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魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第99話

1名無しさん@魔法少女:2009/05/30(土) 16:59:12 ID:ypqjhtEM
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所の2スレ目です。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第98話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1238819144/

121名無しさん@魔法少女:2009/06/07(日) 22:41:15 ID:HQOgzxDw
>>114
良い仕事してますね。
巨大淫獣ユーノで笑わせて、八神家ゴーストで泣かせるなんぞ憎いねぇ

しか〜し

ザフィー、はやてたち置いてアルフと昇天ですか、わかります。

122名無しさん@魔法少女:2009/06/08(月) 13:48:30 ID:9kWr1SFU
>>80
ageるな

123名無しさん@魔法少女:2009/06/08(月) 14:57:38 ID:Li.TMpYA
2ちゃんならともかくスレが5つ(実質2つ)しかない掲示板でageるなと言う意味がわからん…

124名無しさん@魔法少女:2009/06/08(月) 16:32:55 ID:A8ox0tbk
ついでに、謝ってるのにわざわざ蒸し返す意味もわからん……

125名無しさん@魔法少女:2009/06/08(月) 23:53:15 ID:q/w.VXWg
>>◆6BmcNJgox2氏
GJ!笑わせていただきました

>リインがユーノとユニゾンする事によって大人のライオン程の大きさはあろうかと思われる
巨大フェレットへと変身し、ミッドの平和を脅かすテロリスト達に敢然と立ち向かって行ったのである!

ちょ、リアルに想像するとすげぇシュールでおっかねぇ生き物ですぜ

ちょっとインスピレーションの湧く展開でありました。GJ!

126名無しさん@魔法少女:2009/06/09(火) 11:33:55 ID:oz69m9CI
>>123
謝ってる人に文句いう>>122はどうかと思うけど、個人的には俺もageて欲しくない
今までずっとsage進行でやってきてるからage=荒らしみたいなイメージ染み付いて抜けないんだ

127サイヒ:2009/06/09(火) 16:36:15 ID:iagWqAEM
久々にクロフェなど。
フェイトさん二十五歳。エロ。
注意点はそんなもんです。
ヤマもオチもあんまり無い。

128二十五歳の誕生日:2009/06/09(火) 16:36:53 ID:iagWqAEM
 夕食時のハラオウン家。
 リビングにはクロノとフェイトが食事が出来るのを待っており、キッチンではアルフとリンディが夕食の仕上げに
かかっていた。

「リンディ、チキン焼けたよ。切り分ける? それともこのまま大皿でどーんといっちゃう?」
「どっちにしろ最後には切ることになるんだから、ここで切っちゃいましょ。
「りょーかい」
「付け合せのレタスと赤カブは冷蔵庫の中にあるから」

 緑茶をすすりつつ台所の会話を聞くクロノだが、どうも家族が働いているのに自分はぼうっとしているのは落ち着
かない。ユーノに貧乏性とからかわれる癖は、三十歳を過ぎても変わらなかった。
 隣に座っているフェイトも同じなのか、ちらちらと台所に視線をやっている。台所の二人がデザートのフルーツポ
ンチ製作に取り掛かったあたりで、我慢できなくなったのかフェイトは口を開いた。

「ねえアルフに母さん、私もリンゴの皮むきぐらい手伝って……」
「「駄目」」

 二人の言葉が見事にシンクロした。

「今日の主賓はあなたなんだから、働いたりしちゃだめ。それに手伝ってもらわなくても、もう終わるから」
「こんな時でも気を使いすぎなんだよ。フェイトはゆっくり待ってればいいんだから」
「……はい」

 すごすごと引っ込むフェイト。
 リンディの言葉通り、程なくして完成した料理をアルフが次々に運んできた。
 主菜は若鶏の照り焼き。前菜のパスタには牛肉と数種類の野菜がふんだんに使われている。スープもアルフが昼か
ら念入りに出汁を取って煮込んだ物である。いつもの夕食より数段豪華なメニューだった。
 最後にリンディがワインを持ってくる。

「シャンパンにしようかと思ったんだけど、レティがフェイトのために開けてあげなさいってくれたから」
「そうなんだ。明日お礼言っておかないと。えっと、コルク抜きどこだったっけ」
「無くても私が抜くけど?」
「……コルクを指で引っこ抜くのはやめてくれ。零れそうだし風情が無い」

 リンディが台所からコルク抜きを持ってきて、肉料理に合いそうな深い赤色のワインが全員のグラスに注がれてい
く。
 まずはフェイトがグラスを揚げ、クロノ達もそれに合わせる。
 フェイと以外の三人は、息を合わせて言った。

「「「フェイト、誕生日おめでとう」」」

 チン、とグラスが打ち鳴らされる音が響いた。

129サイヒ:2009/06/09(火) 16:37:27 ID:iagWqAEM
          ※




「ふぅ、久しぶりにいっぱい飲んじゃった。おいしかったねあのワイン」
「君一人で半分以上飲んでいたな。あんなに飲むなんて珍しい」
「口当たりが良くて飲みやすかったから。でもけっこうアルコール強かったよ。お風呂に入ったら一気に酔っちゃっ
た」

 フェイトが、クロノに体重を預けてくる。その頬はかなり赤くなっており、寝巻き越しに感じる体温も確実に上昇
していた。
 食事が終わり風呂も使い終えた二人は、クロノの寝室に場所を移していた。ベッドの上でクロノの膝の上にフェイ
トが乗った体勢。
 ぽつぽつと交わされる言葉は、自然フェイトの誕生日についてのことになる。

「それで、二十五歳になった感想は?」
「あんまりどうも思わないかな。……あ、クロノ達が祝ってくれたのがどうでもいいってことじゃないよ。なんだか
二十歳ぐらいから、年を取ることがあんまり嬉しくなくなってきてて」
「特に今日からは、四捨五入したら三十になったわけだし」
「うっ……たしかにそうだけど、そういうことじゃなくて……」

 ちょっと言葉を探すように、フェイトは髪の毛を弄った。

「慣れちゃったって感じかな。昔は誕生日っていったらなのはとかはやてを呼んでパーティー開いたけど、あんまり
そういうのしようっていう気もしなかったし……」
「二十回を越えれば新鮮味も無くなる。誕生日ぐらいで大騒ぎするような年齢でもなくなったしな」

 友人一同集めて大きなケーキにロウソクを立てたりクラッカー鳴らしたりなどしたら、嬉しいよりも逆に気恥ずか
しいばかりだろう。

「二十歳の時にアリサとすずかに誘われて海鳴で成人式に参加したけど、あれが最後になるんじゃないかな。年を取っ
た時の大きなイベント」
「日本では他にもあったんじゃないか? 喜寿とか米寿とかいうものが」
「あれはもっと先、六十とか七十ぐらいになった時だったと思うよ。……ねえ、クロノ」

 フェイトが首を傾けて、クロノを赤い瞳で見上げてくる。

「クロノは三十歳になって何か特別なこと思った?」
「特に無いな。せいぜいはやてに今日から三十路やねってからかわれて、年を取ってしまったと実感したぐらいか。
そもそも三十歳の自分をイメージしたことが無いから、感慨の持ち様が無かった」

 クロノは子供の頃から、年を取った自分というものを想像したことがない。
 未来の願望として父のような提督になりたいとは強く思っていたが、それにしたところで何歳までに絶対なると決
めていたわけではなかった。
 今でも、四十歳になった自分を想像してみろと言われれば、皺と白髪が目立ち出した自分の顔ぐらいしか思い浮か
ばない。後は階級が一つ二つ上がっているであろうことぐらいか。

「おばあちゃんになった自分か……。私もやっぱり想像できない」
「しかし、体力は確実に落ちたな。この間訓練やったら息は切れるし、筋肉痛が昔よりひどかった」
「クロノは書類に向かってることが多いもんね。私はそういうことはないよ。……クロノはおじいさんになっても管
理局に勤める?」
「伝説の三提督の人達ぐらいまでとはいかなくても、最低でも六十ぐらいまでは勤めたい」
「じゃあ私は、その秘書官でもしようかな。……いつかは執務官もできなくなるんだから」

 単独で犯罪者と戦闘することの多い執務官にとって、加齢による肉体の衰えは最大の敵である。
 たいていは三十代半ばで体力に限界を感じて他の部署に転職する。五十まで勤められれば、それだけで周囲から敬
意の眼を向けられるほどだ。
 自分がもし提督にならず執務官のままだったらと想像すれば、どれだけの疲労に襲われ続ける毎日だったのだろう
と、少し寒気がする。

130二十五歳の誕生日:2009/06/09(火) 16:38:05 ID:iagWqAEM
「それはいいな。君ぐらいデスクワークができる秘書なら大歓迎だ」
「そうかな? ユーノに比べたら書類仕事はだいぶ遅いって思ってるんだけど」
「比べる相手が悪すぎる。ユーノにかなう相手なんて、局内に一人いるかいないかだろう」
「ユーノといえば、なのはも教導官引退したら無限書庫に行ったりするのかな?」
「どうだろう。なのはの場合、生涯現役をやっていそうだな。前線を引退する姿が想像できない」
「そうかな。案外、今日からユーノ君のお嫁さんだけするって言って、いきなり専業主婦になったりして」

 くすくすフェイトが笑う。

「先のこと想像すると分からないことばっかりだけど、楽しいね」
「きっと今が幸福だからだろう。管理局勤めて、君みたいな大切な人を持てて、僕は幸せだ」

 今日が満たされていなければ、明るい明日のことを語るなどできない。
 今の自分は幸せだと、クロノは心の底から実感していた。
 提督としての仕事は多く、苦しいこともあるが、充実していた。
 家に帰れば温かい家族がいる。外にはなのはやはやて達友人がおり、エイミィやランディ、アレックスといった同
僚がいる。
 そして、恋人のフェイトがいて慈しみ合える。
 本当に、付け加えることが何一つとして無い毎日だった。明日も明後日も、この日々が続く限り、自分は一生幸せ
だ。

「そうだね。クロノと一緒にいるだけで毎日が楽しくて、すごく幸せだよ」

 微笑んだフェイトがなにかを期待する眼で見上げてくる。

「だけど……クロノがぎゅってしてくれたり、キスしてくれたりしたら、もっと幸せかな。…………してもいい?」

 クロノが頷いてやると、唇が近づいてきてすぐゼロになる。
 入浴の名残か、フェイトの唇はいつもより温かかった。
 舌が触れ合ったのも同時だった。唇と唇の間。ほんのわずかな空間で舌が絡み合い、お互いの唾液を混ぜ合わせる
ように動く。
 フェイトの舌の温度と柔らかさを感じているうち、少しずつクロノの心は昂ぶっていった。
 クロノもフェイトも、とっくに子供ではない。キスよりもっと触れ合い、一つになれることがあることを知ってい
る。
 フェイトも同じ気分になっていくのが、舌の動きが大きくなっていくことで分かった。
 始まった時と同じく、フェイトから離れていき口づけは終わる。
 クロノの唾液がついた唇を、ゆっくりと舐めるフェイト。瞳も、濡れたように赤色が深まっている。

「……ねえクロノ、おじいさんとおばあさんになる前にね」

 少しいたずらっぽい顔をしながら、フェイトはくるりと身体の向きを変えてクロノと向き合う。

「若くないとできないこと、今のうちにいっぱいやっておこうよ」

 言ったそばから、フェイトがまた唇を重ねてくる。すかさず舌が差し込まれた。
 今度は柔ららかい口づけではない。溶けてしまいそうなぐらい柔らかく熱い舌はクロノの舌を絡め取り、唾液を擦
り込むように舐め回す。
 口だけではない。フェイトの腕は力を込めてクロノを抱き締めてきた。ふくよかな胸の感触が、嫌というほどクロ
ノの身体に伝わってくる。

131二十五歳の誕生日:2009/06/09(火) 16:38:50 ID:iagWqAEM
「……やれやれ、二十五になっても君がいやらしいのは変わらないな」
「変わったよ。昔はこんなことキスのやり方なんて全然知らなかったし。…………こういうことも」

 フェイトの手がクロノのズボンを脱がしていき、屹立した性器を露にしていく。
 細い人差し指に裏筋を撫で上げられると、クロノの意思に関係なく性器がびくんと震えた。

「すぐに大きくなるね。先っぽも濡れてきたよ」

 今度は軽く握ると緩やかにしごいてきた。
 直接的な快感が増して行く。しかしフェイトの手の強さは変わらず、やや機械的に上下に擦っているだけである。
 気持ちよさはすぐにむずがゆさとなって、クロノの心を焦らした。
 それを知ってか知らずか、フェイトはくすくす笑い、耳たぶを舐めながら囁いてきた。

「このままゆっくり手だけで出してあげようか?」
「それは……」
「クロノは時々するよね。もっとしてって言っても、いつまでも指一本だけしか入れてくれなくて。仕返ししちゃお
うかな」

 このまま生殺しの目にあうのかと、クロノは少しぞっとして慌てた。

「ふふふ、クロノ焦ってる…………冗談だよ。ちゃんと口とかおっぱいでもしてあげる。……でも今日は」

 肉棒を離れたフェイトの手が、自分の寝巻きにかかる。下着ごと脱ぎ落とすと、そのままクロノの顔を跨いできた。

「先に、私のを舐めて」

 眼の前にある金色の草むらにまだ湿り気は無く奥の谷間も閉ざされているが、舌で刺激してやればすぐに開いて香
ばしい蜜を垂れ流すだろう。
 しかしクロノはすぐに舐めるようなことはせず、陰毛に鼻を埋めただけでじっとしていた。
 ふわりと受け止められ同時にくすぐられるような感触は、髪の毛には無い。濡れそぼる前の陰毛だけが与えてくれ
る。
 かすかに漂う女の匂いを吸い込むと、息が当たってくすぐったいのかフェイトが身じろぎする。

「君のことだから、このまま見てるだけでも濡らしてきそうだな」
「またそういう意地悪なこと言う……」

 フェイトが頬を膨らます。年端もいかない子供のような仕草だが、フェイトがやると不思議に似合う。いくつになっ
ても、どこか子供っぽさを残しているからだろう。
 本格的に機嫌を損ねる前に、クロノはちゃんと舌を伸ばしてやる。しかし場所は、フェイトが思っているであろう
場所とはやや違った。
 秘裂よりもっと後ろ。膣口とはやや色合いの違う桃色の穴を、クロノは舌先で突っついた。

「やぁん……そっちは違うよ……」
「こっちを舐めても、君は気持ちいいだろ?」
「そうだけど……先に前からして。誕生日なんだからこれぐらいのお願い、いいでしょ」
「……わかったよ」

 後ろの穴を攻められ昂るフェイトも見たかったのだが、そう言われてはしょうがない。
 顔の位置をずらし秘裂の真下に口を持ってくると、クロノはもう一度舌を伸ばした。
 始めから舌を突き刺すようなことはせず、ゆっくりと筋の上を往復させる。
 筋の上を何度か舐めるうち、花びらがほころび出した。すぐに酸味がかった蜜が零れ出す。

132二十五歳の誕生日:2009/06/09(火) 16:39:28 ID:iagWqAEM
「あふっ……くふぁ…………気持いい……よ」

 フェイトの漏らす吐息が大きくなるのと比例して、急速に愛液の量も増えていく。
 あっという間に舌で受けるのが無理になり、クロノの顔を汚し始めた。
 顔の周りにむわりと広がった雌の香りに息苦しくなり、一度舌を止めるクロノ。しかしフェイトの喘ぎ声は継続さ
れていた。
 視線を上にすると、頭上で二つの双丘が形を大きく変えている。寝巻きの上から、フェイトは自分の胸を揉みしだ
いていた。
 手全体で握り締め、指が乳房をほぐすように緩急つけて動き回る。
 服の上からでも分かるぐらい、はっきりと乳首が立っていた。そこも指が押し潰すがすぐに血流を取り戻し、さら
につんと硬く尖る。

「はあ、ああああん!」

 フェイトの頭が、かくんと垂れた拍子にクロノと眼が合った。
 恥ずかしがるかと思ったが、フェイトはうっすら笑うとむしろ見せつけるように、さらに大胆に胸を揉み出す。
 兄妹から恋人同士に関係が変わり、肉体関係を持って数年。もはや恥じらいは少なくなり、代わりに奔放さが前に
出てきている。
 時には意外な大胆さに戸惑うこともあるが、求めるがままとことん淫らになっていくフェイトも、クロノにとって
は好ましかった。
 もっともっと、乱れたフェイトが見たい。
 欲望のままに、クロノは一気に舌を蜜壺へ挿し入れた。

「ひゃうん!!」

 たちまち、舌がきゅっと締めつけられた。
 ぬらぬらと濡れきった粘膜同士が絡み合う。
 肉棒の如く何度も舌先でフェイトの奥を突く。熱い肉を蹂躙すればするほど、膣壁から愛液が滲み出てきてクロノ
の喉を潤わす。
 いつまででもフェイトの秘所を味わっていたいが、激しい動きに慣れていない舌の筋肉はすぐ攣りそうになってし
まい、中断せざるをえない。
 しかし舌を休める間も、クロノは攻める手は休めない。開いたままになっている膣口に、指をまとめて三本突き入
れた。

「あはっ……ん!! 指も、気持ちいい……!!」

 何度もクロノの男を受け入れている秘所は、三本ぐらいならなんなく入る。
 捻じ込むように指を動かしつつ、クロノは訊ねた。

「指と舌、どっちでしてほしい?」
「両方が、いい……!」
「本当にいやらしいな。むしろ淫乱か」
「いやらしくていいから……淫乱でいいから、気持ちよくしてぇ……!」

 くっ、と喉の奥で笑いつつ、クロノは願いどおりに舌も再度伸ばす。
 貪欲に指を咥え込んでいる膣に、舌の入る余地は無い。舌先が目指したのはもっと上、女の快感だけで出来ている
突起である。
 上を覆っている薄い皮はまくれあがり、紅い宝珠が顔を覗かせていた。
 敏感すぎる場所だけに、クロノはやや慎重に舌を動かす。刺激するというより唾液をなすりつけるようにして動か
し、その分だけ突っ込んでいる指を大きく蠢動させる。

「あっ! あっ! はぁんっ!!」

 髪を振り乱してフェイトが悶える。
 淫核を弄くり出して十秒も経っていないというのに果てかけているのが、クロノには分かった。耐えて快感を深め
ようという様子も見えない。
 フェイトを絶頂の谷間に落としてやるべく、クロノは淫核に軽く歯を立てた。

133二十五歳の誕生日:2009/06/09(火) 16:40:12 ID:iagWqAEM
「んんんん!!」

 フェイトがぎゅっと唇を噛んだ。同時に秘裂から、ぶしゃっと小さな音が鳴る。
 これまでとは比べ物にならない量の愛液が一度に流れ出て、クロノの額までも飛び散る。
 フェイトの腰から力が抜け、クロノの顔の上に座り込んでしまった。
 少し息苦しいが、柔らかい太ももがクロノの両頬にくっつき、たっぷりとしたフェイトの尻の重みも感じられるの
で心地よくもある。
 瞳を閉じて満足そうな顔をしていたフェイトだが、ほどなくして開かれた眼にはもっとはっきりとした淫欲の炎が
灯っていた。

「……もっとしようよクロノ。クロノだって、我慢できないでしょう?」

 フェイトが果てる一部始終を見続け、頭は沸騰しそうなぐらい興奮していた。陰茎など流れ出た先走りの汁で、全
体がべったりと濡れている。

「このまま挿入れるね……」

 フェイトが腰をずらしていき、二人の性器の入り口がくっつく。そのまま、一気にフェイトは腰を落とした。
 ぐちゅっ、と結合の淫音が部屋に響く。
 そのまま激しく動き出すかと思ったが、フェイトはゆらりと身体を崩してクロノにもたれかかってきた。

「はあっ……挿入れただけで、イッちゃった……。始めたばっかりだけど、ちょっと休憩するね」
「きついなら、僕が動こうか?」
「ううん、いい。こうやってクロノのおちんちん感じてるのも、気持いいから」

