したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

【ファンキル】SSスレPart2

1ゆるりと管理人:2019/09/11(水) 07:51:29
前スレはこちら
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/15938/1563639218/

ファンキルの二次創作SSを投稿するスレです。

・18禁の内容はNGです
・原作のキャラクター性を著しく損ねる内容はご遠慮下さい、
また損ねている可能性がある場合は注意書き等でご配慮下さい
・複数レスに跨る場合は投稿者名(いわゆるコテハン)を利用しましょう
・投稿に対する暴言は規制対象になります
・ダモクレスばかり登場させるのは控えましょう

565名無しさん:2019/12/16(月) 22:14:07
アバリスはいつもキューティーだから仕方ないね

566名無しさん:2019/12/17(火) 00:16:39
キューティアバリス

567ナースアバリス:2019/12/20(金) 01:01:31
マスター「ごほっごほっあー風邪引いた」

アバリス「マスター体調は大丈夫ですか?」

アバリスがドアをノックして部屋に入った

マスター「う〜ん少し熱はまだあr..!?」

アバリスはナース服を着ていた

マスター「あの...ごめん頭がぼーとして言葉が思いつかない」

アバリス「いえ大丈夫ですまたオティヌスが急に始めたじゃんけん大会に負けて」

マスター「ああいつぞやのメイド服と同じ状況ね」

アバリス「まああれと同じですね」

マスター「似合ってるよ」

アバリス「ありがとうございます」

568ナースアバリス:2019/12/20(金) 01:15:46
アバリス「はい体温計です」

マスター「ああ、ありがとう」

マスターは体温計を受け取り体温を計り終わってアバリスに渡した

アバリス「下がってはいますけどまだ安静した方が良いですね」

マスター「うんそうする」

アバリスはテーブルに置いといていたお粥を手に取った

アバリス「ふぅーふぅーはいあーん」

マスター「あ、あのアバリス...自分で食べれる///」

アバリス「あ、ああそ、そうですね/////」

アバリスはとたんに自分の行動が恥ずかしくなった

マスターは黙々とアバリスの作ったお粥を食べた

マスター「アバリスさ」

アバリス「はいなんですか?」

マスター「料理もできる掃除もできる洗濯もできるそれに看病もできる」

アバリス「そ、そんなに褒めないでください///」

マスター「ああアバリスがお嫁さんになってくれたらな」

アバリス「............」

アバリス「あ!そういえばリンゴがあるのでか、皮剥いても、持ってきますね!」

アバリスは急いで部屋を出た

アバリス「//////////////////」

アバリスの顔はリンゴよりも真っ赤になっていた

マスター(あれ?なんかすごいことを言ってしまったような?)

マスターはぼーとする頭で考えたがわからなかったのであった

569ナースアバリス:2019/12/20(金) 01:24:28
アバリスに看病してほしいなんならナース服も着てほしいということで出来た
今回アバリスが着ていたナース服はナースキャップがあってスカートの昔のじゃなくて今現在のズボンのナース服です
後寒いと思うので紺のカーディガンを着てます
なんでそんな感じのイメージなのかって?
アバリスはコスプレとして着るよりも仕事着として着る方が似合ってる気がするから

570名無しさん:2019/12/20(金) 08:15:47
オティヌスグッジョブ!
アバリスに看病されたい人生だった…

571名無しさん:2019/12/20(金) 16:15:10
アバリスに看病されるという幸せ...

572Christmas.night:2019/12/24(火) 18:01:19

リア充の皆さん、さようなら。
クリぼっちの皆さん、こんばんは。

クリスマスを1人で過ごすロンギヌス好きの皆さんに(しょうもない)プレゼントです。

下記URLにロンギヌスと性夜を過ごすSS(R-18 タイトルChristmas.night)を投稿しました。駄文ですが、よければ読んでやってください。

二次小説投稿サイト ハールメン
https://syosetu.org/?mode=user&uid=289229

573Christmas.night:2019/12/24(火) 18:02:05

もしURLから入れなかった方は、お手数ですが「ハールメン」という小説投稿サイトから「荒ぶる異族」で検索をかけて貰えると見れます。

スレ汚し失礼しました。

574名無しさん:2019/12/24(火) 19:36:14
おつおつ。ちなみに他のクリスマスキャラでもやる予定はあるんですかいな?

575Christmas.night:2019/12/24(火) 21:52:52
リサナウトとロンギヌスは書きましたが、もしかしたらフォルカスは書くかもしれません。

書いた際はまた紹介するので、その時は読んで頂けると嬉しいです。

576魔王少女アロンダイト:2019/12/24(火) 22:38:41
魔王少女アロンダイト

「ぼくと契約して魔王少女になってよ」

アロンダイトの目の前に犬とも猫ともアライグマとも感じれない生命体が話しかけて来た

アロンダイト「.........ふぅー」

アロンダイト(落ち着け私これは幻覚だたぶんそうだ最近疲れているんだそうだそうに違いない今日は早めに寝よう)

「この力があればなんでもできるよ」

アロンダイト(確かに魔弾が使えれば万年射程1にどうにかなるかもしれない)

アロンダイト「そうですねやってみる価値はあるかも知れませんね」

アロンダイト「私の名前はアロンダイトあなたは?」

「はい私の名前はアダム・クルメルト・カーボン・ディバイド・アイスナックル・メポポンジュニア・アダム・センターガイ・マッチョ357世です」

アロンダイト(な、長い....)

グルテン「みんな略してグルテンと呼びます」

アロンダイト(どう略したらグルテンになるんだ?)

グルテン「それでは魔王の剣です」

アロンダイト「杖じゃないんですね」

グルテン「なに言ってるんですか?杖よりも剣のイメージですよ」

アロンダイト「そ、そうなんですね」

アロンダイト(ジェネレーションギャップってやつですかね)

グルテン「それでは剣を空に掲げてこう叫んでください」

グルテン「スーパーマジカル奇跡の突然変異!」

アロンダイト「わ、わかりました...」

アロンダイトは少しダサイのでは?と思ったがこらえ剣を空に掲げた

アロンダイト「スーパーマジカル奇跡の突然変異!」

アロンダイトは変身した

アロンダイト「なんか思ったより禍々しい見た目ですね....」

グルテン「そりゃあ魔王少女ですからね」

アロンダイト「え?魔法少女じゃないんですか?」

グルテン「え?魔王少女ですよ」

アロンダイト「え?」

グルテン「え?」

アロンダイト「え?」

グルテン「え?」

アロンダイト・グルテン「え?」

577魔王少女アロンダイト:2019/12/24(火) 22:43:38
続かない!!

pixivでおばあちゃんが魔法少女になるってマンガを見つけてふと魔法と魔王ってちょっと呼び方似てんなと思いそしてアロンを魔王少女にしようと昨日の夜中に思い付いた
それに今日はクリスマスイブだからサンタとサタンも呼び方似てるしこれがダブルミーニングってやつだね(違います)

578名無しさん:2019/12/25(水) 08:34:59
ちゃんと最初から魔王少女と切り出して聞き間違えてるアロンがかわいいんじゃあ!

579チャレンジアロンちゃん:2019/12/25(水) 22:16:33
チャレンジアロンちゃん16

これはアロンダイトをバカにするものではございません出来ないアロンを愛でるためのものです

クリスマスそれはサンタが良い子にプレゼントを配り回る日

レーヴァテイン
「あークリスマスかつい最近あったような気がするけどまあいっかそれよりも早くパーティーの準備しないと」

遠くから鈴の音が聞こえて来た

レーヴァテイン
「鈴の音?誰かがサンタのコスプレでもしているのかしら?」

「あ!レーヴァテイン」

レーヴァテイン
「その声はアロンダイトあなたがサンタのコスプレ...え?」

レーヴァテインがアロンダイトの方を見るとそこには奇妙な光景が広がっていた

580チャレンジアロンちゃん:2019/12/25(水) 22:24:25
>>579
レーヴァテインの目に映った光景はアロンダイトがロープを両手にしっかりと握りしめていてカシウスがプレゼント箱らしき物に入っていてアバリスがマスターの上にまたがっている光景だった

レーヴァテイン
「えっと....」

アロンダイト
「トナカイです」

カシウス
「プレゼント」

アバリス
「サ、サンタです」

マスター
「ソリです」

レーヴァテイン
「なんでそんなことになっているの?」

アロンダイト
「それは数時間前に遡ります」

*********

アロンダイト
「カシウス姉さんサンタが来るのが楽しみですね」

カシウス
「うん楽しみ」

アバリス
(二人ともサンタを信じきってる....)

アロンダイト
「でも私本物のサンタさんを見たことないんですよね」

カシウス
「私もない」

アロンダイト
「どうしたら良いんでしょう?」

カシウス
「サンタに変装する」

アロンダイト
「それです!」

マスター
「ということで俺が呼ばれたのか」

アロンダイト
「はい四人で同時にくじを引いて役割を決めますよ」

四人は同時にくじを引いた

********

581チャレンジアロンちゃん:2019/12/25(水) 22:32:16
>>580
アロンダイト
「というわけでこうなりました」

レーヴァテイン
「なりましたじゃないわよ」

アバリス
「あの...レーヴァテイン」

レーヴァテイン
「アバリスどうかしたの?」

アバリス
「なんだかマスターの上にいるとなんとも言えない高揚感が...なんかマスターを支配しているようで胸が高鳴るんです」

レーヴァテイン
「よし早く降りなさい」

マスター
「ありがとうレヴァこのままだとソリ人間として生きて行くかと思った」

アロンダイト
「はぁですがどうやってサンタさんに会いましょう」

カシウス
「策が潰えた」

レーヴァテイン
「.......わかったわ私がサンタを呼んで来るわ」

アロンダイト
「え!?本当ですか!?」

レーヴァテイン
「ええだからそこで待っていなさい」

アロンダイト
「カシウス姉さん楽しみですね!」

カシウス
「楽しみ」

二人はワクワクとしていた

マスター
(レヴァのやつどうするんだろう?)

