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他人が書いた小説の一部を批評するスレ

1イラストで騙す予定の名無しさん:2004/02/20(金) 16:17
 書いてみたはいいけど、この表現どうなの?会話シーンに自信ないんだけど、ちょっと見てもらいたい・・・。
 そんな悩みを抱えるあなたは、このスレに、書いた作品の一部を載せてみましょう。
 ついでに、執筆上の悩みもガンガンぶちまけましょう。
 
 投稿する際には、あまりに長いのは避けてください。また、このスレはオリジナル限定とします。
 その他は、ライトノベルであれば、ジャンルその他は問いません。

353イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/17(土) 20:08
>>352
お前の人生に m9(・∀・)ヘキサゴン

354119続き:2004/07/17(土) 20:14
 「チョーシにのるなっ!!!!!」
 チトセと鈴蘭のダブルキックをくらって、フブキは前のめりに倒れた。
 「う〜ん、ひどいよ〜…」
 地面に顔をめりこませて呻き声をあげるフブキに、鈴蘭はやれやれと
ため息をついて、
 「まったく…これから会いにいくお友達も男の子なんでしょう? やっ
ぱりコイツみたいにスケベなの?」
 「ぜんぜん! とってもおとなしくて、いい子だよ!」
 「そう、安心したわ」
 鈴蘭はチトセと手をつなぐと、楽しげに語らい合いながら歩いていく。
 「お〜い、待ってよ〜!」
 起き上がったフブキは、あわてて後を追うが、チトセも鈴蘭も振り向こ
うともしてくれない。
 「ごめんよ〜、エッチなことは控えるから機嫌直して!」
 フブキは知らなかった。
 「ちょっとかわいそうだったかしら? 助けてもらったのに?」
 「いいよ、チトセがごほうびにスカートめくらせてあげるから」
 「じゃあ、あたしも一回ぐらいなら…」
 「ダメ〜! 鈴蘭ちゃんのパンツなんて、フッくんにはシゲキが
つよすぎるよ!」
 こんな会話を二人が交わしていたことを。


355イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/17(土) 20:33
>>119
えっと、これで真剣だったら…ちょっと進展のしようがないよな…
まずは君、高校に行くか戻るかしなさい。

356無名人:2004/07/17(土) 22:47
以前ご指摘の有った会話部分を改めて書き直してみました。
深刻な内容のわりに軽くなり過ぎた気がしていますが…。

十八歳になったばかりの山本宏樹は、支給されたM−16A2自動小銃を
抱きかかえ、ブラックホーク機内より眼下を流れる光景を食い入るように
眺めていた。
目には強い殺気と憎悪が宿り、銃を掴む手は力が入り過ぎてかすかに震えて
いる。
「お前、実戦は初めてか?」
その様子を見ていた宏樹の真正面にいる、89式小銃を肩に立てかけて
乾パンを食べていた三十代の自衛隊員、酒巻直哉三等陸曹がヘリの轟音が
響く中、大声で宏樹に話し掛けてきた。
「え!? は・はい!」
宏樹は、いきなり声をかけられて慌てながら答えた。
「怖いか?」
「いいえ! そうじゃないんです。 ただ…」
 そう言いかけて、宏樹は言葉を詰まらせた。顔は激痛に耐えるかの様に
歪んでいる。
「何だ?」
「ただ…。やつらが憎いだけです」
 殺気に満ちた低い声で、宏樹は言った。
「そうか。だが、焦りは禁物だ」
 陸曹はそこで一旦言葉を切り、血気にはやる宏樹を懐かしむように見つめて
から言った。
「やつらへの復讐を望むなら、まずは生き延びる事を考えろ。俺たちの後ろに
ついて、やる事為す事を一つひとつ見て憶えていけ」
そう言って陸曹は、乾パンの缶を宏樹の方に差し出す。
「分かりました、有難うございます」
 宏樹は礼を言うと、乾パンを一枚受け取って口に入れた。
ほおばっているといきなり背中を強く叩かれ、危うくむせそうになった。
「だ・誰だ!?」
振り向くと、宏樹のクラスメイトにして仲間内で最も射撃が上手い坂井隆康が
、ニヤニヤ笑いながら話し掛けてきた。
「何カッコつけてんだよ、オメェは! ゾンビ映画オタクのくせして復讐鬼を
気取ってんじゃねぇ!」
 同じく文学少女にして爆発物のエキスパートという、矛盾した嗜好と特技を
持つが故に“文系の爆弾魔女”という物騒な称号を持つ源田由紀子が、
読んでいた「神曲」の文庫から顔を上げて後を続ける。
「そうそう。山本君、今更カッコつけたって誰も拍手なんてしてくれないよ」
 由紀子のルームメイトで、宏樹が所属する布施師団一の美少女と言われる
古賀美里が、微笑みながら言った。
「そうね。ここで“ナチス・ゾンビ”とか“スペース・ゾンビ”とかのB級
ゾンビ映画について、色々講釈たれる方が宏樹らしいかも」
「お・お前らなぁ…」
 気勢を削がれた宏樹がため息を付くのと同時に、外国人特有の高い発音の
日本語が、ヘリの轟音を圧して機内に響いた。
「後15分で有明埠頭だ!!」
声を出したのは、軍曹の階級章を付けた五十前の白人の男。
宏樹の部隊、第十小隊隊長を努めるライズ・アーメイ軍曹であった。

357イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/17(土) 23:24
表現が乏しいな…もうちょっと描写しないといけないかな?
主人公のセリフも・とかをつけて誤魔化しているのはちょっとね。せめて震えた、とかでもいいから表現するといい思う。
それに設定もおかしいところが多いかな。クラスメイトって…クラス単位でゾンビ狩りですか。そんなに部隊員が困窮しているのか…
あとこの作戦ってどう意味があるのか、とか一度考えてみたほうがいい。
ブラックホーク、M−16A2自動小銃、89式―そう言われても、ぱっと思いつく人っていないと思う。
それにリアリティを追加するなら、89式かM16に絞るべき…白人の男が日本語を喋るのもおかしい。
まだまだ精進していってくれ。

358イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/17(土) 23:26
>>352
もっと文章を豪勢に飾り立てて華やかさを演出した方がいいんじゃないかい?
学芸会の小話みたいだ。

359イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/17(土) 23:32
>>357
もうちょっと、描写できないのかな、ね。
眼下を流れる景色―ってどんなの?想像するのが難しい。
陸曹って出てくるけど―この場合何等なのか分からない一曹なのかとかがね。
設定よりも表現する事をこだわった方が良いと思う。

360イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/18(日) 02:48
>>356
かなり省エネな文章になってるね。
描写を心がけたのかもしれないけど、これだと結果的に説明文になってる。
人数が多いことだし、初登場時の描写は諦めた方がいいと思うよ。
どんな人たちかは、おいおい分かってくればいいんだしね。
あと会話がつまらん。キャラの練り込みは大丈夫?

361イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/18(日) 04:03
>>347
なんというか……30分で書き上げた推敲不足の文章をそのままもってくるのはやめてくれ。
批評してもいいんだけど、普段だったらきみがするはずもないようなミスをしてる可能性だってあるわけじゃん。そんなとこ指摘されても意味ないでしょ?
せめて今度は推敲したものをもってきてくれ。でないとお互いにとって時間の無駄。

>>350
いまいちよくわからんな……。「」もなにも、一時下げは基本中の基本だと思うのだが……。

>>352
最近「撲殺天使ドクロちゃん」という本を読んで、ようやくきみのやりたいことがわかった気がする。でも残念だがいまのきみにあれは書けない。あの手のものはいいかげんい書いてるように見えて実はきちっと計算されているからな。とりあえずいろいろな種類のものを書いて地力を鍛えろ。話はそれからだ。

>>356
前のよりはよくなってる気がする。
でも説明しようという気持ちが強すぎてそれが足を引っ張っているように見える。
冒頭の「十八歳になったばかりの山本某は〜」という部分なんかまさにそうなんだけどさ。地の文で一気に説明しようとするあまりカチコチに硬い文章になってしまっている。同じことを表現するのだって、やり方や見せ方はいくらでもあるだろう?
たとえば中学時代のこと。祝ってもらえたかもしれない誕生日のこと。三十代のおっさんと顔付き合わせて話てること。クラスメイトが銃を持って武装してること。異常事態なんだから「十八歳になったばかりの山本某」てのをどこにかけることも可能じゃん。それに付随して会話やキャラ同士の交流が生まれるかもしれないし、逆に内側にとじこもってしまうかもしれないし、とにかくもったいないよ。せっかくいい舞台と材料があるんだからさ。
同じことは自動小銃を抱えてることやへりにのってることについてもいえる。すべての行動に意味を持たせろとまではいわないけど、キャラの行動の多くは必然的なもの。表現に乏しいといわれてることでもあるし、一度考えてみるのはどうかな。まあ冒頭のシーンだからシンプルでいいんです、といわれればそれまでだが。
こういうような一気に紹介するシーンは「バトルロワイヤル」なんか参考になると思うよ。あれの冒頭もたしかものすごい数の生徒がでてきてたけどそこそこうまく消化してたはず。あれにくらべればこっちは人数すくないほうだし、短いなりにきれいにまとまるんじゃないかな。

362360:2004/07/18(日) 17:11
>>356
前回不親切だったので、きちんと書きます。

会話がつまらないのは、主人公の描写が弱いせい。
巻き込まれ型なのはいいとしても、実戦初参加の心境を活き活きと書くべきでは?
主人公の憎しみについても、直後学園祭ノリになっているため、
切実なものに感じられない。それから、ナチスゾンビはやりすぎ。
せめて、ゾンゲリアや死霊のしたたりクラスにすべきかと。いやどうでもいいか。

説明文だと感じたのは、
> 同じく文学少女にして爆発物のエキスパートという、矛盾した嗜好と特技を
>持つが故に“文系の爆弾魔女”という物騒な称号を持つ源田由紀子が、
>読んでいた「神曲」の文庫から顔を上げて後を続ける。
こういう情報の羅列が、随所に見られるため。

文学少女=爆弾担当という設定のギャップは、もっと活かした方がいい。
”矛盾した嗜好と特技を持つが故に〜”は設定の説明になっちゃってるよね。
人物像を頭の中で思い描くことは読書の楽しみの一つだけど、
その楽しみを奪ってる。物語の中で描写していってほしいところ。
俺はこの人がどれだけのゾンビを巻き込んで自決してくれるかが楽しみなので、
早く続きを書いてください。ブラックホークは脱出用なので、ダウンしないのかな?

個人的には前回の晒しの方が好みだったり。
ライトノベルにして欲しくないと思うのは自分だけかな。

363イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/18(日) 17:33
>>346
鶴田の文章はとっくに基準値に達してるので、
プロットなり作品全体なりを晒した方がいいんじゃないかな。
●◎短編小説・曝し場◎●
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/movie/2689/1052065374/
【投出】途中まで書いた長編を晒すスレ【厳禁】
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/movie/2689/1054480094/

>>119
>「チョーシにのるなっ!!!!!」
ワロタ。
それはともかく、本スレで妹SSを晒してるヤツに負けてる気がする。

364イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/18(日) 21:57
>>363
ここじゃあどれがどう超えてるのか分からんのう

365イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/18(日) 22:57
>>356
初登場時に説明するのはキャラの性格か、能力のどちらかに絞った方がよいのでは?
あとは、坂井隆康の紹介文から加速度的にゴチャゴチャ感が上がって、どれが誰の台詞で
どれが誰の説明文か格段に判り難くなってる。
良く読めば判るが、読み手は確実にここで「ん?」となって読み進めている流れが断ち切られてしまう。

あ、あと個人的馬鹿一趣味ですが、源田由紀子はやはり初登場時から有名作品の引用を言わせるとキャラが立つと思います。

366猫丸:2004/07/18(日) 23:56
 前回より少し進んだところです。ちなみに、舞奈はこの話のヒロイン、
ユキくんは主人公にして語り部です。自分で見た限り擬音がちょっと多す
ぎる気もしたのですが、どうでしょうか。それと、一番肝心なことだと思い
ますが、萌え効果は出ていますか?どうか、批評お願いします。

「気がついたんだね、ユキくん。」
聞き覚えのある声に俺は一安心。振り返ると、舞奈ちゃんが木の影から頭だけを突き出していて、
 思考が、止まった。
「ま、舞奈ちゃん・・・・・・?」
自分の目を疑いつつ、俺はうわごとのように言葉を漏らす。舞奈ちゃんの頭の上には、犬についているような白い耳が二つ、確かに生えていた。
「なに見てるの?」
木の陰から出てきた舞奈ちゃんは、きょとんとして俺を見つめる。それでも、頭をじいっと見られていたらさすがに気付いたらしい。舞奈ちゃんは、自分の耳を軽くつまんで、
「似合ってるかなあ?」
笑顔を向けられても、こっちとしては何とも言いがたい。ていうか、その耳はなに?いつ生えたの?口に出して言おうとすると、舞奈ちゃんは褒め言葉を求めるような表情で、頭のわりに大きな耳をぱたぱたさせ始める。その可愛らしさに、出かけていた言葉は一瞬で止まって、
「尻尾もあるんだよ。」
機嫌よく言って、舞奈ちゃんはその場でくるりと半回転して見せた。なるほど、はためく緋袴の腰元からは、耳と同じく白い尻尾がぴょこんと突き出ている。
「ねえねえ、似合ってる?」
舞奈ちゃんは尻尾を左右にふりふりして、肩越しにこっちを振り返る。似合ってるかって訊かれたらそりゃあ・・・・・・・。
 俺は、耳と尻尾に対する違和感が晴れないながらも、本音のままに言ってあげる。
「似合ってるよ。すごくかわいい。」
「ほんと?嬉しいなあ。」
よほど嬉しいのか、こっちへ向き直っても、尻尾がせわしなく動いているのが見える。こんなところは、犬とまったく同じだ。

367イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/19(月) 00:36
>>366
完全に読者の立場に立って、
自分がどんなものを読みたいかという観点からレスしてみます。

文章は十分及第点だと思う。
萌えはだめ。

どう駄目かというと、舞奈のケモノ感が足らない。
これは男女共通して言えることだけど、自分に懐いて胸に飛び込んでくる異性というものは、
それはもう愛おしい。こういうタイプを犬に喩えることはよくあるよね。
犬少女を題材に選んだ時点で、最低限クリアすべき課題がある。

それから、犬だったらベロをだしてハァハァくらいさせて欲しい。
すると俺も舞奈に対してハァハァできると思う。
この一文には独特の可愛らしさがあって、これはこれで悪くない。
だけど、今萌えをやろうとする人は、生半可じゃ駄目だと思う。
うわっこれギリギリじゃねえの?っていうくらいのケモノっぷりを期待。

368イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/19(月) 03:59
>>362
いや、むしろもっと濃いほうが笑えるだろう。読者がゾンビ系の映画知らないこと前提ならスペースゾンビはタイトル的にインパクトがあて○。ナチスゾンビは×。悪魔の毒毒モンスターとかレイダース失われたゾンビとか、だれが聞いてもあほっぽいほうが笑えるのでは……ここまでかいてきづいたが、笑いはいらないのかな。まあすきにしてくれ。

