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バトルロワイアルぺティー

239リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/05/16(日) 23:46 ID:2KqO5TgA
 以前の行動>>208>>210

 時刻は、午後七時半。ここは、エリアD=8と、D=9の境目に当たる場所だった。

飛山隆利(男子十七番)は、疲れてぼんやりとしていた。隣には、高城麻耶(女子十七番)が眠っていた。
疲れたんだろうな。隆利は少し微笑ましくなって、麻耶の寝顔を見た。
寝てる時は可愛いのに。寝てる時、は。


隆利は、自分の肩にもたれ掛かってくる麻耶を、しっかりと支えながら(このままの体勢は、ちょっときつい)、あることを思い出していた。


一年前だ。隆利は隣のクラスの女子と、付き合っていた。元々、部活が同じだったのだが、そこからどことなく仲良くなり、好きになった。
初恋だったと言っても、過言ではなかった。思い切って告白して、ついに返事をもらった時には、嬉しくて仕方なかった。

しかし、困ったこともあった。

麻耶の態度が、明らかに冷たくなった。登校の時、朝に会ってもそっけなくて、クラスでも自分を避け、話しかけても、素っ気ない態度しか返ってこなかった。

確かに、あの子と付き合えたのは、とても嬉しかった。でも、麻耶との仲が疎遠になっったことは、寂しいと言うよりも、むしろ、心にぽっかりと穴が開いてしまったかのようだった。
隆利にとって麻耶の存在は、思っていた以上に大きかったらしかった。

結局うまくいかなくなり、その子とは別れることになった。


思った。二人して、いつまでも、殻に閉じこもってるのは駄目だと思う。でも、昔から空気のように傍にいて、いないと苦しいんだ。隆利にとって、麻耶は、なくてはならないものだった。麻耶にとってどうなのかは、わからないけれど。


麻耶が目を覚ました。
「んー……」
目をこすって、虚ろな表情で隆利を見た。

だんだん眉間に皺が寄ってきた。「何見てんのよ」いつもと同じ口調で言った。

「見てねーよ。自惚れんな」
「嘘。私があんまり可愛いから、見とれてたくせに」麻耶は唇を尖らせて言った。
「勘違いも度が過ぎるとイタいぞ」
隆利の言葉に、麻耶は怒ったようにそっぽを向いてしまった。勿論、本気で怒っているわけではないだろう。


隆利は思った。嘘だ。麻耶は十分可愛い。多分、幼なじみじゃなかったら、オレなんて相手にしてもらえないだろう。これで性格さえ直せば、モテモテになるに違いないな。
それなら、一生直さないで欲しい、なんて思うのは、おかしいのかな。


隆利は、不意に訊いた。「生き残ったら、行きたいところある?」
麻耶はきょとんとした。しばらく考え込んでいたが(そんなに悩むほどのことか? と隆利は思った)、言った。
「私、隆利の家に行って、隆利の部屋に置いてある漫画を読みたい」

何だそれ。
「いつも読んでるじゃん」隆利は言った。
「難しいから、内容すぐ忘れちゃう」
「へー。バカなんじゃないの?」
「はー? あんたほどじゃないよ!」

口論になりそうだったので、隆利は言い直した。
「へー……オレんちに一番行きたいんだ。あんな狭い部屋でもいいの?」

麻耶は少し照れながら、でもはっきりと言った。
「今一番行きたいところはそこなの! 他の場所は後で考えるから」

隆利は拍子抜けした。
嬉しかった。麻耶にとって、自分は結構大切な存在なのかもしれない。
……自惚れかもしれないけど。

「そっか……じゃあ、終わったら来いよ」
麻耶は頷いた。


勿論、生き残れたら、の話だ。でも、自分でも不思議なほど、心は落ち着いていた。麻耶と合流できたので、ホッとして気が抜けていたのかもしれない。


隆利は空を見上げた。空は明るい青から、やっと濃紺に変わっていた。夏は日が長い。
穏やかだった。三十分ほど前に激しい銃声が聞こえたことなど、夢のまた夢のようだった。


突然、麻耶が、肩にもたれかかってきた。ドキッとして横を見た。
どうやら、また眠くなってきたらしい。
寝てる、よな。寝てるんだよな……?

ゆっくりと、麻耶の肩に手をかけた。麻耶からは何の反応も見られなかった。目は、柔らかく閉じられていた。

隆利はふう、とため息をついた。この時間が、ずっと続けばいいのに。
そう思いつつ、ふと後ろを見た。


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