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没ネタ投下スレ

1名無しさん:2009/05/11(月) 10:47:22 ID:ScbX2nJI0
予約被りや展開上の都合などで投下できなかったSSや没ネタ投下にどうぞ。

前スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10906/1204105581/

2名無しさん:2009/05/13(水) 19:05:25 ID:Fj31U4aE0
新管理人様、乙です。

アリサ「というわけで引越しがおわったからそば作ってきたわよ」
アリサ’「まだどんどん出来るから遠慮なく食べちゃってね」

3名無しさん:2009/05/13(水) 19:06:42 ID:Fj31U4aE0
>>2
すみません、死者スレと間違えて書き込みました。

4 ◆Qpd0JbP8YI:2009/11/25(水) 00:08:40 ID:evarTVhw0
全部使えそうになくなったのでネタを投下



①なのはVSなのは

クローン云々によって自分の存在意義を見失いかけていた小なのはが、
ルルーシュとかナイブスの「説得」で、新たな自分の価値を見出し、対主催陣営壊滅の尖兵と化す。
その後は適当に騒動を巻き起こし、最後は皆に必要とされる大なのはに自分が取って代わろうと彼女と激突。
そしてそこでお互いの想いと力を込めたSLBを撃ち合い、決着をつける。


②はやてVSはやて

小はやての目の前で守護騎士全員を殺して、大はやてと似たように状況に立たせる。
その上でも自らの考えを変えようとしない小はやてと黒い大はやてとのバトル。
掴み合い、罵りあい、引っかきあい、ひっぱたき合うといった女性のけんかを
大人対子ども、善対悪とか色々なものと対比させながら、醜く書きたかった。


③セフィロスの死

大はやてがセフィロスのイメージする八神はやてを演じつつ、何とか彼を利用しようとするけれど、
結局セフィロスは小はやてになびいていってしまう。
それによってセフィロスは使えない駒、邪魔な存在と判断した大はやてが
後ろからズブリとナイフとか大したことのない武器でセフィロスを突き刺して殺す。
信じていた八神はやてに裏切られたことを知り、セフィロスは再び人類に絶望して、
憎悪と共にライフストリームに帰っていくという哀れな最後。


④はやてVSはやて

一回目とは違い、魔法を使ったバトル、というか戦争。
二人がこのバトルロワイアルで味方にした連中を巻き込んでの戦い。
はやて達の考えに共感するもの、正しいと信じるもの、また利用しようとするものが
会場を真っ二つにして戦い、命を散らしていく。
その中心にいるはやて達はお互いを否定する言葉を吐きながら、オーバーSの魔法の撃ち合い。
その馬鹿げた威力で会場をどんどんと廃墟へと変えていき、プレシアの顔を蒼ざめさせる。
んでもって、ひとしきり魔法を撃ち合ったら、全ての魔力を込めた大規模魔法で勝負へ。
一人で魔力を振り絞る大はやてに、仲間から魔力、魔法といった助けを得て、彼女と対峙する小はやて。
そして決着。
最後は大はやてが今までしてきたことを後悔するような死をプレゼント。
そして死の間際に放った何かしらの言葉を、小はやてが大はやての意志として受け継ぎ、
プレシアに立ち向かっていくという少年漫画的な展開。




以上、こんなのです。
はやて対はやての対立構造を主軸に話を進めていき、
全く救われない形での小はやての優勝エンドを念頭に置いていました。

5リリカル名無し:2009/11/25(水) 21:59:07 ID:vHQLO1/60
どれも凄い展開だな
特に④は実現するのはかなり難易度高そうだが見てみたかったな
そういや同一3人は結局誰ももう一人と会わないまま死んだんだな

6リリカル名無し:2009/11/26(木) 21:59:07 ID:SWrs9PG20
確かにどれも凄いが難易度高いわw
ちなみに優勝は俺も考えてるけど誰が優勝したら美味しいか悩むな

7リリカル名無し:2009/11/26(木) 23:11:25 ID:eBj37VTUO
意外なとこでクアットロが優勝とか面白そう
キング、クアットロ、はやて達ステルス系キャラに期待してる俺がいる

8リリカル名無し:2009/11/27(金) 15:27:47 ID:N6ujW0fk0
全滅でもいいけどな
全滅ENDでなのはロワ2もいいかも

9リリカル名無し:2009/11/27(金) 17:56:59 ID:G6/JrZzYO
全滅ENDの場合はそのままなのはロワの続編とかでも面白そうだよな
今の本スレの状況で次回開催出来るか微妙だが

10リリカル名無し:2009/12/01(火) 20:16:24 ID:uxHTGhGE0
ルルーシュがお亡くなりになられたので、日の目を見なかった没展開。

かがみとルル組が交戦。スバルと適当な誰か(それまでに合流した仲間)でバクラを追い詰める

かがみの身体じゃ勝てないと踏んだバクラ。千年リングをスバルに投げつけるように指示する

バクラがスバルの肉体を支配! 一転してピンチに陥るルル組

しかしここで(何らかの要因により。戦闘でリングそのものが疲弊したから、でもいいかも)スバルの意志が抵抗する。
これ以上被害を拡大されないよう、ルルーシュに千年リングごと自分を殺すように頼む

お互いにリングに科せられた制限を知らないために、それしか方法はないと判断する。
断腸の思いで決断したルルーシュは、かがみの落としたストラーダを拾い、涙を浮かべスバルの胸元に突き立てる……

最期の瞬間、自らの意志をルルに託し、静かに息を引き取るスバル。
彼女への愛を自覚したルルは、悲しみと自責に発狂しそうになるも、歯を食いしばり目に涙を溜め、ゲーム打破のために戦う決意を固める

11リリカル名無し:2010/01/19(火) 18:22:44 ID:.KY0up4Q0

テスト

12リリカル名無し:2010/03/01(月) 15:30:56 ID:QgGABX1g0
test

13リリカル名無し:2010/03/02(火) 08:44:01 ID:QgGABX1g0
test

14リリカル名無し:2010/03/04(木) 15:28:40 ID:45j.B8s20
今更ながら>>8-9辺りの話に反応してみる。

2ndやるんなら今度は参加者をオール原作にする、とかどーよ?支給品とか土地・施設のみクロス作品で
『クロス作品』の要素は薄くなるけどそれなら把握しやすいだろーし、言われてる通り本スレの状況的に今回と同じ条件は無理っぽいしなー
それに自分ってば、今度MAP作るんならやってみたい試みがあるとですよ

15リリカル名無し:2010/03/05(金) 11:35:15 ID:cEBSXf4cO
どうだろう、一応開始前に募ってから、十分に集まらなかったらそういうのでもいいと思うけど…
俺はクロスSSからの参戦っていう一風変わったこの企画が好きだから、出来れば次もクロスからだと嬉しい

16リリカル名無し:2010/03/08(月) 03:17:44 ID:x7t6fc060
俺も次もクロスでして欲しいけど希望者次第かな
とりあえず声をかけてそれで興味ある人が集まって開催出来るようならやろうよw
ただ原作含めて参戦するクロス作品の数が今回でも少し多い様な気がするけどね
支給品は今回と同じようでもいいけど

17 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:17:35 ID:kw7JXkBY0
没ネタ投下します。

18 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:18:08 ID:kw7JXkBY0
 満月が美しく煌めく夜の市街地で、轟々と音を立てて燃え盛る建造物があった。
 先の戦闘でアンジールが放ったファイガによって炎上、その後の戦闘で壊滅的な被害を被ったスーパーだ。
 最早スーパーとしての機能を維持する事は難しい。燃え落ちるのも、時間の問題であった。
 そんなスーパーを目前にして、向かい合う四人の男女。ここまで生き残った参加者達だ。
 まさに一発触発といった空気。誰が行動を起こしても可笑しくはない。

「貴方が、銀色の鬼……?」

 そんな中、警戒心を露わにしながらも質問を投げかけたのは、高町なのはであった。
 対する相手は、銀色と赤の――とても人間とは思えない外見をした参加者。
 その正体は、ウルトラマンメビウスことヒビノ・ミライ……なのだが、当然の如くなのははそれを知らない。
 ウルトラマンが正義のヒーローである事も、いくつかの世界においては英雄的な存在である事も当然知らない。
 故に、これまでに得た情報を元に、なのははミライを銀色の鬼だと判断したのだ。

「僕はヒビノ・ミライです! 君は、なのはちゃん……だよね?」
「そうだけど……貴方はこの殺し合いに乗って居るの?」
「僕はこんなゲームには乗って居ません! 貴方達の戦いを止める為に来たんです!」

 メビウスの銀色の視線が、その場に居た二人に向けられる。
 一人は、赤の装甲の仮面ライダー……カブトこと天道総司。
 一人は、大剣を携えた、白き片翼を持つ戦士……アンジール。
 彼らの戦いは、熾烈を極めていた。それは背後のスーパーを見れば一目瞭然だ。
 そんな戦いを繰り広げる二人を止める為に、ミライはこの場所へと駆け付けたのだと言う。

「待って下さい、ミライさん。私達も殺し合いには乗って居ません! これには訳があって――」
「その通り……私たちがこんな殺し合いに乗る理由は全くもって皆無。無駄以外の何者でもありませんわ」

 言いかけたなのはを遮ったのは、聞き覚えのある、透き通った声だった。
 この声に、この喋り方。最早間違いない。考える前に答えは浮かんだ。
 そしてそれはなのはだけではなく、その“少女”を家族と言い張る男も同様。

「その声は――」
「「クアットロ!!!」」

 奇しくも、アンジールとなのはの絶叫が一致した。

19 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:18:41 ID:kw7JXkBY0
 




「折角盛り上がったのにさ、つまんないよね。そういうのって」

 全部解っている。全部聞こえている。
 状況は全て理解した。その結果、「つまらない」と判断した。
 だから当初の目的通り……全部ぶっ壊して、破滅させる。
 王の楽しみを奪う者を赦す訳には行かないからだ。
 一万年ぶりの敗北と、期待していた参加者がこぞって死んだ事。
 それらの鬱憤を晴らすべく、ガチャリと音を立てて、災厄を齎す引き金を引いた。





 一先ず周辺の雑居ビルに入って、一同は情報交換を開始。
 出来るだけ目立たないビルを選んで、二階の窓際の部屋を陣取る。
 電気は点けずに、窓から外の様子を窺い、誰かが来たときにすぐに対応出来るようにだ。
 つい先ほどまでは険悪なムードであった一同なのだが、クアットロが現れた事で、状況が一変したのだ。
 アンジールのそもそもの目的は、残ったたった一人の妹――クアットロを救う事。
 されど、当人であるクアットロが、一同の前でハッキリと殺し合いには乗らないと明言した。
 これはアンジールの行動方針を揺るがすには十分過ぎる出来事なのであった。

 これはIFの話だが……もしもここにクアットロが現われなかったら、どうなっていただろう。
 きっとこんなに上手く話し合いには持ちこめなかっただろうし、場合によっては最悪の状況にだってなっただろう。
 というのも、クアットロは何の保険もかけないまま、無防備な姿を晒して一同の前に現れたのだ。
 無事合流出来たから良かったものの、もしもその瞬間、何者かに不意を突かれでもしたら――
 もしも、もしもだが……そのままアンジールの目の前で殺されていたりなんかしたら――
 きっとその時は、考えるだけでも恐ろしい事態になっていたに違いない。
 こうして殺し合いに反発する一同が巡り合い、話し合いの機会を設ける事が出来たのは、本当に奇跡に近いのだ。

 そんな奇跡にも似た偶然に感謝しながら、一同は情報交換を続ける。
 様々な境遇が交差した上に成り立つ彼らの出会いは、考えてみれば酷く凸凹したものである。
 例えば、クアットロの想いも知らずに、全ての参加者を殺して回ろうとしたアンジール。
 例えば、ミライの思惑を知らず、銀色の鬼と警戒していた高町なのは。
 まずはそれらの誤解を解いて、冷静に話し合う所から始めなければならなかった。

「アンジール様……もう一度言いますが、私はこんな殺し合いは望んでおりませんわ」
「だが……俺が勝ち残れば、他の皆を生き返らせることも――」
「無理でしょうね。大方プレシアの目的はアリシアを生き返らせたいとか、そんなところでしょう。
 プレシアはこれ見よがしにアリサさんの蘇生を私達に見せつけた。これが何を意味するか、わかります?」

 暫し流れる沈黙。
 アンジールのみならず、なのはも天道もミライも、クアットロに視線を集中させる。
 クアットロの演説に興味深々といった感じで、クアットロとしても気分が良かった。
 相手に考えさせる余裕を与える。それから話に引き込んで、口車に乗せる。彼女が得意とする分野だ。
 その上、聡明ななのはや天道は既にクアットロの言わんとする事を理解しているように思える。
 上手く立ち回って、この二人にもクアットロの説を裏付ける証人になって貰えばいいのだ。
 未だ悩んでいる様子のアンジールに、馬鹿そうなミライ。二人を説得するのは、至って簡単であった。

20 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:19:21 ID:kw7JXkBY0
 
「そもそもプレシアの最終的な目的は、亡くなられたご息女ことアリシアさんの蘇生。
 蘇生技術があるのなら、最初からアリシアさんを蘇生させて、二人きりで暮らしていればいいのに。
 それなのに、態々こんなリスクを犯してまで、様々な世界から集めた参加者に殺し合いを強要する――」
「ちょっと待て、様々な世界と言うのは、どういう事だ?」
「ああ、アンジール様にはそこから説明しないと駄目なんですね」

 クアットロは、すぐに表面的な笑顔を作り、語り出した。
 この会場に集められた参加者はほぼ全てが平行世界や、別の時間軸から連れて来られて居る事。
 当初アンジールと出会った際に、クアットロは「主催者に記憶を操作されている」と言った。
 だが、それは間違いだ。誤解を生じさせるために、という理由は合っているのだろうが、記憶操作などはされて居ない。
 そもそも、限りなく似て非なる世界からそれぞれの参加者を集めれば、それだけで誤解による不和は生じるのだ。
 今回プレシアがそれを狙って様々な世界から参加者を集めたのであろう事は明白。
 別の世界のアンジールとは確かに家族だが、今ここにいるアンジールは恐らくそうではない。
 クアットロとアンジールとの間に当初あった微妙な距離感は、それが原因だと語った。

「そんな馬鹿な……平行世界? そんな事が……」
「残念だが、事実だ。ここに居る高町は、俺の世界の高町とは別人だからな」
「僕の知るなのはちゃんも、ここにいるなのはちゃんとは別人でした」
「……そして、私は天道さんの事もミライ君の事も知りません」
「ま、そういう事ですわ」

 案の定、この場に居る全員がクアットロの説を裏付けてくれた。
 流石に丸一日このゲームに参加しているのだ。その程度の情報は得ていて当然だろう。
 頼りにしていたアンジールがその程度の情報すら知らなかったのは、はっきり言って拍子抜けだが。

「それだけのリスクを犯して殺し合いを強要するからには、恐らくそれがアリシアさんの蘇生に繋がるんでしょうね
 あぁちなみに言っておきますけど、プレシアが私達に“わざとらしく”見せつけたアリサさんの蘇生……
 あれは単に別の世界のアリサさんを連れてこればいいだけですから、至って簡単な話ですわ」
「なら、チンクやディエチは……」
「残念ですけど、犠牲になってしまった何処かの世界の二人についてはもう、諦めるしかありませんわ」
「くっ……!」
「ですけど、私達にはまだ出来る事があります。それは、こんな殺し合いを二度と開催させないようにプレシアを倒した上で、
 この馬鹿げたゲームから脱出する事。不本意ですけど、今は管理局の皆さんとも敵対してる場合じゃありませんわ。
 だから私は、ゲームから脱出するまでは全面的に協力も惜しまないし、誰かを殺すつもりもありません」

 嘘は言っていない。
 それに、これならばなのは達だって信じるだろう。
 というか寧ろこういう“クアットロらしい事”を言っていた方が100%信頼される。
 何故かって、そもそも現状で管理局といがみ合った所で、何の利益も生じないのだから。
 聡明なクアットロが考えた結果、出た答えがこれだと言うのなら、誰も疑わないだろう。

「ですから、アンジール様には是非とも私と……いえ、私たちに協力して貰いたいのです。
 私の目的は、あくまでこのゲームからの脱出……意味の無い殺人なんかには、これっぽっちも興味がありませんわ」
「だがっ……」
「お願いします、アンジール様……私の想いを、無駄にしないで下さい。
 私のこの、たった一つの願い……どうか聞き入れて下さいませんか……?」

 目に薄い涙を浮かべて、クアットロが言った。
 これは最後の手段だ。この単純なアンジール、ここまでされて動かない訳がない。
 例え平行世界といえど、アンジールは大切な妹の願いを無下にするような男では無い。
 それが解って居たからこその、クアットロの計画的犯行であった。

「……わかった。お前に免じて、俺も協力しよう」
「ありがとうございます、アンジール様! それではアンジール様、早速ですけど、
 まずはなのはさんに“アレ”を渡して下さいますか?」
「アレ……だと?」
「持っているでしょう? 我々の……いえ、なのはさんにとっての切り札を」
「私の切り札……? クアットロ、何の話をしているの?」

21 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:19:51 ID:kw7JXkBY0
 
 訝るなのはと、アンジール。
 そんな二人の視線を受け流すように、クアットロが立ち上がった。
 おもむろにアンジールのデイバッグを手に取り、チャックを開ける。
 中にあった赤の宝玉を引っ掴んで、それをなのはに差し出した。
 こいつを差し出せば、なのはからの信用も得た上で、戦力増強にも繋がる。
 言わばなのはだけでなく、クアットロにとっても切り札となり得る存在。

「これ……! レイジングハート!?」
「そうですわ。元々これは私に支給されておりましたの。訳あって今はアンジール様が所持していましたけど」
「タダでいいの……? クアットロ……何だか未だに信じられないんだけど」
「まぁ……私の今までの行動を考えればそう仰るのも当然ですけれど、今はそんな事を言っている場合じゃありませんから」
「それはそうだけど……にゃはは、やっぱりいきなりいい人になっちゃうと違和感感じちゃうっていうか……」
「勘違いしないで下さいまし。このゲームから脱出したら、その時はまた敵同士ですから」

