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侑「歪んだ愛情」

1 ◆RZWV3S9lzE:2022/11/23(水) 17:47:04 ID:SSQ4kvg2
――部室

侑「〜♪」

かすみ「侑先輩〜。何見てるんですか?」

侑「ん?歩夢とのLINEを読み返してるんだよ」

かすみ「へ〜〜。真剣に見てるから、スクールアイドルの動画かと思ってましたよ」

侑「あはは。かすみちゃんも一緒に見る?」

かすみ「いいんですか?」

侑「いいよー。見られて困るような会話してないしね」

かすみ「ではお言葉に甘えて〜」

侑「隣おいで」ポンポン

かすみ「はーい♪」ストン

かすみ(2人って普段はどんな会話してるんだろ?楽しみ〜♪)

254 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/05(月) 12:29:06 ID:Fr4pz7ak
歩夢「よく私の前でキスできたね」

侑「歩夢もする?」

歩夢「ふざけないでよ」

侑「ふざけてなんかないよ。私、歩夢とキスする瞬間が一番幸せだもん」

歩夢「……」

侑(私には何を言っても無駄だと思ったのか、私の背後へと声をかける。キスできなくて残念だった)

歩夢「かすみちゃん」

かすみ「ひっ」

侑(かすみちゃんは小さく悲鳴をあげた。まだ怖いらしい)

歩夢「かすみちゃん」

かすみ「……」

歩夢「……」

侑(歩夢は席を立ち、かすみちゃんの隣へと座った)

255 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/05(月) 12:34:53 ID:Fr4pz7ak
歩夢「かすみちゃん」

侑(歩夢はかすみちゃんの肩を優しく叩いた。声にならない悲鳴をあげ、ゆっくりと振り返った)

かすみ「あ、歩夢、先輩」

歩夢「やっとこっち見てくれたね」

侑(歩夢は微笑んでいたが、かすみちゃんは震えていた)

侑(私は少し悪戯をしたくなった)

侑「かすみちゃん、そんなに震えてどうしたの?」

侑「さっきは「歩夢先輩には負けません!」とか「侑先輩といっぱいイチャイチャしちゃいます〜」って――」

侑「言ってなかったっけ?」

かすみ「ゆ、侑先輩っ」

侑(かすみちゃんは慌ててこちらを見るも――)

歩夢「へぇ。そんなこと言ってたんだ?」

侑(歩夢の言葉に顔が青ざめた)

256 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/05(月) 19:50:13 ID:Fr4pz7ak
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」

かすみ「は、はい」

歩夢「どうして侑ちゃんと付き合おうと思ったの?」

かすみ「それは……その、えっと」

侑(かすみちゃんは私を見る。とりあえず微笑んだ)

かすみ「……す、好きだからです」

歩夢「好き?」

かすみ「はい。侑先輩が……好きで好きで、大好き、だったから、です……」

かすみ「歩夢先輩とお付き合いしてるのに、浮気をしたのは……本当に申し訳ないと思ってます……」

かすみ「で、でも、かすみんは……侑先輩が大好きだったから……だから……」

かすみ「浮気とわかっていても……付き合いました……」

歩夢「ふーん」

257 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/05(月) 19:57:10 ID:Fr4pz7ak
かすみ「ごめんなさい……」

侑(かすみちゃんは涙目になりながらうつむいていた。歩夢はそれを微笑みながら見ている)

歩夢「そんなに侑ちゃんが好きなんだ」

かすみ「は、はい」

かすみ「な、なので……これから、3人で……仲良く、していけたら……いいな、と……」

歩夢「は?」

かすみ「ひぃ」

侑(歩夢の声に、かすみちゃんの肩はビクリと跳ね上がる)

歩夢「かすみちゃんが私の立場だとして、浮気相手に3人で仲良くしようって言われたら、笑顔で頷ける?」

かすみ「か、かすみんは……歩夢先輩と、なら……」

かすみ「な、仲良く……できると、思います……」

侑(歩夢が聞くと、かすみちゃんは声を震わせながら答えた。歩夢は最初微笑んでいたが、話終わる頃には無表情になっていた。かなり怒ってるみたいだ)

258 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/05(月) 20:02:36 ID:Fr4pz7ak
歩夢「それがかすみちゃんの答えなんだね」

かすみ「は、はい。なので――」

侑(歩夢はかすみちゃんに顔を近づける。かすみちゃんは軽い悲鳴をあげた)