582チャレンジアロンちゃん:2019/12/25(水) 22:41:37
>>581
数分後

レーヴァテイン
「サンタだよ」

レーヴァテインはサンタのコスプレをしてやって来た

マスター
(うわ懐かしい姿だな)

アロンダイト
「サンタさんだーーーー!!!」

カシウス
「サンタサンタ」

二人ともすごく嬉しそうにした

マスター
(うわー気づいてねえ)

アロンダイト
「サンタって身長53メートル体重4万4千トンある巨人かと思ってました」

マスター
「ウ◯トラマンかな?」

アロンダイト
「残念テ◯ガです」

マスター
「嫌知らんよ」

レーヴァテイン
「それじゃあ私はこの辺で」

アロンダイト
「あ、サンタさんプレゼント」

レーヴァテイン
「!!!」

レーヴァテイン
「ププププ、プレゼントはなんだったかな?」

アロンダイト
「なんでしたっけ?」

カシウス
「サンタに会う方法を考え過ぎてて頼むの忘れてた」

アロンダイト
「プレゼントは大丈夫です」

レーヴァテイン
「そ、そうかでは去らば」

レーヴァテインはその場からそそくさと帰った

583チャレンジアロンちゃん:2019/12/25(水) 22:49:47
>>582
マスター
「良かったなーアロン、サンタに会えて」

アロンダイト
「はい良かったです」

カシウス
「あ、パーティーの準備」

アロンダイト
「ああ!忘れてました」

アバリス
「二人とも大丈夫ですよ」

アロンダイト
「どうしてですか?」

アバリス
「二人がサンタに会っている間にパーティーの準備を終わらせておきましたから」

アロンダイト
「さすがですアバリス姉さん」

マスター
「それじゃあクリスマスパーティー始めるか」

アロンダイト
「はい!」

その日は楽しい楽しいクリスマスパーティーで賑わったのであった

その頃レーヴァテイン

レーヴァテイン
「はぁー全くアロンダイトはどこか抜けてるというかなんというか....」

レーヴァテイン
「ん?カリス?ヘレナ?ソロモン?三人ともどうして黙っているの?な、なんか目が怖いんだけど...」

三人はレーヴァテインにゆっくりゆっくりと近づいて来た

レーヴァテイン
「三人ともちょっと待って...本当に待って...」

レーヴァテイン
「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」

その日の夜はディスラプによる性夜が行われるのであった

584チャレンジアロンちゃん:2019/12/25(水) 22:50:51
アロンとカシウスはマジでサンタの存在を信じてそう

585名無しさん:2019/12/26(木) 00:42:12
サンタレヴァの格好は襲われてもしゃーない

586名無しさん:2019/12/28(土) 15:16:22
>>583
アバリスサンタ(s)の召喚は失敗か…
この子達のクリスマス衣装出るまでいつまでも待ちたい

587リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/12/28(土) 22:26:20
前話>>494
【でぃすらぷ!】
第9話「皆の想い、自分の想い」

それから数日。私は自室でこれまでのことを振り返っていた。
3人の想い…素直に嬉しいけれど……

(どうしたらいいんだろう……)

隣りのムーは呑気に寛いで欠伸をしている。なんかムカつく……

「いいわね…こっちは色々と大変なのに……」
「ん?……もしかしてアイツらのことか?その件に口を出すつもりは無かったんだけどよ…そんなに悩んでるんならいっその事、俺様と付き合っちゃうってのは……」
「黙って…」
「ムギュギュゥゥ!」

はぁ……て言うか……

「そもそもなんで付き合うの前提?皆の気持ちには向き合うつもりだけど、受け入れるかは別の問題でしょ。真剣に考えて、やっぱりそう言う関係にはなれないって結論も……」
「え…?」
「何?」
「……」
「?」

ムーは本当に分からないと言った表情で……

「いや…お前、アイツらのことすでに大好きだろ…?」
「…………そう言う聞かれ方すると『いいえ』とは言い辛いじゃない…」
「ウソだろ!?レヴァ、無自覚か?鈍感過ぎるってもんだろ!まさか、まだそんな段階で悩んでたなんてよぉ!これじゃいつまでたっても結論なんて出ねぇぞ!」
「ちょっと、どうしたの?」
「いいか、レヴァ!客観的に見たら、お前は十分3人を恋愛対象として意識している!」
「!」
「好きって言われて喜んだり、キスされて舞い上がったりしたのは何でだ?お前にもそう言う気持ちがあるからだろ!」
「そ、それは……好きって言われて嫌な気はしないでしょ!意識するのも仕方ないじゃない…!」
「例えば他の奴ならどうだ?そうだな…アルマスとかに同じことされたらどうする?」
「ありえない……」

ありえない……?

「あ…………」
「おう!やっと分かったみてぇだな!」

そうか……あの3人だからこそ、私は…………

「あ…あぁ……!」

堪らず布団に潜り込む。いても立ってもいられず、ひとしきりバタバタと暴れ回る。

(胸が…苦しい……)

自覚した……自覚してしまった……皆、こんな気持ちを抱えていたなんて…

「私、3人のことが…好きなんだ……」

暴れたのと動悸で全身が熱い。と、同時に…

「ふふっ…はは…!」
「レヴァ…大丈夫か?」
「ん…平気よ。ちょっと嬉しいだけ…」
「嬉しい?」

やっと皆と同じ想いを持てた。気付けた。

「自分の気持ちが皆とは違うんじゃないかって、少し不安だったから…」
「そうか。よかったじゃねぇか!まぁ俺はちょっぴり残念だけどな…レヴァの恋を陰ながら応援するぜ!」
「……1度しか言わない…あ、ありがとう…」
「レヴァがデレたっ!?」

なんか、はっきり"恋"とか言われると恥ずかしいんだけど…



その後、私はティルが眠る部屋向かう。親友に大事な報告をするために。
ティルはいつも通り、封印されたままの姿で出迎えた。

「ティル、私は絶対にあなたとの約束を果たす。待ってて…それと、あなたが目覚めたら…私の大事な…大切な人達を紹介するから……驚かないでね?」

こんな気持ちでティルの前に来るのは初めてかもしれない。



翌朝、私はある決意を胸に広間に居た。3人は普段と変わらない生活を送っている。
朝食の準備が整い、カリスも席についたところで、ゆっくりと切り出した。

「ねぇ…食事の前に、皆に大事な話があるの…」

3人は首をかしげ、こちらに向き直る。深呼吸をし、皆の目を順に眺め、高らかに宣言した。

「現時点より、私達ディスラプターズは恋愛禁止ね…」

ピシリッと3人が固まる音がした気がする…
でも、これでいい。これが私の決断。

さぁ、3人がどう出るか……私の戦い(恋愛)は今、ここから始まる。

第1部END

588名無しさん:2019/12/28(土) 22:45:19
よいぞ…波乱の幕開けだ…

589名無しさん:2019/12/29(日) 00:27:51
このまま普通にディスラプとネチョネチョするもあり、ありえないと言われたアルマスが巻き返すのもあり、目覚めたティルが本気出すのもあり。ついでに言うとマスターとリサの参戦も無しではない!
レヴァの周りってヤバくないか?

590名無しさん:2019/12/30(月) 06:38:34
素晴らしすぎて悶える。最高です。

591チャレンジアロンちゃん:2019/12/31(火) 23:59:51
チャレンジアロンちゃん18

これはアロンダイトをバカにするものではございません出来ないアロンを愛でるためのものです

アロンダイト
「マスター私には越えなければならない宿敵がいます」

マスター
「なに?」

アロンダイト
「それはテーブルクロス引きです!」

アロンダイト
「あいつのせいで私は恥をかきましてや怒られる始末...」

マスター
「怒られたことに関してはアロンのせいだろ」

アロンダイト
「私は今日のために特訓に特訓を重ねました」

カシウス
「そしてアロンダイトのための特設ステージ」

アロンダイト
「私は今日ここであいつに勝ちます!」

隊のみんなが応援しに来た

カシウス
「頑張って」

アバリス
「頑張ってください」

ラグナロク
「あなたならできるわ」

アルマス
「絶成功するわ」

フェイルノート
「まあ少しは期待するわ」

アロンダイト
「皆さん...ありがとう行きます!!

592チャレンジアロンちゃん:2020/01/01(水) 00:15:01
>>591
アロンダイトは目をつむり決心したように目を見開きテーブルクロスを引いた

アロンダイト
「はぁ!」

テーブルクロスは見事にテーブルの上の物を巻き込みテーブルごとひっくり返った

アロンダイト
「.............」

マスター
「............」

一同
「..........」

ものすごい沈黙の中カシウスがふと時計を見た

カシウス
「あ、年が明けてる」

アロンダイト
「....ん、んん」

アロンダイトはわざとらしく咳払いして一言

アロンダイト
「今年も一年間よろしくお願いします!!!」

マスター
「こちらこそよろしくお願いします!!」

二人の声が年明けの夜に響くのであった

593チャレンジアロンちゃん:2020/01/01(水) 00:16:26
明けましておめでとう
今年もよろしくお願いします
今年もぼちぼちとSSを書いていきます

594名無しさん:2020/01/01(水) 09:44:12
あけおめ!
アロンちゃんはテーブルクロス引きの練習してね!

595名無しさん:2020/01/01(水) 10:37:23
やっぱアロンちゃんだけSSのレベルが突出しているな

596名無しさん:2020/01/01(水) 10:54:42
やっぱアロンちゃんだな

597ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:01:06
ティルフィング✕マスターのSSです。

少し長めになってます。

SS投稿前に本編学園ストーリーの補足をザックリしておきます。


黒い霧……負の感情によって発生する自然現象。黒い霧に包まれた者は、異族を生み出し、自我を失ったキル姫となる。

マスター……女の子しかいない学園に特待生枠できた唯一の男性生徒。被害者本人の悩みを解決することで黒い霧を払うことができる特別な存在。

ティルフィング……マスターと同じく特待生。黒い霧を見ることができる。皆の学園生活を護るために、人為的に黒い霧を発生させるMAIを追っていた。MAIがいなくなった今は、普通の学園生活を送っている。

