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【ファンキル】SSスレ

1ゆるりと管理人:2019/07/21(日) 01:13:38

ファンキルの二次創作SSを投稿するスレです。

・18禁の内容はNGです
・原作のキャラクター性を著しく損ねる内容はご遠慮下さい、
また損ねている可能性がある場合は注意書き等でご配慮下さい
・複数レスに跨る場合は投稿者名(いわゆるコテハン)を利用しましょう
・投稿に対する暴言は規制対象になります
・ダモクレスばかり登場させるのは控えましょう

※物は試しのスレなので需要が無く過疎った場合は放置でOKです

2005〜9の物語の続き?らしきもの:2019/07/28(日) 10:08:25
これやって寝て起きて気づいた
夜中の行き当たりばったりの突貫は死ぬ

201名無しさん:2019/07/28(日) 13:47:42
深夜にお疲れ様です

2025〜9の物語の続き?らしきもの:2019/07/28(日) 14:04:51
『お疲れ様です』その一言に救われる

203名無しさん:2019/07/28(日) 14:40:52
ワズラとかあまり見ないキャラのssだったから嬉しい。凄い良かったです

204ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:40:50
雑賀
「カチッカチッ」

オティヌス
「PCで何を見てるんだい?」

雑賀
「それがゆるりのスレで面白い書き込みを見つけたんすよ」

オティヌス
「なになに……?[素のゴッドチーム(ギアハックなし)をSIRENとかサイレントヒルの世界へ招待したい]?えぇ〜……」

雑賀
「あれ、不評みたいっすね。ウチは面白そうだと思ってるんすけど」

オティヌス
「内容は知らないけどこれってホラーゲームでしょ?私的にはこういうビックリは歓迎してないんだよねぇ……。ホラーなんて、戦争好きの君には縁のないものだと思うけど?」

雑賀
「そんなことないっすよ。血生臭い匂いがぷんぷんするじゃないすか。それでお願いがあるんすけど、これを再現する手伝いをして貰えないっすかね?」

オティヌス
「難しいなぁ。ホラーゲームを演出することはできるけど、皇帝達のギアハックを奪えるかっていうと……」

雑賀
「オティヌスでも厳しいっすかー!残念っす」

オティヌス
「まぁ諦めるのはまだ早いよ。ケイオスリオンに拘らなければ、そういうことができるキル姫を知ってるからさ」

雑賀
「よし!そのキル姫に早速あたってみますか」

205ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:41:52
雨が窓ガラスを叩く音が耳につく。

アルマス
「…………ん」

目を覚ますと、視界にはボロボロの天井が映った。

アルマス
「って、ここは一体どこなのよ!」

カシウス
「やっと起きた」

フェイルノート
「流石寝坊助アルマスね」

アルマス
「カシウス、フェイルノート?なんで地底にいた頃の格好なの?」

フェイルノート
「知らないわ。気がついたら全員ここにいて、この格好よ」

カシウス
「…………それに私達だけじゃない」

カシウスが指差した先にはティファレトがいた。

アルマス
「ティファレトもいたのね。震えてるけど、どうしたの?」

ティファレト
「ご、ごめんなさい。今まで見えてたものが急に見えなくなって、恐ろしくて……」

アルマス
「え?目が見えないの?」

フェイルノート
「やっぱり気付いてなかったのね、アルマス。私達もよ」

アルマス
「何言ってるの!私はちゃんと目が見えて……」

アルマス
「……ティニがいない?」

カシウス
「皆、ギアハックが解けてる」

フェイルノート
「つまり私達は地底世界にいた頃の状態に戻されてるの。業腹だけどね」

アルマス
「なんでそんなことに……」

アルマスの疑問を遮るように雷鳴が鳴り響いた。

ティファレト
「っ!」

カシウス
「大丈夫。皆傍にいる」

ティファレトの怯えを解きほぐすように、カシウスが優しく手を握る。

カシウス
「カシウス……、ありがとうございます」

アルマス
「ほんとなんなの……、この状況」

フェイルノート
「現状を把握するべきね。状況を整理しましょう」

206ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:42:46
雑賀
「いやぁ〜、上手くいくもんっすね。見事なお手前っす」

オティヌス
「最初は正直興味なかったけど、今は認識を操るその技量に目が離せないよ」

八咫鏡
「妾にかかればこの程度のことは容易いものよ」

この三人の傍らにはアルマス、ティファレト、フェイルノート、カシウスが静かに眠っていた。

八咫鏡
「認識を変えようとも本来の強さは変わらんのじゃが、夢の中なら話は変わる。夢では認識こそがその者が体験する世界の全てとなる」

八咫鏡
「この悪夢から覚めぬ限り、化け物の住む館は愚かギアハックを取り上げることも思いのままじゃ!」

オティヌス
「私もコレくらい派手なことをしてみたいなぁ……。それにしても皆グッスリだね」

雑賀
「そりゃあパラケルススに貰った薬を盛ったんすから。そう簡単には目覚めないっすよ」

八咫鏡
「その薬の効き目がどれほどのものかは知らぬが、これだけの人数の認識を操るのは正直長くは保たん。読み取った夢をお主達に見せながらとなれば尚更じゃ」

雑賀
「それじゃあ、早速ホラーゲームを始め……………ん?」

207ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:43:28
フェイルノート
「状況をまとめるわ」

フェイルノート
「一つ 今いるのは謎の館」

フェイルノート
「二つ 私達は地底世界にいたころの状態に引き戻されてる」

フェイルノート
「三つ どういう趣向かは知らないけど、この状況には作為的なものを感じる。裏で誰かが手を引いてると見るべきね」

アルマス
「誰かって……、一体誰なのよ」

フェイルノート
「そうね、主謀者を割り出すことまではできないけど、絞るのは簡単よ」

フェイルノート
「私達に幻覚を見せる、もしくはそれに近しいことができる斬ル姫」

ティファレト
「そ、そんな……。私達を陥れるような人に心当たりは」

フェイルノート
「ティファレト、お前の国の斬ル姫ではないわ。厳正に規律を重んじる国の者が自国の教皇を追い込む真似をする筈がない」

フェイルノート
「そうね……。私の知る限りだとオティヌスやパラケルススが最有力かしら」

カシウス
「私にも心当たりがある」

カシウス
「他者の記憶を読み取り現実や認識を歪める斬ル姫」

カシウス
「八咫鏡 獣刻 ジャバウォック」

フェイルノート
「さて、どうしてやろうかしら?」

208ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:44:03
八咫鏡
「なにやらマズいことになっておらんか!?」

雑賀
「皇帝の洞察力が半端じゃないっすね……」

オティヌス
「というか私、見てるだけなのに主犯格として挙げられてるよ!?」

雑賀
「まぁ、薄々バレるような気はしてたっすけど、まさか始める前に看破されるとは……」

八咫鏡
「お主、一人だけ他人事じゃな!」

雑賀
「皇帝を敵に回すような真似は流石にしたくないんで、今回はバレても少し怒られる程度で済むように保険をかけてるんす」

オティヌス
「あっ、夢オチにするつもりだ」

八咫鏡
「いや、夢とはいえ、しかし……」

雑賀
「目が覚める前に記憶を改竄すれば問題なしっすよ」

八咫鏡
「む……。た、確かに」

オティヌス
「バレる心配がないなら心おきなくやっちゃおう!さぁ!ショータイム!!」

209ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:45:23
ソレは唐突にやってきた。

地を這い回り、時に空を掛け、その姿を見る者を恐怖させる。

奴らは潜む。

見えずともそこにいる。

奴らは多い。

一を見かければ十はいるものと考えろ。

アルマスの視界の先に、ソイツはいた。

アルマス
「あっ、ゴキブ……」

フェイルノート
「ふっ」

フェイルノートが片手をかざす。そこから放たれた矢が黒光りするボディを即座に射抜いた。

アルマス
「あんな素早いのよく仕留められるわね」

フェイルノート
「私が外す訳ないでしょ」

カシウス
「………まだ沢山いる」

フェイルノート
「待ってなさい。すぐ仕留めるわ」

210ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:46:33
雑賀
「…………なんか地味っすね」

八咫鏡
「生理的嫌悪感を煽れといったのはお主じゃろ」

オティヌス
「いや、確かにやつらは怖いけどさ……。じゃあ、もっと直線的に恐い奴にしない?」

八咫鏡
「そんなこと言われても……。妾には「ほらーげぇむ」というのが分からんからの」

雑賀
「まぁ、その辺りはウチらがフォローするっす。ホラーの定番といえばあれっすよ」

雑賀
「人を脅かす化け物が必要っすね!」

オティヌス
「君が血生臭いのを見たいだけでしょ……」

211ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:47:14
フェイルノート
「片付いたわ」

ものの数十秒で数十のゴキブリの群れは死骸となり果て、床に臓物を撒き散らしていた。

アルマス
「うっ、結構キツいわね……」

フェイルノート
「傍を這い回られるよりはマシでしょ?」

アルマス
「それはそうだけど……」 

ティファレト 
「待ってください。……何か聞こえませんか?」

全員、即座に耳をすませる。

獣の唸りにも似た、酷く耳障りな何かが聞こえてくる。

「グギャギャ……」

ティファレト
「な、なんなんですか……?」

フェイルノート
「あれは……」

長い手足、白んだ全身、人間を捕食するその化け物の名は……

カシウス
「ーーー異族、ね」

212ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:47:52
オティヌス
「…………何で異族?」

八咫鏡
「や、だってこいつらも化け物じゃろ」

オティヌス
「それはそうだけど、私的には拍子抜けというか……」

八咫鏡
「妾の知る化け物なんて、コイツぐらいしかおらん」

オティヌス
「異族なんてすぐに退治されちゃう気がするけど」

雑賀
「ウチは悪くない采配だと思うっすよ。天上世界にいた私達には馴染み深い相手でも、地底出身の皇帝達からすれば未知の化け物のハズっす」

雑賀
「さしものゴッドキラーズといえどもギアハックを取り上げられて著しく弱体化した状態でどこまでやれるのか、見物っすね」

213ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:48:43
アルマス
「せいっ!!」

その化け物を見るや否や、アルマスは即座に異族を両断した。

アルマス
「絶・撃破!!」

アルマス
「あ、奥にまだ沢山いるわね。この剣先に続けー!!」

アルマスは異族をバッサバッサと斬り伏せていった。

カシウス
「……恐れる心がないの?」

ティファレト
「アルマスは勇敢ですね」

フェイルノート
「馬鹿とハサミは使いようね」

214ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:49:23
雑賀
「…………」

オティヌス
「…………」

八咫鏡
「…………」

オティヌス
「ダメじゃん!速攻だったよ!!」

雑賀
「アハハ、ギアハックを取り上げても自前のキラーズがあるんだからなんとかしちゃっすよね」

八咫鏡
「もう不安しかないんじゃが……」

215ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:50:08
アルマスが異族を殲滅するのに大した時間はかからなかった。

アルマス
「あの白いの、何だったのかしら」

カシウス
「天上世界に蔓延る捕食者、それが異族よ」

ティファレト
「なんて恐ろしい存在なんでしょう……」

フェイルノート
「異族なんてもうどうでもいいわ。カシウス、お前も実行犯はもう分かってるでしょう?」

カシウス
「……私達は認識を歪められている。間違いなく八咫鏡の仕業」

アルマス
「認識を操られてるってこと?それって打つ手ないじゃない」

フェイルノート
「そうでもないわ」

カシウス
「くすくす……」

カシウス
「もしかして、記憶をいじればやり過ごせると思ってる?」

ティファレト
「カシウス、何を言って……?」

フェイルノート
「黙って聞いてなさい。アルマス、お前もよ」

カシウス
「アナタの力はどれだけ保つのかしら?」

カシウス
「この後が楽しみね」

フェイルノート
「実害が出てない今ならまだ許して貰えるかもね」

アルマス・ティファレト
「?」

216ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 16:52:14

カシウスとフェイルノートが告げていた言葉は全て八咫鏡に向けたものだった。

八咫鏡
「…………潮時じゃな、起こすか」

雑賀
「ちょちょちょい!待つっす!」

オティヌス
「それじゃ私はここで退散するよ」

雑賀
「オティヌスまで!!」

アルマス
「ん、何で私こんな場所に……?」

ティファレト
「良かった……。目が見えるように……」

カシウス
「……見慣れない人がいるわね」

フェイルノート
「あぁ、お前の仕業だったのね。私を陥いれたこと、それなりに覚悟してるのよね。雑賀?」

雑賀
「あ、あ〜………、実はこれ肝試しだったんす!楽しんで貰えたっすか!?」

フェイルノート
「それがお前の遺言ということでいいのかしら?」

雑賀
「ま、待つっす!実行犯はお察しの通り八咫鏡で……」

八咫鏡
「さ、雑賀!?裏切りおったな!この世で最も尊い力を持つ妾に協力して欲しいと言っておったのは嘘か!?」

ティファレト
「成る程、雑賀に乗せられたのですね」

カシウス
「八咫鏡、私はそこまで気にしてないわ」

フェイルノート
「自国の斬ル姫の処分は各々が決めればいいわ」

雑賀
「ぁ、あれ?もしかしてウチだけが大ピンチ?」

フェイルノート
「話が早くて助かるわ」

フェイルノートは右手を雑賀へかざした。

雑賀
「ちょ、皇帝!それはシャレにならないっす!ほ、ほら!今回のことだって皆さんにホラーを体感して欲しくて……」

アルマス
「ぶぷーーっ!」

アルマス
「ほ、ほら、ホラーだって!ちょっと!真面目な話をしてるのに急にふざけないでくれる!?」

フェイルノート
「ふざけてるのはアルマス、お前よ」

フェイルノート
「……はぁ。興が削がれたわ。今回のことは大目に見てあげる」

雑賀
「か、感謝するっす……」

フェイルノート
「ただし次に私を煩わせるようなことがあれば……」

雑賀
「し、しないっす!!皇帝に目をつけられるようなことは今後しないと誓うっす」

フェイルノート
「…………まぁ、いいわ」

こうしてゴッドチームのホラーゲーム体験は速攻で幕を下ろした。

217ホラー・ゴッドチーム その後:2019/07/28(日) 17:02:57

雑賀
「カタッカタタッ」



356 : 雑賀 2019/07/28(日) 08:18:14

【急募】ホラー企画募集中っす!
カルマなキラーズの処刑人をあの手この手でビビらせましょう!
沢山の案をお待ちしてるっす!




雑賀
「やっぱりホラー自体は悪くないと思うんすよね〜」

雑賀
「企画の案の方は……おっ」



358 : 名無しさん 2019/07/28(日) 09:44:47

>>356 ハムスターとコヌコとポメラニアンを100匹放つ 萌えしぬ



359 : 名無しさん 2019/07/28(日) 09:47:37

今度の鎌倉バスツアーで俺の隣に座ればイチコロよ あれ目から汗が



360 : 名無しさん sage 2019/07/28(日) 10:01:04

地獄のツアーになりそうだな



361 : 名無しさん sage 2019/07/28(日) 10:49:11

>>359
生き地獄やないか
よくそんなこと思いつくな
鬼畜の所業やわ





雑賀
「こういうのもありっすねー」

雑賀
「誰を嵌めるか悩んだっすけど、騙し易さと血生臭さの兼ね合いを考えるとやっぱりパラシュが
適任っすね」
 
雑賀
「……ん?」

ある書き込みが目についた。



409 : 悪魔の処刑人 2019/07/28(日) 16:59:20

>>356
随分と楽しそうだね、雑賀






雑賀
「…………ん!?」

パラシュ
「やぁ、雑賀。楽しそうだね」

雑賀
「あ、はは……」

パラシュ
「皇帝からの指示でね。反省の色が見えないならしっかりと躾ておけってね」

雑賀
「や、ヤダなぁ躾なんて……。パラシュはそんなことしないっすよね……?」

パラシュ
「勿論僕はそんな面倒なことはしない。…………処刑だ」

雑賀
「そうっすよねー。パラシュはそう言うっすよねー!!」

雑賀の断末魔が響き渡った。

218ホラー・ゴッドチーム:2019/07/28(日) 17:11:12
お目汚し失礼しました。

サイレントヒルやバイオハザードといったホラーゲームを作者はプレイしたことがないので、中身の薄いSSになったかもしれません。

現行萌えスレの356と409レス目は作者の自演です。358〜361さん、ありがとうございました。

萌えスレの358〜361さんのレスをSSに書き込みましたが、こういった形でレスの掲載を控えた方がいいと思われる方がいらっしゃれば今後は控えようと思います。

219名無しさん:2019/07/28(日) 17:36:22
面白かった。アルマスとフェイルノートが頼もしくて良かったです。あと雑賀かわいい
やっぱりホラー要素にそれぶっ潰せる人たちをいれちゃダメだなw

220名無しさん:2019/07/28(日) 19:12:17
面白かった!乙ですぞ!

