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耐久神話31日24時までに100の神話を記述

1bothhands:2007/12/29(土) 16:53:39
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『ところが、突如、急ぐようすもなしに、彼は4分の1の回転をしはじめた。彼が真向きの顔をこちらへむけるであろう、その同じ瞬間に、すべてはなしとげられるはずだった。彼が、ぼくらを見るであろうその同じ瞬間に、彼はすでに、ぼくらの中に、渇きも、死も、蜃気楼も、消し去っているはずだった。彼は早くも世界を変えるその4分の1の回転をやりかけていた。彼の上体の動き1つ、彼の視線の動き1つで、彼は生命を創造するはずだった、そしてぼくには、彼の姿が神のように見えるのだった……。
これは奇跡だ……。彼は、砂の上を、ぼくらの方へ、歩いてくる、海上を渡る、神のように……。』(サン=テグジュペリ、堀口大學訳、『人間の土地』より引用)
*****/

このスレッドは現在時刻より2007年12月31日2400までに100個の神話をbothhandsが記述するためのものです。
年末なのでちょっとした催しをするということです。
いないでしょうが、参加される場合は、別途にスレッドを立てて、タイトルにタイムリミットと目標とする記述個数の表記をして下さい。
http://bothhands.at.webry.info/200712/article_3.html
http://ustream.tv/channel/bothhands

15bothhands:2007/12/30(日) 00:10:30
今は昔、双子の男女がいた。長じて2人は結婚することになって別れ別れになったのだが、初夜の晩、お互いの伴侶から逃れてきて、枕を交わした。
近親相姦はよからぬことだったので2人は逃げた。逃げた果てで双子は盗賊に襲われて、2人は奴隷として売られた。
このあと2人はそれぞれの方法で奴隷の立場から逃げた。男のほうは買われた家の御曹司を暗殺者から守り、右足を失った。女のほうは貴族から見初められた。
女は貴族の子供を身ごもり、出産し、母親の役割を果たし、やがて終わった。そして息子は婚約者を女の前に連れてきた。
その女は息子の通っていた剣術道場の師匠の娘だった。
女は結婚を許し、娘の親へ挨拶しに行くことにした。女は旦那と違って貴族ではないので何事も動作が軽かった。
女は剣術道場を訪れると、そこでは足の悪い1人の男が弟子たちに剣を教えていた。
女は立ち尽くし、やがて足の悪い男は決定的に振り向いてしまう。

16bothhands:2007/12/30(日) 00:18:13
キュトスはアルセスに不満を抱いていた。というのはアルセスが人間をいじめるからだった。もっともアルセスからすれば、自然のままで放っておいただけだった。しかしキュトスからみれば、困っているのが判っているのに放置したということだった。
それでキュトスは人間を助けようとおもったが、何かしようとするたびにアルセスの邪魔が入る。では人間自身の手でなんとかさせなくては。
ということでアルセスが寝ている隙にキュトスはアルセスの耳の中に入って知恵を盗み出した。そして雨として大地に降らせた。
この雨を飲むと人間はアルセスの知恵を手に入れて、様々な困難を乗り越えられるようになった。
ところが雨で配ったせいで、人間以外も知恵をつけてしまった。例えば、猫が騎士になったり、トカゲが二本足で立つようになった。しかしキュトスはこれらを人間とおなじく可愛いと感じたので問題にしなかった。
しかしアルセスは変におもった。変におもったというのは知恵を盗まれたせいで頭が悪くなっていたからだ。以前ならすぐにキュトスのせいと気づいたはずだった。
アルセスは馬鹿になったが、キュトスはこのようなアルセスも可愛いとおもったので問題にしなかった。
しかしあるときアルセスが「最近おれは頭が悪くなったような気がする」といったときにキュトスは「それはね・・・・・」と本当のことをいっってしまった。
するとアルセスは頭悪くなっていたので怒りを抑えきれず死んでしまったとさ。

17bothhands:2007/12/30(日) 00:25:05
さて頭の悪くなったアルセスはキュトスを殺してしまった。頭が悪かったのでアルセスは死んだことが理解できなかった。それで仕方なく放置したのだが、なにも起こらない。いやだんだん腐ってきた。
それでアルセスはキュトスの身体を砕いてかけらをひとつひとつ地上へ落とした
書き忘れていたが、アルセスとキュトスのいるところは天蓋の上だ。
さて空から巨大なかけらが落ちてきて地上はあちらこちらクレーターだらけになってしまった。人間たちは知恵をつけていたので空を望遠鏡でみた。そして事情を理解したのだが、いかんせん、天蓋の上ではなんともならない。
とりあえずこまっていることをつたえるために、手旗信号やのろしなどを上げてみたが、なんともならなかった。
人々は困り果てた。そこに1人の老婆が骨だけの傘をさしてかけらの降るなかを歩いて見せた。
アルセスはこれに気づいて、なにをしているのかと尋ねた。
地面が揺れるような大声だった。しかし老婆は耳が遠かったので、聞き返した。するとアルセスは天蓋から地上へ首を伸ばして尋ねようとした。
そのとき老婆はアルセスの首を傘の柄の曲がったところでひっかけて地上へ引きずり下ろした。
もう空からキュトスが降ってくることはない。

18bothhands:2007/12/30(日) 01:02:13
今は昔、森林で木々をへし折る凄まじい音が響き渡っていました。猿や兎が逃げていきます。音の主は一体の黒い甲冑でした。中身はありません。
この甲冑はメテオラといってひたすら前進する性質を持った存在です。ものを壊すごとに少しずつ知性を得るので、最近は猿や兎が可愛いとか、森林破壊は良くないとか、湖や川を渡るときはどうしようか等と考えていました。
ところでこの森林ですが、欲深いお坊さんの荘園でした。そんなことをメテオラは知っているはずもなく、知っていても仕方なく、前進していると、狩人姿の子供が木々の影から姿を現しました。
メテオラは足を止めて、兎の真似をしてみました。子供はじっと見つめてくるだけです。これでは相手をしてくれないらしいとメテオラは思いました。メテオラは少しばかり退屈していましたし、自分がなんだかわからないので、他の人からの意見を聞きたかったのです。それで今度は猿の真似をしてみました。
すると子供はしげしげと見つめた末に「頭大丈夫?」といってきました。
「大丈夫だ。心配してくれてありがとう。おれはこの通りどこもかしこだから」
少年は笑いました。メテオラはなぜ笑われるのかわかりませんでした。
「甲冑の人、ここは悪者のお坊さんの領地だから静かにでていったほうがいいよ」
「そうなのか。しかしおれは前進しかできない」
「まいったな」
「心配はけっこうだ。頑丈なだけでなく怪力もある」とメテオラは木々をなぎ払って見せました。
子供は目を丸くしました。メテオラはカカカカッと笑いました。
「子供よ、心配してくれてありがとう。なにかお礼をしたいのだが」
「だったら悪いおぼうさんを倒してよ」
「わかった。どっちにいる?」
子供は指をさしました。けれどもそれはちょっとばかりメテオラの進行方向からずれていました。
2人は困りした。メテオラはがちゃんと手を叩き、ささやきました。
子供は戸を持ってきて敷きました。メテオラは戸に載りました。子供は戸を動かしました。
こうして進行方向の修正が済み、悪いお坊さんはぼこぼこのぼこにされました。

19bothhands:2007/12/30(日) 01:08:30
さて前述した理由でアルセスは頭が悪くなり、さらに老婆の手によって地上へ突き落とされました。このときアルセスの頭が割れて知恵という知恵が流れ出ました。このために飲むと頭のよくなるという縁起のある川ができたりできなかったりしましたとさ。
話は戻ります。本当にどうしようもなくスッカラカンになってしまったアルセス。しかし実は残っているものがありました。けれどもそれは曖昧なものでアルセスにはよくわかりませんでした。
それで自分を引きずり下ろした老婆に尋ねると少しだけはっきりしました。
これ以来、アルセスは自分のなかのもやもやをはっきりさせるためにいろいろな人に質問をしました。そしてこの国のすべての人間への質問を終えると世界を巡りました。
そしてアルセスは自分のなかのもやもやをはっきりさせられました。実は途中でなにか推測ついていましたが、ついにはっきりしました。それはキュトスのことでした。
すべてを取り戻すとアルセスは膝をつき、もう決して立ち上がることはありません。
それからして人々は大地に槍が立っているのに気づきました。
という話があったりなかったり。

20bothhands:2007/12/30(日) 01:17:10
今は昔、身分制の国があった。この国では親の職業を子供が必ず受け継ぐことになっていた。王様の子供は王様の子供で、乞食の子供は乞食だった。そして学者の子供は学者だった。
けれどもこの学者は学者を辞めたくてたまらなかった。いや本当は学者でもいいのだが、親が国立学院という王族の子弟に勉強を教える学校の者だったので、自分も一生その身だった。
生活には不自由なかったが、研究心は不満だった。学者は地質学をやっていて現地を見たかったからだ。外国の地質も研究したかった。
そのうちに王都が地盤沈下を始めた。国全体に不吉な空気が漂ったが、学者だけは新しい事例だと喜んだ。
そして学者は「授業とは現場検証だ」といって王族の子弟を連れて地下深くを探検にいって研究心を満足させた。
が、あるときぬれた岩からすべてクレバスの奥へ落ちた。クレバスの奥は地下水で木を失った学者を運び、いつしか学者は砂漠地帯のオアシスへたどり着いていた。
男の願いは叶った。男は砂漠を調査しながら現地民のために井戸を掘るようになった。

21bothhands:2007/12/30(日) 01:21:04
今は昔、世界には世界しかいませんでした。世界はこれを悲しんで生き物を造りました。そのうちに生き物の中から人間が現れました。世界はこの生き物を気に入りましたが、人間が世界に穴を開けて血を吸い始めると、世界は滅ぼしてやることにしました。そこで世界は人間の宗教というヘンテコな発明を利用して人間をそそのかせました。そして紀元槍の上にある雨水をためておく瓶を傾けさせました。すると水がこぼれて大地は濡れ、世界は身体を揺すって洪水にしてました。こうして人間は滅びました。

22bothhands:2007/12/30(日) 01:28:31
今は昔、この国が開拓されたばかりのことです。当時は開拓民と流刑者ばかりでした。だから争いごとなど四六時中でした。
ある村に若者と娘がいて、互いを好き合って、結婚しました。そして村は盗賊に襲われて男たちは殺され、女たちはさらわれました。
けれども若者だけは死んでいませんでした。若者は足をひきずりながら盗賊をおいかけ、やがて山の中で倒れました。
これを1人の老人が見ていました。老人は若者が死んだら着ているものを剥ごうと考えていました。けれども若者が失神しながら前に進もうとしたので考えを変えました。
若者は老人から介抱を受けると、妻を取り返すといって旅に出ようとしましたが、老人に叩きのめされました。老人はある国の剣術師範でした。
老人は片足こそ悪かったものの、今でも若者よりも強く、技も冴えていました。そして若者の応じるままにすべての技を教えました。
そして若者は剣客となって盗賊を追い、1人1人殺し、妻の居所を突き止め、妻をさらった男を殺そうとしました。
けれども妻は止めに入り、謝って盗賊ごと妻を殺してしまいました。
「なぜだ!」と若者の叫び。そして泣き声が聞こえてきて判りました。妻は赤ん坊を父無し子にしたくなかったのでした。
こうして若者は妻の残した子供を抱いて師匠のもとへ帰りました。

23bothhands:2007/12/30(日) 02:12:06
神々の図書館でラヴァエヤナが仕事をしていると、司書のソルキレウスが来客を告げた。客はピュクティェトだった。
ラヴァエヤナはピュクティェトの待つ喫茶室へ入るなり、平手を張って「久しぶりだな、アエルガ=ミクニー」といった。
アエルガ=ミクニーは頬を押さえながら「ばれたか」と返す。
「今日は何のようで来たんだ。用件は済ませなくていいから帰りなさい」と司書をみて「シリンダー=ソルキレウス、お客様のお帰りだ。お見送りしてあげろ」
「そんなすげないことをいわなくてもいいじゃないか。ちょっとあんたの顔をみて、本を読むだけじゃないか」
「信用できないね。お前が来るたびに本が紛失するんだよ。今日という今日こそは返してもらうからな」
ラヴァエヤナとアエルガ=ミクニーが言い争っているあいだ、ペレケテンヌルは神々の図書館へ忍び込むと、物色を始めた。
こういうわけで世の中にはいろいろと災いが起きるわけだ。

