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【ファンキル】SSスレ

270pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/07/30(火) 23:38:51
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「撤退!」
 トレイセーマ兵指揮官が声をあげる。拡声器を使っているらしくその声は戦場全体へと響いた。
「撤退、ですか?」
「この状況では最適な判断だと思います。よい指揮官とは引き時も心得ているものなのですよ。梓弓」
 首をかしげる梓弓にアロンダイトは言った。
「先ほどの攻撃で私たちトレイセーマの陣は吹き飛んでしまいましたし。おそらく……地下の戦闘員の方々も全員焼け死んでしまわれたかと思います。これ以上戦い続けて勝利しても、それに見合う利益はないでしょう」
 だからこその撤退。
 アロンダイトはせめてこれ以上誰も犠牲は出ないだろうと前向きに捉えた。
 ぐるりと『大穴』全体を見回してみると『大穴』の対岸にあるケイオスリオンの城塞から黒いカーペットのようなモノが吐き出されているのが見える。
 それは何百人もの整列したケイオスリオン兵だ。あの火柱を見てケイオスリオン軍も漁夫の利を狙って進軍を始めたのだろう。
「なおさら早く離脱しなければいけませんね」
 トレイセーマ兵たちはハルモニア兵から攻撃を受けながらも数人規模で班を組みそれぞれ撤退を始めていた。
「おい! 識別系統B・〇二! A・一一!」
「は、こちらに」
 指揮官のトレイセーマ兵が呼びかけてきた。B・〇二はアロンダイト、A・一一は梓弓のことだ。
「B・〇二は囮としてここに残り限界まで戦闘を続行しろ。A・一一は我々の班の護衛として撤退だ」
「そんな! せめてわたくしも援護で……」
「我々が逃げ切るためには斬ル姫一体で十分だ」
「それではまるで見殺しで」
「何度も言わせるな! 我々という一つの群れを生かすためには多少の犠牲はあって当然だ!」
 指揮官に抗議をした梓弓の肩にアロンダイトは手を乗せた。
「いいんです。私が殿を務めましょう」
「アロンダイト……」
 不安げな梓弓にアロンダイトは笑顔でその背を押した。
「さ、行ってください」


 周囲を石化させながら戦場から抜けていく梓弓の背を見送るとアロンダイトは周囲に目を向けた。
「大方、撤退しきったようですね」
 周りに見えるのはハルモニア兵の白い鎧のみ。落ち武者狩りとばかりにアロンダイトへ迫ってくる。その群れの中にちらりと赤い布地を見たような気がしたと思った時、
「怯むな臆するな正義は我らにあり!」
 ギャリギャリギャリ! と回転する車輪で小石を跳ね飛ばしながらエクスカリバーが突撃してきた。
「くっ。斬ル姫ですか」
 さっと体を半回転させて、ロングソードによる突きを回避する。
 次の攻撃は真上からだった。背中の光輪が噴き出した炎を推進力にして宙に飛び上がったエクスカリバーが頭上から剣を振り下ろしてきたのだ。
 アロンダイトはそれに合わせる形で大剣を振り上げ互いに剣と剣を打ち合わせる。
「……強い!」
 アロンダイトの一撃はエクスカリバーの一撃に弾かれ体ごと吹き飛ばされた。
 空中で受け身をとって、砂煙を上げながら着地する。
 そこで初めてお互いに正面から向き合った。
「私はアロンダイト・獣刻(プラント)・ユニコーン。あなたの名は?」




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