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没ネタ投下スレ

38 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:31:33 ID:kw7JXkBY0
 
「お前は動くなよ」

 されど、ヒカリの思惑通りには行かない。
 最初の一歩を踏み込んだ瞬間に、ヒカリを襲撃したのは光弾。
 コーカサスが、破壊剣を持った右腕はそのまま、左腕を真っ直ぐに突き出したのだ。
 アンデッドの力の結晶たるエネルギー弾が迫り、ヒカリの胸部で爆発。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 突然の攻撃に、ヒカリがその片膝をアスファルトに付ける。
 ヒカリとて、もう余分なエネルギーが残っている訳ではない。
 先程のナイトシュートが失敗に終わった時点で、残ったエネルギーはほんの僅かなのだ。
 そして残り僅かなエネルギー波、限界を超えたダメージによって消失。
 ヒカリの腕に構成されていたナイトブレードが、霧散するように消滅した。
 されど、そうしている間にも、メビウスの悲痛な叫びは止みはしない。
 何も出来ない無力感に打ちひしがれながらも、手を伸ばす。
 この力が届かなくとも、目の前で苦しむ誰かを助けるくらいは、出来る筈だ。
 出来る筈なのに――その腕は宙を掻き、その指は虚空を掴む、だけしか出来ない。
 想いだけでは……それに伴った力が無ければ、何も守る事は出来ないのだ。
 力無く伸ばされた手は、メビウスに届く事は無く。

「あぁぁぁぁぁぁぁッ!! うわぁぁぁぁぁぁッ!! あ、があぁぁぁぁぁぁあ――ッ!!」

 絶叫。聴くだけでも力が抜けて行くような、一際大きな断末魔。
 コーカサスの放った光が、メビウスの全身を爆ぜさせる。
 全身が爆発を開始し、メビウスの身体中で起こる小さな爆発は、大きな爆発へと変わって行く。
 やがて、爆発がメビウスの身体を包み込み――メビウスの声が途絶えた。
 メビウスの身体が、光の粒子となって消滅したのだ。

「ミライ……」

 先程までメビウスが居たその場には、もう誰も居ない。
 先程まで目の前で苦しんで居たメビウスは、光になって消えた。
 何も残らなくなったアスファルトを、ただ呆然と眺める事しか出来なかった。

「これでわかったろ? お前らじゃ、僕には勝てないのさ」
「キング……貴様……」

 青い拳を握り締め、振り上げる。
 同時に、今までに無い程の高速で明滅するカラータイマー。
 天道総司自身にも、もう解って居る。自分に、奴を殴るだけの力など残って居ない事に。
 振り上げたヒカリの腕は、何処にもぶつけられはしない。
 宙へ向かって振り抜かれる事すら叶わず、青の拳が光になって行く。
 最後にコーカサスを、その銀の瞳で睨み付け――光は、全身に広がった。
 これで本当に、ヒカリに残されたエネルギーも尽きたのだ。
 間もなくして、ヒカリの身体もメビウスと同じように消滅した。

39 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:32:04 ID:kw7JXkBY0
 




 クアットロは死んだ。
 心の底から信用する事は出来ない相手であったが、それでも目的は同じだった。
 皆でこのデスゲームから脱出する。そのたった一つの目的の為に、協力した仲間だった。
 アンジールも死んだ。
 最初は突然襲い掛かって来た、得体の知れない襲撃者であった。
 だが、最終的な目的は誰かを守る事。事実、アンジールはその最後の命を賭して、なのはを救った。
 天道総司も死んだ。
 商店街の戦いで出会った、この場に居る中では誰よりも頼れる仮面ライダー。
 なのはと同じ目的を掲げ、全ての命を救って、共に脱出する筈の――掛け替えのない仲間だった。
 ヒビノミライも死んだ。
 まだ出会ったばかりだけど、彼が本当に信用に足る人物である事は、その眼を見ればわかる。
 アンジールと天道の死にその涙を流し、最後の最後まで諦めずに戦い、その命を散らした。

「皆、もう居ない……もう、魔力も残って無い……」

 最早涙も流れはしなかった。
 目の前で皆殺された。自分の持てる魔法も、何一つ通用しなかった。
 竜魂召喚と、その後に続く戦闘で消耗した魔力は凄まじい。
 精神力も尽きかけている今、なのはには絶望しか残ってはいなかった。
 諦めてはならない。それは解って居る筈なのだが――どう考えても、無理だ。
 戦える道具は何一つ無い。魔力も、仲間ももう残ってはいない。

「もう……終わり、なんだね……」

 それは事実だ。
 もうどうしようもない事実なのだ。
 奴には、自分達の持てる全ての策が通用しなかった。
 魔力も碌に残って居ない自分に、最強のカテゴリーキングたるキングを倒せる訳がない。
 その考えが、最後まで諦めずに戦った皆を冒涜する行為だと言うのは、解る。
 だけど、もう何も残ってはいない。手詰まり。どうしうようもないのだ。
 そう思っていたなのはの耳朶を叩いたのは、意外な人物の声であった。

「私は結局……何も守れなかった……」
「本当に……そう……思うか……」
「え……その声……! まさか……!」

 それは、聞き覚えのある人物の声。
 低く、鋭く尖った歴戦の戦士の声であった。
 聞こえる声に振り向けば、そこに居たのは、一人の戦士。
 アスファルトに突き刺さった一振りの刀――爆砕牙を杖代わりに。
 その巨体を持ち上げ、無理矢理立ち上がって居た。

「ア……アンジール、さん……生きていたの!?」

 いいや、生きて居られる筈がない。
 あれだけのダメージを、ほぼ生身で受けたのだ。
 いくらソルジャーと言えど、生きて居られる訳が無いのだ。
 されど、事実として目の前のアンジールは立ち上がって居る。
 それは、不可能を可能にする程のアンジールの執念が成せる業。
 生きたいと、守りたいと願う心が。アンジールの魂を辛うじて現世へと留めているのだ。
 そもそもアンジールの身体は、死亡すれば緑の光と共にライフストリームへと還る。
 身体がそのまま残っていると言う事は、それはまだ辛うじて生きている証明なのだ。
 といっても、異世界を生きるなのはがそれを知らないのは当然なのだが。

「お前には……聞こえないのか……? あいつらの声が……」
「え……? 声……?」

40 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:32:34 ID:kw7JXkBY0
 
 気付けば、なのはの周囲を無数の光の粒子が漂っていた。
 それは、メビウスとヒカリが光子にまで還元された姿なのだが、なのははそれを知らない。
 だけど、この光が何処か温かい、不思議な光だという事は、なのはにも分かる。
 退屈そうに剣をぶらぶらと振り回すコーカサスをよそに、なのはが顔を上げた。
 同時に、なのはの頭の中に、声が響く。

『眼を逸らしてはいけない。君になら聞こえる筈だ。今はそばに居なくとも、勝利を信じて共に闘う仲間の声が』

 なのはの頭の中に、青い光の巨人のイメージが浮かび上がる。
 それは、先程天道総司が変身して戦った戦士……ウルトラマンヒカリ。
 ヒカリの声が聞こえると言う事は、まだ天道総司は死んでいないと言う事になる。
 だけど、あれだけ派手に負けた天道総司が死んでいないとは、一体どういう事だろう。

『そうだ……君達人間が居てくれるから、我々はどんな強敵とも戦ってこれた』
「私達が……?」
『救って欲しい、俺の仲間を。君達が培ってきたものがあれば、必ず守り抜ける』

 ヒカリが言うが早いか、周囲の粒子が一箇所に集まった。
 それはなのはの腕へと集束されて行き――やがて、青のブレスレットへと変化する。
 かつて、ペンウッドの命を救ったとされる奇跡の光のブレスレット。
 つい先程まで、天道総司と一体化し、共に闘っていた青き輝き――ナイトブレス。
 受け継がれて行く光の絆。それが今、こうして高町なのはの元へと宿ったのだ。
 ナイトブレスを見詰めるなのはの肩を、アンジールが掴んだ。

