為、ヴァッシュも警戒してしまい下手に動く事が出来なくなったのだ。
 勿論、かがみの今の状態で動いた所でどうにもならない為、それ自体は問題ない。
 その後、はやてがかがみを連れて何処かへいく際に自身が宿るリングはヴァッシュの手へと渡った。
 これ幸いにと、今度はヴァッシュを宿主にしようかと密かに考えていたものの――
(ダメだ、コイツは救いようの無いお人好しだ)
 ヴァッシュの記憶を把握し、彼が150年もの間人々を救い続けてきた事を知った。その為、宿主にする事はまず不可能と判断した。
 勿論、強引に意識を奪おうとも考えた。だがヴァッシュが普通の人間ではない(実際、人間ではなくプラントなのだが)為、相棒であるキャロ・ル・ルシエ同様抵抗される可能性が非情に高い。
 仮に上手く乗っ取れた所で長くても1時間しか自由に出来ない。その時間が過ぎればその時点で自分は終わりだ。
 はやて辺りを宿主にしようにもヴァッシュが千年リングの危険性を説明した為間違いなく警戒されている。つまり八方塞がりに近い状況という事だ。
(とりあえず、何とか処分されない方法を考えないとな……)
 デスゲームを楽しんだは良いが自分は消えましたではシャレにならない。まずは自身が生き残る事が最優先、バクラはそう考え思考を巡らせていた。ちなみに既にかがみの事など思考にはない。





 はやてとかがみが密林へ消えた後、アギトはヴァッシュと話していた。
 アギトはルーテシアとゼストの動向をヴァッシュに聞いていたものの、ヴァッシュ自身2人を見かけたかどうかはわからないと答えていた。
 ヴァッシュによるともしかしたら自身の力の暴走に巻き込んだ可能性があるとも語ってはいるが――アギト自身口にはしないもののそれは無いと考えていた。
 ヴァッシュが善悪関係なく人々の命を守ろうとしているのはアギトでも理解出来た。そんな男が自分の力で生み出された死体を見つけたらそれを忘れる事はないだろう。
 勿論、ヴァッシュの見えない所でという可能性はある。しかしそれを確かめる事はまず不可能、故にアギトはヴァッシュを責めるつもりは全く無かった。
 少なくてもある程度信じても良い、アギトはそう考えていた。

 しかし、そんなヴァッシュを裏切ろうとしている事にアギトは胸を痛めていた。
 はやてがかがみにしようとする事をヴァッシュが知れば絶対に止めに入る。それを避ける為、アギトはヴァッシュと会話しながら時間を稼いでいたのである。

 はやてがかがみを殺してシグナムの仇を討つ、アギトはそれに手を貸していたのである。

283Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:20:45 ID:GPV1PITo0



 そもそもの話、ゼストやルーテシアの死、そしてヴィータとの別れの悲しみから数時間は動けなかった。
 それでも、遠くから聞こえる雷鳴を聞いている内に何時までも悲しんではいられないと思った。
 ゼストやヴィータ達がそれを望まない事は明白だからだ。だからこそ、意を決しデイパックから顔を――
 が、運命の悪戯か真っ先に見えたのはシグナムを殺した紫髪の少女だった。どういうわけかはわからないが彼女を連れている事はわかった。
 シグナムを殺した奴がのうのうと生きている――アギトの中でやりきれない想いが込み上げてきた。
 だからこそ、その事をはやてに伝えた。かがみという名前だったがそんな事はどうでも良かった。
 だが、結局の所アギト自身はどうしたかったのだろうか?
 少なくてもこのアギト自身にしてみればシグナムが死んだ所で仇討ちをする義理は無い。確かに悲しみは感じるがそこまでする様な関係ではない。
 大体、復讐や仇討ちなどゼストの正義とは真逆ではなかろうか。そう、頭ではそれはわかっていた。
 だが、仮に目の前のゼストやルーテシアを殺した相手を見つけて――同じ事が言えるだろうか? アギトにはそれが言えなかった、最低でも何故殺したのか位は聞かなきゃ収まらない。
 だからこそ、ヴィータがシグナムを殺したかがみを殺すと言った時もアギトはそれを咎めようとはしなかった。別段親しいわけでもなかったがヴィータの悔しさは十分に理解出来たのだ。
 のうのうと生き延びているかがみの姿を死んだヴィータが見たらどう思う? きっと悔しい想いをしているだろう。アギトにはそれが辛かった。
 しかし、別にシグナムと関係のないアギト自身にはかがみどうこうする資格はない。だからこそ全ての判断をシグナムの主であるはやてに委ねたのだ。
 はやてが許すならそれで良し、仇を討つならそれでも良しという事だ。
 そして、その結果がこれである。

 わかっている――ある意味ではゼストに対する裏切りである事は――
 それでも――ヴィータやシグナムの無念を晴らしたいというのは混じりっけのない本心だった――





 バクラやアギトの思惑に気付くことなくヴァッシュははやて達を待った。
 はやてがかがみを宥めてくれればスバルの仲間と会わせる事で説得は上手く行く――そう信じていた。
 ヴァッシュははやてがスバル同様、殺し合いを良しとしない人物だと考えていた。
 スバルの上司だからというのもあったし世界が違ってもなのは達の仲間だからだ。
 だからこそ、ヴァッシュははやての行動の真意に気付けなかった――そして、

284Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:21:30 ID:GPV1PITo0







「はぁ……はぁ……」



 深い森から出てきたのは胸から血を流したはやてだった。その様子を見た2人が駆け寄り、アギトははやての方へ移動する。
「なっ……どうしたんだはやて!? それに……」
「すみませんヴァッシュさん……かがみが急に暴れて……逃げられました……」

 はやての話によると意識を取り戻したかがみにアジトにいるスバルの仲間にしてかがみの友人であるこなたと会わせる話をした瞬間、かがみは暴れだしはやてに傷を負わせたという事だ。

「多分、アジトへ向かったんやと思います……急がんとこなたが……」
「はやては大丈夫なのか!?」
「大丈夫、前に受けた傷が開いただけですから……」
「かがみ……君は……」




 ヴァッシュは2人だけにするんじゃなかったと悔やんだ。しかし今はそれは問題ではない、かがみがアジトへ向かった以上こなたが危ない。
 素手でもその気になれば人は殺せる。それを阻止する為にも急がなければならない――

 誰も死なせない、殺させない為に――





【1日目 真夜中】
【現在地 D-9 森林】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(中)、融合、黒髪化九割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish、アイボリー(5/10)@Devil never strikers
【道具】千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです
【思考】
 基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。
 1.スカリエッティのアジトへ急行しかがみの凶行を止める。
 2.かがみをこなたに何事もなく会わせる。
 3.こなたに出会ったら、スバルからの伝言を伝える。
 4.首輪の解除方法を探す。
 5.アーカード、ティアナを警戒。
 6.アンジールと再び出会ったら……。
 7.千年リングには警戒する。
【備考】
※制限に気付いていません。
※なのは達が別世界から連れて来られている可能性を把握しました。
※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。
※暴走現象は止まりました。
※防衛尖翼を習得しました。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.そろそろ宿主サマを変えたい、しかしヴァッシュは利用出来そうにない。
 2.千年リングを処分されない方法を考え実行する。
 3.キャロが自分の世界のキャロなのか確かめたい。
 4.こなたに興味。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。
※ヴァッシュを乗っ取る事はまず不可能だと考えています。

285Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:22:30 ID:GPV1PITo0





 ヴァッシュがアジトの方角へ視線を向けているのを見てはやては自分の作戦が上手く行った事を確信した。
(よし……これで自分がかがみを襲ったとは思わないな……けど油断は禁物や)

 何度も書くが、はやてはかがみの説得は難しいと考えており何とか排除したいとすら考えていた。しかし、スバル達と対立を起こす関係もありそれは難しいと思っていた。
 そこにアギトからシグナムを殺したのがかがみという事が伝えられた。
 詳しい事は聞いていないものの、それを聞いた事ではやてはかがみを排除する事を決意した。

 その過程を纏めると以下の通りだ、
 ヴァッシュに休憩と称して情報交換を持ちかける。仮にアジトに着いてからと本人が渋っても、信用出来ないからさせてくれと言えば断り切れない可能性は高い。
 その後、今度はかがみと2人だけで話をさせてくれとヴァッシュに頼む。スバルとの約束からこれまた渋るだろうが、面識のない自分なら警戒されない、女同士でしか出来ないと言えばこれまた納得して貰えるだろう。
 かがみが何も持っていなければ手も出せないだろうし、まさかスバルの仲間である自分がかがみを手に掛けるとは思わないだろう。
 その間、アギトにヴァッシュと話をさせ時間を稼いで貰う、幸いアギトはゼスト達の情報を聞き出したかったせいか素直に従ってくれた。

 と、実は当初の予定では密林の奥でかがみを排除するつもりだったがヴァッシュの話からある事がわかり予定を変更した。
 ヴァッシュの移動ルートを見る限り明らかに不自然な点が見られる。その一例として神社から移動後、海に落ちたという話だ。
 ヴァッシュは地図を持っていなかった為気付いていないだろうが、神社や北端のA-4、海は南端のI-1〜4にある。
 そう簡単に移動出来る距離ではない。仮に移動出来たとしても精神的に疲弊している状態とはいえ海に落ちるなどお粗末すぎる話では無いだろうか?
 この話からはやてはある仮説を立てた、それは『フィールドの両端は繋がっている』という説だ。確かにこの説が確かならAラインの平野からいきなりIラインの海に落ちても不思議はない。

 そう、はやてはこの仮説を利用しかがみを排除する為の場所をD-9を西に越えたエリアである東端D-1にする事にしたのだ。仮説が間違っていれば当初の予定通り密林の奥で行えばよいだけだ。
 調べた所、境界の奥は見た目ではわからない。つまり、ループの先のエリアは越えなければ把握出来ないと言う事だ。これならば万が一ヴァッシュが探しに来てもそう簡単には見つからない。
 それにどうやらヴァッシュはループには気付いていない。まさか遠く離れた東端にワープするなど考えもしないだろう。
 そして、適当な場所にたどり着いたらかがみの服を全て脱がせ隠している武器が無い事を確かめる。勿論、武器が無くても不思議な力がある可能性があった為、決して警戒は怠らない。
 かがみを丸裸にした後、着ていた服で両手と両足を拘束し下手に叫ばれない様下着をその口に詰め込んだ。

 そうして意識を取り戻したかがみから詳しい情報を聞き出し、排除するという算段だったのだ。なお、誰か助けが来そうになった場合はすぐさま首なり心臓なり斬り捨てすぐさま待避するつもりだった。
 ちなみに完全に拘束していたとはいえ反撃はずっと警戒していた。実際、手首を斬る直前電撃が僅かに奔るのが見えた為、その攻撃が来る前に手首を斬る事でそれを封じる事が出来た。

 事を終えた後は、憑神刀等でクアットロに斬られた胸の傷を強引に開き負傷した状態を作りそのまま戻る。
 その後、ヴァッシュ達にかがみに襲われ、彼女はアジトへ向かった可能性があると説明しそのままアジトへ向かうという算段だ。
 こうしておけばヴァッシュ達がかがみを発見する可能性は無いし、アジトにかがみがいなくてもそもそも可能性レベルだったと説明すれば何の問題もない。
 ちなみにかがみにはスーパーに移動中と伝えている為、かがみが回復したとしてもアジトの方へ向かう可能性は低い。

 こうしておけば自分がかがみを殺したとはすぐに気付かれないだろうが、実はバレてもある程度は何とか出来る。
 そう、シグナムの仇討ちとしてかがみを殺したと言えば良い顔はされなくてもある程度は納得してくれる。その算段があったからこそはやては行動に踏み切る事が出来たのだ。

286Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:26:30 ID:GPV1PITo0



 真面目な話、はやてにとってシグナムの仇討ちなどどうでもよかった。別世界のシグナムが殺されようか関係ないからだ。
 だが、かがみと話を進める内にはやての中からどうしようもない怒りの感情が湧き上がってきた。
 勿論それは自分の悪行を全てなのは達他人のせいにするかがみに対する憤りだったのだろう。彼女の為に貴重な戦力を失うのが許せなかったとも言える。
 もしかしたら全てバクラのせいかとも考えたがアギトが不思議がった様子から、アギトが見た時点ではリングが無かった可能性が高い。
 故にバクラのせいではない事は確定となる、もっともバクラのせいだからと言って決して許される話ではないわけだが。
 何にせよ、かがみの言動ははやてを怒らせるのに十分過ぎた、こんな奴の為にシグナム、エリオ、チンクが殺されたというのはあまりにもやりきれない。
 最後に刺した瞬間は理性など吹っ飛んでいたかも知れなかった。


 だがはやてはかがみを殺さなかった。両手首、両足首を斬り、腹部を深く刺したものの命までは奪っていない。出血が激しい為長くは保たないが助かる可能性は僅かに残っている。
 では、何故殺さなかったのか? ボーナスを考えても殺した方が得策ではないのか?


 その理由ははやて自身にもわからなかった。
 別世界のシグナムの仇討ちをする事は自分の世界のシグナムに対する裏切りだから殺さなかったのかも知れない、
 八神はやてが仇討ちをする事などあってはならないからこそ殺さなかったのかも知れない、
 その理由は誰にもわからないだろう。



 しかし、1つ確かな事がある。

(あれは……私や)
 かがみの名が示すかの様に、かがみの姿がはやて自身の姿と重なったのだ。別世界の仲間を別人と割り切った上で平気で裏切り陥れる、はやて自身が嫌悪感を示す程の醜い姿だ。
 その姿ははやて自身にもそのまま当てはまる。かがみの姿を見て、はやてはそれを理解したのだ。
(あの夢で見たみんながあんな目で私を見たのは……まぁ当然やな、私だってそう思うからな)
 先程見た夢で家族がはやてを蔑む様な悲しい目で見た理由を理解した。それは家族を取り戻した後の自分の姿なのかも知れない。
(わかっている……この先には何もないかも知れん……それでもや、それでも私はもう戻れへん……進むんや……)

287Yな戦慄/八神家の娘 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:27:30 ID:GPV1PITo0





 行く先に待つのは絶望だけかも知れない。それでも、僅かな希望を信じ、八神家の娘は前へと進む――





(さしあたり考える事は……バクラ、あんたはこの状況でどう動く? ヴァッシュさんを乗っ取るつもりか? それとも――)





【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(中)、魔力消費(大)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味、胸に裂傷(浅め)
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、
【道具】支給品一式×3、コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、
    トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、
    デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる
    首輪(セフィロス)、デイパック(ヴィータ、セフィロス)
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
 1.スカリエッティのアジトへ向かい、そこで夜天の書の安全を確かめたい。
 2.バクラを警戒、ヴァッシュを乗っ取るか?
 3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
 4.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
 9.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
 10.金居及び始は警戒しておくものの、キング対策として利用したい。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。
※夜天の書が改変されている可能性に気付きました。安全確認及び修復は専門の施設でなければ出来ないと考えています。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
 基本:ゼストに恥じない行動を取る
 1.これで……良かったのか……?
 2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する
 3.金居を警戒
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。

288 ◆7pf62HiyTE:2010/07/14(水) 16:30:30 ID:GPV1PITo0
投下完了致しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回も前後編で>>267-277が前編『Yな戦慄/烈火剣精は見た!』(約29KB)で、>>278-287が後編『Yな戦慄/八神家の娘』(約28KB)です。

今回のサブタイトルも『仮面ライダーW』風……というより今回はちゃんと元ネタがあります。
『仮面ライダーW』第9話『Sな戦慄/メイド探偵は見た!』、第10話『Sな戦慄/名探偵の娘』です。
ご覧の通り、Yは八神はやてのYとなっています(一応夜天でも問題なし)
うん、亜樹子所長殿は平成ライダーでもトップクラスに有能なヒロインだな。

……しかし、今回の描写はアリだったのだろうか? まぁ失禁ぐらいはするだろう。

289リリカル名無しA's:2010/07/14(水) 20:39:23 ID:qV.5/DlAO
投下乙です
丸裸のかがみ…汗ばんだ下着を口に突っ込まれ、四肢を縛られた状態で放尿プレイか…それなんてエロゲ。不覚にも興奮してしまった自分が嫌いだ。
まあそれはいいとしてついにかがみも現実と向き合う時が来たようで。残り僅かな命、後悔に使うか、それとも…?
それにしてもはやては本当に醜い。自分の醜さを棚に上げて、心にもない癖にシグナムが殺された事を怒りの理由にこじつけるとは。
かがみもはやてもどっちもどっちだが、かがみでこれならはやても大概いい死に方しないだろうな。

290リリカル名無しA's:2010/07/14(水) 21:18:40 ID:R6D6v9xQ0
投下乙です。
かがみ……ここへ来てついに本当の意味で窮地に立たされたか。
はやてに言われて自分の罪と向き合う機会も出来たようだけど、もう助かるのは無理……かな?
出来ればかがみにはこなたと会って、きちんと話し合って欲しかったけど、今までの行いを考えれば自業自得か。
そして相変わらずはやても汚い。序盤から悪人で通してきて、クアットロに刺された時の住人の反応も
「はやてざまぁ」な空気だったけど、今はあの時以上に悪質さが悪化してる気が……?
さて、バクラはどう出る……? ヴァッシュに持たれたままじゃ完封されたも同然だが……。

291リリカル名無しA's:2010/07/15(木) 00:27:09 ID:ar4uUecE0
投下乙です
これはえぐい。想像以上にえぐいの来たわw
かがみはこの状況で残りの命をどう使うのか…
これはこなたと鉢合わせは無理…というか会わないで死に別れの方がいいかも
そしてはやては醜い。打算や損得、そして己の醜さを棚上げして相手の非を叩く。俺の嫌いなタイプだ