歩夢「そんなの、口ではどうとでも言える。かすみちゃんは浮気をした立場だからそんなことが言えるんだよ」

歩夢「侑ちゃんと別れてよ。素直に別れるなら、今回の件は全て水に流してあげるから」

かすみ「え……」

侑(歩夢は微笑みながら言った。まさか歩夢がそこまで言うとは思ってなかったらしく、驚いていた)

歩夢「どうしたの?」

かすみ「い、いや……だって……」

かすみ「別れるのは、その、ちょっと……」

歩夢「“浮気”なのに?」

かすみ「……っ」

侑(“浮気”を強調すると、かすみちゃんはうつむいた)

259 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/05(月) 20:09:01 ID:Fr4pz7ak
歩夢「かすみちゃん、断言するよ。私は浮気相手とは仲良くできない。逆に、どうして仲良くできると思ったの?」

かすみ「……」

侑(かすみちゃんはうつむいたまま、顔を上げない)

歩夢「別れてくれるよね?浮気相手に拒否する権利なんてないよ。水に流すって言ってるんだからさ、素直に頷いた方が身のためだと思うけどね」

かすみ「……」

侑(かすみちゃんは返事をしなかった)

歩夢「ねぇ、かすみちゃん」

歩夢「返事はしなくていいからそのまま聞いて」

かすみ「……」

歩夢「浮気はよくないことだよ」

歩夢「喜ぶ人よりも悲しむ人の方が多い。子供じゃないんだから、そのくらいわかるよね?」

侑(歩夢は微笑みながら、優しく語りかけていた)

260 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/05(月) 20:13:35 ID:Fr4pz7ak
歩夢「いくら好きだからってさ、恋人がいるのに奪うような真似したらダメだよ」

歩夢「その恋人のことを考えなかったの?」

歩夢「恋人が悲しむってわからなかったの?」

歩夢「かすみちゃんは何も考えなかったの?」

歩夢「ねぇ、かすみちゃん」

かすみ「……っ」

かすみ「わかって、ます。歩夢先輩には悪いと……」

かすみ「申し訳ないと、思いました。でも、でも……」

かすみ「それ以上に……侑先輩が好きなんです……」

かすみ「侑先輩が、大好き……なんです……」

歩夢「……」

侑(かすみちゃんはうつむいたまま、涙声で話した。歩夢は話すのをただ見つめていた)

261 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 17:49:38 ID:W0ovu46I
歩夢「かすみちゃん、そんな建前はいいよ」

かすみ「え……?」

侑(歩夢の言葉にかすみちゃんは顔を上げる。驚きの表情を見せていた)

歩夢「私はかすみちゃんの“本音”が知りたいの」

侑(私は歩夢が何を言ってるのかわからなかった)

かすみ「……」

かすみ「私だって……」

かすみ「私、だって……侑先輩が好きなのに……」

かすみ「歩夢先輩だけ……侑先輩を独り占めするなんて、そんなの……ずるいじゃん……」

かすみ「ずるいよ……ずっと前からの幼馴染みで……。恋人なんて、ずるいよ……。ずるい……」

かすみ「わたし、だって……もっと前から知り合いたかった……」

かすみ「わたしが……侑先輩と、先に知り合ってたら……きっと……」

262 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 17:57:42 ID:W0ovu46I
かすみ「きっと、わたしが……侑先輩の隣に……いた、のに……」

かすみ「侑先輩の恋人は……わたしだったのに……」

かすみ「浮気なんて……しなかったのに……」

かすみ「どうして……わたしじゃなくて、歩夢先輩なの……」

かすみ「……っ、ひっ、うぅ……」

かすみ「わたしの方が……いい彼女、なのに……」

かすみ「わたしの方が……彼女にふさわしいのに……」

かすみ「ぐすっ、ひっく……うぁぁぁ……」

侑(かすみちゃんは泣きながらぽつりぽつりとつぶやいた。私が流すような涙じゃなくて、本物の涙だった)

侑(かすみちゃんがそんなことを思ってたなんて……)

侑(かすみちゃんには悪いけど、もし仮に、先に出会ったとしても、私は歩夢と結ばれてたはずだよ)

侑(だって、私の運命の相手は歩夢なんだから。それ以外は考えられない。歩夢以外と結ばれる運命は存在しない)

侑(本人には恥ずかしくて言えないけどさ♪)

侑(かすみちゃんと目が合った。大きな瞳から大粒の涙を流している)

かすみ「ゆう先輩……」

263 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 18:04:57 ID:W0ovu46I
かすみ「ねぇ、ゆう先輩……」