もしかしたら設定が間違えてるところがあるかもしれませんが、暖かい目で見守って頂けると嬉しいです。

次レスからSSを投稿します

598ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:02:06

黒い霧による生徒の異族化。

デュリン理事長のもと、僕とティルフィングは特待生として黒い霧の対処をしていた。

そう、それはもう昔の話。

MAIによる黒い霧の騒動を終え、ティルフィングは晴れて普通の学園生活を送ることになった。

今となっては同じ学校の同じ教室で授業を受け、彼女と共に学園生活を過ごしている。

赤点スレスレの僕はティルフィングに勉強を教えてもらうことが多かった。

ティルフィングは優等生だ。

文武両道。才色兼備整。整った顔立ち。綺麗な桃色の長髪。

高嶺の花だとしても。

それでも僕は彼女のことがーーー

599ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:03:03

放課後の教室。

マスターに頼まれ数学の勉強を教えていた。

彼はため息をつきテキストを見つめる。

「マスター?」

「あ、ごめん……。なんだったっけ?」

「手が止まってましたけど、どこか分からないことがありましたか?」

「いや少しぼーっとしてただけ。だから大丈……」

再びテキストに視線を戻したマスターの目が点になる。

「大丈夫じゃ、ないかな……。数式によく分からない記号やアルファベットが混じってる気がする……」

「ここの問いは最初に……」

解き方を説明している途中でマスターと指が触れ合う。

「あっ……」

思わず手をぱっと引っ込める。

少し顔が熱くなった気がした。

「す、少し近すぎましたね」

「そう、だね」

ぎこちない会話。最近はいつもこんな調子だ。

「ティルフィング、採点を頼んでいい?」

解答用紙と答案用紙を見比べる。

「81点、ですね」

「よし、この調子なら数学も心配ないかな」

「……はい」

彼は努力家だ。

苦手だったはずの勉強も、もうほとんどできるようになってきている。

「……」

「ティルフィング?」

彼と一緒にいられるのは勉強を教えている時だけ。

「……すごいです。こんなに短い間に勉強ができるようになって」

「講師が優秀だからね」

彼の役に立てたことを喜ばないといけないのに。

「油断は禁物です。きっちり復習しないとすぐに忘れてしまいますから、もう少し頑張りましょう」

皮肉なことに、勉強を教えることで少しずつマスターと過ごせる時間が少なくなっていた。

「……もうこんな時間か」

外を見ると、もう陽は沈みかかっていた。

600ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:03:59

寮までの帰り道、私は彼と肩を並べて帰宅する。

「あの、よかったんですか?校舎から女子寮までそんなに距離はないのに、わざわざ送ってもらって……」

「僕としては勉強を遅くまで見てもらってるし、それに」

マスターは照れた表情でぽりぽりと頬をかく。

「いや本当は僕の方がそうしたいだけなんだ。わざわざ付き合わせてゴメン」

「あ、いえ……」

彼の何気ない言葉が嬉しくて、でもそれを悟られたくなくて。

俯いて、素っ気ない返事をしてしまう。

別に私が特別というわけではない。

勘違いしちゃいけないと自分に言い聞かせながら、それでも。

「今度のテストの点がもしよかったら、大切な話があるんです」

気持ちを抑えることなんてできなくて。

「……いいですか?」

上目遣いにマスターを見つめる。

「うん。赤点の心配はないと思うけど、ちゃんといい点を取れるように頑張るよ」

601ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:04:51

夜8時。レーヴァテインの部屋を訪ねた。

いくら寝るのが好きな彼女でもこの時間ならまだ起きてる、……はず。

ノックをすると、部屋の中から「ちょっと待って」と彼女の気だるげな声が聞こえた。

「……ティルフィング、どうしたの?」

「ちょっと相談したいことがあって……」

彼女には友達の話だと言って、悩みを聞いてもらった。

今日は期末テスト最終日の前日。

マスターはテストを順調に解いているようだった。

明日彼を呼び出して想いを伝えたいけど、初めてのことにどうしたらいいかわからなくて。

「……それってティルフィングのこと?」

バレバレだった。

「な、何でですか?」

「ティルフィングに仲の良い友達っていなかったと思ったから」

「う……」

この学園の特待生として人知れず黒い霧の対処をしていた私は、長いこと普通の学園生活を送れていない。

今でこそ皆と変わらない生活を送れているが、それはつい最近、2ヶ月前からだ。

孤立はしていないものの、特別仲の良い友達がいないことも事実だった。

「それにしても、友達の話ってベタすぎ……」

レーヴァテインは口元を押さえてくすくすと笑っている。

「わ、笑わないでください……」

顔から火が出る思いだった。

そうして数十分。

面倒くさがりな彼女にしては珍しく、私の相談を最後まで真剣に聞いてくれた。

「私も恋愛経験はないんだけど、どうして私に相談したの?」

「女の子で一番話しやすかったのがアナタだったからです」

「そ……」

素っ気ない返事だったけど、彼女の口元は緩んでいた。

「ま、気が向いたらまた相談に乗ってあげるから。適当に頑張って」

今度一緒に授業サボる?い、いえ私は……と、たわいもないことを彼女と話して夜を過ごした。

602ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:05:53

黒い霧。

負の感情が顕在化したもの。

この霧をまとったものは、異族を生み出し続ける。

黒い霧が見えるのは私はマスターのような一握りの人だけ。

そして黒い霧を払えるのはマスターだけだ。

自分にしかできないことがあるのなら、それを誰かのために役立てられるなら、この力をみんなのために使おうと誓っていた。

きっと彼も私と同じなのだと、そう思っていた。

事実彼は黒い霧を払うためにいろんな生徒の悩みを解決してきた。

でもそれだけじゃなかった。

MAI が引き起こしてきた黒い霧騒動を終え、数カ月。

自分の進級がかかっているのに彼はそれを投げ出して生徒を助けに行ったことがある。

他にも数え出したらきりがない。

黒い霧が絡まなければ彼はただの一般生徒だ。

何の力もない一人の生徒。

それでもマスターは困っている人に手を差し伸べることを止めなかった。

ーーーあぁ、そうか。

私が助けられるのは私の力が及ぶところまでだけど。

ーーーこの人はきっと。

彼は誰も見捨てない。自分の力が及ばずとも、特別な力がなかったとしても関係ない。

そう気づいてしまったその日から、私は彼に惹かれていた。

603ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:07:08

「はいそこまで。後ろの列から答案用紙を回収しなさい」

ハルパー先生の掛け声で最後のテストが終了した。

「そこ、諦めてペンを置きなさい。指導されたいのかしら?」

先生に脅され、慌てて手を止める生徒も少なくなかった。

それぐらいに最後のテストは難しかった。

隣の席ををちらりと見てみると、マスターは満足気な表情で答案用紙を渡していた。

彼にこっそり声をかける。

「マスター、約束のことなんですけど……、放課後に体育館裏に来てもらってもいいですか?」

「あ……、う、うん」

少し緊張したような面持ちで返事をするマスターの頬に、少し赤みが差していた。

もしかしたら私の気持ちはもうすでにバレているのかもしれない。

604ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:07:45

人生で初めての告白に緊張していた。

両思いだったらいいなとか、振られたらどうしようだとか。

体育館裏で待っているこの間にも、いろんな考えが頭をめぐっていく。

日直の仕事が終わったらすぐに行くよと彼は言っていた。

そうして待つこと2時間。

結局彼が、姿を現すことはなかった。

晴天だった空は、雲に覆われ始めていた。

605ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:08:41

ポツポツと雨が降り出した。

ーーー体育館裏で待ってます。何かありましたか?

LINEでマスターにメッセージを送ったが、既読はつかない。

電話をかける勇気はなかった。

その場にしゃがみ込み膝を抱える。

どれだけ待っても返事はこない。

「…………」

少しすると雨足は強くなったが、それでもその場を動く気にはなれなかった。

「……風邪ひくわよ」

傘が差し出される。

顔を上げると待ち望んだ彼ではなく、レーヴァテインが心配そうに私のことを見ていた。

「はは……、ありがとうございます」

傘を受け取り、礼を言う。

せっかく来てくれたのだ。これ以上心配させちゃいけない。

……ちゃんと笑えただろうか。

「……別に強がらなくていいから。帰ろう」

彼女にはお見通しだったみたいだ。

雨はやまない。

暫くはやみそうにない。

606ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:09:53

お風呂に入って、ご飯を済ませて、ベッドの上に寝転がる。

「……マスター」

彼は体育館裏に来てくれなかった。

何がいけなかったんだろう?

いや、彼は約束を破るような人じゃない。

でも、もしかしたら。

嫌な考えが頭をよぎる。

「まだ、振られたわけじゃ……」

突然スマホが鳴り出した。電話だ。相手は……

「マスター……」

画面に表示された「通話」のボタンをタップするだけ。

それだけでいいのに。

指が震える。

怖い。

「あ……」

スマホが鳴りやむ。

かけ直すことはできなかった。

心の中にドロドロしたものが湧き出してくる。

苦しい。辛い。堪えられない。

   ・・・・・・・・・・・
いつか一度経験したことがある嫌な感覚に襲われる。

その直後。 LINE にマスターからメッセージが届いた。

ーーー今日は本当にごめん。明日改めて話がしたい。君さえよければ9時に体育館裏に来てほしい。

明日は土曜日で授業はない。

ーーーわかりました。

LINE を返信する。

「…………良かった」

嫌われた訳じゃなかった。振られた訳じゃなかった。

スマホを両手で握り、胸に抱き込む。

安心して、気が緩んだのかもしれない。

「本当に、良かった……」

瞳からポロポロと涙が零れ落ちた。

いつの間にか無くなった嫌な感覚のことなど、もう忘れ去っていた。

607ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:10:52

体育館裏。約束の時間。

昨日の雨はあがり、空は晴天になっていた。

「昨日はごめん」

マスターは何の言い訳もせず、謝罪の言葉とともに頭を下げた。

「い、いえ、頭を上げてください。私の方はそこまで急な用事じゃなかったので……」

「でも、大切な話だったんだよね?」

「……はい」

言わなきゃ。

アナタのことが好きだって。

「だから、今……、聞いて貰ってもいいですか?」

「……うん」

マスターは顔を上げ、真剣な表情で私を見つめた。

「私は……」

口が渇く。心臓がうるさい。

もし……、

「アナタのことが……」

もし、振られたら。

今の関係を居続けることはできるの?

「…………あ」

きっと堪えられない。

その先の言葉を続けることはできなかった。

「ティルフィング?……っ!」

マスターのスマホが、私の告白を遮るように鳴り出した。

電話の相手を確認したマスターの顔つきが険しくなる。

「ごめん、急用ができた」

「……え、えっと」

「この埋め合わせは必ずするから!」

まるで何かに急かされてるかのように、彼はこの場を去っていった。

引き留めることなんてできなかった。

「……また、言えなかったな」

マスターのスマホに着信がなくても、きっと想いは伝えられなかったと思う。

臆病な自分に嫌気が差す。

何も考えたくない。

心の底からにじみ出た感情に気付かないフリをした。

608ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:12:19

十数分ほどだろうか。

何をするでもなく体育館裏に佇んでいた。

知らず知らずの内に、もう無視できないレベルで、

・・・・・・・・・・・
心が何かに蝕まれていると、気付きかけたその瞬間に。

レーヴァテインからLINEがきた。

ーーー今ヒマ?電話していい?