292リリカル名無しA's:2010/07/17(土) 17:05:38 ID:dlhSJugU0
投下乙です
かがみ=鏡=自分の姿という比喩は上手いこと嵌っているな
でも醜さレベルだとかがみの方が上だけどw
それにしてもかがみの状態が酷いな……
もう助かる可能性なんてないからいっそのこと誰か書き手さん殺して――ん、現在地D-1って確か……

293 ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:25:20 ID:.DfmzCYc0
お待たせしました。ではこれより、相川始、ヴィヴィオ、エネル、金居、スバル・ナカジマ分を投下します

294散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:26:06 ID:.DfmzCYc0
 ぎん、ぎん、ぎん、と響く音。
 ホテル・アグスタの暗闇の中で、軌跡を描くは眩い火花。
 金属音をかき鳴らしながら、2人の男が戦っている。
 人外の容貌を身に纏い、激しい攻防を繰り広げている。
「ふん!」
「はあァァァッ!」
 片や黒き鎧の男。ハートの意匠を赤く光らせ、鋭い刃を振りかざす者――相川始こと、仮面ライダーカリス。
 片や金色の怪物。二振りの双剣を振り回す、クワガタムシを模した異形――金居こと、ギラファアンデッド。
 きぃぃん、と長い刃音が鳴った。
 鎧のカリスアローが弾かれ、怪物のヘルターとスケルターが襲いかかった。
 ぎんっ、と重い音と共に、カリスの刃がギラファを阻む。
 互いに殺し合うことを決定づけられた、アンデッドのジョーカーとカテゴリーキング。
 血と殺戮の宿命に従う不死の魔物達が、その手に剣を握り、振るい、ぶつかる。
「始さん……」
 そしてその因縁の決戦を、すぐ横から傍観する者がいた。
 スバル・ナカジマ。機動六課前線フォワード分隊所属。
 青い髪をショートカットに切りそろえた、若きフロントアタッカー。
 始を救い、変えた、ギンガ・ナカジマの実の妹。
 その少女が戦場のすぐ傍に立ち、彼らの戦いを見届けている。
(攻め手を焦っている……?)
 人外の魔闘を見据える彼女が、率直に抱いた感想が、それだった。
 始だけではない。相手のカテゴリーキングなる化け物もそうだ。
 この連中の攻撃ペースは、軽い違和感を覚えるほどに早い。
 単調な攻撃を、スタミナを度外視したテンポでぶつけ合っている。
 先ほどかがみと戦っていた時に比べると、カリスの戦闘スタイルは、随分と慎重さを欠いているように見えた。
 そしてそれでもなおその隙を突かれることがないのは、相手の攻めもまた単調なものとなっているからに他ならない。
(そんなに決着をつけたいってことなんですか)
 導き出された結論に、胸が痛んだ。
 恐らく両者は、ここに至るまでに何度か刃を交えたのだろう。
 そしてその度に、何らかの事情で戦闘を中断され、決着をお預けにされてきたに違いない。
 今こそ決着を。
 今度こそここで終わりにしてやる。
 誰にも邪魔されないうちに、今度こそ奴に引導を渡してやる。
 仇敵を倒しきることができず、互いを探し求めるうちに溜めこまれてきた闘争の欲求が、今まさに爆発しているのだ。
 戦場に立ちこめる熱気は、外界からの介入を拒む壁だ。
 もはや何人であろうとも立ち寄れない――そんな錯覚さえ覚えるほどの、熱戦だった。
(それでも、いざという時には)
 ぎゅ、と右手を握りしめる。
 いかに激しい戦いであろうと、いざという時が来た時には、自分が飛び込んで止めなければならない。
 これ以上自分の目の前で、誰かが誰かを殺すのはまっぴらごめんだ。
 ようやく心を重ね合わせられそうになった始が相手ならば、なおさらだった。
 この戦いを見届ける。
 その行く末をよき方向へと導き、始をスカリエッティのアジトへと連れていく。
 今すぐに飛び出すことはできなくとも、それが今のスバルの役目であり、使命だった。

295散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:26:51 ID:.DfmzCYc0


 全く、俺は何をやっているのだろうな。
 何度となく繰り返した自問が、今もまた始の脳裏に響く。
 殺すためでない戦いなど、まるで自分らしくない。
 地球上の全生命種を虐殺するために生まれたジョーカーには、腐臭と返り血こそがお似合いだったはずなのに。
「とぁっ!」
 ぶん、とカリスアローを振るう。
 ヘルターにそれを受け止められ、スケルターによる反撃が迫る。
 ひらりと身をかわし、回避。己が刃を引き戻し、バックステップで後方へと下がる。
 構えた得物の名は醒弓。
 どどどどどっ、と音を立て、光の弾丸を連続発射。
 う゛んっ、と大気の震える音が鳴った。
 ギラファアンデッドを覆うバリアが、フォースアローを全弾防ぎきったのだ。
「オオオオオオッ!」
 だが、無論そんなことは百も承知。
 カテゴリーキングの鉄壁の牙城に、その程度の射撃が通用しないことは理解している。
 なればこそ、この連弾はあくまで牽制。
 相手の動きを抑え、直後の突撃に繋げるための囮。
『CHOP』
 カリスアローへとカードをラウズ。
 シュモクザメの始祖を封印したハートの3――チョップヘッドの効力を発動。
 消費APは600。得られる能力は、腕力強化。
 通常以上の破壊力を上乗せした必殺の手刀・ヘッドチョップの使用を可能とするラウズカードだ。
 駆ける、駆ける、疾駆する。
 己が全脚力を発揮して、ギラファアンデッドの懐へと飛び込んでいく。
 こんな気持ちで戦う日が来るとは思わなかった。
 天音母子でもない何者かの想いのために、こうして全力疾走することになるとは思わなかった。
 こんなことは、死神の仕事ではないというのに。
 ジョーカーであるはずの自分にはまったくもって似つかわしくないというのに。
「ダァッ!」
 それでも今は、かつてほどそれを不快には思わない。
 人の想いの尊さを知った今なら、多少は素直に受け止められる。
 人を守るための戦いも、その人の美しさを知った今ならば、悪くないと思える自分がいる。
 びゅん、と右手を振りかぶった。
 渦を纏った手刀が唸った。
 大気を切り裂く疾風の一撃が、目にも止まらぬ速度で異形へと殺到。
「ちィッ……!」
 がきん、という鈍い音と共に。
 神々しささえ漂わせる黄金の甲殻が、眩い火花を上げてたじろぐ。
 ゴリ押しで叩き込んだヘッドチョップが、クワガタの魔物へと命中した。
 手ごたえあり。直撃だ。
「はぁぁっ!」
 だがこの程度で倒せる相手ではないことも理解している。
 故にこの硬直につけ込み、更なる攻撃に繋げる必要がある。
 もとよりカリスの基本スペックは、カテゴリーキングたるギラファよりも劣っているのだ。
 その上で確実に勝利を手にするためには、相手に反撃の隙を与えず、一気呵成に連続攻撃で畳みかけることだ。
「調子に乗るな!」
 しかし。
 カリスアローを振り上げ、次なる攻撃を繰り出そうとした瞬間。
「ぐぁっ!」
 クロスに振り下ろされた金居の双刃が、斬撃ごと始を弾き返した。
 ヘッドチョップ以上の轟音と共に、漆黒の鎧が投げ出される。
 黄金と白銀の剛剣の軌跡が、目の奥でちかちかとスパークする。
「く……」
 唸りと共に、身を起こした。
 カリスアローを杖としながらも立ちあがり、構えを正し、正対した。
 さすがにこれだけでどうにかなるほど、仮面ライダーはヤワじゃない。
 力任せに振り抜かれた程度なら、まだスバルの放ったあの一撃の方が効く。

296散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:27:38 ID:.DfmzCYc0
「そうだ、ジョーカー。お前にはその方がお似合いだ」
 ぎらん、と金と銀が光る。
 黄金のヘルターと白銀のスケルターを、互いにこすり合わせて刃音を鳴らす。
 挑発的な動作を取りながら、黄金色の王者が語りかけた。
「所詮お前は処刑人……戦ってこそのジョーカーだ。人と群れるなんて似合わないのさ」
 だからさっさと楽になれと。
 殺戮者の本能に身を委ね、ジョーカーとなって好き勝手暴れるがいいと。
 どうせ滅ぼしてしまうのだから、人間とじゃれ合うことなどやめちまえ、と。
 なるほど確かに、こんなことはジョーカーらしくない。
 いずれは全人類を滅ぼすかもしれない厄災が、人の情になびこうとするなど、虫のいい話なのかもしれない。
「たとえそれしかできなくとも……昔のように戦うことはしない……!」
 だが、それでも構いはしない。
 自分が闘争を求める殺戮者であったとしても、それでも構わないと思っている。
 人と分かり合うことができなかったとしても、それでも構わないと思っている。
 カリスアローを握り締めた。3枚のカードを手に取った。
 ハートの形を描く紅蓮の複眼が、決意に眩く煌めいた。
「戦うことしかできないとしても……それが誰かを守ることに繋がることだってあるはずだ……」
 いずれは決着をつけなければならない時が来る。
 この身がアンデッドである限り、いつか人とぶつかり合う日は必ず来る。
 かつてのヒューマンアンデッドのように、人類種の代表として戦う戦士――仮面ライダーと戦う時は、いつか必ず訪れるだろう。
 そうなれば、必ず何かが終わる。
 人の世と自分の命、どちらかが潰えることになるだろう。
 だが、せめて。
 せめてそれまでの間は、自分にも人の想いを守れるのだと信じたい。
 ただアンデッドを駆逐するだけの戦いでも、それで救われる命があるのだと願いたい。
「本物の仮面ライダーになれなくとも、仮面ライダーの真似事くらいはできるはずだ……!」
 ハートの4――フロート。
 ハートの5――ドリル。
 ハートの6――トルネード。
 無機質な機械音声と共に、手にしたカードがラウズされていく。
 蜻蛉、巻貝、そして鷹――3種の原種の内包した力が、この身を駆け巡っていく。
『SPINING DANCE』
 あの青色の髪の娘と共に戦うことはできない――その想いは、今でも変わることはない。
 正義のヒーローは眩しすぎる。
 誰の命も奪わせたくないと願うスバルと、ギラファの犠牲も辞さない自分は、いつかどこかですれ違う。
 そして、たとえそうでなかったとしても、自分は本物のライダーにはなれないのだろう。
 人のために尽くしても、人と共存できないジョーカーは、人から賞賛されることはない。
 仮面ライダーとまるきり同じように、理解と共感を受けることはできない。
「だから俺は、仮面ライダーを名乗って戦う! まがい物であったとしても……人の想いを守るために!」
 ならば、自分は日陰者でいい。
 たとえ誰からも褒め称えられずとも、誰からも愛されなかったとしても。
 自分が勝手に愛した人間達を、勝手に守っていく程度で構わない。
 正義の味方になれずとも、日陰に紛れて悪を討つ、闇の処刑人で構わない。
 それも無駄ではないはずだ。
 それでも昔よりはましなはずだ。
 ただ淡々と敵を討つだけの日々よりは、ずっと尊く、胸を張れる生き方であるはずだ。
 そうだろう――――――ギンガ!

「俺は――仮面ライダーカリスだッ!!」

 絶叫と共に、床を蹴った。
 ラウズカードの輝きと共に。
 トルネードホークの突風と共に。
 漆黒の烈風と化したカリスが、宵闇を切り裂いて飛翔する。
 仮面ライダーとして認めてほしいわけではない。あえてその名を名乗ったのは、いわば意思表示と戒めだ。
 有言実行の意志のもと、その名に相応しい存在にならんと。
 たとえ狂気に堕ちたとしても、決して人を害することをしないようにと。
「ハァアアアアアアアアア―――――――――ッッッ!!!」
 ラウズカードコンボ、スピニングダンス。
 消費AP、3200。仮面ライダーカリスの持つ、最大最強の威力を有した必殺キック。
 その姿はまさに疾風一閃。天空より飛来し邪悪を撃ち抜く、一撃必殺の風の矢だ。
 ドリルのように身をよじり、竜巻のごとき風を纏い。
 一陣の風となった鎧の戦士が、ギラファアンデッド目掛けて殺到した。

297散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:28:29 ID:.DfmzCYc0
「馬鹿め!」
 しかし、それでも動じない。
 始の持つ最高火力のコンボを前にしても、黄金のキングは避けようともしない。
 素早く腰部へと伸ばした手を、そのまま投擲のようにして振るう。
 回転する始の視界の片隅で、きらん、と黄金が光った気がした。
 瞬間。
「っ!?」
 ずどん――と爆音。
 次いで、がくん、と身を襲う違和感。
 足元で爆ぜた衝撃と熱量が、スピニングダンスに急激なブレーキをかける。
 スピンの勢いが相殺され、回転軸が僅かにぶれた。
 それがギラファアンデッドの腰部に備え付けられた、鋏型の爆弾であった時には既に遅く。
「ォオオオオオアァッ!」
 揺らぐ視線の先には、光り輝く双剣を構える金居の姿があった。
 気合いと共に襲いかかる、二閃。
 妖しき光を纏ったヘルターとスケルターが、飛来するカリス目掛けて突き出される。
 瞬間、世界が炸裂した。
 轟、と響いた衝撃音と共に、強烈な極光が世界を照らした。
「があぁぁっ!」
 眩い闇を切り裂いたのは、今まさに必殺の一撃を放たんとしていたはずの始の悲鳴。
 呻きと共に弾かれた漆黒の鎧が、もんどりうって床を転がる。
 てらてらと水溜まりを作る緑色の血と、足から立ち上る黒煙が、そのダメージの大きさを物語っていた。
 ダイヤのカテゴリーキング――ギラファアンデッドの双刃には、ブーメラン状の光弾を放つ能力が備わっている。
 本来なら射撃武器として用いられるのだが、敵はそれを刀身に留め、斬撃の破壊力を強化したのだ。
 いかにカリスのスペックがジョーカーに劣るといえど、その最大必殺技をまともに受けては、さすがの金居もひとたまりもない。
 しかし、あらかじめ爆弾を命中させ勢いを殺したところに、
 120パーセント以上のパワーを込めた斬撃を当てれば、このようにして対処可能。
 それでも、一瞬でも爆弾を投げるタイミングが遅ければ、反撃に転ずる前に殺られていた。
 それを難なくこなしてのけたのは、さすがは最上級アンデッド屈指の切れ者といったところか。
「随分といい台詞を言うじゃないか。感動的だな」
 鎧の表面から立ち上る陽炎の奥で、黄金の異形が口を開く。
 挑発的な口調と共に、勝ち誇ったギラファが言葉を紡ぐ。
「だが無意味なんだよ。御大層な理想を口にしても、それを叶えるための実力が伴ってないようじゃあ、な」
 こんなところで俺に倒されるようでは、誰一人として救えはしないぞ、と。
「くっ……」
 ああ、確かにその通りだ。
 傷などは戦っているうちに治る。だが、問題はそこではない。
 必殺の覚悟で放ったコンボだったが、今のを防がれたことで、AP残量が相当に厳しいことになってしまったのだ。
 スピニングダンスの消費APは3600。
 さらにヘッドチョップの発動で600マイナス。
 初期APの7000からそれらを引くと、残されたAPは既に2800しかない。
 スピニングアタック――否、スピニングウェーブを使った時点で、ほぼカード1枚分のAPしか残らなくなる数値である。
 つまり、これほどの敵を相手にしていながら、カリスは完全に決め手を欠いた状態で戦わなければならないということだ。
 その程度のAPで勝てるほど、カテゴリーキングは脆弱な存在ではない。
「さて……そろそろお前との因縁にもケリをつけようか」
 じゃきん、と双剣が引き抜かれる。
 かつり、かつりと歩み寄ってくる。
 どうする。どうやって対処する。
 一度変身を解いてAP消費をリセットするか? 否、変身制限の設けられたこの舞台では、その戦法は実行できない。
 ジョーカーへと変身して戦うか? 否、それではまず間違いなくスバルを巻き込んでしまう。
 ならばスバルへと撤退を促すか? 否、あれが逃げろと言われて逃げるタマとは思えない。
 何か手を考えろ。
 残されたAPと10枚のカードで、この男を倒す方法は――
「これで終わりだ」
 瞬間。
 振りかざすヘルターとスケルターと共に。
 黄金と白銀の煌めきと共に。
 ギラファアンデッドの剛腕が、最後の死刑宣告を口にした刹那。
「!?」
 猛烈な轟音と烈光が、両者の間に割って入った。

