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侑「歪んだ愛情」
1
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 17:47:04 ID:SSQ4kvg2
――部室
侑「〜♪」
かすみ「侑先輩〜。何見てるんですか?」
侑「ん?歩夢とのLINEを読み返してるんだよ」
かすみ「へ〜〜。真剣に見てるから、スクールアイドルの動画かと思ってましたよ」
侑「あはは。かすみちゃんも一緒に見る?」
かすみ「いいんですか?」
侑「いいよー。見られて困るような会話してないしね」
かすみ「ではお言葉に甘えて〜」
侑「隣おいで」ポンポン
かすみ「はーい♪」ストン
かすみ(2人って普段はどんな会話してるんだろ?楽しみ〜♪)
2
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 17:52:11 ID:SSQ4kvg2
歩夢:侑ちゃん、今何してるの? 20:26
侑:横になりながら漫画読んでる 20:27
歩夢:そうなんだ。どんな漫画? 20:27
歩夢:侑ちゃん? 20:29
歩夢:侑ちゃん? 20:29
歩夢:侑ちゃんどうしたの? 20:29
歩夢:侑ちゃん返事して 20:30
歩夢:侑ちゃん? 20:30
歩夢:侑ちゃん? 20:30
歩夢:侑ちゃん? 20:30
歩夢:おーい 20:30
歩夢:侑ちゃーん 20:31
3
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 17:56:24 ID:SSQ4kvg2
歩夢:侑ちゃん返事してー 20:31
歩夢:侑ちゃーん 20:31
歩夢:不在着信 20:32
歩夢:不在着信 20:33
歩夢:侑ちゃんどうしたの? 20:33
歩夢:漫画面白い? 20:33
歩夢:侑ちゃん? 20:33
歩夢:不在着信 20:34
歩夢:不在着信 20:36
歩夢:不在着信 20:37
歩夢:電話出てよ 20:38
歩夢:不在着信 20:39
4
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 18:38:28 ID:SSQ4kvg2
歩夢:不在着信 20:40
歩夢:不在着信 20:42
歩夢:不在着信 20:43
歩夢:侑ちゃん大丈夫? 20:43
歩夢:侑ちゃん? 20:43
歩夢:侑ちゃん? 20:43
歩夢:未読スルーじゃないよね? 20:44
歩夢:侑ちゃん? 20:44
歩夢:おーい 20:44
歩夢:侑ちゃーん 20:44
歩夢:侑ちゃーん 20:45
歩夢:侑ちゃん返事して 20:45
5
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 18:43:32 ID:SSQ4kvg2
歩夢:侑ちゃんってばー 20:45
歩夢:やっぱり未読スルーしてるよね? 20:45
歩夢:怒るよ? 20:45
歩夢:不在着信 20:47
歩夢:侑ちゃーん 20:47
歩夢:侑ちゃーん 20:47
歩夢:侑ちゃーん 20:47
侑:ごめん、ソシャゲのスタミナ消化してた 20:48
歩夢:そうなんだ! 20:48
歩夢:返事がないから何かあったのかと思ったよ〜 20:48
歩夢:ちなみに何のソシャゲ? 20:48
かすみ(このあとすぐ侑先輩はお風呂に入ったらしく、1時間以上も似たようなメッセージが投下されていました)
6
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 18:48:07 ID:SSQ4kvg2
かすみ「ちょ、えっ。なんですかこれ」
侑「昨日のLINEだよ」
かすみ「そういうことじゃないですよ。メッセージの量、明らかにおかしくないですか?」
かすみ「しかもずっと休まずに送ってるみたいだし……」
侑「みたいだねー。暇なんじゃない?」
かすみ「えぇ……。暇で済ませちゃうんですか……」
侑「歩夢、かわいいよね〜」
かすみ「へ?」
侑「歩夢、かわいくない?」
かすみ「歩夢先輩がかわいいのは認めますけど、いきなり話が変わったのでびっくりしただけです」
侑「こんなに必死にメッセージを送ってくる歩夢、かわいいよね。ときめいちゃうよ!」
かすみ「は、はあ」
7
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 18:51:03 ID:SSQ4kvg2
かすみ(侑先輩、何言ってるんだろう)
かすみ「いつもこんな感じなんですか?」
侑「まあね〜」
かすみ「その、大変ですね」
侑「なにが?」
かすみ「ですから、こんなに大量のメッセージが送られてくるわけですし」
侑「うん?」
かすみ「迷惑じゃないんですか?」
侑「どうして迷惑なの?」
かすみ「どうしてって……」
侑「?」
かすみ(言っちゃっていいかな?)
8
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 18:55:27 ID:SSQ4kvg2
侑「かすみちゃん?」
かすみ「あー、えっと」
かすみ「こんなに大量のメッセージを送られてきたら……その、普通は迷惑だと思うんですけど……」
かすみ「かすみんだったら、いくら仲良い友達でも着信拒否しちゃうかもです」
侑「着信拒否?」
かすみ「通知音とかうるさいですし……」
侑「ふーん。私だったら嬉しいけどなー」
かすみ「嬉しい、ですか?」
侑「うん。私のために何時間もメッセージ送ってくれるのって嬉しくない?」
侑「私って愛されてるなー、って感じちゃうよね?」
かすみ「そ、そうなんですか」
かすみ(ここで同意を求められても困ります……)
9
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:00:45 ID:SSQ4kvg2
侑「うんうん♪」
かすみ(私はよくわからないけど、侑先輩が嬉しそうならそれでいいのかな?)
侑「だから未読スルーもよくやるんだよね〜」
かすみ「はい?」
侑「歩夢ってね?数分返事が来ないだけで、こっちが返事をするまでずっとメッセージ送ってくるからさ〜」
侑「それが嬉しくてつい、未読スルーしちゃうんだ♪」
かすみ「へ、へー」
侑「ちなみになんだけど、私が未読スルーをしたまま寝ちゃったときなんか朝までメッセージ送ってたよ」
かすみ「あ、朝まで??」
侑「吹き出しが999になってた♪」
かすみ「へー、それは、まあ、なんというか……」
かすみ「すごいですね……」
10
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:05:41 ID:SSQ4kvg2
侑「かわいいよね〜」
かすみ「あはは……」
かすみ(隣同士なんだから、気になるなら家に行けばいいのに……。朝までメッセージを送り続けるって……)
かすみ(歩夢先輩ってちょっと変わってるなぁ……)
かすみ(本人の前では口が裂けても言えないけど……)
侑「もっと見たい?」
かすみ「えっ、それはその」
かすみ「……少し気になります」
侑「あはは。じゃあ、見ていいよ。はい」スッ
かすみ「え?かすみんが操作するんですか?」
侑「ただスクロールするだけでしょ?」
かすみ「そ、そうですけど」
11
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:09:59 ID:SSQ4kvg2
かすみ「えっと、いいんですか?」
侑「もちろん。私もそろそろ指が疲れてきたし」
侑「あ、メッセージ来たら返してね?」
かすみ「わかりました。では、失礼します」スッ
侑「はーい」ポフ
かすみ「ひゃっ」ビク
侑「かすみちゃん?」チラ
かすみ「な、なんでもないです」
侑「ふーん?」
かすみ(い、いきなり密着してくるなんて……)
かすみ(少し顔を横に向けたらキスできちゃいそうな距離だよね……)
かすみ(……侑先輩、いい匂いだなぁ)スッスッ
12
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:16:24 ID:SSQ4kvg2
歩夢:侑ちゃん、起きてる? 3:17
歩夢:こんな時間に起きてるわけないよね 3:17
歩夢:ごめんね 3:17
歩夢:私、侑ちゃんが大好き 3:17
歩夢:侑ちゃんは私のこと、どう思ってる? 3:18
歩夢:最近の侑ちゃん、そっけないもんね 3:18
歩夢:私と一緒にいてもつまらない? 3:18
歩夢:それとも他に好きな人ができた? 3:19
歩夢:ねぇ、侑ちゃん、答えてよ 3:19
歩夢:本当は私のこと嫌いなんじゃないの? 3:19
歩夢:ねぇ、侑ちゃん 3:19
歩夢:侑ちゃん、大好きだよ 3:19
13
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:22:19 ID:SSQ4kvg2
歩夢:侑ちゃんが私のこと嫌いでも、私は侑ちゃんが大好き 3:20
歩夢:ねぇ、覚えてる?幼稚園の頃 3:20
歩夢:大きくなったら私と結婚してくれるって言ったよね? 3:20
歩夢:あのときね、私とっても嬉しかったんだよ 3:21
歩夢:あの日のことは、今でもずっと覚えてる 3:21
歩夢:今でも時々夢に出てくるくらいだもん 3:21
歩夢:あの頃は侑ちゃんも私を好きでいてくれたよね? 3:22
歩夢:今は私のこと、好きじゃないの? 3:22
歩夢:私は大好きだよ 3:22
歩夢:侑ちゃんはどう? 3:22
歩夢:侑ちゃん 3:23
歩夢:不在着信 3:24
14
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:27:37 ID:SSQ4kvg2
歩夢:不在着信 3:25
歩夢:不在着信 3:27
歩夢:電話出てくれないの? 3:27
歩夢:そっか、寝てるもんね 3:27
歩夢:ごめんね 3:28
歩夢:侑ちゃん、大好き 3:28
歩夢:結婚式のときは私、和装よりも洋装の方がいいな 3:28
歩夢:純白のウェディングドレスを着るのが私の夢なの 3:29
歩夢:侑ちゃんはどっちがいい? 3:29
歩夢:私としては侑ちゃんはタキシードが似合うと思うんだよね 3:29
歩夢:あ、もちろんウェディングドレスも似合うよ? 3:30
歩夢:だって侑ちゃんは一番かわいいんだもん 3:30
15
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:31:25 ID:SSQ4kvg2
歩夢:でも、侑ちゃんにはやっぱり、タキシードを着てほしいな、なんて 3:30
歩夢:えへへ、いきなりこんなこと言われても困るよね 3:31
歩夢:ごめんね 3:31
歩夢:好きだよ、侑ちゃん 3:31
歩夢:不在着信 3:32
歩夢:不在着信 3:34
歩夢:大好き 3:34
侑:あゆむ 3:35
歩夢:侑ちゃん! 3:35
歩夢:スタンプ 3:35
歩夢:ごめんね、起こしちゃった? 3:35
侑:うん 3:36
16
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:35:16 ID:SSQ4kvg2
歩夢:ごめんなさい 3:36
歩夢:寝ようと思っても、なかなか寝付けなくて 3:37
歩夢:迷惑だよね、ごめんね 3:37
侑:別に迷惑じゃないよ 3:37
歩夢:本当に? 3:37
侑:うん 3:38
歩夢:うそ、本当は迷惑だって思ってるくせに 3:38
歩夢:私のこと嫌いなんでしょ? 3:38
侑:違うよ 3:38
歩夢:隠さなくていいよ。嫌いなんだよね? 3:38
歩夢:最近の侑ちゃん、そっけないもん 3:39
歩夢:全然かまってくれない 3:39
17
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:39:02 ID:SSQ4kvg2
歩夢:私はこんなにも侑ちゃんが好きなのに 3:39
侑:私も歩夢が好きだよ 3:39
歩夢:嘘つかないでよ 3:39
歩夢:嫌いならはっきり言ってよ 3:39
歩夢:もうメッセージ送らないから 3:40
侑:好きだよ 3:40
歩夢:嘘ばっかり 3:40
歩夢:もう私からはメッセージ送らないから 3:40
歩夢:ブロックしていいよ 3:40
侑:わかった、おやすみ 3:41
歩夢:そっち行っていい? 3:48
かすみ「えぇ……」
18
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:43:13 ID:SSQ4kvg2
かすみ「もうメッセージ送らないって言ってるのに、10分も経たないでまた送ってるし……」
侑「あはは、かわいいでしょ」
かすみ「どうやらかすみんと侑先輩のかわいいの認識は少し違うみたいですね」
侑「え?」
かすみ「んんっ。なんでもないです〜」
侑「そっか。ほら、続き続き」
かすみ「まだあるんですか……」スッスッ
侑:いいよ 3:49
歩夢:ごめんね 3:49
歩夢:侑ちゃんのこと考えたら止まらなくて 3:49
歩夢:ごめんなさい 3:49
侑:気にしないで 3:50
19
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:46:36 ID:SSQ4kvg2
歩夢:私のこと好き? 3:50
侑:好きだよ 3:51
歩夢:嬉しい 3:51
歩夢:ありがとうね 3:51
歩夢:私も好きだよ 3:51
歩夢:侑ちゃん大好き 3:52
歩夢:卒業したら結婚しようね 3:52
侑:そうだね 3:52
歩夢:楽しみだな〜 3:52
歩夢:子供は2人くらい欲しいね 3:52
歩夢:もう名前も決めてあるんだ 3:53
歩夢:聞きたい? 3:53
20
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 19:50:30 ID:SSQ4kvg2
侑:鍵開けといたよ 3:54
歩夢:子供の名前聞きたいよね? 3:54
歩夢:1人目の名前はね 3:54
侑:あとで聞かせてね。とりあえずこっちおいで 3:55
歩夢:わかった、すぐ行く 3:55
歩夢:侑ちゃん大好き 3:55
侑「これで今朝の分は終わりかな?」
かすみ「そうですか……」
侑「どうかした?」
かすみ「いや、その、歩夢先輩って……」
侑「うん?」
かすみ(重いですよね、なんて言えるわけないか……)
21
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:03:54 ID:SSQ4kvg2
かすみ「いえ、なんでもないです」
侑「?」
かすみ(私の知ってる歩夢先輩は優しくて素敵なのに、侑先輩と2人きりだといつもこうなのかな)
かすみ(重い、重すぎるよ。結婚の話までしてるし)
かすみ(子供の名前も考えてるとかやばいでしょ)
かすみ(2人はまだ高校生なのに)
かすみ(重いってレベルじゃないよね)
かすみ(そもそも女同士で子供って作れるの?)
かすみ(というか……)
かすみ「あの、侑先輩」
侑「ん?」
かすみ「2人って……お付き合いしてるんですか?」
侑「んー、うん。まあね」
22
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:08:45 ID:SSQ4kvg2
かすみ「全然知らなかったです……」
侑「まあ、言うほどのことじゃないし」
かすみ「いつからお付き合いを?」
侑「いつからだろ?」
侑「よく覚えてないけど、中学生の頃には付き合ってたと思う」
かすみ「そ、そんなに前からなんですか」
侑「うん♪」
かすみ「へー……」
かすみ「じゃ、じゃあ、キスとか、してるんですか?」
侑「キスなら今朝もしたよ?」
かすみ「……っ」
かすみ(あの侑先輩がキスしてるなんて……)
23
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:14:35 ID:SSQ4kvg2
かすみ(そんなイメージ、全然ないな……)
かすみ(侑先輩ってそういうの疎そうだし……)
侑「かすみちゃんはキスしたことある?」
かすみ「か、かすみんですか?ありませんよぉ〜」
かすみ「かすみんの恋人は〜、ファンのみんなだし〜」
侑「ふーん。私とキスしてみる?」
かすみ「えっ」
かすみ「な、何言ってるんですか?」
かすみ「そ、そんなことしたら、浮気になりますよ!」
かすみ「侑先輩は歩夢先輩と付き合ってるのに……!」
侑「そんなに深く考えなくていいよ。キス程度で浮気になるわけないじゃん?」
かすみ(侑先輩何言ってるの……)
24
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:20:43 ID:SSQ4kvg2
かすみ(ま、まあ、私だって……侑先輩とならキスしてもいいと思ってるけど……)
かすみ(歩夢先輩に知られたら絶対殺される)
かすみ(私まだ死にたくないもん)
侑「かすみちゃん?」プニプニ
かすみ「ほっぺをぷにぷにしないでくださいっ」
侑「かすみちゃんのほっぺ、柔らかくて好きだな〜」
かすみ「もうっ。からかわないでくださいよぉ〜」
侑「からかってないのに。それで、キスする?」
かすみ「しませんっ!」
侑「ちぇ、かすみちゃんにフラれちゃった〜」
かすみ「まったく……」ハァ
かすみ(侑先輩ってば、勘違いするようなこと言わないでほしいよね。……続き見よっと)スッスッ
25
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:26:16 ID:SSQ4kvg2
かすみ「ん〜〜」スッスッ
かすみ「あとは普通ですね〜」スッスッ
かすみ(学校だとあまりLINEしてないみたい)
かすみ(お昼を一緒に食べようとか当たり障りのない内容ばかりだね。こっちの方が安心するけど)
かすみ(家だとあんな風になるのかな?)
かすみ「侑先輩、トーク遡っていいですか?」
侑「いいよー」
かすみ「ありがとうございます♪」ポチポチ
かすみ(あまり見たくないのに、なぜか気になってしまう)
かすみ(怖いもの見たさ、かな?)
かすみ(とりあえず1週間前から見てみよう)
かすみ「……」スッスッ
26
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:30:01 ID:SSQ4kvg2
歩夢:侑ちゃん、また浮気したでしょ
侑:何の話?
かすみ(い、いきなり修羅場が……。また?)
歩夢:しらばっくれないでよ
侑:だから何の話?
歩夢:素直に謝ったら許してあげるから
侑:私は何も悪いことしてないのに謝れないよ
歩夢:侑ちゃん
歩夢:侑ちゃん
歩夢:侑ちゃん
歩夢:侑ちゃん
侑:私が浮気をしたと思う理由は?
歩夢:見たもん
27
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:33:47 ID:SSQ4kvg2
侑:見たってなにを?
歩夢:後輩の子と親しそうに話してた
歩夢:これって浮気だよね?
侑:ただ話してただけだよ?
歩夢:手も繋いでた
侑:手くらい誰でも繋ぐでしょ
歩夢:私と付き合ってるのに
歩夢:他の子と手を繋ぐなんてひどいよ
歩夢:立派な裏切り行為じゃないの
歩夢:私のこと嫌いなの?
歩夢:私と別れたいと思ってるの?
歩夢:それならそうとはっきり言ってよ
28
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:36:31 ID:SSQ4kvg2
侑:違うよ
歩夢:何がどう違うの?
侑:歩夢、好きだよ
侑:好きな人がいるのに浮気なんてしないよ
歩夢:ほんと?
侑:本当だよ
歩夢:じゃあ謝って
侑:ごめんね
歩夢:うん
歩夢:もう浮気しないでね?
侑:わかってるよ
歩夢:あとでキスしてくれる?
29
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:49:37 ID:SSQ4kvg2
侑:もちろん
歩夢:それなら許してあげる
歩夢:スタンプ
侑:ありがとう、歩夢
歩夢:侑ちゃん大好き
歩夢:侑ちゃん大好き
歩夢:大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き
歩夢:私やっぱり侑ちゃんじゃないとダメだなぁ侑ちゃんはよく浮気をするけどそれは侑ちゃんがモテるからしかたないことだしむしろ悪いのは他の子だよね私の侑ちゃんをたぶらかそうとするんだから今度会ったらきついお灸を据えた方がいいかもね私の侑ちゃんと話していいのは私だけだし手も繋いでいいのは私だけだもん他の子が調子に乗りすぎるのが悪いんだよねだから侑ちゃんは悪くないよいやでも断れるよねどうして断らないのやっぱり私のことが嫌いなのかなそんなの嫌だよ私侑ちゃんと別れたくない私侑ちゃんに見捨てられたらどうすればいいの生きていけないよ侑ちゃん侑ちゃん私のこと嫌いなのねぇ侑ちゃん答えてよねぇ侑ちゃんどうなの私はこんなに大好きなのにどうしてわかってくれないのだから浮気するんでしょ侑ちゃん最低だよ私は浮気なんてしないよ侑ちゃん以外はいらないもん侑ちゃんさえいればいい本当だよ私は私は私は私は侑ちゃんのことをこんなに愛してるのにどうして侑ちゃんはわかってくれないのねぇねぇねぇ侑ちゃん侑ちゃん侑ちゃん侑ちゃん大好きだよ大好き侑ちゃん以外は何もいらないもう二度と浮気しないでね私の大切な大好きな侑ちゃん
侑:うん
かすみ「」
かすみ(え、なに、なにこれ)
かすみ(親しく話したり手を繋いだだけで浮気?って思ってたらすごいのが来ちゃったよ……)
かすみ(こんな長文、送ってる人初めて見た……)
かすみ(しかも内容は支離滅裂でめちゃくちゃだし……)
かすみ(侑先輩の「うん」で少し笑いそうになったけどさ)
30
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/23(水) 23:56:41 ID:SSQ4kvg2
かすみ(歩夢先輩ってここまでやばい人だったんだ)
かすみ(ちょっと距離置いた方がいいかもしれないなぁ)
かすみ(露骨にやると不審がられるから少しずつ……)
かすみ(同じ同好会だし、毎日顔合わせないといけないけどね)
かすみ(こんなLINEを見たあとに、どんな顔して会えばいいんだろう?)
侑「ふふっ」
かすみ「侑先輩?」
侑「ん?ああいや、かわいいなって」
かすみ「かすみんがですかぁ?かすみんがかわいいのは周知の事実ですから〜〜」
侑「かすみちゃんもかわいいけど、歩夢だよ♪」
侑「すぐ嫉妬しちゃうし、こんな長文送ってくるし」
侑「本当に歩夢ってかわいいよね〜。ときめいちゃう♪」
31
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 00:03:45 ID:Oeus/Oso
かすみ「そのセリフ、さっきも聞いたような……」
侑「そうだっけ?まあ、同じくセリフを言いたくなるくらい歩夢がかわいいってことで♪」
かすみ「あ、あはは〜」
かすみ(かわいいってよりも怖いでしょ、普通)
かすみ(侑先輩もどこか少しズレてるのかな?)
かすみ(いや、恋人補正が掛かってるだけかも)
かすみ(そうじゃなかったらあんな……)
かすみ(……歩夢先輩の悪口はやめとこ。ついポロッと口に出そうだし。本人の前で言ったら終わりだろうな〜)
かすみ「あの、浮気って言われてますけど……」
侑「いつものことだから」
かすみ「大変ですね……」
侑「あはは、そうでもないよ。愛されてるって感じがして、私は幸せだしね」
かすみ(侑先輩のメンタルすごいな〜)スッスッ
32
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 00:12:00 ID:Oeus/Oso
歩夢:侑ちゃ〜ん♡
歩夢:スタンプ
侑:んー?
歩夢:これ見て♡
歩夢:写真
かすみ「!?」
かすみ「ちょ、これまずくないですか?」
侑「そうかな?」
かすみ「だ、だって……裸……」
かすみ(乳首がピンクで綺麗だな……。少し立ってる……?)ジー
かすみ(胸も私と比べると大きいし……)ジー
かすみ(……って、何見てるのっ。これじゃ私が変態みたいじゃん!!)
33
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 00:14:42 ID:Oeus/Oso
侑「その割にはガン見してるね〜」クスッ
かすみ「ち、違います!そんなことしてません!」
侑「え〜?」
かすみ「ゆ、侑先輩っ」
侑「あはは。見たくなる気持ちもわかるよ。歩夢の、薄いピンク色で綺麗だもんね」
かすみ「たしかに……じゃなくてっ!」
かすみ「こんな写真、いつも送らせてるんですか!?」
侑「違うよ。歩夢が勝手に送ってくるんだよ」
かすみ「歩夢先輩が?どうして……?」
侑「さあ。送りたいから送ってるんじゃない?」
侑「いつものことだから気にしないで」
かすみ「は、はあ。またですか」
34
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 00:18:35 ID:Oeus/Oso
かすみ「歩夢先輩ってそんなに侑先輩が好きなんですね」
かすみ「こんな写真何枚も送るくらいですし……」
侑「付き合い長いからね」
かすみ「あはは……」
かすみ(……侑先輩ってえっちしてるのかな?)
かすみ(歩夢先輩の裸の写真を見ても顔色ひとつ変えてないし、やっぱり……?)チラ
侑「?」ニコ
かすみ「……っ」フイ
侑「かすみちゃん?」
かすみ「なんでもありませんっ」スッスッ
歩夢:侑ちゃん見て見て〜♡
歩夢:写真
35
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 09:33:43 ID:Oeus/Oso
歩夢:写真
歩夢:写真
歩夢:写真
侑:また随分と送ってきたね
歩夢:えへへ♡
歩夢:侑ちゃんのオカズにでもしてね♡
侑:私は歩夢みたいにそういうことしないよー
歩夢:侑ちゃんってばぁ〜♡
歩夢:写真
侑:スタンプ
かすみ「あわわわっ////」カァァ
かすみ「こ、これは、なんという////」
36
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 09:38:28 ID:Oeus/Oso
侑「ほら、この写真よく撮れてるよね」
侑「アソコ丸見えだし。あははっ」
かすみ「……////」ブンブン
かすみ「よ、よく笑えますね……」
侑「だってかわいいし〜。ツルツル〜」
かすみ「えっと、剃ってるんですか?」
侑「そうなんじゃない?」
かすみ「なるほど……」ジー
かすみ(……歩夢先輩の体、やっぱり綺麗だなぁ。細いのに出るとこ出てて……。スタイルもいい……)
かすみ(この写真なんて指で拡げてるし……)
かすみ(こんな色と形してるんだ……)
かすみ(私にもついてるけど、自分のなんてまじまじと見る機会ないしね……)
37
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 09:43:35 ID:Oeus/Oso
かすみ「……////」ムラムラ
侑「写真送ろうか?」
かすみ「へっ」ビク
侑「ずっと見てるし。歩夢の裸気に入った?」
かすみ「け、結構ですっ。ずっとなんて見てません!!」
侑「顔真っ赤にしながら見てたよ〜」
かすみ「見てませんっ!!」
侑「怒らないでよ〜。かすみ〜ん♪」プニプニ
かすみ「侑先輩〜!!」
侑「あははっ」
かすみ「むぅ……」
かすみ(……ま、まあ、歩夢先輩の裸を見て……少し、ほんの少しだけ、ムラムラしちゃったけど……)スッスッ
38
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 09:47:23 ID:Oeus/Oso
歩夢:写真じゃ満足しない?
侑:満足とかじゃなくてさ
歩夢:じゃあこれならどう?