221名無しさん:2019/07/28(日) 19:19:42
こういうホラーギャグSS好き
面白かったです

222名無しさん:2019/07/28(日) 19:23:53
これは良作ww

223名無しさん:2019/07/28(日) 20:11:22
やっぱ二次創作SSはコミカルなのがいいよな
シリアスめいたの素人が作っても寒いし

224名無しさん:2019/07/28(日) 20:19:31
コミカルのジャンル舐められすぎ

225名無しさん:2019/07/28(日) 20:22:10
コミカルは自分が面白いと思う展開でも別の人からしたら面白くなくて下手したらお前の言ってる素人が作ったシリアスよりも寒くなる可能性はある

226リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/07/28(日) 20:50:56
皆さん、地の文とかあるより台本風の方が読み易いですか?
場合によっては修正しようかと

227名無しさん:2019/07/28(日) 20:57:52
台本風がSSぽくて好き

228名無しさん:2019/07/28(日) 21:03:42
SSって小説の略じゃないんですか?地の文のない小説は少し抵抗があります
人それぞれなので書きやすい方を書いたらどうですか?

229名無しさん:2019/07/28(日) 21:34:58
SSってショートストーリーじゃないっけ
ネットのSSは地の文無しの方が多いけどそれは描くのが楽ってのが大きいな
僕は作者さんがあってると思う方が読みたいな

230名無しさん:2019/07/28(日) 21:36:39
作者さんが好きな方ややりたい感じでいいよ
文句言うなら自分で頭想像して脳内で書けばいいし

231名無しさん:2019/07/28(日) 21:39:02
地の文がある方がキャラの心情や状況がわかりやすいけどそんなに場面展開がないなら台本風でも良いと思います
自分の気分で地の文があったりなかったりでも良いと思いますよ
結局書くのは自分ですから

232名無しさん:2019/07/28(日) 22:09:32
作者さんの書きたいように書けばよろしいかと思いますよ

233リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/07/28(日) 23:33:20
承知で〜す
ご意見感謝!

234名無しさん:2019/07/28(日) 23:49:28
八咫ちゃんツッコミ枠が様になってて笑う

235名無しさん:2019/07/29(月) 01:39:21
ホラゲの世界で絶望させたいってコメしたの俺だが、まさかここで再利用されるとは思わんかった
趣向は違ったが、結構面白かったぜ

236チャレンジアロンちゃん:2019/07/29(月) 01:51:31
チャレンジアロンちゃんⅤ

アロンダイト
「マスターリベンジしたいです」

マスター
「リベンジ?」

アロンダイト
「はい声だけでグラスを割るのをしたいです」

マスター
「アロンが荒れたあれをまたやるの?」

アロンダイト
「今回はゲストをお呼びしました」

マスター
「ゲストを呼ぶのはこっちの役割のような気がするけどまあいっかそれで誰?」

アロンダイト
「この人です!」

アバリス
「ど、どうも」

マスター
「おおアバリスじゃん」

※このマスターは普通にアバリスを認識出来ます

アロンダイト
「探すのに手間取りました」

マスター
「ご苦労様でした」

アロンダイト
「それじゃあゲストもお呼びしましたしグラス割りチャレンジ開始です!」

マスター
「なんかアロンが司会進行してる....」

237チャレンジアロンちゃん:2019/07/29(月) 01:58:07
>>236
アロンダイト
「それじゃあ私から行きます」

アロンダイト
「あー」

グラスに変化はなかった

アロンダイト
「やっぱり難しいですね」

アロンダイト
「あーー」

グラスに変化はなかった

アロンダイト
「これやり過ぎると精神おかしくなりそうです」

アロンダイト
「マスターやって見ます?」

マスター
「うんやるやる」

マスター
「あー」

グラスに変化はなかった

マスター
「本当だ全然変化ない」

マスター
「あーー」

グラスに変化はなかった

マスター
「うん確かにこれやり過ぎると頭おかしくなりそう」

マスター
「アバリスでラストにしよう」

アバリス
「こういうのは結構練習しないと無理なんですよ」

マスター
「まあまあ頑張ってやってみてよ」

アバリス
「わかりました行きます」

238チャレンジアロンちゃん:2019/07/29(月) 02:04:22
>>237
アバリス
「すぅーふぅー」

アバリス
「あー」

グラスに変化はなかった

マスター
「やっぱり無理か」

アバリス
「みなさん二回してましたし私ももう一回行きます」

アバリス
「あーー」

グラスは急に割れた

アロンダイト・マスター
「................」

アバリス
「で、出来ちゃいました」

マスター
「すごいなアバリス」

アロンダイト
「すごいですね」

アバリス
「た、たまたまです」

マスター
「アバリスはパズズじゃなくてセイレーンだったか」

アロンダイト
「え!?そうなんですか!?」

アバリス
「アロンダイト真に受けないでください...」

239名無しさん:2019/07/29(月) 02:16:51
>>238
マスター
「そうだよアロンこの世界のアバリスはD.plugだよ」

アバリス
「そうです私はD.plug....って待ってくださいこの世界ってなんですか?」

マスター
「だからD.plugのアバリスの世界線、聖鎖のアバリスの世界線そして獣刻のアバリスの世界線があるんだよ」

アロンダイト
「そうなんですか!!!」

アバリス
(なぜか話がそうだいになってる)

マスター
「そして三人のアバリスが揃う時」

アロンダイト
「そ、揃う時...」

マスター
「三人のアバリスは融合しアバリストリニティが誕生する!!」

アロンダイト
「ア、アバリストリニティ!?!」

アバリス
(私を置いて話がすごいことになってる)

マスター
「あ、でも三人のアバリスでも結局アバリスは一人だからソウゴよりも翔一くんの方だからアバリス トリニティフォームが正しいのか」

アロンダイト
「ア、アバリス トリニティフォーム!?!?」

アバリス
(もうどうにでもなってください....)

アバリスは一人空を見上げるのであった

240名無しさん:2019/07/29(月) 02:33:54
このシリーズ好き

241名無しさん:2019/07/29(月) 05:50:30
夏コミに出ないかな

242チャレンジアロンちゃん:2019/07/29(月) 07:35:13
いつもの注意書きを忘れてた

"これはアロンダイトをバカにするものではございません出来ないアロンを愛でるためのものです"

243名無しさん:2019/07/29(月) 10:27:28
本編と全く関係ないけどチャレンジアロンちゃんの人ちゃんと寝れてる?5時間睡眠とかだとおじさん心配しちゃう

244チャレンジアロンちゃん:2019/07/29(月) 10:45:17
大丈夫寝ようとしたけど今日はうまく寝れなかったからうん大丈夫

245名無しさん:2019/07/29(月) 12:46:23
不眠症の方かな?

246名無しさん:2019/07/29(月) 13:01:26
SSスレたのしー!
上げてくれる人乙です!

247名無しさん:2019/07/30(火) 00:33:04
全盛期?のモラベガがほかのキル姫まで取り込んで最強の生命体になるストーリー思いついたけど不謹慎すぎてやめた
せっかくテイルリンクで仲間になって幸せになれそうなのに…
罪悪感にまけた

248名無しさん:2019/07/30(火) 01:21:13
『※長編です。地の文あります。苦手な方はご遠慮ください』
『pixivにも上げましたがやっぱりこっちにも載せていきたいなと思って書き込みました。オリキャラをメインにしている話なので苦手な方はご遠慮ください』
『ひとまず書き上げている分を載せていきます』






 ウリエルの槍が一瞬のうちに罪人を貫く。
「この者は、罪を犯しました」
 一房青い髪の混じる黒髪が揺れる。
 清潔な白壁で覆われた部屋の中でその女体は一層際立って見えた。
「ハルモニアの財産たる武具宝物を管理ではなく独占し、私的に利用していた。その罪を断罪すべく私はここに来ました」
 ぶん。と勢いよく槍が死体から引き抜かれる。槍の貫通した穴の縁は高熱の金属を押し当てた時のように焦がされていて一切出血はない。
「ではここに教皇様を代行して貴方に新たな使命を言い渡します」
 と女性はそこでようやく、ぼうと突っ立っている男に目を向けた。
「貴方が次の宝物室の長です。より一層励むように」
 それだけ言うと女性は男の返事も聞かずに窓から飛び降りて去っていった。
 男は彼女がいなくなってもしばらく動くことはできなかった。
「あれが……」
 男の心は激しく乱されていた。
 自分の上司だった人物が突然処刑されたことに? 違う。
「あれが、斬ル姫か……」
 男の感情を一言で表現するならば、感動していたのだ。
「ああ、……素晴らしい」
 男の網膜にはしばらくの間、あの槍を持った女性の姿しか見えなくなるほどの感動だった。この部屋にあるどんな武器や宝物より、斬ル姫という武具を美しいと感じたのだ。
 その日、男が受けた衝撃は、おそらく彼が死ぬ間際まで忘れることはない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 キトはいつも通りすっきりとした気分で目が覚めた。
 懐の懐中時計を取り出して定刻通りに覚醒したことを確認すると満足げに頷く。
「よしよし。今回も四時間睡眠を成し遂げたようですね」
「おや、起きられましたか? それでは……」
「ええ、交代です。当番の者と呼んできなさい」
 傍らで地上走行用資材運搬船の進路を確認していた部下が話しかけてくるとキトはてきぱきと指示を出した。
 丁寧に頭を下げ大型倉庫の甲板(デッキ)から内部へと入っていく部下を横目で見送る。
 部下は純白の鎧を見に纏っていた。
 その鎧は頭から爪先までを隙間なく覆っており天使の翼のような装飾が様々な個所に施されているのでまるで身体が翼に覆われているようにも見える。
 キトは部下の鎧の肩の一部が砂埃で茶色く変色していることを発見すると眉をひそめた。
「君、戻りなさい! いえ、むしろ私が行きます! だから絶対にそこを動かないように!」
 苛立ちを隠さない声色で大声を出すときょとんとしている部下の元へずかずかと歩いていく。
「神聖な鎧が汚れていますよ、しっかりしてください。貴方は我らがハルモニアの誉れある兵なのですから――――」
 キトはぶつぶつと文句を言いながら懐からハンカチを取り出して、部下の肩を磨きだした。
「戦場において、大切なことは神聖ハルモニアここにありと他国にはっきりとしめすこと、そこに君のような者がいては粗野なケイオスリオンや野蛮なトレイセーマと間違えられてしまうではありませんか。全く……最近の若者ときたら美意識に対する理解が浅くて――――」
「あの、室長……? 私が自分でやりますか」

249pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:23:43
『コテハン忘れてました。すみません』



「君は動かんでいい!」
 部下の背筋が跳ねあがるほどの一喝。
 気づけばキトのハンカチは肩から鎧全体へと移っており数分後には部下の鎧は新品同様の輝きを放っていた。
「これでよし。さあ、行きなさい」
「は、はぁ……」
 先ほどまでの不機嫌さはどこへ行ったのかキトは上機嫌に部下を送り出した。
部下の方はといえば少々怯えた調子で足早に去っていく。
「ふふふ。私の鎧に汚れはないようですね」
 倉庫船の壁は当然のように目の前に立つ人間の姿が映し出されるほど磨き上げられておりキトは鏡代わりに自分の姿を映している。
 部下と同様の鎧を装着した己の姿である。
「ああ、やはりハルモニアの正装は美しい。統制され均衡を保った美がここに……」
 酔いしれるように鎧の装飾を撫でるキト。


 遥か昔、地の底より湧き出た瘴気に耐え抜くために人の体にかつてこの世に多数いたという天使の力を取り込んで生まれたのが天使人。ハルモニアはそんな天使人たちが暮らしている国なのである。
 ただ、瘴気に対抗する方法として人類が取ったのは天使の力だけではない。
悪魔の力、幻獣の力がある。
 それぞれは取りこんだ力ごとに集まり国を作った。
 天使人の国。ハルモニア。
 悪魔人の国。ケイオスリオン。
 幻獣人の国。トレイセーマ。
 さらにそれらの例外として妖精たちが住むティルヘルムが存在するがこの国は普段は『見えない』のでほぼいないものとして扱われている。
 この例外を除いた三国が絶えず覇を競って争っていた。
 キトが所属するのはハルモニア教皇国。教皇が人々を階級ごとに分け統制する宗教国家である。
 キトはその中でも教皇庁で宝物室の管理を任されているハルモニアでも上位の階級に属していた。普段は武器庫も兼ねている宝物室の物品を検査したりしながら過ごしている。
 今回は珍しく外に出る任務を与えられたのだ。
 『大穴』という土地で陣を張っている味方に新しい武具を届け、また破損した武具を回収して国に戻るという任務である。
 本来なら室長である自分が出るほどの任務ではない(むしろ移動中の襲撃などで落命しては大問題である)が自分が整備してきた武具がどのような兵士たちに使われるのか気になって仕方が無くなって参加することにしたのだ。
 幸い申請も難なく通り、今彼はこうして船にも似た巨大倉庫で揺られている。

「敵襲ですっ!」
 回想に浸っていると見張りが大声を上げた。
「落ち着きなさい。敵の数は? 所属は? 距離は?」
 見張り台に上がりキトは見張り役に問いかけた。
「数が三十ほど。所属はケイオスリオン。……距離およそ七百」
「少ないですね。しかしこちらの方がさらに少ない」
 現在このちょっとした船サイズの巨大倉庫にいるハルモニア兵は十七名。
 操手役を除けば戦える者は十二名。
「……ふむ」
 天使の力を取り入れ強化された視力にひび割れた仮面をつけた黒づくめの軍服の集団が見えた。悪魔人ことケイオスリオン兵である。
 彼らは乗り物を使わず足で走っていた。だがその速度はキトたちのチャリオットに匹敵する。追いつかれ囲まれれば人数の少ないこちらが不利だ。
「私の銃をここに」
「はっ」
 部下が大振りの銃を恭しくキトに差し出した。その白銀に輝く銃を手に取りケイオスリオン兵たちに向かって構える。
「さて、どの程度か」
 ばすん、ばすん、ばすんと特徴的な破裂音と共に風のマナが天使の羽をあし

250pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:24:47
らった砲口から吐き出された。
『うおおおおおおおおおおおお!』
 雄たけびを上げながら迫るケイオスリオン兵たちは魔弾の弾幕に対して散開することで回避した。
「ほう。避けますか。反応もいいようですね」
 狙って撃ったわけではないが一人二人は巻き込まれて脱落することも予想していたキトは感心していた。
「だが愚かな。神の僕の私たちを襲うということ即ち、神への反逆そのものだということを理解させてましょう」
 キトは部下たちの方を振り返り告げた。

「斬ル姫を使います。速やかに呼びなさい」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 そのケイオスリオン兵の集団を率いている隊長の名はラーザという。
 目の前にハルモニアの武器か食料の補給部隊かなにかがいる。だから襲う。
 それくらい単純な行動原理で彼は動いていた。
 だからか襲う、奪うといった目的を決定させた時のラーザは深く考えることを止めてしまう。本能に任せるがままに奪い、犯して、考えるのは全てが終わった後、それで日々上手くいっていた。
 それが、今回は仇になる。