298散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:29:05 ID:.DfmzCYc0


 この身がバラバラになろうとも。
 自分1人で闇に堕ちることになろうとも、私の知ったことじゃない。
 情けが瞳を曇らせるなら、心を捨てても構わない。
 犠牲が足りないというのなら、命を捨てても構わない。
 その一心で、身体を動かす。
 怒りの心で拳を振るい、憎しみの心で脚を繰り出す。
 罪の報いに軋む五体を、それでもなおも動かして、目の前の敵へと挑んでいく。
「はああぁぁぁぁぁぁーっ!」
 だんっ、と跳躍。
 両足で蹴られた大地が砕け、小規模なクレーターが形成される。
 噴き上がる土煙と小石の中で、金のポニーテールが舞い躍る。
 刹那の浮遊感と共に、瞬動。
 土色の闇の中で煌めくは、黄金と七曜に彩られた閃光。
 一筋の光条と化したヴィヴィオが、雄叫びに大気を震わせて殺到。
 ぐわん、と拳が空を切った。
 ぎらん、と2色の双眸が光った。
 七色の魔力光を宿した鉄拳が、吸い込まれるようにして目標へと迫る。
 鮮血と新緑の瞳に映るターゲットは、雷鳴と稲光を纏いし神――エネル。
「くどい!」
 しかし、一喝。
 ばちばちと唸る雷電を右手に溜め、迫りくる拳を迎え撃つ。
 響く烈光と烈音は、極大の電圧と魔力の反発するスパーク。
 虹色と蒼白の火花が弾け、衝撃に大気がびりびりと振動し、交錯する出力が風景すらも歪めた。
 膠着の余波は衝撃波へと変換され、ざわざわとホテル周辺の木々を掻き鳴らす。
 土と石と木の葉とが混ざり合う宵闇の中、拮抗を制したのはエネルだった。
 今や雷神は個人にあらず。
 人界・自然界双方の、ありとあらゆる電力を味方につけた群体であり、巨大な積乱雲そのものとでも言うべき現象であった。
 支配するエネルギーの総量がケタ違いなのだ。
 エネルギー同士で真っ向からぶつかり合えば、もはや何物にも打ち負けることは有り得ない。
 暴風のごとき速度で肉迫していたヴィヴィオが、風に煽られた落ち葉のように吹っ飛ばされる。
「まだ……まだァッ!」
 されど、それでも怯みはしない。
 エネルが雷神だと言うのなら、ヴィヴィオもまた只人にはあらず。
 エネルが纏うのが暗雲ならば、ヴィヴィオが纏うのは究極の闇。
 地獄の大帝の名を名乗り、極大の怖れと畏れを引き連れて、戦場を闊歩する凄まじき戦士。
 古代ベルカの叡智の詰め込まれた、最強最悪の殺戮兵器――聖王なのだ。
 ぐるんと体躯を回転させ、勢いを相殺。
 そのまま飛行魔法を行使し、遥か頭上高くへと飛翔。
 高く、もっと高く。
 速く、もっと速く。
 雷電の光と暗雲の闇を掻き分け、彼方の高みへと一直線。
 皮膚から漏れる膨大な魔力が、雲を引き裂き千切れさせ、天上の満月を露出させる。
「スケィィィィィィィィスッ!!」
 月に吼えた。
 煌々と光る銀月を背後に、自らの力を高々と掲げた。
 <死の恐怖>の二つ名を冠する、漆黒と黄金に彩られた刃鎌――“憑神鎌(スケィス)”。
 最愛の母という欠落に呼応し、復讐の意志に従って顕現した、死神の力を宿すロストロギア。
 黒天を照らす満月に、三日月模様の影が差す。
「神たる私よりも高く飛ぶな……!」
 それが神(ゴッド)・エネルにとっては、何物にも代えがたき恥辱であった。
 天とは神のおわす場所。
 雷の神たるエネルにとって、天空とは自らの領域であり、絶対不可侵の聖域だった。
 それをあのような小娘が、我が物顔で侵している。
 誰よりも強く高き存在であるはずの自分を、更なる高みに立って見下ろしている。
 まったくもって度し難く、まったくもって許し難い、最低最悪の不敬罪だった。
「神たる私を見下すなッ!!」
 怒りの咆哮はまさに神鳴り。
 真昼のごとき煌めきと共に、乱神エネルが空へと飛び立つ。
 下半身から伸びる二条の雷光が、上空高くへとエネルを押し出す。
 両足を雷へと変換し、更に大気の静電気を集め、推力へと変換した電気ロケットだ。
 大地を舐める電圧が、熱量となって地面を炙った。
 木々を薙ぎ倒し焼き尽くし、緑の森を赤色へと染めた。

299散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:29:46 ID:.DfmzCYc0
「雷鳥(ヒノ)! 雷獣(キテン)!」
 鳥神招雷。
 獣神招雷。
 3000万ボルトの眷属が、2体同時に解き放たれる。
 ノーモーションで放たれた鳥と狼が、暗闇を踏み締めヴィヴィオへと殺到。
 大技を使う際に叩いていた太鼓は、電力を効率よく使用するための予備電力だ。
 全身是雷電と化した今のエネルには、わざわざ太鼓を叩く必要などありはしない。
「ふん! せぇぇぇいっ!」
 斬――と二閃。
 全身の筋肉ををフルに使って、躍動感たっぷりに鎌をぶん回す。
 七色の魔力を纏った憑神鎌の刃が、2つの虹のリングを描く。
 迫り来る稲妻の猛獣を、魔性の処刑鎌(デスサイズ)をもって両断。
 瞬きの間に切り裂かれた雷神の使いは、霧散し闇へと溶けていった。
 刹那、ばちっ、と。
 ヴィヴィオの視界の片隅を、電気の烈音が立ち上った。
 反射的に、上を向く。
 天空に座するは、雷神エネル。
 稲光を後光とし、まさしく神の威容を醸し出す大男が、莫大な閃光と共に浮かんでいた。
 ばちばちと弾ける雷鳴は、さながら巨獣の唸りのようだ。
「受けよ、6000万ボルトの雷――雷龍(ジャムブウル)ッ!!」
 否。
 それはただしく巨獣であり。
 それはまさしく龍神だった。
 鼓膜を突き破らんばかりの爆音が襲う。
 網膜を焼き切らんばかりの極光が迫る。
 超巨大な龍蛇の姿を成した雷の塊が、雄叫びと共に舞い降りてきたのだ。
 身をくねらせ牙を剥くさまは、伝承に伝えられたドラゴンそのもの。
 これはスケィスでは切り裂けない。砲撃で返すにはチャージ時間が足りない。
 故に急速旋回し、反撃ではなく回避を行う。
 必要最低限の動作で、掠めるほどのギリギリの回避。
 あえて転身には出力を使わず、生じた余裕を上昇へと使う。
 昇る聖王に、下る雷龍。
 灼熱の光に煌めく龍の腹をなぞるようにして、七色の王が天へと昇る。
 輝く星々は点から線へと。
 流れた吐血が乾くほどの。
 疾風迅雷の速さと共に、天上で吼える神へと迫る。
「オオオオオオオッ!」
「ダアアアアアアッ!」
 轟くは赤と黒。
 血濡れのごときレイピアと、宇宙の暗黒のごとき処刑鎌。
 雷を纏ったジェネシスの剣と、妖光を孕んだ憑神鎌が、月光をバックに真っ向から衝突。
 火花さえも呑み込むスパークが、激烈に鮮烈に爆裂する。
 猛反発の生んだ衝撃が暴風を成し、天空を満たす雨雲全てを弾き飛ばした。
 千々に千切れた暗闇の中を、疾走する2柱の天神と邪神。
 駆ける。交わる。離れて駆ける。
 走る。ぶつかる。すれ違い走る。
 もはや人間の動体視力では、人影として視認することすらかなわなかった。
 人知を超えた超速で疾駆する神々は、一切の誇張なく2本の光線と化した。
 金と虹が闇を飛び交い、激突と離脱を繰り返し、夜空に蜘蛛の巣のごとき軌跡を生む。
 音すらも置き去りにした光と光による、瞬きよりも速い空中演舞。
 ずぅぅん、と大地を爆音が襲った。
 今さらになって地面に着弾した雷龍(ジャムブウル)が、森林を呑み込む業火へと化生。
 轟――と炎熱の音が湧き上がると同時に、ヴィヴィオとエネルが空中で静止し、一瞬の対峙を生み出した。
 今や空を満たすのは、夜の暗黒のみではない。
 大帝が放つ七曜の極光。
 雷神が纏う雷電の神光。
 地より昇る灼熱の烈光。
 天より注ぐ銀月の霊光。
 銀色、赤色、白色、七色。
 数多の光彩が入り混じり、魔力の残滓がプリズムを成し、雷鳴と火花が伴奏を奏でる、暴力的な光の混沌。
 恐るべきはこのカオスが、たった2人の人間によって生み出されたということだ。
 自然の法則を真っ向から粉砕し、狂的魔的な光の異界を創造した両者は、とうの昔に人間の次元を超越していた。

300散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:30:29 ID:.DfmzCYc0
「もう一度食らうがいい!」
 振り上がる両腕。
 突き出される掌。
 神の裁き(エル・トール)の電力を上乗せされ、更なる凶暴性を得た雷龍(ジャムブウル)が再臨する。
 煌々と輝く剛腕から射出された龍神が、一直線にヴィヴィオへと襲来。
「それはもう、覚えた!」
 されど、地獄の聖帝は怯まない。
 震えも怖れも見せぬまま、悠然とも取れる覇気と共にそこに在る。
 瞬間、光が揺れた。
 内より湧き上がる膨大な魔力に、周囲の光が陽炎のごとく揺らいだ。
 魔力の風に煽られて、金糸のサイドポニーがはためいた。
 エネルと同じように両手を振り上げ。
 エネルと同じように両掌を突き出し。
 エネルと同じように溜め込んだ力を。
「吼えろ――帝龍(カイゼルドラッヘ)ッ!!」
 エネルと同じ龍の名と共に、放つ。
 瞬間、爆音を伴い現れたのは、プラズマの鱗を煌めかせる七星の龍。
 暗雲を引き裂きまき散らし、渦巻く魔力の轟音を雄叫びとして。
 虹色のオーラを身に纏いし魔導の龍が、大気を焦がし火花すらも熔かして、満月の夜空に躍り出た。
 聖王ヴィヴィオを最強の生物兵器たらしめるものは、その圧倒的パワーだけでも、堅牢な聖王の鎧だけでもない。
 戦いの中で相手の技を解析し、理解し、我が物として習得する――それが聖王第3の能力・高速データ収集だ。
 単一脳で動作し殺戮する野獣ではなく、ロジカルをもって力を制御する暴君。
 奇しくもかの不死王(ノスフェラトゥ)アーカードと同じ、知性的なパワーファイター。
 それこそが古代ベルカ技術の粋を集めて生み出された、最強最悪の凄まじき戦士である。
 輝くカイゼル・ファルベを媒介として顕現した、帝王の名を冠する龍は、エネルの雷龍(ジャムブウル)の紛い物。
 されどそこに宿りし力と威容は、本物の雷龍(ジャムブウル)にも一歩も劣らぬ確かな物。
 その巨体は見る者全ての網膜を焼き尽くし。
 その咆哮は見る者全ての鼓膜を引き千切り。
 その剛力は寄る者全ての五体を蒸発させる。
 ばちばちと叫ぶ白色の龍が、牙を剥いて飛びかかった。
 ごうごうと唸る虹色の龍が、うねりと共に迎え撃った。
 龍と龍。
 雷と虹。
 オリジナルとダイレクトコピー、その力は全くの互角。
 衝突により生じた光と音は、世界を隔てる境界さえも、ガラスのごとくかち割らんばかりの迫力。
 地獄の業火に照らされた宵闇の中で、2頭の巨龍が咆哮した。
 互いに爪を立て合い肉を噛み千切り合い、身が絡まらんばかりの勢いでのたうち合った。
「神の力を真似る盗人めがッ!」
 エネルが迫る。
 灼熱色の切っ先を、稲妻色に照らし上げ、怒れる雷神が襲いかかる。
 龍と龍の攻防を背景にして、神と神とが激突する。
 振るわれるは幾千万の快刀乱舞。
 迎え撃つは怪力無双の虹の円環。
 目にも留まらぬ速さで繰り出される連続攻撃を、目にも留らぬ速さで連続防御。
「くっ……」
 僅かにエネルの勢いが勝った。
 身長差から来る高低差が、エネルへと有利に働いた。
 一瞬の防御の崩れ――その刹那を突いたジェネシスの剣が、ヴィヴィオを地へと叩き落とす。
 接地寸前のところでバランスを立て直し、大地を滑るようにして、着地。
 憑神鎌の切っ先を地へと突き立て、慣性に引きずられる身体へとブレーキをかける。
 後を追うようにしてエネルが着地し、再び対峙する姿勢となった。
 初撃の雷龍(ジャムブウル)に焼かれた森は、まさに灼熱の運河のど真ん中だ。
 そしてそこへ迫る、新たな光。
 エネルの着地とほとんど同時に、2頭の龍が地へと降り立つ。
 互いの身を貪り合う雷龍と帝龍が、互いに絡み合いながら迫り来る。
 両雄は主君らのすぐ脇を掠め、その後方にそびえる施設――ホテル・アグスタへと殺到。
 ばごん、と鈍い音が鳴り響いた。
 コンクリートの壁が砕かれ、ガラス窓が瞬時に蒸発し、ホテルに巨大な風穴が空いた。

301散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:31:11 ID:.DfmzCYc0
「ほう……?」
 ふと。
 その、瞬間。
 不意にエネルの目線が逸れた。
 殺意にたぎっていた乱神の視線が、ヴィヴィオ以外の何物かを捉え、興味深げな呟きを漏らす。
「あ奴め、まだ生きていたのか」
 にやり、と笑った。
 訝しがるヴィヴィオもまた、つられるようにして視線の方へと振り返る。
 ぱらぱらと瓦礫の音を立て、煙をたなびかせる穴を見やる。
 暗闇の中にあったのは、合計3つの人影だ。
 1つは全身を黄金色に染め上げた、クワガタムシのごとき外観を有した怪物。
 1つは鏡の世界で戦った男にも似た、ハートの意匠が目を引く漆黒の鎧。
「スバル、さん……?」
 そして最後の1つは、管理局の制服を着た青髪の少女――なのはの部下、スバル・ナカジマ。
「どうして……どうしてそんなところにいるの……」
 何故だ。
 何故お前がここにいる。
 こんな所で何を悠長に引きこもっている。
 黒々とした理不尽な怒りが、沸々と胸へと込み上げてくる。
 お前にはやるべきことがあるだろう。
 私の最愛の母であり、お前の上官であるなのはママを守ること――それがお前の役割だろう。
 なのにその有り様は何だ。
 自分の職務をほっぽり出して、一体何をしているのだ。
 ママを守ることもせずに、訳の分からない異形と共に、一体何をじゃれ合っているというのだ。
 そんな人型崩れの化け物の相手の方が、ママよりも大事だとでも言うのか。
 許せない。
 断固として許しておけない。
 相手がかつての仲間であろうと知ったことじゃない。
 ママを見捨てた裏切り者は、私がこの手で始末してやる。
 そこにいる黒と金色の2人組諸共、まとめて迅速に殺戮してやる。
「このぉ……裏切り者があああああぁぁぁぁァァァァァァァ――――――ッ!!」



「あの時の雷の男か……!」
 嫌な予感の正体はこいつらか。
 こちらを覗く2人の姿を見た瞬間、始は即座に理解していた。
 突如、ホテルに空いた大穴の外に立っていたのは、数時間前に戦った自称神――エネル。
「気付かれたか」
 ち、と舌打ちしながら呟く金居の声が聞こえる。
 目の前の男は、避雷針を破壊するほどの雷を操り、小細工なしでスピニングダンスを破り、自分を倒したほどの強敵だ。
 あの時ギンガに助けられていなければ、確実に蒸し焼きになって死んでいただろう。
 おまけにその身に纏う電力は、あの時とは桁外れなまでに膨れ上がっている。
 スバルと対峙した時に感じた、禍々しい気配の正体としては、十分過ぎるほどの脅威だった。
「驚いたぞ、青海人よ。ただの人間風情が、あの雷地獄から生き延びていたとはな」
「俺はただの人間じゃない。もっとも、それでも危ないところだったがな」
 言いながら、身を起こす。
 今のやりとりの間に、立ちあがれるほどには回復していた。
 一瞬状況が好転したかと思ったが、すぐにそれが間違いであったことを理解する。
 何が好転したというのだ。
 目の前に立っている雷神は、ギラファアンデッドよりも遥かに危険な相手ではないか。
「ここまでだな、ジョーカー。決着がつけられないのは残念だが、俺はここで失礼させてもらう」
 そしてそのギラファが口にしたのは、そんな言葉。
「何だと?」
「あいつらは俺の手に負える奴らじゃないんでね。まぁ、せいぜい戦って死んでくるがいい」
 そんな捨て台詞を残して、黄金の背中が遠ざかっていく。
 ダイヤのアンデッド種の中でも、最強を誇る金居の撤退――それが意味するところが分からないほど、相川始は間抜けではない。
 むしろエネルの実力を考えれば、あの理屈屋が逃げ出すというのも、自然な反応だと思えた。
 だが、奴は何と言った?
 奴“ら”? 金居の手に負えない相手は、あのエネルだけではないというのか?
 半裸の自称神と対峙する者――あの金髪と黒衣の女もまた、エネルと同等の脅威であるとでもいうのか?