>>猫丸
文章はいいと思う。擬音も気にするほどのものじゃない。もっと多くても萌え王なら許せる気はする。
367がいうように、もっと犬ぽくてもいいかな。とびつく、足にまとわりつく、膝のうえに乗ってくるエトセトラエトセトラ。犬のしそうな行動を萌えに直結させるとよりよくなるかと。
個人的にはユキくんはもっと理性があってもいいと思う。舞奈のことをかわいい、ほめてあげたいと思いながらも理性がじゃまするというような、そんな葛藤があるとより引き立つのでは。具体的には「似合ってるよ。すごくかわいい」とかの部分を心の声にしたりとかするわけだ。そうするとほめてくれないことに対して舞奈は不満をつのらせたりするかもしれないし、それによってさらに萌える行動をとるかもしれない。なんにしろ、すぐに認めちゃうのはもったいないかなあ。

369猫丸:2004/07/19(月) 17:40
 >>367・>>368

 批評ありがとうございます。まさか萌えが足りないとは思いませんでした。
締め切りの明日までじっくり考えてみます。それにしても、規定五十枚以内
なのに五十五枚超えそうなのは辛い。どこ削ろっかな・・・。

370368:2004/07/20(火) 02:11
>>猫丸
希望というかなんというか、もうまにあわなそうだが一応。
顔をなめる、というアクションは必ずいれてくれ。

371猫丸:2004/07/20(火) 05:36
>>370
分かりました。なんとしてでも入れます。確かに萌えなシーンですからね。

372鶴田:2004/07/20(火) 18:51
批評してくださったかた、ありがとうございます。

>>348
たしかに、静的な画を狙いすぎて描写が少なくなりすぎてしまったようですね。
もう少し足してみます。

>>349
唐突な物言いをするキャラ、ということで頭の中のイメージはあったのですが、書くべきかどうかで悩んでいたのです。
やはりこのへんは読者に伝えておくべき情報ですかね。

>>363
なるほど、こんなところがあったんですね。参考になります。

373某スレの809:2004/07/20(火) 21:26
みなさん。お久しぶりです。
今回も、電撃に送ったけれど「作家でごはん」には上げなかった小説を、推敲し直してから全部上げます。
かなり長いです。
どの位長いかと言うと……レスを10個消費します。

以下に上げる短編では、最初に「萌えキャラを出す」と決め、全てをそこから作っていきました。
聞きたい事は、
1:一瞬でも萌えたか(興奮したか、でもいい)
2:スラスラと文章を読む事が出来たか
3:萌え小説でも、こんなオチはありだと思うか
の三点です。
個人的には、電撃に送った作品の中で最も自信の無い作品ですが、
どうぞ、批評をよろしくお願いいたします。

374某スレの809:2004/07/20(火) 21:27
 そいつはもちろん驚いたし、そいつを見つけた男はもっと驚いた。
 だが、そいつは見つけられてしまったし、男は見つけてしまったのだから、仕方が無い。
「お前、何者だ?」
 男が言った。
 そいつは、うろたえていた。
「え……ええっと……あのぅ……」
 そう言って、口元に手を当て、「どうしよう。どうすればいいんだろう」という風に、キョロキョロとまわりを見まわす。
 そいつは、まだ年端も行かない少女に見えた。その少女は、部屋の中に一人でいた。そして、どういうわけか、その少女は全裸だった。
 そして、さらにどういうわけか、その少女には、羽根が生えていた。
 背中に、真っ白な羽根が生えていた。
「……お前、一体何者なんだ?」



 男が少女の居る部屋に入ったのは、全くの偶然である。
 男は、今日の分の食料を近くのコンビニから調達し、今日の寝床を探していた。そして、偶然見つけた、どこにでもある二階建て全室1DKの、木造アパートに入った。
 男が偶然開けた部屋には、少女がいた。その少女には、羽根が付いていたのだ。



375某スレの809:2004/07/20(火) 21:27
「わ……私は……」
 少女は、ただただうろたえていた。布一つ纏っていない体を隠そうともしなかった。この少女は、男に裸を見られた時にどうすればいいのかすらわかっていないようだった。
 一つ一つ、聞きたい事を細かく分け、順番に聞いていく事にした。
「お前は、いつからここにいるんだ?」
 男が聞くと、少女はまたしても「え?」という顔をした。
「お前はどのくらいここにいるんだ? まず、それを教えろ」
 男は、声に少し怒気を込めて言った。
 少女は、ビクリとふるえた。
ただただ怯えていた。男は、何を言っても似たような反応しか返さない少女を、殴りつけたくなった。
「ご……ごめんなさい。怒らないで」
 少女は、上目遣いで男を見上げながら、ようやくそれだけ言った。
 これだけの時間をかけ、少女がようやく言った言葉は、コレだけであった。男はキレた。
「いいから、さっさと質問に応えろ!」
 男は怒鳴った。少女は「キャア」と言い、頭を手で抱え、下を向いた。目には、わずかに涙が浮かんでいた。
 それを見て、男は「ああ、ダメだコイツ」と思った。
 男は、少女のすぐ近くまで歩いて行き、しゃがみこんだ。視点の高さが、少女と一緒になった。

376某スレの809:2004/07/20(火) 21:27
「君は、いつからここにいるの? 教えてくれる?」
 男は、小さな子――幼稚園児くらいの子――に話しかける時の口調で、少女に言った。
 見た目は高校生くらいに見えた。絶対に、中学生未満という事はない。
 こうすると、ようやく少女はまともな受け答えをするようになった。
「わ……私は、私は、」
 少女の声は、どもりがちだった。
「わ……私は、生まれた時からずーっとここに……い……います……」
 少女は、どもりながらもそう言った。
 そして言った。
「あ……あと……私、ママがいないんです……」
「なんだって?」
 男は、眉を寄せながら少女にそう言った。
 男がそう一声発しただけで、少女は怯えの表情を見せた。
「わ……私は、お母さんがいないのに、生まれてきたらしいんです……」
 男は、何も喋らずに、少女の言う事を聞いた。
「そ……それで……ここにくる人達が、ずーっと、私の面倒を見てくれてたんです。それで、私は、生まれてから、ずーっと、ここにいるんです……」



377某スレの809:2004/07/20(火) 21:28
 そう言うと、少女はまただまりこくってしまった。
「お前は、自分がどこで生まれたのか、わかるか?」
 男がそう言うと、少女は物凄い勢いで首を横にふった。「この男の言う質問には、すぐに反応しなければ殺される」。そんな事でも思っているようだった。
「わ……わからないです……」
 男は、少女の背中から生えている「ように見える」羽根に、触ってみた。
「きゃぁっ!」
 少女は、男が羽根に触れると悲鳴を上げて男の手から逃げ出した。そして、部屋の隅に行き、足を抱えて座り込む。
「……やめてくださいぃ……さわらないで下さぁいぃ……」
 そう言うと、男の方に尻を向けたまま、しくしくと泣き始めてしまった。
 男は、自分の手を見た。ついさっき自分の手に触れた感触は、子供の玩具の類には思えなかった。
 だから、
「君は、人間なのか?」
 と男が質問をしたのは、当然の事だった。

378某スレの809:2004/07/20(火) 21:28
「わ……私には、お母さんもお父さんもいません。ひっく……だから、わかりませえぇん……」
「ほう。では、君はどこで生まれたのかな? まさか、この部屋で生まれてきたってわけでもあるまい」
「わ……私は、」
 そこで、少女の口が止まった。
「……どこかの研究室で、生まれた……ひく。はず……です」
 たしかそうだった、というような口調。
「誰の子供として?」
「……ひく。知りません」
「君は、ずっとここに一人でいるのかい」
「……はい……」
「君は、ここから逃げ出そうとした事は、一度も無いのかい?」
「……ひく。一回だけ……ひく。ここを逃げ出した事があります」
「ほう。じゃあ、その時の事を話してくれるかい?」
「……はい」



379某スレの809:2004/07/20(火) 21:28
 私は、ずっとここに住んでいました。日に三回、食事を持った人がこの部屋に来てくれる以外は、この部屋に一人ぼっちでいました。ある日、退屈で退屈で仕方がなかった時に、この部屋の壁をじーっと見つめていたんです。そうしたら、不思議な事に、壁に穴が開いたんです。私にも通れるくらいの……はい。私にも理由はわかりません。けれど、私が壁をじーっと見つめていたら、穴が開いたんです。
 私は、穴から外に飛び出しました。この部屋は二階だったので、地面に落ちてしまいました。……はい。この羽根は、空を飛ぶ事は出来なかったんです。私は空を飛ぶ事が出来ず、地面に落ちました。けれど、何故か体は全然痛くなくて、すぐに立ち上がる事ができました。
 私は、街の中を歩きました。
 ……はい。その時も、裸でした。
 この格好で、街に出て行きました。
 通りに出たら、色々な人がいました。
 私を見て、ポカーンとしている女の人。子供の目を塞ぐ親。苦笑いを浮かべながらも、ジーっと見ていた男の人。その場から逃げ出した人。
 私は、皆さんの驚いている理由が何だか、分かりませんでした。
 しばらくして、誰かが
「あれ! あの女の人、羽根がついてる!」
 と叫びました。ちっちゃい子供でした。
 私は、その声を聞いた時、「えっ? 何かおかしい事なの?」と思いました。
 それから何が起きたか、よく覚えていません。
 気が付いたら、私は研究所に連れ戻されていました。

380某スレの809:2004/07/20(火) 21:29


 そう言うと、少女の口は動きを止めた。
 男は尋ねた。
「……何故、部屋の壁に穴が空いたんだろう?」
「わ、わかりません。……けれど、研究所にいた人達が、『あなたは超能力を持ってるんだよ』って、言われた事があります」
「ふーん……ところで、『日に三回食事が運ばれてくる』って言ってたな? お前は、飯を食べるのか?」
「は……はい。ご飯を食べないと、お腹が減って死んじゃいます。ご飯は、すごく好きです」
 男は、不思議に思った。
「最後に飯が運ばれてきたのは、いつだ? お前はその時から一度も食事を取らずに生きているのか?」
「は……はい。そうです。不思議なんですが」
「どういう事なんだ?」
「私にもわからないんですけど……」
 少女は、「最後に食事が運ばれてきた時」の話を始めた。



381某スレの809:2004/07/20(火) 21:29
 最後に食事を運んできてくれた人は、男の人でした。
 男の人が運んできた食事は、それまでと違う味がしました。
 男の人は、「研究所で作っていた食料がなくなってしまったから、これは近くの店からとってきた物なんだよ」って言ってました。
 ……今までの物よりも、まずかったです。
 ……ただ、その日。普段と違っていた事は、食べ物の味だけではありませんでした。
 男の人は、私が物を食べている間、私の事を、じーっと見てたんです。
「見られながらじゃ食べづらいです……」
 って私が言うと、
「いいから。気にしないで」
 って言われました。
なんだか、私の事を見てるのが楽しかったみたいです。
……ちょっと、嬉しかったです。
ちょっとだけ緊張しながら、私は食べ物を食べ終えました。
そうしたら、男の人が、



382某スレの809:2004/07/20(火) 21:29
「私のここを、舐めだしたんです」
 少女が指で示した部分は、彼女の首筋だった。
「それで、男の人は、私のここを押して、私を床に押したんです……」
 少女が指差している部分は、男が一番触りたいと思っている部分だった。
 男は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
 まさか、その時の事を、これから一つ一つ事細かに説明してくれるってわけじゃないだろうな?
「そうしたら、なぜか男の人は気を失ってしまいました」
 ……え?
「それから、二度と目を覚ましませんでした……多分……男の人は、死んじゃったんだと思います」



「どういう事だ!?」
「……私にも、理由はわかりません……」
「……わからない、って……そいつの体……死体は、どこに行ったんだ?」
「……し、死体は……そ。そう。その男の人の体は、毎日少しずつ減っていきました。体についている肉が、毎日同じ量だけ、まるで機械が燃料として使っているみたいに、減っていったんです。毎日少しずつ体が削れていって、肉がなくなって、臓器がなくなって、最後に骨がなくなりました……」
 言い終えると、少女はまた上目使いで男の方を見上げた。
 少女は、今はもう男の方に向き直っている。そして、瞳はまだ涙に濡れていた。

383某スレの809:2004/07/20(火) 21:30
 男は思った。
 この部屋に、「人間の体を燃料に」使うような、機械はない。
 そう。「機械」は、無い。
「どうして、そいつの体は削れていったんだ?」
 男が聞くと、少女はさっきと同じ上目使いで、
「私には、わかりません」
 と言った。
「ごめんなさいぃ……私にはこれ以上はわからないんですぅぅー。お願いだからそんな怖い顔しないでくださぁぃぃ」
 そう言うと、天使みたいな羽根を持った少女は、また顔を俯かせ、メソメソと泣き出した。
「……おい。お前に一つ聞くぞ」
「何ですか?」
「その男の体が全部無くなったのは、一体いつだ」
 少女は答えた。
「昨日ですよ」



 その次の瞬間です。男の人は、気を失ってしまいました。そして、二度と目を覚ましませんでした。
 そして、男の人の体は、前の人と同じように、少しずつ減っていきました。
 まるで、この部屋にいる一人ぼっちの誰かが、少しずつ食べているかのように。

384イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/20(火) 22:57
おや、オピローグくんか。
結局受験生に戻るとか言ってまだ書いているんだね。
懲りない人だ。

最初から一番自信ない作品とか抜かしてるから見るのすら嫌だったんだが、一応読んだ。
全く意味不明な内容だったけど。
つーか、文章が読みづらい=そもそも内容が訳分からんから。
これで萌えるとか興奮するとかは俺には絶対無理。最後まで読むのも辛かったぞ。
まあ、一次落ちは仕方ないという内容だったな。

385イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/20(火) 23:43
>>某スレの809さん
1:おびえる少女にちょっとだけ。

2:特に文章のつなぎなどでひっかかるとこはなかったかな。読みやすいと思う。

3:結末がダークすぎるかなぁ。例え前半すごい少女に萌えてても、読み終わったら吹き飛んでる気がする。
  あと男が最初から暴力的なのは結末のインパクトを弱めてるんじゃない。

前に晒してあるのも見たけど下地はできてきてると思うよ。アイディアはもう一ひねり欲しい。

386イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/21(水) 06:19
なんか、内容が無かった気がするなあ。
つまらない…は言い過ぎにしても、普通以下の気がした。

感想のことなんだけど、偉そうに決めた感想要求するんじゃなくて、読んで
率直に思った感想を聞く方がいいんじゃない?
プロじゃないんだから。

387イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/21(水) 10:42
>>某スレの809
文章が全体的にぼんやりした印象。「これだけの時間をかけて〜」とか具体的でない表現が多いからだと思う。「きもい」とか「普通に」みたいな若者言葉的な適当さを感じる。それが狙いなのか天然なのかはわからんが、個人的にはひっかかる。三人称でしょ?
少女に関してはまったく萌えません。つか、これで萌えられる人も珍しいだろう。「背中に羽根」とか「素っ裸」とかさ、借り物のイメージにしか見えない。ありきたりというか発想が貧困というか。目新しい部分がない。
男がアパートにたどりついた理由も釈然としない。コンビニ荒らしをしてからなぜアパートにいったのかがわからん。この部分に関する君の説明もまったく不十分。これだったらないほうがいいくらいだ。たぶんきみはシーンに縛られすぎてるんだと思う。少女がいるアパートに男をいかせようとするあまり、それでいて男を乱暴なやつにしようとするあまり、わけのわからない理由と背景を作り出してしまっている。ホラーて雰囲気命みたいなところあるからさ、基本的な部分で違和感があるのはまずいよね。
見た感じ、変にこらなくても男は郵便配達かなんかでいいんじゃない?それだと乱暴な男にはならないかもしれないけど、乱暴である必要もないじゃん。実際暴力描写もほとんどないし。いらないものをカットすれば、もっとよくなると思う。これはどの小説にもいえることだけどね。
で、こういう萌え小説はありか?に関してだが、おれはなしだと思う。すくなくとも重要なのは萌えじゃない。ホラーの要素。萌えはあくまで副産物として考えろ。まあ、そもそも萌えるホラー小説って見たことないけどな。
電撃に送った、ってのはすごいな。いろんな意味で。あそこがこういうの求めてると本気で思ったのか?