歩夢:侑ちゃんを想ってたらこんなになっちゃった♡
歩夢:動画
かすみ「動画……?」
かすみ(何の動画だろう、気になる……)スッ
侑「あ、再生しない方がいいよ」
かすみ「え?」ポチッ
侑「あちゃー」
かすみ「なっ、これっ、ふぇぇっ////」
かすみ(動画の内容は、歩夢先輩が1人でシているものでした)
39
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 09:53:59 ID:Oeus/Oso
かすみ(甘い声で侑先輩の名前を呼びながら、ゆっくりとくちゅくちゅとした音が、部室中に響いていました)
かすみ(いつもの歩夢先輩の声とは違う、甘くていやらしい声。そして蕩けきった顔……)
かすみ(そんな歩夢先輩の姿を見て――)
かすみ(――私の手は、自然と下の方に移動していました)
侑「……」ピッ
かすみ「……!」ビクッ
かすみ(侑先輩が動画を消すと、私はふと我に返り――)
かすみ(……わ、私、なんてこと……)
かすみ(ぶ、部室で……しかも、侑先輩の前で……)
侑「かすみちゃん」スッ
かすみ「侑先輩……ん、む」チュッ
侑「……ぷは」
40
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 09:57:42 ID:Oeus/Oso
かすみ「え、ゆう、先輩……?」
かすみ(うそ、わたし、キス……されちゃった……)
侑「ふふ、かわいいね」ナデ
かすみ「……っ」ピクン
侑「だから忠告したのに」ナデナデ
かすみ(侑先輩に頭撫でられるの……気持ちいい……)トロン
侑「目、とろんってしてるね。かわいいよ」フー
かすみ「ひゃ」ビクッ
侑「かすみちゃん♪」ナデナデ
かすみ「な、なんで……」
侑「ん?」
かすみ「なんで……キス……」
41
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:01:37 ID:Oeus/Oso
侑「なんで?うーん、なんでだろうね?」
侑「かすみちゃんがかわいいから?」
かすみ「か……」
かすみ(歩夢先輩の動画を見たせいかわからないけど……)
かすみ(頬が熱い。身体が火照ってる。侑先輩にキスされて……気持ちよかった……)
かすみ(キスなんて、ほんの1秒程度だったのに……)
侑「顔真っ赤だね。かわいいよ」チュ
かすみ「ん……」
かすみ(キス、2回目……)
侑「かすみちゃん。ん、ちゅ……」
かすみ「んっ、む……」チュゥ
かすみ(3回目……。さっきよりも長めのキス……)
42
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:07:57 ID:Oeus/Oso
侑「ぷは。さっきよりもとろんってしてる。キス、気持ちよかった?」
かすみ「……」コク
侑「それはよかったよ」ニコ
かすみ(侑先輩ってこんなにキス上手だったんだ……)
かすみ(い、いや、私はファーストキスだから……)
かすみ(上手いか下手かなんてわからないけど……)
かすみ(……キスしただけなのに、気持ちよかった)
かすみ(頭がふわふわしてる……)
かすみ(下も……すごい切ない……♡)
かすみ(今触ったら……もっと気持ちいいかも……♡)スッ
かすみ(下半身に手を伸ばそうとすると、侑先輩に掴まれました)
かすみ(侑先輩は顔を私の耳元に近づけると――)
侑「――私がしてあげようか?」
43
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:15:54 ID:Oeus/Oso
――虹ヶ咲学園
侑「結局誰も来なかったね」
かすみ「ですね〜。今日は練習休みとはいえ、誰かしら来ると思ったんですけど」ギュ
かすみ(来たら逆に困ってたけどね)
かすみ(私達の行為を見られてたかもしれないし……)
侑「歩夢も来なかったしね。LINEでは遅れて来るって言ってたのにな〜」
かすみ「む……」ギュッ
かすみ(侑先輩の言葉に、絡めていた腕の力が自然と強まる)
かすみ「歩夢先輩の名前を出さないでください」
侑「どうし――」チュ
かすみ(侑先輩の顔がこっちに向くと私はキスをしてしまいました。最初にしたような軽めのキスではなく)
かすみ(大人がするような、行為の最中にした、舌を絡めるキスです。侑先輩に教えてもらいました)
44
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:24:55 ID:Oeus/Oso
かすみ「……ぷは♡」タラッ
かすみ(唇を離すと唾液が糸を引いていました。侑先輩と私の唾液が混ざり合ってできたものです)
かすみ(数時間前の私にはとても考えられない光景でした)
かすみ(もう一度キスしたい衝動を抑えて――)
かすみ「侑先輩」
かすみ(侑先輩を見ます。侑先輩は垂れた唾液を拭うと、無表情でこちらを見ていました)
かすみ「私を侑先輩の彼女にしてくれませんか?」
かすみ(自分でも何を言ってるのかよくわかりませんでした。侑先輩には恋人がいるのに)
かすみ(“あの”歩夢先輩とお付き合いしてるのに)
かすみ(それなのに、自分のこの気持ちを抑えることができませんでした。侑先輩は――)
侑「どうして?」
かすみ(侑先輩の声は、さっきまで話してた声とも、行為中の声とも違い、酷く冷めていたような気がします)
45
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:29:05 ID:Oeus/Oso
かすみ「好きだからです」
かすみ(顔が熱くなるのを我慢し、一度息を吸って)
かすみ「侑先輩が好きだからです」
かすみ(もう一度自分の想いを伝えました)
侑「そっか」
かすみ(侑先輩は一言だけつぶやくと、目線をそらしました)
侑「ありがとう、嬉しいよ」
かすみ(地面に視線を合わせたまま、言葉とは裏腹に、侑先輩は全然嬉しくなさそうでした)
侑「でも、私は歩夢と付き合ってるから」
かすみ「……っ」
かすみ(知ってる。侑先輩ならこう言うと思った)
かすみ(歩夢先輩のことが大好きだって、知ってるから)
46
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:33:38 ID:Oeus/Oso
かすみ(わかってて、告白したんだ)
かすみ(でも、ずるいじゃん)
かすみ(歩夢先輩だけずるいじゃん)
かすみ(歩夢先輩だけ侑先輩を独り占めするなんて)
かすみ(そんなの、ずるいじゃん)
かすみ(私だって好きなのに)
かすみ(侑先輩が大好きなのに)
かすみ(中学生の頃から付き合ってる?)
かすみ(そんなの勝てるわけないじゃん)
かすみ(私は高校生から知り合ったのに)
かすみ(どうして歩夢先輩だけ)
かすみ(私もずっと前から知り合いたかった)
47
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:38:04 ID:Oeus/Oso
かすみ(侑先輩と幼馴染みになりたかった)
かすみ(そうしたら、侑先輩の隣にいるのは私だったのに)
かすみ(私が侑先輩の彼女だったのに)
かすみ「……」
侑「帰ろう、かすみちゃん。もう暗いよ」
かすみ「……でよ」
かすみ(言ったらダメだ)
侑「え?」
かすみ(言ったらダメだってわかってるのに)
かすみ「えっちまでしたのに、ふざけないでよ」
かすみ(……言ってしまった。言いたく、なかったのに)
かすみ(口に出した言葉はもう元には戻せない)
侑「……ごめん」
48
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:46:07 ID:Oeus/Oso
かすみ(侑先輩、私は謝罪が聞きたいわけじゃないんです)
かすみ(私はただ――)
かすみ「好きでもないのにしたんですか」
かすみ「私を弄んだんですか」
かすみ「私、初めてだったんですよ」
かすみ「侑先輩のこと、好きなのに、大好きなのに」
かすみ(――侑先輩を見てるだけで満足してたのに)
かすみ(爆発した気持ちはもう元には戻らない)
かすみ(この膨れ上がった想いは、前までみたいに見てるだけじゃ満足できない)
かすみ(侑先輩と付き合いたい)
かすみ(恋人になりたい)
かすみ(なんで私が付き合えないの)
かすみ(私はこんなに大好きなのに)
49
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:50:41 ID:Oeus/Oso
かすみ「侑先輩、答えてください」
かすみ「私とは好きでもないのにしたんですか」
かすみ「私をおもちゃみたいに弄んだんですか」
侑「ごめんなさい……」
かすみ(侑先輩はうつむいています。悲しそうな、申し訳なさそうな、消え入りそうな声でつぶやきました)
かすみ「謝罪なんて聞きたくない」
かすみ「私のこと、嫌いなんですか」
侑「……」
かすみ「……」
かすみ(どうして黙るの)
かすみ(沈黙は肯定って言葉をよく聞くけど――)
かすみ(侑先輩は私が嫌いなの?)
かすみ(――私のことが、嫌い?)
50
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 10:55:07 ID:Oeus/Oso
かすみ(そんな……)
かすみ(侑先輩に嫌われたら、嫌われたら、私……)
かすみ「……ごめん、なさい」
侑「え……?」
かすみ「ちょ、調子に乗って、ごめんなさい」
かすみ「ひっく、ごめんなさい、ごめんなさい」
侑「か、かすみちゃん?どうして謝るの?」
かすみ「ごめんなさい、ぐすっ、ひっく……」
侑「泣き止んで……」スッ
かすみ(なぜ泣いているのかよくわかりません)
かすみ(勝手に涙が溢れて、止まりませんでした)
かすみ「嫌いにならないで……」
51
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:00:11 ID:Oeus/Oso
かすみ「ひっく、う、うぅ……」
侑「かすみちゃんっ」ギュッ
かすみ「ゆう、っひ、せん、ぱい……」
かすみ(侑先輩に抱きしめられて、侑先輩の温もりを感じました)
かすみ(あたたかい)
かすみ(ずっとこうしていたいな……)
侑「ごめんね、かすみちゃん」
かすみ「侑先輩……」ギュゥ
かすみ(気がつくと私は泣き止んでいて、侑先輩の胸に顔を埋めていました)
侑「かすみちゃんのこと、嫌いじゃないよ」
侑「不安にさせてごめんね」
かすみ(侑先輩の言葉に安堵を覚えると同時に――)
かすみ(――自分の感情をコントロールできないことに、驚きと恐怖を感じてしまいました)
52
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:03:22 ID:Oeus/Oso
侑「――落ち着いた?」ナデナデ
かすみ「はい……」ギュ
侑「そっか、よかった」
侑「その、ごめんね。私が全部悪いよね」
かすみ「……」ギュゥ
かすみ(近くのベンチに移動して、侑先輩に頭を撫でてもらっていました)
かすみ(侑先輩に頭を撫でられると落ち着く)
かすみ(こうして密着してるといい匂いがする)
かすみ(ずっと撫でてもらいたい)
かすみ(ずっと一緒にいたい)
かすみ(大好き)
かすみ(侑先輩、大好きです)
53
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:10:12 ID:Oeus/Oso
かすみ「侑先輩……」
侑「うん?」
かすみ「キス……してください」
侑「……」
かすみ(私は目をつぶりました)
かすみ(そして、ためらうように)
かすみ(侑先輩から唇を重ねてくれました)
かすみ(……今回は軽いキスだったので残念です)
かすみ(舌を絡めてほしかった)
かすみ(侑先輩の唾液が欲しかった)
かすみ「……ありがとうございます」
かすみ(でも、キスしただけで幸せな気持ちになれました)
54
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:14:33 ID:Oeus/Oso
侑「かすみちゃん」ナデ
かすみ「……はい」
侑「ごめんね」
かすみ「かすみんの方こそごめんなさい。歩夢先輩とお付き合いしてるのに、変なこと言っちゃって」
侑「私が悪いから」
かすみ(侑先輩はもう一度ごめんねと言うと、またキスをしてくれました)
かすみ(侑先輩からキスしてくれるのは嬉しい)
かすみ(嬉しいけど、これは慰めでしかない)
かすみ(私がまた泣かないようにキスしてるだけだ)
かすみ(こんなの、虚しいだけだよ……)
かすみ(侑先輩の中に私はいない)
かすみ(いるのは歩夢先輩だけ)
55
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:19:52 ID:Oeus/Oso
かすみ(どうして歩夢先輩なの)
かすみ(どうして私じゃないの)
かすみ(侑先輩……)ウル
かすみ(涙が出そうになるのを堪え、侑先輩を見ました)
かすみ(侑先輩は微笑みながら私を見つめていました)
かすみ「侑先輩?」
侑「かわいいよ」
かすみ(侑先輩はそう言うとキスしました)
かすみ(今度は舌を絡めてきて、私もそれに応えるように背中に腕を回します)
かすみ(まるで恋人同士がするような、濃厚で、とても甘いキスでした)
かすみ(この時間がずっと続けばいいのに)
かすみ(私は、キスをしながらそう思いました)
56
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:25:40 ID:Oeus/Oso
侑「ぷは……」
かすみ「はぁ、ぁ……♡」
かすみ(キスを終えると、侑先輩は私の頭を撫でてくれました。やっぱり落ち着きます)
かすみ(キスの余韻を感じつつ、侑先輩に身体を預けました)
かすみ(好きな人に頭を撫でられるが、キスをされるのが、こんなにも気持ちいいとは知りませんでした)
かすみ(一番好きな人に、それを教えてもらいました)
かすみ(……好き、なのに。こんなに好きなのに……)
かすみ(こんなに侑先輩が大好きなのに……)
かすみ(侑先輩は私を見てくれない――)
かすみ(そう思うとまた涙が溢れてきて……)
かすみ「……っ、ひっく」
かすみ(感情を抑えられませんでした)
57
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:29:45 ID:Oeus/Oso
かすみ「ゆう、せんぱいっ……」
侑「……うん」
かすみ「すき、です。ひっ、好きです……」
かすみ「大好きっ、なんです……」
侑「……」ナデナデ
かすみ(侑先輩は頭を撫で続けてくれました)
かすみ(侑先輩がどんな表情をしているのか……)
かすみ(……涙で視界がぼやけてよく見えません)
かすみ「ゆう、先輩……」
かすみ「侑先輩……」
かすみ「私を見て……」
かすみ「私だけを見てよ……お願いだから……」
58
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:33:16 ID:Oeus/Oso
侑「……」ナデナデ
かすみ「ねぇ、侑先輩……」
かすみ「私を……」
侑「かすみちゃん」スッ
かすみ「……っ」ビク
かすみ(侑先輩は優しい声で私の名前を呼びつつ、涙を拭ってくれました)
侑「私のことをそこまで想ってくれるんだね」
侑「ありがとう、嬉しいよ」ナデ
かすみ(……さっきと同じセリフ。なのに、全然違う)
かすみ(さっきは困ったような感じだったのに――)
かすみ(今回は、その、なんというか……)
かすみ(声色が少し柔らかくなっている、ような)
59
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 11:37:07 ID:Oeus/Oso
侑「かすみちゃん♪」チュ
かすみ「……む」
かすみ(今度はほっぺかぁ……)
かすみ「……唇にはしてくれないんですね」フイ
侑「ふふ、拗ねちゃた?かわいいね」ナデナデ
かすみ「拗ねたわけじゃ、ないですけど……」
侑「あははっ」ナデナデ
かすみ「もぉ……」
かすみ(侑先輩を見てると、本当に……)
かすみ「……」
かすみ(……好き、好き、大好き♡)
かすみ「大好き……」
かすみ「侑先輩……」
かすみ「大好きです……♡」
かすみ(好きって気持ちが、感情が、抑えられない)
60
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 17:45:27 ID:Oeus/Oso
かすみ「侑先輩……」スッ
かすみ(もう一度侑先輩と唇を重ねました)
かすみ(今日で何回キスしたかわからないけど……)
かすみ(キスをするたびに、幸せな気持ちになります)
かすみ(好きな人とするキスは、本当に気持ちいいです)
かすみ「……大好きです」
かすみ(私は侑先輩の手をそっと握りました)
かすみ「私と……」
かすみ(自分の手が震えてるのを感じながら、侑先輩の目を見つめます。侑先輩もこちらを見ていました)
かすみ「私と――」
侑「――かすみちゃん」
かすみ(私の言葉は侑先輩に遮られました)
61
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 17:50:32 ID:Oeus/Oso
侑「かすみちゃん」
かすみ(侑先輩はもう一度私の名前を呼び、手を握り返してきました)
侑「私達、付き合おうか」
かすみ「……え」
かすみ(一瞬聞き間違いかと思いました。今――)
かすみ(侑先輩は、なんて言ったの?)
かすみ「侑、先輩?」
かすみ(侑先輩は微笑むと、私の頬を撫でました)
侑「私と付き合ってくれる?」
かすみ(歩夢先輩と付き合ってるのに。さっきは断ったのに。これは浮気なのでは。色々な考えが頭をよぎったけど――)
かすみ「――はい♡」
かすみ(その甘くて素敵な言葉に、私は頷いていました)
62
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 17:55:04 ID:Oeus/Oso
侑「じゃあ、私達は今から恋人だね」
かすみ(耳元で囁くと、そっとキスをしました)
かすみ(侑先輩と恋人になれた――)
かすみ(嬉しくて顔がにやけてるかもしれない)
かすみ(今すぐこの喜びを声に出したい)
侑「ふふ、かわいい顔♪」ナデナデ
かすみ「侑先輩……」
かすみ(私は侑先輩に抱きついて、胸に顔を埋めました)
侑「……」ナデナデ
かすみ「嬉しいです……」
かすみ「大好きです、侑先輩……♡」ギュー
侑「かわいいな〜」ナデナデ
63
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 17:59:10 ID:Oeus/Oso
かすみ「……♡」ギュー
かすみ「侑先輩……いい匂い……♡」
侑「汗くさくないかな?」
かすみ「かすみんの好きな匂いです♡」ムギュー
侑「あはは、そっか」
かすみ「はい♡」
かすみ(私はしばらくの間、侑先輩の制服越しでもわかる胸の柔らかさと、匂いを堪能していました)
かすみ「……侑先輩?」チラ
侑「うん?」
かすみ(侑先輩の名前を呼ぶと、頭を撫でていた手を止め、私に微笑みかけてくれました)
かすみ「本当にかすみんを彼女にしてくれるんですか?」
侑「もちろん」ニコ
64
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 18:04:00 ID:Oeus/Oso
侑「さっきも言ったように、私達は恋人だよ♪」
かすみ「恋人……」
かすみ「大好きな侑先輩と恋人になれるのは嬉しいです」
かすみ「本当に、嬉しくて泣いちゃいそうです……」ウルウル
侑「ま、また泣いちゃうの?」
かすみ(心配そうにこちらを見つめる侑先輩に微笑み、涙でうっすらとぼやけている目を指で軽く拭いました)
かすみ「大丈夫ですよ、泣きませんから」ニコ
侑「よかった……」ホッ
かすみ「ふふっ」
かすみ「……嬉しいです」
かすみ(私は首筋に軽くキスをしました)
かすみ「大好き……」チュ
かすみ(何度も首筋にキスをしました)
65
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 18:08:42 ID:Oeus/Oso
侑「何度もくすぐったいよ。なんで首に?」
侑「私としてはこっちの方が好きなんだけど♪」
かすみ(そう言うと侑先輩は自分の唇を指で触れました)
かすみ「特に理由なんてありませんよ。首筋にキスをしたくなっただけです」
侑「ふーん?」
かすみ「侑先輩っ」ギュ
侑「?」
かすみ(侑先輩の手を握り、微笑みます)
かすみ「大好きです。愛しています」
かすみ「これからは恋人としてよろしくお願いしますね」
侑「うん」ニコ
かすみ(本当に言いたいことはこんな言葉じゃない)
66
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:09:50 ID:Oeus/Oso
かすみ(今伝えないといけないのは愛の言葉じゃない)
かすみ(侑先輩に聞きたいことはたくさんある)
かすみ(どうして急に私と付き合う気になったのか)
かすみ(さっきは歩夢先輩と付き合ってるから、って理由で告白を断ったのに)
かすみ(こんな短時間に考えが変わるものなの?)
かすみ(えっちもキスもした私が言えることじゃないけど――これは浮気じゃないの?)
かすみ(“あの”歩夢先輩が私達の交際を許してくれるの?)
かすみ(独占欲の強い歩夢先輩が許してくれるわけない。これは世間一般には浮気になるのだから)
かすみ(言わないって方法もあるけど、そんなのでいつまでも騙せるわけない。どうせすぐバレるだろうし)
かすみ(本当は歩夢先輩と別れてほしい。でも、そんなの無理に決まってる。侑先輩が私を取るとは思えない)
かすみ(告白されたときは嬉しすぎて何も考えられなかったけど、冷静になった今だと――)
かすみ(そういう考えがたくさん思い浮かんでしまう)
67
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:12:56 ID:Oeus/Oso
かすみ(それに――)
かすみ(私は侑先輩に、一度も好きって言われてない)
かすみ「……」
かすみ「侑先輩?」
侑「なに?」
かすみ(じっと侑先輩の目を見つめました)
かすみ「かすみんのこと――」
かすみ「……っ」ギュ
侑「かすみちゃん?」
かすみ「――なんでも、ないです」
侑「えぇ?」
かすみ(侑先輩はポカンとした表情で私を見ていました)
68
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:17:04 ID:Oeus/Oso
侑「何を言おうとしたの?気になるんだけど」
侑「かすみのこと――の続きは?」
かすみ「な、なんでもないです〜」
侑「えー?」
かすみ(侑先輩は不服そうにしています)
かすみ「本当に、なんでもないですから」
侑「……そっか」
かすみ(侑先輩もそれ以上は何も聞いてきませんでした)
かすみ「……」
かすみ(ねぇ、侑先輩。私の大好きな侑先輩)
かすみ(かすみんのこと――本当に好きなんですか?)
かすみ(私は侑先輩に聞くことができませんでした)
69
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:22:32 ID:Oeus/Oso
かすみ(聞きたい。でも、聞くのが怖い)
かすみ(せっかく恋人になれたのに、どうして聞けないの?)
かすみ(どうして好きなのか聞くのが怖いの?)
かすみ(恋人なんだから、好きに決まってるでしょ?)
かすみ(恋人なんだから――)
侑「――かすみちゃん」
かすみ(侑先輩に名前を呼ばれ、我に返りました)
かすみ「侑先輩……?」
侑「そろそろ帰らない?」
かすみ(侑先輩に言われ、スマホを取り出し時間を確認すると、時間は19時を過ぎていました)
かすみ「もうこんな時間……」
侑「送るよ」
かすみ(侑先輩が手を差し出してきたので、私はその手を握りました。私の手は少し震えていました)
70
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:26:58 ID:Oeus/Oso
――かすみの部屋
かすみ(侑先輩――)
かすみ(侑先輩に近くまで送ってもらったあと、すぐに家に帰り、そのままベッドに寝転がりました)
かすみ(何もする気が起きない)
かすみ(侑先輩と恋人になれたのに)
かすみ(侑先輩が告白してくれたのに)
かすみ(えっちも、キスも、いっぱいしたのに)
かすみ(嬉しいことの方が多いはずなのに)
かすみ(なぜか嫌なことばかり考えてしまう)
かすみ「侑先輩……」
かすみ(好きな人の名前をつぶやきます)
かすみ「……大好きです」
かすみ(私のつぶやきは虚空へと消えました)
71
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:31:03 ID:Oeus/Oso
かすみ「……」
かすみ「……あ」
かすみ(私はベッドから起き上がり、袋からお花を取り出しました)
かすみ(家に帰る途中のお花屋さんで侑先輩が私にプレゼントしてくれたものです)
かすみ(最初は断ったけど、侑先輩が付き合った記念にと言うので、素直に受け取りました)
かすみ(とても嬉しかったです)
かすみ(私はそっと、侑先輩からプレゼントされた――)
かすみ(黄色のチューリップの匂いを嗅ぎました)
かすみ「いい匂い……」
かすみ(黄色は私のイメージカラーだしね)
かすみ(やっぱり私の考えすぎだったのかな)
かすみ(普通は好きじゃなかったら付き合わないもんね)
72
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:35:52 ID:Oeus/Oso
かすみ「侑先輩――」チュ
かすみ(私は侑先輩を想い、チューリップにキスしました)
かすみ「侑先輩。ずっと大事にしますね」
かすみ「……数日で枯れちゃうと思うけど」
かすみ「……ふふ」クス
かすみ(明日また侑先輩にお礼を言おう)
かすみ(あ、そういえば――)
かすみ(私はふと、先程の会話を思い返しました)
かすみ『侑先輩、あ花ありがとうございます♪』
侑『ううん。恋人になった記念日だしね』
侑『本当はもっといいものにしようと思ったんだけど、今は手持ちが少なくてさ。ごめんね』
かすみ『侑先輩にプレゼントを貰えるだけで、かすみんは幸せですから〜』
73
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:40:35 ID:Oeus/Oso
侑『そっか』
かすみ『はい♪』
侑『そうそう。花言葉って知ってる?』
かすみ『花言葉、ですか?』
侑『一つ一つの花にそれぞれふさわしい象徴的な意味を持たせた言葉を、花言葉って言うんだよ』
侑『たとえば赤い薔薇だと情熱、愛情、美、っていう花言葉が付けられてるんだ〜』
かすみ『へー。侑先輩詳しいんですね』
侑『この間ちょっと調べてね。結構種類もあって、調べるのが大変だったよ』
かすみ『あはは。……赤い薔薇の花言葉って素敵ですね。かすみんも欲しかったな〜?』
侑『黄色のチューリップもいい花言葉なんだよ?』
かすみ『そうなんですか?』
侑『うん。かすみちゃんにピッタリだと思うな』
74
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:44:57 ID:Oeus/Oso
かすみ『どんな花言葉なんですか?』
侑『それは秘密。暇なときにでも調べてみて♪』
かすみ『むむむ。今教えてくれてもいいのに』
侑『自分で調べる方がワクワク感があるでしょ?』
かすみ『たしかにそうですね〜』
かすみ『わかりました。帰ったら調べてみます!』
侑『うんうん。絶対気に入ってくれると思うよ』
かすみ『えへへ、楽しみ〜♪』
侑『あはは』
かすみ「――すっかり忘れてた!」
かすみ「侑先輩がせっかく教えてくれたのに……」
かすみ「さっそく調べてみよっと♪」
75
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:51:08 ID:Oeus/Oso
かすみ(私はスマホを取り出し「チューリップ 花言葉」と検索しました)
かすみ「えっと〜」スッスッ
かすみ「このサイトでいいのかな?」ポチッ
かすみ「チューリップ全般の花言葉が……」
かすみ「博愛、恋の宣言・告白、華やかな恋、永遠の愛情、真面目な愛……」
かすみ(花言葉を読んでいるうちに、自然と顔が熱くなるのを感じました)
かすみ「すごい、赤い薔薇なんて全然比じゃなよ!」
かすみ「永遠の愛情、真面目な愛かぁ……♪」
かすみ「えへへ……」ギュ
かすみ(スマホを握りしめ、ベッドに寝転がりました)
かすみ(やっぱり私の思い違いだったんだ)
かすみ(侑先輩は私を愛してくれてるんだ♡)
76
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 19:57:48 ID:Oeus/Oso
かすみ「嬉しい〜〜♡」バタバタ
かすみ「侑先輩好き好き♡♡」バタバタ
かすみ(嬉しさのあまり、子供のようにベッドの上で足をバタバタとさせました)
かすみ(さっきの悲しい気持ちはあっという間に消え去り、愛情や嬉しさで胸がいっぱいになりました)
かすみ「侑先輩……♡」チュ
かすみ(私はもう一度チューリップにキスしました。やはりキスをするなら侑先輩の方がいいです)
かすみ(興奮状態も少しずつ落ち着き、次は色の花言葉を調べることにしました)
かすみ「〜♪」スッスッ
かすみ(上機嫌でスクロールしていきます)
かすみ「赤色は愛の告白、愛の宣言、美しい瞳……」
かすみ「薔薇といい、赤色は良い花言葉が多いのかな?」
かすみ「これなら黄色も期待できるね♪」スッスッ
77
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 20:05:00 ID:Oeus/Oso
かすみ(どんどんスクロールしていき、チューリップだけでこんなに色の種類があるのだと驚きました)
かすみ(わかったことは、チューリップの花言葉は基本的に良い意味が多いということです)
かすみ(たしかに一部は悪い意味もあるけど……)
かすみ(私のお気に入りは紫色です。ちなみに花言葉は不滅の愛、永遠の愛情でした)
かすみ(永遠の愛情はチューリップ全般の花言葉にも書いてあったような……)
かすみ(重複することもあるのかな?)