 ハルモニア部隊の上空で何かが光った。
「あん?」
 と思った時には隣を走っていたケイオスリオン兵の首から上が消し飛んでいた。ぼっ、という着火するような音が遅れて聞こえてくる。
「ああ? なんだこりゃ?」
 次は後方だった。杖を持った兵士の腕が吹き飛ばされる。
 遅れてぼっ、という鈍い音。
「斬ル姫だ!」
 仲間の一人が叫び上空を指さした。目の前のハルモニア軍の上の方で光を発しているナニカがいる。よく見るとそれは有翼の女性の姿をしていた。
 背から広がる一対の羽。炎のように赤い髪。ドレスのような純白の衣服には大小さまざまな宝石が散りばめられている。その華美な姿は不思議と下品ではなくむしろ清楚な印象を見る者に与えていた。
 女性のしなやかな腕の先には美しい弓が構えられている。
 そして、その弓に矢がつがえられた。

「シェキナー。聖鎖(ジェイル)名ラファエル。光を纏い降臨しました」

 その名乗りはあまりにも遠くにいるケイオスリオン兵たちには届かない。
「ぎゃあああああっ!」
 代わりに放たれた矢が次々とケイオスリオン兵の身体を穿っていく。
 遅れて響くぼっ、という音。
 それは矢が弓から放たれる音。遅れて聞こえるということは矢の速度が音速を超えていることを意味する。
「聞いたことがあるぜ。ハルモニアには異様に長い射程の斬ル姫がいるって……それがアイツじゃねえのか?」
「隊長ぉ、斬ル姫相手じゃ俺らは無理だ! ひとまず撤退しねえか!」
「五月蠅い」
「ぐびュっ」
 ラーザが突き出した剣が泣き言を叫んだ部下の首に突き刺さっていた。
 そのまま一閃して喉を掻ききる。
「迷うな! 全員突撃しろ! 斬ル姫だろうが構うことはねえ! 弓を使う奴なんてのは囲んで棒で殴れば便所の虫みたいに簡単に殺せるんだよ! 怖気づいたヤツは言え! ソイツはケイオスリオンに住む権利はねえ、今すぐに俺が

251pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:25:30
殺してやる!」
 ラーザは先頭を駆けながら叫んでいた。
 後ろに続く部下たちからは見えないがその瞳は血走って真っ赤に染まっている。こういう時のラーザは誰にも止められない。
 例えそれが勝ち目のない戦いであっても。


 数分後、ラーザ率いる部隊は一人残らず草一本生えていない荒地に倒れ伏していた。ある者は首を飛ばされ、ある者は胸の中心を貫かれている。
 全滅を確認したのかハルモニアの斬ル姫は射撃を止めた。
 身体のどこかを欠損した姿で横たわるケイオスリオン兵たちなど気にも留めない風にハルモニアの部隊は遠ざかっていく。
「チキショウ……畜生オオオオォォォォッ!」
 がばり、と倒れていたケイオスリオン兵の一人が起き上がった。
 ラーザである。
 彼の下半身は巨大なハンマーで潰されたかのように千切り飛ばされていて、彼は大地に掌を叩き付け体を引きずることで動いていた。
「殺してやる。殺してやる……ブッコロシテやる……」
 彼は上半身だけになった体で未だ動いていた。悪魔の力を取り入れた悪魔人であればこその生命力なのかもしれない。
 そのまま彼は頭を失って倒れている部下の死体まで近づくと死体の持っていた斧を取り上げて、部下の腰に振り下ろした。
 ブチィ! と身の毛がよだつ音を立てて死体の上半身と下半身が一撃で分離される。
「は、はぁっ、はぁっ、はぁ………」
 ラーザは荒い息を吐きながら体を仰向けに転がすと、死体の下半身と自分の腰の――――未だに血が流れる切断面をくっつけた。
「あ、ぎああああああああっ――――!」
 想像を絶する痛みがラーザを襲う。剥き出しの神経や骨に押し付けられる異物の痛み。他人の血と肉が自らの血肉と結合する痛み。
 そのような痛みを叫ぶことで紛らわし、耐えながら数秒。
 数分たった。
「―――――うゥゥ……」
 ぴくり、とさっきまで血の気を失っていた足先が動く。膝が曲がりラーザの上半身を支えたまま起き上がった。
「正直……繋がるかは賭けだった、が……」
 部下の物だった下半身はラーザの上半身と完全に癒着し一体となっていた。血も神経を通い問題なく体を動かすことができる。若干腰回りの太さが足りない気がするがそのうち最適化されていくだろう。
 ぐるりと、五体満足になった体で辺りを見回す。
 視界に広がるのは死体の山。かつての同胞たち。
 ラーザ程の生命力を持つ者はいなかったのか起き上がる者が現れる気配はない。
 ぎりり、と歯が怒りに噛み締められる音がした。
「ケイオスリオンを、悪魔人を舐めるなよ」
 ラーザの憤怒に燃える瞳は部下たちの方を向いていながら心はその先を見ていた。
 即ち、去って行ったハルモニアの部隊の方角を、

「殺してやるぞ天使人共おおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオォォオオオオオオオォォォ――――ッ!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



冴え渡る鐘の音(シェキナー)
・最大射程が一上昇する

252pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:26:10


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「では改めて、シェキナー。聖鎖(ジェイル)名ラファエルです」
 羽毛を散らしながらまるで絵画のワンシーンのように天使が空から甲板に舞い降りた。炎のような赤毛が自らの起こした風でふわりと弧を描く。
「素晴らしい!」
 キトは盛大な拍手で彼女を迎え入れた。彼から一歩引いた位置ではハルモニア兵たちがずらりと無言で整列していた。そのような状況でのキトの拍手はやけに空々しく聞こえた。
「素晴らしい! シェキナー、貴女とお会いするのは初めてですがこれほどまでに美しく、また圧倒的な力を持つとは想像もしませんでした! あのケイオスリオン兵たちがまるで赤子同然ではないですか!」
「協調の欠片もない烏合の衆に敗北する道理はありません」
 シェキナーは微笑みを浮かべた。これほど豊かな表情を見せているというのにその言葉には感情が欠片もこめられていないように感じた。
「外見と性能まで優れている上に態度も奥ゆかしいとは素晴らしい! 貴女はまさに上の上の斬ル姫に違いないです!」
 多くの者が感じたその違和感をキトはまるで気にしていなかった。ひたすらにシェキナーの性能や美貌を褒めたたえた。
「では、私は警護に戻りますので」
 笑顔と適度な相づちでキトの言葉を流していたシェキナーだったがある程度で頃あいだと感じたのか、ばさり、と翼を広げて飛び立とうとした。
「もう少し良いではないですか! もっとも貴女について私は語りたい! その柔らかな羽毛を! その豊満な胸を! 弓でありながらどこまでも直線的に飛翔するその矢を!」
「すみません。教皇様の命ですので」
 縋りつかんばかりににじり寄るキトをスルーして羽ばたこうとするシェキナー。キトはせめてとその手に何かを握らせた。
「これは……?」
「貴女の纏う衣服を見て確信しました。それらはきっと貴女に似合う」
 手の中を見たシェキナーの目が細められる。少し興味を惹かれた様子だった。
「また会いましょう! 誉れ高き斬ル姫! 貴女の完璧なる成果を私は確信しそして期待していますよ!」
「ええ。私に任された役目とは護衛。すなわち守護。守護とは全てを守れてこその言葉なのですから。妥協はしません」
 羽ばたき、空へと舞い上がっていくシェキナー。光に照らされた姿もまるで本物の天使のように美しく映った。


「室長。斬ル姫などに寵愛を注ぐはおやめください」
「何を言いますか。あれほど美しいものがこの世にありますか? ある目的のために選ばれた武具がその目的において実力を発揮する。それが美です。その美を礼賛することは神に与えられた私の使命なのです」
 部下は諦めのこもったため息を一つして話題を変えた。
「ところでさきほど何を渡したのですか?」
「宝石の詰め合わせです。あの宝石があしらわれたドレスを見て、私は彼女が最も求めているものはこれだと啓示を得たのです」
 雲の中へと飛翔するシェキナーを熱い視線で見つめるキト。部下もつられて見上げた。
「……どうやら中身を一通り見てから捨てているようですが?」
「それは彼女の求めるところを捉えきれない私の未熟ということになりますね」
 さほどショックを受けた様子もなくさらりと言い放つ。
「さ、思わぬ事はありましたが危機は無事に過ぎ去りました。皆さん。持ち場に戻りなさい」
「恐れながら……」
 パンパンと手を叩いて仲間たちを急かしたているキトに部下はおそるおそる

253pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:27:11
尋ねた。
「室長も見たでしょう? あのケイオスリオン兵が手も足も出ず誅戮されていく様を」
「ええ。あれこそ神罰ですね」
「室長はあの力を見て恐ろしくはないのでしょうか? いくら霊装支配(ギアハック)で押さえつけてるとはあの力が我々に向かうことはないのかと?」
 兜で表情は見えないがキトはきょとんとしたようだった。
 数秒の空白の時間があった後、キトは不思議そうに問い返す。
「? 神の力がなぜ私たちに向くのです?」
「それはその、その通りなのですが……」
「君は少し疲れているようだ。次の仮眠は他の者より長くとりなさい」
 しどろもどろで要領を得ない部下にキトは優しい声で言った。部下の方も少しだけまだ何か言いたそうだったが諦め混じりの雰囲気でハルモニア式の敬礼をして、
「……すみません。そうさせていただきます」
「不安に思うことはありません。私たちは神の力に守られています」
 去っていく部下の背中にさらに言葉をかけて、キトは顎に手を当てて一人呟いた。
「彼は、斬ル姫を見るのが初めてだったのでしょうが? それで混乱を? 一体何を悩んでいたのでしょうか?」
 しばらく考えてみたが結論が出ることはなかった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「これが私たちハルモニアの砦ですか……?」
 キトが率いる部隊はケイオスリオン兵の襲撃からさらに二日ほどかけて『大穴』付近の砦にまで到着していた。
 ここにキトたちが運んできた大量の武具や物資を待つ同胞たちがいるのだが―――――、
「ずいぶんと、綺麗なのですね」
 キトが見上げる白い石造り壁はハルモニア本国でよく見られる建築様式である。天へ伸びる尖塔型の屋根も、曲線やアーチを多用して作られた塀や柵、随所にあしらわれた十字架のレリーフも、まるでハルモニア本国の建物同様だった。
「たしか『大穴』付近は激戦区で三国が集まってしのぎを削り合っているはずでは……?」
 そのような環境下ではたしてこんなに建築に時間がかかりそうな砦を、さらに装飾をここまでの完成度で作り上げることができるだろうか。
 まともな敵だったらそのような砦が建築されていると見れば有無を言わさず妨害にかかると思うのだが、
「まあ、こちらは小汚い要塞で数日過ごさねばならないと覚悟していたくらいです。予想が外れてむしろ喜ばしいことなのですが」


「戦いはここ数年起こっておりません。さらに言うならば武具は交換や修理が必要なほど痛んではいませんね」
「はい?」
 今やハルモニア都市区画七つ分もある砦を管理している部隊長は訪れたキトが投げかけた疑問に対して答えた。
「キト様、『大穴』は確かに三国が同等に陣を張り、確かに激戦区とはなっていますが。決して手に入れる価値のある土地ではないのです」
 キトと部隊長は城塞砦の最上階にいた。この部屋の窓からは砦や『大穴』の周囲が一望できる。
「しかし、ケイオスリオンもトレイセーマもあんなに近くに陣を構えているではないですか。それでいて戦いがないなど……」
 窓から外を眺めると、目と鼻の先にトレイセーマの部隊があった。城のよう

254pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:27:52
な建築物はなく、数百規模のテントがひしめき合って広がる野営地のような形で陣を張っていた。
 ハルモニアのような城を造る時間もあっただろうに簡易式テントのみで済ませているのは国民性なのかもしれない。
 しかし占有している土地はトレイセーマが最も大きい。おそらく人数もこちらの数倍はいるだろう。
「信じられません」
 『大穴』のハルモニアとトレイセーマがいる場所の対岸にはケイオスリオンの城塞がどっしりと鎮座している。
 ハルモニア、トレイセーマ、ケイオスリオンが囲んでいるのは町を二つ三つ呑み込んでもまだ足りぬほどの巨大な孔だ。底は見えずどこまで深いのかもわからない。
 理解が追い付いていないキトに部隊長は説明を続けた。
「見ての通り、この『大穴』の周囲は草一本生えない不毛の大地。瘴気によって作物の類は育たず、脆弱なイミテーションは近寄っただけで死んでしまいます。我々であれば住むだけならできましょうがこの辺りにはファントムという霊装支配(ギアハック)をされていない斬ル姫がうろついていまして。時たま気まぐれに襲撃をかけてくるのです。砦ならともかく町という形で我々が住むことは不可能なのですね」
「はあ……なるほど」
 部隊長の言葉の意味を咀嚼して、ようやく状況を把握したような気がしてくる。
「教皇様は貴方たちになんとご命令を? 『大穴』をハルモニアの手に、と?」
「厳密には違います。教皇様は『いずれ我々が千年王国へ至るため、『大穴』への道を確保せよ』とおっしゃられました」
「道?」
「はい」
 部隊長は大きく頷いた。心なしか浮かれているようにも見える。
「つまりですね。教皇様はいずれ『大穴』に入るおつもりのようなのです。我々はその日のためにこの砦を決して落とされず盤石の構えを持って守り続けているのです! いずれ教皇様がお通りになられる道を忌まわしきケイオスリオンの悪魔人や野蛮なトレイセーマの獣人に汚されぬよう、ハルモニアの聖なる砦と揺るがぬ意志で! ここは砦にして千年王国への入口なのですよ!」
「そうですか」
 口調に熱を帯びていく部隊長とうって変わってキトは気持ちがどんどん冷めていくのを感じていた。
 つまらない。
 戦場とは、何かもう少しあるものではないか。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「気が変わりました。即刻帰りましょう」
 あてがわれた来客用の部屋へ向かう途中、唐突にそう思ったキトは再び部隊長のいる最上階へ早足で向かった。
 塔の螺旋階段を登る途中で窓をちらりと見ると斬ル姫たちが集まっているのが見えた。
(なるほど。ここが教皇庁で言う所の『庭園』にあたるのですね。私からすれば楽園です)
 『庭園』とは斬ル姫たちが暮らすスペースである。ハルモニアでは教皇庁の一角に存在するのだが似たようなものがここにもあるらしい。
 そこには五人の斬ル姫がいた。
 一人はキトたちの往復の護衛を担当しているシェキナー。
 シェキナーと一緒に談笑している二人は金髪の方がエクスカリバーで茶色の癖毛の方が天沼矛だと聞いている。

255pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:28:28
 残りはグラムとピサール。彼女たちは少し離れた位置にいた。
 砦に常駐しているのは斬ル姫はこの五人。
(全員が揃っているところをみると本当にここで戦いはないのでしょう。ああ、嘆かわしい。神聖ハルモニアの力そのものでありながらこのような所で燻っているとは)
 まさに宝の持ち腐れ。そう思う。
 シェキナーの方を見てみると、指先に大粒の赤い宝石を掲げて何やら自慢しているようだ。キトには見せたこともないような笑顔である。
(なるほど。あのような宝石が好みですか)
 後で用意しようと思うと同時に足が停まっていたことに気づいた。
「おっと。つい見入ってしまいました」
 そこから一気に階段を登り切り、最上階へ到達する。
「おや、キト様。どうかなされましたか?」
 別れたばかりなのに戻って来たキトに不思議そうな顔で部隊長が尋ねる。
「いや、来たのはいいものの。どうやら私の仕事はないようなので、お邪魔するのも失礼と思い急ぎ本国に帰ろうかと」
 キトは失望を表に出さないように気をつけながら話す。
「いえいえ。そんなことおっしゃらずに此方は日々退屈なものですから、話し相手ができるだけでもありがたいのです。どうか数日ゆるりと……」
「そうもいかない。私も本国に仕事を残して―――――」
 部隊長の机の周りを歩きながら何気なく窓へ身を乗り出したときである。
「―――――――!」
 その瞬間、キトは雷に打たれたかのように硬直した。
「……何か?」
 部隊長が突然体を固まらせたキトを見て不審げに問いかけているが本人はその声を聞いていない。ふらふらと窓の外を指さすと部隊長に問うた。
「あ、あれは……?」
「? 見ての通りトレイセーマの陣ですが」
「違います。あれです。あの斬ル姫は……なんです?」
「は?」
 部隊長に窓へ寄ってきて覗き込んだ。
 彼らの視線の先には『大穴』の縁に沿うようにして陣を構えるトレイセーマの茶色いテント群が見える。キトが指をさしているのはそのテント群を守るかのように背にして、このハルモニアの砦に挑むが如く凛と構えている。
 薄い桃色の髪をポニーテールでまとめ、白と青を基調とした衣装を纏うその姿は清廉であった。
 その印象と相反するようにその手には大地から直接削り出したような荒々しい大剣が握られている。それを大地に突き刺してこちらを睨む鳶色の瞳からは使命感や大義を持つもの特有の真っすぐな意思が感じられた。