かすみ「こんな人のどこがいいんですか……」

かすみ「あんな大量のメッセージを……何も考えないで、自分の都合だけで送って……頭おかしいですよ……」

かすみ「重くて……小さな事ですぐ浮気だって喚いて、被害妄想が激しい……こんな、こんな……」

かすみ「こんな、重すぎる、最低な人の……どこがいいんですか……」

かすみ「わたしなら……そんなことしません……」

侑(他の人には歩夢がそんな風に見えるんだ。間違ってないとは思うけどね。実際歩夢は重いだろうし)

侑(でも、それがいいんだよ。重くて、束縛してくれて、私だけを想ってくれる歩夢がね。それが私の理想だよ)

侑(それに、歩夢の良さを理解できるのは私だけでいい)

かすみ「わたしなら……」

侑(かすみちゃんは私の方へと手を伸ばす。私の頬に触れる直前、歩夢に手首を掴まれ、小さく悲鳴をあげた)

かすみ「なんですか……」

歩夢「……」

かすみ「は、離して……」

侑(かすみちゃんが手を振りほどこうとするが、ビクともしない。手の甲には血管が浮き出ていた)

264 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 18:16:28 ID:W0ovu46I
かすみ「痛い……。ゆ、ゆう先輩……助けて……」

侑(涙を流しながら私を見つめている。瞳には恐怖や憎悪などの感情が入り乱れていた)

侑(歩夢の力で思いきり掴まれたら痛いのは経験済みだ。手首に痣ができるかもしれない。それはさすがにかわいそうだから、助け船を出すことにしよう)

侑「歩夢、離しなよ。痛がってる」

歩夢「……」

侑(歩夢の手首を握る力が強まる。かすみちゃんの顔が苦痛に歪んだ)

侑「歩夢、聞いてるの?」

侑(歩夢はこちらを一瞥すると、微笑んでいた。口に出すなと目で訴えていた。私はそれに従うことにした)

侑(まあ、歩夢なら傷つけたりはしないよね)

歩夢「好き勝手言ってくれるね。ひどいなぁ」

歩夢「ねぇ、かすみちゃん」

歩夢「そんなに私のことが嫌いなの?」

侑(歩夢は掴んでいた手を離した。かすみちゃんは手首を押さえている。痛そうだった)

かすみ「……」

265 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 18:49:05 ID:W0ovu46I
かすみ「先輩として、尊敬していますよ」

侑(痛みを堪えながら答える。歩夢はじっと見つめ――)

歩夢「私は“本音”が知りたいって言ったはずだよ」

かすみ「……」

侑(かすみちゃんは涙を拭い、歩夢を見つめた)

かすみ「大嫌い」

かすみ「あなたなんか、大嫌い」

かすみ「私の侑先輩と付き合ってる、あなたが憎い」

かすみ「侑先輩が一番大好きな、あなたが大嫌い」

かすみ「憎くて、大嫌いです」

侑「……」

侑(歩夢を嫌いな人がいるなんて、驚きを隠せなかった。歩夢はこんなにも素敵で、とてもかわいいのに……)

侑(いや、かすみちゃんが歩夢を嫌いな理由の大半は私か。完全な八つ当たりだと思うけどね。歩夢は何も悪くないよ)

歩夢「そっか。私はかすみちゃんのこと、好きだったよ。初めての後輩だし、私にもよく懐いてくれたし」

侑(歩夢は微笑み、かすみちゃんは睨んでいた)

266 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 18:55:07 ID:W0ovu46I
歩夢「結果がどうであれ、かすみちゃんの本音が聞けてよかった。嬉しかったよ」

歩夢「だけどね――」

歩夢「侑ちゃんはあなたのモノじゃない」

侑(歩夢は鋭く言い放った。かすみちゃんは目を伏せる)

かすみ「……」

かすみ「そんなの、わかってますよ」

かすみ「私のことなんて、好きでもなんでもないって」

かすみ「私はただ、都合よく利用されてるだけだって」

かすみ「歩夢先輩には、私では絶対に勝てないって」

かすみ「最初から、わかってました」

かすみ「ちょっとくらい夢を見たかったんです」

かすみ「好きな人と結ばれる夢を見たかったんです」

かすみ「本当に、幸せな夢でした」

侑(そう言うと、かすみちゃんは涙を流しながら微笑んだ)

267 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 19:00:37 ID:W0ovu46I
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」