3881/3:2004/07/21(水) 18:21
>某スレ809氏
わりと酷評になるかも。
批評が見当違いだったらスマソ。

1.泣いてるとことかは微妙に。
ただ羽根少女、男ともに(悪い意味で)普通やらないような変な行動を取っている。
ストーリーの都合通りに動く人形みたいな感じ。

2.出来なかった。
a.文章が冗長で無駄が多い
・接続詞(「そして」「だが」など)や会話文前後の「〜と言った」「〜と言って」は大体省略出来る。
・至近の文章で同じ単語、同じ言い回しを多用してる。>>374とか特に。
わざとかも知れないけど、やっぱり読みにくい。

3892/3:2004/07/21(水) 18:23
b.キャラクタの行動が不自然。特に「男」が何考えてるのかさっぱり分からない。
「偶然見つけたアパート」にいた少女に「いつからここにいる」といきなり聞くか?
普通「偶然見つけたアパート」の部屋に人間がいたらその部屋の住人だと思うよな。
男が部屋の住人に「いつからここにいる」と真っ先に聞く目的って何?
それとも少女が部屋に不法滞在していると思って、だから聞いたのか?
だとしたら男は何を根拠にそう思ったんだ?
大体男は何故怒ってるんだ? 怒る理由なんてあったか?
>>375の時点でもうこれだけ分からない。
それ以降の文章でも、「母親無しで誕生した」みたいな謎なことを言われても男のリアクションは薄いし、
普通の木造アパートに住んでる少女に「逃げ出そうと思ったことはないのか?」とトンチンカンなこと聞いてるし。
それ以外にも男と少女の変な言動は山とある。
作者の書きたいストーリーのために、キャラを無理矢理動かしてないか?
なんか男も少女も、未来が見えてるみたいな不自然な動きをしてる。
そのキャラクタがその状況に陥ったらどう行動するのか、そして読者にどうそれを説明するのか、もっと考えながら書いていった方がいいと思う。

3903/3:2004/07/21(水) 18:30
c.説明不足。
後半は説明放棄のすっとばし感があった。
また、部屋や少女の外観について具体的な描写に欠けてた。
どんな部屋でどんな羽根よ、と。
大きさは? 形は? どこから生えてる? などなど。
作者にとってはどーでもいいかも知れないけど、読者としては具体的な描写がある程度ないと読んでてイメージがわかないのよ。

3.少女にもっと強烈な人間味(あるいは萌え要素・萌え属性w)があれば可能かと。
あの結末が最も栄えるようなキャラ付けをして、読者に「俺も〜たんの食料になりたい」とか思わせれればしめたもの。

まとめると、アイディアはいいんだけど文章・構成が洗練されてない感じ。
食材の選び方はまあまあだけど、調理の仕方がまだまだ拙い、てとこかな。
地道な鍛練を続けていけば克服出来る部類の弱点なので、
まあ、これからも頑張って下さいです。

391某スレの809:2004/07/21(水) 19:34
>>384
>懲りない人だ。
俺だめ人間ですから(笑)

>全く意味不明な内容だったけど。
まともな内容の物が書けるよう、努力します。
読むのもつらいような物を読ませてしまい、申し訳ありませんでした。

>>385
>あと男が最初から暴力的なのは結末のインパクトを弱めてるんじゃない。
……当初は、もっと違う感じの男を書く予定だったのですが……
うまくいかず、こういうキャラに変えました。
そういうキャラを書く力が無いってゆー事です。

>>386
>感想のことなんだけど、偉そうに決めた感想要求するんじゃなくて、読んで
>率直に思った感想を聞く方がいいんじゃない?
>プロじゃないんだから。
偉そうに見えたんだったら、すいません。
どうしても聞いておきたい事だったもので……

392某スレの809:2004/07/21(水) 19:34
>>387
>狙いなのか天然なのかはわからんが、個人的にはひっかかる。三人称でしょ?
天然で、やっちまいました。
出来る限り修正していきます。

>ありきたりというか発想が貧困というか。目新しい部分がない。
そういう部分を、思いつけなかったというのが実情です。

>この部分に関する君の説明もまったく不十分。
確かに、読み返してみるとその通りです。
何度も書いた事ですが、出来る限りそういうミスをなくすよう努力していきます。

>すくなくとも重要なのは萌えじゃない。ホラーの要素。萌えはあくまで副産物として考えろ。
ホラー小説を書いたつもりは、まったくありませんでした。
……「萌え小説を書く」と何よりも先に決めて、そこからストーリーも作っていったのに、そういう評価をされるのは、ある意味アレです(笑)

>あそこがこういうの求めてると本気で思ったのか?
わからなかったから、短編連作の一つとして送りました。
自分に萌え系の話が書けるかどうか、調べてみたくて書いた、というのも理由の一つですが。

393某スレの809:2004/07/21(水) 19:45
>>388-390
>a.文章が冗長で無駄が多い
今後、気をつけます。
推敲する時に、何でそういう所に気付けないんでしょうかね。ホントに。

>キャラクタの行動が不自然。特に「男」が何考えてるのかさっぱり分からない。
キャラクターに関する描写を、もっと細かくやるべきだったと、反省しています。(男は怒りやすい気質だったとか、男が何故そういう質問をしたかの、男の心情描写とか)
今後は、そういう読者の疑問点に気付けるようがんばります。

>c.説明不足。
>作者にとってはどーでもいいかも知れないけど、読者としては具体的な描写がある程度ないと読んでてイメージがわかないのよ。
今後、気をつけます
って、このセリフ言うの何度目かわからないのですが……

>3.少女にもっと強烈な人間味(あるいは萌え要素・萌え属性w)があれば可能かと。
努力します。


皆さん、批評、ありがとうございました。

394387:2004/07/23(金) 02:07
>>392
お、ちがうのか?萌え要素を含んだホラーだと認識してたんだけど。きみ自身も「こんなオチはありなのか」っていってるし、そのへんのバランスも考慮に入れての批評がほしいのかと思っていた。必要ないならすまなかった。
あとすこし疑問なのが、短編連作(複数の短編がまとまってひとつの作品になっていると解釈した)って規定違反じゃないのか?というところ。たいていどこの新人賞でも完結した「一つの」物語であることってのが暗黙の了解だった気がする。たとえば電撃の規定を例にとってみると、欄外に「複数応募可。ただし1作品ずつ別送のこと」と書いてある。もちろんおれの解釈がまちがっている可能性もあるので、確認しておいたら?

395鶴田:2004/07/23(金) 19:51
 私は胸元のコサージュをいじりながら、呆然として鏡を見ていた。
 オレンジ地に赤のフラワープリントドレス。オレンジのヒール。眉毛は緩やかに弧を描き、唇には薄いピンクのリップまで塗っている。まるで映画に出てくるお嬢様。
 私はメイクなんてほとんどしたことがない。昔、内緒でママのリップを借りたことがあるんだけど、そのときはお化けみたいになってしまった。今日はそれに加えてドレスにヒールだ。ジーンズにシャツが制服の私にとってはあまりといえばあまりの変わり様。初めて尽くしフルコース。まったくの別人になったみたいで落ち着かなった。嬉しい気分ももちろんあるけど、どちらかといえば恥ずかしさが先に立ってしまう。
「……私、やっぱりこういうのやめる」
「「似合うわー。希ちゃん。手伝ったかいがあるわね」」
 多重音声がドレスルームに響く。鏡に私と同い年くらいの女の子が二人、映っている。
 赤くて裾にレースの入ったドレスを着ているのがユリ。枝毛のないまっすぐな髪が背中まで届いている。小動物のようにくりっとした目で私を見ている。
 青くて裾にレースの入ったドレスを着ているのがルリ。枝毛のないまっすぐな髪が背中まで届いている。小動物のようにくりっとして目で私を見ている。
 一卵性双生児ということもあってか、二人はよく似ている。背格好も顔も声も、ほとんど同一人物のものだ。しかも天使のようにかわいらしい。
 ヒールを脱ごうとすると、二人に止められた。
「だめよー。せっかく似合ってるのに」
「そうよー。ヒール高いからチビなのも目立たないのに」
「ドレスもゆったりしてるから、ちょっとやそっとのずん胴でもバレないのよね」
「ペチャパイでも平気なのよね」
「「ねー」」顔を見合わせてハモる。
「やっぱり脱ぎます……」
「だめだったら(にこにこ)」
 がしっ。
 双子の手が肩をつかんでくる。華奢な外見からは想像もつかないほど力が強い。
「文句いうと殺すわよ?(にこにこ)」
「こわっ。笑いながらいうところがこわっ」
「そんな希ちゃんには特別に、どちらがユリか見分けるいい方法を教えてあげるね」悪魔のように微笑むユリ。
「あら、そんな便利な方法あるの?ユリ」
「簡単よ。かわいいほうがユリ」
「てめえ殺すぞこのヤロー」
 ルリが笑いながらユリを殴った。グーで。
 二人が殴り合いの喧嘩になった隙に、私はそっとドレスルームを抜け出した。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 前回同様、リレーの一部抜粋。
 冒頭よりちょっと進んだシーンなので、希の説明は済んでいます。
 双子キャラを書くのは初めてなものであまり自信がありません。とくにそのあたり中心にお願いします。

396無名人:2004/07/23(金) 23:16
皆様批評ありがとうございます。
あの会話はやっぱり軽過ぎて内容にそぐわないのでので完全にカットし、まず
は主人公が何故ゾンビを憎んでいるのか、彼の過去を描く形で説明するように
します。
他の登場人物は、この後の東京港での戦闘シーンで登場させ、個々の役割を
見せることで紹介していくことにします。

>ライトノベルにして欲しくないと思うのは自分だけかな。

個人的に一番効いたのはこの一言ですね。ロメロ作品のように冷徹かつ非情
な人間描写を心がけるようにします。

397イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/24(土) 15:57
>>395
描写が紋切り型ではあるけれど、双子キャラの魅力は充分伝わってきたよ。
ただ、コサージュっていうのがなんなのか分からなかった。
自分はファッションに極端に疎い方でもないです。
いま調べてみたら胸元の花飾りということなんで、
その通りの言い回しで充分なんじゃないかな。

>>396
>他の登場人物は、この後の東京港での戦闘シーンで登場させ、
>個々の役割を見せることで紹介していくことにします。
そのやり方に賛成。よかったらまた読ませてください。

398イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/24(土) 20:51
>>395
読みやすいんだけど、ちょっと古臭いかな。
>昔、内緒でママのリップを借りたことがあるんだけど、そのときはお化けみたいになってしまった。
とくにこれは『今』にはそぐわないような。あ、現代物じゃないのかな?
あと、個人的には「「」」とかわざと全く同じ文をくり返して
双子のそっくりぶりを強調するのとか
『もうすでに誰かがやってる、ちょっと変わった表現』
は評価できなかったです。新人賞に出すには不利なのでは。
比喩もありきたりなものばかりだしなぁ。
一箇所だけでいいから、「お、これは新鮮な表現」と思える描写が欲しいですね。

399鶴田:2004/07/26(月) 18:30
批評ありがとうございます。
>>397
なるほど、そっちのほうがわかりやすくていいですね。
>>398
表現が淡白すぎました。もうすこし頭をひねってみます。
リップのところですけど、現代物じゃないと思われるほど古いですか?なんとなく女の子がやりそうな行動のパターンとして頭の中にあったんですけど。それ自体が古いのかな……気をつけます。

400イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/26(月) 19:14
「ママのリップを〜」という表現を見て、
現代ものじゃないなんて思う人はいませんよ^^

401398:2004/07/26(月) 22:40
うをっ(゜∀゜)。変なこと書いてた。スマソ
現代物じゃないと思ったんじゃなくて、80年代ぽいと感じたのです。
いまどきは小学生でもネイルとか楽しんでお洒落してるし(しかもかわいい)
ママンのリップでなく、ふつうに自分用買ってもらってたりするしね。
なんつーか、「こっそりお化粧して失敗した」がなさそうなわけです。
ただ単に、いままで化粧に興味なくて、今回初めて(強制的に)されちゃった、だけのほうがいいのかも。

402猫丸:2004/07/27(火) 08:39
 今回の萌王に送った作品です。まず受賞は無いと思われるので、貼り付けます。
以前に頂いた批評を受けて修正したところもありますが、できなかったところも
あります。その点はどうかご了承ください。
 批評についてですが、やや厳しめにお願いします。ストーリーから文章まで、気
になったところはどんどん指摘してください。あと、良かったところ、悪かった所
をそれぞれ指摘してくださればとても嬉しいです。

友達の家からの帰りだった。誰もいない夕方の小道を遅足で歩いていると、どこからか石焼き芋の売り声が聞こえてきた。近付いているなら買ってもいいかな、と思ったけど声は徐々に遠ざかって、しばらくすると吹き付ける北風にかき消された。多分、さっきまでいた友達の家の方に行ったんだろう。俺は大きくため息をついて、薄暗い道をまた歩き始めた。
 少しして曲がり角を過ぎると、夕闇のすぐ向こうに低い山のシルエットが浮かび上がった。高さを考えたらむしろ丘と言ったほうがいいと思うけど、この辺りでは一応“鎮守の山”なんて呼ばれている。と言うのも、この山のふもとに十市神社という小さな神社があるからだ。
 それにしても、この辺りは昔とまったく変わっていない。今とちがって神社へちょくちょく遊びに来ていた小学校の頃と、風景はもちろん、寒さの具合、風に乗ってくる埃の匂いまで同じ気がする。ただ、いくら環境がそっくりでも、俺自身はそうはいかない。今の俺は、あの頃とはまったく変ってしまった。無邪気な心も、毎日を楽しいと思う気持ちも何もかも――――――無くしてしまった気がする。
 そんなことを考えていると、俺は神社のすぐ前にいた。眺めてみると、相も変わらず小さい神社だった。実際、木肌も黒ずんだ本堂は並の家と変わらない大きさだし、石の色そのままの鳥居も人二人分くらいの高さしかない。それでも枯れ木の目立つ山を背景に立つその姿は、風情がある以上に霊験あらたかで、見ていてみすぼらしい気はしなかった。けれど、
 ……あれ?
 何かが妙だった。あまりに不自然で、かえって気づきにくい、そんな変化が起きている気がした。気になる俺は、狭い境内を一面見渡す。本道、参道、手水舎、鳥居……あ。
 一匹、足りない。
「初詣でのときは…二匹ともいたよな?」
 そう。本来なら二匹で向かい合っているはずの狛犬は、今や右側のがただ一匹で虚空を見つめていた。一匹は、壊れでもして捨てられたのかもしれない。そう考えて残っているほうを見ると、こっちも今にも壊れそうな感じでヒビが入っていた。狛犬は魔除けのためにあると言うけど、一匹、それも壊れかけので魔除けの役割は果たせるのだろうか。大きく開かれた目を見ていると、何となく狛犬が可哀そうに見えてくる。頭を撫でてやると、手に伝わる石の感触がやけに硬くて冷たかった。
 鳥居の前から境内を見ていると、初詣でのとき以来お参りをしていないことに気がついた。ここまで来てお参りしないというのもあれかな、と俺は鳥居をくぐる。とりあえずは、あんまり進まない受験勉強について祈ってみよう。手を洗ったり水を飲んだりというのは、面倒くさいから省略する。
 賽銭箱に五円玉を放り込んで、まずは景気良くひも(?)を振る。静かな境内に鈴(?)の音が響き渡ったのを確認して、俺は目を閉じた。手を合わせて祈る内容はもちろん、
 (金を積む以外のどんな手を使ってもいいから、大学に合格させてください。できれば国立、それも地元が…)
 五円ぽっちの賽銭であまりにも厚かましい願をかける俺。これじゃあ、千円くらいは奉納しないといけないかな。そんなことを思い始めたとき、