「立て、なのは……俺達はまだ、誰一人死んではいない」
「アンジールさん……」

 その身を立ち上がらせ、爆砕牙を杖代わりとするアンジールに肩を貸す。
 不思議なものだ。先程までは絶望に打ちひしがれていたのに、今はまるで違う。
 アンジールが生きていた。ヒカリの声を聞いた。
 それだけで、なのはの心に希望の光が再び瞬いた。
 そして今度は、その希望に応える様に、周囲の光が集束され――
 集束された光が、なのはの眼前で人の形を取った。
 服はぼろぼろに裂け、全身血まみれ、痣だらけ。
 ボロボロに傷ついては居るが、間違いない。
 光が形成したのは、見まごう事無き天道総司であった。

「守り抜くんだ……俺達の力で、全ての参加者を」
「天道さん……!」

 天道総司が、力強く頷いた。
 その声を聞いていると、力が湧いてくる。
 これがキングには理解出来ないであろう、人の心の光。
 誰かの命を守りたいと願う限り、無限に湧き上がる力。
 それが、なのはの心に希望と勇気を与えてくれるのだ。

「ああ、ミライも一緒にな。お前になら、聞こえるだろう?」
「アンジールさん……!」

 アンジールが、優しい微笑みを浮かべた。
 そうだ。皆で守り抜くと誓ったではいか。
 誰一人欠かさず、皆で脱出すると誓ったではないか。
 それがなのはが誓った、たった一つの願い。ならば、こんな所で立ち止まってはいられない。
 ただ、守り抜く。たったそれだけの目的を果たす為に、自分達はここまで戦ってきたのだ。
 その為にも、こんな所でミライの命が欠けて良い訳が無かった。

「キュックル〜!」
「フリード……!」

 体力を回復したフリードが、その翼でなのはの傍らを飛ぶ。
 なのはの右腕に装着されたナイトブレスを、フリードがつついていた。
 このフリードも、小さな命とは言え、ここまで共に戦ってきた仲間。
 このゲームから脱出する上で、絶対に欠かせない大切な存在なのだ。
 やがて、ナイトブレスが青き光を放つ。
 光と共に聞こえるのは、聞き覚えのある、優しい声。

41 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:33:04 ID:kw7JXkBY0
 
『なのはちゃん……もう一度力を貸して欲しいんだ! 僕達の、未来を守る為に!』
「その声……ミライ君! ミライ君なの!?」

 それは聞き覚えのある、心優しき男の声。
 皆を守る為に戦い、散ったとばかり思っていた。
 だけど、それは間違いだ。ミライは、散ってなどいない。
 全ての参加者を守り抜くと誓ったミライが、こんな所で朽ちる訳が無かったのだ。
 それを理解すると共に、なのはの意識が暗転した。





 ほんの瞬きの内に、なのはの意識は何処か別の次元に存在していた。
 右も左も、上も下も、見渡す限り360度が黄金の光に包まれた異空間。
 この空間では方向感覚など意味を成さず、自分が立って居るのか寝ているのかすらも解らない。
 ここは何処なのかと考えるよりも先に、視界に入って来たのは、仲間の姿。
 ウルトラマンメビウスとして戦った、ヒビノミライだ。

「ミライ君……どうして!」
「ナイトブレスは、奇跡の力を持つ伝説の超人、ウルトラマンキングから授かったものなんだ」

 なのはが、自分の腕に装着されたナイトブレスへと視線を落とした。
 ウルトラマンヒカリが持つナイトブレスは、ミライの言う通りウルトラマンキングから授かったものだ。
 そもそもウルトラマンキングという存在は、ミライですらも完全には理解し得ぬ存在。
 1から30まで、ありとあらゆる次元に同時に存在し、ありとあらゆる世界で万能を誇る存在。
 宇宙の端から端であろうが、過去の果て、未来の果て……それどころか事なる世界の果てであろうと、一瞬で飛び越える。
 全ての世界、全ての宇宙で起こったあらゆる出来事を同時に把握すると言われる、神にも等しき存在。
 ウルトラマンキングと比べれば、歴戦のウルトラ警備隊員であろうが赤子にも満たない程度の戦力なのだ。
 それ程の圧倒的力量差。その上で全ての世界のウルトラマンの能力を備えた、最強にして万能たるウルトラの神。
 そんな伝説の超人・ウルトラマンキングが直々にヒカリに託したのが、このナイトブレスなのだ。
 そのナイトブレスがどんな不可能を可能にしたとて、不思議な事では無い。

「それに、ヒカリは前に言っていた。来るべき戦いの時、このナイトブレスが必要になると」

 かつてのエンペラ星人との戦いの時だってそうだ。
 どうしようもないピンチを救ったのは、このナイトブレスだった。
 メビウスの光と、ヒカリの光。それから、信頼出来る人間たちの心の光。
 それら全てを一つにつなぎ合わせ、メビウスを無敵の超人へと変えた。
 そして、無限の可能性を秘めたこのナイトブレスを今受け継いだのは、高町なのは。
 今この瞬間、なのはこそがこの戦いに勝利する為のたった一つの可能性となったのだ。
 頭の中に流れ込んでくるナイトブレスの情報。それを理解したなのはが、ミライに向き直る。

「私達にはまだ、出来る事がある……そうだね、ミライ君?」

 なのはの表情には、最早恐怖も絶望も無い。
 絶対に勝てる。絶対に守り抜ける。その確証が、勇気となってなのはの自信を裏打ちする。
 この戦いに勝って、キングを倒す。そして、全ての参加者を守り抜くのだ。
 ヴィヴィオも、スバルも、生き残った他の皆も……全員守って、帰還する。
 その為にも、守り抜く為にも。なのはは戦わなければならないのだ。
 こくりと頷くミライに、なのはがその決意を口にした。

「解った……一緒に行こう!」


 そう叫んだ次の瞬間には、なのはは元の次元へと戻って居た。
 傍らに居るのは、全身傷だらけになったアンジール。全身血まみれの天道総司。
 二人とも、最後の最後まで、自分の持てる全力を出し尽くして戦った本物の戦士だ。
 なのはの上空を飛翔するのは、眼前のコーカサスを睨み付ける飛竜、フリードリヒ。
 彼も、自分の身体がぼろぼろになるまでなのはを守り、戦い抜いてくれた仲間。
 他の二人と同じくらい大切な、掛け替えのない存在なのだ。

42 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:33:35 ID:kw7JXkBY0
 
「キュクル〜!」

 フリードが、空を飛びながら、頷いた。
 なのはもそれに応える様に、力強く頷く。
 最早言葉などは必要ない。ここに居る全員、気持ちは一つだ。
 目の前のキングを倒して、全員で帰還する。
 その為に、全員で一緒に戦おう。

「アンジールさん」

 なのはの声に、アンジールは無言で頷いた。
 その表情に、先程までの様な苦しみは見受けられない。
 アンジールもまた、絶対に勝利出来ると信じているのだ。

「天道さん」

 そしてそれは、天道総司もまた同じ事。
 なのはの声にこくりと頷き、アンジールと同様に微笑みで返す。
 今なら解る。天道総司もまた、自分達と気持ちは同じなのだ。
 ただ、守り抜く為に、もう一度だけ立ち上がる。
 今、自分達は一つに繋がっているのだ。