かすみ(よくわからないや)スッスッ
かすみ「おっ」
かすみ(ようやく大本命の黄色を見つけました)
かすみ(他の色も大体は素敵な花言葉だったし、きっと黄色も――)
かすみ(花言葉を読み進めていると、手が止まりました)
かすみ「え、これ……」
78
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 20:10:11 ID:Oeus/Oso
かすみ「……」ゴシゴシ
かすみ(見間違いかと思い、目を軽く擦ってもう一度スマホの画面を見ました)
かすみ「……」ジー
かすみ(スマホの画面に表示された花言葉は、先程と全く同じものでした)
かすみ「待って……」
かすみ(気がつくと私はスマホを落としていました)
かすみ(スマホはベッドから転がって、そのままフローリングに落ちました)
かすみ(落ちた衝撃で画面にヒビが入ったかもしれない)
かすみ(今すぐ拾わないと)
かすみ(拾おうとするも身体に力が入りません)
かすみ(私は崩れるように、ベッドに横たわりました)
かすみ(身体が震えて、涙が溢れてきました)
79
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 20:13:59 ID:Oeus/Oso
かすみ(私は侑先輩の言葉を思い出しました)
『黄色のチューリップもいい花言葉なんだよ?』
『かすみちゃんにピッタリだと思うな』
かすみ「侑先輩――」
かすみ(好きな人の名前をつぶやきます)
かすみ「侑先輩……どうして……」
かすみ(好きな人に呼びかけるも返事はありません)
かすみ(だってここには私しかいないのだから)
かすみ(涙が頬を伝っています。呼吸が荒くなってきて、しゃっくりが止まりませんでした)
かすみ「ひっく、ぐす……」
かすみ「どう、ひっ、どうして……」
かすみ「侑、先輩……」
80
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/24(木) 20:19:17 ID:Oeus/Oso
かすみ「ゆ、ゆう、先輩……」
かすみ「ひっく、ううぅぅ……」
かすみ(泣き止もうとするも涙は止まりません)
かすみ「うぁ、ぐす、あぁぁ……」
かすみ「ゆう、せん、ぱい……」
かすみ(天井が涙でぼやけて歪んでいました)
かすみ(ぐにゃぐにゃで何も見えません)
かすみ(手で何度も拭っても、涙は溢れるばかりで止まることはありませんでした)
かすみ「わたしの、こと、やっぱり……」
かすみ(目をつぶると侑先輩の笑顔が浮かびました)
かすみ(触れようと手を伸ばすも、侑先輩には届きません)
かすみ(そして、侑先輩は暗闇へと吸い込まれていったのでした)
81
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 16:59:05 ID:seH/GmRU
――侑の部屋
侑「はぁ……」
侑(今日は本当に疲れたなぁ。色々と大変だったよ)
侑(寝転がってスマホをいじっていると、ドアの開く音がした。この時間にお母さんはまだ帰ってきてない)
侑(鍵は当然閉めてるし、家には私しかいないはず)
侑(ドアを開けた人物はゆっくりとこちらに近づいていた)
侑(チャイムを鳴らさない、ノックもしない)
侑(そんなの私の知る中で1人しかいなかった)
侑「歩夢」
侑(振り向かずに声をかけた)
侑(そして、後ろにいる人物は――)
歩夢「――侑ちゃん」
侑(不機嫌そうな声で私の名前を呼んでいた)
82
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:04:45 ID:seH/GmRU
侑「いつも言ってるよね?チャイムくらい鳴らしてよ」
侑(振り向かないでそのまま話しかける)
歩夢「侑ちゃん」
侑「まあ、お母さんがいるときはちゃんとやってるみたいだけどさ」
歩夢「侑ちゃん」
侑「でも、歩夢が部屋に来るのは久しぶりだね」
侑「いつもはLINEか電話で済ませるのに。あれ、明け方に来たっけ?」
歩夢「侑ちゃん」
侑(スマホでスクールアイドルのまとめサイトを見ながら話しかける。歩夢は私のすぐ側まで来ていた)
侑「合鍵返してよ。お母さんが合鍵1本無くなったのに気づいちゃってさ。私のせいにされたんだよね」
侑「歩夢のせいでお小遣い半分に減らされちゃったよ」
歩夢「侑ちゃん」
83
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:10:37 ID:seH/GmRU
侑「はぁ〜」
歩夢「侑ちゃん」
侑「忙しいからあとにしてくれる?」
侑(スマホをいじりながら後ろにいる歩夢に話しかけた。傍から見ると全然忙しそうには見えない。実際暇だし)
歩夢「侑ちゃん」
侑(歩夢は壊れたロボットみたいに同じ言葉しか発しない)
侑(昔からそうだった。怒ってときはいつもこうだ)
侑(このやり取りは私が振り向いて歩夢の顔を見るまでずっと続く)
侑(長時間は試したことないけど、歩夢のことだから振り向かなければ朝まで続けるかもしれない)
侑(そう考えると私の心はドキドキした)
侑(声が枯れるまで私の名前を呼び続けてほしいけど――)
侑(さすがにそれはかわいそうだから、そろそろ終わりにしよう)
84
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:17:57 ID:seH/GmRU
侑(……いや、待って。もう少し焦らしてみよう)
侑(朝までとはいかないけど、1時間くらいなら大丈夫だよね。歩夢がどんな反応するか楽しみだ)
歩夢「侑ちゃん」
侑「ふ〜。次は動画でも見ようかな」
歩夢「侑ちゃん」
侑「歩夢、宿題はもう済ませた?」
歩夢「まだやってないよ」
侑「えっ」
侑(予想外の反応に歩夢の方を見てしまった)
侑(いつもなら私が振り向くまで絶対に「侑ちゃん」としか喋らないのに……)
歩夢「やっとこっち見てくれたね」
侑(歩夢は微笑むと、私の隣へと座った)
85
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:23:15 ID:seH/GmRU
歩夢「侑ちゃん」ギュ
侑(歩夢は私に抱きつくと、胸に顔を埋めた)
侑(胸に鼻息が当たって少しくすぐったい)
歩夢「変な匂いがする」
侑(顔を埋めながらぽつりとつぶやいた)
歩夢「くさい」
侑「えっと、まだお風呂入ってないから」
歩夢「くさい」
侑「そんなに汗くさいかな?」
侑(歩夢の言葉にショックを受ける――ことはなかった。歩夢の言う「くさい」とは体臭の意味じゃないから)
歩夢「別の女の匂いがする」
侑(そう言うと、歩夢はゆっくりと顔を上げた)
86
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:30:04 ID:seH/GmRU
歩夢「ねぇ」
侑「なに?」
歩夢「今日は謝っても許さないよ」
侑(歩夢は私の首をハンカチで拭うと、何度かキスをした)
侑(さっきのような不快感はなく、とても気持ちのいいものだった)
侑(キスをする場所によって様々な意味があって、首や喉にするキスは執着心や独占欲の現れと言われている)
侑(歩夢は私を自分のモノにしたいと思っている)
侑(私はその想いだけでとても幸せな気持ちになった)
侑(歩夢のキスする場所は少しずつ上に移動していき、ついに唇にまで到達した)
侑(一度目は軽くキスをして、二度目は舌を絡めてきた)
侑(歩夢のキスは荒くて好きだ。かすみちゃんの優しいキスとは全然違う。気持ちよさも段違いだった)
侑(ちゅぷちゅぷと舌と唾液の混ざり合う音が部屋に響く)
87
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:36:13 ID:seH/GmRU
侑(どのくらいキスをしたのかわからない。数十秒程度だった気もするし、数分だった気もする)
侑(歩夢が唇を離すと、唾液が糸を引いていた)
侑(今の私はどんな顔をしているんだろう)
侑(きっとかすみちゃんのような間抜け面をしているんだと思う)
侑(息を整えながら歩夢の方を見ると)
侑「私、何か謝るようなことした?」
侑(微笑みながら歩夢に問いかける)
歩夢「……」
侑(歩夢の眉が少しピクリと動いた気がした)
歩夢「見てたよ」
侑(歩夢は私をじっと見つめた。その瞳には怒り、悲しみ、苦しみ、嫉妬――)
侑(様々な感情が入り乱れていた)
88
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:40:58 ID:seH/GmRU
侑(私も歩夢を見つめる。私が数回瞬きしても、歩夢は一度も瞬きしていなかった)
侑「歩夢?」
侑「見てたってなにを?」
侑(歩夢の頬を軽く撫でながら聞いた)
侑(頬が紅潮していて少し暖かい。そのままキスしたい衝動に駆られたが、なんとか我慢した)
歩夢「見たもん」
侑(歩夢はつぶやくと目を伏せ、視線を自分の足元に向けた)
侑「なにを?」
歩夢「しらばっくれるんだね」
侑「歩夢?」
歩夢「部室で色々なことしてたよね」
歩夢「全部、見てたよ」
89
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:47:25 ID:seH/GmRU
侑「本当に見てたの?」
歩夢「うん」
侑(歩夢はこくりと頷いた)
侑「そっか――」
侑(――知ってるよ。かすみちゃんは気づいてなかったみたいだけど、ドアが数cm開いてたからね)
侑(他の子かと思ったけど、歩夢しか考えられなかった)
侑(だって、普段ならメッセージを送ってくるのに、今日は全然送ってこなかったんだもん)
侑(用事で遅くなるって内容は届いたけど、「今から行く」や「やっぱり行けない」みたいなのは届かなかった)
侑(あの歩夢が私に連絡するのを忘れるはずがない)
侑(それに、見てないと困るよ)
侑(歩夢が見てるのを知った上で、あそこまでやったんだからさ)
侑(そうじゃないとやるわけないでしょ。あはは)
90
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 17:53:10 ID:seH/GmRU
歩夢「侑ちゃん」
歩夢「どうしてあんなことしたの」
侑「歩夢のため、って言ったらどうする?」
歩夢「は?」
侑「ふふっ」
侑(歩夢の表情に思わず笑みがこぼれる。歩夢は怒った顔も素敵だね。私が好きなのは泣き顔だけど♪)
歩夢「なにそれ」
歩夢「私のためってどういうこと?」
侑(歩夢の瞳には強い怒りが宿っていた。今キスしたらどうなるんだろう。明らかに火に油を注ぐ行為かな?)
歩夢「侑ちゃん」
侑「冗談だよ。そんなに怒らないで」ナデ
侑(歩夢の頭を撫でる。サラサラしてて、ずっと撫でていたい触り心地だった)
91
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 18:41:53 ID:seH/GmRU
歩夢「ふざけないで」
侑「ふざけてないよ?」
侑(頭を撫でていた腕を掴まれ、グイッと引っ張られる)
侑(そして、歩夢にもたれかかるような形になった)
歩夢「侑ちゃん」
侑(歩夢との距離は、あと少し動けばキスできるような距離だった)
歩夢「100歩譲って、手を繋ぐまでなら謝ったら許すよ」
歩夢「今回は許せない。あんなことするなんて」
侑「どんなこと?」
侑(歩夢の腕を握る力が強まった。少し痛い)
侑「痛いよ」
歩夢「……」
侑(歩夢は私を睨みつけている。頭を撫でようとしたけど、今度は片方の腕を掴まれそうだからやめにした)
92
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 18:45:12 ID:seH/GmRU
歩夢「何回もキスしてたね」
侑「そんなにしてないよ」
歩夢「何回したと思う?」
侑「5回くらい?」
歩夢「侑ちゃんだけで15回」
侑「そんなにしたっけ?」
歩夢「ちゃんと数えてたもん」
侑「そっか」
侑(まさか数えてるとは思わなかった)
侑(その15回は外も含まれてるのかな?)
歩夢「私とはそんなにしてくれないのに」
侑(歩夢は小さな声でつぶやいた。この距離ならよく聞こえる)
93
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 18:49:28 ID:seH/GmRU
侑(その言葉に私は胸の高鳴りを感じていた)
侑(私とかすみちゃんに嫉妬してるんだ)
侑(嫉妬してくれて嬉しいよ。だから、あんなにキスしたんだもん。歩夢が見えるようにわざわざね)
歩夢「えっちもしてたもんね」
歩夢「いくら浮気性の侑ちゃんでも、一線を超えるようなことはしないと思ってた」
歩夢「最低だよ」
侑「……」
歩夢「最低、最低、最低」
侑(目をつぶって歩夢の言葉に耳を傾ける)
侑(もっと酷い言葉を投げかけてもいいんだよ?)
侑(私はそれだけ最低なことをしたんだから)
侑(もっと罵ってほしい。歩夢のかわいい声で、もっと)
94
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 18:52:15 ID:seH/GmRU
歩夢「ねぇ、どうしてあんなことしたの」
歩夢「かすみちゃんが好き――」
侑「違うよ」
歩夢「嘘ばっかり」
歩夢「侑ちゃんはいつも嘘ばかりつくもんね」
歩夢「何回も浮気して、浮気して、浮気して」
歩夢「侑ちゃんは私――」
侑「違うよ」
歩夢「まだ何も言ってないでしょ」
侑「歩夢の言いたいことくらいわかるよ」
侑「歩夢を嫌いなわけない。大好きだよ」
歩夢「……」
95
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 18:58:06 ID:seH/GmRU
歩夢「それならどうして浮気をするの」
歩夢「私が好きなら浮気なんてしない」
歩夢「私、何か間違ったこと言ってる?」
侑(どうして浮気をする、かぁ)
侑(明確な浮気行為をしたのは今回が初めてだ)
侑(歩夢以外の子と親しく話したり、手を繋いだり)
侑(歩夢にとっては浮気にあたるその行為は何度もやってきた。歩夢の嫉妬する姿を見るたびに嬉しかった)
侑(どんな理由であれ、私だけを見てくれるから。私を中心に考えてくれるから)
侑(でもね、その程度じゃ満足できなくなってきたんだよ)
侑(もっとすごいことをしたらどうなるのか)
侑(それこそ本当の浮気をしたら――)
侑(かすみちゃんは浮気相手にちょうどよかった)
96
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:03:45 ID:seH/GmRU
侑(私に好意を持ってるのはわかってたし、ちょっとえっちやキスをしたら落ちるのもわかってた)
侑(ああいうタイプは本当に操りやすいと思うよ)
侑(おかげで歩夢がこんなに嫉妬してくれた)
侑(かすみちゃんには感謝しないとね♪)
侑(でもさ、歩夢。まだ全然足りないよ)
侑(もっと嫉妬してよ。もっと私を見て。私だけを)
侑(私が浮気をする理由はね、歩夢に嫉妬してほしいから)
侑(私だけを見てよ。他のことなんて何も考えないで)
侑(私だけを愛してよ。今よりも、もっともっと)
侑(……って、歩夢に言ったらどうなるかな?)
侑(引くだろうなぁ。絶対に言わないけどさ)
侑(言ったら面白くないもん)
97
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:10:14 ID:seH/GmRU
歩夢「黙ってたらわからないよ」
侑「歩夢の言ってることは何も間違ってないよ」
侑「それが正しい答えだと思う」
侑(一般的に考えれば、私がおかしいんだろうね)
侑(私は全然そうとは思わないけど)
侑(私は何も間違っていない)
侑(私はただ、歩夢に愛してほしいだけなんだ)
歩夢「それならもう浮気はしない?」
侑「うん」
侑(きっとこれからも浮気はするだろう)
侑(だって、浮気行為が一番歩夢の嫉妬心を燃やしてくれるから。私だけを考えてくれるから)
歩夢「そっか……」
侑(歩夢は私をじっと見つめている。私は微笑み返した)
98
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:18:57 ID:seH/GmRU
歩夢「本当にもう浮気しないって約束してくれる?」
侑「するよ」
歩夢「もし約束を破ったら?」
侑「歩夢ならどうしたい?」
歩夢「許さない」
歩夢「絶対に、許さない」
侑(歩夢の言葉に全身が火照るのを感じた)
侑「でもさ、さっきも似たようなこと言ってたよね」
侑「結局許してくれるんじゃないの?」
歩夢「私は許すなんて一言も言ってないよ」
侑(歩夢は私をそのまま押し倒した)
侑(そして、私の首に両手を置いた。刑事ドラマとかでよく見る首を絞めるポーズだった)
99
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:22:50 ID:seH/GmRU
歩夢「侑ちゃん」スッ
侑「えっと?」
歩夢「……」ギュ
侑(歩夢の手に少し力が入る。このまま全体重を掛けて圧迫すれば、私は死ぬかもしれない)
侑「歩夢?」
侑(笑顔で歩夢に話しかける。歩夢は無表情だった)
歩夢「私、侑ちゃんが大好き」
侑「私も好きだよ」
歩夢「私がどんな気持ちがわかる?」
歩夢「侑ちゃんに浮気されるたび、つらくて泣いてるんだよ?」
侑「……」
歩夢「今日も泣いた。あんな、あんなひどいことして……」
100
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:28:18 ID:seH/GmRU
歩夢「私の気持ちも考えてよ……」
歩夢「私がどんな気持ちで行為を見てたと思うの……?」
歩夢「ねぇ、侑ちゃん……」
侑(歩夢の声は少しずつ涙声になっていった)
侑(私は歩夢の頬を優しく撫でた。頬は涙でうっすらと濡れていた)
侑(かわいいなぁ。その顔、私にもっと見せてよ)
歩夢「侑ちゃん……」
侑(涙が私の頬にぽたぽたとこぼれ落ちる)
侑「ごめんね」
侑(目に溜まった涙を拭う。歩夢はずっと私
の首に両手を置いていた)
歩夢「……」
侑(歩夢は無言で私を見つめている。手が微かに震えていた)
101
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:31:59 ID:seH/GmRU
歩夢「私はこんなにも好きなのに……」
歩夢「こんなにも侑ちゃんを愛してるのに……」
歩夢「謝っただけで……済むと思ってるの……?」
侑「……ふふ」
侑(この状況で笑ったらいけない。それはわかってるのに)
侑「ふふふ、あははっ」
侑(私は笑いが止まらなかった。嬉しさでいっぱいだった)
歩夢「……」ポカン
侑(歩夢は驚いた顔でこちらを見ている)
歩夢「なに、笑ってるの」
侑「嬉しいんだ」
歩夢「嬉しい……?」
102
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:37:56 ID:seH/GmRU
侑「私が浮気をしたのに、歩夢はまだ私を好きだって言ってくれた」
侑「愛してるって言ってくれた」
侑「それがたまらなく嬉しいんだよ」ニコ
歩夢「……」
侑「ねぇ、歩夢」
侑(歩夢の腕をそっと掴む。歩夢は一瞬ビクッとした)
侑「その手で私をどうするつもり?」
侑「私を殺したいの?」
侑「少し体重を乗せたら簡単に殺せるよ?」
歩夢「……」
侑(歩夢の額に汗が浮かんでいた。手がさっきよりも震えている)
侑(歩夢に私を殺す気なんてない。できるわけがない)
103
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/27(日) 19:44:25 ID:seH/GmRU
侑(歩夢はただ脅してるだけだ。また浮気をしないように)
侑(その程度で私を支配できると思ってる歩夢を見て――)
侑(――私はとても愛おしく感じた)
侑「私が憎い?」
侑(微笑みながら歩夢に問いかける)
歩夢「……」フルフル
侑(歩夢は首を横に振った。手を離そうとしたけど、それを私は許さなかった。歩夢の腕を押さえつける)
歩夢「侑ちゃ――」
侑「歩夢ならいいよ」
歩夢「え……?」
侑「歩夢になら、殺されてもいい」
侑「それが歩夢の愛情表現なら、私は喜んで引き受ける」
侑(歩夢の瞳には、怒りや悲しみよりも怯えが強く出ていた。私はその顔を見て軽い興奮状態になった)
104
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 10:37:49 ID:fRqiMAKI
侑「歩夢?」
侑(歩夢は私の呼びかけに一瞬反応した。その隙に、歩夢の服を思いきり引っ張った)
歩夢「え――」
侑(バランスを崩し、手に全体重が掛かる。私の喉は一瞬で圧迫された)
侑「ぅぐ――」
侑(時間にして数秒程度だったと思う。歩夢はすぐに手を離し、その反動でソファーから転げ落ちた)
侑「げほ、げほ」
侑(まだ喉に違和感が残ってる。たった数秒でここまで圧迫されるとは思わなかった)
侑(あと10秒くらい同じ状態が続いたら、本当に死んでいたかもしれない)
侑(死んだらどうなるんだろう)
侑(歩夢に殺されるのは構わない。だけど――)
侑(歩夢のことを考えられなくなるのは嫌だな)
105
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 10:43:29 ID:fRqiMAKI
侑(私は歩夢を見た。歩夢は、涙目で床にへたり込んでいた)
侑「歩夢――」
侑(名前を呼ぶと肩がビクリと跳ね上がった。恐る恐るこちらに視線を向ける)
侑「歩夢、大丈夫?頭ぶつけてない?」
歩夢「……私は大丈夫」
侑(歩夢は立ち上がり、私の隣に座る。歩夢がいつも使ってるシャンプーの匂いがふわりと漂った)
歩夢「ゆ、侑ちゃんは……?」
侑(歩夢は私の首を見ていた。私は首に触れると)
侑「まだ少し違和感がある、かな」
歩夢「ごめんなさい……」
侑「どうして歩夢が謝るの?歩夢は何も悪くないのに」
歩夢「だって……」
106
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 10:50:10 ID:fRqiMAKI
歩夢「私が……侑ちゃんの首を、絞めようとしたから……」
侑(歩夢は涙声になりうつむいてしまった。その顔にキスをしたくなったが、なんとか抑える)
侑「歩夢は悪くないよ。元はと言えば私が浮気をしたのがいけないんだから」
侑「ごめんね、歩夢」
侑(歩夢の頭を撫でる。歩夢は身体を私に預けてきた)
侑(シャンプーの匂いが更に強くなった)
歩夢「私……」
侑(歩夢がぽつりとつぶやいた)
歩夢「私、首を絞めるつもりなんてなかったんだよ」
歩夢「侑ちゃんがもう浮気をしないようにって」
歩夢「ここまでしたら、もう浮気なんてしないと思ったから。それに――」
歩夢「それに、どれだけ浮気をされようが、好きな人を殺せるわけないじゃない」
107
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 10:55:44 ID:fRqiMAKI
侑(歩夢の言葉に胸がドキドキした。嬉しかった)
侑(私の歪んだ愛情を知ってもなお、私を好きでいてくれて、本当に嬉しかった)
侑「歩夢――」
歩夢「――侑ちゃん」
歩夢「好きだよ、大好き」
侑(歩夢は微笑み、私の耳元へと顔を近づける)
歩夢「もう浮気なんてしないでね」
歩夢「信じてるからね」
侑(歩夢はそのまま耳にキスをした。あまり慣れてない場所のせいか、ゾクゾクする)
侑「――うん」
歩夢「約束だよ」
侑(歩夢は小指を差し出した。このやり取りは何度目だろう。私は何度も約束を破ってきた)
108
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:02:09 ID:fRqiMAKI
侑(指切りで約束をしたあと、歩夢が抱きついてきた。そしてまた胸に顔を埋める)
歩夢「侑ちゃんの匂い、大好き」
歩夢「ずっと嗅いでいたいくらい」
侑(好きな人に匂いを嗅がれるのは嫌いじゃない。私だって歩夢の匂いならずっと嗅げる。多分)
侑(私はちょっと意地悪をしたくなった)
侑「さっきはくさいって言ってなかった?」
侑「歩夢に匂いが移っちゃうかもよ?」
歩夢「もう、変なこと言わないで」
侑(歩夢は胸に顔を埋めながら話をする。くすぐったい)
歩夢「大丈夫だよ。私の匂いで上書きしたから」
侑「そっか」
歩夢「うん♪」
侑(歩夢は顔を上げた。笑顔だった。かわいい)
109
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:09:13 ID:fRqiMAKI
歩夢「侑ちゃん、かすみちゃんにお花あげてたよね」
侑「え?」
侑(いきなり話が飛んでびっくりした。歩夢の方を見る)
歩夢「ああ、別に怒ってるわけじゃないよ?」
歩夢「侑ちゃんも“友達”にプレゼントくらい贈るもんね」
歩夢「ただ、気になっただけ。どうしてかなって」
歩夢「“友達”には贈って“恋人”の私には何もないのは少し気になるけどね。気になるけどね」
侑(歩夢は“友達”と“恋人”を強調して言った。私の経験上、今の歩夢は怒り30%くらいだろうか)
侑(怒ってない人がわざわざ怒ってないなんて言うわけない。歩夢はプレゼントを貰えなくて怒ってるんだ)
侑(というか、そこまでついてきてたんだ)
侑(学校で見てたのは知ってるけど、まさか街中にまでついてきてたとは全然気づかなかった)
侑(歩夢の尾行スキルも前に比べて多少は成長したのかもしれないね)
110
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:13:57 ID:fRqiMAKI