 しっとりと濡れた膣が肉棒の形を確かめるように、きゅうっと軽く締めつけてくる。そしてそのまま、ひくひくと
全体が小刻みに動いていた。抽送運動ほどではないにしろ、これはこれで穏やかに気持ちいい。
 頬を紅潮させながら息を整えているフェイト。顔だけでなく、白い肌全体がほんのりと朱色に染まっていた。頬か
ら下に薄紅色の肌を眺めていくうち、クロノの眼はフェイトの胸で止まった。
 中学の頃から急成長したバストは、年月を経ても垂れるようなことなく立派な膨らみを保っている。
 寝巻きの前は完全にはだけ、丸みを帯びた裾野から先端の赤い突起まで全部見えてしまっている。フェイトが軽く
身じろぎしただけで全体がふるんと柔らかく揺れて、クロノの眼を釘づけにさせた。

「吸う?」

 クロノの視線に気づいたフェイトが、胸を掬い上げてクロノの前に突き出してくる。
 誘われるまま、クロノは乳首に吸いついた。
 ボリュームと弾力に富むフェイトの胸だが、さすがに中になにか詰まっているというようなことはない。それが分
かっていてもクロノは、中身を吸い尽くすように激しく吸すった。手でも、乳房の付け根から先端に向けて絞るよう
に揉んでいく。

「ああん! そんなに吸っても、なんにも出ない……のに……!」
「気持ちよいからいいだろう。吸う度に、君の中がぴくぴく動いているぞ……!」
「クロノのも……びくんってして……ふああぁぁ!」

 動いているのはフェイトの内側だけではない。腰が、小刻みにだが上下し始めていた。
 あまり大きな動きではないが、腰を落とす時にほとんど自由落下であるため、奥底を突く衝撃は大きい。子宮口と
鈴口が激しくキスをする。
 やわらかい膣の中で一点のみ硬い子宮口。ぶつかる度に痛みに近い衝撃がクロノの肉棒に走るが、快感の量も尋常
ではない。気を抜いたら一度ぶつかるごとに放ちかねず、クロノは腰にありったけの精神を集中して耐えた。
 何度快感の波をやりすごしたのか。先に限界が来たのはフェイトだった。

「また……イクぅ!!」

 ぎゅっと一際強くクロノを抱きしめ、フェイトが達した。

134二十五歳の誕生日:2009/06/09(火) 16:41:29 ID:iagWqAEM
「……今日はまた、ずいぶんと敏感すぎないか?」
「あんまり我慢してないから……。今日はいっぱいイきたいの」

 完全に脱力したフェイトの身体が、クロノの身体にもたれかかってきた。

「ごめんクロノ、腰が抜けちゃって動けないから……クロノが抱いて」
「ああ、君が完全に満足するまでしてあげるよ」

 繋がったまま、フェイトの体をそっと持ち上げシーツに横たえる。
 正常位の体勢になると、一呼吸置いてクロノは猛然と突き動いた。

「あっ! あっ! もっと強く……ひゃああん!!」

 突くリズムに合わせて、フェイトの啼き声が響き渡る。
 この分だとリンディ達の部屋まで聞こえているかもしれない。
 そう思ったのは一瞬で、すぐに腰から襲ってくる快感に懸念は吹き飛ばされる。むしろもっとこの声を、身体全
体で聞き続けたい。
 腰の動きを強くして数度貫いただけで、フェイトが仰け反り果てた。
 フェイトが達している間だけ動きを止め、波が去った頃合を見てクロノはフェイトの片足を担いで半身状態にし、
また前後運動を開始する。
 体位を変えたことで締められる場所が変化し、ほんのわずかではあるが快感の質が変わった。
 突く場所も一度ごとにちょっとずつ位地を変えていくうち、完全にフェイトの身体は完全にひっくり返って四つ
ん這いの体勢となる。
 フェイトの顔が見えないが、正常位より卑猥さが増して興奮できる、クロノの好きな体位だった。
 激しく動くためフェイトの尻肉を掴むクロノ。その拍子に、指が一本尻穴へやや入った。
 ほんの浅い侵入にもかかわらず、後ろを徹底的に敏感にされているフェイトは身体をひくつかせる。

「今度はお尻も、指でぐりぐりって……いっぱいして」

 中指を突き入れると、尻穴自体が悦ぶように、とぷりと指を飲み込んでいき、すぐに根元まで入ってしまった。
 こうして尻も同時に攻められるのも、後背位の利点である。
 皺が無数に寄った菊座の感触は、前とはまた違っていてクロノの指を愉しませる。

「分かる、よ。クロノの指が……ああっ! 指と先っぽが……くっついてるの……!」

 薄い肉壁一つ隔てて、指と亀頭がお互いを認識する。
 前後の穴を同時に攻めながらの交わりは、クロノの脳をぐずぐずに溶かす破滅的な香りがした。
 溺れたい。壊れたい。立場も何もかも忘れ、膣でも尻穴でも口でもいいから、眼の前にある肉体といつまでも交じ
り合っていたい。
 しかしそれは無理な話で、クロノの肉棒はもはや破裂寸前まできていた。意志の力ではどうしようもない最期は、
もうそこまできている。
 快感値が振り切ってほとんど一突きごとに達しているフェイトを、クロノはありったけの力で抱きしめた。

「だすぞフェイト!!」
「だして!! わたしのいちばんおくにっ!!

 フェイトの足がクロノの腰に絡み、一際奥まで性器を押し込んでくる。
 子宮口に半ばめり込ませながら、クロノは精を放った。

「ああああ!! あついぃぃ!!!!」

 フェイトの甲高い声が、部屋の壁を反射して回る。身体はクロノを弾き飛ばさんばかりに痙攣するが、腕は決して
離すまいとクロノを抱きしめていた。
 長く尾を引いた嬌声が途切れると、静寂が部屋に訪れる。
 二人の荒い息の他に、空調の音やベッドのスプリングが軋る音があることを、クロノは今夜初めて気づいた。
 頭と身体の熱を一度冷ますべく、未練がましく咥え込んでいる蜜壺から、ずるりと肉棒が抜く。同時に精液の一部
が、こぽりと穴から零れた。

135二十五歳の誕生日:2009/06/09(火) 16:42:15 ID:iagWqAEM
「あん……もったいない」

 目ざとく見つけたフェイトが手を伸ばす。太ももに付いた分もシーツに落ちた分も丁寧に掬い取り、口元に運ぶ。
 すぐ口に入れはせず、しげしげと精液に見入るフェイト。指と指を擦り合わせ次いで離れると、捏ねられた精液
はねっとりと糸を引いた。

「こんなに元気にねばねばしてて、おいしそう……」

 指が、赤い唇に咥えられた。
 こくり、と喉を鳴らしてフェイトが飲み込む。丁寧に指をしゃぶりながら、淫らな視線がクロノの股間を捉える。

「まだちょっと残ってるね。きれいにしてあげる」

 尿管の出し残しを口で丁寧に吸い取る。行為の途中あるいは終わりによくやることだが、予想に反して肉棒を包
み込んだのは口ではなかった。
 さっき散々触り心地を愉しんだフェイトの胸。

「うくっ……!」

 谷間に導かれただけでクロノの口からは苦しい呻きが上がり、肉棒は震えて白濁の残滓を吐いた。フェイトの蕩
けるように柔らかい胸は、それだけの破壊力があった。
 残らず出し終えても、フェイトは胸を離そうとしない。妖しく笑いながら胸で擦り上げ、赤い舌が先端をちろち
ろ嬲るように舐める。
 後始末どころか、一切手加減無しでフェイトは新しい精液を搾り出しにかかっていた。
 射精後の神経が過敏なところに、ある種凶悪ともいえるフェイトの乳淫と舌技。我慢のできるわけがなく、精液
が陰嚢から引きずり出される。
 耐えようと思う間も無い。三十秒と経たぬうちに、フェイトの口にクロノはぶちまけていた。
 精液を口で受けながらもフェイトの乳房は動き続け、一滴たりとも残さないとばかりに陰茎を擦り上げてくる。
 たちまち口だけでは受け止められなくなり、たらたらと零れた分が乳房も汚していった。

「ぷはっ…………出しすぎだよクロノ」

 乳房に零れた分を直に舐め取っていたフェイトの眼が、猫のように細まる。

「それにしても早いね。そんなに我慢できなかった?」
「出したばっかりなのに君の胸に挟まれて、我慢できるわけないだろう……」
「どうかなあ。クロノももう三十なんだから、量はともかく持続力が無くなってきてるんじゃないかな?」
「……疑うのなら、証明してみせようか」

 少し悔しくなったクロノは、挑発に乗ってフェイトの肩を掴んで強く押し倒した。
 焼き切れかけた思考回路が、次の交わりはそれこそ強姦でもしているかのように激しくなるだろうと予測する。
その光景を想像しただけで、クロノの下半身は限界まで猛った。
 活力を取り戻した性器を眼にしたフェイトが、艶やかに笑うと腰を少し持ち上げる。

「クロノ、次はお尻に……前も後ろもお腹いっぱいになるまで出して」

 フェイトは甘い声でねだりながら。自分の指で尻穴を広げ奥の奥まで見せることすらしてきた。
 誘われるまま開かれた穴にすぐクロノが挿入れると、フェイトの細い身体がしなるようにのけぞる。

「あはっ……やっぱり指より、ずっと気持ちいい……! たくさん、気持ちよくしてクロノぉ」
「もちろんだ。言っただろう。満足するまでしてあげると」

 また二人は、お互いの身体を貪る行為に没頭していった。




          ※




「……一つだけ、何歳になっても分かってることがあるよ」

 何度も上になり下になり乱れ尽くした情交の果て、クロノの腕の中でフェイトがぽつりと言った。

「私がクロノを愛してるってことは、おばあちゃんになってもずっと変わらない。それだけは確かだよ」
「僕もだ。君のことはいつまでも愛す」

 一日の終わりの口づけを交わし、クロノはありったけの心を込めて言った。

「フェイト、二十五歳の誕生日おめでとう」




          終わり

136サイヒ:2009/06/09(火) 16:43:15 ID:iagWqAEM
以上です。
二十五歳になったフェイトのエロ書こうぜと思ったはいいんですが、
Vivid見てる限り十九から劇的になんか変わったってわけでもないですし、差異づけはけっこう難しいですね。


クロードはフェイト二十一歳の時の子供という設定なんでそのへんにいないとおかしいんですが、
二十五歳フェイトを書く度に出てくるのもなんでしょうからカット。
子供のいないクロフェ時空ってことで。

137名無しさん@魔法少女:2009/06/09(火) 18:19:59 ID:0ary71QQ
>>サイヒ氏
超GJ!ずっと氏のクロフェを待ってました。
25歳フェイトさんの成長したエロさに感動。
提督はいくつになっても尻好きなんですね、わかります。

138名無しさん@魔法少女:2009/06/09(火) 18:22:34 ID:0ary71QQ
浮かれてsage忘れました…。
このタイミングでホントすみません。

139ザ・シガー:2009/06/09(火) 21:02:41 ID:pgT5jNDQ
うひゃー。 少し見ないうちに凄まじく投下されちょるぜよ。

>>サイヒ氏
うふへへ、良いエロだぁ。
クロフェのエロに対するこだわり相変わらず素晴らしいですね。
そして尻へのこだわりもww


で、投下します。
非エロ・長編、「偽りの恋人」の第六話です

140偽りの恋人:2009/06/09(火) 21:05:35 ID:pgT5jNDQ
偽りの恋人6


 そこに一つの金属製の箱があった。
 正確には、箱状のパーツ、とでも言うべきか。
 正式名称は弾倉、またはマガジンという名で呼ばれる部品である。
 その目的は内部に弾薬を入れる事。
 多くの場合、実弾を使用する通常銃火器類で見られる部品であるが、それが規制されているミッドチルダでも稀に見られる事がある。
 魔法を効率的に運用する為のデバイス、特にベルカ式と呼ばれる物では魔力をカートリッジとして運用し、爆発的に能力を高める為に用いるのだ。
 そして、そのデバイス用のマガジンに今カートリッジが込められていた。
 透き通るほど白くしなやかな指が金色に輝く弾薬を摘み上げては、一発ずつ挿入。
 金属と金属が触れ合い、噛み合う硬質な音が幾度も響き、弾倉は重みを増していく。
 最後の一発が、既に大量の弾薬を内包して硬くなったスプリングを押し下げ、装填された。
 最初は軽かったマガジンは装弾数一杯のカートリッジを飲み込み、存分に重くなる。
 ずしりと重量感を感じさせるそれを、使い手、金髪の少女は軽く振った。
 そしてマガジンの背部を壁で軽く叩き、詰められた弾薬を整える。
 作業をもう一度繰り返せば、全弾装填されたマガジンが都合二つ完成。
 少女はこれを己のデバイスへと差し込む。
 それは二振りの細身の剣の形をしたベルカ式のアームドデバイス、少女の愛剣、双剣アルズ・ファルト。
 アルズの頭文字Aは始まりの言葉、ファルトの終端文字Thはヘブライ語で終わりの意味。
 アルズは魂の降り立つ天を表わし、ファルトは魂の還る冥府を表わし、存在の流転を意味している。
 柄の前には鍔と一体化した形状で薬室(チェンバー)と遊底(ボルト)を持つ、まるで銃のようなカートリッジシステム独特の機構がある。
 さながら実銃におけるサブマシンガンのような挿入口に、少女はマガジン射し込み、そのまま後部の遊庭を引き、薬室に弾を送り込む。
 高い金属音と共に遊庭は稼動し、魔力を内包した弾丸を装填。
 二度繰り返せば、二つの剣は完全に臨戦体勢を整える。
 少女は両手の双剣を軽く振るった。
 室内灯の光を反射し、二振りの刃はそれぞれが銀閃と輝く。
 風を斬る鋭い音と共に、剣は腰元の鞘に吸い込まれるように仕舞われた。
 そこで少女、ソフィア・ヴィクトリア・ルイーズは一つ小さな息を吐いた。
 場所は機動六課に設けられた訓練場、その隊員用控え室である。
 時刻は件の、模擬戦という名の決闘の丁度一時間前。
 戦闘準備を整えた乙女は、冷静に思考を巡らせつつも額に僅かな汗を流す。
 と、そんなソフィアの、彼女と共に控え室にいた少女が声をかけた。


「緊張、してます?」


 振り向けば、オレンジ色の髪を二つに結った少女、この戦いでソフィアの相棒を務める頼もしい味方、ティアナ・ランスターがいる。
 ティアナもまた彼女と同じく丹念に己がデバイスを調整している最中だったが、その作業を一時中断して声を掛けた。
 艶やかな橙色の髪を揺らし、自分とは違う色彩の青をした瞳に見つめられ、騎士の少女は表情の険を緩めた。
 出会ってからまだ短い間だが、この二丁銃と幻影を操る少女とはどうにもウマが合うのだ。
 戦闘スタイルも魔法の形式も何もかも違うのだが、ティアナとはどこか近親感を感じる。
 それは片思いを胸に抱く乙女同士のシンパシーなのか、それとも単なる思い込みなのかは分からない。
 しかし現実に、ソフィアが表面上浮かべていた冷静さは虚勢だと看破されてしまった。
 仕方なく、少女騎士は被っていた仮面を脱ぎ捨て、困ったような苦笑を浮かべる。


「ええ、まあ」


 と、眉尻を下げて微笑。
 そんなソフィアに、ティアナもまた口元を笑みにする。
 騎士の少女と同じく、眉尻を下げた困った顔だ。


「実は私も」


 頬を掻きながら、オレンジ色の髪の少女はそう呟いた。
 一拍の間を置いて彼女の言葉を飲み込み、ソフィアの笑みが変わる。
 困ったような苦笑から、柔らかい微笑みへと。
 そして少女らの薄桃色の唇から、ほぼ同時に笑い声が零れた。
 小さな、だが楽しげな微笑は、さながら僅かに花弁を開かせる花の如く咲いた。
 二人の少女は、しばし戦いの前の緊張感を忘れて笑い合う。


「勝つ見込みはあると思いますか?」


 笑顔の中、ティアナは問うた。
 笑みを浮かべながら、こちらがどう返すか分かっている顔だ。
 故にソフィアも口元を微笑のままに言葉を返した。


「もちろんです、その為に今日まで二人で磨いてきたのですから」


 そう言い切る。

141偽りの恋人:2009/06/09(火) 21:06:52 ID:pgT5jNDQ
 今まで、短い間ではあったが有意義で濃密な時間を二人は過ごしてきた。
 お互いの技と術理を、魔法の特性を、呼吸を、闘争の場で共に歩む全てをだ。
 相手が強い事は百も承知、されど負ける要素などどこにもない。
 そんな自身がある。
 戦闘時の連携から、対シグナム用に開発した合体技まで、もはや今の二人は磐石と言って差し支えない。
 それでもどこかに残っていた不安も、今の会話で完全に掻き消えた。
 もはや憂いはない。
 二人で磨いた力を発揮するだけである。
 最後にもう一度だけ大まかな戦略を語らうと、二人は悠然とした足取りで控え室のドアを潜り訓練場へと向かう。


「私、言おうと思うんです」


 道中、廊下でティアナがふと口を開く。
 紡がれる言葉を聞きつつ、ソフィアが横目で見れば、彼女の頬は淡い朱色に燃えていた。
 ほのかに紅潮し、儚さすら感じる愛らしい顔で、少女は言う。


「この戦いが終わったら……ヴァイス陸曹に……その、私の気持ちを」


 そう、少女は恥ずかしげに告げた。
 今日に至るまで互いに語らったのは何も戦いに関する事だけではない。
 胸に秘めた甘い恋心、意中の相手に関する事も様々に話した。
 だから知っている、彼女があの狙撃手にどのような想いをどれだけ募らせているか。
 ソフィアは青い瞳をそっと細め、口元に柔らかく微笑を浮かべ、言う。


「決心、ついたんですね」

「……」


 返事の言葉はない、代わりにティアナはコクンと小さく頷いて返す。
 どこまでも可憐で愛らしい恋する乙女の様に、ソフィアは微笑を優しげに深める。
 他人から見たら自分もこうなのだろうか? と、せんなき疑問符が一瞬浮かぶ。
 目の前に通路の終わりが見え、訓練場の光が射し込んで陰影を作っている。
 その光を見ながら、ソフィアは囁くように言葉を漏らした。


「あなたの気持ちが報われると良いわね、ティアナ」


 と、出会ってから初めて相手を呼び捨てで呼ぶ。
 そう言われ、ティアナは一瞬眼を丸くすると、頬を赤らめたままお日様みたいに笑った。


「うん。ソフィアもね」


 彼女もまた、共に戦うのはこの日で最後になるでろうパートナーを、友として呼び捨てにした。
 そして二人は思う、己と友の恋路の行く末と、きっとこの先も続く友情を。
 同じ思慮を胸中に抱きながら、恋する乙女二人は訓練場へと脚を踏み入れた。





 模擬戦開始を告げるなのはの声が響いた刹那、動く影が三つある。
 青い騎士服の少女、ソフィア。白の騎士甲冑の美女、シグナム。そして狙撃銃を持つ男、ヴァイス。
 その三人である。
 シグナムとソフィアはそれぞれ向き合った互いに向けて駆け出し、ヴァイスは逆の後方へ全力疾走した。
 緋色の髪を揺らした美しき守護騎士の長、そして金色の髪を揺らしたうら若き乙女は戦いの開始から一秒も経たぬ間に刃を交えた。
 轟音とも呼べる金属音、高速で接近したベルカ騎士同士が刃を斬り結んだ音が周囲の空気を激しく震わせる。
 それは彼女らに、生粋のベルカ系魔法を使う戦闘者にとって取り得る最善・最高の方法であった。
 戦の始まりが告げられたならば、真っ先に近づき剣で以って斬り伏せる。
 単純だが、故に最も純粋な選択。
 またそれとは逆に、ヴァイスは訓練場の中心地で激突する麗しい騎士達に背を向けて駆ける。
 戦闘という局面において、基本的に遠距離戦用の射撃魔法を中心に体系を成すミッド式の使い手として。
 そしてなにより狙撃手として。
 彼ができる事、彼にしかできない事、それを考えれば自ずとこの選択肢となる。
 まず距離を置き、相手の攻撃の届かぬ位置から精密な狙撃を行う。
 前線はシグナムに任せ、ヴァイスは理想的な射角を得る為に奔走する。