24bothhands:2007/12/30(日) 02:21:49
おれが医者になったのは貧しかったからだ。誰がいったのか覚えていないが「貧乏人の子供は貧乏人だ」と言われたからだ。私は勉強して奨学金をもらって大学へいってとにかくいろいろあったすえに医者になった。
でも革命が起きた。インテリ階級はみんな死ねと連呼された。おれは貧乏人の息子だが、医者だったので、殴りまわされた。むかついたが、多勢に無勢なので我慢した。貧乏人だからこういうことはけっこう得意だ。でも、両親に連中が手をあげたからおれは戦法を変えた。服従するふりをした。
そして革命派のえらいさんの付き人になった。このえらいさんは身体が悪かった。ちなみにこのえらいさんだが実はインテリ階級というものだった。まあどこでもずるいことはあるものだ、チクショウ。
で革命の季節って奴も終わり、おれは政治犯の1人に数えられた。どうも政府はスケープゴートを欲しがっているっぽかったので、おれは両親に相談した。
「国を捨ててようとおもうんだ」
「どこへいくんだ」
「医者を必要としている国はたくさんある。とくに貧乏な国なら」
「そうか。ならいこう」
おれは両親と一緒に国を出た。

25bothhands:2007/12/30(日) 02:33:24
私は祖母に育てられました。父はいなく、母は狂っていたからです。祖母は毎日、父母を罵りました。母は心を閉ざし、ベッドの上から動きもしません。時にそんな母を打ち据えました。私は怖くて見てられませんでした。でもあるとき、私は怒り心頭を発して祖母を突き飛ばしました。これ以来、祖母は母を殴ることはありませんでした。
私は私なりに力があることを知りました。そして脈絡もなく「父を見つけられたら母は正気に戻るかもしれない」とおもって旅に出ました。
もっとも金がなかったので軍隊に入って父の行方不明になった地域を任地としました。父も軍人だったのでこの辺りを知っている城館は許してくださいました。もちろん父の世代の兵士が戦ったおかげで平和だったからというのもあります。
それで任務の暇をみて父の行方を探し、やがて墓を見つけました。その墓はよく手入れしてありました。どうやら誰かが見舞ってくれているらしかったです。
だから私は墓石の影に隠れて誰が来るのか待ちました。そして1人の娘を見かけました。私はおずおずと影から出て、事情を説明しました。
そしてこの娘が腹違いの妹と知りました。父は軍を辞めるとこの地で家庭を持ったのです。そして母親を捨てたのでした。
捨てたといってももとから神経の切れやすかった母は父と新婚のころからだいぶおかしかったそうです。
妹の母親とも話しました。
私は混乱しました。世の中にはいろいろな側面があると身をもって知りました。そして私は妹にいいました。
「よかったら私の母を見舞ってくれないか。きみも父さんの忘れ形見の1人には違いないから」

26bothhands:2007/12/30(日) 02:47:27
今は昔、魔法使いがいた。魔法使いといっても最初は魔法使いでなくてただの男だったが、あるとき言葉を唱えると時々その通りになることに気づき、いろいろと研究してみた。この男こそ寝言士と呼ばれるタイプの魔法使いの始まりだった。
さて魔法使いは面白いことを発見したといって回った。誰も彼も面白いとか、便利とおもったのだが、口を閉じるように忠告し、ときには脅されることもあった。
というのは男のいる部族は旧弊で新しいものを嫌うからだった。新しい方法を採用するかどうかは部族長が決めるのだが、今のやっている老婆は新しい骨のつぎ方すら拒むので、手足を萎えさせてしまう者が続出していた。
そこで男はこの力を持って部族を変えようと考えた。男は単刀直入に部族長に「てめえは老害だ。目も耳も悪いくせにしゃしゃりでるな」と罵りました。
部族長は問答無用で男を殺すように命じましたが、男は魔法で打ち倒しました。そして部族長を決めるための儀式の実施を要求しました。
それはある種の博打でした。果物をもぎ取ってその中の実が多いほうが部族長になるというものでした。
老婆は抵抗しましたが、男の魔法には叶わなかったので、仕方なさげに、受け入れました。そして勝負が始まると男の果実が種なしになるよう計らいました。
しかし男が果実を割ると種がこぼれ落ち、洪水のような有様になりました。これをみて男の友人たちが「新部族長万歳!」と叫び、いい加減老婆にうんざりしていた人々が賛同しました。
こうして新部族長が誕生したのですが、魔法使いではなくて、双子の子供を持つ聡明な母親でした。というのは魔法使いが自分で出した種の処理ができなくて村に迷惑をかけたので追い出されたからでした。
もちろんしばらくして魔法使いは戻ってきていつものように生活し始めましたが。

27bothhands:2007/12/30(日) 02:54:54
ある村の外れに魔女がいた。この魔女は村人の依頼で、牛の病気を治したり、麦につく病気を治したりしていた。もちろん怪我人や病人も治した。
魔女は自分が他人の役に立つことを誇りに思っていたが、この力や技能が村人から怖がられていると知って、気づいた。
うじうじしている魔女の前に1人の若者が少女が現れて恋の相談を持ちかけた。魔女はそんな気分ではなかったが、いつまでも暗い気分ではいても仕方がないので、気分転換がてら請け負った。
魔女の忠告はなかなかよい効果があったらしく娘は意中の相手と結婚した。それで魔女のもとへ恋愛相談をもちかける娘が増えた。
しかしある晩、村の男たちが押し寄せてきた。というのは魔女が娘をたぶらかせて不埒な真似に及ばせているのだろうと勘違いされたからだった。
魔女は思う様になぶられて最後には赤ん坊を押しつけられた。どうやら村にとっていらない子供らしかった。
魔女はあいかわらず村の外れで生活している。そして今は子供がいるので寂しくはなかった。

28bothhands:2007/12/30(日) 03:07:53
今は昔、セウ=ガーベラという男がいた。この男の父親はレストロオセという女王に仕えていたのだが、なにをおもったのか、反旗を翻した。もっとも即座に鎮圧されて、本人は処刑、息子のセウは幽閉された。このときセウはわずか12歳だった。
さて困ったのは死神だった。セウを担当する死神はセウが77歳になったら迎えにいけと命じられていたのだが、穴蔵というより糞壺のようなところに幽閉されてしまっては無理な話だ。だから死神は任務を全うするためにセウを励ました。
幽閉されているセウに「いつか解放される」と囁き、そのときのために知識や武術を教えた。
そしてレストロオセに待望の初の子供が生まれた日、セウは恩赦として解放された。そしてセウはレストロオセとその息子に忠誠を誓わせられた。
セウはニガヨモギの騎士団にこそ数えられなかったが、騎士にはなれた。父のように。死神はセウの立派な姿に満足を覚えた。
レストロオセはセウに辺境の領地を与えた。かつて父の領地だった土地だった。領主不在のあいだに荒れ果てた土地をセウは苦労しながら収めたが、死神の勉強の成果もあって、次第にセウの試みは成功した。
あるときお忍びで王子がやってきた。そしてレストロオセが王子に権力を譲るためにひどい悪行を行っていることを知り、また王子が心を痛めていることを知った。そしてセウは父親のように反旗を翻した。今度は自分のためではなく忠誠を誓った王子のために。
死神はこの有様に苦笑した。これは死ぬまで苦労させられるなと。

29bothhands:2007/12/30(日) 03:24:00
レストロオセに仕えたニガヨモギの騎士団ですが、セウ=ガーベラの起こした内乱の結果、打ち倒された上に地の底に封印されました。
そして地の底で力を得て人間ならざるもの、悪魔となりました。そして魔法使いの召還に応じては邪悪な行いをするものでした。
しかしある日、ニガヨモギの騎士団は1人の女に呼び出されました。
女は「子供たちを救って」といいました。女は孤児院の経営者で、孤児院のある街は伝染病に襲われていました。
悪魔ことニガヨモギの騎士団は顔を付き亜併せて困りました。なぜなら悪事をはたらくつもりで呼び出されて数百年、いまや良いことなどできなくなったのです。しかしせっかくだから助けてやりたい。そして協議の末にニガヨモギの騎士団長は女王に謁見するかのように恭しく進み出ました。
「もしもあなたに我が身を犠牲にするお覚悟あるならば、我らは子供たちを助けられます。我らは悪魔の意地でなくて騎士の意地で子供を助けますが、悪魔で長くありすぎたのであなたを犠牲にせざる得ません」
女はためいらいもせずにうなずきました。すると女の身体が巨木となりました。巨木となっても人間が住めるようになっているおかしな木でした。
ニガヨモギの騎士団は子供たちを捕まえると巨木の安全清潔な環境に移しました。そして病害が去るまで子供たちを守り、地の底へ帰りました。

30bothhands:2007/12/30(日) 03:33:44
今は昔、あるところに魔法使いがいた。この魔法使いは自分の身体を鍛えるのが好きで、ミアスカ流脚撃術などの体術を考案していた。あるときふと「逆の方向へ進んだらどうなろう」とおもった。もうろくしていたのかもしれないが、わからない。
そしてこの魔法使いは身体をどんどん削っていき、骨と皮と軟骨と舌だけになった。そしてそんな姿で歩き回ったので気味悪くて思われて重りを括りつけられて川に流された。
骨と皮とあといくつかで生きられるような存在がその程度で死ぬはずもなく、軟骨や筋を食われたものの、何百年かしてから救い出され、知恵のある骸骨として珍重された。
そして博物館に展示されて土日以外は鑑賞される身分になったのだが、魔法使いはこれがいやで仕方がなかった。しかし舌がないので訴え出ることもできない。
魔法使いは世界の終わりに救いを見出して待ったが、来る気配もなかった。

31bothhands:2007/12/30(日) 03:50:18
私が両親を殺したのは頭の中の悪魔のせいだ。逃亡中の私が警官を殺したのもそうだし、この警官から奪った銃で幼稚園児を殺したのも悪魔のせいだ。この頭の中の悪魔さえいなければ、私は悪いことをしないで済んだのにともって私は残り一発の弾にかけて自分の頭へ撃ち込んだ。
拳銃で自殺する人へアドバイス。拳銃の弾は頭が丸くなっている。だから頭蓋骨にぶつかると曲がって逸れてしまう。だから死ににくい。確実に死には拳銃を口にくわえて引き金を引くといい。というのはこの場合は脳幹という呼吸などを司る部位を確実に弾丸が撃ち抜くからだ。
さて私は頭の中から悪魔を追い出した。そして今までやってきた悪行を償おうと考えたが、事情を正直に話すと頭がおかしいとおもわれて、医療刑務所へ送られた。
まあ今まで悪魔がいて、拳銃で吹っ飛ばして追い出したら、今度は予知能力が芽生えたなんていったらそんなものだろう。
で、おれは予知能力で医療刑務所の設備や警備を把握すると、街へ逃げ、密かに犯罪を解決し、隙をついて戻った。
なぜ戻るかってそりゃ、おれは人をころしたものだもの。自分の手で。せめて刑に服さないと。

32bothhands:2007/12/30(日) 04:08:03
親を殺したら少年院に連れて行かれた。少年院で犯されそうになったので殺したら刑務所に連れて行かれた、刑務所で犯されそうになったので、犯してやったら懲罰房へ放り込まれた。そして刑期を終えたらヤクザが出迎えにきて「お前のような奴がほしいんだ」といってきたので、行く相手もないのでうなずいた。つまり鉄砲玉がなれということはわかっている。
おれは鉄砲玉になった。もちろん送る方としては鉄砲玉=帰ってこない、相打ちになって死ぬと考えていることは判っている。だからおれは敵も殺して味方も殺して、その辺りを自分のものとした。
おれは手向かう者は誰彼無く殺した。警官すら殺したし、政治家すら殺した。おれは少年院や刑務所にいたおかげでいかなる方法でも殺すことができた。
おれは夜の街の王者となった。もっとも王者でも9ミリ拳銃一発で死ぬけどな。

33bothhands:2007/12/30(日) 04:13:57
かつて世界の果ては死の国と呼ばれていた。というのはその辺り一帯に広がる沼は燃える性質を持ち、死者を送っていたからだった。あの世という意味で世界の果てといった。
しかし1人の男が砂漠から来る。そしてこの沼地は燃料になるといった。そしてまたたくまに世界の果ては燃料供給地となった。
この世には無限のものなどない。決して。世界の果ての沼地は枯れ果ていた。そしてそれまで沼地のせいで割を食っていた林業などの業者がもう刈り始めた。
砂漠からきた男は沼地の跡地をみてナツメヤシでも植えられないかと考えた。

34bothhands:2007/12/30(日) 04:26:12
目を覚ましたら身体がなかった。身体がないのにものを考えられるのはおかしいので、私は二度寝しようとしたが、できなかった。後進のために忠告しておくが、身体がないということは二度寝ができないということだ。二度寝の快楽を大切にするものは決して身体を失わないこと!
空腹も眠気もないので私は仕方なくあたりをさまよった。身体がないのでどこへでもいけたが、なにもできなくて退屈だった。そのうちに身体が出棺された。そして煙になると同時におれはなんでもできるようになった。骨壺に自分の骨をつまんで入れることすらできた。
そしておれは自由になった。この感覚を広めるためにこうやって口説いているわけだ。どうだい?
身体を失って意志だけになってみないかい?