短くて、それでいて気を許してくれてると感じるようなそんなメッセージ。

レーヴァテインへ電話をかけると、彼女は直ぐに出てくれた。

「おはようございます。どうしたんですか?何か困ったことでも……」

「別に。ヒマしてたから会えないかなって……。忙しければ別にいいんだけど」

「今丁度ヒマになったところです、けど……」

そういえばマスター以外だと、連絡先はまだレーヴァテインしか知らない。

「ティルフィング?」

「……もしかしたら、私達って、その……、と、友達だって思ってもいいんですか?」

「…………はぁ。別にワザワザ確認するようなことでもないでしょ」

「あ、ありがとう……」

少しだけ心が軽くなった気がした。

今どこに居るの?
学校です。
……流石優等生、じゃ今からソッチ行くから。

そんなこんなでレーヴァテインと遊ぶ約束をした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
溢れかけていたものがギリギリで留まる。

彼女のお陰で、少しだけ勇気を出すことができそうだった。

LINEでメッセージを送る。

とても簡素で、飾り気のない言葉。

レーヴァテインと待ち合わせる為に校門前へ向かおうとして。

そして。

「ーーーえ?」

私の目に入ったのは、校舎の玄関でロンギヌスと晴れやかな表情で話すマスターの姿だった。

609ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:13:00

ーーーごめん、急用ができた。

彼は確かにそう言っていた。

「なんで……」

マスターが着信を受けたのは、つい半刻程前だ。

だから、彼がここに居るのは。

今もロンギヌスと嬉しげに会話をしてるのは。

そんなのはきっと何かの間違いだ。

「……うそ」

心が軋み、内から嫌なモノがとめどなく溢れていく。

せき止めるモノは何もなくて。

もう、ダメだった。

610ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:13:44

ーーーーーー

ーーー

彼女は、ティルフィングは優し過ぎる。

MAIによる黒い霧の騒動は決着した。

人為的な黒い霧による被害は無くなった。

デュリン理事長は、ティルフィングに残った時間を普通の学園生活にあてるように指示を出してくれた。

だけど僕の方はその翌日に理事長室に呼び出されていた。

デュリン理事長が真剣な面持ちで話を切り出す。

「わかってるとは思うけど、黒い霧自体が無くなった訳じゃないわ。そして、黒い霧を払うにはアンタの力が欠かせない。悪いけど、これからも力を貸して貰うわよ」

「僕にできることなら」

「私にできる限りのフォローはするわ。必要ならティルフィングの手も借りて……」

「待って。僕はもうティルフィングの力を借りるつもりはないんだ」

「…………はい?」

ティルフィングはずっと自分の学園生活を犠牲にして、皆を護ってきた。

僕の知らない所で、きっと何度も助けられてきたのだろう。

だから今度は僕がーーー。

「そういうことなら反対しないけど、異族を相手取るとなったら協力者は必要よ。黒い霧が見えるのは……、レーヴァテインって子は確か見えてた筈だけど……」

彼女は極度の面倒臭がりだ。

手伝ってくれるかは分からない。

「一人、心当たりがあります」

611ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:14:34

そうして僕は、黒い霧が見える人物にして人助けが趣味の魔法少女、ロンギヌスに協力を頼んだ。

とはいうものの、黒い霧の被害者が出ることはなかった。本当に、ごく最近までは。

テストが終わり、ティルフィングから大切な話があると言われた。

日直の仕事を済ませて、約束の場所に向かう途中。

黒い霧を滲ませている人物を見つけてしまった。

直ぐにロンギヌスに連絡をとった。

今思えば焦っていたんだと思う。

僕はロンギヌスと合流するまでの時間を惜しみ、その人を説得しようとして、そして。

かえって刺激してしまった僕は、異族によって気絶させられた。

僕は後から来たロンギヌスに救われた。

僕が目を覚ます頃には、黒い霧の人物はもう居なかった。

そして土曜日、ティルフィングに改めて大事な話を聞いてる最中に、ロンギヌスから着信が入った。

彼女が被害者を見つけてくれたので、協力して黒い霧を払った。

ロンギヌスの尽力で、事は20分程で済んだ。

「ありがとう、助かったよ」

「い、いえ!私なんかでよければいつでも力になりますから。また頼ってくださいね」

やっと一段落がついたと、そう思っていた。

「あああああああああ!!!」

聞き慣れた声。

悲鳴がした方を振り向くと、そこには。

「ティルフィング!?」

黒い霧に覆われたティルフィングの姿があった。

612ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:15:38

「ああああああァァァ!!!」

絶叫が響き渡る。

ティルフィングは痛みに耐えるかのように自身の身体を抱きしめ、うずくまった。

黒い霧は今まで見てきたどれよりも暗く、昏く。

見る者さえ呑み込みかねない程の濃い闇となって、ティルフィングの身体にまとわりついていった。

「ティルフィングさん、どうして……!?」

「ティルフィング!呑まれちゃダメだ!」

「な、んで……」

「ーーーーーー!」

顔を上げたティルフィングは僕らを見て、更に悲痛な表情になっていた。

「私じゃ、ダメなんですか?……私は、頼りないですか?」

違う。

彼女を護ると誓った筈なのに……。なんで

「アナタの傍に居たいと願ったら、ダメですか?」

ーーーなんで僕は、彼女にあんな表情をさせてるんだ。

ティルフィングにまとわりつく暗闇から、次々と異族が出現していく。

瞬間、ロンギヌスが僕を庇うように異族のもとへ駆け出した。

「『封印解除(レリーズ)』!!」

ロンギヌスは戦闘態勢に入り、顕現した槍を振るい異族を薙ぎ払っていく。

「マスター、私が異族を引きつけます!下がってください!」

「ダメだ!前に出過ぎたら……!」

ロンギヌスが倒す以上のペースで、今もなお異族が産み落とされている。

そして、何より。

「うっ……!今まで戦ってきた異族と、レベルがちが……、きゃ!」

ロンギヌスが善戦する程に、異族は急激に力を増していく。

ティルフィングの姿はもはや見えず、闇だけがそこに佇んでいた。

「あ……!」

槍が遠く弾かれてしまう。

「ロンギヌス!!」

気がつけば彼女の元へ駆け出していた。

ーーー間に合わない!

異族の武器がロンギヌスを捉えたその瞬間。

613ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:18:50

「ふっ……!」

横合いから駆けてきたレーヴァテインの飛び回し蹴りが異族に炸裂し、周囲の敵を巻込んで吹き飛ばした。

「れ、レーヴァテイン、さん……?」

「なんか面倒臭そうなことになってるけど、大丈夫?」

「あ、えっと、助かりました……」

「……あんまり無駄話はできそうにない、か」

友達待たせてるんだけど……、とレーヴァテインは一人ごちりながら剣を呼び出しーーー

向かってくる異族を瞬時に切り払っていった。

「すごい……」

「……闘えるなら見てないで加勢して」

「ご、ごめんなさい!」

ロンギヌスが直ぐに槍を構え直し、異族との距離を計りながら冷静に切り結ぶ。

レーヴァテインもまた、僕をジロリと睨みながら異族を牽制した。

「……マスター、言いたいことがあるんだけど」

「後にしてほしい」

「じゃあ質問を変えるけど、あの黒い霧は何?今まで見たことないくらい濃くて、明らかにヤバそうなん……」

「ァァァァアアア!!!」

慟哭がレーヴァテインの疑念を遮る。

闇が収束され、人の姿を形成していく。

レーヴァテインの表情が驚愕に染まる。

彼女の目に映ったそれは、紛れもなくーーー、

「ティル、フィング……?」

「アアアア!!!!」

一瞬の隙だった。

レーヴァテインは、受け入れることができない現実に硬直して

黒を身に纏ったティルフィングが闇から剣を精製し

次の瞬間にはレーヴァテインの目の前で剣を振りかぶっていて。

「あ……」

激痛が全身を貫いた。

614ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:21:27

「が、ぁ……」

斬りつけられた背中が熱い。

・・・・・・・・・
僕に突き飛ばされたレーヴァテインは、目の前で起きた事態に呆気にとられていた。

ロンギヌスが駆け寄り、僕の名前を必死に呼んでいる。

僕が倒れた瞬間、異族は全て消え去っていた。

そしてティルフィングを包んでいた闇もまた消えていて。

「う、そ……」

だから、彼女の浮かべた表情もしっかりと見えてしまった。

ーーー立て。今すぐ立ち上がって、僕は大丈夫だと伝えるんだ。

ーーー彼女の表情をこれ以上曇らせるな。

ドクドクと傷口から血が流れ、想いとは裏腹に腕から力が抜けていく。

「あ、あ……、ぁ……」

ティルフィングはその場を逃げ出した。

ーーーく、そ……

彼女の背中を尻目に、僕は意識を手放した。

615ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:22:23

「…………ここ、は」

目を覚ますと、あまり見慣れない天井が目についた。

「ま、マスター!良かった……!」

「…………保健室?」

周りを見渡すとロンギヌスとレーヴァテイン、デュリン理事長に……、

「えっと、どなたですか……?」

「この子、命の恩人に失礼なこと言うのね」

金髪にメガネをした白衣の女性が保健室にいた。

何もわかってない僕に、デュリン理事長が簡潔に状況を説明してくれた。

「ロンギヌスから連絡を受けて、私の伝手で彼女に来て貰ったの。アンタ相当危なかったのよ!」

金髪の女性、アスクレピオスさんは凄腕の名医だと理事長は自慢げに話した。

まだ僕が生きているのは、どうやら理事長達のお陰らしい。

「そう、ですか。……ティルフィングは!?っぐ、ぁ……っ!」

「こ、こらっ!応急処置を済ませたとはいえ、アナタは重症なのよ!急に身体を動かさないで!」

そんなこと、どうでもいい!