「トレイセーマの斬ル姫ですね。このくらいの時間帯になるといつも出てくる者で、名前までは知りませんが……」
 部隊長が困惑しながら答える。視線をトレイセーマからキトの方に戻してぎょっとした。
「なんですか、なんなんですか、話が違うじゃないですか……」
 ぶるぶるとキトは肩と声を震わせていた。
 その体から漏れる異様な熱気に思わず部隊長は二歩後ずさる。
「あ、あの……キト様?」
 何か怒りに触れるようなことをしたのだろうか? 部隊長はそう思った。階級的には部隊長が下なのでキトの報告次第では処分される可能性もあるのだ。
 だが、キトの両腕が体の震えを必死で止めるように体に回されたあたりから、ひょっとして持病の発作か何かかと別な意味で不安になった。
「あの、お体の具合でも……?」
「素晴らしいっ!」
「ひっ……」
 部隊長が肩に手を伸ばした時、びくんと弾けるようにキトが叫んだ。
「ははははははははははは! 全く腹立たしいです! 話が違う、話が違いますよ! だが! ここまで違うのならっ! こういう方向に違うのならっ! 私は大歓迎ですよハハハハハっ!」
「あ、あ、キ、キトさ」
 キトは腹の底からの哄笑とともに部隊長の両肩をがっしと掴み、滅茶苦茶に

256pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:29:00
まくしたてながら揺さぶる。部隊長はただ目の前の天使人の豹変に恐怖することしかできなかった。
「幻獣人どもは低能で数だけだとは言われていたが! いるところにはいるではないですか! あれを見ましたか! まさしくあれこそ泥から生えた白い蓮の花! 砂粒に混じった宝石! ああ、どんな言葉で形容していいのかは私にはわかりません! しかし! 私は! 感動している!」
 勢いよく部隊長を突き飛ばして、キトは踊った。ワルツのような緩やかなステップで、しかし両腕を不釣り合いに激しく舞わせながら。
「惜しむらくはあれがハルモニアではなくトレイセーマの斬ル姫だということです! ああ、だがこの胸を沸かせる気持ちは出会いがこの状況であったからこそか! 痛し痒し! 痛し痒し! 悩ましいもの! 塵芥の中でこそ美しさは鮮やかに際立つと! そういうものなのでしょうか!」
 キトが発作のように紡ぐ独り言と、ハルモニアの特徴的なヒール状の軍靴が床を叩く音が頂上階に不気味に響き続ける。
「あの瞳の光を見ましたか私! 見ましたとも私! あれは正しいことの白の中にいる者だけが持てる輝き! ハルモニアの者でしか持ちえないはずモノ! 正義! 信仰! 希望! 正義! 愛! 勇気! それらの総体たる魂の輝きを持つ者の瞳! 心に一本の御旗が力強くはためいている者の在り様! よもやトレイセーマにいるとは! 私は私の目が信じられません! いや、認めなくては! 認めなくては! トレイセーマの名も知らぬ斬ル姫! 貴女は間違いなく美しい!」
 再び窓に飛びついて身を乗り出すとキトはさらに興奮して、言葉も支離滅裂になり、しまいにはただ狂ったように笑い続けた。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――――――――――ッ!」
 笑って。
 笑って。
 笑って。
「おや、部隊長。いつからそこに?」
 すっと波が引くように唐突に沈静化した。
 部隊長はといえば、途中からキトとは真向いの壁に張り付くようにして固まっていた。兜の下では恐怖に引きつった表情を浮かべているだろう。
「まあよろしい」
 キトは先ほどの狂乱がなかったかのように落ち着き払っていた。
「私は気が変わりました」
「は、はい?」
「君の言うことにも一理あると思えたのです。なので今日帰るのは止めましょう。私の部下ともども泊まらせていただきます」
「い、えっ? さっき仕事が残っていると……?」
「なに『大穴』で寝泊まりできるなどよく考えてみれば貴重な経験。それに比べれば私の仕事などほんの些事です。それに、君が泊まるように勧めてくださったのです。無下にはできません」
「そ、それはそうですが……」
「なにか?」
「いえ……」
 部隊長は完全に怯んでしまいキトの言葉に頷くことしかできなかった。微妙に腰が引けている状態でなんとかハルモニア式敬礼を行う。
「で、では客室をご用意しますので」
「いえ、申し訳ないのですが私。慣れた部屋でないと眠れない性質でして。外に停めてある船で寝させていただきます」
 では。言うだけ言うとキトは会釈をして部屋から出て行った。
 ほっと胸を撫でおろす部隊長。
「ああ、ところで部隊長」
「ぎゃあっ」
 半開きにした扉からキトの声がした。
「代り映えのしない日々に退屈しておられるようですが、その慣れはあまり褒められませんね。気を引き締めなければなりませんよ。今日明日にでもトレイセーマやケイオスリオンから襲撃されるかもしれないのですからね」

257pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:29:34
「は、はい……」
 それだけ告げて、今度こそキトの足音は遠ざかっていった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


衝撃波(三国兵)
・攻撃命中時に発動。周囲三マスの敵にHPの二十%分のダメージを与える



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「やれやれなんというお人なのでしょうか」
 深夜、部隊長は書類をまとめながらキトのことを思っていた。
 気分の移り変わりが激しく次に何をしてくるか読めない恐ろしさがある。感情を表に出さず落ち着いた者の多いハルモニア兵では珍しいタイプだ。
「とにかく早くお引き取り願いたいものです……」
 部隊長が疲労からくるため息をついた時、


 ―――――――ばすん!


 何かの発射音のようなものが響いた直後、振動が砦を揺さぶった。
「な、地震!?」
 石材が軋み砂埃が天井から落ちる。部隊長が不安げに辺りを見回した時、部下が飛び込んできた。
「敵襲ですっ」
「えっ……」
 最初に去来したのはなぜ? という思いだった。なぜよりによってこんな時に襲撃されるのだろうか? 自分に何か不手際があっただろうか?
 なぜ? なぜ? なぜ?
「……いえ、まずは出なければ」
 考えるのは後だ。部隊長は訓練通りの最小限の動きで鎧を着こむと頂上階から下層へと一気に駆け下りた。
 塔から出て門への道を真っすぐ走る。いくつもの建築物を通過しなければならないのでそこそこの時間がかかるが部隊長の足ならば数分で辿り着けるはずだ。
「あらー、部隊長さま。そんなに急いでどちらへ?」
 振動の発信源へと駆ける部隊長に真上から気の抜けたようなのんびりとした声がかけられた。
「天沼矛……」
「はいー。天沼矛・聖鎖(ジェイル)・サハクィエルですー」
 ウェーブのかかったセミロングの栗毛がふわふわと揺れる。天沼矛はその体自体も浮遊するようにたゆたわせながら全力で走る部隊長と並走した。
 一見鈍いように見えるが天沼矛は砦にいる斬ル姫では最速を誇っており、その飛行速度もさることながら相手に決して意識させずに立ち回るいわゆる隠密行動にも秀でており索敵などの任務によく採用される斬ル姫だった。
「襲撃の現場は確認したのでしょうね!?」
「んー? 襲撃ですか?」
「とぼけないでください! さっき魔弾か何かが砦に撃ち込まれたでしょう!」
 可愛らしく小首を傾げる天沼矛を怒鳴りつける。
 それには対して怯えたりはせず天沼矛は「うーん」と側頭部のあたりをぐるぐると指で撫でまわしながら考え込んだ。
 無意識なのだろうが体もぐるぐると回る。羽衣のような水色がかかった衣装

258pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:30:17
もひらひらと舞う。
「ぐるぐるぐるぐる。頭を使うと目が回りますねー。不思議ですねー」
「そういうのいいですから!」
「言われてみればキト様が疲れ切ったご様子で門のあたりにしゃがみ込んでおられましたねー」
「えっ、キト様が? まさかお怪我を?」
「それはどうでしょうー? 回復魔法のやりすぎで魔力不足の杖の人に似てたようなー? ああ、そうでした。それでキト様は見回りに来たわたしを見つけて『トレイセーマの襲撃です。反撃しますよ』と言ったんですねー」
「くっ……攻めてきたのはトレイセーマですか」
「だからわたしは兵隊さんたちに声をかけて回ってたんです〜」
「え……?」
 話しているうちに部隊長たちは砦の出口にまで来ていた。
 砦の門は解放されていた。
「そんな私はそんな指示はまだ……」
 愕然とする部隊長。よく考えれば現場に来ることばかりで現場についた後どうするかを全く考えていなかったことに気づく。
「あ〜、もうほとんど集まってますね〜。部隊長さまで最後です〜」
 水色がかった翼をはためかせ、部隊長の肩を追い越していく天沼矛。
 遅れて門をくぐった部隊長は再び絶句した。
 砦にいるハルモニア兵四百名。そのほとんどが整列して戦場に出る用意を整えていた。
「よし、これだけ集まればいいでしょう。それでは総員、進軍します」
 それらを率いているのは客人であるキトだったのだ。
「ま、待って、困ります。なんで勝手に……」
 慌ててキトに駆け寄る部隊長。
「おや、部隊長。私はこれから襲撃をかけたトレイセーマを迎撃に向かいます。君には砦の守りについて欲しいと思っていましたが?」
「し、しかし勝手に兵士を動員されては……」
「階級では私の方が上です。私にも指揮権はあるはずですよ。それに君は砦を守るというそもそもの使命を忘れてはいけない。なに兵士や斬ル姫も多少は残していきますよ」
「い、いや。それでも……」
「失礼。急がなければ。それでは守りは任せましたよ」
 小さくなっていくキトやハルモニア兵たちの背中を見ながら部隊長は動くことができなかった。
 守りは任せました。
 そう命令されてしまったのだから。
 ハルモニアは徹底した階級社会。上位者の指示は絶対的な重みを持つ。
「……くっ。何なんだ。あの人は」
 部隊長はそれを初めて疑問に思った。
 それはハルモニアの根幹を揺さぶる感情だということに気づかないまま。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ごほっ、ごほっ」
 キトが血混じりの咳をする。部隊長や兵士たちの前では強がってみたがコンディションが優れていないのは本当だった。
「天沼矛には見抜かれていたかもしれませんね。あれでいて察しのよい斬ル姫のような予感がします」
 黒一色に塗りつぶされた夜空を見上げ呟く。その夜空に一つの光が見えた。
 薄く水色に光るそれは天沼矛だ。
 時計の針のように一定の速度で進むハルモニア兵たちと歩調(飛調?)を合わせて飛んでいる。
 ハルモニア砦を出てすぐにトレイセーマの陣が見えてきた。
 ようやくその全体像が見えてきたというときである。
「止まりなさい天使人!」

259pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:30:50
 凛とした声が荒れ地に響く。
 ハルモニア兵たちの前に一人の斬ル姫が現れた。
 清らかな白をベースに青色でアクセントを加えられた装束。頭の後ろで一つにまとめられた薄い桃色の頭髪。
「先ほどの衝撃音は私にも聞こえています! お互いすれ違いがあるようですが、断じて我々トレイセーマの攻撃ではありません! よって私とあなた方に争う理由はありません! 即刻撤退すればこの件はお互い不干渉ということに致しましょう!」
 トレイセーマの斬ル姫はよく通る声でハルモニア兵たちに呼びかけた。
「あれが、昼間の……!」
 キトは歓喜に沸き立つ心を全力で押しとどめる。
 代わりにすっと静かに腕を上げた。その停止の合図を受けハルモニア兵たちの規則正しい軍靴の音が一斉に停止する。
 深呼吸をしてから、キトは斬ル姫に静かに話しかけた。
「トレイセーマの斬ル姫ですね」
「はい。アロンダイト・獣刻(プラント)・ユニコーンと申します」
 二人の距離は数十メートルは開いているのだがさほど声を張り上げずともお互いの声は届く。
「アロンダイト……アロンダイト・獣刻(プラント)・ユニコーン。とそういう名ですか……。ちなみに、先ほどの攻撃がそちらのものでないという証拠は」
「警備にあたっていた私の目と耳です。ユニコーンの角に誓ってハルモニア砦で爆発音が起こった時間帯に陣を離れた部隊はありません」
「仲間内からの証言では証明たりえないと思いますが」
 ユニコーンの角という奇妙な言い回しに苦笑して、キトは話題を少し変えてみた。
「私たちが貴女を信用に値せずとみなし攻撃に移った場合。どうします?」
「迎撃に移ります」
 無骨な大剣を持ち上げハルモニア兵たちに脅すように突きつける。実際警告しているのだろう。
「専守防衛というやつですかね。戦闘狂のケイオスリオンの連中と違って貴女は無用な争いは避けると。素晴らしい! 私は感動しました!」
 ぱちぱちぱち。とキトの拍手の音が響く。彼は本気で感じ入っているようだが相変わらず空気が読めていないところがある。
 自分以外が沈黙していることにようやく気が付いたのだろうか、キトは唐突に手を止め、ハルモニア兵たちへ振り替えると、
「では、盾隊を前方に配置した突撃陣形で攻撃開始」
 と極めて唐突に戦闘の開始を宣言した。


「やむを得ませんね」
 アロンダイトはため息混じりに攻撃態勢に移る。左足を前に、迫るハルモニア兵たちに対して体を横に向け、大剣を胸の前で掲げるようにして構える。
 これはロングソードで使用される実践的な構えだ。
 相手の体を肩から斜め下に切り裂く、いわゆる『袈裟懸け斬り』に移りやすく力も籠めやすい。
「……………」
 だが、アロンダイトは統制された動きで迫りくるハルモニア兵たちを前に動こうとはしなかった。
「神の裁きを受けなさい!」
 どこかのハルモニア兵の掛け声。それと同時に目と鼻の先にいる大きな青い盾を構えたハルモニア兵たちの盾と盾の隙間から何本もの槍が飛び出してくる。
 無数の槍の刺突が今まさに喉に突き刺さらんとした瞬間。
 アロンダイトが動いた。
「はっ!」
 気合一閃。
 盾を持ったハルモニア兵を盾ごと切り裂き、その背後から槍を突き出していた槍兵たちをも勢いのままに切り裂いた。
「ぎゃああああああ!」
「おのれ、斬ル姫などに……!」

260pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:31:24
 断末魔をあげながら天使人が両断されていく。


「やはり斬ル姫相手に一般兵のみでは分が悪いですね」
 キトは先頭の中心からやや離れた位置で戦いを見守っていた。
アロンダイトは十人以上ものハルモニア兵に囲まれているにも関わらず鬼神のような動きで兵たちを葬っている。
「一見、斬ル姫としての力と体力に任せた戦いかに見えますが、攻撃の一つ一つが何らかの流派に則っているように感じます。兵たちを倒す手順も厄介な敵から順に斬り、それでいて軍の中心に踏み込まないように定期的に後退している。……技巧で戦うタイプですね」
 唯一こちらに救いがあるとすればアロンダイトは飛び道具を持っていないらしいということだ。
 弓兵や投槍に対しては大剣で防御しているだけで反撃の気配がない。
「といってもこれではこちらも全滅してしまいます。そろそろアレらを投入しますか」
 キトは手を掲げハンドシグナルで上空を旋回する天沼矛に合図を送る。
「これで無力化できずとも次の手はありますが……」
 状況は今のところこちらが有利。そう思いながらもキトの胸にあるある懸念があった。
「トレイセーマ兵たちはなぜ出てこない?」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