侑(それならかすみちゃんとキスすればよかったな)
侑(街中でキスするのはさすがに抵抗があるけど)
侑(誰が見てるかわからないしね)
歩夢「侑ちゃん、かすみちゃんにしかプレゼントを贈らないってことは、もしかして――」
侑「違うよ」
侑「私は歩夢以外は愛さないって決めてるから」
歩夢「ふふ、嬉しいこと言ってくれるね」
歩夢「浮気は何度もするのにね」
侑「あははっ」
歩夢「侑ちゃん」
侑「ごめんなさい」
侑(歩夢は少し低い声で私の名前を呼んだ。本人はドスを効かせてるつもりだろうけど、かわいいだけだった)
111
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:19:49 ID:fRqiMAKI
歩夢「まったく……」ハァ
歩夢「こほん。それで、お花の件だけど――」
侑「特に理由なんてないよ。ただプレゼントしただけ」
侑(恋人になった記念に贈ったのは伏せておいた。話したらきっと歩夢は怒るから。激怒するから)
侑(怒ってる歩夢も好きだけど、今は和気あいあいな時間を楽しみたかった)
侑(まあ、私には付き合う気なんてないけどね)
侑(歩夢がいるのに他に恋人作るわけないじゃん)
侑(私がかすみちゃんに告白した理由は――)
侑(歩夢がどれだけ嫉妬してくれるか知りたかったから)
侑(どんな反応するか、想像しただけでもときめいちゃうよね♪)
歩夢「かすみちゃんだけずるいよ」
歩夢「私も何か欲しかったな」
侑(歩夢はぽつりとつぶやいた。明らかに嫉妬していた。その横顔に、私はときめきと興奮を覚えた)
112
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:26:36 ID:fRqiMAKI
侑「歩夢♪」
侑(歩夢の頬にキスをする。不意打ちでキスしたせいか、少し驚いていた)
歩夢「侑ちゃん?」
侑「明日、買い物行こうか。欲しいもの買ってあげるよ」
歩夢「いいの?」
侑(歩夢の顔がぱぁっと明るくなる。その表情を見て、私も嬉しくなった)
侑「もちろん」ニコ
歩夢「じゃあ、お揃いで買わない?侑ちゃんの分は私が出すから♪」
侑「いいね、そうしよう。明日の練習終わってからでいい?」
歩夢「うん。私、新しいハンカチ欲しいな〜♪」ギュッ
侑(歩夢は微笑むと腕を絡ませてきた。そのままソファーにもたれかかる)
侑(そして何度かキスをした。好きな人とするキスは幸せな気分になれる。もっとしたかった)
113
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:33:51 ID:fRqiMAKI
歩夢「お花も買ってくれる?」
侑(歩夢はかすみちゃんだけ花を貰ったのが許せないらしい。そういう嫉妬深いとこ、本当に大好きだよ)
侑「もちろん。歩夢はどんな花が欲しいの?」
歩夢「侑ちゃんが選んでくれるなら何でもいいよ♪」
歩夢「あ、でも、ローダンセはもう勘弁ね?」
侑「どうして?前はあんなに喜んでくれたのに……」
歩夢「ローダンセの花言葉は“終わりのない友情”」
侑「……!」
歩夢「次もこのお花だったら、泣いちゃうからね」
侑「ご、ごめんね。私は“変わらぬ思い”の方を気に入ったからさ。ローダンセはもう贈らないよ」
歩夢「全部の花言葉が理想とは限らないもんね。ちょっと意地悪しただけ。お花を貰ったときは嬉しかったよ」
侑(今度は歩夢が頬にキスをしてくれた。キスされた場所が熱くなるのを感じた)
114
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:39:48 ID:fRqiMAKI
侑「歩夢、花言葉詳しいの?」
歩夢「全然。ローダンセしか知らないよ。侑ちゃんに貰ったお花だから調べてみただけ」
侑「そうなんだ」
歩夢「侑ちゃんはどうなの?」
侑「私は歩夢に花を贈るときに全種類調べたからね。詳しい部類に入るんじゃないかな?」
侑「ただ、この花は?って聞かれてもメジャーな花以外はすぐに答えられないけどね」
歩夢「そっかぁ。桜の花言葉は?」
侑「精神美、優美な女性、純潔だったかな?」
侑(歩夢はスマホを取り出し検索を始めた)
歩夢「本当だ、合ってる。侑ちゃんすごいね〜」
侑「えへへ」
侑(歩夢に褒められちゃった。頑張って調べたかいがあったよ♪)
115
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:47:08 ID:fRqiMAKI
歩夢「かすみちゃんには何のお花をプレゼントしたの?」
侑「……!」
侑(歩夢はスマホを握っている。名前を聞いたら花言葉を調べるつもりだ)
侑(正直に話した方がいいかな?でも、花言葉を知ったら歩夢に嫌な女だって思われるかもしれない)
侑(忘れたふりをしたら絶対怒られるから、適当にそれっぽい花を言うしかないか……)
侑(アイビーやマーガレットはダメだよね。歩夢のことだから勘違いするだろうし……)
侑(友情系の花言葉でそれっぽいやつなかったっけ?愛とか入ってないのが好ましいんだけどな……)
侑(もっと完璧に記憶しておくんだったよ……)ハァ
歩夢「侑ちゃん?」
侑「え?あ、えーと」
侑「そ、そうだ、ゼラニウム。ゼラニウムって花をかすみちゃんにプレゼントしたんだよ」
歩夢「ゼラニウム?」
116
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:51:31 ID:fRqiMAKI
歩夢「聞いたことないなぁ。ゼラニウム、っと」ポチポチ
歩夢「ふむふむ」スッスッ
歩夢「尊敬、信頼、真の友情ね」
侑(よかった、私の記憶は間違ってなかった)
侑「かすみちゃんは大切な友達だからね〜」
歩夢「その友情が愛情に発展しちゃったの?」
侑「え?」
歩夢「かすみちゃんと付き合うんじゃないの?」
歩夢「えっちもキスもしてたし、外でベッタリだったし」
侑「……歩夢、まだ根に持ってる?」
歩夢「あんな行為を見ちゃったからね。そう簡単に割りきれるものじゃないよ」
侑「うぐ……」
117
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 11:58:42 ID:fRqiMAKI
歩夢「私は怒ってるんだよ。ぷんぷんっ」
侑(人差し指を頭にやって、鬼のポーズを取った。歩夢のその行為はただかわいいだけだった)
侑「ご、ごめんね?」
侑(かわいいって口に出そうになったけど、ここは謝罪の方がいいと思う。私は素直に謝った)
歩夢「ふふ、冗談だよ。もう許すって決めたから♪」ニコ
侑(歩夢の笑顔は本当にかわいい。笑顔を見るだけで私も幸せな気持ちになった)
歩夢「かすみちゃんとは付き合ってないんだよね?」
侑(やっぱり少しは疑ってるらしい。そうだよね、あんな行為を見たら誰だって疑うだろう)
侑「私が好きなのは歩夢だけだよ。それだけは信じてほしい。神に誓ってもいいよ」
歩夢「そっかぁ。嬉しいな♪」ニコッ
侑(歩夢はとびきりの笑顔を見せた。歩夢だけが好きなのは本当だよ。これから先もね)
侑(ただ、かすみちゃんと付き合ってないとは言ってないからね。私は何も嘘はついてないよ)
118
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 12:07:16 ID:fRqiMAKI
歩夢「侑ちゃんにそこまで愛してもらえるなんて、私は幸せ者だな〜♪」
侑「あはは」
歩夢「……で、本当は何のお花をプレゼントしたの?」
侑「――」
侑(歩夢の雰囲気が一瞬で変わる。笑顔から真顔になって、声もまるで別人のようだった)
侑(いつものことだけど、これは何度見ても慣れない。嘘がバレたことに驚きつつ、平静を装うしかなかった)
侑「あはは、歩夢ったらいきなりどうしたの?」
侑「私がプレゼントした花はゼラニ――」
歩夢「――侑ちゃん」
侑(歩夢の言葉に遮られる。私の名前を呼ぶ声は、酷く冷たかった。嘘をついたことにかなりご乱心のようだ)
歩夢「何年一緒にいると思うの?」
歩夢「侑ちゃんの嘘くらい、すぐにわかるよ」
119
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 12:16:41 ID:fRqiMAKI
侑「……」
侑(さすが歩夢だね。褒めながら頭を撫でたかった)
侑(この状況でそれができるのは、能天気かせつ菜ちゃんくらいだろうけどね)
歩夢「これ以上の沈黙は浮気と見なすよ」
侑(しかたない、正直に話すしかないか)
侑「私がプレゼントしたのは、黄色のチューリップ」
侑(心の中でため息を吐きつつ、本当の花の名前を歩夢に伝えた。引かれないといいけど……)
歩夢「……」スッスッ
侑(歩夢はスマホを熱心に眺めていた。花言葉を知り、どう思うのだろうか。軽蔑はされたくなかった)
歩夢「ふーん。なるほどね」
歩夢「そういう意味なんだ」
侑(歩夢はスマホの電源を切り、私の方に向き直る)
侑(歩夢は笑顔だった。……笑顔?)
120
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 12:21:52 ID:fRqiMAKI
侑(どうして笑顔なんだろう?こんな花言葉があるのに、贈るなんてひどい、くらいは言われると思ってたのに)
歩夢「侑ちゃんっ」
侑(歩夢は私の手を握る。本当に嬉しそうだった)
歩夢「私ね、侑ちゃんが嘘のお花を言うくらいだから、てっきり愛情系の花言葉だと思ってたの」
歩夢「でも、調べたら違った。全般の花言葉は少しイラッとしたけど、黄色だからチューリップにしたんだよね?」
侑「う、うん。まあ、はい」
歩夢「えへへ。かすみちゃんに対する恋愛感情がなくて本当に安心したよ♪」
歩夢「黄色のチューリップの花言葉、素敵だよね」
歩夢「特にこの――」
歩夢「――“望みのない恋”って花言葉は、かすみちゃんにピッタリだね♡」ニコッ
侑(歩夢の今日一番の笑顔だった)
侑(まあ、歩夢が喜んでくれるならそれでいいかな)
121
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 12:48:54 ID:fRqiMAKI
歩夢「えへへ♪」ギュー
侑(歩夢は上機嫌で腕を絡めている)
侑(歩夢があんなこと言うなんて少し驚いたけど、それだけ私が好きだからだもんね)
侑(歩夢に愛されてるって実感できて、嬉しかったよ)
歩夢「侑ちゃん、大好きだよ♪」
侑「私も大好き」ニコ
侑(笑顔で語りかける歩夢にキスをした)
侑(歩夢は絡めていた腕をほどき、腰に手を回す)
侑(そして舌を絡めてきた。さっきしたキスよりも、濃厚で、愛し合ってる恋人がするようなものだった)
侑(歩夢とキスをする瞬間が一番幸せだ)
侑(この時間がずっと続けばいいのに――)
侑(そう思いながら、何度も唇を重ねた)
122
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 12:56:23 ID:fRqiMAKI
侑(唇を離すと、唾液が糸を引いていた。私はこれを見るのが好きだった)
侑(2人の唾液が混ざったものだから)
侑(私がえっちよりもキスの方が好きな理由の1つかもしれない)
侑(それに、私達は女同士だから入れたりできないしね)
侑(擦り合わせたり舐め合ったりはできるけど、私はやっぱりキスが好き。手軽にできて気持ちいいし♪)
侑(垂れた唾液を拭い、歩夢の方を見る。歩夢の目はとろんとしていて、ソファーにもたれかかっていた)
侑(ふふ、かわいいなぁ)
侑(歩夢の髪を優しく撫でていると、ふとお腹が鳴ってしまった)
侑(時計を見ると22時で、普段の夕飯の時間を大きく過ぎていた)
侑(どうりでお腹が空くわけだよ)
侑「歩夢、一緒に食事作ろうよ。まだ食べてないでしょ?」
侑(歩夢に呼びかけると、腕を引かれ、またキスされた)
123
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:03:45 ID:fRqiMAKI
侑「え、ちょ、あゆ、む――」
侑(何度もキスされた。悪い気分ではないし、むしろ嬉しいけど、今はちょっと――)
歩夢「――侑ちゃん♡」
侑(歩夢は普段よりも甘い声で私を呼ぶ)
侑(やばい、この甘い声を出すときの歩夢は――)
侑(歩夢の方をチラリと見る)
侑(歩夢は制服のボタンを外し、私よりも大き胸が露になった。ブラジャーも外そうとしている)
侑「歩夢、さん?」
侑(呼びかけには反応しない。私の声は少し震えていた)
侑(ブラジャーを外して、床にそっと置く。そしてようやく私の方を見た。瞳の中にはハートが見えた気がした)
歩夢「――侑ちゃん、シよ♡」
侑(さっきのキスでスイッチが入ったらしい)
侑(歩夢の甘い声に耳が蕩けそうになった。食事をしたいなんて、言えるわけがなかった)
124
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:07:33 ID:fRqiMAKI
――翌朝・侑の部屋
歩夢「侑ちゃん、侑ちゃん起きて。朝だよ」ユサユサ
侑「んん〜……」
侑(歩夢の声でうっすらと目を開ける。朝日が眩しい。歩夢を見ると、もう制服に着替え終わっていた)
歩夢「おはよう」ニコ
侑「おはよ……」
侑(歩夢とおはようのキスをする。お泊まりのときは毎朝する約束だった)
侑「ふわあぁ〜」
歩夢「ふふっ」
侑「んむ……」グシ
歩夢「お義母さんが朝ごはん作ってくれたよ。冷めないうちに食べよう?」
侑「んー、うん」
125
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:12:15 ID:fRqiMAKI
侑(お母さん?おばさんの間違いじゃないの?)
侑(歩夢の言葉に違和感を覚えたけど、寝起きの頭では難しいことは考えられなかった)
歩夢「さ、行こう?」
侑(歩夢は手を差し出した。私はその手を握る)
侑「ありがと。歩夢、朝から元気だね」
歩夢「そうかな?」
侑「もう着替えてるし。何時に起きたの?」
歩夢「5時過ぎには目が覚めたと思うけど」
侑「す、すごいね。昨日あんなにしたのに……」
侑「私なんてその気になればまだまだ寝れるよ?」
歩夢「あ、あはは。学校に遅れるから二度寝はダメだからね?」
侑「わかってるよ。あゆぴょん」
126
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:18:19 ID:fRqiMAKI
歩夢「あゆぴょん?」
侑「昨日のあゆぴょんは激しかったぴょん。うさぎは性欲が強いって本当だったんだね、ぴょん♪」
侑(手でうさぎの真似をする。歩夢の顔は真っ赤になっていった)
歩夢「も、もう。昨日のことはいいじゃない」
侑「あゆぴょ〜ん♪」
歩夢「侑ちゃんっ」
侑「あはは。着替えるから先に食べてていいよ?」
歩夢「ん、待ってるよ」
侑(なぜかソファーに座った。リビングに行けばいいのに)
侑(歩夢はスマホをいじりながら、こちらをチラチラと見ている。もしかして――)
侑(服を脱ぐと、視線に気づいてないと思ってるのかガン見していた)
侑(どうやら私の裸が見たいらしい。昨日あんなに見たり触ったり舐めたりしたのにね。さすがあゆぴょんだ)
127
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:24:04 ID:fRqiMAKI
侑(鏡に映る自分を見て、ふと気づいた)
侑「あ……」
歩夢「どうしたの?」
侑(歩夢は私に近づき、肩に手を乗せる。右手が軽く私の胸に触れたような気がしたけど、気のせいだよね?)
歩夢「侑ちゃん?」
侑(歩夢は覗き込むようにこちらを見た。視線の先は私の顔ではなくどう見ても胸だった)
侑「自重しなよ、あゆぴょん。見すぎだって」
歩夢「えっ?」
侑「私の胸見すぎ。着替えのときもガン見してたでしょ」
歩夢「い、いや、してない、してないよ。そういう、言いがかりをつけるのは、その、よくないと思います」
侑「焦りすぎでしょ」
侑(焦ってる歩夢もかわいいなぁ。キュンキュンしちゃうよ)
128
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:28:08 ID:fRqiMAKI
侑(少しからかっちゃお♪)
侑「本当に見てない?」
歩夢「うんうん」
侑(歩夢はコクコクと頷く。そのしぐさがすでにかわいい)
侑「ふーん?」
侑(下着をゆっくりと脱いでいく。歩夢はやっぱり見ていた)
侑(見えそうになるギリギリの瞬間にまた穿き直す。歩夢が「ああっ」と残念そうな声を上げた)
侑「歩夢?」
歩夢「いや、だって、今のはずるいじゃん」
歩夢「あんなの誰でも見ちゃうよ」
侑「歩夢?」
歩夢「ごめんなさい……」
129
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:34:27 ID:fRqiMAKI
侑「なんでそんなに見たいの?昨日たくさん見たよね?」
歩夢「好きな人の裸は……ずっと見ていたいから……」
侑(歩夢は指をもじもじさせながらつぶやいた。顔も真っ赤で、とにかくかわいい。抱きしめたい気持ちをグッと抑える)
侑「そっか。私も気持ちはわかるよ」
歩夢「でしょ?」
侑(歩夢の顔が明るくなる。私の顔と胸を交互に見ていた)
侑「歩夢はガン見しすぎだけどね」
歩夢「あ、あはは。だって、侑ちゃんの裸、綺麗なんだもん。ずっと見ていられるよ」
侑「ふ、ふーん」
侑(歩夢に言われて顔が少し熱くなった。悪い気はしない)
歩夢「ふふ、照れてるの?かわいいね♪」
侑(歩夢は私の頬を優しく撫でた。それで更に熱くなる)
130
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:40:36 ID:fRqiMAKI
歩夢「キスしていい?」
侑「……ん」
侑(私が頷くと、歩夢は首にキスをした。次に喉、顎、頬、唇の順番だった。朝からたくさんキスされて嬉しい)
歩夢「ぷは。あ、そろそろ着替えないとね」
侑(歩夢は時計を指さす。もうすぐ家を出ないとバスに間に合いそうになかった)
侑「そうだね。あゆぴょんにえっちな悪戯をされる前に着替えないとだ」
歩夢「そ、そんなことしないよ?」
侑「どうだか。私の裸をガン見する変態うさぎのあゆぴょんの言ってることは信用できないし♪」
歩夢「も〜〜。その呼び方やめてよ〜〜」
侑「あははっ」
侑(かわいく頬を膨らませてる歩夢を横目に見ながら、鏡に向き直った)
侑(あ、また増えてる)
131
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 13:46:18 ID:fRqiMAKI
侑(首に触れる。さっきは1つしかなかったのに、キスマークがもう1つ増えていた)
侑(今のキスでついちゃったんだ)
侑(キスマークの部分を指で軽く撫でる。歩夢にキスされたのを思い出して、嬉しい気分になった)
侑(嬉しいけど――)
侑(この位置だと服で隠せないよね……)
侑(試しに指でゴシゴシ拭ってみる。拭って消えるのならこんなに悩んだりはしない)
歩夢「侑ちゃん?」
侑(キスマークをつけた当の本人は能天気にスマホをいじっていた。私の裸はもう飽きちゃったのかな?)
侑「わかってるよ」
侑(まあ、首だし大丈夫だよね。もしバレたとしても虫刺されとかで誤魔化せると思うし)
侑(早く着替えないと。朝ごはん食べる時間がなくなる)
侑(私は制服を手に取った)
132
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 16:41:27 ID:fRqiMAKI
侑「――よし」
侑(制服に着替え、歩夢の方を見る。歩夢は相変わらずスマホをいじっていた。何を真剣に見てるんだろう)
侑「歩夢、何見てるの?」
侑(スマホを覗き込もうとすると、歩夢は画面を伏せた。そして電源を切ってバッグにしまう)
歩夢「着替え終わったんだ」
侑(歩夢はバッグを肩に掛け、ドアへと歩いていく)
侑「ちょっと、歩夢」
歩夢「うん?」
侑(歩夢はドアノブを握ったままこちらに振り返った。心なしか焦ってるようにも見える)
侑「何を真剣に見てたの?」
歩夢「えっと、まとめサイトを見てただけだよ?」
侑(歩夢の目は泳いでいた。本当に嘘がつけないよね)
133
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 16:49:01 ID:fRqiMAKI
侑(普通なら浮気を疑ったりするんだろうけど――)
侑(歩夢に限ってその心配はなかった)
侑(だって私のことが大好きなんだもんね。浮気なんてするわけない)
侑(昨日もあんなに愛し合ったし♪)
侑「……ふふ」
侑(思わず笑みがこぼれる。こんなに歩夢に愛されてると思うと、自然と頬が緩んだ)
歩夢「侑ちゃん……?」
侑(歩夢は心配そうな顔で私を見つめていた。急に顔を綻ばせたから変に思ったのかもしれない)
侑(私は歩夢が何を見てたのか気になった。少しカマをかけることにしよう)
侑「ねぇ、どこのまとめサイト見てたの?」
歩夢「ど、どこのって普通のサイトだけど……」
侑(指をもじもじさせながら目をそらした。この反応は絶対にまとめサイトなんか見ていなかった)
134
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 16:56:50 ID:fRqiMAKI
侑「名前とかあるでしょ?それを教えてよ。歩夢がどんなサイトを見てるのか気になるし」
歩夢「な、名前なんて忘れちゃったよ。それよりも、早く朝ごはん食べないとバスに間に合わなくなるよ?」
侑「浮気してるの?」
侑(ドアノブを回す手が止まった。歩夢は悲しそうな表情を浮かべている)
歩夢「侑ちゃんは私が浮気するように見えるの?」
歩夢「私はそんなことしない。侑ちゃんがいるのに、浮気なんてするわけないじゃない」
侑(歩夢の言葉に頬が熱くなる。浮気をしないとわかっていても、実際に言われるとやっぱり嬉しかった)
侑「だって、本当のこと教えてくれないんだもん」
侑「浮気を疑うのは当然じゃないかな?」
歩夢「私は嘘なんて……」
侑(私は歩夢に近寄り、そっと髪を撫でる。顔を耳元に近づけ――)
侑「歩夢が私の嘘を見破れるように、私だって歩夢の嘘を見破れるんだよ」
135
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 17:01:19 ID:fRqiMAKI
歩夢「え……」
侑「歩夢?」
侑(耳元で優しく語りかける。ついでに息を吹きかけたら、「きゃ」とかわいい声をあげた。かわいすぎる)
侑「歩夢が浮気をしないってことは私がよくわかってる」
侑「でもね、嘘をつかれたら悲しいよ。その気持ちは歩夢もよく知ってるよね?」
歩夢「うぅ……」
侑「本当のことを教えてほしいな」
歩夢「……」
侑「歩夢?」
歩夢「軽蔑、しない?」
侑「え?」
侑(思わぬ言葉に歩夢の顔を見つめる。歩夢は顔を赤らめていた)
136
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 17:08:34 ID:fRqiMAKI
侑(どうしたんだろう。えっちな画像でも見てたのかな?)
侑(こんな朝からお盛んだね、あゆぴょんはさ)
歩夢「軽蔑しないって約束してくれるなら、話すよ」
侑「えっちな画像程度じゃ軽蔑なんてしないよ。歩夢が普段送ってくる自撮りや動画よりも際どくなければね」
歩夢「えっちな画像って……何言ってるの!」
侑(歩夢は更に顔を赤らめた。どうやら違ったらしい)
侑「えっちな画像じゃなかったらなんなの?」
侑「他に見せられないものって言うと、やっぱり浮気相手とのLINEの会話――」
歩夢「だから浮気じゃないって言ってるでしょ!」
歩夢「わ、私が見てたのは……これ……」
侑(歩夢はバッグからスマホを取り出し、電源を入れる。画面に写っていたのは私の寝顔の写真だった)
侑「これって……」
137
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 17:17:34 ID:fRqiMAKI
侑「私の寝顔、だよね?」
歩夢「うん……」
侑(歩夢は恥ずかしそうに頷いた。写真を見ると、よだれを垂らしながら気持ちよさそうに寝ていた。間抜け面だった)
侑「なんだ、私の寝顔かぁ。期待して損したよ」
侑(スマホを返すと、歩夢はバッグにしまった)
歩夢「け、軽蔑、しないの?」
侑(恐る恐る私に聞いていた。とりあえず微笑む)
侑「逆に聞くけど、どうして軽蔑されると思ったの?」
歩夢「だって、寝てるときに勝手に写真を撮ったんだよ?」
歩夢「軽蔑はされなくても、怒られると思ってた……」
歩夢「勝手に写真を撮って……ごめんなさい……」
侑(歩夢は指をもじもじさせながら、申し訳なさそうに謝った。その姿に私の心はキュンキュンした)
138
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 17:25:06 ID:fRqiMAKI
侑「あはは。謝らないでよ。私は別に怒ってないから」
歩夢「ほんと?」
侑「うんうん」
侑(歩夢の頭を撫でると、嬉しそうに顔を綻ばせた)
侑(歩夢ってば本当にかわいいなぁ。私がその程度で怒るわけないのに。むしろ嬉しいよ)
侑(わざわざ寝顔の写真を撮るってことは、それだけ私が好きってことだもんね)
侑(やっぱり私は歩夢に愛されてるな〜)
侑(歩夢の頭を撫でながら、スマホの電源を入れてLINEを確認する)
侑(同好会や音楽科の友達から数件のメッセージが届いていた)
侑(1人ずつ確認する時間はない。誰から来たのか名前だけ確認をする。返事はバスに乗ってからでいい)
侑(期待していたが、かすみちゃんからメッセージは届いていなかった。残念だ)
侑(花言葉、ちゃんと調べてくれたかな?)
