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孤空の月〜崩れゆく廃坑〜

52Mark@未来より今、他人より自分:2010/09/12(日) 21:07:42
■■■8/2

周囲の景色が急速に上がってゆく。
それすら確認できぬ闇の中、ナインは自身が落ちている事をようやく認識した。
先程まで持っていたランタンがない。穴のヘリに捕まっていた時落としたらしい。
下を見ても炎の光はなく、ただ深い闇が延々と続く。
「………」
両手は激痛で銃すら持てない。
策がないと悟ったナインは目を閉じ、眠った。




■■■8/21

眠りかけていた目を開く。
視界に飛び込むのは鉱山の通路。そこに立ち、一点を見つめるセイスイの姿。
セイスイの視線の先を見る。岩の隙間に入り込んだ剣の下半身と、彼を抜こうと力むアイリ、エゴの姿が目に入った。

ナイン・シュガーは考える。
蛇を避け、この場に戻ってから10分近く経つ。
あれから隙間に埋まった仲間―剣とグレイヴッチを穴から出そうとしたが、一向に抜ける様子がなかった。
仲間総出で引っ張っても抜けず、向こうが「痛い」とわめく始末。
「…………」
このまま置いてゆこうか。アイリ達が力む中、そんな思いが頭をよぎる。
早く目的地へ着きたかった。二十日間も迷い続けた事もあるが、彼には他の理由もあった。


「ちょッ待いだだだだだだ!!引っ張るなこのォ!!」
「自業自得なんだから・・・ッしょうが…ないでしょッ!ああッキツッ…い!」
「おい…ちょッ変な声出……あだだだだァ!!」
アイリはと言うとエゴと一緒に剣の両足を勢いよく引っ張っていた。
穴の反対側で埋まっているグレイはレイドと玲が担当している。。
だが、向こう側から聞こえる会話から察するに、グレイの方もまだ抜けていないようだ。
救出に加わらない仲間に少しずつ苛立ちを募らせるアイリだったが、
「おい」
ふと、その仲間の一人であるセイスイがアイリに声を掛ける。
「ちょっと貸せ」


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