 はにかんだような笑みを見せるなのはを、クアットロが冷たく突き放した。
 これくらい言っておいた方が信憑性は増す。なのはも言っている通り、綺麗なクアットロなど違和感でしかないのだ。
 何の見返りもなくレイジングハートを手渡し、聖女の様な笑顔でなのはを受け入れるクアットロなど、あり得ないのだ。
 そんなあり得ない程の違和感を無理に押し通して、八神はやての時の様なミスを犯すのは愚行でしかない。
 故にクアットロは、「利害の一致による停戦協定」という“あり得る”状況を演出した。というか寧ろただの事実だ。

「これで僕達はもう仲間ですね! 一刻も早く、このゲームから脱出しましょう!」
「待てミライ。俺達はまだお前からの話は聞いて居ない」
「え……?」

 意気揚々と声を上げたミライを制したのは、天道総司であった。
 天道もまた、なのはから銀色の鬼の話は聞かされている。
 黄色の恐竜を連れ去り、その恐竜を自らの手で斬殺した銀色の鬼――その可能性。
 最早ミライがそんな事をする奴ではないと言う事は誰もが確信を持って言えるが、一応念の為に。
 なのはが、「銀色の鬼の憶測」をミライに言って聞かせた。
 そして、それを聞いたミライの反応は――

「そんな! アグモンは、僕がここで初めて出会った仲間です! そのアグモンを僕が殺すなんて――!!」
「落ち着けミライ。俺達だって馬鹿じゃない。お前が人殺しをする様などうしようもない奴じゃないって事くらいは解るさ」
「うん……だから、話してくれないかな? アグモンとミライ君の間に、何があったのかを……」
「……解りました。ここに来てから起こった事、全てをお話します」

 ミライが語り出したのは、このゲームに参加させられてからの境遇についてだった。
 目の前で、見知らぬ女の子をみせしめに斬殺されたミライは、自分の無力さを嘆きながらも、この会場に送り出された。
 そこで最初に目撃したのが、大男が小さな恐竜――アグモンを襲っている最中だったのだ。
 もうこれ以上、誰にも悲しんで欲しくは無い。故にミライは、ウルトラマンに変身した。
 大男を蹴り飛ばして、アグモンを救った。だけど、その後に待ち受けていたのは、悲しい別れ。
 アグモンと一緒に学校に向かったミライは、そこでクロノとヴィータの二人に出会った。
 開口一番に喧嘩を始めてしまったクロノとヴィータを尻目に、斬殺されるアグモン。
 一瞬の隙に、あっと言う間に一つの命を奪った、赤いコートの男。始まってしまった、本当の殺し合い。
 そんな中、自らの身を呈して、ミライとヴィータが逃げるだけの時間を作ったのはクロノだった。

「クロノ君は……クロノ君は、僕達の為に……!」
「そっか……クロノ君は、最期の最期まで、誰かを守る為に戦ったんだね」

 重い空気が流れる。
 話をするミライの瞳には涙が浮かんでいたし、話を聞くなのはも、辛そうな表情をしていた。
 だけど、それでも泣かないのは、なのはの心の強さ故なのだろう。
 何にせよ、これで黄色の恐竜についての誤解は解けただろう。
 次の話題に入ろうとした、その時であった。

22 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:20:33 ID:kw7JXkBY0
 



「あ……そうだ、なのはちゃんに、これを渡さなきゃ」
「え……これって……」

 ミライが差し出したのは、紫の宝石。
 今は亡きギンガ・ナカジマの持つインテリジェントデバイス、ブリッツキャリバーだ。
 なのはにとって見覚えのあるデバイスをその手にとって、ミライを訝る。
 どうしてこれを持って居るんだ、とでも言いたげな表情であった。

「僕はまた、一人の男の人を守れなかった。これはその人が持って居たものなんだ
 最期になのはちゃんの名前を呼んで居たから、これはなのはちゃんが持っておくべきだと思って」

 ミライが話すのは、黒の魔人――ゼロの話。
 黒のマントに黒の仮面をつけた、ゼロと名乗る男が、一人の男を殺した事。
 まるでゲーム感覚で人の命を弄び殺した、あの黄金のカブトムシの化け物の事。
 ウルトラマンヒカリの力を借りる事で何とか倒す事は出来たが――正直、危なかった。
 もしもヒカリが居なかったら、きっとミライはあの場でゼロに殺されていただろう。
 と、そんな話をした所……想像以上に食いついたのは、天道総司と高町なのはであった。

「ゼロ……カブトムシの怪人……!? それって……!」
「……最早間違いないな。そいつがキングだ」
「ちょ、ちょっと待って下さい! キングって言うと、赤服に茶髪の……あのキングですか?」
「クアットロ、知ってるのか?」

 ハッとした様に言うなのはに、天道が結論を告げた。
 そんな二人の会話に横槍を入れるクアットロに、アンジール。
 この場にいる殆どが、キングという少年を知っていたのだ。
 一同がキングについての話題へと移行しようとした、その刹那。
 異変は起こった。

 ――ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!――

 五人の耳を劈く轟音。
 安っぽい硝子の窓を粉々に粉砕して、室内で炸裂する爆薬。
 コンクリートの足場が揺さぶられ、次いで熱風が吹き付ける。
 狭い室内を爆煙が充満し、燃え盛る炎が五人を襲う。何者かからの砲撃だった。
 咄嗟の判断で、なのはとミライの二人が反射的にシールドを展開。
 しかし、所詮はその場凌ぎ。シールドで防ごうと、砲撃は止まない。
 全てを凌ぎきっても、視界を遮る爆煙の中からどんな追撃が来るか解らない。

「皆さん! ここは僕が凌ぎます! だから、先に逃げて下さい!」
「でも……ミライ君!?」
「僕はこんな所で死にません! だから、早く!」

 シールドを解除する事を躊躇うなのはに、語気を強めてミライが言う。
 なのはとミライ、二人のシールドならばこの程度の砲撃など恐るるに足らず。
 されど、ここでなのはの力が欠ければ――或いは、ミライの力だけでは防ぎきれないかもしれない。

「行きましょう、なのはさん。彼の思いを無駄にしてはいけません……このままでは全滅してしまいますわ!」
「クアットロ……でも、仲間を見捨てるなんて――」
「仲間だからこそですわ。仲間だからこそ、時には身を呈して守らねばなりません。
 ここで全滅してしまえば、ミライ様の仲間を思う気持ちを無下にする事になります。ここはミライ様を信じましょう」
「……わかった」

 クアットロの言う事は正しい。
 なのははまだ釈然としない様子であったが、それが正論である事に気付いたのだろう。
 ミライの思いを代弁したクアットロに従い、なのはがシールドを解除した。

23 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:21:05 ID:kw7JXkBY0
 
「絶対に死なないでね……ミライ君」
「GIG!」

 ミライに背を向けて走り出したなのはに向かって、ミライが叫んだ。
 GIG……それは、ミライが所属した防衛隊・CREW GUYSにおける、「了解」の合図。
 どんな困難が立ちはだかろうと、絶対に諦めはしない、GUYSの魂。
 全員がこの部屋から脱出したのを確認し、ミライは行動に出た。
 目の前に張ったシールドに全ての爆煙を集めて、それを振り払う。
 黒い爆煙は眩い光へと変わり、光はメビウスの左腕に再び熱き炎を宿らせる。
 漆黒の闇が支配するビルの内部で、眩き黄金の光が瞬いた。





「ハハハハハハッ! びっくりしただろ! 誰か死んだ!? 死んじゃった!?」

 狂ったような笑い声を上げながら、王が嘲る。
 常人を遥かに凌駕する聴力を活かして、目の前で爆煙を上げるビルへと意識を集中させる。
 聞こえる。足音が、四人――慌てて階段を下りて、こちらに向かっている。
 四人という事は、一人死んだか……? 否――

「つまんねぇの。またメビウスかよ」

 僕の邪魔をしたのは、またあいつか。
 不服そうに呟いて、漆黒のマントを翻した。
 そのまま踵を返して、王は何処かへと歩いて行った。





 側面に大きな穴が開けられたビルの正面に、四人は佇んでいた。
 パラパラと音を立てて、砕けたビルのコンクリートがアスファルトへと落下して行く。
 既に砲撃は止み、ビルの外に出た四人の周囲は、再び静寂へと姿を変えていた。

「一体誰が、こんな事を……」
「油断をするな。まだ潜んでいる可能性が高い」

 周囲を見渡すなのはに、天道が注意をかける。
 言われなくても解って居る。ただの冷やかしであんな砲撃は使わないだろう。
 きっと……というより、間違いなくこの場に先程の砲撃手が潜んでいる。
 なのはがエリアサーチをかけようと、首から提げたレイジングハートに触れた。

「あのぉ、思うんですけど、さっきのタイミング……キングの話題になった瞬間の砲撃……
 もしかしたら、この場にキングが居て――」

 感が鋭すぎるクアットロが、その名を告げた。
 だけど、それ以上の言葉を発する事は許されなかった。
 ドヒュッ、と……言葉では表現し難い擬音が響いて、次の瞬間にはクアットロの姿が消えていた。
 レイジングハートから目を逸らし、何事かと振り返ったなのはが、それを見付けるのにそれ程の時間は掛らなかった。

「クアットロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 なのはの耳を劈く、アンジールの絶叫。
 視界に飛び込んできたのは、先程出て来たビルの壁に串刺しにされたクアットロ。
 ゾクリと、背筋に悪寒が走る。先程まで生きていた人間の死。その現実が、なのはの頭を麻痺させる。
 10年間戦場で生きて来たなのはも、こんな理不尽な死の瞬間を見た事は無かったからだ。

24 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:21:38 ID:kw7JXkBY0
 
「……ぁ……?」

 何が起こったのかすら理解出来ていないような……そんな表情。
 クアットロの頭が、漆黒の剣によってビルに縫い付けられていた。その高さ、地上から凡そ2メートル程。
 頭部のど真ん中、深々と突き刺さった黒金の大剣。クアットロの身体を持ち上げて、コンクリを貫通する程の衝撃。
 力を失った下半身をぶらりと宙に投げ出して、頭から下を真っ赤な鮮血で染め上げるそれは、最早クアットロとは言えない。
 当然、頭蓋を叩き割られ、脳を真っ二つにされた人間が無事で居られる筈がないからだ。
 顔面を貫いた衝撃からか、両の眼球は飛び出して眼球を繋ぐ筋肉一本でぶら下がっている状態。
 最早喋る事はおろか、考える事すらも出来なくなったそれに、アンジールが駆け寄る。

「ク、クアットロ……クアットロォォォォッ!!」

 涙を流しながら、クアットロだったものに触れようとするアンジールであったが――
 アンジールの手がクアットロに触れるよりも先に、火球にも似たエネルギー弾が、クアットロに命中。
 巻き起こる爆発。目の前で、その胴を粉々に粉砕され、四肢を四方へと爆散させる。
 真っ赤な血だまりとなった箇所に、ぼとりとクアットロを形成していた“部品”が落下した。

「うおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 背中に背負ったバスターソードを握り締めたアンジールの身体が、消え去った。
 否――消えたのではない。背中の片翼による爆発的なまでの加速力で、アスファルトを蹴り、飛び出したのだ。
 標的は、少し離れた場所に居る、漆黒のマントに、漆黒の仮面の男――ゼロ。
 加速は一瞬。即座に距離を縮め、その怒りをぶつける様に……力任せにバスターソードを叩きつける。
 きぃん、と音が響いて、バスターソードによる一撃は黄金の盾に阻まれた。
 ゼロの手中に、クアットロを殺した黒金の大剣が現れた事に気付いた。
 ソルジャーの反射神経をもって、刹那の内にバスターソードを構え直した。

「フンッ!」
「くっ……うぉぉおおおおっ!?」

 果たして、アンジールの判断は正しかった。
 ゼロが振るった大剣の一撃は、アンジールの胴を切断せん勢いで迫ったのだ。
 ゼロの刃がアンジールに触れる直前、寸での所でガードに成功。
 されど、勢いまでは殺す事叶わず、衝撃でアンジールの身体が吹っ飛ばされる。
 コンクリートの壁に激突し、背中をしたたかに打ちつけたアンジールに、追撃のエネルギー弾が飛ぶ。
 されど、それが命中する直前――今度は、遥か上空から弾丸の如き速度で飛来した黄金の光に、エネルギー弾は掻き消された。

「ははっ……本当に面白くないよね、お前」
「ゼロっ……!」

 黄金の光は∞の光を形成しながら、その姿を赤と銀の光の戦士へと変えた。
 無限に続く日々の未来を守るため戦う正義の光――ウルトラマンメビウスだ。
 両手を軽く開き、ファイティングポーズで構えを取るメビウス。
 その背後に、天道総司と高町なのはが立って居た。

「これで一人脱落……ま、別にそんな雑魚わざわざ殺してやることも無かったんだけどさ」
「お前はまた……あの人と同じように、人の命を弄んで……!!」
「いやぁ、ごめんごめん、ちょっとイラついちゃっててさ。悪気は無かったんだ、許してよ」

 漆黒の仮面を外し、へらへらと笑うキング。
 全員にバレている以上、最早ゼロを演じる事に意味は無いと判断したのだろう。
 悪びれる様子なく心にも無い謝罪を告げるキング。その表情が心底楽しそうなのが、この上なく腹立たしい。
 キングは楽しんでいるのだ。仲間を殺されて、激怒する自分達を見て、悦に浸っているのだ。

「まぁ、なんか無防備そうにつっ立ってたあいつも悪いって事でさ。
 僕だけが悪いみたいに言わないでよ。まぁアレだよね……おあいこ? みたいな?」
「「「ふざけるなッ!!!」」」

 背中の片翼を羽ばたかせ、アンジールが宙へ舞い上がる。
 メビウスがその両腕を広げ、∞の光とスペシウムの光をブレスから放出させる。
 装着したライダーベルトに、怒りをぶつけるようにカブトゼクターを叩き込む天道。
 一瞬のうちに、管理局の制服をバリアジャケットへと変換し、空へと浮かびあがるなのは。
 戦闘態勢へと入る四人の姿に、キングは心底鬱陶しそうに嘆息した。

25 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:22:28 ID:kw7JXkBY0
 
「あぁもう一々キレんなよ鬱陶しいからさぁ……」

 言いながら、キングの身体が変質して行く。
 黄金の外骨格に覆われた、どんな攻撃をも寄せ付けない無敵のボディ。
 ただの投擲でクアットロを吹き飛ばし、その上でコンクリを貫き串刺しにする程の怪力。
 そして、どんな物でも両断する最強の破壊剣、オールオーバー。
 それと双極を成す、あらゆる攻撃を防ぎきる最硬の盾、ソリッドシールド。
 最強のアンデッドを自称する、スペードの王――コーカサスアンデッドだ。

 ――CAST OFF――
 ――CLOCK UP――

 鳴り響く電子音。同時に、メビウスが掲げた両腕を十字にクロスさせた。
 無数の弾丸となったマスクドアーマーがコーカサスアンデッドに迫る。並のサリスワームならば一撃で破壊する威力だ。
 されど、コーカサスアンデッドにその程度の物理攻撃は通用しない。
 高速で迫る銀の装甲に命中する前に、コーカサスアンデッドの正面に具現化される黄金の盾。

「ははっ、効かない効かない」

 全ての装甲を弾き切ると同時に、正面のソリッドシールドに光の光線が命中した。
 光の国のウルトラマンの必殺攻撃。大量のスペシウムを光線に乗せる事で発射する技だ。
 眩い光を照射し続けるメビウスであったが、最初の一瞬を防いでしまえば何て事はない。
 腕を十字にクロスさせたままのメビウスに向かって、掌を翳した。
 上級アンデッドとしてのエネルギーが球体を無し、メビウスに向かって駆ける。
 が、発射されたエネルギー弾は、光速で駆ける一陣の赤き風によって相殺され――

 ――CLOCK OVER――

「「ハッ!」」

 次の瞬間には、コーカサスの目の前に二人の戦士が飛び込んで居た。
 弾丸の如き加速で飛び出したアンジールと、クロックアップ空間から戻って来たカブトだ。
 アンジールは目視出来た。カブトはメビウスを守る為に自分の居場所を晒した。ならば後は簡単だ。
 正面の盾でメビュームシュートを受け止めながら、両腕で二人の戦士の攻撃を受け止めた。
 左腕の甲でバスターソードを。右腕の甲でカブトクナイガンを。
 そして二人が驚愕するよりも早く、振り抜かれるオールオーバー。
 だが、その一太刀が二人に命中するよりも早く、コーカサスの腕を桜色の魔力光が拘束した。

「あぁ、そういや君も居たんだね」

 上空に視線を向ければ、そこに居たのは純白のドレスに身を包んだ魔道師。
 管理局のエース・オブ・エース。不屈の魂をその胸に秘めた、現存参加者の中でも最強の魔道師だ。
 腕に力を込め、その怪力のみでバインドを引き千切るも、その隙にカブトとアンジールは離脱。
 攻撃の機会を失ったキングは、だらしなく右腕を垂らし、無防備な姿を晒す。

「ま、何人掛かりで来ても無駄だと思うけど……って、話す隙もないのかよ!」

 今度は、光輝く大剣が上空から振り下ろされていた。
 メビュームナイトブレード。先程の戦いで、自分を敗北に追いやった剣だ。
 先程の敗北は、自分の慢心による所が大きい。最初から防げない攻撃だと解って居れば、対処のしようもある。
 メビュームナイトブレードが当たる前に、その身を翻し、アスファルトを一回転。
 そのまま上体を起こした瞬間――コーカサスを襲う、バスターソード。
 その一撃をオールオーバーで弾き返し、追撃で振るわれたメビュームナイトブレードを再び前転で回避。
 メビュームナイトブレードは、その剣の巨大さ故に、モーションが全て大ぶりなのだ。
 その攻撃が全て自分を狙っていると分かって居れば、回避するのも容易い。
 今度は背後からカブト、正面からアンジール。二人とも各々の剣を持っての攻撃だ。