理想郷への免罪符(シェキナー)
・攻撃時に確立発動。三百%威力の必中攻撃を繰り出す



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 天沼矛からの伝令を受け取り、シェキナーは弓を構える。
「承りました。それでは大天使の力をお見せしましょう」
 シェキナーはハルモニア砦の頂上階、その三角形の屋根の頂点に直立していた。風に純白のドレスがたなびいている。
「目標はトレイセーマの斬ル姫……」
 天使の顔を模した装飾が特徴的な弓に矢をつがえぎりぎりと引き絞る。
 先日ケイオスリオン兵たちを相手取った時とは桁が違うエネルギーが矢に注がれて蓄えられていく。
「神の名の下に裁きを」
 ドッ! という衝撃音は矢が放たれた後からソニックブームとともに辺りへ伝播していく。
 射出された矢は光のマナを纏い七色の輝きを絢爛と放ちながらハルモニア砦から爆発的な速度で戦場へと直進した。
 もはや誰にも止めることはできない。矢は流星のように光の軌跡を描きながらトレイセーマの斬ル姫めがけて爆進している。
 ハルモニア兵たちが蜘蛛の子を散らしたように逃げていくのが見えた。巻き込まれてはたまらないからだ。相手の斬ル姫も避けようとしたようだが、シェキナーの矢はまるで意思を持つかのように斬ル姫の走る方角へとぐりん、と軌道を修正する。
「無駄です。私のこの矢は必中。潔く受け入れなさい」
 シェキナーの弓兵としての目には敵の斬ル姫の表情までもが克明に映る。
「?」
 だからこそ疑問に思った。
 相手の桃色の髪の斬ル姫に一切の怯えがなかったのだ。
 避けるのは無理と確信したらしい。岩石を割って作ったかのような荒々しい大剣を上段に構え、シェキナーの矢と相対した。

261pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:31:59
 その瞳には覚悟こそあれ恐怖や不安は全く感じられない。
「この大天使を前にして不敬ですね。ならば受け止めてもらおうではないですか。しかし、簡単に止まるとは思わないことです」
 むっとほんのわずかに秀麗な眉が持ち上がったがシェキナーに動揺はない。悠然と構えてこの無謀なる挑戦を見届けよう。
「後で後悔したって遅いんですからね」
 そう思っていた。


 自分に向けて突き進んでくる矢はひどく緩慢に見えた。
 だがそれが錯覚であることをアロンダイトは理解している。あれはただ数キロの距離から放たれたが故のものだ。
 実際にはその数キロの距離を数秒でゼロにするだけの猛烈な速度を秘めているであろうことも理解している。
「そしてあのマナの輝き、さぞハルモニアでは名の知れた斬ル姫のものなのでしょう。……相手にとって不足なし!」
 大剣を頭上に振り上げる。迎撃姿勢に移っていた。
 すでに周りのハルモニア兵たちは巻き添えを恐れて散っている。隙を突かれる心配はない。
「本来なら、逃げる兵たちを追撃しせめてもと道ずれにするべきなのかもしれません。……が、それは騎士道ではなく邪道です」
 矢は夜空を切り裂きながら真っすぐアロンダイトへと突き進んでいた。途中で異様なカーブを描き、軌道を変更し地上すれすれを飛翔しながら正面よりアロンダイトを爆散させんと迫る。
「は、あああああああああああああああぁっ!」
 アロンダイトの剣と矢が激突した途端、猛烈な轟音が辺りに響き渡った。

 ぎゃぁるるりりりりりりりりりりィ!

 矢は螺旋を描き剣を抉らんとしたが決着は一瞬だった。

 ばっきん。

 極彩色のマナを振りまいていたはずの矢は突然その光を失い。大剣の一振りを前にまるでガラス細工のようにあっさりと砕け散った。
「……ふっ」
 アロンダイトは小さく息を吐く。剣の柄を見てみると指先が震えていた。どうやら多少は無理をしてしまったらしい。
 顔を上げてみると狙撃で仕留めきれなかったと察知したハルモニア兵たちが再び陣形を組み突撃を始めている。
「頃合いですね」
 そう言うとアロンダイトは大剣を勢いよく地面に叩きつけて――――、



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


退魔の高潔(アロンダイト)
・クエスト開始から五ターンの間、弓・銃・杖ユニットとのデュエル時、相手のデュエルスキルと発動率と必殺率を0%にする※二つの効果は、ともにターン経過で緩和される


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「嘘! 嘘です! そんなはずありません! 何かの間違いです! やり直しを要求します!」
 シェキナーはハルモニア砦の屋根でワナワナと悔しさに震えていた。
 心なし涙目である。

262pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:32:32
ばさり、とその背から大きな薄い紅色の翼が広がる。
「こうなれば仕方がありません! 次の一撃はちゃんとした狙撃地点から狙ってさしあげます! 覚悟してくださいね!」
 翼を羽ばたかせて砦の城壁、その見晴らし台へ向かうシェキナー。木製の台座が見えた時、シェキナーは敵の位置を確認しようと戦場の方へ視線を向けた。
 それがいけなかった。
「…………え?」
 次の瞬間、体が硬直し動かなくなっていた。
 例えるなら、まるで石像になってしまったかのように。
 翼も動きを止め、手足が固まったまま声も出すことができず、紅色の髪だけが振り乱れながら天使は地上へと墜落していく。
「あ、あ、あ、あ、れ?」
 言葉はもはや声にならない。ただ肺から息が出ているだけという状態だった。
 シェキナーの敗因。
 それは単に弓兵ゆえの目の良さにあった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


凋衰の邪眼(梓弓)
・周囲五マス以内の敵ユニット一体の速を、一ターンの間五十下降させる


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 アロンダイトの周囲で土煙が吹き上がり彼女の姿を覆い隠した。
「逃がしてはなりません!」
 ハルモニア兵たちが見逃すまいと土煙に向かって殺到する。
 キトも、固唾をのんで戦いの行方を見守っていた。
 土煙に戦場全員の視線が集まった。

「鳴弦の音を聞きたい方はいらっしゃいますか?」

 土煙を二つに割って、斬ル姫が現れた。
 アロンダイトではない。その斬ル姫は弓を携えていた。
 全身を黒蛇が締め付けているかのような煽情的な衣装を着た斬ル姫。
「さあ見なさい。わたくしの瞳を……!」
 かっ。と斬ル姫の目が見開かれ。瞳孔が左右から押しつぶされるようにきゅっ、と絞られた。
 それはまるで、爬虫類の目のようで。
「わたくしは梓弓・獣刻(プラント)・メデューサ。わたくしの目で止まらないものなどありはしません」
 その宣言通り。
 戦場に立つ全ての者が、停止した。
 ハルモニア兵の盾兵、槍兵、杖兵、弓兵。斬ル姫も、キトも。
「…………」
 荒れ地にひと時の静寂が満ちた。
 ハルモニア兵たちの失敗は、アロンダイト一人に注目しすぎたことだろう。
伏兵の存在に気づかず一人に全員でかかってしまった。その伏兵が『目を合わせた者を石化させる』というメデューサの力を持つとも知らずに。
アロンダイト一人しか出陣していないことに疑問を持ったとしてもその疑問をそのままにして戦闘を続行したキトに非があるのだろう。
所詮キトは文官で指揮官としての才はそれほどでもないらしい。


「助かりました。梓弓」
「気にしないでください。それより、わたくしより前に出ては行けませんよ。

263pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:33:18
アロンダイト」
「わかっています。それでは仕掛けますよ」
 梓弓の背に隠れていたアロンダイトが声を張り上げた。
「今です!」
 何が? という疑問を動きを止められたハルモニア兵たちは思った。
 それはすぐにゾッとする形で回答が示される。

 ずっ、ずず。

 荒れ地に何気なく配置されていた幾つもの岩石が一斉にスライドし始めた。
 岩石の下には人一人通れるくらいの円形の穴があり。
「銃隊! 弾丸装填!」
 ガスマスクのような茶の頭巾を被ったトレイセーマ兵たちが現れた。
 一人だけ黄土色の頭巾をした指揮官らしき人物が号令をかける。
「囲め! A・一一と目を合わせぬよう注意しろ!」
 トレイセーマ兵たちはハルモニア軍を囲いだした。
 穴からは次から次へと兵士が現れて人数を増やしていく。
(まだ増えるのか)
 クロスボウを構えた弓兵、マナではなく火薬式の銃を構えた銃兵。飛び道具で武装した兵士たちが動けないハルモニア兵を取り囲んで、
「撃て!」
 一斉に攻撃を開始した。


「ぐっ!」
「ぎっ」
 体が固まっているため悲鳴すら上げることができずにハルモニア兵たちが倒れていく。
(くっ。誰かあの梓弓とかいう斬ル姫を倒せる者は)
 キトは胸を打たれたハルモニア兵の横倒しになって地面に転がっていた。
 顔が頭上を向く。
(なっ!?)
 真上から数え切れぬほどの矢が雨のように降ってきていた。
 死を覚悟したその時。
「あら〜。ちょっと余所見をしていたらなんだか大変ですねー」
 上昇気流が起きて、矢をごっそりと天空に舞い上げていた。
「誰だ貴様は!」
 トレイセーマ兵指揮官が空を見上げ叫んでいる。他のトレイセーマ兵たちの銃口も空へ向いた。
 矢を吹き飛ばした張本人はのんびりとした口調で、
「わたしは天沼矛です〜。どうかよろしくお願いします〜」
 とぺこりと頭を下げていた。
 ゆらゆらと羽衣が自らの風で揺れていた。
(天沼矛! そうか。シェキナーへの伝令をしていたので梓弓を見ていなかったのですね!)
 キトはそう考えて心の中で膝を打ったが厳密には少し違う。
 天沼矛はただ単に余所見をしていただけだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



空衣の王器(天沼矛)
・自身および周囲三マス以内の味方ユニットの命中・回避が二十上昇する



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

264pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:34:07



 ブロォォオオオオオオオオオオオオオオ――――――――ッ!

 巨人が唸るような音を上げて、トレイセーマの最新式の兵器『機関砲』が弾丸を吐き出す。一秒に八発の弾を発射できるこの圧倒的な制圧兵器が七台、天沼矛に向けて使用されていた。
「怯むな! 砲身の限界まで撃て!」
 指揮官が吠えるがその弾丸は天沼矛に一発も届いていない。
「ん〜。戦う? べきなのでしょうか〜。地上の皆さんは動けないみたいですし、でもあまりあの機械には近づきたくないですね〜。怖いですね〜」
 ぐるぐるぐる。と宙で指を回す天沼矛。
 それに連動して生み出される風の障壁が弾丸を明後日の方角に逸らし続けているのだった。
 弾丸はその速度と威力にして意外に風の影響を受けやすいものなのである。
「迷いますね〜。戦は嫌ですね〜」
 下に降りて戦うべきかどうか。天沼矛は悩み続けていたが、すぐにその問題は解決した。


「これで決着、もしくは撤退となってくれればいいのですけど……」
「まだ終わった気になってはいけませんアロンダイト。今朝の占いによれば『油断大敵』と出ていましたよ」
「いつもの、ですか?」
「ええ、此度は魔獣の骨を使用しました」
「……骨ですか。いえ、否定はしませんよ。しませんけど……」
「何か?」
 天沼矛たちとはやや離れた場所にアロンダイトと梓弓はいた。
 ただ談笑しているわけではない。梓弓はハルモニア兵の石化を維持しなくてはならないし、アロンダイトはそんな彼女が襲われた場合守らなくてはならないのだ。
「魚の内臓を使った占いというのもあるのですよ。如何です?」
「それはちょっと……」
 アロンダイトが苦笑した時、ぞわりと背筋に寒気がした。
 ばっ。と背後を振り返ると風に乗って空を埋め尽くさんばかりの矢がこちらに向かって飛んできていた。
(さっきハルモニアの斬ル姫が舞い上げた矢! 全て梓弓の撃破に回してくるなんて!)
 実際には天沼矛が風で流したら偶然アロンダイトたちの方へ流れただけなのだが、アロンダイトは大剣で打ち払うか一瞬迷った。
(いや、数が多すぎる。私一人ならまだしも梓弓も守るとなると……)
 すぐさま思考を切り替えて梓弓の膝と背に腕を回し大剣の柄を脇に挟んで、
「失礼しますっ!」
「え、何? きゃっ」
 いわゆるお姫様抱っこの形で砲弾のような速度で離脱した。
 斬ル姫の全力はただの矢の速度など遥かに上回る。背後でさくさくさくと矢が地面に突き立つ音がするが全く問題なく回避することができた。
「梓弓、怪我はありませんか?」
「は、はい。大丈夫なのですが……」
 アロンダイトの腕の中で梓弓は申し訳なさそうに言った。
「すみません。驚いて術が解けてしまいました……」
「えっ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


灼熱の天誅(エクスカリバー)

265pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:35:04
攻撃時に確率発動。四百%威力の攻撃を繰り出し、五十%の確率で相手が所持する付与スキルを一ターンの間、封印する


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 梓弓の術が解けたことで戦場は混沌と化していた。
 激しく打ち合うハルモニア兵とトレイセーマ兵。
 飛び道具を風の障壁で防ぎ仲間を支援する天沼矛。
 前ほど大規模とはいかないがハルモニア兵に石化をかけ次々と弓で打ち抜いていく梓弓。
 そして戦場の真っただ中に飛び込んで次々と切り伏せていくアロンダイト。
 そしてここにもう一人。
「敵の術に陥り体を止められるなど一生の不覚! かくなる上は我が身を火の玉と変えて特攻をかけるより他にありません!」
 ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら、戦場を疾駆するフードを被った金髪の女性。
背には炎を帯びた大きな車輪が、両足には小さな車輪がついておりそれらを回転させることで驚異的な速力を実現しているらしい。
 その背には一対の翼もついているので飛行も可能だと思われるのだが、
「見ていてください主よ! このエクスカリバー・聖鎖(ジェイル)・セラフィエル! 輝かしき勝利のため! 敵地に乗り込みます!」
 ばっ。と飛び上がり、全身から炎を噴出しながらトレイセーマ兵たちが現れた穴へダイブするエクスカリバー。
「うおおおおおおおお――――――っ! 我が魂は神聖ハルモニア教皇国と共にあり――――――――っ!」


「完全に混戦になってしまいましたね」
 キトは死んだ兵士から拾った槍で自衛しながら戦場を歩いていた。辺りはハルモニア兵、トレイセーマ兵が入り乱れ滅茶苦茶になっておりとても自分が指示を飛ばしても聞いてくれるものがいるとは思えなかった。
「私の言葉も届く状態ではない……ですか。斬ル姫と正面から鉢合わせしないことを祈るばかりです」
 数ならトレイセーマ側が圧倒的に多い。だがハルモニア側にとって幸運だったのは斬ル姫の人数ならこちらが多いということだった。
(トレイセーマは人も国土も最も多い国。『大穴』という戦術的価値のあまりない土地に割ける斬ル姫はせいぜいあの二人が限度だったのでしょう)
 襲い掛かってくるトレイセーマ兵を槍で突きながらキトは推測する。
「……おや」
 足元に穴が見える。トレイセーマ兵たちが現れた穴だ。単純に地面に穴を掘ったというわけではなく金属質の素材によって舗装されている。
実はこの穴は『マンホール』という名前がついているのだがキトは知らない。
「なるほど、トレイセーマの砦は地下にあったのですね」
 ハルモニア砦の窓から見えるテント群はデコイだったのだろう。実際はそのテントの影に隠れ穴を掘り、地下に巨大施設を造り上げていた。
「もしや既に地底に……いえ、そこまでは考えすぎでしょうか。それはともかく袋叩きにされる危険も考えると迂闊に入るわけにもいきませんね」
 穴に顔を近づけてみると話し声が聞こえてきた。まだ中に何人ものトレイセーマ兵がいるのかもしれない。
『うわっ! なんだお前は!』
『集まれ! 集まれ!』
『どっから来やがった!』
 なんだか様子がおかしい。
『侵入者だ!』
『囲め! 相手は剣だ! 一定の距離を保って打ち続けろ!』
 続いて火薬の炸裂音。剣戟のような音も聞こえてくる。
『くぅっ! もはやこれまでっ! ああっ! 玉砕攻撃を敢行せよという主の心強いお言葉が聞こえてくるっ! 聖なるかなっ! 聖なるかなっ!』
 続いてどこかで聞いたような声が聞こえてきた。
「ええと、確か……エクスカリバーでしたっけ?」
 ようやく思い出した次の瞬間、ボッ。と炎が燃え上がる音がしたかと思うと、

 ゴボオオォォ――――ッ!