侑(かすみちゃんと会うのが楽しみだね)
139
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 17:31:15 ID:fRqiMAKI
――部室
愛「今日の朝練中止なのー?」
侑「半分以上参加しないみたいだしね」
璃奈「残念」
侑(璃奈ちゃんは真顔で言った。昔に比べて、これでも表情は柔らかくなった方だと思う)
歩夢「しかたないよ。他のみんなも忙しいんだろうし」
愛「せっつーは生徒会でしょ?あとは?」
璃奈「果林さんと彼方さんは寝坊、エマさんは果林さんを起こそうとしてる、とか?」
歩夢「あはは。いつもの光景だね」
侑「しずくちゃんは演劇部が忙しいんだって。しばらくこっちの練習には出られないって連絡来たよ」
愛「へー」
侑(愛ちゃんは退屈そうに椅子に座っていた。足を組んでいて、スカートの隙間から下着が見えそうだった)
140
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 17:50:51 ID:fRqiMAKI
侑「愛ちゃん、見えそうだよ」
愛「んー?」
侑(ゆっくりとこちらに視線を向ける。体勢を変えたせいか、一瞬だけ下着が見えた。黒だった)
侑「下着、見えそうだよ。普通に座りなよ」
侑(ちょっと見えたことは内緒にしておこう)
愛「別にいいじゃん。ここには愛さん達しかいないんだし〜」
愛「そんなに気になるなら見せてあげよっか?」
侑(そう言うと、愛ちゃんはスカートに触れた。相変わらずやることが大胆だ)
侑「愛ちゃん、やめなって」
侑(一応注意しておく。愛ちゃんはスカートを下着が見えそうなギリギリの位置までめくっていた)
侑(健康的で引き締まった太ももが見える。さすが色々な部活に助っ人に行くほどではあるね)
侑(璃奈ちゃんは真顔でその姿を見つめていた)
141
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 18:00:28 ID:fRqiMAKI
愛「あはは」
侑(見えそうなところで、スカートを元に戻した。別に興味はないけど、歩夢の気持ちがわかった気がする)
侑(隣で璃奈ちゃんが小さく舌打ちをしたような気がしたけど、私の気のせいだって信じたい)
侑(璃奈ちゃんと目が合った。何を考えるのかわからなかった。全然表情が読めない)
侑(璃奈ちゃんは『璃奈ちゃんボード』をペラペラとめくり、顔に持っていく)
璃奈「璃奈ちゃんボード『もう少しだったね』」
侑(『璃奈ちゃんボード』には残念そうな顔が描かれていた。よっぽど見たかったらしい)
愛「ゆうゆ、かすかすは?」
侑(璃奈ちゃんが見たがってたのなんて露知らず、愛ちゃんは足を組み直し、私へと問いかける)
侑(練習を休むときは、マネージャーである私に連絡するのが決まりだった)
侑「かすみちゃんからは連絡来てないよ」
璃奈「無断で休むなんて珍しい」
142
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 18:10:27 ID:fRqiMAKI
愛「だねー。かすかすも寝坊かな?」
歩夢「かすかすなんて言ったら、またかすみちゃんに怒られちゃうよ?」
愛「大丈夫大丈夫。かすかすは優しいから♪」
歩夢「あはは……」
侑(みんなと一緒にいるときの歩夢は“普通”だ)
侑(“浮気”をしたとしても何も言ってこない。だからみんなは歩夢の“本性”を知らなかった)
侑(歩夢の前で他の子に抱きついたり、手を繋いだり――)
侑(色々なことをしてきたけど、歩夢はただ微笑むだけだ)
侑(何か言うのは2人になったときだけだった)
侑(みんなの前でも言ったらいいのにね)
侑(まあ、猫かぶりの歩夢もかわいいけどさ)
侑(ちょっとやりすぎると顔がひきつるし、そういうのも見てて楽しいんだよね〜)
143
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 18:14:51 ID:fRqiMAKI
侑(歩夢の前で他の子にキスしたらどうなるかな?)
侑(昨日みたいに離れた距離から見てるんじゃなくて)
侑(本当の至近距離から見たらどんな反応するんだろう)
侑(さすがに怒るかな?)
侑(たくさん嫉妬してくれると嬉しいなぁ)
侑(今よりも、もっと愛してもらうためにね♪)
愛「ゆうゆはどうなの?」
侑「へ?」
侑(愛ちゃんに突然話を振られる。全然聞いてなかった)
愛「ゆうゆ、もしかして聞いてなかった?」
侑「ごめん、ちょっと考え事してて……」
侑(私はとりあえず謝った。何の話をしてたんだろう)
144
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 18:21:18 ID:fRqiMAKI
愛「もー、ゆうゆってばー!」
侑「あはは、ごめんって」
侑(愛ちゃんは私の肩をバシバシと叩く。思いっきり叩かれると思いきや、全然痛くなかった)
侑(愛ちゃんはこう見えて力加減が上手みたいだね)
歩夢「あの、愛ちゃん。侑ちゃん痛がってるから」
侑(歩夢が止めに入る。強い力で叩かれたと思ったのかな)
愛「え?あ、ごめん。痛かった?」
侑(愛ちゃんは心配そうに私の顔を覗き込む。「大丈夫だよ」と言うと安心していた)
侑(もう一度「ごめん」と謝り、私の肩を撫でた。歩夢の顔は少しひきつっていた。それだけで嫉妬してるらしい)
侑(歩夢の嫉妬してる姿を見て、私は嬉しかった)
侑(この程度で嫉妬するなら、キスしたらすごいことになりそうだ。楽しみだね)
侑(私の心はときめいていた)
145
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 18:55:51 ID:fRqiMAKI
侑「それで、何の話してたの?」
侑(私が聞くと、愛ちゃんは椅子に座り直した)
歩夢「侑ちゃん、その話は……」
侑「ん?」
侑(歩夢はなぜかオロオロしていた。愛ちゃんの方に向き直す)
愛「えっとね、好きな人はいるのかな、って話!」
侑「好きな人?」
侑(なるほど。だから歩夢は焦ってたのか)
侑(歩夢は付き合ってることはあまり人に知られたくないみたいだし。恥ずかしいって言ってたっけ?)
愛「ゆうゆは好きな人いる?」
侑(私の好きな人は歩夢だけど――)
侑(そのまま言うのは面白くないよね♪)
146
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:02:01 ID:fRqiMAKI
歩夢「も、もうその話はやめようよ」
愛「えー、なんでー?暇つぶしにはちょうどいいじゃん。ね、りなりー?」
璃奈「うん」
侑(『璃奈ちゃんボード』は笑顔だった。大方愛ちゃんの好きな人が知りたいんだろうね)
歩夢「ゆ、侑ちゃんは?」
侑(歩夢は少し涙目だった。その顔を見て、私は更にやめるわけにはいかないと心に決めた)
侑「面白そうだからやろうよ。私達だって高校生だし、好きな人の1人や2人いるもんでしょ?」
愛「お、さすがゆうゆ!わかってるじゃん!」
侑「えへへ♪」
歩夢「侑ちゃん……」
侑(歩夢がジト目でこちらを見ていたけど、気づかないフリをした)
歩夢「はぁ……」
侑(ため息を吐く歩夢を見て、私は頭を優しく撫でた)
147
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:06:42 ID:fRqiMAKI
歩夢「侑ちゃん……?」
侑「言いたくなかったら言わなくてもいいと思うよ。愛ちゃんもそこまで強制はしないだろうしね」
侑(こっそり耳打ちする。歩夢はこくりと頷いた)
愛「まずはゆうゆから!好きな人いるの?」
侑「私?そういうのは言い出した愛ちゃんからでしょ?」
愛「まあまあ。そんなこと言わずに、はい!」
侑(愛ちゃんは筆箱をマイクのように持ち、私の口へと持っていった)
侑「好きな人は……そうだね、いるかな」
璃奈「おー」
愛「誰?みんなの知ってる人?」
侑「んー、知ってるよ」
侑(歩夢と目が合うと、下を向いてしまった)
148
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:12:07 ID:fRqiMAKI
愛「まじかー。名前は?」
侑(私は言ってもいいけど、歩夢が困るよね。ここは伏せておいた方がいいかな)
侑「それは秘密♪」
愛「えー!気ーにーなーるー!!」
侑(愛ちゃんは筆箱を持った手をブンブン振っていた)
璃奈「名前を言えないなら特徴を言うのはどう?」
愛「特徴?」
璃奈「そう。髪型、髪の色、性格、その他もろもろ」
愛「おー。それいいね。ゆうゆ、よろしく!」
侑(それは私も賛成だった。その方が想像できる楽しみがあっていい)
侑(髪型と髪の色はすぐにバレるから言わない)
侑(無難に顔や性格からかな)
149
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:17:40 ID:fRqiMAKI
侑「んーとね、顔はかわいいよ。性格も優しくて、あと料理が得意かな?私の一番大好きな人は♪」
侑(他にも言いたいことはあるけど、このくらいで。特徴を言いすぎると歩夢だって気づくかもしれない)
侑(歩夢を見ると、両手で顔を覆っていた。耳まで真っ赤になっている。その姿にキュンキュンしそうになった)
侑(私はキスしたい衝動をなんとか抑えた)
愛「かわいくて、優しくて、料理上手か〜〜」
璃奈「髪の色とかは?」
侑「それは秘密かな?」
璃奈「それだけじゃ難しい」
侑「あはは。頑張ってね」
璃奈「むむ」
愛「あ、わかった!」
侑(愛ちゃんの発言に歩夢は顔を上げる。真っ赤だった)
150
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:22:53 ID:fRqiMAKI
璃奈「もうわかったの?」
愛「もち!」
侑「じゃあ正解をどうぞ!」
侑(愛ちゃんを真似て、筆箱をマイク代わりにする)
愛「正解は〜〜愛さんだ〜〜!!」
侑「えっ」
侑(愛ちゃんは大声で自分の名前を言った。もちろん不正解だ)
璃奈「愛さん、何言ってるの?」
愛「あれ?愛さんじゃない?」
侑(愛ちゃんはこっちを見る。私は首を横に振った)
愛「えー、おっかしいなー。かわいい、優しい、料理上手、全部愛さんに当てはまるんだけどなー?」
侑(愛ちゃんは軽く頭を搔いた。たしかに言われてみればそうだけど……)
151
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:28:24 ID:fRqiMAKI
璃奈「自分でかわいいって言っちゃうんだ」
愛「愛さんかわいいでしょ?」
侑「かわいいのは認めるけどさ、愛ちゃんではないよ」
愛「なーんだ。ゆうゆとなら付き合ってもいいかなって思ったんだけどなー」
侑「えぇ?」
侑(愛ちゃんの言葉に璃奈ちゃんと歩夢が反応した)
侑(璃奈ちゃんは私を真顔で見つめていた。やめて、そんな顔で見ないで。私にその気はないから)
愛「アタシ、ゆうゆのこと結構好きだよ?」
侑(璃奈ちゃんの視線が強くなる。私悪くないよね?)
歩夢「んんっ。次は誰?璃奈ちゃんはどう?」
侑(歩夢の助けが入って難を逃れた。このままだと璃奈ちゃんに何されるかわからないし)
侑(でも、安心してね。私が好きなのは歩夢だから♪)
152
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:33:34 ID:fRqiMAKI
愛「次はりなりー?りなりーは誰が好きなのかな?」
侑(愛ちゃん切り替え早いなぁ。まあ、好きっていうのは“友達として”だろうしね)
璃奈「私の好きな人は――」
璃奈「金髪で背が高くて誰にでも優しくてかっこよくて運動神経抜群で頭が良くて髪はポニーテールで実家がもんじゃ焼き屋をやってる」
侑(璃奈ちゃんこんなに早口で話せるんだ)
侑(これもう答えでしょ。名前言った方が早くない?)
歩夢「……」ポカーン
侑(歩夢も露骨すぎてポカンとしてるし)
愛「おお、結構細かいね。誰のことだろ?」
侑「嘘でしょ」
愛「ゆうゆ?」
侑「あー、いや。なんでもない」
153
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:38:48 ID:fRqiMAKI
愛「んー、そうだなぁ」
侑(愛ちゃんは顎に手を当てて考えていた)
侑(考えるまでもないと思うけど、本人からすると案外わからないのかもしれない)
愛「他に何かないの?」
侑(あとはもう名前言うしかないんじゃないの)
璃奈「これ以上はダメ」
愛「えー。教えてよ、りなりー」
侑(愛ちゃんは璃奈ちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる。相変わらず無表情だけど、心なしか嬉しそうだった)
璃奈「やめて」
愛「うりうりー♪」
侑(2人でじゃれあって楽しそうだなー)
侑(それにしても、あそこまで特徴出しておいて愛ちゃんが気づかないってことあるのかな?)
154
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 19:46:36 ID:fRqiMAKI
侑(私のときもすぐに「愛さんだー」って言ってたし。不正解だったけど)
侑(気づいてないフリをしてたりしてね)
侑(恋愛感情がないなら、そうするのが一番いいと思う。断るってことはその人を深く傷つけてしまうから)
侑(愛ちゃんはモテるし、相手が好意を持ってるかどうかわかるんだろうね。視線、態度、話し方とかでさ)
侑(ルックスよし、運動神経抜群、成績優秀、おまけに性格もいい。悪い所ないもん)
侑(モテない方がおかしいよ)
侑(……ただの私の想像だけどね。本当に気づいてないのかもしれないし)
愛「ゆうゆはわかる?」
侑(愛ちゃんは璃奈ちゃんを膝に乗せていた)
侑(頭を撫でられている璃奈ちゃんは、気持ちよさそうに目をつぶっている。まるで猫みたいだ)
侑(そんな風に誰にでも優しく接するから、勘違いする子がたくさん出てくるんだろうなー)
侑(あ、私も人のことは言えないか。あはは)
155
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 20:27:11 ID:fRqiMAKI
侑「私はよくわからないや。歩夢はどう?」
歩夢「わ、私に振らないでよ」
侑(歩夢はボソボソとつぶやいていた。歩夢も愛ちゃんだって気づいてるよね、きっと)
侑(もし気づかないとすれば、せつ菜ちゃんくらいだろう)
侑「歩夢はわかったの?」
侑(悪戯っぽい笑みを浮かべる。歩夢は少し汗をかいていた)
愛「あゆぴょんわかったの?教えてよー」
歩夢「あ、あゆぴょんって呼ばないでっ」
侑(今朝の会話を思い出したのか、歩夢の顔が真っ赤になった。愛ちゃんは不思議そうに見ている)
愛「えー?何真っ赤になってるのー、あゆぴょーん♪」
侑(愛ちゃんは璃奈ちゃんを膝に乗せながら、手でうさぎの真似をする。完全にからかっていた)
侑(歩夢は更に顔を真っ赤にし、両手で顔を覆った)
156
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 20:32:51 ID:fRqiMAKI
侑「愛ちゃん、その辺にしといてよ。あゆぴょんは顔が真っ赤になりすぎると爆発しちゃうから」
愛「あははっ。あゆぴょんは面白いなー」
歩夢「もー!2人してからかわないでよー!」
侑(子供のように足をバタバタとさせている。かわいい)
愛「んで、歩夢は誰かわかった?」
侑(まだ引っ張るんだ。本当に気づいてないの?)
歩夢「知らないっ」
侑(歩夢は顔を覆ったまま答えた。わかっていても、本人の前では答えにくいのだろう。私もそうだったし)
愛「ふーん。なら次は歩夢かな?」
璃奈「え」
愛「りなりー?」
侑(璃奈ちゃんは膝に座ったまま上目遣いで愛ちゃん見つめている。何か言いたそうにしていた)
157
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 20:40:00 ID:fRqiMAKI
愛「どうしたの?」
侑(愛ちゃんが頭を撫でながら問いかける。璃奈ちゃんはそのまま視線を下に落とした)
璃奈「いや、なんでもない」
侑(璃奈ちゃんは小さな声でつぶやく。愛ちゃんに自分の好意を気づいてほしかったんだろうね)
侑(きっと、自分で告白するのは恥ずかしいから)
侑(好きって想いを伝えるのは勇気がいるもんね。フラれたら嫌だし、この先どう接したらいいかわからない)
侑(間違いなく今までと同じ関係ではいられなくなる)
侑(私はかすみちゃんを思い出した。無断で休むなんて初めてだ。花言葉を調べたからかもしれない)
侑(私のせいで学校を休んだってなると少し罪悪感を感じる。いや、学校まで休んだかは知らないけど)
侑(かすみちゃんはどんな態度で私に接してくるかな?会うのが本当に楽しみだよ♪)
愛「次は歩夢よろしくー。好きな人いるの?」
侑(璃奈ちゃんとの会話は終わったらしい。また聞き逃してしまった)
158
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 20:45:05 ID:fRqiMAKI
歩夢「い、いや、私は……」
侑(顔の熱は引いたみたいだけど、明らかに挙動不審だった。好きな人がいるって言ってるようなものだ)
璃奈「誰が好きなの?」
侑(璃奈ちゃんは自分の椅子に座っていた。ちょっと気まずくなっちゃったのかな?)
歩夢「いや、えっと、私は別に……」
侑(歩夢はチラッとこちらを見る。私は微笑んだ)
愛「この反応は絶対いるね」
璃奈「うん。璃奈ちゃんボード『じー』」
歩夢「私は別に……好きな人なんて……」
侑(歩夢は顔を赤らめ、指をもじもじさせながら私のことをチラチラ見ていた。璃奈ちゃん以上に露骨すぎる)
愛「あははっ。やっぱり歩夢は面白いねー」
歩夢「え?」
159
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 20:49:58 ID:fRqiMAKI
愛「ゆうゆが好きなんだねー。歩夢露骨すぎるよ!」
歩夢「え?え?」
侑(歩夢はオロオロしている。なぜバレたかわからないらしい。未だに私をチラチラ見ていた)
璃奈「侑さんのこと見すぎ。これなら誰でもわかる」
歩夢「えぇ〜……」
歩夢「恥ずかしい……」
侑(歩夢はまた両手で顔を覆ってしまった。耳まで真っ赤だ)
愛「ゆうゆは歩夢のこと好き?」
侑(愛ちゃんの言葉に歩夢が反応する。指の隙間からこちらを覗いていた)
璃奈「かわいい、優しい、料理上手……」
璃奈「歩夢さんも当てはまるね」
侑(璃奈ちゃんが言った。もう隠し通すのは厳しそうだ)
160
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 20:55:06 ID:fRqiMAKI
愛「あー、たしかに。歩夢の卵焼きおいしいもんね」
璃奈「うん」
愛「あ、でもさ、それなら彼方っちもじゃない?」
璃奈「かすみちゃんも当てはまる」
歩夢「……」
侑(歩夢は指の隙間から様子を伺っていた。顔上げればいいのに)
璃奈「せつ菜さんは――」
愛「ないない」
璃奈「だよね。最悪死人が出る」
侑(せつ菜ちゃんのクッキーを食べたあと、何度も吐いたのを思い出した。あのときは本当に地獄だったな)
侑(クッキーにたくあん、塩辛、セミの抜け殻を入れるんじゃないよ。隠し味に紫の絵の具を入れたらしいし)
侑(せめて普通に食べられる物を入れてほしいよね)
161
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/28(月) 21:01:16 ID:fRqiMAKI
愛「んー。他には誰かいる?」
璃奈「侑さんに聞くのが手っ取り早い」
愛「だね。じゃあ、ゆうゆ!」
侑(さすがに好きな人くらいは言っちゃってもいいかな。付き合ってることを言うわけじゃないしね)
侑「えっと、私の好きな人は歩夢だよ」
璃奈「やっぱり」
愛「へー、両想いなんだ。よかったね、歩夢!」
侑(愛ちゃんは歩夢の肩をバシバシ叩く。顔を上げた歩夢は嬉しそうにしていた)
璃奈「両想いなら付き合っちゃえば?」
侑(璃奈ちゃんの言葉に、歩夢の肩はビクリと跳ね上がった。頬がまた真っ赤に染まっていく)
愛「いいねー。付き合いなよー、あははっ」
侑(愛ちゃんは歩夢の頬を軽くつついていた。ノリが酔っぱらったおじさんなんだよね)
162
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 17:41:37 ID:b/QvDUPM
愛「ほら、歩夢!告白しちゃいなって!」
璃奈「璃奈ちゃんボード『じー』」
歩夢「うぅ〜……」
侑(歩夢の顔は真っ赤で、本当に爆発しそうだった)
侑(告白以前にもう付き合ってるんだよね。私は言ってもいいけど歩夢がなー)
侑(こんなに真っ赤になって恥ずかしがってるんだし、結局同じような気もするけどね)
愛「歩夢ー!ゆうゆも告白待ってるよ!」
璃奈「そうそう」
侑(歩夢は何度目か忘れたくらい両手で顔を覆っていた。なんでそんなに恥ずかしいんだろう?)
璃奈「あれ?」
侑(璃奈ちゃんの方を見る。璃奈ちゃんは私の顔を凝視していた)
侑(いや、正確には顔の少し下――首辺りを見ていた)
163
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 17:47:07 ID:b/QvDUPM
愛「どうしたん、りなりー」
侑(愛ちゃんは歩夢の肩を揺すりながら璃奈ちゃんに問いかける。歩夢がかわいそうになってきた)
侑(璃奈ちゃんは私に近づくと、やはり首を凝視している)
璃奈「これ、キスマークだ」
侑「あっ」
侑(璃奈ちゃんはキスマークを指さした。バレないと思ってたから完全に油断していた)
愛「えー?ほんとに?」
璃奈「見たことないけど、多分合ってる。ほら、ここ」
侑(愛ちゃんも近づいて私の首を見る。軽くキスマークに触れていた)
愛「なんかそれっぽいねー。愛さんも実物を見るのは初めてだけど」
侑「これは……えっと、蚊に刺されて……」
侑(我ながら苦しい言い訳だと思った)
164
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 17:52:19 ID:b/QvDUPM
璃奈「この時期に蚊はいないよ」
侑「うぐ……」
愛「だねー。ゆうゆ、観念した方が身のためだよ?」
侑「はぁ……」
侑(ため息を吐く。もう隠すのは無理だった)
侑「わかったよ、言えばいいんでしょ」
璃奈「このキスマークは歩夢さんが?」
侑(私は歩夢を見た。歩夢は首を横に振っていた)
侑(歩夢のその態度に少し腹が立った。そんなに私と付き合ってるって知られるのが嫌なの?)