「行こう……私達、皆で!」

 ナイトブレスには、一本の短剣が装着されている。
 それを一度ナイトブレスから取り外し、もう一度装着する事で、ヒカリへの変身は完了する。
 その動作を、なのはが自分の手で完成させる。
 一度抜き放った短剣を突き刺し――同時に、光を放つナイトブレス。
 装着された短剣が黄金の光を放ち、青き十字の輝きがなのはの腕に煌めいた。
 ナイトブレスが装着された腕を……その掌を地面へと向け、真っ直ぐに突き出す。
 アンジールが、突き出されたなのはの手の甲に、自分の掌を重ねた。
 それに続く様に、天道が二人の手の甲の上に自分の掌を重ねる。

「皆さん……!」

 聞こえる声は、先程まで共に闘った勇敢な男の声。
 手を重ね合わせる三人のすぐ傍で、周囲を舞う光の粒子が収束した。
 全身から眩い光を放ちながら、形成される人影は――ヒビノミライ。
 メビウスブレスが装着された左腕を、三人の手の甲に重ねた。
 ミライの光が、天道へと。天道の光が、アンジールへと。
 そして、アンジールの光がなのはへと。全員の光が、一つに重なる。
 すぐ傍にいたフリードも一緒に――この場の全員の身体が、眩いばかりの光を放ち始めた。

 ――人は誰でも、自分の力で光になる事が出来る――

 かつてとある世界の、超古代のウルトラマンが言った言葉だ。
 暮らす世界は違えども、それは決して揺らぐ事のない不変の事実。
 どんな状況であろうと、諦めない限り……人は誰だって光になれる。
 例え人の心の中に闇があろうとも、信じる事を止めない限り――
 人はウルトラマンの心に応え、共に光になる事が出来るのだ。

 なのは。天道。アンジール。フリード。ミライ。
 五つの魂が共に共鳴し合い、一つの光を作りだす。
 五人を包む眩き光は、やがて「∞」の形を形成した。
 気持ちを一つに。合わせた掌を、全員で天へと掲げ――叫んだ。

「「「「メビウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥス!!!」」」」

43 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:34:08 ID:kw7JXkBY0
 




 眩い光が、周囲の闇を振り払った。
 アンデッドであるコーカサスの視力ですらも直視出来ない程の光。
 流石のキングですらも、こんな状況には全くもって心当たりがない。
 あの携帯サイトで参加者全員分の情報を得たとて、ここまでの事は知り得なかった。
 故に、何が起こったのか理解出来ないキングは、ただ黙って∞の光を凝視する事しか出来なかったのだ。
 やがて周囲の光が収まり、視界が回復して行く。周囲が再び、夜の闇を取り戻して行く。
 コーカサスの視界に入ったのは、爆炎。燃え上がる灼熱の炎。
 爆炎は一人の人間の形を形成し、次いで輝きを放つ、黄金の光。

「ん……?」

 爆炎と黄金の輝きが一人のウルトラマンの形を形成した。
 その姿は、そのシルエットは、まごうことなきウルトラマンメビウスのもの。
 だが、今までとは決定的に違う。
 まずはその体色。今までのメビウスは、銀を基調に赤のボディカラー。
 それに反して、今のメビウスは赤だけでは無いく、青の炎が渦巻いているように見える。
 さながら赤の炎と青の炎が、ない交ぜになって燃えあがっている様にも見えた。
 赤と青の勇気の炎を縁どる様に、全身に走った黄金のライン。
 黄金がメビウスの全身に不死鳥の翼を象り、それを彩るように赤と青の炎が燃え盛る。
 左の拳と右の拳をぶつけ合わせ、両腕に装着されたブレスを輝かせた。
 左腕。燃え上がる太陽の炎を象徴する、黄金の光のメビウスブレス。
 右腕。静かな夜の、優しい月光を象徴する、白銀の光のナイトブレス。
 やがて両腕を一気に振り払い、コーカサスに対し、構えを取った。

「ハッ、何が起こるのかと思ったら、結局ただのウルトラマンかよ!」

 拍子抜けだ。
 少しでも警戒をした自分がバカバカしく思えて来る、とばかりに込み上げる嘲笑。
 メビウスにしろヒカリにしろ、どんなに手を尽くしても自分には勝てないというのに。
 今の二人との戦いで、自分はウルトラマンという存在のレベルを知った。
 ましてや片方は最強の仮面ライダーを自負していた男が変身したウルトラマン。
 ウルトラ警備隊の一人と、最強の仮面ライダーが手を組んでも自分一人倒せなかったのだ。
 それを、今更四人と一匹で力を合わせて一人のウルトラマンになったところで、勝ち目があるとは思えない。
 ならばひと思いに、この一撃で終わらせてやるのが情け。
 逆にいえば、この一撃を耐えられない時点で、あいつらはもう駄目だ。
 アスファルトを踏み締め、全てを両断する必殺の破壊剣を高らかに振り上げる。
 瞬間、迸る血の様などす黒い光が破壊剣を彩った。
 ばちばちと音を立てて、破壊剣が軋みを上げる。
 どす黒く、冷たい光が、みるみる内に増幅して行く。
 先程メビウスを破壊した時と同じ輝きだった。

「はぁっ!」

 それを一気に突き出し、自ら生み出した壮絶なる闇の波動を発射。
 どす黒い闇にも似た光。全てを飲み込む闇の奔流。
 巻き起こる衝撃波。周囲の瓦礫を吹き飛ばしながら、真っ直ぐにメビウスへと加速。
 やがて、闇の波動はメビウスの胸部で爆ぜた。
 刹那、大爆発――したかに見えた。

「えっ」

 否。爆発したのは、メビウスの身体では無かった。
 それどころか、メビウスは指一本動かしてはいない。
 今し方自分が放った“波動”が、メビウスの身体に命中した瞬間に、爆発したのだ。
 それだけではない。爆発は波動を伝わって、破壊剣を握るコーカサスへと押し戻されて行く。
 メビウスが自分の力を上乗せして、コーカサスの波動をそのまま押し返しているのだ。

「なにそれこわ――うわっ!?」

 冗談を言うまでもなく、破壊剣にまで爆破が到達した。
 どんな鉄壁であろうと容易く両断する筈の、最強の破壊剣に――亀裂が走った。
 それ即ち、最強を名乗る筈のオールオーバーに齎された、敗北。
 それを認識するだけの時間を与えられずに、オールオーバーは粉々に粉砕。
 コーカサスの腕を派手に爆発させて、破壊剣が爆発四散した。

44 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:34:42 ID:kw7JXkBY0
 
「まだ解らないのか! キング!」

 赤と青のウルトラマンが言葉を発した。
 この声には聞き覚えがある。聞き間違えようのない、あの愚か者の声。
 自分の身を犠牲にし、他者の為に闘う、あの愚かな青年――ヒビノミライの声だ。
 例え赤と青の爆炎に身を包もうと、外見がメビウスなのだから当然かと納得。
 今自分が闘っている相手は、あのヒビノミライを主人格とするウルトラマンなのだろう。
 痛む右腕を抑え、メビウスを凝視するコーカサス。
 目の前のメビウスが、一歩踏み出し、叫んだ。

「今の僕は、もう一人じゃない!」

 同時に、気配を感じた。
 現在の主人格たるヒビノミライの気配。
 そして、その後方にずらりと並んだ、他の連中の気配。
 高町なのは。天道総司。アンジール・ヒューレー。フリードリヒ。
 その全員が、本当の意味で一つの光となった姿が、目の前のウルトラマン。
 二つのウルトラの光と、それを信じる人間達の心の光。
 それらが合わさり、究極の光の姿となって君臨した。
 ウルトラマンメビウス――メビウス・フェニックスブレイブ。
 不死鳥の勇者の名を冠する、究極のウルトラマンの姿。

