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孤空の月〜崩れゆく廃坑〜

1参加者:新之剣・歌藤玲・アイリ・セイスイ・グレイヴッチ・エゴ:2008/08/11(月) 10:42:07
■13:00 08月01日
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・・・汽笛の音が街中に響き渡る。
暑い日射しの中、鈍行列車は寂れた駅にたどり着いた。
窓の外には既に無人となった廃屋が見える。
「次の列車は一ヶ月後ですぜ。・・・引き返すならそのまま
乗っててもらえば帰りの汽車賃は半額にでもしますんで。」
ぼろぼろの帽子をかぶった車掌が珍しいものを見るかのように
車内を見回しながら言う。
しかし、次々と乗客は席を立ち列車から降りていった。
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車掌だけとなった列車は煙をはきながら線路を戻っていく。
駅内には自分以外にも多くのものたちがいた。
分厚いコートのものもいれば旅行者のような格好のものもいる。
「・・・・・・・・。」
ナイン・シュガーは腰の銃の弾丸を確認する。
・・・頭数分の弾丸は十分ある。だが、既にこの街に誰か
いるかもしれない。とりあえず他の乗客の様子を見るか・・
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2じおん:2008/08/11(月) 11:36:50

異色、 第一感想。
此処へ来た理由さえ、検討もつかない様な連中ばかりだ。

しかし。
そういった考えを抱くのは、ナインに限ったことではないのだろう。
それぞれが。それぞれの理由で。互いに警戒し合う空気。
乾ききった風と混じり合って、肌に染み込んでくる。

「さて」

猛暑は水分補給を忘れずに。

*

今シーズン、まだ美人のお姉ちゃんにかき氷作ってもらってないなあ。
最愛の人ならず果物、スイカさえ食べていない。
夏らしいこと、したっけ。
オカマだらけの水泳大会、ポロリもあるよ!に強制参加させられたくらいかなあ。

雑念の主の青髪は、
パープルシャツに黒いスーツを纏っていた。
この季節、そんな恰好で外を歩けば
「吐血するくらい、暑い」なあんて言葉も自然と出てくる。

「全身から血を噴き出すくらい、あ」
言い終える前に彼、セイスイは倒れた。
「誕生日には…俺の部屋を・・・ハイビスカスで埋め尽くしてくれ」

*

日焼け止めの効果が無さそうな日差し。

3腐れ飯:2008/08/11(月) 23:47:55

一攫千金なんてものは狙うものではない。
そもそもギャンブルというのは所詮自分の度胸を試すものであって、金なんて
二の次である。と、常々思っていたつもりだ。
しかしギャンブルはギャンブルだ。度胸のために、旅のための金がノリで一気に空気と
なる場合もある。場合もあって…
俺はまた一攫千金を狙っている。

新之剣は、とりあえず乗る前に水だけは大量に買い込んでおいて、今になって
重いと後悔しつつも、電車を降りた。
「…にしても、なんだこりゃ。」
先程この電車に乗るとき、駅は随分とにぎやかだったものだが、この変わりよう
はなんだと、新之は驚いていた。とりあえず。剣と荷物を置いて、ベンチに座る。

今更トレジャーハンターに転職なんて、お笑い種になりそうな話はしない。
「今にも崩れそうな鉱山には宝がたくさんある」と、街で噂になったのを聞いた。
新之は面倒くさい事は嫌いだが、勢いで金を無くした今、そうも言っていられ
なくなった。
たとえ金が手に入らなくても、金目当てのお尋ね者なんかをしばけば、なんとか
金は入るだろうと、新之は意外と深くまで考えていた。
「…とりあえず、暑いな。」
ここら一帯の地図を広げる。鉱山の場所を指でなぞりながら探していると、何やら
×マークがついた場所があった。ここが鉱山だと確認する。新之は溜息をついた。
「宝があるということなのか。 危険ということなのか。」
とりあえず、暑いので荷物から水の入ったペットボトルを一本取り出す。
なにやらガンマンのような奴もいる。新之は、どこかで面倒くさいことに
巻き込まれそうな気がしていた。

4羅刻:2008/08/12(火) 01:32:17
 ―――黒いコート 黒い帽子 丈の長い紫のスカート
見てるだけで暑苦しい・・・奇異な小柄で銀髪の少女だ。
日焼けとは無縁の白い肌で日傘を差し、売店で購入したブルーハワイ味のカキ氷を口に運んでいる。
彼女も鉱山の話を聞いて此処に来た様だ。
名は、アイリと云う。

「ブルーハワイ味って何の味なんだろ・・」
額に汗を浮かべ、そんなどうでもいい事を考えながら街の人達を見つめる。

そもそも彼女が此処に来た理由はというと金脈の事を聞いて来たわけであるが・・真の目的は別にある。
――――金脈があると言う情報の真偽 それを狙う者の観察―――
・・それが彼女に与えられた任務であった、もっとも本人は金が手に入ればそれで良いと思っていたようだが。
「これだけ暑いなんて聞いてないわよ・・」
このままでは倒れてしまうのではないか、そう思いながら歩いていると何かを踏んだ。
青髪で女顔の男のようだ、そのうめき声にアイリの体に寒気が走る。
肩を叩く・・息はあるが意識は無いようだ。引きずってその男を日陰に運び応急処置を始めるが。
「あれ?この人って・・」
風通しをよくするため男の服を緩めると何か違和感を持ったようだ。

・・・・後は意識が戻るか誰かが助けに来るだろう

カキ氷を食べ終えゴミを捨てると街中を見渡す。
・・・まずはあの怪しいガンマン風の男を観察してみるか

5木野:2008/08/12(火) 18:07:40
・・・列車から降りた乗客は互いの様子を伺っているようだ
無理も無い。こんな寂れた街に来る目的といったら一攫千金・・・
互いに敵になりうる存在なのだ
「・・・・・・。」
既にさっきからカキ氷を食べている女性がこっちの方を向いている。
この暑い中見せ付けるかのようにカキ氷を食べているのだ
・・・喉の渇きや暑さは我慢できても、甘さはなんとかして得たいものだ
あいにくここの駅は無人で売店など無い。
駅構内の壁にある地図を見るとすぐ近くに宿屋が一件あるようだ。
逆にいえばその一件しかないともいえるのだが・・・・・
とりあえず切符を支払い宿屋へと向かうとしよう。
途中で倒れている男性に話しかけている人物がいたが問題ないだろう・・・
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6Mark@『6.離れたり集まったり』:2008/08/12(火) 23:39:37
■■14:16 8/1

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駅のそばにある商店街にはシャッターの閉まった建物が目立つ。
錆びた看板をいくつか越えた所で、ナインはある建物の前で足を止めた。
三階建ての古びた洋館で、白いペンキが塗られた箇所は所々汚れている。
ナインは地図と洋館の看板を交互に見、それが目的の宿と判断すると、呼び鈴を鳴らして宿主を待った。

中へ案内されたナインの目に、最初に飛び込んだのは少女の人形だった。
カウンターの向こうに置かれた、妙に精巧なそれ。下には十字架が敷かれている。
黄緑の瞳をぼんやりと見つめていたナインに、宿主が声を掛けて来た。
「この前もらったんだ。気味の悪い人形だろ?」

「昔はここもそれなりに栄えてたもんさ」
宿主の世間話を適当にかわしつつ、宿泊の手続きを済ませる。
その後も彼はよく喋ったが、苛立ったナインが睨むとすぐにお喋りは止んだ。
「…甘いものが今すぐ欲しい」
「だったら向こうの食堂に行きな。ここの飯はマズイって評判さ」
そう言い、宿主は窓の向こうに見える建物を差す。
すでに駅で会った何人かが中に入る所だった。
「………」
ナインは深く帽子を被り、宿のドアを開けた。

7カーnabi:2008/08/13(水) 01:42:31
「何処だー!此処はー!」

商店街をとぼとぼと歩く青年が1人。
彼の名はレイド。ハチマキと赤い髪が目立つ剣を持った青年だ。
彼はこの場所に来るつもりは無かった。
では何故その青年がこの場所に着たかと言うと・・・
「寝過ごしたッ!」
っという何とも簡単でしょうもない理由だ。
寝過ごしたと慌てて降りる彼のことだ、車掌の言葉も聞こえず考えも無しに降り立った。
そこが一攫千金を狙う者達が集う場所だとも知らずに・・・


「・・・なんか寂しい所だなー」

彼の歩く商店街は全てシャッターが閉まっており
誰1人も歩いておらず閑散としており、見物に来たとするならば最悪だ。
彼から見て多くの者が集いそうな所と言えば遠くにある宿と、
大勢が一攫千金を夢見て望む鉱山ぐらいだ。
しかし、寝過ごしてここに降りた彼が一攫千金を狙える鉱山の事を知っている訳が無く。
今行く場所とすれば宿ぐらいだろうが・・・

「そうだ!今からでも戻れば・・・」

彼は希望を持って駅の方向へと振り返るが
無論列車はとうの昔に出発しており、そこに残るモノは何も無し。

「はぁ・・・とりあえず、宿に言って考えるとするか」

と、宿に向かって歩き出し、程なくして宿の前に到着する。
それは丁度ナインが宿から出ようとする時だった。

8じおん:2008/08/13(水) 10:30:31

アイリが去った後、しばらくしてから彼は目覚めた。
緩んだ服装に疑問を思いながらも、ネクタイを締め直す。
「もしかして誰かが助けてくれたんじゃなかろうか」
なんて。
ただでさえ、このような気候なのに、
彼の性格に若干の異常があるときたら、
そんな事は思わないのだろう。

「ちょ…、怖あ・・・」
とだけ言い、立ち上がった。

*

しばらく歩くと宿が見えた。

赤い髪の男と、銃を持った男が居る。
喧嘩でもしているのだろうか、何か言い合っているのが、
この距離からでもよく、わかった。
あ、違った、赤い方が一方的に何か言ってるような。

俺と対照的な赤だ、目に悪い。
ただでさえ目が細いのにこれ以上目、細めたら、もう線じゃねえか。
自然と眉間にしわが寄る。
相当目付き、悪くなってるだろうな。

「兄ちゃんたち、何してんだい」
声を掛けると、二人は引き攣った顔でこちらを見た。

あれ…。
もしかして、悪人にしか見えなかった…、かな。

9Mark@『9.喧騒と戦慄のあいだ』:2008/08/13(水) 12:00:30
二人ともすぐに口論をやめ、お互いセイスイに視線を向ける。
「……何だ?」
糖分不足の上赤い男に絡まれ、その上厄介者がもう一人。
いい加減我慢の限界に来ていたナインの手は、まだ使われてない拳銃を掴んでいた。
「お前は…!」
一方、セイスイを直感で悪と察したレイドは剣に手を掛ける。
「ハイビスカス…」
セイスイはと言うと、悪化した状況の中。何故か遠い日の友を思い出していた。



「玲ちゃん踊りまーす!」
南国調のリズムが食堂中に流れる中、客の視線はそれに合わせて踊る金髪の娘に集する。
ただ一人、アイリだけは踊り子に目も暮れず、外で揉める三人を窓越しから見つめていた。
ふと、
「ダンスは見ねぇのか?」
近くからの低い声が自分に向けられた物と察し、アイリは抑揚のない声で返す。
「…シュミじゃない」
「結構いい感じだぜ?子供には分からねぇだろうがな」
『子供』と言う単語に反応したアイリは顔を赤く染め、
「っ!子供じゃな 」
反論のため、立ち上がって相手に振り向くと、
「……!」

硬直し、身構えた彼女の目先には、全身が毛に覆われたハイエナの獣人がいた。

10腐れ飯:2008/08/13(水) 18:04:23

踊り子が踊っている。当たり前のことだ。
ウェスタン風の食堂の隅。新之は四人用の丸テーブルを一人で占領していた。
時々座ろうとした人達がいたが、新之が狛犬のような顔をすると、へこへこと
どこか別の席に座った。
新之は、オムライスをすくっとスプーンで掬う。鼻をつらぬくように強いトマトのにおいがする。

「…うっ。あっ。」
踊り子とランク的には中の中であるオムライスは、先程からどうでもよかった。
一人の少女が、獣人に対して何か言いたげだが口を金魚のようにパクパクさせうろたえていた。まぁわからないでもない。
アイリは、自分の座っていた椅子をしまう。
「…な。何?こんな暑いところで大丈夫なの?」
うろたえてようやく搾り出した言葉だった。獣人はどうでもよさそうに天井や、踊り子を
見ていた。
「俺はグレイヴッチだ。何、名乗っておこうと思ってな。お子様には優しいのさ。」
「な、何を…。」
アイリは、なにやらナイフのようなものを握っている。バターナイフだ。どうにもならない。

「おい!そこの君達!!」
新之は大声をあげる。そろそろ飽き飽きしていたところだ。なにやら情報も聞き出せる
かもしれない。新之は立ち上がり、喧嘩にまきこまれないようにと口火を切った。
アイリとグレイヴッチは新之を見ている。新之は一言。

「俺のオムライス食ってくれ。」

11木野:2008/08/13(水) 19:25:35
「・・・チッ。」
小さく舌打ちをし、ナインはレイドとセイスイを放置して食堂に入っていった。
「え・・?おいっ・・・ちょっと・・・」
勝手に去っていったナインに呆然としながらセイスイのほうをみるが、
こちらはなにやらさっきから思い出に浸っているのか目が宙を泳いだままである。
「・・・・・。」
しかたなくレイドも食堂へと入っていった。
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ガブリ。

皿に噛み付くようにグレイヴッチは新之のオムライスをたいらげた。
ズッと、オムライスの皿を抜くとケチャップが血のようにずるりと垂れた。
「ありがたくいただいとくぜ。」
グレイヴッチから受け取った皿をテーブルに置くと新之はアイリのほうに近づいた。
「・・・何のようだ?」
「おいおい、俺が助けてやったのにその言い草はないだろ?
・・・まぁ、いいや。お礼といっちゃあなんだがなんかいい情報があったら
教えてくれないか?・・・・・お宝とかさ。」

「すまないが、何も知っていることはない。」
アイリはバターナイフをテーブルに置くと、食堂の外へと出て行った。
それを見送った新之はウェイターにスパゲッティを頼みグラスの水を飲み干した。
「・・・ふぅ、どうやらそう簡単にはいかなさそうだな。」
新之は空になったグラス越しに食堂へと入ってきたナインをみつけた
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12ヨモギ茶:2008/08/18(月) 21:22:55
新之は空になったグラス越しに食堂へと入ってきたナインをみつけた

今度は、あいつに聞き込みをしてみようかな

新之は、テーブルから立ち上がってナインに5歩程近寄り、はたと止まった
(なんだか、やばそうだなあ・・、苛立っているみたいだし)
そう思って、新之は踵をかえそうとし___