403猫丸:2004/07/27(火) 08:41
 《ほんっと、厚かましいなあ》
どこからともなく、女の子のからかうような声が聞こえた。本堂の中からじゃない。ていうか俺、願い事を口にした覚えはないのに。
《かなり無茶なお願いだけど、特別にかなえてあげる。そのかわり、約束して欲しいことがあるの》
声は相変わらず聞こえ続ける。不思議に思って辺りを見渡してみても、誰もいない。受験勉強のストレスで、幻聴が起こったのか?
《約束はかんたん。お参りが終わったら、わたしといっしょに遊んでくれればいいの。どうする?約束する?》
声は、頭の中で響いているみたいだった。普通に考えれば、これは間違いなく幻聴だろう。でも、仮にそうじゃないとしたら……
神様の声?
考えてすぐ、馬鹿馬鹿しいと思った。神の声なんてものは、よっぽど信心深い人にしか聞こえないはずだ。少なくとも、俺には無理だろう。
《約束するの?しないの?》
女の子の声が、ちょっとだけ苛立ちを帯びる。もう、何が何だがわからない。こうなったら、ものは試し。<神の声>に答えてやろう。
「約束します。」
俺がそう言うと、声は二度と聞こえなくなった。俺は風が落ち葉を蹴散らす音を聞きつつ、しばらく茫然となる。約束って言うけど、破ったらバチでも当たるのだろうか。幻聴なら、行くのはやっぱり精神科か。
いいかげん悩んでいても仕方ない、と俺は我に返る。それから、来た道を帰ろうとして、
「ずいぶん長いこと、考えことしてたね」
参道に立っていたのは、まっすぐな黒髪を長く伸ばした、十歳くらいの女の子だった。この神社の巫女さんなのだろうか。初詣での時によく見る、紅白の装束を身に着けている。

404猫丸:2004/07/27(火) 08:41
 《ほんっと、厚かましいなあ》
どこからともなく、女の子のからかうような声が聞こえた。本堂の中からじゃない。ていうか俺、願い事を口にした覚えはないのに。
《かなり無茶なお願いだけど、特別にかなえてあげる。そのかわり、約束して欲しいことがあるの》
声は相変わらず聞こえ続ける。不思議に思って辺りを見渡してみても、誰もいない。受験勉強のストレスで、幻聴が起こったのか?
《約束はかんたん。お参りが終わったら、わたしといっしょに遊んでくれればいいの。どうする?約束する?》
声は、頭の中で響いているみたいだった。普通に考えれば、これは間違いなく幻聴だろう。でも、仮にそうじゃないとしたら……
神様の声?
考えてすぐ、馬鹿馬鹿しいと思った。神の声なんてものは、よっぽど信心深い人にしか聞こえないはずだ。少なくとも、俺には無理だろう。
《約束するの?しないの?》
女の子の声が、ちょっとだけ苛立ちを帯びる。もう、何が何だがわからない。こうなったら、ものは試し。<神の声>に答えてやろう。
「約束します。」
俺がそう言うと、声は二度と聞こえなくなった。俺は風が落ち葉を蹴散らす音を聞きつつ、しばらく茫然となる。約束って言うけど、破ったらバチでも当たるのだろうか。幻聴なら、行くのはやっぱり精神科か。
いいかげん悩んでいても仕方ない、と俺は我に返る。それから、来た道を帰ろうとして、
「ずいぶん長いこと、考えことしてたね」
参道に立っていたのは、まっすぐな黒髪を長く伸ばした、十歳くらいの女の子だった。この神社の巫女さんなのだろうか。初詣での時によく見る、紅白の装束を身に着けている。

405猫丸:2004/07/27(火) 08:43
……すみません。二重にカキコしてしまいました。

「わたし、舞奈っていうの。そっちは?」
「僕は、名瀬幸俊だよ。みんなはユキって呼んでるけどね。」
「ふうん。じゃあ幸俊さんのこと、ユキくんって呼んでいい?」
「うん。いいけど。」
頷いてあげると、舞奈と名乗った女の子は、人懐こそうな笑顔を振りまいて喜んだ。その表情を作る大きな瞳を可愛いなと思いつつも、俺はなんとなく釈然としない。舞奈ちゃんの声は、どこかで聞き覚えがあった。
「ねえ、ユキくん。約束だよ。私と一緒にあそぼ。」
「約束…(!)」
思い出した。舞奈ちゃんの声は、さっきお参りしてる時に聞こえた声と全く同じだった。
ああ、と俺は心の中で納得した。ようするに、お参りのときの声は幻聴でも神様の声でも何でもなく、単に舞奈ちゃんがどこかに隠れて言っていたわけだ。わざわざ隠れたのは、子供らしいイタズラ心によるものだろう。
「ねえねえ、遊ぼうよぉ。」
そう言って、舞奈ちゃんは俺の腕を引っぱり引っぱり。正直、今は一分一秒が惜しい身だけど、ここは舞奈ちゃんのかわいらしさに免じてOKしよう。それに神サマとの約束だし。
「うん。いいよ。」
「ほんと?じゃあ、来て欲しいトコがあるんだけど…」
俺の手首を握ったまま、舞奈ちゃんは遠慮がちに俺を見つめてくる。
 と思うと、舞奈ちゃんの目線が脇に向いて、
「あそこの階段を昇っていくんだよ。」
舞奈ちゃんが指差したのは、本堂の裏手から山の中へ伸びる階段だった。幅は、二人がどうにかすれ違えるくらいだろうか。段差もかなり急だったから、止めたほうがいいかなとも思ったけど、舞奈ちゃんは特に気にした様子も無い。まあ、この神社の子なら慣れた道だろうと、俺は何も言わずについていくことにした。

406猫丸:2004/07/27(火) 08:45


舞奈ちゃんに案内されたのは、山の中腹にある狭い空き地だった。草の一本も生えていない、土むき出しのそこには小さなほこらがぽつんと立っていた。
「こっちだよ、ユキくん。」
先に来ていた舞奈ちゃんは、ほこらの隣からこっちに向けて大きく手を振る。一体、何をしようというんだろう。とにかく行ってみると、舞奈ちゃんは急に真剣な顔をして、
「ねえユキくん、これから見ることは、他人に絶対言わないって約束してくれる?」
あまりに唐突な言葉だったから、さすがに面食らった。これも、遊びのうちなのだろうか。まあ子供の言うことだし、とりあえずは頷いてやる。そうすると、舞奈ちゃんはまた楽しげな表情に戻って、
「じゃあ、指きりげんまんしよっ。」
正直、この歳で…と思ったけど、舞奈ちゃんは小指をいっぱいに突き出して俺の指を待っている。ここまでされたら断るわけにもいかないだろう、と俺はお互いの指を絡め合わせた。
「うそついたらはり千本の〜ますっと。」
お約束の向上を述べた後も、舞奈ちゃんは絡めた指を離そうとしなかった。溶けそうなくらいに細くて暖かい指をかわいいな、と思っていると、舞奈ちゃんは照れ笑いのようにえへへ、と呟く。指を絡め合わせているのが、楽しいのだろうか。それとなく指を外そうとしても、舞奈ちゃんは名残惜しそうに俺の顔を見つめて、それを引き止めた。
「これで、約束は大丈夫だよね。ユキくん。」
「うん。」
そう言ってやると、舞奈ちゃんはゆっくりと指を外して満足げに微笑った。それにしても、これからどうするつもりなんだろう。遊ぶにしても、場所さえろくに無いんだけど。
そんなことを考えていると、舞奈ちゃんはおもむろにほこらの開き戸に手を伸ばした。
「ちょっと、そんなトコ開けたら…」
「へいき。」
そういや、舞奈ちゃんは巫女さんだから、開けてもバチは当たらないだろう。ちなみに、俺も小さい頃開けたことがあるけど、中には何も入っていなかった。神様は目に見えないから、と言ってしまえばそれまでかもしれないけど。
軽い音を立てて、扉が開く。俺は何も無いはずの内部を覗き込み、
そこは、光でいっぱいだった。
「……ッッ!」
あまりの眩しさに、俺は両腕で目をふさぐ。ほこらの中からは、真っ白な閃光があふれ出していた。
「ユキくん、ユキくん!」
脇腹をつつかれて、俺は視線をほんの少し横に向ける。その先で、舞奈ちゃんはどういうつもりか、開いた手をこっちに向けて差し出していた。
「舞奈ちゃん、この光って…。」
「説明はあとだよ。いまは、手をつないで。」
本気の口調で言われて、俺は何も分からないまま舞奈ちゃんの手を握る。と、その瞬間気持ちが芯から安らぐような温かみが手に伝わった。
「それじゃあ、行くね。」
どこへ?、と口を挟む余裕も無かった。光は一瞬にして俺と舞奈ちゃんを包み込み、視界のすべてを奪ってしまう。これは、夢なんだろうか。夢なら、早く醒めてくれないかな。そう思いつつ、俺は徐々に意識を失っていく。その中で、舞奈ちゃんの手だけが最後まで温かかった

407イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/27(火) 15:45
ほへ、これで終わりですか?
時間見る限り、もう続きはないのかな。

とりあえず、長さ的にSSって感じなのかな?
ただ、SSに一番大切な落ちの部分がないなぁ、と感じました。
物語であるならば、起承転結でいったら、起の部分だけ抜き出したような印象です。

文章云々は、正直、ラノベでは問題ないと思いますから、話の面白みと、キャラの魅力が重要かと思います。
その点で、キャラの描写が少ないのはちょこっと頂けないかな、と思いました。
エロゲの主人公並に存在感がなさそうな感じのユキと、巫女属性ってだけの舞奈。
主人公の描写もある程度は必要だと思いますし、巫女って書けばいいってもんじゃなくて、巫女なら衣服についての描写とかも入れたほうがより萌えやすくなるかと思います。

408猫丸:2004/07/27(火) 17:31
>>407

ご指摘のとおり、これは冒頭です。全部で60枚ほどの長さなので一部だけを
貼り付けましたが、続きを待っていたならごめんなさい。追って貼り付けます。

409猫丸:2004/07/27(火) 18:44


なんだか知らないけど、あったかいところだった。気付くと俺は、意識を失う前とは全然違う風景の中にいた。辺りは山どころか青々とした草はらで、季節も春の半ばくらいな気がする。そのうえ、少し離れたところには竹垣に囲まれた、平安時代の貴族が住むような建物があって、どことなく別世界的な趣を感じさせた。
(ここは……どこなんだ?)
後ろの木にもたれて座り込んだまま、俺は錯綜する思考を整理しようとする。そもそも、ここへ俺を連れてきたのは舞奈ちゃんだ。ということは、舞奈ちゃんはここのことを知っている……?
そう考えて、俺は舞奈ちゃんを探そうと立ち上がる。と、その時。
「気がついたんだね、ユキくん。」
聞き覚えのある声に俺は一安心。振り返ると、舞奈ちゃんが木の影から頭だけを突き出していて・・・・・・
 思考が、止まった。
「ま、舞奈ちゃん……?」
自分の目を疑いつつ、俺はうわごとのように言葉を漏らす。舞奈ちゃんの頭の上には、犬についているような白い耳が二つ、確かに生えていた。
「なに見てるの?」
木の陰から出てきた舞奈ちゃんは、きょとんとして俺を見つめる。それでも、頭をじいっと見られていたらさすがに気付いたらしい。舞奈ちゃんは、自分の耳を軽くつまんで、
「似合ってるかなあ?」
笑顔を向けられても、こっちとしては何とも言いがたい。ていうか、その耳はなに?いつ生えたの?口に出して言おうとすると、舞奈ちゃんは褒め言葉を求めるような表情で、頭のわりに大きな耳をぱたぱたさせ始める。その可愛らしさに、出かけていた言葉は一瞬で止まって、
「尻尾もあるんだよ。」
機嫌よく言って、舞奈ちゃんはその場でくるりと半回転して見せた。なるほど、はためく緋袴の腰元からは、耳と同じく犬みたいな白い尻尾がぴょこんと突き出ている。
「ねえねえ、似合ってる?」
舞奈ちゃんは尻尾を左右にふりふりして、肩越しにこっちを振り返る。似合ってるかって訊かれたらそりゃあ……。
 俺は、耳と尻尾に対する違和感が晴れないながらも、本音のままに言ってあげる。
「似合ってるよ。すごくかわいい。」
「ほんと?嬉しいなあ。」
よほど嬉しいのか、こっちへ向き直っても、尻尾がせわしなく動いているのが見える。こんなところは、犬とまったく同じだ。
 ……違う!感心してる場合じゃない!!俺は気を取り直して訊いてみる。
「ねえ、舞奈ちゃん。その格好は…なに?」
「ええっと…どう説明すればいいのかな…。」
人差し指を口に当てて、虚空を見つめる舞奈ちゃん。黙っている間がやけに長く感じる。
 妙な緊張を感じつつ、俺は舞奈ちゃんの言葉を待つ。そして、無邪気な表情で放たれた言葉は、
「わたし、十市神社の神サマだから♪」
「……は?」
「だから、わたしは神サマなの。こう見えても、けっこう偉いんだよ。」
そう言って、舞奈ちゃんは腰に両手を当てた姿勢で胸を張る。それに合わせて耳が動くのを眺めながら、俺は、今の状況をなんとか理解しようと考えを巡らせた。そもそも、ことの始まりは舞奈ちゃんがほこらの扉を開けたことで、その後俺はここに来て……
「信じてもらえないみたいだね。ま、いいや。話だけは聞いてね。」

