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バトルロワイアルぺティー

268リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/01(火) 01:32 ID:2KqO5TgA
以前の行動>>126>>132

 姫城海貴(男子十六番)と、冬峯雪燈(女子二十一番)は、あれからずっと、J=7にいた。大した意味はなかったが、なぜか、二人ともそこにいた。

動くのが怖かった。半日前のように、また誰か他の生徒に会うのが怖かった。海貴は雪燈とて決して信用したわけではないのだが、とりあえず攻撃はされないし、放っておいた。そして、同じように感じていたのは雪燈も同じだったらしい。

一人でいるのは不安だが、だからと言って馴れ合う気もなかった。そう思う点では、二人はある意味、よく似ていた。


あれから、二人は殆ど口を利いていなかった。ただ、二人とも、そこにいるだけ。静かな沈黙が続くだけだった。



ふと、雪燈が訊いた。「ねえ。愛希を探しに行かなくていいの?」


愛希。その名前を聞くと、心がぶるっと奮い立たされるようだった。
その愛らしい顔が頭に思い浮かぶたび、焦りを募らせていた。急ぐ気持ちと、どうにもならないのだという絶望の気持ちで、気がふれそうだった。

海貴は言った。「行きたいけど、こんな広い敷地の中をどうやって探せばいいのかわかんないよ」
「それでも探してあげなよ。彼女でしょ」雪燈は更に言った。


わかってるよ。でも――


「やる気の奴に会ったらどうするんだよ。こんな武器じゃすぐにやられるのがオチだろ」強めの口調で言った。

雪燈は全くの無表情になった。
「じゃあ愛希が誰かに殺されてもいいんだ? あたしみたいに、変な男に捕まって、何されてもいいんだ?」
「そんなこと言ってないだろ」ムキになって、声を荒らげた。
「だってそうじゃん。心配してても実行できないなら同じだよ。せいぜい愛希ちゃんの幸福を祈ってれば?」雪燈は口角を上げて、そう言った。


げんなりしていた。
「口で簡単に言うほど甘くないだろ。俺は正義のヒーローなんかじゃないんだよ」


できれば、助けてあげたい。もう一度会いたい。でも、そんな簡単にできるはずがない。自分の命が惜しいのは、当たり前だ。ご都合主義の漫画とは違う。これは現実なんだから。


少しの間、二人の間に重苦しい沈黙が続いた。



「まあね、普通に考えてそうだよね」雪燈は髪をいじりながら、呟いた。「この法律を舞台にした小説が結構あるじゃん。出版禁止になった小説、知ってる?」
海貴は首を振った。「聞いたことあるけど読んだことない」

「そこに書いてあったの。ずっと好きだった女を探し出す男。でも、その子に殺されちゃうの。『それでも、お前にやられるなら本望だ』って言って、許すの」
「へー。それは凄いな」
雪燈は顔を上げて、続けた。「でも、そんなできた人間っていないよね。こんな風になったことがない奴が書いたんだろうな。実際はそれどころじゃないのに」

雪燈は海貴の顔を見た。「あたしだってそんなことわかってるよ。ただ、ちょっと期待しちゃっただけ。美男美女カップルの感動の再会――みたいなのを」
「何言ってんだよ」海貴は笑った。


「本当だよ。だってあんたはあたしを助けてくれたもん」そう言っている間、雪燈は一度も目をそらさなかった。
気まずくなって、海貴の方がそらしてしまった。

「あんなの助けたうちに入らないよ」
「入るよ。だからあたしは生きてるんじゃない」


海貴はまた、黙り込んだ。雪燈がじっと自分を見つめていたことに気づいたが、目を合わせないようにしていた。何か見透かされたような気分になり、気まずくなった。


雪燈は立ち上がって、海貴の手を取った。
「今日一日中、なぜかあんたと一緒にいたけど、いつも上向いてたよね。心ここに在らずって感じだった」
「だから何だよ」

雪燈は優しげな笑みを浮かべた。「行こう。愛希可愛いもん。心配だよ」

「武器ならあたしの銃があるし。平気だよ」


愛希――

本当は、心配でたまらなかった。思い浮かべるたびに、心がつぶれそうになるくらいに。

「うん」海貴はやっと、頷いた。



それから二人は移動した。


どこに行くかは全く検討がつかなかった。ただ、無理はしない。できる限りの力で探す。そう決めていた。

そして、何となくほぼ一日を共に過ごした雪燈と、奇妙な連帯感が生まれた気がした。
雪燈のことはあまりよく知らないのに、こいつは何となく人を殺しそうもないな、と思っていた。その根拠は、全くと言っていいほどなかったのだが。
【残り23人】


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