かすみ「わかってますよ」

侑(かすみちゃんはゆっくりと立ち上がり、バッグを肩に掛けた)

侑「かすみちゃん?」

侑(私が話しかけると、涙を拭い、物悲しげに微笑んだ)

かすみ「侑先輩」

かすみ「ありがとうございました」

侑「え?」

侑(私は間の抜けた返事をした。かすみちゃんはそれを見てクスリと笑う)

かすみ「この2日間、本当に楽しかったです」

かすみ「侑先輩のおかげで幸せな夢を見れました」

かすみ「本当はデートにも行きたかったですけど、ふふ、もう諦めることにしました」

268 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 19:09:49 ID:W0ovu46I
侑(最初は何を言ってるのかよくわからなかった)

かすみ「お泊まりデートもしたかったです」

かすみ「一緒にお風呂に入ったり、同じ布団で寝たり」

かすみ「一緒に料理を作るのもいいですね。侑先輩の唐揚げ、食べたかったです」

かすみ「えへへ。考えれば考えるほど、止まらなくなっちゃいますね」

侑(でも――)

かすみ「侑先輩。楽しくて、幸せで、とっても甘くて、大切な思い出を、本当にありがとうございました」

侑(かすみちゃんの表情を見て、これは“別れの言葉”だとなんとなく理解できた)

かすみ「さようなら」

侑(かすみちゃんはお辞儀をして、入口へと歩いていく)

侑「かすみちゃん、待って」

侑(私の呼びかけに一瞬足を止めたが、こちらには振り返らず、そのままゆっくりとした足取りで去っていった)

侑「……」

侑(私はとりあえず、自販機で買ったお茶を一口飲んだ。苦いお茶の味が口の中に広がった)

269 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 19:18:57 ID:W0ovu46I
侑(私達は別れたってことになるんだと思う。さっきのは“別れの言葉”だ。私達の恋人としての関係は終わった)

侑(初めて恋人と別れた感想は、特になかった。悲しくもないし、嬉しくもない。普通だった)

侑(無理もないと思う。私に恋愛感情はないんだから)

侑(かすみちゃんと付き合った理由は、歩夢がどんな反応をするか知りたかったから。それだけだった)

侑(そこには恋愛感情なんてものは存在しなかった)

侑(それよりも私が驚いたのは、かすみちゃんが全て知ってたことだ。私に恋愛感情がないこことを気づいていた)

侑(表情や態度には出てないはずなのに、どうしてバレたんだろう。そこは人一倍気を使ってた)

侑(恋人として装うために、したくもないキスや、好きって言葉を何度も言ったのに。いつ見破られたの?)

侑(私はふと、今朝のLINEや花言葉を思い出した。気づかれる要素はそれしか思い浮かばなかった)

侑(完全に誤魔化せたと思ってたのにな。LINEの件は少しやりすぎたかもしれない)

侑(どうやら私は、かすみちゃんを甘く見ていたみたいだね。私の詰めも甘かった。反省しないといけないな)

侑(私がまだまだ未熟なのを今回で思い知った。いい勉強になったよ。かすみちゃんには感謝しないとね)

270 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 19:26:41 ID:W0ovu46I
侑(1回くらいはデートしてあげればよかったね。まさか2日で別れるとは思わないもん)

侑(歩夢に付き合ってることを告げた時点で、こうなるのは想定してたけどさ。歩夢は嫉妬深いし♪)

侑(好きだったよ、かすみちゃん。“友達として”、だけど)

歩夢「かすみちゃん、気づいてたよ」

歩夢「侑ちゃんに恋愛感情がないって」

侑(歩夢の言葉に顔を上げる。私は「そうみたいだね」と言った。一応申し訳なさそうにうつむく)

侑(私に恋愛感情がないのを知ってるのに、それでも付き合いたかったんだね。恋は盲目ってやつかな)

侑(そこまで好かれるなんて、悪い気はしないよ。だからと言って、私は別に好きにはならないけどね)

侑(私が好きなのは歩夢だけだもん。歩夢以外は愛さないって心に決めてるから。それは絶対に揺るがないよ)

歩夢「どうして好きでもないのに付き合ったの?」

歩夢「どうなるか考えなかったの?」

侑(「歩夢がどんな反応をするか知りたかったから」……なんて、言えるわけないよね)

271 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 19:39:49 ID:W0ovu46I
歩夢「かすみちゃんの心を弄んで、なんとも思わないの?好きでもないのに付き合って、キスして、えっちして」