「おい。」

後ろから遠くだけど、声が聞こえた。ふりかえるとナインの他。
とりのこされている青髪、セイスイ。
後を追って入ってくる、ナインと同じ赤髪で、剣をもったレイドの姿が見えた
セイスイは、何やらぼお・・・っと、しているようだけど、それよりも・・・

(あら、目ェ、あっちまった。)

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所代わってこちらは宿・・・・

「きみがわるい。いわれちゃった。」

カウンターの向こうから声がきこえる。たどたどしい少女の声。
宿主の姿はなく、少女の声がきこえていても、何処か静かだった

「んん・・じっとしてて、つかれちゃった。ここ、何処なのかな。」

じっとしていて、カウンターがある部屋には、今はひとっこ一人いない。
今、いるのは、否。そこにあるのは、食堂へ向かう前のナインがみた。

そう、妙に精巧につくられていて、持ち主が「気味悪い」と言った
少女の人形 しか。

その少女の人形は、ボーダーセーターの袖で隠れた小さい手を動かして
背伸びをした。しかれていた十字架は頭上にあり、まるで、それについた糸
でつられているようだったが・・

ふわり。
人形はパラシュートで降下するようにカウンターのある台から降りると、
僅かにふらついているようでも歩き、ドアの側までたどりつき・・

なんとなく、後ろを振り返った。

いつの間にか戻ってきた宿主の、血の毛のない、異様に開いた顔があった

「おじちゃん・・おそと、いっていい?」

クロスがわかぼしかたむき、少女の人形は首をかたむけながら無邪気に問うた
宿主が悲鳴をあげるか、その間々倒れるか・・
どちらにせよ。時間の問題だろう

13木野:2008/08/19(火) 16:06:15
アイリは一足先に宿屋へと戻ってきた。結局たいして食べることもできないまま
帰ってきたので小さくおなかがなる。まずいと評判らしいがここの宿屋の軽食でも
とるとするか・・・
「ん?」
ドアを開けるとそこには床に倒れたままの宿屋の主が。気を失っているようなので
近くのソファーに寝かせておいた。
「いったいどうしたっていうんだ・・・?」
ふと、カウンターの向こうの不自然な空間が目に付く。まわりがほこりだらけ
なのに対してそこだけ「さっきまで何かあった」かのようにほこりがない。
「・・・やはり何も起こらずに過ごせないか・・」
アイリはカウンターの鍵を拝借し、ひとまず自分の部屋に帰ることにした。
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14腐れ飯:2008/08/24(日) 23:38:55

「何だ。お前は、人の顔をみて退くなど、失礼千万だぞ。」
「っていうか何その面倒くさそうな顔。いらつくんだよ喧嘩うってんのか?」
「ところで腹減ったな!何か食わんか!」
新之はタバスコをコツコツと机に当てながら座っている。
ナイン、セイスイはそれを潰すような目で立って見下ろし、レイドだけは大声で全く別のことをいっていた。
踊り子の歌声が聞こえる。レイドの大声でも、それは掻き消せなかった。
新之は、貧乏ゆすりをする。いけない癖だ。
「あの、いや、すみません何でもないんで。とりあえず勘弁してください。」
「いや、何でもないではないだろう。とりあえず俺に何を聞きたかった?」
「いや、何でもないです。聞いても今怒ってるじゃないすか勘弁してくださいよ。」
セイスイは、ペッと唾を吐いた。その唾は新之の頬に当たる。
「さっさと言えよごもってんじゃねぇぞこの薄らハゲ茶髪。」
新之は、それを、そっと拭く。そして、首を左右に揺らしたかと思うと、
唐突に立ち上がった。
「おいこら。てめぇ食堂で人の顔に唾吐くとかどういう神経してんだよ?あ?
もうこうなったら絶対聞きませんー。お前等に聞いても無駄ですぅ。」
新之は、レロレロと舌を出して、セイスイの顔にありえないほど接近する。
「あ?何だよ強がってひねくれてんのか?ガキだなおい。もっかい家帰って
勉強しなおせ。」
「そうだな。そうするぜ。じゃぁな!」
そういうと新之は、手に持っていたタバスコを、セイスイの目にかける。
「あっっ!あぁぁぁぁ!」
新之は、タバスコをポイと床に捨てると、そのまま向かいの宿へと向かった。
セイスイは、目を抑えながら呻いている。ナインは、新之とセイスイを交互に
見ていた。
「てめ!見てたら助けろや!」
「いや、すまん。しかし、あまり『言え』と責める意味がなくなった気がしてな。」
気付けば、歌が終わっている。周りの客が昼なのにやけにうるさい。
「おいおいお二方!」
レイドは、いつのまにかナポリタンを口一杯に頬張っていた。
その隣には、女の子が座っている。机に肘をたてて、両手で頬を支えていた。
よくみると、先程まで歌っていた踊り子だった。
レイドはナポリタンを飲み込む。
「この女の子、なんか宝がどうのこうの言っているんだが…。」




=======================


「疲れたわ。」
ベットに腰をかける。窓から見る景色も、外でみた景色もかわらない。
さして景色がいいわけでも、眺めがいいわけでもなかった。
「…にしてもあの狼男…。」
思い出す。自分を子供呼ばわりするのが気にくわなかったからもある。
しかし、宝について何か知っているのではないか?
あんな狼男は、この近くにはいなかった。となると、やはり宝目当てになる。じゃないと突然来る理由がない。
アイリは、荷物の中から地図を取り出す。鉱山の場所。周りに危険区域が多すぎる場所。
「…うーん。すこしは手に入るかなぁ?」
いやいやと、首を振る。調査のためにきたのであって、ちゃんと宝に関わる
人物を観察せねばならない。宝が欲しいとか、そういうのは

グゥゥ

音が鳴る。誰も聞いていないが、不思議と顔が赤くなる。
アイリは地図をしまい、少しベットに横になる。
暑さで倒れた人。狼男。茶髪男。倒れていた宿主。
それらを順々に思い浮かべ、身をおこす。

今は飯が優先だった。

15木野:2008/08/30(土) 11:16:09
「はぁ〜い、あたし玲っていうの。よろしくね〜」
大きなバスタオルで汗を拭きながら歌藤玲はレイドの食べている
ナポリタンにタバスコを入れて遊んでいる。
レイドはそれに気づかないのかガツガツと食べ続けている・・
「あいつめ・・・今度あったら口の中にタバスコ突っ込んでやる・・・」
「もうその話はいいだろ・・・
それで、君が宝の話を知っているということだが・・・」
ナインは宝自体には興味がなかった。しかし、宝の場所がわかっていながら
いまだ宝があるとすればそこには・・・・

「ホラ、この地図だよ〜。」
ピラリと小さなハンカチぐらいの地図を広げる。そこには山のような三角が複数と
大きな×印。
「ふぇ・・・なんだかあっはりと見ふかってしまったへぇ。」
レイドは唇を真っ赤にさせながらももごもごとしゃべる。
「?・・この×印の周りの小さな○はいったいなんなんだ?」
「さぁ〜?でもこの×印にお宝があるらしいわ〜」
ガタリ。 ナインが席を立ち上がり地図を掴み取る。
「明日の昼12時に出発するぞ。それまでに準備をしておけ。」
「おいおい、仕切るなよ。それにいまからいったっていいんじゃないか?」
セイスイがつっかかる。ナインはバッと銃を抜き、セイスイの眉間に押し当てた。
『俺が眠いから駄目だ。』
銃口でセイスイの額を弾き、ナインはそのまま宿へと出て行った
「・・・あの目はマジだな・・・・・・・・・すげぇ眠そうだった」

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アイリは下へと降りて宿屋の食堂へと入った。
が、あいかわらず宿屋の主人はソファーで気を失ったままで
他に食事を作ってくれるような人も見当たらない。
「セルフサービスってのもありよね。」
アイリは右手にフライパン。左手に包丁をにぎり、巨大な冷蔵庫の前にたったのであった。
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16羅刻:2008/09/02(火) 19:35:14
「作りすぎたけど・・まぁそこそこね」
アイリの目の前には数多くの料理が並べられていた。
ハンバーグにサラダに鍋に満杯のトマトスープ等々。
その臭いにつれられたのだろうか、宿屋に泊まっていた人達が宿屋の食堂に降りてくる。
「・・・お召し上がりなって行きますか?」
冷ややかな顔からは想像できそうにも無い宿泊客を笑顔で迎え入れる。
彼女は元々飲食店で働いていた事もあり料理はお手の物であった。
彼等のテーブルに手馴れた手つきで次々と料理を運んでいく。

・・・・売り上げは彼女の財布の中に消えるのだろう。

――――――――――――――――――――――
ナインは休むために宿へと入って行った。
入るとそこには宿主がソファーに横たわっている。
「呑気なものだな・・・」
苛立ち、眉間にシワを寄せながらカウンターに置いてある宿泊者名簿に眼を通した後、自分の部屋に向かおうとした時
「・・誰だこんな所に人形を置いたのは?」
そこには昼間、カウンターに置いてあったあの不気味な人形がナインの部屋の前に佇んでいる。
構えていた銃を下ろし隣の部屋の前までその人形を蹴飛ばす。
そしてふと宿泊者名簿の記述を思い出した。
隣の部屋は「アイリ」と言う名の女性が泊まっているらしい。
お世辞にもふかふかとは言えないベッドに倒れこみ、自分を監視していた者の事も忘れ思考を止めた。

「・・・痛い・・・」
人気の無い宿屋の廊下でその声は確かに聞こえた。
・・日はまだ沈んでないようだ。

17木野:2008/09/08(月) 01:51:23
■00:00 08月02日
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新之介はふと目が覚めた。
トイレに行きたくなったのもあったが、いまだに手持ちの地図以外の有力な
情報を得ていないのが気になっていた。
「どうすっかなぁ・・・この地図どおりかどうかもあやしいところだし・・」
地図を机の上におき、新之介はトイレを探しに部屋を出た。

「ん、君は・・・?」
あけた扉越しにレイドが顔をのぞかせる。
「なんだ、おまえもトイレか?」
ああそうだ。と、うなずくレイド。まさか男二人で連れションすることに
なるとは・・・
「まぁ、いいや。ちょっと聞きたいことがあるんだが、
「あぁ、僕も尋ねたいことが・・・

『トイレはどこにあるんだ?』

「・・・・こりゃあ困ったな。」
あいにくここは古びた大型宿屋。親切な案内も無くついでに廊下の明かりも
ついていない。
「仕方ない。二人で分担して探そう。見つけたら声を掛けることにしよう!」
部屋に置いてあった小さなランタンを持ち出し、レイドは廊下を走っていった。
「ありゃーそーとー限界近いみたいだな・・・っと。こっちもヤバくなりそうだ・・」
新之介もランタンを持ち出し、レイドと反対方向へと走っていった・・・

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トン   トン     トントントントン・・・・

扉の前で繰り返されるノックのような小さく扉を叩く音・・・
その不気味な音で目覚めたアイリは手近に合った椅子を抱え込み、
扉の前に立っていた。
(・・・こんな時間に誰かしら・・)
扉を叩く音は今もなお続いており、鍵のかかった扉のドアノブも時折ガチャガチャ
とまわされる。
(・・・・まさかお宝を狙う他の人が・・?)
音を立てないように静かに扉の前まで近づく。すると、小さな声がノックの
音にまぎれて聞こえてきた・・・

「痛い・・・イタイ・・・・」
                       ガチャリ。

扉の鍵が外れる音がし、扉は静かに開いていく・・・
---------------------------------------------------------------------

18ヨモギ茶:2008/09/08(月) 19:28:24
「いたい・・・・おネエちゃん・・・、お姉ちゃん。デショウ・・?」

廊下側からこじ開けられ。風におされるかのごとく部屋の中へと入っていく扉板
その最中に響く音とくれば、まるで悪魔が笛をふいているようだ
扉がゆっくりと壁にはりつき、さっきまでそれをガチャガチャやっていた張本人が入ってくる

アイリは紫の瞳が小さくなってしまう程目をみひらき、袖で隠れた両手で右の頬を押え、恨めしそうに自分を見上げる女の子をみた。
マゼンダ色のふわふわした髪。涙を流す黄緑色の透きとおった瞳。その点だけを見ることができれば、アイリなら、優しく接しようと思うだろが
その少女の体からは赤い糸がのび、頭上のクロスにつながっている・・しかも、そのクロスには誰も触っていないのだ
もう一つ言ってしまえば、少女の肌は真っ白でまるで・・・まるで死人だ。

・・・間違いないと、アイリは何処かで思っていた。
カウンターのある部屋で倒れていた宿主。埃にまみれたカウンターには。何かが置かれていた所のみ、綺麗な箇所があったのだ
そしてこの目の前の女の子、・・・いや、操り人形だったか。自分でも結構はたいたのだろうが、その髪と衣服には埃が残っていた

「・・・・ねえ・・お姉ちゃん、なんでしょう・・?」
「  。な、にが・・?・・あなたは、この宿屋の、宿主さんのお嬢さん・・?」

不用意に、刺激してはまずい・・・アイリはこちらに近寄ってくる女の子に、視線があうように座り、落ち着かせるように震えながらも優しく声をかけた
だが、その女の子本人にとっては逆効果であったようだ。

「ちがうヨ・・・・!!おねえチャンハ、オネエチャンハエゴヲ。オヘヤノ前にたってただけで、サッカボールノヨウニケッタクセニ!!」
「・・・!?ちが・・っ!!」

バキイ!!

誤解よ!お人形の言葉を否定しようとしたアイリは、飛んできた物をイスで辛うじて防いだ。
カッターナイフだろうか、バターナイフだろうか・・・鈍く光を放つ刃物が、5本くらいイスの背もたれに刺さっている

「エゴ・・・エゴ、だまされないもん。ゼッタイオネエチャンガエゴヲケッタンダ・・!!」

お人形・・・エゴ、は、いつの間にか右手があった場所にたくさんのナイフを生やし。
アイリにむけていた。ナインに先ほど蹴り飛ばされたせいだろう。ほっぺた部分には卵のようにヒビが入り、血のようなものが滲んでいた

だめだ・・・・・!!

アイリは、こちらにむかってこようとするお人形にイスをなげつけ。悲鳴をあげもがいている隙に部屋を飛び出した。

_________________________________

ドタバタ!バキ!ガシャア!!

