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魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第99話

1名無しさん@魔法少女:2009/05/30(土) 16:59:12 ID:ypqjhtEM
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所の2スレ目です。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第98話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1238819144/

221例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 10:58:15 ID:xrGpzVwE
「……なんか、悲しくなるなぁ」
 見栄えとしては大変よろしくない感じである。まあ、これなら入るだろう、と納得しておく。
「ま、待って!」
 しかし、肝心のなのはからストップがかかった。その顔は、どこか思い詰めているようで。
「わ、わたし……ユーノくんを、ご主人様を、ちゃんと、ぜんぶ……感じたい。だから、おっきいの……
おっきいままのが、欲しい、です……」
「なのは……」
 はしたないことを言っているという自覚があるのか、紅く染めた顔を俯けて、最後のほうはほとんど聞き取れないぐらい、
声は小さい。それでも、そこには深い想いが込められているのがわかる。
 どうしてこの子は、僕なんかのことを、ここまで――。
 恐くて、訊くことはできないけれど。その気持ちに、応えたいと思った。
「じゃあ……とりあえず、このまま入れて。ちゃんと入ってから、変身を解除していくってことで……どう?」
 やっぱり、元のサイズで入るとは思えない。この提案が妥協点だった。この方法なら、なのはの言う「ぜんぶ感じたい」を
満たせるはずだ。
「……じゃあ、それで、その。お願い、します」
 少し不満そうではあったが、特に我侭を言うこともなく、なのはは納得してくれた。
「どっちにせよ、痛いのは変わらないだろうから……なのはには、我慢してもらわないといけないんだけど」
 なのははおずおずと、だいじょうぶ、と頷いて見せた。
 もう一度、なのはをそっとベッドに寝かせて、足をM字に開かせた。恥ずかしそうではあるが、文句は言わない。少し乾いて
しまっている秘所を、指で軽く弄ると、喘ぎ声と一緒にすぐに潤いを取り戻した。
 なのはの方の準備は、十分すぎるほどに整っている。ユーノもさして変わらない。これまでのなのはの痴態に、ずっと、
痛いぐらいだったのだから。
「じゃあ、いくよ」
「は、はい」
 小さくなった自分のモノを、なのはの割れ目へと当て……そのまま、押し込んだ。
「あっ、んん!」
「くぅ……と、とりあえず、入ったよ」
 サイズが小さくなったとはいえ、感度はそのままだ。別段キツいというほどでもないが、あたたかく、やわらかいなのはの“中”は、
それだけで果ててしまいそうな快感をもたらしてくれる。
 男の意地としては、完全に変身を解除し終えるまではなんとかして耐え抜きたいところなのだが。
 意を決し、ユーノは先ほどの変身魔法を逆プロセスに再構築し、解除の準備を整える。
「それじゃ、今から変身を解除していくよ」
「うん……きて、ご主人様……」
 小さくなったモノは、ちょっと動いただけでも抜けてしまいそうになる。腰をいっそう密着させ、腰だけでなく、なのはから
離れないように、ぎゅっと抱きしめる。応えるように、なのはのほうからもユーノを抱きしめ、脚を腰に絡ませてくる。
 最初は、ほんの少しだけ。
「あっ……い、いま、おおきく……はぁ、ん……」
「う……こ、これはちょっと……ヤバいかも……」

222例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 10:59:04 ID:xrGpzVwE
 なのはからの締め付けが強くなった、というのは錯覚で。しかし、結果としては同じだ。まだまだ小さいままなのに、これほどとは。
この方法、挿入自体は楽でも、入れた後は普通にやるよりかなりキツいのではないか。気付いたところで、すでに後の祭りだった。
引き下がるわけにもいかず。
 ユーノは、変身解除を続行する。
「あ、あ、ああっ……なにっ、なにこれぇ……っ!」
「く、うっ……なのは、動かないでっ」
 突き入れる感覚、突き入れられる感覚を知らない2人だったが、“これ”がそれらとは全く違うものだということはわかった。
 特に、なのはのほうは――
「や、あっ、はぁ! すごっ、これすごいよぉ! んっ、んんん……っ!」
 閉じられていた秘裂とその深奥を、その手の責め具を使ったわけでもなく、愛する彼のモノによって“中”から押し拡げられていく感覚。
 それは、何者の侵入も許したことのないなのはの蜜壷が、ユーノの形に拡げられていくということだった。これからずっと、
彼のモノだけを受け入れるための、彼のための形に変えられていく。
 全てが、ユーノのものになっていく、感覚。
 こんな感覚を味わえる女が、こんな形で処女を喪う女が、広大な次元世界のなかにも、どれほどいるだろうか。
「わたっ、し、わたし、だけ……っ! こんなの、きっと、わたしだけ、だよぉ……!」
「な、のは……っ」
 誰を相手にでもなく覚える、強い優越感。
 わたしだけ。わたしと、ユーノくん、だけ。
 どんな方法だろうと初めてである以上痛みはあるだろうに、それは強力な媚薬となって、なのはの痛覚を麻痺させる。
 ユーノのほうは、すでに限界が近かった。
 ただでさえ狭いなのはの中は、締め付けてくるだけでなく、段々と元の形を取り戻していくユーノのモノに、
絡みついてくるかのような感触を与えてくる。
 それ以前の問題として、圧倒的に経験が足りていない。ユーノだって初めてなのだ。だけど、なのはの前で
格好悪い真似はしたくないし、そもそも中で出すのは問題が――
「あうっ、は、んんっ、ん、んはぁっ! はあっ、あ、あっ、あぁぅ!」
「つぅ!?」
 不意に、背中に痛みが走った。自分の中で大きくなっていくユーノのモノに翻弄されるなのはが、無意識のうちに
爪を立ててしまったのだ。
 さしたる痛みではなかったが、ユーノは一瞬、その突然の痛みに注意を奪われた。
 その一瞬が。
「あっ、うわ、やば……っ!?」
 自らのモノに意識を集中して、必死に耐えてようやく保っていた均衡。それが、崩れる。
「ごめん、なのはっ! 一度……!?」
 一端抜こうとして、ユーノはすぐにそれが無理だと悟る。なのはの脚が、腰に絡みついたままだ。
「なのは、離し……んんっ!?」
 離して、と。そう言おうとした口は、なのはの唇によって塞がれた。逃れようとして、伸びてきたなのはの舌が、ユーノの舌を絡め取る。
 間近に見える、淫欲に濡れたなのはの瞳が、言っていた。

 ――いいよ。

 限界が、訪れた。

223例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:00:02 ID:xrGpzVwE
「くっ、うう……っ! あ、はぁっ、あぁ……」
「あ、ん、ぅん……っ、ああ、な、なんか……あたってる、でてるよぉ……」
 ちょうど、変身後と元の大きさとの中間程度か。最奥にはまだ達していないはずだった。
 だというのに、この開放感。情けないやら何やらでユーノは死にたい気分になる。そもそも、それ以前に。
「ご、ごめん、なのは! 中で……」
「ん……だいじょぶ……」
 汗で肌に張り付いた前髪を払いながら、なのはは微笑を浮かべる。
「わたし、まだ……だから……」
「あ……そ、そうなんだ」
 考えてみれば、1年一緒にいてなのはがそういう素振りを見せることはなかったような気がする。年齢も年齢だし、
別におかしなことではない――というか、どうしてそんなふうに思い込んでいたのだろう。そっちの方が不思議になる。
 まだ、躊躇があるのだろうか。だから、なんだかんだと理由をつけて。
「だから、ね」
 なのはの小さな手が、ユーノの頬に伸びる。そっと、撫でるように触れて。
「……いっぱい出して、いいからね。えと、その……ユーノくんの、まだ、元気だし」
 入ったままのユーノのモノは、一度精を吐き出してなお、その硬さを保っていた。締め付けてくるなのはの肉襞が、
力を失う暇さえ与えてくれないのだ。むしろ、なのはの言葉に、より硬度を増したような気さえする。
 恥じらいはあっても、躊躇はない、なのはの態度。そこにはもう、行為を始める前の切羽詰まった様子はなかった。
上手くできたなんて自信はまるでないけれど、それでも少しは、なのはの不安を取り除くことができたのだろうか。
「……ごめんね、なのは」
「んー……? どうして謝るのー?」
 いつもの無邪気な笑顔で、小さく首を傾げて。そんな、幼いと言って過言ではない少女と交わろうとしている、交わっている自分。
 謝罪に意味はない。意識したわけでもなく、口から出ていた。きっとそれが、最後の躊躇い。
「ううん、なんでもないよ」
 ユーノは、笑顔で応えて。もう一度、なのはを抱き締める。
「……続き、しようか」

 ☆☆☆

 締め付けの強さとそれがもたらす快感は変わらないが、一度出したせいか、さっきまでと比べて余裕がある。なるべく
なのはが痛い思いをしないで済むように、ユーノはゆっくりゆっくり、己のモノの変身を解いていく。
「ん、んん……っ、 は、あぁん、あ、ああっ」
「う、ううっ……くぅっ」
 あるいは、2人が交わっている場所以上にキツく、強く、お互いを抱き締めるユーノとなのは。必然、相手の首筋に顔を
埋めるような形になる。互いに相手のにおいを強く感じて、興奮がより高まっていく。
「はっ、うく……! なのは、なのはっ、あと、ちょっとだからっ」
「あん、ん、ゆーのくん、ぅあ、はぁう、いっきに、いっきにきて、いいよっ! 
ゆーのくん、の、あん、いちばんおっきいの、ちょうだいっ」
 その、なのはの言葉が引鉄だった。
「くっ、うああっ!」
「あっ、ああ……っ! くるっ、くるよ、ゆーのくんのっ! 
んはっ、あっ、わたしの、なかぁ、やぁん、ゆーのくんっ、あふぅ、ゆーの、くん、のぉ! 
ゆーのくんの、かたちに、なってくよぉ……っ!」
 変身魔法をかけた状態のモノは、ユーノには薄い膜で覆われているようにも感じられて。早く、直接、自分自身でなのはを感じたくて。
 残っていた術式の全てを、一瞬で解除し――それはもはや、“破壊”に近い――、本来の姿を取り戻す。

224例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:01:04 ID:xrGpzVwE
 何かを突き破るような、感触。
「あ、はあっ、あぁんんんっ! つぁ、は、うぅ!」
「う、わ……あ、ああ……っ! は、ぁ……これが、なのはの……」
 ついに、変身魔法は完全に解除された。
 強い締め付けと、絡みついてくるかのような肉襞。気持ちいい、そう表現していいか迷ってしまうほどの強い刺激を感じる。
 なのはの様子が気になって、抱き締めたままだったその身体を離し、入れたモノが抜けてしまわないように気をつけながら
――なのはの秘裂がユーノを咥え込んだまま離そうとしないから、その心配はなかっただろうけど――、身体を起こす。
「なのは……?」
「は、あ……はぁ、はぁ……ん、なぁに……?」
 ほんのりと桜色に染まった肌と、その上に浮かぶ汗。荒い息と、それに合わせて上下する胸。肌に張り付く髪と、髪がかかった
その下から見上げてくる潤んだ瞳。
 全てが美しく、同時に妖艶でもあり、そして、愛おしかった。
 そんな彼女と、今、繋がっている。
 照れ臭くなって、ユーノはつい視線を俯けてしまう。そうすると今度は、まさになのはと繋がっている部分が視界に入って、
余計に気恥かしくなった。
 それと同時に、どうしたって避けられない現実も、見えてしまう。
「えっと、その。痛く、ない……?」
 2人が繋がる場所にユーノが見たのは、溢れるようにそこを濡らすなのはの甘蜜と、さっき不覚にも吐き出してしまった自身の精と、
その中に混じる、鮮烈な赤。
 隙間なんてあるとは思えないほどなのに、しかし現実に零れ出ているそれらは、織り混ざってピンクに近い色をなしている。その色は、
綺麗なように見えて、同時に痛々しさを感じさせた。
「ん、と……たぶん、いたいんだと思うけど……なんか、あたま、ボーっとして……よく、わかんない……」
 えへへ、と、なのははどこか照れ臭そうにして笑う。
「ユーノくんが、いっぱい……きもちよく、してくれたから……」
 なのははそう言って、自分の下腹部あたりに手をおいて、そっと撫でた。
「ふしぎな感じ……わたしのからだなのに、わたしの中に、ユーノくんがいる……」
 なのはの言いたいことが、ユーノにもなんとなくわかった。
 局部だけでなく、全身をなのはに包まれているかのような、不思議な一体感。決して不快などではなく、むしろ、
ずっとこのままでいたいと思えるほどに、身体と、それ以上に心が満たされている。
 これがセックスだと、男女の交わりだと、契りを交わすことだというのなら、なんて、ああ、なんて――すばらしいのだろう。
 そして、2人は知っていた。誰に教えられたわけでもなく、本能的に。
 まだ、この先があることを。

225例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:01:46 ID:xrGpzVwE
「ひっ、あ!」
 ユーノが、ゆっくりと腰を引く。
 自分の中にしっかりと収まっていたはずのモノが抜かれていくことに、なのはは例えようのない喪失感を覚えて、
「つ、ぁ、あっあぁぁんっ!」
 次の瞬間には、勢いよく、最奥まで突き入れられている。擦り合わされる感覚と、ずん、と芯に響く衝撃。処女を喪ったばかりの
なのはは、まず苦痛を感じ、その後を追ってきた快楽に上書きされる。
「うっ、は、ぁ……! ねぇ、なのはっ」
「あっ、あっ、はぁんっ、なぁ、に、ゆーのくんっ、んん!」
 未だ強く締め付けてくるなのはであったが、同時に溢れ出るなのはの蜜が潤滑液となって、ユーノの動きをサポートしている。
一突きするごとに抽挿に慣れ、その動きは大胆になっていく。
「ふっ、は、やっぱり、無理だったねっ」
「あっ、な、なにがっ」
「呼び方と、喋り方っ、いつのまにか、はあっ、もとに、もどってるよっ!」
「あ、そ、れは……だって、はぁん、だってぇ……!」
 肌と肌がぶつかり合う音と、掻き回されるなのはの中から、じゅぷじゅぷと聴こえてくる淫らな水音。全てが、
まだ幼い2人を狂わせていく。
「あぅん、やぁ、だって、んんっ、だって、だってだってぇ! むり、だよぅ……っ、きもち、よくてっ、あ、ああっ……
あたまの、なかぁ、あはぁんっ、まっしろ、でぇ……っ! なんにも、かんがえらんないよぉ!」
「いいよ、なのはっ、いいよ、それでっ! なんにも、考えなくていいからっ! だから、もっと気持ちよくなって!」
 ユーノの動きがより一層激しくなる。快楽に翻弄され、相手を気遣う余裕のないそれを、しかしなのはは受け止め、
彼女もまた、乱れていく。
 お互いに、相手の絶頂が近いのがわかる。身体だけでなく、魔力リンクによって内面的にも繋がっていることが、
それを感じさせたのかもしれない。
「くぅ……! なのは、なのはぁっ! 出すよ、いいんだねっ、なのはの中にっ」
「あっ、はっ、んぁあぁぁっ! いい、よっ、いいよっ! だして、なのはのなかに、だしてぇっ!」
 ユーノの腰に絡まるなのはの脚に、ぐっと力が込められる。離さない、離したくない。そんななのはの想いが伝わってくるようで。
ユーノはそれに応えるべく、なのはと、そして自身へのとどめとなる最後の一突きを、愛しい少女の最奥へと、
「う、くぅ、はっ、あああっ、で、でるっ! なのはぁっ!」
「ひ、あ、はっ、あっ、ああっ、はああぁぁぁあぁぁあああぁんっ!」
 強く、優しく、叩き込んだ。

 ☆☆☆

226例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:02:54 ID:xrGpzVwE
 行為を終えた後も、2人は繋がったままだった。一晩、こうしていたい。なのはがそう望んだ。
 シャワーを浴びるなり、かなり汚れてしまったシーツの始末なり、優先したほうがいいことはあったけれど。とりあえず全部脇に
置いておいて、ユーノとなのはは、心地の良い倦怠感に身を委ねていた。
 なのはがいつも海鳴に帰る時間はとっくに過ぎているが、もともと家族には、本局に泊まると言ってあったらしい。空いてる部屋を
借りるってことにはしといたけどね、と、ちろりと舌を出して悪戯っぽく笑ったなのはに、ユーノはいくらか複雑な思いを抱いた。
 なのはは最初から、今日、こうなるつもりだったのだ。そもそも、下着だってユーノのために選んだと言っていた。
 それほど、追い詰められていたのだろうか。
 辛いだろうということは、わかっていた。でも、それは、わかっているつもりに過ぎなかったのではないか。
 散々に腰を振り、出すものも出して、ユーノは冷静さを取り戻していた。同時に、ネガティブな思考が沸々と湧き上がってくる。
すぐ近くに感じるなのはの温もりが、取り返しのつかないことをしてしまったのだと、ユーノに思い知らしているかのようで。
「……ユーノくん。なに、考えてるの?」
 だから、心の中を見透かしてくるかのようなその声に、ユーノは言葉を返せなかった。
 ユーノが黙っていると、なのはは困ったように、あるいは呆れたように溜息をつく。
「ユーノくん。わたしね、確かに……いろいろ、辛かったし、恐かったよ。でもね、そんな後ろ向きな気持ちだけで……
その、したんじゃないよ。というか、できないってば」
 だって女の子だもん、女の子の初めてって、とっても大事なんだよ、一生ものなんだよ。なのはは、そう言って、
「……わたし、教官とか、教導官になりたかったの。武装隊に入れたら、本局の、航空戦技教導隊を目指そうって思ってた」
「へ?」
 いきなり、話を変えてきた。
「……初耳だね」
「初めて言ったもん。ユーノくんが、はじめて」
 フェイトでも、はやてでも、アリサやすずか、そして家族でもなく。
 たぶん、なのはは大事な話をしようとしている。ユーノはなんとなく、そう感じた。
「わたしね、ずっと、自分には取り柄も特技もないんだって思ってた。実際そうだったしね。でも、アリサちゃんとすずかちゃんは
そうじゃなくて、ちゃんと自分の夢を持ってて。わたし、それがすごく羨ましくて」
 そんな日々の中、ある日、怪我をして倒れてた、不思議なフェレットさんを見つけたの。続いたそんな言葉に、ユーノは不自然なほどに
ドキリとする自分がいるのを感じた。
「そのフェレットさんは、実は人間の男の子で、魔法使いで……その、いきなり、き、キス、してきて。それで、わたしは
魔法が使えるようになったの」
 キス、のくだりで顔が赤くなったのを誤魔化すように、一度、わざとらしく咳をついて。
「嬉しかったんだ。わたしにしかできないことが、ようやく見つかったんだって思った。ユーノくんにいろんなことを教えてもらったり、
教えてもらった魔法を上手に使えたりするのが楽しくて、それを褒めてもらえると嬉しくて、それで、ユーノくんのお手伝いができるのが、
わたしの力で誰かを助けられるのが、すごく、すごくすごく、幸せだった」
 一息置いて、なのはは、今まで溜め込んできたものを一気に吐き出すかのように、言葉を紡いでいく。