侑(歩夢はただ恥ずかしいからだろうけど、もう知らない。全部言っちゃえばいいよね)
侑「うん。実は私達付き合ってるんだ」
歩夢「……!」
165
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 17:56:39 ID:b/QvDUPM
侑「このキスマークも、もちろん歩夢が付けたものだよ。こんな場所にキスしたから服で隠せなくてさ」
愛「おー!」
璃奈「いつから付き合ってるの?」
侑「いつからだっけ?」
侑(私は歩夢に問いかける。歩夢はそっぽを向いた)
侑「歩夢っ」
歩夢「……の……み……」
侑(歩夢はボソボソとつぶやいた。まるで蚊の鳴くような声だった)
愛「えー?なになに?」
璃奈「聞こえなーい」
歩夢「中学……1年の、夏休み……」
侑(今度ははっきりと聞こえる。ちゃんと覚えてたんだね)
166
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 18:02:07 ID:b/QvDUPM
愛「え、そんなに前から?」
璃奈「全然気づかなかった」
侑「一応バレないように気をつけてたからさ」
愛「なんで?言ってくれたらよかったのに」
侑「私はともかく歩夢が……ね?」
璃奈「あー」
愛「歩夢は恥ずかしがり屋だもんねー」
侑(歩夢は顔を真っ赤にしてうつむいていた。歩夢の恥じらう姿はかわいい。もっと見ていたいな)
璃奈「キスマークか。羨ましい」
侑(璃奈ちゃんは横目で愛ちゃんを見る。本人は全く気づいていなかった)
侑(璃奈ちゃんと目が合った。璃奈ちゃんは気まずそうに『璃奈ちゃんボード』で顔を隠す。ジト目だった)
侑「あ、あはは……」
167
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:02:04 ID:b/QvDUPM
璃奈「恋人ってことは色々なことするの?」
侑「色々なこと?」
璃奈「たとえば、ごにょごにょとか」
侑(璃奈ちゃんは『璃奈ちゃんボード』をペラペラめくり、顔に持っていく。セクシーな顔が描かれていた)
愛「りなりー大胆だねー。愛さんも気になってたんだ♪」
侑(愛ちゃんは璃奈ちゃんの頭を軽く撫で、こちらを見る)
愛「どうなの?んで、やることやってるの?」
侑(愛ちゃんは指で輪っかを作り、片方の人差し指をその輪の中に通した。私達には付いてないよ)
侑(歩夢はそのジェスチャーを見て、また顔を赤らめた)
璃奈「やってるの?」
侑(璃奈ちゃんも愛ちゃんを真似てか、同じジェスチャーをした。絶対に人前でやったらダメだからね)
侑(2人の反応を見るに、正直に話すまでは解放してくれそうになかった)
168
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:07:57 ID:b/QvDUPM
愛「ゆうゆー?」
璃奈「歩夢さんでもいいよ」
侑(歩夢はブンブンと首を横に振った。私の顔を見て、「絶対に話さないで」と涙目で訴えていた気がする)
侑(歩夢のその顔は本当にかわいかった)
侑(ごめんね。私はエスパーでも何でもないから、声に出さないとわからないんだ。だから話してもいいよね♪)
侑「まあ、そういうことはするよ。恋人なんだしね」
歩夢「……!」
侑(歩夢は私を睨んでいた。涙目だからむしろかわいい)
璃奈「おお」
愛「キスマーク付いてるってことは昨日も?」
侑「昨日のあゆぴょんは激しかったよ♪」
侑(2人して声を上げた。よっぽど気になるらしい)
169
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:14:32 ID:b/QvDUPM
愛「でも、歩夢がそんな大胆だとは思わなかったなー」
璃奈「ね。こんなに顔が真っ赤なのに」
侑(2人は歩夢を見る。歩夢は両手で顔を覆っていた)
侑「普段はこうだけど、2人きりのときは本当にすごいよ。うさぎは性欲強いって聞くけど、アレはマジだね」
侑「全然休ませてくれないもん。昨日だって寝るの夜中だったしさ。私の身体が持たないよ」
愛「へー。さすがあゆぴょーん♪」
璃奈「あゆぴょんすごい。絶倫あゆぴょん」
歩夢「ううぅぅ……」
侑(歩夢は顔を真っ赤にして足をバタバタさせていた)
侑(2人はその反応が面白いのか、あゆぴょんあゆぴょんとうさぎの真似をしながら連呼していた。楽しそうだ)
歩夢「ゆうちゃ〜〜ん……」
侑(歩夢はもう半泣きだった。もっとその顔が見たかったけど、あとで歩夢に何されるかわからない)
170
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:20:00 ID:b/QvDUPM
侑「2人とも、その辺にしておいて。歩夢がそろそろ本気で泣きそうだから」
愛「あはは。そうだね、あゆぴょん泣いちゃうか」
璃奈「ちょっとやりすぎたかも。ごめんね」
歩夢「うん……」
侑(歩夢は涙を拭っていた。相変わらず顔は真っ赤だ)
侑「さすがに止めておかないとさ」
侑(2人に近づき、そっと耳打ちをする)
侑「あとで私が歩夢にお仕置きされちゃうもん。今日は早く寝たいしね」
愛「あはははっ。だねー」
璃奈「2日連続は厳しい?」
侑「私は歩夢と違って体力ないから♪」
愛「うさぎには勝てないかー」
璃奈「大変だね」
171
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:26:09 ID:b/QvDUPM
侑「まあね。でも、嬉しいよ。愛されてるって実感できるからね」
愛「お熱いねー♪」
璃奈「ひゅーひゅー」
侑「えへへ♪」
侑(2人に言われて、私も少し顔が熱くなった)
歩夢「3人で何の内緒話してるの?また私のこと?」
侑(歩夢はある程度落ち着いたらしく、こちらの話題に加わってきた。顔はまだ少し赤かった)
侑「んー、そんな感じ?」
愛「2人はお熱いねーって話してたんだよ」
璃奈「そうそう」
歩夢「お熱いだなんて……ふふ。でも、嬉しいな」
侑(歩夢は頬に手を当て微笑んだ。さっきまでゆでダコみたいに真っ赤だったのが嘘みたいだ)
172
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:32:03 ID:b/QvDUPM
歩夢「それはそうと……侑ちゃん?」
侑(歩夢は頬を膨らませ、私を少し睨む。かわいい)
歩夢「あそこまで言うなんてひどいよっ。恋人の件は内緒にしてようねって約束したのに……」
侑「しょうがないでしょ?あの状況で誤魔化すなんて無理だよ」
歩夢「それはそうだけど……。でも、アレは言いすぎだよ!」
歩夢「まるで私の性欲が強すぎるみたいに……」
侑「事実じゃん。嘘はついてないよ、あゆぴょん?」
歩夢「私はそんな……えっちな子じゃないのに……」
侑(歩夢は指をもじもじさせてうつむく。どの口が言うんだ、と思ったけど、かわいいから別にいいよね)
侑「あゆぴょんはかわいいな〜」
歩夢「侑ちゃんっ」
侑(歩夢の頭を優しく撫でる。キスしたかったけど、2人に見られてるのを思い出しやめにした)
173
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:36:04 ID:b/QvDUPM
愛「おーおー、見せつけちゃって♪」
璃奈「璃奈ちゃんボード『バカップル』」
歩夢「からかわないでよ〜〜」
侑「あははっ」
歩夢「まったく……」ハァ
侑(歩夢はため息を吐き、2人を見た)
歩夢「私達が付き合ってるってことは、その、内緒にしてくれる?あまりみんなに知られたくないから」
愛「さすがに言いふらしたりはしないって!」
璃奈「うん。こう見えて口は固いから」
璃奈「璃奈ちゃんボード『えっへん』」
歩夢「あ、ありがとう」
侑(歩夢は微笑んだ。この2人なら言わないだろう)
174
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:43:18 ID:b/QvDUPM
愛「でもさ、2人が付き合ってるって知ったのが愛さん達でよかったね。他の子だったら大変だったよ」
歩夢「私的には愛ちゃん達に知られるのでも普通に大変なんだけど……」
愛「あはは、歩夢はそうだね」
璃奈「どういうこと?」
侑(私はなんとなく愛ちゃんの言いたいことがわかった)
愛「んー。ほら、ゆうゆってモテるじゃん?」
愛「ゆうゆが好きな子って同好会でも何人かいるしね」
侑(愛ちゃんの方がモテるよね、と言いそうになったが、さすがに今は言う必要がないと思い口をつぐむ)
侑(ふと愛ちゃんの言葉に違和感を覚えた。何人か?1人だけじゃないの?)
侑(私はかすみちゃん以外思い浮かばなかった)
歩夢「侑ちゃんは本当にモテるもんね。いつ浮気するんじゃないかってヒヤヒヤしてるよ」
侑(歩夢は私をジト目で見る。私は気づかないフリをした)
175
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:48:13 ID:b/QvDUPM
愛「ゆうゆに限って浮気はないんじゃない?見た感じ歩夢一筋っぽいしね」
侑「もちろん。私は歩夢しか愛さないって決めてるから♪」
璃奈「よかったね」
歩夢「う、うん。えへへ」
侑(璃奈ちゃんは歩夢の肩をポンポンと軽く叩いた。嬉しそうに微笑んでる歩夢を見ていると、愛ちゃんが私に耳打ちしてきた)
愛「ゆうゆ」
侑「なに?」
愛「歩夢のこと、大切にするんだよ」
侑「わかってるよ♪」
侑(私が笑うと愛ちゃんも微笑んだ)
愛「ゆうゆ」
侑(愛ちゃんは私の頬を優しく撫でた。その表情は、一瞬悲しそうにも見えてしまった)
176
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:54:53 ID:b/QvDUPM
侑「愛ちゃん?」
愛「ん、何でもない」
侑(愛ちゃんはいつもの笑顔に戻っていた。私の気のせいだったのかな)
愛「さて、そろそろ解散しよっか。もうすぐチャイム鳴るし!」
侑(愛ちゃんは時計を指さす。あと10分でチャイムが鳴る時間だった)
歩夢「もうそんな時間なんだ」
侑「みんなで話してたらあっという間だったね」
愛「だねー。じゃあ、放課後にまた会おうね」
侑(愛ちゃんはバッグを肩に掛ける。部室から出ていこうとすると――)
璃奈「待って」
侑(璃奈ちゃんに呼び止められ、愛ちゃんは振り向いた)
愛「りなりー?」
侑(愛ちゃんは少し急いでるように見えた)
177
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 19:59:57 ID:b/QvDUPM
璃奈「まだ愛さんの好きな人を聞いてない」
歩夢「あ、そういえば」
侑(言われてみればそうだった。歩夢で時間を取りすぎたらしい)
侑(璃奈ちゃんも気になるのは当然だよね。大本命だし)
愛「あー」
侑(愛ちゃんは気まずそうに頬を掻く。どこか様子がおかしいような――)
璃奈「愛さん?」
愛「愛さんは別に好きな人なんていないよ。ほら、早く行かないと授業に間に合わなくなっちゃうよ!」
侑(愛ちゃんはそのまま走り去っていった)
璃奈「……」
侑(璃奈ちゃんは愛ちゃんの後ろ姿を見つめていた。好きな人はいないって言葉にショックを受けたのかもしれない)
侑(私は璃奈ちゃんの肩にそっと手を置いた)
178
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:05:11 ID:b/QvDUPM
璃奈「……侑さん?」
侑「きっと時間がなかったから急いでたんだよ。放課後にまた聞いてみよう?」
璃奈「うん……」
侑(璃奈ちゃんの目は少し潤んでいた。私は頭を優しく撫でる)
侑「それに、もし好きな人がいないとしても――」
侑「これから璃奈ちゃんを好きになってもらえばいいと思うしね。そこは璃奈ちゃん次第だよ」
璃奈「え」
侑(璃奈ちゃんは目を見開き私を見つめた)
璃奈「気づいてたんだ」
侑(ボソッとつぶやく。私は微笑んだ)
侑「頑張ってね。私に力になれることがあれば、何でもするからさ」
璃奈「……」
179
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:08:10 ID:b/QvDUPM
璃奈「ありがとう」
侑(璃奈ちゃんは真顔だったけど、少し微笑んだような気がした)
侑「ううん」
璃奈「じゃあ、また放課後」
侑「うん。またね」
侑(軽くお辞儀をすると、璃奈ちゃんは小走りで去っていった)
歩夢「私達も行かないとね」
侑「だね」
侑(バッグを肩に掛け、歩夢と手を繋いだ)
歩夢「私達、ラブラブに見えるのかな」
侑「バカップル、だってさ」
侑(璃奈ちゃんの言葉を思い出す)
180
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:12:59 ID:b/QvDUPM
歩夢「そっか。ふふ、嬉しいね」
侑「そうだね」
侑(手を繋ぎながらゆっくりと歩いた。時間はギリギリだったけど、私達は走ることはしなかった)
歩夢「ねぇ――」
侑「うん?」
歩夢「もう小さな事で浮気とか言わない。夜中にLINEも送ったりしない。侑ちゃんに迷惑かけない」
歩夢「私以外と親しく話したり、手を繋いだりしてもいい。他の子とのLINEも見たりしない」
侑「歩夢?」
侑(いきなりの発言に私は驚いた。“あの”歩夢がそんなことを言うとは思わなかったからだ)
歩夢「だから――」
歩夢「もう絶対に“浮気”はしないで」
侑「……」
181
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:19:25 ID:b/QvDUPM
侑(歩夢の言う“浮気”とは昨日のようなことだろう)
歩夢「侑ちゃん」
侑(歩夢は私に優しく語りかける)
歩夢「私、変わるから。侑ちゃんに相応しい彼女になれるように頑張るから」
歩夢「すぐには無理かもしれないけど、絶対に変わるから」
歩夢「もう束縛なんてしない。自分のことだけを考えないで侑ちゃんのこともちゃんと考えるから」
歩夢「だから――侑ちゃんも私と一緒に変わってほしい」
侑(歩夢は微笑んでいる。その顔はまるで天使だった)
歩夢「約束してくれる?」
侑(歩夢は握っていた手を離し、私に小指を差し出した)
侑「……」
歩夢「侑ちゃん?」
侑(小指を差し出したまま私を見つめている。その瞳には不安なんて存在せず、信頼や希望で満ちていた)
182
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:24:26 ID:b/QvDUPM
侑「歩夢――」
歩夢「うん」
侑(私は歩夢の手を握り、胸の高さまで持っていく。そして歩夢を見つめた)
侑「信じていいの?」
歩夢「うん」
侑(歩夢の声は真剣だった。本当に今の自分を変えたいと思っているみたいだ)
侑「本気なんだね」
歩夢「うん」
侑(私は再び手を離し、無言で小指を差し出す)
侑(歩夢はゆっくりと小指を絡めた。歩夢の指はいつ見ても綺麗だ)
侑(歩夢と指切りをする。何度もやってきた光景だ)
侑(でも、今回は約束の“重さ”が違った)
183
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:31:09 ID:b/QvDUPM
歩夢「――私こっちだから」
侑「うん」
侑(これまでは教室まで一緒に行ってたけど、私が音楽科に転科してからは途中で別れていた。少し残念だ)
歩夢「またね。お昼に連絡するから」
侑「またあとで」
侑(歩夢は微笑みながら小さく手を振る。私も同じように手を振った)
侑(私は歩夢の姿が見えなくなるまで、ずっと見つめていた。手には汗が滲んでいた)
侑(私は歩夢がここまで強いとは思っていなかった)
侑(ずっと我儘を通し、私を束縛してくれると思ってた)
侑(歩夢は変わろうとしている)
侑(歩夢は私のために変わろうしてくれた。それは嬉しい。ここまで素敵な彼女はなかなかいないだろう)
侑(だけど、その変化は私が求めていたモノではなかった)
184
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:36:36 ID:b/QvDUPM
侑(私は歩夢に愛してほしい)
侑(私だけを愛してほしい)
侑(私だけを見てほしい)
侑(私だけを考えてほしい)
侑(これまでのようにしてほしかった。その瞬間は、歩夢は、私だけを考えてくれるから)
侑(あの笑顔を見たら、そのままでいてなんて――)
侑(言えなかった。言えるわけがなかった)
侑(私は元の歩夢に戻ってほしかった)
侑(ちょっと親しく話したり、手を繋ぐだけで嫉妬に狂う歩夢に戻ってほしかった)
侑(すぐに嫉妬してくれる歩夢が好きなのに)
侑(数分返事がないだけでずっとメッセージを送り続ける歩夢が好きなのに)
侑(深夜にずっとメッセージを送り続ける歩夢が好きなのに)
185
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 20:42:44 ID:b/QvDUPM
侑(寝ないでずっと私のことを考えながらメッセージを送ってくれて、嬉しかったのに)
侑(歩夢は私に迷惑かけないって言ってたけど、私は迷惑だなんて思ったことは一度もないんだよ)
侑(愛されるって実感できて嬉しかったのに)
侑(本当に、嬉しかったのに)
侑(歩夢を元に戻す方法は1つしかない)
侑(これは歩夢に対する裏切り行為だ)
侑(私は何度も裏切ってきた。何度も悲しい思いをさせてきた)
侑(だけど、それは歩夢に嫉妬してほしいから)
侑(浮気をすれば、歩夢は嫉妬してくれる。怒ってくれる。私を考えてくれる)
侑(私は歩夢に愛してほしい。誰よりも愛してほしい)
侑(歩夢が私を更に愛してくれるには、浮気をするしかなかった。そうすれば歩夢は私を見てくれる)
侑(私のことだけを見てくれるから)
186
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/11/29(火) 21:01:17 ID:b/QvDUPM
侑(私のことだけを考えてくれるから)
侑(私は歩夢に歩夢に、歩夢に)
侑(歩夢に歩夢に愛してほしいだけなんだ)
侑(歩夢、歩夢、歩夢歩夢歩夢)
侑(歩夢歩夢歩夢歩夢歩夢歩夢歩夢もっと愛してよ私だけを見てお願いだから今よりももっと私を見てよ私だけを考えてよ他のことなんて何も考えないで何も見ないで歩夢歩夢歩夢私だけを愛して愛して愛してもっと愛してよもっともっともっと今よりももっとこんなんじゃ足りないよだから浮気をするんでしょ歩夢にもっと愛してもうためにそうでしょねぇ歩夢歩夢歩夢歩夢もっと私を見てよ私だけを見てよ私だけを考えてよお願いだからねぇねぇねぇ浮気をしたら歩夢は嫉妬してくれる怒ってくれる悲しんでくれる泣いてくれる嫉妬してくれる嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬してくれる私のことを考えてくれる見てくれるだから浮気をするんだよねぇ私の気持ちわかってくれるよねねぇ歩夢歩夢歩夢もっと愛してよお願いだからもっと愛して今よりもとっとお願いだから私は歩夢に愛してほしいだけなんだよ歩夢なら私の気持ちわかってくれるよね歩夢なら私の気持ちわかるよねだって恋人だもんずっと一緒にいる恋人だもん昔からずっと一緒にいる恋人だもんそうだよね歩夢歩夢歩夢歩夢歩夢大好きだよ歩夢大好き誰よりも大好き一番大好きだよ歩夢以外はいらないよ本当だよだからもっと愛してよお願いだからねぇ歩夢お願いだからもっと私を愛して私だけを見てよ私だけを考えてよお願いだから今までと同じように接してよお願いだから私を束縛してよ私は何も間違ってない私は何も悪くない私が正しい私をもっと愛してもっともっともっと愛してお願いだから歩夢歩夢もっと愛してよお願いだから私はただ歩夢に愛してほしいだけなんだよ――)
侑「……っ」
侑(自分でも何を言ってるのかわからない。こんなの、私じゃない。別の誰かの思考みたいだった)
侑(私はもう自分自身を抑えることができなかった)
侑(頭の中がぐちゃぐちゃで、ズキズキする。思考がドス黒く染まっていく)
侑(この膨れ上がったドス黒い感情は、もう、私には止めることができなかった)
侑「歩夢……。私はね、私は……」
侑「私はただ、歩夢に愛してほしいだけなんだ……」
侑(頭痛が酷くて吐き気がする。私は立っていられず、床に座り込んでしまった)
侑(どこかでLINEの通知音が聞こえた気がした)
187
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 16:56:51 ID:DUr3GeNM
――部室
侑(椅子に座って身体を休めると、ある程度落ち着いてきた)
侑(さっきは感情を制御できなかった。あんな感覚は生まれて初めてだった)
侑(歩夢――)
侑(歩夢は変わると言ってくれた)
侑(私も変わらないといけないのだろう)
侑(一緒に変わると歩夢と約束したのだから)
侑(私は自分の小指を見た。歩夢と指を絡めたときの感触はとっくに消えていた)
侑(ごめんね)
侑(私は歩夢に心の中で謝る。私がこれからやることは、歩夢との約束を破る、裏切り行為だった)
侑(私って本当に最低だな。でも、これが一番の方法なんだよ。だからしかたないよね)
侑(私が歩夢に愛してもらうためだから、これはしかたのないことなんだよ。歩夢ならわかってくれるよね?)
侑(LINEを開く。あの子が来るまで、さっきまでのやり取りを読み返していた)
188
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:00:11 ID:DUr3GeNM
かすみ:侑先輩
かすみ:今から会えませんか
侑:これから授業だよ。チャイムも鳴った
侑:急いで教室に行かないと
かすみ:お願いします
侑:どうして?
かすみ:侑先輩に会いたいからです
かすみ:会って話がしたいからです
侑:放課後でいいでしょ
かすみ:今がいいです
かすみ:お願いします
かすみ:5分でいいのでかすみんと会ってください
189
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:02:51 ID:DUr3GeNM
侑:理由を話してよ
かすみ:今すぐ会いたいからです
侑:話にならないね
かすみ:彼女なんだからいいじゃないですか
侑:彼女?
かすみ:かすみんは侑先輩の彼女です
侑:えっと
侑:それ本気で言ってるの?
かすみ:かすみんはいつも本気です
侑:黄色のチューリップの花言葉、調べた?
かすみ:調べましたよ
かすみ:素敵なお花をありがとうございました
190
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:09:19 ID:DUr3GeNM
侑:あはは
侑:スタンプ
かすみ:さっそく部屋に飾りました
かすみ:侑先輩のプレゼントだからずっと大切にしたかったんですけど
かすみ:すぐに枯れちゃうのでそうはいかないですよね
かすみ:今度はずっと残る物が欲しいです
侑:元気そうで安心したよ
侑:今日朝練来なかったし、学校も休むかと思った
かすみ:その件はごめんなさい
かすみ:起きれませんでした
侑:珍しいね。遅刻なんて絶対しないのに
かすみ:3時くらいまで起きてて、目が覚めたのもついさっきでした
191
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:13:14 ID:DUr3GeNM
侑:動画でも見てたの?
かすみ:泣いてました
侑:泣いてた?
かすみ:涙が止まりませんでした
かすみ:あんなに泣いたのは初めてだと思います
侑:そっか
かすみ:さっきかすみんのこと、元気そうで安心したって言いましたよね
侑:うん
かすみ:文字なら元気なかすみんを演じられるんですよ
かすみ:あはは、しず子みたいなこと言っちゃいました
かすみ:今どこにいますか?
侑:どうしても私と会いたいの?
かすみ:はい
192
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:16:31 ID:DUr3GeNM
侑:そっか
侑:かすみちゃんは今どこにいる?
かすみ:エントランスにいます
かすみ:場所を指定してくれたらすぐ行きます
侑:部室に来て
かすみ:わかりました
かすみ:あ、それと
侑:?