26 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:23:07 ID:kw7JXkBY0
 
「ハァッ!」
「フンッ!」

 されど、バスターソードはソリッドシールドによって阻まれた。
 カブトクナイガンは、オールオーバーで受け止め――振り向き様に、一閃。
 カブトの胸部装甲を大胆に切り裂いて、その身を吹っ飛ばす。
 今度はバインドされようが攻撃を続けられる様に、全力で振り抜いたのだ。
 如何にヒヒイロノカネで作られた装甲であろうと、ただでは済まない。
 カブトの赤き装甲に黒く裂けた一筋の傷跡を与え、尚も追撃は止まない。
 吹っ飛んだカブトの身体に、更に一撃エネルギー弾を叩き込んだ。

「ぐっ……!?」
「ハッ、弱い奴が徒党を組んだところで変わんないのにさぁ」

 カブトの身体が大胆に爆ぜて、遥か後方のビルの壁に叩きつけられる。
 激突したコンクリの壁には大胆に罅が入って、その場に崩れ落ちるカブト。
 しかし、そんな勝利の余韻に浸っている隙は無い、すぐに繰り返される、アンジールによる攻撃。
 更には、メビュームナイトブレードの光を小さく凝縮したメビウスが、アンジールと共に駆けていた。

「チッ……僕、その攻撃嫌いなんだけどなぁ」

 咄嗟に精製したソリッドシールドが、光の粒子を撒き散らしながら真っ二つに裂けた。
 メビュームナイトブレードによる一閃。美しいまでの切れ味。
 勢いそのまま、もう一度振るわれたメビュームナイトブレード。
 同時に、背後から迫るバスターソード。見事なまでの連携攻撃。
 だが、まだ甘い。

「ふんっ!」

 メビュームナイトブレードを振るう腕に、下方から振り上げたオールオーバーをぶつける。
 カウンターの要領で入った一撃は、メビウスを怯ませるには十分。しかし、これで終わりでは無い。
 矢継ぎ早にその身を翻し、繰り出す攻撃は後ろ回し蹴り。仇敵・仮面ライダーカリスが得意とした戦法だ。
 それをアンジールの腹に叩き込んで、もう一度方向転換。今度は向かい合ったメビウスに向かって、剣を振り下ろす。

「はっ!」
「デュァッ――!?」

 メビウスの胸を、オールオーバーが綺麗に切り裂いた。
 カブトと同じように、メビウスの身体の表面に大きな切り傷が出来る。
 そこからまるで血液の様に光の粒子が漏れ出すが、構う事は無い。
 そのままオールオーバーを突き刺してやろうと、真っ直ぐに突き出す。

『GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
「――っ!?」

 巨大な竜の翼が見えた。巨大な竜の雄叫びを聞いた。
 見間違いなどでは無い。それはまごう事無き巨大な飛竜、フリードリヒ。
 オールオーバーを突き出すよりも先に、巨大な竜の尻尾がコーカサスを横薙ぎに殴りつけた。
 メビウスに切り裂かれた直後のソリッドシールドなど使い物にもならず、そのままアスファルトを転がる。
 同時に、桜色の光の奔流が、コーカサスを飲み込む様に炸裂する。

「シュワッ!」
『GUOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 これはチャンスだ。最高のチャンスだ。
 メビウスもその左腕を突き出し、赤と青の光の奔流を発射。
 ヒカリの力を、メビウスの力。二人分の光とスペシウム。
 さらに、上空を飛翔するフリードが、その口から灼熱の火炎を放出した。
 なのはが放った魔力光が爆発する前に、メビウスの光線と、フリードの火炎が直撃した。

 ――ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!――

 同時に巻き起こる大爆発。
 暴力的なまでの、爆風と熱風。耳を劈く強烈な爆発音。
 周囲の瓦礫を吹き飛ばした衝撃波が、なのはやメビウス達を襲う。
 爆発が止んで、白と黒の爆煙と燃え盛る灼熱の炎が視界を奪う。
 この場に居る誰もが、爆心地に居たコーカサスの最期を想像した。
 されど、現実は非常であった。

27 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:23:48 ID:kw7JXkBY0
 
「あっぶねぇ……今のは流石に死ぬかと思った。いや、僕死なないけど」
「そんな……! アレでも倒せないのか!?」

 白い爆煙を振り払い、立ち上がったのはキングであった。
 驚愕の声を上げるメビウスをよそに、キングが左腕に装着された白い機会を掲げる。
 緑のカードが一枚だけ装着された、無機質な白のディスク。
 見たところ、何枚かカードをセット出来る様に見える。
 それをこれ見よがしに見せびらかしながら、コーカサスが口を開いた。

「技が当たった直後に、こいつを使ったのさ。お陰で僕は全回復、さっき以上に健康体って訳。
 さぁ、第二ラウンドと行こうよ。僕はまだまだ元気だよ、ヒーローの皆」





 仮面ライダーカブトが、短剣を片手にコーカサスに迫る。
 凄まじい速度での攻防。カブトが剣を振るえば、その全て叩き落される。
 圧倒的な戦力差。完全にカブトの動きが見切られているのだ。
 やがて、カブトが振るった攻撃を受け止め、コーカサスが破壊剣を一閃。

「ぐぁっ……!」

 ヒヒイロノカネをまたも切り裂かれたカブトが、数歩後退。
 よろめくカブトの首根っこを掴んだコーカサスが、カブトの首をギリギリと締め上げる。
 ライダースーツ越しに気道を圧迫された天道が、呻きにも似た呼吸音を漏らす。
 このまま首を握りつぶされれば、天道の命は潰える。

「おおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 そうはさせないとばかりに響く雄叫び。
 天道の命が潰えるより先にコーカサスの懐に飛び込んだのは、アンジールであった。
 バスターソードを振り上げて、コーカサスへと突貫する。
 されど、コーカサスも黙ってやられはしない。
 物言わぬカブトを放り投げ、アンジールに激突させる。
 カブトとアンジール、二人揃って崩れ落ちた。

「――シュートッ!」
「本当にキリがないな」

 次に行動を起こしたのは、高町なのはだった。
 なのはが放ったアクセルシューターが、無数の光弾を生成し、コーカサスへと迫る。
 放った半分は破壊剣によって打ち砕かれ、うち半分はコーカサスを直撃。
 コーカサスの体表で爆ぜる無数の魔力弾。されど悲しいかな、威力が足りない。
 最強のアンデッドの一角たるコーカサスに、非殺傷設定付きの魔法など通用しない。
 コーカサスが、お返しとばかりに腕を突き出した。同時に生成されるエネルギー弾。
 刹那の内に人一人を殺せるだけの威力に膨れ上がったエネルギー弾が、上空のなのはに迫る。

「ヘァッ!」
「ミライ君!!」

 だが、その間に割り込んだのは、赤と銀と金の戦士――ウルトラマンメビウスだ。
 空を駆け抜けて、誰よりも早くなのはの正面へと割り込んだメビウスの身体に、エネルギー弾が直撃。
 上級アンデッドの持てるエネルギーの爆発が、メビウスの体表で発生する――が。
 それは、メビウスにとっても計算済みの事。

28 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:25:22 ID:kw7JXkBY0
 
「シュアァッ!!」

 その場の全員が、メビウスの身体に起こった変化に気付いた。
 コーカサスの放ったエネルギー弾。それによる爆発が、不自然なまでに大きく拡がって居た。
 言うなれば、まるで自分の意思で燃え上がる炎の様に――メビウスの身体に纏わりつく爆煙。
 やがて爆煙は、メビウスの意思に応える様に激しく燃えあがり……その身に吸収された。

「へぇ、僕の力を利用して自分の炎に変えちゃったんだ」

 楽しそうに笑うキングを睨み付ける、銀色の視線。
 仲間達との絆の力で体得した、メビウスのタイプチェンジ。
 メビウスの全身に浮かび上がる、真っ赤な炎のファイアーシンボル。
 どんな困難にも絶対に諦めずに立ち向かう、勇気の力――約束の炎。
 どんな窮地に立とうと、最後まで仲間を信じて戦い抜く、俺達の翼。
 ウルトラマンメビウス――メビウスバーニングブレイブ。

「デュアッ!」

 メビウスが突き出した両腕から、真っ赤な火球が飛び出した。
 さながら燃え上がる爆炎を凝縮したような、全てを焼き尽くす炎の塊。
 ウルトラマンタロウですら倒せなかったインペライザーを、一撃で破壊した攻撃。
 反射的に生成されるソリッドシールド。その表面で、大爆発が巻き起こった。
 その衝撃で噴き上がった爆煙が、周囲の全てを飲み込まん勢いで燃え上がる。

「ジュワァァァッ!!」

 爆煙を突き破って現れたのは、炎の弾丸と化したウルトラマンメビウスだ。
 その両足に勇気の炎を纏わせて、ドリルの如き激しい回転を加える。
 ウルトラマンレオと、GUYSの仲間達との修行の末に編み出した、必殺技。
 どんな防御ですら打ち破る、炎のメビウスピンキックだ。

「チッ……」

 メビウスの両足がドリルとなって、ソリッドシールドを抉る。
 燃える炎の身体となったメビウスとの摩擦熱で、シールドから炎が噴き上がる。
 噴き上がった炎はそのままメビウスに吸収され、メビウスに更なる力を与える。
 やがて、メビウスのキックがソリッドシールドを突き破り――

「でもっ……!」

 ――RIDER KICK――

「えっ……!?」

 振り向いた時には、もう遅い。
 コーカサスの死角。赤き装甲が月夜に飛び上がって居た。
 タキオン粒子を加速させ、その右脚に稲妻を纏わせる。
 対象を原子崩壊させる程の威力を誇るライダーキックが、コーカサスの目前まで迫って居た。

「ハァァァァァァァァァァァァッ!!」
「デュァァァァァァァァァァァッ!!」

 燃えるメビウスピンキックと、必殺のライダーキック。
 メビウスの脚が、コーカサスの胸部装甲を焼き尽くさん勢いで砕いた。
 カブトの蹴りが、コーカサスの背部装甲を粉々に粉砕せん勢いで砕いた。
 バチバチと、音が聞こえる。その身に受けた炎と稲妻が、せめぎ合っているのだ。

「やったか!?」

 歓喜の声を上げるアンジール。
 コーカサスの身体から二人分のエネルギーが溢れ出し、その身をよろけさせる。
 爆発する前に飛び退いたメビウスとカブトが、二人並んで構えを取った。
 ウルトラマンと仮面ライダーの、完全勝利だ。
 この場にいる誰もがそう思った。が――

「こんな所でやられてたまるかよ! ディアン・ケトッ!!」

 コーカサスが叫んだ。
 同時に、今し方砕いた装甲が、みるみる内に回復して行く。
 デュエルディスクによる、ディアン・ケトの連続使用。
 先程メビウスに敗北した直後も、同じ方法で回復したのだ。
 戦闘中にこれが出来るのだから、尚更タチが悪い。

29 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:25:52 ID:kw7JXkBY0
 
「どうやらあのディスクを破壊しない限り、俺達に勝利はないらしいな」
「なら、あのディスクを破壊して、奴を倒すまでです!」

 これで当面の攻撃対象は決定した。
 コーカサスの左腕に装着された白のディスク。まずはあれから破壊する。
 でなければ、いくらダメージを与えて痛めつけた所で、何度だって回復されてしまう。
 されど、この場に居る全員が解って居た。それが簡単な事では無いと言う事に。
 デュエルディスクを破壊されてしまえば、キングは圧倒的に不利になる。
 それが解っていて、黙って破壊などさせる訳がないからだ。

「……こっちの弱点にも気付かれちゃったみたいだし、そろそろこっちも本気で行かせて貰うよ」

 言いながら、コーカサスが歩き出した。
 ゆっくりと、絶対に負けないと言う余裕を見せるかの様に。
 カブトが、ガンモードに変型させたクナイガンから無数の弾丸を発射する。
 同時に、なのはが無数の魔力弾を発射。カブトとなのはによる弾幕が合図となった。
 メビウスとアンジールが同時に駆け出した。それに続いて、カブトも駆け出す。
 コーカサスの盾に全ての弾丸が弾き落されると同時、メビウスがその拳を突き出した。
 燃え上がる爆煙によって攻撃力を数倍に上げた炎のパンチ――

「ハァァッ!!」
「フンッ!」

 されど、コーカサスに届く前に……それどころか盾に届く前に、破壊剣によって叩き落された。
 拳を叩き落され、体勢を崩したメビウスに迫るのは、コーカサスが振るった破壊剣。
 びゅん、と。重たい剣が空気を切り裂いて、メビウスの身体を弾き飛ばした。
 コーカサスの正面からメビウスが崩れ落ちた頃には、カブトとアンジールによる追撃。
 カブトの短剣と、アンジールの大剣を、コーカサスの両の腕が掴み取った。
 狼狽するよりも先に、二人が取った行動は、コーカサスに対する前蹴りだ。

「「ハッ!」」
「効かないっての!」

 二人の蹴りはソリッドシールドによって阻まれる。
 だが、それで終わりはしない。次いで繰り出される、二人の剣戟。
 短剣と大剣が、激しい軌道を描いてソリッドシールドを何度も傷つける。
 がきん、がきん……と、何度か音が響いた後で、コーカサスが行動に出た。

「うざいって」

 一閃。
 カブトの装甲がまたしても引き裂かれ、アンジールの胸板を切先が掠めた。
 二人纏めて崩れ落ちた先には……桜色の魔法陣を展開した高町なのはがそこには居た。
 赤の宝玉を基部に、金色の装飾が成された魔法杖を突き出して、桜色の魔法陣を幾つも描く。
 不屈のエースオブエースの魔法攻撃。それも先程とは比べ物にならない程の砲撃らしい。

「ディバイィイイイイイン……! バスタァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 そして、放たれる一撃。
 桜色の光の奔流が、黄金の身体を飲み込もうと迫る。
 されど、キングも黙ってやられはしない。もう一度右腕を突き出し、エネルギー弾を生成。
 今までよりも力を凝縮して、それを一気に突き出した。
 加速するエネルギー弾と、なのはのディバインバスターが激突する。
 そして巻き起こる大爆発。お互いのエネルギーが相殺しあって起こった事象。
 コーカサスのエネルギー弾には、なのはの砲撃と違ってチャージがない。
 故に、コーカサスはすぐに次の砲撃へと移れるのだ。なのはが砲撃を放ってから、まだ1秒程。
 この一瞬で、なのはが気付くよりも先に決める。爆煙が晴れる前に、コーカサスがエネルギー弾を放った。

『GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
「チッ……またお前か」

 されど、それを阻んだのは白き飛竜・フリードリヒ。
 その身にエネルギー弾の直撃を受けて、苦しそうに悶えていた。
 無慈悲なコーカサスは、そんなフリードに連続でエネルギー弾を放つ。
 一発、二発と、身体が爆ぜる度に悲鳴にも似た叫びを上げる。
 やがて、三発目を放とうとした、その時であった。

30 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:26:27 ID:kw7JXkBY0
 
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 懐に飛び込んできたのは、ウルトラマンメビウス。
 タックルの要領で飛び込んできたメビウスの背中に、肘の一撃を叩き込んだ。
 アンデッドの刺々しい装甲と、力を象徴するスペードスートの王の怪力。
 そこから繰り出される肘打ちは強烈で、一撃でメビウスをアスファルトに叩き落した。
 同時に、背後から飛び込んでくる回し蹴り。仮面ライダーカブトによる攻撃だ。
 それを振り抜いた破壊剣で叩き落し、もう一撃、カブトの装甲に破壊剣を叩き込む。
 崩れ落ちるカブト。すかさず、アンジールがバスターソードを振り上げた。
 ソリッドシールドで防ぎ、右脚の重たいキックを見舞う。
 アスファルトを転がるアンジールを尻目に、立ち上がったメビウスがその拳を振るう。
 コーカサスがその腕を絡め取って、勢いそのままに、立ち上がり様のカブトへとブン投げた。

「「ぐぁっ……!」」

 メビウスと激突し、再び崩れ落ちるカブト。
 同時に響く獣の咆哮。その身に鞭打って、空を翔けて来た飛竜による尻尾攻撃だ。
 だが、それは既に一度コーカサスに使った手段だ。そう上手くいく筈も無く――。
 尻尾がコーカサスの身体を打つ前に、コーカサスがその尻尾を掴み取った。
 そのままジャイアントスイングの要領で振り回し、投げ飛ばす。
 その先に居るのは――

「フリード!!」

 高町なのはだ。
 何度も振り回され、平衡感覚を失ったフリードに、自ら回避など出来る訳がない。
 かといって、なのはが回避してしまえば、フリードは硬いアスファルトに激突してしまう。
 そこでなのはが取った行動は、魔法によるフリードの身体の保護であった。
 アクティブガード。まずは低速の爆風でフリードの加速を和らげる。
 ホールディングネット。魔力で構成されたネットが、フリードの身体を優しく受け止めた。
 咄嗟の状況でもこれらの判断を一瞬でこなしたあたり、流石エースオブエースと言える。
 やがて、体力を使い果たしたフリードの身体は、小さな竜のそれへと戻って行った。
 仮面の下でつまらなさそうな表情を浮かべるコーカサスであったが、しかし退屈はしない。

「えいっ!」

 連続で繰り出される無数のエネルギー弾。
 空を駆け抜け、それらを回避するなのはであったが……エネルギー弾は、何処までもなのはを追尾する。
 いくら空を駆け抜けても脱げ切れぬ事を悟ったなのはは、自らの魔法で相殺に掛る。
 が、大量に発射され続けるエネルギー弾全てを撃ち落とす事など不可能。
 数発を自らの魔法で叩き落すも、残りは交わしきれず、シールドで防ぐしかなくなった。
 されど、無慈悲なコーカサスはエネルギー弾の発射を止めはしない。

「ハァァァァァッ!!」

 もう一度起き上がったアンジールが、その大剣を突き立てた。
 切先の無いバスターソードはコーカサスの盾にぶち当たり、大幅に減速。
 その隙にコーカサスが、アンジールへと破壊剣を振り下ろした。
 咄嗟にバスターソードを構え直し、それに備えるアンジール。
 防御の為に一瞬だけがら空きになったアンジールのボディに叩き込むのは、重たいキック。
 黄金の脚がアンジールの胸板を強打し、その肋骨をへし折る。
 アンジールが、盛大に真っ赤な血液を吐いて吹っ飛んだ。
 それと同時に、上空で巻き起こる爆発音。コーカサスのエネルギーが、なのはのシールドを破ったのだ。
 白いドレスを回転させながら、アスファルトへと落下して行く高町なのは。