意識がハッキリして、我にかえる。

「僕が寝てからどれくらい時間が経った……!?」

「あ、えと、まだ2時間とちょっとくらいです」

そんなに時間は経っていない。

多分だけど、まだ彼女はあそこにいる。

「早く、ティルフィングのところに行かないと……!」

「だ、ダメですよ!まだ起きたら!」

ロンギヌスの静止を振り切り、背中に走る激痛に耐えながら身体を起こす。

もう一秒でさえ時間が惜しかった。

616ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:23:25

「待って」

レーヴァテインが保健室のドアの前に立ち、僕を阻む。

「大体のことはロンギヌスに聞いた。マスターが黒い霧の対処をしてたこと、そのせいでティルフィングの約束を守れなかったこと……」

彼女にしては珍しく、その表情に悔しさを滲ませていた。

「友達を支えてあげられなかったのも、マスターに怪我をさせたのも私。…………ごめん。だから、ティルフィングのことは私に任せて」

「友達、か……」

こんな状況なのに僕は思わず笑みを零してしまった。

少し不謹慎だったかもしれないけれど。

学園の高嶺の花とされていたティルフィングに、親しい友達ができていたことが嬉しかったから。

「理由は分からないけどティルフィングから黒い霧はもう消えてる。だから……」

黒い霧を祓えるのはこの学園に僕だけだ。

そしてティルフィングにまとわりついていた黒い霧は既に消えている。

だけど。

「違うよ、関係ない。黒い霧だとか異族だとか、今はそんなものどうでもいい」

「……それって」

「ティルフィングが苦しんでることに、僕が堪えられない。それに」

 ・・・・
「大切な話をこれ以上先延ばしにする訳にはいかないから」

「……!」

レーヴァテインは少し逡巡してから、僕の目を見て……、

「……はぁ。分かった」

道を譲ってくれた。

「ありがとう!」

背中に走る痛みに耐えながら、真っ直ぐに目的の場所へと駆けていく。

スマホを確認すると、LINEにメッセージが届いていた。

それはとても簡素で、飾り気のない言葉だった。

ーーー好きです。

617ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:24:10

ーーーーーー

ーーー

「ちょ、ちょっと!レーヴァテインどいて!アイツ重症なんだってば!」

「ごめん、理事長。行かせてあげて」

理事長達を止め、マスターの背中を見送る。

彼はもう気づいている。

互いの気持ちに。その想いに。

今まではすれ違っていたけれど。

「はぁ……、バカらしい……」

だからきっと、二人なら大丈夫。

ーーーティル、頑張れ……

親友の恋路に、心の中でエールを送った。

618ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:25:04

ーーーーーー

ーーー

体育館裏に一人、私は膝を抱えてしゃがみこむ。

マスターがロンギヌスと嬉しそうに話しているのを見た。

マスターが理由もなく約束を反故にするような人じゃないことぐらい分かってる。それでも。

私との約束よりも彼女の方が優先されたことがどうしようもなく悲しくて、堪えられなかった。

私の心から溢れた闇の矛先は、マスターの傍にいる人に向けられた。

……本当は、途中から気づいてた。

ロンギヌスが、黒い霧に対処する為のマスターの相棒なのだと。

悔しかった。

マスターに、私を選んで貰えなかったことに。

黒い霧が見えるのは、面倒臭がりのレーヴァテインと私だけだと思っていたから。

マスターが勉強できるようになってから、一緒に過ごせる時間が減っていく中で。

彼の隣で笑顔を見せていたロンギヌスに、マスターの傍にいる彼女達に嫉妬して……。

この手でマスターを斬りつけた感触が、未だに忘れられない。

身体に張り付いた冷たさに、震えが止まらない。

「もう、皆に顔向けできない……」

恣意的な理由で皆を巻込み、傷つけた。

私は救う価値のない人間なのに。

「ティルフィング!!」

「ーーー!!」

愛しい人の声が耳に届いた。

619ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:25:57

彼が無事だったことに少し安堵しかけて、自分の浅はかさを呪った。

「……どうして、来たんですか」

 ・・・・
「大切な話を聞くため……、いや、するために来たんだ」

マスターはもうボロボロだった。

こちらに歩み寄ってくる彼はフラフラで、今にも倒れてしまいそうで。

「……もう、いいんです。今は抑えれてますけど、私が近くに居るとマスターを傷つけてしまいます」

多分、誰かに嫉妬する度に、マスターを遠く感じてしまうその度に、黒い霧が出てしまう。

「だからもう構わないで……」

この恋を諦めれば、誰も傷つけなくてすむ。

「…………LINE、見たよ」

「…………!」

ーーー好きです。

私が送った、たった4文字の簡素なメッセージ。

「凄く嬉しかった。……本当は、もしかしたらって前から思っていたんだけど」

「ーーー今の関係に戻れなくなるのが怖くて、僕は何もできなかったから」

「……え?」

彼は優しく微笑んだ。

「……最初は憧れだった。君は僕にないものを沢山持ってて」

心の内から少しずつ、私を蝕んでいた悪意とは違う暖かな想いが湧いてきた。

「勉強を沢山教えて貰って、帰り道を並んで歩いて。一緒の時間を過ごしてる内に、上手く言えないけど」

身体に浸透していた冷たい闇を、温もりがさらっていく。

「もっと、ずっと一緒にいたい」

瞳から、涙が零れ落ちた。

620ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:26:43

マスターの歩みは止まらない。

「わ、私のせいで、マスターは傷ついて……」

彼との距離が少しずつ縮まっていく。

「それに、また黒い霧が出るかもしれなくて……」

後、数歩。

「えと、あの……」

2人の距離が0になった。

キツく、強く抱きしめられる。

「君が好きだ。ずっと傍に居てほしい」

「……はい」

温もりで満たされる。

心も、身体も。

黒い霧は、一片も残さず消え去っていた。

621ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:27:24

マスターは私が泣き止むまで優しく抱きしめてくれた。

手を繋いで保健室に戻ると、彼はデュリン理事長にこっぴどく怒られた。

「バッカじゃないの!?重症だって言ってんでしょ!いいからさっさと寝てなさい!」

「あはは……」

マスターは渇いた笑いでお説教を聞き流していた。

「あ、あの……、皆さん、迷惑をかけてすみま……」

「ティルフィング」

頭を下げようとして、マスターに優しく遮られる。

「君のことを迷惑だなんて皆思ってない。だから」

「……はい。皆さん、ありがとうございました」

622ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:28:06

その後、マスターは保健室のベッドでぐっすりと眠り、残った皆で今後のことを話した。

マスターの怪我は、アスクレピオスさんが後日本格的に治療にあたるとのことだった。

今日は急患が入ったので、もう帰ったと聞いている。

全治数カ月の傷を1週間で治してみせると意気込んでいたそうだ。

私にまとわりついていた黒い霧はというと、レーヴァテインが推察をたててくれていた。

「昔、MAIとひと悶着あった時にティルフィングは一度黒い霧に呑まれてたでしょ。その時もティルフィングは自力でなんとかしてたけど……」

「多分ソレが残ってたんじゃないの?今回も前回も、マスターがキッカケで黒い霧を払ってた訳だし」

マスターとすれ違う度に心が霧に蝕まれる感触がしていたから、多分その通りなのだと思う。

恋愛相談から、今日の騒ぎまでレーヴァテインには世話になりっぱなしだ。

「あの、レーヴァテイン……」

「レーヴァでいい。……私も勝手にティルって呼ぶから」

「……レーヴァ、色々とありがとう」

「別に。今度サボりに付き合ってくれるならそれでチャラね」

「理事長本人の前で堂々とサボり宣言しないでくれる!?」

デュリン理事長はカンカンだった。

623ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:29:04

「問題はまた黒い霧が再発するかもしれないってことなのよね……」

理事長が悩ましげにボヤく。

「それなら多分もう大丈……」

「ティルをマスターの部屋に泊めれば?」

……………。

私の主張に被せて発言したレーヴァがとんでもないことを言った。

「な、何言ってんの!?女の子をコイツの部屋に入れさせたらどうなるか!?」

「食べられちゃうかもね」

ちょっとだけ想像して、顔が凄く熱くなってしまう。

ロンギヌスも顔を真っ赤にして、あぅぅと息を吐きながら俯いていた。

……レーヴァはとっても意地悪げな笑みを浮かべている。

「大体男子寮に女の子を連れ込める訳ないでしょ!」

「男子寮っていっても、マスターしかいないんでしょ?」

「間違いが起きたらどうするのよ!?」

「もう付き合ってるみたいだからいいんじゃない?」

「で、でも……!」

「ティルの黒い霧はマスターがキッカケで払われてるから、もしもの時を考えたら同棲させたほうがいいんじゃないの?」

「ぐっ……!」

デュリン理事長の主張が悉くレーヴァに潰される。

さらっと付き合ってるとか、間違いが起きてもいいとか、同棲とか、そういうことを言わないでほしい。

「黒い霧は問題だけど、いやでも生徒の貞操が……!」

「もういい、この学園は黒いモヤモヤが危ないですってツイートしよ……」

「お願いわかったからやめて!」

終いには理事長がレーヴァに泣きついている。

私の耳元で、貸し一つね、とレーヴァが囁いた。

「それじゃ帰るから。遊ぶのはまた今度ね」

「メチャクチャな一日だったわ……」

そう言ってレーヴァと理事長は帰っていった。

「私ももう戻りますね」

ロンギヌスは帰る支度を終え、少し考える素振りを見せて。

「……ティルフィングさん、マスターのことなんですけど」

624ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:29:40

保健室に二人、私とマスターが残される。

先程、帰り際にロンギヌスから聞いた話を思い返す。

ーーー黒い霧の話をする時にマスターと時々連絡を取るんですけど、マスターはティルフィングさんのことばかり話すんです。

ーーーティルフィングさんのおかげで成績が上がったとか、どうしたらもっとティルフィングさんがクラスに馴染めるかとか。

ーーーマスターが私の力を貸して欲しいって頼んだ時、言ってました。ティルフィングさんが普通に友達を作って、
普通の学園生活を送れるように協力して欲しいって。

ベッドでぐっすりと眠る彼の頬を撫でる。

私をずっと守ってくれていたこと。

私の為に密かに頑張ってくれていたこと。

彼は私に、一言も言わなかった。

きっと、私が訊ねなければずっと言うつもりはないのだろう。

顔を寄せ、彼の頬に口付ける。

「ありがとうございます、マスター……」

小さく呟いた想いは、彼の耳に届くことはなかったけれど。

いつかちゃんと伝えれるといいな。

625ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:35:47
今回はここまでになります。

次回からはマスターとティルのイチャラブ同棲生活が始まる予定です。内容も多分シリアスじゃなくてシリアルになります。

過去に投稿したEPILOGEのSSよりも長くなりました。
区切りのいいところで切ったつもりですが、もっと分けて出した方がいい等の意見や感想があれば、よければお願いします。

626ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/02(木) 22:40:42
学園ティルの可愛さを伝えたくて書いたSSですが、ティルを少しでも好きになって頂けたら幸いです。

ファンキルは丁度学園の復刻をしてるので、まだ手に入れてない方は是非ゲットして愛でてあげてください!