歩夢「かすみちゃんの言葉を聞いて、涙を見て、何も思わなかったの?」

侑(なんて答えようか悩んでいると、歩夢は更に質問を投げかけてきた。私は「ごめん」と謝る)

侑(大嫌いって言われた子のために、そこまで怒るなんてね。さすが歩夢だよ。私には到底真似できそうにないや)

侑(普通だったら、申し訳ない気持ちになったり、罪悪感を感じたりするんだろうけど、私は何も感じなかった)

侑(蟻をうっかり踏み潰しても、申し訳ない気持ちにはならない。地面に頭を擦り付けて土下座なんてしない)

侑(きっと、私にとって歩夢以外の人はその程度の認識なんだろうね。道端に落ちてる石ころと同じ)

侑(自分の未熟さに気づけたから、感謝はしてるけどね。次はもっと上手にやれるはずだ。こんなミスはもうしない)

侑(それに、かすみちゃんのおかけで、歩夢の色々な表情が見れた。作戦は大成功だったね♪)

侑(もう少し付き合ってたら、もっと歩夢の嫉妬心を燃やせたかもしれないと思うと、残念だよ)

侑(軽いキスじゃなくて、舌も絡めたらよかったな。さすがにえっちは図書室だとできないけどさ)

侑(まあ、別れたあとだから、何を考えても遅いけどね。あとでLINE送ったら復縁できないかな?)

歩夢「侑ちゃん、聞いてるの?」

侑「え?」

侑(歩夢の顔を見ると、少し怒っていた。無視されたと思っているのかもしれない)

272 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/11(日) 19:46:50 ID:W0ovu46I
侑「ごめん、考え事してた。かすみちゃんの件は、その、本当に申し訳ないと思ってるよ。反省してる」

歩夢「……そっか」

侑(歩夢はつぶやくと、うつむいてしまった)

侑「歩夢?」

侑(歩夢の髪に触れようとすると、顔を上げた。目が少し潤んでいる。頬を撫でようとしたら、手を振り払われた)

歩夢「私、信じてたんだよ」

歩夢「今朝、約束したよね。一緒に変わろうって」

歩夢「私、信じてたんだよ。侑ちゃんのこと、信じてたんだよ。信じてた、のに……」

歩夢「どうして、約束破ったの……。好きでもないのに、かすみちゃんと付き合って……。ひどいよ……」

歩夢「一緒に、変わろうって、約束したのに……。ゆ、指切りも、したのに……。どうして……」

歩夢「侑ちゃん、どうして……」

侑(歩夢は涙声になり、次第に涙をぽろぽろと流していた。大粒の涙が頬を伝い、スカートにこぼれ落ちた)

侑(歩夢の表情に私はとても興奮した)

273 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 09:59:41 ID:fvv89IYw
侑「ごめんね、歩夢」

侑(目に溜まった涙を指でそっと拭う。頬に触れると、涙でうっすらと濡れていた。歩夢の瞳は私をずっと見つめていた)

歩夢「どうして、約束破ったの……。今朝、指切りで約束したのに……。約束したばかりなのに……」

歩夢「私を何度も裏切って、ひどいよ……。さっきも、私の目の前でかすみちゃんとキスして……」

歩夢「ねぇ、侑ちゃん……。私がどんな気持ちで……2人のキスを見てたと思うの……?」

侑「ごめんね」

侑(もう一度謝ると、私は歩夢の頬にキスした。キスの味は涙でしょっぱかった)

歩夢「謝るならしないでよ……。わ、わざと見せつけるように、キスして……私の反応を見て、楽しんでるの……?」

歩夢「私、信じてたんだよ……?」

歩夢「今度こそは……って、信じてたのに……」

歩夢「平気で約束破って、また裏切って……。どうして、そんなひどいことができるの……」

侑(そんなに私を信じてくれてたんだね。嬉しいよ)

侑(好きな人の泣いてる姿を見て、喜びや興奮を感じてる私は異常なのかな?ううん、私は正常だよね)

侑(「約束破ってごめん」と言いながら、歩夢を抱き寄せる。歩夢は胸に顔を埋めた。相変わらず好きみたいだ)

274 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 10:05:16 ID:fvv89IYw
歩夢「侑ちゃん……」

侑「うん?」

侑(歩夢の頭を撫でながら微笑む。歩夢は顔を埋めたまま話を続けた。制服の胸部分が涙で濡れてるのがわかる)