410猫丸:2004/07/27(火) 18:46
黙り込んでしまった俺を見かねたのか、舞奈ちゃんはほんの少し呆れた様子で続ける。
「ここへ来る前に通ったほこらね、あれは神サマが住む世界への入り口なの。普段はただのほこらなんだけど、私たち神サマが霊力をこめたときだけ、あんな光が出て門の代わりになるの。それでね……」
と、そこで舞奈ちゃんはとびきりの笑顔になって、
「ここは、わたしの家の前なんだよ。」
なるほど。そう言われてみれば、いかにも神様が住んでいそうな風情ある家……
 考えて、俺は舞奈ちゃんの顔を見る。こっちを見つめる瞳に、嘘はなさそうだった。
 はっきり言って、舞奈ちゃんが神様だということも、ここが神様の世界だということも、未だに信じられない。でも、夢を見ているのでない限り俺が別世界にいるのは間違いなくて、そのつじつまを合わせるには、舞奈ちゃんが神様だと認めてしまうしか無いのかもしれない。
「やっと信じてくれたみたいだね。」
俺の気持ちを見透かしたのか、舞奈ちゃんは小首をかしげて笑いかける。こうなったらもう、信じるしかないだろう。でも、その前に一つ。
「ところで、神様って、僕みたいな普通の人に見えるものなの?」
「ううん。普通は見えないよ。でも、今回はわたしが霊力を使って見えるようにしてるから。」
「それって、やっぱり……?」
「そ。ユキくんと一緒に遊ぶためだよ。ちょっとした予知能力で、ユキくんが今日この時間ここに来るのも知ってたしね。」
……なんか俺、ずいぶん好かれてないか?まあ、小さい女の子の姿をしているとはいえ相手は神様だから、ここは喜ぶべきなんだろう。それにこの神様、姿も性格もなかなかに可愛らしいから、しばらく付き合ってあげてもいいかもしれない。俺は、できるだけ優しく笑顔を作って、
「それじゃあ、舞奈ちゃんの言うことは全部信じるよ。で、最後に聞くけど、僕はこの世界から帰れるんだよね?」
「うん。心配しなくても、ちゃんと帰してあげる。」
だったら問題ない。俺は、約束どおり舞奈ちゃんと遊んであげようとして、
 ……そうだ。
「ねえ、舞奈ちゃん。そもそも、どうして僕と遊ぼうって思ったの?」
言った途端、白くて大きな耳がぴくんと動いた。舞奈ちゃんは目線を脇に向けて、うつむきかげんに
「……言ってあげない。」
消え入りそうなその声には、なぜか恥ずかしさと悲しみがない交ぜになっている気がした。けど、それも束の間、舞奈ちゃんはまた明るい表情を見せてくれたから俺もほっとして、
「じゃあ、そろそろ遊ぶ?」
「うん。でも、その前にあそこでお清めだよ。」
言われて舞奈ちゃんが指差したほうを見ると、舞奈ちゃんの家から少し離れたところに、こぢんまりとした手水舎があった。普通、神社の境内にしか無いはずなのに。
「家の外に出たときには、身を清めてから入るってのが決まりだからね。」
う〜ん。神様が住んでいる家というのは、普通の家とはやっぱりどこか違う。そりゃあ、神様が穢れてたら話にならないけどさ。
「ま、そういうことならやっちゃおうか。お清め。」
「うんっ!」
元気よく言って、舞奈ちゃんは手水舎へ走っていく。その後ろ姿で揺れる尻尾は、いかにも子犬みたいで見てて飽きなかった。

411猫丸:2004/07/27(火) 18:48
手水舎を使うのは何年ぶりかな、と思いつつ俺はついていく。と、その途中、
「ねえ、ユキくん。手水舎の正式な使い方、知ってる?」
「ううん。ていうか……、そんなのあるの?」
「一応、ね。」
会話してて、かなり気まずくなった。神様を前にしてのこの態度、ひどく罰当たりで失礼な気がする。ここは丁重に謝って、正式な使い方を習うべきか。そう思っていると、
「気にしなくていいよ、ユキくん。わたしも知らないから。ユキくんが知ってたら、教えてもらおうかなって思ったんだけどね。」
……神様が知らなくていいのか?清めの儀式もずいぶんいい加減なものだ。まあ、いいけどさ。
 とにかく俺は、決まりなんか無視した作法で身を清める。飲んだ水が心なしか甘い気がしたのは、神様の霊力のせいだろうか。
 で、舞奈ちゃんを見てみると、
「んー、んー。」
切なげな声を上げて、必死に背伸びする舞奈ちゃん。ひしゃくが高い位置に吊るされていて、舞奈ちゃんの背丈では届かないみたいだ。見てるとけっこうほほえましい姿だったけど、放っておくと怒られそうな気がする。俺は笑いを声に出さないようにして、水をすくったひしゃくを手渡してやった。
「ありがとう……。」
恥ずかしそうにこっちを見上げてから、舞奈ちゃんはひしゃくを口に近付ける。すると、顔が小さいものだからそのほとんどがひしゃくに隠されて、
 ごち。
 なんだか、とてもかわいらしい音がした。見ると、舞奈ちゃんは恨めしげにひしゃくのふちを見つめている。どうやら、水が入ったひしゃくの重みを支えきれなくて、額に当ててしまったらしい。
「ぷっ。」
思わず吹き出すと、舞奈ちゃんは顔を真っ赤に染めて俺をにらんだ。ひしゃくをどけた口回りには、さっきのでこぼれたのか、水がちょっと散っている。
「ごめんごめん。いま拭いてあげるから。」
「……自分でやるからいいもん。」
口を尖らせて、舞奈ちゃんは巫女装束の袖で口元をぬぐおうとする。でも、服を汚したらいけないだろうと思って、俺は舞奈ちゃんの腕を握ってそれをやめさせた。
「服の袖で拭いちゃだめだよ。じっとしてたら、すぐに終わるから。」
「うん……。」
てっきり、ハンカチを奪い取ってでも自分で拭くと思っていたのに、舞奈ちゃんは素直に頷いた。意外に思いつつも、俺は舞奈ちゃんの口元を拭き始めるけど、これがなんとも言えず照れくさい。小作りな唇なんかを見てると、まるで可愛い妹の世話をしてるみたいに思えてくる。

412猫丸:2004/07/27(火) 18:53
「……これでよし、と。今度はこぼさないように気をつけてね。」
「うん。」
照れた顔を見られたくなかったのだろうか。舞奈ちゃんは、素直に頷いたもののすぐに後ろを向いてしまう。神様だから正確な歳は分からないけど、こんなところは外見どおり子供らしい。
で、俺は、二つのひしゃくを元の位置に戻してたんだけど、
(ん……?)
ひしゃくを吊るした位置を見て、俺は気付いた。両方とも、舞奈ちゃんでは届かない高さだった。でも、家に入るときにここで必ず身を清めるということは、 舞奈ちゃんはいつも誰かにひしゃくを取ってもらってたことになる。まあ、神様とはいえ舞奈ちゃんの見た目は小さな女の子。親と一緒に暮らしていても、何の不思議も無い。となると、俺は何人(?)もの神様が住む神聖このうえないお屋敷に招待されているのか?
……考えたら、緊張してきた。
「ユキくん?」
隣では、舞奈ちゃんが不思議そうにこっちを見上げている。 俺は、緊張を顔に出さないよう、表面だけの笑みを造ってみせる。どうか、ご利益がありますように。
「早く行こうよ。ね?」
「う、うん。」
頷いて俺は、門の中に入っていった。

ここまででちょうど半分ほどです。長くてすみません。とりあえず、ここまでの
批評をお願いします。

413猫丸:2004/07/27(火) 18:55
文章の始まりは402からです。

414イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/28(水) 03:46
>>猫丸
さすがに長いな……一気に全部は無理なので、ぱっと目についたところから。
会話文の「」では、最後に「〜だった。」のようにしなくてもよい。
402の冒頭部分でさっきまでいた友達のところ〜 とあるけど、「さっきまでいた」はいらない。なくてもわかる。
405の人懐っこそうな笑顔を振りまいて喜んだ〜 のところ、振りまいた〜はおかしい。その場には舞奈と主人公しかいないわけだし。
うなずいてあげると〜 とか、細かい部分なんだけど主人公が偉そうな気がして嫌かも。そりゃあ年下の子供みたいな女の子なんだろうけどさあ。「〜してあげる」とか頭の中で思うかな?普通に「うなずくと〜」でよくない?
406 冒頭で壊れた狛犬は出してあるし、読者はこの時点で女の子が狛犬少女であろうと推測している。なので動作はすでにこの時点で犬っぽくてもいいのではないだろうか。
410 予知能力は軽すぎるかなあ。いつ来るかもわからないけど、どうしても主人公に会いたくてずっと待ってた、のほうがいじらしいと思う。忠犬ハチ公みたいに。そうした場合ストーリーに支障があるかもしれないが。

あとは407氏のいうとおりパンチがたりない。主人公の陰が薄すぎるのが問題なんだと思うんだよね。一人称の主体がおとなしいから、ストーリーもゆっくりおとなしくなってしまっている感じ。もうすこしなんというか、いい意味で暴れてみたら?殻を破るつもりでさ。
舞奈もアクティブに感情の起伏を激しくしたほうがいいかな。自分に会ったことがある(だよね?)のを忘れている主人公に噛みつくとか。まあそこまでいくとやりすぎかもしれないし、正直好みの問題なのかもしれんが、個人的にはそれくらいの動きはほしい。でなかったら「くーん」とか悲しげに鳴いたり(犬っぽすぎる?)。

415鶴田:2004/07/28(水) 19:24
>>401
そうか……いまどきの小学生はそうなのか……もう歳かな……ふ……。

>>402
文章で気になるところはありませんでした。読みやすいと思います。
ストーリーに関しては最後まで読んでいるわけではないのではっきりしたことはいえません(この後の展開次第だと思いますし)。それでもあえてあげるなら407、414さんのいってるようにユキのアクが足りないのではないでしょうか。舞奈の特殊性や萌えを引き立たせるためにももうすこし会話が膨らむようなキャラにしたほうがいいと思います。
たとえば409の最後のほうで、

「だから、わたしは神サマなの。こう見えても、けっこう偉いんだよ」
「おう小娘。受験生舐めてんじゃねえぞ。このちんちくりんが、どの面下げて神サマだと?ざけんな、賽銭返せ。今すぐ俺の千円返せ」
「いたた、痛いよ。痛い。耳引っ張らないで。というか金額増えてるし」
「うるせえよ、こちとら過酷な受験戦争を戦ってんだ。将来この日本を背負って立つ愛国の戦士様なんだよ。コスプレマニアの小娘が、耳のひとつやふたつもげたところで文句いうな……ってあれ、もげねえな。生意気に強力な接着剤使ってやがる」

とか。上は極端な例ですが、ノイローゼの受験生はこういうふうに捉えることもできると思います。

416イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/29(木) 02:05
>>402猫丸さん
 「筋が弱いかなあ」という点で他氏に同意。
 その対策として「主人公への魅力づけ」は出てるので、漏れは別案を。

 この話、障害がないんだわ。だから、話のメリハリが弱いように感じられてしまう。
 まあ、そういう話も小咄系統としてありなことはありなんだけど、ちょっとこれでは
弱い。なもんで、障害を入れることをお勧めする。

 障害(トラブル)と言っても、簡単なものでいいんだわ。
 例えば――
・主人公は急いで帰らなければならない。
 模試が翌日とか。ところが、遊んでもらいたい舞奈が主人公の大切なものを隠して
 しまう。そこで主人公は、言いなりになって遊んでやるふりをしながら、隠された
 ものを探す。もちろん舞奈は邪魔してくるんで、それを誤魔化しながら探す必要あ
 り、とか。
・舞奈が親しい人にそっくり。
 例えば、死んだはずの妹とか。そうすると、「本人?」とか「どういう繋がりだろう
 ?」とか色々気になることが出てくる。そこで本当のところはどうなのか、その真相
 解きが障害になる。
・迷子/帰り道がわからない。
 連れてこられたのはいいけど、帰り道は実は舞奈も知らないとか。
 逆に舞奈が帰り道がわからなくて、主人公の家までついていってしまうとか。
 (↑まあ、これだとまったく別の話になるけどw)

 今、ぱっと考えただけなんで大したネタじゃないんだけど、こんな感じで幾つも
障害を考えてみて、その中から一番話に活かせそうなものを入れておく。そうする
だけでも結構、面白くなると思うからお試しあれ。

そんなところです。

>>415
 ワラタ

417イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/29(木) 22:25
長編のプロローグ、という位置づけで評価を頂けるとありがたいです。


◆エピローグ 十一月十日

「村山さん」
 呼びかけのおかげで、消えかけていた意識を少しだけ取り戻すことができた。
鉛のようなまぶたをやっとの思いで持ち上げる。
 森全体をぼんやりと光らせているのは、辺りを飛び回る青い蝶の群れ。
夜空に網を張る枝の隙間からは、白い月が覗いている。
 そして目の前には、先輩が立っている。今しがた役目を終えたばかりらしい青い刃を下げたまま、
傍らにいつもと同じようにこのはちゃんを連れて。
わたしのせいで切断されてしまった左腕が元に戻っていてくれて、少しほっとする。
 きれいで、強い先輩。何があっても冷静に、顔色一つ変えずに乗り越えていく先輩。
わたしもこんな風になれたらな、と思っていた。
 でも、そんな先輩の顔が、今は歪んでいた。
 どうして。どうして、そんなに悲しそうな顔を。
 わたしは力を振り絞って笑ってみせた。もう満足に体が動かせなくて形にできるかどうかわからないけれど、
それでも先輩の辛さを少しでも取り除けたら。そう思って、鳴らない喉のかわりに必死で笑顔を作ってみせた。
「……ごめんなさい」
 ……どうして先輩が謝るのか、わからない。わたしがこうなったのも、先輩がやったことも仕方のないことで、
気に病む必要なんてこれっぽっちもないのに。
 ――先輩は、わたしの不始末を片付けてくれただけです。だから気にしないで。
 そう言いたくても、やはり声は出なかった。
 先輩が左に顔を向ける。わたしも視線だけでそれを追う。
 ――ああ。
 わたしがやったことは、無駄じゃなかった。もう、何も心配しなくてもいい。
 死を前にしているにも関わらず、胸の内に去来するのは満ち足りた安堵感。
こんな気持ちで眠るように逝けるのなら、それはもしかして幸せなんじゃないだろうか?
 そんなことを思いながら。
 わたしはそっと、目を閉じた――。

418猫丸:2004/07/30(金) 20:18
>>407,414,415,416
批評ありがとうございます。キャラが弱いという指摘はとても参考になりました。
特に、鶴田さんのおっしゃるユキ像はかなり面白そうなので、本気で使ってみたいと思います。
話の続きは明日辺り、今度は量を減らして貼り付ける予定です。長くてすみませんが、またお願いします。

419イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/30(金) 23:53
>>417
目覚めてまだぼんやりしているだろうに、いきなりえらいたくさんの物がはっきり認識出来るわけですな。
読者には何も分からない既成事実まみれ。
主人公がえらい物分りのいい自己満足野郎に見えて共感出来ない。
評価できないでしょう。

420イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/31(土) 00:41
>>417
「村山さん」「先輩」(女の人かな?)と、状況との違和感があります。
体を再生できるみたいだけど、どうやってとかがまったくわかりません。
それを知りたいんだけど、「村山さん」からはどんな推測もできませんので、
ここだけ読まされては、ちょっと苛々しますね。

421イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/31(土) 02:47
>>417
プロローグといってるのにいきなり冒頭でエピローグとなってるけど、これは狙ってのことと解釈していいのかな。逆回転ムービーみたいな。
419氏もいってるように、村山さんが目覚めた瞬間にあたりの情景を把握できてるのはおかしい。それは三人称か神の視点。ぼやけた視点のピントをあわすためにほうぼうを見回すということも考えられなくはないが、状況を考えると村山さんにとって一番大事なのは先輩でしょ?だったらまずなによりも先輩を見なきゃ。幻想的な光景を演出したいのかもしれないけど、そういう作者の都合によってキャラを動かすのはやめたほうがいい。不自然になる。どうしてもやりたかったら三人称にすべし。
村山さんは倒れていると思われるのに、「目の前に先輩が立っている」のは変。どんな状態だよ。「目の前に先輩の顔があった」とかなら大丈夫だけど。
村山さんが自己完結してるのが痛いなあ。そりゃ任務みたいなものがなんとか達成できて安堵して死んでいくパターンっていうのはよくあるよ。でも、冒頭でそれをやられると読む気がなくなる。読者がまだ感情移入もしてないのに、しかも本人納得ずくでしょ?村山の死に関して悲しいともつらいとも思わないよ。勝手に死ねば?とすら思う。この事件をきっかけにして読者を呼び込むのは難しいんじゃないかな。まあ「目を閉じた」だけで「死んだ」とは断定してないから、おそらくなにかこのあとに続く部分があるんだろうけどさ(つか、あるんだよね?)。

422417:2004/07/31(土) 07:01
ありがとうございました。
初めなのにエピローグなのはもちろん狙ってやったことで、この後すぐに十一月初頭に戻り話が始まります。
先に終わりの一片を提示して「どこがどうなってこうなるんだろう」と不足している情報に対する興味を読者に持たせたく、
(具体的には先輩が村山を斬ったのか? 等の推測をさせたかった)
視点が村山にあるということで「村山は木にもたれかかっている」「どうやって再生したねん」等の情報は省いたのですが、
単に描写と説得力の不足で読み手をイライラさせるだけのようですね。

「作者の都合によってキャラが動く」というのは全くそのとおりだと思いました。
村山がこうなった過程やキャラの位置を考慮すれば、周りの光景よりも
まず目の前に立っているであろう先輩の姿が目に入るべきでした。


3行目・4行目の効果を狙ってこういう始め方をするなら、
もっと長く章をとって情報を書き込むべきでしょうか?
それとも、そもそも効果を期待できないと割り切ってすっぱりデリートするべきでしょうか?

