したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

孤空の月〜崩れゆく廃坑〜

25腐れ飯:2008/11/05(水) 00:25:54

12:10 08月02日

人間の三大欲求の一つが睡眠欲というのは大いに納得できる。

「どうしたんだよ。徹夜明けの科学者みたいな顔してるぜ。」
鉱山に向かうため、村をでて、大きな平地に入った直後。
新之はヘラヘラと笑いながら、アイリの頭を二三度叩く。アイリは、
苛立ちを眉宇に漂わせた。
「徹夜明けは正解よ。おかげでくまができたわ。全くあなたのせいで」
「人形が怖いといってずっとそばにいた俺も、例外じゃない。」
新之の目にはくまがアイリと同じくらいできていた。新之は目をこすると、カバ
のような大口をあけてあくびをした。
「馬鹿面ね。」
「何を、少なくともお前よりは頑健だっつの。昨日の尿意も耐え抜いたからな。」
「サイテー。よくそういうこといえるわね。」
新之はライオンのような目つきでアイリを睨むが、アイリがそれ以上の目つき
で睨んできたので、明後日の方向を見たあと咳払いをした。
「どうやら鉱山の東にトロッコがあるらしい。そこから洞窟に入れるぞ。」
アイリは、小さくリスのように欠伸をすると、鼻息をもらし、横目で新之を見上げる。
「どっからそんな情報手にいれたのよ。」
「俺だ。」
後ろから異様に大きな声が聞こえる。アイリは目を丸くすると、後ろを思い切り振り向いた。
巨大な狼男 グレイヴッチが腕を組み、剛健な気風を漂わせていた。
アイリは口を金魚のようにパクパクさせていた。眠気はどこかへ飛んでいったようだ。
「どどど・・・どうして!」
「いやね。朝のうちに話がついたのよ。三人寄ればもんじゃ焼きっていうだろう。」
「違うもんたーじゅだ。」
アイリはドカンと地団駄を踏む。
「文殊の知恵よ!!何よそんな話!私が協力するというのはあなたと二人だから!」
「なんだすきなのか?」
「違う!団体行動はムリよ!二人ならまだしも!三人だなんて多すぎる。」
「何だ。お前の目的はそんな内密じゃなきゃいけないのか?」
アイリは言葉に詰まる。はたしてそうだろうか?
新之と組んだのは人形の件の成り行きであったが、それでもなんでもかんでも
簡単に言う事を聞く馬鹿さが使えると思ってのことだった。しかも同じく馬鹿
みたいな行動力と無茶で宝をもしかしたら見つけるかもしれないともふんだ。
そうすれば宝も手に入る。こいつの影に隠れて探検者の観察もできる。一石
二鳥だったのだが…。
「まさか、こんな三人もいたら…目立つし…宝だって、山分け…。」
新之はアイリの顔をニヤニヤと見ている。アイリはその視線に気付く。
「ま、いくか狼男さん。お宝みつけによ」
「しっかりと山分けするんだろうな。それが条件だぞ。」
「わぁってるって…なぁ?」

まさかこの男!!

妙な悪知恵は働くようだ。アイリの考えていたことを、新之は考えていたのだ。
なるほど、協力するなら心から協力しろということか。アイリは溜息をついて、
フフッと笑った。
「でも…どうなるかしらね。」
周りの奴等も、鋭い目をしている。一筋縄ではいかなさそうだ。
新之は腕を大きく回して、高笑いをしながら叫ぶ。
「さていくぞ!三本の歯は折れないというしな!」
「違うぞ三本の輪だ。」
アイリは、タタタと走って、新之、グレイヴッチに並ぶ。
「三本の矢よ。」

日は空の真上で輝いていた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板