142偽りの恋人:2009/06/09(火) 21:09:26 ID:pgT5jNDQ
 狙撃を売りとする自身にとって、今日のこの戦場は理想的だ。
 煤けた外装を持つ無数の建造物を持つ市街地様のフィールド、正に狙撃手が最高に性能を発揮できる場所だ。
 だが、それは敵も知っている。
 瞬間、魔道師としての資質が低いヴァイスでも感じられる魔力のうねりが空気を伝わった。
 肉体に覚えこませた危険へのシグナルが警鐘を鳴らし、彼はそれに従って側方へと方向転換。
 飛び込むように駆け込み、近場の建造物の陰に隠れた。
 と、先ほどまで彼がいた空間をオレンジ色の魔力弾が高速で通り過ぎる。
 間一髪で危機を回避し、狙撃手は額を汗で濡らしながら悪態を漏らした。


「ったく、良い弾撃ちやがるじゃねえかティアナのやつ」


 麗しく恐ろしい乙女騎士はシグナムがまず足止めする、だが敵は一人ではない。
 ノーマークのティアナがヴァイスに弾幕を集中するのは当然の帰結と言える。
 遠距離狙撃しかできないヴァイスと、射撃系の魔法を広く修得しているティアナ。
 まともにやり合うのならば狙撃手の不利は言うまでもない。
 が、ヴァイスの胸中に不安はなかった。
 自分が出なくとも、あの頼もしい騎士が最前線で刃を振るってくれているのだから。
 炎の魔剣が雄叫びの如く爆砕を起こした刹那、彼は再び駆け出した。





 なのはの掛け声が響いた瞬間、ソフィアは駆けた。
 まず一歩目は脚で、己の肉体だけでの踏み込み。
 次いで二歩目、身体加速をもたらす魔法術式を行使する。
 “アクセル”、彼女が戦闘時に最も多用する身体加速系統魔法が、魔力消費と共に展開。
 アクセル・ファースト、と、術式の名を小さく呟き詠唱の残響を零せば、次の瞬間には情報処理能力の高速化で世界の時が緩やかに流れた。
 魔力により極限まで強化された筋力で足元のコンクリートを踏み砕き、飛行魔法の推進力とベクトル操作によって少女の細やかな身体は一瞬で加速。
 大気を引き裂き、黄金の髪と青き衣を風に舞わせ、乙女は風となる。
 そして、自分と同じく高速で接近する愛する騎士の刃と己の愛剣を交わらせた。
 瞬間、その場の空気全てが爆ぜ飛ぶような衝撃が生まれる。
 ソフィアの踊らせる双剣アルズ・ファルト、シグナムの振るう炎の魔剣レヴァンティン。
 三つの刃が超高速で斬り結び、火花と共に轟音を生む。
 大地まで震わせるような激突、されど両者は一歩も引かぬ。
 交錯したその場で剣を交えて、麗しい二人の騎士が鍔競った。
 超硬質の刀身を持つアームドデバイスが軋み合い、耳障りな甲高い音を立てる。
 両者、渾身の力を込めて踏み込む。
 足元のアスファルトが強化された脚力の前に砕け、美しい女騎士二人のたおやかな身体、胸に実った果実がその衝撃に震える。
 そして、二人はそれこそ唇が触れ合いそうな距離で視線も交わらせた。
 双方鋭い眼差しを互いに向ける。
 特に、乙女の向ける眼差しは恋慕をも溶かした、強い強い瞳。
 だがそれも一瞬。
 空気中に強い魔力が伝播したかと思えば、ソフィアの身体が宙を跳ぶ。
 彼女自身が望んだ事象ではない、対手である烈火の将の手によって、だ。
 刀身に炎熱変換した魔力を纏い、強烈極まる踏み込みと共にソフィアの身体が押し出されたのだ。
 爆炎を帯びたレヴァンティンはさながら雄叫びの如く燃え盛っている。
 瞬間的な魔力発揮量で勝り、なおかつ怒涛のような炎を孕む刃。
 本気の力を垣間見せた将の前に、ソフィアは鍔競りに負けた。
 そして猛る魔剣を担ぐように構え、シグナムが駆ける。
 風よりも速く、魔力で強化された推進力で以って、吹き飛ばされて体勢の崩れた少女目掛けて一直線に。
 この一閃で終わらせる、そう意気込んだ刃だった。
 が、それを遮るものがある。
 橙色をした閃光、魔力弾だ。
 ソフィアに見舞う筈だった愛剣の刃を、シグナムは身を捻り迫る光へと方向転換し、裂いた。
 視線を魔力弾が放たれた方向へと向ければ、そこにはティアナがこちらに銃口を向けていた。
 先ほどヴァイスに向けて何発か撃っていたようだが、流石にパートナーの窮地を見過ごす事が出来ずにこちらに目標をシフトしたのだろう。


(そうだ、それで良い)


 と、シグナムは胸中で思い、口元に笑みを零す。

143偽りの恋人:2009/06/09(火) 21:11:10 ID:pgT5jNDQ
 ソフィアとティアナの最初のプランはこうだ。
 まずソフィアが高速で初撃を斬り込み、シグナムの足を止める。
 倒せはしないまでも、一時は時間を稼げるだろう。
 そしてその間にティアナがヴァイスを撃破し、2対1という数的優位性を得る。
 というものだ。
 シグナムはそう予測したし、実際に二人が考えたのもそうだった。
 最初の作戦は破られたのだ。
 このままヴァイスが射撃位置を確保し、狙撃を行使すればそれで決着するだろう。
 彼の持つ圧倒的なロングキル性能が存分に発揮されれば、乙女二人には成す術がない。
 ならば、シグナムのする事は簡単だ。
 それまでこの二人の相手をしていればいい。
 口元に不敵な笑みを浮かべ、シグナムは問うた。


「さて、あいつが準備をするまでに私を倒せるか? ルイーズ」


 挑発の気のある問い掛け、相手の精神的な動揺を誘う意味合いの言葉だった。
 が、対する金髪の少女も、彼女の後ろで双銃を構えた少女も、顔には焦りの二文字はない。
 むしろその逆、二人の顔にはシグナムと同じく不敵な笑みがあった。
 まるで、この状況を望んでいた、とでも言わんばかりに。
 笑みを見せ付けつつ、金髪の少女騎士は両手の双剣を鋭い音と共に振るい、構えて言う。


「ええ、お見せします……磨いた技を、存分に」


 囁くような乙女の残響が甘く大気に溶け込むや、その場にいる全員の背筋に寒気が這う。
 ソフィアが刃と瞳に込めた殺気、そして、彼女の周囲で魔力が“熱を喰らった”が為の帰結。
 うら若き騎士の持つ特異な資質、少女の持つ才能の一旦が発露する。
 これに、シグナムは不敵な笑みをやや濁す。


「もう“それ”を使うか」


 将の言葉に、少女は声でなく行動で応える。
 ソフィアの両手に握られた双剣が二筋の銀弧を描き、その軌跡から輝く氷結が舞った。
 それは少女の持つ魔力変換能力、“氷結変換”が生み出した幾つもの刃。
 術式を構築する必要などなく、彼女は魔力を用いて直接熱エネルギーを奪い去る。
 空気中の窒素は凍てつき、少女の意のままに超低温の刃となりて敵を刻むのだ。
 今作られた刃、針のように槍のように鋭く長い10本の鋭利な軌跡がシグナムに目掛けて突き進む。
 さらには後方のティアナが放った魔力弾、誘導性のそれらも合わさり、乙女二人の放った技は都合20の連撃となる。
 強力な、回避も防御も許さぬ合体技。
 だが、それは相手が並みであるならば、である。
 魔力と氷結が織り成す連撃は、次の瞬間には炎の軌跡と共に残らず砕け散った。
 魔力弾と氷が舞い散る中、そこに立っていたのは猛る焔を纏う剣を踊るように振るう美しき騎士の姿。
 炎の魔剣の刃を以って、シグナムは迫る20の脅威を瞬く間に斬り刻んだのだ。
 これに乙女二人は顔に浮かべた表情をやや苦くする。
 先ほどの合体技、氷結刃と魔力弾の混合射撃は相応の自身のある技だった。
 だがしかし、烈火の将はそれをさながら小虫でも薙ぎ払うかのように容易く引き裂いた。
 やはりこの人は強い。
 と、騎士の乙女は双剣を握る手に力を込めながら思う。
 ソフィアは顔を僅かに背後に向け、ティアナと視線を交わす。
 同時に念話で意思疎通を行い、作戦を確かめ合う。
 よし、では行こう。
 最後にそう眼差しだけで伝え、乙女らは駆けた。
 勝利と愛の為に。





 駆ける駆ける駆ける。
 一人の男が煤けたビルの影を駆け抜ける。
 愛銃を持った狙撃手、ヴァイス・グランセニックが愛銃ストームレイダーを担ぎ訓練場の中を全力で走り抜け、ある場所を目指していた。
 荒く息を吐き出し、鍛えられた肉体のしなやかな筋肉を惜しみなく酷使し、ひたすらにひたすらに加速する。
 訓練場に立体化された幾つもの建物の合間を抜けながら、ヴァイスが目指すのは一つの煤けたビルだ。
 この仮初めの戦場で最も高く、満遍なく見渡せる場所。
 狙撃手にとっては理想的な射撃位置である。
 額に、そして服にと、汗を滲ませながらヴァイスは目的の建物に辿り着く。
 そして即座に入り口を見つけるや、休む間もなく駆け込み、階段を登る。
 上へ上へと、階段を登ること役十階分。
 ヴァイスはそこで一旦急停止すると、即座に周囲を見渡す。
 手頃な窓を見つけるや、狙撃手は手の愛銃をそこから突き出した。
 窓枠にハンドガードを乗せ、銃床(ストック)に頬を当て、照準眼鏡(スコープサイト)を覗く。

144偽りの恋人:2009/06/09(火) 21:12:43 ID:pgT5jNDQ
 ヴァイスの愛銃、ストームレイダーのスコープ望遠機能の果てには美しくも過激な剣舞が繰り広げられていた。
 緋色の髪を揺らした炎の女神が金色の髪を揺らす天使と炎と氷を以って斬り結ぶ。
 まるでこの世のものとは思えぬ、幻想の光景。
 一瞬この場が仮初めとは言えど、戦場である事を忘れてヴァイスは魅入る。
 が、それは本当に一瞬。
 思考をすぐに戦闘用のそれへと戻す。
 さながら聖職者の咎、十字架の如き二つの直線が描く十字の照準線(レティクル)で狙うのは剣を以って舞い踊る二人の騎士ではない。
 高速の剣舞に踊る彼女らを捉えるのは、不可能ではないが困難であり、できる事ならば避けるべき狙撃対象である。
 故に、狙撃手がその愛銃で狙いを定めるのは騎士二人の斬り合いの後方で援護射撃を行っている少女、ティアナ・ランスター。
 艶やかなオレンジ色の髪を愛らしくツインテールに結った美少女を、ヴァイスはスコープを介して見つめた。
 思い出すのはJ・S事件だ。
 あの時、自分は戦闘機人に襲われそうになったティアナを狙撃により救った。
 そんな彼女を今度は撃ち抜くという。
 皮肉というか、まるで悪い冗談みたいだ。
 僅かに軋む心が鈍痛にも似た感覚を生み出す。
 一瞬脳裏を過ぎるのは、かつて愛する家族を撃ってしまった誤射の記憶。
 しかしそれは意思の力で踏破する。
 大丈夫、もう既にあのトラウマは克服した。
 そう精神と肉体に言い聞かせると、ヴァイスはカートリッジを一気に消費する。
 ストームレイダーに挿入されたマガジンから次々と薬室に送り込まれ、強烈な撃発音と共に魔力が燃焼、排夾された空薬莢が宙を舞う。
 弾倉に装填された全て、都合10発のカートリッジを消費して銃身を溶かしそうなほどの熱量が生まれる。
 どんな障壁も防護服も遮蔽物も、貫き撃ち抜く、ヴァイスが最も得意とする狙撃手の矜持、最高威力の直射式射撃魔法が構築された。
 安全装置は全て解除された、後は引き金を、撫ぜただけでも激発するほどに軽く調整されたそれを引き絞るだけだ。
 スコープの中に映るティアナに、最後に一度、すまないな、と呟く。
 瞬間、ヴァイスは変わる。
 人間としての暖かく優しい思考が死んでいき、狙撃手としての部分が拡張されていく。
 もはやそこには明るく気さくなヴァイス・グランセニックはいない。
 狙撃を、精密射撃を行う為だけの一個の機械があった。
 現状急ぐべきだろう焦りも忘れて、戦いの最中だと言う焦りも忘却し、静寂の中に身を浸らせる。
 息を緩やかに吐き、呼吸を理想的な状態に導く。
 同時に身体の振幅、狙撃を行う為に邪魔な揺れをも消しにかかる。
 徐々に、徐々に、余計なものを削ぎ落とし、研ぎ澄ます。
 完全に身体の振幅を制動する事は不可能、されどゼロに近づけることは出来る。
 魔力で強化された筋力がそれを成す。
 全身の細やかな揺れを最大限抑制し、傍から見ればほとんど静止画のような様。
 そして狙撃手は深く呼吸をすると、五分ほど吐いたところで息を止めた。
 狙撃直前の最終段階に入ったのだ。
 視界と意識の全てがレティクルの中心に立つ一人の少女に埋め尽くされて、窒息の息苦しさも忘れて、ただ覗き込む。
 確かにその瞬間だけヴァイスの意識はティアナに向けられて、震えが止まるまでの長くてたまらない数秒間の後。
 静かに引き金に指をかけた。

 だが次の瞬間、ヴァイスの指先がトリガーに触れる寸前、スコープの隙間から狙撃手の目に鮮やかなオレンジ色の光が射す。
 何事かと思った刹那――彼の身体に極大の光が襲い掛かった。





 氷結変換、魔力を術式構築なしで凍らせる特異資質。
 それが行使された事により、空気中の窒素が凍結してキラキラと輝き光る。
 炎熱変換、魔力を術式構築なしで燃焼させる特異資質。
 それが行使された事により、空気中の酸素が燃焼してゴウゴウと輝き光る。
 氷結を成すは二振りの刃、炎熱を成すは一振りの刃。
 三つの白刃がまったく相反する属性を以って、超高速で舞い踊る。
 交錯した剣と剣は幾度も爆ぜた。
 高速度でぶつかり合った衝撃だけではない、あまりの温度差の魔力波動の接触により発生した小規模な水蒸気爆発である。
 幾重にも発生する爆発の、さながら大音量の合唱のような爆音乱舞。
 巻き起こる爆風の中に舞うのは緋色と金の髪を揺らす二人の美しい騎士、シグナムとソフィアだ。
 力強い踏み込みと共にソフィアのデバイス、アルズ・ファルトから放たれる左右から薙ぎ払うような斬閃二つ。
 大気を斬り裂く凍てつかせた刃の猛攻が烈火の将を襲う。
 が、それをシグナムは愛剣レヴァンティンの刀身で払った。

145偽りの恋人:2009/06/09(火) 21:14:01 ID:pgT5jNDQ
 下から上への、斬り上げる形の炎の斬撃が凍れる刃を爆ぜながら薙ぐ。
 その衝撃に金と緋の美しい髪が舞い、場を幻想と彩る。
 だが見惚れる者も、そんな暇も無い。
 この場にいる者は皆一様に、闘争の二文字を全力で遂行しているのだから。
 そして、流麗なる騎士の剣舞に鮮やかな橙色の閃光も混ざる。
 ソフィアのパートナー、ティアナの魔力弾だ。
 誘導性を有した閃光はソフィアの斬撃の合間、シグナムの後方から迫り彼女を狙う。
 前方で繰り出される双剣の攻撃により将の刃を封じ、背後よりティアナが射撃を当てる挟撃が狙いだ。
 飛行魔法と強化脚力を併用した跳躍、そこから輝く金髪と青い騎士服を揺らし、流れるような動作で横薙ぎの双閃が繰り出される。
 空気を引き裂きながら放たれる超速の刃が美しい二つの銀弧を描き、烈火の将を襲った。
 が、シグナムはこれを造作も無く防いだ。
 横薙ぎの刃を、縦に構えた刃で受ける。
 超硬質の金属同士が高速でぶつかり合い、大きな火花が閃光と輝いた。
 軋みを上げる刃と刃、両者は鍔競り、膠着状態へと至る。
 そしてシグナムの背後に回った誘導弾が狙いを定めた。
 が、その挟撃が成功する事は無い。
 既に魔力知覚によりティアナの射撃魔法の事を彼女は悟っていた。
 故に、後方に迫る瞬間、シグナムは反撃を成す。
 レヴァンティンの機関部が炸裂音と共にカートリッジを消費し、強大な魔力を得る。
 魔力は即座に炎熱変換の加護を受け、術式のプロセスなしで爆熱へと転化。
 炎の魔剣レヴァンティンの刀身がその二つ名の如く燃え盛り、対面の少女を爆ぜ飛ばした。
 ソフィアを引き離した次の瞬間、シグナムはその場でクルリと回る。
 鮮やかな緋色の髪を揺らし、さながら踊り子の如く華麗に、刃の軌跡を銀弧と描きながら。
 華麗なターンが生み出す横薙ぎの斬撃は、1ミリの狂いもなく後方に迫っていた魔力弾を引き裂く。
 そのまま回転運動の慣性に従ってもう一度回転、同時に踏み込みシグナムはまたソフィアへと刃を向け、構えた。
 手の愛剣、レヴァンティンの柄を握り締めつつ、彼女の眉根が僅かに歪む。


(……おかしいな)


 と、対面の少女に刃を構えながら将は思った。
 どうにも引っかかる。
 それは目の前の少女らの、戦い方に対してだ。
 自分に対して2対1という数的優位性を手に入れたと言うのに、思い切り、とでも言うべきものが欠落している。
 果敢に攻めてくるのはソフィアばかりで、ティアナは先ほどのような手ぬるい誘導弾を思い出したかのように撃って来るだけ。
 普通ならここで二人で全力を出し、シグナムを倒しておくのが常套手段というものだろう。
 まさか自分を相手に手加減や余力温存などという事は考えてはいまい。
 それとも、何か作戦あっての事なのだろうか。
 彼女がそこまで考えた時、眼前の少女に動きがあった。


「アクセル……」


 双剣を突き出すように構え、足元にベルカ式独特の三角形を呈した魔法陣を展開し、少女は言葉を紡ぐ。
 炸裂音が空気を振るわせたかと思えば、アームドデバイスの内部で魔力を燃焼させたカートリッジ、その空薬莢が宙を舞った。
 薬莢の鮮やかな金色が輝く刹那、ソフィアは術式の名を続ける。


「セカンドッッ!!」


 少女の澄んだ声が言の葉を奏でると同時、そのしなやか肢体は風となった。
 アクセル・セカンド、ソフィアの用いる高速移動魔法の二つ目。
 ただひたすらにトップスピードのみを追求した移動術式で、その最高速度は音の壁をも突破した音速超過の超高速へと至る程の技である。
 空気の、音の壁を突き破り、それらから瑞々しい肉体を守る物理保護障壁で衝撃波を発生させながら乙女が舞う。
 繰り出すのは双剣を前に突き出してする、単純な刺突だ。
 まず普通ならば反応する事すら出来ず喰らうであろう必中の一撃。
 されど、相手は烈火の将。
 銃弾の如き音速の刺突を彼女はソフィアの見せた予備動作で事前に読み、さらには魔力強化された超絶の動体視力で見切っていた。
 どれだけ速くとも、事前に動きが分かるのならば恐れる事は無い。
 何より、昔から度々模擬戦を繰り返してきた友、金の閃光の名を持つ執務官との戦いでこの種の攻撃にはすっかり慣れているのだ。
 術式で高速化した思考の中で迫り来る少女の動きを見切り、シグナムは必要最低限の動きだけで反撃を行った。
 強烈な踏み込むで左に身を移し、二つの刃を回避すると同時にカウンターで己が愛剣をソフィアのわき腹に滑らせる。

146偽りの恋人:2009/06/09(火) 21:14:52 ID:pgT5jNDQ
 少女の身体を空気抵抗から守っていた物理保護障壁と、シグナムの繰り出したレヴァンティンの刃が衝突。
 超硬質なそれらがぶつかり合った、凄まじい音響が空気を振るわせる。
 吹き飛ぶのは青きドレスの、騎士服の少女。
 強烈なカウンターの斬撃を受け、面白いくらいにソフィアの細い肉体は飛ばされ、地面の上を転がる。
 少女は長いスカートの裾を翻し、その下から艶めかしい白い脚を晒しつつ身体を捻り、立ち上がった。
 反撃にダメージを負い、その顔は苦渋に歪む。
 が、しかし、そこにあったのは苦渋だけではなかった。
 眉根を苦痛に歪めながらも、ソフィアの口元には確かに笑みにも似たものが浮かんでいる。
 一体何が?
 シグナムがそう思った刹那、それは起こった。


「スターライトブレーカーァァッッ!!」


 聞き覚えのある術式名称と光、オレンジ色の凄まじい閃光が空気を引き裂いたのだ。
 極大の砲撃魔法である。
 無論、それを行使したのは後方に控えていたティアナ。
 しかしその狙いはシグナムではない。
 遠方の、訓練場に設置されたビルの一つに放たれたのだ。
 将は即座にその意図に気付く。


「ヴァイスッッ!?」


 柄にもなく声を荒げながら念話を繋ぐ。
 だが返って来る返事はない。
 ああ、そうか。
 ここに至り、シグナムはようやく敵の意図を悟る。
 今までの、ソフィアが仕掛けティアナが後方に控えるという戦術。
 それはティアナがヴァイスを討つ為の作戦だったのだろう。
 彼女が今まで消極的な戦闘ばかり行っていたのは、たぶん広範なエリアサーチを使っていたからだ。
 探すのは無論、もう一人の敵であるヴァイス。
 圧倒的な遠距離戦を持つ彼を最優先で潰す、それも自身の消費魔力の少ない収束砲撃魔法でだ。
 そもそも、いつの間にあの技を身に付けたのか。
 自分が完全に孤立した事に、シグナムは歯を噛み締めて苦い顔を浮かべる。
 そんな将に、ソフィアは息を整えつつ言う。


「さあ、これからが本番です。私たちが共に磨き抜いた絶技――存分にご覧じませ」


 と、澄んだ声が告げるや否や、少女らの猛攻が牙を剥いた。
 こうして、愛を賭けた激闘は第二幕を開く。



続く。

147ザ・シガー:2009/06/09(火) 21:20:04 ID:pgT5jNDQ
投下終了。
ヴァイス、まさかのSLB喰らうの巻でした。
防御紙な彼が受けるには悪夢すぎる攻撃、果たして狙撃手の運命や如何に?
次回に乞うご期待。

でもまあ、次回でこの話終わらせるくらいの勢いだけどね!