227例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:03:51 ID:xrGpzVwE
「ユーノくんに教えてもらって、初めて空を飛んだ時……わたしの目に映る世界がね、全然違うものに見えたの。
どこまでも飛んでいけるような気がして、なんでもできるような気がして。風が冷たくて、いつもより近くにあるお日様があったかくて。
上手く言えないけど……すごい、って。そう、思った。全部、ぜぇんぶ、ユーノくんが、教えて、導いてくれたおかげだよ?」
 なのはの手が、そっとユーノの頬に伸びる。
「そんな、とっても素晴らしい気持ちを、わたしもいろんな人に伝えることができたらいいな、って。そう思って、だから」
「……それで、戦技教導隊?」
「うん。わたしの魔法って戦闘系ばっかりだから、そうなるかな、って。……単純、かな?」
「ううん。そんなこと、ないよ」
 ユーノは、胸が締め付けられるかのような思いだった。決して不快なのではない。むしろ、その逆で。なのはがそんなことを
思っていたなんて、まったく知らなかった。そして、そんなふうに思ってくれていたことが、なんだか、無性に嬉しくて。
なのはの背中に両腕を回して、ぎゅっと、抱き寄せる。
「でも」
 耳元近くで聴こえる声は、つい先ほどまでと比べて、かなりトーンが低かった。
「だめ、だった」
「……うん」
「本当はね、自分でもわかってたんだ。クロノくんとリンディさんにも、わたしじゃ武装隊は難しいだろうって言われてたし」
 だけど、と、そう言葉を繋げていくなのはの声は、震えていた。
「……やっと見つけられた、やりたいことを、夢を……おまえじゃ無理だ、おまえは要らない、って……
そう言われちゃうのは……ちょっと、辛かったなぁ」
 なのはが、顔を首筋に埋めてくる。泣いているのかもしれなかったけれど、ユーノは確かめようとは思わなかった。
ただ、出来る限り優しく、背中をさする。
「……結局、ユーノくんと一緒の職場になって。それはそれで嬉しかったんだけど……わたし、全然うまくできなくて、ユーノくんにも
たくさん迷惑かけちゃって……あんまり、よくないことも言われて」
「……ん」
「わたしに、何ができるんだろう。わたしは、何がしたいんだろう。そんなことを悩んで、考えるようになって……」
 そこで、なのはは。ふふ、と小さく笑みを零した。
「結局ね、振り出しに戻っちゃった」
「振り出し?」
「そう。いちばん最初の、気持ち」

228例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:04:58 ID:xrGpzVwE
 なのはが、少し身体を離す。お互いの顔が、しっかり見えるような距離。なのはは、ユーノを真正面から見つめながら、
「わたし、ユーノくんのお手伝いがしたい」
 “いちばん最初の気持ち”を、口にした。
「なのは……」
「最初は本当に、それだけだったの。困ってるユーノくんを助けたくて、それで、わたしにはユーノくんを助けられる力があって……
だから、これからもそうしていけばいいのかな、って。今は仕事も上手にできないし、ユーノくんに迷惑かけてばかりだし、
でも、たくさん勉強して、ユーノくんのこと、ちゃんと手伝えるように、助けられるようになりたい。ううん、なってみせる。
……あ、もちろんユーノくんが迷惑だっていうなら、その、考えなおすけど……!」
 最後に慌てたように付け加えるのが、妙におかしくて。それ以上に、なのはの気持ちが心に響いた。ユーノはもう一度、
なのはを抱き締める。優しくしようと思ったけれど、どうしたって力が入ってしまう。
「あっ……」
「迷惑だなんて、そんなことあるわけない」
「ほんと……?」
「ほんと」
 ユーノとしてはむしろ、自分こそがなのはの迷惑になっていないかと心配だった。僕の存在に縛られているんじゃないか、
僕なんかのために本当にやりたいことができなくなったりしないか、そんなことを思って、しかし口には出さない。
なのはの真摯な想いに対して、あまりに失礼だから。
「じゃあ……これからも、ずっと一緒にいていい?」
「……むしろ、僕のほうからお願いしたいぐらいだよ。ずっと一緒にいてほしい」
 不安そうだったなのはの表情が、ぱぁっと明るくなる。今にも泣き出しそうで、それでいて、嬉しくてたまらない、そんな顔だ。
 しかしその顔は、すぐに朱色に塗りつぶされる。さらに、視線があっちへこっちへ、落ち着きなく泳ぎ出した。
「なのは?」
「え、えとえと、えっとね……! その……!」
「ちょ、落ち着いてよ、なのは。ほら、深呼吸」
 あうあうと挙動不審な様子を見せながらも、言われた通りにすーはーと深呼吸するなのは。しかし、顔の赤みはまるで抜ける気配がない。
「どうかしたの?」
「あう、うぅ……」
 この一晩で何もかもやってしまった感があるのだが、なのははいったい何をそこまで恥ずかしがっているのだろう。考えていると、
ユーノのほうも何やら妙に恥ずかしい気分になってくる。

229例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:06:10 ID:xrGpzVwE
 なのはが、おずおずと、口を開いた。
「い、いじょーを踏まえまして、わたしの、あたらしい……い、今の夢を、はっぴょーしようかと、そ、その、思います!」
 ところどころ妙なイントネーションと、全体的に妙なテンションである。深呼吸はたいした効果を見せなかったのか、
かなりテンパっている様子だった。
「新しい、今の夢?」
「う、うん、うんうん!」
 あまりに短く散ってしまった、教導官を目指すという夢。それに代わる新しい夢。たしかに、夢を語るというのは
気恥かしい行為ではあるだろう、とユーノは思う。
 それにしたって、なのはのこれは――

「……ゆ、ユーノくんの、およめさん……」

 ――ああ、なるほど。数瞬遅れて、顔から火が出るかのような、猛烈な恥ずかしさを味わわされて、ユーノは理解した。
「い、言うつもり、なかったのに……なんかさっきの、ぷ、ぷぷぷプロポーズっぽくて、それで……あうぅ……」
 これからも、ずっと一緒にいていい?
 むしろ、僕のほうからお願いしたいぐらいだよ。ずっと一緒にいてほしい。
「まあ……確かに」
 プロポーズなんて、創作の世界のものしか知らないけれど。思い出すと、なんだかかなり恥ずかしいことを口にしていたのだとわかる。
 でも。
「でも……本心、だから。なのはと、ずっと一緒にいられたらいいな、って、思うよ」
 気付けば、さらに恥ずかしい言葉が口から出ていた。
 そもそも、自分たちはまだ10歳で。ミッドチルダでも、なのはの故郷である第97管理外世界の日本でも、プロポーズの
先にある儀式――結婚なんて、まだまだ先の話だ。
 2人は今日、身体を重ね合ったけれど。それだって、この先、どちらかの、あるいは2人ともの気持ちが変わってしまわないとも
言い切れない。幼さ故の、ままごとみたいなものでしかない。
 だけど。
(それで、なのはが前に進めるのなら)
 最初の夢は、どうしようもない、越えられない壁に阻まれてしまったけれど。なのはの、新しい夢。それが自分とのことだというのが
どうにも面映ゆくて仕方ないが、でも、なのははその夢に向かって、真っ直ぐ、一直線に向かっていくだろう。
 変な話だけれど、ユーノは、そんななのはの助けになりたいと、そう思った。
「あ……じゃ、じゃあ……」
 ユーノの言葉に硬直していたなのはが、びくびくしながら口を開く。
「ゆ、ユーノ、くん」
「うん」
 今なら、どんな言葉だって受け入れられる。ユーノは、そんな全能感に身を包まれながら――

「わたしの、ほんとのご主人様になってくれますか……?」

 ――いろいろと合点がいって、別に変な意味とか微塵もないのはわかっていて、でも、それはどうなんだろうと思ってしまうのだった。
 なんと答えたものかと黙りこんでしまったユーノと、そんな彼の様子に不安を募らせ涙目になるなのはと。


 彼らの日々は、きっとそんなふうにして、過ぎていく。



                                                            fin.

230ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/14(日) 11:08:53 ID:xrGpzVwE
 タイトルはもうちょっとどうにかならなかったかなぁ、なんて今さら思ったりします。
 自分の勘違いだったら悪いんですけど、なのはさんが教導隊を目指した理由って明らかになってなかったと思ったので捏造してみました。
 ちょっと、というか全然違うかもしれないけど、“先生”を志す人って、その理由は自分自身が良い“先生”に恵まれたからじゃないかな、
なんてことを思います。
 まあ、理由を捏造したこのSSの設定では、なのはさんはどうやっても教導官にはなれないというのが我ながら皮肉というか。
 事後の会話でなのはさんが言っていることには、私の中の「高町なのは」像がわりと強く出ているので、
違和感を覚える人もいるかもしれません。ただまあ、たぶんこの辺りを一番書きたかったんだろうなぁ、とは思います。
こんな設定にした理由の半分ぐらいはここを書くためのようなものです。残り半分はなのはさんに「ご主人様」と言(ry

 もともと別のSSで行き詰って、その息抜きとして書き始めた今回のエロSSですが、気付けばこんなに長くなってしまいました。
 しまいには、この設定でStS時代の話やったら面白いんじゃないか、なんて思い始める始末です。
「機動六課資料室室長・高町なのは」みたいな。このなのはさんは才能コンプレックスのティアナと相性が良さそうな気がします。

 なんにせよ、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
 上のほう見ると私の投稿のせいで荒れちゃってるような感じですし、レスは質問等、最低限のものにしか付けないことにしようと思います。
 では。

231例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 11:13:53 ID:xrGpzVwE
ああ、一応補足で。
最後のは、「旦那さま=ご主人様」という意味です、はい。
「うちの主人はほんっともう、義妹に手を出すわ某教会騎士に手を出すわお尻大好きだわで、大変なんですよ〜」
みたいな感じで言いますよね? ね?

232魔法少女リリカル名無し:2009/06/14(日) 11:48:20 ID:.RrodpWM
>>231
コレはコレで面白かったからGJ!!
ってそんな裏事情があったんに吹いたー!

233名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 15:20:34 ID:evYzWQ5s
>>213
ちょwそれどこの提督ですかww

最初は、原作と異なる世界観設定に驚きましたがキャラクターのイメージや文章がしっかりしていたので違和感なく読ませていただきました。
GJという言葉を送らせていただきます。

234名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 15:23:37 ID:evYzWQ5s
安価ミスったorz>>231です

235名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 16:20:35 ID:nePjjwOA
>>211
カルタス……(´;ω;`)ブワッ
GJした。
フィナーレは一体どうなるんだろう。


>>230
あんっっま〜〜〜い!!
まるで砂糖をぶちまけたような甘さに、
ちょっぴり苦味が効いて
美味しく頂かせていただきました〜w

しかしこの二人は10歳でセックスの味を覚えちゃって……
この勢いだと二十歳になるまでに家族が増えること間違いなしwww

GJでした

236名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 18:04:07 ID:5sSnnxa.
なのはが教導隊目指す理由って漫画に書かれてたんじゃないの?

237ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/14(日) 19:16:59 ID:xrGpzVwE
>>236
今確認してみましたが、それらしきものはなかったかと…
一応、アニメDVDやサウンドステージに比べてチェックが容易な漫画とNanohaWikiは繰り返し確認しています
怪しいのはA'sのサウンドステージ03で、これはだいぶ前に聞いたんですが失くしてしまいまして…

どこかで語られてたのなら単純に私の確認ミスです。その時はごめんなさいorz

238Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/06/14(日) 21:30:12 ID:MHNWU86U
>ウルー氏
ああもう畜生!
こんなにエロいどころか、依存するなのはの精神が俺のテンションを上げまくる!!
設定の差異なんぞ構うものか、ユーノよもっと調教するんだ!!!

……少しはしゃぎすぎた。
だが実際貴方のことを気に入ってしまったよ。
捨てアドでいいから連絡先教えてはくれまいか?
スレ的に無理なら諦めときますわ。

***

という訳で。
Vivid読んだ時にテンション上がりっぱなしで振り切れた、
そんなヴィヴィオものを投下します。
はやては誕生日SSで萌え尽きたので次回までお待ち下さい(死

・ヴィヴィオ10歳
・公式+今まで作ったユーなの短編集の設定は全部ガン無視
・ガチエロ。保管庫搬入の際は「凌辱」タグをお願いします。
・耐性のない人は読まないで下さい(重要)

では、始まります。

239鏡の中の狂宴 1/10:2009/06/14(日) 21:32:01 ID:MHNWU86U
──Welcome to EDEN. (楽園へようこそ)

***

「お名前は?」
「高町……ヴィヴィオです」
「おいくつ?」
「10歳です……」

ヴィヴィオがビデオカメラに向かって笑いかけている。
硬い表情は崩れることがなく、緊張を隠すことができていない。
だが、それで撮影側の男たちは満足のようだった。

「それじゃ、早速だけど『ママの代り』をしてもらおうかな」
「は、はい」
ザンクトヒルデ学院の制服に身を包んだヴィヴィオが、静かにスカートをたくし上げる。
チラリと、白い下着が現れた。ヴィヴィオは尚もスカートを持ち上げていくと、
飾り気のないショーツが、カメラにまじまじと映り出された。
レンズがじっくりとズームしていく。まるで、凝視すれば透けて見えるとでも言わんばかりに。
「じゃあ、パンツの上から触ってみて」
ヴィヴィオは無言で応える。
ショーツにゆっくりと触れると、「ひぅっ」と鳴いて身体をのけぞらせた。
突然の刺激に身体が慣れず、ビクリと腰を震わせる。
「そうそう。おっぱいも弄るんだよ」
言われるがままに、胸をさわさわと撫でる。
カーディガンの生地からでは、どこからが乳房のラインなのかも分からない。
幼い身体を自ら性的に慰める痴態を、カメラは余さず撮っていった。
「うんうん。そしたら、制服の前、はだけてみようか」

始まりは、2ヶ月ほど前に遡る──

***

高町なのはが緊急召喚を受けた。
大規模次元災害が発生したので、現地人を救助すべしとの命令。
なのはは訓練生の中から選りすぐりの5人を従えて、すぐに出発した。
だが、そこで事故は起きた。
5人のうちの1人が不用意に爆発物に触れ、意識不明の重体に陥ったのだ。
それはなのはが撃墜された時よりも遥かに酷く、復帰がどうのという以前に命が危なかった。
彼は今も、生死の境目を彷徨い続けている。

なのはには、すぐさま監督責任が追及されることになった。
ちょうどその頃、上層部にはなのはを良く思わない面々が何人かいて、
これを機になのはを失墜させようと企んだ。
会議で「懲戒免職も已む無し」という論調に場が包まれた時、一人の青年将校が進み出た。

240鏡の中の狂宴 2/10:2009/06/14(日) 21:32:54 ID:MHNWU86U
「まあまあ、ミッドを救った英雄様じゃないですか。世論が許しませんよ?
その代り、面白い計画があるのですが……」

中身だけを聞けば単純なものだった。
なのはから一時的にヴィヴィオの親権を切り離し、矯正施設で教育させようというものだ。
「重大すぎるミスを犯した張本人ですからね。クビかどっちかと聞かれれば素直に頷くでしょう。
高町にも立場ってモノがあるし、管理局を追われて行き着く先は極めて限られている」
何も永遠の別れじゃないんですから、と強調すると、上の顔は疑問符に満ちた。
「で、それが何になるというのだね?」
「そりゃもちろん、『我らがエース・オブ・エース』を強請るネタにするんですよ。
本人は絶対堕ちないでしょうが、娘なら簡単でしょう?」
加虐を存分に含んだ笑みを浮かべると、会議場は彼の意図に気付いたようだった。
「この一件、私に任せて頂けませんか?」

満場一致で拍手が沸き起こったのには、なのは──はやて側の人間も混じっていた。
最上層の利権構造に食い込むための協力。
人の意思とは、あまりにも脆いものだった。
「あぁ、当然ですが『生活の様子』をフィルムに収めようと思います。
愛する娘さんがどんな暮らしをしていたのか、母親としては気になるところでしょうからねえ……」
ニヤリと笑った彼の口の端からは、悪意そのものが漏れ出していた。

***

そうして『矯正施設』なる場所に送られたヴィヴィオの生活は、泥濘を極めた。
僅かに一畳半の部屋。そのうち和式のトイレが半畳で、残りは何もない。
天井は異様に低くて、大人なら始終屈まなければならない程だ。
その片隅にはカメラ。ヴィヴィオを観察しているのはいわずもがなだった。
内側から大量のボルトで止められたダクトが一つあるが、当然脱出の可能性はゼロ。
窓はなく、明かりは裸電球が一つ、常に薄暗いまま灯り続けている。
空調はやや高めに設定され頭がボーっとする一方で、常に同じ光を与える電球は時間の感覚を失くしていく。
「出して、出してよぉーっ!」
何度もドアを叩き、泣き叫んだが、出してくれるどころか人間の姿すら見かけなかった。
三方が真白な壁に囲まれ、残った唯一の出口であるドアもまた白く、鍵は閂か何か、
とにかく小学生に開けられる代物ではなかった。

食事もパサパサと味気なく、常に飢えと渇きの中にあった。
郵便受けのような場所から出てくる盆は器と一体化したタイプで、箸一本載っていない。
手掴みで食べるしかなかった。
味噌汁が入った汁椀だけは別だったが、これもまた鎖に繋がれている。
徹底した管理ぶりだった。
何度となく『郵便受け』から手を伸ばしてみたが、どうしても床のペタペタとした感覚以外の何かを触ることはなかった。
それが終ると、盆を回収される。一度それを拒否したら、唯一の灯りを消されてしまった。
半狂乱になって叫び続けても許してくれず、泣き疲れて眠り、そして再び目覚めた頃、やっと裸電球が復活した。
のっぺらぼう、ひたすらに何もない時間を過ごさなければならない苦痛に、
ヴィヴィオは何度も悲鳴を上げ、身体を掻き毟った。

241鏡の中の狂宴 3/10:2009/06/14(日) 21:33:51 ID:MHNWU86U
風呂にすら入れない。何時かも分からない。
食事の回数を数えるのは諦めた。数えるための手段すらない。

そして5日目を迎えた頃、自身に変化が生まれた。
夢か現実か分からない。音もない、太陽もない、食事のメニューは全て同じ。
どこが現実で、どこが現実でないのか、もう区別がつかない。
出してくれと懇願するのも、もう止めた。だって、誰も取り合ってすらくれないから。
最初の2日は我慢に我慢を重ねていたが、カメラの存在すらどうでも良くなった。
「ママ、助けて……」
その代り、母親に助けを求めた。
だが、肝心の本人は仕事上の大きなミスで自宅謹慎。
ヴィヴィオがこんな生活をしているとは露ほども知らないだろうから、心配することはあれど危機感はない。
まさに八方塞がり、どうすることもできなかった。
もしもここから出ることができるのならば、何でもやろうという気が、芽生え始めていた。
皮脂がべたついて髪が額に張りつく。鬱陶しさと時間感覚のなさが、ヴィヴィオの間で揺れていた。

そこから、5日ほどが経過しただろうか。
もう、ヴィヴィオは衰弱を極めていた。
いや、実のところ食事は栄養だけはまともに考えているようで、身体こそは健全なのだが、
意識の海は絶対に思考を許さないほど憔悴しきっていた。
なのはの顔すらおぼろげで、そもそも「高町なのは」という人間が実在していたのかということさえ、
ヴィヴィオの脳裏では怪しくなっていた。
「ま、ま……」
呟く声は、助けを求める悲鳴ではなく、もはやうわ言。
自我が保てない。どこかへ溶けだしていく。
透明なビニールの膜が意識にかけられているような気がした。全てがぼうっとして、判然としない。
ココハドコ、ワタシハダレ……

更に何日かが経って、初めて外界の方に変化が現れた。
朝食か昼食か夕食か、どれだか分からないが、
とにかくご飯とサラダを口に入れ、味噌汁を啜ると、急に眠気が訪れた。
眠気なんてものは久しぶりだ。1日がまどろみに支配されていたヴィヴィオに、束の間の安息が訪れた。
そして、次に目を覚ますと、そこはやはり同じ一畳半の手狭な部屋だった。
しかし、1つだけ変わったことがある。壁に掛けられた液晶テレビだ。
今は何も映っておらず真暗なままだったが、ヴィヴィオはそれだけの小さな変化でも飛び上がって喜んだ。
「私、現実にいる……生きてるんだ!」
……というのも、儚い望みだった。
何度かの食事──10回か? 20回か? 分からない──を経ても、スクリーンには何も出なかった。
ひょっとして寝ている間に何か放映されているんじゃないかと徹夜を敢行してみたが、無駄だった。
逆に体調を崩し、しばらく臥せることになってしまった。
それでも、救助の手は来ないどころか、アリの子一匹現れなかった。
一瞬走った期待はじわじわと裏切られ、落胆と絶望を一層深いものにした。
何もない、誰もいない、助けて、誰か助けて……