35bothhands:2007/12/30(日) 04:42:19
ありきたりな通り名に<死神>というものがある。この殺し屋も<死神>と呼ばれていた。殺し屋は死ぬ前に自分が殺し屋になったいきさつを話すのが癖だった。
深夜、波止場の倉庫の中、標的の人物の口に拳銃を入れながら殺し屋は口を開く。
「おれは今でこそ殺し屋だが、昔は金持ちのぼんぼんだったんだぜ。信じられるか?信じなくてもいいが、そうだった。暮らしていた場所は田舎で同い年の友達なんて住み込みのメードの娘だけさ。でさ、いつも一緒に遊んでいたんだけど、ほら男の子と女の子じゃんか。すれ違いがあっておれは男の子の遊びに熱中したのさ。乗馬とかさ、田舎だから狩りだとかにね。女の子は寂しがっていたよ。今になってみれば、おれのことがすきだったのかもね。ほらうなずけよよ、オラ。でさ、女の子はいちいちおれの真似をするわけ。でもおれは彼女の気持ちなんてわかんないくらいガキだったから彼女のことなんか放っておいて危険な遊びに興じるわけさ。馬鹿だね、オトコノコって奴はさ。んでもってある日、女の子は男の子の遊びに興じようとするんだけど、慣れないことはやるもんじゃないよね。落馬したよ。ひどい怪我さ。メードの給料ではなんともならないさ。それでおれは彼女を買ったよ。おれのせいってわかったから妾にしたのさ。おれは半身不随の女を抱いて喜ぶ変態というわけさ。だって仕方ないだろう、おれはガキで彼女を助けてやれるだけの金を用意できなかったんだ。そのくせ両親はおれに女を囲うだけの金を渡すんだ。くそったれ、使うしかないだろ。でおれは金を求めて両親にこび売り、彼女の治療費を求めて、いろんな組織に顔を出したよ。判るだろう、おれは両親を売って彼女の治療費と身の安全を買ったのさ。そして革命の時代が終わったら革命派の使いぱしりで覚えたテロ技術で殺しやさ。さあおれのことは判ったろ。死ね」
銃声が響いた。

36bothhands:2007/12/30(日) 04:54:42
今は昔、魔法使いがいた。この魔法使いは嘘つきだ。いつも「おれは8代前から魔法使いの家柄だ」といった。父親はただの船大工だったのに。
この時代、魔法使いは魔法使いの学院へいって魔法を学ぶことになっていた。この学院の子弟というのはおおむね、魔法使いの親を持っていた。つまりこの嘘つきは虚勢を張っていたというわけだ。もっとも虚勢は弁舌だけであらゆる試験で首位を収めていたが。
やがて嘘つきは力を蓄え、学院の長となった。歴代でもっとも若い長だった。
嘘つきは長をしながら時々、父親の仕事を真似した。船を造って浮かべてみた。嘘つきは魔法の才能はあったが、船を造る才能はなかったらしく、すぐに沈んでしまった。
そのうちに時代が変わった。魔法使いたちは技を磨き、片手間に人助けをすればよい時代は終わった。そのうちに無数の王たちから協力を要請された。嘘つきは古い時代の魔法使いだったので、断りたがったが、若い魔法使いたちは活躍の場を求めたので、仕方なく受け入れた。嘘つきは長の立場を誇りにおもっていた。
そのうちに冥王を名乗る者たちによって戦乱が起こって魔法使いが徴用されるようになった。そして魔法使いたちは死に絶え、学院は荒廃した。これら嘘つきはすべて見た。
そして嘘つきは一艘の船を造ると海へこぎ出した。魔法で風を起こせばいいのにオールを手でやって。

37bothhands:2007/12/30(日) 05:05:56
高い堀が並んでいる。刑務所だ。刑務所の出入口、その片隅に作られた通用門が開いて1人の男が刑務官に付き添われて出てくる。男は刑務官に対して深々と一礼すると刑務所をあとにした。
これを刑務所のそばには差し入れを売る雑貨屋が並んでいる。その脇に止めてあった車のエンジンに火が入り、ゆっくりと出所したばかりの男に迫った。
男を伴走する車のウインドウが開く。顔を出す男。
「おつとめご苦労です、兄貴。迎えに上がりました」
「ああ。そうかい。すまないねえ。でもおれはもう抜けるって決めたん」
男はいうが早いが人差し指をくわえるとかみ切って車に放り込んだ。
そして指のない手を持てあましながら仕事につき、職場の付近で事件が起こるたびに、前科者として警察から職務質問を受け、そのたびに勤め先から首になった。
けれどもやがて理解のある職場に巡り会って貧しいながら普通の人生を送って世を去った。

38bothhands:2007/12/30(日) 06:08:44
第二次世界大戦のころだ。彼はナチスドイツの軍人だった。アーリア人が優性うんねんは難しくてわからなかったが、ジュネーブ協定を守って戦うべきなのは十分理解できた。だから英雄のごとく戦った。
これはもちろん比喩だ。英雄のようには戦えていない。しかし彼は自分を誇らしく思っていた。なぜならジュネーブ協定は遵守していたからだ。寛容を敵に示さねば誇りは詠えまい。
そうやって彼が戦っているうちにナチスドイツは劣勢を強いられて後退した。あるとき彼は民家を徴収した。営舎の代わりにした。そこで自分たちが嫌われていることを知った。そして虐殺に荷担してしまった事も知った。
彼はナチスドイツの正義を疑った。
彼は迷った。そして判った。自分は戦士なのだと。だから敵国の飛行機が襲いかかってきたとき、彼は民間人の非難を優先させた。なぜなら民間人は戦闘で殺されてはいけないからだ。
そのさなか彼は撃たれた。死んでしまったとおもった。
で目覚めると彼は農家の息子になっていた。彼はナチスドイツの一員だったが、ドイツの辺りからきた小作人ということにされて匿われたのだった。
彼は泣いた。

39bothhands:2007/12/30(日) 06:33:19
あるところに研修医がいました。この研修医は研修医生活に嫌気がさして闇医者になりました。堕胎などを主にしていました。彼の施術した女性の幾人かはミスで死にましたが、男たちにとってはむしろ厄介をサービスで排除してくれる医者と受け止められました。
そのうちに1人の白衣の男が現れました。まるで研究者のような男で研究者でした。この男はある秘密結社の一員で生命について研究していました。それで胎児を必要としていたのです。
胎児の処理は少しばかり難しいことです。骨も肉も軟らかいので消しやすくはありましたが、万が一間違ったらあっという間にお縄です。というわけで研修医は受け入れました。
白衣の男は協力を取り付けると組織の技術を一部提供しました。新鮮な商品が欲しかったからです。
そのうちに研修医は母胎から摘出されても必死に生きようとする胎児に心を動かされました。研修医は邪悪な人間でしたが、可愛いものは可愛いと感じる者でした。だから商品の一部を抜き出して育て始めました。
こうして研修医は堕胎医兼人身売買バイヤー兼孤児院の院長となり、やがて組織に裏切りがばれて殺されました。
しかし彼の子供たちは生き延び、誰も彼も幸せに生きました。

40bothhands:2007/12/30(日) 06:47:44
レストロオセとニガヨモギの騎士団の敵ことセウ=ガーベラの話だ。セウは父親の罪によって投獄され、レストロオセ女王の世継ぎビシャマルが生まれたとき、恩赦で釈放された。このとき同時に騎士を受勲したのだが、人々は10年あまりも糞壺のような刑務所に幽閉された男がどのように振る舞うか好奇の目で見た。
しかしセウは見事な仕草で切り抜けて見せた。貴婦人たちはセウに尋ねた。どこでその仕草を覚えたのか。するとセウは答えた。「牢獄では夜な夜な影が現れて私に知識と技を授けてくれたのです」
これはセウを守護する死神が仕事の上でやったのことだが、当然ながら貴婦人たちには理解されず、貴婦人たちはセウを面白がった。こうしてセウは一躍サロンの有名人となったのだが、いかんせんセウはこういった者が好きではなかったので、責務が済むとすぐに部下を集めて、領地へ向かった。
領地はかつて父の治めた土地で、父のクーデターとその鎮圧のために地は荒れ、乱れていた。しかしセウは女王と王子への忠誠心、そして父親の汚名を濯ぐために領地へ勇んだ。

41bothhands:2007/12/30(日) 14:22:20
ピュクティェトが砂丘を登っていると、旅人とすれ違った。旅人はいった。
「あんたはピュクティェト神だな。私は魔法使いソルキレウス。あんたの試練を受けに来た」
「それは奇特。ではこの砂漠で魚を釣りなさい」
「魚を釣るのか。とんち問題か?」
「いいや。本当にやりなさい」
ソルキレウスは一礼すると立ち去った。
それからしてピュクティェトが相変わらずさ迷っていると旅人とすれ違った。ソルキレウスだった。
ソルキレウスは革袋を放り投げた。ピュクティェトは中を覗くと小魚が入っていた。
「どこで見つけた?」
「このあいだ18年ぶりに雨が降った。雨水は砂丘を下って谷底に溜まった。谷底には耐久卵で渇きに耐える魚がいた」
「よく見つけてきた。力を授けよう」
ピュクティェトとソルキレウスは別れた。
ピュクティェトがさ迷っているとラヴァエヤナとすれ違った。ラヴァエヤナはいった。
「ソルキレウスに力を与えたのはお前か?」
「私だ。どうした?」
「東へいけ。お前の後始末だ」
ピュクティェトは東に進み、サバンナや平原を越えて湖に出ました。そこは新種の生物を生産するプラントでした。
このプラントから生産されていたのが、のちに砂漠を守ったり、図書館の司書になるほうのソルキレウスでした。
ピュクティェトは姿を消した魔法使いの遺物を引き取ってどうしようかと困り果てました。