しかし、新規職人様のストラディ氏のヴァイシグが面白過ぎて、ちょっと触発され気味なのです。
久しぶりにヴァイシグでガチエロでも……

148名無しさん@魔法少女:2009/06/09(火) 23:01:46 ID:QNFim3zI
GJ!
ヴァイスがティアナの全力全開を食らってしまった……。
いかん、これではフラグがたってしまうw

149名無しさん@魔法少女:2009/06/09(火) 23:16:01 ID:0xtor5hs
>>147
キャーwなんて素敵な修羅場wwGJ過ぎるwww

150ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/10(水) 02:52:05 ID:fRoYiuHI
 新参の書き手です。
 なんかもお、歴戦の書き手さんたちによる凄いのが続いてる後に投下しちゃっていいのかと不安なんですが…
 でも投下します。

・ユーノくん×なのはさん
・書いてるうちに長くなったので分割して前・中・後の3編です(予定)
・今回投下分はそこまでエロ入ってないですが、その後はむしろエロしかありません。
・設定改変あり。無敵ななのはさんが好きな人は注意。
・時間軸はA's終了後半年くらい(10歳)
・タイトルは、「例えばこんなリリカルなのはさん」。

 では、いきます。

151例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 02:53:48 ID:fRoYiuHI
 高町なのはという魔導師の強さは、偏に“主”であるユーノ・スクライアとの常識外れな契約相性の良さと、
これまた常識外なリンカーコアの強度によるものだと言っても過言ではない。
 魔導師と使い魔との契約とは違う、ヒトとヒトとの契約。主から使い魔への一方通行な魔力供給ではなく、
“主”と“従者”との間で魔力を共鳴させ、増幅、供給し合う。
その循環の果てにあるものは、無限に膨れ上がる魔力。
 もっとも、それは理論上の話であって、そう上手くいくというわけでもない。
 第一に、契約相性の問題。魔力の増幅率、魔力供給の伝達効率、おおよそ契約によって得られるメリットの
ほぼ全てが相性に依存しており、これが低くては雀の涙程度の効果しか得ることはできない。加えて、契約相性
というものは実際に契約するまではわからない上、どれだけ親しい間柄だろうと、長年連れ添った関係だろうと、
必ずしも相性が高いとは限らないのである。
 第二に、リンカーコアへの負担。仮に高い相性によって契約が為された主従であろうとも、リンカーコアの
キャパシティまでもが向上するわけではなく、あまりにも膨大な魔力はコアに大きなダメージを与えることになる。
最悪の場合は暴走に至り、溢れ出す魔力は敵味方関係なく、あらゆるものを破壊し尽くす。よって、契約の執行には
総じて制限時間が設定される。相性が高ければ高いほど魔力増幅率も高く、つまりは制限時間が短くなっていく。
瞬間的な出力の向上というならば、闇の書事件を経て安全に運用するための研究が始まったばかりのカートリッジ
システムのほうが、まだ安全で使い勝手が良いという始末なのである。
 ユーノ・スクライアと高町なのはの主従は、この二つの問題を完全に――とまではいかずとも、かなり高いレベルで
クリアしている。
 まず相性の良さ。これを数値化したものをシンクロ率と呼ぶが、平均にして20%を下回るところを、ユーノと
なのはの2人は、98%という新暦以降の記録上にある限りでは最高の値を叩き出している。それ以前の最高値が
71%だったのだから、記録を行ったスタッフは計器の異常なのではないかと何回も確認を取ることになった。
 そして2人は、リンカーコアの強度についても特筆すべきものを持っていた。特になのはのほうは、個人で保有する
魔力量はたいしたことがないにも関わらず、オーバーSランク魔導師のそれに匹敵するほどなのである。これは、本来
魔法が存在しないはずの世界で魔力を持って生まれた、つまり「突然変異」であることが由来と思われる。ユーノの
ほうも、なのはに比べれば見劣りするとはいえ、平均以上のコア強度であり、さらに彼は細やかな魔力制御に長けていた。
コアにかかる負担がなるべく小さくなるよう2人を繋ぐ魔力の流れをコントロールすることで、ユーノとなのはの契約執行
制限時間は、最大にして1635秒という数字に達した。普通なら、シンクロ率20%前後相当の値である。
 契約の恩恵を受けたユーノとなのはのコンビは戦闘において圧倒的な力を発揮した。紅の鉄騎ヴィータをして破壊不可能と
言わしめた防御や結界、バインドを操るユーノ。盾の守護獣ザフィーラすら一撃で堕とす砲撃と、金の閃光フェイト・T・
ハラオウンの高速機動を以てしても振り切れない誘導制御弾を保有するなのは。
 L級7番艦アースラのメインオペレーター、エイミィ・リミエッタは、別々の世界で生まれ育ち、偶然に出逢った、そんな
2人を評してこう言う。
「いやぁ、運命ってあるもんなんだねぇ……。あ、どっちかと言うと赤い糸?」
 もっとも、ユーノもなのはも無敵というわけではない。なによりも、2人の強さは主従セットでの運用が前提となって
いるのだ。
 高町なのは、入局1カ月の新米局員。個人で保有する魔導師ランクは、陸戦Eランク。

 ☆☆☆

152例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 02:54:49 ID:fRoYiuHI
「うにゃあああああっ!?」
 天井も床も見えない無限書庫の広大な無重力空間に、なのはの悲鳴が木霊する。闇の書事件後、4月から正式に無限書庫の
司書として働き始めたユーノは、またか、と溜息をついた。
 視線を声の聞こえてきたほうに向ければ、四方八方に散らばった無数の本と、その中心であわあわと慌てている様子の女の子。
「ゆ、ユーノく〜ん、たすけて〜」
 その女の子、なのはからの救援要請にもう一度溜息をついてから、ユーノは書庫内を縦横無尽に巡る梁を蹴って、彼女の
元へと向かう。
「今度は何やったのさ、いったい」
「むぅ……今度は、って。それじゃわたしがいつも失敗してるみたいじゃない」
「事実じゃないか」
「あう……」
 ぐうの音も出ない様子のなのはである。ユーノは少し可哀想に思いながらも、心を鬼にする。ここで甘やかすのは、なのはの
ためにならない。
で、何やったの、と視線で問う。
「……ユーノくんに教えてもらった検索魔法でね、A-3のリストを」
「いっぺんに終わらせようとして横着した結果、制御に失敗した、と」
「うう……その通りですごめんなさい」
 涙目で頭を下げるなのは。おおよそ予想通りではあったのだけど、当たっても嬉しくもなんともない。なのはの仕事が遅れる
ということは、その分ユーノの仕事が増えるということで。
「まったく……これじゃ、今日はご褒美あげられないな」
「え……」
 そんなふうに、意地悪の1つだってしたくなるというものだった。
「え、え……そんな、やだよ……ご褒美、欲しい……欲しいのに……」
 心細げに瞳を揺らすなのはに、ユーノは今すぐ“ご褒美”をあげたい衝動に駆られる。が、そこは慣れたもので、ユーノは
あっさりと欲求を抑え込んだ。
「じゃあ、横着なんてせずにひとつずつ、確実に片付けていくこと。なのは、こういう細かい魔法は苦手なんだから……
いいね? それでちゃんと出来たら、ご褒美あげるから」
「は、はいっ」
最後の一言でなのはは俄に元気を取り戻し、散らばった本を集めに向かった。
 その背中を見送ってから、ユーノは自分の作業に戻ることにした。さっきなのはが失敗したものと比べると、かなり面倒で
難しい仕事である。あっさり司書資格を取得したユーノに対し、一緒に受けた試験に落ちて、現在も資格取得のための勉強中
である司書見習いのなのはには、ごく簡単な仕事しかさせてはいけないことになっている。そもそも正式な司書でもない者を
書庫で働かせるのも問題があるのだが、その辺は今のなのはの肩書きやらユーノの便宜やらでなぁなぁになっている。
(やっぱり……なのはには無理なんじゃないかな、この仕事は)

 ☆☆☆

153例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 02:56:08 ID:fRoYiuHI
 入局時、なのはは武装隊への配属を希望していた。魔法の力を一番わかりやすい形で、いろんな人を、いろんなものを守る
ために使えるから。なのははそう言って、無邪気に笑っていた。
 その希望は通らなかった。
 なのはの魔法資質は攻撃に傾倒しており、そこだけ見れば武装隊向きなのは確かだったが、如何せん個人で保有する魔力量が
低すぎた。なのは1人では、せっかくの射撃・砲撃魔法も満足に使うことはできない。さらに、契約執行状態でなければ飛行も
できない(できないこともないが、すぐに魔力切れで墜落することになる)彼女は個人では陸戦魔導師ということになるのだが、
陸戦魔導師としては身体能力があまりにも欠けていた。彼女がEランク止まりになっている大きな理由の1つである。
 一度、ユーノを一緒に武装隊に配属させるという話も出たが、早々に却下された。ユーノ自身の魔法資質は完全にサポート特化
であり、お世辞にも武装隊向けとは言えない。契約にしても、最大で27分弱という制限時間がある。その間は凄まじい戦闘力を
発揮するなのはだが、逆に言えばたったの27分間しかまともな戦力にならないということでもあった。2人セットが必須という
点も、運用の幅を狭める。
 対してユーノは、無限書庫での資料検索において卓越した才覚を発揮していた。さらに、ここでも契約の恩恵は発揮される。
戦闘用魔法に比べればかなり消費魔力の少ない検索・読書魔法は、27分15秒間の契約執行、その間に無限増幅する魔力と
ブーストされた処理能力によって、通常時にしておおよそ丸一日分に相当する作業効率を見せた。
 そんな、お上の事情やら何やらといった経緯を経て、結局なのはは、ユーノ付きの秘書という形で無限書庫・司書課に編入
されることになった。

 ☆☆☆

 ふよふよと漂っていると、ふと、少し遠くの方で何冊かの本を抱えている女性司書と目が合った。と思うのも束の間、ぷいっと
顔を逸らされる。その様子は、どこか気まずそうで。
 ユーノはこれについても、またか、と小さく溜息をつく。
 書庫内外を問わず、なのはと一緒にいると今のような視線を時折感じるのだ。今度もご多分に漏れず、悪意、とまではいかずとも、
ネガティブな方向の感情が込められていたのを感じ取ってしまった。
 時空管理局という組織、特に本局は、実力主義の観念が非常に強い。そうでなければユーノのような年端もいかない少年を局の
データベース復旧、その陣頭指揮という重要な仕事に就かせることなどしないだろうし、フェイトやはやて、守護騎士たちの
ように、かつては犯罪行為に加担した者であろうと、更生・協力の意思と実力さえ示せば認められるのだ。
 この体質は、逆に言えば実力の伴わない者には過剰なまでに厳しく、時には簡単に切り捨てるということを意味している。
もちろん全てがそうというわけではないが、その手の人種が多いのは確かだった。
 ユーノは、なのはが、コネ入局の役立たずだとか、スクライア司書の魔力タンクだとか、そういう陰口を叩かれているのを
知っていた。酷いものでは、契約した主従であるという関係を揶揄して、スクライアのペット、と、そんなことを言う者すらいる。
 そういう輩を片っ端から殴り飛ばすのも、恐らくは自分がどのように言われているのか知っているなのはを励ましてやることも、
しようと思えばできたはずだ。
 だが、ユーノはどちらもしなかった。その行為こそが中傷を肯定し、却ってなのはを傷つけてしまうのではないかと、恐れた。
 なのはは、どうして管理局での仕事を続けようとしているのだろう。ふと、ユーノはそんなことを思う。
 彼女の希望である武装隊への配属は、恐らく今後も望みは薄い。魔力量が少なくとも、技術でカバーしてハンデを乗り越える
魔導師は数多いが、実戦、即ち契約の恩恵下で鍛え上げられてきたなのはの魔法は、すでに大魔力を活かした一撃必殺という
方向で固められてしまっている。今から矯正するのは難しいだろう。そこにはもちろんユーノにも責任があるのだが、出会った
頃は、後々自分が局入りして無限書庫の司書をやることだって想像すらしていなかったのだ。なのはのことなんて、余計に
わかるはずがなかった。
 きっと、辛い日々のはずだ。そんな中でも、なのはは、へこたれず、笑顔を絶やさず、毎日を精一杯に過ごしている。人はきっと、
それを「強さ」だと言うのだろうけど。ユーノには、その「強さ」こそが、なのはの心を蝕んでいるように思えてならなかった。

 ☆☆☆

154例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 02:57:32 ID:fRoYiuHI
 その日の業務を定時通りに終えた後、ユーノとなのはは本局内にある局員用の寮、その一室にいた。ユーノのために用意された
その部屋は、尉官用と同クラスの上等なもので、1人暮らしにはいささか広すぎるくらいだった。それだけユーノの能力が期待
されているということでもある。
 住み始めて1カ月。仕事の忙しさと、週末は海鳴の高町の家に泊まることにしていることもあって、もともと備え付け
られていた家具以外にはほとんど物がない、殺風景な部屋である。ただ、結構な頻度で、なのはが練習中だという手料理を
振舞ってくれるので、キッチン周りだけは妙に道具が揃っていたりする。
「ご馳走様でした」
「はい、お粗末様〜」
 今日も、なのはの手作りの晩御飯だった。メニューはカレーライスとグリーンサラダ。カレーはほとんど同じ有名な料理が
ミッドチルダにもあるので、ユーノも慣れ親しんだ味である。
「んー、美味しかった。やっぱり料理上手だね、なのは」
「え、ええ? そんなことないよ。カレーってそんなに難しいわけじゃないし……」
 恥ずかしそうに謙遜するなのはだったが、ユーノは本当にそう思っている。遺跡発掘を生業とする一族の中で育ったために
サバイバルの知識は食も含めて豊富だが、このような家庭的な料理はまるで作ったことがない。なのはの手料理は、ユーノに
とって間違いなく日々の癒しのひとつなのである。
「……本当に、美味しくできてた?」
「うん、本当」
「それじゃあ……その、ね?」
 恥ずかしそうに、顔を伏せて。そこから上目遣いで、何かを訴えかけてくるような瞳。
「……ご褒美、欲しいかも」
「別にいいけどさ」
 ユーノは苦笑する。なのははそんなユーノの態度にきょとんとしていて、やはり気付いていないらしい。
「今だと、カレーの味がしちゃうんじゃないかな」
「……っ!」
 なのはは瞬時に顔を真っ赤にして、両手で口元を押さえる。そんな様子を、ユーノはあはは、と笑う。少し涙目になって、
恨めしそうな視線を向けてくるなのはが妙に可愛らしい。
 そんなふうに余裕の態度を見せていたユーノだったが、
「……べ、べつに……いいよ……」
「へ?」
 あ、これまずい、とユーノは直感する。いや別にまずくはないのだけれど、まずいのだ。
「カレーの味なんて、しなくなっちゃうくらい……いっぱい、ご褒美……ほしい」
 今日こそ歯止めが利かなくなるんじゃないかと思いながらも、拒む気はまったく起きなかった。

 ☆☆☆

 私服のユーノに対し、なのはが着ているのは本局事務員用の青い制服である。エイミィやアースラスタッフが着ていたものと
ほぼ同デザインのそれをなのはは気に入っていたが、今はベッドの上に上着が脱ぎ捨てられ、白いシャツと短めのタイト
スカートだけ。
「ん……ん、んんっ……ふぁ……ちゅ、ん……」
 ベッドに隣り合って腰掛け、なのははユーノと唇を重ねていた。舌を差し込まれ、口内を舐め回され、触れ合う場所からは
ぴちゃぴちゃと水音が漏れる。幼い容貌に浮かぶのは、歳に見合わぬ恍惚の色。
 やがて、唇が離れる。互いの間を繋ぐ、銀色に輝く細い糸。それが切れると、なのはは、あ、と名残惜しそうな声を漏らした。
「……やっぱり、カレーの味だね」
「もう……ムードとか考えてよ、ユーノくん」
「そう言われても……恋人ってわけでも、ないんだし。ただの、ご褒美、なんだから」
「そ、それは……そう、だけど……ん、あっ」
 これで話は終わりと言わんばかりに、ユーノは再度なのはの唇を奪う。驚いた様子のなのはだったが、すぐに上下の唇の間に
隙間ができて、ユーノの舌を受け入れる。今度は、なのはも舌を伸ばして。ほんの少し、ちょこんと触れ合うと、次の瞬間には
互いを貪るかのようにして絡み合う。
「ん……ん、は……ぅん……」
「ひゃ、ぁん……んぅ……ん、んぁっ……」
 なのははユーノの服をぎゅっと握って、ユーノはなのはの小さな頭を抱いて離さない。幼くも、それは恋人同士の交わりの
ように見えて――しかし2人は、ただ“主従”でしかなかった。
 2人が出逢ってからずっと続くこの行為も、精一杯頑張った“従者”への、“主”からの“ご褒美”に過ぎない。

 ☆☆☆

155例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 02:59:08 ID:fRoYiuHI
 ヒトとヒトとの契約に必要なのは、専用の儀式魔法と、両者の契約の意思と、深い口付けの三つ。
 最後の1つについて、必ずしもキスである必要性はないのだが、儀式による魔力リンクの構築のためには、両者の粘膜同士の
接触が必要になる。それを介して互いの魔力を行き来させ、2人の意思を以て契約を為すのだ。そうなると、深いキスがもっとも
手っ取り早く、確実な方法になる。
 ユーノとなのはの契約は、緊急避難的な色合いが強かった。ジュエルシードの暴走体に襲われるユーノと、助けを呼ぶ声に
応えたなのは。ユーノを助けたいという想いこそ確かでも、口付けのほうはよくわかっていない様子だったなのはに、力を
振り絞って人間の姿に戻ったユーノは――
「ごめん!」
「んっ、んん!?」
 それが、2人のファーストキスだった。
 その後、ユーノの予想をはるかに上回る契約の力と、それにより得られた膨大な魔力でインテリジェントデバイス・
レイジングハートのフルドライブモードを起動させたなのはの魔法によって、ジュエルシードの暴走体を封印することに
成功。契約を交わした2人は、主従の関係となった。
 直後のユーノはと言えば、死んで詫びるのも辞さない所存であった。それ以外に方法がなかったとはいえ、こんな年端も
いかない(ユーノもたいして変わらない歳ではあるが)女の子の唇を奪ってしまったのだ。初めてだったかもしれない。
むしろ初めてに違いない。女の子の初めてが大事なものであることくらいは、幼いユーノにもわかっていた。そもそも、
人間同士での契約を交わすのは、その方法からしてほとんどが恋人や夫婦なのだ。それを、出逢ったばかりで相手の名前も
知らないような状態で。
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! なんでも、なんでもしますから!」
 キスのことだけではない。普通に過ごしていればおおよそ関わり合いになるはずもない危険に巻き込んでしまった。それ以前に
命の恩人である。いくらお礼をしたってし足りない。
「報酬とか、お礼とか、あ、何か欲しいものがあるのなら、僕に出来る限り、なんだって、いくらでも!」
「報酬というか……がんばったご褒美、ってことでいいんだけど。その……」
 少女は、自分でも戸惑っているかのように。
「……もう、いっかい」
「へ?」
 自分の唇を指して、そんなことを、言っていた。