「はっ……だから何だって言うのさ! 四人掛かりで僕に勝てなかったお前らが……!」

 もう盾も剣も、回復するまでの間は形成出来ない。
 だけど、その剛腕は全てを破壊出来るだけの力を持っている。
 どんな重量のものでも軽々と持ち上げ、どんな鉄壁をも破壊する拳がコーカサスにはある。
 こんなところで、こんな下らない慣れ合い厨に負ける事などあってはならないのだ。
 拳を振り上げて、コーカサスがアスファルトを蹴った。加速を付けて、一気にメビウスに肉薄。
 そして、力一杯振り抜かれる一撃――右のストレートパンチ。
 同時に、メビウスもその右腕を振り抜いた。

「フンッ!」
「グ……ァ……ッ!?」

 クロスカウンター。
 お互いの拳が、お互いの顔面へと――届いては居なかった。
 コーカサスの拳だけが、メビウスには届かなかったのだ。
 一方で、コーカサスの顔面を抉ったのは、燃え上がる爆炎を宿らせた赤の拳。
 めきめきと音を立て、仮面を砕いたその刹那。
 拳から放出されるは黄金の輝きと、灼熱の炎。
 一瞬の出来事に、視界を失うコーカサス。

「ハァッ!」

 今度は、メビウスの攻撃だった。
 不死鳥の炎と輝きを撒き散らしながら放たれる前蹴り。
 しかし最強のアンデッドの一角たるコーカサスも、只で攻撃を食らいはしない。
 ほぼ反射的に、左腕に装着されたソリッドシールドの本体を突き出した。
 どんな攻撃をも完全に無効化する、最強にして最硬を自負する自慢の盾。
 されど、その程度で灼熱の不死鳥となったメビウスを止める事は出来ない。

45 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:35:27 ID:kw7JXkBY0
 
「なっ……!」

 盾を打ち砕いたのは、突き出されたメビウスのキック。
 眩いばかりの光と、灼熱の爆炎を撒き散らしながら、コーカサスの盾を粉々に粉砕したのだ。
 塵となって砕けた盾の破片は、勇気の炎に焼き尽くされて、光の粒子にまで還元されてゆく。
 勢いそのまま、今度はもう一方の脚を振り抜いた。
 メビウスによる、回し蹴り。その強烈な一撃が、コーカサスの腹部に直撃した。

「が――はっ……!」

 溢れ出すのは、緑の血液。
 夥しい量の液体が、黄金の仮面の下から吐き出された。
 気付けば、重厚な装甲に覆われている筈のコーカサスの身体は、くの字に折れ曲がった。
 腹部の装甲が眩い光を放出しながら、粉々に砕かれて行く。次いで、光へと還って行く。
 当然、それだけではメビウスのキックの衝撃を殺しきれはしない。
 キックに耐えられなかったコーカサスの身体は、後方へと一気に吹っ飛んだ。
 どごぉんっ! と、大きな音を立てて、コーカサスの背中が後方の雑居ビルの壁を突き破った。
 後方のコンクリートの壁を幾つも突き破って、ようやくコーカサスがアスファルトに崩れ落ちる。

「……クソッ! 僕が、負けるだと!? そんな、馬鹿な! 僕は――僕は!!」

 僕は、最強のカテゴリーキング。
 僕は、全てを滅茶苦茶に破壊する最強の存在。
 僕は、誰にも負けない絶対的な強者である筈。
 そんなキングの常識が、覆されて行く。そんな事は、絶対に認められない。
 認めてなるものか。こんな不条理な力を、認める訳には行かないのだ。
 アスファルトを殴りつけて、その身を奮い立たせる。
 最早腹部の痛みなども忘れて、激情のままに駆け出した。





 メビウスの遥か前方の雑居ビルに、馬鹿でかい穴が開いていた。
 それは今し方自分が開けた穴。コーカサスを吹っ飛ばした穴だ。
 穴の奥を凝視すれば、コーカサスアンデッドがもう一度立ち上がり、走り出していた。
 奴の考えは解る。先程まで圧倒的に有利であった自分が、こうも一方的にやられる事が納得出来ない。
 だからそんな事実を覆さんと、何度でも立ち上がり、メビウスを倒す為にその拳を振るう。

「そんな筈がない! メビウスなんかに、この僕が!!」
「このメビウスには、ミライと、俺達の想いが込められている!」
「そうだ……! 最早お前如きに負けるような力じゃない!」

 アンジールに続いて、天道が声高らかに宣言した。
 それに同調する様に、黄金の光の中、一同が一歩を踏み出す。
 この光の中で、自分達の想いは一つとなった。“守りたい”と願う心が、一つの光になれたのだ。
 守りたい者もない、自分の為だけにたった一人で戦い続けるキングなぞに、絶対に負けはしない。
 両腕を大振りに、駆け抜けるコーカサスアンデッドに、メビウスが構え直した。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉあぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」

 我武者羅な動きだった。
 重厚たる黄金の装甲で繰り出される、右のハイキック。
 それをメビウスに叩きつけようと振り上げる。
 奴の狙いはたった一つ。メビウスの頭部を打ち抜くつもりだ。
 だが、狙いが見えているのであれば、防ぐ事など容易い事。
 両腕の甲を突き出し、ガードの姿勢を取った。
 黄金の脚に、作った両腕の甲を自らぶつけに行く。
 コーカサスのキックがメビウスの腕に命中した瞬間に、弾ける黄金の光。
 一瞬で決着はついた。微動だにしないメビウスと、体勢を崩し、脚を下ろしてしまうコーカサス。

「ハァッ!」

 今度はメビウスが、その拳を真っ直ぐに突き出した。
 爆炎と眩き光を奔らせたメビウスのストレートパンチが、コーカサスの胸部を強打。
 胸部装甲がめきめきと音を立てて砕け、緑色の血液が噴き出す。
 されど、拳が命中した場所から湧き上がった炎と光で、そんな血液はすぐに蒸発。

46 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:35:57 ID:kw7JXkBY0
 
「なんで……なんで!」
「おばあちゃんが言ってた。大切なのは、最後まで諦めずに立ち向かう事――」

 メビウスが、左足を軸に右脚を振り上げた。
 振り上げた右の脚に、黄金の輝きと、灼熱の炎と――眩き稲妻が宿った。
 仮面ライダーカブトの影をその身に重ねて、振り抜かれるキック。
 一撃必倒の威力を秘めた蹴りが、コーカサスの左肩に叩き落された。
 稲妻と、灼熱と、黄金の輝き。それらがないまぜになった光が、コーカサスを叩き伏せた。
 それでも、流石はカテゴリーキング。黙って倒されるつもりは無いらしい。
 その手に再び破壊剣を具現化させ、それを振り上げる。

「……っらぁ!!」
「夢と誇りをこの胸に……例え僅かな希望でも、勝利を信じて戦う事――」

 メビウスの右腕に装着されたナイトブレスから、光輝く金の剣が生成された。
 そして振り抜かれるは、歴戦の戦士によってのみ繰り出される太刀筋。
 ソルジャークラス1st・アンジールの影をその身に重ねて、光の剣が瞬いた。
 金の光となったメビュームナイトブレードが、刹那の内に破壊剣を切断。
 一切の歪みを許さない切り口から、金の光が溢れ出す。
 ∞の光を撒き散らしながら、消滅してゆく黒金の剣。
 自棄になったコーカサスが、その左腕にエネルギーを集約。
 それを突き出し、至近距離でメビウスに光弾を発射する。
 
「クソッ……!」
「信じる心……その不屈の心の強さが、不可能を可能にする――」

 両腕を掲げたメビウスが、その腕を胸の前でぶつけ合わせた。
 次いで、カラータイマーから放たれる光は、周囲の全てを飲み込む。
 天をも揺るがす高町なのはの威厳を、その身に宿らせて、放たれる光線。
 カラータイマーから放たれた光の波が、コーカサスの身を包み込んだ。
 メビウスの光が黄金の表面装甲を焼き尽くし、コーカサスの身体をよろめかせる。