歩夢「私、不安なの……。これ以上裏切られたら、侑ちゃんを信じられないかもしれない……」

歩夢「侑ちゃんを信じたいのに……好きな人を、恋人を、信じ、たいのに……。ぅ、うぅ……」

歩夢「……っ。ぐすっ、ひっく……」

歩夢「侑ちゃん、私を……」

歩夢「私を……信じさせて……」

歩夢「二度と約束を破らないって、裏切らないってこの場所で誓ってよ……。お願いだから……」

侑「歩夢……」

侑(歩夢の抱きしめる力が強くなる。どんな表情をしてるかわからないけど、きっと涙でくしゃくしゃだろう)

侑(ふふ、かわいいなぁ。顔を見れないのが残念だよ)

275 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 10:13:56 ID:fvv89IYw
侑「歩夢、不安にさせてごめんね」

侑「何度も悲しい思いをさせるなんて、恋人失格だよね。ごめんね。もう絶対に約束破らないから」

侑「浮気なんてしない。歩夢を裏切ったりしないから」

侑(歩夢はゆっくりと顔を上げると、やはり涙を流していた。唇にキスしたかったが、なんとか我慢した)

侑(キスする代わりに、頬を優しく撫でる。歩夢はくすぐったそうに目を細めた。かわいい)

歩夢「信じていいの……?」

侑「うん。私が言っても説得力ないと思うけど、信じてほしい。今度こそ歩夢に相応しい恋人になってみせるよ」

歩夢「侑ちゃん……」

侑(涙を拭い、嬉しそうに微笑んだ。私も微笑み返すと、歩夢は私の右手を掴んだ)

侑「歩夢?」

侑(歩夢の目を見る。瞳には軽蔑の色が強く浮かんでいた)

侑(そして、小指を握ると、躊躇することなくへし折った。ぽき、と小さな音がした。手の甲に指がくっつきそうだった。私はその光景をただ見つめていた)

276 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 10:25:09 ID:fvv89IYw
侑(最初は何が起きたのかわからなかった。でも、折れた指と、歩夢の軽蔑に満ちた瞳を見ると、歩夢が折ったのだと理解した)

侑(痛みがじわじわとやってくる。指に触れると、激痛が走った。顔が苦痛に歪んでいるかもしれない)

侑(汗が、涙が止まらない。自分の意思と関係なく涙を流すのは久しぶりだった。こんなに痛いとは思わなかった)

侑(昨日のは痛みよりも苦しさの方が強かった。今回の痛みは想像を絶するものだった)

侑(小指が折れただけなのに……)

侑(小指には触れられないから、手首を押さえる。歩夢と目が合った。無表情で私を見つめていた)

歩夢「嘘つき」

侑「わ、私は嘘、なんて……」

侑(途切れ途切れ言うと、歩夢は折れた指を強く握った。声にならない悲鳴をあげそうになるも、口を押さえられ、小さなうめき声にしかならなかった)

歩夢「嘘つき、嘘つき、嘘つき。そんな薄っぺらい言葉でまた私を騙そうとしたんだね」

歩夢「昨日、約束を破ったら、絶対に許さないって言ったよね。だから侑ちゃんが全部悪いんだよ」

侑(歩夢は微笑んでいる。私も同じように微笑み返そうと思うも、痛みで苦笑いにしかならなかった)

277 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 10:34:30 ID:fvv89IYw
歩夢「反省してるなら、今回限りは許そうと思ったよ。だけど、侑ちゃんには反省の色が全然見られないんだもん」

侑「あゆ、む――」

歩夢「――侑ちゃん」

侑(歩夢の声は酷く冷たかった。怒った歩夢は何度も見てきたけど、これほど怒ってるのは初めて見たかもしれない)

侑(歩夢はこれまで、私に危害を加えたことは一度もなかった。浮気をしても、叱られるだけだった)

侑(喧嘩をしたとしても、手を出すことは絶対になかった。歩夢はそういうことはできない優しい子だと思っていた)

侑(今回の件で、歩夢の堪忍袋の緒が切れてしまったみたいだ。優しい歩夢でも、ついに我慢の限界を超えた)

侑(まるで小枝を折るように、私の小指を何の躊躇もなく折っちゃうんだもんね。歩夢に指を折られるのは構わないけど、痛いものは痛い)

歩夢「痛い?」

侑(歩夢は微笑みながら問いかける。「痛くないよ」と言った。私の声は震えていた)