『んあぁっ!』
ビクッ、とヴィヴィオは驚いて画面を凝視した。
今日が何日かどころか、今年が何年なのかさえも曖昧になってからのことだった。
久しぶりに現れる映像に狂喜の色を浮かべる。だが、そこにあったのは通常のフィルムではなかった。

242鏡の中の狂宴 4/10:2009/06/14(日) 21:35:00 ID:MHNWU86U
『ひゃぁっ! あああぁっ……だめっ、そんなとこぐりぐりしちゃだめぇっ……』
制服をはだけている女の子だ。どこの制服かは知らないけれど、少女はヴィヴィオと同い年に見える。
四つん這いになって、顔をカメラ側に向けている。
桜色になった胸の先端は露になっており、スカートの陰に隠れて下半身はよく見えない。
すると、カメラが移動して足の方へと移動していった。
太ももにはリモコンのようなものがテープで貼り付けてある。
足の付け根──女の子の一番大事な場所に、毒々しく赤い、棒状の何かが突き刺さっていた。
コロリと少女が仰向けに寝転がされる。それによって、より秘部がアップで映される。
太もものリモコンから延びたコードが、赤い棒の上で終っている。
スポイトか? とにかく、何かを吸い出すような器具のようだった。
『だめっ、そんな、クリトリスばっかり……いやあああああああっ!』
画面の中で少女が啼く。
ヴィヴィオは、そんな名前も知らない少女の姿を見ているうちに、身体が熱くなってきた。
「んっ……」
おかしい。空調が乱れたことなんて一度もないのに、熱い。熱すぎる。
「どうしちゃったの、私……」
少女は一見泣き叫んでいるようにも見えるが、一方でとても気持ち良いように見える。
ヴィヴィオには、そのギャップが不思議でならなかった。
『ラスタちゃん、クリトリス気持ちいい?』
『気持ちっ、よすぎてっ……クリトリス変に、変になっちゃう……いやっ、やあああっ』
ヴィィィィィン、とくぐもった振動音が聞こえる。
どうやら、スポイトがバイブレーションしているようだった。
「はぁ、はぁ……」
ヴィヴィオの顔が上気していく。意識の全てを削ぎ落とされた世界が、どんどん上書きされていく。
「んんっ」
ついに、ヴィヴィオは画面の中の少女と同じ行動を取ることを決意した。
理由なぞ特にはない。極限まで監禁された感情は、五感の全てが他からの指令に従うようになっていた。
「はぁっ、はぁっ……んんっ」
身体の熱がどんどん篭り、じんじんとした疼きが下腹部に溜まっていく。
この痛痒を取り除く方法は、恐らく1つ。
画面の向こうにいる少女と、同じ場所を同じように触ればいいのだ。
「きゃぁ……っ」
ふに、とショーツに触れると、ビクリと身体が震えた。
味わったこともない感覚に、ヴィヴィオは戸惑いを隠せない。
「ちょっと、気持ちよかった……?」
もう一度。
「きゃうっ」
コリコリとしたものが感じられた。そんなもの、この身体にあっただろうか?
上気した頭でショーツを脱ぎ去ると、そこはしっとりと濡れていた。
「なに、これ……?」
お漏らしした訳でもないのにやたらとぬるぬるしていて、ぴたぴたと触ってみると、それは糸を引いた。
ぷつり、と切れた瞬間、まるでシンクロするように少女の喘ぎが響く。
『もっとっ……もっとクリトリス苛めて下さいっ……たくさん弄って、いっぱいイかせてぇ……』
どうやら少女は、スリットの一番上にある豆粒のことを指しているようだった。
じわり、と疼きがにじむ感触は、ここから湧き上がってくるらしい。

243鏡の中の狂宴 5/10:2009/06/14(日) 21:35:41 ID:MHNWU86U
恐る恐る、指先で軽く触れてみる。
その瞬間、電流が脳天まで駆け上がった。
「ひゃぁっ!」
甘い。甘くて、痺れて、心地いい。
も、もう一度……
「ひゃぅっ……ひぁっ」
同じように、電流が走った。今度は鋭さよりもむしろ、足が痺れるような感覚が勝っている。
本能がそうさせたのか、画面の少女がそうされていたからなのかは分からない。
けれど、気付いたら、スリットからあふれるぬるぬるした粘液を、クリトリスに擦り付けていた。
「あっ……ああああぁっ!」
ビクン、ビクン、と身体が跳ねる。
疼きが一塊になって、目の裏側にスパークを作った。
視界が七色に染まり、世界が暗転していく。
『あぁっ、はあああっ……』
最後に聞こえたのは、少女の漏らす嬌声だった。

翌日──寝て起きたら『次の日』と呼ぶことにした──ヴィヴィオが目を覚ますと、そこはいつもの牢獄だった。
テレビにも何も映っていない。
昨日のことがまるで嘘みたいに静かで、幻覚かと感じられる。
でも、そうじゃないと信じて、ヴィヴィオはドアを叩いた。
「ねえ、誰かいないの?」
僅かな希望が復活した。何度もドアを叩いて、助けを求める。
だが、誰も来なかった。体力に限界を覚えてへたれ込むと、
その途端に食事がやってきた。だが、相変わらず運んできた人間の気配はしない。
今までの経過から考えて、機械が自動的に配膳しているのだろうと当りをつけた。
助けるも何も、ドアの向こうには何もないのかもしれない。
「……ん?」
ふと盆に目を落とすと、今までとは明らかに違う兆候があった。
もしかすると、昨日のことは本当だったのかも……?
「うっ……変な匂い……」
サラダにかけられたドレッシングが別なものになっている。
以前は塩と油と酢を混ぜただけの代物だったが、今度は白濁としたものだ。
サラダを食べてみると、強烈な青臭さが鼻を駆け抜けた。
それでも、生きるためには食べ続けなければいけない。
いつまでも鳴れることのない空腹に抗うことは、まったくできなかった。
「はぐっ、あぐっ……んくっ」
味噌汁の中にも、同じような白濁が浮いていた。
かき混ぜるものが指ぐらいしかないので、そのまま飲む。
食事が終った頃、ヴィヴィオは身体の異変を感じた。
「何だろう? 熱い……」
ほんのりと、ポカポカする温かさが全身を覆う。
それはすぐに、夢うつつの彼方にあった記憶を呼び覚ました。
「やっぱりあれ、夢じゃなかったんだ」
ジンジンとした疼きが喉にせり上がってきて、思わず声が漏れる。
驚いたことに、昨日少女が喘いだ声と殆ど同質だった。
「私……どうなっちゃったの?」

244鏡の中の狂宴 6/10:2009/06/14(日) 21:36:49 ID:MHNWU86U
不安を抱えたまま、独り過ごすヴィヴィオ。
答えは誰からも与えられない。

それからまた、のっぺらぼうな日々を送っていった。
一度だけあったはずの映像はもはやウンともスンとも言わなくなり、
食事に混ざる白濁の粘液は、まるで初日からずっとそうであったかのような既視感に襲われる。
玄米飯と、味噌汁と、サラダ。毎日が味気ないものばかりで、刺激も変化もない。
意識に再び舞い降りてきた分厚いヴェールは、ありとあらゆる意欲を奪い去るのに十分だった。
昼か夜か、などといった問題はとっくに超越している。季節がどこにあるのかさえ、もう分からないのだ。
ただ三つ、食欲と睡眠欲、そして食事の後に訪れる絶え間ない疼きだけが、ヴィヴィオを支配していた。
心臓の鼓動が唯一の音楽。チラつく電灯の灯りが唯一の映画。
たった一畳半の部屋でできる運動といえば、腕立て伏せやスクワット程度のもの。
それすらも億劫で、そもそも身体を動かすという発想が頭から沸いてこなかった。
精神はとっくに限界を突破している。一日中何もすることなく臥せっていることが多くなった。
自分がここに来た意味も、理由も、もうどうでもいい。
思考すること自体、不可能もいいところだった。
食事をし、盆が片付けられると、果たしていつ食事を取ったのかどうか、分からなくなる。
5分も掛からない。そもそも、1分がどれだけの尺で進んでいるのかも分からない。
「ママ……?」
なのはの姿が見え、手を伸ばしてみるが、伸ばせば伸ばすほどに遠ざかっていく。
「ママ……ママぁ……」
ハッ、と気付くことはむしろ稀。ハッキリとした意識が見えるのは、全くないといっていい。
一日中、母親の姿を追い続けることもあった。
寝ているのか、起きているのか、そもそも「起きている状態」とはどんなものだったか。
ヴィヴィオはそれすらも忘れていった。

そんなある日、意識を包んでいた薄膜は唐突に破られた。
テレビに、再び映像が戻ってきたのだ。
ヴィヴィオは余りの嬉しさに飛び上がるほど喜んだ──というのは比喩。
喜ぶなどという体力は、ここに来て1週間も経たずに尽きていた。
例えどんな内容でも、自分以外の人間がいるという事実があれば、他には何もいらなかった。
『お名前は?』
『ラスタ・ソレイユ……』
『おいくつですか?』
『10歳です……』
この前の少女だ。色白で深い蒼の瞳を持つ、長いシルバーブロンドの女の子。
何かのインタビューなのだろうか、つらつらと言われるがままに自己紹介していく。
質問をしている男の姿は見えない。
『それじゃ、今までの復習してみようか』
『はい……』
少女の瞳には生気がない。鏡がないから分からないが、多分自身もまた似たようなものなのだろう。
目線はまっすぐカメラに向けつつ、少女は制服をはだけていった。
その様子に、ヴィヴィオはドキリとする。
胸を曝け出し、膨らみの双丘と小さな蕾を見せるに連れ、少女の目には光が戻ってきたのだ。

245鏡の中の狂宴 7/10:2009/06/14(日) 21:37:24 ID:MHNWU86U
だが、その光には妖しさが灯っている。
天真爛漫なそれではない。堕天して欲望に全てを奪われた奴隷の光。
はぁ、はぁ、と犬のように浅い息をしながら、スカートの中に右手を潜り込ませる。
左手は乳首を軽く摘んで、くにくにとこねくり回している。
『ラスタちゃんは、今どこを弄っているのかな?』
『おまんこ……です、えっちな穴に指を入れて、くちゅくちゅしています』
『それだけ?』
『乳首もっ……コリコリして、凄くきもちいい……』
『ふうん? んじゃ、ラスタちゃんが今やってることは、何て言うのかな?』
一番聞きたい言葉を問いかけられて、ヴィヴィオは食い入るように画面を見つめる。
「あの時」、そう初めてこの少女が画面に現れた時に自分がやったこと。
自己の行為に、名前があるのだとすれば、どうしても聞いておきたかった。
『お、なにぃ、です』
『聞こえなかったよ、もう1回』
『オナニーです……』
「オナニー」、ヴィヴィオは少女に釣られて繰り返した。
身体の疼きが増していく。下半身が激しいむず痒さに襲われる。
永遠にも思えるほど長い時間が経っても、それはたった1秒に感じられた。
映像は着々と進んでいくが、ヴィヴィオの時間回りだけはまるで止まってしまったかのよう。
上気した顔をカメラに向けて、ひたすらオナニーに耽る少女。
快感を強く覚え始めたらしく、唇はだらしなく開いてきた。
抑え切れていない唾液が、口の端からだらりとシーツに垂れた。
『さて、いつまでもスカートの中でオナニーしてないで、カメラの前の皆さんにも見せてあげなさい?』
『はい……発情おまんこ、皆さん見て下さい』
少女は仰向けに倒れると、スカートをめくり上げた。
カメラが接写モードに切り替わり、画像がぶれる。
ヴィヴィオはこみ上げてくる不安を押さえて、画面を見つめる。
しばらく経ってカメラがピントが合うと、少女はまさにショーツを横にずらしているところだった。
透明な染みのあるショーツを退けると、少女の秘部が露になった。
モザイクなどといったものは一切かけられていない。
粘液でしとどに濡れたその場所は淫猥に過ぎて、通常のヴィヴィオならば直視できなかっただろう。
──というのはもはや過去の仮定、今のヴィヴィオは、画面の向こうに見える「現実」をどこまでも追っていた。
『ラスタちゃんは、どこを弄ると一番気持ちいいのかな?』
男の声が聞こえると、少女は秘裂の一番上にある豆粒をくりくりと触った。
すぐに『止めて』と男に言われ、少女は触るのを止める。
その代りに、秘唇を大きく広げて、カメラの前に恥ずかしい部分の全てを見せた。
『ここっ……お豆さん……クリトリスが、一番気持ちいいのっ……お願い、もっと弄らせてぇ』
『ダメだよ、ラスタちゃん。そんなにがっつかなくても、すぐいっぱい弄らせてあげるからね』
許可がなくては、少女は何もすることができないらしい。
次々と指示が飛び、少女の声はどんどん淫らに上ずっていった。
『ご苦労様。それじゃ、いっぱいクリトリスでオナニーしてもいからね』
『ありがとう、ございます』
そして少女は豆粒──クリトリスへの刺激を再開する。
豆粒には上から皮のようなものが被せられているようだったが、
少女が触っているうちにみるみる大きくなり、少しずつ剥けていった。
『それじゃ、クリトリスの皮を思い切り剥いてみようか』
『はいっ……』

246鏡の中の狂宴 8/10:2009/06/14(日) 21:38:07 ID:MHNWU86U
両手の指で、皮を上へと引っ張る。
すると、キレイなピンク色の真珠が姿を現した。
『どう、クリ皮を剥いた気分は?』
『はい……とってもえっちで、凄く……どきどきします』
ここに到って、ヴィヴィオはもう我慢できなくなった。
少女が為すのと同じように、ショーツを脱ぐ。
秘裂に触れてみると、先日と同じように粘液で濡れていた。
しかも、触る度にどんどん溢れてくる。
「あぅっ……気持ち、いい……」
そこから先は、もう無我夢中だった。
映像の少女に合わせて、くちゅくちゅと秘裂を弄る。
男の指示に従い、少女と同じように振舞う。
どこかにまだ残っていたらしい理性が警鐘を鳴らしていたが、そんなものは怒涛の愉悦に押し流された。
得も言えぬ快感が意識の覆いを剥ぎ取り、自我を猛烈な勢いで侵食していく。
「気持ちいいよぉ……もっと、もっとぉ……」
少女が身体をビクビクと痙攣させ、その痴態をカメラがドアップにして収めていく。
粘液にまみれた秘唇が脈を打ち、クリトリスは真っ赤に熟したさくらんぼのように膨らんでいる。
『ラスタちゃんのおまんこは、今どうなってるのかな?』
『はい……愛液でぐちゃぐちゃになって、クリトリスも勃起して……凄く、凄くえっちです』
蜜壷の浅いところをかき混ぜて、粘液の立てる音を愉しむ。
まだこんなところで奏でられる音色があったのだと、ヴィヴィオは驚いていた。
「あい、えき……」
この、ぐちゅぐちゅした粘液のことか。
ヴィヴィオは指を引き上げて、その匂いを嗅ぐ。
それだけでもう、頭が沸騰して思考力が奪われていった。
『イく、イっちゃう……』
『ラスタちゃん、どこがイっちゃうのかな? ほら、皆さんに教えてあげるんだよ』
少女はクリトリスを上下に擦って、悲鳴にも近い喘ぎを上げた。
『クリ……クリトリスしごいて、イっちゃいます……』
ヴィヴィオの指もまた、少女と同じようにクリトリスを滅茶苦茶に擦っている。
粘液に絡まって、膨らんだ真珠を中々摘めない。
けれど、意識がその一点に集中し、弄り回すことだけが史上の命題となり果て、
快感を追い続けるのみの意識となった。
『イく……イくっ……ああああああああっ!』
「わた、私も……ああああっ……」
ぷしゅっ、と熱くて白濁した粘液が秘所から漏れた。
ありとあらゆる色の光が目の奥で踊って、景色が極彩色に染まる。
「あはっ……気持ち、いい……」
いつ終るとも知れない長い監禁の生活で、遂にヴィヴィオは心が折れた。

それからのヴィヴィオは、文字通り馬鹿の一つ覚え。
自慰に没頭し、食事が運ばれてきたことに気がつかないほど。
他にやることが何一つない環境に置かれて、ひたすらに快感を貪った。
制服は身体から分泌される粘液ですっかり汚れてしまっていたが、気にもならなくなった。
テレビはつかなくなったが、代りに一冊の小説を与えられた。

247鏡の中の狂宴 9/10:2009/06/14(日) 21:38:56 ID:MHNWU86U
ヴィヴィオと同年代の少女が、男に身体を開発されていくという内容。
寝て起きるとたまに本が別のものに変わっていたが、大筋は似たり寄ったりだった。
特に、年齢はヴィヴィオに同い年の少女ばかりだった。
「調教」を受ける対象はどこにでもいる女の子から、
大富豪の令嬢、ジュニアスポーツ選手、バイオリンの名手まで様々だった。
沢山の語彙も覚えた。どの部位が何と呼ばれ、別名は何で、どこをどう弄ると快感が得られるようになるのか。
頭の中は、常に淫らな妄想で満たされるようになった。
そして、意識が桃色の幻想に染まりきったある日。
「……ん?」
突然、秘部から血が出てきた。
痛くも痒くもない、傷もないのに、タラリと流れていく一筋の血。
「ああ、私、赤ちゃんが産めるようになったんだ……」
感慨はすぐに、淫欲へと変わった。
腹の底から沸き上がってくるむずむずとした感覚は、
やがて理性の破片をもゆっくりと闇の奥深くへと沈ませていった。
「きゃぁっ……! なに、これぇ……身体が、身体が凄く熱い……
私の身体、どんどんえっちになっちゃってるよぉ……」
淫核をしごき、蜜壷を掻き回す。それ以外のことは頭にない。
「んあぁっ、ああああっ……!!」
愛液の量は、日増しに増えていった。
襲い来る愉悦は抑え難く、ヴィヴィオは流されるままに本能に従った。

だが、そんな日々はすぐに終りを告げた。
「なっ……何これ!?」
昨日の「夕食」には、睡眠薬が混入されていたようだ──今までも何度かあったことだが、
今回は今までの中で一番酷い仕打ちだった。
ヴィヴィオの下半身には、皮製の「何か」が張ってあった。
幸いにして用を足すだけの空間は空いていたが、自らを慰めるような隙間はまったくなかった。
「何か」の上から、淫核を狂ったように掻いたが、何の感触も肌には起こらなかった。
しかも、いつの間にか服は全て脱がされ、生まれたままの姿になっていた。
灯りは完全に落とされており、ヴィヴィオの世界は暗闇に閉ざされた。
それどころか、どこからともなく少女の淫らな喘ぎ声が聞こえてくる。
混乱のさなかに食事が運ばれてきたが、食欲が沸くどころか、どこにどんな食べ物があるのかも分からない。
栄養はギリギリまで押さえ込んである。一食でも抜いたら空腹で頭がおかしくなってしまいそうだというのに……
手探りで慎重に探し、もさもさと食べる。白濁した液体は一層増えていた。
食事の後、ヴィヴィオは「何か」が何なのか、焦点のハッキリしない記憶を漁って考え始めた。
もう、思考するという行為は何日ぶりなのか、何週間ぶりなのか。
数時間に渡って記憶の糸を手繰り寄せた結果、これは「貞操帯」と呼ばれていることを思い出した。
ということは、誰かが鍵を開けてくれない限り、取り外しができないということ。
「い……いやあっ!」
結論に到った瞬間、ヴィヴィオは半狂乱になって貞操帯を外そうともがいた。
ガチャガチャと音がしたが、それだけだった。
「う、うそ……」
身体の疼きはふつふつと沸いてくる。でも、どうすることもできない。
耳に入ってくる少女の嬌声はますます大きくなっているようで、
ジンジンと下腹部を苛む欲望は際限なく膨らんでいった。
「助けて……誰か、助けてーっ!」