42bothhands:2007/12/30(日) 19:49:54
二大祖国こと義国と鈴国のあいだ、さらに都市国家連合の勢力圏に街、オールドメクセタはあった。
オールドメクセタは歓楽と武器の街だ。軍事境界線付近だから軍人相手の娯楽、賭博や売春を提供する店が並び、また補給の来ていない部隊のために金やその他の便宜で物資を供給する店が並んでいた。
このような街だから住人は犯罪者崩れと脱走兵と元軍人ばかりだった。
この街で今、クロフという青年が人混みをかき分けて走っていた。ときどき後ろを振り返る。すると後方が爆発して吹き飛ばされた人間やものがクロフをかすめた。
クロフの背中へ向かって放たれた。
「私はフリードリヒ・ローゼンベルク。探偵にして賞金稼ぎにして殺し屋にして炎使い!今日はクロフ青年、きみを捕まえにきた」
もちろんこのあいだクロフは逃げている。クロフはポン引きだった。もとは金持ちのぼんぼんでこれをいかして女子供をたぶらかせたり、いじめたりしていたのだが、それが高じて、女をこの街に売るようになった。そうすると故郷の都市国家連合では犯罪者となり、変えることができなくなってしまった。
フリードリヒ・ローゼンベルクはテンガロンハットのつばを下げる。前方に目標クロフ、しかし人混みに隔てられている。
「いくぞ!<旋風><陥穽><爆撃>」
人混みを吹っ飛ばしてゆうゆうと進むフリードリヒ・ローゼンベルクと容赦のないやり口のせいか腰を抜かしてしまったクロフ。
クロフの股間の辺りが濡れ、湯気が立っている。フリードリヒ・ローゼンベルクは眉を寄せた。
「さて青年立ちなさい」
「いいいいやだ、死にたくない。殺さないでくれよ、女ならいくらでもくれてやるからよ」
「やれやれ。私はその女性たちの依頼で来たのですよ。あなたの食い物にした女性は9割がた殺したいっていってましたけれども、1人だけ青年を哀れむ奇特な女性がいましてね。その後婦人のもとへ連れて行くことが仕事なんですよ、私の。ちなみに合流地点は教会です」
というわけでとフリードリヒ・ローゼンベルクはがたがた震えている青年を担いだ。そして青年が震えているのは自分のせいだけではないと知った。
この街オールドメクセタは軍事境界線付近の街だ。つまり荒らせば、軍隊がやって来るということだ。前方を都市国家連合のトリコロールカラーの武装兵士、右後方は義国の赤い武装兵士、左後方は鈴国の武装兵士。
いつのまにか群衆は姿を消していた。
フリードリヒ・ローゼンベルクはテンガロンハットの位置を直す。
「やれやれ。結婚とは人生の墓場ですね。青年くん、今の笑うところですよ。笑ってください。言ったかいがありませんから。さて、いきますか。私はフリードリヒ・ローゼンベルク。探偵にして賞金稼ぎにして殺し屋にして炎使い!今日は青年を人生の墓場へご案内!」
街が爆発した。

43bothhands:2007/12/30(日) 20:07:10
今は昔、ある村に男がいて女を好きになりました。男は女と結婚したく思いましたが、そのためには持参金を用意しなくてはいけませんでした。しかし男には金がありませんでした。
それで男は村の外れで暮らしている魔女のもとへいきました。なんらかの金策を考えてくれると思ったのです。
いってみると男は凄まじい苦痛の声を聞きました。あばら屋をおそるおそる覗くと血の海の中に魔女が倒れていました。
男は理解しました。ああ、出産するところなのだと。
魔女の叫び。
「!」
声になっていませんでしたが、男は意図を解して、手伝い始めました。
こうして魔女は無事に出産できました。それから男は産後の魔女を世話しつつ、相談をしました。
魔女は黙り込んだ末に口を開きました。
「この身体ではしばらく仕事は無理だ。お前が魔女の扮装をして代わりにやれ。報酬は折半だ」
こうして男は副収入を得て金を貯め、無事に結婚しました。ちなみに妻の出産の際には経験と知識のおかげで何事もなかったそうです。

44bothhands:2007/12/30(日) 20:17:53
今は昔、鈴国という国がありました。この国では時々、伝染病が流行って、たくさんの人間が死にました。
鈴国の国王は知恵者を集めてなんとか改善しようと努めましたが、いっこうに成果もありません。あるとき東の果ての砂漠に賢者がいると知って向かいました。
すると国王は砂漠で三日三晩迷った末に旅人に助けられました。旅人は砂漠の民の姿をして、砂漠の民らしく「ソルティア=ピュクティェト」と名乗りました。砂漠神の名前が入るのはこの地域の特徴です。
旅人は国王になぜ旅をするのか訊きました。そして国王の話に耳を傾けるとアドバイスをしました。食事が悪いのだと。
国王は「そんなことはない。乞食にいたるまでちゃんと食べている」と反論しました。旅人は呆れたように首をふって「送りましょう」といいました。
しかし国王は賢者を捜さなくてはならないといってまた砂漠をさ迷いました。今度は旅人も一緒です。
でも結局は賢者は見つからず、国王は故郷へ帰りました。そして仕方なく旅人から教わった方法を実践しました。するとだんだんと伝染病が減りました。
一方そのころ、旅人は砂漠を旅していました。そして不可知領域を越えて神々の図書館へ入り、その喫茶室で休憩しました。やがて図書館長が現れます。
「なにやら人助けをしたらしいな」
「なに。アドバイスしてやっただけさ。あの国は本当に餓死者のない国なんだ。なにしろ国が食料を民衆にきっちり完璧に支給しているからね」
「ああ。本当に完璧に。でもその食料は鉱毒に汚染されていたな」
「うん。あの王様が伝染病とおもっていたのは鉱毒だ。汚染された食料を食べていると何年かおきに大量の死者が出る」

45bothhands:2007/12/30(日) 20:28:27
世界の黎明期、神々は12体いました。そのうち一体がアルセスで、そのうち一体がキュトスでした。
アルセスとキュトスは好き合っていたので、ピュクティェトはなにか祝福でもしてやろうと考えました。ラヴァエヤナに相談すると「結婚」が発明されました。
神々はアルセスとキュトスを祝福しました。伴侶を持ち神はこの2体が最初で、つまるところ、世界黎明期において最高の権力者にもなりました。
こうしてアルセスとキュトスは世界や神々を思い通りにしました。そのうちに不満が高まり、アエルガ=ミクニーやペレケテンヌルは立ち去りました。ラヴァエヤナはアルセスは気に食いませんでしたが、キュトスは姉貴分だったので許しました。ピュクティェトはといえば、そもそもアルセスとキュトスの話など右から左へでした。
そんなわけでアルセスは思い通りにならず怒り出し、ゲーム盤をひっくり返す子供のように世界をひっくり返そうとしました。ここに至って神々はアルセスに抵抗できないことを知りました。ピュクティェト、ラヴァエヤナ、アエルガ=ミクニー、ペレケテンヌルすらも力が及びませんでした。
だからアルセスを止めたのはキュトスでした。キュトスはアルセスを殺しました。そしてアルセス殺しを隠蔽するためにアルセスの皮を被り、反省したふりをして、神々の前にでました。
これ以降、アルセスは善神とされるのですが、実は中身はキュトスでした。
ところで世界の終末を導く神はチャンカルといって顔無の神でもあるそうです。顔がないのは皮がないからだとか。

46bothhands:2007/12/30(日) 20:38:09
ある男が幸福になりたくてペレケテンヌルに祈った。間違いである。
ペレケテンヌルは神々のあいだではいたって気持ちの良い奴と言われている。まあ性格はいいのだが、シュールでもあった。というわけでペレケテンヌルは男の五感を奪ったなにも感じなければ不満になることはないと考えた。間違いだろう、それは。
しかしなんたる偶然か、このころ「星屑争乱」と呼ばれる飛来神群、パンゲオン神群、南東脅威の三つ巴の戦いおき、世界律がねじ曲げられた。そのために人々は発狂したのだが、この男だけは五感が封じられていたので、正気のままだった。
そして「星屑争乱」は終結し、ながらく死体何なのかどうなのかよくわからない物体として医療博物館に標本として保管されていた男が発掘された。この時代の人々はおもしろ半分に機械で五感を補ってやった。
このとき男は闇の中でまだ正気を保っていた。その心を占めていたのはペレケテンヌルへの復讐心だった。

47bothhands:2007/12/30(日) 20:56:05
地球の周りを太陽が回っていました。
太陽は日々不満でした。というのは昔と違って人々がありがたがらないからです。
月は嘲笑しました。
「電灯があるからね、電灯がさ!」
太陽はむっとして月を蒸発させました。こんときの影響で地表の機器という機器は破壊されてしまいました。

48bothhands:2007/12/30(日) 21:04:53
今は昔、賢者がいました。賢者といっても特に何するわけでもなかったのですが、あるとき近くの国の王様から呼び出されました。
いそいそと出向いた賢者に王様は難癖をつけました。
「お前のような輩が賢者と言われている由縁がわからんし、わからとなると気に食わない。だから力を証明せよ」
「やれやれ。なにしろってんですか。おれはこれから畑を耕して冬の用意をしなくちゃなんないですよ」
王様は指を鳴らした。すると檻に封印された悪魔をつれてきた。
「この悪魔を天使にかえてみよ」
賢者はうなずきながら困りました。
(「参ったな。知る限り悪は存在しても天使は存在したことはない。物語には星の天蓋には天使が住んでいて、彼らの堕落した姿が悪魔とある。しかし悪魔はあくまで悪魔だし。あ、これだじゃれか。おもしろいかも」)
ふへへへと笑う賢者に王様は側近に「こいつの気は確かか」という目でみました。側近はなにも見えていないふりをしたようでした。
「それでは」と賢者は「悪魔を天使に変える方法を教えましょう。ではお耳を拝借」
王様は嫌がるそぶりを見せましたが、問答無用で賢者は距離を詰めると、戯言を喋りたくり、王様を悪魔とは天使だと納得させました。
こうして賢者は農作業に戻りました。一部始終をみていた側近は王様がこれからどうなるのかかなり心配しましたが、賢者にへんなことをささやかれて騙されたわりには、王様はわりと良い王様になりましたとさ。

49bothhands:2007/12/30(日) 21:10:56
さてこの賢者に騙された王様でしたが、ある運命の道を歩いていました。というのは建国期の仇敵のかけた呪いのせいで王様の代でこの国は滅びることになっていたからです。
そこで王様はがんばって抵抗するのですが、なんとも上手くいきません。そのとき側近がいいました。
「天使の件のときの賢者を頼ってみたらどうでしょうか」
王様は今度は自分から賢者のもとへ出向きました。このとき賢者は干し柿をつくっていました。いよいよ冬の用意も本格的になってきたのです。
王様は干し柿作りを手伝いながら相談しました。すると賢者は「気にしなくていい」と答えました。
こうして安心して王様は帰りました。さて夜になって賢者は大地に向かってささやきました。大地に仇敵の呪いがかけられていたからです。
そして王様にやったように口先三寸で呪い騙しました。こうして王様の国は守られました。
賢者はため息をもらすと酒を一杯の飲んで寝ました。

50bothhands:2007/12/30(日) 21:14:21
今は昔、ある大学に数学を学ぶ男がいた。この男は世界律という世界を動かす方程式を専攻していた。あるとき興味深い方程式を発見して下宿に引きこもって解き始めた。
するとどうやらこの方程式が実行されるたびに他の方程式に誤差が生じることが判った。
だから男は大学を捨て、学生を辞め、デバックの旅にでた。

51bothhands:2007/12/30(日) 21:20:08
さてこの男ですが、仕事ははかどりませんでした。世界は広く、広ければ、修正すべき、デバックは多いのでした。
そのうちに男は身体を壊して旅に出られなくなりました。それで仕方なく大学に戻り、教鞭を振るったのですが、ある講義のあと学生から話しかけられました。
学生は質問しました。男は目を剥きました。学生は新発見を誇って熱弁を振るいましたが、これこそ男がかつてみつけたものでした。
これを伝えると学生は意気阻喪になりましたが、翌日、もっと詳しく知りたいといってきました。
こうして男は弟子を得ました。弟子は友人を誘ってデバックをする組織を作りました。デバック組織はどんどん大きくなり、国連すら圧倒する存在となりました。
そして自らの権力を維持するためにバグを作るようになりました。
男はこれを察して(というのは組織の能率に反してバグの数が減らなかったのです。計算して判りました)再び旅に出ました。
最期の旅でした。男はもはや老人でしたが、心は最初の旅のときのように若々しかったです。

52bothhands:2007/12/30(日) 21:26:55
今は昔、セウ=ガーベラという男がいた。レストロオセ率いるニガヨモギ騎士団の仇敵だった。セウはニガヨモギ騎士団に討伐されたあと、一方的な裁判を受けて、処刑されることになったのだが、まだ年齢が死ぬときにさしかかっていなかったので、昔なじみの死神の手で脱獄させられた。
セウは逃げるとき、かつて父の絞首刑にされた場所へより、その土を掴んで食べた。そしてレストロオセの国へ永遠の別れを告げた。
死神に導かれるまま、セウは西へ進むと、足を止めてしまった。というのは山脈を通りかかったら、地震に巻き込まれたからだった。セウは山脈から麓を見ると、目を背けた。そして麓の人々を助けるために山を下りた。
セウはかつて領地を運営したときの経験や戦場に立ったときの経験で人々を助けた。ある程度街が復興すると、人々はセウに市長になってほしいといった。
セウは嫌がったが、いつもくっついている死神に口説かれて(四面楚歌ともいうが)、仕方なく了解した。
とはいえこの街もセウの安住の土地ではなかったのだが、それはまた別のお話。