302散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:32:00 ID:.DfmzCYc0
「あれは、まさか……ヴィヴィオ!?」
「知っているのか?」
 不意に声を上げたスバルに、問いかける。
「はい。あたしの上官が、娘として引き取った子です。本当はもっと小さい子なんですけど……」
「うあああぁぁぁぁぁっ!!」
 説明に割って入る、怒号。
 反射的に声の方を向き、反射的に身をかわした。
 一瞬前まで自分がいた場所を襲ったのは、激烈な虹色の衝撃波だ。
 その手に構えた巨大な鎌に纏ったエネルギーを、スイングの勢いで放ったのだろう。
 理屈は簡単だ。
 だが、それがもたらした被害の何としたこと。
 ただエネルギーを放出しただけの一撃の跡が、煌々と赤い光を放っているではないか。
 七色の刃が抉った床が、燻った音を立てどろどろに赤熱していた。
「どうやらここから出る方が先らしいな」
 正面玄関を視界に収めながら、呟く。
 ただでさえここにはエネルもいるというのに、あんなものをバカスカと連発されてはまずい。
 広範囲攻撃を可能とする雷撃に、砲撃じみた勢いの斬撃――この閉鎖空間でそんなものを相手にしていては、今度こそ蒸し焼きにされてしまう。
「脱出するぞ!」
「あ、はい!」
 スバルに声をかけると同時に、出入り口を目指して、疾駆。
 背後を通過する電撃や射撃には目もくれず、ひたすら目的地目掛けて走る。
 自動ドアが開かない。開くのを待っている暇はない。
 カリスアローを振りかぶり、ガラスをかち割って脱出。
 いつしかホテル・アグスタの外は、あの時と同じ火の海になっていた。
 自分達が戦いに没頭していたうちに、これほどの破壊活動が行われていたというのか。
 カリスの鎧を茜色に光らせながら、己が不注意を恥じた。
「あの子は聖王っていう特別な生まれの子で、前にもああいう風になって暴走したことがあるらしいんです」
 後ろから追いかけてくるスバルが、先ほど中断された説明を続ける。
「暴走か」
「その時と同じことになってるのなら、適切な処置を施せば落ち着くはず……とにかく、急いで無力化させないと!」
「なら話は早い。さっさと無力化させて、ここから逃げるぞ」
 方針は決まった。
 まずはそのヴィヴィオとやらから戦闘能力を奪い、その上で戦線を離脱する。
 エネルがあの時よりも強力になっており、おまけにヴィヴィオがそれと同等の実力者だと言うのなら、現状での勝算は毛ほどにもない。
 しかし彼らを2人とも野放しにすれば、取り返しのつかなくなるほどの犠牲が出ることは容易に想像できる。
 幸いにもヴィヴィオには、無理に殺さずとも黙らせることのできる裏技があるらしい。ならば狙うのはそちらだ。
 彼女を無力化させることができれば、それで脅威は半減するはずだ。
「分かりました! 援護頼みます、始さん!」
 言うや否や、スバルが駆けた。
 ジェットエッジのエンジンを噴かせ、炎熱の焼け野原を一直線。
 考えなしの突撃ではない。
 考える余裕がなかったのなら、エネルを野放しにするという選択に異を唱えていただろう。
 彼我の戦力差を見極め、現時点ではあの雷神に勝てないと判断する冷静さを持ちながら、あえて腕の負傷を度外視し、ヴィヴィオの懐へと飛び込んだのだ。
 ならば、そこにはそうしなければならない理由があるに違いない。
 たとえばその適切な処置とやらが、スバルにしかできないものである、といったところか。
「いいだろう」
 それならば話は早い。
 もとよりこちらもAPに余裕はないのだ。今回は援護に徹させてもらうとしよう。
 カリスアローを油断なく構え、金髪を揺らめかせる少女を狙う。
 問題はない。スバルは絶対に死なせない。
 自分に大切なことを教えてくれた、あのギンガの忘れ形見を死なせはしない。
 そう固く胸に誓い、エネルギーの矢を醒弓につがえた。

303散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:32:41 ID:.DfmzCYc0


「うおおおおおおっ!」
 気合いと共に、歩を進める。
 ジェットエッジの最大加速をもって、ヴィヴィオへと一直線に突っ込んでいく。
 全く恐怖がないわけではない。
 直接戦ったことも、目の当たりにしたこともなかった聖王モードだが、その戦闘力の高さは聞かされている。
 AMFによる制限下にあったとはいえ、あのなのはのブラスターモードと、互角以上に渡り合ったというのだ。
 この手に培った力が、本当に通用するかどうかは分からない。
 おまけに左腕を封じられた今、望みは更に薄くなっていることだろう。
 最悪、手も足も出ないままに、一撃で抹殺されてしまうかもしれない。
 それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。
 この場でヴィヴィオを止められるのは、自分1人しかいないのだから。
(防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウン……!)
 それが攻略法だった。
 相手がゆりかご攻防戦の時と同じ状態に陥っているというのなら、あの魔力の源泉となっているのは、体内に組み込まれたレリックのはずだ。
 最大威力のディバインバスターをぶつけ、レリックを破壊することで、彼女の聖王モードを強制解除させる。
 それこそがスバルの狙いだった。
 腰を据える。
 構えを取る。
 いきなり必殺技を当てられるとは思えない。牽制や体力削りを駆使して、当てられる状況を作らなければ。
「てぇりゃっ!」
 ジェットエッジのスピナーを回転。
 左足を軸にして、豪快な右回し蹴りを叩き込む。
 脳天目掛けて放たれた一撃が、轟然と唸りを上げて肉迫。
「このっ!」
 されど、通じず。
 この程度の一撃が、聖王に通るはずもない。
 龍鱗のごとき漆黒の籠手が、放たれたキックを難なく防御。
 火花散らす渾身の蹴りを、身じろぎ1つすることなく受け止める。
 ある程度覚悟していたとはいえ、何という圧倒的なパワーか。
 年相応の少女の細腕の守りが、鋼鉄の壁のように硬く、思い。
「何で、なのはママを守ってくれなかったの……何でなのはママを見殺しにしたの……!」
 ぼそり、と膠着の奥から響く声。
 怨嗟と憤怒に彩られた、低く鋭いヴィヴィオの声。
「ッ!」
 胸が痛んだ。
 どうしようもなかったこととはいえ、どうしてもちくりと刺さるものがあった。
 会うことさえもできなかったのだから、見殺しにすらもしようがなかったのは確かだ。
 それでも、それはただの言い訳に過ぎない。結局なのはのうちの片方を、助けることができなかったのには変わりない。
「なのはママが死んじゃったのに……何でスバルさんなんかが生き残ってるのぉぉっ!!」
 怒りと悲しみの込められた、悲鳴のような絶叫だった。
 鉄壁の防御から、怒濤の反撃へと。
 力任せに振り払われたヴィヴィオの腕が、スバルをあっさりと吹き飛ばす。
 彼女自身がそうされた時は、飛行魔法でブレーキをかけ、即座に態勢を立て直した。
 しかしスバルをそうした時には、制御の隙など与えなかった。
「!」
 瞬きの刹那。
 直前まで視認していた聖王が消える。
 一瞬後に現れたのは、目前にまで迫った聖王の威光。
「がッ! う……っ!」
 一撃、そして一撃。
 食らったのはアッパーカットと、それからボディーブローだろうか。
 拳の軌道は見えなかった。だがそれでも、顎と腹から響く痛覚が、攻撃を受けたことを理解させた。
 目にも留まらぬとはまさにこのことか。
 吹っ飛ばされた態勢では、知覚すら不可能な速度での連撃を叩き込まれた。
 初撃のアッパーによる減速感から、二撃目のブローで再び加速。
 燃え盛る炎の風景が流れていく。
 やがて身体が地に落ちて、もんどりうって転がっていく。
 背後に熱風の揺らめきを感じた。
 ようやく止まったその場所は、火種の目と鼻の先だった。
 もう少しだけ運が悪ければ、炎の中に突っ込んでいたということか。いよいよ背筋がぶるりと震えた。

304散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:33:14 ID:.DfmzCYc0
 そしてそれだけには留まらない。
 怒号と共に迫る第三撃。
 土煙を撒き散らして迫るのは、死神の大鎌を構えしヴィヴィオの姿。
 <死の恐怖>の名を冠する憑神鎌が、黒金と彫金に彩られたその身を、炎の紅蓮に煌めかせる。
 真紅の光が線となり、軌跡を成してスバルへと襲来。
「っ!」
 カリスからの援護攻撃が放たれたのは、ちょうどこの瞬間だった。
 きんきん、きん、と響く音。
 カリスアローから連続発射されたアローショットが、次々とヴィヴィオに着弾する。
 されど、それでも凄まじき戦士は止まらない。
 黒より暗き究極の闇は、光の矢ごときでは晴らせない。
 飛来し着弾する光弾の全てが、堅牢な聖王の鎧を前に、虚しく弾き返されるのみ。
「死んじゃえェッ!」
 鼓膜を打つ裂空の音。
 虚空を引き裂く死神の鎌。
 振りかざされた黄金の輝きが、脳天目掛けて叩き込まれる。
「くっ!」
 そんなものに当たるわけにはいかない。
 痛む身体に鞭打って、ごろりと身を転がして回避する。
 豪快に空振った憑神鎌の切っ先が、がつんと音を立てて地に突き刺さった。
 油断はできない。すぐに追撃が来る。
 普通に起き上がっていては遅い。迎撃より先に追撃が飛んでくる。
 故にジェットエッジのエンジンを噴かせ、強制的に足を振り上げさせる。
 轟、と響く唸りと共に、右足が上空へと押し出された。
 結果、命中。強引に繰り出されたハイキックが、ヴィヴィオの顎へと直撃した。
 そのまま左足のエンジンをも起動。くるりと空中で身を縦に一回転させ、着地。
「ウィングロードッ!」
 叫びと共に、地を殴る。
 今の一撃分で怯んだ隙に、魔力で固めた空色のロードを顕現。
 そのままウィングロードに飛び乗ると、急速にヴィヴィオとの間合いを開けていく。
 まともに打ち合うことはしなかった。敵の戦闘能力を考えれば、真っ向勝負を挑むのは危険だ。
 故に、ヒット・アンド・アウェイ。
 極力相手との接触を避け、一撃に懸ける戦法を取るしかなかった。
 そして。
 その、刹那。
「!?」
 ごろごろ――と。
 突如として、世界が白光に満ちた。
 耳朶を打つは猛烈な音。
 視界を覆うは蒼白の闇。
 戦場全域に落雷が放たれたのだ。真昼のごとき煌めきと共に、周囲の全風景が雷光で埋め尽くされた。
「神の存在を忘れて戦えるとは、随分と余裕なことだなぁ」
 余裕綽々といった様子で呟くのは、半裸と異様な福耳が目を引く男だ。
 そういえばヴィヴィオだけでなく、この男もまたこの場にいたことを思い出す。
 であれば今の無数の雷撃は、この男が放ったということか。
 自然の摂理をこうまで意のままに操るとは――そこまで考えたところで、それもまた納得がいくかと思い直す。
 そもそもこの雷男は、つい先ほどまでこのヴィヴィオと対峙し、そして生き残った男だ。
 そんな奴が、只人のしゃくし定規で計れるような、凡庸な男であるはずがなかった。
「まとめて消し炭となるがいい!」
 そうこうしているうちに、追撃が迫る。
 雷鳴が鳴り、雷光が光り、暴力的殺傷力を持った死の稲妻が、軍勢を率いて襲いかかる。
 悠長に止まっている暇はない。足を止めれば、そこを突かれて一巻の終わりだ。
 ウィングロードから飛び降り、燃え盛る大地へと着地。
 予めこちらの進路を知らせることになるあの魔法を、この状況で使い続けるのはまずい。
 エンジン、再始動。
 加速、カット、そしてカット。
 天空より迫る稲妻を、稲妻の軌跡をもって回避していく。
 光速の雷を直接回避しているわけではない。ランダムな軌道を取ることで、相手の照準精度を狂わせているのだ。
 ちら、とカリスの方を見やる。どうやらあちらもちゃんと回避できているらしい。
 そしてヴィヴィオの方を向く。こちらはかわすまでもなく、シールドをもって防御していた。
 やはり魔力総量の桁が違う。稲妻を真っ向から受け止めるなど、並の人間には決して出来たものではない。
 本当にあの聖王には、首輪による制御が課せられているのだろうか? それすらも疑わしく思えてきた。

305散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:34:03 ID:.DfmzCYc0
「邪、魔……だああぁぁぁぁッ!!」
 そのヴィヴィオの咆哮と共に、莫大な魔力が込み上げる。
 聖王の怒りと共に顕現したのは、七色に煌めく巨大な龍。
 スバルにとっては知るよしもないが、あの時エネルの技をコピーし編み出された攻撃魔法――帝龍(カイゼルドラッヘ)だ。
 荒ぶる龍神へと化生した極大の魔力が、轟音と共に虚空を泳ぐ。
 地に落ちた無数の雷を、貪り食うかのように蛇行。
 そして円の軌道を描く龍が、方向を転じ牙を剥き、スバル目掛けて一直線に飛来。
 あれは雷よりも危険だ――目に見えて明らかな分析結果だった。
 エネルの雷すらも噛み砕き、呑み込んだ龍の攻撃をまともに受けては、恐らく死体すらも残るまい。
「っ!」
 ほとんどでんぐり返しのような動作で、スレスレのところを緊急回避。
 かわしきれなかった前髪の先端が、巨龍の光輝に掠められる。
 文字通り眼前で直視させられた光彩は、幾多の色が複雑怪奇に絡み合い交わり合う、気が狂いそうになるほどの虹色だった。
 じゅっ、と音がしたかと思えば、前髪から焼け焦げた臭いが漂ってきた。
 たっぷり3秒ほどかけて、帝龍(カイゼルドラッヘ)がスバルの頭上を通過する。
 轟然と飛翔する龍神は、しかしそれ以上深追いをせず、次なる目標へと意識をシフトしたようだ。
 ぎゅおん、と大気をぶち砕き。
 がりがり、と大地を削り取り。
 土埃と岩石を巻き上げて駆ける先には、落雷を起こした張本人たる神(ゴッド)・エネル。
「神の裁き(エル・トール)――MAX2億ボルト!」
 異様な風体の雷男が取った行動は、回避でもなければ防御でもなかった。
 命中すれば即死確定の一撃を前に、しかし避けるでも防ぐでもなく、悠然と両手を突き出すのみ。
 瞬間。
 雷神と帝龍の影が重なる。
 カイゼル・ファルベの化身たる龍神が、エネルの体躯を噛み砕く。
 その、はずだった。
「!?」
 されど。
 次なる瞬間目にしたのは、龍の放つ七曜光ではなく。
 その内側より迸る、蒼白色の雷光だった。
 ぱっ、ぱっ、ぱっ、と。
 頭から、下顎から、首から、胴から。
 さながら強靭な龍鱗を、体内からかち割り突き出す槍のごとく。
 帝龍(カイゼルドラッヘ)の全身から、次々と漏れ出す線上の光条。
 刹那。
 どう――と音を立て、爆散。
 ぼこぼこと泡立つように巨体が膨らんだかと思えば、次の瞬間には爆裂四散し、世界が白光に満たされる。
 光輝の中心より現れたのは、煌めく双剣を携えし雷神。
 舞い踊る虹色の火花の中に立つのは、不敵な笑みを浮かべるエネル。
 否、それは双剣ではなかった。
 さながら巨大な剣のごとく、長大に膨張した両腕であった。
 雷化した両手が光の剣を成し、中心から龍を左右に引き裂いたのだ。
 あれだけのエネルギーの集合体を、いともたやすく消失させるとは。
 やはりこの男も、ヴィヴィオと対峙するだけはあるということか。
 自分達人間や戦闘機人とは、根本的に次元の違う存在を、まざまざと五感で痛感させられた。

306散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:34:40 ID:.DfmzCYc0
「こぉんのぉぉぉぉぉーッ!」
 怒れる凄まじき戦士の瞳には、もはやエネルしか映っていないらしい。
 完全に頭に血を上らせたヴィヴィオが、地に憑神鎌を刺し固定させ、両の手に魔力球を形成。
 投擲、そして投擲と、息つく暇もなく二連発。
 刹那、光の弾が爆ぜた。
 それもエネルによって迎撃されたのではない。直撃の寸前で、自ら弾丸が炸裂したのだ。
 1は10へ。2は20へ。
 四散した2つの弾丸は、瞬時に数十の散弾へと変貌。
 あれは確かセイクリッドクラスター――ミッド式の魔導師が使用する、散弾タイプの射撃魔法だったはずだ。
 球体から雨へと転じた魔力弾が、一斉にエネルへと襲いかかる。
 ずどどん、どどんと小気味よく響く、弾丸の奏でる爆裂音。
 されど七色の花火が弾けるのは、エネルの表皮の上ではない。
 ランダムな角度から迫り来る弾丸は、しかしそれら全てが回避される。
 ステップを踏むエネルが身軽にかわし、散弾は虚しく地へと落ちる。
「ヤハハハハッ! どうした、こんなもので終わりか!」
「何で……何で当たらないのっ!?」
 声高に嘲笑するエネル。
 焦燥に顔を歪めるヴィヴィオ。
 焦りは苛立ちへと変遷し、弾丸を生むペースを加速させる。
 続々と次弾を装填し、続々とターゲットへと投げ込んでいく。
 しかし、平静さを欠いた射撃が、そう簡単に当たるはずもない。
「なっ……!?」
 そしてその隙を見逃すほど――仮面ライダーカリスは甘くなかった。
「ハァァァッ!」
 斬、斬、続けて斬。
 ぎん、ぎん、がきんと響く。
 立て続けに掻き鳴らされる、醒弓の放つ金属音。
 漆黒の聖王の鎧を叩くのは、白銀に輝くカリスアローの刃。
 エネルに意識を集中させていたヴィヴィオの隙を突き、始が一気呵成に斬りかかったのだ。
 完全に不意を打たれる形になったヴィヴィオは、反撃も防御もすることができない。
 そのままいいように攻撃されるうちに、いつのまにか背後に回り込まれ、羽交い絞めの姿勢を取らされる。
「今だ、スバル!」
 両腕で動きを封じたカリスが、スバルへと叫んだ。
 処置とやらを施すのなら、今のうちにさっさとやれと。
 自分が抑えているうちに、この聖王との戦いにケリをつけろ、と。
「………分かりました!」
 返事をしてからの反応は素早かった。
 言葉を返すや否や、再びジェットエッジを起動。
 ロケットエンジンのバーニア炎が光る。車輪が大地を掴んで唸る。
 さながら一発の砲弾のように、スバルの身体が撃ち出された。
 駆ける、駆ける、疾駆する。
 速く、速く、もっと疾く。
 瞬間ごとに加速度を上昇させ、マックススピードへと一直線。
「このっ……離せ、離せェッ!」
「離、さんっ!」
 目の前ではじたばたと暴れるヴィヴィオを、カリスが必死に抑えつけている。
 あれほどの怪力を持つ身体だ。恐らく仮面ライダーといえど、そうそう長くは保たせられまい。
 なればこそ、あの拘束が解ける前に、とどめの一撃を叩き込まなければ。
 デイパックからレヴァンティンを取り出し、セットアップ。
 最後に残されたカートリッジのロードと同時に、腰に出現した鞘へと納刀。
 剣は振るうためのものではない。あくまで魔力制御のためのものだ。
 足元にベルカの三角陣が浮かぶ。
 合わせて両の腕を回転させる。
 みしみしと左腕が軋むのをこらえ、虚空に空色の魔力スフィアを形成。
 狙うはゼロ距離で発射する、最大出力のディバインバスター。
「ディバイィィィーンッ―――」
 未だこの身に刻んだ力が、彼女に通用するかは分からない。
 未熟な自分の砲撃が、レリックを砕くことができるかどうかは分からない。
 それでも。
 だとしても、やるしかないんだ。
 今の自分達に取れる手段は、これ1つっきりしかないんだ。
 やれるやれないの話ではない。やらなければならないんだ。
 必ず成功させてみせる。
 この手でヴィヴィオを止めてみせる。
 かつて憧れの人がそうしたように、少女を縛る狂気の鎖の、この一撃で打ち砕いてみせる――!
「―――バスタアアアァァァァァ――――――ッッッ!!!」
 右の拳が、スフィアを打った。
 空色の弾丸が、砲撃へと転じた。
 始がヴィヴィオに払いのけられたのは、ちょうどこの瞬間だった。