「アンジールッ……! クソッ!」
「なのはちゃん!! うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 もう一度駆け出したカブトとメビウス。
 カブトが振り抜いた短刀を破壊剣で弾き返し、その仮面に拳を叩き込んだ。
 カブトの頭が揺れて、真っ赤なマスクに亀裂が入る。さらに、追撃とばかりに振り抜かれる破壊剣。
 ヒヒイロノカネを叩き割って余りある衝撃が、天道の身体を襲う。
 アンジール同様肋骨をへし折られたカブトが、盛大に吹っ飛んだ。
 そこに迫りくる真っ赤な炎の闘士、ウルトラマンメビウス。
 メビウスの拳を黄金の盾で受け止めて、下方から破壊剣を振り上げた。
 ボディを切り裂かれたメビウスが、大きく仰け反り――隙だらけになった身体に、キックを叩き込む。
 呻きとも取れる叫びを上げながら、メビウスが後方へと吹っ飛んだ。

「どんなものかと思ったら、この程度? 正義のヒーローが聞いて呆れるね!」

31 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:27:01 ID:kw7JXkBY0
 
 最早立ち上がらなくなった一同を嘲笑うように、コーカサスが両手を広げた。
 かろうじて意識を保って居た一同が、よろめきながらも立ち上がる。
 メビウスに、カブト。アンジールに、なのは。満身創痍ながらも、その身に鞭打って。
 ここで自分達が負けたら、こいつはきっともっと多くの災厄を撒き散らすことだろう。
 そんな事は、絶対に許せない。もう二度と、こんな奴の為に、誰かが悲しむ涙を見たくはないのだ。

「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 メビウスが、自らを奮い立たせるように、咆哮した。
 夜の街に、ウルトラマンメビウスの雄叫びが響き渡る。
 両腕を振って、最早立つ事すらままならない身体で、アスファルトを蹴った。
 全速力で、コーカサスに向かって駆け出すメビウス。
 対するコーカサスは、右手を突き出し、無数のエネルギー弾を発射。
 ――するも、命中はしない。メビウスの炎によって、軌道を逸らされたエネルギー弾が、メビウスの後方で爆発するのみ。
 メビウスが駆け抜けた道を……アスファルトが、瓦礫が。炸裂、爆発――爆煙を振り払う様に、メビウスは叫んだ。

「絶対に守るんだッ! 皆の命を、皆の思い出を……! 僕達の、未来をッ!!!」

 メビウスの叫びをその耳に聞いたカブトが、僅かに顔を上げた。
 メビウスの思いに心揺さぶられたアンジールが、その眼光でコーカサスを捉えた。
 そうだ。命を守る為に戦い続けてきた自分達が、こんな所で負けていい筈がない。
 生きとし生ける命を……アメンボから人間まで、全ての命を守ると誓ったのだ。
 人々を救い、その命を守る為に、揺るがぬ決意と共に、神羅に入ったのだ。
 それが天道総司と、アンジール・ヒューレーという男の生き様なのだ。
 気付いた時にはカブトとアンジールも、メビウスに続いて走り出していた。

「デュァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 燃え盛るメビウスの剣が、ソリッドシールドに激突した。
 メビュームブレードが、ソリッドシールドに食い込んだ。
 絶対に諦めない。守りたい気持ちがあれば、こんな盾だって壊せる筈だ。
 メビウスの魂の炎が燃え上がると同時に、メビウスの剣が爆煙の如き炎を噴き出した。
 ソリッドシールドを侵食して、焼き尽くさん勢いで燃え上がるメビュームブレード。
 そして――ついに、ソリッドシールドが焼き裂かれた。同時に、迫りくる破壊剣。
 ソリッドシールドの破壊と同時に、メビウスの胸部を破壊剣が強打した。
 その場に崩れ落ちるメビウス。だが、その想いは絶対に無駄にはしない。

「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」

 両腕で大剣を構えて、真っ直ぐにアンジールが飛び込んだ。
 片手で短刀を構え、コーカサスの直前で腰を屈め、一気に振り抜いた。
 二人が狙った標的は、キングの左腕に装着されたデュエルディスク。
 これさえ破壊すれば、この勝負は貰ったも同然――なのだが。

「フンッ!」

 キングが、左の腕を――その掌を自ら突き出した。
 掌にエネルギーを集中させて、二人の刃を受け止めたのだ。
 黒金に煌めくバスターソード。黄金に輝くカブトクナイガン。
 その二つの切先を、掌一つで受け止めて、二人分の力と拮抗する。
 それでも、負けてなるものかとカブトとアンジールが構えた刃に力を込める。
 同時に、二人の攻撃に応える様に――キングが、掌に集中させたエネルギーを解き放った。

32 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:27:54 ID:kw7JXkBY0
 

「なっ……うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
「ぐぁ……ぁぁぁぁああああああああああああああああっ!!」

 カブトとアンジールの身体が、まるで紙きれの様に吹き飛んだ。
 数十メートル吹き飛ばされた二人の身体が、後方のコンクリートの壁に激突。
 力無く崩れ落ちる二人。今度こそ全ての力が抜け落ちていくようだった。
 これだけの攻撃を加えても、少し本気になられただけで、こうも実力差が開いてしまう。
 守るだけでは、勝てないのか――そんな考えを振り払う様に、カブトが頭を振った。
 カブトの仮面の亀裂からは血が溢れ出している。アンジールはその口から血液を流し、倒れ込む。
 メビウスは最後の力を振り絞った攻撃でカウンターをくらい、立ち上がる事すらままならない。
 なのはは先程の攻撃に次いで、無駄に魔力を消耗した事、コーカサスの攻撃を防ぎきった事で、魔力残量など無いに等しい。
 最早この場に居る全員が、満身創痍。最強のアンデッドの一角たるコーカサスには、誰も勝てはしなかった。

「あれ? なのはだけなんかダメージ少ないよね。バランス悪いなぁ」
「……キング……貴方と言う人は……っ!」
「いいね、いいよその眼! じゃあ最初に死んでね」

 コーカサスを睨み付けるなのはに放たれた一言。
 それは、なのはに絶望すら与える言葉であった。
 最早、キングの攻撃を防ぎきるだけの魔力は無い。
 かと言って、もう自分を守ってくれるものはいない。
 今度こそ、チェックメイトだ。

「ばいばい」

 コーカサスが、その腕を突き出した。
 今度はエネルギー弾では無い。エネルギーを光線にして吐き出す攻撃。
 全ての上級アンデッドが持つ、エネルギー派による攻撃だ。
 そんな物を受ければ、いくらバリアジャケットを装着していようと、耐えられる筈がない。

(ごめん、フェイトちゃん……ヴィヴィオ……)

 自分の最期を想像し、目を瞑る。
 最期に大切な親友と、掛け替えのない娘を心に思い描いて。
 出来る事なら、最期にもう一度だけ会いたかったな、と思う。
 誰よりも信頼出来る親友に、守ると誓った一人娘の笑顔を思い浮かべて――

「……ガッ……ハ――」
「え……?」

 だが、可笑しい。何時まで経っても、なのはが夢想した最期の時は訪れない。
 それどころか、聞こえて来たのは別の男の呻き声。何が起こったのかと瞳を開ける。
 そこに居たのは、なのはを庇う様に立ち塞がった黒髪の男――アンジールであった。
 コーカサスに背を向け、背負ったバスターソードと己の身でコーカサスの攻撃を受け止めたのだ。
 当然、無事でいられる訳も無く、バスターソードは粉々に砕かれていたし、アンジールの身体だってぼろぼろの筈だ。
 そうなる事は解って居た筈なのに……何故、アンジールは自分を守ったのだろう。

「何……で」
「クアットロが……言っただろう。時には身を呈して……仲間を守らねばならない……と」
「……!!」

 アンジールの言葉に、はっとした。
 確かにクアットロはあの時――ミライを置いて離脱する時、言った。
 仲間であるからこそ、時には身を呈してでも守らねばならない時があるのだ、と。
 だけど、それは十中八九その場で出たクアットロの方便だろう。
 そんな事は家族であるアンジールが一番良く解って居る筈なのに……。

33 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:28:32 ID:kw7JXkBY0
 
「これが……守るという事、なんだな……」
「ありがとう……アンジールさん」

 ――否。アンジールは、クアットロに言われたから自分を守ったのではない。
 勿論、この場での行動方針を決めるきっかけとなったのはクアットロだ。それは否定しない。
 だけれど、それ以上に……この土壇場で、こういう行動を取れる男。それが、アンジールなのだ。
 人々を救いたいと願い、人々を救う為に、命を賭して戦う。そこに、自分の死が待ち受けていたとしても、だ。
 アンジール・ヒューレーという男の本質に気付いた時、なのはの瞳からは涙が流れ出ていた。
 なのはからの感謝の言葉を聞いたアンジールは――満足そうに、その場に崩れ落ちた。

「アンジールゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!」

 次いで、カブトの仮面の下で絶叫したのは天道総司であった。
 奴は自分と同じ、誰よりも何よりも、妹だけを守ろうとした男。
 最後はその身を呈して、他人の命を守る為に戦い、果てた。

「うっわぁ、ソルジャーの癖に何その死に方! 存外しょぼくて拍子抜けだよ!」
「貴様……!」

 嘲笑うコーカサスに、仮面越しに鋭い視線をぶつける。
 自分の中で、今まで押し殺して来た怒りが爆発するのを感じた。
 そして、潜在的な怒りが爆発した時、人は限界を超える。
 手元にあったデイバッグから、一振りの刀を引き抜いた。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 全てを爆砕する、最強の妖刀。
 伝説の妖怪の息子たる男――殺生丸が自らの力で生み出した刀。
 親の呪縛を振り切って、全ての迷いを断ち切った時、爆砕牙は真の力を発揮する。
 バスターソードを掲げて戦ったアンジールの影をその身に重ねて、カブトは駆け出した。
 爆砕牙を両腕で握り締めて、コーカサスアンデッドに向かって突貫する。
 対するコーカサスは、先程と同じ要領で、左腕を突き出した。

「ディアン・ケト発動!」

 言うが早いか、再びコーカサスの前面にソリッドシールドが生成される。
 だけど、不思議と負ける気はしない。どんな硬い盾であろうと、今ならば突破できる。
 メビウスの決意。アンジールの覚悟。なのはの想い。それら全てを受けて、カブトは爆砕牙を振り抜いた。
 きぃん、と。一瞬だけ盾にぶち当たり――次の瞬間には、爆砕牙が盾を切り裂いていた。
 同時に巻き起こる爆発。爆砕牙によって切り裂かれた盾が、派手な音を鳴らして爆発したのだ。
 これこそが、爆砕牙の能力。斬った対象を爆発させ、その爆発は斬った後も続く。
 狼狽するキング。次の行動へ移る為の隙など、絶対に与えない。

「ハァッ!」

 勢いそのまま、カブトが振り抜いた爆砕牙が、見事コーカサスの左腕を直撃した。
 左腕に装着されていたデュエルディスクが、派手な爆発と共に破壊されていく。
 同時に、切り裂いたコーカサスの左腕と、左半身の表面が爆発を開始。
 勝ったか、と思った。

「ガ……ァ……」

 カブトの仮面から、大量の血液が溢れ出した。
 駆け抜けたカブトの腹に出来た傷口は、明らかに装着者の天道総司の身をも切り裂く大打撃。
 カブトがコーカサスを切り裂く瞬間に、コーカサスもまた、その破壊剣を力の限り振るったのだ。
 結果、破壊剣は見事カウンターの要領でカブトの装甲を、ベルトを切り裂いた。
 カブトゼクターを砕かれたカブトの全身から、眩い稲妻と、大量の火花が噴き出していた。

「あっぶねぇ〜……っていうかデュエルディスク壊されちゃったよ!
 けどまぁ、デュエルディスクと命が引き換えって考えたら、馬鹿馬鹿しいよね」

 体表で炸裂する爆発を振り払いながら、コーカサスが言った。
 コーカサスの後方で、爆砕牙を振り抜いたままの構えで動かなくなったカブト。
 やがて、ゼクターを破壊されたカブトの身体を稲妻が駆け巡り――爆発した。
 カブトの装甲が弾けて、その身体は爆発四散。視界を覆う白と黒の爆煙。

「天道さんは……!?」

 身を乗り出したなのはの眼前に、何かが落下した。
 それは、持ち主を失った爆砕牙。爆砕牙が、ひゅんひゅんと音を立てて、こちらまで飛んで来たのだ。
 それがアスファルトに深く突き刺さると同時に、爆煙が視界からゆっくりと消えて行った。
 天道の安否を心配し、周囲を見渡すが――爆煙が晴れた先には、誰の姿も見当たらない。
 ただ、コーカサスアンデッドが退屈そうにその剣を振り回しているのみであった。

34 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:29:03 ID:kw7JXkBY0
 
「総司さぁぁああああああああああああああああああああああああああん!!!!」
「そんな……天道さんまで……!」

 絶叫するメビウス。絶望するなのは。
 天道掃除は、今まで共に闘ってきた大切な仲間だ。
 決して長い時間を共に過ごしたとは言い難いが、それでも仲間である事に変わりは無かった。
 フリードを救うきっかけとなった、この場で出会った誰よりも信頼出来る人間。
 そんな人間を失って、平然として居られる訳が無かった。

「アンジールさん……天道さん……そんな……皆で脱出するって言ったのに……」
「あっはっは! カブトにも期待してたんだけど〜……所詮この程度か。ま、仕方ないね!」

 さもつまらなさそうに――しかし、実のところは楽しそうに。
 天道の死に様を馬鹿にするように笑うコーカサスに、心の中で何かが燃え上がるのを感じた。
 それは、なのはが今まで感じた事はない感情。怒りや、憎しみ――憎悪と呼ばれる感情。
 アンジールと天道の死に、人前では堪えていた筈の涙が自然と瞳に溜めこまれていた。
 だけど、そんな事は最早関係無い。燃え上がる激情を隠しもせずに、コーカサスを睨み付ける。
 そして、そんななのはの気持ちを代弁するように、今度はメビウスが絶叫した。

「よくもっ……!! よくも僕の大切な仲間達をぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 その声は震えていた。腹から絞り出す様な涙声であった。
 怒りと悲しみ。キングに対する、堪え用の無い激しい激情。
 今にも全てのエネルギーが切れてしまいそうな身体から、もう一度力を振り絞る。
 カラータイマーが高速で明滅する。それは、メビウスに最期の時が近付いている証。
 今度こそ、これが最期だ。本当に最期の最期に残った力を振り絞って、立ち上がった。

「ハッ、笑わせんなよ! お前らまだ出会ったばっかだろ!」
「それでも! それでも皆生きていた! 同じ目的の為に、殺し合いを止める為に……! なのにお前は!!!」

 ゼストを殺された時の怒りを思い出す。
 こいつは、皆の命を弄んだ。クアットロとアンジール、さらには天道までを……その手に掛けた。
 下らない理由で皆の命を奪い、あまつさえその死を嘲笑った。命を賭けた皆の行動を、侮辱した。
 このキングに、最早人間らしさなどは皆無。こいつは正真正銘のモンスター、化け物だ。
 人の命を踏みにじり、その輝きを奪う化け物を、ウルトラマンは――ミライは、絶対に許さない。
 残り僅かな命を燃やし尽くしてでも、こいつだけは絶対に倒さなければならない。

「僕の命と引き換えてでも、お前だけは絶対に倒す! もうこれ以上、お前に誰も殺させない!」
「ハハハハハッ! 面白い面白い! 出来もしない事を堂々と言っちゃう痛いヒーローの完成だね!」

 本当に可笑しなものを見ている様に、コーカサスが笑った。
 なんとでも言えばいい。この男は、まだメビウスに残された最期の大技を知らない。
 そう。メビウスには、切り札がある。残りの命を全て燃やし、自らを炎の弾丸に変える、最強の必殺技。
 使用する度に寿命は縮み、その身体に多大な負荷を掛ける最強にして最後の裏技。
 その名も、メビュームダイナマイト。持てる全てを燃やし尽くす、最期の輝き――

「――っ!?」

 されど。
 メビウスの身体は、もう燃えなかった。
 殆どのエネルギーを使い果たしたメビウスに、残った炎は皆無だ。
 メビュームダイナマイトを使用しようと、両腕を広げるが――その身体からは、赤が抜け落ちて行った。
 あの日誓った、大切な仲間達との絆が……“俺達の翼”が羽ばたく事は、もうない。
 掛け替えのない仲間達との約束の炎が、消えて行く。
 最後に残った希望が、目に見えて消え去って行く。

「そんな……どう……して……」
「君はここでゲームオーバーって事さ、メビウス」

 最早、バーニングブレイブを維持する事すら出来なかった。
 その身体は元の銀色を基調にした、本来のウルトラマンメビウスの姿へと戻って行く。
 立ち上がる力さえ失ったメビウスが、朦朧とする意識の中で、片膝をついた。
 視界の中で、振り上げられる破壊剣。コーカサスからかけられる、最期の言葉。
 思えば、ここまで何度も限界を超えて起ちあがった。何度もその拳を振り上げた。
 ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って――それでも訪れる、最後の結末。
 これで、もう本当に終わりなんだ。なのはの事を守る事すらも出来ずに――

35 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:29:38 ID:kw7JXkBY0
 
(なのはちゃん、ごめん……)

 最期に心中で、謝罪の言葉を告げた。
 セフィロスに一度切り裂かれたこの身に、もう一度破壊剣が迫る。
 嗚呼。本当なら、自分はあの時死んでいたのかもしれないな、等と思う。
 そしてもう二度と、メビウスブレスが輝く事は――