53bothhands:2007/12/30(日) 21:39:55
セウが山脈の街で市長をやっているころ、故郷ではセウの首に賞金がかけられていました。
そして無数の賞金稼ぎや探偵が探し回ったのですが、あるとき山脈の街にレストロオセの息子ビシャマルの名前がつけられていることを知った者がいました。ビシャマルはレストロオセの敵対者で、かつ、セウの忠誠を受けた唯一の人物でもありました。
これに気づいた探偵は街へ行き、セウを発見して、殺そうとしましたが、セウの寿命が来ていなかったので、死にませんでした。逆にこのとき探偵の寿命がきていたので探偵が死にました。
こうしてセウは危機が迫っているのを知りました。セウは眉を寄せました。というのは我が身の危険などどうでもいいのですが、街付近を根城にする盗賊団がいたからです。
それでセウは自分の本性を現しました。そして賞金稼ぎや探偵をわざわざ集めるとまとめて雇って街の警備団にしました。
そしてセウは再び姿を消しました。

54bothhands:2007/12/30(日) 23:22:49
オルフェウスは冥府を下った。恋人を死の王から取り戻すために。そして様々な物語に書かれている困難を突破して冥府へたどり着いたのだが、そこではなんと死の王が死んでいて、恋人が犯人を捜していた。
オルフェウスは地上へ戻ることはなかった。
オルフェウスは恋人ともに死の王殺害事件の犯人を捕らえると、死の王の代役を務めた。
なお、これ以来、時々、蘇生率が高くなったのだとか。

55bothhands:2007/12/30(日) 23:29:15
「もう飽きた!」
死神の一体が叫びました。この死神は魂を冥府に送る仕事に飽き飽きしていて死の王ことオルフェウスへ退職願を提出しました。
「ばかいってんじぇねえ」とオルフェウスは死神を蹴り飛ばしました。そしてそのわきでオルフェウスの妻がタイプライターを打って出張辞令を作りました。
「出張辞令、10年の間、地上で葬儀会社に勤めること」
こうして葬儀会社の社員になって死神の不満は収まりました。そんなある日、オルフェウスが冥府を妻に任せて死神に会いにきました。
「最近、戦争が頻発して忙しくてたまらない」
「そろそろ帰るときということですね」
「ああ。だが、その前に戦争の原因を排除してこい」
「難しいですよ」
「いや。武器商人が戦争を煽ってやがるんだ」
「なるほど。判りました。冥土の携えて帰ります」
こうしてオルフェウスはかえり、死神は報償を現して武器商人の類を皆殺しにしました。

56bothhands:2007/12/30(日) 23:32:41
今は昔、巨人がいた。この巨人が歩くと地震が起こって人々は困った。それで人々は巨人を追い出した。
巨人は戦うのが苦手だったので、そうそう引き上げた。引き上げたと言っても帰る場所があるわけではない。どこの土地でも同じ事があって追い出された。
そのうちに巨人は原野にたどり着いた。原野では農耕民が農作業のための井戸を掘っていた。
巨人は手伝ってやった。なにしろ指一本でことが水が噴き出した。そしてさっきまで腰を下ろしていた場所がため池になった。
人々は喜び、巨人は原野を開拓しながら移動した。世界はとても広く巨人でも開拓しきれず、今でも旅を続けているらしい。

57bothhands:2007/12/30(日) 23:38:23
今は昔、魔女の息子がいた。魔女の息子は父親がいなかったし、母親が魔女だったので、いじめられたが、やり返した。なにしろ魔法を使えたからだ。
こうして魔女の息子は母親以外には誰にも彼にも手をあげるならず者となったが、あるとき村を訪れた旅人に打ち倒された。
そして旅人は血の泡を噴く魔女の息子へいった。
「良い腕だ。おれの弟子にならんか」
こうして魔女の息子は魔法使いの弟子となった。やがて魔法使いの弟子は魔法使いを養成する学校へ送られ、ならず者の真似も止すようになった。
あるとき「冥王戦争」が起きた。今や青年となった魔法使いの弟子は軍隊の促すままに命令しに従って戦場へ向かった。そして転戦を重ねるうちに12体いる冥王の一体が父親と知った。

58bothhands:2007/12/30(日) 23:42:51
男は水使いとか炎使いと呼ばれていた。けれども実際は配管工に過ぎなかった。ただ男のいた土地では男の技は珍しくて魔法のように思われただけだった。なお、男からすれば魔法のほうがよっぽど珍しかった。
ともかく男は水道とガスを設備し続けた。人々は清潔な住居と温かい食事を得た。けれども人々は感謝しなかった。というのは魔法使いは嫌われていたからだった。
あるとき男は王宮の設備を行った。すると王様は魔法使いを使ったことを恥じて男を砂漠の果てへ捨てた。
男は困ってしまったが、とにかく歩き続けた。そしてゴーストタウンにたどり着いた。喉がからからだったので蛇口を捻ると水が出た。というのはこの街はかつて男が設備した街だった。だから男は停まっている水をまた復活させることができた。

59bothhands:2007/12/30(日) 23:45:58
今は昔、あるところに身体の半分しかない男がいた。いや身体が半分なので人間かわからないし、そもそも男かどうかわからない。だが、とにかく男だったらしい。
男は長じると(成長したということだが、どんな感じだったのだろうか)半身を探して旅に出た(母親の胎内に忘れてきたんじゃないのか)。
そして旅の果てにそんなものはないと知った。そして砂漠へいくとピュクティェトの眷属ソルキレウスの1人を捕まえて自分の身体のかけている部分につなげた。
もちろん天罰が喰らった。

60bothhands:2007/12/30(日) 23:49:45
今は昔、魔法使いがいたのだが、どんな悪さをしたのか、師匠から魔法を封じられた。それでも魔法使いは生きて行かなくてはならないので手に職をつけた。
いろいろなものを直せるようになった。魔法ほどすごくはなかったが、誰にでもできたので、みなに教えてやった。
こうして魔法使いの師匠は見て嫉妬したらしい。そして問答無用で周囲諸共に稲妻を落とした。
今でもその辺りは残っていて稲妻で焼けた跡が黒い。そしてこの辺りの土を食べると手業の習得が早くなるのだとか。

61bothhands:2007/12/30(日) 23:53:44
今は昔、左右対称が好きな人物がいた。この人物は対称でないものをみると修正した。例えば、片眼のない人をみかけると、路地裏に連れ込んで、残っている目を潰して満足した。
しかしこの盲人は新しい目を与えられて回復した。世の中には左右対称が嫌いな人物もいるからだった。
こうして左右対称好きと非対称好きの争いが始まった。この争いは苛烈を極め、ついには月をかけて勝負することになった。月の満ち欠けを止めた方が勝ちということだった。
というわけで勝負は今も続いているらしい。

62bothhands:2007/12/31(月) 00:02:26
真夜中の市街地をゆく1人の少年。少年のケータイが鳴る。少年はメールをチェックする。
(「この辺りか。そろそろ戦闘開始だな」)
少年の指が携帯の電源を落とす。同時に少年の足に光で描いたような文様が浮かび上がる。同時に手にも浮かび上がる。
その瞬間、闇の中から光が飛来する。いなずまのようなそれをよける少年。
(「来たな。もっと撃ってこい。撃てば撃つほど有利になる」)
少年の手から光の筋が伸びる。光の剣だ。二刀流で稲妻の矢を少年は切り落とす。そして少年は膝をついた。
少年の姿が消える。少年はいや満月を背景にして跳躍している。少年の瞳に狙撃者が映る。
(「捕らえたぞ!」)
少年は剣を投擲した。一本目は避けられたが、2本目が胸に突き刺さった。
少年は地面に着地する。そしてケータイの電源を入れる。同時に手足を走っていた光の文様が消える。光の剣も消える。
少年はケータイを操作。ネットバンクとつなげる。
(「入金を確認した。あのプレイヤーの賞金は17万だったのか」)
少年は夜の街をあとにする。この街では異能者同士の賭試合が行われていた。もちろん生死問わずの試合だった。
これから逃れるのはただひとつ1000万の上納金を主催者に納めることだった。少年は自由を求めて戦い続ける。

63bothhands:2007/12/31(月) 00:09:19
男の名前はわからない。けれども「ラストフォーチュンマン」と呼ばれていた。この男は少年兵を連れて戦場を抜けようとしていた。新たな戦場へ足を踏み入れるたびに男のあとに続く少年兵は増えた。
男は少年兵を安全な環境に移送することを仕事にしていた。それで給料をもらっていたというわけでなくて自分の課題だとおもっていた。
しかしこれは戦地においては邪魔以外の何者でもなかった。この戦場は無数の部族の抗争に大国が武器を支給したために起こったものだった。これを鎮圧する報告に動かす男は大国にとって敵だった。
やがて男は大国の雇った暗殺者に襲われるが、暗殺者は失敗した。拳銃弾が不発だった。1万分の1の確率だった。暗殺者は恐ろしくなった。これは悪魔か天使に魅入られているに違いないと。
そして男は悠々といつも通り戦場を横断しようとした。その前には地雷原があったが、男は自分の幸運を信じて先頭に立って割った。渡りきった。
男は少年兵たちを送るとまた地雷原に踏み入れた。そして隠れていた例の暗殺者を見つけ出していう。
「まだ少年兵たちはいる。助けいくのだが、一緒にどうだ」
「お前のような男に言われたら是非もない。すべてはお前の意志通りになるだろう」

64bothhands:2007/12/31(月) 00:17:52
今は昔、恋人に捨てられた男がいて、失恋のあまり故郷を去ったのですが、どうまかり間違ったのか、ピュクティェトの砂漠へいってしまい、遭難した。
するとソルキレウスというピュクティェトの眷属によって救い出され、たまたまピュクティェトの気が向いたので、事情を話すことになった。
ピュクティェトは試練を越えたら助けると約束したが、男は試練に失敗してしまったピュクティェトはこれを残念におもっておまけをやった。
「お前のふれたものをある確率で復元する。さすがに人間関係は復元できないが、壊れた花瓶や穴のあいた靴下くらいならなんとでもなる」
こうして男は修復屋になって故郷へ帰りました。故郷では元恋人が喪に服していました。というのは旦那が死んだからでした。
男は迷った末に霊廟に忍び込むと、旦那の遺体を殴りました。そしてこっそり逃げました。
酒場で飲んだくれているとウェイトレスの女が「元恋人の旦那が息を吹き返していた」と知らせてくれました。
こうして男は傷心を自らの手でえぐりましたが、元恋人を幸せにしてやれました。

65bothhands:2007/12/31(月) 00:21:27
アエルガ=ミクニーという神様は人間に悪戯をするのが好きでしたが、あるとき知り合いの神様ピュクティェトにはり倒されて呪いをかけられました。
「これからきみがどんな悪戯をしようとすべて良い結果になる」
アエルガ=ミクニーはそんなわけないとおもいましたが、戦争はなくなり、病気もなくなり、貧困もなくなり、ユートピアが生まれました。
アエルガ=ミクニーは発狂しそうになってピュクティェトへ謝りました。けれどもピュクティェトはカカカカッと笑うばかりで取り合ってくれませんでした。

66bothhands:2007/12/31(月) 00:26:31
今は昔、二十歳まで生きられないと医者にいわれた女の子がいました。女の子は好きな男のがいたので二十歳までいきようと考えました。というのは結婚できるのは二十歳からという決まりがあったからです。
そのために女の子は冥府へ降りました。冥府はもっとも死に近いところだからきっと生き延びる方法が見つけ出させると考えたのです。
冥府につくと死神に捕まり、死の王オルフェウスとその妻の前に突き出されました。女の子が事情を説明するとオルフェウスは冥府で働く代わりに滞在を許しました。
こうして何年も女の子は冥府で働き、死神の技を覚え、ついに自らも死神となり、予定にない死を防ぐ存在となって、故郷へ帰りました。
もちろん帰るときにはオルフェウスの紹介状つきです。なんでそんなものがいるかってそりゃ、10年以上も行方不明になっていたら身分を証明するものが必要でしょう。でないと結婚できませんから。