423イラストで騙す予定の名無しさん:2004/07/31(土) 17:35
>>422
基本的に推理を強要させる展開は大半の読み手にとってストレスにしかならない事を理解すること、誘導と強要は違う。
俺も意味もなく、プロローグ(ラスト一歩前)→本編→エピローグ(プロローグと直結するシーンから展開)とか
やりたくなるんだが、やはり演出上なんらかの必然性があってやるべき。叙述トリックみたいなやつとか。

仮にこれで行きたいならもっと文をスッキリさせてしまっても良いと思う。
必要なのは「村山さん」が「再生能力を持って(怪物化?)」いて「先輩に斬られる」という三点だけだから。
まーこの辺は書き方より文章力自体の問題かも。

あと今時こういう掴みやられると「どうせ村山さんは殺されずに助けられるんだろ?」としか思わない
「ああ!村山さんどーなっちゃうの?」みたいな純真な人間はまずいない。
……まーこれでホントにエピローグでバッサリ斬殺されたりするなら驚くけど
驚かせた所で満足するラストかどうかはまた別問題だしなぁ。(w

424猫丸:2004/07/31(土) 17:38
412の続きです。批評お願いします。

意外なことに、家の中に入っても俺と舞奈ちゃん以外の気配は感じられなかった。全員、外出中なんだろうか。とにかく、俺は約束どおり舞奈ちゃんと遊んであげたんだけど……。
「そろそろオッケーかな〜。」
鼻歌交じりに、舞奈ちゃんは煙をたてる落ち葉の山を木の棒でまさぐる。出てきたのは、ほどよく焼けた焼き芋二つ。ひとしきり遊んでおなかがすいているらしい舞奈ちゃんは、嬉々としてそれを見つめている。
 それにしても、舞奈ちゃんに付き合うのは大変だった。子供は元気だと覚悟はしていたけど、舞奈ちゃんの元気は予想をはるかに超えていた。神様だからかもしれないけど、まるで一刻一刻を惜しむように遊んで、少し休んだら?という俺の言葉も、まったく聞こうとしなかった。
「どうしたの、ユキくん?なんか疲れてるみたいだよ。」
縁側に座ってぼ〜っとしていると、いつの間にか、舞奈ちゃんが目の前に来ていた。見ると、串刺しした焼き芋を両手に持っている。
 舞奈ちゃんは、飛び乗るようにして俺の隣に座り、
「焼きいもできたから一緒に食べよ♪」
こっちへ串を差し出した拍子に大きな耳があごをくすぐって、なんともいえずいい気持ちだった。と、そのことに気付いたのか、舞奈ちゃんはいっそう体を近づけてくる。
「耳気持ちいいの?だったら、あとで触らせてあげるね。」
「あ…ありがと。」
間近で見る屈託ない笑顔は、本当にかわいかった。とはいえ、相手は小さな女の子、いや神様。俺は努めて冷静を保ち、焼き芋を半分に割る。瞬間甘い香りが立ち昇ったところを見るに、なかなかよくできてるみたいだ。黄金色に焼けた中身も、なかなかに食欲を誘ってくる。

425猫丸:2004/07/31(土) 17:39
 一方舞奈ちゃんは大急ぎで皮をむいて、芋の先っちょを口に運ぶ。
「……うん。おいしい!これ、すっごくおいしいよ。ユキくんも早く食べて。」
よほどおいしいのか、舞奈ちゃんは両足と尻尾を一緒に動かして芋をほおばっている。まったく、無邪気というか可愛いというか。見ているだけで、疲れもずいぶん引いた気がする。
 庭で焼き芋をするのは何年ぶりかな、と思いつつ、俺は芋を口に入れた。同時に、とろけるような甘みが口いっぱいに広がって、
「うん。ほんと、よく出来てるね。」
「でしょでしょ?」
そう言って、また体を近づけてくる舞奈ちゃん。さっきからやけに甘えてきてる気がする。まあ、可愛い子だから嫌な気はしな……
 ぺろ。
「……!」
何を思ったか、舞奈ちゃんは俺の頬を舐めてきた。戸惑っていると、さらにぺろぺろ。小さな舌が動く感触がくすぐったい。まるで、本当の子犬にじゃれつかれているみたいだ。
「あの〜、舞奈ちゃん……?」
さすがに恥ずかしくなって、俺は舞奈ちゃんの顔から距離をとる。舞奈ちゃんは、悪ふざけをした後の子供のように舌の先を出して、
「ごめんね。つい、やってみたくなっちゃて。」
「いや、謝ることはないんだけど……。」
言いながらも、俺は少しだけあっけにとられる。いくら舞奈ちゃんが外見子供とはいえ、今日はじめて会った人に普通ここまで甘えるものだろうか。
「ねえ、ユキくん。“もう一回”、頭なでてくれる?」
“もう一回”?いつ撫でたんだろう。ま、いいけどさ。それにしても、よく甘えてくる。
 手の平を乗せると、舞奈ちゃんの髪の毛はふわふわしていいさわり心地だった。
「えへへ。優しくしてね。」
手の平の動きに身を任せつつ、そんなことを言う舞奈ちゃんがあんまり可愛いから、俺はちょっといたずらしてみる。まずは耳の外側をちょいちょいとくすぐって・・・・・・
「きゃは、きゃははっ!やめてよ、もうっ!!」
一撫でごとに、舞奈ちゃんは身をよじって悲鳴を上げる。やっぱり、犬の耳だから人間のそれよりは敏感らしい。もう少しいたずらしてみたい気もするけど、これ以上やったら神様のバチが当た

426猫丸:2004/07/31(土) 17:41
るかもしれない。俺はごめんごめんと言いながら、耳に当たらないよう注意して髪の毛を撫でてやる。そんなことをしていると、自分でも信じられないくらい和やかな気持ちになってきた。
 こんな気持ちは、本当に久しぶりだった。考えてみると、ここ最近は受験が近いこともあって、心に余裕がまったく無いような状況だった。それが、どういう心境の変化なんだろう。思えば、今日神社に入ったとき、一匹きりになった狛犬の頭を撫でたときから、俺の心の中の何かが変わったのかもしれない。
 舞奈ちゃんは、気持ち良さそうに表情をゆるめて、俺の顔を見上げている。その様子を見ていると、ずいぶん前に忘れていた何かを思い出せそうな気がしてきて、俺は、“これも神様の能力なのかな”とふと思ったりした。


 焼き芋を食べ終わると、さすがにはしゃいだ疲れが出たのか、舞奈ちゃんは目をとろとろさせ始めた。最初は自分から口を開いて眠気を振り切ろうとしてたけど、そのうち口数も少なくなって、今ではふらふらと身体を揺らせている。
「舞奈ちゃん。寝るんだったら、部屋までつれてってあげるよ。」
「……いい。ちょっと霊力を消耗しただけだから、ここで……。」
それだけ言って、舞奈ちゃんは全体重を俺に預ける。どうやら、体力か霊力かの違いだけで、神様も人間と同じように疲れるらしい。
 とにかく、座ったまま寝かせるわけにもいかないから、俺は舞奈ちゃんを縁側にそっと横たえる。枕は、適当なものが無かったから俺の膝。体には、巫女装束だけじゃ肌寒いだろうということでセーターをかけてあげた。
 横になってすぐ、舞奈ちゃんは安らかな寝息をたて始めた。寝顔を覗き込んでみると、食べ物の夢でも見ているのか、しきりに鼻をひくひくさせている。それがなんとも言えず可笑しくて、俺は舞奈ちゃんを起こさない程度に頬をぷにぷにとつついてみた。
「やだよぉ、お姉ちゃあん……。」
寝言、なのだろうか。舞奈ちゃんは幸せそうな顔のまま、頭を揺らす。どうやら、舞奈ちゃんにはお姉さんがいるらしい。
 ふと寝姿を見ると、体の力が抜けたのにあわせてか、耳と尻尾もぺたんと垂れていた。たぶん、何の心配も無く俺に身を預けているのだろう。俺は、そんな舞奈ちゃんをいとおしむように、ずり落ちかけたセーターを直してやり、
「お姉ちゃん、行っちゃやだ……。」
そう言って、舞奈ちゃんは俺の手をきゅっと握ってきた。その表情は、今にも泣き出すんじゃないかというくらいに切なかった。夢の中身はよく分からないけど、何もしないわけにもいかない。そう思って、小さな手を両手で包み込んでやると、舞奈ちゃんの表情はほんの少しだけ柔らかくなった。

427423:2004/07/31(土) 17:45
>>423
失礼、再生能力を持ってるのは先輩だね。吊って来ます。

428421:2004/08/01(日) 03:30
>>422
……先輩に切られた?ああそうか、「今し方」ってところか。
すまんが、そこはまったく疑問に思わなかった。村山と先輩以外の敵がいて、そいつにやられたのかと思ってしまった。
3、4行目については構成のきりかた次第で入れることは可能。効果が出せるかどうかは君次第。

429イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/01(日) 06:17
>>424
地の文章が長ーい。昨日俺がやった「てんたま」というギャルゲーぐらいコンパクトになさい。DC版なら千円で売ってる。

430イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/01(日) 13:26
>>424
スキンシップによる単純な萌えに走りすぎじゃないかな。
同じ文章の量で、スキンシップでドキドキする場面を少し削って、
代わりに舞奈ちゃんと遊ぶ場面を具体的に入れたほうがいいと思う。
この場合だとシンプルな昔ながらの遊びで、元が獣系だから鬼ごっことか。
獣本能で物凄くエキサイトする舞奈ちゃんは服が乱れても気にしてない。
勉強で体力衰えてる上に舞奈ちゃんの服の乱れが気になって主人公はバテバテ、
そこで疲れたからもう一度冷たいお水を飲んで、お腹すいたから焼き芋しようって
流れになると、そのおいしさがグッとリアルに伝わるでしょう。
スキンシップとコミュニケーション、両方をバランス良く取り入れることで、
キャラへの思い入れは深まると思うよ。

431イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/02(月) 03:01
>>424
前回の分もそうだったけど、ひとつひとつの行動に対してむりに感想をいいすぎ。しかもほとんどが「かわいいなあ」じゃん。さすがにここまで繰り返されるとつらい。スキンシップもワンパターンだし、メリハリつけなきゃ飽きられるよ。
あと、個人的に疑問なのが舞奈の登場シーンをふたつ作る必要はあるのかってところ。いきなり神様の世界(?)に迷いこませてもいいんじゃないかな。方法なんていくらでもあるし、そのほうがすっきりすると思うのだがどうか。それとも尻尾と耳がないシーンは絶対必要なものなの?

432猫丸:2004/08/04(水) 22:16
>>429,430,431
批評ありがとうございます。
やっぱり、萌えを書くのは難しいですね。ストーリーに関してもまだまだ力不足のようなので、精進を続けたいと思います。

433猫丸:2004/08/04(水) 23:03
426の続きです。

 三十分くらい経っただろうか。神様の世界も日が陰って、空気もだんだん冷たくなってきた。このまま寝かせておいたら風邪引いちゃうかも、と俺は舞奈ちゃんを抱きかかえる。幸いなことに、立ち上がっても目を覚ます気配は無かったから、このまま手近の部屋まで運ぶことにする。
辺りを見回すと、ちょうど背後に障子戸が見えた。中に神様がいる気配も無いから、寝かすのはこの部屋でいいだろう。舞奈ちゃんの身体の軽さに感心しつつ、俺は足で障子戸を開ける。
 そこは、旧日本家屋そのままの、一面畳の部屋だった。広さは八畳くらいで部屋には電灯が無く、変りにあるのはなんと燭台。よく見れば、ほかにも歴史の教科書でしか見たこと無いような小道具がちらほらとある。さすが神様の家、とでも言おうか。俺は舞奈ちゃんを畳に寝かせて、しばらくの間部屋の雰囲気を味わってみる。
 神様の部屋にも慣れてきたところで、俺は舞奈ちゃんを寝かせる布団を出そうと押入れに近付く。で、上段を開けると、
「あれ?違ったかな?」
入っていたのは、何着もの巫女装束だけだった。仕方なくふすまを閉じようとするけど、その時ふと気になった。どの服も、舞奈ちゃんが着るには明らかに大きすぎる。となると、ここは舞奈ちゃんの部屋じゃない……?
「ん……。」
絞り出すような声に振り返ってみると、舞奈ちゃんが半身を起こして、目をこすっているところだった。押入れを開けた時に、目が覚めてしまったのだろうか。俺は押入れを開け放したまま、舞奈ちゃんのところに行く。
「ごめんね。起こしちゃった?」
「ううん。ちょうど目が覚めたところ……」
そこまで言って、舞奈ちゃんは全ての動きを止めた。大きく開かれた目は、俺の背後ただ一点を見据えている。振り返ると、そこにあるのは押入れの巫女装束……。