 その時、波動が戦場全体を駆け抜けた。
 大地を震わせる震動。トレイセーマ兵たちが現れていた穴という穴から間欠泉のように次々火炎が噴き出した。
 そして次の瞬間、トレイセーマのテント群があったはずの大地が爆発しまとめて吹き飛ぶ。
 続いてテント群があった場所からこれまでとは桁違いの極太の火柱が噴き上がった。もはや熱線と言ってもいいほどの火柱は高速で夜空へ向かって突き進む。
 さらにその一秒後には火柱のあまりの熱量に周辺大気は急激に膨張しそこら中に衝撃波、ソニックブームをまき散らし周囲の砂煙やガレキを舞い上げてキノコ雲を作り出していた。

266pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:35:55
「素晴らしい! ここまでの規模! これこそ兵器です!」
 危うく焼き殺されたにも関わらずキトはテント群の方で上がっているキノコ雲を見て無邪気にはしゃいでいた。
 そのキノコ雲で人のシルエットが浮かび上がったと思うと無傷のエクスカリバーが飛行しながら現れた。
「ぐ、ぐすっ……。恥ずかしながら生き残ってしまいましたあぁ! 玉砕などと言っておきながらこれでは主に会わせる顔がありません! ああっ! 未熟! 情けないことながら私涙が止まりませんんん!」
 両目から滂沱の涙を流しながらエクスカリバーはあまりの惨状に言葉を失っているトレイセーマ兵の中へ急降下していく。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



神讃の極み(エクスカリバー)
・攻撃時に確率発動。敵ユニットに即死相当のダメージを与える※「灼熱の天誅」が発動した場合は発動しない

267pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:38:14

一人でこんなにレス使ってしまいすみません。今回はとりあえずこの辺りで失礼します。
貼り付け作業って意外と指が疲れますね。

268名無しさん:2019/07/30(火) 08:07:48
ええんやで^^

269名無しさん:2019/07/30(火) 23:35:57
こういうガッツリなのもたまには良いものだと思うよ

270pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:38:51
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「撤退!」
 トレイセーマ兵指揮官が声をあげる。拡声器を使っているらしくその声は戦場全体へと響いた。
「撤退、ですか?」
「この状況では最適な判断だと思います。よい指揮官とは引き時も心得ているものなのですよ。梓弓」
 首をかしげる梓弓にアロンダイトは言った。
「先ほどの攻撃で私たちトレイセーマの陣は吹き飛んでしまいましたし。おそらく……地下の戦闘員の方々も全員焼け死んでしまわれたかと思います。これ以上戦い続けて勝利しても、それに見合う利益はないでしょう」
 だからこその撤退。
 アロンダイトはせめてこれ以上誰も犠牲は出ないだろうと前向きに捉えた。
 ぐるりと『大穴』全体を見回してみると『大穴』の対岸にあるケイオスリオンの城塞から黒いカーペットのようなモノが吐き出されているのが見える。
 それは何百人もの整列したケイオスリオン兵だ。あの火柱を見てケイオスリオン軍も漁夫の利を狙って進軍を始めたのだろう。
「なおさら早く離脱しなければいけませんね」
 トレイセーマ兵たちはハルモニア兵から攻撃を受けながらも数人規模で班を組みそれぞれ撤退を始めていた。
「おい! 識別系統B・〇二! A・一一!」
「は、こちらに」
 指揮官のトレイセーマ兵が呼びかけてきた。B・〇二はアロンダイト、A・一一は梓弓のことだ。
「B・〇二は囮としてここに残り限界まで戦闘を続行しろ。A・一一は我々の班の護衛として撤退だ」
「そんな! せめてわたくしも援護で……」
「我々が逃げ切るためには斬ル姫一体で十分だ」
「それではまるで見殺しで」
「何度も言わせるな! 我々という一つの群れを生かすためには多少の犠牲はあって当然だ!」
 指揮官に抗議をした梓弓の肩にアロンダイトは手を乗せた。
「いいんです。私が殿を務めましょう」
「アロンダイト……」
 不安げな梓弓にアロンダイトは笑顔でその背を押した。
「さ、行ってください」


 周囲を石化させながら戦場から抜けていく梓弓の背を見送るとアロンダイトは周囲に目を向けた。
「大方、撤退しきったようですね」
 周りに見えるのはハルモニア兵の白い鎧のみ。落ち武者狩りとばかりにアロンダイトへ迫ってくる。その群れの中にちらりと赤い布地を見たような気がしたと思った時、
「怯むな臆するな正義は我らにあり!」
 ギャリギャリギャリ! と回転する車輪で小石を跳ね飛ばしながらエクスカリバーが突撃してきた。
「くっ。斬ル姫ですか」
 さっと体を半回転させて、ロングソードによる突きを回避する。
 次の攻撃は真上からだった。背中の光輪が噴き出した炎を推進力にして宙に飛び上がったエクスカリバーが頭上から剣を振り下ろしてきたのだ。
 アロンダイトはそれに合わせる形で大剣を振り上げ互いに剣と剣を打ち合わせる。
「……強い!」
 アロンダイトの一撃はエクスカリバーの一撃に弾かれ体ごと吹き飛ばされた。
 空中で受け身をとって、砂煙を上げながら着地する。
 そこで初めてお互いに正面から向き合った。
「私はアロンダイト・獣刻(プラント)・ユニコーン。あなたの名は?」

271pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:40:25
「エクスカリバー・聖鎖(ジェイル)・セラフィエルと申します」
「なんだか初めて会った気がしませんね」
「正直私もです。なんだか親友か仇敵と相対しているような気が致します」
 名乗りあった直後には互いに剣をぶつけ合っている。
 単純な力ではエクスカリバーの方がやや上。だがエクスカリバーは背の光輪から噴き出した炎をブースターにしてパワーを引き上げている。
「力では適いません……が!」
「せええええええええええ………い?」
 アロンダイトは鍔迫り合う剣を斜めに組み替え、エクスカリバーの刃を受け流した。エクスカリバーは力が予想外の方向へ流され態勢を崩す。
 アロンダイトの前に無防備な背中がさらされた。
「……くっ!」
 その背に自分の剣を、トレイセーマの基本装備『シトゴロシ』を振り下ろせば仕留めることができるというのに、なぜか腕が動かない。
「なんで……」
 アロンダイトは当惑を抑えられなかった。
「なんだか胸の奥がざわざわします。私は……、このエクスカリバーという斬ル姫を、傷つけたくない?」
 エクスカリバーを殺してしまったら、一生後悔するような気がしてならない。
『不義』。
不意にその二文字が脳裏にちらつく。
今のアロンダイトは理解できないがそれは彼女のキラーズに由来する感情なのだった。
 そしてその影響はエクスカリバーにも発生していた。
「ああっ! 私は自分が許せません! 主のしもべでありながら敵国の者に情を感じてしまうなんて! 主よ! 私に罰をお与えください!」
 こちらを向き直って剣を構えるエクスカリバーの目からはとめどもなく涙があふれ続けていた。
「ぐすっ、ひぐっ、うううう。涙が……。うう、かくなる上は!」
 ぼっ。とエクスカリバーの体を炎が包んだ。トレイセーマの地下基地を焼き払った時と同等の量のマナが噴出していると思われた。
 そしてエクスカリバーの剣が炎のマナを帯びて太く長く伸びていく。
「大丈夫です。多少剣が伸びたところで技量ではおそらくこちらが上、受け流すくらいなら……」
 アロンダイトの語尾が段々と弱弱しくなっていった。
「敵を傷つけられぬというならせめてこの土地ごとを殲滅して見せましょう!」
 エクスカリバーの前に赤く渦を巻きそびえ立つそれはもはや剣というより『塔』といった方がいい威容を誇っていた。
 アロンダイトはトレイセーマで現在建設中の三百三十三メートルはあるという『電波塔』を思い出した。もっともあちらは金属の塔でこちらは渦巻く火炎の柱なのだが、
「主よ! 私に力を! せええええええええええええええい!」
 あろうことか天高く掲げた巨大な剣をエクスカリバーは真っすぐ振り下ろしてきた。
「これはさすがに無理です!」
 一切迷わず横っ飛びに跳ねて回避した。一瞬でも躊躇えば巻き込まれるレベルの火力と規模だった。

 ――――――――カッ!

 エクスカリバーの炎の剣が『大穴』の岩石やうろついていた魔獣を飲み込んで分子一つ残さず分解した。そのまま火炎はビームのように伸長し『大穴』の対岸にまで到達した。
 対岸に構えていたケイオスリオンの城塞が巻き添えをくらい消し飛ばされる。
「くっ! 外してしまいましたか! でも!」
 エクスカリバーはあろうことか振り下ろした剣を薙ぎ払うように横倒しに振るってきた。
「嘘でしょう!?」
 逃げるアロンダイトの背から炎の壁が迫ってくる。ハルモニア兵たちも悲鳴を上げながら逃げていく。
 大地に扇状に抉られていく、剣の通った後には沸騰して真っ赤に染まった地

272pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:42:27
面のみが残った。
 もはやその威力は災害と称しても問題がないほどに、
「こうなったら、直接本体を……」
 アロンダイトは剣を脇構えにして、炎の剣から逃げるのではなくエクスカリバーの方へと真っすぐ走った。
 斬ル姫の全力でただ前へ、前へ。
 エクスカリバーを倒して、この剣を止める。
「いいでしょう!」
 エクスカリバーもその意図に気づいてもなお手を止めなかった。凄まじいマナは自分でも制御できていないのかもしれない。
「戸惑いも! 躊躇いも! この炎で全て焼き尽くします!」
「貴方を止めます! 例えそれが私の魂に背するものであっても!」
 アロンダイトの剣がエクスカリバーに届くまで、エクスカリバーの剣がアロンダイトに届くまで。お互いにあと数秒。
 そう思われた時、


 ――――――――タスッ!


 極めて軽い音を立てて、
「えっ……?」
 アロンダイトの肩に矢が突き刺さっていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ホークアイファクター(シェキナー)
・攻撃命中時十五%の確率で『移動不可』を付与



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 射出した矢の軌跡を眺めている。
「借りは、返しましたよ」
 ハルモニア砦の見晴らし台で純白のドレスを身に纏い、赤髪をなびかせて。
 シェキナー・聖鎖(ジェイル)・ラファエルは一人呟いた。
 その視線の先には肩から矢を生やしたアロンダイトがいた。
「それにしても今、身に覚えのない力を感じたような……?」


「くっ」
 肩に矢を受けた。それだけなのにアロンダイトはその場から一歩も動くことができなかった。この程度の傷、なんてことはないのに。
「なにかわかりませんが好機、ここで一気に!」
 エクスカリバーが一息に火炎でアロンダイトを消そうとした時である。
「止めなさいっ、エクスカリバー!」
 疲労困憊で肩で息をしているハルモニア兵たちの中から一際大きな声が響いた。
「えっ、っと……ええい!」
 エクスカリバーが横倒しに振るっていた剣を慌てて持ち上げて炎を鎮火させる。燃え盛っていたマナはしだいに落ち着いて通常の剣に戻った。
 動けないでいるアロンダイトは戦意だけは失わず、ハルモニア兵の中から注意深く声の主を探していた。
「ハルモニアでは誰もが知っている決まり事がある」

273pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:43:39
 それはすぐにわかった。ハルモニア兵たちを掻き分けて一人、指揮官と思われる人物が出てきたからだ。
 その人物が最初に戦闘開始の号令をかけた人物であることにアロンダイトは気が付いた。
「一、 国を愛し、繁栄を誓いなさい。二、友を愛し、友のために戦いなさい。三、友が背徳に染まる時、その友を再生しなさい」
 一般的なハルモニア兵と同様の戦闘服を着たその男は上機嫌にそう言った。
「この三つ、特に友という一言ですが。必ずしもハルモニア国民にのみ適用されるというわけではないのです。私が今そう決めました」
 男はざくざくと未だ熱を帯びている地面を踏みしめながらアロンダイトへと近づいていく。
「ハルモニアは選ばれし者たちの国。ならばその選ばれし者というのが必ずハルモニアに生まれるというのもおかしな話でしょう。思えばイミテーションの中にも天使の白羽が与えられる者がかつていたとも聞きますし」
「……なにを言っているのかわかりません」
 男の言葉にアロンダイトは正直な気持ちを告げた。そうすると男は意外そうな顔をした後に、
「つまり、端的に言うと貴女を我らがハルモニアに迎え入れようというのです」
「……は?」
 言葉とともに差し出される手にアロンダイトは今度こそ本気で言葉にできないほど呆気にとられた。
「トレイセーマでさぞ辛い思いをしたでしょう。しかしそれもここまで、これまでの人生は今日この瞬間を目指すための巡礼だったのです」
 差し出された手をアロンダイトが握る気配がないので男は勝手に掴んだ。その手の甲にキスをしかけて全力で払いのけられる。
 それに気にした風もなくようやく男は名乗った。
「私はキト。ハルモニアでは宝物室の室長などをしております」
 はははははは。とアロンダイトからも部下からも気味の悪いものを見る目で見られながらキトは夜空に向かって笑い続けていた。

274pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:46:53



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ステンドグラスから光が差し込んでくる。
 アロンダイトは立ち上がってステンドグラスの方を見るが極彩色の光を放つその鏡からでは外の景色はわからなかった。
「夜が明けたようですね」
 ハルモニア軍に捕縛され、有無を言わさず部屋に押し込められたのが夜のこと。窓から光が差しこむということはさらに数時間たって朝になったのだろう。
 閉じ込められている部屋の様子を明るくなったことである程度見えてくる。
 棺桶のようなものが大量に配置された部屋だ。広さはちょっとした会議室並みだろう。
 埃一つない清潔な空間だった。白い壁は自分の姿が反射して見えるくらい磨かれている。
 アロンダイトは壁に自分の姿を映す。
 ポニーテールで一本に括られた薄桃色の長髪。白を基調に青でアクセントを加えた衣服。外見は変わりがない。
 ただ武器がない。
 持っていた剣は捕縛されたときに、取り上げられてしまった。
 捕まった捕虜の扱いとしては当たり前かもしれない。
「むしろ……手枷足枷で拘束されていないことを幸運だと思うべきかもしれませんね」
 ため息とともに固く閉じられた扉の方を見る。
 石材でできたその扉は頑丈そうで普通の人間ではとても破れそうにない。
 普通の人間では。
「斬ル姫の私ならおそらく力任せに突破できるのでしょうが……」


 キラープリンセス。
 通称、斬ル姫と呼ばれ、兵器として運用される者たち。
 アロンダイトはその一人。トレイセーマ国に所属する斬ル姫だった。
 そして敵国であるハルモニア国に捕まっているのである。