 あんまり幼い頃から快楽を覚えると猿みたいになる、という話を聞いたことがある。それと似たようなものだろうと、ユーノは
一応の結論を出していた。まあ、自分だって似たようなものだし。10にも満たないなのはには、大人のキスは刺激が強すぎたらしい。
 それ以来なのはは、ジュエルシードを封印したり、新しい魔法を覚えたり、学校や塾のテストで良い点を取ったり、果ては苦手な
ピーマンを残さず全部食べたり、何かにつけては“ご褒美”をねだるようになった。軽くキス中毒とも言えるぐらいで、ユーノは
そんな生活をどうかと思いながらも、一方でなのはの柔らかい唇や甘い舌に溺れていった。

 それからフェイト・テスタロッサとの出会いと戦い、和解、さらには闇の書事件を経て、2人は今に至っている。

 ☆☆☆

156例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 02:59:55 ID:fRoYiuHI
 カレーの味なんて消え失せてしまうほどに口付けを繰り返していれば当然、2人の口元はすっかり互いの唾液塗れになって
しまう。先に気付いたユーノが、なのはの口元から2人のものが混じり合った唾液を吸い、舐め取ると、今度はお返しとばかりに
なのはが、同じように。彼女は照れ隠しにえへへと笑って、こてん、とユーノの肩に頭を乗せた。
「なのは?」
「んー♪」
 ぴっとりと腕に抱き付くようにくっついて、すりすりと頬ずりしてくるなのは。
 キスのおねだりは日常茶飯事でも、こうやって甘えてくることは珍しい。まあ、もっとも――管理局での仕事を始めてからは、
頻度が上がってきているが。
 そういう時、ユーノはいつも、何も言わずになのはの頭を撫で、髪を梳いてやることにしている。そうされるとなのはは安心
するらしく、ユーノにとってもなのはの柔らかい髪は触り心地が良い。
 ユーノは、自分がなのはに惹かれていることを自覚している。
 内面がどうこうと言う以前に、こんな可愛い子から毎日のようにキスをねだられていれば誰だってそうなるだろう、と、
なかば開き直っていた。
もちろん今では、内面のほうにも――優しくて一本気で、辛いことや悲しいことを1人で抱え込む悪癖もあって――しっかりと
惹かれているのだけれど。
 しかし不思議と、想いを打ち明けたいとは思わない。
 別に、拒絶されて今の関係が壊れてしまうのが恐いというお約束な理由ではなく、そもそも拒絶されるとも思っていない。
さすがにまるで好きでもない相手に何度も唇を許したりしないだろうし、今みたく甘えることもないだろう。そうやって冷静に
分析する自分にいささか自己嫌悪に陥りつつも、ユーノはなのはの小さな肩に手を置いて、抱き寄せる。
 元からくっついていた身体が、さらに密着する。服越しになのはの身体の柔らかさと温かさが感じられるような気がして、
鼻腔をミルクのような甘い香りがくすぐった。
「わ、わ……ユーノくん?」
 甘えてきたのはなのはのほうなのに、こうやって優しくすると戸惑ったふうになるのがおかしい。そんなに普段の僕は優しく
ないのだろうか、とちょっとだけ悩む。
「なのはの身体、あったかいね」
「……ユーノくんも、あったかいよ」
 だから戦える。
 PT事件の終盤、時の庭園で、なのははそう言った。言ってくれた。
 それからずっと、僕は、なのはにとってあたたかい存在で在り続けることができたのだろうか。彼女は今も、戦えているの
だろうか。
「……ちょっと、熱いくらい」
 なのはは、シャツの第一ボタンに手をかけた。

 ☆☆☆

157例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 03:00:40 ID:fRoYiuHI
 ゆっくり、しかし次々とボタンが外されていくのを、ユーノはただ黙って見ていた。全てのボタンが外れ、開いたシャツの隙間
から、肌色と、薄い桃色のブラジャーらしきものが見える。
 1年前、なのはと一緒に暮らすようになったばかりの頃、まったくもって無防備だったなのはは幾度かユーノの前で生着替えを
披露してくれたが、その時はまだブラジャーなんてものは着けていなかったはずだ。これが成長なのか、それとも――。
「スカートも……ちょっと、窮屈かな」
 女性ならぬユーノには、ぴっちりしたタイトスカートの穿き心地なんてものはわからない。
 わかるのは、なのはがスカートのホックを外してしまったらしいことだけだ。
 立っていればストンと落ちていただろうが、座っている今はたいして変化があるわけでもない。それでも、雰囲気は変わる。
「ユーノ、くん」
 見上げてくる瞳は、もはや無邪気な少女のものではなかったが、それをなんと呼ぶのか、年若いユーノにはわからない。
 ただ、その奥に揺らめいているのは、ひどく儚く、脆いものであるように思われた。
「ユーノくん、わたしね」
 そっと、唇が重ねられ、すぐに離れた。なのはからキスされるのも、触れるだけのキスも、初めてだった。
「ユーノくんがいないと……なんにも、出来ないんだ」
 それは違う、とは言えなかった。
 なのはが笑っていると頑張れるとか、元気が出るとか、ユーノにとって事実であるのは間違いなくても、彼女が求めているのは
そういう精神論的な答えではないだろう。
 でも。
「逆を言ったら、僕が一緒ならなんでも出来るってことだよね、それ」
 なのはは、驚いたような顔をした。続いて、困ったような、照れたような、拗ねたような顔。
「もう。先に言っちゃダメだよ、ユーノくん」
「ごめん」
「でも、ちょっと嬉しいかも」
 えへへ、と笑って、
「さすが、わたしのご主人様」
 そんな呼ばれ方をするのは初めてで、ユーノは瞬間、硬直した。
 そもそもヒト同士の契約における“主従”というものはあくまで伝統的かつ便宜的な表現に過ぎず、実際に主従関係となる
なんてことは、まったくない。
「ふふ。ちょっと、えっちな響きだね」
 ちょっと。果たしてちょっと、なのだろうか。割と奥深いところに突き刺さったような気がする。無論嫌というわけではない
けれど、どうにもドギマギしてしまうユーノである。
「これからふたりっきりの時は、ご主人様、って呼んでもいい?」
 半裸で、瞳は潤んでいて、上目遣いで、卑猥に思えて仕方がない言葉を紡ぐ唇は、妙に艶めかしくて。当然、拒めるはずもなく。
「なのはが、そうやって、呼びたいのなら」
「じゃあそうするね、ご主人様」
 にっこりと笑顔で、さっそく。
 ユーノは、これは仕事疲れでネジの緩んだ脳が見せている頭の悪い夢なんじゃないかと思い始めた。
 再び触れてきたなのはの唇の甘さ柔らかさ温かさその他諸々に、即否定されたが。
「よくわかんないんだけどね、ご主人様のことご主人様って呼ぶと、わたしはご主人様のものなんだって、ご主人様のそばに
いていいんだって、そんな気分になるの」
 ご主人様言われすぎでクラクラしてくる。これはもうわざとやっているのではないだろうかと思わざるを得ないが、なのはの
顔にはまるで悪戯っ気がないのだった。本気だ。
「ねぇ、ご主人様」
「な、なに」
「今のわたしの格好見て……なんとも、思わない?」
 恥ずかしいのか、なのはの顔は紅い。
 ディープキスなら数えるのも馬鹿らしくなるほどしてきたし、なのはにお風呂に連れ込まれたりしたことも何度だって
あるのに(当然フェレットモードだったが)、何を今さらと思わないでもない。
 そもそも恥ずかしいのならそんな誘ってるような格好しないでほしい、なんてことを考えて。
 ユーノはようやく悟った。
 ああ、これ、誘われてるのか。



 つづく

158例えばこんなリリカルなのはさん・前編:2009/06/10(水) 03:02:22 ID:fRoYiuHI
 半分ぐらい説明になってて萌えもエロもあんまりなく、ごめんなさい…
 なんかもういろいろ突っ込みどころありそうな設定ですが要するにネギまとアスラクラインをごちゃ混ぜにしたような感じです、はい。
 契約うんぬんの設定自体はあんまり重要じゃないというか、この設定により発生した「単体だと恐ろしく弱いなのはさん」が重要というか。
 それにしたってほかにやり方があるとは思うのですが、アレですよ。
 とりあえずフェイトさんの時は1対1なのでノーマルのSLBでしたが、ボエ子の時はスターライト・ラブラブ・ブレイカーでした。
 そういうことです。
 あとはなのはさんに「ご主人様」って言わせ(ry
 次回はエロしかありません。明日には投下したい。

159ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/10(水) 03:05:25 ID:fRoYiuHI
ぎゃあ!
なんか>>158の名前欄が作品タイトルのままになってますが、SSはその前のレスまでです。
念のため。

160名無しさん@魔法少女:2009/06/10(水) 12:58:08 ID:vczjeqQc
なのはとユーノは契約してなかったけどな
別のアニメの設定持ちこむんなら
そっちのアニメのSS書いてりゃいいのにさ
荒らした跡のスレだったら住人がおとなしくGJくれると勘違いしてるらしい

161名無しさん@魔法少女:2009/06/10(水) 15:27:59 ID:1uOwrVqs
GJ!!です。
一人では弱いがコンビで最強かw
こんな、なのはもいいなぁ。次回も楽しみにしています。

162名無しさん@魔法少女:2009/06/10(水) 16:43:19 ID:w1F4nwKo
解ったフリしたオトナの恋愛書かれるよりは、ラブエロのが良い希ガス
かわいいなのはだなGJ

163名無しさん@魔法少女:2009/06/10(水) 21:13:48 ID:K3eEVDdg
某所で三分割しますって言ってた人かな。
房中術と考えればなかなかに奥が深い気がする。

164ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/11(木) 01:07:05 ID:7vHiPZHg
では中編投下します。一応もっかい注意書き。

・ユーノくん×なのはさん
・前・中・後の3編。今回は中編。
・エロ
・設定改変あり。
・10歳。10歳でこれはねーよというツッコミは(ry
・タイトル「例えばこんなリリカルなのはさん」

165例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:08:36 ID:7vHiPZHg
 2人が出逢ってからかれこれ1年ほどになるが、これまでキス以上のことをしたことはない。
 幼い身体は深いキスがもたらす快楽だけでも十分に満足して、それ以上を求めることはなかった。意外と清いお付き合いを
してたんだなぁ、とユーノは現実逃避気味な思考に走る。
「ご主人様に見てもらうんだ、って……せいいっぱい悩んで、いちばん可愛い下着、選んできたんだよ……?」
 なるほどブラジャーの件は後者であったらしい。
「……なにも、しないの? して、くれないの……?」
 それはいつものおねだりではなく、もっと切実で、張り詰めた、懇願。
 なのはが急にこんな行動に出た理由は、だいたいわかっている。というか、心当たりが多すぎた。
 なんにせよ、限界が来たのだ。遅かれ早かれ、こうなっていただろう。
 そうならないようにすべきだった。してこなかったからこその、今の状況だ。
「なのは」
「あっ」
 左手は、なのはの肩に。右手は、露わになっているなのはのお腹に。唇は耳元へ寄せて、そっと、息を吹きかけるように
囁いて。右手の指を、お臍の周りを撫でるように、指を這わせる。
「あ、ゆ、ユーノくっ、ん」
「ご主人様、じゃないの?」
「ご、ごしゅじん、さ、ま……」
 びくり、となのはの肩が大袈裟に揺れる。身体も震えていて、怯えているのはあきらかだった。お腹に触った程度で
これなのに、よくもまあ。
 でも、そんななのはが愛おしかった。
「恐かった、ね」
「あ……」
 お腹に当てた手はそのままで、もう片方を使って、なのはの頭をぽんぽんと軽く、優しく叩く。身体の震えは、一度止まって。
さっきまでのそれとは別に、また、震え出す。
「恐かったんだよね、いろいろ」
「……ぅ、ん。こわ、かった……こわかったよ、いろいろ……」
 いろいろ。
 口にして言えばたったそれだけの言葉ではあったが、その文字通り、いろいろな、様々なことが、なのはには恐くて、
ユーノはそれを知っていて、でも、何もしないで。
 そうして、ここまできてしまった。
 気付いたことがあった。
(僕は、なのはを傷つけてしまうのが恐くて、手を差し伸べなかったんじゃない。僕は……)
 両腕を、背中に回して。ぎゅっと、抱き締める。なのはも、おずおずと、応えてくれた。細い腕から伝えられてくる力は弱く、
しかし、不思議とどうやっても振り解ける気がしない。
(頼ってもらいたかったんだ。たすけて、って。そう、言ってもらいたかったんだ)
 気付いてしまったら、自分の愚かさを笑いたくなった。腕の中で、胸に顔を押し付けて、たぶん、静かに泣いているのだろう
なのはを想って、堪えた。
 つまらない意地のために、なのはに辛い想いをさせてきた。こんな最低の人間に、なのはを受け入れる資格なんてあるのか。

166ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/11(木) 01:09:33 ID:7vHiPZHg
(本当に、馬鹿だな)
 なのはの背中をさすさすと、撫でながら。
 資格がどうこう、なんて。あまりにも馬鹿馬鹿しい。そんなもの、無いに決まっている。わかりきったことだ。
 でも。
(それで今、なのはを突き離すなんて、もっとありえない)
 資格がないからって、なのはを受け入れなかったら。それは結局、同じことの繰り返しだ。自分のつまらない意地のために、
また辛い想いをさせるなんて、そんなことはあってはならない。
 そもそも、頼ってもらいたくて、そうして、頼ってもらえたのだ。そこに手を伸ばさないのは、本末転倒じゃないか。
「なのは」
「あっ、ん……」
 今度はユーノから、触れるだけのキス。
 1年もの間、深いキスを何度も繰り返してきたのに、今日になってようやくそんなことをしていることを、おかしく思う。
 いや、事実、おかしかったのだろう。
 でも、それなら。今日、ここから、はじめればいい。
 そのために、まずは、唇を離して。
「優しく、するから」
 言葉通り、優しく押し倒した。

 ☆☆☆

 まずは、目尻に残る涙を舐め取った。なのはは、ん、と声を漏らして、くすぐったそうに身を捩る。
 押し倒したまではいいが、さてどうしよう。
 ユーノも、なんだかんだで10歳そこらの子供に過ぎない。これまでのなのはとの関係がちょっとアレだったから、
まあ、普通より慣れてはいるけれど。
 だからと言って、具体的に何をすればいいのかはわからない。とはいえ、このままじっとしているわけにもいかず。
 とりあえず、いつもよりちょっと激しめのディープキスで誤魔化しにかかる。
「ひゃっ、ん、んんっ……ふは、ぁん……」
 そう言えば、寝転がるなのはにキスをするのは初めてかもしれない。大抵の場合は隣に座り合って、みたいな、
そんな感じだったから。ユーノはなのはに覆い被さっている格好で、彼女に体重をかけないように身体を支えなければ
いけないのが、ちょっと疲れる。
 やっぱり、こういうのって色々と違うんだ。
 感動、とは違うけれど。なんだか、感慨深いものがあった。

167例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:10:51 ID:7vHiPZHg
 考え事をしている内に、息が続かなくなってきたので唇を離す。ユーノの下になって、見上げてくるなのはの瞳は
いつも通り名残り惜しそうで、しかしそれ以上の何かを秘めているようにも見えた。
「は、ぁ……はぁ……ゆーの、くん……じゃなくて、えっと……ごしゅじんさまぁ……」
「どっちでもいいよ」
「……じゃあ、ご主人様」
 そっちなのか。
「唇以外にも……キス、してほしい……です……」
 なのはの言葉に、ユーノは天啓がひらめいたかのような思いだった。
 というか、なぜ気付かなかったのか。いったいなんのためになのはがわざわざ半裸になってくれたと思ってるんだ僕のバカ。
 自分の愚かさを責めていると、その間の短い沈黙を何か勘違いしたのか、
「えと、今の言葉遣い、変だったかな……?」
 なのはが、ちょっと不安そうに。そういえば今の、何故か敬語だったな、となのはの言うことに思い当たった。
「こういうふうにしたほうが、興奮してくれると思って……」
 むしろ、その健気な心遣いに興奮する。それとは別に、いったいどこでそんな知識を仕入れてくるのかと不安にもなったが、
大方はやて辺りに吹き込まれたのだろう。出所は月村家か。メイド的な意味で。
「なのはの好きなようにしていいよ。どうせ、そんなの意識してやるの無理になっちゃうと思うし」
 なのはが一瞬で顔を真っ赤に染め上げた。
 それもそのはずで、今のは「なのはのこと、メチャクチャにしてあげるからね」とほぼ同義である。僕もなのはも、
なんというかたいした耳年増だよな、と思う。
 とりあえず、なのはの要請通り、唇以外にもキスを降らせていくことにする。
 まずは、勝負下着だという薄桃色のブラジャーの上に。
「ひゃっ」
 いきなりでびっくりしたのか、なのはが声をあげる。
「う……ど、どう……ですか、ご主人様……」
 結局そっちで行くことにしたらしい。まあ、なのはの性癖についてとやかく言う気はないので、いいのだけど。
「ん、可愛いよ。色もデザインも、なのはによく似合ってる」
 薄桃色のブラは、その縁を可愛らしいフリルで飾り付けられている。決して派手というわけではなく、むしろ素材である
なのはの肢体、その美しさを引き立てているかのようだ。薄桃という色も、彼女の魔力光を思い起こさせるためか、イメージは
ぴったりだ。
 それに。
「それに……けっこうえっちぃね、これ」
 近くで見てわかったことだが、このブラ、かなり生地が薄い。なんでわかったのかというと、
「……はむ」
「ひゃぁうっ!?」
 勃ってるのが生地越しにもはっきりとわかったからだ。勃ってるってどこが、と言われれば、今ユーノが唇で挟んでるところ、
と答えるほかにない。

168例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:11:43 ID:7vHiPZHg
 ユーノはそのまま舌を伸ばして、先で転がしてみた。
「はっ、ん、やぁ! あ、あ、だめ、だめぇ、ゆー、は、んぁ、ごしゅじんさまぁっ」
 反応は上々だった。かわりに、早くも“ご主人様ごっこ”がダメになりそうではあったが。
 薄いとはいえ、ブラの生地越しでこれなのだ。直に触れたらどうなるのかと思うと、ユーノは少し恐くなった。
 まあそれでも、当然ブラはずらしてしまうのだけど。
「あっ、う……あ、あんまり見ないで……ください……」
 散々着替えを見せつけてくれたり風呂に連れ込んだりしたくせに、今さら桃色乳首のひとつやふたつで恥ずかしがる必要なんて
ないんじゃないか。そう思いかけて、しかしユーノはすぐに考えを改めた。
 羞恥と興奮から薄紅に染まるなのはの白い肌の上、きっと痛いほどに自己主張して、実が詰まっているはずの、さくらんぼ。
チラ見だったとはいえ、初めて見るというわけでもないなのはのそれに、ユーノの視線は釘付けだった。
 思わず、ごくり、と喉が鳴る。むしゃぶりつきたい衝動に駆られたが――そこは、ぐっと我慢して。
 まずは、外気に晒されてぷるぷると震えているような気がする、なのはのおっぱいを責めることにした。
「ん、んんっ……!」
「あ、すごい……ちゃんと柔らかいんだ……」
 母というものを知らないユーノは、その柔らかさに小さな感動を覚えた。最初は人差し指で突いて、次第に使う指を増やして、
最後には手の平で撫で回すように。頂上の果実に触れないようにするのが、ちょっと難しい。
「あっ、やん、ひゃぅ……っ!」
「なのは、気持ちいい?」
「はぁ、んん……は、い……ぅあんっ」
 当然思う存分揉めるような大きさはないわけだけど、それでも歳のわりには大きいんじゃないだろうか、と膨らみ始めの
胸の柔らかさを堪能しつつ、考える。
 見たことなんてないから正確な比較はできないが、フェイトやはやてよりかは育っているような気がする。ヴィータ? 
さすがにそれは比べるのが馬鹿らしくなる。不可抗力でアリサとすずかの裸を見てしまったことはあったが、1年も前の
ことだから参考にならない。
 いや待て、むしろ思い出すべきは1年前のなのはではないだろうか。

 あきらかに成長している――!