かすみ:かすみんのこと、見ても驚かないでくださいね
かすみ:ちょっとびっくりするかもしれません
侑:なにそれ
「――侑先輩」
侑(背後から声がする。いつもより低めの声だった)
193
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:22:21 ID:DUr3GeNM
侑(声がした方へ振り向くと、私は自分の目を疑った)
侑「かすみ、ちゃん」
かすみ「ごめんなさい、お待たせしました」
侑(私はかすみちゃんを見たまま固まってしまった)
かすみ「やっぱりびっくりしちゃいますよね」
侑(かすみちゃんはボサボサの髪をいじっていた)
侑「とりあえず座りなよ」
侑(隣へ座るように促すも、かすみちゃんは1つ間隔を空けて座った)
侑「隣には座らないの?」
かすみ「いえ、その。……お風呂、入ってなくて」
侑「そっか」
侑(私はかすみちゃんを抱き寄せる。かすみちゃんは「きゃ」と小さく悲鳴をあげた)
194
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:29:12 ID:DUr3GeNM
侑(かすみちゃんの髪の匂いを嗅ぐ。少し汗の匂いがする程度で、特別変な匂いはしなかった)
かすみ「侑先輩……あの……」
侑「いい匂いだよ。全然くさくない」
侑(少し汗の匂いがするとは言わなかった。私の作戦のために、これ以上かすみちゃんを傷つけるわけにはいかなかった)
かすみ「くさいですよ……。離して……」
侑「離さないよ。いい匂いだもん」
侑(抱きしめながら髪の匂いを嗅ぐ。歩夢の方が抱き心地はよかった)
かすみ「もう……」
侑(口では嫌がってるのに、顔は嬉しそうだね。好きな人に匂いを嗅がれて嬉しい?ふふ、かわいいなぁ)
侑(かすみちゃんの頭を撫でながら、じっと見つめる)
侑(髪はボサボサで、目が充血していて、隈が酷く、肌も少し荒れていた)
侑(こんなかすみちゃんは初めて見た。人一倍身だしなみに気をつけてるから尚更だった)
195
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:33:46 ID:DUr3GeNM
かすみ「侑先輩……」
かすみ「こんな状態で会ってごめんなさい……」
かすみ「かわいいかすみんじゃなくてごめんなさい……」
侑(私は頭を撫で続けた。かすみちゃんは涙声になっていた)
かすみ「侑先輩に……会いたかったんです……」
侑「そっか」
侑(かすみちゃんは私に抱きつき、胸に顔を埋めた)
侑「かすみちゃんはいつだってかわいいよ」
かすみ「うそ……。こんな私、全然かわいくない……」
かすみ「ボサボサで……隈が酷くて……」
侑「かすみちゃん、こっち見て?」
侑(かすみちゃんはゆっくり顔を上げる。私はキスをした)
196
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:43:49 ID:DUr3GeNM
かすみ「え――」
侑「かすみちゃんはかわいいよ」
侑(もう一度キスをする。歩夢は見ていなかったが、今はそんなこと気にしてられない)
侑(かすみちゃんを落ち着かせる方法はキスしかなかった)
かすみ「侑、先輩……」
侑(涙を潤ませながらこちらを見つめている。私は優しく頭を撫でた)
侑「私のせいだよね」
侑「ごめんね」
侑(頭を撫でながら優しい声で謝る。私に謝る理由はないけど、ここは謝るのが無難だと判断した)
かすみ「……もう、いいんです」
かすみ「かすみんは、もう……」
かすみ「こうやって……頭を撫でてくれたり、抱きしめてくれるだけで、幸せ、なんです……」
侑(かすみちゃんは途切れ途切れつぶやいた。嘘ばっかり。本当はキスとか色々してほしいくせに)
197
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:49:40 ID:DUr3GeNM
侑「そっか」
かすみ「はい……」
侑「……」
侑(かすみちゃんの心は壊れかけている。私のせいでこうなってしまった。修復するにはどうすればいいか)
侑(どんな反応をするか見てみたくて、好奇心で花を贈っただけなのに、まさかここまで傷つくとは思わなかった)
侑(かすみちゃんには立ち直ってもらわないと困る)
『かすみんのこと――』
侑(私は昨日の会話を思い出した。あのとき、何か言おうとしていた。かすみんのこと――)
侑(もし、私がかすみちゃんの立場なら、聞きたい言葉は1つしかなかった)
侑「かすみちゃん――」
かすみ「……?」
侑(かすみちゃんは潤んだ瞳で私を見つめている。私は少し顔を近づけ――)
侑「――好きだよ」
198
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 17:56:51 ID:DUr3GeNM
かすみ「え……」
侑(かすみちゃんは驚いた表情をしていた。無理もないだろう。私はあんな花をプレゼントしたのだから)
かすみ「何、言ってるんですか。侑先輩は――」
侑「好きだよ。かすみちゃん」
侑(舌を絡めるキスをした。かすみちゃんは最初戸惑っていたが、次第に背中に手を回してきた)
侑(キスを終え、かすみちゃんを見ると、目がとろんとしていた。垂れた唾液を指で拭う)
かすみ「侑、先輩……」
侑(かすみちゃんの声は随分と甘くなっていた。顔も嬉しそうにしている。本当に好きだと思ってるらしい)
侑「好きだよ」
かすみ「かすみんも、好きです」
侑(私が微笑むとかすみちゃんも微笑んだ。こんなので騙されるなんて、かすみちゃんの将来が心配だった)
侑(私は頭を撫でた。かすみちゃんは撫でられるのが好きみたいだ)
199
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 18:41:18 ID:DUr3GeNM
かすみ「侑先輩に撫でられると落ち着きます♪」
侑「ふふ、そっか」
侑(かすみちゃんは胸に顔を埋めている。私はそのまま頭を撫でていた)
かすみ「侑先輩?」
侑「ん?」
侑(顔を埋めたまま私の名前を呼ぶ。鼻息が胸に当たって少しくすぐったかった)
かすみ「かすみん、本当に侑先輩の彼女なんですか?」
侑「もちろん」
侑(いつ顔を上げてもいいように、念のため微笑む。花言葉やさっきのLINEを気にしてるのかな)
かすみ「そう、ですよね。えへへ、嬉しいです」
侑(かすみちゃんの抱きしめる力が、少し強くなった気がする)
かすみ「……」
200
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 18:49:56 ID:DUr3GeNM
かすみ「……チューリップの件、なんですけど」
侑(かすみちゃんの声はまた少し泣きそうになっていた。花言葉は絶対に聞いてくると思ってたよ)
侑(私は頭を撫でながら言葉の続きを待った)
かすみ「その、花言葉、調べました」
侑「LINEでも言ってたね」
侑(LINEでは元気に振る舞ってたけど、やっぱりきつかったんだろうね。ずっと泣いてたとか言ってたし)
侑(それ以前に、かすみちゃんの姿を見たらわかる)
侑(身だしなみを整える余裕すらなかったんだろうな)
侑(ちょっとやりすぎたかも。反省しないとね)
侑(いや、かすみちゃんのメンタルが弱すぎただけかもしれない。まあ、次から気をつければいいだけか)
かすみ「全般の花言葉は本当に素敵でした。調べてて、顔が真っ赤になりました。嬉しかったです」
侑(なんだっけ、全部は思い出せないな。永遠の愛情、真面目な愛、辺りだった気がするけど)
201
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 18:54:41 ID:DUr3GeNM
かすみ「そこまではよかったんです」
かすみ「でも、黄色の花言葉は……」
侑(――“望みのない恋”)
侑(こういうネガティブな花言葉は一番覚えやすい。アザミやハナズオウなんかは特にね♪)
かすみ「……侑先輩」
侑(かすみちゃんは顔を上げると、涙を流していた)
かすみ「どうして、あんな花言葉を持つお花を、私にプレゼントしたんですか……?」
かすみ「私は……侑先輩に、プレゼントを貰えて……」
かすみ「嬉しかった、のに……」
かすみ「それ、なのに……っ」
かすみ「侑先輩は……私の、こと……」
侑「……違うよ」
202
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:02:16 ID:DUr3GeNM
侑「私もあとで調べ直したんだけど、黄色のチューリップの花言葉にあんな意味があるなんて知らなかったんだ」
侑「もし花言葉の意味をちゃんと知ってたら、絶対にプレゼントするわけない。だって、私――」
侑「かすみちゃんが好きなんだから」
かすみ「で、でも、お店を出たあと、私に花言葉がピッタリだって……」
侑「私は全般の花言葉のことを言ったんだよ。実は、色については全然詳しくなくて……」
侑「ごめんなさい。私の浅い知識のせいで、かすみちゃんにとても悲しい思いをさせてしまった……」
侑「本当にっ、ぐす、ごめん、なさい……っ」
かすみ「な、泣かないでください……。わ、私も、侑先輩に確認の電話をすればよかったんです……」
侑「ごめん、ごめんね……っ」
かすみ「私の方こそごめんなさい……。勝手に勘違いして、勝手に泣いちゃっただけですから……」
かすみ「だけど、よかったです……」
侑「え……?」
203
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:08:46 ID:DUr3GeNM
かすみ「だって、私のこと、嫌いじゃないんですよね……?」
かすみ「私、侑先輩に嫌われたかと思って、ずっと不安だったんです……」
侑「……不安にさせてごめんね。私はかすみちゃんのこと、大好きだよ」
かすみ「えへへ、大好きかぁ……♪」
侑「好きだよ、大好き。かすみちゃんが大好き」
かすみ「もぉ、侑先輩ったらぁ……♪」
侑(かすみちゃんは嬉しそうに笑っている。私は頬を優しく撫でた。もうすっかり泣き止んでいた)
侑「私のこと、許してくれる……?」
かすみ「もちろんです。勝手に勘違いしたのはこっちなんですから。これからも恋人でいてくださいね?」
侑「うんっ」
侑(私達は軽くキスをした。かすみちゃんは腕を絡め、私にもたれかかった)
侑(私はその光景に微笑み――)
侑(――かすみちゃんは本当はちょろいね。こんな薄っぺらい言葉に騙されるなんて。将来が心配だよ♪)
204
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:13:41 ID:DUr3GeNM
侑(矛盾だらけの即興ストーリだったけど、なんとかなってよかったよ)
侑(LINEの件を指摘されてたら完全に終わってたね)
侑(かすみちゃんはちょろかわいいなぁ〜)
侑(歩夢だったら絶対に騙せなかっただろうし)
侑(歩夢――)
侑(お昼休みが待ち遠しいね。一体どんな反応をするのか、本当に楽しみだよ♪)
かすみ「侑先輩〜♡」
侑(かすみちゃんはすっかり元気を取り戻した)
侑(さっきまで死にかけた魚のような顔をしていたとは到底思えなかった)
侑(あとは身だしなみを整えたら完璧かな)
侑「かすみちゃんはかわいいね〜」
かすみ「えへへ♡」
侑(頭を撫でると嬉しそうにしていた)
205
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:17:57 ID:DUr3GeNM
かすみ「――かわいいかすみん、復活です♡」
侑(かすみちゃんはポーズを取った。普通にかわいい)
侑(髪型を元に戻してメイクで隈を隠すだけでこんなに印象が変わるなんてね。本当にすごいよ)
侑「かすみんかわいい〜。ぎゅー♪」
かすみ「わわっ」
侑(かすみちゃんに抱きつくと、シャンプーや石鹸の匂いがふわっと漂ってくる)
かすみ「もう、侑先輩ってば〜♡」
侑「あはは」
かすみ「それにしても、よかったんですか?」
侑「なにが?」
かすみ「シャワー室を無断で使用したことですよ。バレたら大変なことになるんじゃ……」
侑「ああ、そのことね」
206
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:24:17 ID:DUr3GeNM
侑「使用許可を取りに行くのは手間だし、それに、今は授業中だから逆に先生に怒られちゃうよ?」
かすみ「あ、たしかに……」
侑「かすみちゃんは心配しなくても大丈夫だよ。無断で使用したのがバレたら、私が責任取るからさ」
侑「だから何も気にしなくていいよ。私が守ってあげるからね」
かすみ「侑先輩……♡」
侑(かすみちゃんは頬を赤らめていた。優しく頭を撫でると、嬉しそうに顔を綻ばせた)
侑(それっぽい言葉を使えば勝手に喜んでくれるから楽だよね。ちょろかわいいよ、あはは)
侑(私はかすみちゃんの頭を撫でながら、壁に掛けてある時計を見た。まだ1限目の最中だった)
侑「まだこんな時間か」
かすみ「へ?」
侑(かすみちゃんの目は少しとろんとしていた)
侑「まだ1限目の最中だなって。2限目の授業は参加しないとね。先生に怒られちゃう」
かすみ「ごめんなさい……」
207
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:30:11 ID:DUr3GeNM
侑「どうしてかすみちゃんが謝るの?」
かすみ「かすみんが侑先輩に会いたいって言ったから……」
かすみ「ごめんなさい。迷惑でしたよね……」
侑「迷惑じゃないよ。かすみちゃんと仲直りできたし♪」
侑(微笑みながら言うと、ぱぁっと顔を明るくさせた)
かすみ「それならよかったです。侑先輩、大好き♡」
侑「私も好きだよ〜」
かすみ「わーい♡」
侑(かすみちゃんは私の頬にキスをした。お返しに頬を撫でる)
かすみ「むむ」
侑「かすみちゃん?」
かすみ「かすみんにはキスしてくれないんですね」
侑(頬をぷくーっと膨らませる。こういうあざといしぐさは嫌いじゃない。むしろ好きな部類に入ると思う)
208
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:34:32 ID:DUr3GeNM
侑「いっぱいキスしたでしょ?」
かすみ「もっとしてほしいんです〜!」
侑(かすみちゃんの頬を膨らませるしぐさもかわいい。ただ、私は歩夢がする方が好きだった)
侑「かすみちゃんはかわいいなぁ」
侑(同じように頬にキスをした。かすみちゃんは嬉しそうに微笑む。石鹸のいい香りがした)
かすみ「えへへ♡」
侑(かすみちゃんは私に抱きつき、胸に顔を埋めた。歩夢も胸に顔を埋めるの好きなんだよね)
侑「それよくするけど好きなの?」
かすみ「んー、どれですかぁ?」
侑「私の胸に顔を埋めるやつ」
かすみ「こうすると落ち着くんですよ〜」
侑「ふーん」
209
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:39:01 ID:DUr3GeNM
侑「頭を撫でたらもっと落ち着く?」
かすみ「最高です〜」
侑「あはは」
侑(頭を撫でていると、かすみちゃんは「ふあ」と小さくあくびをした。さっきから声も眠そうだった)
侑「眠い?」
侑(私が聞くと、顔をゆっくり上げた。さっきよりも目がとろんとしている。今にも寝そうな雰囲気だ)
かすみ「侑先輩と一緒にいたら落ち着いて……」
かすみ「それと、あまり寝てないから睡魔が……」
侑「ごめんね」
侑(私は頭を優しく撫でる。かすみちゃんは首を横に振った)
かすみ「侑先輩のせいじゃないですよ……」
かすみ「ふわ……」
210
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:43:45 ID:DUr3GeNM
侑(かすみちゃんはまたあくびをした。目をつぶったらこのまま寝てしまいそうだ)
侑「寝るなら私の膝で寝なよ。膝枕してあげる」
かすみ「でも……」
侑「大丈夫だって。時間になったら起こすからさ」
かすみ「……」
かすみ「じゃあ、お言葉に甘えて……」
侑(一瞬ためらっていたが、眠気には勝てないと判断したのか、素直に私の膝に頭を乗せた。歩夢より軽かった)
侑「私の膝枕はどう?」
かすみ「とてもいいです……」
侑「それはよかったよ♪」
侑(頭を撫でると、気持ちよさそうに目をつぶっていた)
かすみ「侑先輩のなでなで、気持ちいいです……」
211
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:48:31 ID:DUr3GeNM
侑(時計を見ると、あと、15分ほどで1限目が終わりそうだった。この調子だと2限目もサボることになりそうだ)
侑(ちょっとしか寝てないのに、起こすのはかわいそうだもんね。先生に怒られるのは覚悟しとかないと)
侑(かすみちゃんの髪にそっと触れた。サラサラしていて、シャンプーの香りがふわっと漂ってきた)
かすみ「侑先輩……」
侑「うん?」
侑(目をつぶりながら私の名前を呼んだ。頬を撫でる)
かすみ「大好き……です……」
侑「ふふ、ありがとう」
かすみ「ねぇ、侑先輩……」
かすみ「かすみん……と、歩夢先輩……」
かすみ「どっち、が……」
侑「……」
侑(私は答えられず、無言で頭を撫で続けた)
212
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:52:23 ID:DUr3GeNM
かすみ「ゆう、先輩……」
かすみ「大好き……」
かすみ「……」
侑「かすみちゃん?」
かすみ「すぅ……すぅ……」
侑(かすみちゃんは寝息を立てていた。寝たみたいだ)
侑(かわいい寝顔だなぁ)
侑(いや、普段もかわいいけどね)
侑(私はかすみちゃんの笑顔を思い浮かべた)
侑(かすみちゃんの笑顔はかわいくて好きだった)
侑(どっちが好き、か)
侑(かすみちゃんを見ると、規則正しく寝息を立てている。私は起こさないように、そっと頬にキスをした)
213
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 19:59:07 ID:DUr3GeNM
かすみ「――んっ……」
かすみ「んん、ふあ……」
侑(かすみちゃんは薄目を開け、小さくあくびをする。目が覚めたらしい。もう少し寝顔を見たかったから残念だ)
侑「おはよう」
侑(私は微笑みながら髪を撫でる。かすみちゃんはぼけーっとしていて、その顔がかわいかった)
侑「おはよう」
侑(もう一度言うと、かすみちゃんは目を軽く擦りながら「おはようございます」と小さくつぶやいた)
侑(私は垂れたよだれを指で拭う。まだ視線が定まってない辺り、完全には目が覚めていないのだろう)
かすみ「ふわあぁ〜……」
侑(かすみちゃんがこんなに大きなあくびをするのは初めて見た。普段は気をつけてるんだと思う)
侑(寝起きで無防備になっちゃったのかな)
侑(珍しいかすみちゃんを見れて少し嬉しかった)
214
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/02(金) 20:06:12 ID:DUr3GeNM
かすみ「ん……」
侑(まだ眠そうにしている。私は一発で目が覚める方法をやってあげることにした)
侑「かすみちゃん♪」
侑(私が呼ぶと、かすみちゃんは寝ぼけ眼でこちらを見ている。私はそのままキスをした)
かすみ「んむっ」
侑(かすみちゃんは目を大きく見開き、勢いよく上体を起こす。いきなりのことでかなり驚いていた)
侑「目が覚めた?」
かすみ「ゆ、侑先輩……今の……」
侑(口を手で覆い、ぽかんとした表情で私を見つめている)
侑「ん?おはようのキスだけど?」
かすみ「お……」
侑(つぶやくと、かすみちゃんは顔を赤らめてうつむいた)
侑「かすみちゃん?」
侑(何度もキスしてるのにどうしたんだろう?)
215
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 17:48:54 ID:m96oDRys
かすみ「いきなりは……その、やめてください」
侑「どうして?」
かすみ「不意打ちは……恥ずかしいです。準備もできてないし……。今も心臓がドキドキしてます」
侑(かすみちゃんは私の手を掴み、自分の胸に持っていった。小振りながらも柔らかい感触だった)
かすみ「ね?」
侑(顔を赤らめながら私を見る。正直胸の柔らかさしかわからなかったけど、適当に頷いておいた)
かすみ「これからは気をつけてくださいね?」
侑「はーい」
侑(頬を膨らませながら腰に手を当てる。相変わらずあざとかわいかった)
かすみ「ところで、かすみんはどのくらい寝てました?」
侑(かすみちゃんは髪をブラッシングしながら私に聞いてきた。さすがおしゃれ意識が高いね)
侑(私は時計を指さしたが、時計には一瞥もせず、そのままブラッシングを続けていた。私に教えてほしいってことなのだろう)
216
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 17:55:34 ID:m96oDRys
侑「1時間ちょっとかな」
かすみ「1時間……ってことは」
侑「今は2限目の最中だね」
侑(かすみちゃんは慌てて時計を見る。顔が青ざめていた)
かすみ「ご、ごめんなさいっ。侑先輩の膝枕が気持ちよくて、つい……」
侑「あはは、気にしなくていいよ。かすみちゃんのかわいい寝顔も堪能できたしね♪」
かすみ「寝顔……か、かわいかったですか?」
侑「うん♪」
かすみ「えへへ、かすみんは寝顔もかわいいんですね〜♡」
侑(かすみちゃんは表情がコロコロ変わるから面白い)
かすみ「えへへ〜♡」
侑(いつの間にか手鏡を取り出して自分を見ていた。ナルシストって言葉はかすみちゃんにピッタリだと思った)
217
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 18:03:02 ID:m96oDRys
かすみ「かすみんは〜♡」
かすみ「やっぱり一番かわいいですよね〜♡」
侑「あはは」
侑(かすみちゃんは手鏡の前で色々な表情を作ったり、ポーズを取っていた。よく飽きないよね)
侑(止めなければ何時間でも自分の姿を見ていそうだ)
侑「かすみちゃん、そろそろ」
かすみ「え〜♡もうちょっとだけ〜♡」
かすみ「侑先輩は幸せ者ですね〜♡」
かすみ「かすみんの美貌を独り占めできるなん――」
侑「かすみちゃん」
侑(少し低い声を出すと、かすみちゃんの肩が跳ね上がった。その驚きように笑いそうになる)
侑(この程度で驚いてるなら、歩夢の本気で怒った姿を見たらどうなるんだろうね)
218
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 18:10:31 ID:m96oDRys
かすみ「んんっ。侑先輩がそこまで言うなら……」
侑(かすみちゃんはブラシと手鏡をバッグにしまう。そして、スマホを取り出した)
かすみ「侑先輩、一緒に写真撮りませんか?」
侑「写真?」
侑(スマホをこちらに見せ、フリフリしていた)
かすみ「はい。恋人になった記念に写真が欲しくて〜」
侑「写真くらいならいいけど」
かすみ「わーい♡」
侑(かすみちゃんは私に密着し、カメラアプリを起動する)
かすみ「写真撮りますよ〜」
侑「んー」
侑(カメラ目線で微笑みながらをピースをする。かすみちゃんはシャッターを押す瞬間に、私の頬にキスした)
219
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:03:49 ID:m96oDRys
侑「か、かすみちゃん?」
侑(突然の行動に反応できなかった。かすみちゃんは撮った写真を確認していた)
かすみ「バッチリ撮れてますよ〜♡」
侑(私にスマホの画面を見せる。そこにはやはり、かすみちゃんが私の頬にキスした写真が写っていた)
侑「たしかによく撮れてるけど……」
かすみ「えへへ〜♡待ち受けにしちゃお♡」
侑「ま、待ち受け?それはちょっと……」
かすみ「どうしてですか?」
侑(かすみちゃんはスマホをいじりながら聞いてきた。今頃待ち受けに設定しているのかもしれない)
侑「そんな写真恥ずかしいじゃん。普通の写真ならいいよ。ほら、撮り直そう?」
かすみ「かすみん、この写真が気に入ったので〜♡」
侑(かすみちゃんは撮り直す気がないらしい。あの写真は他の人に見られたらちょっと困る……)
220
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:09:02 ID:m96oDRys
侑「かすみちゃん、ねっ?もう1枚撮ろう?」
かすみ「え〜」
侑(スマホに視線を移したままこちらを見ない。その態度に少しムッとした。歩夢ならそんなことはしない)
侑「かすみちゃん、私話してるよ」
かすみ「もう少しで設定終わるので〜。よしっ」
かすみ「見てください、早速待ち受けにしましたよ〜♡」
侑(待ち受け画面はさっき撮った写真になっていて、いつ間にか手書きでハートマークが描かれていた)
侑「これはさすがに……ね?」
かすみ「はい?」
侑「他の人に見られたら大変じゃない?」
かすみ「かすみんは別に気にしませんよ♡」
侑(かすみちゃんは笑顔で言った。私が気にするんだよ)
221
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:14:18 ID:m96oDRys
かすみ「よく撮れてるな〜♡」
侑(嬉しそうにスマホを見つめている。その表情を見て、今更待ち受けを変えてとは言えなかった)
侑(まあ、見られなければいいだけか)
侑(かすみちゃんもわざわざ人に見せたりしないだろうし)
かすみ「あ、そういえば」
侑(かすみちゃんはスマホの電源を切り、私の方に向き直る)
侑「ん?」
かすみ「歩夢先輩のことなんですけど」
侑(かすみちゃんが歩夢のことで聞きたいことは1つしかなかった。私はかすみちゃんを見つめる)
かすみ「歩夢先輩とお付き合いしてるんですよね?」
侑「うん。付き合ってるよ」
侑(やっぱりこの質問だった。私は頭の中で、どう答えればかすみちゃんが喜ぶか必死に考えていた)
222
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:19:24 ID:m96oDRys
かすみ「かすみんとも付き合ってますよね?」
侑「そうだね」
かすみ「浮気、ですよね」
侑「……」
侑(私は申し訳なさそうにうつむく演技をした)
侑「ごめん……」
侑(ここで悲しそうな声を出すといい。涙声はもう少し先だ。涙を流すのはなかなか難しい)
侑(泣くときは悲しいことを思い出すか、想像すれば大抵なんとかなる。私は歩夢のことを考えていた)
侑「浮気はよくないと思う。最低な行為だよ」
侑「だけど、浮気をしてでも、私はかすみちゃんと付き合いたかった。だって――」
侑「かすみちゃんが好きだから」
侑(似たようなセリフをさっきも言った気がするけど、多分気づいてないだろう)
223
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:26:23 ID:m96oDRys
かすみ「侑先輩……」
侑(バレない程度に横目で見る。かすみちゃんの顔は嬉しそうにしていた)
かすみ「嬉しいです。かすみんを好きでいてくれて」
かすみ「でも、一番じゃないんですよね」
侑(私は口ごもってしまった。たとえ嘘でも――)
侑(「かすみちゃんが一番好きだよ」……口ではどうとでも言える。でも、私はその言葉が言えなかった)
侑(私の一番は歩夢だ。嘘でもかすみちゃんが一番だとは言えなかった。それだけは言いたくなかった)
かすみ「ああ、別に責めてるとかじゃないんです。一番は歩夢先輩だってわかってますから。ずっと一緒ですもんね」
かすみ「かすみんでは歩夢先輩には……勝てないって、わかってますから」
侑「かすみちゃん……」
侑(かすみちゃんは悲しそうな声でつぶやいた。頭を撫でようと思ったが、やめにした)
かすみ「でも――」
224
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:31:51 ID:m96oDRys
かすみ「侑先輩はかすみんを好きだと言ってくれた」
かすみ「かすみん達は恋人同士なんです。付き合っていれば、変わるかもしれない」
かすみ「今は二番でも、いつかは一番になれるかもしれない」
かすみ「そうですよね?」
侑(かすみちゃんは微笑んだ。ここで機嫌を悪くさせるわけにはいかない。私も微笑み、頷いた)
かすみ「えへへ、侑先輩〜♡」
侑(かすみちゃんは私に抱きつき、キスをした)
かすみ「かすみん、歩夢先輩には負けません!」
かすみ「絶対に侑先輩の一番になってみせますから♡」
侑「あはは、頑張ってね」
かすみ「はい♡」
侑(これでかすみちゃんは完全に元通りになったはずだ。きっといい働きをしてくれると思う。楽しみにしてるよ)
侑(私は歩夢と会うのが待ち遠しかった。どんな反応をするか、考えただけでもときめいた)
225
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:39:39 ID:m96oDRys
――お昼休み・教室
侑(同級生や後輩のお昼の誘いを断り、私はLINEを開く。歩夢からメッセージが届いていた)
歩夢:侑ちゃん、今日はどこでお昼食べる?
侑(どこで食べようかな……)
侑(図書室は飲食禁止だけど、お昼は人の出入りが少ないからのんびりできる。イチャイチャもできる)
侑(屋上も人の出入りは少ないけど、たまにいるからね。図書室のように障害物がないから、イチャイチャはできない)
侑(食堂は人が多すぎだし、同好会の部室も何人かいるイメージだし)
侑(ここは無難に図書室にしよう)
侑:図書室でいいかな?