307散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:35:14 ID:.DfmzCYc0
「ぐううぅぅぅぅっ!!?」
 もはや今さら逃れても遅い。
 超至近距離まで接近したスバルの攻撃から、逃れられる者など存在しない。
 全力全開で放たれたディバインバスターが、過たずして腹部へと命中。
 轟、と唸る音と共に、魔力が激流となって放出される。
 一筋の空色の光線が、必殺の破壊力をもってヴィヴィオを飲み込む。
 オリジナルには劣るとはいえ、前線フォワードきってのパワーファイターたるスバル・ナカジマの、正真正銘最強最後の切り札だ。
 それを喰らう者にとっては、暴風雨の直撃にすら匹敵する衝撃だった。
 倒せなくともいい。
 これが通りさえすればいい。
 この一撃がレリックを破壊し、聖王モードの解除に繋がりさえすればいい。
 この全力全開の砲撃で、ヴィヴィオを止めることさえできれば――
「こん、な、も……のおおぉぉぉぉぉォォォォッ!!」
 しかし。
 無情にもヴィヴィオの放った声は、未だ憎悪に濁った怒号。
 膨大な魔力の奔流を掻き分け、魔獣の金の爪が迫る。
 空色の光から伸びた龍鱗の腕が、スバルの頭をむんずと掴む。
 エネルギーの流れに逆らいながら、強引に砲手の身体を、投擲。
「うわああぁぁぁぁっ!」
 浮遊感は一瞬だった。
 超高速で投げ出されたスバルは、あっという間に地に叩きつけられる。
 髪についた土を払いながら、途切れかけた意識を取り戻した。
 痛む身体を突き動かして、うつ伏せになった上体を起こした。
「もういい……もうたくさんだ……みんなまとめて、吹き飛ばしてやる……!」
 僅かに靄のかかった瞳が捉えたのは、大鎌を引き抜くヴィヴィオの姿。
 極大の憤怒と憎悪に身を震わせる、怖ろしくもおぞましき地獄大帝の姿。
 天に突き上げた右腕へと、更なる魔力が集束される。
 天の満月を模したかのような、虹色の魔力スフィアが形成される。
 それはスバルの発射法と同じもの。奇しくも母の教え子を通じて、たった今その身に記憶した、最愛の母の信頼する必殺奥義。
 しかしそこに宿された破壊力は、スバルはおろかなのはのものですら比較にならない。
 2倍、3倍と膨れ上がったスフィアの直径は、スバルのそれの5倍以上。
 もはや砲撃魔法どころか、集束魔法にすら匹敵するエネルギー量だ。
 あれがひとたび発射されれば、自分どころかここら一帯の万象一切が、例外なく消し炭と成り果てるであろう。
「食らえ! ディバイイィィィィーン―――……ッッ!!」
 やはり、駄目なのか。
 ありったけの砲撃をぶつけても、ヴィヴィオを止めることはできなかった。
 自分ごときの力では、彼女を救うことはできなかったのか。
「バス――――――」
 掌が振り下ろされる。
 七曜の恒星が叩き落とされる。
 もはやこれまでと理解し。
 諦めと共に固く瞳を閉じ。
 その、刹那。
 極限までエネルギーを込められたディバインバスターが、今まさに放たれようとした瞬間。
「……―――――――――ッッッッッ!?!?!?!?!?!?!?!?」
 異変が、起こった。

308散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:36:07 ID:.DfmzCYc0


 ここで今一度思い出してほしい。
 ルーテシアのレリックと融合し、本来なら相性の合わない組み合わせで目覚めた聖王ヴィヴィオは、
 いくつもの欠陥をその身に抱えた、不完全なレリックウェポンと化していた。
 現時点までに発覚していた変化は、2つ。
 1つはかつてのゼスト・グランガイツのそれと同じ、身体を蝕む拒絶反応。
 1つはレリックの暴走による、一時的な魔力量の向上。
 一度に発揮できる魔力の量こそ増えたものの、同時に身体へのダメージさえも助長され、
 本人の意識せぬままに、より早いペースで身体にダメージを溜め込んでいくという悪循環である。

 しかし――本当に、それだけだろうか?
 ヴィヴィオの身体に起きた変化は、本当にその2つだけだったのだろうか?

 考えてもみてほしい。
 ヴィヴィオが何者であるのかを。
 聖骸布のDNAから生み出された人造魔導師が、一体何者なのかということを。
 ヴィヴィオはかつての聖王のコピーだ。
 古代ベルカ技術の直系を受け継いだ、最高のレリックウェポンの素体だ。
 身に溜め込んだ戦闘力と魔力は、並の人間を遥かに凌駕している。
 そのベルカ最強の生体兵器として生まれた彼女の身体を、凡百の人間と同じ定規で計っていいものなのか?
 いかにストライカー級騎士とはいえ、突き詰めればただの人間に過ぎないゼストと、全く同一のケースと見なしていいものなのだろうか?

 回りくどい言い方はここまでにしよう。
 ここからは率直に事実のみを述べることにしよう。

 言うなれば聖王ヴィヴィオの身体は、その莫大な魔力を内に溜め込み、コントロールするための器だ。
 大量の水を貯水池に留め、必要量のみを放出する、ダムのようなものである。
 では、そのダムが壊れたらどうなるか?
 水を抑え込めなくなるほどに脆くなったらどうなるか?
 拒絶反応の影響で、ボロボロになった肉体が、魔力制御の限界域を突破したら?

 その先に待つのは、たった1つのシンプルな回答。

 それはその身に宿った全魔力の――――――暴発。

 肉体の限界を超えた魔力が、器を破り全面放出されることによる、魔力エネルギーの大爆発である。

 これまではギリギリ耐えることができた。
 今までに蓄積されたダメージでは、ダムを決壊させるまでには、ほんの僅かに至らなかった。
 しかしそこへ、とうとう決定打が叩き込まれる。
 完全破壊までには至らなかったとはいえ、スバルの放ったディバインバスターが、レリックにダメージを与えたのだ。
 衝撃を与えられたレリックは安定性を失い、体内の魔力は大きく掻き乱された。
 そんな水流の大きく乱れた状態へ、更に追い討ちをかけるように、
 最大出力でディバインバスターを放つべく、ダムのほぼ全ての水門が開け放たれたのである。
 そうなれば、どうなるか。
 結論は決壊の2文字しかない。
 レリックの魔力のみならず、ヴィヴィオ自身の体内に潜在される魔力まで、根こそぎ放出されるのみである。

 こうしていくつもの条件が重なったことによって、薄氷の上に成り立っていた聖王の身体は――遂に、限界の瞬間を迎えたのであった。

309散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:36:55 ID:dce8GgBA0


「ぐォッ……!」
 その瞬間を、その場にいた誰もが目撃していた。
 超巨大魔力スフィアを発射しようとしていたヴィヴィオが、突如としてもがき苦しみ始めたのだ。
 両手で自身を抱くように掴み、呻きと共に肌を掻き毟る。
 スフィアは緩やかに消滅し、代わりに聖王の身体から、魔力が霧のように漂い始める。
 そしてそこに宿された光は、カイゼル・ファルベの虹色だけではない。
 不穏な気配を放つ赤色が、その中に混じり始めたのだ。
 赤はロストロギア・レリックの色。
 それが漏れ出したということは、ヴィヴィオの魔力回路を介することなく、直接レリックから漏れていることに他ならない。
 見る者が見れば、容易に危険だと推測できる状況だった。
「う……ゥ、ォオオオオオ……ッ!」
 遂に堪え切れなくなったのか、膝をついて崩れ落ちた。
 四つん這いの姿勢になったヴィヴィオの身体が、びくびくと小刻みに痙攣を始める。
 美貌にはじっとりと脂汗が滲み、サイドポニーの金髪がへばりついた。
 地に着いた四肢はがくがくと震え、口からは明らかに危険な量の涎が零れた。
 それどころかその中には、薄っすらと血が混ざっているようにさえ見える。
「ゥ、ア……あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!」
 瞬間。
 絶叫した。
 叫びが上がった。
 これまでの怒りの滲んだ怒号ではない、断末魔さえも思わせる悲痛な叫び。
 不意に弓なりに身体を反らし、中腰の姿勢となって放たれた咆哮。
 それが破綻の始まりだった。
 それが全ての合図となった。
 ヴィヴィオの絶叫を皮切りに、霧が間欠泉へと転じる。
 濁流のごとき勢いで、赤と虹の光が発せられる。
 さながら火山の噴火のように、漆黒の聖王の肢体から、膨大な魔力が放出されたのだ。
 轟々と渦巻くそのさまは、さながら小規模な暴風雨。
 暴力的なまでの閃光と爆音が、殺人的破壊力を伴ってぶちまけられた。

「何だ、あれは……?」
 相川始との予期せぬ再会によって、幾分か頭の冷えたエネルは、その光景を悠長に構えて見つめていた。
 不届きにも己と互角の勝負を展開していた小娘が、突然もがき苦しみ始めたのだ。
 そして身を起こしたかと思えば、この有り様。
 一体何が起きているというのか。
 見たところ、体調が悪くなったのは間違いないらしい。
 攻めるなら今をおいて他にないのだろうが、はてさて、あの身体から噴き出したエネルギーをどうするか。
 これまでの経験則からして、あれは当たったら痛そうだ。
 いくら回復手段があるとはいえ、痛みを覚えるのは面倒くさい。
 できれば下手に怪我することなく、あれを突破したいのだが――。

310散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:37:49 ID:.DfmzCYc0
 
「ヴィヴィオ……一体、どうしたの!?」
 ディバインバスターを直撃させ、意図せぬうちにこの状況を作ったスバルは、不安げな声でヴィヴィオに呼び掛けていた。
 あの状態はまずい。
 何が起こったのかはさっぱり分からないが、尋常ではない苦しみ方からして、彼女が生命の危機に瀕していることは分かる。
 できることなら助けたい。いいや、助けなければならない。
 たとえディバインバスターが効かなかったとしても、一度助けると決めたからには――
「なっ!?」
 そう思った、次の瞬間。
「逃げるぞ!」
 不意にカリスに手を掴まれ、そのままぐいと引き寄せられた。
「待ってください! ヴィヴィオを、ヴィヴィオを助けないと……!」
「もう限界だ! このままだと、俺達まで危険に晒されかねない!」
「そんな……!」
 始は本能的に察していた。
 あれは危険な現象だと。
 ヴィヴィオ1人のみならず、自分達周囲の人間にさえ、危険を振り撒きかねない現象であると。
 具体的に何が起こるのかは分からない。
 ただ漠然と、危険な気配だけは感じ取っていた。
 振りかえって見るだけでも分かる。
 見えない脅威を振り払わんと、巨大な憑神鎌を振り回し、先端から余剰魔力を光波として放つさまは、明らかに常軌を逸している。
 見捨てることで心が痛むのは確かだ。
 それでも今は、出会ったばかりの小娘よりも、ギンガの妹の方が大事だった。
 彼女だけは絶対に守る。
 人の想いの力を教えてくれたスバルを、絶対に死なせはしない。
 その一心で彼女の手を引き、得体の知れないカタストロフから、必死に逃げのびようとしていた。

「ゥウッ! グゥァアアアッ!!」
 獣のごとき雄叫びを上げ、狂ったように鎌を振るう。
 我が身を苛む何物かを、懸命に遠ざけようとするように。
 魔力の嵐の中心で、ヴィヴィオは苦痛の真っただ中にあった。
 燃え燻る森の火種も、挑みかかって来る敵の姿も、空の満月も見えはしない。
 全天360度の光景は、有象無象の区別なく、慈悲なく容赦なく万遍なく、神々しくもおぞましき虹色へと埋め尽くされる。
 浮かび上がる紅蓮の影は、手にした憑神鎌の力の顕現だったのか。
 レリックより滲み出る赤い魔力が、処刑鎌の待機形態を彷彿させる顔をした、三つ目の死神の姿を浮かび上がらせた。
「グェ、ェ、ェエエエエ……ッ!」
 痛い。痛いよ。
 身体中が苦しいよ。
 何でこんなことになっちゃったんだろう。
 どうしてこんなところまで来てしまったんだろう。
 仕方がないことだと思っていた。
 身体が痛いのも苦しいのも、人を殺そうとするヴィヴィオが悪い子だから、その罰を与えられたんだと思っていた。
 でも、本当はこんな苦しい思い、しなくていいのならしたくはなかった。
 こんな怖い思いなんて、本当はしたくなかったのに。
「ァ……ァアー、ア……」
 ママ。
 どこにいるの、なのはママにフェイトママ。
 一緒にいてくれると思っていたのに。すぐ傍で見ていてくれると思っていたのに。
 もう嫌だよ、ママ。
 痛いのも苦しいのも怖いのも、もうこれ以上味わいたくない。
 だから助けてよ。
 ここまで助けに来てよ、ママ。
 なのにママはどこにもいない。
 どこにもなのはママを感じられない。
 ああ――私、見捨てられちゃったんだ。
 あんまりヴィヴィオが悪い子だから、そんな子はもう知らないって、なのはママにも捨てられちゃったんだ。
 これで私は、独りぼっち。
 生まれた時と同じ、独りぼっち。
 誰にも助けられなくて、誰にも愛してもらえない。
 ヴィヴィオはもう――独りぼっち。

「……がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

311散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:38:22 ID:.DfmzCYc0


 それはただただ圧倒的で、暴力的で冒涜的な力の発言。
 燃え滓となった灰色の木々も。
 森林に鎮座したコンクリートのホテルも。
 そこに立つ人影達さえも。
 全てが区別なく平等に、光の中へと飲まれていく。
 地面の絨毯をひっぺ返し、大口開けて酸素を取り込み。
 恐怖さえも煽る虹色のドームが、全てを無へと帰していく。
 衛星のように駆け巡る赤色の線が、全てを切り裂き消し去っていく。
 影さえも飲み込む死の光。
 闇を切り裂く七曜の闇。
 全てが虹色に支配され、それ以外の何もかもが見えなくなって。
 たっぷり10秒間は続いた大爆発は、エリアF-8に現象する一切合財を、余すことなく飲み込んだのであった。

312散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:39:05 ID:.DfmzCYc0


 かつてホテル・アグスタと呼ばれていた、その施設の面影は既にない。
 ヴィヴィオの巻き起こした魔力爆発が、これまで健在であった建物に、遂にとどめを刺したからだ。
 コンクリートの壁も鉄骨も、情け容赦なく粉砕された。
 今その土地にあるものは、焦げた臭いを漂わせる、煤けた瓦礫の山だけだ。
「あの、女ぁぁぁ……!」
 そしてその灰色の山の中で、怒りに震える男がいる。
 全身をコンクリートに埋めながら、額に青筋を立てる男がいる。
 男の名は、神・エネル。
 スカイピアの神を自称し、恐怖こそが神であると自論し、恐怖による支配体制を敷き続けた雷の男である。
 その男が、生きていた。
 あれほどの爆発の中にあっても、驚くほどの軽傷を負うに留まり、こうして生きながらえていた。
 決め手となったのは、周囲の自然や建造物から電力を集めた、あの巨大な積乱雲だ。
 恐るべきことにこの男は、自らの支配した雷全てを使って、自らに襲いかかる魔力を、完全に相殺しきったのだった。
「最初から最後まで神を愚弄し……おまけにこんな屈辱を味わわせるとは……!」
 何だというのだ、この有り様は。
 全能の神を自称していた自分が、一体何という体たらくだ。
 か弱い少女を狩らんとしたら、あろうことか川に突き落とされ。
 神を信じぬ不届き者も、殺したと思っていたのに殺しきれず。
 赤いコートの男に返り討ちにされ、訳の分らぬ感情に心を乱され。
 男だか女だか分からないような奴に、いいように騙され利用されて。
 自らを檻に閉じ込めた紫鎧も、結局自分の手で殺す前に死に。
 あの女には見下ろされ技を盗まれ、挙句せっかく溜めた電力も使い切らさせられた。
 ひどい有り様だ。
 ここに飛ばされたから自分は、まったくもって嘗められっぱなしではないか。
「もう堪忍袋の緒が切れた! この場に生き残った全員、ただの1人として生かしては帰さん!」
 許さない。断じて許すわけにはいかない。
 これ以上醜態をさらすのは、自分のプライドが許さない。
 殺す。
 殺してやる。
 この場に集った全員を、自分自身の手で殺してやる。
 恐怖という名の崇拝を掴み取るために、再び最強の恐怖の象徴として返り咲いてやる。
 そうだ。
 もう誰も取りこぼしはしない。
「全員私の手で殺して――」
 ――ばぁん。



【エネル@小話メドレー 死亡確認】



.