「この扉を突破したとしてもその先にいるのが千人のハルモニア兵だったり脱出不可能な大監獄であった場合も考えると迂闊に動くのは危険でしょうか」
 とにかく情報が欲しい。
 手ごろな位置にある棺桶に腰かけてすぐにアロンダイトは気づいた。
 微かだが床が揺れている。
 移動している。
「ということはここは砦や監獄ではなくチャリオットや輸送車の中だということでしょうか」
 自分を捕らえたハルモニア兵。たしかキトという名前だったはず。その人物が言っていたことを思い出す。

『つまり、端的に言うと貴女を我らがハルモニアに迎え入れようというのです』

 この言葉通りだというならば自分は今、ハルモニアに向かっているところだということになる。だとしたら、ハルモニアに入るまでに脱出しなければトレイセーマへの帰還は絶望的だ。
 やはり、今逃げるしかない。
 改めて決意した時、コンコンと扉が叩かれる音がした。
 扉の前に誰かがいるらしい。気配から察するにおそらく一人。
「…………」
 身構えていると扉の向こうからもう一度、コンコンと叩く音。
 何が始まるんだ。と思っていると扉の外から申し訳なさそうな声がした。
「ええと、入ってよろしいでしょうか?」
 あの音はノックだったか。

「どうぞ」
 自分でも驚くくらい素っ気ない声が出た。

275pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:48:07
 相手の方は特に気を害した様子もなく「では」などと声がしてガタリと以外にも軽い音で扉が開く。
「一晩経ちましたがどうでしょうかお加減の方は何しろ強行軍でし……」
 扉から現れたハルモニア兵の言葉が止まった。
「な、な、な……」
 続いて体をブルブルと震わせたかと思うと、
「何をしているのですか貴女は! 立ちなさい! 今すぐ!」
「え? はい?」
 凄まじい剣幕で食ってかかってきた。
 アロンダイトも思わず毒気を抜かれて素直に椅子にしていた棺桶から立ち上がり脇にそれた。
「ああああああああ! なんということでしょう! 清廉なる保管箱に腰を掛けるなんで! 汚れてしまいます! ああ! 糸くずが落ちています! すぐに掃除しないと! いえ、もう我慢できません! クリーニングしましょう! 滝のごとく浄洗液をかけるのです! いや待てよ。アロンダイトが座ったのが一つだけとは限りません! 全部洗わなければ! ああ、中身が入っていなくてよかった!」
「あの、申し訳ありません」
 鬼気迫る勢いでハンカチで棺桶を拭きまくるハルモニア兵に対して思わず謝ってしまった。
 謝ってから軽く自己嫌悪に陥った。
 私は敵なのに。
 自分で自分に腹を立てているとようやく掃除を終えたハルモニア兵がアロンダイトにビシッと指を突き付けた。
「貴女は! これから神聖ハルモニアの一員となるのですから気を付けていただきたい! 腰を掛けていいのは椅子だけ! 基本です!」
「いえ、確かに思い返してみれば棺桶に腰を掛けるなんて不謹慎な行いだったと思わなくもないですが。そもそも私はトレイセーマの」
「神聖なる保管箱をカンオケですってぇ! 言うにことかいてカンオケと呼んだのですか!?」
 余計な一言でハルモニア兵が見当違いの方向に爆発した。
(間違いないですね。この人は私を捕縛したハルモニア兵です)
 ハルモニア兵は正直全員同じような格好をしていて区別がつきずらいがこの神経質そうですぐに自分の世界に入る感じはあのハルモニア兵。キトで間違いなさそうだった。
 途中からアロンダイトは頷くだけになっていたが、キトの説教はその後数十分続いたのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「そうだ。私は貴女に船内を案内しようと思ってきたのです」
 ある程度ヒステリーをすますと唐突にキトは態度を落ち着けてそんなことを言ってきた。
「船内、ということは船なのですかここは?」
「ええ。と言っても陸上を走る輸送船といったイメージでしょうね」
 アロンダイトが今いる場所はどうやら『船』と呼ばれる輸送車のようなものらしかった。
(そういえば……)
 とアロンダイトはキトが宝物室室長と名乗っていたことを思い出す。
彼が部隊を率いていたくらいなのだからこの『船』は物品を輸送するための倉庫のような役割を持つのかもしれない。
 駄目元でキトに質問してみると、
「そうですね。その考えで正解です。私の治める宝物室はソロモン王の指輪などの宝物を扱うほかに武具を保管する武器庫の役割もありますから。定期的に戦場に武具を届けるための輸送車がこの『船』なのですよ」

276pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:49:41
 なぜこの男は敵に情報を(それも機密そうな)ペラペラと教えてしまうのだろう。
 一瞬ハルモニア人は全員こうなのかと思ったが廊下ですれ違う他のハルモニア兵が船内の解説をするキトを冷たい目で睨みつけていることから、この人物だけが特殊なのだということがわかった。
(構いません。とにかく情報を手に入れるだけ手に入れなければ)
 今にして思えば先ほどアロンダイトが腰かけてキトに激怒された『棺桶』は武具を保管する『保管箱』だったのだろう。キトの言動から察するに空だったようだ。
 あの『大穴』にある砦に輸送してきたのだろう。
(梓弓は無事逃げ切れたでしょうか)
 昨日の戦いのことを思い出すと悔しさと共に戦友の顔が浮かんだ。
(いけない。今は雑念を捨て、脱出を考えましょう)
 船内の案内は大まかには終わり後は甲板だけという辺りまで来ていた。
 キトはハイヒール状の軍靴で小気味のいい音を出し、上機嫌のようだ。
「船底にはマナを制御する動力室があったりしますが、まあそこはいいでしょう。廊下は狭いし暑い。あそこは下級兵たちが行く場所です。我々のような高貴な者たちの場所ではない」
「……同じ仲間に下級も上級もないと思いますが」
「はい?」
 しまった。とアロンダイトは思う。
 思わず余計な一言を言ってしまった。黙って頷いていればよかったのに。
「それはトレイセーマの平等主義というやつですか?」
 あくまで穏やかにキトが尋ねてくる。
「ええ、そうです。私は貴方の態度に見え隠れするハルモニア特有の選民思想が好きになれません」

 その時。空気が凍り付いた。

 周りで仕事をしていたハルモニア兵たちがカチャリと一斉に武器を構える。
「やめなさい」
 すぐにでも攻撃に移りそうな彼らをキトが制した。
「『友が背徳に染まる時、その友を再生しなさい』だ君たち。ハルモニアは悪しき考えに囚われた友を排除するのではなく、教え導く国だと私は信仰している」
 キトはこれまでの進行方向と違う方を指さした。
「こちらに行きましょう。見せたいものがあります」
 

 そこはアロンダイトがいた部屋とは違う武器庫だった。
 棺桶のような保管箱ではなくガラス製のショーケースがずらりと立ち並んでおり、その中には剣や槍が収められていた。
 どれもハルモニアの武具であり、よく磨き上げられ白亜の光沢を放っていた。
「ここには最上級の星六の武具しか置いていません」
 ショーケースを愛おし気に撫でるキト。アロンダイトはその後ろに黙って立っている。
 星というのは武具の等級を示す単位だ。一から六までの指標で表される。
「この最上級の武具たちはハルモニア最上級の兵士たちに与えられるためにあるものです」
 なぜなら、とキトは続ける。
「武具に触り慣れていない者に星六を与えても扱いきれないからです。なればこそ、この選ばれし武具たちは選ばれし兵士たちへと与えられる」
「人も同じ、と言いたいわけですか?」
「その通りです」
「人は物ではありません!」
 アロンダイトの怒りの声にもキトは涼し気な調子だった。
「全ての人を神の門へと至らしめる必要はありません。ただ幾人かの選ばれし者がいれば、彼らの導きで自然と人々の行列は彼らの後へ続きます。耳の聞こえぬ者に神が話されても無意味。理解ができる者だけが神のお傍にいればいいのです」

277pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:50:56

「それは弱者を切り捨てる行為です! 貴方の神とやらはそれを許すのですか!?」
「切り捨ててなどいません。ただ区別しているだけです。手先の優れた者を技術家に、力の強いものを兵士に、忠義に篤い者は神官に。弱き者、力なき者は単純な労働力に。適材適所というものです。ハルモニアは国民一人一人に最も能力を発揮する舞台と身分を与える国なのです」
「もし、それを望まない者がいたらどうなるのです!? 医者になりかった少年が兵士に徴用されたとしたら!?」
「どうにもならない。運命には従わなければならないのです」
 アロンダイトは納得できないという風に眉を伏せて首を横に振った。
「そんなことが許されていいはずがありません。もしそれがまかり通るならばハルモニアは人の心を殺す国です」
「大いなる責任は、大きな誇りを連れてくる!」
 キトは力強く言い切った。
「聖なる鎖はともすれば無軌道に駆られがちな人の心を律し、役割と目的を与えてくださる。私はこの宝物室室長という役割に強い誇りを感じます。同様にハルモニア国民は与えれた価値に対して納得し、やりがいを感じています」
 キトはショーケースの中の武具からアロンダイトへ体を向けた。
「識別系統、でしたか? 貴女方は皆そのように数字で呼ばれているのですか?」
「それは、そうですが」
「私はそれこそ個人を見ない残酷な考えだと思います。そのような無機質な数字の中に貴女が含まれていたかと思うと胸が痛みます」
 ハルモニアはよい国家です。とキトは続けた。
「天使人にも、擬人区のイミテーションにも、そこにいるだけで何かの意味があるのだと思います。今はまだ何の力もなくても誰もが何らかの形で国家に貢献できる力があるのだと」
 理想論だ。
 とアロンダイトは薄っすらと思う。キトはおそらく本気でそう信じているのだろう。きっと彼はハルモニアの良い面しか見ていないのだ。
 だが自分はどうなのだろう。と自らを振り返って思った。
 イミテーションをイミテーションであるというだけで人の枠から外し、弾圧を続けるトレイセーマは本当に平等な国家なのだろうか。
 そのことに何の疑問も今まで持たなかったがイミテーションの価値を、例え欺瞞だとしてでも信じているキトを見てトレイセーマに対して初めて違和感を感じた。
 人でないから切り捨てる。それで良いのだろうか。
 何か、ズレがある。
「貴方は……」
 アロンダイトは何かを言おうとして止めた。
 今の迷いのある自分では、きっと言い負かされてしまうだろうから。
 自分の心に決着をつけて、キトの信仰心に向かい合い。打ち負かしたい。と静かに決断した。
「では。このようなところで終わりにしましょうか。悩みも成長の証というものです。後は部屋に戻りゆっくりと休みなさい」
 キトは突然黙り込んだアロンダイトは見て満足げに頷くと、体をターンさせ武器庫を出ようとした。
 その時、


 ―――――――ボガッ!


 勢いよく武器庫の壁が吹き飛び、爆風で二人は廊下へ押し出された。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

278pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:51:54


「な、な、な……」
「あ、この光景さっきも見ましたね……」
 爆風で廊下まで転げたキトとアロンダイト。
 破壊された壁を見てキトはわなわなと両手を震わせ、
「嫌だ――――ッ! 私の美しい白亜の壁がまるで木屑のように! ぎゃあ! 私の最上級の武具たちが! ガラスケースが砕け散って! 床に焦げ跡がぁ! もうヤダ死ぬるうぅぅぅぅぅうぅぅぅぅ!」
 狂ったように床に頭を打ち付ける。実際半分くらい狂っているのかもしれない。
「それより……あれは」
 キトを無視してアロンダイトは穴の開いた壁の先を見つめていた。
 その先へ、ほとんど接触するような距離にいたモノは一言でいうならば、

 幽霊船だった。

 竜骨部分が目の前をずずずと通過していく。帆のようなものも見えた。まるで何枚もの魚の背びれがぶら下がったような不気味な雰囲気。
 朽ちた巨大なオールのようなモノで地面を叩きながら前へと進む幽霊船。
 そう見えた。
 船体の腹の部分から突き出た筒は大砲だろうか。あれでハルモニアの船に砲撃をしかけてきたのだろう。
 ガゴン、再び船全体が揺れた。
 幽霊船が体当たりも同然の勢いで船体を横づけしてきたのだ。
「……っ、とにかく考えるのは後です。この騒ぎの隙に脱出を」
「えっ、ちょ、アロンダイト!」
 キトが制止するのを無視して、アロンダイトは床を蹴った。
 ハルモニアの船の廊下を走り抜ける。
 まずは上へ。甲板を目指して。
 廊下を抜け、階段を駆け上がり、見えた扉を開けると。

「ケイオスリオン兵……!」

 ひび割れた仮面に黒づくめの戦闘服。
 ケイオスリオン兵の軍団がハルモニア兵たちを蹂躙していた。

279pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/31(水) 00:00:13



※今書きあがっている所までを全部上げました。ここまでで話全体の三分の二くらいです。今後は書いた分から小刻みに書き込んでいくことになると思います。


※完結までそこそこ時間がかかる(来月の終わりくらい)と思うので皆さんどうか私に構わずにSS投稿してください。私のことは長い目で見てください。
 皆さんの作品楽しみにしています。このスレ好きです

280pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/31(水) 00:06:15
添削がてら読み返してみると自分でいうのもあれですがけっこう読むのにカロリー使う文章ですね…。
しかし経験値不足もあってこんなのしか書けないむむむ。もっと一文辺りの文字数を減らすのが目標です

281チャレンジアロンちゃん:2019/07/31(水) 01:05:14
チャレンジアロンちゃん六

マスター
「今回はこれ」

アロンダイト
「大きい着物ですね」

マスター
「今回は二人羽織に挑戦してもらおうかなと」

アロンダイト
「二人羽織ですか」

マスター
「そうなんだけど...二人羽織って二人でやるものなんだよな後一人を誰に頼むのか悩んでいるんだよな」

アロンダイト
「前来ていただいたアバリスに頼むのはどうでしょう?」

マスター
「そうだね...そうしy」

梓弓
「後一人はこの私に任せてください」

マスター
「うわっ!びっくりした」

アロンダイト
「梓弓いったいどこに?」

梓弓
「アロンダイト私はあなたがいてあなたが呼べばどこにでも現れる神出鬼没な弓兵です」

アロンダイト
「そうなんですかすぐに駆けつけれるなんて梓弓は移動速度が速いんですね」

マスター
(すぐ駆けつけれるんじゃなくてずっと尾行してるからなのでは?)