「――それが、ウルトラマンだ!」

 体勢を崩し、崩れ落ちようとするコーカサス。
 その胸部に、メビウスが振り抜いた両の拳を叩きつける。
 両腕から爆炎を放出しながらのダブルストレートパンチだ。
 全員の想いを乗せたヒビノミライの放つ一撃が、コーカサスの胸部で爆ぜた。
 当然、装甲を焼き尽くされたコーカサスに、その一撃を受け切れる訳が無かった。
 爆発と共にコーカサスの身体は吹っ飛び、無様にアスファルトを転がった。

「畜生……畜生ぉぉぉぉ……!」

 よろめくキングと、微動だにしないメビウス。
 銀の視線と、緑の視線。二人の視線が交差する。
 無限にも思える刹那の後で、先に動いたのは、メビウスであった。

「皆さん、僕に力を貸して下さい!」

 共に闘う仲間への問いかけ。
 されど、その問いに対する答えは、最早説明するまでもない。
 彼らは今、メビウスの光と一つになった。力も、心も、願いも、一つになったのだ。

「ハッ!」

 その拳を、胸の前で打ち合わせた。
 赤のブレスと、青のブレスが、稲妻を放出する。
 赤の稲妻と青の稲妻が、両の腕を駆け巡る。
 どんな困難にぶつかろうと、諦めずに立ち向かった心の光。
 それが∞の軌跡を描きながら、今まさに新たな奇跡を起こさんと光輝く。
 メビウスの輪を思わせる∞の光が、左腕に赤の炎を増幅させ――次いで、左腕を掲げた。
 青の輝きが、鋭角的な直線を幾重にも輝かせる。右腕に宿るは、眩いばかりの心の輝き。
 そして――

47 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:36:28 ID:kw7JXkBY0
 
「シュワッ!」

 両の腕を、十字にクロスさせる。
 それは極限まで高められた究極の輝き。
 二つの光と、人間達の心の輝き。それらを限界まで増幅し、撃ち放った。
 放たれた光は、ゴールドの輝きと、ブルーメタリックの輝き。
 二色の極光は空気中で一つに交わり、夜の闇を吹き払って、邪悪へと迫る。

「なっ……うぉぉぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」

 キングの絶叫。断末魔の叫び。
 メビウスの黄金の輝きの前には、邪悪な黄金などくすんで見える。
 コーカサスアンデッドの持つ黄金の装甲が、焼き尽くされていく。
 メビウスの放った光を真っ向から受け止めて、只で済む訳がないのだ。
 しかし、不死のアンデッドたる存在を、そう簡単に倒せはしない。
 装甲を焼き尽くされ、その身体を焼かれようとも、キングは一歩も引き下がりはしないのだ。
 だけど、所詮それだけの事だ。今のメビウスを止める理由には成り得ない。

「私達はここまで、勝利を信じて共に闘って来た――!」

 突然殺し合いに巻き込まれて、突然人の死を見せつけられた。
 目の前で大切な友達を殺されて……目的を同じくする仲間も殺された。
 掛け替えの無い者を――仲間も、友達も、悪しき毒牙にかけられてしまった。
 何度も挫けそうになったし、何度も諦めかけた。何度も何度も、涙を流した。
 だけど、その度に励ましてくれたのは、ここに居る仲間達だった。
 そうだ。自分はもう、一人ではないのだ。どんな状況に立たされようと、その想いは共にあるのだ。
 散った者も、残った者も……皆、想いは同じ。ただ生き抜く為に、ここまで戦い抜いて来たのだ。

「ああ……残った参加者達の未来は今、俺達に託されているんだ!
 どんな困難にも、負けずに戦って来れた俺たちなら、絶対に守り抜ける――!」

 守りたい。ただ、守り抜きたい。
 その想いが強すぎるが故に、一度は闇に落ちた。
 全ての参加者を殺してでも、守るべき者を守ろうとした。
 しかしそれは、誰よりも愛深き故の――誰よりも優しい心を持ったが故の過ち。
 守ろうとした者は、もう居ない。されど、守ろうとした心は今でも共にある。
 最も愛する者が、最期に他の参加者を守って欲しいと願ったのであれば、迷う必要も無くなるというもの。
 ただ自分の正義に従うままに――全ての命を守り抜く為に、ここで悪を討ち滅ぼす。

「そうだ……俺達に叶えられない夢など無い! 辿りつけない未来も無い――!」

 戦う目的はただ一つ。
 アメンボから人間まで、総ての命を守り抜く事。
 共に過ごした時間はほんの僅かだが、そんな事は関係ない。
 例えこの身が朽ち果てようと、守るべき者の為、命を賭けて戦う。
 共に死線を潜り抜け、想いを重ねた自分達に、辿りつけない未来などあり得ない。
 ここに居る全員で、共に新たな未来を迎える為……今持てる、全力の力を出し尽くす。

「信じるんだ……僕達の力を! 僕達の未来を!」

 僕達の未来。無限に広がる、日々の未来。
 それを守り抜く為に……これからも守り続ける為に。
 未来を信じる心の光が、更なる力を与えてくれる。今ならば、どんな敵にも負ける気がしない。
 信じる心が、放出され続ける5人の魂の光を増幅させていくのが、自分達にも分かる。
 勝てる。一つになった今の自分たちなら、最強のアンデッドだろうが関係ない。
 メビウスの腕から放出される極光が、更に極大に膨れ上がり、コーカサスを襲う。
 スペシウムの熱線に晒され続けたコーカサスの身体には、やがて限界が訪れ――

 ――ドゴォォォッォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 耳を劈く轟音。
 身を焦がす熱風。
 全てを吹き飛ばす衝撃波。
 それらが一度に押し寄せてきて、メビウスの周囲を更地へと変えてゆく。
 爆発がアスファルトを粉々に砕いて捲れ上がらせ、周囲のビルを吹き飛ばす。
 されど、メビウスは微動だにしない。今更その程度の衝撃で吹き飛ばされるメビウスではないのだ。
 だが、逆にコーカサスはどうか。これだけの爆発エネルギーを直接浴びて、無事で居られるだろうか。

「勝った……」

 一つになったメビウスの中で、誰かが呟いた。
 考えるまでも無い。これだけの大爆発を巻き起こして、無事で居られる訳がないのだ。
 それも爆心地に居たとあれば、尚更助かる可能性は低いと言える。
 もしもこれでまだ生きていたとするならば、正真正銘の化け物――

48 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:37:18 ID:kw7JXkBY0
 
「いや……まだだ」

 ぽつりと、誰かが呟いた。

「え……まだって、どういう……」
「奴はアンデッドだ。カードに封印するまで、死ぬ事は無い」

 しかし悲しいかな、それが事実。
 アンデッドの王たるキングの恐ろしさは、その怪力だけではない。
 その不死性も、またキングを化け物たらしめる由縁であるのだ。
 やがて、爆心地の視界を覆っていた爆煙が、少しずつ晴れて行った。
 周囲で轟々と燃えあがる火炎。吹き付ける熱風が、嫌に気持ち悪いと感じた。

「は……はは……まさか、ここまでやるなんて……思わなかったよ」
「キング……!」

 最初に口を開いたのは、キングであった。
 黄金の鎧を身に纏ったその姿に、最早先程までの威厳は無い。
 変身状態を保って居る事すらままならないらしく、半分近くは変身が解けていた。
 風に煽られる赤いジャケットが見えたかと思えば、すぐに黄金の外骨格に代わる。
 黄金の外骨格が見えたかと思えば、それは赤のジャケットへと変わる。
 カブトムシの顔と、若い少年の顔。その二つを交互に顕現させながら、キングが嘯いた。

「でも残念だったね! 僕はアンデッド! 絶対に死ぬ事は無いんだ!
 今のお前らに、僕を倒す手段は無いって事! はは……はははははは!!」

 無邪気な笑顔に、最早余裕は感じられない。
 口元からは溢れ出す大量の緑。痣だらけになった顔は見るに堪えない。
 だが、それでも。その不気味な瞳は、未だに諦めてはいなかった。
 ギラギラと、邪悪な光を宿らせて、不敵に笑い続ける。
 これが、絶対に死ぬ事は無い化け物の余裕。