67bothhands:2007/12/31(月) 00:32:22
死の王オルフェウスは困っていました。というのは最近、伝染病が流行っているらしくて、仕事が忙しく、死神たちが疲弊しているからでした。
ここはペレケテンヌルに相談するのがいいとおもい、ペレケテンヌルを召還しました。自分の足で呼ばなくても来てくれるのがこの神様のいいところです。
それはともかくペレケテンヌルは話を聞くとうなずきました。するとオルフェウスは死神たちが寝ていることに気づきました。どうやらペレケテンヌルは無理矢理眠らせることで解決を図ったようでした。
オルフェウスは文句をつけようと思いましたが、その相手はもう帰っていました。
取り残されたオルフェウスは仕方なく自分も休憩しましたが、こういうときに限ってハルバンデフ率いる草の民の軍が冥府に下ってくるものでした。
ハルバンデフは死神が寝ているのをよいことに冥府を占領しようとしました。
今更ながらオルフェウスは相談する相手を間違えたことに気づきました。

68bothhands:2007/12/31(月) 00:40:04
死の王オルフェウスは困っていました。というのは最近、伝染病が流行っているらしくて、仕事が忙しく、死神たちが疲弊しているからでした。
ここはペレケテンヌルに相談するのがいいとおもい、ペレケテンヌルを召還しました。自分の足で呼ばなくても来てくれるのがこの神様のいいところです。
それはともかくペレケテンヌルは話を聞くとうなずきました。するとオルフェウスは死神たちが寝ていることに気づきました。どうやらペレケテンヌルは無理矢理眠らせることで解決を図ったようでした。
オルフェウスは文句をつけようと思いましたが、その相手はもう帰っていました。
取り残されたオルフェウスは仕方なく自分も休憩しましたが、こういうときに限ってハルバンデフ率いる草の民の軍が冥府に下ってくるものでした。
ハルバンデフは死神が寝ているのをよいことに冥府を占領しようとしました。
今更ながらオルフェウスは相談する相手を間違えたことに気づきました。
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こうして冥府はハルバンデフに占領されました。死神は眠ったまま牢屋に入れられ、オルフェウスとその妻はというとせっかくだからということでまだやっていなかった新婚旅行へ行きました。
ハルバンデフはあっさりと肩がついてしまったので、退屈しました。そして冥府のようなある種機械的な事務作業には向いていませんでした。仕方がないので軍勢に教練を施しましたが、士気は下がる一方、ハルバンデフも飽きてきました。
それで大地の底を槍ついて地震を起こしました。自分の仇敵カーズガンがまだ生きていたので、地震で殺して、冥府送りにして、また戦争をしようと考えたのです。
ハルバンデフの目論見通りカーズガンは死んだのですが、神々の手違いで祭り上げられ、槍の上に飾られました。
神々の手違いというはカーズガンが神になったことではなくて、神に鳴った人間の数でした。というのはこれ以上人間を神にすると槍が崩壊するのでした。
というわけで槍の刺さっている土台が崩れ、槍は落下し、冥府を粉砕しました。
こうなるとさすがに死神たちも目を覚まし、唖然として、死の王を探しにいき、死人たちを封印しました。

69bothhands:2007/12/31(月) 00:43:11
冥府の王ハルバンデフがカーズガン迎えるために大地の底から大地を突きまくっていました。その地震のせいで刑務所のひとつが壊れて罪人たちが逃げ出しました。
でもハルバンデフは連打したものですから、解放されたと喜んだ瞬間に、刑務所ごとクレバスの底へ落下して墜落死しました。

70bothhands:2007/12/31(月) 00:50:51
少年が病院を歩く。1つの病室の部屋に入る。病室の中にいた女は少年を喜んで迎える。少年は顔を伏せて眉を寄せたが、次に顔をあげたときには和んだ表情になっていた。
女はいう。
「今日もお話を作って遊びましょう」
少年はうなずくと地図を机の上に広げた。女は地図の一点を示して「ここにはなにがあるのかな」と尋ねた。
少年は山脈があるのをみて話をこしらえた。
少年は女が示すままに話をこしらえた。
やがて女は疲れたのか少年の肩にもたれた。女の甘えるような仕草に少年は眉を寄せた。やがて夕刻になり、看護士が訪れた。
「面会の時間は終了です」
少年はうなずくと病室を去った。
看護士は声を潜めていった。
「お母様のお相手大変ですね」
「そうでもありませんよ」
少年は答えて笑った。そしてしばらく歩いたあと、壁を殴りつけた。
(「母さん、子供に戻ったふりをしたって嘘だってわかってるんだぜ。かならず現実と対決させてやるからな!」)

71bothhands:2007/12/31(月) 00:57:11
その家系は近親相姦をわざと繰り返したので、いずれ人間以外の者が生まれるぞと噂されていました。そしてあるとき女が犬を産みました。
家系の者たちは近親相姦を家族に強要できるようなド外道だったので犬が生まれても気にしませんでした。犬は幸運でした。他のところで生まれたら犬鍋にされてしまうからでした。
しかしこの家族は金に困っていたので、犬を食べることになりました。それで犬は逃げるのですが、家族も生きるために必死で犬を追いかけます。そして犬はついに空き地に追い詰められたのですが、突然、穴を掘り始めました。そこからはトランクがでてきて、中には金が詰まっていました。こうして犬は犬鍋から抜け出しました。
それから犬は商売を始めました。もちろん犬なので母親が人と会うのですが。この商売は成功しました。そして犬は勉強したくなって大学へ通いました。
このときはもう大金持ちだったので大学へ寄付金として一億ほど積んだ犬ですら学生の扱いしてくれました。

72bothhands:2007/12/31(月) 01:03:23
「めんどくせえめんどくせえめんどくせえ」
地上にやってきた死神たちは喚きました。というのは地上で大量破壊兵器の製造が観測されたので、オルフェウスに率いられて、製造者を冥府送りにしにきたのです。
死人はいつでもでるのにあえて大量殺戮されると死神は忙しくて死にそうになります。しかも人間と違って死ねないので延々と苦しみが続きます。
というわけで死神の軍勢は「めんどうめんどうめんどう」と零しながら地上を行進しました。
このあいだ死の王オルフェウスとその妻が何をしているかというと観光旅行です。故郷を訪れて昔を懐かしんでいました。
つまるところ死神の不満というのは、仕事が増える、出張させられる、そのあいだ上司はいちゃいちゃしているの三点に要約できました。

73bothhands:2007/12/31(月) 01:32:22
「おれの右腕が!」と中2病なる病気にかかっているらしいクラスメイトが教室から飛びだした。おれはまたかとおもって寝ようとしたら教師の顔に数字が刻まれていることに気づいた。夢かとおもって寝直したら教師に叩かれた。教師はいった。
「おきやがれ!あと顔になんかついてるぞ」
「先生こそ」
おれは辺りを見回した。全員に数字が付与されていた。
あるときおれは噂できいた。この数字は生命力を現すと。でおれは前に書いた中2病野郎を呼び出すと金属バットで殴り倒した。すると野郎の数字が消え、おれの数字が増えた。
というわけでおれは面白くなってきて殴りまわした。すると殴られるようにもなってきた。街は抗争状態になった。
しかし中性子爆弾でなぎ払われた。

74bothhands:2007/12/31(月) 01:45:06
今は昔、あるところに金持ちの男がいた。親が金持ちでそっくり遺産を受け継いだのだった。それで男は仕事をしていなかったので、退屈していた。
それで慈善事業を始めた。名付けて「みんなで貧乏になろう作戦」だった。各地に偏在している富を経済戦で崩して金を循環させ、再分配した。
もちろん完全な成功なんてなかったが、男はあくせくする身分ではなかったので、何度でも立ち上がった。
やがて男の努力が実って社会は改善された。そして最後の一撃として自分の財産をすべて寄付してハローワークへいった。
「仕事を探しているのですが、検索機の使い方がわからなくて」

75bothhands:2007/12/31(月) 01:45:20
今は昔、あるところに理想郷があって人々が平和に暮らしていましたが、1人の若者が退屈に駆られて外へ出ました。
そして外界の恐ろしい出来事を堪能して故郷へ帰ってきました。理想郷で話すと若者は嘘つき呼ばわりされましたが、なかには楽しんだり、魅了されるものも現れました。
そのうちに若者は警官に連行されました。若者のせいで外へいった連中がいるのが理由でした。
若者は警官を殴り倒して外界へかけつけました。というのは外は危険です。魅力の影に危険があるので外へ行った連中を助けにいかなくてはなりませんでした。

76bothhands:2007/12/31(月) 01:49:08
今は昔、人間の寿命は50年と神から定められていました。だから人間の王はこれを撤回させるために天界へいきました。そして寿命を定めた神を殴り倒しました。そして、そして欲望に負けて不老不死を自分の者だけにし、自身もまた神と名乗りました。
しかしこれもメクセト王による天廊戦争までのことでした。メクセト王の率いる1032英雄は神々を駆逐して世界を人間のものとしたのです。

77bothhands:2007/12/31(月) 01:51:47
男は抗う者でした。
「奴隷の子は奴隷だ」と言われたから奴隷制を破壊してみました。
「死ぬのが怖い」と泣いた子供のために死神を捕らえました。
人々は「ああ、あの男は次は神になるぞ。その前に殺してしまえ」
男は姿を消しました。

78bothhands:2007/12/31(月) 02:02:14
クラウ=ソナス大陸は植民地でした。つまり開拓民と流刑者の大陸でした。流刑者の中には革命に失敗して流された者もいました。この種のものたちはこの大陸の政府を自分の考えに染め上げようとしました。
しかし1人の流刑者は自らテロリストとなってこれを阻止しようとしました。この流刑者は窃盗罪で流されたけちな犯罪者とされていましたが、本当は革命主義者の飼い犬で様々な汚いことを見てきた人物でした。
このテロリストからいえば、革命主義者とは犬の糞以下の存在でした。口では綺麗なことをいうものの、本当は権力にとりつかれ、なんでもする人間でした。
だからテロリストは影のように暗躍して、革命主義者を打ち倒し、食べていけない人たちを支援しました。
やがて大陸はわりとマシな政府が作られ、男はテロリストを辞めました。
そのうちに男は寿命で死んだのですが、残った日記は歴史の真実なのかそれとも小説なのか話題になりました。

79bothhands:2007/12/31(月) 02:07:40
今は昔、元部族長候補がいました。というのは部族長になるための試練を突破したその日にうっかり足を切り落としてしまい、このために候補から外されたのでした。
この男は自分の権利を主張しましたが、ききいれてもらえず、部族から去りました。そして旅の末に追いはぎとなったのですが、ある日、旅人を殺そうとしたところ、止められました。この旅人は巡礼僧侶でした。
殺してもよかったのですが、男は気を削がれてしまったので、やめて僧侶についていきました。
やがて僧侶の巡礼が終わり、男は帰り道にも付き合いました。そのうちに男の故郷が近づいてきました。そして故郷が荒れ果てていることを知りました。
僧侶がこの地を癒すといったので、仕方なく男は故郷へ戻りました。そして僧侶に従いました。

80bothhands:2007/12/31(月) 02:12:55
今は昔、男の子と女の子がいた。2人は仲良しだったのだが、いささか女の子は元気すぎて男の子はひいていた。
ある日、兵隊が道を通ったので、女の子が追いかけようといった。無邪気な女の子と違って男の子は兵隊の仕事をよく知っていたのでいやがりました。
すると女の子は腰に手をあてて怒ると、男の子を抱っこして兵隊を追いかけました。そして戦場のありさまをみて女の子は怒りました。
そして男の子は物陰に隠れました。戦争はあっという間に終わりました。女の子が兵隊という兵隊を殴り倒してしまったからですが、そんなこと誰も信じるはずはありませんでした。

81bothhands:2007/12/31(月) 02:17:10
メテオラ教の修行僧がいました。この修行僧はメテオラのごとくまっすぐ歩きました。すると邪魔をするためにニガヨモギの騎士団が現れて「宗教よりもよいものをおしえてやろう」と誘惑しました。
けれども修行僧は無視しました。するとニガヨモギの騎士団は軍勢を持って襲いかかりました。
僧侶は慌てずに大地をかち割るとニガヨモギの騎士団をもといた住処に送り返しました。