アロンダイト
「梓弓が協力してくれるらしいので始めましょうマスター」

マスター
「そうだね」

マスター
(なんか今回心配だな)

282チャレンジアロンちゃん:2019/07/31(水) 01:21:27
>>281
マスター
「今回はカシウスが作った熱々のラーメンです」

アロンダイト
「カシウスは色んな料理作れますよね尊敬します」

梓弓
「私だって色々作れますよ」

アロンダイト
「そうなんですか?いつか色々作ってください」

梓弓
「任せてください」

マスター
「ラーメン冷めるから早く始めて」

アロンダイト
「そうですね始めましょう」

アロンダイト
「それじゃあ私が前やります」

梓弓
「良いんですか?」

アロンダイト
「熱々なら梓弓をやけどさせるわけにはいきませんから」

梓弓
「そうですかそれならお言葉に甘えて」

梓弓
(アロンダイトの優しさとかっこよさに濡れる)

283チャレンジアロンちゃん:2019/07/31(水) 01:33:28
>>282
二人の準備が完了した

梓弓
「アロンダイト行きますよ」

アロンダイト
「はい!どんと来いです!」

梓弓は箸を取り箸で麺を掴みアロンダイトの口元に運んだ

アロンダイト
「熱っ!」

梓弓
「大丈夫ですかアロンダイト?」

アロンダイト
「大丈夫もうちょい左です」

梓弓
「わかりました」

アロンダイト
「熱い!」

梓弓
「アロンダイト!?」

アロンダイト
「だ、大丈夫もうちょい上でお願いします」

梓弓
「わかりました」

その後梓弓はアロンダイトの口元に麺を運ぶが中々入らずにアロンダイトは熱々の麺が当たった

梓弓
(アロンダイトが熱がってる私の手で苦しんでる///////)

※この世界線での梓弓はアロンダイトが絡むと興奮する変態です不愉快になられた方がいましたら申し訳ございませんそしてご了承してください

284チャレンジアロンちゃん:2019/07/31(水) 01:37:37
>>283
マスター
「ようやく終わったね」

アロンダイト
「熱かったです」

マスター
「タイムは25分43秒だったよ」

アロンダイト
「結構時間かかりましたね」

梓弓
「それでは次は交代してやりましょう」

アロンダイト
「え?」

285チャレンジアロンちゃん:2019/07/31(水) 01:57:41
>>284
二人は交代して準備が終わった

アロンダイト
「良いですか梓弓?」

梓弓
「いつでも良いですよ」

アロンダイト
「行きます」

アロンダイトは箸を取り箸で麺を取り梓弓の口元に運んだ

梓弓
「熱っ!」

アロンダイト
「梓弓!?すみません」

梓弓
「いえ大丈夫です」

その後もやはり中々麺は口元に入らず梓弓は何回も熱々の麺が当たった

アロンダイト
「梓弓本当にすみません」

梓弓
「謝らなくて良いですよそれよりも....もっと続けて//////」

アロンダイト
「本当に大丈夫ですか?息が荒くなってるような気がするんですが...」

梓弓
「はぁはぁ大丈夫...大丈夫だからもっと続けて//////」

マスター
(顔がすごい紅潮してる)

梓弓
(アロンが私をいじめてる////)※違います

梓弓
(優しくて誰にでも手をさしのべる天使の笑顔をするあのアロンが私をいじめて興奮してる//////)※興奮してません

梓弓
(さらにわざとおっぱいを当てて私を誘ってる//////)※誘ってませんし必然とこうなります

梓弓
(最.....高////////////)

286チャレンジアロンちゃん:2019/07/31(水) 02:06:47
>>285
マスター
「結構早く終わったね」

梓弓
(もう少し楽しみたかった)

マスター
「タイムは12分56秒」

アロンダイト
「梓弓本当にすみません熱かったでしょう?」

梓弓
「いえとても良かっt...げふんげふん全然熱くありませんでした」

アロンダイト
「こういうチャレンジはもうしたくありませんね」

梓弓
「私はもっとしt...なんでもありません」

マスター
(この件は触れない方が良いな)

梓弓の素性を知ってるのはアロンダイト以外の斬ル姫ほぼ全員です

287チャレンジアロンちゃん:2019/07/31(水) 02:09:37
また忘れてた注意書き
“これはアロンダイトをバカにするものではございません出来ないアロンを愛でるためのものです“

288名無しさん:2019/07/31(水) 12:45:10
今回のチャレンジアロンも面白かったけど今回に限って言えば主役もはや梓弓だろww
次回も楽しみにしてます!

289名無しさん:2019/08/01(木) 22:33:17
あるじさまと日常 第1話 ゼニー

※キャラクターが実際の言動、性格とは異なります。批判などあればその時点で投稿を中止します


ティファレト「あるじさまあるじさま」

ますたー「どしたー?」

ティファレト「ゼニーがありません、びんぼーです」

ますたー「( ´_ゝ`)」

ティファレト「あるじさま、わたしはバイトをします」


ますたー「おまwやめとけよw」

ますたー「ちなみになんのバイトなん?」


ティファレト「ゼロさまに紹介してもらったきゃばじょう?なるものです」




ますたー「いや絶対だめぇ!!」



ますたー(ゼロの奴、ティファレトに何吹き込んでやがんだ…)

つづく!

290名無しさん:2019/08/02(金) 01:24:42
このくらい気にすることないですよ。続き待ってます

291pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/02(金) 01:27:24

『先先日あたりの続きからです』











◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



冴え渡る智識(ヤグルシ)
・防御時に確率発動。射程外から受けるダメージを八十%軽減する



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「作戦の第一段階は終了だね」
「うーん。こういうのはあんまりあたし好みのショウじゃないんだけどなぁ」
「命令されちゃったからねー」
「仕方ないね。ま、あたしは気にしないよ。あたしは品行方正で忠実な斬ル姫だからねっ?」
「もう、嘘つきなんだから」
 アロンダイトが幽霊船と呼んだ船のマストの上で彼女たちは恋人同士のように仲睦まじく談笑していた。
 ただ、どちらも人の姿をしていない。
 片方はヒョウの姿、もう片方は白猫の姿をしていた。
 ネコ科の動物同士が人の言葉で話しあう。
 それだけでも十分に異様だがさらに恐るべきは彼女たちが、このケイオスリオン軍の作戦においての要だということだった。
「ねえ、オティヌス。あなたの幻惑ってあなたが移動したら解けるんだっけ?」
「んー、しばらく持つと思うよ?」
 白猫の質問にヒョウが首を傾けながら答えた。正直自分でもよくわかっていないらしい。
「ふーん。他人やモノを変身させられる上に持続もするのかー。羨ましいな。ヤグの変身能力って自分にしか使えないしなー」
「ヤグルシにはバエルの知恵があるじゃないか」
「それだって戦術って面では雑賀ちゃんに劣るんだよねー。なーんか私って器用貧乏っていうかさー」
「前向きに器用と捉えればいいのに。ま、いいさ。帰ろうよ。伯爵も斬ル姫二人を遠出させたままだと不安だろうし、さ」
「うーん。そうだね! なんか今回のケイオスリオン兵長さんって目が血走っててアブナイし、それよりは伯爵さんの方が面白いしね!」
「そうだよ。それにずっとここにいると……」
 オティヌスと呼ばれていたヒョウがすっとヤグルシと呼ばれた白猫の背後に回る。
 その直後、オティヌスとヤグルシたちに矢が打ち込まれた。
 ―――ガチン!
 だがその矢はヤグルシの周囲に出現した青いバリヤーによって軽く弾かれる。
「痛ったぁい。もー盾に使わないでよー」
「だから言ったじゃないか。ずっとここにいると危ないよって」
「もっと大きな声で言って欲しいよー。ヤグのバリヤーはダメージの二割はちゃんと入ってくるんだからさー」
 そうだよ。とオティヌスが頷いて続ける。
「あたしたちの役目はあくまで支援までだ。ケガするなんて割に合わないよ」
 さ、帰ろうか。
 ぼんっ。とヒョウが煙に包まれ、晴れたころにはヒョウが立っていた場所には一人の少女が立っていた。手品師のような燕尾服を着ている。
「彼らが勝てるかどうかなんてあたしたちには関わりのないこと。ま、精々派手な終幕にして欲しいものだ」
 彼女こそがオティヌス。
 ケイオスリオンの斬ル姫。オティヌス・D. plug・オセの本来の姿だった。
「うん。まあ、先は気になるけど好奇心は猫をも殺すって言葉があるからねー」
 白猫の姿をしたヤグルシがオティヌスの腕の中に飛び込む。

292pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/02(金) 01:27:59
ヤグルシを抱え込んだオティヌスが奇術師らしく大仰に一礼した次の瞬間、彼女たちの姿は消えていた。
 誰もいなくなったマストの上から風に乗って声がする。
「それにしても。ハルモニアの船なのになんでトレイセーマの獣臭い香りがしたんだろうね」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「テメエら足を止めるな! 後ろを振り向くな! 各個に突撃しろ! 杖だろうが銃だろうが知ったことか、オレたちに後衛はいねえ! 突貫!」
 ケイオスリオン兵たちを率いているのはラーザという悪魔人だった。
 彼は先日、今自分たちが攻撃しているハルモニアの船を襲い返り討ちにあっていたのだった。
 その時の恨みを忘れなかったラーザは一旦ケイオスリオンの領土に帰り、兵士を揃え、部隊を再編し、わざわざ他の土地の領主から斬ル姫まで借りて復讐の準備を突貫で整えた。
「ようやくだ。ようやくお前らを切り刻める……!」
 先日ラーザの部隊が壊滅した地点で待ち伏せし続け、オティヌスの幻術とヤグルシのステルス能力でハルモニアの船にギリギリまで近づいてから襲い掛かる。という作戦。
 前回の遠くから姿を晒したまま突撃してハルモニア陣営のやたら長い射程を持つ弓の斬ル姫に全滅させられた経験を活かしたつもりだ。
 その作戦は今のところ成功しているようにみえる。
 オティヌスとヤグルシは既に消えたようだが、そもそも彼女たちはそこまで当てにしていない。
 初めから彼らの協力は幻術による擬態までだとゲバルトなどという伯爵との契約で決まっていたのだ。
「おおおおおおおおおオオオオオオオオオオオォォォォ!」
 天高く怒号を上げて、ラーザが放り投げた戦斧が甲板で逃げ惑うハルモニア兵の首を斬り飛ばす。
「立ち塞がるものは全て駆逐しろ! 進軍を妨げるすべてのモノは敵か雑草だ! 一切の区別なく焼き払え!」
 ラーザの激にケイオスリオン兵たちが怒声じみた歓声で答えた。

293pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/02(金) 01:28:33
今回はここまでです

294pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/02(金) 01:41:43
『モラベガ実装 その時ボーに電流走る』





ガ・ボー「姉さま姉さま姉さま姉さま……」

ガ・ジャルグ「や、やめなさい! 私たちとあの双子とはそもそも出自が違うから合体は無理よ!」

ボー「大丈夫です姉さま。キラーズ的には似たようなものですから……。あの双子にできるならボーにも……」

ジャルグ「いや、待って。やめなさい。落ち着きなさい。もっとそういうのはお互いの距離を近づけてから。違う、物理的に近づくんじゃない!」

ボー「痛くしませんよ姉さま。ただ体を縦に割って断面をくっつけるだけ……」

ジャルグ「それ痛いに決まってるでしょう!? 絵面けっこうサイコよ!? 待って。いったん離れましょう? ひっ! だからそのワキワキした手の動きを止めっ……イヤああああああぁあぁああぁぁぁ ぁあああああぁああぁ ああああああああ――――――――ッ!」


(その時、不思議なことが起こった)


ジャルグ「あれ? 何もされて、ない?」

ボー(姉さま)

ジャルグ「ボー? あなたどこにいるのよ? 姿が見えないけど?」
ボー(姉さまの中です)

ジャルグ「私の中ぁ!?」

ボー(姉さまの中、あったかいです)

ジャルグ「その表現はやめなさい。本気で」

ボー(ボーの願いが叶いました)

ジャルグ「何が起きたのかしら」

ボー(ボーと姉さまが心も体も一つに……)

ジャルグ「もっと具体的に」

ボー(ボーの肉体がデータ化して姉さまに取り込まれました。昔でいう淘汰のようなものですかね)

ジャルグ「淘汰? はよくわからないけど。だいたいわかった気がするわ。つまり今のあなたは思念体ということね。状況的には地底世界の住人達に近いのかしら」

ボー(さすがです姉さま。そんな姉さまの中にボーがいる……うふふ)

ジャルグ「……なんだか気味が悪いわね。となるとあれもできるのかしら。えっと地底世界のやつらがやってたあれ。データの検索みたいなやつ」

ボー(淘汰と同じ流れなら。私の記憶は姉さまと共有されたと思います)

ジャルグ「そうなの? じゃあやってみようかしら。手始めにあなたの二年前はっと……」


(ほわんほわんほわんほわ〜ん)


二年前ボー「姉さま……どこにいるのでしょう」

二年前ボー「はっ、これは虹色に輝く羽はもしや姉さまの! むしゃむしゃ……甘ぁい」

二年前ボー「あなたは姉さまですか? 違う? 残念です」(グサッ)

二年前ボー「姉さまに会える、会えない、会える、会えない、会える……あっ、千切る首がなくなってしまいました……。次の戦場に行かないと……」

295pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/02(金) 01:42:54


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ジャルグ「……凄まじいものを見たわ」

ボー(ボーは姉さまの記憶が見れてとても幸せでした。まさか姉さまがボーのことを影に日向にあれほど助けてくださっているなんて……)

ジャルグ「ちょ、ちょっとやめなさい! 禁止! 記憶覗くの禁止よ!」

ボー(残念です)

ジャルグ「とにかく。いつまでもこのままというわけにはいかないわ。戻る方法はないかしら」

ボー(ボーはこのままでも構いません)

ジャルグ「あなたが構わなくともマスターが構うでしょ。単純に槍をふるう兵隊が一人いなくなったと考えたら隊にとっても大きな損失だわ」

ボー(グズでノロマなボーなんていなくても誰も気にしません)

ジャルグ「そんなこと言わないの! 私はあなたの力を信じているわ。ま、私の輝きには及ばないだろうけど。あなただってあと一歩で私に届くのよ。自信を持ちなさい」

ボー(姉さま……)

ジャルグ「さ、元に戻る方法を考えるわよ。……ジャンプすれば衝撃で分離するかしら」(ピョンピョン)

ボー(ああっ! いけません姉さま! そんな激しく上下にっ!)

ジャルグ「言い方。で、どうしかしたの?」

ボー「ボーは、ボーは高ぶってしまいます……ハァハァ」

ジャルグ「意味が分からないわ。でもたぶんショック療法とかじゃ無理ね。もっと確実な方法はないかしら」

ボー(地上から天上世界へ行くと分離すると聞いたことがあります)

ジャルグ「あらいいじゃない。さっそく試しましょう。で、どうすれば行けるの?」

ボー(ユグドラシルを通っていくようです姉さま)

ジャルグ「ルートも完璧ね。じゃあボー。飛ばしていくわよ! ユグドラシル駅とかいうのに向かって!」

ボー(ユグドラシルはとうの昔に伐採されています)

ジャルグ「ダメじゃないのよ!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




ジャルグ「ん? 朝? ここはベッドの上……そうか! 全部夢だったのね!」

ボー(おはようございます。姉さま)

ジャルグ「あらボー。いたの? 聞いてよ。私とても変な夢を……ボー、どこにいるの? ちょっと待って嫌な予感」

ボー(あなたの中にいます)

ジャルグ「イヤああああああああああああああああああ!」

ボー(あの後、特に有効な手立てもなく寝たじゃないですか。なので姉さまは今も究極の姉さま。ガ・ジャルグ・獣刻・イーリス・エクストリームです)

ジャルグ「記憶を捏造した私の弱さを憎む……。って何その名前!? ボーの成分はどこにいったの!?」

ボー(姉さまの体で迎える朝、ボーは喜びのあまりマキシマムドライブ……)

ジャルグ「わけのわかんないこと言ってないで戻る方法を……」




マスター「あ、おはよう。ガ・ジャルグ・獣刻・イーリス・エクストリーム」

ジャルグ「はぁ!?」

マスター「あれっ……? だって昨日ガ・ジャルグのことはこれからそう呼べって自分で……」

ジャルグ「ボ――――――ッ!!!!!!!!!」
ボー(姉さまが寝ているときに体のコントロールを頂いて隊の皆様に姉さまが究極の姉さまになったことをお知らせしてきました)

ジャルグ「なんで!?」

マスター「いや、合体したんでしょ。ボーと。……うん。姉妹仲がよくていいんじゃないかな……これからも頑張ろうね……ガ・ジャルグ・獣刻・イーリス・エクストリーム」

ジャルグ「なんでマスター微妙に目を逸らすの!? そしてやめてその名前! 私の考案じゃないから! あとずっと合体したままみたいな雰囲気出してるの止めてくれない!?」

ボー(これからは健やかなる時も病める時も、二人で半分こですね。姉さま)

ジャルグ「え? ここで終わるの? 分離は?」




終わり

296pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/02(金) 01:44:20
いつものとは関係ないけどジャルグの水着とモラベガ記念になんか書きました

297名無しさん:2019/08/02(金) 02:42:30
ガジャルグお姉様はいつか金色に輝いてサプラーイでディメスティメンションタイムからのドゥーンの生粋のエンターテイナーを倒すのかな?

298名無しさん:2019/08/02(金) 09:31:50
合体してボジャルグに…?

299名無しさん:2019/08/02(金) 09:39:34
それにはユグドラシルの風を受けなきゃ




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