248鏡の中の狂宴 10/10:2009/06/14(日) 21:39:55 ID:MHNWU86U
照明は唯一の拠りどころだった。映像だって見れるし、本だって読める。
今は、それがない。
「助けて……助けてよ……」
地獄の最中に舞い降りてきた光明をも、今失ってしまった。
「嘘……こんなの、嘘だよ……」
ヴィヴィオはその場で脱力し、気絶してしまった。

何も見えない。
何も聞こえない。
何も感じない。
何も分からない。

何も考えられない。
何も動かしたくない。
何も──

ヴィヴィオは何もすることなく、常々横たわるだけの日々になった。
最初の1日か2日かは少女が淫語交じりに叫んでいたが、ある時前触れもなくぷっつりと音声は途切れた。
24時間、起きているのか寝ているのか分からなくなってしまった。
生きているのか、死んでいるのか?
自殺などという選択肢はない。そんな気力すら、霧散した。
最も原始的な欲望、食欲だけはじわじわと身体を蝕み、結局食べることになる。
意識に立ち込めた霧はついに足元さえも判断できないまでに濃くなり、
思考の対象は一瞬にしてモヤの中に消えていった。どんなに簡単な算数もできない。
全てが消え失せた世界で、ヴィヴィオはただひたすら横になり続けた。
「ママ……」

──掠れた声で叫びを上げた。何処に行けば救われるのと。
黒い天使と黒い悪魔と黒い閻羅が、いびつな笑みを浮かべながら闇の縁へと誘っている。
私は手を伸ばした。引きずり込まれると知りながら、それでも求めるしかなかった──

(続)

249Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/06/14(日) 21:42:17 ID:MHNWU86U
まさか長編化するとは作者も思わなかった。
中身に関してはもはや何も言うまい。
クリ責めスレに帰れって話ですねごめんなさい。

では。

250名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 21:43:56 ID:5sSnnxa.
>>230
  ん?本スレに貼りついてるユーノ擁護工作員=なのはマンセー叩き?
 キャラの性格・公式設定捏造乙
 また俺様のヒロイン像=デフォ?
 他人のSSスルーしたとかいちいち書いて嫌みだよなお前
 臭い聖水プレイでキャラ陵辱するなら前書きに書いてくれキモいから

251名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 21:48:17 ID:LnMYu3Bw
そろそろ忘れている人もいるようなので。

ここは管理人さんがちゃんと管理してるからね。
あんまり無茶すると、削除、アク禁だよ。

252名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 22:05:11 ID:EaQeHG9o
>>250
まあ、落ち着け。
>>230さんも、次回作から注意書きをしてくれるだろう。

253ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/14(日) 22:10:38 ID:xrGpzVwE
中編のアレは確かに注意書きに書いとくべきでした。こちらの配慮不足です…
今さらですが、不快に思われた方がいたならごめんなさい

>Foolish Form氏
ここで直接晒すのはアレなんですけど、氏も登録なさってる情報サイトに同名で登録してます
お手数ですが、そっちから辿っていただければ。
SSのほうはもうなんというかGJです。描写的には心が痛くなる感じですが読み進めずにはいられない魔力のようなものが。
続きも待ってます

254名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 23:34:00 ID:QP60UuyU
おお、これは濃厚な攻め……
正に「陵辱」の二文字を冠するSSですね。

255名無しさん@魔法少女:2009/06/15(月) 00:58:45 ID:zy7V4Ad6
>>230
GJ!!です。
何だろう。最後のなのはとユーノの会話の方が凄い。なんか胸に来る感じでした。
>>249
GJ!!です。
俺が親なら、ヴィヴィオを教会かフェイトに預けて殺戮の旅に出そうだ。

256名無しさん@魔法少女:2009/06/15(月) 16:00:14 ID:HbXI3pjA
>>255
その隙にヴィヴィオは別の男の歯牙に…という黄金パターンですね分かります。

257名無しさん@魔法少女:2009/06/15(月) 16:23:29 ID:r.NVLYn.
>>256
さらに教会の人やフェイトさんも獣の毒牙に…という黄金パターンですね分かります。

そういやフェイトがモブに陵辱される話はけっこうあるが、
カリムが多人数に陵辱される話って無いよね。
オリキャラに媚薬調教されたり義弟に獣姦されてたことはあったが。

258名無しさん@魔法少女:2009/06/16(火) 00:06:46 ID:NlLCQVRc
犯されている時に神に助けを求めるとか見てみたいな。
でも、神は誰に対しても平等だから助けないw

259名無しさん@魔法少女:2009/06/16(火) 00:09:02 ID:cBqF9vZs
神=聖王
じゃなかったっけ?

260名無しさん@魔法少女:2009/06/16(火) 00:09:56 ID:cBqF9vZs
いけね
ageちまった

261名無しさん@魔法少女:2009/06/16(火) 00:13:40 ID:NlLCQVRc
でもヴィヴィオを神と見ていないと思う。
既にもう、いない個人を神として崇める感じだから、普通の宗教のように神を崇めているのと変わらないのでは?

262名無しさん@魔法少女:2009/06/16(火) 01:24:28 ID:c4ikjuOo
なんつーか、戦前の国家神道における神武天皇ぐらいの位置づけなのかもね

263( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 03:58:25 ID:MzuLCShk
どうもご無沙汰してます。
ちょっと間が開いてしまいましたが、続き投下したいと思います。

注意事項
・オリキャラ・準オリキャラ注意
・捏造設定オンパレード注意
・ややスバルヘイト気味
・TUEEEEE注意
・NGワードは『熱き彗星の魔導師たち』

264熱き彗星の魔導師たち 29-01/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 03:59:13 ID:MzuLCShk
 ズズン……ズズズズ……
 ユーノとウェンディが艦橋に通じる扉をくぐった途端、激しい振動が『ゆりかご』を揺
さぶった。ユーノは一瞬つんのめりかける。
「今の振動は!?」
 2人は険しい表情で周囲を見渡す。ユーノが反射的に言った。
「うわっ!? なんっスかこれは」
 2人が艦橋に入ると、床が抜けて大穴が開いていた。ウェンディが素っ頓狂な声を出す。
「アリサ……また無茶やったね?」
「るさいわよ」
 その穴の下から浮遊魔法で上昇して来たアリサは、ユーノにそう言われて、空中を直立
の姿勢で漂うようにしながら、不機嫌そうに言う。
「ヴィヴィオ!」
 なのはの声に、3人はその聞こえてきた方を見た。

熱き彗星の魔導師たち〜Lyrical Violence + StrikerS〜
 PHASE-29:A sacred king is two persons(後編)

「うあぁぁぁぁっ!!」
 先程よりは弱まったが、ヴィヴィオからの波状的な魔力放出は続いている。
「ヴィヴィオ!」
 なのはがそれに接近しようと試みているが、ピンク色のシールドが魔力の波とぶつかっ
て激しく火花を散らしている。
「ヴィヴィオ!?」
 ウェンディが素っ頓狂な声を出し、ユーノと共にその姿を凝視した。
「暴走してるの?」
「フネの動力とリンカーコアがリンクさせられてる、ヴィヴィオ本人にも制御できないみ
たい」
 ユーノの問いかけに答えたのはフェイトだった。なのはをアシストするように、張られ
た『聖王の鎧』に向けて、貫通は出来ないことを承知でフォトンランサーを放ち続けてい
る。
「せめて、A.M.F.が完全に解除できれば……」
「出来ないんスか?」
「艦の制御系がベルカ式だから、私達には難しい……っ」
 魔力放射の波が迫り、フェイトは射撃を中断してシールドを張る。
『Round Guarder』
 ユーノがヴィヴィオに向かってアリサの前に出る。緑のラウンド型シールドを展開し、
魔力放射の波を遮る。
「ベルカ式……レンかシグナムを引っ張ってくるんだった……」
 ユーノの背後からヴィヴィオを見つめつつ、アリサは自分の判断を悔いるように言った。

265熱き彗星の魔導師たち 29-02/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:00:22 ID:MzuLCShk
「苦労してるみてーだな」
 アリサやウェンディ達のさらに後方で、その場にいる人間に聞き覚えのある、だが、そ
の理由がわからない声が聞こえてきた。
「ヴィータ!?」
 声の主を振り返って、アリサが目を真ん円くして声を上げる。
「アンタ、どーしてここに」
「け、留守を守れなかった予備隊々長が存在意義なんかあっかよ」
 ヴィータははき捨てるように言った。
「そういう問題じゃないと思うけど」
 ユーノはシールドを這ったまま、ヴィータを軽く振り返って、苦笑した。
「どうせ降格処分待ちの身だしな、おめーらだけじゃ心配だから追っかけてきたんだ」
 ふてくされた様な表情のまま、ヴィータは歩いてウェンディとすれ違い、アリサの傍ら
まで来た。
「もっとも偉そうな事は言えねー、ついさっきまで対空射撃破れなくて外をうろちょろし
てただけだからな。それが止んだんでやっと取り付けた。それに」
 不愉快そうな表情のまま、愚痴るように言ってから、
「その子が連れ去られた責任ぐらいは、とらなきゃなんねーだろ」
 と、真摯な目でヴィヴィオに視線を向け、そう言った。
『Ein Operationssystem wird gerufen』
 グラーフアイゼンのシステムボイスが告げる。ヴィータの足元に真紅の、古代ベルカ式
の魔法陣が出現し、駆動する。
 そのヴィータを取り囲むようにして、先程までクアットロの周囲に出現していたものと
同じ、パイプオルガンのそれを思わせる非実体コンソールが現れた。
「…………」
 コンソールに手を伸ばし、キーに指を滑らせる。
「ヴィータちゃん!」
 なのはがヴィヴィオと凌ぎ合いながら、焦れたような声を出す。
「急かすな、本来こー言うのはあたしの得意分野じゃねーんだ」
 声を荒げて言い返しつつも、ヴィータ自身も焦ったような表情になりつつ、操作を続け
る。
 だが────
「ちっ」
 やがて、ヴィータは毒つくように舌打ちした。
「どうしたのよ」
 アリサが軽く驚いたように問いただす。
「ヴィヴィオを離すことは出来る、ここはスカリエッティが後からいじくった部分だろー
から、外部から干渉できる」
 ヴィータは、少し焦ったような忌々しそうな表情でそう言った。

266熱き彗星の魔導師たち 29-03/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:01:09 ID:MzuLCShk
「だったら、早く……」
「話を最後まで聞け!」
 急かすアリサに、ヴィータは怒鳴り返した。
「本来のフネの制御システムは、聖王の権限じゃねーと制御を受付けねー、つまり、既に
実行されてる命令をキャンセルできねーんだよ!」
「え、じゃ、じゃあ、ヴィヴィオを切り離したら……止められない?」
 ヴィータの言葉に、アリサの表情が引きつった。まるで口元は笑ったかのように見える。

267熱き彗星の魔導師たち 29-04/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:01:53 ID:MzuLCShk

『Stinger blade, Burst shot』
「たっ」
 WS-Fと同軸に発生した、6発の剣をかたどった魔力弾がほとばしる。
『Protection, Dual exercise』
 スバルはシールドを張ると、魔力弾の防御をそれに任せ、構わずに突っ込んでくる。
 着弾で魔力弾を構成する魔力素がベクトルを失う、その際にエネルギーを解放しながら
可視状態の霧になって視界を遮る。
『Flash move』
「そこぉっ!」
『Phantom Blazer』
 素早くマギーが後ろに下がると、相対的に入れ替わったティアナが強力な射撃を放った。
「やった!?」
「ティアナ、上!」
「えっ!?」
 一瞬、ティアナが気を緩ませかけると、その背後からマギーの叫ぶような声が聞こえて
きた。
 反射的に見上げると、跳躍の勢いで天井に脚を着け、膝を折って勢いを溜めているかの
ような、スバルの姿があった。
『Flash move』
「ぐっ」
『Protection, tri』
 ガキィィンッ
 ティアナが一瞬覚悟を決めかけたとき、正に紙一重のタイミングでマギーがそこに割り
込む。
 赤紫のシールドは三重で出現し、スバルの拳を受け止めた。リボルバーナックルとシー
ルドが凌ぎ合い、激しく火花が散る。
 その時、リボルバーナックルを纏ったスバルの拳が、その像がぶれるように振動した。
「! くっ!」
 ビキィッ
 不気味な音を立てて、WS-Fの全体に亀裂が走る。
 だが、マギーは退かず、そのままスバルの拳をシールドで受け止め続ける。
『ティアナ、今のうちに!』
『えっ!?』
 マギーは念話でティアナに言う。
 ビシィッ!
 スバルの拳の圧力が強まる。WS-Fの損傷が目に見えて酷くなる。
『Load Cartridge』
 クロスミラージュのシステムボイス。

268熱き彗星の魔導師たち 29-05/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:02:40 ID:MzuLCShk
「スバルぅぅっ」
 ヒュンッ
 ティアナの声が、スバルのさらに頭上から飛び掛ってくる。
「リングバインド!」
 スバルが反射的に身を退きかけた瞬間、マギーはシールドを解除して姿勢を引くと、WS
-Fを介さずにバインドをかけた。スバルの両手両足首を、魔力光の枷が縛る。
『Phantom blazer』
 バーミリオンの閃光が、今度こそスバルを真芯で捉えた。
 そのまま、潰されるようにスバルは床面に叩きつけられる。
 ティアナが床に着地する。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 荒い息を整えるようにしつつ、即座にスバルとマギーの方を振り返った。
『Memory syntax error. Referring to the registry is impossible. System shutdown』
 ボロボロに、朽ちたようになったWS-Fは、時折異様な抑揚になりながらシステムボイ
スでそう告げると、コアから輝きを失い、そのまま沈黙した。
「っ……」
 マギーは僅かに前に出て、その場で膝を追ってかがむと、スバルに手をかざした。
 マギーの足元で魔力光が魔法陣を描いて駆動する。マギーのかざされた手が、鈍く魔力
光を放った。
「よかった……生命反応はまだある。戦闘機人って頑丈なのね」
 胸を撫で下ろすようにしてそう言いつつ、立ち上がってティアナを見た。
「ティアナ」
 しかし、ティアナの表情は晴れない。
「マギー、それ……」
 ティアナはマギーに近づくと、それを指差した。
 それはマギーの右手に握られている、無残な姿のWS-F。
「ああ……そうね、こうなっちゃうとちょっと修理は無理かな。使える部品はあるだろう
けど、主フレームから交換しないと」
 マギーは僅かに苦笑して、そう言った。
「でも……確か、お父さんの形見だって……言ってなかった?」
 ティアナは哀しげな表情で言う。
「え? あ、まぁ、そうなんだけど、元々はどこにでも売ってる量産品だし、レイジング
ハートみたいに代わりがないってわけじゃないから……」
 ティアナの態度に、マギーは気圧されたような苦笑を浮かべつつ、言った。
「…………そう……」
 ティアナはどこか納得しきれない様子で、歯切れ悪く言った。
「それより、早くアリサたちと合流……」

269熱き彗星の魔導師たち 29-06/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:03:16 ID:MzuLCShk
 ティアナの表情を気にはしつつも、マギーはそう言いかけて、
「あ、でもスバルをこのままにしておくわけにはいかないな……」
 と、気がついてスバルを見る。
「ええ……」
 ティアナも頷き、スバルを見る。
「まぁこのくらいは……レビテーション」
 マギーの足元に魔法陣が駆動したかと思うと、倒れているスバルの下にフリスビーのよ
うな魔力光の板が出現し、スバルをやわらかく持ち上げた。
「私は後から行くわ。ティアナは先に行って」
「え? だけど……」
 マギーが言うが、ティアナは困惑気な表情になって、躊躇うような声を出す。
「大丈夫、ガジェットぐらいならデバイス無しでも何とかなるし」
 マギーは微笑みながら言いつつ、
「それに、どうせアリサ達が根こそぎ潰してったでしょ」
 と、悪戯っぽく苦笑した。
「そうね……」
 まだ浮かない表情をしつつ、ティアナは構成の返事をする。
 半ば振り切るように、ティアナはアリサ達の突入して行った方向に向かって駆け出しか
けて、一瞬立ち止まって振り返る。
「ごめんね、スバル」
 スバルを見て小さく言うと、改めて駆け出していった。
「…………ティア……」
「えっ!?」
 ティアナの姿を見送っていたマギーだが、小さなかすれるような声を、しかし確かに聞
きつけて、驚いて目を円くして、スバルを見た。
 機能停止の仮死状態。だがマギーは今、確かにスバルの声を聞いた。
 一方、ティアナは聞こえたのかそうではないのか、前に進む。
『Fryer fin』
 バリアジャケットのシューズからバーミリオンの、魔力光の羽が出現する。通路に対し
て追従飛行で奥に向かう。通路にはガジェットの残骸が散乱していた。

270熱き彗星の魔導師たち 29-07/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:04:03 ID:MzuLCShk

「それじゃ、どーするって言うのよ!?」
 アリサが、目を見開いた表情で焦ったように言った。
「アルカンシェルの波状射撃をかければ破壊できないことはない……けど」
 ユーノが、ヴィータに向かって身を乗り出しかけた姿勢のアリサの傍らに寄り、険しい
表情で言う。
「そんなことやったら、ミッドチルダの星そのものがなくなっちゃうわよ!」
 ただでさえ(人類が居住可能な)惑星の大気圏内で使用するには威力が過剰な上、レリッ
クの装荷された動力炉を対消滅破壊させようものなら、どれだけの破壊力が放出されるか
わからない。下手をすれば惑星諸共消滅させることになりかねない。
「もうひとつは、大型の次元巡航艦で体当たりさせて墜落させる……」
「それだって、これだけの物が落下したら、地上の被害は免れないでしょ?」
 ユーノが苦い顔のまま言うと、アリサが即座にそう反論した。
 ユーノは引きつりかけた険しい表情で頷いてから、
「それに、今の管理局の、所詮武装警備用を主目的にした巡航艦を体当たりさせたところ
で、破壊できる保証はない、暴走を誘発するかもしれない」
 と、重々しく言った。
「それじゃ駄目じゃない!」
 アリサは食って掛かるように声を荒げた。
「でも……あとは方法は……」
 ユーノが困り果てたように呟いた時、
「ヴィータさん!」
 それまで沈黙していた声が、大きく張り上げられた。
「ベルカ聖王家の人間なら、止める事が出来るんですね?」
「え……あ、ああ、基本の条件はそう言う事だと思うけど……」
 突然声をかけられたヴィータは、面食らって驚いたように目を円くしながら答える。
「ちょっとギンガ、アンタまさか……」
 アリサが信じられないといったように、息を呑む。
 ギンガは大して深刻そうでもない顔で、しっかりと俯く。
「ヴィヴィオはリンカーコアをスカリエッティに干渉されて、自分の意思で制御できない
……でも、そうでない聖王胚の人間なら」
「待って、アリシアが言ってただろう、スカリエッティがヴィヴィオの魔力資質を弄って、
なのはの魔力を吸収させたのはこのフネを制御させる為なんだよ!?」
 ユーノが、やはり驚いたような表情で、反射的にギンガの方に手を伸ばしながら言う。
「君の魔力資質は決して小さい部類じゃないけど、けど……」
 ユーノが言った。
 ユーノと同じように、隣に立つアリサが目を見開いた不安げな表情でギンガに視線を向
けている。