434猫丸:2004/08/04(水) 23:04
「…おねえ、ちゃん……」
え?と思う暇もなかった。舞奈ちゃんの瞳からは、大粒の涙がぽろぽろとこぼれだしていた。俺は、戸惑いながらもその肩に手を置こうとするけど、舞奈ちゃんはそれを払うようにして立ち上がる。押入れへ向かう足取りは、今にも転びそうなくらいに不安定だった。
 押入れに辿り着いた舞奈ちゃんは、巫女装束のうち一着を抱きかかえて、それを顔に押し当てる。その隙間からの泣き声を聞いて、俺は思った。押入れの巫女装束は舞奈ちゃんのお姉さんのもので、そのお姉さんは今……。もしかすると、俺は舞奈ちゃんの一番辛い記憶を思い出させてしまったのかもしれない。
 激しい後悔が俺の頭を突き抜ける中、舞奈ちゃんは装束から顔を離して、かすれ声で呟いた。
「……ごめんね、お姉ちゃん。わたしもすぐ、そっちに行くから。」
泣いているはずなのに、なぜか明るい声だった。俺は、舞奈ちゃんに近付くことさえできずに、たださっきの言葉の意味を考える。 “私もすぐ、そっちに行くから”これは、やっぱり……。
 とその時、舞奈ちゃんは無理に造ったみたいな笑顔をこっちに向ける。一体、何を言い出すんだろう。
「ねえ、ユキくん。」
続きは聞きたくない。そう思った。けど、そんな予想に反して、舞奈ちゃんは意外なことを言う。
「見せたいものがあるから……来てくれる?」
さっきよりもさらに明るい笑顔で言われて、俺は正直面食らった。ひょっとすると、俺の取り越し苦労だったのか。そうであることを祈って、俺は舞奈ちゃんの言葉に頷いた。
「それじゃ、ついてきて。」
俺から離れると、舞奈ちゃんはまっすぐに廊下へ歩き出す。一見すると、遊んでいるときと同じくらい元気に見えるけど、実はそうじゃないことは後姿からなんとなく伝わってくる。尻尾も始めて見た時とは違って、頼りなげに垂れて揺れていた。

435猫丸:2004/08/04(水) 23:06
 互いに一言も話さないまま入ったのは、さっきの部屋と同じような和室だった。ただ、一つだけ違うのは部屋の隅にある大きな木箱。舞奈ちゃんは俺を箱のそばに座らせて、その蓋を開けた。
「うわっ……」
見た瞬間、箱の中全体が鈍いきらめきを放った。入っていたのは、何十枚もの手鏡だった。
「舞奈ちゃん、この鏡って……?」
「見ればわかるよ。」
楽しくって仕方がない、といった表情の舞奈ちゃん。やっぱり、普通の鏡じゃないみたいだ。俺は、予想のつかない神様の力に期待しつつ鏡の一つを手にとって、
「……はぁ!?」
鏡に映っていたのは、全く違う俺だった。いや、たとえじゃなくて本当に。だって、何もかもが……
「驚いた?神サマはね、過去に見たことをこうやって鏡に残せるんだよ。」
舞奈ちゃんの言うとおり、鏡の中ではいまや遠い記憶となった七歳くらいの俺が、神社前の道路で当時の友達と遊んでいる。鮮明な動画を見て、俺は恥ずかしいやら懐かしいやらだった。
「今度はこれでも見る?」
そう言って舞奈ちゃんが取り出した鏡には、若い女の人に抱かれた赤ちゃんが映っていた。場所はこれまた神社前の道路だけど、女の人の顔は、間違いなく俺の知っているものだった。
「ねえ、この赤ちゃんまさか……。」
「そうだよ。ユキくんの可愛い可愛い赤ちゃん時代。抱いてるのは、ユキくんのお母さんだね。」
くすくす笑いながら、舞奈ちゃんは鏡のへりを指で叩く。映像の中の母親は、あたりまえだけど今よりずっときれいだった。
 と、舞奈ちゃんはまた別の鏡を取り出そうとする。それを見て、俺はピンと来た。まさかとは思うけど……。
「ねえ、舞奈ちゃん。ひょっとしてこれ全部・・・・・・?」
「うん。全部ユキくんのだよ。」
「……なんで俺のがこんなに?」
「ん?そりゃあ、今まで見た風景の中からユキくんが出ているのだけを取り出したからで……」
そう説明する舞奈ちゃんの目はあちこちに泳いでいて、頬も心なしか赤らんでいる。俺としては、“取り出した”理由を聞きたかったんだけど、この様子じゃ無理に聞き出すのも気が引けた。
それにしても、よく考えてみれば舞奈ちゃんは俺の過去を全部知っているということになる。でも、相手が神様だからだろうか。不思議と嫌な気はしない。
「もっと見てみようよ。」

436猫丸:2004/08/04(水) 23:07
そう言われて、俺は次々と過去の自分を見る。そうしていくうちに、俺は自分の中にさっきまでとは違う感情が生まれてくるのを感じた。一言で言えば、“羨ましい”のかもしれない。
 鏡の中の俺は、今の受験で悩んでいる俺とはまったく違う表情をしていた。明るくて、何の心配事もなさそうで……まるで、別人だった。
 そんなことを考えているうちに、俺は鏡の中でも歳をとってきた。だけど、映像のほとんどは小学生以前の俺のもので、中学以降は両手で数えられるくらいだった。そして俺は、年齢が上がるとともに外見だけでなく表情までが今に似てくるのを、一つのやるせない思いで見つめていた。
 もう一回、ずっと昔に戻れたら───────。
「これが、今年の初詣でだね。今日のは無いから、これが最新ってことに……ユキくん?」
俺の気持ちを感じ取ったのか、舞奈ちゃんは俺の顔を不安げに覗き込む。無理に笑おうとしたけど、出来てないのが自分でも分かった。
「……辛い思いさせたのならごめんね。でも、もう一枚だけ見てくれる?」
そう言って、舞奈ちゃんは箱の中からまた一枚。それで、箱は空になった。
「ねえ、ユキくん。今まで鏡を見てきて、気付いたこと無かった?」
……そういえば、気になることがあった。鏡の中の俺はいつでも、神社前の道路にいた。神様の目から見た風景だったら、境内なんかが映っていてもいいはずなのに。
「気付いてるみたいだね。それじゃあ……」
舞奈ちゃんは手鏡を持ったまま、俺に寄り添うように座ってくる。と、鏡から声が聞こえた。

≪おい、ユキ。そんなきったねえ狛犬見てないで、早く遊ぼうぜ。≫
声は、小学生時代の友達、ケンタのもの。鏡の中の俺は、九歳くらいだった。
≪いいじゃんよ。ちょっとだけだから。≫
≪はっ。お前も変ってるなあ。狛犬を撫でるなんて。≫
ケンタとのやり取りの中で、俺の姿がどんどんズームアップされていく。いや、実際には俺が近付いているのか。直後、鏡は俺の顔でいっぱいになって、鏡面がほんの少し揺れた。
≪あはは。やっぱ、狛犬は硬えな。≫
≪当たり前だろ、バカ。≫

437猫丸:2004/08/04(水) 23:09
 なんと言っていいのか分からず、俺は隣の神様を見やる。犬のような白い耳に、これまた犬みたいな白い尻尾。最初は戸惑ったこの姿も、今なら納得がいく。だって、舞奈ちゃんは……。
「わたし、すごく嬉しかったの。長いこと狛犬やってきて、このくらいの年の子に優しく撫でられたことなんて無かったから……。」
そう言って、舞奈ちゃんは涙混じりの笑顔を俺に向ける。手の甲に置かれた小さな手の感触が、言葉にならないくらい温かかった。
「だからね、ずっと思ってた。いつか、ユキくんと一緒に遊んでみたいって。でも、普通の人の目に私たちが見えるようにするにはかなりの霊力を使うし、神社の番犬としてのお勤めもあったからずっと我慢してたの。でも、そうこうしてるうちに私たちにも寿命が来ちゃって……。」
「……!」
思い出した。今日見た狛犬が、今にも壊れそうだったこと。それから、一匹きりだったこと。で、もう一匹の狛犬は……。
「私たちの寿命はそのまま霊力の残量で、それがなくなった瞬間狛犬は崩れ落ちちゃう。ユキくんも気付いてると思うけど、いなくなった狛犬、あれはね、私の・・・おねえちゃん・・・なの。」
 舞奈ちゃんは、深くうつむいたまま細い肩を震わせる。頭に手を置いてやっても、泣くのは止まらなかった。
「舞奈ちゃん……。」
それ以上、言葉が浮かんでこなかった。そんな間にも、舞奈ちゃんはかすれる声で続ける。
「お姉ちゃんは、わたしに最後の霊力を分けてくれたの。死ぬ前に一度、ユキくんに会わせてあげるって。でも、そのせいでわたしより先に……」
聞いてるうちに、俺は理解した。狛犬が壊れそうになっていた理由も、舞奈ちゃんが時間を惜しむように遊んでいた理由も。舞奈ちゃんは、もう……。
 そのあとの考えは、舞奈ちゃんの言葉に遮られた。
「ねえ、ユキくん。一つ訊いていい?」
舞奈ちゃんは涙ながらにも、凛として俺を見つめている。そこには、反論を許さない切実さが感じられて、俺は黙って頷くしかなかった。
 少しの間が空いた。舞奈ちゃんは、今までに無い落ち着いた口調で喋り始める。
「さっき鏡を見てたとき……、ユキくんは何考えてた?」
「ううん…。上手くはいえないけど、懐かしいというか、昔の自分がうらやましいというか……。」
「うらやましい?やっぱり、そう思ってたんだ……。」

438猫丸:2004/08/04(水) 23:11
そう言って、舞奈ちゃんはなぜか悲しそうな表情を見せる。羨みの気持ちで昔を懐かしむのは、そんなにいけないことなんだろうか?そう思っていると、舞奈ちゃんはいきなり顔を近づけてきて、
「ねえ、ユキくん。うらやましいって思うのは、どんなとき?」                  
「どんなときって……。そりゃあ、自分には持ってないものを見せられたときとか?」
「だよね。でも、それだったらユキくんはうらやましがることなんてないよ。だって、ユキくんは“持ってる”もん。」
持ってる?何をなんだろう。昔の自分は今の俺に無いものをたくさん持っていて、それがうらやましいと俺は感じてたんだけど……。
「今日鏡を見せたのはね、ユキくんにその事を分かって欲しかったからなの。なんかユキくん、神社に来たときから辛そうな顔してたから。」
確かに、俺は思っていた。今の俺は、何もかもが変わってしまったと。でも、それは本当のことじゃないんだろうか。
 思う間に、舞奈ちゃんは続ける。
「あの鏡はね、ユキくんの姿だけじゃなくて、心もそのままに映してると思う。今日狛犬のわたしを撫でてくれたみたいな、変わらない優しさをね。つまり、ユキくんは昔と何にも変ってなくて……。」
そこで舞奈ちゃんは、顔を赤くして言葉を切る。一瞬の沈黙が流れて、そして。
 神様は、言う。
「わたしは、そんなユキくんのことが……ずっと好きだったんだよ。」
……好き?神様が、俺のことを?今までで一番幸せそうな舞奈ちゃんを前に、俺は気持ちの整理がつかなかった。
 でも、素直に嬉しかった。好きと言われたこともそうだけど、それよりも、ずっと俺を見守ってくれたうえで、俺が何も変わってないと言ってくれたことで。
 返事をしよう、と思った。でも、
「返事はいらないよ。だってわたし……」

 もうすぐ死んじゃうから。

439鶴田:2004/08/06(金) 17:25
>>433-438
狛犬が崩れた理由が寿命っていうのがすこし疑問ですね。そんなことをいいだしたら日本全国の狛犬大ピンチですし。
天変地異やあるいは人為的事故のせいで崩れた、といったほうが説得力はあると思います。それをユキの子供の時に遭遇した事件と絡ませることもできますし。
個人的な要望として、舞奈に「好き」といわせないでほしい。現実ではいう機会もわりと多い言葉ですが、小説で「好き」と書くのはクサいです。

440イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/07(土) 02:28
>>猫丸
細かい部分に関してのツッコミどころはいままでのと同じなので、あまりゆうことはないな。
神様の世界が神様の世界っぽくないところとか、かなあ。なんか普通の田舎の家っぽい。ここはそういう狙いなのかもしれないけど。
あと、装束はえもんかけにでもかかってたのかね? 押し入れ開けてざっと見ただけで大きさまでわかってたけど。

441猫丸:2004/08/08(日) 13:40
これで最後です。長々貼って、本当にごめんなさい。できましたら、全体を
通しての評価をお願いします。

 笑顔を作る瞳の端に涙をためて、舞奈ちゃんは言った。それがどうしようもない事実だということは、もう分かってしまっていた。でも、俺には何もできない。ずっと見守ってくれた神様に、俺は何もしてやれない。
 (……本当にそうか?)
 心の声が聞こえる。俺は、舞奈ちゃんの言葉を思い出す。
 “ユキくんは、昔と何にも変ってなくて……”
 昔の俺なら、こんなときどうしただろう。自分を好きだといってくれた神様が、目の前で涙をこらえているこの状況で、俺は鏡で見た自分と心を重ね合わせる。同時に、壊れかけの狛犬と死を前にした神様が重なり-------。
 ―――――――決めた。
「舞奈ちゃんっ……。」
それだけ言って、俺は舞奈ちゃんを全力で抱きしめる。頭の後ろに置いた手で、髪の毛を何度も何度も撫でながら。
「ユキ…くん…。」
胸に顔を埋めて、声を詰まらせる舞奈ちゃん。あごに当たる耳も、はかまの紅に映える白い尻尾も本当にかわいかった。
 俺は今にも泣きそうだった。舞奈ちゃんは、こんな刹那しか思いを叶えられない。ずっと見守ってきた想いなのに、それなのに……
 そう思ったとき、舞奈ちゃんの足首から先が幽霊のように薄れてきた。そして、舞奈ちゃんは俺の胸から顔を離して、
「わたし、もうすぐ消えちゃうみたいだね。でも大丈夫。ユキくんのお願いを叶える霊力は残ってるから。」
最期の最期で、舞奈ちゃんは晴れ晴れした表情になる。それはまさに、最後の勤めに向かう神様の笑顔だった。
こんな俺のために、最後の命まで削ってくれる神様の。
「ユキくんには、わたしの霊力をほんのちょっとあげる。お願いを叶えるにはそれで十分だから。でもわたし、本当に嬉しいよ。だって、好きな人のお願いを叶えて死ねるだもん。」
言葉を紡ぐ間にも、舞奈ちゃんの身体はどんどん半透明になっていく。と、舞奈ちゃんはまだ残っている両腕を俺の首に回して、顔を近づけてくる。
「霊力をあげるやり方って、正式には別にあるんだけど……、今回はこれでいいよね。」
「…うん。」
「それじゃあ……」
小さな呟き。一呼吸の間をおいて、俺と舞奈ちゃんは唇を重ね合わせた。俺は舞奈ちゃんに合わせて目を閉じて、この瞬間が少しでも長く続くよう祈る。でも、体を抱く感触はすぐに無くなり、そして唇も―――――――。
 閉じたまぶたの向こうで、すべての温かみが消える。同時に俺は、暖かい光の中で意識を失っていった。

