したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

【ファンキル】SSスレ

258pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 01:30:17
もひらひらと舞う。
「ぐるぐるぐるぐる。頭を使うと目が回りますねー。不思議ですねー」
「そういうのいいですから!」
「言われてみればキト様が疲れ切ったご様子で門のあたりにしゃがみ込んでおられましたねー」
「えっ、キト様が? まさかお怪我を?」
「それはどうでしょうー? 回復魔法のやりすぎで魔力不足の杖の人に似てたようなー? ああ、そうでした。それでキト様は見回りに来たわたしを見つけて『トレイセーマの襲撃です。反撃しますよ』と言ったんですねー」
「くっ……攻めてきたのはトレイセーマですか」
「だからわたしは兵隊さんたちに声をかけて回ってたんです〜」
「え……?」
 話しているうちに部隊長たちは砦の出口にまで来ていた。
 砦の門は解放されていた。
「そんな私はそんな指示はまだ……」
 愕然とする部隊長。よく考えれば現場に来ることばかりで現場についた後どうするかを全く考えていなかったことに気づく。
「あ〜、もうほとんど集まってますね〜。部隊長さまで最後です〜」
 水色がかった翼をはためかせ、部隊長の肩を追い越していく天沼矛。
 遅れて門をくぐった部隊長は再び絶句した。
 砦にいるハルモニア兵四百名。そのほとんどが整列して戦場に出る用意を整えていた。
「よし、これだけ集まればいいでしょう。それでは総員、進軍します」
 それらを率いているのは客人であるキトだったのだ。
「ま、待って、困ります。なんで勝手に……」
 慌ててキトに駆け寄る部隊長。
「おや、部隊長。私はこれから襲撃をかけたトレイセーマを迎撃に向かいます。君には砦の守りについて欲しいと思っていましたが?」
「し、しかし勝手に兵士を動員されては……」
「階級では私の方が上です。私にも指揮権はあるはずですよ。それに君は砦を守るというそもそもの使命を忘れてはいけない。なに兵士や斬ル姫も多少は残していきますよ」
「い、いや。それでも……」
「失礼。急がなければ。それでは守りは任せましたよ」
 小さくなっていくキトやハルモニア兵たちの背中を見ながら部隊長は動くことができなかった。
 守りは任せました。
 そう命令されてしまったのだから。
 ハルモニアは徹底した階級社会。上位者の指示は絶対的な重みを持つ。
「……くっ。何なんだ。あの人は」
 部隊長はそれを初めて疑問に思った。
 それはハルモニアの根幹を揺さぶる感情だということに気づかないまま。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ごほっ、ごほっ」
 キトが血混じりの咳をする。部隊長や兵士たちの前では強がってみたがコンディションが優れていないのは本当だった。
「天沼矛には見抜かれていたかもしれませんね。あれでいて察しのよい斬ル姫のような予感がします」
 黒一色に塗りつぶされた夜空を見上げ呟く。その夜空に一つの光が見えた。
 薄く水色に光るそれは天沼矛だ。
 時計の針のように一定の速度で進むハルモニア兵たちと歩調(飛調?)を合わせて飛んでいる。
 ハルモニア砦を出てすぐにトレイセーマの陣が見えてきた。
 ようやくその全体像が見えてきたというときである。
「止まりなさい天使人!」




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板