「そんな……! ここまで戦って来たのに……!」
「もう、奴を倒す方法は無いのか……!」

 何度打ちのめされても、挫けずに立ち上がった。
 絶対に守り抜く。その想いを一つに重ね戦い抜いてきた。
 そしてようやく、強敵を討ち倒すだけの力を手に入れた。
 だけど、それだけでは駄目だ。負けは無いが、勝利も無い。
 否……ここで奴を取り逃がせば、もっと大勢の人間が苦しむ。
 その点で言えば、ここで逃げられる事は、負けに等しい。
 不死生物を倒すには、覚悟だけでは足りないのだ。

「皆さん……ここは、僕が行きます。皆さんは、先にここから――」
「お前一人で、何処に行くつもりだ」

 メビウスの光の中で、二人が向き合った。
 揺るがない決意に満ちた表情のミライ。
 それを責めるような瞳で睨み付ける天道。
 緊迫した空気の中、先に口を開いたのはミライであった。

「僕が最後の命の炎を燃やして、キングをこの世界から消滅させます」
「待て……何をしても死なない相手に、そんな事が出来るのか?」
「僕には、ウルトラマンキングから授かったナイトブレスと、皆から貰ったこの光がある。
 僕の持てる全てを奴にぶつければ、不可能な事なんてきっとありません」
「ミライ君、一人で行くつもりなの……?」

 アンジールとなのはが、次いでミライに質問する。
 全てを超越したウルトラマンキングの力。それと、限界をも超える心の光。
 それら全てを炎と燃やし、キングを存在ごと焼き尽くそうと言うのだ。
 そうすれば、確かに如何に不死生物であろうと、一たまりもないだろう。
 だが、それと引き換えにミライの命は――

49 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:37:49 ID:kw7JXkBY0
 
「皆さんは、僕の生きた証です。どうか、全員でここから脱出して下さい」

 ――散る。
 ここで、キングと心中するつもりだ。
 撃破不可能である筈のキングを消滅させる代償として、自分の命を燃やし尽くすつもりなのだ。
 だが、それでも……ミライの想いを受け継いでくれる人間が、三人もいる。
 きっとこの三人は、最後まで諦めずに困難に立ち向かい、未来を切り拓くだろう。
 そうして、残った参加者を。無限に続く未来の可能性を、守って欲しい。
 だから、ミライはゆく。たった一人でも、もう一人ではないから。
 今のミライは、皆の想いと共にあるから。
 だからもう、何も怖くない。
 怖くはない――。

「悪いが、断る」
「天道、さん……」
「俺達はここまで、共に闘って来た。そして、不可能を可能にした」
「アンジールさん……」
「一人じゃ無理でも、私達全員が力を合わせれば、出来るかもしれないでしょう?」
「なのはちゃん……」

 天道が、アンジールが、なのはが。
 それぞれ全員が、ミライの瞳を強く見据える。
 その表情には、一切の憂いも陰りも感じられない。
 皆が皆、全員でここから生きて帰るつもりなのだ。

「でも……! ウルトラダイナマイトは、何万年と生きるウルトラ族でも寿命を縮めてしまう技なんです!
 そんな技を人間の皆さんが一緒に使ったら、本当に死んでしまいます!」
「ほう……それは恐ろしいな。だが、だからってなんだ?」
「えっ……だからって……!」

 そう。ウルトラダイナマイトとは、命の炎を燃やして、敵にぶつける最大の大技。
 これを編み出したウルトラマンタロウですら、あまりの反動に技自体を封印した程なのだ。
 ダイナマイトを使用したとあれば、タロウやメビウスですらも命を縮めてしまう。
 そのリスクを背負ってメビウスが習得したのが、メビュームダイナマイト。
 普段ならバーニングブレイブ時に使用する技なのだが、先程は仕様に失敗。
 だが、不死鳥の勇者となった今ならば、どんな相手だろうが焼き尽くせるだろう。
 そんな大技を、残りの命を燃やし尽くして使用するのだ。反動が無い訳がない。
 しかし、それでも彼らの表情は揺るがなかった。

「私達は、全員で生きて帰るって言ったんだよ、ミライ君」
「ああ。誰もここで死ぬなんて言ってない」

 なのはの言葉に、アンジールが続けた。
 言った筈だ。ここから、生きて全員で帰ると。
 その為にも、自ら命を散らそうとする仲間を放っておく訳には行かない。
 故に、なのはも、天道も、アンジールも、きっと一歩も引き下がらないだろう。

「分かりました……でも、危険になったら、すぐに皆さんを分離させます」

 ここに一同の想いは再び一つとなった。
 揺るがない決意。曲げられない信念。
 それらを胸に、覚悟完了。
 この場にいる全員で、生き残る為に。
 無限に続いていく、新たな未来を切り拓く為に。

「行こう、皆……!」

 メビウスが、その両腕を広げた。
 右に蒼の輝き。左に赤の輝き。黄金の光が二つの光を繋ぎ合わせる。
 全身に描かれた赤と青の約束の炎が、灼熱の炎となって燃え盛る。
 太陽フレアの如き爆発を巻き起こしながら、灼熱はメビウスの身体を覆った。
 やがてメビウスは炎の弾丸となり――次いで、その形を形成して行く。

「はは……今度は、何をする気だよ……!」

 極大の火球となったメビウスが、その形を変えて行く。
 周囲の全てを焼き尽くさんと、拡げられた一対の翼。
 燃え広がる爆炎。悪を焼き尽くす灼熱。奇跡を起こす勇気の炎。
 それは不死鳥の翼の如き、雄々しき炎。
 このエリアの全てを炎と変えて、燃え上る勇気の不死鳥が、雄々しき雄叫びを上げた。
 やがて炎は――一瞬の内に、キングを飲み込んだ。

50 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:38:21 ID:kw7JXkBY0
 




 冷たい風が、頬をくすぐる。
 高町なのはは、己の身を抱きよせるようにしながら、目を覚ました。
 殺し合いの会場とは言え、夜の気温は薄着で眠るには少し肌寒い。
 結果として、熟睡に至る前に高町なのはを目覚めさせたのは、夜の風だった。

「ここは……?」

 周囲は、見渡す限り瓦礫の山であった。
 原形を留めた建造物など、この場所を中心に直径1キロは存在しないように思えた。
 何もかもが壊された廃墟の山。街に降り積もる煤けた灰。
 そのどれもが、先刻までの戦闘の激しさを物語っている。

「キングは……皆は……!?」

 そうだ。全てを思い出した。
 自分はつい先刻まで、仲間達と共に戦っていたのだ。
 共に一つの光となって、悪の権化たるキングと戦っていたのだ。
 未だ靄が掛ったような思考を振り切って、全ての記憶を取り戻してゆく。 
 まずは仲間達の安否。これは最優先で考えなければならない。
 ヒビノ・ミライ、天道総司、アンジール・ヒューレー。
 出会ったばかりとは言え、掛け替えの無い仲間だ。
 その姿を求めて、周囲の瓦礫をもう一度見渡す。

「天道さん……!」

 やがて見付けたのは、一人の仲間。
 瓦礫の影に横たわっていた仲間の元へと駆けより、その身を起こす。
 脈は正常。顔色は悪いが、瓦礫によるダメージも見受けられない。
 それは偶然か、まるで天道を避ける様に瓦礫が散乱していたからだ。
 この分ならば大丈夫だろう。最初に出会った頃と比べれば、幾分かマシだ。
 次に、あとの二人の仲間の捜索を開始。
 程なくして、天道と同じ様に横たわるアンジールを発見した。