82bothhands:2007/12/31(月) 02:23:27
さてこの徳の高い僧侶ですが、修行を終えて、故郷の寺へ戻ってきました。すると和尚様から修行をこなした証をもらいました。
けれどもこの僧侶はまだまだ修行をしたかったので、他の寺で修行するための案内状をかいてもらいました。
お師匠様は十分だといってなかなか書いてくれませんでしたが、ついに熱心さに折れて書きました。お師匠様は「つらいことがあったらいつでも帰ってきなさい」と見送りました。
そして修行僧は都の立派な寺で修行することになったのですが、都の僧侶は腐っていたので、拳で大地をかち割って、都を沈めました。
これこそがメテオラの再来といわれた僧侶のお話です。

83bothhands:2007/12/31(月) 02:32:12
その子供が生まれるとき「この子は悪魔だ。私を殺すつもりだ」と叫びました。赤ん坊の母親は少々、頭がおかしかったのです。なにしろ赤ん坊を見た瞬間、怖がって床にはたき落としたほどでしたから。
周囲の人々は母親が子供を育てられるか心配しましたが、意外にも母親はちゃんとそれらしくしました。人々は心配しました。
というのは母親は子供を悪魔の類と信じ切っていたからです。怯えていたのです。自分や他人に害をなさないかと。
それで子供は見えていないところで虐待を受けました。もっとも子供が成長するとすぐに立場は変わりました。というのは子供がなにかしたわけでなくて母親がひき逃げになって半身不随になったからでした。子供は母親をがんばって世話をしました。
何年かして母親は死にました。死因は窒息死でした。子供が喉を絞めたわけではありません。痰が絡んだせいでした。
子供は葬式が行われると、姿を消しました。子供は煙草を吸いながら、自由の味がするとおもいました。母親をひき逃げしたのは子供でした。そうでもしなくては自分が殺されるとおもったのです。

84bothhands:2007/12/31(月) 02:37:21
逆茂木は剣華逆鱗流を修めたが、いまだに力が足りぬと修行の旅へ出た。その結果、剣など役に立たないと知った。
というのはある山脈付近を訪れた際、地震に巻き込まれたからだった。被災者を前にした剣などなんの役にも立たなかった。
逆茂木は己の無力を痛感した。しかしだからといって何もしないではいられなかった。
剣華逆鱗流は身体操作によって驚異的な力を得る流派だ。これを応用して逆茂木は負傷者の傷を癒した。多少無茶な手段ではあったが、逆茂木ほどの腕があったら、他人の身体の痛み消しくらいならできた。
そして痛みが消えるだけでも人はだいぶ楽になるものだった。

85bothhands:2007/12/31(月) 02:48:58
「お前は優しすぎる」とヴェルフレイの父親はいった。ヴェルフレイは認めなかった。そして戦いを重ねた。100人の人間を殺すという誓いを立てて達成し、レストロオセ女王のニガヨモギの騎士団に入った。冷酷非情な男と名を知られた。
しかしセウ=ガーベラがビシャマル王子の擁立を目指してクーデターを起こすと、ヴェルフレイの冷酷さが鈍った。というのはビシャマル王子はレストロオセの息子だったからだ。親子が殺し合ってはいけないと考えた。
そしてヴェルフレイはビシャマル討伐作戦の途中でセウ=ガーベラの手で殺された。これでよかったとヴェルフレイはおもった。もう悩まないですむと。
「お前は優しすぎる」とセウは剣を収めていったのでヴェルフレイはおもわず微笑んだ。

86bothhands:2007/12/31(月) 02:57:57
今は昔、王国があったのですが、民衆による革命で政権が崩壊しました。そして王子以外の王族は処刑されました。王子が残されたのはまだ赤ん坊だったからです。
王子は厳重な監視を受けながら成長しました。革命政府から恐れられていたので、一生幽閉の身でしたが、王子は希望を持っていました。いずれ自分の力が必要になると。
それは王子の教育係をやっていた教師の言葉でした。教師は王子が自分の状況に絶望しないようにそういったのでした。もっとも教師は革命政府の腐敗した内情を知っていたので、いずれ今の時代が終わることも知っていました。そのときに生き延びる力を与えようとしたのです。
そして革命政府は内紛の末に倒れました。そこを諸外国が侵略しようとしましたが、王子は国王を名乗って牽制しました。王子はもう王の必要な時代ではないと知っていましたが、今こそ自分が誰かの役に立てる瞬間と信じて行動しました。
そして王子の政府は倒れ、王子は処刑されました。

87bothhands:2007/12/31(月) 03:19:20
少年はすべて奪われた。両親は憤死した。ただの起業家だったが、無実の罪を被せられ、会社を解散させられたからだった。けれども少年は父親の「夜を渡るには灯りが必要だ」という言葉を覚えていて生き延びようとした。少年はどうしたいかわからなかったが、とにかく両親のあとを今追うべできはないと判っていた。
そして少年は奴隷のように使いまわされている若年労働者の群に紛れ込んだ。そのうちに刑務所の看守の仕事をするようになり、やがて囚人と外の世界を結びつける仕事を始めた。要は刑務所内に持ち込めない物品を手引きして持ち込む仕事だった。
ここで囚人に恩を売った結果、思わぬ報酬を少年は得た。両親の死のきっかけとなった事件の真相だった。
そして少年は看守兼探偵となって刑務所をアジトにしながら政財界の犯罪者をたたきつぶし始めた。

88bothhands:2007/12/31(月) 03:29:09
今は昔、猫を祖先とするある部族がありましたが、竜を祖先とする部族に襲われました。大人は皆、殺され、子供は奴隷にされました。
子供といっても竜の部族のやり方に従うものは部族の一員にしました。
しかしこの少年は拒みました。少年は祖先の伝説通り自分は猫の血をひく者と信じていたのです。
そうやって少年は頑固だったので、何年も奴隷生活させられました。その生活はひどい者で次々と死人がでましたが、少年は生き延びました。あまりに長く生き延びるので竜の部族は少年を見せ物にしました。つまり剣闘士です。
少年は剣の腕を磨きました。そして生き延びました。そんなある日、竜の部族は内乱を起こしました。というのはいまや成人した元猫部族の人間と先祖以来の竜部族の人間の対立でした。竜の部族は寝返ったものには親切にすると約束しましたが、しょせん猫部族はよそ者に過ぎませんでした。
少年はもう青年といっていい年齢でした。青年は最初、この内乱をどうでもよいとおもっていましたが、幼なじみが傷つくたびに激しい怒りに襲われました。そしてついに自分を拘束する鎖を切って内乱を1人で叩きつぶし、姿を消しました。
青年は猫部族で猫属性の存在だったので、竜の争いを好む属性がいやだったのです。
それに猫は愛情深い生き物です。友人を傷つける内乱を嫌ったのでした。

89bothhands:2007/12/31(月) 03:34:21
男が刑務所から出てくると迎えがなかった。変におもって調べると自分がボスをやっていた組織は子分に乗っ取られてしまったそうだった。男は意気阻喪になったが、考えても見れば、足を洗えたということだからと気を取り直した。
それで刑務所で覚えた配管工で生活を始めたのだが、ある日、電話で呼ばれて行ったら、そこはボスの座を乗っ取った子分の家だった。
子分は震え上がって許しを乞うた。男はもう配管工として生きていこうと思っていたので困ってしまったが、とりあえず子分をからかうことにした。拳銃を見つけ出すと弾倉を抜いてから子分を撃った。
すると子分の頭が砕けた。どうやら初弾が装填されていたらしい。
男はさらに困ると、かつての部下を皆殺しにして、再びボスの座についた。

90bothhands:2007/12/31(月) 03:39:25
今は昔、資産家の男がいて、暇を持てあましていた。あるとき倉庫から宝の地図を見つけて試しに探してみることにした。そして見つけ出した箱に入ってのはまた宝の地図だった。男は熱中した。
そして気がつくと資産を失っていた。それで他人にたかっていると石油採掘を始めようとする人物と出会った。男は子の人物に売り込んだ。その地域はよく行きました、ガイドになれますよと。
しかし結局石油は出てこなかった。代わりにダイヤモンドの鉱脈が出た。

91bothhands:2007/12/31(月) 03:45:48
男は政治犯として投獄された。革命に関する手紙を配送したせいだった。もっとも男は郵便局員だったので、正規の料金さえ払えば仕事すべきだった。
どうやら警官の検閲に抵抗したせいらしいと牢獄の中で男は気がついて怒った。壁を蹴ると、隣の牢獄の男が「やめろ。気が散る」といってきた。
男は言い返した。「お前こそいつもいつもぶつくさいいやがって黙れよ」
「黙れ黙れ。こうやって呟かないと忘れチマうだろう」
「なんだよ、それ」と男は隣の男から話を聞き出しました。それは軍隊のある基地に関する資料でした。
男はおもいつき、隣からその話を根掘り葉掘り聞き出し、代わりに覚えてしまいました。そして今までやってなかった司法取引でありもしない罪を白状して国外追放の処分を受けました。
それから男は軍事基地の情報を故国の敵へ売って一生を安楽に暮らしました。

92bothhands:2007/12/31(月) 03:54:41
男は祖父母に育てられました。両親が行方不明なのでした。男は成長して、行方不明ということは生きているかもしれないと考えて旅に出ました。
その行く手を戦争が遮りました。そもそも両親が行方不明になったのも旅の途中で戦乱に巻き込まれたからでした。この戦乱は今も続いていて年々大きくなっていました。
男は決意しました。戦場を横断してやると。
そして途中まで横断できたのですが、爆撃に巻き込まれて野戦病院に運ばれました。
このとき実は失神していただけだったので、病院を手伝うようになりました。なにしろ医者も看護士も足りていませんでした。
そのうちに援護のでなかった、援助の医師団が来ることになりました。医師団といっても医療活動経験者の集団でした。経験は豊富でも免許のない人たちでした。
男はその中に両親を発見しました。

93bothhands:2007/12/31(月) 13:53:41
英雄と呼ばれた男はただの男でした。故郷の市役所にコネで就職しようとしたら定員一杯だったので、別の年にまわされました。
待っているあいだ男は軍隊にいくことになり、兵士になりました。ちょうどこのころ戦争が起きて男は新兵錬成が終わるなり前線へ派遣されました。
男は要領が良かったので、敵をたくさん殺して、そのくせ、自分はのうのうと帰ってきました。
そして勲章をもらって故郷へ帰りました。このころになると市役所の就職の定員も空いていたので、男は戦争に飽きてしまっていたので、職員になりました。
やがて戦争は終わり、かつての敵国民が流入するようになると、男の周囲はにわかに焦臭くなりました。というのは男の部署は外国人課でした。
男の住んでいる街には新しい工場団地が建設されて、ここで働くための元敵国人が流入してきました。このうち何割かは男のせいで肉親や友人を失っていました。

94bothhands:2007/12/31(月) 14:02:50
少年は自動車の免許を所得しなくてはなりませんでした。
少年の親がいうには、免許証というものは身分証の代わりであり、一社会人の証明でもあるからとのことでした。
少年は正直なところ、乗り気ではありませんでしたが、仕方なしに運転や交通法規を勉強しました。
そして試験日がやってきました。試験はゆらぎ市のゆらぎ大砂漠にある免許更新センターで行われます。
免許更新センターは僻地にあるので盗賊やモンスターや神々の類に襲われやすく、そのために元軍人や警官が雇われ、厳重な要塞と化していました。
一般人でも傭兵でも近づくのは至難の業でしたが、ゆらぎ市民はここでの免許所得を通過儀礼としていたので、いきました。毎年何人か帰ってきません。
少年もまたおそるおそる足を進め、地雷原を突っ切り、夜を待ってから有刺鉄線を切り、塹壕を進み、警備員の変装をして、なんとか試験会場へ入り込みました。そして無事に試験に合格しました。
これで一人前の大人になれたので少年は気分がよかったです。だから路肩にうち捨てられたいた戦車を修理して、これに乗って帰りました。気分爽快です。砂漠の走行にはキャタピラがぴったりです。
けれどもゆらぎ市に入ったところで少年は逮捕されました。というのは戦車は特殊車両扱いでしたし、拾った戦車は旧式化したので砲台として設置されていたものでした。
少年は留置所に送られ、免許は失効しました。