「諦めるな! ミライ!」
「――えっ!?」

 メビウスブレスは、もう輝かない。
 されど、メビウスの視界は、光で埋め尽くされていた。
 対するコーカサスも同様に、突然現れた光に動揺する。
 メビウスとコーカサスの間に、光輝く何かが立ち塞がっていた。
 ややあって、光が収まる。全員の視線が、目の前の“光”に集中していた。

「貴方は……!」

 メビウスが、歓喜の声を上げる。
 ウルトラマンメビウスと良く似た頭部。違いは、両サイドから生えた突起。
 ウルトラマンメビウスと良く似た身体。違いは、色。赤ではなく、青の身体。
 心優しい青の光。胸で煌めく輝きは、メビウスと同じタイプのカラータイマー。

「ウルトラマンヒカリ……! 生きていたんですね……天道さん!」

 その場の全員の視線が、ウルトラマンヒカリ――天道と呼ばれた者へと集まった。
 何が起こったのか解らない、されど、嬉しくない訳がない――そんな瞳を向けるのは、高町なのは。
 何が起こったのかは理解できないが、もし生きていたのなら本当につまらない――そんな視線を向けるのは、コーカサスアンデッド。
 その場の全員の視線に気づいたウルトラマンヒカリが、状況を説明するべく言葉を発した。

「ああ。そう簡単に死んでたまるか」
「良かった……本当に良かった! 天道さん!!」

 その声は、間違いなく、天道総司のものであった。
 天道総司の声を発するウルトラマンヒカリが、メビウスへと掌を向ける。
 差し出された青の掌から照射される、何処か優しい、温かな光。
 光はメビウスの身体へと吸い込まれて行き、そのままメビウスの力へと変わる。
 高速で明滅していたカラータイマーが、その点滅速度を下げて行くのが解る。
 ヒカリが、自分のエネルギーをメビウスへと分け与えたのだ。
 流石に全回復まではしないが、それでも無いよりはマシ。
 光の照射が終わった後、ヒカリが説明を開始した。

「カブトが爆発する寸前に、俺はヒカリに救われ――そして、頼まれた」
「頼まれた……?」
「ああ。メビウスと、他の皆の命を頼む、と……だが、そんな事は言われるまでもない」

 言い終わる前に、ヒカリの右腕……ナイトブレスに、鋭角的に反射する光が収束されて行く。
 光の収束が完了する頃には、ナイトブレスから眩く輝く黄金の剣が具現化されていた。
 それを振り抜いて、アスファルトを蹴る。後方のコーカサスへと駆け出す。
 一瞬でコーカサスの眼前まで迫ったヒカリは、一気にその剣を振り下ろした。

「ハイハイ、無駄無駄」
「――っ!?」

 ヒカリの身体が、硬直した。
 コーカサスが突き出した右腕から、高圧の念力が放出されているのだ。
 何度も何度も、その剣を振り抜くが――何度振ろうが、命中はしない。
 退く事すら叶わない身体。ナイトブレードで、何度も宙を切り裂く。
 やがて――

36 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:30:22 ID:kw7JXkBY0
 
「フンッ!」
「なっ……ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 コーカサスが、その腕に力を込めた。
 念力はエネルギー波へと変わり、放出されたエネルギーがヒカリの身体を直撃。
 防御の姿勢すらろくに取れずに、放たれた光線がヒカリの身体を派手に爆ぜさせた。
 勢いそのまま、放出され続けるエネルギーに吹っ飛ばされたヒカリの身体が、後方のビルの壁へと激突。
 どすんっ!と、派手な損壊音を打ち鳴らして、青のボディがコンクリートに亀裂を走らせ、減り込んだ。
 ヒカリの胸に装着されたカラータイマーが、メビウスと同じ様に赤の明滅を開始する。
 今度は確実にトドメを刺してやろうとばかりに、コーカサスがエネルギー弾を発射した。

「ほら、死ねよウルトラマン」
「ぐっ……あぁぁ――」

 何発も、何発も。
 止まる事のない光の弾丸が、休む間もなくヒカリの身体を爆ぜさせる。
 銀の胸板を。青の胴体を。ブレスが装着された腕を。何度も何度も爆発させる。
 その度に、胸部で瞬く赤のカラータイマーが、その明滅速度を上げて行く。
 ヒカリの体力が目に見えて削られ、命が遠ざかって行く。
 だけど、そんな事をさせる訳には行かないのだ。

「やめろ……やめろぉ! うわぁぁあああああああああああああああああ!!!」

 今度は、メビウスの身体が煌めいた。
 放たれるは「∞」に輝く眩き閃光。
 ∞の光が、全員の視界を埋め尽くして行く。
 一拍の間をおいて、その場の全員の視力が回復した時。
 一同の視界の中からメビウスとヒカリの姿が消えていた。
 ――否。消えた訳ではない。

「ん……?」

 最初にその気配を感じ取ったのは、戦闘中のコーカサスであった。
 コーカサスが振り向けば、そこに居るのは最早一人で立つ事すら叶わないヒカリ。
 そして、そんなヒカリをその身体で支えるのは、ウルトラマンメビウス。
 赤と青。二人のウルトラマンが、お互いの身を寄せ合って、アスファルトを踏み締める。
 脚が震えていた。ヒカリも、メビウスも。二人とも、だ。
 もう彼らには殆どのエネルギーが残されてはいない。体力を消耗し過ぎたのだ。

「ミライ君……もうそんな力も残って無い筈なのに……」

 唇を噛み締め、なのはがぽつりと呟いた。
 なのはの見解は正しい。ヒカリの力を分けて貰ったとは言え、メビウスもまた満身創痍。
 今やメビウスのカラータイマーもヒカリのカラータイマーも、ほぼ同じ速度で明滅していた。
 では、何故エネルギーを分け与えられ、回復したばかりのメビウスがヒカリと同じエネルギー残量になっているのか。
 その答えは……エネルギー残量を一気に消費した能力、先程メビウスが使用したワープだ。
 ほんの10メートル程しか跳んではいないが、それでも今のメビウスには精一杯。
 残った力で、ヒカリをコーカサスのエネルギー弾幕から救ったのだ。

「最後まで諦めず、不可能を可能にする……それが、ウルトラマンだ……!」
「面白い……これで本当に最後だ。やるぞ、ミライ」
「はい!」

 二人のウルトラマンが、お互いに頷き合った。
 メビウスブレスに、メビウスの最後の輝きが宿る。
 ナイトブレスの表面を、ヒカリの最後の輝きが走る。
 二人同時に両の腕を上げ――その腕を、十字に交差させた。

「「シュアッ!」」

 二人の声が重なった。
 交差されたメビウスの腕から、激しい金の光線が放たれる
 十字に組んだヒカリの腕から、美しい青の光線が照射される。
 残り僅かな命の光を賭した、二人の最後の必殺技。
 必殺の威力を持った、悪を焼き尽くすスペシウムの光線。
 黄金に輝く光線はメビュームシュート。
 青く煌めく光線はナイトシュート。
 二つの光が一つに合わさり――極大の光となって、コーカサスに迫る。
 これが最後に残った、彼らの想いの全て。
 これが二人の光で生み出せる、最高の輝き。
 持てる力を振り絞った、最後の希望の光。

37 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:30:52 ID:kw7JXkBY0
 
「ふんっ!」

 対するコーカサスが、オールオーバーを振り上げた。
 破壊剣に光が宿る。どす黒い血の様な。冷たい赤の輝き。
 ウルトラの青と黄金の光を優しい光とするなら、それこそ対照的な光。
 まるで血飛沫を上げる様な輝きを放つオールオーバーを突き出し――

「くっ……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 メビウスとヒカリの合体光線に、正面からぶつける。
 これで勝敗が決するのだ。お互いに、一歩も引き下がる訳には行かない。
 コーカサスの脚が。二人のウルトラマンの脚が。アスファルトを踏み締める。
 その腕に力を込めて、二人の光線と破壊剣を真っ向からぶつけ合う。
 メビウスが、ヒカリが。残った輝きを絞り出す様に、上体を乗り出した。
 破壊剣と衝突する力が、更に強大な物へと増幅される。

「なんだよ……この力!」

 これが、守る為に戦う者の力。
 これが、希望の光を力に変えて戦う、真の勇者の力。
 その力は絶大であった。されど、奪う為にしか戦えないコーカサスに、その力を理解する事は出来ない。
 今までとは比べ物にならない力。理解の限界を超えた、不可解な力。それを真っ向から受け止め――
 コーカサスの脚が、どすん!と音を立ててアスファルトへとめり込んだ。
 その黄金の巨体が徐々に押される。その剛腕が小刻みに震え始める。
 押しているのだ。二人の輝きが、コーカサスの悪しき輝きを。
 そして――決着は、一瞬であった。

「なんちゃってぇ〜!」

 場の緊迫感を一気に崩壊させる様な軽い声。
 まるで先程までの不利な姿は全て演技だとでも言う様に――。
 コーカサスが、その脚を踏み出した。その剣を天へと掲げた。
 同時に、二人が放った金と青の光線が、その軌道を変えた。
 まるで吸い込まれる様に、掲げた破壊剣へと吸収されて行く。

「「なっ……!」」

 これには溜まらず、二人のウルトラマンも度肝を抜かれた。
 残り僅かな命の輝きを賭した攻撃が。最後の希望を掛けた攻撃が。
 みるみる内に、コーカサスの悪しき輝きに吸収されて行くのだ。
 邪悪を砕き、か弱き命を守る為放たれたスペシウムが――奪われて行く。
 振り上げた破壊剣が、吸収したスペシウムの光を自分のエネルギーへと変換する。
 そして。

「ま、ここまでやったのは褒めてやるけど。これで終わり、今度こそ死ねよ」

 破壊剣を、一気に前方へと突き出した。
 刹那、生み出されるエネルギーの奔流は、強大な悪しき波動。
 二人分のスペシウム。アンデッドとしてのエネルギー。
 それらがお互いに増幅し合い、強大な力の奔流となって、メビウスへと駆ける。
 まるで血のような赤黒い光。対象を確実に仕留めんと迫る奔流。
 それが正面から、メビウスの身体に直撃した。

「うわぁぁぁあああああああああああああああああああああああっ――!!?」

 メビウスの胸部が、大爆発を起こした。
 絶叫。断末魔の叫びとは、まさにこの事を言うのだろう。
 されど、メビウスを襲う光の奔流は止みはしない。
 絶叫し続けるメビウスの身体を、容赦なく赤黒い光が襲い続ける。
 メビウスの両の腕が、行き場を失い、我武者羅に宙を引っかいた。
 何度も、何度も。もがき苦しむ様に、何もない空を掴んでは離す。
 されどメビウスの身体を直撃した光は、どんなに苦しもうと、その威力を弱めない。

「うわぁぁぁぁあああああああああ!!! あぁぁぁああああああああああああああああ!!
 あぁぁぁぁっ、うわぁぁぁぁああああああああぁぁあああああああああああああッッッ――!!!」
「ミライっ……! クソッ……!」

 見兼ねたヒカリが、もう一度右腕にナイトブレードを具現化させた。
 それを振り抜き、コーカサスアンデッドに向かって駆け出す。
 この攻撃が届かなくとも構いはしない。メビウスを救う事すら出来れば、それでいい。
 その為にも、ほんの一瞬だけでもコーカサスの注意をさらさなければならない。

38 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:31:33 ID:kw7JXkBY0
 
「お前は動くなよ」

 されど、ヒカリの思惑通りには行かない。
 最初の一歩を踏み込んだ瞬間に、ヒカリを襲撃したのは光弾。
 コーカサスが、破壊剣を持った右腕はそのまま、左腕を真っ直ぐに突き出したのだ。
 アンデッドの力の結晶たるエネルギー弾が迫り、ヒカリの胸部で爆発。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 突然の攻撃に、ヒカリがその片膝をアスファルトに付ける。
 ヒカリとて、もう余分なエネルギーが残っている訳ではない。
 先程のナイトシュートが失敗に終わった時点で、残ったエネルギーはほんの僅かなのだ。
 そして残り僅かなエネルギー波、限界を超えたダメージによって消失。
 ヒカリの腕に構成されていたナイトブレードが、霧散するように消滅した。
 されど、そうしている間にも、メビウスの悲痛な叫びは止みはしない。
 何も出来ない無力感に打ちひしがれながらも、手を伸ばす。
 この力が届かなくとも、目の前で苦しむ誰かを助けるくらいは、出来る筈だ。
 出来る筈なのに――その腕は宙を掻き、その指は虚空を掴む、だけしか出来ない。
 想いだけでは……それに伴った力が無ければ、何も守る事は出来ないのだ。
 力無く伸ばされた手は、メビウスに届く事は無く。

「あぁぁぁぁぁぁぁッ!! うわぁぁぁぁぁぁッ!! あ、があぁぁぁぁぁぁあ――ッ!!」

 絶叫。聴くだけでも力が抜けて行くような、一際大きな断末魔。
 コーカサスの放った光が、メビウスの全身を爆ぜさせる。
 全身が爆発を開始し、メビウスの身体中で起こる小さな爆発は、大きな爆発へと変わって行く。
 やがて、爆発がメビウスの身体を包み込み――メビウスの声が途絶えた。
 メビウスの身体が、光の粒子となって消滅したのだ。

「ミライ……」

 先程までメビウスが居たその場には、もう誰も居ない。
 先程まで目の前で苦しんで居たメビウスは、光になって消えた。
 何も残らなくなったアスファルトを、ただ呆然と眺める事しか出来なかった。

「これでわかったろ? お前らじゃ、僕には勝てないのさ」
「キング……貴様……」

 青い拳を握り締め、振り上げる。
 同時に、今までに無い程の高速で明滅するカラータイマー。
 天道総司自身にも、もう解って居る。自分に、奴を殴るだけの力など残って居ない事に。
 振り上げたヒカリの腕は、何処にもぶつけられはしない。
 宙へ向かって振り抜かれる事すら叶わず、青の拳が光になって行く。
 最後にコーカサスを、その銀の瞳で睨み付け――光は、全身に広がった。
 これで本当に、ヒカリに残されたエネルギーも尽きたのだ。
 間もなくして、ヒカリの身体もメビウスと同じように消滅した。

39 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:32:04 ID:kw7JXkBY0
 




 クアットロは死んだ。
 心の底から信用する事は出来ない相手であったが、それでも目的は同じだった。
 皆でこのデスゲームから脱出する。そのたった一つの目的の為に、協力した仲間だった。
 アンジールも死んだ。
 最初は突然襲い掛かって来た、得体の知れない襲撃者であった。
 だが、最終的な目的は誰かを守る事。事実、アンジールはその最後の命を賭して、なのはを救った。
 天道総司も死んだ。
 商店街の戦いで出会った、この場に居る中では誰よりも頼れる仮面ライダー。
 なのはと同じ目的を掲げ、全ての命を救って、共に脱出する筈の――掛け替えのない仲間だった。
 ヒビノミライも死んだ。
 まだ出会ったばかりだけど、彼が本当に信用に足る人物である事は、その眼を見ればわかる。
 アンジールと天道の死にその涙を流し、最後の最後まで諦めずに戦い、その命を散らした。

「皆、もう居ない……もう、魔力も残って無い……」

 最早涙も流れはしなかった。
 目の前で皆殺された。自分の持てる魔法も、何一つ通用しなかった。
 竜魂召喚と、その後に続く戦闘で消耗した魔力は凄まじい。
 精神力も尽きかけている今、なのはには絶望しか残ってはいなかった。
 諦めてはならない。それは解って居る筈なのだが――どう考えても、無理だ。
 戦える道具は何一つ無い。魔力も、仲間ももう残ってはいない。

「もう……終わり、なんだね……」

 それは事実だ。
 もうどうしようもない事実なのだ。
 奴には、自分達の持てる全ての策が通用しなかった。
 魔力も碌に残って居ない自分に、最強のカテゴリーキングたるキングを倒せる訳がない。
 その考えが、最後まで諦めずに戦った皆を冒涜する行為だと言うのは、解る。
 だけど、もう何も残ってはいない。手詰まり。どうしうようもないのだ。
 そう思っていたなのはの耳朶を叩いたのは、意外な人物の声であった。

「私は結局……何も守れなかった……」
「本当に……そう……思うか……」
「え……その声……! まさか……!」

 それは、聞き覚えのある人物の声。
 低く、鋭く尖った歴戦の戦士の声であった。
 聞こえる声に振り向けば、そこに居たのは、一人の戦士。
 アスファルトに突き刺さった一振りの刀――爆砕牙を杖代わりに。
 その巨体を持ち上げ、無理矢理立ち上がって居た。

「ア……アンジール、さん……生きていたの!?」

 いいや、生きて居られる筈がない。
 あれだけのダメージを、ほぼ生身で受けたのだ。
 いくらソルジャーと言えど、生きて居られる訳が無いのだ。
 されど、事実として目の前のアンジールは立ち上がって居る。
 それは、不可能を可能にする程のアンジールの執念が成せる業。
 生きたいと、守りたいと願う心が。アンジールの魂を辛うじて現世へと留めているのだ。
 そもそもアンジールの身体は、死亡すれば緑の光と共にライフストリームへと還る。
 身体がそのまま残っていると言う事は、それはまだ辛うじて生きている証明なのだ。
 といっても、異世界を生きるなのはがそれを知らないのは当然なのだが。

「お前には……聞こえないのか……? あいつらの声が……」
「え……? 声……?」

40 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:32:34 ID:kw7JXkBY0
 
 気付けば、なのはの周囲を無数の光の粒子が漂っていた。
 それは、メビウスとヒカリが光子にまで還元された姿なのだが、なのははそれを知らない。
 だけど、この光が何処か温かい、不思議な光だという事は、なのはにも分かる。
 退屈そうに剣をぶらぶらと振り回すコーカサスをよそに、なのはが顔を上げた。
 同時に、なのはの頭の中に、声が響く。

『眼を逸らしてはいけない。君になら聞こえる筈だ。今はそばに居なくとも、勝利を信じて共に闘う仲間の声が』

 なのはの頭の中に、青い光の巨人のイメージが浮かび上がる。
 それは、先程天道総司が変身して戦った戦士……ウルトラマンヒカリ。
 ヒカリの声が聞こえると言う事は、まだ天道総司は死んでいないと言う事になる。
 だけど、あれだけ派手に負けた天道総司が死んでいないとは、一体どういう事だろう。