「・・・・・・・・__うるさい・・・・・!!」

一方・・・・・エゴこと少女人形を蹴り飛ばし。アイリのいる部屋まで転がした男。
赤髪赤眼のガンマンナインは、自分が発端かもしれないとなりの騒ぎの音で目を覚まし。
とても不機嫌そうに舌打ちをした。

__________________________________

19腐れ飯:2008/09/09(火) 00:01:27


すでに消灯時間は過ぎているので、古びた宿の廊下はどこまでも暗く、行き止まり
の壁はどこなのか、闇に目がなれはじめても、よくわからなかった。

そしてランタンが壊れていたのは予想外だった。

「………」
もうそこらでしてしまうかと新之の頭に邪念が過ぎったが、そのまま看過した。
とりあえず、一階にあるというのが無難だろうと、階段を探す。手に持ったランタンは
手提げバッグのようにブンブンと音をたてて振り回されていた。
宝の地図 大きな×マーク そして狼男や異様な連中
どうやら思っていたよりも状況は複雑なのではないかと新之は気付いた。軽視しすぎて、
よく考えないのは、悪い癖だ。
大きく欠伸をする。なにせ深夜だ。月の光は雲に隠れていて、世界全体が、こんな
沈黙に覆われているのではないかとおもえた。

その矢先、ドカリと何かがあたる。

「やぁ!」
高い声が廊下に響き、そのまま新之は倒れ、相手も倒れる。
「…ってぇ!何してんだ!廊下走っちゃいけないと教わらなか…」
暗いといっても、ここまでキョリが近ければわかる。たしか狼男と口論していた
少女だ。
「…ごめんなさい。ちょっと…。」
「まぁ夜にテンション上がるのはわかるさ。な、夜更かしはよくないぞ。」
新之はアイリの頭をポンポンと叩くと、アイリはその手を払った。
「子供扱いしないで。いい?今私の部屋の前に人形が歩いてきて血を流していた
の、それでイタイイタイっていうのよ?取り乱すでしょ、普通。」
新之は、ポカンという顔をしたつもりだった。暗くて相手の反応もわからないので
確証はない。
「あいあい。そういう悪い夢ってみるよね、みたら寝れないよね。でも寝れない
時こそ寝るしかないのさ。寝ろ。」
アイリは新之の下腹を殴る。尿意が込み上げる。
「ばかやろおま!…何してくれとんじゃぁぁぁ」
漏らしはしないが悶絶をする新之の胸倉をつかんだアイリは、顔をグイッと引き寄せる。
新之は、アイリの目を見る。その顔は苦痛に満ち溢れていて、アイリの顔は、冷静と怒りと焦りが
地味に入り混じっていた。
「来なさい。見せてあげる。」
「……もしかして怖いのか?」
「………違う。」
「………あそう。」
「何よその変な声。」
新之は、頭の中で蛍光灯が就いたような感覚になった。
んんと咳き込み、のどをならす。
「んじゃ、協力しよう。」
「………何?借り?怖くないっていってるじゃない。」
「いやいや」
新之は、アイリが唇をとんがらせているのをみて、可愛いなと思った。
それはいわない。今はそれよりも重要なことだ。
「いやね、俺も『明日の遠足』が気になって眠れないのさ。」


========================

一回のロビーのすみに、掃除が半年くらいされてないのではないかというほどに、
異臭を放つトイレが見つかった。
「………。」
ココ以外にトイレがあったかもしれないが、明日の朝に出かけるので、時間に
限界があったし、尿意のほうは、すでに限界を超えていた。
「…トイレがあったぞー!!」
ロビーにその声は響き、こだまする。先程会った男は、今どの辺にいるのか、
検討もつかない。
「よし!伝えたぞ!」
レイドの中では伝わっていたので、問題にはならなかった。

異臭を放つトイレは、扉をあけたらさらに凄まじい存在となった。
レイドは、息をとめながらも、便器に向かう。窓があったので、開けると、
心地よい風が入ってきた。雲の流れがはやく。月の光は見えないことが多いが、
チラリチラリと、月が顔を出していた。
すこし臭いが和らいだので、とりあえずはやいとこようをたす。

「…イタイ」

ビクリとレイドは身をすくめる。出し切ったところで、横を向くと、暗いトイレ
のおくで、人形が血を流していた。
「………。」
レイドは、自分の排泄したものを、流して、水道で手を洗う。この水もキレイか
どうかわからなかったが、レイドはこの一連の行動をしている間もずっと人形を
みていたので、然程気にならなかった。
「…女の人探してるの。」
エゴが先に問いかけてきた。レイドは、すこし不安が消えた。するとハッハッハと笑い出した。
「なんだなんだ。迷子か?しかしここは男子トイレ。ここにはいない…。」
「女の人探してるの。」
エゴは機械のように、同じ発音同じ調子で、レイドを一点に見て話しかける。
レイドは、あまり得意ではないが考えてみる。今すぐ寝たい。しかし、エゴを
ほっとくわけにもいかなかった。それは、レイドのポリシーによるものだった。

レイドは、思いついたように手のひらをポンと叩く。

「よし、じゃぁ明日の朝。俺と洞窟にいってその人を探そう。」

20木野:2008/09/13(土) 21:16:36
「・・・・・。」
ムスっと黙ったままのエゴはレイドに抱きかかえられながらふてくされていた。
レイドの方はすっきりしたのかだいぶ冷静になってきていた。
(この子はいったい・・?それになんだろうこの糸みたいなものは・・)
レイドの目の前にフワフワと浮かぶ糸と木の板。触ろうとしたがエゴに
にらまれたのでほおって置くことにした。

(それにしてもさっきの人はどこへいったのだろうか。トイレの場所を叫んでからも
こっちへくる様子が無いし・・・まぁとりあえず部屋へもどるか。)

----------------------------------------------------------------------
有力な情報をつかんでいるならば、一日でも早く行動に移すはず。
そう読んでカマをかけてみたが見事にヒットしたみたいだ。
「・・・なんであなたが知ってるのかしら。確かに明日の昼12時に鉱山へと
出発するわ。」
「はは、俺も同じ情報を手に入れていてね。せっかくだから一緒にいかないかい?」
適当に話をあわせ、同行を狙う。何が出るかわからない鉱山内だ。人数は多いほうがいい。
「勝手にすれば?そんなことよりもそこの私の部屋の中をみてきてくれないかしら。」
「はいはい・・・」

---------------------------------------------------------------------
ドアが静かに開く。新之の部屋と同じで、アイリの部屋には小さな机とベッド。
そして1つの開かない窓があるだけだった。
「ど・・どう?なにかいた?」
ドア越しにアイリの声が聞こえる。その手はしっかりとドアノブを握っていていつでも
自分を閉じ込めて逃げ出せるように構えていた。
「別になにもいないが・・・」
念のためにベッドのしたなども調べたが宿主の手入れが行き届いてるのかねずみ一匹
いない。

ガタッ

突然ドアが閉まる。
「・・・・?」
新之はドアを開けた。

そこにはへたれこんでるアイリとそれに飛び掛っていく人形の姿があった。
--------------------------------------------------------------

21羅刻:2008/09/16(火) 23:06:15
――――どういうことだこれは?
新之がドアを開けた先に見たのは座り込んだ少女と・・それに飛び掛る人形の姿だった
「何してんだてめぇ!」
新之は咄嗟にエゴの前に立ちふさがるように動き、剣を抜き・・無い
剣の柄を握ろうとして空ぶる、どうやら自分の部屋に剣を置いてきた様だ。
何故置いて来たのか?・・・そうそう、トイレに行くからだった
「・・・ジャマするなァ!!」
「ぐおっ!?」
床に叩きつけられると同時に尿意が新之を襲う。このままでは色々な意味で不味い。
「私は何もしてない・・・証拠なんて何も無いでしょ・・?」
腰でも抜けたのだろうか、アイリは座り込んだ状態で後ずさりする。
エゴは倒れた新之の頭を踏みながらアイリに近付く。
「・・オネエチャンが部屋にハイルトキニジャマダッタカラケッタンデショ!!」
意味が分からない、エゴの手には銃器やら刃物がある。
その銃口がアイリに向けられた時――――

    パァンッ!!

何処からともなく乾いた銃声が響く――
エゴの軽い体はアイリの後方まで吹き飛ばされた。
「嬢ちゃん・・子どもが人形遊びする時間じゃねぇぜ?」
新之の傍らには褐色の体毛の長い鬣の獣人が拳銃を握っていた。
そして足元に倒れている新之の顔を覗き込む。
「・・昼間のオムライスの坊主か?」
「誰がオムライスだ・・」
新之は起き上がりグレイヴィッチを睨んだ。

――――――――――――――――――――――

・・銃声?・・・かなり近いな
発砲音で起きたナインは眠たそうな顔で銃を握っていた。

22ヨモギ茶:2008/09/27(土) 21:02:41
「で・・、一体何があったんだい?」

たてるかい?と座り込んだアイリに手を差し伸べながら、
グレイブッチは質問した。

アイリの後ろに倒れているのは、子供だけど間違いなくお人形だ

「わ・・わからないわよ・・!。部屋にお人形が泣きながら入ってきて・・
『お姉ちゃんがエゴを蹴ったんでしょ』って・・」

アイリは、最初拒んで自力で立とうとしたものの、足に力が入らず
結局はグレイブッチの手を借りた。立ち上がった後は、
その間々服や腕などにすがりながら、相手の背後にまわった
地面に落ちた、胸元から煙を出す少女の人形が怖いのだ

「・・ふうん・・」

グレイブッチはエゴに近づいてみようとした。だが、
後ろからアイリに抱きとめられた。
剣の方はというと、尿意の限界と先ほど起った出来事のせいで、
イライラが頂点に達しようとし・・・いや、達した

「〜あァもう・・・、さっきから訳がわかんねえや!何!こいつは部屋に
入る時邪魔になったから蹴ったんだろって!?犯人は現場に戻るっていうから
あんたが蹴っ飛ばしたにきまってr ぐんぎゃ!」

起き上がりながら怒鳴っている最中に、再びアイリの拳が下腹部を捉え
またしても新之の体は床にしずんだ。・・顔が真っ赤になっているのは
気のせいだとゆうことにさせていただこう(まて)

「ごら・・・、きのせいにしてんじゃねえよ・・」
「・・・・・。とにかく・・、私が自分の部屋に入る前は、お人形は
いなかったわ・・」

殴られた下腹部をおさえ、頭とひざを地面につく新之剣を放置し、
アイリはグレイブッチに訴える。

「そうか。・・・・む?」

グレイブッチは、苦笑いをしながら新之剣を見
そしてエゴの方へ顔をむけ――――

エゴは、影も形もなくなっていた・・・・・

――――――――――――――――――――――――――――――――――

コンコン。コン・・・

扉をたたく音が聞こえる・・・・

「・・・・ん・・・?」

コンコンコン・・・・

薄ぼんやりと覚醒し、レイドはベットから体を起こした。

ドアのノックの音は未だに続き、すすり泣く声も確かにきこえる
ほんの少し不気味に思いながらも、レイドは叩かれるドアのノブにてをかけ
ゆっくりと中へ開いてみた・・

「・・・おにいちゃん・・・」

扉の先には、さきほど抱きかかえた間々共に部屋に入ったはずの少女がいた
レイドは部屋の中へ顔を向けた。当然というのか、エゴはいなかった

「おかえり、何処へいってたの、・・!」

良く見ると、エゴの体には撃たれた跡があった。
エゴはけがをした所をおさえ、泣きながらレイドを見上げた

「痛いの・・お姉ちゃん見つけた・・痛い・・」
「・・何が、あったのかわからないけど、早く、手当てしなくちゃ・・」

レイドは、エゴをもう一度抱き抱え、ドアを閉めた

23kino:2008/10/16(木) 18:16:53
■11:00 08月02日
---------------------------------------------------------------------
「ふぁ・・・・あ。」
大きなあくびをしながらナインは1階へと降りた。既に他のメンバーも
食堂に揃っていたが誰もが眠そうにトーストをくわえている。
特にアイリは人形に狙われている恐怖感のためかコクリコクリとうなずきながら
コーヒーにミルクを入れている。 既に5個目なのだが彼女はまたもう一個ミルクを
取っている・・・
「んで、どうやってあの炭鉱にはいりこもうっていうんだい?」
ナインの隣にセイスイは座る。元気が有り余っているのか豪快に野菜を
挟み込んだサンドウィッチをほおばる。
「・・・さっき宿主に聞いてみたところ鉱山の東からトロッコ用の通路が
あるらしい。そこから鉱山の奥内部までいけるはずだ・・・ふぁ。」
そういいナインは自分のコーヒーに砂糖を9つ放り込み、一気にそれを飲み干した。

--------------------------------------------------------------------

24ヨモギ茶:2008/10/27(月) 17:57:26
「お姉ちゃん・・・・」
エゴは、レイドに背負われたリュックの隙間からじい・・・とアイリを睨んでいた
昨日お姉ちゃんに仕返しをしようとしたとき、パンダナの人とハイエナさんに
邪魔された。撃たれちゃった所・・このお兄ちゃんに手当をしてもらったけど・・

エゴの、ナインに蹴られたとこにはガーゼがはられ、撃たれた箇所には
包帯がまかれていた。レイドは、ちゃんとした治療をしたが、思いだすとまだ痛い気がする

「お姉ちゃん・・!」
「わ・・ちょっと・・!」

エゴはレイドの荷物から飛び出ようとした、それをレイドは必至で押さえる
――幸い、一人か二人振り返った物のすぐにレイド達から目を離し、
距離の為アイリにはエゴの声は聞こえなかった。

「おねえちゃ・・」
「落ち着いて、怪我しちゃってるんだから」
レイドは、汗をかきながらエゴをなだめた。飴をあげたら落ち着いてくれるかなと
ポケットの中を探してみる。飴の代わりにクッキーが出てきた。
レイドが、フクロにはいった真ん中にイチゴジャムがぬられたクッキーを渡すと
荷物の中から、クッキーをぽりぽりと食べる音と、すすり泣きが小さく聞こえる。

(この子、そのお姉ちゃんって人と何かあったのかな・・いつの間にかいなくなってるし、
帰ってきた時は怪我をしているし・・・。・・・まさかね・・。)

未だに、エゴがレイドの荷物に潜んでいるのは誰も気づいていない。
そして、今だにレイドは、その『お姉ちゃん』がナインの代わりにお人形に狙われている
アイリということは知らないのだった。