歩夢「痛いよね。でもね、私の方がもっと痛いよ」

歩夢「好きな人に何度も裏切られて、私の心は痛みでいっぱいだよ。大好きな人に裏切られる気持ち、わかる?」

歩夢「わからないよね。わからないから平気で約束を破ったり、裏切ったりするんだもんね」

278 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 10:46:26 ID:fvv89IYw
歩夢「これはお仕置きだよ。侑ちゃんに対するお仕置き」

歩夢「そして、警告。二度と浮気をしないようにね」

侑「……」

侑(歩夢を見つめる。涙で視界が歪んでいてよく見えないけど、声色や話し方を聞く限り、上機嫌みたいだ)

歩夢「言葉でわからないなら、行動で示すしかないもんね。今までの私は優しすぎたんだと思う。だから侑ちゃんも調子に乗っちゃったんだよね」

歩夢「何度も浮気をしても、謝ったら許してた。いつか変わってくれるのを信じて、ずっと待ってた」

歩夢「それだけだとダメだったね。恋人の私が正してあげないと」

歩夢「片方が間違えたのなら、もう片方が正せばいい。それが恋人の正しい姿なんだよね。ただ愛し合うだけが恋人じゃない。その事にようやく気づけたよ」

歩夢「私が侑ちゃんの歪んだ心を、きちんと正してあげるからね。歪んだ方法でしか愛情表現ができない――」

歩夢「かわいそうな侑ちゃんを、私が元に戻してあげる」

歩夢「二度と浮気をしたいなんて思わないように、私のことだけしか考えられないように」

侑(歩夢の言葉に、胸の鼓動が早くなるのを感じた。私は何も間違えていなかった。私は全て正しかった)

侑(これでようやく、私の想いが叶ったよ。歩夢が元に戻ってくれた。前よりも更に歪んで状態になって)

279 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 10:59:45 ID:fvv89IYw
侑(歩夢の言う通りだよ。片方が間違えたのなら、もう片方が正せばいい。それが恋人の正しい姿だもんね)

侑(歩夢が間違えそうになったから、私が正したんだよ。歩夢は私のために変わろうとしてくれたけど、そんなの私は望んでいなかった)

侑(歩夢は今のままで十分に魅力的なんだからさ、変わる必要なんてない。私に相応しい彼女になりたいなら、もっと束縛したり、愛してくれるだけでいいんだよ♪)

侑(さっきまで小指に激痛が走ってたのに、いつの間にか痛みが和らいでいた。痛みよりも快楽の方が勝っていた)

侑(歩夢の愛情表現だと思ったら、痛みなんて全然感じないよ。えへへ、なんか頭がふわふわしてきた)

侑(歩夢、歩夢、歩夢♡)

侑(私は歩夢にキスをしていた。最初は歩夢も驚いていたが、腰に手を回し、舌を絡ませてきた)

侑(ちゅぷちゅぷと舌と唾液を絡ませ合う音が図書室に響く。人に見られる心配もあったけど、そんなのはどうでもよかった。私はただ歩夢とキスしたかった)

侑(3分近くキスしてたと思う。唇を離すと、どろっとした唾液が糸を引いていた。こんなに長いキスは久しぶりだった)

侑(肩でゆっくりと息をする。垂れた唾液を指で拭い、口に含むと甘かった。歩夢の唾液は甘くて大好きだ)

侑(さっきよりも頭がふわふわしてる。キスをするだけでとても幸せな気持ちになれた)

侑(それにしても、歩夢は本当にキスが上手になったよね。昔は私の方が歩夢にキスの仕方を教えてたのに)

侑(付き合い始めの頃は、舌を絡めるのも恥ずかしがってたっけ。歩夢の成長を実感できて、私の頬は自然と緩んでいた)

280 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 11:08:58 ID:fvv89IYw
歩夢「侑ちゃん?」

侑(不思議そうに私を見つめる。私は微笑み、歩夢の髪を優しく撫でた。シャンプーの香りがふわりと漂った)

侑「歩夢、大好きだよ」

歩夢「私も大好き」

侑(歩夢は私に顔を近づけ、頬にキスをした。キスされた部分が少しずつ熱くなっていくのを感じる)

歩夢「ごめんね。指、痛かったよね」

侑(私の指をそっと握る。小指の付け根が紫色に変色していた。こんな短時間で腫れるものなんだ)

歩夢「私だってこんなことしたくないよ。だけどね、全部侑ちゃんのためなんだよ。わかってくれるよね?」

侑「わかってるよ。今までごめんね。これから先、歩夢には絶対に悲しい想いなんてさせないから」

侑(これは本音だ。もう浮気をする必要はない。だって、歩夢は私だけを見てくれるはずだもんね)