『そうだ……君達人間が居てくれるから、我々はどんな強敵とも戦ってこれた』
「私達が……?」
『救って欲しい、俺の仲間を。君達が培ってきたものがあれば、必ず守り抜ける』

 ヒカリが言うが早いか、周囲の粒子が一箇所に集まった。
 それはなのはの腕へと集束されて行き――やがて、青のブレスレットへと変化する。
 かつて、ペンウッドの命を救ったとされる奇跡の光のブレスレット。
 つい先程まで、天道総司と一体化し、共に闘っていた青き輝き――ナイトブレス。
 受け継がれて行く光の絆。それが今、こうして高町なのはの元へと宿ったのだ。
 ナイトブレスを見詰めるなのはの肩を、アンジールが掴んだ。

「立て、なのは……俺達はまだ、誰一人死んではいない」
「アンジールさん……」

 その身を立ち上がらせ、爆砕牙を杖代わりとするアンジールに肩を貸す。
 不思議なものだ。先程までは絶望に打ちひしがれていたのに、今はまるで違う。
 アンジールが生きていた。ヒカリの声を聞いた。
 それだけで、なのはの心に希望の光が再び瞬いた。
 そして今度は、その希望に応える様に、周囲の光が集束され――
 集束された光が、なのはの眼前で人の形を取った。
 服はぼろぼろに裂け、全身血まみれ、痣だらけ。
 ボロボロに傷ついては居るが、間違いない。
 光が形成したのは、見まごう事無き天道総司であった。

「守り抜くんだ……俺達の力で、全ての参加者を」
「天道さん……!」

 天道総司が、力強く頷いた。
 その声を聞いていると、力が湧いてくる。
 これがキングには理解出来ないであろう、人の心の光。
 誰かの命を守りたいと願う限り、無限に湧き上がる力。
 それが、なのはの心に希望と勇気を与えてくれるのだ。

「ああ、ミライも一緒にな。お前になら、聞こえるだろう?」
「アンジールさん……!」

 アンジールが、優しい微笑みを浮かべた。
 そうだ。皆で守り抜くと誓ったではいか。
 誰一人欠かさず、皆で脱出すると誓ったではないか。
 それがなのはが誓った、たった一つの願い。ならば、こんな所で立ち止まってはいられない。
 ただ、守り抜く。たったそれだけの目的を果たす為に、自分達はここまで戦ってきたのだ。
 その為にも、こんな所でミライの命が欠けて良い訳が無かった。

「キュックル〜!」
「フリード……!」

 体力を回復したフリードが、その翼でなのはの傍らを飛ぶ。
 なのはの右腕に装着されたナイトブレスを、フリードがつついていた。
 このフリードも、小さな命とは言え、ここまで共に戦ってきた仲間。
 このゲームから脱出する上で、絶対に欠かせない大切な存在なのだ。
 やがて、ナイトブレスが青き光を放つ。
 光と共に聞こえるのは、聞き覚えのある、優しい声。

41 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:33:04 ID:kw7JXkBY0
 
『なのはちゃん……もう一度力を貸して欲しいんだ! 僕達の、未来を守る為に!』
「その声……ミライ君! ミライ君なの!?」

 それは聞き覚えのある、心優しき男の声。
 皆を守る為に戦い、散ったとばかり思っていた。
 だけど、それは間違いだ。ミライは、散ってなどいない。
 全ての参加者を守り抜くと誓ったミライが、こんな所で朽ちる訳が無かったのだ。
 それを理解すると共に、なのはの意識が暗転した。





 ほんの瞬きの内に、なのはの意識は何処か別の次元に存在していた。
 右も左も、上も下も、見渡す限り360度が黄金の光に包まれた異空間。
 この空間では方向感覚など意味を成さず、自分が立って居るのか寝ているのかすらも解らない。
 ここは何処なのかと考えるよりも先に、視界に入って来たのは、仲間の姿。
 ウルトラマンメビウスとして戦った、ヒビノミライだ。

「ミライ君……どうして!」
「ナイトブレスは、奇跡の力を持つ伝説の超人、ウルトラマンキングから授かったものなんだ」

 なのはが、自分の腕に装着されたナイトブレスへと視線を落とした。
 ウルトラマンヒカリが持つナイトブレスは、ミライの言う通りウルトラマンキングから授かったものだ。
 そもそもウルトラマンキングという存在は、ミライですらも完全には理解し得ぬ存在。
 1から30まで、ありとあらゆる次元に同時に存在し、ありとあらゆる世界で万能を誇る存在。
 宇宙の端から端であろうが、過去の果て、未来の果て……それどころか事なる世界の果てであろうと、一瞬で飛び越える。
 全ての世界、全ての宇宙で起こったあらゆる出来事を同時に把握すると言われる、神にも等しき存在。
 ウルトラマンキングと比べれば、歴戦のウルトラ警備隊員であろうが赤子にも満たない程度の戦力なのだ。
 それ程の圧倒的力量差。その上で全ての世界のウルトラマンの能力を備えた、最強にして万能たるウルトラの神。
 そんな伝説の超人・ウルトラマンキングが直々にヒカリに託したのが、このナイトブレスなのだ。
 そのナイトブレスがどんな不可能を可能にしたとて、不思議な事では無い。

「それに、ヒカリは前に言っていた。来るべき戦いの時、このナイトブレスが必要になると」

 かつてのエンペラ星人との戦いの時だってそうだ。
 どうしようもないピンチを救ったのは、このナイトブレスだった。
 メビウスの光と、ヒカリの光。それから、信頼出来る人間たちの心の光。
 それら全てを一つにつなぎ合わせ、メビウスを無敵の超人へと変えた。
 そして、無限の可能性を秘めたこのナイトブレスを今受け継いだのは、高町なのは。
 今この瞬間、なのはこそがこの戦いに勝利する為のたった一つの可能性となったのだ。
 頭の中に流れ込んでくるナイトブレスの情報。それを理解したなのはが、ミライに向き直る。

「私達にはまだ、出来る事がある……そうだね、ミライ君?」

 なのはの表情には、最早恐怖も絶望も無い。
 絶対に勝てる。絶対に守り抜ける。その確証が、勇気となってなのはの自信を裏打ちする。
 この戦いに勝って、キングを倒す。そして、全ての参加者を守り抜くのだ。
 ヴィヴィオも、スバルも、生き残った他の皆も……全員守って、帰還する。
 その為にも、守り抜く為にも。なのはは戦わなければならないのだ。
 こくりと頷くミライに、なのはがその決意を口にした。

「解った……一緒に行こう!」


 そう叫んだ次の瞬間には、なのはは元の次元へと戻って居た。
 傍らに居るのは、全身傷だらけになったアンジール。全身血まみれの天道総司。
 二人とも、最後の最後まで、自分の持てる全力を出し尽くして戦った本物の戦士だ。
 なのはの上空を飛翔するのは、眼前のコーカサスを睨み付ける飛竜、フリードリヒ。
 彼も、自分の身体がぼろぼろになるまでなのはを守り、戦い抜いてくれた仲間。
 他の二人と同じくらい大切な、掛け替えのない存在なのだ。

42 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:33:35 ID:kw7JXkBY0
 
「キュクル〜!」

 フリードが、空を飛びながら、頷いた。
 なのはもそれに応える様に、力強く頷く。
 最早言葉などは必要ない。ここに居る全員、気持ちは一つだ。
 目の前のキングを倒して、全員で帰還する。
 その為に、全員で一緒に戦おう。

「アンジールさん」

 なのはの声に、アンジールは無言で頷いた。
 その表情に、先程までの様な苦しみは見受けられない。
 アンジールもまた、絶対に勝利出来ると信じているのだ。

「天道さん」

 そしてそれは、天道総司もまた同じ事。
 なのはの声にこくりと頷き、アンジールと同様に微笑みで返す。
 今なら解る。天道総司もまた、自分達と気持ちは同じなのだ。
 ただ、守り抜く為に、もう一度だけ立ち上がる。
 今、自分達は一つに繋がっているのだ。

「行こう……私達、皆で!」

 ナイトブレスには、一本の短剣が装着されている。
 それを一度ナイトブレスから取り外し、もう一度装着する事で、ヒカリへの変身は完了する。
 その動作を、なのはが自分の手で完成させる。
 一度抜き放った短剣を突き刺し――同時に、光を放つナイトブレス。
 装着された短剣が黄金の光を放ち、青き十字の輝きがなのはの腕に煌めいた。
 ナイトブレスが装着された腕を……その掌を地面へと向け、真っ直ぐに突き出す。
 アンジールが、突き出されたなのはの手の甲に、自分の掌を重ねた。
 それに続く様に、天道が二人の手の甲の上に自分の掌を重ねる。

「皆さん……!」

 聞こえる声は、先程まで共に闘った勇敢な男の声。
 手を重ね合わせる三人のすぐ傍で、周囲を舞う光の粒子が収束した。
 全身から眩い光を放ちながら、形成される人影は――ヒビノミライ。
 メビウスブレスが装着された左腕を、三人の手の甲に重ねた。
 ミライの光が、天道へと。天道の光が、アンジールへと。
 そして、アンジールの光がなのはへと。全員の光が、一つに重なる。
 すぐ傍にいたフリードも一緒に――この場の全員の身体が、眩いばかりの光を放ち始めた。

 ――人は誰でも、自分の力で光になる事が出来る――

 かつてとある世界の、超古代のウルトラマンが言った言葉だ。
 暮らす世界は違えども、それは決して揺らぐ事のない不変の事実。
 どんな状況であろうと、諦めない限り……人は誰だって光になれる。
 例え人の心の中に闇があろうとも、信じる事を止めない限り――
 人はウルトラマンの心に応え、共に光になる事が出来るのだ。

 なのは。天道。アンジール。フリード。ミライ。
 五つの魂が共に共鳴し合い、一つの光を作りだす。
 五人を包む眩き光は、やがて「∞」の形を形成した。
 気持ちを一つに。合わせた掌を、全員で天へと掲げ――叫んだ。

「「「「メビウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥス!!!」」」」

43 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:34:08 ID:kw7JXkBY0
 




 眩い光が、周囲の闇を振り払った。
 アンデッドであるコーカサスの視力ですらも直視出来ない程の光。
 流石のキングですらも、こんな状況には全くもって心当たりがない。
 あの携帯サイトで参加者全員分の情報を得たとて、ここまでの事は知り得なかった。
 故に、何が起こったのか理解出来ないキングは、ただ黙って∞の光を凝視する事しか出来なかったのだ。
 やがて周囲の光が収まり、視界が回復して行く。周囲が再び、夜の闇を取り戻して行く。
 コーカサスの視界に入ったのは、爆炎。燃え上がる灼熱の炎。
 爆炎は一人の人間の形を形成し、次いで輝きを放つ、黄金の光。

「ん……?」

 爆炎と黄金の輝きが一人のウルトラマンの形を形成した。
 その姿は、そのシルエットは、まごうことなきウルトラマンメビウスのもの。
 だが、今までとは決定的に違う。
 まずはその体色。今までのメビウスは、銀を基調に赤のボディカラー。
 それに反して、今のメビウスは赤だけでは無いく、青の炎が渦巻いているように見える。
 さながら赤の炎と青の炎が、ない交ぜになって燃えあがっている様にも見えた。
 赤と青の勇気の炎を縁どる様に、全身に走った黄金のライン。
 黄金がメビウスの全身に不死鳥の翼を象り、それを彩るように赤と青の炎が燃え盛る。
 左の拳と右の拳をぶつけ合わせ、両腕に装着されたブレスを輝かせた。
 左腕。燃え上がる太陽の炎を象徴する、黄金の光のメビウスブレス。
 右腕。静かな夜の、優しい月光を象徴する、白銀の光のナイトブレス。
 やがて両腕を一気に振り払い、コーカサスに対し、構えを取った。

「ハッ、何が起こるのかと思ったら、結局ただのウルトラマンかよ!」

 拍子抜けだ。
 少しでも警戒をした自分がバカバカしく思えて来る、とばかりに込み上げる嘲笑。
 メビウスにしろヒカリにしろ、どんなに手を尽くしても自分には勝てないというのに。
 今の二人との戦いで、自分はウルトラマンという存在のレベルを知った。
 ましてや片方は最強の仮面ライダーを自負していた男が変身したウルトラマン。
 ウルトラ警備隊の一人と、最強の仮面ライダーが手を組んでも自分一人倒せなかったのだ。
 それを、今更四人と一匹で力を合わせて一人のウルトラマンになったところで、勝ち目があるとは思えない。
 ならばひと思いに、この一撃で終わらせてやるのが情け。
 逆にいえば、この一撃を耐えられない時点で、あいつらはもう駄目だ。
 アスファルトを踏み締め、全てを両断する必殺の破壊剣を高らかに振り上げる。
 瞬間、迸る血の様などす黒い光が破壊剣を彩った。
 ばちばちと音を立てて、破壊剣が軋みを上げる。
 どす黒く、冷たい光が、みるみる内に増幅して行く。
 先程メビウスを破壊した時と同じ輝きだった。

「はぁっ!」

 それを一気に突き出し、自ら生み出した壮絶なる闇の波動を発射。
 どす黒い闇にも似た光。全てを飲み込む闇の奔流。
 巻き起こる衝撃波。周囲の瓦礫を吹き飛ばしながら、真っ直ぐにメビウスへと加速。
 やがて、闇の波動はメビウスの胸部で爆ぜた。
 刹那、大爆発――したかに見えた。

「えっ」

 否。爆発したのは、メビウスの身体では無かった。
 それどころか、メビウスは指一本動かしてはいない。
 今し方自分が放った“波動”が、メビウスの身体に命中した瞬間に、爆発したのだ。
 それだけではない。爆発は波動を伝わって、破壊剣を握るコーカサスへと押し戻されて行く。
 メビウスが自分の力を上乗せして、コーカサスの波動をそのまま押し返しているのだ。

「なにそれこわ――うわっ!?」

 冗談を言うまでもなく、破壊剣にまで爆破が到達した。
 どんな鉄壁であろうと容易く両断する筈の、最強の破壊剣に――亀裂が走った。
 それ即ち、最強を名乗る筈のオールオーバーに齎された、敗北。
 それを認識するだけの時間を与えられずに、オールオーバーは粉々に粉砕。
 コーカサスの腕を派手に爆発させて、破壊剣が爆発四散した。

44 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:34:42 ID:kw7JXkBY0
 
「まだ解らないのか! キング!」

 赤と青のウルトラマンが言葉を発した。
 この声には聞き覚えがある。聞き間違えようのない、あの愚か者の声。
 自分の身を犠牲にし、他者の為に闘う、あの愚かな青年――ヒビノミライの声だ。
 例え赤と青の爆炎に身を包もうと、外見がメビウスなのだから当然かと納得。
 今自分が闘っている相手は、あのヒビノミライを主人格とするウルトラマンなのだろう。
 痛む右腕を抑え、メビウスを凝視するコーカサス。
 目の前のメビウスが、一歩踏み出し、叫んだ。

「今の僕は、もう一人じゃない!」

 同時に、気配を感じた。
 現在の主人格たるヒビノミライの気配。
 そして、その後方にずらりと並んだ、他の連中の気配。
 高町なのは。天道総司。アンジール・ヒューレー。フリードリヒ。
 その全員が、本当の意味で一つの光となった姿が、目の前のウルトラマン。
 二つのウルトラの光と、それを信じる人間達の心の光。
 それらが合わさり、究極の光の姿となって君臨した。
 ウルトラマンメビウス――メビウス・フェニックスブレイブ。
 不死鳥の勇者の名を冠する、究極のウルトラマンの姿。

「はっ……だから何だって言うのさ! 四人掛かりで僕に勝てなかったお前らが……!」

 もう盾も剣も、回復するまでの間は形成出来ない。
 だけど、その剛腕は全てを破壊出来るだけの力を持っている。
 どんな重量のものでも軽々と持ち上げ、どんな鉄壁をも破壊する拳がコーカサスにはある。
 こんなところで、こんな下らない慣れ合い厨に負ける事などあってはならないのだ。
 拳を振り上げて、コーカサスがアスファルトを蹴った。加速を付けて、一気にメビウスに肉薄。
 そして、力一杯振り抜かれる一撃――右のストレートパンチ。
 同時に、メビウスもその右腕を振り抜いた。

「フンッ!」
「グ……ァ……ッ!?」

 クロスカウンター。
 お互いの拳が、お互いの顔面へと――届いては居なかった。
 コーカサスの拳だけが、メビウスには届かなかったのだ。
 一方で、コーカサスの顔面を抉ったのは、燃え上がる爆炎を宿らせた赤の拳。
 めきめきと音を立て、仮面を砕いたその刹那。
 拳から放出されるは黄金の輝きと、灼熱の炎。
 一瞬の出来事に、視界を失うコーカサス。

「ハァッ!」

 今度は、メビウスの攻撃だった。
 不死鳥の炎と輝きを撒き散らしながら放たれる前蹴り。
 しかし最強のアンデッドの一角たるコーカサスも、只で攻撃を食らいはしない。
 ほぼ反射的に、左腕に装着されたソリッドシールドの本体を突き出した。
 どんな攻撃をも完全に無効化する、最強にして最硬を自負する自慢の盾。
 されど、その程度で灼熱の不死鳥となったメビウスを止める事は出来ない。

45 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:35:27 ID:kw7JXkBY0
 
「なっ……!」

 盾を打ち砕いたのは、突き出されたメビウスのキック。
 眩いばかりの光と、灼熱の爆炎を撒き散らしながら、コーカサスの盾を粉々に粉砕したのだ。
 塵となって砕けた盾の破片は、勇気の炎に焼き尽くされて、光の粒子にまで還元されてゆく。
 勢いそのまま、今度はもう一方の脚を振り抜いた。
 メビウスによる、回し蹴り。その強烈な一撃が、コーカサスの腹部に直撃した。