313散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:40:00 ID:.DfmzCYc0
 銃口からたなびく硝煙が、男の顔を静かに撫でる。
 脳天を真上からぶち抜かれ、物言わぬ死体となったエネルを、冷淡な視線が見下ろしている。
 いつからそこにいたのだろうか。
 そこにいつから立っていて、いつから神を見下ろしていたのか。
「怒りってのはよくないな。気が散って危機管理が疎かになる」
 スマートな体型を有した青年――金居が、デザートイーグルを構えてそこに立っていた。
 四つ巴の激闘から、真っ先に尻尾を巻いて逃げだしたこの男が、エネル達の生死を確かめるために戻って来たのだ。
(ボーナスは……これだな)
 がさごそとデイパックを漁ってみれば、新たな手ごたえをその手に感じた。
 鞄から引き抜かれた御褒美は、長大な柄を持った鉄槌だ。
 殴打する部分には痛々しげな刺が連なっており、凶悪な破壊力を醸し出している。
 重量こそあるものの、アーカードの持っていた、やたら長い刀よりは使い勝手がいいだろう。
 当面はこれを得物としようと判断し、デザートイーグルをデイパックにしまうと、そのまま左手にハンマーを持つ。
「それにしても、とんでもない被害だな」
 そこで思い出したように、高みから周囲を見回し、呟いた。
 数分前に起こった大災害には、さしものカテゴリーキングも肝を冷やした。
 何せ逃げのびたかと思えば、いきなり目の前で虹色の大爆発が起きたのだ。
 あの時真南のG-9ではなく、F-9エリアに留まったままだったら、巻き込まれ消し炭になっていたかもしれない。
 これまでの情報を整理すれば、あのカラミティを巻き起こしたのは、間違いなくあのヴィヴィオだろう。
 何にせよ、厄介な2人が共倒れになってくれたのは幸いだった。
 死んだのか否かはまだ調べていないが、ヴィヴィオも小さな子供の姿になって倒れている。もはや脅威となることはあるまい。
(さて、これからどうするか)
 ともあれ、これで当面の目的は果たした。
 であれば、次の目的はどうすべきか。
 エネル達という不安要素が排除され、はやて達とも別れた今、自分がすべきことは何か。
 同行者が1人もいなくなったのだから、工場に立ち寄る理由もない。つまり、やることがなくなってしまったのだ。
 そこまで考えたところで、ふと、デイパックに入れたきりになっていたアイテムの存在を思い出した。
 学校で見つけ、それきり調べる機会のなかったUSBメモリだ。
 せっかく1人になったのだから、いい加減こいつの中身を調べてみよう。
 とりあえずは市街地に行って、適当なパソコンを調達し、こいつを開いてみることにしよう。
 そうと決まれば善は急げだ。
 コンクリートの山を滑り降り、倒れ伏す人影のすぐ横を、悠然と歩き去っていく。
「……感謝するよ、お嬢ちゃん」
 ふと。
 不意に、にやり、と口元を歪め。
 すたすたと歩いていた足を止め、首だけを背後へと振り向かせる。
「本当に厄介な奴を始末してくれたことを、さ」
 キングの視線の先にあるものは――

314散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:40:59 ID:.DfmzCYc0
 

【1日目 真夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ跡】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】疲労(小)、1時間変身不可(アンデッド)、ゼロ(キング)への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、
    首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル@オリジナル(4/7)、
    アレックスのデイパック(支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)
    【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、
    ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
    【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3))
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.USBメモリの内容を確認するために市街地に戻る。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。


「う……」
 呻き声と共に、目を覚ます。
 未だがんがんと痛む頭を振り、ぼやけた瞳を指先で擦る。
 ヴィヴィオにやられた鈍痛の残る身体を、片腕でのそのそとと起こした。
 あれから一体どうなったのだろう。
 いいや、あれだけのことがあって、何故自分は生き残ることができたのだろう。
 徐々に冴えてきた脳内で、スバル・ナカジマは思考する。
 最後に記憶したものは、聖王の背後で吼える死神の姿と、網膜を蒸発させんばかりの魔力光だ。
 前後の状況から推察するに、恐らくはヴィヴィオの身体から発せられた魔力が、とんでもない規模の爆発を引き起こしたのだろう。
 あまりの光量と音量に、意識が吹っ飛んだほどの破壊力だ。
 まともに考えるのならば、今ここで自分が生きているのはおかしい。
 何が死期を遅めたのか。
 あの圧倒的な火力の中、一体何が自分を救ったのか。
「……ッ!」
 そして。
 次の瞬間、見てしまった。
 上へと持ち上げた視線に、その存在を捉えてしまった。

 自分が倒れている目の前に、異形の怪物の死体が立っていた。

「あ……ああ……!」
 見覚えのない、禍々しい背中。
 頭部から伸びた触角に、おぞましく歪んだ甲殻から覗く緑色の肌。
 全身を煤けさせながらも、倒れることなく逝った立ち往生の死に様。
 いかにも怪物らしいこの怪物の背中を、自分はこれまでに見たことがない。
 それでも、確かに悟ってしまった。
 否応なしにも、理解させられてしまった。
「始、さん……!」
 これは相川始だと。
 あの素顔も知らない仮面ライダーカリスが、自分をここで庇っていたのだと。
 圧倒的な魔力に身を焼かれても、それでも決して引き下がることなく、そしてそのまま最期を迎えたのだと。
 また、目の前で人が死んだ。
 死なせないと誓った人を、結局救えず死なせてしまった。
 皆を守ると約束したのに、結局守られてしまった。
 その厳然とした事実はスバルを苛み、涙腺に熱いものを込み上げさせる。
 きりきりと胸を締め上げる悔しさと情けなさが、瞳から涙を落とさせようとする。

315散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:41:48 ID:.DfmzCYc0
「………」
 それでも。
 だとしても、泣くことはしなかった。
 静かに身体を起き上がらせ、視線を左側へと逸らす。
 始の死体の向こう側にいたのは、焼け焦げた大地の中心で倒れ伏す、元の小さな姿のヴィヴィオだ。
 すぐ近くに突き刺さっていたナイフは、始を殺したことで手にしたボーナス支給品だろうか。
 無言で立ち上がり、歩み寄る。未だ真新しいナイフを回収し、気絶した少女の身体を抱き上げる。
 ひゅーひゅーと響く呼吸音は驚くほど小さく、心臓の鼓動はあまりにもか細い。
 誰の目にも明らかな、満身創痍の有り様だった。
「……あたし、泣きませんから」
 ぼそり、と。
 消え入るような声で、呟いた。
 そうだ。こんな所で泣いている暇はない。
 こうして立ち止まっているうちにも、目の前の命はどんどん蝕まれていく。
 今ここで涙し膝をつけば、せっかくレリックの呪縛から解き放たれたヴィヴィオの命が消えてしまう。
「ヴィヴィオを死なせないためにも、前を向いて歩きますから」
 振り返ることはしなかった。
 それきり始の死体を見ることはなかった。
 ジェットエッジのローラーを回転させ、北へ北へと進んでいく。
 今は涙を流せない。
 始の死を悲しんでやることも、弔ってやることさえもできない。
 今目の前で死にかけているヴィヴィオを、スカリエッティのアジトへと運び、その命を救うこと――それがスバルの使命なのだから。
「だから、もう行きます」
 白のバリアジャケットがはためく。緑の瞳が光り輝く。
 胸にこみ上げる悲しみよりも、なおも大きな決意を抱いて、満月の下を進んでいく。
「ありがとうございました――始さん」
 それが相川始との、最期の別れの言葉だった。


【1日目 真夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ跡】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】バリアジャケット、魔力消費(中)、全身ダメージ中、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(カートリッジ0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.ヴィヴィオを連れてスカリエッティのアジトへ向かう。
 2.六課のメンバーとの合流。つかさとかがみの事はこなたに任せる。
 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 4.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 5.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
 6.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

316散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:42:18 ID:.DfmzCYc0
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大)、肉体内部にダメージ(極大)、血塗れ
【装備】フェルの衣装
【道具】なし
【思考】
 基本:?????
 1.ママ……
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。
※暴走の影響により、体内の全魔力がリンカーコアごと消失しました。自力のみで魔法を使うことは二度とできません。
※レリックの消滅に伴い、コンシデレーションコンソールの効果も消滅しました。

317散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:43:13 ID:.DfmzCYc0
 

 時は僅かにさかのぼる。
 これはヴィヴィオの魔力が暴発した、その瞬間の出来事である。

 悪い予感は的中した。
 否、正直予感以上だった。
 これほどの規模の大爆発は、これまでのバトルファイトを振りかえっても一度も目撃したことがない。
 腕に抱き止めたギンガの妹は、あまりの音と光に気絶してしまった。
 人間の開発したスタングレネートやらを、遥かに凌駕する音と光だ――正直自分自身さえも、未だ意識を保っているのが不思議だった。
 爆発が背後にまで迫る。
 目と鼻の先にまで光がにじり寄る。
 このまま飲み込まれてしまえば、それで何もかも終わりだ。
 身体はあっという間に蒸発し、骨まで残さず消え果てるだろう。
 自分はどうなろうと構わない。だが、それ以上に死なせたくないのはスバルだ。
 昏倒した少女を背後へと放ると、迫り来るカラミティへと正対する。
『REFLECT』
 カリスアローにラウズしたのは、ハートの8番目のカード――リフレクトモス。
 ギラファアンデッドの攻撃にも耐えられなかった防壁が、どこまで有効かは分からない。
 それでも手にしたラウズカードの中で、最もましな防御力を持っていたのがこれだ。
 すぐさま光の壁が出現し、カリスの盾となって立ちふさがる。
 爆発と正面から衝突したのは、ちょうどそれから2秒後だ。
 すぐさま、強烈な反発が襲いかかった。
 ばちばちと耳触りなスパークが響き渡り、衝撃が大気越しに身体を震わす。
 ハートのマスクの下の眉間を、苦悶を宿した皺に歪めた。
 見ればリフレクトの障壁には、既に亀裂が走っている。恐らくはあと数秒と保たずに、この壁は消滅するだろう。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――ッ!!」
 それでも、諦めてなるものか。
 膝をついてなるものか。
 全身から暗黒色の飛沫を放ち、本来の姿たるジョーカーへと変幻。
 黒と赤の鎧が消失し、黒と緑の甲殻が姿を現す。
 リフレクトがばりんと音を立て砕け散ったのは、ちょうどこの瞬間だった。
「くっ、お、おおおおおお……っ!」
 轟――と身を襲うのは、耐えがたいほどの灼熱と圧力。
 カリスの姿なら即死していたであろう殺人的破壊力に、無敵のジョーカーの体躯すら、じりじりと焦がされていく。
 命が遠ざかっていくのを感じた。
 不死身であるはずのこの命が、驚くほど静かに消えていくのを感じた。
 このままでは遠からず自分は死ぬだろう。
 たとえスバルの盾となり、彼女を守り通したとしても、その未来に自分の命はないのだろう。
 ふ――と。
 不思議と、笑みが込み上げた。
 まったくもって、不思議なこともあるものだ。
 殺戮のために生まれたジョーカーの最期の仕事が、命を守ることだとは。
 魔力の炎に焼き尽くされながら、しかし不思議と穏やかな気分で、自分の奇妙な運命を見据える。
 少し前まではこんなこと、考えたことすらもなかった。
 そんな自分を変えたのは、愛すべき人間達の心だ。
 スバルが懸命に説得してくれたからこそ、人の想いの強さを知ることができた。
 ギンガに命を救われたからこそ、人の想いに触れることができた。
 そして、最初に人の心を教えてくれたのは、あの栗原遥香と天音の親子だ。
 すいません、遥香さん。ごめん、天音ちゃん。
 俺はどうやらここまでらしい。ここから生きて帰ることはできないようだ。
 そして、それでも。
 だとしても、これでよかったと思える自分がいる。
 自分の命の捨て方としては、十分に満足できる死に様だと思っている自分がいる。
 人を殺す運命にあった自分が、人を守って死ねるのだ。こんなに上等な死に方はなかった。
 これで、いいんだよな。
 今は亡き少女が最期に見せた、穏やかな笑顔へと問いかける。
 俺はしっかり生き抜いたよな。
 お前が言ってくれた通り、人間の心に従って、真っ当に死ぬことができたんだよな。
 そうだよな……ギンガ――――――



【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード 死亡確認】


.

318散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:43:57 ID:.DfmzCYc0
【全体の備考】
※F-8にて大規模な火災と魔力爆発が発生し、以下の被害が生じました。
 ・F-8が壊滅状態となりました
 ・ホテル・アグスタがほとんど全壊状態となりました。
 ・装甲車@アンリミテッド・エンドラインが大破しました。
 ・ヴィヴィオの支給品一式が消滅しました。
 また、火災は魔力爆発によって鎮火しています。


【バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜】
金居に支給されたボーナス支給品。
未確認生命体第45号ことゴ・バベル・ダの使用する大金槌。
高い殺傷能力を有しており、バベルの怪力と相まって、紫のクウガの鎧に傷をつけるほどの威力を発揮した。

【黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK】
ヴィヴィオに支給されたボーナス支給品
「組織」に所属する契約者・黒(ヘイ)が使用するナイフ。

319 ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:45:32 ID:.DfmzCYc0
ふぅ、何とか宣言の範疇の時間に投下できた……というわけで投下は以上です。
誤字・矛盾などありましたらご意見ください。

320リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 01:56:43 ID:qsn2Ooe.O
投下乙です
ヴィヴィオとエネルのバトルはまさに圧巻。規模で言えば殺生丸とナイブズをも越えるんじゃなかろうか
で、美味しい所を持って行くのはやはり金居。アレックス同様漁夫の利で殺害数を稼ぐか。
そして始。最期まで誰かを守る為に戦い抜いた姿に感銘を受けた。お前は偽物なんかじゃない本物の仮面ライダーだ!

そして指摘が二つ程。
ヴィヴィオはフォワード4人は呼び捨ての筈なので、スバルさんではなくスバルと呼んだ方が自然かと。
もうひとつは、このロワでは死亡=ラウズカード化だった筈なので、カード化の描写も入れた方がいいのではないかと思いました。

321 ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 02:10:21 ID:.DfmzCYc0
了解しました。前者はそのようにいたします。
で、後者の方なんですけど……ジョーカーってラウズカード化するんでしょうか? そこが分からなかったので、こういった扱いにしたのですが

322リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 03:07:36 ID:nMQrsHmw0
映画でカードになってるよ

323リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 03:53:02 ID:iis7eLVQ0
投下乙です。
相変わらず熱い! ヴィヴィオとエネルの戦いも勿論の事始の散り際も熱かった!
ヴィヴィオはもう魔法を使えなくなってしまったけど、ロワ的にはそっちの方がいいのかも。
もう聖王になる事もないし、只の子供になってしまうけれど、そっちの方がかえって安全かもしれないし。
一つ心配なのはヴィヴィオが元の精神状態に戻れるかだが……一緒に居るのがスバルなら大丈夫か?
そして今回一番かっこよかった始。始の心を動かした晋やギンガと同じく、始もまた誰かを守る為に散った。
正体が化け物とか人間とかそんな問題でなく、最期の最期で本当の意味で仮面ライダーになれたんだと思うな。
ルルーシュや始、ギンガ達……死んでいった者達の命を背負ったスバルの今後に期待です。

ジョーカーのラウズカード化に関してですが、既に言われている通りジョーカーもまたカード化します。
53枚中、どんなラウズカードの代わりにも使える、言わば全ての能力を持ったカードがジョーカーのカード。
劇場版でも登場していますが、外見さえ知って居れば問題なく書けるレベルかと思います。

自分も一つ気になったのですが、アンデッドには死亡や破壊・消滅と言う概念が無く、その為にカードに封印されます。
まぁ封印されれば死んだも同然なのですが、一応破壊する事も消滅させることも不可能なのがラウズカードなので、
始の死後、始が所持していたハートのラウズカード10枚の行方も描写しておいた方がいいかな?と思いました。
(実際ギャレンが死んだ(と思われた)時も、持っていたラウズカードが全部戦闘後の海岸に散らばっていたし)

324名無し:2010/07/20(火) 04:10:36 ID:TFRDfDvE0
遂にマスカレードからも死者が・・・まあ、4人も参加して第3回放送まで誰も死ななかったのも十分すごいけど。

325リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 10:37:46 ID:KhF25q020
投下乙です。
ホテル戦完全決着!!
始vs金居、ヴィヴィオvsエネルという引きでどんな激闘になると思ったらスバル達によるヴィヴィオ救出戦になるとは。
スバルの攻撃が通じなかった時はどうなるかと思ったけどまさか暴走とは……
大暴れしたエネルは遂に此処で退場(でも、皮肉な事だけどエネルがいなければヴィヴィオを助けられなかったんだよなぁ……)
下手人の金居は最低限のダメージで最大限の戦果……コイツが一番の勝ち組じゃねーの……
ヴィヴィオは何とか元に戻ったけど肉体的なダメージも酷いし精神的にもボロボロ……大丈夫か?

そして始……退場したとはいえスバルを守りきった上での退場……それが結果としてヴィヴィオも救った……
登場当初は無差別マーダーでダークローチ大量発生とかトップクラスの危険人物だったのに最後の最後で仮面ライダーになれたか……
ギンガ達の願いが届いたんだなぁ……
始に救われたスバルはヴィヴィオ達を守れるのか、急げスバル、今度はアジトが危険だー!!