271熱き彗星の魔導師たち 29-08/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:04:34 ID:MzuLCShk
「ギンガ、駄目だよ、そんな事したら……スバルが……」
 シールドで、徐々に減衰していく『聖王の鎧』と凌ぎ合いながら、L4Uを構えたなのは
が言う。
「ギンガ、クイントさんやステラも待ってるんだよ、早まっちゃだめだ、ゲンヤさんだっ
て……」
 フェイトも驚いたように振り返り、言った。
「そうっスよ! あたし達と違って、ギンガやスバル達には血の繋がった家族がいるんス
から……」
 続くように、ウェンディがアリサの背後から、切なそうな表情で声を上げる。
「ありがとうございます、でも、これを止められなければ、もっと多くの悲劇が生まれる
のはわかりきっていることです、父も母も、妹達も……だったら、今出来ることを全部し
ておくべき……」
 ギンガはほとんど緊張もなく、笑みさえ浮かべて言った。
「そうですよね、フェイトさん」
 ギンガはフェイトに視線を向け、そう訊ねた。
「それは……うん……だけど……」
 フェイトは頷きつつも、なおも歯切れが悪い。
「みすみす後悔するような思いはもうしたくない、だから今回管理局の仕事お受けになっ
たんですよね、アリサさん?」
「…………」
 アリサは言葉は口にしなかったが、真剣な眼差しでギンガを見つめる。
「それに、駄目かどうかなんて、やってみなきゃ解らないじゃないですか」
「…………」
「これも、貴方の信念ですよね?」
「…………」
 問いつけるようにしてギンガが言うと、アリサは沈黙していたが、やがて抑えきれない
といったように表情を歪ませると、
「ああ、解ったわよ、やるだけやってみなさい。ただ、いざとなっても助けられる保証な
いわよ」
 と、口調ではぶっきらぼうに言った。
「承知の上です」
 ギンガは、笑みさえ浮かべてさらりと言う。
「大体、魔法使い初めていきなりで、今より少しだけしか弱くなかったフェイトとやり
あったアリサが言っても説得力ないよ」
「っ、ユーノ、言うんじゃないの!」
 ユーノが苦笑交じりに呟くと、アリサは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、ユーノに
食って掛かった。
 一方のフェイトも、恥ずかしそうに顔を赤くしている。

272熱き彗星の魔導師たち 29-09/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:05:15 ID:MzuLCShk
「…………ヴィータさん、お願いします」
「解った」
 ヴィータもまた、険しい表情のままで言い、キーボードの上を手で滑らせた。
「シールド張れ、ヴィヴィオ自身の制御ができてねぇから、接続切った瞬間放射が来る
ぞ」
 ヴィータの声に、各々がシールドを張って身構える。
『Nervenubertragungssteuersystem wird abgesagt』
 グラーフアイゼンのものではない。『聖王のゆりかご』のシステムボイスが告げ、ヴィ
ヴィオに対する戒めが解けた。
 グゥアァァァッ!!
 その瞬間、虹色の魔力光がかかった、強烈な魔力放射が半壊した艦橋を舐めるように放
たれ、各々のシールドと干渉して火花を散らした。
「ぐ……っ」
 コンソールを操作しているヴィータの正面には、ユーノがラウンドシールドを作り出し
ておのれごと魔力放射から防御する。
「ヴィヴィオ!」
 ヴィヴィオを戒めていた指揮官席──すなわち玉座──から、ヴィヴィオが崩れ落ちる。
咄嗟になのはが飛び出して、床に倒れかけたその小さな身体を抱きとめた。
「ヴィヴィオ……!」
「マ……マ……?」
 ヴィヴィオの名を呼ぶなのはの目に、うっすらと涙が浮かぶ。ヴィヴィオはぐったりと
してなのはに寄りかかってしまいつつ、ぼんやりとした表情でなのはを見つめた。
「もう大丈夫だからね、ヴィヴィオ」
「うん…………」
 一瞬、口元で笑んでしまい、ぎゅっとなのははヴィヴィオを抱き締める。だが、すぐに
はっと我に返ったように顔を上げた。
「ギンガ……」
「大丈夫です……」
 なのはの申し訳なさそうな、困惑気な声に、ギンガは僅かに緊張を滲ませて、言った。
「でも、ギンガって現代ベルカでしょ、操作法大丈夫なの?」
 アリサは単純に疑問に思い、呟くように言った。
「それは大丈夫だろ、精神感応システムの一種だからな、言語や魔術式のフォーマットは
関係ない」
 ヴィータが説明した。
「ギンガ」
 ギンガが玉座に手をかけようとした時、アリサが背後から呼び止めた。
 ギンガが振り返ると、アリサは腰のポーチからカートリッジを数発取り出し、ギンガに
向かって投げて渡した。

273熱き彗星の魔導師たち 29-10/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:06:56 ID:MzuLCShk
 ギンガは僅かに姿勢を崩しただけで、それを難なく受け止める。
「魔力資質の大きさが問題なら、カートリッジ使えば多少は改善されるでしょ」
 アリサはプレーンな表情でギンガを見て、そう言った。
「ええ、ですが、カートリッジなら私も……」
「それはいざって時のとっておきなの。官給の量産品とは質が違うのよ」
 ギンガが不思議そうに言いかけると、アリサは得意そうに、口元で笑ってそう言った。
「とっておき……って……」
「ベルカ式とは相性悪いかも知れないけどね」
 ギンガがなおも呆気に取られたような表情で呟くように言うと、ユーノが照れくさそう
な態度になってそう言った。
「そんな事言ったら、古代ベルカ特化のカートリッジなんてシャマルぐらいしか作れない
じゃない」
 横目でユーノを見てアリサが言う。
「まぁ、そうなんだけどね」
 ギンガはアリサとユーノを交互に見てから、
「ありがとうございます」
 と、深く頭を下げる。
 それから、ギンガはリボルバーナックルのカートリッジシステムの薬室に、アリサから
受け取ったカートリッジを装填した。
 そして、ギンガは振り返り、玉座に手をかける。
「────っ!!」
 ギンガの身体に、ビリッ、としびれる衝撃があったかと思うと、玉座を中心にして、虹
色の魔力光の、古代ベルカ式の魔法陣が現れ、駆動を始める。
『Verbinden Sie Einrichtung. Es uberpruft, dab Systemoperationsautoritat existiert』
「ぐぅっ、うぅぅぅっ……」
 『ゆりかご』の動力がリンカーコアに干渉する、灼熱のような感触が、ギンガにのしか
かる。
「ギンガ!」
 たまらず、と言った様に、なのはがその背後から悲痛な声を上げる。
「だ、大丈夫です」
 脂汗を滲ませつつも強気にそう言って、ギンガは玉座に上がる。
「艦内の全A.M.F.解除……推進器減速、変針右15°、上10°……っ」
 ギンガは虹色の煌きを身体から放ちつつ、口に出して呟きながら、『ゆりかご』に命令
を実行させていく。
 ぐらり、『ゆりかご』の飛行方向が変わるのが、艦橋からでも解った。
『……サ…ユー………ェイト、なのは!』
 A.M.F.が解除されると、早速アリシアからの念話が、ギンガを見守る面々に向かって届
いてきた。

274熱き彗星の魔導師たち 29-11/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:07:43 ID:MzuLCShk
『アリシア? A.M.F.は問題ないわ。「聖王のゆりかご」ももう止まる、止められる』
『それは良かった……』
 アリシアは、胸を撫で下ろすかのようにそう言ってから。
『そこに……ウェンディもいるのよね?』
『なんっスか?』
 スクランブルによる対象限定をやっていなかったらしく、アリシアに自分の名前を出さ
れたウェンディが、直接返事をした。
『ごめん、悪い知らせよ────』

275熱き彗星の魔導師たち 29-12/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:08:16 ID:MzuLCShk

「最悪の想定は避けられたみたいやけど、状況が良くなったとはお世辞にも言えへんね」
 レンは、地上本部に間借りしている仮設オフィスの窓から、クラナガンの街を見下ろし
ている。
 レンはそう言ったものの、暴動を起していた暴徒は明らかに浮き足立ち始めていた。
「さて、はやてちゃん」
 レンが振り返ると、自らの事務机の前で椅子に腰掛け、虚脱しかけていたはやてがいた。
傍らにシグナムが付き従うように立っている。
 呆然としていたはやてだったが、レンに声をかけられると、はっと我に返って顔を向け
た。
「な、なに?」
「ケジメ、つけに行くで」
 レンは険しい表情ではやてに近づくと、はやての右手をとった。
 はやては促されるように立ち上がりつつ、キョトン、とレンを見る。シグナムも似たよ
うな表情をしていた。
「ケジメつけにって……どこへ?」
「決まってるやんか」
 レンは険しい表情のまま、答える。
「聖王教会、や」

276熱き彗星の魔導師たち 29-13/12 ◆kd.2f.1cKc:2009/06/16(火) 04:10:34 ID:MzuLCShk
>>264-275
今回は以上です。

ヴィータの登場がとってつけたようなのはそのものズバリです。
ゆりかごは古代ベルカの代物なのにゆりかご突入組に古代ベルカいねーじゃん! と気付いたが後の祭り。
すみませんorz

あと1、2回になるかと思います。

277名無しさん@魔法少女:2009/06/16(火) 19:43:47 ID:DN9ajvSs
>>276
続きがあると待っててよかった。。。
ちょっとぐらいなら問題ないですよ、逆立ちしたって人間は神になんかなれないんだからw

278名無しさん@魔法少女:2009/06/17(水) 14:40:44 ID:g6U8.sA.
>>276
いいとこ無かったヴィータが汚名返上・名誉挽回出来たわけですし、寧ろ怪我の功名ですよ

ラスボスはカリムとヴェロッサか…

279名無しさん@魔法少女:2009/06/17(水) 16:57:34 ID:vtRZb5Go
ついにクライマックスか…
ティアナ修正の件などでマイナスイメージが強かったヴィータも見せ場があって何よりです。
やはり10年前からはやては聖王教会の傀儡になるように動かされていた様で…
聖王教会の真意とレジアスの真意を知った後、はやてはまだ管理局で「自分の理想」を貫けるかが気がかりですね。

聖王教会ヘイトになりそうな次回を楽しみにしてます。

281 ◆6BmcNJgox2:2009/06/17(水) 21:34:49 ID:HFcp70G2
>>280
でも書くじょw

・ユーノの子供産んだなのはが、その子供が産まれる少し前に起こった不思議な体験を回想する話
・非エロ
・オリキャラ出る
・「そんな馬鹿な!?」って事が起こります注意

282生まれる前の親孝行 1 ◆6BmcNJgox2:2009/06/17(水) 21:36:03 ID:HFcp70G2
 長い間百合生活を送っていた高町なのはであったが、脱百合して幼馴染のユーノ=スクライアと結婚。
翌年には元気な赤ん坊をご出産していた。
 そして『ナーノ』と命名したその赤子を連れて病院から退院したなのはの所へスバルとティアナの二人が
お祝いに駆けつけて来ていた。

「なのはさん退院おめでとうございます!」
「本当なら赤ちゃんが生まれて直ぐに来るべきだったんですけど…お互い忙しくて済みません…。」
「別に謝る様な事じゃないよ。」

 なのはに部屋に案内された二人は、そこでベビーベッドに寝かされていたナーノの姿を目にした。

「だ〜。バブ〜。」
「わ〜可愛い女の子ですね〜?」
「残念。ナーノは男の子なの。それにほら、この瞳や髪の毛の色、顔付きもどこかユーノ君に似てるでしょ?」

 驚く二人を尻目になのはは優しい微笑を浮かべながらナーノをゆっくりと抱き上げた。

「この子はね、凄いんだよ。まだ生まれる前の時点で親孝行をしてくれたんだから。」
「え? どういう事ですか?」

 なのはがナーノに対して言った『生まれる前の時点で親孝行』と言う言葉の意味が分からず
スバルとティアナは首を傾げる。

「実はね、こういう事があったの…。」

 なのはは優しく語り始めた…………………


 それはなのはがナーノを産む少し前の事だった。その頃は当然のごとくなのはは妊婦で
ナーノもまたなのはのお腹の中にいた。

「あ、また動いた。」

 お腹の中の子供が動くたびになのはは出産が近い事を確信し、その大きく膨らんだ下腹を
優しく手で摩っていたりしたのだが…………そんな時にそれは起こったのである。

283生まれる前の親孝行 2 ◆6BmcNJgox2:2009/06/17(水) 21:38:07 ID:HFcp70G2
「管理局のエース・オブ・エースもガキ孕んで腹ボテじゃみっともねぇなぁ…。」
「誰!?」

 突然部屋の中に土足で上がりこんで来た一人の男になのはは思わず身構える。
一見ピシッとスーツを着こなしているが…この男明らかに堅気では無い!

「貴方誰!? 何勝手に人の家に上がり込んで来てるの!?」
「殺し屋さんです。」
「殺し屋!?」

 殺し屋と名乗る男になのはは待機状態で首にかけていたレイジングハートを握り、バリアジャケットを
装着したのだが、次の瞬間殺し屋の笑い声が部屋中に響いた。

「ハッハッハッハッハッハッハッ!!」
「何が可笑しいの!?」
「みっともねぇ! みっともねぇなぁ! そのボテ腹、みっともねぇったらありゃしねぇー!」
「なっ…。」

 例えバリアジャケットを装着しようとも、なのはの妊娠して大きく膨らんだお腹が縮まるわけでは無い。
むしろ先程着ていた大き目な部屋着に比べ、バリアジャケットの方がよっぽどその大きなお腹が目立ち、
なのは自身もまた右手でお腹を抱える姿は重そうで苦しそうだった。

「笑うなんて酷い! お腹の中に赤ちゃんがいるんだからお腹が膨らんで当然でしょ!?」
「だからそこが無様だって言ってんだよ! 管理局の偉大なるエース・オブ・エース様も
ガキ孕んで腹ボテじゃぁこの体たらく。全くみっともなくて笑わずにおれるかってんだ!」
「う……………。」

 お腹の子供を馬鹿にする言葉は許せないが、残念ながらなのは本人も彼の言う事は否定出来なかった。
妊娠してお腹が大きくなった状態でバリアジャケットを装着すると言うのはこれで中々恥ずかしく
客観的に見てみっともなく見えてしまっても仕方が無いと思うし、何よりもお腹に子供を宿した状態では
まともに戦えるか怪しい所だ。下手をしてしまえば…流産してしまう可能性だってある………。

 そして今なのはの目の前にいるのはなのはを殺害しに来た事は想像に難くない『殺し屋』
今までも充分に殺すチャンスがありながらあえて姿を見せてなのはの妊婦姿を笑ったりと
お世辞にも一流の殺し屋とは言えないだろうが…それでも今の妊娠したなのはではまともに
相手をする事は難しいかもしれない。

 既に何度も説明されている通り、今なのはのお腹の中にはもう直ぐ生まれるであろう大切な我が子がいる。
まだ生まれる前とは言え約1キログラム程度にまで育っているその子供を宿した状態で戦うのは
なのはとしても辛いし苦しい。それでも本気で戦えば自力で殺し屋を撃退出来るかもしれないが
余り無理をしてしまえば、その拍子で流産してしまう危険性もある。そうなってしまえば
お腹の子供は死を意味する。かと言って戦わなければ殺し屋に母親であるなのは自身が殺されてしまい
それに伴ってやはりお腹の子供は死んでしまう。戦えば流産して子供は死ぬ。戦わなければ
子供もろともなのはが死ぬ。この状況下でなのははどうして良いか分からなかった。

284生まれる前の親孝行 3 ◆6BmcNJgox2:2009/06/17(水) 21:39:39 ID:HFcp70G2
「ハッハッハッ! 如何に管理局のエース・オブ・エース様も所詮は女だったって事だな。
だがおかげで俺は感謝してるぜ。てめぇーがガキ孕んで動き辛くなったおかげでこちらとしても
殺りやすくなったんだからな!」
「くっ!」

 もうこの状況で何とか思い付く事が出来た方法は一つ。とにかくこの場を動かず防御に集中して
救援を待つ事。その為に防御魔法を展開しようとしたが…発動しなかった。

「え!?」
「ガキ孕んでるとは言え魔法使われたらやっかいだからな。この部屋にAMF発生装置を仕掛けさせてもらったぜ。」

 三流っぽいくせに何と用意周到な殺し屋であろうか。今この状態ではなのはは魔法を行使する事が出来ない。
ブラスター等を使えばAMFも跳ね除ける強力な魔力を発動可能であるが…そんな事をしてしまえば
お腹の子供がどうなってしまうか分からない!

「あ、そうだ。ただ殺すだけじゃ面白く無い。てめぇのそのみっともなく膨らんだ腹を裂いて中のガキを
穿り出しててめぇの目の前で八つ裂きにしててめぇを絶望させてから殺すってのはどうだ?」
「なっ…。」

 何と言う残虐な殺し方だろう。なのは自身を殺すのみならずお腹の子供を狙うなど……
なのはは人として、母親として許せる行為では無かったが、殺し屋は情け容赦無くナイフを握っていた。

「くっ! そんな事はさせない! この子だけは…お腹の子だけは守ってみせる!」
「黙れ! エース・オブ・エースのガキなどと…コイツが大人になったらどんなバケモノに
育つか正直分からん! ならば今ここで…まだ生まれる前の胎児の状態で殺っとくに限るだろうが!」

 殺し屋はなのはの握るレイジングハートを蹴り飛ばし、その大きく膨らんだお腹へ向けて
ナイフを振り上げる。このままなのはのお腹を裂いて中に子を殺すつもりだ!

「はっはっはっはっ! 自分のガキの為に死ぬエース・オブ・エースなんてお笑いだなぁぁぁ!!」
「くっ!!」

 なのははお腹の我が子に申し訳無いと思いながらも思わず目を背けた………が……殺し屋のナイフは
なのはのお腹に突き刺さる事は無かった。

「え? ってああ!!」
「く……か……くは………う………。」

 それを見たなのはは驚愕した。殺し屋がナイフを振り上げた所で突如として何処からか発生したバインドが
殺し屋のナイフを握る右腕を締め上げていたのである。

「え? え? どうして?」
「くぁ……何だこりゃぁ………AMFがあるのに……何だこりゃぁ………。」

285生まれる前の親孝行 4 ◆6BmcNJgox2:2009/06/17(水) 21:41:15 ID:HFcp70G2
 確認するまでも無く、殺し屋のAMF発生装置は正常に稼動している。であるにも関わらず
このAMFを物ともしない強力なバインド……。これは一体何処から発生した者だと言うのか?
まずなのは自身と言うのは有り得ないし、他に人がいる気配も無い。

 が…そこでさらなる事態が起こった! 突然なのはの大きく膨らんだお腹が翠色の光を発し
そこからチェーンバインドが飛び出すと共に殺し屋の全身に巻き付いた!

「な…なんだこりゃぁ!!」
「え!? どうして!? 私のお腹からチェーンバインドって…。」

 なのは自身もまた驚愕し、分けも分からず混乱する中、なのはのお腹から発生したチェーンバインドは
まるで殺し屋を絞め殺さんばかりの勢いで締め上げ、なおかつそのまま振り回して壁に強く叩き付けてしまった。

「ぐへ…………。」

 殺し屋は完全に気を失ってしまい、チェーンバインドも消滅したが…なのはには一体何が起こったのか
分からず呆然としていた。そしてなのははチェーンバインドが発生した元である自身の大きく膨らんだお腹に
両手を当て、摩ったのである。

「まさか…この子? この子がやったの!? うそ…うそっでしょ!?」

 まだ生まれてもいないなのはの子供がAMFにも屈しない強力なバインドを発して殺し屋を倒した。
なのは自身も信じられない事だが…今の状況からして他に考えられない。

 なのははなおも現状が信じられず、困惑気味にお腹を摩っていたが…お腹の子供はピクッと動くのみ。

               ナーノが誕生する数日前の事だった……………


「なんて事があったの。凄いね〜。まだ生まれても無いのにママを助けるなんて凄い親孝行な子だよね〜。」
「…………………………。」

 嬉しそうにナーノを抱いて自慢げに語るなのはだが、スバルとティアナの二人は呆れていた。

「なのはさん………それは流石に嘘でしょ?」
「嘘じゃないよ! 本当だよ! 本当にこの子は私を助けてくれたんだよ!」
「それはきっと夢…夢ですよ。なのはさんは夢を見たんですよ。」
「幾ら自分の子供が可愛いからって…流石にそういうのはありませんよね〜。」
「でも状況から見てそうとしか思えないじゃない! ナーノは私を助けてくれたんだよ! 信じてよぉ〜!」

 常識的に見てどう考えてもあり得ないとは言え、なのはの話を信じないスバルとティアナに
なのははむしろ泣きそうになっていたが…

「キャッキャッ、バブ〜。だぁ〜。」

 なのはに抱かれたナーノは無邪気に笑っていた。

                     おしまい

286 ◆6BmcNJgox2:2009/06/17(水) 21:45:16 ID:HFcp70G2
とりあえず今回はここまでです。

>>121
ザフィーラは守護獣ではありますけど一応ヴォルケンの枠ですよね?