25腐れ飯:2008/11/05(水) 00:25:54

12:10 08月02日

人間の三大欲求の一つが睡眠欲というのは大いに納得できる。

「どうしたんだよ。徹夜明けの科学者みたいな顔してるぜ。」
鉱山に向かうため、村をでて、大きな平地に入った直後。
新之はヘラヘラと笑いながら、アイリの頭を二三度叩く。アイリは、
苛立ちを眉宇に漂わせた。
「徹夜明けは正解よ。おかげでくまができたわ。全くあなたのせいで」
「人形が怖いといってずっとそばにいた俺も、例外じゃない。」
新之の目にはくまがアイリと同じくらいできていた。新之は目をこすると、カバ
のような大口をあけてあくびをした。
「馬鹿面ね。」
「何を、少なくともお前よりは頑健だっつの。昨日の尿意も耐え抜いたからな。」
「サイテー。よくそういうこといえるわね。」
新之はライオンのような目つきでアイリを睨むが、アイリがそれ以上の目つき
で睨んできたので、明後日の方向を見たあと咳払いをした。
「どうやら鉱山の東にトロッコがあるらしい。そこから洞窟に入れるぞ。」
アイリは、小さくリスのように欠伸をすると、鼻息をもらし、横目で新之を見上げる。
「どっからそんな情報手にいれたのよ。」
「俺だ。」
後ろから異様に大きな声が聞こえる。アイリは目を丸くすると、後ろを思い切り振り向いた。
巨大な狼男 グレイヴッチが腕を組み、剛健な気風を漂わせていた。
アイリは口を金魚のようにパクパクさせていた。眠気はどこかへ飛んでいったようだ。
「どどど・・・どうして!」
「いやね。朝のうちに話がついたのよ。三人寄ればもんじゃ焼きっていうだろう。」
「違うもんたーじゅだ。」
アイリはドカンと地団駄を踏む。
「文殊の知恵よ!!何よそんな話!私が協力するというのはあなたと二人だから!」
「なんだすきなのか?」
「違う!団体行動はムリよ!二人ならまだしも!三人だなんて多すぎる。」
「何だ。お前の目的はそんな内密じゃなきゃいけないのか?」
アイリは言葉に詰まる。はたしてそうだろうか?
新之と組んだのは人形の件の成り行きであったが、それでもなんでもかんでも
簡単に言う事を聞く馬鹿さが使えると思ってのことだった。しかも同じく馬鹿
みたいな行動力と無茶で宝をもしかしたら見つけるかもしれないともふんだ。
そうすれば宝も手に入る。こいつの影に隠れて探検者の観察もできる。一石
二鳥だったのだが…。
「まさか、こんな三人もいたら…目立つし…宝だって、山分け…。」
新之はアイリの顔をニヤニヤと見ている。アイリはその視線に気付く。
「ま、いくか狼男さん。お宝みつけによ」
「しっかりと山分けするんだろうな。それが条件だぞ。」
「わぁってるって…なぁ?」

まさかこの男!!

妙な悪知恵は働くようだ。アイリの考えていたことを、新之は考えていたのだ。
なるほど、協力するなら心から協力しろということか。アイリは溜息をついて、
フフッと笑った。
「でも…どうなるかしらね。」
周りの奴等も、鋭い目をしている。一筋縄ではいかなさそうだ。
新之は腕を大きく回して、高笑いをしながら叫ぶ。
「さていくぞ!三本の歯は折れないというしな!」
「違うぞ三本の輪だ。」
アイリは、タタタと走って、新之、グレイヴッチに並ぶ。
「三本の矢よ。」

日は空の真上で輝いていた。

26kino:2008/11/07(金) 03:39:03
■16:23 08月02日

  響き渡る足音。そして転がっていった小石ははるか奈落の底にまで落ちていった。
「・・・とんでもない鉱山ね。」
アイリはなるべく道の真ん中に寄ろうと新之の影に隠れる。
「そんなにビビンなくても道幅は十分あるだろ?・・・にしても落ちたら
あがってこれなさそうな深さだな・・・」
「どうやらあちこちで地盤沈下が起きたみたいだな。幸い地図のルートには
支障はないようだが・・・」
ナインは店主にもらった地図を見ながら時折分かれるトロッコ用の通路の
行き先を指差していく。
(・・・よかった。今は眠ってるみたいだな。)
レイドは背中のリュックをあまり揺らさないようにゆっくりと歩いている。
「それにしてもこんな足場が不安定なところじゃあ、うっかりぶつかって誰かが
落ちるかもな。」
グレイは口をあけて笑い茶化したが、その目は笑ってはいなかった。
(やはり、あいつは信用ならないわ・・・・なんとかして分断させたいところだけれど・・)
「なぁ、もうちょっとはなれてくれないか?それともお前は俺を突き落とすつもりなのか?」
アイリの帽子を新之はぐしゃりと押し付ける。
「そういうつもりは全然ないわよ!そんなことよりも早く前に進みなさいよ!」

「・・・よし、ここから上へあがるぞ。」
ナインは切り立った崖の横の細い通路を歩いていく。それを見てアイリはまた
ため息をつくのだった。
-------------------------------------------------------------------

27Mark@26:2008/12/27(土) 17:37:56
薄暗い鉱山の中、入り口から響く走る足音。
それは道を進むナイン達に向かって着実に近づいて行き、不安定な道の途中辺りで少しずつ速度を緩めつつ、
「おにーさんたちっ!忘れ物ー!」
急停止した所で危うく道から外れそうになり、何とか体勢を整え事なきを得る。
崖を歩いていたメンバーが一斉に後ろを振り向くと、そこには食堂にいた踊り子が立っていた。
ほぼ全員が玲に注目する中、一人レイドは自分のリュックを見る。
「忘れ物ォ?」
セイスイは一瞬だけレイドを見るがすぐに玲に視線を移し、彼女が両手に持つ手提げ鞄を見る。
「店長さんがあなた達の事を心配しててね…ほら、救急箱!怪我した時に大変でしょ?」
そう言って玲は笑い、救急箱の中を開いて見せる。
包帯、消毒液、薬品、血清、薬草……小さめながらも一通りの物は揃っており、それを確認したナインは顎に手を当て玲を見る。
「これならある程度は大丈夫か……」

救急箱を受け取った後、ナイン達は玲に礼を言う。
それから再び細い道を目指そうとするが、
「……私も、一緒に来ていい?」玲の様子を見ていたアイリは、その一言に目を丸くした。

28kino:2009/01/08(木) 00:09:44
「あなた・・・・・宝に興味があるの?」
フラフラと歩いて崖から落っこちるんじゃない?という言葉を飲み込んでアイリはたずねた。
「・・・お宝じゃないけど・・・・」
珍しく静かになる。玲はこの鉱山にお宝以外の目的があるのか?
「いいんじゃないか?メンバーは多いほうが楽しいだろ。」
新之は気楽そうに言う。ナインはあいかわらず地図をみつめたまま
「・・・・勝手に崖から落ちても助けないからな・・・」
と、興味なさそうにつぶやいた。
「大丈夫!バランス感覚ならバッチしだから!」
そういいぴょんぴょんとはねる玲。バランス感覚はともかく度胸はありそうだ。

「まぁ、もうすぐ地図の目印の場所へたどりつく。何があるかわからないが気をつけていくぞ。」
ナインはそういい薄暗い洞窟の先へと進んでいった・・・・

29ヨモギ茶:2009/01/25(日) 12:39:55
――笑い声が、聞こえる。
「くくく・・くくくく・・」
暗闇の中・・不気味な笑い声が聞こえる

此処は、炭鉱の内部・・おそらく、一番奥だろうか。
それとも、洞窟の中間だろうか。薄暗く、視界が悪い。
ぽちょんという。雨もれ水の落ちる音が、洞窟の地面に落ちる音が響く
割れたランタンからもれる明かりも、此処では彷徨う人魂のよう。
ほんの気休めにもなりわしないだろう。・・・・・ランタン?

・・割れてはいるがまだ新しい、打ち捨てられ、木の枝と共に転がっている。
乾燥しきった、先が5つにわかれている・・反対側から、白い折られた骨が
つきだした枝―――違う。

これは枝ではない、干からびた。血と水分を全て吸いつくされた。
その上、肩からへし折られてしまった・・・

―――ミイラのようにされた人間の腕だ
ランタンをもつ者の他にも1、2・・・
合計すると、死体の数は8つ。どれもこれも完全に水分を奪われ、転がっている。
干からびている。・・・・嫌、ひとつだけ綺麗な、無傷の死体があった。
肌が青白く、閉じられた目の周りには眠りを諦めたような熊ができ、
両手両足を大の字に伸ばして横たわっていた。・・・笑い声が、聞こえた。

此処にあるのは、死体以外は、壊されたナイフ、壊されたランタン。
破られて中の荷物を散乱させた大きめのリュックのみのはず・・
何処からか鼠がはい出してきて、リュックからはみ出した食糧を口にしようと
青白い死体の手元によってきた

―きいぃっ!!
胴をしめあげられた鼠の悲鳴。頭をかみつぶされる音が響き静かになった

頭のつぶされた。ミイラになった鼠が青白い肌の死体の横におちる。
死体は上半身を起こしている。死体は口元をゆがめている。端がつりあがり
赤く汚れた牙がのぞいている。再び笑い声がその口から洩れる
死体では、なかったのだ。吸血鬼は、つぶやいた

「今度も、7人かかった・・ラッキーセブンだ・・・。」

そういって死体の一つを頭をつかんで持ち上げる。苦悶の表情の間々かたまって
首筋には穴があいている。体は干からびて朽ち果てている。それなのに
身につけた衣類の類。7つの死体の纏った者、もってきた物。どれもこれも
真新しい。ナイフだって折れているが、錆びついてもいない
皆、皆此処に来てすぐに殺されたのだ。この、青白い顔の死体に

この、ぼろぼろの作業服をきた。何処かの国の旗をマント代わりに羽織った
吸血鬼に・・・――化け物に。化け物は、また、人の気配を感じた。
足音をきいた。1、2、3・・今この辺りに転がっている。
血を吸われた犠牲者と同じ数。今、洞窟に入りつつある。ナイン達と同じ7人

「くくくっ・・!また、ラッキー7・・。僕は今回、ついているらしい・・」

いたずら小僧のように笑う吸血鬼は、掴んでいた死体を脇にほおりなげ、
乾いた音をたてバラバラになるのを聞き届けた後。
「侵入者を排除するため」「獲物を捕獲するため」にゆっくりと行動を
開始した・・・・・・。

30くされめし:2009/04/25(土) 19:20:18

■18:23 08月02日

「随分と歩いたな」
ナインはあたりを見渡す。外の光はもう一切届かず、手持ちのランタンの薄い光でしか周
りを把握できなかった、
「ここが…×印のところなの?」
アイリは神妙な口調でたずねる。ナインは何も言わず、ただ地図に目線を落とす。アイリ
の小さな声も、未だ響いている。
「…ここでいいはずだ。しかし…」
「何もねぇじゃんよ」
ナインの言葉に加えるように、舌打ちをついたあと、セイスイが言う。
見渡すと、随分と拓けたロビーのような場所だった。空気の通る音がオオンオオンと唸る
ように響き、少し肌寒い。
「…いや、もうちょっと真ん中に寄ってみよう。…でもこの周りの○はいったい…」
「俺は、宝さえ手に入ればどうでもいい。なぁ」
「なぁじゃないわよ。同意を求めないでオオカミ男」
「オオカミじゃない。ハイエナだ俺は」
 七人の足音は、エコーのように響く。地面も先ほどのような足場の悪いものではなく、
平らで、コンクリートのような質感だった。
「おっ!なにやら見えるぞ!あれが宝じゃないか!?」
「うぉっ。声でけぇよお前…そうか?何も見えないが…お前目良すぎじゃないか?」
 新之は、頭のバンドに手をかざす。すると、額の部分にある宝石のような石が真っ直ぐ
と光を放つ。その先には何やら木箱のような存在が見えた。アイリがキッと新之を睨む。
「あんた!何でそんなのいままで隠してたの!?」
「るせぇ。ここぞというときに使おうと思ってたんだよ」
「お宝♪お宝♪」
玲はスキップしながら先頭に立つ。そして、ナインたちもそれに追いつき、木箱の前に立
つ。ナインは屈み、よく木箱を照らす。
「ずいぶん古びているな……まさに宝箱というかんじだな」
「お宝♪お宝♪」
「まさかこんな簡単に見つかるだなんて思わなかったな」
「はっはっは!さっさと持ち帰ろうじゃないか!」
グレイヴッチとレイドの大きな声が響く。しかし、アイリや新之、セイスイやナインは何
やら腑におちない顔だった。
「あんた、どう思う?」アイリは新之の方を見ずにただ聞く。
「さぁ。しっかしこれでハッピーエンドとは…。ゲームだったらクレームものだな」
「…おい。見てみろこれ」
 ナインはセイスイ アイリ 新之の三人を呼ぶ。宝箱とは正反対のほうをむいて屈んでいる。
「なんだ。お宝落ちてたか?」セイスイは面倒そうに言う。
「違う。これだ、足跡。俺たちのものじゃない…この靴の形は」
「靴フェチかお前は」
「違う!つまり、俺たち以外に先にココに立ち入った者がいるということだ!」
「は?」
アイリは素っ頓狂な声をあげる。ならば、なぜ宝箱はしまったままなのか。
「妙だとは思ってたけどな、ここまで難なくこれたってのが。ただ落ちそうで危ないだけ
なんて、がんばりゃだれでもこれる」
セイスイはニヤリと笑いながら、楽しそうな面持ちでそういった。周りを見渡す。確かに
今、ナイン一行以外はだれもいない。
「つまりだ…俺たち以前にここに立ち入って、そして今ここにいない。あからさまな宝箱。
速すぎるエンディング…つまり」
新之がそういった時、アイリは振り返る。薄い光のなか、レイドたちが、宝箱に手をかけ
るのがみえた。その顔は宝しか見えていない。アイリの額から冷や汗が流れる。背筋を舐
められたような悪寒と寒気が走った。

「罠!!!」

31くされめし:2009/04/25(土) 19:21:27
宝箱は開けられる。すると突然周りが明るくなる。四角い空間。四隅に穴が四つ。
「こいつぁ…!!」
「なんだなんだ?何も入ってないぞ…」
レイドとグレイヴッチは宝箱から顔をあげる。それと同時に、突然突風が吹いた。
「な…なんじゃこりゃ!風!?」
「風…じゃない!これ!…『吸い寄せられてる!!』」
四隅の穴は、掃除機のようにアイリたちそれぞれ吸い寄せる。それぞれは立っているのも
やっとのようで、ただ耐えていた。
「だ…だめだ!吸い込まれる!」
「おいおい冗談じゃねぇぞ!俺は遺書かいてない!!」
セイスイはそう叫ぶと、よろめいてナインにぶつかる。そしてそのまま、ナインとセイス
イは一つの穴に吸い寄せられてしまった。
「おい!誰か吸い込まれたぞ!」
「はっはっはっは!すごい風だ!しかし俺はこんな風にも決して負けは…」
「馬鹿かお前…うぉぁ!」
次に、レイドとグレイヴッチが吸い寄せられた。先ほどとはまた別の穴である。二人はそ
れぞれ違う穴に落ちた。
「っちょ!これ…やばいよ!どうしよう!ねぇ!」
「馬鹿取り乱すな!とりあえず、死ぬことはないと思う。地図を見る限り、もっと奥があるはあずだ!」
「そんなこといっても…」
「オネエチャン…」
 アイリは、バッと足元を見る。すると、フトモモのあたりにエゴがガッチリしがみついていた。
「いやぁ!ちょ!取って取って取って!」
「馬鹿!おすんじゃな…あぁぁぁ!!」
 新之、エゴ、アイリの三人は、先ほどの面々とはまた別の穴に落ちていった。