ここからは指摘と質問です。
ヴィヴィオの支給品が消えたのはわかるんですが、始とエネルの支給品も消えたんですか? 始はともかく描写的にエネルの支給品は無事で金居が回収しそうな気が……
始にしても他の人も指摘していますが、他の支給品はともかくラウズカードは消失しない筈なのでその辺の描写は必要だと思いますが(勿論、始自身のカードも含めて)。

……そうか、パーフェクトゼクターもクラールヴィントもヴィヴィオのぬいぐるみも消失したんだな……(遠い目)

326リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 14:17:44 ID:UQCnfIKQ0
投下乙です

ホテル戦はみんな完全燃焼したなあwww
ヴィヴィオがスバルらを皆殺しと思ってたら最後で引っくり返った。これぞロワ!
エネルは結果的にヴィヴィオを助けることになった、奴がいなければ確かにこうはならなかったなぁ
金居は美味しく漁夫の利を得て邪魔ものも消えてうはうはだな

最後に始……最後はスバルを守り心穏やかに逝くことができたのか…
本当にギンガらの想いが通じたよ…
だがロワはまだ終わらない。スバルよ、アジトに急いでくれ! そちらもピンチだ!

327リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 15:39:26 ID:qsn2Ooe.O
そうか始はパーフェクトゼクターも持ってたのか
アレは消失するのか?一応隕石同士の衝突による衝撃で大気圏突入しても無傷な装甲を更に練磨した素材とかだった筈だが…

328リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 18:52:20 ID:k3uNdhe60
投下乙です
たとえジョーカーだろうと今のお前は間違いなく仮面ライダーだ!始えええええ!!!
あのマーダーから始まった始がまさかここまで熱い最期を迎えるとは感慨深いなあ
そしてその脇でひっそりと死んだエネル…なんだろう、なんとなく哀れに感じる…

既に指摘されている荷物の件について
エネルの荷物に関してはこのままでいいと思います
金居の様子と状態表から次の話で拾って立ち去ったとしても、そのまま放置しても、どっちでも不自然ではないですから
始の方はいくつか消滅しないものがありますが、その辺りは描写する以外にも後続の書き手に一任しても構わないと思います
どちらにせよVj6e1anjAc氏がしたいようにしたらいいと思います

329 ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 23:38:42 ID:.DfmzCYc0
支給品の件ですが、エネルのものは完全に書き忘れです。
で、始のものは最初消滅扱いにしようと思ったのですけど、色々思うところがありまして、やっぱり残すことにします。
いずれにせよ、近日中に修正案を用意しますので。

330リリカル名無しA's:2010/07/25(日) 21:44:39 ID:tSQTY5js0
スケィスも消えちゃった……。

スケェェェェェェェェェィスっっっっっ!!!!!!!(泣)

331 ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 19:55:30 ID:TIW0LW2g0
スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ分投下します。

332A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 19:57:00 ID:TIW0LW2g0
「IS……発動」

 その声と共にスバル・ナカジマの手にあったある『モノ』が粉砕された。そして近くに降ろしていたヴィヴィオを再び背負い走り出した。
 ヴィヴィオは衰弱している為急がなければならない。では、何故スバルは急がなければならないにもかかわらず足を止めある『モノ』を砕いたのだろうか――?















   ★   ☆   ★   ☆   ★





 暗い闇の中にヴィヴィオはいた。
 身体中が悲鳴をあげているかの様に痛くそして苦しい。
 助けを求めようとも周囲には誰もいない。





 それでも闇の中を歩き――見つけた。





「ザッフィー……シャマル……」

 シャマルとザフィーラが立ちつくしていた。ヴィヴィオは重い身体を引きずって近付こうとするが――
 見てしまったのだ。2人が自分を蔑む様な視線を向けるのを、それは明らかな拒絶の意志――
 それだけではない、シャマルの手には破損が著しいクラールヴィントがあった。
 何故、クラールヴィントは破損していたのか? ああそうだ、それは先程の戦いで――自分が壊したんだ――

 ザフィーラは悲しんでいる所を励ましてくれたのに自分はそれを裏切った。
 シャマルにとってクラールヴィントは相棒だったのに自分はそれを破壊した。
 2人が自分を蔑んでも当然だ。





 気が付くと2人は消えていた。再びヴィヴィオは周囲を見回し、

333A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 19:58:40 ID:TIW0LW2g0





「シャーリーお姉さん……」

 浴衣を着たシャーリー・フェネットを見つけた。ヴィヴィオは駆け寄ろうとするが――

「来ないで……」

 シャーリーはそう言い放つ。またしても明らかな拒絶だ。

「どうしてスバルを殺そうとしたの……言ったよね、スバルは友達だって……」

 そうだ、自分はあの時スバルを……

「ひどいよ……」





 そういって、シャーリーの姿が消えた。そして入れ代わる様に漆黒の服に身を包んだ少年が現れた。





「俺を治療してくれた事には感謝している。だが……」
「ルルお兄さん……」

 その少年ルルーシュ・ランペルージは自身を治療した事について礼を述べたが、

「何故スバルを殺そうとした? シャーリーからも聞いていたんだろう、スバルは俺やシャーリーの友人だという事を」
「それは……」

 ママである高町なのはを助けようともせず漆黒の怪物と戯れていたから、つまりママを裏切ったからだと正直に言おうとしたが、

「高町なのはを助けずに怪物と戯れ彼女を裏切ったからか? まさか本気でスバルが裏切ったと思っているのか?」

 ルルーシュはその理由を既に看破していた。

「違うな、間違っているぞ。スバルの性格を考えてみろ、俺の様な悪人やあの場にいた得体の知れない怪物であっても説得する事ぐらいわからないか?」
「うぅ……」
「それに高町なのはの事なら俺も少しは聞いている。彼女も同じではないのか? あの場に彼女がいたならば恐らく同じ事をしていたと思うが?」

 その通りだ、何故彼がそれを知っているのかはともかく恐らくなのはママも同じ事をしていたのはヴィヴィオにもわかる。

「つまりだ……裏切ったのはスバルではない、ヴィヴィオ! お前だ!! お前がなのはやスバルを裏切ったんだ!!」

 その眼には明らかな憎悪と憤怒が込められていた。彼にとってスバルは自分にとってのママ達同様大切な存在だったのだろう。それを自分は――





 気が付けばルルーシュの姿も消えていた。そんな中背後から、

334A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:00:40 ID:TIW0LW2g0





「えriおくnを……かeせ……」

 振り向くとそこには人らしき『モノ』がいた。皮膚が破れ肉が露出し所々骨や内蔵が飛び出し身体中血塗れで至る所に欠損が見られる。そして頭部から僅かに見られる桃色の髪からそれが誰か理解した。

「キャ……ロ……」

 それはキャロ・ル・ルシエだった『モノ』だ。そうだ、あの時自分が彼女を完膚無きまでに破壊し尽くした。その残骸が集まり再び人の形を成したのだろう。

「えりokuんを……こんnaにしte……」

 その手らしき所にはボロボロになった鎌が握られていた。アレは自分がキャロから奪った鎌、恐らくは先の戦いでクラールヴィント同様……

「yuるさなi……!」

 そしてキャロは全身でヴィヴィオに飛びついた。肉の塊だったそれはヴィヴィオにぶつかると同時に砕け散りその血肉はヴィヴィオの身体中に染みこんでいく。

「あぁぁ……」

 放たれる死臭が気持ち悪い。それはまさしくヴィヴィオ自身の罪の象徴なのだろう。それでもヴィヴィオは助けを求めるかの様に彷徨う――





 そして――





「なのは……ママ……」

 フェイト・T・ハラオウン同様幼くなってはいたが、なのはを見つけた。しかしなのはは駆け寄ろうとするヴィヴィオに有無を言わさず魔力弾を直撃させた。

「え……」

 戸惑うヴィヴィオに対し、

「おかしいなぁ……どうしちゃったのかな……誰がみんなを殺してくれって言ったの……私がそんな事言うと思っているの……ねぇ、私の言っている事……そんなに間違ってる……?」

「ママ……」
「少し……頭冷やそうか……」

 そして再び魔力弾をヴィヴィオに当てた。ルルーシュの言う通りだった。なのはが皆殺しを望むわけがない、自分は彼女の事を全然理解していなかったのだ。





 再び立ち上がろうとするが、目の前にはゆりかごで見た時と同様に幼いフェイトがいた。




「フェイト……ママ……」

 何とか彼女に助けを求めるが、

「なんでなのはを……みんなを裏切ったんだ……」

 彼女の眼には明らかな怒りが込められていた。

「お前にこんな事をさせる為に助けたんじゃない……なのは達を裏切らせる為に助けたんじゃない……お前なんか……」

 ダメだ、その先の言葉を言うな、ヴィヴィオはそう口にしようとしたが、

「お前なんか……嫌いだ……!」

 そう言ってフェイトは消えた。

335A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:01:20 ID:TIW0LW2g0





「うぅぅ……」

 ママ達からも拒絶されヴィヴィオの眼には涙が溢れていた。そんな中、視線の先には、





「あ……浅倉お兄さ……」

 自身のぬいぐるみを手に持っている蛇皮の服を着た男性浅倉威がいた。その手にあるぬいぐるみは所々が破れ中身が飛び出している。
 ヴィヴィオは僅かな力を振り絞り浅倉に駆け寄るが、

「がっ……」

 浅倉によって蹴り飛ばされた。

「五月蠅い餓鬼が……イライラするぜ……」

 そう言って、ぬいぐるみを持ったままヴィヴィオの前から消えていった。ぬいぐるみの視線も自分を蔑んでいるかの様に見えた。そうだ、ぬいぐるみもあの戦いで――





 人だけではなく、デバイスやぬいぐるみからも拒絶されヴィヴィオは本当に独りぼっちになっていた。

「ぐばぁ……はぁはぁ……」

 蹴られた衝撃からか口からは大量の血が吐き出される。身体の奥が痛くて苦しく感じる。だが、ヴィヴィオを助けてくれる者はだれもいない。
 どうして誰も助けてくれないのか? ああ、その理由は自分が理解している、皆を裏切り皆殺しにしようとしたのだ、皆が自分から離れていって当然だ。

 いっそ殺して欲しいとすら思う。しかし死神すらも自分には見えない。死が近いとしても簡単には死なせてくれないらしい。
 死の瞬間まで苦しめと――いや、死んだとしてもずっと独りなのだから苦しみは決して終わらないのだろう。





 それはヴィヴィオに対する罪なのだろうか?





「だれか……ヴィヴィオを……たすけてよ……」





 その声に応える者は誰もいない。誰か現れても蔑むだけで決して助けてはくれない。





 悪夢は終わらない――仮に、ここでヴィヴィオが死んだとしても――





   ☆   ★   ☆   ★   ☆

336A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:02:00 ID:TIW0LW2g0













「始さんに別れを告げた後、あたしはヴィヴィオを背負いアジトへ向かった。アジトに先行しているこなた達や八神部隊長達と合流し、衰弱しているヴィヴィオを助ける為に。
 その途中、1枚のカードを見つけた。多分始さんが持っていたカードがあの時の衝撃と風でここまで吹き飛んだと思う。
 余裕なんて無かったけどあたしはそのカードがどうしても気になりそれを拾った。何故かはわからないけど始さんにとって大事な物だと思ったから――」





 ジェットエッジの調子は良好、このペースならばスカリエッティのアジトまでそう時間はかからない。
 とはいえこの時間を無駄には使えない。周囲の警戒を怠らず、先の戦いやこれからの事を考える。

 放送を冷静に思い返す。放送時点での残り人数は19人、その内ホテルに集結した参加者は自分を含めた9人。
 その内、泉こなた、八神はやて、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、柊かがみ、カテゴリーキングと呼ばれた男が先に離脱、相川始と雷の男が死亡し自分とヴィヴィオが最後にホテルを離れた。
 勿論、なのは達を含めた残り10人の動向も気になるがそれについてはひとまず置いておく。大丈夫という保証も無いが考えてもきりがないからだ。

 真っ先に気になるのはヴィヴィオの状態だ。
 あの惨事の中心部にいたとは言えヴィヴィオは何とか生きていた。もしかしたら彼女が持っていたクラールヴィントが自らを犠牲にしてでもヴィヴィオのダメージを最小限に抑えようとしていたのかも知れない。
 しかしそれは最悪の事態を避ける事が出来ただけだ。現在進行形で衰弱している事に変わりはない。
 一体、ヴィヴィオに何が起こったのだろうか? いや起こった事自体はわかっている。体内に埋め込まれたレリックが暴走して大爆発を起こしたのだ。
 問題は何故彼女の体内にレリックが埋め込まれJS事件の時の様な洗脳状態に陥ったのかという事だ。
 少なくてもこなたやリインといた時にはそれが無かったらしい。となると連れ去られた後から約6時間の間に何かがあった事になる。
(確か、キャロかルーテシアのどちらかがゆりかごに連れ去った可能性が高いから……)
 連れ去った者が聖王のゆりかごでレリックを埋め込み洗脳した。そう考えれば一応筋は通る、しかし幾つか腑に落ちない点がある。
 まず、レリックは何処にあったのか? 勿論既に埋め込まれていた可能性もあるし、都合良く持っていた可能性もあるがそうそう上手く事が運ぶわけもない。
 また、連れ去った可能性が高いキャロとルーテシア・アルピーノの両名は共に放送前に死亡している点も引っかかる。洗脳しておいて殺されるのはお粗末な話だろう。
(……待って、もしかしたら)
 が、逆にこの事がある仮説を導き出した。ルーテシアがヴィヴィオをゆりかごまで連れて行ったが、そこで何者かにルーテシアが殺され彼女の体内のレリックをヴィヴィオに埋め込んだ可能性だ。
 これならば十分に筋は通る。暴走が起こった事に関してもルーテシアのレリックが適合しなかったとすれば問題はない。その影響でヴィヴィオが苦しんでいるのだろう。
 勿論、これは仮説に仮説を重ねたものでしかない為確証はない。しかし、可能性は十分にあり得るだろう。
 それ以上に気になるのは彼女に染み着いた夥しい血肉の臭い。確かにあの状態ならば誰かを殺しても不思議はない。しかし、普通に返り血を浴びたとしてもここまで酷くなるとは思えない。
 考えられるのは殺した死体を完膚無きまでに破壊した際に飛び散った血肉が染み着いた可能性だ。幾ら洗脳状態とは言え正直やりすぎではなかろうか?

337A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:03:00 ID:TIW0LW2g0

 勿論、ヴィヴィオの行動自体は洗脳状態だった為、スバルとしてはそれを責めるつもりはない。
 しかし、ヴィヴィオが正気に戻った時に彼女がその時の事を覚えていたらどうだろうか?
 ヴィヴィオは罪の重責で苦しむのではないだろうか? なのは達から拒絶される可能性を考えるのではなかろうか?
 スバル自身は別段気にしないしそれについてはなのは達も同じだろう。だが、ヴィヴィオ自身が納得出来るかは全くの別問題だ。
 このままでは仮に命が助かってもヴィヴィオの心が壊れてしまう可能性が高い。
(何とかしてヴィヴィオを助けないと……出来れば早くなのはさんと会わせたいけど……)
 とりあえずホテルでの戦いではヴィヴィオは誰も殺さなかったと説明しておこう。幸いあの惨状を見たのは自分だけだから誤魔化しはきく。
 ボーナスでナイフを得た事を知っているのも自分だけだからそれで知る事も……
(待って、それじゃあの男は誰が?)
 ホテル跡には始の他に雷の男の死体もあった。ヴィヴィオ優先だった為詳しくは調べていないがあの戦いで死んだ事は間違いない。
 危険人物ではあったが彼がヴィヴィオを抑えてくれなければヴィヴィオに一撃をたたき込めなかった事は確実、つまり彼の存在のお陰でヴィヴィオを助ける事が出来たという事になる。ある意味皮肉な話だ。
 普通に考えれば彼が死んだ理由は暴走に巻き込まれたからだろうがそれならヴィヴィオが得るボーナスは2つでなければならない。
 また、何よりあの男の遺体は始と比較して損傷はそれ程酷く無く、頭部に撃たれた痕跡があった。
 つまり、雷の男を殺したのは別の者という事だ。では一体誰が?
(いた、それが出来る人が……)
 それはカテゴリーキングだ。エネルとヴィヴィオが乱入した時点で危険を悟り早々に離脱したのだろうが、後から戻ってきて危険人物である雷の男にトドメを刺した可能性は否定出来ない。
 自分達を助ける為……とは思えなかった。本当に自分達を助けるつもりならばヴィヴィオや自分を放置する筈がない。つまり、あの男は自分だけの為に雷の男を仕留めたのだろう。
 自分達を放置した理由は不明、あの男にとっては自分達は排除する必要すらない取るに取らない存在なのだろうか?
 始との対立云々を別にしても、その立ち回りと思考から警戒すべき人物なのは確かだろう。もしかしたらメールにあった『キング』と何か関係があるかもしれない。後でもう少し整理した方が良いだろう。
(あれ、何か引っかかるんだけど……)
 ここまで考えて引っかかりを感じたものの深く考える余裕は無い。他にも考える事はある。

(かがみさん……無事にこなたの説得が通じれば良いけど……)
 それは殺し合いに乗ったかがみの存在だ。アジトに到着すれば友達であるこなたが説得してくれる筈だ。
 しかし、それは希望論でしかない。一番説得出来そうなのはこなたではあったが絶対という保証はない。
 それ以前にこなた達がアジトに無事に到着しているという確証も無いし、はやて達が途中で何者かに襲われている可能性もある。
 また、場合によっては彼女の持つリングに宿るバクラが何かする可能性も否定出来ない。
(いや、バクラに関しては一応ヴァッシュさんに注意しておいたから多分大丈夫だと思うけど……)
 そう思いながらも不安は拭えない。また、前に会った時と比べてかがみが荒んでいるのも見て取れた。
(ホテルで再会するまで6時間弱、何があったんだろう……そうだ)
 と、スバルはデイパックからレヴァンティンを出した。レヴァンティンは元々スバルが持っていたがデュエルアカデミアでの戦いでかがみに奪われ先の戦いで取り戻すまでずっとかがみが所持していたものだ。
 つまり、レヴァンティンがその間に何があったか把握している筈だという事だ。
「……というわけで、かがみさんに何があったかわかる範囲で良いから教えて」
 事情を説明しレヴァンティンに問う。