侑(私が浮気をしないように、ずっと監視しないといけないもん。他のことを考えてる暇なんてないよ♪)

侑(歩夢の悲しい顔が見れないのは残念だけど、しかたないか。歩夢の笑顔も同じくらい好きだから、それで我慢しよう)

侑(歩夢は頷くと、私に小指を差し出してきた)

281 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 11:16:51 ID:fvv89IYw
歩夢「今度こそ約束しよう?」

侑(歩夢は微笑みながら私を見つめている。いつもの癖で右手を出そうとしたが、左手の小指を差し出した)

侑「歩夢、一緒に暮らさない?」

歩夢「へ?」

侑(歩夢は顔を真っ赤に染め、ぽかんとした表情をしていた)

侑「卒業するまでどっちかの家で一緒に暮らして、卒業したら2人で部屋を借りようよ。小さなアパートでもなんでもいいからさ」

歩夢「き、急だね。いきなりでびっくりしちゃった」

侑「急じゃないよ。ずっと前から考えてた。歩夢と一緒に暮らしたいなって。歩夢は私と暮らしたくない?」

歩夢「そういうわけじゃないけど……」

侑(歩夢は差し出した小指を引っ込め、もじもじとさせていた。このしぐさも本当にかわいい)

侑「一緒に暮らしてくれないなら、また浮気しちゃうかも」

侑(私が悪戯っぽく微笑むと、歩夢は顔をムッとさせた。さすがに本気じゃないとわかってるらしい)

282 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 11:25:53 ID:fvv89IYw
歩夢「そうしたら、次は左手の小指を折っちゃうよ?」

侑「歩夢になら何本でも折られていいよ」

歩夢「侑ちゃん?」

侑(歩夢は頬を膨らませ、こちらを見つめている。私は「ごめん」と謝り、頬を優しく撫でた)

侑「冗談だよ。あ、一緒に暮らしたいっていうのは本気だけどね。私と一緒に暮らしてくれる?」

侑(歩夢は顔を真っ赤にさせてうつむいた。えっちもキスもしてるし、ほくろの数だって知ってる仲なのに、一緒に暮らす程度で今更恥ずかしがる必要なんてないと思うけどな)

侑(そのまま見つめていると、歩夢はゆっくりと顔を上げ、頬を赤らめながらコクコクと頷いた)

侑「いいの?」

歩夢「……うん。私も、侑ちゃんと一緒に暮らしたい。卒業したあとも賛成だよ。2人でいい部屋探そうね」

侑「ありがとう」

侑(私は微笑み、もう一度小指を差し出した。歩夢も恥ずかしそうに小指を差し出す。そして、指を絡めた)

侑(歩夢の指は、やっぱりいつ見ても綺麗だった)

283 ◆RZWV3S9lzE:2022/12/12(月) 11:37:36 ID:fvv89IYw
侑(指切りの約束を終えると、どちらからともなく、唇を重ねた。歩夢とキスする瞬間が一番幸せだ)

歩夢「もう約束破ったらダメだからね?」

侑「もちろん♪」

侑(私達はもう一度キスをした。今度は舌を絡めるキスで、さっきよりも濃厚だった)

侑(音で気づかれちゃうかもな。まあ、いいか)

侑(今は歩夢とのキスを楽しもう)

侑(目をつぶってキスに集中する。私はふと、心の隅からドス黒い感情が沁み込んでくるのを感じた)

侑(歩夢と約束したんだ。もう浮気なんてしない。する必要がない。それはわかってるのに――)

侑(また浮気をしたらどうなるんだろう。次は指だけじゃ済まないかもしれない。大変なことになるかも)

侑(もっと愛してくれるかもしれない。もっとお仕置きしてくれるかもしれない。そう考えると、ドス黒い感情は更に膨れ上がった。なぜか心がときめいていた)

侑(馬鹿は死ななきゃ治らないって言うけど、本当かもね)

侑(目を開けると、歩夢も同じように目をつぶっていた。私は心の中で歩夢の名前を何度も呼んだ)

侑(歩夢、歩夢、歩夢。大好きだよ――)

侑(私の“歪んだ愛情”は、もう自分の意思では止められそうにないみたいだ。私は再び目をつぶり、歩夢とのキスに集中した。――もっと愛してね、歩夢。私はただ、歩夢に愛してほしいだけなんだよ♡)

おしまい


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