「が――はっ……!」

 溢れ出すのは、緑の血液。
 夥しい量の液体が、黄金の仮面の下から吐き出された。
 気付けば、重厚な装甲に覆われている筈のコーカサスの身体は、くの字に折れ曲がった。
 腹部の装甲が眩い光を放出しながら、粉々に砕かれて行く。次いで、光へと還って行く。
 当然、それだけではメビウスのキックの衝撃を殺しきれはしない。
 キックに耐えられなかったコーカサスの身体は、後方へと一気に吹っ飛んだ。
 どごぉんっ! と、大きな音を立てて、コーカサスの背中が後方の雑居ビルの壁を突き破った。
 後方のコンクリートの壁を幾つも突き破って、ようやくコーカサスがアスファルトに崩れ落ちる。

「……クソッ! 僕が、負けるだと!? そんな、馬鹿な! 僕は――僕は!!」

 僕は、最強のカテゴリーキング。
 僕は、全てを滅茶苦茶に破壊する最強の存在。
 僕は、誰にも負けない絶対的な強者である筈。
 そんなキングの常識が、覆されて行く。そんな事は、絶対に認められない。
 認めてなるものか。こんな不条理な力を、認める訳には行かないのだ。
 アスファルトを殴りつけて、その身を奮い立たせる。
 最早腹部の痛みなども忘れて、激情のままに駆け出した。





 メビウスの遥か前方の雑居ビルに、馬鹿でかい穴が開いていた。
 それは今し方自分が開けた穴。コーカサスを吹っ飛ばした穴だ。
 穴の奥を凝視すれば、コーカサスアンデッドがもう一度立ち上がり、走り出していた。
 奴の考えは解る。先程まで圧倒的に有利であった自分が、こうも一方的にやられる事が納得出来ない。
 だからそんな事実を覆さんと、何度でも立ち上がり、メビウスを倒す為にその拳を振るう。

「そんな筈がない! メビウスなんかに、この僕が!!」
「このメビウスには、ミライと、俺達の想いが込められている!」
「そうだ……! 最早お前如きに負けるような力じゃない!」

 アンジールに続いて、天道が声高らかに宣言した。
 それに同調する様に、黄金の光の中、一同が一歩を踏み出す。
 この光の中で、自分達の想いは一つとなった。“守りたい”と願う心が、一つの光になれたのだ。
 守りたい者もない、自分の為だけにたった一人で戦い続けるキングなぞに、絶対に負けはしない。
 両腕を大振りに、駆け抜けるコーカサスアンデッドに、メビウスが構え直した。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉあぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」

 我武者羅な動きだった。
 重厚たる黄金の装甲で繰り出される、右のハイキック。
 それをメビウスに叩きつけようと振り上げる。
 奴の狙いはたった一つ。メビウスの頭部を打ち抜くつもりだ。
 だが、狙いが見えているのであれば、防ぐ事など容易い事。
 両腕の甲を突き出し、ガードの姿勢を取った。
 黄金の脚に、作った両腕の甲を自らぶつけに行く。
 コーカサスのキックがメビウスの腕に命中した瞬間に、弾ける黄金の光。
 一瞬で決着はついた。微動だにしないメビウスと、体勢を崩し、脚を下ろしてしまうコーカサス。

「ハァッ!」

 今度はメビウスが、その拳を真っ直ぐに突き出した。
 爆炎と眩き光を奔らせたメビウスのストレートパンチが、コーカサスの胸部を強打。
 胸部装甲がめきめきと音を立てて砕け、緑色の血液が噴き出す。
 されど、拳が命中した場所から湧き上がった炎と光で、そんな血液はすぐに蒸発。

46 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:35:57 ID:kw7JXkBY0
 
「なんで……なんで!」
「おばあちゃんが言ってた。大切なのは、最後まで諦めずに立ち向かう事――」

 メビウスが、左足を軸に右脚を振り上げた。
 振り上げた右の脚に、黄金の輝きと、灼熱の炎と――眩き稲妻が宿った。
 仮面ライダーカブトの影をその身に重ねて、振り抜かれるキック。
 一撃必倒の威力を秘めた蹴りが、コーカサスの左肩に叩き落された。
 稲妻と、灼熱と、黄金の輝き。それらがないまぜになった光が、コーカサスを叩き伏せた。
 それでも、流石はカテゴリーキング。黙って倒されるつもりは無いらしい。
 その手に再び破壊剣を具現化させ、それを振り上げる。

「……っらぁ!!」
「夢と誇りをこの胸に……例え僅かな希望でも、勝利を信じて戦う事――」

 メビウスの右腕に装着されたナイトブレスから、光輝く金の剣が生成された。
 そして振り抜かれるは、歴戦の戦士によってのみ繰り出される太刀筋。
 ソルジャークラス1st・アンジールの影をその身に重ねて、光の剣が瞬いた。
 金の光となったメビュームナイトブレードが、刹那の内に破壊剣を切断。
 一切の歪みを許さない切り口から、金の光が溢れ出す。
 ∞の光を撒き散らしながら、消滅してゆく黒金の剣。
 自棄になったコーカサスが、その左腕にエネルギーを集約。
 それを突き出し、至近距離でメビウスに光弾を発射する。
 
「クソッ……!」
「信じる心……その不屈の心の強さが、不可能を可能にする――」

 両腕を掲げたメビウスが、その腕を胸の前でぶつけ合わせた。
 次いで、カラータイマーから放たれる光は、周囲の全てを飲み込む。
 天をも揺るがす高町なのはの威厳を、その身に宿らせて、放たれる光線。
 カラータイマーから放たれた光の波が、コーカサスの身を包み込んだ。
 メビウスの光が黄金の表面装甲を焼き尽くし、コーカサスの身体をよろめかせる。

「――それが、ウルトラマンだ!」

 体勢を崩し、崩れ落ちようとするコーカサス。
 その胸部に、メビウスが振り抜いた両の拳を叩きつける。
 両腕から爆炎を放出しながらのダブルストレートパンチだ。
 全員の想いを乗せたヒビノミライの放つ一撃が、コーカサスの胸部で爆ぜた。
 当然、装甲を焼き尽くされたコーカサスに、その一撃を受け切れる訳が無かった。
 爆発と共にコーカサスの身体は吹っ飛び、無様にアスファルトを転がった。

「畜生……畜生ぉぉぉぉ……!」

 よろめくキングと、微動だにしないメビウス。
 銀の視線と、緑の視線。二人の視線が交差する。
 無限にも思える刹那の後で、先に動いたのは、メビウスであった。

「皆さん、僕に力を貸して下さい!」

 共に闘う仲間への問いかけ。
 されど、その問いに対する答えは、最早説明するまでもない。
 彼らは今、メビウスの光と一つになった。力も、心も、願いも、一つになったのだ。

「ハッ!」

 その拳を、胸の前で打ち合わせた。
 赤のブレスと、青のブレスが、稲妻を放出する。
 赤の稲妻と青の稲妻が、両の腕を駆け巡る。
 どんな困難にぶつかろうと、諦めずに立ち向かった心の光。
 それが∞の軌跡を描きながら、今まさに新たな奇跡を起こさんと光輝く。
 メビウスの輪を思わせる∞の光が、左腕に赤の炎を増幅させ――次いで、左腕を掲げた。
 青の輝きが、鋭角的な直線を幾重にも輝かせる。右腕に宿るは、眩いばかりの心の輝き。
 そして――

47 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:36:28 ID:kw7JXkBY0
 
「シュワッ!」

 両の腕を、十字にクロスさせる。
 それは極限まで高められた究極の輝き。
 二つの光と、人間達の心の輝き。それらを限界まで増幅し、撃ち放った。
 放たれた光は、ゴールドの輝きと、ブルーメタリックの輝き。
 二色の極光は空気中で一つに交わり、夜の闇を吹き払って、邪悪へと迫る。

「なっ……うぉぉぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」

 キングの絶叫。断末魔の叫び。
 メビウスの黄金の輝きの前には、邪悪な黄金などくすんで見える。
 コーカサスアンデッドの持つ黄金の装甲が、焼き尽くされていく。
 メビウスの放った光を真っ向から受け止めて、只で済む訳がないのだ。
 しかし、不死のアンデッドたる存在を、そう簡単に倒せはしない。
 装甲を焼き尽くされ、その身体を焼かれようとも、キングは一歩も引き下がりはしないのだ。
 だけど、所詮それだけの事だ。今のメビウスを止める理由には成り得ない。

「私達はここまで、勝利を信じて共に闘って来た――!」

 突然殺し合いに巻き込まれて、突然人の死を見せつけられた。
 目の前で大切な友達を殺されて……目的を同じくする仲間も殺された。
 掛け替えの無い者を――仲間も、友達も、悪しき毒牙にかけられてしまった。
 何度も挫けそうになったし、何度も諦めかけた。何度も何度も、涙を流した。
 だけど、その度に励ましてくれたのは、ここに居る仲間達だった。
 そうだ。自分はもう、一人ではないのだ。どんな状況に立たされようと、その想いは共にあるのだ。
 散った者も、残った者も……皆、想いは同じ。ただ生き抜く為に、ここまで戦い抜いて来たのだ。

「ああ……残った参加者達の未来は今、俺達に託されているんだ!
 どんな困難にも、負けずに戦って来れた俺たちなら、絶対に守り抜ける――!」

 守りたい。ただ、守り抜きたい。
 その想いが強すぎるが故に、一度は闇に落ちた。
 全ての参加者を殺してでも、守るべき者を守ろうとした。
 しかしそれは、誰よりも愛深き故の――誰よりも優しい心を持ったが故の過ち。
 守ろうとした者は、もう居ない。されど、守ろうとした心は今でも共にある。
 最も愛する者が、最期に他の参加者を守って欲しいと願ったのであれば、迷う必要も無くなるというもの。
 ただ自分の正義に従うままに――全ての命を守り抜く為に、ここで悪を討ち滅ぼす。

「そうだ……俺達に叶えられない夢など無い! 辿りつけない未来も無い――!」

 戦う目的はただ一つ。
 アメンボから人間まで、総ての命を守り抜く事。
 共に過ごした時間はほんの僅かだが、そんな事は関係ない。
 例えこの身が朽ち果てようと、守るべき者の為、命を賭けて戦う。
 共に死線を潜り抜け、想いを重ねた自分達に、辿りつけない未来などあり得ない。
 ここに居る全員で、共に新たな未来を迎える為……今持てる、全力の力を出し尽くす。

「信じるんだ……僕達の力を! 僕達の未来を!」

 僕達の未来。無限に広がる、日々の未来。
 それを守り抜く為に……これからも守り続ける為に。
 未来を信じる心の光が、更なる力を与えてくれる。今ならば、どんな敵にも負ける気がしない。
 信じる心が、放出され続ける5人の魂の光を増幅させていくのが、自分達にも分かる。
 勝てる。一つになった今の自分たちなら、最強のアンデッドだろうが関係ない。
 メビウスの腕から放出される極光が、更に極大に膨れ上がり、コーカサスを襲う。
 スペシウムの熱線に晒され続けたコーカサスの身体には、やがて限界が訪れ――

 ――ドゴォォォッォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 耳を劈く轟音。
 身を焦がす熱風。
 全てを吹き飛ばす衝撃波。
 それらが一度に押し寄せてきて、メビウスの周囲を更地へと変えてゆく。
 爆発がアスファルトを粉々に砕いて捲れ上がらせ、周囲のビルを吹き飛ばす。
 されど、メビウスは微動だにしない。今更その程度の衝撃で吹き飛ばされるメビウスではないのだ。
 だが、逆にコーカサスはどうか。これだけの爆発エネルギーを直接浴びて、無事で居られるだろうか。

「勝った……」

 一つになったメビウスの中で、誰かが呟いた。
 考えるまでも無い。これだけの大爆発を巻き起こして、無事で居られる訳がないのだ。
 それも爆心地に居たとあれば、尚更助かる可能性は低いと言える。
 もしもこれでまだ生きていたとするならば、正真正銘の化け物――

48 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:37:18 ID:kw7JXkBY0
 
「いや……まだだ」

 ぽつりと、誰かが呟いた。

「え……まだって、どういう……」
「奴はアンデッドだ。カードに封印するまで、死ぬ事は無い」

 しかし悲しいかな、それが事実。
 アンデッドの王たるキングの恐ろしさは、その怪力だけではない。
 その不死性も、またキングを化け物たらしめる由縁であるのだ。
 やがて、爆心地の視界を覆っていた爆煙が、少しずつ晴れて行った。
 周囲で轟々と燃えあがる火炎。吹き付ける熱風が、嫌に気持ち悪いと感じた。

「は……はは……まさか、ここまでやるなんて……思わなかったよ」
「キング……!」

 最初に口を開いたのは、キングであった。
 黄金の鎧を身に纏ったその姿に、最早先程までの威厳は無い。
 変身状態を保って居る事すらままならないらしく、半分近くは変身が解けていた。
 風に煽られる赤いジャケットが見えたかと思えば、すぐに黄金の外骨格に代わる。
 黄金の外骨格が見えたかと思えば、それは赤のジャケットへと変わる。
 カブトムシの顔と、若い少年の顔。その二つを交互に顕現させながら、キングが嘯いた。

「でも残念だったね! 僕はアンデッド! 絶対に死ぬ事は無いんだ!
 今のお前らに、僕を倒す手段は無いって事! はは……はははははは!!」

 無邪気な笑顔に、最早余裕は感じられない。
 口元からは溢れ出す大量の緑。痣だらけになった顔は見るに堪えない。
 だが、それでも。その不気味な瞳は、未だに諦めてはいなかった。
 ギラギラと、邪悪な光を宿らせて、不敵に笑い続ける。
 これが、絶対に死ぬ事は無い化け物の余裕。

「そんな……! ここまで戦って来たのに……!」
「もう、奴を倒す方法は無いのか……!」

 何度打ちのめされても、挫けずに立ち上がった。
 絶対に守り抜く。その想いを一つに重ね戦い抜いてきた。
 そしてようやく、強敵を討ち倒すだけの力を手に入れた。
 だけど、それだけでは駄目だ。負けは無いが、勝利も無い。
 否……ここで奴を取り逃がせば、もっと大勢の人間が苦しむ。
 その点で言えば、ここで逃げられる事は、負けに等しい。
 不死生物を倒すには、覚悟だけでは足りないのだ。

「皆さん……ここは、僕が行きます。皆さんは、先にここから――」
「お前一人で、何処に行くつもりだ」

 メビウスの光の中で、二人が向き合った。
 揺るがない決意に満ちた表情のミライ。
 それを責めるような瞳で睨み付ける天道。
 緊迫した空気の中、先に口を開いたのはミライであった。

「僕が最後の命の炎を燃やして、キングをこの世界から消滅させます」
「待て……何をしても死なない相手に、そんな事が出来るのか?」
「僕には、ウルトラマンキングから授かったナイトブレスと、皆から貰ったこの光がある。
 僕の持てる全てを奴にぶつければ、不可能な事なんてきっとありません」
「ミライ君、一人で行くつもりなの……?」

 アンジールとなのはが、次いでミライに質問する。
 全てを超越したウルトラマンキングの力。それと、限界をも超える心の光。
 それら全てを炎と燃やし、キングを存在ごと焼き尽くそうと言うのだ。
 そうすれば、確かに如何に不死生物であろうと、一たまりもないだろう。
 だが、それと引き換えにミライの命は――

49 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:37:49 ID:kw7JXkBY0
 
「皆さんは、僕の生きた証です。どうか、全員でここから脱出して下さい」

 ――散る。
 ここで、キングと心中するつもりだ。
 撃破不可能である筈のキングを消滅させる代償として、自分の命を燃やし尽くすつもりなのだ。
 だが、それでも……ミライの想いを受け継いでくれる人間が、三人もいる。
 きっとこの三人は、最後まで諦めずに困難に立ち向かい、未来を切り拓くだろう。
 そうして、残った参加者を。無限に続く未来の可能性を、守って欲しい。
 だから、ミライはゆく。たった一人でも、もう一人ではないから。
 今のミライは、皆の想いと共にあるから。
 だからもう、何も怖くない。
 怖くはない――。

「悪いが、断る」
「天道、さん……」
「俺達はここまで、共に闘って来た。そして、不可能を可能にした」
「アンジールさん……」
「一人じゃ無理でも、私達全員が力を合わせれば、出来るかもしれないでしょう?」
「なのはちゃん……」

 天道が、アンジールが、なのはが。
 それぞれ全員が、ミライの瞳を強く見据える。
 その表情には、一切の憂いも陰りも感じられない。
 皆が皆、全員でここから生きて帰るつもりなのだ。

「でも……! ウルトラダイナマイトは、何万年と生きるウルトラ族でも寿命を縮めてしまう技なんです!
 そんな技を人間の皆さんが一緒に使ったら、本当に死んでしまいます!」
「ほう……それは恐ろしいな。だが、だからってなんだ?」
「えっ……だからって……!」

 そう。ウルトラダイナマイトとは、命の炎を燃やして、敵にぶつける最大の大技。
 これを編み出したウルトラマンタロウですら、あまりの反動に技自体を封印した程なのだ。
 ダイナマイトを使用したとあれば、タロウやメビウスですらも命を縮めてしまう。
 そのリスクを背負ってメビウスが習得したのが、メビュームダイナマイト。
 普段ならバーニングブレイブ時に使用する技なのだが、先程は仕様に失敗。
 だが、不死鳥の勇者となった今ならば、どんな相手だろうが焼き尽くせるだろう。
 そんな大技を、残りの命を燃やし尽くして使用するのだ。反動が無い訳がない。
 しかし、それでも彼らの表情は揺るがなかった。

「私達は、全員で生きて帰るって言ったんだよ、ミライ君」
「ああ。誰もここで死ぬなんて言ってない」

 なのはの言葉に、アンジールが続けた。
 言った筈だ。ここから、生きて全員で帰ると。
 その為にも、自ら命を散らそうとする仲間を放っておく訳には行かない。
 故に、なのはも、天道も、アンジールも、きっと一歩も引き下がらないだろう。

「分かりました……でも、危険になったら、すぐに皆さんを分離させます」

 ここに一同の想いは再び一つとなった。
 揺るがない決意。曲げられない信念。
 それらを胸に、覚悟完了。
 この場にいる全員で、生き残る為に。
 無限に続いていく、新たな未来を切り拓く為に。