287名無しさん@魔法少女:2009/06/17(水) 22:06:34 ID:aP6HkzqM
投下乙であります!
しかしさすがエース・オブ・エースⅡ世、まるで花園垣みたいだ。

288名無しさん@魔法少女:2009/06/18(木) 00:26:57 ID:/MhAnZNU
この赤ん坊、後に尻尾が生えて、月を見たら巨大フェレットになったりしないだろうな…

289名無しさん@魔法少女:2009/06/18(木) 00:33:12 ID:0MamDhI2
実際、このふたりの子供だとやりかねんあたりが怖いなw

そういえば、似たようなシチュの話があったな。
あっちはなのはが捕らわれて、諦め掛けた時、
まだ自分の魔力光も定まらない胎児が生きたいという願いから、
レイジングハートからバスターを発射したという物だったが。

290名無しさん@魔法少女:2009/06/18(木) 18:28:56 ID:Jw0EZsXc
小説版逆シャアでンな描写があったな
ベルトーチカのお腹の中のアムロの子がIフィールド張ってビーム防ぐやつ

291名無しさん@魔法少女:2009/06/18(木) 20:23:04 ID:mQNHbgoU
Iフィールドって超能力の産物だったのか………

292名無しさん@魔法少女:2009/06/18(木) 21:22:46 ID:K9JI1LUc
>>290
年がバレるw

293名無しさん@魔法少女:2009/06/18(木) 21:25:38 ID:620aHkVE
チェーンは死んだのになw

294名無しさん@魔法少女:2009/06/19(金) 10:05:29 ID:W2IOAJ26
>>293
避妊してたんだろ

295名無しさん@魔法少女:2009/06/20(土) 03:47:48 ID:0QfaA9mk
もうerananoの制作者さん、このスレ見てないのかな…。

296名無しさん@魔法少女:2009/06/20(土) 18:38:58 ID:f0gwU62E
見てても作ってないだけじゃね

297Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/06/20(土) 20:11:54 ID:6V3Gkny.
例のはやユノだが、サークルの相棒が先に書いてしまった。
代理で投下を頼まれたのだが、OKだろうか?

298名無しさん@魔法少女:2009/06/20(土) 20:27:12 ID:KMVio4Gc
>>297
OKです。

299名無しさん@魔法少女:2009/06/20(土) 20:27:57 ID:hCk5NFxk
え…突っ込み無し?

300Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/06/20(土) 20:29:57 ID:6V3Gkny.
>298
サンクス。では早速。

・闇の書事件から*年後
・はやて&ユーノ、微エロかもしれないが少なくとも健全
・ユーなの短編集とは果てしなく矛盾

301訓練の後は 1/4:2009/06/20(土) 20:31:43 ID:6V3Gkny.
「それじゃ、次は多体制御に移ってみようか」
「了解や」

ふわりと空に浮かんでしまえば、足の善し悪しは大きな問題から小さな問題へと変わる。
今、はやてはユーノに魔法の教練を受けていた。
「魔法ばっかり気を取られちゃダメだよ、当てる相手は避けもするし、反撃だって」
ユーノは、はやての撃ち出した魔法弾をことごとく避けてみせた。
「できるんだから」
最後の一つを難なくかわす――ふりをして、甘いストレートのごとく強烈に叩き返した。
方向を反転された運動量が、まっすぐはやてに向かっていく。
「くっ、これくらい……」
はやてはスピードを見誤らず、ギリギリのところで身を捩って避けた。
はずだった。
「きゃぁっ!」
クン、と突然光弾の軌道が逸れて、はやてへと襲い掛かった。
魔法が直撃し、はやては痛さに顔をしかめる。
「どうして……?」
避けたはずなのに、いったい何が起きた?
「誘導追尾弾さ。君の撃ったものに、ホーミング機能を追加したって訳。
このやり方だと、動力は相手持ちで簡単に反撃できるからね、覚えておくといいよ」
まったく見上げたものだ。毎回、何かしら新しい戦法や戦術を携えてくる。
どこから得たのかは知らないが、少なくとも暇潰しではあるまい。
「いくら非殺傷といっても、痛覚はきっちりあるからね。大丈夫だった?」
事も無げにユーノが聞いてくる。魔力的な痛みはすぐに引いて、後を残さなかった。
「大丈夫や。伊達に訓練積んでへん」
立ち上がって――という動作が空中でも言えるのか?――、ユーノに笑いかけるはやて。
その顔には、負けず嫌いの魂が宿っていた。
「それじゃ、もう一本お願いや、ユーノ君」
「お安い御用さ」
そうして、はやてとユーノは日が暮れるまで修業に明け暮れたのだった。
本日の戦績、完敗。死角を突く誘導弾の瞬きを破ることはできなかった。

「いつもおおきにな、ユーノ君」
ユーノとの教練が終った後は夕食を振る舞うのが、一つの日常と化していた。
「なのはちゃんの教練メニューと私のと、考えてくれるの大変やろ?」
「うーん、そうでもないかな。やりがいはあるし、二人ともすごい勢いで成長してるし。
僕は毎日が楽しみで仕方ないかな」
笑っている目を見るに、嘘はない。というか、この少年に嘘を吐く力はない。
屈託なく笑うユーノに、はやての心はざわめいた。
「お、おおきにな……さ、もうすぐご飯できるさかい、期待して待っとき」
スープの味見をする。うん、完璧。
そろそろいい匂いに釣られて、皆がやってくる頃だ。
「お、おいしそうじゃん!」
真っ先にやって来たのはヴィータ。
あわよくば摘み食いしようというその手を、はやてはぴしゃりと叩いた。
「いてっ」
「抜け駆けはなしや」
そして、計ったようにシグナムとシャマルも帰ってくる。

302訓練の後は 2/4:2009/06/20(土) 20:32:40 ID:6V3Gkny.
「ただ今帰りました」
「ただいまー。あら、今日はユーノ君が一緒なのね。
我が家だと思ってゆっくりしていって」
シャマルがニコニコ顔でユーノに挨拶する。もう完全に一家のママだ。
「ああ、はやてちゃん」
「なんや、シャマル?」
突然シャマルがはやてに向き直って聞いてくる。
あくまでものほほんと、あくまでも軽い調子で。
「ユーノ君のこと、いくら可愛いからって襲っちゃダメよ?」
「あ、あほぅ! どこの誰がやるかいこの自称17歳!
盛るんならグレアムおじさんにでもしとき!」
はやては顔を真っ赤にして怒鳴った。
心臓がバクバク言って、思うように唇が動かない。
結局口から出てきたのは、照れ隠しみたいな罵倒だった。
身体がすっぽり埋まるほどの墓穴を掘ったシャマルは、もの凄くしょんぼりした顔で洗面所に消えた。
丁度やってきたザフィーラは事態の意味不明さに頭をかしげ、
シグナムはその間一言も言わずにすっかり俗人となった風の癒し手を見送った。

「やっぱりはやての料理はうめーな!」
ヴィータが舌鼓を打ち、他の面々も一同に頷く。
「そんな、おだてても何もでぇへんで?」
軽く手をひらひらさせると、ユーノがぼそり。
「でも、じっさい美味しいと思うな」
その言葉が耳に入ってきた瞬間、はやてはバンバンと隣に座るシグナムの背を叩いた。
突然のことにシグナムはむせ返るが、それでもはやては気にしない。
というか、気にしていられるだけの心の余裕がなかった。
「やぁよ、ユーノ君、そんなおだてて私をどないする気?
私、こう見えて結構ガード固いんやで?」
誰のガードが……と守護騎士一同疑問を抱いたが、一人として口に出す者はなかった。
ユーノがしきりに褒めるので、はやては『これは何かあるな』と思いつつ、
悪い気はしないので褒められるがままにしていた。
「……そないに私のこと良く言うんやったら、頭の一つくらい撫でてもええんに」
小さな呟きはシャマルにだけ聞こえたようで、危うく殴りかかりたくなるようなニヤニヤ笑いを浮かべていた。

***

「しっかし、この足。早く何とかならへんかな?」
闇の書事件からこの方、はやての足は着実に良くなりつつあったが、
それも悪化していた部位が和らいだ程度のこと。簡単には全快してくれない。
痛みや苦しみはもうほとんどないが、地上で立ち上がることはまだできない。
始終車椅子の生活で、ユーノには世話をかけられっぱなしだった。
その本人と、今は部屋でふたり。
はやては机に向かって勉強中。ユーノは、ベッドに腰掛けて何やら本棚から取り出して読んでいるようだ。
マンガか? マンガなのか? まったく、人が勉強している傍で現金な……
『下図の回路についてランプ応答の過渡現象を論ぜよ』
「……」
OK、まずは日本語に翻訳する作業から。
次に等価回路を描いて、微分方程式を
「ええい分かるかボケー!! 普通オームの法則やったら終りちゃうんかこれ!?」
流石は海鳴の宿題、というか全然分からない。頼りになるのはフェイトだけだ。
一通りの悪態を吐くと、また問題に取り掛かったが、解決する兆しはまったくなかった。
いくら難しいとはいえ、睨めっこをいくら続けても糸口すら見えない。

303訓練の後は 3/4:2009/06/20(土) 20:33:23 ID:6V3Gkny.
「どうしたのさ、そんな唸り声上げて?」
ユーノが横からヒョイっと顔を出す。
「ああ、あンの鬼教師がまたアホみたいな宿題出しよって、どうにもならへんのよ」
わらにも縋る思いで、ユーノに問題を見せる。
予定調和というか、彼もまたちんぷんかんぷんのようだった。
「でも、二人で頑張れば何とかなりそうじゃない?」
あまりにもさらっと言い出すものだから、はやては目を丸くした。
「え、でもそんな悪いで。ただでさえ魔法の訓練に付き合うてもろとるのに……」
しかしユーノの方はおかまいなしに、なのはにメールを打っていた。
「今日は遅くなるから、先に寝ててもいいよ……と」
ユーノ呟きに、はやては心臓がトクンと動くのを感じた。
遅くなるってことは、つまり――先になのはが寝るような時間になったとしたら――
ままよ、先に既成事実作ったろか――
「はやて」
「ひゃぁっ!」
情けない声が漏れた。どうやら要らぬ妄想に浸っていたらしい。
「な、なんやびっくりしてまうやないか」
「ごめん、なのはにはもう連絡したから、はやての宿題、手伝えるよ」
屈託のない笑顔に、思わずはやての表情も綻ぶのだった。

「ここはコイルの――」
「せや、あとは電圧がここで一定なんやから……」
苦闘1時間。
気がつけば、問題を解き終っていた。
時間は矢よりも早く進み、むしろ惜しいくらいだった。
「おおきにな。おかげですっかり終ったわ」
「いや、気にしないでいいよ。僕も、はやての学校の問題、一度やってみたかったんだ」
本心からそう思っているのか、ユーノの顔には満足感が表れていた。
はやては、「ほんま、おおきにな」とだけ言って机から離れ、ベッドにぼふりと倒れこんだ。
ずっとユーノの顔が間近にあったのだ、平然でいろという方が難しい。
まだ上手く動かない足が淡く疼く。
『シャマル、余計なこと喋っておいてからに……』
無理矢理にでも意識してしまう。いや、むしろ意識させられてしまう――気づいてしまった。
ユーノが、好きだということを。
思えば、魔法は守護騎士の面々に聞けばいいのであって、わざわざユーノを呼び出す必要はないのだ。
無意識のうちに、一緒にいたいと願っていた。
でも、だからこそ、こうして今一緒にいられる。
「ん、もうこんな時間だ。それじゃはやて、僕はこれで帰るから」
ユーノが帰ってしまう。
「ちょ、ちょっと待って……!」
はやては意味もなく引き止めた。
「ん、何?」と聞いてくるユーノに、思わず言い澱む。
「あ、えーと、特に用事って訳やないんだけど……」
言いたいことがあったはずなのに、何故か頭が真っ白になって言葉が出ない。
心の中で自分を殴りながら、この短時間でできることを必死に考えた。
その結論は……

「これは訓練のお礼や、皆には内緒やで?」
ちゅ。
頬にキスして、はやてははにかんだ。
「え? ……え!?」
唖然としていたユーノの顔が、一瞬で真っ赤になる。
見ていて面白いくらいだ。
……この時、どうしてユーノが唖然としていたのかを知るのは、翌朝のこととなる。
ポーッと目の焦点が合わなくなっているユーノを、ボンと叩いた。

304訓練の後は 4/4:2009/06/20(土) 20:34:10 ID:6V3Gkny.
「ほら、帰るんやろ? それともこのまま続きでもするか?」
ユーノが耳まで赤く染まっていく。
そんな顔、見ているこっちが恥ずかしい。
「な、なんや、本気にしとるんか? 冗談やて、冗談」
心のモヤモヤを振り払うように手を動かして、ユーノの肩に手を置く。
そしてそのまま、ベッドに引き込み、押し倒した。
自分でも何をしたのか、その瞬間には分からなかった。
けれど、ユーノを組み敷いていると頭が追いついたきり、はやての意識に火がついた。
「は、はやて……?」
戸惑ったような、期待を込めたような、そんなユーノの声がこだまする。
ユーノだって男だ。どうやったって限界というものは来る。
「これはお礼や、せやから何も気にすることあらへん……」
唇にキス。
舌を割り込んで、ユーノを味わう。
「今夜は帰さへん……」

***

翌朝。
「すまんなあ、朝帰りさせてしもて」
「ああ、気にしないで。泊まるって決めたのは僕だから」

結局、キスどまりだった。ヘタレここに極めり。
完全に茹って気絶とは、はっきり言って救いようがない。
中途半端。そう中途半端すぎる。
「あぁ、何やっとるんやろ私……」
車椅子の中で縮こまりながら、軽い自己嫌悪でユーノを見送る。
しかも今日は学校だ。この後こんな顔でなのは達に会うのか。
「今ならニートの気持ちが分かる気がするわ」
遠い目で空を見上げるはやて。
すると、ユーノがぱたぱたと戻ってきた。
「ごめん、一つ言い忘れてたことがあったんだ」
『どうして忘れてたんだろう』と苦笑交じりに言うユーノ。
一体どうしたというのだろう?
「はやて」
急に抱き寄せられた。
「僕も好きだよ」
唇を奪われる。
きつく、身体を抱きしめられる。
「ユ、ユーノ君……私のこと、好きなん?」
なのはちゃんより? と野暮なことは聞かなかった。いや、聞けなかった。
はやてより先に、ユーノはいとも簡単に答えたのだ。
「なのはとは友達だから。ううん、友達でいたいから。
"好き"でいたいのは、はやての方かな。だって──」
もう一度、額にキス。
「はやての方が可愛いから」
はやては心臓が飛び上がりそうだった。
バクバクと鼓動を打ち、ちっとも静まってくれない。
これ以上そんなことを言わないで、おかしくなってしまうから……
「それじゃ、またね」
随分と腑の抜けた顔で見送っていたのだろう、と思う。
笑顔で手を振り去っていく、ユーノの後姿を、はやてはいつまでもいつまでも見つめていた。

305Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/06/20(土) 20:34:58 ID:6V3Gkny.
ヴィヴィオ長編は明日にでも投下できると思う。
ではまた。

306名無しさん@魔法少女:2009/06/21(日) 01:03:07 ID:Jvtx6hu6
いつもいつも乙
ところで中学校で制御工学とか電気・電子工学とかやったっけ?

307B・A:2009/06/21(日) 02:30:03 ID:zEnqvQLg
最終回の投下いきます。

注意事項
・非エロです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・主人公はスバル(とエリオ)
・SSXネタもたまに含まれます
・遂に最終回
・エリオの悲惨さMAX
・ご都合主義もある
・BADENDではないが、ハッピーエンドでもない
・タイトルは「UNDERDOGS」  訳:負け犬

308UNDERDOGS 最終話①:2009/06/21(日) 02:30:45 ID:zEnqvQLg
今でも時々、夢に見ることがある。
もしも、あの時に別の選択をしていたのなら、どんな結末を迎えていたのかと。
幾度となく繰り返した自問を、ウーノはもう一度胸中で反芻する。
しかし、どれだけ考えを巡らせても答えは見つからない。
愛する男と共に世界を手に入れていたか。
最愛の男の複製と共に陰で世界を支配していたか。
共に罪を償う道を模索していたか。
自爆した複製のように、無様な死を晒していたか。
答えは無限に存在し、そのどれもが虚無という霧の中に隠れている。
選ばれた結果以外は全てがまやかし。それが世界の掟であり、真理なのだ。

「お母さん?」

不意に幼い声で我に返り、顔を上げる。
すると、まだあどけなさの残る幼い顔がそこにあった。
心配そうにこちらを見上げる我が子の顔を見て、ウーノは思わず息を呑んだ。
わかっていながらも、彼の幼い容貌に父親の容姿が重なってしまう。

「お母さん」

「え、ええ…………ごめんなさい。何か用、坊や?」

「ううん。けど、元気なかったから…………はい」

少年が泥だらけの手で差し出したのは、彼がどこからか摘んできた白い野花であった。
最近、物思いに耽ることが多くなった自分のために採って来てくれたのであろう。
ウーノは不器用ながらも微笑みながら白い花を受け取ると、我が子の頭を優しく撫でた。

「ありがとう、坊や」

「うん。次はもっと綺麗なお花、採ってくるね」

無邪気な笑顔を浮かべ、少年は草原へと駆け出していった。
走り去る小さな背中を見送りながら、ウーノは少しだけ悲しそうに微笑する。
ゆりかごで死亡したスカリエッティから、ウーノはある秘密任務を帯びていた。
それは、来るべき反抗勢力との戦いの中で死を偽造し、誰の目も届かない辺境世界で
ジェイル・スカリエッティのクローンを出産することであった。
元々、スカリエッティは何らかの理由で自分が死亡した時のバックアップとして、
ナンバーズに自身の複製を仕込んでいた。結局、3年前の戦いでは自分達の圧勝で終わったため、
複製が生まれることはなかったが、3年間のゆりかごでの生活の中で、
スカリエッティはより安全な生活を手に入れる術を思いついていた。
それは、全てのナンバーズが死亡した状態で、自らの命を絶つことであった。
ゆりかごは確かに強力で堅牢な守りではあったが、次元世界中の反抗勢力にその命を狙われていることに変わりはない。
生命操作技術を完成させるための穏やかな環境を求めていたスカリエッティにとって、それは決して喜ばしい状態ではなかった。
だから、彼は一度死ぬことにしたのだ。
全てのナンバーズを死亡させて、バックアップの複製がないと人々に思わせた状態で己の死を公とする。
そして、誰も知らない辺境世界に用意した住居で新たなクローンが生まれれば、誰からも命を狙われることのない、
平和で穏やかな生活を手に入れられることができる。そのための母胎として、最も人前に出ることがなく、
認知度の低かったウーノが選ばれたのだ。このことはトーレやクアットロすら知らされておらず、
ウーノとスカリエッティの2人だけが共有していた秘密であった。
そして、形だけを見繕った彼女のクローンはレジスタンスの眼前で自爆し、スカリエッティもまたゆりかごと運命を共にした。
彼があの日まで、人々の恨み買うような非道な行為を繰り返していたのは、本能に刻まれた無限の欲望以外にも、
倒されるべき悪役として憎しみを募らせる必要があったからだ。
全ては、スカリエッティの思惑通りに進んでいたのである。
だが、土壇場になってウーノは最愛の男を裏切ってしまった。
彼女は、生まれた子どもにジェイル・スカリエッティとしての記憶を与えなかったのである。