 これはたぶん女性ホルモンの影響だな、とユーノの聡明な頭脳が仮説を立てる。毎日事ある毎にディープキスを繰り返して
快感を得ていた結果、女性ホルモンの分泌量が増えて、それで大きくなったのだ。
 気がする、なんてもんじゃない。これはもう確実に、フェイトやはやてより大きいはずだ。
 その時だった。

169例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:12:44 ID:7vHiPZHg
「ふひゃ!?」
 いきなり伸びてきたなのはの手に、両頬を引っ張られる。
「ご主人様ぁ……いま、他の女の子のこと、考えてませんでした……?」
 ギクリとした。いや別にやましいことなんて考えていたわけでは……ない、とは言えないかもしれない。なにせ比較の
ためとはいえ、フェイトやはやて、アリサ、すずかのおっぱいを思い浮かべていたのだ。今はなんだか、“ご主人様ごっこ”
の口調がやたらと恐ろしい。
「そ、そんなことないよ。なのはのおっぱいは僕が育てた。それを確認してただけだよ」
「……じゃあ、もっと……育ててください」
 自分で言っていて恥ずかしくなったのか、途端にしおらしくなったなのはに、ユーノはほっとする。同時に、再び
突っ込まれないよう、おっぱいの育成を再開した。
「はぅんっ! や、あ、あぁん!」
 なのはの柔らかおっぱいに口付けると、そのまま強く吸い上げた。それを、同じ場所に何度も繰り返す。
 これは自分のものだ、と印をつけたくなったのだ。
 なのはの胸がユーノと繰り返してきたご褒美の結果大きくなったというのなら、それは、ユーノとの行為が目に見える形で
なのはを変えたということを意味する。その事実は、ユーノの中にある征服欲や支配欲求を大いに刺激し、彼をより激しくさせた。
 今のなのはの身体はユーノなくして存在し得ない、ユーノがいたからこそのもの。ユーノだけのものだった。
 しっかりと赤い痕をなのはの身体に刻んで、ユーノはようやく唇を離す。その間ももう片方の胸は突かれ撫でられ揉まれ、
存分に可愛がられていた。なのはは息も絶え絶えで、ただ嬌声を漏らすだけ。
「はっ、あ……はぁ……ん……」
 しかし彼女は、どこか不満げでもあった。何かが足りないと言わんばかりに。何が足りないのか、なのはが口に出さずとも、
彼女の身体が如実に物語っていた。
 ユーノは、先ほど抑え込んだ衝動を解放することを決め、
「ひっ、やぁあぁぁんっ!?」
 ツンと張った桜色の果実を、口に含んだ。
 そのまま舌先で転がし、反対側は指で抓んで捏ね繰り回す。
「ひゃ、あん! やっあぁ、あ、ああぁあぁぁ! だめ、だめぇ、ゆ、のっ、はぁっん! ん、はぅ、だ、め、んんっ、
だめ、です、あ、あ、ごしゅじん、さまぁっ!」
 なんというか、妙な意地を張っているなのはだった。ユーノとしては、本当に「ユーノくん」でも「ご主人様」でも
構わないのだけど。
 ただ、なのはの喘ぎ声が耳に心地よいのは、間違いのない事実で。もっと啼かせたくなって、口に含んでいる、
どこか甘い味のするそれに。
 優しく、歯を立てた。
「ひ、んあぁあああぁぁあぁあああぁぁぁぁっ!?」

 ☆☆☆

170例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:13:33 ID:7vHiPZHg
 失神こそしなかったけれど、荒く息を吐くばかりでまともに喋れない様子のなのはに、ユーノは少しばかり反省していた。
「やりすぎちゃった……」
《Don’t worry(いいんじゃないでしょうか)》
 いたのかレイジングハート。
 それはそれとして、ユーノは少し苦労してなのはの腰を持ち上げ――力の入っていない人間の身体というものは、実際の
数字以上に重たく感じられるものだ――、ホックの外されていたスカートを脱がせた。
 本当に反省したのか疑わしい限りだが、そこはそれ、男のサガだから仕方がない。
「うわぁ……」
 スカートが取り払われ、ユーノの目の前に姿を現したなのはの下半身に、思わず感嘆の声が漏れる。
 柔らかそうで、それでいて張りのある太股。上気してほんのりと色づくそれは大変に艶めかしい。
 そして何より、なのはの大事なところを覆う、ブラとお揃いの、薄桃色のショーツ。
 大きな染みを広げるそれは、ユーノを大変に興奮させた。
「なのは、すごい……すごい濡れてるよ……」
「は、あ……やぁ……いわ、ないで……くださ……」
 比較対象なんていないからわからないけれど、なのははかなり感度がいいんじゃないかと思う。まだ子供なのに、こんなに。
 お揃いだから、やはりショーツの方も生地は薄いのだろう。下着としての許容量を超えるほどに濡れたそれは、すっかり
透けていて、その下、隠さなければならない部位の形がくっきりとわかってしまう。
「はぁんっ!」
「へ?」
 急になのはの腰がびくんと浮いて、ユーノは何事かと身構える。なんのことはない、無意識のうちに、なのはのそこ、
割れ目を指でなぞってしまっていたのである。じゅん、と、新たに液体が溢れてきたような、気がする。
「……なのは。脱がせちゃうから、腰、浮かせて」
「は、い……」
 今のなのはの反応を見て、ユーノはそこを直に責めてみたくなった。
 たぶん、さっきの胸への責めで、なのはがこんなにも感じてくれたのは、口、ひいては舌を上手く使えたからだと
自己分析する。“こんなこと”はユーノも初めての経験ではあるが、キスだけは数えきれないほど実践してきた。
そこで覚えた舌遣いが活きているのだ。
 だから。だからこそ。

171例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:14:16 ID:7vHiPZHg
 力が入らないのか、ぷるぷると震えながらなんとか腰を浮かせたなのはのショーツに、手をかけて。
 濡れて肌にぴっとりと貼り着いている上、水分を吸って縮んだせいか、どうにも脱がしにくいそれを、苦心しつつも
引き下ろし。
 結局全部脱がせるのは無理と判断して、右足からだけ引き抜き、左の太股にくちゃくちゃになったまま引っ掛けた
状態にして。
 そうして露わになった、なのはのそこに――初めてみる女性器は、思っていた以上に生物的で、グロテスクで、
しかし、輝くようなピンク色が綺麗で、神秘的で、美しかった――口付けたい。唇を這わせ、舌を伸ばして舐め回し、
情熱的なキスを捧げたい。
 ユーノにはもはや、なのはから許しを得ることすら億劫だった。どうせ拒まれるなんてことはありえない、そんな
傲慢な考えすら浮かぶ。ただ、己の欲望に従うがまま――
「ちゅっ、ん、じゅる……」
「ひゃっ、あああああ!? や、ぁあんんっ!?」
 なのはの秘所に口付け、そこをたっぷりと濡らしている愛液を啜った。
「ん、ん……ちゅ……じゅじゅ……」
「やっ、やぁぁぁ! だめ、それだめぇっ! はあっ、あん、ああっあぁあぁぁぁぁっ!」
 身を捩ってなんとか逃げようとするなのはだが、ユーノはなのはの細い腰をがっしりと掴んでいるために、
逃亡は叶わない。むしろ、傍から見れば腰を振って誘っているかのようですらあった。
 攻めるユーノは、一心不乱に媚肉を啄み、蜜を吸う。
 独特なにおいとしょっぱい味は、それがなのはのものだと思えば、途端に甘美なものへと変わる。
「はぁんっ、ゆーのくっ、やだ、ああっ、やだやだぁ、きたない、からぁっ、あぁぁぁんっ!」
 舌を伸ばして、ぴっちりと閉じた陰唇の奥へと進ませようとするが、なかなか上手くいかない。
 それでも、なのはへの刺激としては十分なようだった。
 すでに抵抗する力も残っていないのか、ただユーノの責めを一身に受けるだけになっている。
 責めを続けていると、そう間を置かずして、ユーノは“それ”を見つけた。ぷっくりと、小さく膨らんでいる、
豆粒のような突起。ユーノの知識によれば、それは女性器のうちでも最も敏感なところであるはずだった。
 だから。
 特に考えもなしに、さっき乳首にやったようにして。
 その、可愛らしい陰核を、甘噛みした。
「あ、あ、ああああああああああああああっ!!」
 なのはは、この日、これまでで一番大きな声で、背をベッドから浮くほどに反らして。
 ぷしゃあああああ、と。
「……へ?」
 勢いよく、金色に輝く聖水のシャワーがユーノに降り注いだ。

 ☆☆☆

172例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:15:01 ID:7vHiPZHg
「ふぇ、う、ううっ……ひっく……ふえぇぇぇん……ぐすっ……」
 とりあえず服を全部脱いで手早くシャワーを浴び、腰には申し訳程度にタオルを巻きつけて戻ってくると、
なのははベッドの上で女の子座りになって、大泣きしていた。イッた後に失神してしまったはずだが、ユーノが
聖水を洗い流している間に意識を取り戻したらしい。
「こ、これはさすがに……やりすぎだった、よね……」
《Don’t worry, don’t worry(ええじゃないか、ええじゃないか)》
 無責任に物を言うのはやめてよレイジングハート。
「ひっく、お、おも、ぐす、おもらし、み、みられ、ちゃったよぉ……うぇぇぇぇん……」
 なんとかして慰めなければ、と思うのだが、なんて声をかければいいのやら。
 なのはのおしっこなら喜んで飲むよ、とでも言えばいいのか。それではただの変態だし、そもそも明らかに
シャワーあがりの格好であるユーノが言ったところで説得力は皆無だ。さすがに10歳の子供に飲尿は
辛いものがあるわけで、それも仕方がないのだが。
「う、う……こんなの、ぐすっ、やだよぅ……ゆーの、くん、に……うう……きらわれちゃうよぉ……ひっく……」
 まずは、こんなことで嫌いになったりしない、ということから伝えるべきか。
 確かにびっくりしたし、即行で洗い流しにも行ったが、別に嫌というわけではないのだ。だって、それは、
それだけなのはが感じてくれていたということで。
 でも、なんとなくそれでは駄目な気がする。仮に、それでなのはが泣き止んだとして、その後の続行は
可能だろうか。わりと最低な思考だが、ユーノにとっては重要である。
 そもそもなのはを受け入れる決意を固めたのは、不器用に、しかし直接的な方法で救いを求めてきた
なのはに応えるためだ。
 今日ここで、最後まで……なのはを僕のものにしなければ、彼女の心の中にある闇は、晴れないのではないか。
続きはまた今度、なんてことになったら、それは彼女が抱える傷を増やすだけの結果に終わるのではないか。
そんな不安がある。
 考えた末、ユーノは賭けに出ることにした。 下手をすれば、というか成功しても失敗しても、なのはには
トラウマになってしまいそうな方法だ。
 しかし、他に何かを思いつくこともなく、かと言ってなのはをこのまま泣かせ続けているわけにもいかず。
「なーのーはっ」
「ひゃっ!?」
 とりあえず、背後から抱きしめる。何も身に着けていないなのはの身体は、小さくて柔らかくて、あたたかい。

173例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:16:14 ID:7vHiPZHg
「ゆ、ゆーの……くん……?」
 涙声で、戸惑っている様子のなのは。どちらかというと、怯えているといったほうが正しいか。まずは第一段階として、
「ユーノくん、じゃなくて。ご主人様じゃ、なかったっけ?」
 そう、告げる。
「あ……ご、ごしゅじん、さま……」
 とりあえず、ここは問題なくクリア。
 なのはは、やたらと「ご主人様」という呼び方にこだわっていた。
 ユーノが知らなかっただけで、なのはは強い従属願望を抱えている……のかは定かではないが、ユーノを「ご主人様」と
呼ぶことで、何らかの精神的な充足を得ていたことは間違いない。
 だから、まずはそこから攻める。
 賭けの要素が強くなるのは、ここからだ。
「ねぇ、なのは」
「は、はい」
「1人で泣いてる前にさ。まず、僕に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?」
「あ、あ……」
 心を鬼にして、ちょっとキツめの口調を意識し、耳元で囁く。なのはの身体が震えるのがわかった。
「ご、ごめん、なさ……ふ、えぇ……ごめん、なさい……ごめんなさい、ご主人さま……お、お、おしっこ、
かけちゃって……ご、め、ごめ、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「ああ、ああ、泣かなくていいんだよ。別に怒ってるわけじゃないんだから」
 思っていた以上の反応に、つい慌ててしまう。なのはが受けたショックは、ユーノの想像以上に大きかったらしい。
 優しく髪を撫でて、落ち着かせてやる。そうやって、“ご主人様”としての優位性、みたいなものを印象付ける狙いである。
少し恐がらせてから、優しくして。飴と鞭のようなものだ。
 ついでに、こちらは趣味として、いつも通りのツインテール、そのリボンを解いて、下ろした髪に鼻頭を埋める。
「で、でも……わたし……」
「まあ、女の子としてかなり恥ずかしいことなのは確かだね」
「う……ぐすっ」
「でも……嬉しいよ。僕のために、そんな恥ずかしいことをしてくれたんだから」
 え、となのはは訝しげな声を漏らした。

174例えばこんなリリカルなのはさん・中編:2009/06/11(木) 01:17:13 ID:7vHiPZHg
 そう、ここが勝負どころ。ここを乗り切れば、なのはの女の子としての尊厳は……まあ多分、50%ぐらい回復するはず。
微妙な数字だが、今よりはだいぶマシになるはずだった。
「覚えてないの? 気を失っちゃったから、そのせいかな」
「え、えっと……その……?」
「僕が、なのはがお漏らしするところ、見たいって。そう言ったんだよ」
 かわりにユーノの人としての尊厳は完全に打ち砕かれた。まだ10歳なのに。人生まだまだこれからだっていうのに。
心の中でさめざめと涙を流しつつ、なのはのためなんだ、と必死で言い聞かせる。
「ほ、ほんとに……?」
「うん、本当」
 しゃあしゃあと言ってのけてみせる。なのはに嘘をつくのは本意ではないので、なるべく早く納得してもらいたい。
そういう考えもあって、そっと頬を撫でながら、優しく甘い声をなのはの耳に送り込む。
「なのはは優しいな。僕のためなら……どんなことだって、してくれるんだね」
「あ……う、うん。わたし、ご主人様のため、なら……なんでも、してあげたい……です……」
 そう。
 なのはは、“ご主人様”の“命令”に従っただけ。ド変態の“ご主人様”にお漏らし見せろと“命令”されて、本当は
そんなことしたくなかったのに、せざるを得なくなってしまった。
 そういうことなのだ。
「でも、ごめんね。初めてなのにお漏らしなんて、やっぱり嫌だもんね」
「え、えと……だ、だいじょうぶ……」
 なんとか上手くいった……の、だろうか。たぶん、いったはず。とりあえず、ほっと一息つく。
 もっとも、この方法にはそれなりのリスクもあって。
「わ、わたしの……」
 背中越しに見えるなのはの顔は、頬も耳も真っ赤だ。
 この方法は、つまり。
 なのはに、「ユーノのためにお漏らしした自分」「ユーノのためならお漏らしだって、なんだってできる自分」を
強く印象付け、心に刷り込むことを意味している。
「……わたしの、お漏らし……満足して、もらえましたか……ご主人様……」
 そう、ユーノには、実際にそんなことをした覚えはまったくこれっぽっちもないというのに。
(……こういうのを、調教って言うのかなぁ)
 なのはの蕩けた表情を見て、なんだか、理不尽な罪悪感を覚えるのだった。いやまあ、結局は全力全開手加減なしだった
ユーノに非があるのだけれど。
 答えは、適当にはぐらかした。



 つづく

175ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/11(木) 01:18:50 ID:7vHiPZHg
 また名前欄でミスってしまった…
 今回はここまで。後編は遅れるかもしれません。まあ遅くても土曜くらいには…

176名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 10:06:17 ID:oDMZQWtY
>>175
理論の構築も上手くされているのでifの物語と考えれば面白いと思う。
後編も待ってます。

177名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 14:40:01 ID:2rmnD7f.
書いた直後に分相応で詳しく褒めるのは自演

178名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 15:39:36 ID:OxjAo.Ig
>>177
いきなり何を言ってるんだお前は
ってかお前日本語おかしいぞ

179名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 16:01:03 ID:3AFN5.Vw
>>177
分相応なら無問題じゃん

180名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 16:34:11 ID:3n7Ijs6c
GJ!
なんか魔王キャラに毒されてるのかかわいいなのはさんが新鮮に感じますw
続きも楽しみに待ってますよ。

181名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 20:44:52 ID:gD2bzQGc
>>177
 ん? アンチユーノ?
 まあ、キャラ乞食のあの作者の100倍は巧いSSだから、自演とか騒ぐなよ。

182名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 21:32:49 ID:BTKarR8w
おまえら投稿する意欲が下がるようなこと言うなよ……

183名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 21:37:57 ID:Ucfcoumk
そろそろ、スカなのが読みたいと思うのは自分だけ?