「アンジールさん……!」

 即座に駆け寄り、その安否を確認する。
 アンジールの戦いは、天道やミライのそれとは決定的に違う。
 カブトやメビウスに変身した彼らと違って、アンジールは生身で戦っていたという事。
 それ故に肉体へのダメージも大きかったらしく、やはり天道よりは重症に見えた。
 全身を血で汚したその身体を何とか起きあがらせ、脈を取る。

「まだ生きてる……早く手当をしないと……!」

 ボロボロに痛めつけられてはいるものの、まだその命は燃え尽きてはいない。
 早く何処かへ運んで治療すれば、助かる可能性は十分にある。
 だが、現状では傷ついた二人を連れて移動する手段がない。
 まずは天道とアンジールの二人に治癒魔法を行使し、最低でも歩けるようにならなければならない。
 天道が回復すれば、二人で協力してアンジールを治療出来る施設まで運べばいい。
 ……と、そこまで考えて、なのはは一つの事実に気付いた。

「ミライ君が……居ない?」

 そう。何処を探しても、ミライの姿が無いのだ。
 先程までここに居た仲間達の中で、ミライだけが居ないのだ。
 否。ミライだけではない。この場から、ミライと共に消えて無くなった男が居る。
 先程まで自分達を散々に苦しめ、最期の最期まで減らず口を叩き続けた男。
 スペードのカテゴリーキング……名前は、キング。

「そうだ……あの時……」

 そして、全てを思い出した。
 メビュームフェニックスとなって、キングを飲み込んだ直後。
 あの灼熱の炎の中で、何があったのかを――。

51 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:39:00 ID:kw7JXkBY0
 




 これ以上、キングに無駄な殺戮をさせない。これ以上、誰も悲しませない。
 その為にも、揺るがぬ悪……怪人キングを、この世界から完全に消し去る。
 絶対に死なず、消滅もしない不死生物。その法則を無視し、不死生物を消滅させるというのだ。
 簡単な事では無い。それこそ、あらゆる物理法則を無視出来るだけの力がないと不可能だ。
 そして、それを成す為の力が、不死鳥の勇者――メビュームフェニックス。

 燃え盛る炎となったメビウスが、キングを飲み込んだ。
 周囲の建物を焼き尽くし、崩壊させてゆく。まさに、圧倒的灼熱。
 と言っても、それくらいは出来て当然。これは光となった者達の、魂を燃やした攻撃なのだ。
 自分の命と魂の炎を燃やし尽くして、悪を焼き尽くす――。
 その衝撃が、生半可なものである訳がない。

 しかしながら、キングもさるもの。
 本来ならば不死であるが故に、その執念も相当のものであった。
 炎の不死鳥となったメビウスがキングの身体に組み付き、その炎で焼き尽くさんと迫る。
 黄金の装甲は全て煤と消えた。剥き出しにされた、鈍くくすんだ黒金の筋肉。
 こうなったキングは最早、裸の王様も同然だ。
 しかし、それでも王は王。

「無駄だよ! 僕は死なないって言ってるだろ!」
「それでも、お前をこのまま野放しには出来ない!」

 自分の命と引き換えに、魂の炎を燃やす。
 ミライの絶叫と共に、メビウスの身を包む不死鳥の炎が更に熱く燃え上った。
 よもやキングも、不死である自分を消滅させようとしているなどと思いもよらぬ事だろう。
 だからこそ、キングにはここまでして自分を苦しめようとするミライ達が理解出来ずにいた。

「なんだよ、死なないって言ってるのにさ……!
 結局お前たちも僕を苦しめたいだけなんじゃないか!
 何が正義の味方だよ、この偽善者共が……!」
「それでも善だ……! お前を倒せるなら、今は偽善者だろうが構わない!」

 メビウスの炎の中で、アンジールが絶叫した。
 キングには、クアットロを殺された。愛する者の命を、まるで玩具を壊すかのように奪われた。
 家族を奪われたという辛い事実が、アンジールにこの上ない程の愛憎を抱かせる。
 だけど、今はもうそれだけでは無い。それだけで済むレベルの話では無くなって居るのだ。
 こいつを逃がせば、これからも大勢の命が弄ばれるに決まっている。
 二度とクアットロの様な犠牲を出さない為にも、こいつだけは倒さなければならないのだ。
 その為ならば、例え偽善者だなどと罵られようが構う事は無い。

「倒す? 無理だって! 勝機が無いって分かってるのに!?」
「例え勝機は無くとも、希望はある!」
「そうだ! 希望がある限り、俺達は諦めない!」
「そして諦めない限り、僕達の可能性は無限大なんだ!」

 信じる心が、不可能を可能にする……それが、ウルトラマンだ。
 例え本来ならば不可能であったとしても、希望がある限り絶対に諦めはしない。
 諦めない限り、ウルトラマンと、ウルトラマンが信じた人間の可能性は、無限大。
 ミライの絶叫と共に、不死鳥の炎がキングの身を焼き焦がして行く。
 キングの身体が、少しずつ粒子と消えて行く光景。

「お前ら……まさか!? そんな、ありえない! だって、僕はアンデッド――」
「これが私達の……人間とウルトラマンの、心の光の力なんだよ、キング……!」
「あり得ない! 不可能なのに……! こんな力……お前たちこそ化け物じゃないか!」
「違う――!!」

 絶叫される、圧倒的な否定。 
 この力は、化け物の力などではない。
 ただ奪う為に振るわれる、暴力的な力などと同じであってはならない。
 これは、人の心の光が重なって生まれた新たな力。
 そして、その使い方は――

52 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:39:32 ID:kw7JXkBY0
 
「――未来を切り拓く力だっ!!」

 いつの日か、人間がウルトラマンと肩を並べて宇宙を飛べる日が来るまで。
 そんな未来が訪れるまで、ウルトラマンは人間達の心の光を信じ続ける。
 その為にも、こんな所で散っていい筈の無い命を、守り抜く為の力。
 信じた皆が一緒に居てくれる。だから輝くこの力。だから燃やせるこの命。
 最早この力に、不可能などあり得ない。

「あぁそっか……もういいよ! もうつまんなくなっちゃった!
 そんなに僕を消したいなら、お望み通り消えてあげるよ!」

 緑の血液を吐き出しながら、キングが嘯く。
 その声には、再び喜色が込められていた。
 まるで、新しい興味を見付けた子供の様に。

「でも、僕一人では死なない! お前らの心も連れて行く!」

 高らかに宣言し、キングがメビウスの肩に掴み掛った。
 最早、キングに残された力は残り少ない。
 装甲も武器も全て消失した今、戦力となり得るのはこの身体一つ。
 それでも、メビウスの身体に組み付いて、最期の足掻きを見せる。
 キングの身体から、アンデッドとしてのエネルギーが溢れ出した。

「お前が守りたかった人間たち、皆僕と一緒に逝っちゃえよ!」

 メビウスとなって戦う四人と一匹の間に奔る、緊迫。
 コイツはもう、生への執着を捨てている。
 元々“命を大切にする”など考えもしない男だったのだ。
 自分の命がここで消えると知った所で、それ程の執着はない。
 ただし、悪質な事に自分一人で死ぬつもりもないらしい。

「私達全員で生きて帰るって約束したんだ……! こんな所で――」
「無理無理! 僕だって命がけなんだ、お前らだけ生き残れると思うなよ!」
「そんな事は……させない! 皆の命は、僕が守る!」

 刹那、メビウスの中で、三人は感じた。
 自分達の意識が、徐々にミライから離れて行く事に。
 そして気付く。ミライが今、何をしようとしているのかに。

「総司さん。アンジールさん。なのはちゃん。フリード。
 ここまで僕と一緒に戦ってくれて……本当にありがとうございます!
 皆さんが居てくれるなら……僕はもう、何も怖くありません」
「やめろ、ミライ! 今際の言葉など聞きたくない……!」