やがて風がやむ。宝箱はゆっくりと閉まり、また空間は暗転した。

32mark@ルビーの鉱石:2009/07/31(金) 15:26:43

「だ…駄目だ!吸い込まれる!」
「オイオイ冗談じゃねぇぞ!俺は遺書書いてない!!」
そう言った拍子にセイスイがよろめき、何とか持ち応えていたナインにぶつかる。
ナインはそれでバランスを崩し、セイスイもろとも穴へ引きずられて行く。

「ク…そッ!」
やむ終えず、ナインはセイスイを勢いよく振り払う。
「オイ…!?テメェ、仲間を見殺しに…ッ!!」
落ち行く仲間の悪態に返すほどの余裕は彼になかった。
体が穴に沈む間に床の出っ張りを両手で掴み、風が止むまでしがみ付く事だけをとにかく考えていたのである。
ひときわ強い風がナインを襲う。床から手を剥がすよう働きかけ、穴のはるか下に広がる深淵に迎えようとする。
風の勢いに危うく手を離しそうになるも、それでもナインは懸命に耐えた。
「うォ”ォオォォォォ………!!」
―負けたのは風の方だった。洞窟の明かりが消えると共に、激しく暴れていた風も止み、
ナイン達一行が訪れたのと変わらぬ静寂を取り戻した。
「…………止んだ?」
何秒経とうとも、暗闇の空間はそのままだった。
が、ナインが安全を確かめ、穴からよじ登ろうとした頃、暗闇からの小さな声が彼の耳に入った。
「…………」
片方は知らぬ男の声だったが、もう片方は聞き覚えのある物だった。
どうやらこちらには気付いていないらしい。ナインは音を立てぬよう、穴から身を上げようとする。
だが、両手に踏まれるような痛みを感じたのも同時だった。
「――――――-――!!!」
暴風に耐え切った両手はその衝撃で容易く剥がれ、両手と共にナインの体は深淵に落ちた。
それを穴の上から赤い目が見下ろし、やがて去った。

--------------------------------

グレイヴッチはあおむけのまま、遥か遠くの……自然の力で生まれた天井をぼんやりと見つめていた。
顔だけを動かし、周囲の光景を見渡してみる。
ごつごつした岩壁から目を落せば、壊されたランタンの欠片が光沢を放ち、欠片から少し視線をずらすと、目立つ赤髪の男が横たわっていた。
しかし、それ以上に彼の気を引いたのは、辺りに散らばった6つのリュックと、すぐそばに倒れこんだ無数の「木の枝」だった。
「コイツは……」
ハイエナの鼻が無意識に「木の枝」の臭いを嗅ぎ取り、ぼやけていた意識が急激に冴え渡るのをグレイは感じた。
捌かれてからまだ二日と経たぬ肉の臭い。脇役に油と弾薬の違いはあれど、過去に戦場で散々吸った空気とほぼ変わらぬ物だった。
上体を起こす為に片手を地面に当てると、土ではなく布の感触が手に伝わる。
それが7つ目のリュックだと理解するかしないかの間に、傭兵は無意識に、自らの倒れていた地面を見やった。

7つ目のリュックの持ち主は、物言わず濁った瞳でハイエナを見る。
彼と目を合わせたと同時にバリーに降りかかった、酷い吐き気と後悔もまた、戦場で味わった記憶とそう違わぬ物だった。

33mark@灰の色は赤:2010/01/12(火) 17:25:38
落ち着きを取り戻したグレイがまず行った事は、自分と仲間の状態を確かめる事だった。
皮肉にも探検家たちの死体がクッションとなったためか、グレイ自身は軽い打撲程度で済んだ。
レイドの方は……頭を打ったのか気絶していた。命に別状はないようだが、眠っているのだろうか。
いい夢でも見ているかのように時々薄笑いを浮かべるのだ。
グレイはとりあえず仲間の事は後回しに、次に自分の荷物の整理、銃の点検、
探検家達のリュックからも、使えそうな物は拝借した。
彼らのランタンの中には未だ使える物も残っており、少し直せば無事に灯りを点け、辺りを照らした。
そうやって武器はないかとリュックの中を漁っていた途中、その奥で布に隠れ、輝く何かに気付いた。
「―……?」
リュックから取り出してみると、包みの柔らかい感触がレイドの手に伝わる。
包みの奥で輝く硬い物は美しいルビーの原石で、ランタンの光を反射しゆるやかに輝いていた。
恐らくこれを持ち帰る途中で魔物に襲われ全滅したのだろうか。
あるいはこれは宝の一部に過ぎず、更なる宝を求めた結果このような屍になったのか。
―一歩間違えれば、自分も彼等と同じ道を辿ったかもしれない。
かなりの大きさのルビー。だが、グレイはリュックの中にそれを戻す。
代わりに、ルビーの傍らにある巻紙を取った。

グレイの荷物整理も一通り終わり、最後に気絶したレイドを起こす事にした。
しかし、立ち上がろうと地面に手を付いたとき、
「………?」
小さな土の振動が掌に伝わる。
続けて洞窟の奥から振動に合わせ音が鳴る。
振動が増すに連れ音も勢いを増す。
グレイは〝何か〟が近づいていると察し、拳銃を構えながらレイドの傍に駆け寄る。
「起き……!」
言い掛けて目を見開く。蛇のような太い触手がレイドの体に絡まっていた。

背後で、死体がひきずられる音を聞いた。

34mark@灰の色は赤:2010/01/12(火) 17:26:43
刹那、触手に捕らわれたレイドが一気に吹き飛ぶ。
―否、引き寄せられのだ。洞窟の奥から迫る化物によって……!
「クソッ!!」
咄嗟に触手の根元めがけて弾丸を放つ。悲鳴と共に触手がちぎれ、捕まっていたレイドを吹き飛ばす。
グレイは地面に打ち付けられる相棒に構う暇もなく、触手の奥に輝く紅い目を狙い、更に弾丸を撃ち続ける。
紅い目の主はひるむこそすれど倒れる事はない。
「化物か…噂にゃ聞いてたが」
振動と足音が最大になる。
暗がりに慣れたグレイの目には、ルビーのような紅い目をぎらつかせ、触手で捕らえた死体を口に入れる怪物の姿が映った。
「オイ、コイツは一体…!」
横から気絶していたはずのレイドの声が響く。どうやら先程の衝撃で目を覚ましたらしい。
「話は後だッ、今すぐ武器を取れ!!」
その間に怪物―地中イカはグレイめがけ太い触手を投げつけて来た。
グレイは太い触手を横に飛び避け、懐の手榴弾のピンを抜くと触手を操るイカめがけ投げる。
激しい爆発はイカの巨体を大きくのけぞらせ、口から醜悪な悲鳴を聞かせた。
「体が硬ェなら―」
口の中を狙うためにグレイはもう一発手榴弾を取り出す。
しかし、それを捉えた怪物が触手をグレイの片足に巻き付け、手前へ一気に引き寄せた……!
「ぐ……おッ!」
グレイはバランスを崩し手榴弾を離してしまう。
そのまま高速で引き摺られながら、グレイは地面に転がる手榴弾を通り過ぎ、炎の剣を手に駆け寄るレイドの姿を見た。
「今助けるぞォォオォォ!!!」
レイドは炎を帯びた剣を振りかぶり、怪物めがけて勢いよく走る。
手榴弾のピンを抜かなかったことを幸いに思った。武器を取ろうとするグレイの目前には既に怪物の口が迫っている。
そのまま口に放り込まれる時間と比べ、拳銃を手に取るにはあまりにも遅すぎたのだ。
無意識か、本能か、グレイは叫ぶ。
「早く!!」
「はああぁぁぁあぁあぁぁぁ――――――ッッ!!!!」

グレイの体が地中イカの口に入ったと同時に、レイドの放つ炎の斬激は紅い瞳に一閃を入れる。
巨大な怪物は洞窟中に鮮血を撒き散らすと、切り口から火を上げたまま倒れ伏した。

35mark@灰の色は赤:2010/01/12(火) 17:29:18
「大丈夫かッ!!」
剣を鞘に収めた後、レイドは動かぬイカの口を覗き込む。
その中では、背中にドロを付け、涎に汚れてはいるが……、ハイエナの男が生きたままの姿でそこにいた。
「大丈夫なワケないだろ?散々動いたお蔭で腹も減ったぜ、へへ」
「すまない…俺が早く起きてさえいれば……」
「いいって」
レイドは口の中に片手を伸ばした。口の中を出ようとするグレイを手伝う為だ。
「ありがとよ。―そう言えば、まだお前の名前を聞いてなかったな」
グレイは口を吊り上げると、片手でレイドの物を掴む。
「〝レイド〟だ。ほら、引くぞ」
腕を引かれながら歯を越える。レイドは口から脱出できたグレイをほっとしながら見る。
「そういう君の名前は?」
「バリー・ド・グレイヴッチ。軍人だ」
怪物の触手を燃やす炎は、光を受けたルビーのように輝いていた。
「…そうか、バリーって言うのか!」


あの場所をなんとか抜けた二人は、ランタンを照らしながら小道を歩いていた。
しばらくは地中イカのような怪物に会う事もなく、更に食糧として食べてみたイカが以外に美味だった事と、
もう一つ―リュックの中にルビーと共にあった地図をとコンパス。
それをグレイが手に入れたおかげで、ここまでの道のりは順調だった。
「本当、地図なんてよく見つけたな。普通だったらルビーに目が行っちまうよ」
「こんな状況じゃルビーより地図の方が貴重だぜ。多分アイツらの仲間が書いたンだろうな」
荒削りながらよく書き込まれた地図だった。恐らく自分達の足で確かめながら書いて行ったのだろう。
そんな調子で立ち話しながら進んで行くと、2つに枝分かれした道に差し掛かる。
先の道はやはり闇に包まれ見えない。
「…バリー、その地図だとどうなんだ?」
そう聞かれ、グレイは地図を流し見片方の道を指差す。
「そうだな。地図だとこっちの方に出口への、」

唐突に巨大な鳴き声がグレイの声を遮る。
音の方向は彼が指した方とは反対の道だった。
「……!」
鳴き声のエコーがいつまでも洞窟に響く。
二人は互いに顔を見合わせ、
「……どうする」

36mark@火花、閃光、困惑:2010/01/12(火) 17:39:56
かわいい顔のおねえちゃん。
右腕なんか出して、どうしたの?

落ち行くアイリと剣。重力に任せ落ちる先には無限の闇が待ち受けている。
「くそッ……!」
アイリは思わず唇を噛み締め、素早く腕輪の付いた片手を上げる。
その勢いで腕輪に付いたヒモを引っ張ると、何本ものワイヤーが放たれ、遠ざかる天井の穴へ直線に駆けた。
「行けッ!!」
重力が天井から遠ざける中、ワイヤーは重力に逆らい天井の穴に迫ってゆく。
その最中、アイリにしがみついた人形もまた腕を上げ、ワイヤー先のフックが穴にかかる直前に
「させない」

きれいな手。ブーツの中の足もきれいなんだろうな。
そんな足で私を蹴ったのね。ああにくたらしい。

人形の上げた手が突如変形し、黒光りするマシンガンとなる。
子供の体に似合わぬそれは火を噴き、骨を粉砕するには十分すぎる程の弾丸の雨をアイリの腕輪めがけて放った。
「ひゃっ……!」
いち早く気付いたアイリは反射的に腕を戻す。狙いの外れた弾丸は洞窟の一部に穴を空けただけだが、
大きく軌道がぶれ、狙いを外したワイヤーは天井に届く事無く落ちてしまった。
しかし、もはや米粒ほどに縮小した穴を見上げる余裕などアイリにはなかった。
笑みを浮かべた人形が、マシンガンの銃口をアイリの目前に向けたのである。

かわいいおねえちゃん。エゴをけったんだから仕返ししなきゃ。
ナイフなんて出しちゃって。でもマシンガンにかてるかな?