184名無しさん@魔法少女:2009/06/11(木) 22:26:33 ID:I1LcbYJo
GJ!!です。
途中ではいるレイハさんがヒデェw
それにしても、なのはの尊厳を守るために結果的に調教www

185名無しさん@魔法少女:2009/06/12(金) 01:00:53 ID:v5xN.3Jk
はやスカとかは来ないもんかな…

186名無しさん@魔法少女:2009/06/12(金) 02:10:13 ID:9tkE7IU2
キャラ乞食って二次創作書いてる限りみんなそうだろ?
人気のない組み合わせだと反応が少ないのは当たり前
オリキャラ主人公にしてキャラ立ってんのも読み応えあるけど
オリジナルで投下すればって思うけどな
>>181みたいな嫌みな擁護厨がつくとかえって職人が迷惑するんだけどな

187名無しさん@魔法少女:2009/06/12(金) 02:26:28 ID:9tkE7IU2
ついでにアンチユーノって噛みつくのは本スレの嫌百合厨で荒らした奴か?
ただでさえ叩かれやすいんだから発言に気をつけろよ
前スレでユーノ・なのはの良いSSあっていいかもって思ったのに
あとの書き込みみてうんざりしたわ

連投スマン

188名無しさん@魔法少女:2009/06/12(金) 08:11:09 ID:NfuSj.jw
とりあえみんな落ち着け

189名無しさん@魔法少女:2009/06/12(金) 08:15:27 ID:kIZcN1Os
性格的には原作のなのはに近いのかな?しおらしいなのはというのも新鮮でGJです。
あとウルーさんは心理学を齧ってたりしますか?描写にそんな感じが伺えたもので

19044-256:2009/06/13(土) 15:53:02 ID:BJAHA1n6
『ナカジマ三佐のある日の午後』


隊長陣に用があり、ルキノに新人達と廃棄都市区画の訓練エリアにいると言われたゲンヤ。



しかし、誰もいない。
「なんでぇ、3人ともいねーじゃねーか・・・」



するとビルの壁にレイジングハートがアクティブモードで立てかけてある。
「(高町の嬢ちゃんも無用心だな)」



そうしてレイジングハートを持つと意外に軽い。
「(こんな華奢な杖で闇の書の闇も、古代の聖王も倒したっていうだもんな・・・)」


そうして数秒間、レイジングハートを見つめて、沈思した。
そしておもむろに左右前後をキョロキョロして、誰もいないことを確かめると。



メタボリック&四十肩&腰痛の身体に無理をしてポーズを決めて
「ディバイン・バスター!」


そう言って杖を前に突き出す。



「・・・・・(シーンッ・・・)」

当然何も起こらない。当たり前である。

19144-256:2009/06/13(土) 15:54:22 ID:BJAHA1n6
「うーん、声に気合がたりなかったのか。それなら!でぃぃぃぃぃばいぃぃぃぃぃぃん・ばぁぁぁぁ・・」
『カッ!!!!!』


すると、いきなり構えたレイジング・ハートのクリスタルからピンク色の衝撃波が飛び出し、遠く離れたビルにあたって
ビルの屋上が吹き飛んだ。


ポカーンとしていたゲンヤだが、ハッと気がつき。



両方の手のひらをみつめてこう独り言を言う。


「撃てた!? も・・・もしかして俺の中に隠れたとんでもない魔法の才能が・・・」




とか言ってると・・・後ろから視線を感じる。さらに後ろのビルの影から“あの〜、本当にこれで良かったの?はやてちゃん?”
とか“クスクスwww”とか“みんな、笑ったらダメだよ”とささやく声が思いっきり聞こえてくる。



このまま、絶対に後ろを振り向かずに、全力で逃げる。


そう考えた、ある日の午後であった。

19244-256:2009/06/13(土) 15:55:12 ID:BJAHA1n6
小ネタ投下してみました。

それでは失礼します。

193名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 17:14:23 ID:o.jGHkdw
ちょwwwゲンヤさんwww

良い小ネタGJ。


しかし、投下前に予告くらいはするべきだろう。
初めての投下って訳でもないし、次回からどうか気をつけてください。

194名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 17:43:37 ID:xqpXZGzo
>>193
なんか勘違いしてるみたいだから言うが、投下の予告はべつに必須じゃないだろ
あると読み手がありがたいってだけ
予告があると嬉しいですって感じの言い方ならともかく、予告くらいはするべきだろうってどんだけ上から目線なんだよ

195名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 18:16:30 ID:GPt2wC4M
投下予告というか、注意書きのことを>>193は言いたかったんじゃないかな。
カプとかエロの有り無しについて。

196名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 18:17:39 ID:GPt2wC4M
言い忘れたがGJ!
魔導師資質の無い人はみんな一回ぐらいはやってそうだなw

197名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 19:14:01 ID:0LjW9hj2
きっと誰かに同じことされて、レジアス中将は魔導士大嫌いになったに違いない。
というか、ティアナみたく本気で才能コンプレックス抱えてる人にやったら、冗談じゃなく悪質極まる嫌がらせになりそう。

198ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/13(土) 20:09:24 ID:tuHqACUM
>>192
ワロタwwwww
ゲンヤさんというキャラ選択が非常に良い。GJです。


さて遅くても土曜には投下するって言ってたんですが、ちょいと間に合いそうにないです、申し訳ない。
完成させるの自体はもうそんなに時間かからないんですが、これからちょっと用事があるもので…
投下は日付変わってから、んー、3時くらいまでにはできたらいいなぁ。
それもダメだったら朝起きてからになるので、10時くらいになるかと。
もし楽しみにしてくださってる方がいるのなら、申し訳ないです。

>>189
大学で心理学と社会心理学の講義を取ってましたが、それだけです。
ただ、意識して作品に活かそうと思ったことはない、というか活かそうと思えるほど知識が深いわけでもないので。

199名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 20:56:16 ID:xqpXZGzo
>>195
注意書きでも同じことだよ
3レスの小ネタにまで注意書きとか必要ないだろ

200名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 20:59:25 ID:ZtqsXV/o
>>192
グレアムとかゲンヤとかおっさんキャラがなのはのBJ着てる
同人誌ネタを思い出した

201B・A:2009/06/13(土) 22:36:49 ID:Je5SHV9Y
週末に間に合ったぁ。
投下行きます。


注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・主人公はスバル(とエリオ)
・SSXネタもたまに含まれます
・ごめん、1話伸びたよ
・タイトルは「UNDERDOGS」  訳:負け犬

202UNDERDOGS 第二十六話①:2009/06/13(土) 22:37:28 ID:Je5SHV9Y
膨大な熱量が体を蝕み、耐久限界を迎えた左腕が弾け飛んだ。
高濃度のAMF環境下で、タイムラグなしでの砲撃の連射。
他の魔導師よりも砲撃の素質が低かったスバルは、カートリッジによる魔力の水増しで強引にチャージを行わねばならなかった。
結果、膨れ上がった魔力は制御を離れて暴走、砲であるリボルバーナックルを左腕ごと破砕し、
解き放たれた魔力は小規模な破壊の渦となってスカリエッティを呑みこんだ。
それは最早、魔法と呼べる代物ではない。制御できずに見境なく破壊をまき散らすものはただの暴力だ。

(左腕が…………だめだ、体に力が入らない。立てない)

なんとか半身を起こすものの、立ち上がるだけの余力は残されていなかった。
左腕の骨も粉々に砕けており、出血と共に体温が奪われていく。
それでも肉体は死から逃れるために底を尽いた魔力を搾り取ろうとし、
呼吸によって生成された微量の魔力では追いつかないほど貪欲に供物を要求してくる。
言わば、今のスバルは息を吸う毎に死へと近づく危険な状態であった。
だが、目前に迫る死の恐怖よりも、スバルはスカリエッティを殺めてしまったかもしれないことに恐怖していた。
スカリエッティを殺さずに捕まえ、残りの人生は自分が殺めてしまった命への償いのために使う。
誇り高き管理局局員として立てた誓いを反故にしてしまったかもしれないことを恐れ、
魔法を制御できなかった自分を嫌悪しているのだ。

(スカリエッティはどうなった? カルタスさんは?)

限界まで酷使された影響か、両足のキャリバーズも機能を停止しており、状況を知らせてくれる者はいない。
見渡しても、室内に動くものの気配は感じ取れない。炎と煙に包まれたラボは、場違いな静寂に包まれていた。
その光景は、8年前に体験した空港火災のものと非常によく似ていた。

「…………っ!?」

不意に炎が揺れ、黒い影が煙を振り払う。
現われたのはスカリエッティだった。一糸纏わぬ姿となったその体に傷らしい傷はなかったが、
右腕全体を覆っていたカギ爪は粉々に砕け散っており、唇から赤い血が滴り落ちている。
至近距離から魔力の爆発を受け、かなりのダメージを負ったようだ。
立っているのも辛いのか、今にも崩れそうな態勢のまま、一歩ずつこちらに近づいてきている。

(良かった、生きて…………)

安堵した瞬間、スカリエッティの蹴り上げた足が顔面を捉える。
ボールのように床を跳ねたスバルは壁に激突し、喉を赤い血が逆流した。
骨こそ折れていなかったが、鼻を蹴られた衝撃で涙が滲み、視界が濁る。
全身を激痛が襲ったことは言うまでもなかった。

「はぁ………はぁ………最後まで非殺傷か。だが、“無限の欲望”の名は伊達ではない。
魔力は底を尽いたが、私の精神力を削り取るには少しだけ足りなかったようだね。
デバイスはなくとも君を縊り殺すくらいの真似はできる。私の勝ちだ、ゼロ・セカンド」

緩慢な動作で腕を上げたスカリエッティが、スバルに止めを刺すためにゆっくりと歩を進める。
狂気で血走った金色の眼に恐怖で染まった自身の顔が映り、スバルは唇を震わせた。

「や、やぁ…………」

「悪いが時間がない。命乞いを聞いてあげることはできないよ、ゼロ・セカンド」

「だめぇ……………」

「この揺れがわかるだろう? ゆりかごがミッドに堕ちようとしている。時間がないんだ」

こちらの恐怖を掻き立てるためか、スカリエッティはまるで自分に言い聞かせるかのように
落ち着いた声で言葉を紡ぐ。彼は自身の勝利に微塵も疑いを抱いていない。
このまま自分を殺し、その足でゆりかごから逃走できると信じている。
その絶対的な自信が命取りとなった。
魔力の爆発を耐え抜いたという自信が、背後に迫る彼の存在を気づかせなかったのだ。

203UNDERDOGS 第二十六話②:2009/06/13(土) 22:38:20 ID:Je5SHV9Y
「だめぇ、カルタスさん!」

「なに!?」

スバルが力尽きるのと、スカリエッティの胸が貫かれたのはほぼ同時であった。





己の胸を突き破った腕を見て、スカリエッティは驚愕で表情を歪ませた。
見覚えのある白い手甲。人のものでありながら歪な形へと変化した機械仕掛けの螺旋。
忘れるはずもない。スカリエッティは生涯において、自分が生み出した作品の全てを記憶している。

「これは、サーティーンのギムレット……………」

「そうだ。お前に弄ばれ、妹の手で殺されるしかなかった女の…………ギンガの無念だ!」

腕が引き抜かれ、傷口から夥しい量の鮮血が流れ落ちる。
如何にスカリエッティが優秀な魔導師といえど、肉体が生身であることに変わりはない。
肉体を強化していたデバイスを破壊され、魔力も底を尽いた今、
マリアージュである彼の攻撃を防ぐことはできなかった。

「ぐぅぁ…………うぼぁ、ああぁ………………」

激痛と酸欠に苦しみながら、スカリエッティはその場に崩れ落ちる。
振り返った先にいたのは、全身の9割近くをマリアージュ化させたカルタスであった。
既に強化外骨格は剝がれ落ちており、女性のそれへと変化した肉体は浅黒く染まっている。
バイザー越しに見える瞳は憎悪の炎が燃え滾り、それに呼応するように武器化させた左腕が軋みを上げていた。

「肺をぶち抜いた。呼吸ができなければ、魔力を回復させることもできまい。
その厄介なデバイスがなくなった今、俺でもお前を殺すことはできる」

「ぐふぅ、がぁ…………くぁ、こぉ、この………私が………地に伏すだと……………」

「惨めか? けど、お前はそれを多くの人間に強いてきた。本当ならこのままなぶり殺しにしてやりたいところだが、
生憎お互いに残された時間は少ない。俺がマリアージュになるのが先か、お前が死ぬのが先か」

回転する左腕を無造作に下ろしたまま、カルタスは地に伏すスカリエッティを見下す。
発せられた言葉は冷たく、鋭利な刃物に似た鋭い響きを有していた。

「立て。立ち上がったと同時にこの腕をお前の顔面にぶち込む。
立たないのならば………………このまま踏み砕く」

冷酷な言葉を投げかけられたスカリエッティの胸中に、煮えるような怒りが込み上げてくる。
自分は勝っていた。全力を出し切って挑んできたタイプゼロを打ちのめし、勝利をもぎ取ったのだ。
ジェイル・スカリエッティは紛れもなく勝利者だ。なのに、どうして自分が地に伏さねばならない?
自分に手も足も出なかった旧式の戦闘機人に胸を貫かれ、惨めな姿を晒さねばならない? 
勝つのは自分だ。
いつだって、“無限の欲望”は勝利を掴み取ってきた。

「こぉ………このぉ、旧式がぁっ!!」

「おうぅぁぁっ!!」

立ち上がった瞬間、カルタスの左腕が大気を引き裂いた。
視界一杯に広がる螺旋の渦が、顔面ごと仇敵を打ち砕かんと迫る。
だが、スカリエッティは渾身の力でそれを防御、何としてでも生き延びんと歯を食い縛る。

204UNDERDOGS 第二十六話③:2009/06/13(土) 22:39:18 ID:Je5SHV9Y
「この私が、“無限の欲望”が、ジェイル・スカリエッティが、君のような旧式に、
ただの鉄屑でしかない旧式に負けるなどと…………ぐううあぁぁぁぁぁっ!! 
あってはならないあぁぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

交差した腕が千切れ飛び、螺旋が白い喉を抉り落とす。
暗闇に堕ちる寸前、スカリエッティが思い浮かべたのは、自身が最も信頼していた戦闘機人の澄まし顔であった。





そして、憎むべき仇はいなくなった。
もう、自分に残されたものは何もない。
あるのは人ではなくなった異形の体と、湧き上がる増殖の本能のみ。
仲間を増やし、覇道を歩めという欲求のみ。
どれだけ理性で否定しても、尽きることのない欲望は体を蝕み、心が軋んでいく。

「渡さない……………お前達に感謝はしているが、渡さない。俺の…………心は」

今日までずっと、復讐のためだけに生きてきた。
その思いを果たした今、どこを探しても生きるべき理由が見つからなかった。
ならば、この命をここで終わらせるしかない。
体だけでなく心まで失い、大切な人達に襲いかかるような真似だけはしたくない。

「だから、一緒に逝こう…………あいつのところに。奴と同じ場所に…………」

躊躇なく振り上げた左腕が、自身の意識を刈り取る。
肉体を失い、異形と成り果て、それでも復讐を糧に戦い続けた男の生涯は、そうして幕を閉じた。





炉心の臨界まで15分を切ったクラウディア内では、クロノ達が懸命に脱出の準備を進めていた。
そこには魔導師や非魔導師、戦闘機人という区別もなければ、形骸化しつつも残されていた階級もない。
動ける者は負傷者や物資を脱出艇へと運び、戦える者はバリケードを構築してガジェットを迎え撃つ。
誰もが生き延びるために、自分にできることをこなしていた。
そんな中、ユーノは1人、負傷者で溢れる脱出艇を訪れていた。
目の前に広がる光景は死屍累々。手足を吹き飛ばされ、流血で服を染め、生きているのかも疑わしい者達が
毛布の上に横たえられており、医療スタッフが彼らの治療に奔走している。
ゆりかごのAMFによって魔法が封じられているため、苦痛を取り除くこともできず、
苦悶や悲鳴が途絶えることはない。中には手遅れとなって息絶える者までいた。
正に地獄。
ここはこの世で最も死に近い魔窟と化している。
そして、その一角に彼女はいた。
彼女は薄汚れた毛布に横たわり、使い魔の看病を受けている。
黒と赤に彩られた世界で、彼女の美しさは異質な輝きを放っていた。
だが、継ぎ接ぎだらけのその体は他の者達と同じく、死臭に塗れている。
男性ならば誰もが魅了される美貌も苦痛で歪み、呼吸も弱々しかった。

「フェイト……………」

呟きに、彼女は首をもたげる。
たったそれだけの動作ですら、今の彼女には苦痛なはずだ。
いくら魔法治療が発達しているといっても、人体の移植は非常に困難で患者への負担も大きい。
本来ならば、術後は絶対安静でなければならないのだが、彼女は補助魔法の重ねがけで弱った体を誤魔化し、
エリオ達の救出に駆けつけたのだ。それがAMFによって無効化されてしまったため、
彼女は自力で立つこともできない状態となっている。

「ユーノ、ごめん…………私、なのはを助けられなかった……………」

神に縋る罪人のように伸ばされた手が、ユーノの手の中に落ちてくる。
いつの間にか、互いの手が届く距離まで近づいていた。
乾いた頬を伝う雫の色までがハッキリとわかる。

「あの娘も………私、何もできなかった。ただ斬りつけただけで、傷つけただけで。
助けたいと思っていたのに、あの子が………エリオが傷つけられたって知った時、
私の中で冷たい感情が……………何も、何も守れなかった………………」

「良いんだ、君は何も悪くない。君は精一杯やったんだ……………きっと、誰も悪くない」

我が子を守りたいという思いと、親友を助けたいという思いに決して間違いはない。
ただ、その思いの矛先がほんの少しずれていただけで、彼女達は何も悪くない。
自分でも意外だった。
フェイトからなのはを助けられなかったと聞いた時、自分は彼女を憎むと思っていた。
どうしようもない怨嗟を傷ついたフェイトにぶつけ、理不尽にも罵るのだと思った。
けれど、唇が紡いだのは慰めの言葉だった。
憎めるはずがなかった。
なのはと同じように、フェイトもまた自分にとって大切な親友だ。
その彼女を、精一杯戦って、愛する友を救おうとした彼女を責めることなど彼にはできなかった。

205UNDERDOGS 第二十六話④:2009/06/13(土) 22:40:25 ID:Je5SHV9Y
「ごめん………ごめんなさい。みんな私が悪いんだ………なのはも助けられず、エリオも傷つけて……………」

「そんなことはない。そんなことはないよ、フェイト。君がいたから、エリオはまだ生きていられるんだ。
君が戦ったから守れた命なんだ」

「けど、あの子は…………………」

彼女の傍らに横たえられたエリオに視線を向ける。
ヴィヴィオにリンカーコアを砕かれたことで、エリオは昏睡状態に陥っていた。
何しろ、生まれた時から当たり前のように行っていた魔力の生成ができなくなったのだ。
薬剤の点滴も気休めにしかならず、一向に意識を取り戻す様子もない。
そんな彼の隣りには、必死で看病を続けるルーテシアの姿があった。
彼女やその足下で蹲っているフリードも重傷であることに変わりはなかったが、
帰還してから彼女は片時もエリオの側を離れようとせず、濡れたタオルで汗を拭き続けている。
守ると誓った少年を守ることができず、苦痛を取り除いてやることもできない。
そんな歯痒い思いに駆られながら、ルーテシアは贖罪する殉教者のようにエリオを看病しているのだ。

「もう、あの子は魔法が使えない。シャマルがそう言っていた」

「フェイト」

「私が全部奪ったんだ。私が……………」

「それでも生きている。まだ、やり直せる。だって、君の息子だろう」

肌蹴た毛布をかけ直すと、ユーノは一息吐いて気持ちを切り替えた。
後悔の時間は後でいくらでもやってくる。
なら、今は自分のするべきことをするしかない。
自分には戦う力がないかもしれない。
実弾デバイスを扱うことも、部隊の指揮を執ることもできない。
医者ではない自分では、魔法なしでの治療も行えない。
それでもできることはあるはずだ。
躊躇いの時間は悲劇を呼び寄せるのだから。





立ち去る幼馴染の後ろ姿を見つめながら、フェイトは呟く。

「それでも、私は……………」

後悔の念は消えない。
自分という存在が側にいるから、みんなが不幸に見舞われるのだ。
守りたいと思ったものは手の隙間から零れ落ち、救いたいと願った者達は目の前からいなくなる。
親友も、好敵手も、子ども達も、母親も。
大切な人達はみんな、傷つきながら自分のもとを去っていった。

「フェイト……………」

傍らで座り込んでいたアルフが、心配そうに顔を覗き込んでくる。
フェイトは辛そうな笑顔を浮かべたまま、彼女の赤い髪をそっと撫でると、
途切れそうなか細い声で囁いた。

「ザフィーラのところに、行ってあげて」

AMFによって戦闘不能に陥り、ガジェットの群れの中で孤立していた自分達を助けてくれたのは、
負傷を押して救援に駆けつけたザフィーラであった。人間よりも遙かに強靭な肉体を持ち、
徒手空拳で戦うザフィーラはAMFの中でもガジェットと互角に戦うことができる。
だが、いくら鋼の筋肉であろうと熱線で焼かれ、切られれば血が出ることに変わりはない。
自分達を助け出すために、限界まで戦ったザフィーラは消滅の危機に瀕しているのだ。
守護騎士プログラムが損傷し、主であるはやてもいない今、彼の生存は天命に任せるより他なかった。

「お願い、アルフ」

「………わかったよ、フェイト。けど、すぐに戻ってくるから」

後ろ髪を引かれる思いに駆られながら、アルフは傷ついた守護獣のもとへと向かう。
そして、1人になったフェイトは何度目かの呟きを繰り返し、自らを追い詰めていく。

206UNDERDOGS 第二十六話⑤:2009/06/13(土) 22:41:13 ID:Je5SHV9Y
「私がいなければ…………」

自分さえいなければ、もうあの子が傷つくことはない。
戦いから遠ざけ、平和な世界に閉じ込めてしまえば、エリオが辛い目にあうこともない。
例えそれが、何よりも耐え難い苦痛を与えることになってしまったとしても。
最後に残った命だけは、何があろうとも守らなければならない。
悲壮な決意は涙を枯らし、無意識に伸ばした手を引っ込める。
フェイトがエリオの手を握ることは、もう二度となかった。





制止するマリエル技師官を振り切り、ノーヴェは言うことを聞かない体を引きずりながら1人の少女を探していた。
だが、いくら探しても呻き声を上げるケガ人の群れの中に、彼女の姿はなかった。
さほど広くはない脱出艇の中を隅から隅まで探したが、あの憎たらしくも頼もしい蒼の少女の姿はどこにも見当たらない。
最初は努めて楽観を抱いていたノーヴェも、船の中を2周した辺りで不安は絶望へと代わり、
三度目からは視界に映る全てを見逃すまいと目を血走らせながら彼女を探し続けた。
鬼気迫る迫力が伝わったのか、追いかけてきたマリエルも声をかけようとはしなかった。
だから、ノーヴェは誰に遠慮するでなく脱出艇の中を調べて回ることができた。
負傷者の顔を丹念に見て回り、倉庫の備蓄を引っくり返し、機関部を覗き、天井や壁の裏にも潜り込む。
一縷の望みを捨て切れず、幽鬼のように脱出艇の中を彷徨う。
そして、漸くこの船に彼女が乗っていないということを認めたノーヴェは、震える声で呟いた。

「………いねぇ」

自分でも驚くほど、その声は冷たかった。
気持ちとは裏腹に、思考は冷静だ。戦闘機人として鍛え抜かれた鋼鉄の理性は、
彼女の生存が絶望的であると告げている。だが、その事実を認めたくなくて、ノーヴェは懸命に捜索を続けていたのだ。

「何で…………何でいないんだよ、スバル!」

焦りと不安に耐えられず、ノーヴェは応急処置が済んだばかりの右腕を背後の壁に叩きつける。
瞬間、耐え難い激痛が右腕を襲い、手首があり得ない方向に曲がってしまったが、今のノーヴェにそれを気にする余裕はなかった。
スバルがまだ、戻って来ていないのだ。
既に炉心の臨界まで10分と迫っており、ゆりかごの揺れは益々酷くなっている。
最早、一刻の猶予もなく、いつ脱出艇が発進してもおかしくはない。

「おい、冗談だろ…………お前までいなくなるのかよ。生きて償うんじゃなかったのかよ? 
あたしとの決着だって残っているんだぞ。スバル…………畜生!」

壊れた腕を振り回しながら、ノーヴェは脱出艇のコクピットへと向かう。
スバルは必ず戻ってくる。だから、それまで脱出を見合わせてもらわねばならない。
だが、数歩も駆け出さぬ内に揺れは激しくなり、アナウンスと共に足下から浮遊感が襲ってくる。

『総員、衝撃に備えてください。これより、本船は安全圏への離脱を試みます。
繰り返します。本船はこれより…………………』

不意に揺れが消え、引っ張られるような感覚にノーヴェはバランスを崩した。
何とか踏ん張って窓の外を覗くと、底の見えない暗闇に無数の光点が塗された暗黒の世界が広がっていた。
脱出艇が発進したのだ。

「嘘だ…………嘘だ!」

まだスバルが帰ってきていない。
カルタスだってまだ帰ってきていない。
他にも、合流できなかった奴らがいるはずだ。
なのに、そいつらを見捨てて自分達だけ逃げようというのか? 
仲間なのに? 
共に戦った運命共同体を、このまま見捨てるというのか? 