お目汚し失礼しました。

627ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:10:48

ーーーーーー

ーーー

「ん……」

保健室で目を覚ますと、既に陽は沈みかけていた。

傍でティルフィングが椅子に座ったまま、すやすやと眠っている。

「いっつ……」

まだ背中の痛みはひいてない。

彼女を起こさないように慎重に身体を起こす。

いろんなことがあった一日だけど、結果的には良かったと思う。

「僕が、ティルの恋人に……」

彼女のことをティルと愛称で呼びたいけど、本人の前だと恥ずかしくてなかなかできない。

「……女の子の寝顔を勝手に覗くのは悪いかな」

そう思いつつ、まじまじと見つめてしまう。

まつげが長くて、顔立ちは整っていて、柔らかそうな唇に。

「……綺麗だな」

そして、次第に彼女の耳は赤くなり、目をキュッと瞑って、頬も朱に……。

………………。

「も、もしかして……、起きてた?」

ティルフィングは両手で顔を覆い、俯き、ぽそりと呟いた。

「恋人に……、のあたりから……」

「あ、えっと………………、ごめん」

恋人ができて浮かれていた僕の発言は、ほぼ全て聞かれていた。

……今度からは気をつけよう。

628ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:11:49

寮に帰った僕は、急いで部屋の片付けを始めた。

ーーー背中の傷のこともありますし、後でマスターのお部屋にあがってもいいですか?

本来ならば男子寮に女子は入れないがデュリン理事長も了解済みだと歯切れが悪そうに言っていた。

「まぁ、物が少ないからそんなに散らかっては……、いっ…、」

物を取ろうとして屈む度に背中が痛みを訴える。

でも堪えられない程ではなかった。

「応急処置だって言ってたけど、ホントに名医なんだな……」

傷口は残っているものの、完全に塞がっている。

正直死ぬかもしれないと思っていた傷を治すものだから驚き物だ。

そんなことに関心していると、ピンポーンとチャイムが鳴り響いた。

おぼつかない足取りで玄関に向かう。

「あ、お待た……」

なんで彼女は旅行用と思われる大きいカバンを持っているのだろう。

どこかに泊まるのかな?

…………。

「あ、やっぱり……、迷惑でしたか?」

「そんなことない」

若干食い気味に答える。

上目遣いでそんなことを言うのはズルい。

それに彼女の荷物だって、僕の思い込みかもしれない。

「そのカバンは……?」

「き、着替えと、日用品……、です」

クロだった。

「泊まってもいいですか……?」

まっクロだった。

「……うん」

そして、僕もちゃんと男だった。

629ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:12:54

「あ、あ〜……、なるほど。そういうことだったのか……」

ティルフィングが僕の部屋に泊まるのは裏があった。

黒い霧の再発を考慮した暫定措置として、デュリン理事長がしぶしぶ決断を下したらしい。

そんなことだろうとは思ってた。

誘われてるのかと期待したりは断じてしてない。

「それじゃ、えっと……、いらっしゃい?少し散らかってるけど、気にしないで」

「あ、えと……、お、おじゃまします……」

恋人を部屋にあげる。

2人で住むには少し狭い部屋かもしれないな、と考えてるとティルフィングがポソリと呟いた。

「……マスターの匂いがします」

「…………」

思わず彼女を見つめてしまう。

「あ、ち、違います!変な意味じゃなくて!その……、お、お夕飯作りますね!」

僕と視線がぶつかったティルフィングは顔を真っ赤にしながら抗弁し、キッチンに逃げ込もうとして……。

「キッチンって、どこですか……?」

寮の部屋の一室にそんなものはない。

630ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:17:05

「本格的なものなら食堂に行くか、小さくても構わないなら各階の端っこにキッチンがあるよ」

ついでなので彼女に寮の中を紹介した。

「寮長室や食堂にも人がいませんでしたけど、今日って何かあるんですか?」

「いや、この寮はいずれ男子寮として正式に使う予定らしいけど、今は僕しかいないから。……僕一人に人件費はかけれないから、寮長も誰もいないよ」

「え?じゃあ、晩ご飯や朝ご飯は……?」

「大抵はコンビニ弁当か、クックパッドを見ながら自炊してるよ」

     ・
「マスターは料理ができるんですね……。すごいです」

「簡単なものしか作れないけどね。……ん?」

何か凄く……、会話に違和感があった。

……なんだろう?