ふるえる手でアイリがナイフを突き出す直前、エゴはマシンガンに発射の信号を送る。
おびえた顔。その顔がいちばんかわいいよ。

「目ぇェ、」

37mark@火花、閃光、困惑:2010/01/12(火) 17:41:38
「  閉  じ ろ ぉ お お おぉおぉぉおおぉおオォォオォォォォォォオッッい!!!」

信号はその叫びで遮られた。
「!!!!」
その姿を見たアイリは、言われるまま咄嗟に目を閉じる。
〝もう一人いる〟と悟ったエゴは邪魔された事で不機嫌そうに振り向く。
刹那、洞窟の底を照らすほどの閃光が目に飛び込んだ。
「アッ………!!!」
剣のヘアバンドから放たれた光が、底に広がる泉に反射する。
2方向からの光にエゴの視神経は耐え切れず、思わずマシンガンで目を覆ってしまう。
そのせいで、エゴは光の奥から迫る剣の拳を避ける事ができなかった。



3人分の水しぶきの音が、無音の洞窟にどこまでも響いた。



どれ位経ったか。
アイリは荒い息を繰り返しながら泉から上がった。
「剣、は……?」
返事がない。どうしようもない不安に駆られ、アイリは無意識に泉の奥を見た。
しばらくの間、聞こえるのは鍾乳洞からの雫の音と、彼女の高ぶった心音のみ。
―そして、水面から顔を出したのは
「剣……!!」
アイリは剣の元に向かおうとしたが、彼の持つ物を見て足を止めた。
彼の手には恐ろしい形相をした人形が握られていたのだ。
「よう。…拾ってきた」

38mark@火花、閃光、困惑:2010/01/12(火) 17:43:01
「オネエチャン……ヒドイ……」
澄んだ瞳は閉じていたが、それでも痛いほどの憎悪がアイリに向けられる。
「…って何でその子と一緒なのよ!怖いって!!」
「まあ、ちょっと聞きたくてな。とりあえず質問n」
「エゴヲケッタノニ、ヤットミツケタノニ……」
「お前は人の話を聞けぇぇぇぇぇ!!」
「ビクッ」
一旦黙るエゴ。剣は話を再開させた。
「そりゃ小さい内は何やっても済むけどな?ストーカーとかマシンガンとかやり出したらもう手遅れなんだよ!」
「ちょっとマシンガンはやる物じゃn」
「微妙なお年頃でそれがカッコイイと思ってるなら止めないよ?
 でもそんな奴は大抵デッカくなってから古傷に苦しむ!悶える!
 お前は30になっても生首ぶら下げた奴になりたいか?違うだろぉぉぉぉぉ!!!」
「ア、」
ワケの分からないまま怒られている。そう認識したのかエゴの口から嗚咽が漏れ出す。
「……ナンデオコルノ!カッコヨクナンテオモッテナイモン、シカエシシタイダケダモン!!
 ソンナエゴノキモシラナイデ!ニゲマワルオネエチャンガワルイノヨウ!!!」
「仕返しか…そうか」
剣はアイリを指差しながら、ぐいとエゴに顔を近づけ、
「だったらアイツはここにいる。ブン殴れ、それで十分だ」
「ちょっ、アンタこそ人の話……!」
「ただし殴るのは!コイツの!アイリの話をよーく聞いてからだ!!」
「ハナシ……」
エゴはようやく視力の戻った目を上下させた後、アイリと目を合わせた。
アイリの目には未だとまどいが見える。それでも、以前ほどの怯えは感じられなかった。
「……」
視線を一斉に受けたアイリは、一瞬バツが悪そうに目を反らすが、すぐに戻し、口を開いた。
「そりぁ怖いわ……よく分からないまま追いかけられたら。
 分かるはずもない。―だってあなたを蹴ったりなんて、してないから」
「…………エ、」
エゴの表情が固まる。
「……ホントウ?ケッテナイノ?」
「そう、蹴ってない。
 確かに同じ宿にいたけど、その時は料理してて……ドアを通ったらあなたが倒れてたの」
言い終えると、アイリはエゴの反応を待つ。
エゴはしばらく呆気に取られた表情をしていたが、ふいに我に帰ったと思えば目を潤ませ、


 じ    わ ぁ


泉中に少女の泣き声が響き渡った。

39mark@火花、閃光、困惑:2010/01/12(火) 17:45:08
「―でさぁ。どうするんだ?コイツ」
謝りながら泣き喚くエゴをあやすのもあれはあれで激しい戦いだったと思う。
エゴは泣き付かれて眠ってくれたが、お陰で剣とアイリは大きな疲れと眠気に見舞われた。
二人は泉の傍で、半ば疲労状態になりつつ今後の事を話していた。
「置いて行くワケにはいかないでしょう……誤解も解けたし(まだ怖いけど)、
 上手く使えばこの洞窟を抜けられると思う」
「そーだなー……俺たち仲間とはぐれたんだった……」
上手く仲間と合流できたとしても、ここは洞窟の地下深く。
宝は見つかるのか。それ以前に出口を見つける事ができるかどうか、望みは薄かった。
…それに、あの時の宝箱のようにまた罠が張ってあるかもしれない。
そして今二人に襲い来る脅威は死線をくぐり、安心感から湧き上がる眠気だった。
眠気が判断力を奪う。
「ちょッ……あんた目がトロンってなってる」
「お前こそめっちゃ変な顔してるぞ。俺?なぁに眠い時だったら授業中のごとく素早く寝る。今は眠くない」
「目ぇすっごい細いわよ」
恐怖の連続で青ざめていたアイリの顔には、いつに間にか年相応の笑みが浮かんでいた。
「剣……――さっきは、その…ありがとう」
「いいってモンよ。俺のしたいことをしただけだ」

洞窟に再び静寂が戻る。
眠る間際、アイリはエゴを蹴った犯人をぼんやりと考え
剣はナインと組んだ時の事を思い返していた。

40kino:2010/01/14(木) 20:43:56
「・・・12時だ。」
「・・・・・えっと、これで20日目の「×」だっけ?」
ぼろぼろとなった地図に新之が「×」を書き入れる。それに対して長針が壊れた時計を日光に当てて
確認していたアイリはうなずきで答えた。

―――もう20日が経過した。
短針が壊れた時計で日数を記すのは
「12:00 8/31」に駅に最後の列車がやってくるからなのだが・・・
そもそも本当にこの廃坑から出られるのだろうか?
 時折はるか高くから光が差し込む箇所があれども、地盤がだいぶ荒削りされたのか
登ることもできず、ずっとさまよい歩いてきた。
「オネーチャン。ツケオワッタヨ!」
エゴ。そう自ら名乗った彼女は地面につけた大きな「×」印を自慢げにアイリに見せる。
この「×」印は新之が同じ場所に来た時に気付くため、そして他のばらばらになった仲間と合流するために。
といっていたが仲間が気付くどころか自分たちですら2度目の「×」にたどり着いていない。
・・・そうこの廃坑はとても広く。そして暗い。
唯一救いなのは様々な雑草や小動物が自生し、湧水も見つかったので飢えて死ぬことはないことぐらいか。
「・・・あいつらも無事かな・・・」
----------------------------------------------------
「なぁーなぁーその砂糖くれよー。あの踊子の持ってきたやつほとんど香辛料であきたよー」
「だめだ。お前にやる糖分なんて一粒も無い!そこらの雑草でも喰っていろ。」
ナインに甘味をねだるセイスイ。その一方でのんきに謎の生物にタバスコをかけている玲。
こちらは玲の持ってきた食料でだいぶ安定はしていたがこの廃坑から出られないのは
同じらしい。
「あーもーあったまきた!おいっ!砂糖くれないといたずらするぞ〜!」
「! 何をするバカ貴様!」
ナインに向かって水筒に組んだ水のふたをとり、振りかけようとするセイスイ。
「砂糖水もおいしそうですねー」
玲はそれを見て笑っている。賑やかな一行であった・・
----------------------------------------------------
「どうだ!?こっちの方が大きいぞ!」
「まだまだだなぁ・・・俺のとってきた方がうまそうだ!」
巨大な毛の生えた物体を自慢げにかかげるレイドに
ぬるぬるとした塊をフォークに突き刺すグレイ。
すっかりサバイバル生活に適応している二人は
廃坑の生物に対してグルメになってきたようだっだ・・・

41mark@食前:2010/01/22(金) 17:31:40

■PM:6:30

巨大なヘビの死体にもたれながら、倒した獲物の肉を裂いた。
パキッと小気味よい音と共に肉汁がはじける。
剣とエゴはそれをほおばりながら、苦虫を噛んだような表情のアイリを見た。
「食わないのか?」
「……ごめん、生理的に無理」

42mark@食中:2010/01/22(金) 17:32:10
■PM:7:00

削られた岩盤の上から光が覗く。暗闇に浮く月と星の光だ。
月光はその下に散らばる巨大なモグラを照らす。
その中心ではグレイとレイドが、モグラから頂いた肉をむさぼっていた。

「それで……平和な所さ。緑も綺麗だし、仲間もいる」
レイドの故郷についての話はグレイヴッチを何度も驚かせた。
自分の国にも魔法はある。しかしレイドの故郷のように神話のバーゲンセールでもない。
「そうかい。オレも…オマエの所程じゃあないが、ファンタジーな話があってな……」
すかさずレイドは反応する。
「どんな?」
「なに、こう言う洞窟のどこかに特別なネズミがいてな。月の光を浴びると金色に輝くんだ」
グレイヴッチは続ける。
「そしてそいつを死人に食わせると生き返る。時が戻ったみたいにな。
 そうしてゾンビに食わせると、ソイツは死ぬ前の姿に戻っちまうんだと」
「凄いネズミだな!本当にこの洞窟に?」
「あるワケないだろ。軍人どもの作り話さ」
「……そうか」
レイドは残念そうに月を見上げる。
きらめく月は美しく輝いていた。後一週間経てば満月だろう。

43mark@食後:2010/01/22(金) 17:32:45
■PM:7:30

「ぐはっ!!」
セイスイは地面のくぼみに足を引っ掛け転ぶ。
痛みを抑えて足元を見ると、巨大な×印が刻んであり、その向こうからナインと玲が歩いてきた。
「オマエは何でも先走りすぎだ……」
セイスイは立ち上がって悪態を付く。
「知るか。風の子と呼べ」
「あら?この〝×〟は一体……」
地面を大きくえぐるように刻まれた〝×〟。 回りを見れば、いつのまにか雑草があちこちに生えていた。
「恐らく、仲間の誰かが書いた物だろう」
「だったらこの×に向かって進めば……」
「―いつか仲間に会える。保証はないがな」
巨大な×印を見下ろしながらナインは呟く。その端で、復活したセイスイは再び歩き出し、
「だったら急ごうぜ?先に会ったが勝ちだしなッ!」
「だから先走るな……!!」
唯一の手がかりを見つけ走り出す二人。ふいに、その先の道に小石が落ちる。
玲は小石を見届けると、二人を追った。

44KINO:2010/01/26(火) 19:26:11
■8/21 ??:00

「・・・だいぶやつれてるみたいだけど大丈夫か?」
剣はうなだれるアイリを見て言う。
「・・・・大丈夫・・とはいいがたいわね。」
無理もない。ここずっとほそぼそと携帯食料で過ごしてきたからだ。
だが、いぜんとして野生の生物の肉を口にすることを拒むのだった。
「・・・ダイジョーブ?タベナイノ?」
「・・ええ、それよりもはやく先にすすみましょう。」
エゴの口周りにこびりついた血の跡を拭き、アイリは立ち上がった。

------------------------------------------------------------------------------
「まだおいつけそうにないな・・・仕方ないか。」
ナインはやっとみつけた「×」のしるしを「〇」で囲み、
そして地図にも同じようにしるしをつける。
「その地図役に立つのか?上へいったり下へいったりで頭こんがらがってきたぞ?」
セイスイがめんどくさそうに岩の上で足をブラブラとさせている。
「入り組んではいるが、確かにこの地図の通りの道筋どおりだからな。
・・ただ、相当広く、深いみたいだがな・・・。
なんとかしてほかのやつらと合流しなければな・・」
印を探し始めてからだいぶ進行が遅れてしまっている。
何よりも今の時間が分からないことが二人を不安にさせる。

「だいぶすずしくなってきましたね〜」
ふと、玲が廃坑の天井の穴を見上げてつぶやいたのだった。
------------------------------------------------------------------
「・・なぁ、いいことおもいついたんだが。」
「なんだ?」
「まっすぐに新しい穴を掘っていけば外に出れるんじゃね?」
「おお!それはいいな!」

廃坑の珍獣食べ歩きも飽きてきた二人はそこらでみつけた古びたつるはしで
壁を掘りだしたのだった・・・
-------------------------------------------------------------

45mark@蛇:2010/01/29(金) 13:45:33




かつての探検家達と思われる屍を通り過ぎてからと言うもの、怪物を見る回数が増えた気がする。
どうやら怪物の巣が点在する場所に入ったらしい。―厄介な事だ。
「―ほら!また来たぞ……!」
そうアイリが考える間にも仲間の剣が指を指した。その先―遠くから地面を引き摺るような音が近づいてくる。
「カーイブツッカイブツ!」
無邪気にはしゃぐエゴ。しかし怪物相手にこれ以上体力を使うのはまずい。
更に奇妙な足音だけでも相当巨大な〝何か〟である事は伺える。
ひとまずアイリ、剣はエゴを落ち着かせ、手ごろな岩陰に隠れた。


シ  ュ ウ ゥ ゥ オ オ ォ オ ォ  ォ  ォ  ォ  ォ  


地を這う音が次第に増し、最大になった所で剣が見たのは巨大な―洞窟の天井に届くほどの蛇の〝頭〟だった。
頭と同じ幅の胴が後に続き、しばらく剣の視界は一面に敷かれた鱗の列だけになる。
「――すげぇ」
洞窟で会った怪物の中では間違いなく最大。
しかしこの怪物たちを見ている内、本当に金脈があるのか疑わしくなってきた。
そう剣が思いを巡らせる間アイリはと言うと、エゴを抱きながら蛇が過ぎるのを待っていた。
「静かに…、………っ!?」
浮いていたエゴのクロスがアイリの額に当る。
その拍子で緊張が弾け、額を押さえながらクロスを見るアイリだが、
「……?」
札。古びた木製のクロスに目立たず巻きついたそれは、土で汚れてはいる物の妙に新しい。
書かれた文字は呪文だろうが、今は暗がりでよく読み取れなかった。
アイリの頭に疑問が生まれる間にも、蛇の胴は終わりがないかのように続く。

46mark@蛇:2010/01/29(金) 13:46:09

グレイとレイド。穴を掘り進めていた二人だが、途中硬い岩に突き当たり作業を中断する。
しかし岩盤のスキマからは風が吹き、
「別の道に――繋がっているッ!!」
レイドは嬉しさのあまりスキマに顔を入れ、向こう側の様子を確かめて見る。
思いの外厚い岩。それでも、穴の向こうには確かに雑草の生えた道があった。
「やったぞグレイ!」
「おいおい。出口まではまだ遠いぞ?」
呼び出されたグレイは手に入れた地図を片手に笑う。
―その時、

シ  ュ ウ ゥ ゥ オ オ ォ オ ォ  ォ  ォ  ォ  ォ  

向こうから地を這う音が小さく聞こえる。
「……ヘビ?」
「そうみたいだな」
音から察するに距離は遠い。しかし、相当な大型と言う事は読み取れた。
やがて、ヘビの足音が消えてからしばらく経った後、また遠くから足音が2つ聞こえてきた。
「グレイ!近づいてくるぞ!!」
「仲間かも知れねェな……でもよォ」
「どうした?」

「……お前、そろそろ顔抜いたらどうだ?」
「抜けないんだ!」

47mark@蛇:2010/01/29(金) 13:46:42


剣、アイリ、エゴの三人はなんとか蛇をやり過ごし、引き続き洞窟の道を進んでいた。
「はぁ……いい加減「×」にも着く頃かしら……」
地面の雑草を踏みながらアイリがため息を付いた頃、ふいに聞き覚えのある声が横から聞こえた。
「まさか―!?」
洞窟の壁を見る。――と、剣が岩のスキマに顔を入れていた。