「ふざけんなぁっ!!」

湧き上がる怒りに任せて、ノーヴェは鋼鉄の扉をぶち破り、コクピットへと転がり込む。
他の面々には目もくれなかった。背後で何事かと様子を伺う連中の視線も気にならなかった。
ノーヴェの目に映っているのは1人だけ。黒衣の装束に身を包んだ黒髪の青年。
この集団の指導者であるクロノ・ハラオウン、唯1人だ。

207UNDERDOGS 第二十六話⑥:2009/06/13(土) 22:42:02 ID:Je5SHV9Y
「何で………何で逃げるんだよ!?」

「…………っ」

ノーヴェの言葉に、クロノは一瞬だけ辛そうな表情を浮かべたが、
すぐに冷徹な指揮官の顔に戻ると、激昂するノーヴェに向けて、
よく通る声で返答した。

「これ以上は、待てないと判断したからだ」

「そんなの……………そんな答えが聞きたいんじゃねぇっ!! 戻れ、今すぐに!」

「ノーヴェ!」

壊れた腕でクロノに掴みかからんとするノーヴェを、ティアナは後ろから羽交い絞めにする。

「止めて、提督だって辛いの。わかって」

「できねぇ………できねえよ! だって、まだスバルが中にいるんだぞ! 
他にも…………人造魔導師の素体にされてる奴らも……………見捨てるのかよ! 
みんな見捨てて、あたし達だけ逃げて……………」

「逃げないとみんな死ぬの! 死ぬのよ、わかるでしょ!」

「嫌だ、あいつを………スバルを助けないと。まだあいつとの決着が着いてないんだ。
言いたいこともたくさんあるんだ。まだ………まだ妹だって、呼ばれてないんだ。
あたしの姉さんなんだ。だから………………」

「もう、通信が途絶えて30分になるわ。信じたくはないけど、スバルは……………」

「そんなことねぇっ! そんなこと、そんなことは…………絶対…………」

叫び声が小さくなり、やがてノーヴェは力なくその場に座り込んだ。
自分が口にしていることが、感情任せの暴言であると彼女はわかっているのだ。
スバルとの通信が途絶えて30分。いくら彼女が強くとも、ゆりかごの中枢部に突入した以上、
無事では済まないだろう。自力での脱出は困難で、救援を送ることもできない。
彼女の生存は絶望的だ。
何より時間がなかった。
脱出艇が安全圏まで離脱する時間を考えれば、これ以上は待つことができないのだ。
非情かもしれないが、ここで切り捨てねば全員が死ぬことになる。
クロノが下した決断は、己の身を切るにも似た痛みを伴う決断なのだ。

「畜生…………畜生……………」

「憎みたければ、僕を憎めば良い。ルキノ、最大船速まで加速するんだ。安全圏まで離脱する」

「……………了解」

誰もが心に傷を負っていた。
このままスカリエッティ諸ともゆりかごが沈めば、自分達の勝利となる。
だが、それを手放しで喜べる者は誰もいなかった。
この戦いで失ったものは余りに多い。
世界の常識は捻じ曲がり、大切な友や家族は失われ、社会的地位も権力も名声も失った。
勝利者などどこにもいない。
ただ、苛烈にして虚しい戦いが、終わっただけなのである。

「終わった?」

誰かの呟きが、空虚な響きとなる。
余りの静けさにカンの良い者は違和感を覚え、動ける者は小さな窓へと殺到する。
動けない者は各自のデバイスを手に取り、負傷者ですら介助の手を借りて違和感の正体を探ろうとした。
そして、違和感は程なく解明された。
とうに10分が過ぎていながら、未だゆりかごが健在であることに。

208UNDERDOGS 第二十六話⑦:2009/06/13(土) 22:42:48 ID:Je5SHV9Y
「ゆりかご健在! 炉心の出力が足りません!」

「馬鹿な、30分経ったぞ。どうして自爆しない?」

「原因は不明。このままでは、ゆりかごが大気圏に突入します。
仮に自爆が間に合っても、大気圏内で爆発すれば、環境に甚大な被害が!」

「今すぐ爆発させる方法は?」

「外部から衝撃を与えるしかありません。魔力砲でも何でも良いから、
とにかく炉心内部の熱量を外に出すことができれば可能です。ですが、
この船には攻撃用の兵装は積まれていません」

グリフィスの悲痛な叫びが、船内に絶望を漂わせる。
脱出艇に武器がない以上、魔導師が直接、クラウディアの駆動炉を攻撃するしかない。
だが、クラウディアの駆動炉はゆりかごのAMFの効果範囲内に位置しているのだ。
あらゆる魔法を100%無効化する強力なAMFを突破できる魔導師など、この世には存在しない。

「これまでなのか……………」

「いや……………まだだ、まだ終わってない!」

顔を上げたクロノの眦は力強く、確固たる決意が込められていた。
直後、船内に懐かしい少女の声が木霊する。

『こちらアースラ、リインフォースⅡです。クロノ提督、聞こえたら返事してください』

「来てくれたか、アースラ」

空間に巨大な穴を開け、銀色の翼が露となる。
それは、かつてクロノの母が艦長を務め、彼自身が譲り受けた次元航行艦。
PT事件、闇の書事件を始めとする次元の危機に敢然と立ち向かった正義と法の象徴。
L級巡洋艦アースラだ。

「アースラ? どうしてアースラがここに?」

「何かの役に立つと思って、僕が回収して修理しておいたんです。
どうやら、提督はリイン曹長達を後詰めとして待機させていたようですね」

どこか得意げにグリフィスは語り、中指で眼鏡のズレを直す。
絶望的な状況から希望が舞い降りたことで、諦観に満たされていた船内が俄かに騒がしくなった。

「リイン、魔力砲は使えるね?」

『もちろんです』

『射程圏内まで後10秒』

『エネルギー充填率120%』

『クロノ君、いつでもいけるよ』

同行していたヴェロッサが締め、通信が切れる。
躊躇する理由はなかった。
ここで撃たねば、クラナガンに住まう多くの人々が死ぬことになる。
誰もが緊張で息を呑む中、クロノは迷うことなく通信のスイッチを入れる。
途絶えた通信が入ったのは、正にその時であった。

『……………える…………きこ………こち………ら………バル…………クラウ…………ティア………』

擦れた声が電子機器を介して、コクピット内に響く。
聞き覚えのある声にノーヴェとティアナが互いの顔を見合わせ、
通信機を扱えるティアナが弾かれたように立ち上がってコンソールを操作し、
マイクに向かって叫んだ。

209UNDERDOGS 第二十六話⑧:2009/06/13(土) 22:44:07 ID:Je5SHV9Y
「スバル、スバルなの!?」

『ティア? 良かった、この通信機壊れてなかった』

久しぶりに聞くスバルの声は、いつもと変わらぬ調子であった。
ノイズ混じりではあるが、言葉の端々に彼女の持つ明朗さが滲み出ている。
だが、その明るさは彼女達の心に暗い影を落とし、しこりにも似た痛みが胸中を走る。
戸惑っている暇などないとわかっていながらも、誰もが言葉を失っていた。
これから撃沈される艦の中に、生存者がいる。
果たして、そんな状態で平静を装える者などいるのであろうか?

「あんた、無事なの?」

震える声で、ティアナは通信は続ける。
泣き叫びたい思いを必死でこらえているのだということは、きつく握り締められた拳が容易に物語っていた。
乾いた声はまるで絶望を運ぶ死神の鎌のようで、言葉を紡いだ本人ですら驚くほど冷たい響きであった。

『何とか…………左半分持っていかれたけど、生きているよ。キャリバーズもね』

「そう…………カルタスさんは?」

『わからない。気がついたらスカリエッティが死んでいて、カルタスさんの姿は…………………』

それ以上は続かなかった。
スカリエッティを活かしたまま捕らえ、罪を償わせる。
それを成して始めて、3年前から続く事件が終わるのだと彼女は言っていた。
力及ばず志を全うできなかったことを、彼女は悔いているのであろう。
それにカルタスは彼女にとって全くの他人と言う訳ではない。
姿がないということは生きている可能性もあるが、ゆりかご内にガジェットが
蔓延していることも考えると、生存は絶望的だ。

『けど、これで全部終わった。結局、あたしは誰も守れなかったけど……………これで終わったんだ。
そう、終わった………………何もかも』

「スバル……………」

『ねえ、帰ったらまたアイス食べに行こうよ。今度はノーヴェやディード達も連れてさ。
イクスのお墓参りにも行かなきゃいけないし、ギン姉達のお墓も造らなきゃ』

覇気のない声で、スバルは今後の人生をポツポツと語っていく。
それは3年前まで、何気なく過ごしていた日常の連続であった。
眠い目を擦りながら目を覚まし、顔を洗って体を動かし、お腹一杯ご飯を食べ、
友達と語らい、将来の夢を追いかける。
失われた未来を取り戻すのだと、彼女は力なく笑ってみせた。
そして、最後に締めくくった言葉は、彼女の心からの願いにして原点。
この戦いの中で辿り着いた答えであった。

『罪を償わなくちゃ……………もう、傷つけるのも傷つくのも嫌だ。
魔法は…………みんなのためにある力で、誰かを守る力。守るためにこの力を使いたい』

「使えるわ…………………きっと…………きっと………つか………ぅ…………」

堪え切れず、ティアナは涙ぐんで俯く。
2人のやり取りを見守っていた面々も、かける言葉が見当たらなかった。
言える訳がなかった。
その願いは、もう叶わないなどと。
その沈黙が伝わったのか、スバルはどこか悟ったように呟いた。

『そっか…………あたし、死んじゃうんだ』

その声音は、まるで死に逝く老婆のようで、切なくもやるせない響きが込められていた。

「………ざけんな…………ふざけんな!」

理不尽に納得できないノーヴェが、ティアナを押し退けてマイクを奪い取る。

210UNDERDOGS 第二十六話⑨:2009/06/13(土) 22:44:57 ID:Je5SHV9Y
「スバル、勝ち逃げなんて許さねぇぞ! あたしとの勝負はまだ着いてないんだからな!」

『ノーヴェ? ははっ、そうだね……………残念だ』

「諦めんな! そんなのお前らしくねぇ! 生きろ、生きて償うんじゃなかったのか!? 
すぐに迎えに行く。無理でも行く。だから絶対、諦めるな! 
だって、お前はあたしの……………あたしの姉さんなんだから…………」

『何? よく聞こえないよ…………ノーヴェ、ノー………………』

雑音が酷くなり、通信が途絶える。
誰もが何も言えず、罪悪感に苛まれていた。
ここにいるのは共犯者だ。
故郷を守るために、1人の少女を犠牲にする唾棄すべき集団だ。
こんな場面は何度もあった。
大義のために小数を犠牲にしなければならないことは、何度もあった。
これがその罪科だ。
胸を苛む痛みを、犠牲となった亡者達の嘆きと憎しみの声だ。
そして、今度もまた冷酷な判断を下さねばならない男は、感情のこもらない声音で、
通信機の向こうにいる仲間に向けて命令を下した。

「………………アースラ、クラウディアを撃て」

復唱はなかった。
ただ、無言の頷きと共に光が暗闇を駆け抜け、獰猛な狼の如く苦楽を共にした白銀の翼へと襲いかかっていく。
一拍遅れて、無音の爆発がクラウディアを内側から破壊し、太陽の彷彿とさせる輝きが2隻の艦を飲み込んでいった。
僅かに虹色を帯びた輝きが消えると、後にはもう何も残されていなかった。
破壊を免れた破片も大気圏へと突入し、程なくして燃え尽きるであろう。
彼らの長く険しい戦いは、こうして1つの節目を迎えたのだ。

「ああぁ………………あぁ…………」

「………………」

「何で………………何でだよ……………」

コンソールの上でティアナは泣き崩れ、ノーヴェが喉を枯らしながら吠える。
これは何のための戦いだ?
何を望んで共に戦ってきた?
もう、自分達に彼女を偲ぶ権利はない。
回顧すら罪悪感を伴い、罰として重く圧し掛かるのだから。

「畜生、何で…………何でだよ、姉さん!」








                                                         to be continued

211B・A:2009/06/13(土) 22:48:29 ID:Je5SHV9Y
以上です。
うん、1話伸びたんだ。
最終回は丸々エピローグになる。

最後に一言。
この連載が終わったら、ハッピーSS書かなきゃ頭冷やされるんだろうな(不幸な目にあった人たちから)。

212名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 23:02:33 ID:.oFlXGmw
GJです。
なんつか、切ないなぁ。

213名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 23:37:05 ID:ZtqsXV/o
>>211
GJ!!
この大作もうすぐ完結?
キャラが不幸な目に遭うので嫌だったけど
イメージ壊してないしSSXのネタも仕込んであるのでいつのまにか連載が楽しみになってた
ハッピーSSも期待してるぜ!

214名無しさん@魔法少女:2009/06/13(土) 23:41:00 ID:c/OEJLaU
GJです。
「こんな世界のはずじゃなかった。」と言うのはある種の逃げだと思うこの頃。
どんな世界であっても皆が懸命に生きたのは変わらないから、それを誇ることこそが散った者への本当の供養の筈。
生きていたことさえ忘れ去られることこそが一番辛い事だから。

215名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 00:57:50 ID:g2vTKoqo
GJです。
それ以外に何と言えばいいんでしょうか・・・・・

216名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 00:59:08 ID:EaQeHG9o
>>211
 ついにカルタスがリベンジを!
 死にゆく者たちは、そこから先がないので楽ですが、生き残った人たちは、そこから先が地獄ですね。
 この作品、最初は嫌いでしたが、ラストのバトルで久々に熱くなりました。
 今日、ターミネーター2を見ただけに、旧式にぶち殺されるスカのど惨めさに笑いが止まりません。
 しかしスバルも死ぬとは・・・・・・

217名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 03:08:48 ID:3jQbMmE2
GJ
最後の最後でスカが小物みたくなったwww

218名無しさん@魔法少女:2009/06/14(日) 10:18:27 ID:LnMYu3Bw
GJ
あー。なんだろ。言葉もないや。
強いて言えば、ありがとう、かな。読ませてくれてありがとう。
最後まで、楽しみにしてます

219ウルー ◆UtE9cq2Ioc:2009/06/14(日) 10:55:31 ID:xrGpzVwE
B・A氏の長編読み始めたばかりの俺はネタバレ回避のためにスルーするしかねえええええ(´;ω;`)
早く追いつきたい…

ちょっとというかかなり遅くなりましたが、「例えばこんなリリカルなのはさん」の後編を投下したいと思います。
B・A氏の投下から半日経ってるし大丈夫ですよね…?ビクビク
では以下、注意事項。

・ユーノくん×なのはさん
・前・中・後の3編。今回は後編。
・エロと事後のお話
・設定改変あり。一人では弱いけれど二人でなら最強のなのはさん
・10歳。10歳でこれはねーよというツッコミは(ry
・タイトル「例えばこんなリリカルなのはさん」

では、いきます。

220例えばこんなリリカルなのはさん・後編:2009/06/14(日) 10:57:04 ID:xrGpzVwE
 調教(勘違い。勘違い……?)の結果、泣き止むと同時になにやらスイッチが入ったらしいなのはは、
太股を擦り合わせてもじもじし始めていた。
 一方、なのはを宥めるためにだいぶ精神を擦り減らしてしまったユーノだったが、現金なもので、
なのはのそんな仕草を見て、なのはを可愛がりたいという欲求がむくむくと復活してくる。
「なのは……いい?」
「はい、ご主人様……」
 互いに、何を、とは言わない。言う必要がなかった。
 ユーノは、腰に巻いていたタオルを脱ぎ捨てた。これで2人ともが、生まれたままの姿。
「お、おっきい……」
 天に向けて勃つユーノの分身を見て、なのはは感嘆、あるいは恐怖の色が混じった声を漏らす。
 なのはが今までに見たことのある男のモノは、父と兄のものだけではあるが、それらを明らかに
上回っているように見えた。
 もっとも、当然のことながらなのはが見た時は士郎も恭也もノーマル状態だったわけだが、
そこはそれ、ユーノもまだ子供だから仕方がない。
「そ、そうかな……」
 ユーノのほうは、なのはにマジマジとそこを見られて恥ずかしかった。
 自分だってなのはの恥ずかしいところをたくさん見せてもらって、あまつさえ触って弄りまわしたのだから、
隠すような真似はしないけれど。
「……入るの、かな」
 なのはがぽつりと呟いた。
 その疑問はユーノも思っていたことだ。舌ですら入り込むのは困難だったのに、こんなものを本当に
入れることができるのか。指ぐらいならともかく――
「あ」
 若くして無限書庫の司書を務めるユーノの優秀な頭脳が、1つの答えを導き出した。
「なのは、ちょっと待ってて」
「……?」
 ユーノは、自分の息子に両手をかざす。
 そう、彼は、補助系のエキスパートである魔導師だ。構築する術式は――変身魔法。
「わ、わあ……!?」
 なのはが、目の前に広がる光景に驚きの声をあげる。それも仕方のないことで、なにせ――小さくなっていくのである。
ユーノのモノが。萎えるとかではなく、そのままの意味で。
 変身魔法の応用。大きくて入らないなら小さくしちゃえばいいじゃない。
 ただ、局部的に変身させる上、場所が場所なだけに、制御を失敗するととても悲惨なことになりかねないが。
 しかし、ユーノは無事にやってのけた。
 長さは1/3程度、さらに太さを調整。ちょうど、大きめの消しゴムぐらいのサイズになった。




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