442猫丸:2004/08/08(日) 13:41


目が覚めると、俺はいつの間にか本堂前に戻っていた。もちろん、辺りには冬闇の北風が吹いていて、とてもコートなしではいられない。元の世界に帰ったことを実感しつつ、俺はふと考える。あれは夢だったのかな、と。
 だけど、夢じゃない証拠は確かにあった。ここからでも見える、鳥居横の狛犬の台座。そこには、二匹の狛犬ともいない。それは、自分を見守ってくれた神様がもういないという、何よりの証拠だった。
 死ぬ間際、舞奈ちゃんは俺の願いをかなえてくれた。なのに、俺は祈る前よりもずっと、救われていない。もう一回祈ってみたらーーーとも考えたけど止めた。俺の神様は、舞奈ちゃん一人だけだから。
 その時、神社のすぐ近くで石焼芋の売り声が聞こえた。それは、俺に舞奈ちゃんと食べた焼き芋の味を思い出させた。あのときの舞奈ちゃんの笑顔は、もう二度と見られない。犬耳をくすぐったときの表情も、キスの感触も二度とーーーー。
 涙があふれた。しばらく止まりそうにないけど、止めるつもりも無い。今はただ、こうしていたかった。
 と、俺の背後で本堂の扉が開いた。あわてて涙をぬぐって振り返ると、そこには神官装束を着た、端正な顔立ちの男の人が立っていた。
「名瀬幸俊君だね。これを、受け取ってくれないかな。」
そう言って、神官さんは一つのお守りを突き出してくる。見ると、合格祈願お守りだった。
「ああ。私はこの神社の神主をしている高部英明です。突然で悪いけど、本堂の中に来てくれませんか?」
「いいですけど……?」
高部さんの言葉に、俺はわけが分からないながらも本堂の扉へ歩いていく。何故だろう。今の俺にお守りなんて意味無いはずなのに、高部さんにもらったお守りを握っていると不思議な安心感に包まれてくる。
 高部さんが扉を開ける。俺は中を覗き込む。そして、
「来てくれたんだね。ユキくん。」
広間の中央には舞奈ちゃんが……と一瞬思った。けど、よく見れば違う。白い耳と尻尾は同じだけど、背も舞奈ちゃんよりは少し高いし、顔立ちもそっくりなもののどこか大人びている。……この子は、まさか。
「やっぱり気付いたか。でも、それでこそ舞奈の恋人だよね。」
そう言って、女の子はぺろりと舌を出す。もう、間違いない。
「はじめまして!わたし、舞奈の姉で明奈といいます。よろしくね!」
「こちらこそ。僕の名前は……知ってるみたいだね。」
予想通りの展開だったけど、俺はふと思った。確か、明奈ちゃんは舞奈ちゃんに霊力をあげて死んだはずだ。だったら何故、今ここに。考えていると、高部さんは俺の肩に手を置いて、
「魂をお札に封じ込めて、一時的に実体化させてるんですよ。」
……そんなことが出来るのか?にわかには信じがたかったけど、舞奈ちゃんとの体験をした後だから、少しは受け入れやすい。

443猫丸:2004/08/08(日) 13:44
「もちろん、実体化といってもほんの短い時間しかさせられませんが、お札に封じ込めている限り、魂はかなりの間生き続けますよ。」
ということは舞奈ちゃんも。そう思って、俺は手の中のお守りに気付く。お守り袋の中には小さなお札が入っていると聞いたことがあるけど、この不思議な安心感を与えてくれるお守りの中にはひょっとして。
 しばらくお守りを見つめたあと顔を上げると、明奈ちゃんと高部さんが同時に頷いた。
「呼んでみて。」
微笑んで明奈ちゃん。俺はお守りの口を開けて呼びかける。
「出てきてよ、舞奈ちゃん!」
瞬間、袋の口から蛍のような光の玉が飛び出す。それは俺の顔の前で止まって、直後、目が眩むほどの光を放った。
 光が収まり、俺はまぶたを開ける。すると、
「えへへ。また会ったね。」
目の前には、間違いなく舞奈ちゃんが立っていた。耳と尻尾も、無邪気な笑顔も別れたときのままだった。
 いろんな思いがこみ上げる中、俺は舞奈ちゃんの頭を撫でてみる。ふわふわした髪の感触も、指に当たる耳の気持ちよさも、記憶とまったく同じだった。
「実を言うとね、幸俊くん。舞奈ったら、力を失った直後からわあわあ泣いて手が付けられなかったのよ。いつまでもユキくんと一緒にいたい……なんて言ってね。」
「そうそう。本当に、こっちが祟られるくらいの勢いでね。でもまあ、こうやってお守りの中に入れてあげれば、幸俊君ともずっといられるから……満足でしょ?舞奈ちゃん。」
「うんっ!」
これ以上は無いと言うくらいの笑顔で、舞奈ちゃんは頷く。一方で、俺は何も言えなくなっていた。何か一言言うだけで、涙があふれてどうにもならなくなりそうだった。
「まあ、お姉ちゃんには神社に来たらいつでも会えるから、その点はオッケーとして。で、幸俊君。あとは君しだいだけど……。」
その言葉とともに、高部さん、明奈ちゃん、舞奈ちゃんは一斉に俺のほうを見てくる。そうだ、ここは泣いてる場合じゃない。これまで俺を狛犬として見守ってくれた神様は、今度はお守りになって俺のそばにいてくれようとしている。変わらない俺を見つけてくれて、そんな俺を好きだといってくれた神様。誰よりも可愛くて、誰よりも頼りになる神様。俺は、幸せ者だ。心からそう思えた。
「舞奈ちゃん。」
俺は中腰になって、舞奈ちゃんの瞳に俺の顔を映す。舞奈ちゃんは一瞬照れたような表情をしたけど、すぐに真剣な顔つきに戻る。俺は、右手のお守りをぎゅっと握り締めて言った。
「これからも、僕の神様でいてくれる?」
その言葉に、舞奈ちゃんは涙まじりの笑顔で頷いた。高部さんと明奈ちゃんは、満面の笑顔だった。
 次の瞬間、舞奈ちゃんは跳ぶ。
「大好きだよっ、ユキくんっ!」
胸に飛び込んできた舞奈ちゃんは、本当に子犬のようだった。俺は、いろんなことを考えながら舞奈ちゃんの髪の毛を撫で続ける。いくらなんでも、普通の人の前での実体化はまずいよな。家でも、家族にばれないよう気をつけないと。でも、どこか楽しいところにも連れてってあげたいな。
 ……そうだ。

 家に帰ったら、尻尾を引っ張ってみよう。

444イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/08(日) 22:00
スレだと読みにくいので投稿サイトにまとめて載せてくれ。
http://f15.aaacafe.ne.jp/~bklbkl/

445感想その1:2004/08/09(月) 05:34
>猫丸
突っ込みたいことは色々あるけど、とりあえず【ストーリーの根幹にも関わらず足りない描写】を4つほど。

1.舞奈ちゃんがユキくんを好きになった理由
頭撫でられたくらいで神様(というか狛犬)が人間に惚れるかなあ? まあちょっと気になったりはするかもだけど。
ただ、それだけじゃ弱いので「その後いかにして『ちょっと好き』から『本当に好き』に変わったのか」を描写すべきでは。
具体的には、回想におけるユキと狛犬のからみ、それに対する舞奈の思いをもっと書いて欲しいな。

2.霊力を失いつつある舞奈ちゃんの様子
例えば無理して遊んでる病人って、見ててけっこう分からない?
舞奈ちゃんも遊んでる最中急にフラつくなりセキするなりボーっとするなり熱があるのがバレてごまかすなりして欲しい。
元気に遊びまくって「霊力が〜」言っても説得力ないっしょ?

446その2:2004/08/09(月) 06:22
3.舞奈ちゃん復活の伏線
ハッピーエンドは賛成だけど、伏線なしに急展開するとご都合主義に見えやすい。
例えば「この神社のお守りには魂がこもってる、なんて噂もある」みたいな文章をどこかに入れるとか、
ユキくんが物語序盤でお姉さんの姿をチラリと目撃するとか、ちょっとでいいので何か伏線張って欲しい。

それと(こっちの方が重要だけど)最後で今までの話との整合性が取れなくなってない?
姉がまだ生きてるのなら、姉の狛犬が壊れたことで舞奈ちゃんが悲しくなったりしないのでは。

4.受験eteに対するユキくんの閉塞感
本文中の描写だけでは、ユキくんが「昔の自分が羨ましくなる」ほどの閉塞感を持ってるようにはとても思えない。
そのせいで、鏡のシーンが薄っぺらいものになってる。
もっと悩ませて愚痴らせてため息つかせてノリ悪くした方が良いのでは。

総評としては、もっと「具体的な描写」を増やして欲しい、につきるかな。
どう遊んだのか、舞奈ちゃんがどうかわいいのかなどを抽象的な表現に逃げないでちゃんと描写して欲しかった。
あと、ユキくんはロリっぷりが自然体過ぎないかw
見た目10歳相手にためらいなく可愛いと言ってのけるし自然体でロリってるなw

447猫丸:2004/08/09(月) 07:12
>>444
まとめて載せてみました。読みにくいと思う方はこちらへどうぞ。

>>445・446
ありがとうございます。私は、まだまだ力不足のようですね。これから
も精進していくようにします。あと、これまで読んでくださった方にも
改めて感謝します。

448鶴田:2004/08/09(月) 18:32
>>447
うーん、まさかこうくるとは……。さすがに唐突すぎますねえ。ハッピーエンドのほうがいいとは思うけど、そのせいで積み重ねてきたストーリーが台無しになってるように見受けられます。
ラストの家族にばれないように、とか普通の人の前で実体化はまずい、の部分を書いたほうが面白そうな気がしたのは私だけでしょうか。このへんは連載化?を意識してるのですかね。
そしてまあ、たしかにユキは○リコンですな……。神様の姿の時は一時的に十六歳くらい(年齢は適当)に成長させるのもいいかもしれません。逆もまたしかり。そうするともちろん巫女服がぱつんぱつんになったりとかの問題がでてくるわけで、そこもまた萌えになるのではないでしょうか。とかまじめに考えた自分が嫌になったので腹を切ってきます……。

449イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/15(日) 18:41
 花壇に一人残ったフブキは、ベンチにもたれて青空を見上げた。
 須磨鈴蘭の顔が浮かんでくる。
 チトセの前ではああ言ったものの、美少女モデルが転校してくると聞いては、
男子として冷静でいられるわけなんかない。
 (二年おそく生まれてくればなあ…)
 自分が中学生であることを激しく後悔していると、近づいてくる足音が聞こえ
た。もうチトセが戻ってきたのかと、あわてて空に描いた鈴蘭の顔をかき消す。
 「すみません、ちょっと聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
 チトセより幾分か大人びた少女の声。はて誰だろうとフブキが声の主を見ると、
たった今消したばかりの顔が微笑んでいた。
 「校長室がどこにあるか教えていただけませんか?」
 須磨鈴蘭だった。あの須磨鈴蘭がそこにいたのだ。
 (そんな? ありえない!)
 フブキは目をこすってみた。いくら転校してくるとはいっても、いきなり
自分の前に現れるなんて都合がよすぎると思ったのだ。
 しかし、いくら目をこすっても美少女は消えてくれない。これはもう本物
と断定するしかなさそうだ。
 (うわあ、やっぱりカワイイなあ…)
 亜麻色の髪を背中までのばし、それを後方になでつけるようにしてヘアバ
ンドでとめている。顔の作りは日本人に近いけれど、瞳の色がブルーなあた
りはさすがクォーターだ。
 初等部の女子はこの季節、ブラウスの上から襟がV字型にカットされた春
用のセーターを着るのが通例だが、鈴蘭はセーターの代わりに紺のチョッキ
を着ていた。赤いリボン・タイを結んで、赤いチェック柄のスカートをはい
ている点はチトセと同じである。
 「あの…校長室がどこにあるのか教えてほしいんですけど知らないんですか?」
 「ええっ?」
 ボーッとして、質問に答えるのをすっかり忘れていた。

450イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/15(日) 19:26
こんな美少女との会話は心の準備ができてからにしてほしいものだ。
 「こ、校長室ですか? 知ってますとも! あの校舎の一階の、あのへんに
ありまして、こう行ってこう…」
 フブキは少々焦りながらも、どうにかこうにかして道順を教えてあげた。
 「よくわかりました。ありがとうございます」
 美少女モデルは深々とおじぎした。
 「あたし、明日からこの学園に入学するんです。それで入学届を校長室ま
で届に来たんですけど、すごく広い学校だから迷ってしまって…本当に助
りました」
 お礼を言って、立ち去ろうとする。
 「あっ! ち、ちょっと待って!」
 フブキはあわてて呼び止めた。せっかくのお近づきになるチャンスではないか。
 「なんですか?」
 「い、いや〜その〜…君は須磨鈴蘭さんですよね?」
 少女は頷いた。
 「はい、須磨鈴蘭です。あたしなんかのサインとかでもいいのなら、遠慮なく
おっしゃってください」
 やはり全国に名が売れてからは、こういうことにも慣れているのだろう。
 「本当は学校ではモデルとしてふるまっちゃいけないって言われてるんです。
でも、あなたは親切な人だから特別(はぁと)」
 と、鈴蘭はウインクした。
 (うわ〜っ! こいつはたまらん!)
 子供特有のお色気とでもいおうか、まさに『少女』ならではの魅力が炸裂、
フブキは卒倒しそうになるのを危うく踏みとどまった。
 「い、いや、サインもいいけど、ひとつふたつ質問したいなあって…」
 「どうぞ。答えられる範囲でお答えしますから。あ、でも、スリーサイ
ズだけは聞かないでくださいね。まだ人様に自慢できるほど育ってませんから」
 「いえいえ、僕はそんなことよりも…」
 案外お茶目なところもあるんだなあと思いつつもフブキは言いよどむ。
そんなこと(スリーサイズとか)以上に聞きたいことなんかないというの
が実情だからだ。
 (う〜ん困った。何か、何か、軽蔑されないような上品で知的な質問
は〜?)

お目汚し失礼しました。

451イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/16(月) 00:52
>>449-450
上のほうで何度か書いてさんざん言われてた人?
いや、おれもいろいろ書いたんだけどね、まえのより断然いいと思うよ。

452イラストで騙す予定の名無しさん:2004/08/16(月) 04:00
>>451
いや、ぜんぜん変わってないだろ。
チトセがいないから痛さが薄れてるだけ。それでも十分痛いんだけどな。

>>449-450
なんつうかさ、基本的には前のと同じじゃん。
すでに完成してる作品のどの部分を抜粋するかの違いがあるだけ。
いままで注意されてきたことは直ってないし、努力したあとすらうかがえない。
本来なら前のを参照しろ。で終わらせてもいいんだけど、まあ暇だし批評してみるよ。
問題はふたつだ。ひとつめは登場人物の痛さ。
登場人物が痛いってことはいままでもさんざんいわれてきたよな。フブキがロリコンすぎる。その世間的には非常識であろうロリコンぶりを否定する人がいない(つっこみ、といいかえてもいい)。作者自身がロリコンなのはわかった。こういうのが大好きというのもつたわってくる。でもそれをストレートに書いちゃだめなわけ。わかるかな。創造者としての閃きを感じない作品に、どれだけの読者がついてくると思うよ。好きなものを好きなまま書くだけなら誰でもできるんだよ。
ふたつめは地の文章。
文章にクセがなくさらっと読めるのは君の長所だと思う。だけど地の文章に作者の好き嫌いを表しすぎなんだ。フブキがロリコンで、鈴蘭の美貌にまいったってのは別にいいよ。心の中でほめまくるのもかまわない。だけど作者までがほめるのはやりすぎ。客観的でない作者の視点や感想ってのは見ていてうざったいだけ。
こんな美少女との会話は心の準備ができてから
子供特有のお色気
まさに『少女』ならではの魅力が炸裂
とかさ、これは作者の意見でしょ。それも相当かたよった。三人称なら三人称なりの気を使えよ。フブキみたいな妄想爆裂系のキャラならなおのことだ。境界線はきちんと引け。




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