「なぁ、仲間……見つけたンだけど、さ……抜けない。なんとかしてくれ」
「……アンタ何考えてんのォォ!!」

48mark@善人の証明:2010/02/01(月) 17:53:59
■■■8/21

ふいに、遠くから地を這うような音が聞こえた。

シ  ュ ウ ゥ ゥ オ オ ォ オ ォ  ォ  ォ  ォ  ォ  

「……お?」
切れ間なく響く音が時折鉱山の道を曲がり、少しずつ近づいてくる。
やがて、曲がり角のない通路の向こう側からその〝正体〟が現れる。
巨大な蛇の頭。セイスイ、ナインの顔に焦りが浮かんだ。
「バカな……ありえない」
「何だお前、今になってビビったのかよ」
「宿主の話だとこの鉱山のモンスターは一体だけのはずだ……何故こんな、」
こんな巨大な蛇がいる。
ナインが言い終える間も待たず、音の正体である蛇がこちらに向かって来る。

49KINO:2010/02/06(土) 01:31:00
・・・なんということだ。
我が冬眠を寝過したばかりに住処は穴だらけとなり、
互いに弱肉強食でありながらもともに共存してきた仲間は乱獲され・・
この『侵入者』は一刻も早く除外せねばならない・・・
だが、慎重にいかねばならない。
この身を震わせ侵入者を大地に埋めるはたやすいが
それは同時にここの住人をも死に追いやる・・・
一匹ずつ確実に・・・だ。
----------------------------------------------------------------------
「何日かぶりの再会だと思えば・・
・・・おい・・そこの尻だけの馬鹿は誰だ?」
ナインが銃を構えたまま震えるアイリに尋ねる
「・・・・こんなバカなやつ・・・一人しかいないじゃない!!」
「・・ところが目の前にもう一人いるわけだ。」

-----------------------------------------------------------------

「・・どうやらこいつのつまらねぇ顔の向こうにお仲間さんは
集まってるみたいだな・・・」
「そいつは早くこっちに助けに来てほしいもんだ・・・」
レイドは睨まれた蛙のように動けない。
そう、目の前にはまさに巨大な蛇が大きい口からチロチロと舌を
鳴らしてこちらをにらんでいるのだった・・・

50腐れ飯:2010/03/21(日) 18:14:04


異様に蒸し暑い

「てめぇなんとかしろよ。ハイエナだろ」
「どういう理由だ。とっくにできたらやっているさ、というか息臭いぞおまえ
なに食ってたんだ」
「ちげぇよ俺が臭いんじゃねぇよおめぇがくせぇんだろ」
「何だと!いい度胸だ、俺を怒らせたのだから覚悟はできてるんだろうな」
「何の覚悟だよ、このまま一緒に二酸化炭素を交換しながら死ぬ覚悟か?」
「…………」
===================
目の前のヘビはピクリとも動かないが、その眼孔は大きくなったり小さくなったり
と不気味に動いていた。洞窟の涼しさが一気に無くなったように感じた。今まさに
自分に迫っている恐怖感は、寒気とは逆に熱を起こしているのだろうかと、レイド
はその目から目線を外さないまま思っていた。
舌がチロチロと動く。その音が洞窟ぜんたいに響く。自分の鼓動が聞こえないので、
すでに死んでいるのではないかという錯覚に陥りながらも、なんとか立っていた。
今自分が、剣を抜いてこいつを切れば助かるかもしれない、しかしその実、そんな
ことが出来る気がしないのだ。この蛇はそこらの蛇とは大きく違う。あっちは
こちらが攻撃してくるのを待っているのだ。
 洞窟の天井から、水滴がポタリポタリと落ちる。その一つ一つがタイムリミット
のようにレイドを焦らせた。どうする?どうしようか。助けをまつのか、戦うのか。
答えは簡単だった。
「逃げる!!」
そのままレイドはうわっはっはっはと笑いながら、剣を振りかざし小さな炎を発生させる。
蛇は反応したが、そのまま動くことが出来なかった。その小さな炎は、燻り、そのまま
大きな煙となった。
「こっちだ巨大ヘビ!」
レイドはヘビの横をすりぬけ洞窟の闇へと逃げていき、その木霊をその場に残したまま消えていった。
しかし、同時に蛇も剣呑な唸りを上げると、そのままレイドを、その図体からは想像も出来ないような速度で追いかけていくのであった。

=======================

「おぉぁ!?な!逃げるだと!おいレイド!!レイドォォォ!」
「どうやら巨大なヘビさんがそちらにいたみたいだな」
グレイはその狭い空間に目一杯の声を響かせる。
「な!やばいぞ!このままでは俺の半身がもってかれる!ごっそり!ごっそりとぉ!」
「落ち着けよ!どうやらヘビはあのレイドってやつを追っかけたみたいだ。どうやら
お前を助けるつもりで逃げたんだろ」
「…な…それは…く!このままではあいつが危ない。はやくなんとかしなければ」
「同意だ。こっちも、レディーを待たせちゃってるもんでね」


=====================
「な!なんだこれは!」
セイスイが素っ頓狂な声をあげる。ナインとアイリはその指差す方向を見る。
巨大なヘビの胴体がバシンバシンと跳ねている。その振動は洞窟ぜんたいを揺らし、
いまにもあの鋭い岩が張り巡らされた天井が落ちてくるのではないかと思うほどミシミシ
と音を鳴らしていた。
「っく!どうした?なにか悪いものでもたべたのか!?」
「こ…こわいよぉぉ!これ、どうするのぉ?」
「そんなの私に言われたって困るわよ!ちょっと早く出てきなさいよあんた!」
アイリは新之の尻をビンタならまだしもグーで殴りつけ続ける。新之はその度に
なにか怒号を放っていたが、今はそれよりも崩れそうなこの洞窟のほうが気に掛かる。
「っく!こうなったら胴体だけのうちに殺してしまうか!」
「おい!いいのかよ!なんか仲間とかよばねぇだろうな!」
「その時はそのときだ!…っん?」
−−−−っはっは
 トリガーを引こうとおもったその瞬間。なにやら声が聞こえた。耳が壊れるような
騒音の中、なにやら、聞き覚えのある声。
「おい、なんか、やばくねぇか?異様に跳ねてるぞ、魚かこいつ!」
「こわいよぉぉぉぉ!」
 怒りや焦り、焦燥や苛立ち…どう表現すればいいのかナインにはわからなかった。
叫ぶべきなのだが、その言葉が見当たらない。しかも振動に足をやられ動けない。…このままでは…!!

「うわっはっはっはっはっは!お!仲間だ仲間だ!グレイ!仲間がいたぞぉぉお!!」

レイドが手を振りながら、こちらに走ってくる。
大口を開き、今にも食い殺さんとする巨大なヘビの頭を引き連れながら。

「いぃぃぃやあああぁっぁぁあああああ!!」
アイリの声が振動音に負けじと響いた。


=====================
「おい」
「なんだ」
グレイが苛立ちをこめて新之に返事をする。新之は下手糞に笑いながら。

「俺、半身もってかれるかも」

51ヨモギ茶:2010/07/21(水) 20:59:31
「いぃぃぃやあああぁっぁぁあああああ!!」

物凄い振動音と悲鳴が響く。
レイドを加えて必死で走る一行の後ろすぐ近くを、
物凄い勢いで蛇が追う。

「わっはっはっはっはっはっは!これはまずいぞ!どうしようっ!」
「しるかぁ!というか笑っている場合じゃないだろうあんたー!」

最後尾でダッシュしつつ。相変わらず大声で笑っているレイドにセイスイがツッコム
どうしようと聞かれても。今はとにかく走るしかないのが全員の答えだ。
すぐ後ろには巨大蛇の大口。少しでもスピードを緩めたりしたら食われてしまう
それに、この間々走り続けるにしても、何時か疲れてしまうかもしれない

「ほ・・ほんとうに、一体どうしたら・・!  ―――――!!?」

エゴを抱きかかえ。戦闘を走っていたアイリは前方にあるものに気づいた。
壁だ――――――――――!!!

「みんな―――――横よーーーーっ!!!!」

前方に、わき道がある事に気づき、そちらへとんだアイリを先頭にして
メンバーは一揆にそこへ飛び込む。

すぐ後で猛進していた蛇は壁へとツッコミ――――――

酷い音と共に壁が壊れ。その先には穴があった。
蛇は壁を突き抜けて真っ黒な竪穴へと落下していった。

「たっ・・・助かったぁ」

蛇が落ちていくのをみおくり。玲がほっと胸をなでおろす。
ナインはアイリに抱かれているエゴに見覚えを感じるも。
それよりもと考えを変えてアイリ達をみた。

「さて・・・。とっとと、あのバカどもを掘り出しにいくか。」

52Mark@未来より今、他人より自分:2010/09/12(日) 21:07:42
■■■8/2

周囲の景色が急速に上がってゆく。
それすら確認できぬ闇の中、ナインは自身が落ちている事をようやく認識した。
先程まで持っていたランタンがない。穴のヘリに捕まっていた時落としたらしい。
下を見ても炎の光はなく、ただ深い闇が延々と続く。
「………」
両手は激痛で銃すら持てない。
策がないと悟ったナインは目を閉じ、眠った。




■■■8/21

眠りかけていた目を開く。
視界に飛び込むのは鉱山の通路。そこに立ち、一点を見つめるセイスイの姿。
セイスイの視線の先を見る。岩の隙間に入り込んだ剣の下半身と、彼を抜こうと力むアイリ、エゴの姿が目に入った。

ナイン・シュガーは考える。
蛇を避け、この場に戻ってから10分近く経つ。
あれから隙間に埋まった仲間―剣とグレイヴッチを穴から出そうとしたが、一向に抜ける様子がなかった。
仲間総出で引っ張っても抜けず、向こうが「痛い」とわめく始末。
「…………」
このまま置いてゆこうか。アイリ達が力む中、そんな思いが頭をよぎる。
早く目的地へ着きたかった。二十日間も迷い続けた事もあるが、彼には他の理由もあった。


「ちょッ待いだだだだだだ!!引っ張るなこのォ!!」
「自業自得なんだから・・・ッしょうが…ないでしょッ!ああッキツッ…い!」
「おい…ちょッ変な声出……あだだだだァ!!」
アイリはと言うとエゴと一緒に剣の両足を勢いよく引っ張っていた。
穴の反対側で埋まっているグレイはレイドと玲が担当している。。
だが、向こう側から聞こえる会話から察するに、グレイの方もまだ抜けていないようだ。
救出に加わらない仲間に少しずつ苛立ちを募らせるアイリだったが、
「おい」
ふと、その仲間の一人であるセイスイがアイリに声を掛ける。
「ちょっと貸せ」

53mark@未来より今、他人より自分:2010/09/12(日) 21:08:37
■■■8/2

鉱山の底。
乾いた土が広がる中、一部分だけ濡れた箇所があり、その中心に黒スーツの人間があおむけに倒れていた。
セイスイは荒い息を繰り返しながら、傍らに落ちたランタンの残骸を見る。 彼女……いや、彼は生きていた。
落ちる最中、水を下に噴射し続け、落ちる際の衝撃を和らげたのだ。
お陰でこうして生き延びた――それはいいが、噴射の際に体内の水を少々使いすぎた。
腰にぶら下げた水筒の水も、飲み過ぎたせいかもはや残り少ない。
「――ッちぇ」
いっそ落ちて死んだ方がよかった。
そんな考えがセイスイの頭をよぎるも、刹那、何処からか聞こえた水音によりそれも掻き消えた。
「水!?」
セイスイは飛び起き、音の発生源を必死に目で追う。
暗闇の中、唯一灯りを放つのは頼りないランタンの残り火のみ。
そうしている間に二回目の雫の音が響く。
「水だ……!」
その音で探していた物が近くにある事を悟ったセイスイは、地面に手を付きゆっくり立ち上がる。
改めて周囲を見渡す。 消えかけた火に照らされた空間は広く、切り立った岩壁の天井は暗闇に包まれ見えない。
3回目の音。セイスイがそちらに目を戻そうとした時、天を隠す暗闇の奥から、小さな何かが少しずつ迫るのに気付いた。
目を凝らしてそれを見ると、その正体は見覚えのある者だった。
「――!!」
赤毛のガンマン。 自分を見殺しにした男だ。
落ち行くナインの体を舌打ちしながらセイスイは見上げる。このまま放っておけば命はないだろう。
―しかし、今のセイスイに襲うのは激しい疲労と喉の渇き。
ナインを助けるために能力を使っても、落ち行く彼を救える保証はない。
「―たくッ」
面倒臭い。ナインに対しての感情だが、同時に自分にも向いていた。
セイスイは水筒の蓋を開けると、少ない中身を一気に飲み干す。
そうして、巨大な水球を練るとナインの落ちる地点めがけ放つ。

飛沫の音と共にナインが水球の中へ落ちる。
途端に速度が緩み、底に着く直前に止まり―しばらく経ち、水球の中心に体を浮かせる。
ナインの無事を確認し、ひとまず安堵するセイスイだったが、それと同時に喉の渇きが復活し、視界が揺らいだ。
「……やば、水使いすぎt」
セイスイが倒れると同時に、ナインを閉じ込めていた水球が壊れた。

54mark@未来より今、他人より自分:2010/09/12(日) 21:09:07
■■■8/21
セイスイはアイリ、エゴに代わって剣の足を掴む。
「ようやくやる気になったの?言っておくけど多分抜けな……」
「簡単だよ。ほら、よく言うだろあれって、あれ」
「何て?」
アイリと会話を交わしながら、セイスイはそのまま剣を掴む足に力を込める。
そしてそのまま後ろ―ではなく、勢いよく前へ押した。
「……え?」
呆然とするアイリだったが剣も同じだった。いくら引いても動かずにいた剣の体が前に少しずつ進んでゆくのだ。
「え……ちょッ」
抵抗する剣だったが、
「あ、押せる押せる」
それも構わず、インストールした新しいソフトを試すようなノリで少しずつ前に押してゆくセイスイ。
「……ちょっと待ってよ、押しちゃあ意味ないでしょ押しちゃあ。
 それにこのまま行ったら……」
「何だって?」
振り向いたセイスイは晴れやかな笑み。その表情にアイリはこれ以上言葉が出ない。
だが一番きついのは剣である。
セイスイが笑みを浮かべる間にも剣は少しずつ前進し、グレイヴッチの顔に近づいてゆくのだった。
「ちょッ……嫌だ、これ以上行ったら」
嫌なのはグレイも同じだ。
「おい……ちょっと止めようか、これは距離的に、ちょっと、」
セイスイは押すのをやめない。
二人が懇願する間にも減ってゆく距離。
10cmまでに近づく唇。
「ちょ……冗談だろ冗談だろ俺には未来があるッいくら何でもこんな毛深い奴と――」
5cm。
「嫌だ嫌だ凄く嫌だこんな事コルガルドでもなかっtうわやめろそんな馬鹿な」
2cm。もう止まらない