「あの……、マスター」

ティルフィングが少し聞きづらそうに、僕に訊ねる。

「……トイレってどこですか?」

「あー……」

ここは男子寮だ。(僕が知らないだけで、食堂の裏とかにはあるかもしれないけど)女子トイレなんてない。

部屋の中のトイレが洋式なので、トイレは隣の空いた部屋を使って貰うことにした。

違和感のことなど、頭から消え去っていた。

631ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:18:45

お夕飯を作ってきますね。部屋でゆっくりしててください、とティルフィングが言われてから2時間が経過した。

「メチャクチャ凝ったものを作ってるのかな……?それとも……」

何かあったのか。

黒い霧のことを思い返し、心配になってきた。

「様子を見にいこう……」

そう、僕は迂闊だった。

                ・
ティルフィングは確かに「マスターは料理ができるんですね」と言っていた。

つまり、彼女は……、

「あ、あれ……?な、なんで、上手くいかな………、あ」

キッチンで悪戦苦闘しているティルとばっちり目が合う。

ティルの顔がみるみるうちに羞恥に染まっていく。

「僕も手伝うよ」

余談だけど、ティルのエプロン姿は可愛かった。

632ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:21:18

ティルフィングが隣の部屋で風呂に入ってる内に、僕は風呂場で身体を拭くことにした。

背中の傷が癒えるまで、湯船に浸かるなとアスクレピオスさんが強く念押ししていたとティルフィングに教えて貰った。

「ティルフィングに身体を拭かせてくださいって言われた時はビックリしたけど……」

きっと罪悪感に駆られて申し出たのだろう。

背中の傷は塞いで貰ったものの、生々しい傷跡が残っている。

ティルフィングに傷跡を見せるつもりはなかった。

身体を拭き終え、時折走る痛みを堪えながら寝間着(という名のジャージ)に着替える。

暫くすると、コンコンとドアがノックされた。

「マスター、入ってもいいですか?」

「うん、いいよ」

「おじゃまします……」

ティルフィングが遠慮がちにドアを開け、部屋にあがる。

「あ、あの……、何かヘンですか……?」

「い、いや……」

ティルフィングのパジャマ姿に目を奪われる。

「なんていうか、その……」

何か言わないとと思いつつ、余りの可愛さにドモッてしまう。

「……すごく、可愛いと、思う」

「あ、ありがとうございます……」

結局、月並みなことしか言えなかった。

633ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:22:33

恋人同士。二人きり。

「「…………」」

お互いに意識しあって、気まずくて。

とりあえずテレビをつけて空気をもたせる。

ソファに並んで座ってバラエティ番組を眺めた。

風呂あがりの女の子のいい匂いがする。

内容なんて一つも頭に入ってこなかった。

634ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:23:37

夜10時。

「……そろそろ寝ようか」

「は、はい……」

ティルフィングは緊張してるのか、俯いてしまう。

……女の子にベッド以外のところで寝てくれなんて頼むつもりはなくて。

「僕はソファで寝るから」

「え?でも、マスターは傷が……」

「痛みは大分ひいてるから」

ソファで横になろうとすると、ティルフィングに裾をつままれた。

「ティルフィング?」

「もう、ティルって呼んでくれないんですか?」

……保健室で僕がティルと呼んでたことをしっかり聞いていたらしい。

ティルフィングは俯いたまま、僕の背中に頭を預ける。

「恋人同士なら、ベッドで一緒に寝ても問題ないと思います」

「……いいの?」

顔は見えなかったけど、彼女の耳は真っ赤になっていた。

恥ずかしいのを堪えて、僕の為に言い出したことなのだろう。

ティルフィングは小さく、コクリと頷いた。

635ティルフィングと学園生活とマスターと:2020/01/04(土) 20:25:37

2人で寝るには、寮のベッドは狭かった。

背中合わせに寝転び、一緒に毛布を被る。

すぐ傍に、抱きしめられる距離にティルフィングはいる。

寝られる訳なんてなくて、そのまま半刻が過ぎる。

「……まだ起きてますか?」

「……うん」

「少し、お話をしてもいいですか……?」

「ん……」

少し不安そうな声色だった。

きっとこれから話そうとしてるのは、彼女にとって大事なことなのだろう。

「今日は、いろんなことがありましたよね。ロンギヌスに嫉妬して、レーヴァが駆けつけてくれて、マスターの恋人になって……」

「いろんな人に迷惑をかけて、助けて貰いました」

彼女の声は震えていた。

僕の背中に、彼女の手がソッと添えられる。

「痛い、ですよね」

「……もう殆ど痛みはひいてるよ」

「それでも、治療が間に合わなかったら……、マスターは」

ティルフィングは優しすぎる。

自分が傷つけたことに傷ついている。

こんな背中の痛みなんかよりも、ずっと深く。

「たった数時間ですけど、マスターの恋人として過ごした時間は凄く輝いてて……」

「こんなにアナタを傷つけたのに、私は幸せになってもいいんですか?」

でも、そんな彼女だからこそ。

「いいに決まってる」

 ・・・
「ティルの幸せが僕の幸せだ。だから一緒に幸せになろう」

返事はなかったけど、僕の気持ちはキチンと伝えることができたと思う。

ーーーありがとうございます、好きです。

背中ごしに呟いた彼女の言葉は、確かに僕の耳へ届いた。

636重要任務:2020/01/11(土) 23:37:38
オーダーキラーズがカシウスに呼び出された
カシウスに二つの箱を渡される

カシウス
「これをフェイルノートとティファレトに届けて」

マサムネ
「両国の長ではないか…!」

ムラマサ
「さぞかし重要な品物…」

アルテミス
「気を引き締めて行きますよ」

グリモワール
「誰に向かって言ってるの?」

カシウス
「この書状も一緒に」

マサムネ
「もしや果たし状!」

ムラマサ
「遂に全面衝突!」

アルテミス
「ではこの箱は?」

グリモワール
「何だっていいでしょう」

カシウス
「よろしく」

オーダー
「はっ!」

・・・・
・・・
・・


アルテミス
「では二手に分かれて各国へ向かいます」

マサムネ
「拙者はムラマサと行こう」

グリモワール
「ホントに妹想いね」

マサムネ
「いや、それほどでも」

グリモワール
「嫌味よ…」

マサムネ
「・・・・・・」

ムラマサ
「ところで、何やら先程から良い匂いが…」

グリモワール
「そうね」

アルテミス
「これは…」

マサムネ
「この箱から!」

オーダー
「・・・・・・」

四人は蓋を開けた
中身は美味しそうな肉ジャガだった

マサムネ
「ムラマサ、書状の内容は?」

ムラマサ
『作り過ぎたのでよかったら食べて』

オーダー
「お裾分けかい!」

何だかんだで仲良しなゴッドキラーズなのでした

637名無しさん:2020/01/12(日) 00:18:41
やっぱりカシウスと言えば家庭的な肉じゃがを連想させますよね

638名無しさん:2020/01/12(日) 11:02:27
ええやん
こういうのでいいんだよこういうので

639アロンちゃんとCC:2020/01/24(金) 01:08:33
アロンダイト
「マスター!私にもついにCCが来ました!ニンジャですよ!ニンジャ!」

アロンダイト
「しかも射程2!これで万年射程1だとか雑魚とか言われずに済みますよ!」

マスター
「ふーんそうだね」

アロンダイト
「なんかマスター乗り気じゃありませんね?」

アロンダイト
「なんかもっとこう『おめでとう!』とか『良かったね!』とかありませんか?」

アロンダイト
「緑で顔に文字のあるあの人みたいに祝ってくださいよ」

マスター
「緑で顔に文字があるあの人はアホだから祝ってんだよ破壊者からも『誰に言ってんだ?』とか『くどい』とか言われてるしそれに」

アロンダイト
「それに?」

マスター
「ハロウィンの仮装あれほとんどニンジャじゃんだから『おめでとう』よりも『あ、ふーん』って感じなんだよ」

アロンダイト
「...................」

アロンダイト
「......忍と書いて刃の心!」

マスター
「うるさい」

アロンダイト
「すみません調子乗りました」

マスター
「まあとりあえずCCおめでとう」

アロンダイト
「ありがとうございます」

640アロンちゃんとCC:2020/01/24(金) 01:12:25
アロンダイトCC実装されたよ記念のSS
とりあえず書きましたCC3のニンジャになった時の話はまた別で書くと思います

641名無しさん:2020/01/25(土) 10:25:33
アロンちゃんフューチャリングシノビ説。
とにかくCC実装嬉しいですよね。アロンファンとしてよく分かる。このまま覚醒も来て欲しいところですよ!

642名無しさん:2020/01/25(土) 12:28:50
アロンちゃんおめでとう!
しかし忍者ccするのにバーテックスディスクが足りねぇ…

643フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 14:56:51
悪魔王 ルシファー、司る業は傲慢。

キラーズは必中の弓、フェイルノート。

ケイオスリオンの皇帝にして、魔を統べる王。

それが私を形作る全てだ。

心を許せる者などいない。いるのは忠実な部下だけ。

信頼などありはしない。あるのは信用と利用価値のみ。

並び立つ者など存在しない。

私と対等でいられるのは、私と同等の輝きを放つ者だけだ。

だが、明けの明星の輝きの前では皆等しく灯火同然。

故に孤独。

実力主義であるケイオスリオンのトップを務めるということは、そういうことだった。

644フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 14:57:36

「フェイルノート」

「……どうしたのかしら、お前様」

マスターという主を得て、今の私は一人のキル姫となっていた。

彼の要件など、すぐに察しがつく。

「また皆と揉めたそうだね」

「そうね。問題があるのかしら?」

「ある。このままじゃ君が孤立してしまう」

「…………」

孤立。

その言葉に沸々と苛立ちが湧いてくる。

「お前様は弱者に同調しろと言いたいのね。皇帝であったこの私に」

「仲良くしてほしいんだ」

「無理ね」

ルシファーをギアハックしたあの日から、皇帝という座を捨てた今でも変われずにいる。

「本物の輝きを持たない者は認められない。私の輝きに並ぶ者など存在しないわ」

私はずっと独りだった。

「歩みよれば、今よりも彼女達の輝きが見えるハズだ。そうすればきっと」

仲良くなれるよ、とマスターは戯言を述べた。

「…………ふん」

たまには、悪くないか……。

645フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 14:58:11

この隊の誰よりも戦果は挙げている。

戦闘は私一人いれば充分だが、使える駒を遊ばせておくのは勿体無い。

ーーー数で劣るなら質で勝負すればいい。私が分断した敵を各個撃破に持ち込むべきね。

ーーーお前の本領は狙撃にあるわ。援護に徹して、接近した敵を優先的に仕留めなさい。

皆に役目を与え、指揮を取り、完璧な勝利をおさめる。

力も、知略も、誰も私に敵わない。

昨日揉めたキル姫から、「ありがとう」と頭を下げられた。

「……別に。活かせるだけの力を持っているから、私がそれを使ってやっただけのこと。他意はないわ」

皆が私を認めた。

もう尊大な物言いを指摘する者はいなくなっていた。

誰も。誰一人として。

私は隊で尊敬の対象になっていた。

並び立つ者など、いない。

ーーー仲良くなれるよ。

「…………嘘つき」

依然、私は独りのままだった。

646フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:00:44

「最近、皆と仲良くできるきるみたいだね」

「私が力を示したのだから当然の結果ね」

持ち上げられているだけで仲良くはなっていない。

彼は少し嬉しそうだったので指摘はせず、適当に相槌をうっておいた。

「少し暇つぶしに付き合ってほしいんだけど」

「……お前様は私のことを何だと思ってるのかしら?」

「大切な……、仲間だと思っているよ」

嘘のつけない人だ。

「仲間」だと言うのに逡巡したことには目を瞑ることにした。

こういうことにはもう慣れている。

「チェスしない?」

「……ふぅん。お前様にしてはいいチョイスね。勝負ごとは嫌いじゃないわ」

ーーーーーー

ーーー

端的に言うと、彼の腕は普通だった。

私の相手は到底務まらないが、まぁ暇つぶしくらいにはなるかといった具合だ。

「もう一回!もう一回だけやろう!」

「……お前様は諦めるという言葉を知らないのかしら?」

もう三度目だ。

……だけどまぁ、久方ぶりの戯れに退屈なんてしている筈もなく、再戦の申し出を受けることにした。

647フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:01:36

彼の癖はもう大体分かっている。

暫くすると彼の手番で滞るようになった。

盤面は私の有利。

持ち駒は彼より少ないが、確実に王を追い詰めている。

「チェスの面白いところはわかるかしら?」

「ポーンでもクイーンやナイトに成れるところ、かな」

「お前様は見る目があるわね。その上で私の考えを聞かせてあげる」

駒を取られながらも、王の逃げ場を無くしていく。

チェスは本当によくできたゲームだ。

チェスが面白いのはーーー、

「どれだけ劣勢になろうと、他の駒を何枚犠牲にしようと……、王さえとってしまえば勝ちになるところよ」

もう彼の王の逃げる場所がなくなった。

「チェックメイト」

「あぁ!?」

「王は唯一無二よ。それは言い変えれば他の駒など代わりがきくということ」

クイーンですら、ポーンで成り上がれるのだ。

王だけが真の意味で孤独。

そこまで考えて、少しだけ胸が痛んだ。

「……お前様は、弱い駒を大事にし過ぎてるわね」

「そうかもしれない」

盤面に残された王。あれは私だ。

逃げ回ることしかできず、特別であるが故に理解されない。

「もう少し王に気を回すべきじゃないかしら」

どうしようもない寂しさに、目頭が熱くなった。

「………君は王じゃないよ」

「…………は?」

彼は突然意味の分からないことを言い出した。

「私以上に王に相応しい者がいると言いたいのかしら?」

そういうことが言いたいんじゃない、と彼は首を横に振る。

「君を孤独な王になんて絶対にさせない」

「今まで気づけなくてゴメン。もう君を独りにはさせない。寂しい思いはさせないから」

胸中を見透かされ、頭の中が茹だってしまう。

「的外れもいいところね。同情なんて要らないわ!」

「同情じゃない。僕は……」

「もういい、勝手に言ってなさい!」

部屋を出て乱雑に扉を閉める。

胸が苦しい。動悸が全く治まらない。こんなにも顔が熱い。

アレは正真正銘の莫迦だ。

土足で人の心に入り込んでくる無礼者。

私を王でないと言い切り、対等に接してくる彼こそ……、

ずっと私の求めていた理解者だった。

648フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:02:19

それから事あるごとに彼と行動を共にした。

ーーー今日は買い出しに付き合ってほしいんだ。

ーーー……私にそんな雑事をさせるつもり?随分と偉くなったものね。

ーーーまぁまぁ、そう言わないで。お菓子買ってあげるから。

ーーーお前様、私をお子様扱いするなんていい度胸ね。私への狼藉は寿命を著しく縮めるものと知りなさい。

悪びれもせず、無遠慮に私を連れ回して。

ーーー買い出しは終わったから、このまま街を見て回ろうか。

ーーー……お前様、最初からこうするつもりだったわね。

ーーーデートだって言ったら来てくれないと思ったから。

ーーーそうね。癪だけどお前様の判断は正しいわ。

私は仏頂面で終始仕方ないといった具合に彼と接していた。

ーーーあのぬいぐるみ可愛くない?

ーーーず、随分と幼女趣味なのね、お前様は……。

ーーー……何でチラチラぬいぐるみを見てるのかな?

ーーーチラ見なんてしてない!

彼の笑顔は絶えることがなくて。

ーーーお前様、これは……。

ーーー今日一日付き合ってくれたお礼だよ。受け取ってくれると嬉しいんだけど……。

ーーー……ぬいぐるみに罪はないわ。仕方ないから貰ってあげる。

陽だまりの中にいるような暖かさに感化されたのかもしれない。

ーーー今日は楽しめた?