95bothhands:2007/12/31(月) 15:13:56
レストロオセのニガヨモギの騎士団にゴプスレッドが入団を許されたとき、人々は驚きました。なぜならゴプスレッドは一度も剣を握ったことがないとされたからです。
たしかにレストロオセから騎士叙勲として剣を授かるときの仕草は武器の扱いになれていないものの動きでした。
それにと人々は噂をしました。ゴプスレッドは良家の子弟なのに黒い噂が多すぎました。どこの良家の子弟も悪いことはするものですが、たいがいは親の権力でもみ消されるものです。しかしゴプスレッドはもみ消せられないほどのようでした。
実際のところゴプスレッドはもはや悪行の噂を消す必要がなかったからです。ゴプスレッドはそれほどまでに狡知に長けていたのです。
このようにずる賢い男がレストロオセに忠誠を誓うのはレストロオセが彼の能力を認めたからです。それはレストロオセとゴプスレッドだけが知っていることでした。先王が崩御した際、レストロオセはまだ若く、ゴプスレッドは剣術の不得手のせいでくすぶっていました。そんなだから2人は葬儀から抜け出したのですが、うっかり鉢合わせしました。そして二人して意気投合、時間を潰しました。このとき2人は互いが何者か知りませんでした。それから時間が経ってゴプスレッドは父の仕事を手伝うために宮廷へ出向いたところ、レストロオセと再会しました。レストロオセはすれ違いざまに囁きました。「貴殿の力が欲しい。貴殿の剣ではなく知恵の力を妾は欲している」
こうしてゴプスレッドは騎士叙勲を受けるときには剣ではなく、知恵とそれまでに培った裏社会の人脈で戦う者となりました。

96bothhands:2007/12/31(月) 15:23:07
平安時代のころ、1人の占い師がいた。この占い師は大陸に渡って占いを学んだのだが、このとき拍子木で人心を操る術を学んだ。この術を持ち帰ろうとしたところ、師匠に止められ、逆らったので、占い師は知恵を奪われた。
占い師はなんとか日本に戻ってきたものの、かつての聡明さはなく、うすらぼんやりしていた。それで父親は僧侶になれば食うに困らないだろうと寺院へ押しつけた。体の良い厄介払いだった。
こうして占い師は僧侶となったのだが、寺院はすごい阿呆のいる寺と有名になってしまい、毎日見物人が訪れるようになった。
元占い師を笑いに来た女がからかった。
「大陸でどんな技を覚えてきたの、見せてよ」
もはや力のないことを知っての弁舌でした。占い師は首を傾げてから「もはやなにもわかりませぬ」と答えました。すると女は笑いました。
これをみて元占い師は「そういえば、人を笑わせることはできますな」といったので女はさらに笑い続けました。
すると元占い師は拍子木を並べました。すると女の笑いが止まらなくなりました。女は三日三晩笑い続け、最後に笑い泣きしながら許しを乞いました。

97bothhands:2007/12/31(月) 15:37:02
レストロオセ女王の第一王子ビシャマルは反旗を翻したものの、失敗して、国外へ出奔しました。もはや王子でないビシャマルについてくるものはなく、唯一の忠臣セウ=ガーベラも処刑されてました。
レストロオセ女王を倒す方法を考えながら各地を流浪しました。その果てに神々の図書館にたどり着きました。ここで司書をやりながら無限に近くある書物を読んで方法を探りました。
そして図書館長のラヴァエヤナにお願いをしました。
「どうか伝令竜を私にお貸し下さい」
「何に使うのだ」伝令竜セルラテリスは世界最速の竜でラヴァエヤナの命令であるあらゆるところに物や手紙を届けていました。
「もちろん手紙を届けるのです」
セルラテリスはビシャマルの手紙を携えてレストロオセの国へ行って帰ってきました。返信の手紙を持って。
ビシャマルは故郷の状態を知りました。やはり母親のせいで国は最悪の状態でした。それで手紙の一通一通に丁寧に変身を書きました。このとき神々の図書館の莫大な資料が役に立ちました。この図書館にはありあらゆる問題の解決とその方法があったのです。
こうしてビシャマルは手紙を書きまくって故郷を立て直しました。ビシャマルは腱鞘炎になった右腕をさすりながら神々の図書館を立ち去りました。その後の行方はわかりません。

98bothhands:2007/12/31(月) 15:51:56
レストロオセ女王の第一王子ビシャマルは反旗を翻したものの、失敗して、国外へ出奔しました。もはや王子でないビシャマルについてくるものはなく、唯一の忠臣セウ=ガーベラも処刑されてました。
レストロオセ女王を倒す方法を考えながら各地を流浪しました。その果てに神々の図書館にたどり着きました。ここで司書をやりながら無限に近くある書物を読んで方法を探りました。
そして図書館長のラヴァエヤナにお願いをしました。
「どうか伝令竜を私にお貸し下さい」
「何に使うのだ」伝令竜セルラテリスは世界最速の竜でラヴァエヤナの命令であるあらゆるところに物や手紙を届けていました。
「もちろん手紙を届けるのです」
セルラテリスはビシャマルの手紙を携えてレストロオセの国へ行って帰ってきました。返信の手紙を持って。
ビシャマルは故郷の状態を知りました。やはり母親のせいで国は最悪の状態でした。それで手紙の一通一通に丁寧に変身を書きました。このとき神々の図書館の莫大な資料が役に立ちました。この図書館にはありあらゆる問題の解決とその方法があったのです。
こうしてビシャマルは手紙を書きまくって故郷を立て直しました。ビシャマルは腱鞘炎になった右腕をさすりながら神々の図書館を立ち去りました。その後の行方はわかりません。
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レストロオセは処刑されることになりました。人々は処刑場に集まり、口々に罵倒しました。けれどもレストロオセは毅然としていました。ところが処刑人が斧を振り下ろす瞬間、目を剥きました。なぜなら人々の中に行方不明の息子ビシャマルの姿を見つけたからです。
レストロオセは冥府を下りながら、必ずやビシャマルに罰を与えると誓いました。地の底へ下るうちにレストロオセはニガヨモギの騎士団と合流しました。ニガヨモギの騎士団の団長ヴェルフレイは膝をついて命令を乞いました。
「冥府と地上の間の障壁は堅い。今は待つときだ」
そしてハルバンデフの襲来によって地上と冥府のあいだの障壁が破壊されました。地上では紀元槍の崩壊とか大陥穽と呼ばれる事件でした。
こうしてレストロオセとニガヨモギの騎士団は地上へと舞い戻り、復讐を始めました。もっともビシャマルもセウ=ガーベラもとっくの昔に死んでいましたから、その子孫を寝ら始めました。
しかし1000年以上も経っていたのです。

99bothhands:2007/12/31(月) 16:02:43
今は昔、あるところに馬鹿な王様と賢い側近がいました。2人は王と配下という関係でしたが、幼なじみの仲良しでした。人々は王を排斥して側近を新たな王にしたがりましたが、側近はそんな真似をすれば、内乱を招き、さらに諸外国に侵略の口実をあたえることになると拒否しました。
馬鹿な王様と賢い側近は仲良く平和な国を作ったのですが、思わぬ災害に遭いました。大陥穽という大規模な地盤沈下です。国中がクレーターだらけとなり、諸外国は災害救助という名目で軍隊を派遣してきました。
まさかこのようなことになると思わず賢い側近は頭を抱えました。するといつになく真面目な顔で馬鹿な王様がいいました。
「親友よ、お前に頼みがある。女子供を連れて国外へ逃げるのだ。お前なら助けてやれる」
「そのあいだ、あなたはどうするのか」
「もちろん国土を守る。力の限りで」
「あなたのような間抜けにできるものか」
「間抜けと知恵者しかここにはいない。だが、幸いにも間抜けは蛮勇を持ち、知恵者は忍耐を持っている。これが最善の方法のはずだ」
「断る!見捨てられるか」
「ならば、お前とは絶交だ。王として命令する。民衆を救え。私は戦う」
こうして馬鹿な王の国は滅びました。しかし人々は生き残り、流浪の民となりましたが、いつまでも生き残りました。この人々は自らの部族にかつての故国の名前をつけました。それは王様の名前でもありました。

100bothhands:2007/12/31(月) 17:19:41
 僧侶は従軍医師として戦場に行きました。そして敵も味方も関係なく負傷者を救出して回りました。僧侶の行動を上層部は苦々しく思いましたが、現場の兵士たちは感謝しました。
 僧侶の部隊が通ると敵は安全を保証するほどでした。けれどもこれを知った上層部は麻薬の密売に利用しました。僧侶は治療に向かったはずですが、戦争で懐を肥やすたちの犬になっていました。
 実は僧侶は犬扱いされていることに気づいていました。けれども服従すれば、備品や燃料や人材を与えられることが判っていました。しかしいつまでもなれることができませんでした。そして自分の一枚噛んだ麻薬で劇症した人間を治療したとき、僧侶はもうこんなことはたくさんだと叫びました。
 僧侶は敵にも味方にも開け合ってどちらにも属さない医師団を作りました。上層部ではともかく、僧侶の功績は現場では支持を受けていたので、僧侶の組織は成功しました。
もっとも上層部は一介の僧侶に刃向かわれたことに腹を立てて抹殺部隊を派遣しましたが、このときこそ敵も味方も関係なく僧侶を守るために共同戦線を張りました。
 これが戦争終結のひとつのきっかけとなったとか。

101bothhands:2007/12/31(月) 17:25:12
ある田舎町で少年が散歩していると声を聞きました。しかし辺りを見回しても誰もいません。よく耳を澄ますと古井戸から聞こえてきます。少年は不気味に思いましたが、覗き込みました。底には鎖に繋がれた少女がいました。
この少女は拉致されて古井戸の底に突き落とされて飼育されているのでした。少女は少年に助けてくれと懇願しました。
少年はいいました。「助けよう。でもその前に服や食料がいるんじゃないか」といいました。そうやって脱出の機会を引き延ばしました。
というのは少年は少女を拉致した者に嫉妬したからでした。少年は古井戸の脇で少女の飼育者を待ち伏せ、やってくると殺して古井戸へ投げ込みました。
「食料と衣服だ」
こうして少女は少年のものとなりましたが、しばらくすると死にました。それで少年は新しい獲物を探しました。

102bothhands:2007/12/31(月) 17:34:32
「私は言葉使士の生まれです。両親同様に私も言葉使士を目指しました。私は神代語を選択して文法と語彙を学びました。そして言葉使士になるための試練に挑みました。そうです、100の神話を作るという試練です。けれども私は失敗しました。この試練は一度しか受けられず、失敗者は出奔せねばなりませんでした。私は掟に従いました。それからは様々な世界を旅して様々な人々と出会いました。人々は私が言葉使士の出身と訊くと話をねだりました。私は言われるままに話しましたが、芳しいリアクションはありませんでした。けれどもいくら挫折しようとも私はそのうちにまた言葉を使いたくなりました。試練の失敗は私に私もまた言葉使士であると教えてくれました。そして今、私は今いる世界の律法に従って100の神話を記述しました。もう故郷には戻れませんが、私は確かに言葉使士の技を身に付けました。」

103bothhands:2007/12/31(月) 17:46:30
/*****
『ぼくには、何の後悔もない。ぼくは賭けた。ぼくは負けた。これはぼくの職業の当然の秩序だ。なんといってもぼくは、胸いっぱい吸うことができた、爽やかな海の風を。
一度あの風を味わった者は、この糧の味を忘れない。そうではないか、ぼくの僚友諸君?問題はけっして危険な生き方をすることにあるのではない。この公式は小生意気だ。闘牛士はぼくの気に入らない。危険ではないのだ、ぼくが愛しているものは。ぼくは知っている、自分が何を愛しているのか。それは命だ。』(『人間の土地』作:サン=テグジュペリ訳:堀口大學)
*****/
3日間で100の神話を記述しました。
これでもうお終いです。
お付き合い下さったみなさん、ありがとうございます。
Thank you for all myth players!
The hundred myths is ended.


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