338A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:05:40 ID:TIW0LW2g0

 そしてレヴァンティンはそれまでに起こった話を語り出す。
 かがみの様子を見る限り、度々誰かと会話している様な様子が見られた。しかし相手の人物の声が聞こえなかった為詳しい事はわからない。
(バクラね)
 スバルとの戦いを終えた後、かがみはレヴァンティン以外のデバイスの力を利用してバリアジャケットを展開しようとした。
「え!? かがみさん何かデバイス持っていたの? ……あれ、もしかしたらあの時隠し持っていたかも知れないってこと……まぁ、かがみさん魔力無いだろうからあんまり問題は……部隊長もいるだろうし」
 そして、煙の見えるレストランに向かい集まった参加者を一網打尽にしようとしていた。
 ちなみに仮面ライダーには変身出来ないらしく持っていた機関銃で撃ち殺そうとしていた。
 そして機関銃の準備をしている所で始と遭遇、始は人間を助ける気は無いとは言いながらもかがみを止める事は無かった。その一方逆に襲う事も無かったらしい。
 その後、かがみがレストラン跡にいた浅倉と始を襲った。もっともその試みは失敗しかがみの持つ仮面ライダーに変身する為のカードデッキは浅倉に奪われ逆に返り討ちにあった。
「え、ということはかがみさん仮面ライダーに変身出来なくなったの?」
 その後は浅倉と始が戦いが始まったらしいがその場面を直接見ていない為具体的な事は不明ではある。
 一方、気が付けばかがみの腹部に何かベルトが装着されそのままかがみは別の仮面ライダーに変身しその場を離脱した。恐らくホテルでの姿はそれだろう。
「どういう事? アカデミアで戦った時と違うのは気になったけど、ベルトが手に入った理由がわからないんだけど……」
 そう問うスバルだったがレヴァンティン自身もわからないし何よりかがみ自身すらもわかっていなかったらしい。
 そしてホテルに戻ったが、そこでいきなり何かに引きずり込まれたらしい。引きずり込まれた先で待っていたのは浅倉によるかがみの妹柊つかさの惨殺。
「そんな……」
 これによりかがみの精神は破綻、そして浅倉と戦いになったらしいが気が付けば元のホテルに戻ってきていた。
 それからヴァッシュと遭遇し、スバルとの再会後離脱し何かの車で始を轢き殺そうとしたが失敗し始と戦いになりあの場に戻ったのだ。
 勿論、ここまでの話はデイパックの中から会話や音を聞いた事による判断なのでレヴァンティン自身詳しい状況まではわからない。それでも何があったのかは概ね理解出来た。

「つまり、かがみさんがああいう風になったのは目の前でつかささんを殺されたから……」
 かがみが壊れた原因はつかさの死という事は理解出来た。これ自体は不幸な事だが逆を言えば説得の糸口になる。
 異なる世界の別人と決めつけながらも実の妹が殺されてショックを受けたのだ。例え口では別人と言っても割り切れないのだろう、説得の可能性が僅かに見えたと言える。
「それにしてもバクラが思ったよりも役に立っていないのが気になるんだけど……」
 一方でバクラの動向も気になった。バクラが自分に都合の良い風にかがみを誘導している割には思ったよりも戦果があがっていないのだ。かがみの口ぶりからバクラは一度彼女を見捨てようとしたらしい。
 一応、身体を使う等の話も出ていたが別段そんな様子は無かった。基本的にはかがみ任せにしていた事は間違いない。
 もしかするとバクラ自身にも強い制限がかけられている可能性があるのかも知れない。制限故にかがみを誘導していたのだろう。
 かがみのあまりの不甲斐なさに一度見捨てようとした事もその現れかもしれない。
 とはいえ、バクラの存在がかがみを追い込んだ事に変わりはない為、それを許すつもりは全く無い。

339A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:07:50 ID:TIW0LW2g0

 と、スバルは何かに気付き足を止めヴィヴィオを一端降ろし、デイパックからベルトを出して試しに身に着けてみた。しかし、別に反応する事はなかった。
「あたしじゃこのベルトは使えない……けど、かがみさんには使える……だったら!」
 ベルトを外して手に持ち
「IS……発動」
 そう言ってベルトを粉砕し再び走り出した。
 何故ベルトを粉砕したのか? それは再びかがみに利用されるのを防ぐ為だ。
 何故ベルトがかがみに装着されていたのだろうか? 何故かがみがベルトを使う事が出来、自分は使う事が出来なかったのか?
 その理由はかがみにはその資格があり自分には資格が無いからではなかろうか?
 資格が何かはわからない。だが資格があったからこそベルトは勝手にかがみに装着され彼女に力を与えたのだろう。
 もしここでのこのこかがみに近付いたらどうなるだろうか? 恐らく先程同様ベルトがかがみに装着される可能性が高い。そうなれば折角取り上げた意味が無くなってしまう。
 あの仮面ライダーの力は絶大、あの時は上手くいったが次も上手く行くとは限らない。故に二度と使われる事が無いようにベルトを破壊したのだ。
 勿論、かがみの説得が上手くいった場合、その力を奪った事は一見デメリットに思える。
 だが、かがみに力を与えるという事はかがみを戦わせる事を意味する。スバルはこなたやかがみ達といった戦いと無縁の人々を戦わせるつもりは全く無い。
 かがみ以外が扱えず、そのかがみにも使わせるつもりが無いならばその道具に意味など無い。だからこそ破壊したのである。

(とりあえず、これでもうかがみさんに戦う術はない……後は説得だけど……大丈夫、こなたならきっと助けられるし何かあってもヴァッシュさんや八神部隊ちょ……)
 ここまで考えてスバルは違和感を覚えた。
(ちょっと待って……部隊長はあの男と行動をしていた……どうして部隊長はあの男と?)
 カテゴリーキングはジョーカーだけが目的だと言っていた。確かにそれはある程度は信用出来る、だが殺し合いを止めようと言う風には感じなかった。
 何故はやては彼と行動を共にしていたのだろうか。勿論この状況下だ、例え敵でも組まなければならない時があるのはわかる。しかし何かが引っかかるのだ。

『あいつらは俺の手に負える奴らじゃないんでね』
 それは雷の男がやって来た時にあの男が言った言葉だ。あいつ“ら”――複数いた、つまりヴィヴィオがいたことも知っていたという事だ。
 そして恐らくははやても知っていた可能性が高い。それを知って待避したという事は――
(部隊長はヴィヴィオを見捨てた……)
 友人の娘を見捨てたという事実、それはスバルにとっては信じがたい話であった。
 だが、感情的な面を抜きにして考えれば有り得ない話ではない。ヴィヴィオの力が驚異的だったのはスバル自身も理解している。場を切り抜けるならば撤退という選択を選ぶ可能性が無いとは言えない。
 同時にリインの話も思い出した。リインの世界の彼女は家族を取り戻す為に非人道的な作戦の指揮をとっている話だ。彼女の世界のはやてならばその選択を選んでもおかしくはない。
 当然その世界のはやてである保証はないが、似たような状況に置かれた世界の彼女の可能性は十分にある。その可能性を頭から否定する事は愚行以外の何物でもない。

340A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:08:30 ID:TIW0LW2g0

 選択自体は認めたくはないが間違っているわけではない。だが、もしもはやての人格がスバルの推測通りだとしたらスバルにとって避けるべき事態が起こる可能性がある。
(かがみさんが危ない……)
 ここで以下の3人について客観的に考えてみて欲しい。

 力を暴走させてはいたものの、それ以外では友好的な姿勢を見せ、戦いにおいても誰であろうとも殺さずに無力化しようとしたヴァッシュ、
 口では殺すとか戦うとは言っておきながら撤退を促し、最終的には誰も殺さず此方を助けてくれた始、
 此方が説得したにも拘わらず、聞く耳を一切持たずに自分達を騙し陥れ仲間達を皆殺しにしようとしたかがみ、

 3人の行動を見て誰が信用出来るか? それぞれ意見はあるだろうが殆どの者は一番信用出来ない危険人物がかがみなのは理解出来るだろう。
 しかし、スバルは一般論とは外れた行動を取っているのはこれまでの行動からも明らかだ。他の2人とは戦ってはいたが、かがみに対しては戦うという選択ではなく助けるという選択肢しか選んでいない。
 この理由はかがみが何の力を持たないか弱き少女であり、こなたの友人であり、同情出来る部分が多かったからというものだろう。
 しかし逆を言えばその理由が無ければ話が通じないかがみこそが一番の危険人物ではなかろうか?
 バクラが元凶だ、かがみは何も悪くない? そんな理屈は通用しない、現在進行形で放置出来ない危険人物である事に違いはない。理由はどうあれチンクを殺し自分達をも殺そうとした事実は決して変わらないのだ。
 話が通じないならばどうするかなど考えるまでもない。排除するしか無くなる、殺し合いを打破する為ならばその選択が間違っているとは言えない。

 つまり、はやてが障害となるかがみを排除する可能性が高いという事だ。
 自分の世界のはやてならばその可能性は無いと断言出来るが、リインの話やヴィヴィオへの対応を考えれば危険人物を排除する可能性は否定出来ない。
 その考え方自体はわからなくはないからそれも致し方ない。だが、殺し合いとは無縁だった彼女を殺させる事を容認出来るわけがない。
 勿論、はやてが行動を起こしてもヴァッシュが止めてくれる可能性はある。だがそれでは遅いのだ、事が起こればその時点でかがみは裏切られたと考え更に説得を難しくする。なんとしてでも止めなければならない。
(お願いです……早まらないで下さい、八神部隊長……)
 杞憂であれば良い、しかしその可能性がある以上無視する事は出来ない。急がなければならない、故にジェットエッジを更に走らせようと――

341A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:09:40 ID:TIW0LW2g0





 ――バランスを崩し転倒しそうになった。何とか転倒こそしなかったがスバルは一端足を止めた。





 足場の良くない夜の森林であった事に加え考えていた以上に自身の受けたダメージや疲労は大きかったのだろう。
 それ以前に焦りと急ぐのに夢中で周辺の警戒を怠ってはいなかっただろうか? このタイミングで奇襲に遭えばアニメイトの二の舞だ。
 こんな調子では守れるものも守れず、救えるものも救えない。
 スバルは深く深呼吸する。長々と休むつもりは無いが心を落ち着ける事は必要だ。

 ふとデイパックから2枚のカードを出した。それは始が変化したカードと先程拾った彼が持っていたらしいカードだ。
 1枚はハートの2『SPIRIT』、中にはヒトとハートが描かれている。1枚はジョーカー『JOKER』、中には始の本来の姿の頭部が描かれていて、見ようによっては緑のハートに見えなくも無い。
(始さんから何も聞けなかったな……)
 カードを見て始の事を思い返す。結局の所、始は一体何者でスバルの姉であるギンガ・ナカジマと何があったのだろうか?
 少なくても彼自身が語った通り彼が人間とは違う異質な怪物という事は間違いないだろう。遺体がカードとなっていることからもそれは明らかだ。
 その一方、カテゴリーキングと始の会話からみるに、始が死神にして非常な殺戮者だったのはほぼ間違いないだろう。彼が殺し合いに乗っていた事についてはそれでほぼ説明出来る。
 更にスバルは2枚のカードと前にルルーシュが持っていたクラブのKのカードが同じものであると共に、それらがある物に似ている事に気付いた。それはトランプだ。
 となれば、『始=ジョーカー』が死神と呼ばれるというのも的を射た表現だ。トランプにおいてジョーカーは他の52枚とは異質な存在で時には忌み嫌われる事もあるからだ。
 つまり、始は最初から他者とは違う全く異質な存在という事だ。

 では、その始と解り合う事は不可能なのか? 答えはNoだ。
 そもそもの話、最初から異質な存在という意味ではスバル達も同じなのだ。
 スバルやギンガ達戦闘機人は「ヒトをあらかじめ機械を受け入れる素体として生み出す」という手段で生み出されたものであり、その目的はその名前通り高い戦闘力を持つ人型兵器を生み出す事だ。
 つまり、スバル達も最初から兵器として生み出されており人間達とは違う全く異質な存在なのだ。
 だが、現実ではスバル達はクイント・ナカジマに保護された後、ナカジマ家で人間として育った。また、ナンバーズにしてもその大半は更正プログラムを受けた後、ナカジマ家の養子になる等人間として暮らす事になった。
 始にもスバル達と同じ事が言える筈なのだ。自分達の声が届く筈がない、スバルはそう思っている。

 始とギンガの間に何があったのだろうか?
 始によるとギンガは殺し合いに乗った自分を助けて命を落としたらしい。だが、始の口ぶりではギンガとの遭遇はその時1度だけだとは思えなかった。
 ギンガは何度も始を説得しようとしていたのでは無いだろうか? ギンガは始と解り合えると思っていたのではないだろうか? 故に何度も説得を試み――その途中で敵の攻撃から始を守って死んだのだろう。
 始はそれを馬鹿な行為だと言った、しかしスバルはそれを否定する。ギンガが無駄な命を救う訳がなかったし何より始の言動そのものがそれを証明している。
 始は自分の為にギンガが死んだ事に強い悲しみを感じていた。本当にギンガの行動を馬鹿だと思うならそう感じるわけがない。
 そして何より、始はギンガの言葉の影響を強く受けていたのが先の戦いでもわかった。ギンガの声は始に届いていたのだろう。

 正直な話、少なくても始の行動を見る限り能動的に殺し合いに乗っていたとは思えなかった。
 ホテルでの戦いでは自分に去る様に言ったり、自身のとどめを刺すように促したりしていた。
 また、レストランでの戦いでも始はかがみを襲おうとはしなかった。
 本当に能動的に殺し合いに乗っているのならばそんな行動をとりはしないだろう。

342A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:11:30 ID:TIW0LW2g0

 もしかすると、そもそも始は誰かが言ったような『死神』として殺し合いに乗っていたのではなく、別の理由で殺し合いに乗っていたのでは無いだろうか? 例えば、待っている人達の元に帰る為といったものだ。
 勿論、何の確証も無い想像でしかないしそれを確かめる術もない。しかし、本当に只の『死神』ならギンガの説得は何も届かず逆に彼女を殺していた可能性が高い。
 始自身が気付いていたかはわからないが、きっと始自身誰かを守る為に戦っていたのかもしれない。誰かを守ろうとしたからこそギンガの説得が届いたのだろう。

 確かにジョーカーは『死神』等に代表される嫌悪される存在の意味を持っている。しかし、ジョーカーが持つ意味はそれだけではない。1つは他を凌駕する絶大な力、もう1つは他のあらゆる存在の代替になれる事だ。
 つまり、ジョーカーこと始はその絶大な力で皆を救える存在にもなれるという事だ。そして確かに彼は自らの力でスバルとヴィヴィオを救う存在となった。

『誰かの為にとか、守る為にとか、そんな事言ってる奴から死んで行くのよ』

 かがみが言った言葉、確かにそれは事実だ。
 ディエチもチンクもルルーシュもギンガも誰かを守ろうとして死んでいった。
 真面目な話、スバル自身あの時死んだと思っていたし、実際に自分とヴィヴィオを助ける為に始が死んだ事は確かだから否定出来るわけがない。
 それでもだ、死んでいった者達は仲間達に何かを届けてくれた。彼等の死は無駄ではなく同時に決して無駄にしてはいけない、それだけは断言出来る。
 彼等が遺した物はこの血塗られた運命を破る切り札となるかも知れない。しかし切る者がいなければ切り札に意味はない、故に生き残った者達は決して諦めてはならないのだ。

 カードが煌めいた気がした。スバル達を励ますかの様に――





 スバルは再び走り出した。調子はさっきよりも良い、これならば躓く事なくアジトまで行けるだろう。
 ヴィヴィオの容態は悪く、かがみの説得が上手く行く保証もない。はやての動向等気になる事は多く不安は尽きない。
 それでもスバルは決して諦めたりはしない。諦める事は簡単だ、だが諦めるという事は自分達を守る為に死んでいった者達の想いや意志を裏切る事になる。
 彼等の行動を無駄にしない為にも必ず皆を守り殺し合いを止めるのだ。





「ルルーシュ、ディエチ、チンク、ギン姉……みんなの想いと願い、決して無駄にしない……
 そして始さん……貴方の『心』と『魂』は私が受け継ぎます……
 必ずなのはさん達と力を合わせてヴィヴィオ達を助けてこの殺し合いを止めます――」

343A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:12:00 ID:TIW0LW2g0





【1日目 真夜中】
【現在地 E-9】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】バリアジャケット、魔力消費(中)、全身ダメージ中、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(カートリッジ0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、
     クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具③】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.ヴィヴィオを連れてスカリエッティのアジトへ向かう。
 2.六課のメンバーとの合流。かがみの事はこなたに任せる。はやてに早まった真似をさせない。
 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 4.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 5.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
 6.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード、金居(共に名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大)、肉体内部にダメージ(極大)、血塗れ
【装備】フェルの衣装
【道具】なし
【思考】
 基本:?????
 1.ママ……
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。
※暴走の影響により、体内の全魔力がリンカーコアごと消失しました。自力のみで魔法を使うことは二度とできません。
※レリックの消滅に伴い、コンシデレーションコンソールの効果も消滅しました。




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