ーーー別に。…………でも。

いつの間にか、私の口元は緩んでいた。

ーーーお前様となら、何をしても退屈はしないわね。

649フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:03:06

「フェイルノート、リベンジに来たよ」

彼はチェス盤を片手に私の部屋へ訪れた。

「お前様は本当に懲りないわね……。いつになったら私を追い詰めてくれるのかしら?」

「全然上達してないかな……?」

「誰もそこまでは言ってないわ。……そうね、私が相手をする程度には認めてるつもりよ」

「良かった」

実際に彼の腕はそこそこ上がっている。

前回と比べ、打つのに迷いが見られない。ただ……

「……王に気を回すべきだと言ったこと、覚えてないのかしら?」

「覚えてるよ。でも、これが僕だから」

やはり彼は、弱い駒を大事にし過ぎている。

リターンを考えれば犠牲にするべき駒を、彼は見捨てない。

「…………」

ーーーもう君を独りにはさせない。

「……以前相手をしたとき、私を独りにさせないと言ってたわね」

「同情じゃないなら、どうしてお前様は私の在り方に拘るの?」

彼の手が止まった。

「……気づいて欲しかったんだ。君は、君が思うほど特別なんかじゃないってことに」

「……え?」

「君がルシファーを零装支配していて、ケイオスリオンの皇帝だったとしても君は君だ。もう皆にとって、君は大切な仲間だよ」

「……そう」

本当に隊の皆がそう思ってくれているかなんて、正直分からない。

でも、信じてみたいと思えた。

ありのままの私を受け入れてくれる、目の前の彼を。

650フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:03:39

「だからお前様は私を特別扱いしないのね……」

「…………」

彼は気まずそうに目を逸らし、黙り込む。

…………イラっとした。

「ふぅん?私を特別じゃないと偉そうに語っておきながら、自分は特別扱いしてたと?お前様はそう言いたいのかしら?」

「お、怒らないで……。最初は手のかかる子が隊に入ったな、程度にして思ってなかったんだけど……」

「どうやら死にたいらしいわね」

「その、気がついたら、君のことを目で追うようになって……、それで……、」

「……は?」

この男は何を言い出してるのだろう。

「フェイルノート、君が好きだ。やっぱり他の子と同じ様には見れないよ」

「な……!」

頭の中が沸騰しているのかと思う程に、顔が熱くなった。

必死に平静を取り繕う。

「やっと私の魅力に気づいたということかしら?それなら仕方ないわね」

「それで、返事の方は……?」

「…………」

確かめたいと思った。

この気持ちを、私の在り方を。

「私に勝てたら、返事を聞かせてあげる」

651フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:04:12

私と対等でいられるのは、私と同等の輝きを放つ者だけだ。

彼の輝きは灯火程度に過ぎない。

この隊の中でもっとも弱々しい光、吹けば飛ぶ命。

だが、限りがあるからこそ美しい。

目を灼くような私の輝きとは全く違う。

懸命に己を燃やして輝く、見る者を惹きつけるソレは、まるで線香花火だ。

彼の輝きに目を奪われている自分がいた。

もう、とっくに認めていた。

「……私も、お前様のように変われるのかしら」

盤面は終盤に差し掛かる。

手を抜くつもりは毛頭ない。

私と彼が対等であればこそ、彼はハンデなど望まないと分かっているから。

付け焼き刃で勝てる程、勝負の世界は甘くない。

「チェックメイト」

だからこそ、これは当然の結末だった。

652フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:04:52

「……慣れない戦い方をするものではないわね」

完敗、だった。

取られた駒の数は圧倒的に少ないが、王を上手く掠めとられた。

「普段の打ち方じゃなかったね」

「……少しだけ憧れてしまったのよ。お前様の輝きに」

彼の様に、弱い駒を活かす打ち方で勝負に臨んだ。

戦い方を変えてはいるが決して手は抜いてない。

少しでも駒を取られないようと立ち回っていたが、所詮は付け焼き刃。

「私には向いてなかったみたいね。お前様のようにはなれないわ」

「……フェイルノート」

「お前様は違うと言ったけれど、私は王よ。そして私のキングはお前様に奪われてしまったわ」

「王であることの孤独に苛まれたこともあったけど、お前様が傍に居てくれるなら……」

彼に右手を差し伸べる。彼は私の前にかしづき、私の手を取った。

「離れるつもりも、離すつもりもないよ」

「いいわ。お前様が望むのなら、私の傍で生涯仕えることを許してあげる」

彼の唇が差し伸べた手の甲へと落とされる。

忠誠を誓う口付け。

「……ふふ」

ーーー特別扱いも、こういうものなら悪くないわね。

653フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:05:38

悪魔王 ルシファー、司る業は傲慢。

キラーズは必中の弓、フェイルノート。

ケイオスリオンの皇帝にして、魔を統べる王。

          ・・・
それが私を形作る全てだった。

「今度はどこにいこうか」

「お前様は本当に勝手ね」

独りだった頃の私はもうどこにもいない。

「どこでも構わないわ。私の手を引いてくれるなら」

繋いだ手から伝わる温もりが、寂しさをさらっていく。

「お前様となら、何をしてても退屈しないわ」

気がつけば笑みを零していた。

「見せて貰いましょうか。お前様の輝きを」

お前様の傍で、この先もずっと。



Fin

654フェイルノート様のファン:2020/01/25(土) 15:14:54
バレンタインverフェイルノート様のイラストに震え、勢いで書きました。※タイトルはつけてないです。

個人的にはフェイルノート様の分かりにくいデレ具合が堪らないですが、彼女の魅力が少しでも伝わったら嬉しいです。

フェイルノート様が好きな全てのマスターの皆様が、彼女を迎えられるように祈っています。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!

655名無しさん:2020/01/25(土) 16:55:43
なんてこった…
脳内再生余裕じゃないか…!
この絶妙なツンデレ感はたまらん

656名無しさん:2020/01/26(日) 02:32:24
>>654
とても良かった(語彙力低下
きゅんきゅん来たぜ!
俺もフェイルノート推してるからお互い引けるといいな!

657名無しさん:2020/01/26(日) 07:30:00
良いものを見させてもらいました。作者様にフェイルが当たりますように

658名無しさん:2020/01/26(日) 08:55:13
こういうのでいいんだよこういうので

659名無しさん:2020/02/01(土) 14:04:04
いい・・・とても良かったです。絶妙でした。
フェイルノートに呪われてる位縁がない(引けない)けどこういう素敵な話読んじゃうと来てほしくなるなあ(血涙)
せめて作者さんのとこに行ってあげて(切実)

660リクエストあれば気が向いたら書くかも:2020/02/01(土) 22:17:28
【でぃすらぷ!】第二部《三国編》
第10話「新たな物語のプロローグ」

あの宣言から数日。
私の思惑とは裏腹に、事態は明らかに悪い方へと向かっていた……

無言

食事の最中も、戦闘中も、みんな一様に無言……
いつしかプライベートな時間に4人で過ごすこともなくなり、3人はほぼ自室に籠もるようになってしまった…

(うまくいかないなぁ……)

そもそも恋愛禁止もみんなとのこれからの為…だったのに…
それがこんなことになっては元も子もない。
仕方なく、私は引きこもりの3人を呼び出した。




「妥協点を話し合いましょう」

全員揃ったところで直ぐさま本題を告げる。ともかく今のままでは駄目だ。

「妥協点ね…それ以前に、恋愛禁止の説明も受けていないんだが…ヘレナ達の最大の不安はそこなんだけどなぁ…」
「そうだよ…レーヴァ、全然説明してくれないんだもん…」
「よしなさい、2人とも。レーヴァが説明しない…説明できないってことは、そう言うことよ…あの日の夜、3人で話し合ってそう結論づけたでしょ?だから…」

いつの間に話し合いなんて…それより…

「じゃあ、逆に3人の結論とやらを聞かせて。みんながこのままだと色々支障が出るの…」

3人はうつむき、言い辛そうに口を開いた。

「レーヴァ、今までごめんなさい…特に私は、その……少しばかり自分の気持ちに正直に動き過ぎていたわ…」
「私も、レーヴァの気持ちを考えないで甘え過ぎてたよね…」
「その上、ヘレナまで参戦を宣言したんだ…レーヴァの心労は計り知れない…」

これはもしかしたら……

「レーヴァ、君は優しいから突き放すことはしない…ああ宣言することで、どうにか私達を傷付けずに距離を取ろうとしたのよね?」
「大丈夫だよ、レーヴァ!今はまだちょっとショックで元気が出ないけど、ちゃんといつものマジ天使なカリスちゃんに戻るから!」
「まぁそう言うことさ、レーヴァ。みんなレーヴァに嫌われるくらいなら……」

そこで我慢の限界。私は必死に堪えた笑いをはき出した。

「ふっ…あはは…なにそれ、ふふっ、全然らしくない…」

3人はポカンとする。

「恋愛禁止そのものにヘコんでるのかと思ったら…そう言う事ね…なに変な気遣ってるのよ…て言うかムカつく…私がみんなの気持ち、重荷扱いするって本気で思ってる?それだけは絶対に無いから!」

たぶん、みんなもそれぞれの関係が壊れないように、それでも抑えきれない気持ちを抱えて、悩みながら一歩一歩進んできた。
少しでも早くその想いに応えたい。

「おっけ…恋愛禁止は撤回。でも、これまで以上に気を引き締めて本来の私達の目的に邁進する。それで良い?」

これまで曇っていた3人の瞳が輝きを取り戻す。
と、同時にみんなに飛び付かれる。

「わーい!レーヴァ、大好き、大好き!」
「くっ、カリスずるいぞ!ヘレナだってこれまでの分レーヴァと!」
「良かった…良かった…!やっぱり諦めるなんて無理!レーヴァ!」

ああ、もう滅茶苦茶……でも、この方がみんならしい…

「はぁ…ごめん…私も勝手に突っ走ることがあるから…みんなの気持ちを知ってて、恋愛禁止なんて…やり過ぎた…」
「レーヴァが突っ走るのはいつものことじゃない」
「そうだよ!みんなそれについて行くだけだもん!」
「次はレーヴァが殊勝になって…『らしくない』な…くふっ」
「……1人1回ずつ…遊びに付き合うわ…それで恋愛禁止についての埋め合わせって事で……」

再び3人の動きが止まった。

「それって…」
「つまり…」
「デート…?」

私は小さく頷く。
3人は弾けるようにはしゃぎだした…
まったく…みんな子供じゃあるまいし……でも、可愛い…

「あいつら、はしゃいでんなぁ…ま、これでひとまず一件落着だな!」
「ムー…」
「でもわざわざ恋愛禁止にしたんだろ?よかったのか?」
「……目的達成を急ぐために…集中してもらうために出した措置だもん…それで士気が下がるなら意味ないでしょ…」
「目的達成を急ぐ?何で急に…」
「だって…早く終わらせて、みんなと…気兼ねなく、ゆっくり…こ、恋…したいし……」
「…………それ、あいつらに言ってやったら狂喜乱舞するぜ」

それにしても、デート…か。大丈夫かな…
また深く考えずに提案してしまった後悔と、少しの不安…それと、大きく膨らむ期待を胸に…私はみんなの嬉しそうな笑顔を眺めた。


でも…後にこの時の、この判断が、本当の意味で私達の運命を決めることになるなんて…

つづく

661名無しさん:2020/02/01(土) 22:22:44
いいぞ…

662名無しさん:2020/02/02(日) 16:44:09
不穏な引きにワイ気になる

663名無しさん:2020/02/02(日) 18:32:15
こういうのでいいんだよこういうので

664名無しさん:2020/02/02(日) 18:49:55
>>663
少し気になるんだけどお前それ以外の感想ねえのかよ




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板