「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」  
断末魔に近い叫びが響いた。

55mark@未来より今、他人より自分:2010/09/12(日) 21:11:54
■■■8/2

目覚めたナインが最初に見たものは、水浸しになった洞窟と、近くで倒れている仲間だった。
彼に駆け寄り、状態を見ていた最中だった。ナインの耳に雫の音が聞こえる。
繰り返し聞こえるその音で泉が近いと知ったナインは、セイスイを背負いそちらに向かった。





■■■8/21


眠りかけていた目を開く。
視界に飛び込むのは鉱山の通路。そこに立ち、一点を見つめるアイリとエゴの姿。
二人の視線の先を見る。岩の隙間に入り込み、足先から膝まで埋まった剣の姿と、
彼の足を掴み、一息つくセイスイの姿だった。

全員無言。ナインの視界に入った仲間達の姿は、まるで時が止まったかのようだった。
この緊張が永遠に続くと思われたが、ふいに反対側から荒い吐息が聞こえ、少し遅れ、同じ場所から歓声が響いた。
「……抜けた!凄いぞ……抜けた!!」
「やったぁ♪やりましたね、グレイさん!」
しばらく凍り付いていたアイリがその声で動き出し、向こう側で喜ぶ仲間に問いかける。
「……ぬ、抜けたって?本当?」
「ああ抜けた……何が起こったのか分からなかった、頭がおかしくなりそうだった……
 催眠術や超スピードじゃ断じてねぇ、もっと恐ろしい物の片鱗を味わ」
「グレイさんは喋れる状態じゃないですね」
とりあえず反対側にいる玲から何が起こったか説明してもらった。
セイスイが剣を押してる間、グレイが叫びと共に物凄い勢いで穴の隙間から顔を〝抜いた〟らしい。
結局は気の持ちようか……。アイリはため息を吐くと、
「分かったわ。……じゃあ、そっちから剣を抜いてくれる?」

56mark@未来より今、他人より自分:2010/09/12(日) 21:17:04
正気に戻ったグレイも加わり、剣の救出活動は続く。
剣の体は少しずつ抜けてきているようだ。
その様子を見るナインの傍に、先程一騒動を起こしたセイスイがやって来た。
「これも俺の活躍のお陰だな」
セイスイは隣の岩盤に寄りかかりながら満足げに呟いた。
それから返事を待つようにこちらを見たので、ナインはそれに応えた。
「たまたまああなっただけだろう?失敗したらどうする気だった」
「いいだろ?成功したんだし」
悪びれずそう答えるセイスイの姿に、ナインは呆れ気味に言った。
「お前って奴は……この二十日間もそうだったが、もう少し先の事を考えろ。
 その場のノリで動く事は命取りになる。一歩間違えたらとうに死んでいるぞ」
「何、心配?お前もいい所あるじゃん」
「違う、忠告だ」
ナインはこの相手が気に食わなかった。
まずその探検向きでない服装。読めない行動、突飛な考え。
そして彼に対し冷静でいられぬ自分に。
「……ったく」
糖分が欲しいと心底思う。やる事をさっさと済ませ、この相手から逃げ出したい。
そんなナインの思いも露知らず、セイスイは喋る。
「ま…お前の言う事はちゃんと聞いておいてやるよ。実際にやるかどうかは知らねーけど。多分やらない」
「どんな教育を受けてきたんだ?」
「教育?他人にどう言われるかより自分がどう捉えるかだろ。
 他人より身内。身内より自分。そうだろう?」
「……勝手にしろ」


ナインはセイスイを無視し、アイリ達が集まっていた岩の隙間に目をやる。
先程のような歓声が聞こえた。恐らくあの男が抜けたのだろう。

57腐れ飯:2010/09/22(水) 23:43:16

「あーひどいめにあったなぁ。…いって、股間がめっちゃいたい。
やばいなこれ血でてるかも、ちょっとみてくんない?」
「ふざけんなバカ!!」
アイリはスパァンと新之の頭を引っ叩く。
「いってぇ!…悪かったって、助かった」
「これでカリは返したからね」
「また俺に作らせんなよな」
「あんたにいわれたかない!」
「わぁったわぁった…あー…」
明後日の方向をしばらく見つめていたが、そのまま視線を下ろす。すると知ら
ない間にメンバーが増えていたことに新之は気付く。
「…なんだなんだ、こんなにメンツが増えて」
「まだ反対側にいるがな。お前があの無様な姿から生還するのを待ってたんだよ」
「なんだとてめぇ」
ナインは食って掛かってくる新之からすぐに顔をそらすと、そのまま後ろを向いて
歩き出した。コツンコツンと足音が、静かな洞窟のひんやりした空気に響き渡る。
「おいおい、そっちは崖だぜ」
ニヤニヤしながらセイスイはナインに言う。ナインはちらりとセイスイを見るが、
フンと鼻息をもらすと屈む。
「なぁ!てめぇこの甘党ガンマン!」
「静かにしろ…ふむ」
ナインはじっと崖の奥底を見つめる。服の襟の部分がパタパタと揺れていた。
なにか深く考えたような顔をすると、そのままスッと立ち上がった。
「下にずいぶん強い吹いている。ここまでくると微量だが、この深さでもこの
風が届くということは、そういうことだ」
下というと、先ほどヘビが落ちたガケの下だ。エゴは首をかしげながらケタケタと
言う。
「ソウイエバ、へびサンガオチタノモ、キコエナイホドダッタモンネ」
「この洞窟いったいどうなってんのかしら」
「そうだな…しかしどうやって行くか…」
「ホント…どうやって…は?」
アイリは少し止まる。『行く?』。静かな空間がやけに静かに感じられた。
咄嗟に口火を切る。
「ちょちょ!まってよ!行くって!?下にぃ!?」
「あたりまえだ。地獄にでも行くとでもおもったか?」
「同じようなもんじゃない!そんなことよりはやく外に…」
「外?…どうやらそのバカを引っこ抜いてる間にバカが移ったみたいだな」
「おいぃぃ!いちいち俺をバカにするなバカ!」
ナインは再びガケに視線を落とす。どこまでも暗く、どこまでも不気味だ。本当
に地獄に続いているようにも見える。
「自分たちの目的はなんだ?「宝」だろう?それ自身に目的があるものも、その
周辺観察の奴も含めて、目的の軸はそこだ。このままオメオメ帰って『手がかり
も何にも見つかりませんでした』とでもいうのか?」
言葉が続かない。アイリは反論しようとしたが、口を開け閉めするだけだった。
セイスイがニヤリと笑う。
「まぁ、そりゃぁそうだなぁ。このままじゃ帰れないよなぁ」
「たりめーだ」
新之もおもむろに立ち上がると、自分の周りについた岩のカスを払い落とし、
うんと背伸びをしながらそういった。
「それに…帰ろうとしても帰れるとも思えん。」
「えっ…」
アイリはナインの呟きを聞き逃さなかった。

58腐れ飯(グレイを喋らせるの忘れてた!!):2010/09/22(水) 23:45:28
「…俺はここに落ちるときに…よく見えなかったが、知らない男に蹴落とされている。
…そしてこの二十日間。よくよく考えてみろ、この罠はいったいなんのためにあるのか
……わかるか?」
アイリは首を振る
「いや…」
ナインは続ける。
「罠ならば、あの宝箱をあけた瞬間に天井を落とすなりなんなりですぐ俺たちを
殺せばよかったんだ。それが、今こうやって奥に誘われて数日間生き延びている。
だが、よくよく、あの男のことも考えると…この罠は…」
「『おびき寄せられた』ってことか」
新之は眉を吊り上げながらそういう。ナインはコクリとうなづいた。
「どう行動を起こそうとも『誰かが俺らを殺しにくる』。…だったら待つのも
逃げるのも、俺はしたくない。」
「……賛成!」
セイスイは興奮したように目をギラギラさせる。ナインはビクリを肩を跳ね上がらせる。
「いやぁ!いったろ!お前の言う事聞いてやるって!いやぁー俺って従順!良い子良い子!」
「いや、そういうニュアンスでいったわけじゃないんだが」
新之もパンと手をたたく。
「ま!あんたの言うとおりこのまま生きて帰るなら、宝もらって生きて帰ったほうが
いいよなぁ!なぁ!」
新之はアイリのほうを見る。アイリは顔をしかめ、喉をぐぅと鳴らす。
「エゴモサンセーイ!」
「おほぉ!良い子だ良い子だ!…ん?どーした?」
アイリはまだ返答せずに、顔をさらにしかめる一方だ。何かを言おうとするが
全部が体の中でめぐってしまっている状況だ。
「だーいじょうぶだって。なんかあったら守ってやるから」
ッキ!とアイリはその一言を聞くと新之を睨み付け、腹を思いっきり殴る。
「なんでアンタにそんなこといわれにゃいけないのよ!」
「グアアァア!」
そのまま腕を組みフンとそっぽを向く。
「私は平気よ、自分の身を守れる自信もある。ただ、皆が…」
「なんだぁ?なんでぇい。こっちこそなんでそんなこといわれにゃなんねぇんだよ」
少し青ざめた顔で新之は立ち上がると、そのままひとつため息をつく。
「そんなんで死ぬようなやつらだったら、とっくに全員死んでるさ」
ッケっと新之が笑う。ナインはゆっくり瞬きをし、セイスイは当たり前だといわん
ばかりだ。

「とりあえず、単体で動くよりも集団で動いたほうがよさそうだというのは自明だろう。」
ナインは落ち着いてそういう。ひんやりした空気、そしてその奥にどんなもの
があるのかは、未だだれも知らない。

59木野:2010/09/27(月) 17:25:23
「確かに俺は単体で動くよりも集団で動いたほうがいいといったが・・・」
ナインは周りを見渡す。セイスイや剣、グレイやアイリまでもがぎっちりと
身を寄せ合っている。ものすごく動きづらい。
「だって、この寒さやばすぎるだろ?水だって凍っちまうよ!」
ガチガチと身を震わせながらエゴをぬいぐるみのように抱きしめるセイスイ。

「おそらく今は夜なんでしょうね〜。寝るときは気をつけないとー」
そういいながら激しくステップを踏む玲。上着のようなものは羽織っているが
それでも体を動かしていないと風邪をひいてしまいそうだ。

水滴だらけだった洞窟の通路がいつしかつららだらけになっている。
だいぶ深くまで来たのか、それともこの奥に宝以外の「何か」があるのか・・

「・・・おかしいわね。蛇の姿が見えないわ。」
いつのまにかナインの帽子とマフラーを奪い、寒そうに手に息を吹きかけるアイリが言う。
確かにこの寒さだ。変温動物は冬眠とまではいかなくてもそこらで凍えていそうだが
あの巨体は見当たらなかった。
代わりに恒温動物のグレイがいつの間にかその場で丸まって眠ってしまっている・・
-----------------------------

60Mark@ブルーアイドモンスター:2011/02/06(日) 17:48:55
「……何やってるんですか?」
玲が訝しげに見つめる先には、丸まって眠るグレイにじわじわと水滴を落すセイスイの姿があった。
「……何も言わないでくれ。今大事な所」
そう小声で返すセイスイ。
「水浸しにしたらグレイさんの体冷えちゃいますよ」
「大丈夫だろ、こいつ毛皮だし」
「そう言う問題じゃなくってー」

「まぁ、なんだ。耐久力調査って奴だ。こいつが起きるまでこうやってちょっかい出す、
 起きなきゃこいつは知らない奴にずっと体を弄ばれ続けるのさ」
だから静かにしろよ、とドヤ顔で返すセイスイに、玲は「それはないでしょう」とツッコミで更に返す。
しばらく二人の掛け合いが続いたが、やがてナインが叩き起こしに入ったことでグレイは起き、セイスイは怒られた。

剣はその一部始終をぼんやりと眺めていた。
今、彼は誰かと話したい気分だった。
だが、まともに会話ができそうなナインはセイスイに説教をしている。
となると、
「……なぁ、話があるんだが」
「しょうもない話だったら怒るわよ」
隣のアイリに声をかける。
少し頼りないが、物の見方がまともな奴だ。

61Mark@ブルーアイドモンスター:2011/02/06(日) 17:50:40
「ナインを蹴落とした男?」
「そう。そいつが誰なのか気になってな」
二人が話を始める間に、剣の足が水溜りを踏む。
冷たい水滴が音を立てて跳ねる。
「少なくとも、あの罠を仕掛けたのは間違いなく奴だ。
 そうでなきゃ思わせぶりに出て来てナインを落したりなんてしない。
 問題は、今まで俺たちの周りで起こった事が、どこまで奴の仕業かって事だ」
「どこまでって……少なくとも、モンスターは前からここにいたと思うけど」
「俺もそう思う。でもな、宝箱の所に行くまでは、俺たち以外の生物なんて一度も見なかった。
 それが地下に降りた途端うじゃうじゃと湧き出した。見計らったようにな」
「……じゃあ」
「多分、奴はモンスターも操ってる」
アイリが視線を玲たちに向けると、ナインを凝視するエゴの姿が見えた。いつのまにかグレイの姿がない。
再び視線を剣に戻す。
「……でも、一人であれ程の量のモンスターをちまちま操るなんて不可能だと思うし、全部が全部操られてるわけじゃないと思う。
 例え方法があるとしても、操ってる、と言うより――」
「刷り込み、か?」
「そう。モンスターたちにまとめて同じ暗示をかける、とか。この前見た死体――あの人達だって、暗示をかけられたモンスター達に襲われて――」
「それはないな、お嬢ちゃん」
唐突に入ってきた声にアイリが振り向くと、そこに目を覚ましたグレイが立っていた。
「お、起きたのか。おはよう」
「まだ少し眠いけどな」
「ちょ、驚かさないでよ……それで、何で違うって?」
グレイも会話に加わる。
「俺は洞窟のモンスターには一通り会ってきたが、〝血を吸う〟種類の奴は見なかった。
 死体はひからびてただろ?。あいつらの仕業なら骨までかぶりつくさ。血だけ吸うなんて品のいい方法はしない」
「……あの野郎の正体が少し見えてきたな」
「けど、あの、死んだ人達、一応武器も持ってたし――応戦する間もなくやられたの?」
「それで強さがわかったろう?あるいは他にも仲間がいるのかもな」
「……おい。何を話してる」
「お」
再び声が入る。3人がそちらに向くとナインがいた。
「おかえり。あの男女の説教は終わったか?」
「あいつには何かを言う代わりに鉄拳の方が効くさ」
剣はナインの返事を聞くと、納得したようにうなずく。
「……お前たち、あの男の事を話してたろ」
「お前が入ってくるのを一番待ってたんだよ、ガンマン」
「あなた、例の男を見たんでしょう?何か見たとか――」

数秒の間。ナインは少し考えると、

「……ちょっと待て、 今思い出した」


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