309UNDERDOGS 最終話②:2009/06/21(日) 02:32:29 ID:zEnqvQLg
「申し訳ありません、ドクター。ですが、あなたは知っていたはずです。
複製はオリジナルにはなれない…………フェイトお嬢様が、アリシア・テスタロッサに
なれなかったように。知っていてなお、あなたは複製による生存を望んだ。
私にはそれが耐えられなかった。私にとってジェイル・スカリエッティはあなただけ。
私を生み出し、育て、共に夢を分かち合ったあなただけ。生まれた複製に、
ドクターの声と記憶で語りかけられても、それがあなたでないのなら……………私は、
あなたの死を望みます。あなたの死と、その血脈を受け継いだあの子……………私がお腹を痛めて生んだ、
あなたの息子。もうあなたが生まれることはない。例え誰かがドクターの複製を生み出したとしても、
あの子の父親が私の愛したあなたであることに変わりはありません。ドクターの存在は、
私とあの子の中で永遠となります……………それが、私の最初で最後のあなたへの反抗です」

ウーノの頬を、一筋の涙が伝う。
愛した男の存在をこの世に残すためとはいえ、自分は最愛の人の願いを踏み躙った。
その罪悪感から解放される日が来ることはないだろう。
これからも、我が子の顔を見る度に、自分は愛する男を殺した罪の意識に苛まれるのだ。
特にここ最近は、日に日に彼へと似つつある我が子の顔を見ることがとても辛かった。
抑制剤を投与してはいるが、それでも狂気の天才が生み出した技術は異常な速度で発育を促している。
10歳ほどの容貌であるにも関わらず、あの子はまだ生まれて半年にも満たない幼子なのだ。

「私の坊や…………いつかあなたは、きっと自分の生まれを呪うでしょう。
私とドクターを……………あなたの父親を憎むでしょう。けれど、信じて頂戴。
お母さんは、心からあなたの幸せを望んでいるの…………それだけは、本当だから」

あの子が父親と同じく無限の欲望に囚われ、狂気に走るか。それとも理性を持った凡庸な人間となるかは、まだわからない。
自分にできることは、あの子が人並みの暮らしに幸福を感じられるように、精一杯の愛情を注ぐことだけだ。
この命が尽きる、その日まで。





ゆりかごが堕ちてから、半年が経過した。
次元世界規模で起きた争いは時空管理局だけでなく、全ての世界に甚大な被害をもたらした。
本局と地上本部の壊滅という最悪こそ免れたものの、支援を受けられなかった各次元世界の管理局支部は
壊滅状態に陥っており、次元間の交流も半ば断絶しつつある。
貿易や人の行き来が途絶え、社会機能が麻痺して滅びの兆しを見せる世界すらあった。
この混乱に乗じて管理局体勢から離反し、独立を宣言する世界まで出る始末だ。
そんな中、かつて時空管理局地上本部と呼ばれた建物で、元時空管理局本局統幕議長ミゼット・クローベルによる演説が行われていた。

『我々は辛い戦いを経験しました。全ては時空管理局が……………かつて私達が願いを託した組織が招いた結果です。
人間は欲深く、愚かで卑しい生き物なのかもしれません。他者より豊かで幸福な暮らしを、今よりも便利な社会を、
誰にも犯されない安心を。その思いが今日までの歴史を形作ってきました。ですが、強すぎる思いは時に災いを招きます。
何故、私達は質量兵器を捨てて魔法文明を育んできたのか。何故、魔法に代わる力として質量兵器を求めたのか。
今一度、私達は考えなければならないのかもしれません。我々が真に望まねばならない平和と、勝ち取るべき秩序を。
今日、ここにお集まりの皆さんの前で、私はもう一度謝罪したいと思います。そして、改めて宣言します。
時空管理局を解体し、今ここに新たな組織を樹立することを。次元を隔てた友と手を取り合い、
二度と過ちを犯さぬために。我ら時空共和機構は、あなた達と共に歩んでいくことをここに誓います』

演説を終え、ミゼットが謝罪の言葉で締めくくると、疎らな拍手が彼女を包み込んだ。
聴衆は決して多くはない。恐らく、100人にも満たないはずだ。
新組織の発足とはいえ、その長が時空管理局の元重役である以上、仕方のないことであった。
半年前の一件で時空管理局の闇が浮き彫りになって以来、市民達の管理局への支持率は大幅な下落を見せていた。
清廉潔白を謳いながら、裏で人道に反した行為を繰り返していたのだ。それも無理はない。
何より、各次元世界とのやり取りすらままならない現状では、時空管理局という組織そのものの存続が不可能であった。
故に伝説の三提督や穏健派の管理局重役、レジスタンスの主要幹部は議論を重ね、管理局に代わる新たな組織を作り出すことにした。
それが、時空共和機構である。
隔たれた次元の壁を超え、共に平和を築いていく組織。
その暫定代表となったのが、ミゼット元本局統幕議長である。

310UNDERDOGS 最終話3:2009/06/21(日) 02:33:11 ID:zEnqvQLg
「無事に終わったか」

ビルの上から演説を見守っていたユーノは、撤収を始めたミゼット達を見て何気なく呟いた。
彼女は市民と同じ立場に立って言葉を伝えたいという思いから、敢えて瓦礫で囲まれた一角を会場に選んだ。
そのため、ユーノは旧管理局勢力に反感を抱く者達の暴動を警戒していたのだ。

「彼女はあくまで暫定代表。組織が軌道に乗ったら、正式に選挙を行って初代代表を決めるそうだ」

いつもの防護服ではなく、私服にサングラスという出で立ちのクロノが傍らの親友に囁く。

「僕達がやらなきゃいけないことは、後に続く人達の下地造りか。質量兵器の条件付き廃止に
戦闘機人システムの安全化、廃人になった機人達の治療、法制度の改正に各次元世界との交渉、
後進の育成と治安維持。何より、共和機構が管理局とは違うというところをハッキリと示さなきゃならない。
やらなきゃいけないことは多いね」

共和機構はかつての管理局のように質量兵器の根絶を目指すのではなく、武力利用の禁止を掲げていた。
一度放てば恐ろしい破壊力を生み出す質量兵器ではあるが、瓦礫の除去や工作に関しては有効であり、
魔法に代わる主力として大量破壊兵器を配備している世界も存在する。
実弾デバイスと同じく、ある程度は規制を緩めなければ各世界の賛同は得られないと考えた故の判断だ。
機人化技術に関しては、システム基幹部に位置するコンシデレーション・コンソールを取り外しての
起動が成功するまでは封印されることとなった。最も、その研究自体が人道に反するため、
実用化されることはまずあり得ないというのがマリエルの推論だ。
結果、共和機構の戦力は3年前と同じく人的資源に依存する形となり、
その中核を元レジスタンスと聖王教会騎士団が占めることとなった。

「機人化技術を手土産に野に下った技術者や、共和機構に賛同しなかった反抗勢力も多い。
何より、復興のための資源を奪い合って他所の世界が戦争している始末だ。
荒事は僕達の仕事だな。最も、犯罪者が正規部隊に組み込まれることはないだろうけど」

自嘲するように呟いたクロノは、照りつける陽光を眩しそうに手で遮ると、
反転して足下の影へと視線を落とす。
彼らがゆりかごを堕とし、スカリエッティを討ち取ったことを民衆は知らない。
伝説の三提督や旧管理局穏健派は限りなく黒に近いグレーゾーンという形で市民に受け入れられているが、
過激な行動を取り続けたクラウディアの面々が表舞台に立つようなことがあれば、不満を露にする者が現れるかもしれないからだ。
だから、クロノとフェイトは表向き共和機構には加わらず、正規部隊が動けない状況に備えた切り札として闇に潜むらしい。
アースラは記録の上では既に存在しない艦であるため、潜伏するにはもってこいだ。
一方、裏方として表に出なかったユーノやヴェロッサは、オーリス達と共に共和機構へと参加し、
組織の運営に携わることとなった。皮肉にもスカリエッティの研究や旧管理局の侵略行為による略奪によって得た
情報が無限書庫に加えられたため、その整理と検索のためにユーノは重宝されているらしい。
司書の中には、伝説の司書長が帰って来たと噂する者までいるようだ。

「そろそろ行かないと。アースラでフェイト達が待っている」

「待って。本当に行くのかい? エイミィや子ども達は? もう会わないつもりかい?」

「僕の罪は消えない。こんな手で妻や子ども達を抱き締められる訳がないだろう。
それに、いつまでも仲間面しない方が良い。案外、次は敵同士かもな」

「冗談でもそんなことは口にしない方が良い。その時は、僕が引っ叩いてでも頭を冷やさせるさ」

「やってみろよ、フェレットもどき」

「ああ、やってやるさ。友達だからな」

311UNDERDOGS 最終話④:2009/06/21(日) 02:33:47 ID:zEnqvQLg
視線を交わらせずに拳を合わせ、2人はその場を後にする。
クロノは光の届かぬ次元の闇へ。
ユーノは闇に浮かぶ智慧の宝庫へ。
抜けるような青空が、去っていく2人を静かに見守っていた。





手狭になったオフィスを見回し、グリフィスは自嘲するように笑みを浮かべた。
かつては中将にまで上り詰めた男も、今では一介の共和機構構成員に過ぎない。
たくさんの部下も絶大な権力も失い、与えられたのは朽ちかけた2階建てビルと1人の秘書、
そして少数の武装隊だけだ。
そこにかつての栄華は見る影もなかったが、グリフィスに後悔はなかった。
寧ろ、再スタートには相応しい待遇だと思っていた。
彼の実力を考えれば、共和機構の中核を成してもおかしくはない。
事実、共和機構設立の際は三提督やオーリスと同じく幹部として組織の運営に関わって欲しいと要請された。
だが、グリフィスはそれを断り、壊滅した辺境世界の旧管理局支部を立て直す役割を買って出た。
理由はどうあれ、自分は多くの人々を傷つけた。大義を掲げて己の正義を見失った。
いったいどうすれば、償うことができるのかわからない。
だから、グリフィスはもう一度、ゼロから始めることにしたのだ。
権力を持たず、一支部の支部長として、そこに住む人々の生活を見守りながら、力と正義について考え直すために。
ただ、1つだけ気がかりがあるとすれば、共にこの世界へとやって来た秘書官のことであった。

「本当に良かったのかい、ルキノ? 僕なんかと一緒に来て?」

「うん。私は、グリフィスと一緒に歩こうって決めたから」

少しだけため息交じりに、ルキノは答える。
ミッドチルダからここに来るまでの数時間、グリフィスは延々と同じ質問を繰り返していたのだ。

「約束したでしょ、一緒に償う方法を探そうって。あなたがここから始めるのなら、私も一緒。
あなたの隣が私のいるべき場所なの」

「ルキノ………………ありがとう」

ずれた眼鏡の角度を直し、グリフィスは立てつけの悪い窓を開く。
長らく放置されていたためか、建物の至る所にガタがきており、床には砂埃が堆積している。
だが、2階の窓からは人々の営みを見下ろすことができ、暖かい陽光が自分達を包み込むように照りつけている。
この景色を目に焼き付けておけば、きっと自分は答えを見つけることができるであろう。
何が市民のためとなるのか、どうすれば公共の正義を貫けるのか。
この街で、必ず答えを見つけてみせる。
しかし、その前にやらねばならないことがあった。

「とりあえず……………」

「まずは掃除からだね」

咳き込みながら、2人は箒と雑巾を手に取った。
2人の旅立ちは、まだ始まったばかりである。





戦闘機人の暴走によって、次元世界の各都市は壊滅的な打撃を受けた。
ライフラインは断たれ、都市機能は麻痺し、道路には破壊されたビルの瓦礫が転がっている。
何しろ、全ての陸士隊に配備されていた戦闘機人が同時に暴れ出したのだ。戦場は世界全域に及び、
各隊の魔導師達は寸断された指揮系統が立て直されるまで、場当たり的な対処を余儀なくされた。
中には、共同戦線を取るはずのレジスタンスと反目し、同士討ちするケースもあったようだ。
結果として甚大な被害がもたらされ、半年が経った今でも復興は進んでいない。
ミッドチルダもその例外ではなく、科学を謳歌した首都クラナガンも今では瓦礫に囲まれた廃墟の1つである。
だが、それでも人々は、懸命に今を生きている。
そこが故郷だから、自らが住まう土地だからと己を鼓舞し、暗く冷たい夜に震えながら朝日が射すのを待っている。
そんなクラナガンの一角に、小さな運送会社があった。

312UNDERDOGS 最終話⑤:2009/06/21(日) 02:34:42 ID:zEnqvQLg
「はい、安心と信頼がモットーのN2Rデリバリーサービスです。はい…………明日の正午までですか? 
はい、可能です。それで荷物は……………はい、わかりました。お昼過ぎにこちらから伺いします。
はい、ありがとうございます」

用件をメモに書き写すと、恭しく一礼してから受話器を元の位置に戻す。
自分でも慣れてきたなと、オットーは唇の端を吊り上げた。
ゆりかごでの戦いを終え、破損した体の修理を終えたオットーとディードは、
かねてからの願いであった自由な生活を送るためにアースラを後にした。
もちろん、3年間も苦楽を共にした仲間と別れることは心苦しかったが、
それ以上に地に足をつけて暮らしたいという思いの方が強かった。
戦いとは無縁の、平和で穏やかな生活。
戦うために生み出された自分達が、誰も傷つけない生き方を示すことが、
戦いの中で散っていった姉妹達への手向けになると2人は信じていた。
そして、クロノ・ハラオウンから幾ばくかの生活資金を受け取り、もしもの時は力を貸す約束を交わした後、
2人は倒壊寸前の廃ビルを買い取って運送会社を設立したのである。
最初はトラブルの連続だった。
抑揚のない喋り方や世間知らずなせいで客を怒らせてしまったことは一度や二度ではないし、
積み荷を強盗に奪われそうになったこともあった。勢い余って機人の力を振るいかけたことも何度かある。
だが、その度に2人は姉妹の絆を支えに互いを励まし合い、逆境を乗り越えてきた。
やがて、共和機構に参加するヴェロッサの近くにいたいがためにアースラを降りたセインや、
思うところあってクラナガンにやって来たノーヴェも加わり、会社の運営も少しずつ軌道に乗り始めていった。

「ただいま、オットー」

蝶番の壊れた扉が軋みながら開き、ライダースーツに身を包んだディードが配達から戻ってくる。
そして、客から貰った配達代を背負っていた鞄から取り出すと、オットーが座る机の上へと投げ置いた。

「おかえり、ディード。どう、慣れてきた?」

「ええ。お得意様もできてきたし、バイクの運転がこんなに楽しいなんて思わなかった」

「それは良かった。実は、大口の注文が1件入ったんだ。昼過ぎくらいに行ってもらえるかな?」

「了解、オットー」

「それと、シャワーを直しておいたから浴びると良いよ。お湯はでないけどね」

「ありがとう、それだけで十分よ」

疲労の混じった息を漏らしながら、ディードは窮屈なライダースーツのジッパーを下して、
蒸れた素肌に風を送り込む。その時、プライベートルームへと繋がる扉が勢いよく開き、
携帯電話を手にしたセインが満面の笑顔でオフィスへと駆け込んできた。

「ねえねえ、ロッサが今度、目の手術を受けるんだって。上手くいけば視力が戻るかもしれないって!」

室内を飛び跳ねながら、セインは全身で喜びを表現する。
彼を傷つけてしまったことに負い目を感じ、ずっと世話をしてきたセインにとって、
ヴェロッサの視力の回復はとても喜ばしいことであった。
最も、伝票の整理を始めていたオットーは内心、気が散るから静かにして欲しいなと思っていた。

「頭の病気だったから、クローン治療ってできないでしょ。凄く難しい手術らしいんだけど、
お医者さんも見つかって。ああ、良かった。これでロッサにちゃんとあたしを見てもらえる」

「良かったですね、セイン姉様」

「ありがとう、ディード。ロッサの実家の方もゴタゴタが落ち着いてきたみたいだし、
やってうまく回ってきたって感じだよ」

「実家…………聖王教会ですか?」

「うん。陛下のこともあって、信者の人達と教会でかなり揉めていたでしょ。
けど、騎士カリムがうまくやってくれてさ。何とか持ち直したみたいなんだ」

「ああ、『聖王の人間宣言』だね」

313UNDERDOGS 最終話⑥:2009/06/21(日) 02:35:28 ID:zEnqvQLg
ゆりかご戦の後、今まで聖王として崇めてきたヴィヴィオの是非を巡って教会内で激しい論争が繰り広げられた。
ヴィヴィオを聖王として肯定する者、否定する者、権威の失墜を恐れる者、信者達の信頼を取り戻そうとする者。
様々な思惑が交錯し、やがてその矛先は公の場で聖王を否定したカリムへと向けられた。
だが、カリムは臆することなく会見の場を設けると、そこで聖王がスカリエッティによって生み出されたクローンであり、
彼女もまた悪漢の被害者であったことを涙ながらに訴えた。
これが、後の世に残る『聖王の人間宣言』である。
確かに聖王教会は、古代ベルカの聖王を神と崇めている。だが、半年前まで聖王として君臨していたヴィヴィオは、
聖王である前に1人の人間であり、スカリエッティによって人生を狂わされた被害者であることを強調し、
教会もまた騙されていたのだと訴えかけたのだ。
無論、その発表を巡って波乱も起きたが、信者達は亡くなられたヴィヴィオに対して深く同情し、
教会を攻撃することはなかった。こうして、聖王教会の権威の失墜だけは免れたのである。
現在は、損なわれたイメージを回復するために、率先して治安維持活動に励んでいるらしい。
共和機構への協力もその一環なのだ。

「教会か…………ディエチ、元気にしているかな?」

フェイトに敗れ、ゆりかごより連れ出されたディエチは、聖王教会へと身を寄せていた。
守ると心に決めていた聖王を失い、一時は食事も取らぬほど塞ぎこんでいたようだが、
今では信仰に生きる糧を見出し、シスターとして奉仕活動に精を出しているようだ。

「ディエチ姉様、ドクターのことで何か知っていたのかもしれません」

「ディエチが?」

「ノーヴェ姉様がそう言っていました。意味深な発言が多かったと」

「気づいていたのかもしれない。ドクターが何を目指して、何をしたかったのかを」

彼女がそれを語ることはないだろう。
無論、知りたくもなかった。そんなことよりも、今の生活の方がもっと大切だ。

「それじゃ、今からロッサのお見舞いに行くから、今日は早退ってことで」

暗くなった空気を誤魔化すように手を叩き、セインは鮮やかにその場を後にする。
まるで嵐のように飛び出していった姉を呼び止めることもできず、
2人は呆気に取られながら互いの顔を見やることしかできなかった。

「姉様……………」

「今日もサボりと…………今月は4割引かな」

入社以来、ずっと記録し続けている出勤表にセインが早退した旨を書き記したオットーは、
ズラリと並ぶ欠勤と早退のマークを見て苦笑する。

「ああ、そう言えばノーヴェ姉様は? 今日は朝から見かけないけれど?」

「ノーヴェは休みだよ。何でも、探していた人が見つかったらしい」

「それって………………」

「わからないけど、きっとチンク姉様関係だと思うよ。ノーヴェがあんなに真剣になるのは、
あの人かスバルのことくらいだ」

呟きながら、オットーは出勤表を閉じて伝票の整理を再開する。
きっと、自分達が踏み込むの許されない話なのだろう。
ディードもそれを察したのか、小さく頷いて別室へと消えていった。





ようやく見つけた彼女の家は、それほど大きくないアパートの一室であった。
幸いにもこの付近は戦場にならなかったのか、外壁にいくつか亀裂が入っていることを除けば、
アパートの被害はほとんどなかった。だからなのか、この辺は復興も進んでおり、通りには商店なども見られる。
自分達が暮らしている区画と比べると雲泥の差だ。

314UNDERDOGS 最終話⑦:2009/06/21(日) 02:36:09 ID:zEnqvQLg
「女の子の1人暮らしか。治安が良かったのは救いだったろうな」

見上げた表札には、『グランセニック』と記されていた。
ここに住んでいるのは、チンクと共に爆死したヴァイス・グランセニックの妹だ。
ノーヴェがアースラを降りてクラナガンへとやって来たのは、彼女に兄の死を知らせるためであった。