 天道が、メビウスの光の中で手を伸ばした。
 だけど、その手は何も掴めず、ただ空を掴むのみ。
 次第にミライの光から、後の全員の意識が遠のいていくのが、自分達にも分かる。
 だけど、ここで意識を手放せば、掛け替えの無い者を失ってしまう。
 それが分かっているから、少しでも抵抗しようとする。

「本当に、ありがとうございます……皆さん!」

 されど、それ以上の抵抗は無意味であった。
 刹那、メビウスの身体から炎とも光ともつかない弾丸が飛び出した。
 メビウスの身体から強制的に射出されたその光は、メビウスの後方へと撃ち出された。
 それらは、キングの視界の奥でそれぞれの形を取り、三人の人と、一匹の竜の形を形成。
 全員で一緒に不死鳥となって、キングを倒す。
 その為に心を重ねたのに……今、彼らの心はもう一度離れ離れになった。
 それが何を意味するか。そんな事は、キングにもすぐに理解出来た。

「お前まさか……たった一人で死ぬ気で……!」
「これは“死”じゃない! 皆の命を……! 皆の未来を守る為の……!!」

 少しずつ、少しずつ。炎とメビウスが一つになって行く。
 何処までがメビウスで、何処からが炎なのか。その境界が揺らいでいく。
 それはまさしく、メビウスの身体が炎の中へと溶けて行く様に。
 やがて形を失い、黄金の光と灼熱の炎の境界が完全に消失。
 同時に、爆発的な灼熱がメビウスを起点に発生する。
 黄金の輝きを含んだ炎は、一気にキングの身を焼き尽くさんと燃え盛る。
 同時に、周囲のあらゆる建造物を巻き込んで、何もかもを灰に変えて行く。
 されど、守ると誓った仲間達には、瓦礫の一つたりともぶつけはしない。
 意識を失い横たわる仲間達へと迫る瓦礫や火の粉を、メビウスの輝きが振り払う。
 最期に残った力で、キングを焼き尽くし、仲間達を守り抜く。
 無限大の可能性を、未来へとつなげる為に。

53 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:40:11 ID:kw7JXkBY0
 
「やめろよ……お前、何処まで面白くない奴なんだよ……! なんで、こんな事……!」
「僕達ウルトラマンは、これからもずっと人間と共に歩んで行くと決めたんだ!
 その為にも! 人間と共に歩んで行く未来の為にも! ここで皆をやらせる訳には行かないんだ!」

 これからもずっと……ウルトラマンは、人間と共にある。
 例え人間の心の中から闇が消えないとしても、その心には確かな光がある。
 心の中に、光と闇を両方抱いて、それでも走り続けるのが人間だ。
 どんな矛盾を孕もうが、そこに存在し続ける。生きる意志を持って、未来を目指す限り。
 そして生きている限り、彼らが信じた人間たちの心の光は無限の可能性を持っている。
 そんな無限の未来を守り抜く為にも、大切な仲間達をここで死なせる訳には行かないのだ。

 その為なら、自分が犠牲になろうと構いはしない。
 ここで出会った大切な仲間達が、ミライの意思を継いでくれる。
 どんな困難であろうと、こんな殺し合いをブチ壊して、皆で脱出してくれる。
 そうしたら、彼らはきっと、もっと多くの命を守る為に戦ってくれる事だろう。
 だから、ここで命を燃やし尽くす事に、何の躊躇いも感じない。
 今度こそ本当に――もう何も怖くは無かった。





 不死生物は、絶対に死なない。
 絶対に消滅する事も無いし、絶対に壊れる事も無い。
 確か、自分達はそんな命を与えられていた筈なのに――。

(あれ……僕は……)

 最早キングの身を守るものは何もない。
 最高の盾も、最強の剣も。黄金の鎧も、鋼鉄の仮面も。
 それだけじゃない。今はもう、この身体すらここには無い様に感じる。
 もう自分には、何も残されてはいない。何もかもが無くなった。
 圧倒的な虚無感が、キングの心を覆っていく。
 が、それは一瞬。すぐにキングの心を、黄金の光が照らして行く。

(嗚呼、なんだよこれ……綺麗だなぁ)

 最早、何処から何処までが自分の意識なのかも分からない。
 黄金の光と灼熱の炎に包まれて、キングの意識も溶けて行く。
 走馬灯の様に流れ込んでくるのは、アンデッドとしての一万年の記憶。
 それから、数万年をウルトラマンとして生きて、大切な事を地球で学んだ男の記憶。
 何もかもの境界が無くなって、一つに溶けて行く姿は、見た事も無い程に美しかった。
 最期にこんな綺麗な光景が見えるなら、これはこれで良かったのかな、なんて柄にもない事を考えてみる。

 もう自分は、カードに封印される事は無い。
 無限に続く牢獄の様な苦痛を、もう感じなくてもいいのだ。
 何故なら自分は、ここでメビウスの光と共に虚無へと還るのだから。
 やがて自分で何かを考える事も無くなって行く。
 意識が溶けて、少しずつ消失して行くのだ。
 そして間もなく、完全に消えて無くなる。

 黄金の光と灼熱の炎が完全に消える頃には――。

54 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:40:43 ID:kw7JXkBY0
 











【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード   消滅】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは  消滅】
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS   死亡確認】















「ありがとう」

 ここに、感謝の言葉と共に、決別を告げた少女が一人。
 瞳に涙を浮かべて、心と身体に傷を負って。それでも、立ち上がる。
 未来を守る為に戦い、無限の光の中で散った男を、なのはは忘れない。
 例えどんな苦しい戦い経ても、どれだけの時間が経っても。
 嗚呼、例え悠久の時が流れようと、絶対に――彼の名前を忘れてはならないのだ。
 自分達を生かす為に犠牲になった男の名前を、まだ若い心に刻みつけて。
 これから無限に続いていく日々の未来を、なのはは生き抜いていく。



【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、弁慶のデイパック(支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER)
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
 1.天道とアンジールを回復させる。
 2.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
 3.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
【備考】
※金居を警戒しています。紫髪の少女(柊かがみ)を気にかけています。
※フェイトとはやて(StS)に僅かな疑念を持っています。きちんとお話して確認したいと考えています。

55 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:41:15 ID:kw7JXkBY0
 

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)
【装備】無し
【道具】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.……(気絶中)
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました


【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:……。
 1.……(気絶中)
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。

56 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:45:31 ID:kw7JXkBY0
投下終了です。
どうせ没ネタなのでもうやりたい放題やりました。
もうこのロワでウルトラマンを書ける事もないだろうから、
ウルトラマンメインでやりたかった事を全部詰め込んだ感じです。
キングの圧倒的強さとか、メビュームフェニックスでアンデッド消滅とか、
設定的にも結構無理矢理だけど気にしない方向で。だってどうせ没ネタなんだもの!

あと専ブラが使えなくなってたので、レス毎の改行が結構適当かもしれません。
一応タイトル案はあるので、没ネタとしてウィキに収録する際にはタイトルもつけておこうと思います。

57 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:46:50 ID:kw7JXkBY0
あ、一応上げておきます。
多分このスレ割と影薄いと思うので……。

58リリカル名無しStrikerS:2010/11/10(水) 13:44:14 ID:Ekndb2WQ0
投下乙です。
すげぇ派手なバトル……というかキング倒すだけでここまで派手な事するとは……(幾ら回復能力があったとはいえ)メビウスとカブト犠牲にしてというのが……ある意味本当に没ネタだからやりたい放題だなぁ……

でも、ここまで派手なキング退場劇描いてしまって本編でこれ以上の事出来るのか???
というかキングの圧倒的すぎる強さは『没ネタだからこうなった』ですよね???
つかそうじゃなかったら真面目な話対主催終わりだぞ!?


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