「行こう、皆……!」

 メビウスが、その両腕を広げた。
 右に蒼の輝き。左に赤の輝き。黄金の光が二つの光を繋ぎ合わせる。
 全身に描かれた赤と青の約束の炎が、灼熱の炎となって燃え盛る。
 太陽フレアの如き爆発を巻き起こしながら、灼熱はメビウスの身体を覆った。
 やがてメビウスは炎の弾丸となり――次いで、その形を形成して行く。

「はは……今度は、何をする気だよ……!」

 極大の火球となったメビウスが、その形を変えて行く。
 周囲の全てを焼き尽くさんと、拡げられた一対の翼。
 燃え広がる爆炎。悪を焼き尽くす灼熱。奇跡を起こす勇気の炎。
 それは不死鳥の翼の如き、雄々しき炎。
 このエリアの全てを炎と変えて、燃え上る勇気の不死鳥が、雄々しき雄叫びを上げた。
 やがて炎は――一瞬の内に、キングを飲み込んだ。

50 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:38:21 ID:kw7JXkBY0
 




 冷たい風が、頬をくすぐる。
 高町なのはは、己の身を抱きよせるようにしながら、目を覚ました。
 殺し合いの会場とは言え、夜の気温は薄着で眠るには少し肌寒い。
 結果として、熟睡に至る前に高町なのはを目覚めさせたのは、夜の風だった。

「ここは……?」

 周囲は、見渡す限り瓦礫の山であった。
 原形を留めた建造物など、この場所を中心に直径1キロは存在しないように思えた。
 何もかもが壊された廃墟の山。街に降り積もる煤けた灰。
 そのどれもが、先刻までの戦闘の激しさを物語っている。

「キングは……皆は……!?」

 そうだ。全てを思い出した。
 自分はつい先刻まで、仲間達と共に戦っていたのだ。
 共に一つの光となって、悪の権化たるキングと戦っていたのだ。
 未だ靄が掛ったような思考を振り切って、全ての記憶を取り戻してゆく。 
 まずは仲間達の安否。これは最優先で考えなければならない。
 ヒビノ・ミライ、天道総司、アンジール・ヒューレー。
 出会ったばかりとは言え、掛け替えの無い仲間だ。
 その姿を求めて、周囲の瓦礫をもう一度見渡す。

「天道さん……!」

 やがて見付けたのは、一人の仲間。
 瓦礫の影に横たわっていた仲間の元へと駆けより、その身を起こす。
 脈は正常。顔色は悪いが、瓦礫によるダメージも見受けられない。
 それは偶然か、まるで天道を避ける様に瓦礫が散乱していたからだ。
 この分ならば大丈夫だろう。最初に出会った頃と比べれば、幾分かマシだ。
 次に、あとの二人の仲間の捜索を開始。
 程なくして、天道と同じ様に横たわるアンジールを発見した。

「アンジールさん……!」

 即座に駆け寄り、その安否を確認する。
 アンジールの戦いは、天道やミライのそれとは決定的に違う。
 カブトやメビウスに変身した彼らと違って、アンジールは生身で戦っていたという事。
 それ故に肉体へのダメージも大きかったらしく、やはり天道よりは重症に見えた。
 全身を血で汚したその身体を何とか起きあがらせ、脈を取る。

「まだ生きてる……早く手当をしないと……!」

 ボロボロに痛めつけられてはいるものの、まだその命は燃え尽きてはいない。
 早く何処かへ運んで治療すれば、助かる可能性は十分にある。
 だが、現状では傷ついた二人を連れて移動する手段がない。
 まずは天道とアンジールの二人に治癒魔法を行使し、最低でも歩けるようにならなければならない。
 天道が回復すれば、二人で協力してアンジールを治療出来る施設まで運べばいい。
 ……と、そこまで考えて、なのはは一つの事実に気付いた。

「ミライ君が……居ない?」

 そう。何処を探しても、ミライの姿が無いのだ。
 先程までここに居た仲間達の中で、ミライだけが居ないのだ。
 否。ミライだけではない。この場から、ミライと共に消えて無くなった男が居る。
 先程まで自分達を散々に苦しめ、最期の最期まで減らず口を叩き続けた男。
 スペードのカテゴリーキング……名前は、キング。

「そうだ……あの時……」

 そして、全てを思い出した。
 メビュームフェニックスとなって、キングを飲み込んだ直後。
 あの灼熱の炎の中で、何があったのかを――。

51 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:39:00 ID:kw7JXkBY0
 




 これ以上、キングに無駄な殺戮をさせない。これ以上、誰も悲しませない。
 その為にも、揺るがぬ悪……怪人キングを、この世界から完全に消し去る。
 絶対に死なず、消滅もしない不死生物。その法則を無視し、不死生物を消滅させるというのだ。
 簡単な事では無い。それこそ、あらゆる物理法則を無視出来るだけの力がないと不可能だ。
 そして、それを成す為の力が、不死鳥の勇者――メビュームフェニックス。

 燃え盛る炎となったメビウスが、キングを飲み込んだ。
 周囲の建物を焼き尽くし、崩壊させてゆく。まさに、圧倒的灼熱。
 と言っても、それくらいは出来て当然。これは光となった者達の、魂を燃やした攻撃なのだ。
 自分の命と魂の炎を燃やし尽くして、悪を焼き尽くす――。
 その衝撃が、生半可なものである訳がない。

 しかしながら、キングもさるもの。
 本来ならば不死であるが故に、その執念も相当のものであった。
 炎の不死鳥となったメビウスがキングの身体に組み付き、その炎で焼き尽くさんと迫る。
 黄金の装甲は全て煤と消えた。剥き出しにされた、鈍くくすんだ黒金の筋肉。
 こうなったキングは最早、裸の王様も同然だ。
 しかし、それでも王は王。

「無駄だよ! 僕は死なないって言ってるだろ!」
「それでも、お前をこのまま野放しには出来ない!」

 自分の命と引き換えに、魂の炎を燃やす。
 ミライの絶叫と共に、メビウスの身を包む不死鳥の炎が更に熱く燃え上った。
 よもやキングも、不死である自分を消滅させようとしているなどと思いもよらぬ事だろう。
 だからこそ、キングにはここまでして自分を苦しめようとするミライ達が理解出来ずにいた。

「なんだよ、死なないって言ってるのにさ……!
 結局お前たちも僕を苦しめたいだけなんじゃないか!
 何が正義の味方だよ、この偽善者共が……!」
「それでも善だ……! お前を倒せるなら、今は偽善者だろうが構わない!」

 メビウスの炎の中で、アンジールが絶叫した。
 キングには、クアットロを殺された。愛する者の命を、まるで玩具を壊すかのように奪われた。
 家族を奪われたという辛い事実が、アンジールにこの上ない程の愛憎を抱かせる。
 だけど、今はもうそれだけでは無い。それだけで済むレベルの話では無くなって居るのだ。
 こいつを逃がせば、これからも大勢の命が弄ばれるに決まっている。
 二度とクアットロの様な犠牲を出さない為にも、こいつだけは倒さなければならないのだ。
 その為ならば、例え偽善者だなどと罵られようが構う事は無い。

「倒す? 無理だって! 勝機が無いって分かってるのに!?」
「例え勝機は無くとも、希望はある!」
「そうだ! 希望がある限り、俺達は諦めない!」
「そして諦めない限り、僕達の可能性は無限大なんだ!」

 信じる心が、不可能を可能にする……それが、ウルトラマンだ。
 例え本来ならば不可能であったとしても、希望がある限り絶対に諦めはしない。
 諦めない限り、ウルトラマンと、ウルトラマンが信じた人間の可能性は、無限大。
 ミライの絶叫と共に、不死鳥の炎がキングの身を焼き焦がして行く。
 キングの身体が、少しずつ粒子と消えて行く光景。

「お前ら……まさか!? そんな、ありえない! だって、僕はアンデッド――」
「これが私達の……人間とウルトラマンの、心の光の力なんだよ、キング……!」
「あり得ない! 不可能なのに……! こんな力……お前たちこそ化け物じゃないか!」
「違う――!!」

 絶叫される、圧倒的な否定。 
 この力は、化け物の力などではない。
 ただ奪う為に振るわれる、暴力的な力などと同じであってはならない。
 これは、人の心の光が重なって生まれた新たな力。
 そして、その使い方は――

52 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:39:32 ID:kw7JXkBY0
 
「――未来を切り拓く力だっ!!」

 いつの日か、人間がウルトラマンと肩を並べて宇宙を飛べる日が来るまで。
 そんな未来が訪れるまで、ウルトラマンは人間達の心の光を信じ続ける。
 その為にも、こんな所で散っていい筈の無い命を、守り抜く為の力。
 信じた皆が一緒に居てくれる。だから輝くこの力。だから燃やせるこの命。
 最早この力に、不可能などあり得ない。

「あぁそっか……もういいよ! もうつまんなくなっちゃった!
 そんなに僕を消したいなら、お望み通り消えてあげるよ!」

 緑の血液を吐き出しながら、キングが嘯く。
 その声には、再び喜色が込められていた。
 まるで、新しい興味を見付けた子供の様に。

「でも、僕一人では死なない! お前らの心も連れて行く!」

 高らかに宣言し、キングがメビウスの肩に掴み掛った。
 最早、キングに残された力は残り少ない。
 装甲も武器も全て消失した今、戦力となり得るのはこの身体一つ。
 それでも、メビウスの身体に組み付いて、最期の足掻きを見せる。
 キングの身体から、アンデッドとしてのエネルギーが溢れ出した。

「お前が守りたかった人間たち、皆僕と一緒に逝っちゃえよ!」

 メビウスとなって戦う四人と一匹の間に奔る、緊迫。
 コイツはもう、生への執着を捨てている。
 元々“命を大切にする”など考えもしない男だったのだ。
 自分の命がここで消えると知った所で、それ程の執着はない。
 ただし、悪質な事に自分一人で死ぬつもりもないらしい。

「私達全員で生きて帰るって約束したんだ……! こんな所で――」
「無理無理! 僕だって命がけなんだ、お前らだけ生き残れると思うなよ!」
「そんな事は……させない! 皆の命は、僕が守る!」

 刹那、メビウスの中で、三人は感じた。
 自分達の意識が、徐々にミライから離れて行く事に。
 そして気付く。ミライが今、何をしようとしているのかに。

「総司さん。アンジールさん。なのはちゃん。フリード。
 ここまで僕と一緒に戦ってくれて……本当にありがとうございます!
 皆さんが居てくれるなら……僕はもう、何も怖くありません」
「やめろ、ミライ! 今際の言葉など聞きたくない……!」

 天道が、メビウスの光の中で手を伸ばした。
 だけど、その手は何も掴めず、ただ空を掴むのみ。
 次第にミライの光から、後の全員の意識が遠のいていくのが、自分達にも分かる。
 だけど、ここで意識を手放せば、掛け替えの無い者を失ってしまう。
 それが分かっているから、少しでも抵抗しようとする。

「本当に、ありがとうございます……皆さん!」

 されど、それ以上の抵抗は無意味であった。
 刹那、メビウスの身体から炎とも光ともつかない弾丸が飛び出した。
 メビウスの身体から強制的に射出されたその光は、メビウスの後方へと撃ち出された。
 それらは、キングの視界の奥でそれぞれの形を取り、三人の人と、一匹の竜の形を形成。
 全員で一緒に不死鳥となって、キングを倒す。
 その為に心を重ねたのに……今、彼らの心はもう一度離れ離れになった。
 それが何を意味するか。そんな事は、キングにもすぐに理解出来た。

「お前まさか……たった一人で死ぬ気で……!」
「これは“死”じゃない! 皆の命を……! 皆の未来を守る為の……!!」

 少しずつ、少しずつ。炎とメビウスが一つになって行く。
 何処までがメビウスで、何処からが炎なのか。その境界が揺らいでいく。
 それはまさしく、メビウスの身体が炎の中へと溶けて行く様に。
 やがて形を失い、黄金の光と灼熱の炎の境界が完全に消失。
 同時に、爆発的な灼熱がメビウスを起点に発生する。
 黄金の輝きを含んだ炎は、一気にキングの身を焼き尽くさんと燃え盛る。
 同時に、周囲のあらゆる建造物を巻き込んで、何もかもを灰に変えて行く。
 されど、守ると誓った仲間達には、瓦礫の一つたりともぶつけはしない。
 意識を失い横たわる仲間達へと迫る瓦礫や火の粉を、メビウスの輝きが振り払う。
 最期に残った力で、キングを焼き尽くし、仲間達を守り抜く。
 無限大の可能性を、未来へとつなげる為に。

53 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:40:11 ID:kw7JXkBY0
 
「やめろよ……お前、何処まで面白くない奴なんだよ……! なんで、こんな事……!」
「僕達ウルトラマンは、これからもずっと人間と共に歩んで行くと決めたんだ!
 その為にも! 人間と共に歩んで行く未来の為にも! ここで皆をやらせる訳には行かないんだ!」

 これからもずっと……ウルトラマンは、人間と共にある。
 例え人間の心の中から闇が消えないとしても、その心には確かな光がある。
 心の中に、光と闇を両方抱いて、それでも走り続けるのが人間だ。
 どんな矛盾を孕もうが、そこに存在し続ける。生きる意志を持って、未来を目指す限り。
 そして生きている限り、彼らが信じた人間たちの心の光は無限の可能性を持っている。
 そんな無限の未来を守り抜く為にも、大切な仲間達をここで死なせる訳には行かないのだ。

 その為なら、自分が犠牲になろうと構いはしない。
 ここで出会った大切な仲間達が、ミライの意思を継いでくれる。
 どんな困難であろうと、こんな殺し合いをブチ壊して、皆で脱出してくれる。
 そうしたら、彼らはきっと、もっと多くの命を守る為に戦ってくれる事だろう。
 だから、ここで命を燃やし尽くす事に、何の躊躇いも感じない。
 今度こそ本当に――もう何も怖くは無かった。





 不死生物は、絶対に死なない。
 絶対に消滅する事も無いし、絶対に壊れる事も無い。
 確か、自分達はそんな命を与えられていた筈なのに――。

(あれ……僕は……)

 最早キングの身を守るものは何もない。
 最高の盾も、最強の剣も。黄金の鎧も、鋼鉄の仮面も。
 それだけじゃない。今はもう、この身体すらここには無い様に感じる。
 もう自分には、何も残されてはいない。何もかもが無くなった。
 圧倒的な虚無感が、キングの心を覆っていく。
 が、それは一瞬。すぐにキングの心を、黄金の光が照らして行く。

(嗚呼、なんだよこれ……綺麗だなぁ)

 最早、何処から何処までが自分の意識なのかも分からない。
 黄金の光と灼熱の炎に包まれて、キングの意識も溶けて行く。
 走馬灯の様に流れ込んでくるのは、アンデッドとしての一万年の記憶。
 それから、数万年をウルトラマンとして生きて、大切な事を地球で学んだ男の記憶。
 何もかもの境界が無くなって、一つに溶けて行く姿は、見た事も無い程に美しかった。
 最期にこんな綺麗な光景が見えるなら、これはこれで良かったのかな、なんて柄にもない事を考えてみる。

 もう自分は、カードに封印される事は無い。
 無限に続く牢獄の様な苦痛を、もう感じなくてもいいのだ。
 何故なら自分は、ここでメビウスの光と共に虚無へと還るのだから。
 やがて自分で何かを考える事も無くなって行く。
 意識が溶けて、少しずつ消失して行くのだ。
 そして間もなく、完全に消えて無くなる。

 黄金の光と灼熱の炎が完全に消える頃には――。

54 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:40:43 ID:kw7JXkBY0
 











【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード   消滅】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは  消滅】
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS   死亡確認】















「ありがとう」

 ここに、感謝の言葉と共に、決別を告げた少女が一人。
 瞳に涙を浮かべて、心と身体に傷を負って。それでも、立ち上がる。
 未来を守る為に戦い、無限の光の中で散った男を、なのはは忘れない。
 例えどんな苦しい戦い経ても、どれだけの時間が経っても。
 嗚呼、例え悠久の時が流れようと、絶対に――彼の名前を忘れてはならないのだ。
 自分達を生かす為に犠牲になった男の名前を、まだ若い心に刻みつけて。
 これから無限に続いていく日々の未来を、なのはは生き抜いていく。



【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、弁慶のデイパック(支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER)
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
 1.天道とアンジールを回復させる。
 2.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
 3.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
【備考】
※金居を警戒しています。紫髪の少女(柊かがみ)を気にかけています。
※フェイトとはやて(StS)に僅かな疑念を持っています。きちんとお話して確認したいと考えています。

55 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:41:15 ID:kw7JXkBY0
 

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)
【装備】無し
【道具】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.……(気絶中)
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました


【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:……。
 1.……(気絶中)
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。

56 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:45:31 ID:kw7JXkBY0
投下終了です。
どうせ没ネタなのでもうやりたい放題やりました。
もうこのロワでウルトラマンを書ける事もないだろうから、
ウルトラマンメインでやりたかった事を全部詰め込んだ感じです。
キングの圧倒的強さとか、メビュームフェニックスでアンデッド消滅とか、
設定的にも結構無理矢理だけど気にしない方向で。だってどうせ没ネタなんだもの!

あと専ブラが使えなくなってたので、レス毎の改行が結構適当かもしれません。
一応タイトル案はあるので、没ネタとしてウィキに収録する際にはタイトルもつけておこうと思います。

57 ◆gFOqjEuBs6:2010/11/10(水) 11:46:50 ID:kw7JXkBY0
あ、一応上げておきます。
多分このスレ割と影薄いと思うので……。

58リリカル名無しStrikerS:2010/11/10(水) 13:44:14 ID:Ekndb2WQ0
投下乙です。
すげぇ派手なバトル……というかキング倒すだけでここまで派手な事するとは……(幾ら回復能力があったとはいえ)メビウスとカブト犠牲にしてというのが……ある意味本当に没ネタだからやりたい放題だなぁ……

でも、ここまで派手なキング退場劇描いてしまって本編でこれ以上の事出来るのか???
というかキングの圧倒的すぎる強さは『没ネタだからこうなった』ですよね???
つかそうじゃなかったら真面目な話対主催終わりだぞ!?


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