「まだ、信じているんだよな」

聞いた話では、ヴァイスの妹は今でも兄の帰りを待ち続けているらしい。
3年前に行方不明となった兄の生存を信じ、この小さな部屋でずっと待ち続けているのだ。
自分はこれから、彼女の僅かな希望を打ち砕かねばならない。
残酷に、無慈悲に、最愛の兄の死亡を突きつけねばならない。
どこまで話せるのかはわからない。
兄を殺した者と関係のある自分を、彼女は憎むかもしれない。
それでも自分は、告げねばならない。過去に囚われた者に現実を突きつけ、明日へを目を向けるために。
それが、生き残った自分に課せられた役目なのだから。

「チンク姉、良いよな?」

緊張で汗ばむ手を拭い、ノーヴェはゆっくりとインターホンに指を押し付ける。
程なくして、年若い少女が姿を現した。





一時は消滅も危ぶまれたザフィーラではあったが、シャマルの懸命な治療の甲斐もあり、
何とか一命を取り留めることができた。現在は状態も安定しており、アースラ内の医務室に入院しつつ、
1日でも早い復帰を目指してリハビリの日々を送っている。

「けれど、本当に心配したんだよ。2ヶ月前まで意識不明だったんだから」

世話役として医務室に常駐しているアルフが、器用にリンゴの皮を剥きながら言う。
少し離れたところには、部屋の主であるシャマルと見舞いに訪れたリインがいたが、
2人に気を利かせて話しかけてくることはなかった。

「あんた、陰でこっそり無茶なリハビリとかしていないだろうね? 無理は体に悪いんだよ」

「わかっている。折角、生き残れた身だ。そうそう無駄には使わんさ」

切り分けられたリンゴを口へと頬張り、咀嚼し終えた後にザフィーラは返答する。
素知らぬ振りをしているが、実際にはまだ歩くのもやっとな状態であるため、
アルフが言うような無茶ができない状態だ。もう少しだけ回復したら、
少しリハビリのプログラムを前倒ししてもらうつもりでいるのは秘密だが。

「けど、これからどうなるんだろうね? みんな、いなくなっちゃってさ」

「去る者もいれば残る者もいる。奴らには奴らの、我らには我らの生きる道がある。
何より、ここで諦めては涅槃であいつらに合わす顔がないからな。
例え冥府魔道を歩むことになろうと、成さねばならぬことがある。
ならば、後はその運命に従うまでだ」

「運命ね。嫌な響きだ」

「自分の手で切り開くか?」

「そういうもんじゃないのかい?」

「確かにその一面もある。だが、運命は常に我らに痛みを求める。
抗おうとすれば苦難が待ち受け、沈黙すれば終わりのない暗闇へと堕とされる。
一生の中で、正しい行いが光を掴むことは稀だ。だが、それでも人は光を求めてしまう。
その眩い輝きに目を奪われ、心の底から成したいと思った行いを成そうとする。
その果てに目的を見誤り、謝った選択をすることもある。彼らは気づいていない。
その輝きがどこから発せられているのかを。目の前にある光が、何から反射されたものなのかを」

「運命は、常に自分の中にあると言いたいの?」

今まで沈黙を守っていたシャマルが、不意に言葉を挟む。

315UNDERDOGS 最終話⑧:2009/06/21(日) 02:36:59 ID:zEnqvQLg
「人は生まれも境遇も選べない。けれど、どう生きるかは選ぶことができる。
誰もが掴みたいと思っている光……………胸に宿った彗星のような光は、
正しい行いをした者にだけ掴むことができる」

「何を成すかじゃなくて、どう生きるか?」

「真実から出た真の行動は、決して滅びはしない。例え定められた運命でも、
何かを掴むことができたのなら、それは勝利に違いない」

「なら……………シグナムとアギトは、運命に勝ったんですか?」

リインの問いに、ザフィーラは静かに頭を振る。

「大義のためとはいえ、我らは手段を履き違えた。救うべき命を死なせ、
償いきれぬ罪を負った。我らは勝利者ではなく敗残者、名の通りの負け犬だ。
だが………………それでも、この胸に残ったものがあるのなら、それは前に進ませなければならない。
過去から託されたものは、未来へと……………違うか、“祝福の風”?」

「わからないです。けど……………私達はみんなのおかげでここにいるです。
色んな人がリイン達を守ってくれて、色んな人の思いがこの胸の中に詰まっています。
はやてちゃんも、シグナムも、アギトも……………だから、リインはまだ頑張れます」

決意の込められたリインの言葉に、他の3人も力強く頷き返した。
例え自分達の逝きつく果てが運命で定められているとしても、その結果に甘んじる訳にはいかない。
持てる力の全てを出し尽くして、その運命に抗って光を掴む。
その時こそ、幾千年と続いたヴォルケンリッターの戦いは、漸く終わるのだから。





僅かに光を取り戻した右目の具合を確かめるように、ティアナは瞼を開閉させた。
失明してから3年、根気よく治療し続けた甲斐もあり、ようやく失われた視力が戻ってきたのだ。
今はまだシルエットくらいしか判別できないが、治療を続ければそう遠くない内に元の視力を取り戻せるらしい。
そうなれば、またクロスミラージュを手にして前線に立つことができる。
多くの仲間が抜けた今、戦力を遊ばせておく余裕などないのだから。

「ティアナ、どうしたの?」

「あ、フェイトさん。ええ、少し気分転換を。フェイトさんは?」

「同じかな。やっと体も動くようになってきたし、リハビリを兼ねてね」

そう言って、フェイトは唇の端を吊り上げる。
少し痩せたな、とティアナは思った。
理知的な風貌はそのままだが、頬が少しばかり扱けていて目元に隈もできている。
それは決して、体の不調だけが原因ではなかった。精神的な疲労が彼女の体に表れているのだ。

(無理もないか、あんなことがあったんじゃ)

シャマルが組んでくれたプログラムもきちんとこなしているし、休息や栄養補給も十分に取っている。
医学的に見ても、彼女が体調を崩す要因はどこにも見られない。
それでもフェイトはの顔はやつれ、瞳からは活力と呼べるものが失われていた。
自分が最も大切にしていたものを、自らの手で傷つけてしまったからだ。

「フェイトさん、その……………」

「…………良いの。これで………これで良かったんだよ」

フェイトは力なく微笑み、ティアナの頭に枯れ木のような手をそっと乗せる。

316UNDERDOGS 最終話⑨:2009/06/21(日) 02:37:31 ID:zEnqvQLg
「私はあの子を守れなかった。だったら、側に置いておいても仕方ないでしょ。
手放さなきゃ、守れないものもあるんだ」

「あいつ、凄く傷ついてました。あなたに捨てられたって……………泣いていたんですよ」

「わかっている…………けど、守れないんだ。私じゃ、あの子を守ってあげられない。
側にいたら甘えちゃう。きっとまた、あの子が傷ついちゃう。私が…………私が弱いから」

微笑みが消え、いつしか涙がフェイトの頬を伝う。
かける言葉が見つからなかった。
半端な慰めなどできるはずもない。
自分はいつだって奪われる側で、大切なものを自ら手放したことはなかった。
だから、彼女の辛さをわかってあげることもできない。
その気持ちを分かち合うことができない。

(スバル…………あたし、どうしたら良いんだろう?)

もういない親友への問いが返ってくることはない。
今の彼女にできることは、泣き崩れるフェイトを抱き締め、気持ちが落ち着くのを待つことだけであった。





授業終了のチャイムが鳴り響き、教室の中が俄かに騒がしくなる。
退屈な授業から解放されたクラスメイト達は机の上に突っ伏したり、隣の席の友人と談笑したりしながら、
ホームルームまでの束の間の自由を満喫する。
その中には、聖祥大付属中学校の制服に身を包んだルーテシアの姿もあった。

「ルーテシアちゃん、学校にはもう慣れた?」

「うん…………みんなよくしてくれるし、だいぶ慣れてきたかな」

転入以来、親しくしてくれている少女にルーテシアは微笑み返す。
過酷な戦場にいた頃には見せたことのない、年相応の少女としての笑顔だ。
戦いから遠ざかり、平和で穏やかな第97管理世界で暮らす内に、ルーテシアは本来の優しく感情豊かな性格を取り戻しつつあった。
この世界に来て以来、ルーテシアはたくさんの幸福を手に入れることができた。
居候先のエイミィ夫人はとてもよくしてくれるし、その子ども達も良い子ばかりだ。
こうして学校にも通わせてくれているし、そこで多くの友達もできた。
初めて体験する学校の授業はどれも新鮮で、気がつくと微笑んでいる自分がいることに気がついた。
それでも、1つだけ気がかりなことがある。
それは、エリオのことだ。

「ごめん、先に帰っていて」

担任がホームルームを終え、帰宅の準備を済ませると、ルーテシアはすまなそうに友人達に頭を下げる。
すると、彼女達も心得ているとばかりに頷くと、ルーテシアを振り返らせてポンと背中を後押しする。

「わかっているって。また、あの人のところに行くんでしょ」

「屋上で黄昏る少年と彼を想う少女の恋。ああ、何てロマンチック」

「べ、別にそんなのじゃないよ。私は……………ただ……………」

「はいはい、わかっているって。さ、行っておいで」

「本当にわかっているのかな?」

小首を傾げながら、ルーテシアは友人達と別れて屋上へと向かった。
この学校の屋上は立ち入り禁止になっているが、鍵が壊れたまま放置されているので容易に侵入することができる。
だが、大半の生徒が真面目なためか屋上に侵入する者は皆無であり、教員が見回りに来ることも稀であった。
そのせいか、ここに居座るようになった転入生の存在は学校中に知れ渡っていた。

317UNDERDOGS 最終話⑩:2009/06/21(日) 02:38:24 ID:zEnqvQLg
「エリオ………………」

「………………何だ、君か。授業は終わったの?」

貯水タンクに背中を預け、街並みを見下ろしていたエリオが振り向かずに聞いてきた。
彼もまた付属中学の制服を着ていたが、ワイシャツと上着は着崩されており、ネクタイは締められていない。
燃えるような赤い髪は伸ばし放題で手入れはされておらず、あの紳士然としたエリオからは
想像もできないほどだらしのない格好となっていた。

「終わったのなら帰れよ………………僕のことなんか、放っておいてくれ」

「……………帰ろう、エリオ」

「…………どこに? 僕に帰る家なんて…………どこにもないだろう!」

擦り切れるような声で、エリオは怒鳴り散らす。
彼の心は荒んでおり、かつての高い志は見る影もない。
無理もなかった。母親同然に慕っていた女性から拒絶され、捨てられたの同然の状態でこの世界にやって来たのだから。
ルーテシアは、今でもその時の光景を忘れることができなかった。

『どうして、どうしてここにいちゃダメなんですか!? まだ僕は戦えます。リンカーコアだって、きっと治します。
もっと体を鍛えて、槍の腕を磨いて、今度こそ…………今度こそみんなを守ります。だから………だから、フェイトさん!」

『ちゃんと言葉にしなきゃわからない? なら言ってあげる。役立たずはもういらないの。
才能があったから贔屓にしてあげたけど、今の君はその辺にいる人間と同じ。
魔法の使えないゴミ屑以下の存在なの。わかる? 私があなたに望んだのは戦う力だけ。
戦力として使える手駒が欲しかっただけなの』

『嘘だ! だって、フェイトさんは…………フェイトさんは僕に…………気持ちを分かち合いたいって、
僕のことを……………だから僕は、僕は………………』

『…………消えて。私の前から、今すぐに。この……………成り損ない』

『……………!』

『消えなさい、出来損いのエリオ・モンディアル。あなたの居場所はここにはない』

『嘘だ………フェイトさん、嘘ですよね? ねえ、フェイトさん! 嫌だ、ここに居させて、
あなたの側に………嫌だ、フェイトさん、お願いです! フェイトさん、フェイト……かあさ…………』

そうして、自分達はこの世界へと強制的に送りだされた。
手筈は全て整えられていた。
社会的な保障が受けられるように戸籍が捏造されており、ギル・グレアムというイギリス人が後見人となっていた。
衣食住の面倒を見てくれているエイミィ夫人にも十分な額の養育費が支払われており、
転入の手続きも済まされていた。
ここは箱庭だ。
自分達を閉じ込め、安らかに生かすための。
自分達は多くの罪を重ねてきたにも関わらず、この世界の人々は誰も自分達を責めようとはしなかった。
人殺しと憎むことも、犯罪者と罵ることも、落伍者と蔑む者もいない。
誰もが優しく温かな温もりを与えてくれた。
だから、余計に心が痛かった。
自分達は確かに罪を犯した。だが、罰がどこにも存在しない。
罰せられなければ罪の意識から解放されることもない。
自分はまだ良かった。エリオという償うべき相手がいる。
彼に拒絶され、憎まれることでその苦しみから逃れることができた。
だが、エリオには償える相手がいない。
一番に償わねばならない相手は側におらず、他の者も彼を罰することはなかった。
高町の人間も、最愛の娘が死ぬ要因となった魔法の関係者である自分達を許すと言った。
その優しさが、繊細なエリオの心を益々傷つけていった。
いつしかエリオの心は砕け散り、生活は荒んでいった。形だけとはいえ出席していた授業もサボるようになり、
冷たく突き放すような言動も多くなった。
どれだけ心地の良い温もりに包まれていても、彼は孤独なのだ。
実の両親に見捨てられ、育ての親からも見限られる辛さは、自分には到底理解することはできない。
どんなに慰めたいと思っても、今の生活に幸福を感じている自分では、彼の支えになることができないのだ。

318UNDERDOGS 最終話⑪:2009/06/21(日) 02:39:31 ID:zEnqvQLg
「僕は…………僕は、何でこんなところにいるんだ? フェイトさん、キャロ…………僕は、
どうして2人と一緒に居られないの…………………誰か…………答えて………………」

「エリオ………………」

「君のせいだ……………君さえいなければ…………何で、何で僕の隣にいるのが君なんだ!」

「……………良いよ」

貯水タンクによじ登り、エリオの隣に腰かけたルーテシアは、彼の手をそっと自分の首に宛がった。

「憎いのなら、殺して……………ずっと、君に殺されたいって思っていたから」

恐れも躊躇もなく、ルーテシアは己の命を差し出した。
白いうなじを掴むエリオの手が強張り、僅かに力が入って指先が皮膚へと食い込む。
だが、エリオはそれ以上は力を込めず、虚無を湛えた瞳で見下しながら囁いた。

「ふざけるな…………僕から全てを奪っておいて、その上に死ぬなんて許さない。
側にいろ…………ずっと、ずっと。君に許しなんて与えない。この僕が、絶対に」

「うん………………ずっと、側にいるから」

再び虚空を見上げたエリオの目に、眩しい夕日の輝きが降り注ぐ。
彼の心が救われる日が訪れるかは、誰にもわからない。





「ありがとう、魔法使いのお姉ちゃん」

瓦礫の中から助け出した女の子が、手を振りながら去っていく。
彼女が向かった先には、彼女の両親と思われる男女が手を振っていた。
ここからではよく見えないが、立ち姿は何となく自分の父親に似ている気がする。

「行こうか、相棒」

《………All right》

少しだけ反応の鈍った相棒の返答を待ち、スバルは傷だらけの体を引きずるようにその場を後にする。
自分がどうして生きているのか、今でも不思議だった。あの時、自分は確かにゆりかごの爆発に巻き込まれたはずだ。
燃え盛る炎と爆風に体が飲み込まれ、意識が途切れる瞬間までハッキリと覚えている。
だが、次に自分が目覚めた場所は、天国ではなくミッドチルダの辺境であった。
どうしてそんなところに倒れていたのかはわからないが、意識が途切れる寸前、温かい虹色の光に包まれた気がする。
満身創痍の状態で脱出できるはずもないので、奇跡としか言いようがなかった。

《………相棒………少し、お疲れのようです…………休んでは、如何ですか?》

「大丈夫…………はあ………はぁ…………ごめん、やっぱり休むよ」

《…………管理局は逃げません。少し休みましょう》

手近な瓦礫に座り込み、眼前に広がる蒼と白を何気なく見つめる。
スバルは今、ヴォルツとの約束を果たすために港湾警備隊の隊舎を目指していた。
スカリエッティを倒し、戦いを終えたら罪を償うために自首をするためだ。
自分の手でスカリエッティを捕まえることはできなかったが、最後の約束だけは何が何でも果たさねばならない。

319UNDERDOGS 最終話⑫:2009/06/21(日) 02:40:23 ID:zEnqvQLg
「ねえ、さっきの子は…………大丈夫かな?」

《………ええ、元気に駆けていました。あなたが救った命です》

「そっか……………あたし、やっと人助けができたんだ」

スバルが瓦礫に埋もれた彼女の近くを通りかかったのは、全くの偶然であった。
いったいどのような経緯があったのかはわからないが、彼女は半日近く倒壊した家屋に閉じ込められていたらしい。
自力で抜け出すこともできず、寒さと暗闇に震えるしかない孤独感に苛まれながら、彼女は必死で助けを求めていた。
その声が、スバルの耳へと届いたのだ。

「ねえ、マッハキャリバー。きっと、これからはもっとたくさんの命を救えるよ。
辛い目にあっている人達を、あたし達のてで助けられるんだ。凄く大変かもしれないけど、
あたしたちならできる。そうだよね?」

《…………はい。あなたと私ならばできます。私達は………》

「最高の、バディだからね」

弱々しく微笑んだスバルの横顔に、心地よい潮風が吹きつける。
心が洗われるかのような感覚にため息が漏れ、視界の眩しさに思わず瞼を細める。

「それにしても、眩しいね。凄く綺麗な空だ………………」

《はい………相棒の…………あなたの空です》

「あたしの………空……………眩しいな。凄く白くて………よく見えないや…………イクス、見ている? 
これがイクスの大好きな空と…………海だよ…………………………………………」

呟き、スバルの右手が重力に引かれて真下を向く。
それっきり、スバルは一言も喋ることはなかった。

《…………相棒?》

マッハキャリバーの呼びかけが、潮騒の音にかき消される。
聞こえていないのか、スバルは返事をしなかった。
ただ、風と波の音だけが彼女達を包み込んでいる。

320UNDERDOGS 最終話⑬:2009/06/21(日) 02:41:11 ID:zEnqvQLg
《眠っているのですね、相棒。お休みなさい……………私は、ずっとあなたと一緒です。
私の………………大切な相棒………………スバル…………………》





小さい頃は、本当に弱くて泣き虫で、悲しいことや辛いことにいつもうずくまって、ただ泣くことしかできなかった。
あの時もそうだった。暗い世界に閉じ込められて、自分ではどうすることもできなくて、泣き叫ぶことしかできなかった。
怖いよ、寒いよと。
けれど、みんな生きるのに必死で、手を差し伸べてくれる者は誰もいなかった。
いつしか声は枯れ、壊れた笛のような音しか吐き出せなくなった。
空腹と圧迫感で心は擦り減り、暗闇とネズミの鳴き声がいっそう絶望を掻き立てる。
抗いようのない理不尽に、心は今にも押し潰されそうになつていた。
その時だ。1人の魔法使いが、そっと手を差し伸べてくれたのは。
彼女は全身が血だらけで、ほとんど裸に等しい姿であった。
事故にでもあったのか、左腕は無残にも千切れており、左目も潰れて眼球がない。
しかも傷口からは機械の部品がはみ出ていて、何とも不気味な容貌であった。
そんな、端から見れば化け物でしかない姿ではあったが、彼女は優しく励ましの言葉を囁くと、
傷ついた体で魔法を使い、瓦礫の中から自分を助け出してくれた。
連れ出してもらった世界は広く、潮風は冷たくも優しく、抱きしめてくれた腕はとても温かい。
助けてくれた魔法使いは強くて優しくて格好良くて、泣いてばかりで何もできな自分がとても情けなかった。
だから、生まれて初めて心から思った。
泣いているだけなのも、何もできないのも嫌だと。

「強くなるんだって」

それが、あの蒼い魔法使いとの思い出に誓った、少女の夢であった。








                                                                   END




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