歩夢:了解〜
歩夢:スタンプ
侑(よし。かすみちゃんにも連絡しないと)
226
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:46:22 ID:m96oDRys
――エントランス
かすみ「侑先輩〜」
侑(かすみちゃんが手を振りながら小走りで近づいてくる。私も手を振り返した)
かすみ「お待たせしましたっ」
侑「じゃあ行こうか」
かすみ「はい♪」
侑(かすみちゃんは腕を絡めてきた。他の生徒からは恋人同士に見えてるかもしれない)
侑(かすみちゃんは歩夢と違ってすぐ腕を組みたがる。歩夢は恥ずかしがって、人前では絶対に腕を組んだりしないもんね)
侑(恥ずかしがり屋の歩夢もかわいいけどさ、いつかは腕を組んで帰ったりデートしたりしたいよね)
かすみ「侑先輩〜。どこで食べるんですか?」
侑(かすみちゃんは上目遣いで聞いてくる。自分でかわいいと言うだけあって、グッとくるしぐさは心得てるらしい)
侑「今日は図書室で食べようかなって」
かすみ「えぇ?図書室、ですか?」
227
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:51:20 ID:m96oDRys
侑「かすみちゃん?」
侑(少し驚いた顔をしていた。どうしたんだろう)
かすみ「図書室って飲食禁止ですよね?いいんですか?」
かすみ「見つかったら怒られちゃいますよ?」
侑「大丈夫だよ。広いし、お昼は基本的に図書委員しかいないからさ。死角になる場所も知ってるから安心して♪」
かすみ「むぅ。侑先輩がそこまで言うなら」
侑「かすみちゃんは真面目だな〜」
かすみ「かすみんは普通です。侑先輩が不真面目なんです!」
侑「あはは」
かすみ「ところで歩夢先輩は来るんですか?」
侑「んー、来るよ。言ってなかったっけ?」
かすみ「初耳です。なるほど、歩夢先輩も来るんですね」
228
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 19:55:48 ID:m96oDRys
侑「2人きりの方がよかった?」
かすみ「2人きりも捨てがたいですけど、今回は3人で食べるのに賛成です。願ったり叶ったりですよ」
かすみ「歩夢先輩はライバルですからね。侑先輩とイチャイチャして一気に差をつけちゃいますよ〜!」
侑(かすみちゃんは笑顔で言った。私としては嬉しい展開だった)
侑「そっか。楽しみにしてるね?」
かすみ「えへへ♡」
侑(かすみちゃんの腕を絡める力が強くなる。少し痛い)
かすみ「侑先輩と食べさせ合いしたいな〜♡」
かすみ「かすみん、夢だったんですよ〜♡」
侑「夢?」
かすみ「恋人と食べさせ合いをするのが夢だったんです♡」
侑「そうなんだ?」
229
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 20:00:42 ID:m96oDRys
かすみ「はい♡」
侑(かすみちゃんは微笑む。私が頭を撫でると、嬉しそうに顔を綻ばせ、更に体を寄せてきた)
かすみ「大好き♡」
侑(くっつきすぎだよ。すごい歩きづらい。これなら誰がどう見ても恋人同士に見えるだろうね)
侑(歩夢はどんな反応をするだろうか)
侑(私がかすみちゃんと付き合ってるって知ったら)
侑(歩夢の前でイチャイチャしたら)
侑(歩夢の前でキスしたら)
侑(嫉妬してくれるといいな。怒ってくれるといいな)
侑(歩夢にお仕置されちゃうかもしれないね)
侑(今日は寝かせてくれないかもなぁ。ふふ、楽しみだよ)
侑(歩夢、歩夢、歩夢。もっと私を愛してね。歩夢が愛してくれるなら私はどんなことでもするよ)
侑(どんなことでも、ね♪)
230
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/03(土) 20:07:54 ID:m96oDRys
――図書室
侑(私達は歩夢を探していた。きっといつもの場所にいると思う。あそこは図書委員の死角になっていて――)
侑(滅多に人が通ることもなかった。だから私達が図書室でお昼を食べるときはその場所にしていた)
侑(あの場所は古い本しかないから誰も興味ないんだよね)
侑(そういう本が好きな人もいるけど、やっぱり最近の小説や漫画の方が人気らしい)
侑(かすみちゃんを見ると、嬉しそうに腕を組んでいた)
かすみ「本当に人が少ないんですね〜」
侑「お昼だしね」
侑(辺りを見回していた。今まで図書委員しか見ていない)
侑(そのままいつもの場所に向かって歩いていると、歩夢の後ろ姿が見えた。私の鼓動が少し早くなる)
侑(私が声をかけようとすると、足音で気づいたのか、歩夢はゆっくりと振り向いた)
侑(私の顔を見ると笑顔を見せたが、隣を、そして絡めた腕を見ると、歩夢の笑顔は一瞬で固まってしまった)
231
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 09:57:53 ID:Fr4pz7ak
侑「歩夢、お待たせ」
侑(私は歩夢に微笑む。かすみちゃんも「こんにちは」と言っていた。歩夢は私達を交互に見ていた)
侑「歩夢?」
侑(歩夢に近づき、そっと髪を撫でる。肩がビクリと跳ね上がった。驚いた表情で私を見つめている)
歩夢「侑、ちゃん?」
侑(歩夢の声は少し震えていた。私は抱きしめたくなるのを堪え、かすみちゃんに視線を移す)
侑「今日はかすみちゃんも一緒にお昼食べるからね」
かすみ「よろしくです、歩夢先輩♡」
侑(歩夢は困惑した表情をしている。かすみちゃんの顔と絡めた腕を見つめていた)
侑「歩夢?」
侑(再び呼びかけると、我に返ったように私を見る。瞳には困惑や悲しみが浮かんでいた)
歩夢「えっ、と……」
232
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:03:09 ID:Fr4pz7ak
侑「お昼。一緒に食べてもいいよね?」
侑(歩夢はもう一度かすみちゃんを見ると、無言で頷いた)
かすみ「ありがとうございます♡」
侑(かすみちゃんは私の腕を引っ張り、席に着く。私は歩夢の隣に座り、かすみちゃんは私の隣に座った)
侑(私は弁当箱を取り出し、かすみちゃんは袋を取り出した。購買で売ってるパンだった)
侑「今日は購買のパンなの?」
かすみ「今朝は作る余裕がなくて〜」
侑「あー」
侑(歩夢の方を見ると、視線を下に向けたまま、弁当箱を取り出そうとすらしていなかった)
侑「歩夢、食べないの?」
侑(歩夢は私を見る。「侑ちゃん」とつぶやいた)
歩夢「……食べるよ」
233
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:09:56 ID:Fr4pz7ak
侑(歩夢は弁当箱を取り出した。蓋を開けるとき、手が微かに震えていた。その横顔にキスしたくなったが我慢する)
かすみ「侑先輩、あ〜ん♡」
侑(パンを小さくちぎり、私の口へ持っていく。歩夢はその動作をじっと見つめていた)
侑「あむ。ん、おいしい」
侑(パンを食べて微笑んだ。正直あまりおいしくはない)
侑(私はかすみちゃんが喜ぶ言葉を使うことにした)
侑「でも、かすみちゃんのコッペパンの方がおいしいよ」
侑(かすみちゃんは笑顔で私に抱きついた。唇を見ていたが、視線を元に戻す)
かすみ「嬉しいです♡」
侑(さすがにキスはしてこないみたいだね)
かすみ「次は侑先輩の番ですよ♡」
侑「はいはい」
侑(私はウインナーを箸で掴み、かすみちゃんに食べさせた。歩夢は悲しそうな顔でそれを見ていた)
234
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:15:16 ID:Fr4pz7ak
かすみ「おいしいです〜♡」
侑「あはは、そっか」
侑(卵焼きを自分の口に運ぶ。歩夢が作ってくれた卵焼きは甘さも焼き加減も私好みだった)
侑「歩夢の卵焼き、おいしいよ」
侑(歩夢を見て微笑む。一瞬嬉しそうな顔をしたが、かすみちゃんを見ると、自分の弁当箱に視線を戻した)
歩夢「ありがとう」
かすみ「かすみんもその卵焼きくださいよ〜」
侑(物欲しそうに見つめるかすみちゃんに、私はダメと断った。そして卵焼きを一口で頬張る。おいしい)
かすみ「え〜」
侑「歩夢が私のために作ってくれた卵焼きだから、これを食べていいのは私だけなの。かすみちゃんの分はないよ」
かすみ「むぅ。侑先輩のケチ〜〜」
侑(かすみちゃんは頬を膨らませ、パンをかじった)
235
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:21:47 ID:Fr4pz7ak
かすみ「歩夢先輩。侑先輩が意地悪してきますよ〜」
侑(頬を膨らませながら歩夢に助けを求めた。歩夢はなんて言おうか悩んでいたらしく、何秒か間を空けて)
歩夢「侑ちゃん、1個くらい分けてあげたら?」
侑(と微笑みながら言った。顔が少しひきつっている)
かすみ「ほら、歩夢先輩もこう言ってることですし♪」
侑(かすみちゃんは小さく口を開ける。私は唐揚げを突っ込んだ)
かすみ「むぐっ。む、ん〜」
かすみ「侑先輩っ。唐揚げじゃないですか〜」
侑「おいしいでしょ?それ私が作ったんだ」
かすみ「そ、そうなんですか?」
侑「うんうん」
かすみ「まあ、歩夢先輩の卵焼きも食べてみたかったですけど……」
236
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:29:15 ID:Fr4pz7ak
かすみ「今日のところは、侑先輩の唐揚げで勘弁してあげましょう♡」
侑(かすみちゃんは頬に手を当て嬉しそうにしていた。私の手作り唐揚げがよっぽどおいしかったのだろう)
侑(本当は冷凍食品なんだけどね。レンジで簡単だもん。朝から唐揚げ作る時間なんてあるわけないじゃん)
侑(そもそもお弁当を用意したのはお母さんと歩夢だし。私のその頃夢の中にいたもんね♪)
侑(歩夢は私を見ていた。冷凍食品だと知ってるからだ)
侑(私はかすみちゃんに気づかれないよう、そっと人差し指を口に持っていき、歩夢の目を見る)
侑(歩夢はコクコクと頷いた。かわいい)
侑(私は同じようにウインナーを箸で掴み、歩夢の口へと運んだ)
侑「歩夢、あーん」
歩夢「いいの?」
侑「私は歩夢に食べてほしいんだ」
侑(私が微笑むと、歩夢は顔を赤らめた)
歩夢「じゃあ、いただきます」
237
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:35:34 ID:Fr4pz7ak
歩夢「あむ。ふふ、おいしい」
侑「よかった」
侑(歩夢が笑顔になると私も嬉しい気持ちになる。かすみちゃんが「むむむ」と唸っていた)
かすみ「侑先輩は歩夢先輩ばっかりかまってずるいです。かすみんもかまってくださいよ〜」
侑「そんなことないよ。ね?」
侑(歩夢に同意を求めると、苦笑いで頷いた)
かすみ「かすみんだって侑先輩と付き合ってるのに〜」
かすみ「歩夢先輩ばっかりずるいです〜。差別ですよ〜」
侑(かすみちゃんの言葉に、歩夢の箸を持つ手が止まった)
歩夢「付き合ってる……?」
かすみ「はい?」
侑(かすみちゃんは驚いた顔をして、私を見つめた)
238
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:40:58 ID:Fr4pz7ak
かすみ「侑先輩、話してないんですか?」
侑「あー」
侑(当然話してない。歩夢がどんな反応をするか目の前で見たかったからだ)
歩夢「えっと……」
歩夢「話すって、なにを……?」
侑(歩夢が恐る恐る聞くと、かすみちゃんは笑顔で――)
かすみ「かすみん、侑先輩とお付き合いしてるんです♡」
歩夢「え――」
侑(歩夢は驚きの表情を見せていた。かすみちゃんの言葉が理解できてないみたいだった)
かすみ「てっきり侑先輩が話してるんだと思いましたよ〜」
侑「なかなか言う時間がなくてさ」
かすみ「なるほど〜」
239
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:52:43 ID:Fr4pz7ak
歩夢「待って……」
侑(歩夢の声は震えていた。私達は歩夢を見る)
かすみ「歩夢先輩?」
侑(かすみちゃんはパンをかじりながら聞いた。歩夢は弁当箱を机に置くと私を見つめた)
歩夢「付き合ってるって……冗談だよね?」
侑(歩夢は私の目を見ながら聞く。私は微笑んだまま何も言わなかった)
歩夢「答えて」
侑(歩夢の雰囲気が一瞬で変わる。震えていた声も、怒気を含むものになっていた)
かすみ「あの、歩夢先輩……」
かすみ「侑先輩を、その、怒らないであげてください」
歩夢「侑ちゃん」
侑(かすみちゃんが止めに入るも、歩夢は無視していた)
240
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 10:58:44 ID:Fr4pz7ak
かすみ「あ、歩夢先輩……」
侑(普段とは様子が違う歩夢を見て、かすみちゃんは驚いていたが、怯まずに話しかける)
侑(私は2人の会話をただ見つめていた。正確には、歩夢がどんな表情をしているのか見ていた)
かすみ「う、浮気はダメだと思います。ごめんなさい」
かすみ「かすみんも……よくないとは思います」
かすみ「でも、侑先輩が好きなんです。大好きなんです」
かすみ「歩夢先輩は、えっと、あまり快く……」
かすみ「思わないかも、しれませんが……」
かすみ「ゆ、侑先輩の恋人同士、仲良くしませんか?」
歩夢「……」
侑(歩夢はかすみちゃんの言葉に一瞥もせず、私を見つめていた。一度も瞬きしていなかった)
侑(かすみちゃんはオロオロとしていた)
241
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:04:17 ID:Fr4pz7ak
歩夢「侑ちゃん」
歩夢「本当に付き合ってるの」
侑(歩夢の声は更に怒気を含んでいた。私は微笑み、歩夢の頭を優しく撫でる)
侑(歩夢の髪は相変わらずサラサラで撫でやすかった)
侑(私の家のシャンプーの匂いがふわりと漂った)
歩夢「侑ちゃん、答えて」
侑(普段の歩夢なら頭を撫でると嬉しそうに顔を綻ばせていたが、今の歩夢は眉一つ動かしていなかった)
侑(ただ私を見つめていた。その表情にとても興奮した)
侑(私はキスしたい衝動を抑えるので精一杯だった)
かすみ「あ、あのっ」
かすみ「あ、あゆ、歩夢、先輩っ」
侑(かすみちゃんが歩夢に話しかける。声が震えていた。顔を見ると、冬なのに大量の汗をかいていた)
242
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:24:10 ID:Fr4pz7ak
かすみ「そ、そんな怖い顔、しない方が、いいと……」
かすみ「おも、思いますよ?歩夢先輩は〜……」
かすみ「その、かすみんの……次くらいに、えっと……」
かすみ「かわいいん、ですから……ね?」
侑(かすみちゃんは途切れ途切れ言った。その話し方や上擦った声に笑いそうになったが、なんとか耐えた)
歩夢「……」
侑(歩夢は何の反応も示さない。私から話を聞くまでは頑なにかすみちゃんを無視するつもりらしい)
かすみ「歩夢、先輩……」
かすみ「かすみんが言うのも……変ですけど……」
かすみ「な、仲良くしましょうよ……」
かすみ「2人が……そんな、喧嘩をする姿なんて……」
かすみ「かすみん、見たくないです……」
243
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:29:23 ID:Fr4pz7ak
歩夢「……」
かすみ「えっ、と……」
侑(かすみちゃんは私を見る。涙目だった)
侑(さっきまで楽しそうに食事をしていたのが嘘みたいだ)
侑(歩夢の前髪に触れようとすると、歩夢に腕を掴まれた。みし、と音がしたような気がする)
歩夢「侑ちゃん」
侑「歩夢、痛いよ」
侑(私は微笑んだが、歩夢は無表情だった)
侑(歩夢は私の手に触れ、小指をそっと握った)
歩夢「約束したよね」
かすみ「約束……?」
侑(かすみちゃんが繰り返すが、歩夢は無視をした)
244
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:36:55 ID:Fr4pz7ak
歩夢「侑ちゃん、私と約束したよね」
侑(歩夢は私の目を見ながら問いかける。瞳には悲しみ、怒り、軽蔑などが入り乱れていた)
侑(私が微笑んだまま見つめていると、歩夢は)
歩夢「侑ちゃん」
侑(小指を握る手に力が入った。結構痛かった)
侑「歩夢、痛いよ。離して」
歩夢「侑ちゃん、答えて」
侑(歩夢は更に力を入れた。どうやら本気らしい)
侑(歩夢に指を折られるのは構わない。それが愛情表現なら10本全部折ったっていい。私は喜んで差し出すよ)
侑(でも、歩夢の曲を弾けなくなるのは嫌だ。作詞作曲しても弾けなかったら意味がない)
侑(歩夢のために作った曲を、私以外に弾かせるなんてそんなの絶対に許せない。私が耐えられない)
侑(それに、手が使えなかったら歩夢に満足に触れることもできない。優しく撫でてあげられないもんね)
245
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:41:59 ID:Fr4pz7ak
歩夢「侑ちゃん」
侑(歩夢は再び私の名前を呼んだ。握る力も少しずつ強くなっていく。これ以上は危険と判断した)
侑「歩夢、ごめんね」
歩夢「何に対して謝ってるの」
侑(私をじっと見つめている。指を握る力は弱まっていた)
侑「約束破って、ごめん」
侑(ここは素直に謝るしかなかった。歩夢の瞳は悲しみと怒りがごちゃ混ぜになっていた)
歩夢「そっか」
侑(歩夢は私の指を離した。小指を動かし、折れてないことを確認する。痛みはあるが問題なかった)
侑「ごめんね」
歩夢「謝るならしないでよ」
侑(私は歩夢の髪をそっと撫でた。今度は掴まれなかった)
246
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:47:56 ID:Fr4pz7ak
歩夢「侑ちゃん。私達、約束したよね」
歩夢「それなのに、どうして浮気をしたの」
侑(浮気という言葉にかすみちゃんが反応する。私は微笑みながら――)
侑「かすみちゃんが好きだから」
侑(歩夢の眉がピクリと動く。かすみちゃんの方を見た)
かすみ「ひっ」
侑(かすみちゃんは小さく悲鳴をあげ、私の背に隠れた)
歩夢「かすみちゃん」
かすみ「……」
侑(私の背に隠れたまま何も言わない。身体は震えていた)
歩夢「かすみちゃん」
侑(さっきまで無視してたのに、今度は立場が逆転していた。かすみちゃんは相変わらず震えている)
247
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:52:26 ID:Fr4pz7ak
歩夢「かすみちゃん」
侑「かすみちゃん、呼んでるよ?」
侑(首だけ振り向くと、かすみちゃんは首をブンブン横に振っていた。歩夢が怖いらしい)
歩夢「……」
侑(歩夢は私とその背後を見つめていた)
歩夢「ねぇ、侑ちゃん」
侑「うん?」
侑(私は笑顔で答える。歩夢は無表情だった)
歩夢「かすみちゃんが好きって本当なの」
侑「うん」
歩夢「そっか」
侑(歩夢は微笑んだが、目は笑っていなかった)
侑(私は歩夢の目を見つめながら、今キスしたらどうなるんだろうと考えていた)
248
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 11:57:40 ID:Fr4pz7ak
歩夢「じゃあ――」
歩夢「私よりも?」
侑「……」
侑(その質問に私は口をつぐんでしまった)
侑(私は歩夢に嫉妬してもらいたい。ここは嘘でもかすみちゃんの方が好きって言うべきか?)
侑(いや、それだけはダメだ。たとえ嘘でも言えない)
侑(私は歩夢が一番好きだ。歩夢以外は愛さない。これは絶対に譲れなかった)
歩夢「侑ちゃ――」
かすみ「あ、あのっ」
侑(かすみちゃんは私の背からひょっこりと顔を出す。その突然の行動に歩夢も驚いていた。かわいい)
かすみ「ゆ、侑先輩が一番好きなのは歩夢先輩です」
かすみ「それは絶対です。信じてあげてください」
249
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 12:02:12 ID:Fr4pz7ak
かすみ「さっきも――」
歩夢「――かすみちゃん」
侑(かすみちゃんの言葉は歩夢に遮られた。歩夢はかすみちゃんをじっと見つめ――)
歩夢「あなたには聞いてない」
侑(かすみちゃんはさっきよりも大きな悲鳴をあげると、再び私の背へと隠れた)
侑(歩夢の顔を見ると、少し嬉しそうにしていた)
歩夢「侑ちゃんの口から聞かせて」
侑(歩夢の言葉に、私は微笑んだ)
侑「言わなくてもわかるでしょ?」
侑(歩夢はムッとした。怒りが多少は収まってきたらしい)
歩夢「私は侑ちゃんの口から聞きたいの」
侑「あはは」
250
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 12:06:50 ID:Fr4pz7ak
歩夢「どうして笑うの?」
侑「いや、かわいいなって」
歩夢「かわいい?」
侑「歩夢はかわいいよ。だって、私が一番大好きな人だもん」
歩夢「……!」
侑(歩夢は顔を赤らめる。怒りよりも嬉しさの方が勝ったみたいだ。私は紅潮した頬を優しく撫でた)
歩夢「ありがとう。侑ちゃんからその言葉が聞けて、嬉しかったよ」
侑(歩夢は微笑んだ。私と微笑み返すと――)
歩夢「でも、浮気の件とは別だからね」
侑(今度の微笑みは目が笑っていなかった)
歩夢「どうして浮気をしたの?」
侑(また振り出しに戻ってしまった)
251
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 12:12:30 ID:Fr4pz7ak
歩夢「約束したよね?」
歩夢「ねぇ、侑ちゃん」
侑(歩夢は怒ってるが、さっきよりはまだマシだった)
侑(さっきのが100%なら、今は80%くらいだろう)
侑(もっと怒ったり嫉妬してもらうには――)
侑「かすみちゃんが好きだから浮気をしたんだよ」
歩夢「私が一番好きなのに浮気したんだ」
侑「つまみ食いくらいしたくなるでしょ?」
侑(私は上手いことを言ったつもりだったけど、歩夢は無表情だった。面白くなかったらしい)
かすみ「つまみ食い……」
侑(かすみちゃんは悲しそうな声でつぶやいた)
侑(私は振り向き、かすみちゃんを抱きしめた。そして歩夢の方を見る)
252
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 12:20:08 ID:Fr4pz7ak
侑「歩夢?」
歩夢「なに?」
侑「今からかすみちゃんとキスするから見ててね」
歩夢「え?」
かすみ「えっ」
侑(2人は驚いた顔をしている。私は歩夢によく見えるように、かすみちゃんとキスをした)
かすみ「ちょ、侑先輩、ん――」
歩夢「……!」
侑(何度か軽いキスをする。歩夢を見ると、無表情だった)
侑(瞳には嫉妬、怒り、悲しみなどの様々な感情が混ざっていた。無感情を装ってるつもりだろうけど、バレバレだよ)
侑(嫉妬してくれて嬉しいよ。今日は寝れないだろうなぁ。たくさん愛してもらえると思うと、自然と頬が緩んだ)
侑(かすみちゃんを見ると、口をあわあわとさせていた)
侑「かすみちゃん?」
253
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 12:25:08 ID:Fr4pz7ak
かすみ「い、いや、だって……」
侑「私とキスするの、嫌だった?」
かすみ「い、嫌ではないですけど……」
侑(かすみちゃんは歩夢をチラチラ見ている。歩夢はなぜか「ふふふ」と笑い出した)
かすみ「ひっ」
侑(笑い方に恐怖を感じたのか、また背に隠れた)
歩夢「ふふふ、あははっ」
侑「どうしたの?」
侑(私が微笑みながら聞くと、歩夢も微笑む。やはり目は笑っていなかった)
歩夢「ふふ。怒りを通り越すとね、なんか、笑えてきちゃって。あはは」
侑「あははっ」
侑(私も釣られて笑うと、歩夢は急に真顔になった)
254
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 12:29:06 ID:Fr4pz7ak
歩夢「よく私の前でキスできたね」
侑「歩夢もする?」
歩夢「ふざけないでよ」
侑「ふざけてなんかないよ。私、歩夢とキスする瞬間が一番幸せだもん」
歩夢「……」
侑(私には何を言っても無駄だと思ったのか、私の背後へと声をかける。キスできなくて残念だった)
歩夢「かすみちゃん」
かすみ「ひっ」
侑(かすみちゃんは小さく悲鳴をあげた。まだ怖いらしい)
歩夢「かすみちゃん」
かすみ「……」
歩夢「……」
侑(歩夢は席を立ち、かすみちゃんの隣へと座った)
255
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 12:34:53 ID:Fr4pz7ak
歩夢「かすみちゃん」
侑(歩夢はかすみちゃんの肩を優しく叩いた。声にならない悲鳴をあげ、ゆっくりと振り返った)
かすみ「あ、歩夢、先輩」
歩夢「やっとこっち見てくれたね」
侑(歩夢は微笑んでいたが、かすみちゃんは震えていた)
侑(私は少し悪戯をしたくなった)
侑「かすみちゃん、そんなに震えてどうしたの?」
侑「さっきは「歩夢先輩には負けません!」とか「侑先輩といっぱいイチャイチャしちゃいます〜」って――」
侑「言ってなかったっけ?」
かすみ「ゆ、侑先輩っ」
侑(かすみちゃんは慌ててこちらを見るも――)
歩夢「へぇ。そんなこと言ってたんだ?」
侑(歩夢の言葉に顔が青ざめた)
256
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 19:50:13 ID:Fr4pz7ak
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」
かすみ「は、はい」
歩夢「どうして侑ちゃんと付き合おうと思ったの?」
かすみ「それは……その、えっと」
侑(かすみちゃんは私を見る。とりあえず微笑んだ)
かすみ「……す、好きだからです」
歩夢「好き?」
かすみ「はい。侑先輩が……好きで好きで、大好き、だったから、です……」
かすみ「歩夢先輩とお付き合いしてるのに、浮気をしたのは……本当に申し訳ないと思ってます……」
かすみ「で、でも、かすみんは……侑先輩が大好きだったから……だから……」
かすみ「浮気とわかっていても……付き合いました……」
歩夢「ふーん」
257
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 19:57:10 ID:Fr4pz7ak
かすみ「ごめんなさい……」
侑(かすみちゃんは涙目になりながらうつむいていた。歩夢はそれを微笑みながら見ている)
歩夢「そんなに侑ちゃんが好きなんだ」
かすみ「は、はい」
かすみ「な、なので……これから、3人で……仲良く、していけたら……いいな、と……」
歩夢「は?」
かすみ「ひぃ」
侑(歩夢の声に、かすみちゃんの肩はビクリと跳ね上がる)
歩夢「かすみちゃんが私の立場だとして、浮気相手に3人で仲良くしようって言われたら、笑顔で頷ける?」
かすみ「か、かすみんは……歩夢先輩と、なら……」
かすみ「な、仲良く……できると、思います……」
侑(歩夢が聞くと、かすみちゃんは声を震わせながら答えた。歩夢は最初微笑んでいたが、話終わる頃には無表情になっていた。かなり怒ってるみたいだ)
258
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 20:02:36 ID:Fr4pz7ak
歩夢「それがかすみちゃんの答えなんだね」
かすみ「は、はい。なので――」
侑(歩夢はかすみちゃんに顔を近づける。かすみちゃんは軽い悲鳴をあげた)
歩夢「そんなの、口ではどうとでも言える。かすみちゃんは浮気をした立場だからそんなことが言えるんだよ」
歩夢「侑ちゃんと別れてよ。素直に別れるなら、今回の件は全て水に流してあげるから」
かすみ「え……」
侑(歩夢は微笑みながら言った。まさか歩夢がそこまで言うとは思ってなかったらしく、驚いていた)
歩夢「どうしたの?」
かすみ「い、いや……だって……」
かすみ「別れるのは、その、ちょっと……」
歩夢「“浮気”なのに?」
かすみ「……っ」
侑(“浮気”を強調すると、かすみちゃんはうつむいた)
259
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 20:09:01 ID:Fr4pz7ak
歩夢「かすみちゃん、断言するよ。私は浮気相手とは仲良くできない。逆に、どうして仲良くできると思ったの?」
かすみ「……」
侑(かすみちゃんはうつむいたまま、顔を上げない)
歩夢「別れてくれるよね?浮気相手に拒否する権利なんてないよ。水に流すって言ってるんだからさ、素直に頷いた方が身のためだと思うけどね」
かすみ「……」
侑(かすみちゃんは返事をしなかった)
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」
歩夢「返事はしなくていいからそのまま聞いて」
かすみ「……」
歩夢「浮気はよくないことだよ」
歩夢「喜ぶ人よりも悲しむ人の方が多い。子供じゃないんだから、そのくらいわかるよね?」
侑(歩夢は微笑みながら、優しく語りかけていた)
260
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/05(月) 20:13:35 ID:Fr4pz7ak
歩夢「いくら好きだからってさ、恋人がいるのに奪うような真似したらダメだよ」
歩夢「その恋人のことを考えなかったの?」
歩夢「恋人が悲しむってわからなかったの?」
歩夢「かすみちゃんは何も考えなかったの?」
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」
かすみ「……っ」
かすみ「わかって、ます。歩夢先輩には悪いと……」
かすみ「申し訳ないと、思いました。でも、でも……」
かすみ「それ以上に……侑先輩が好きなんです……」
かすみ「侑先輩が、大好き……なんです……」
歩夢「……」
侑(かすみちゃんはうつむいたまま、涙声で話した。歩夢は話すのをただ見つめていた)
261
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 17:49:38 ID:W0ovu46I
歩夢「かすみちゃん、そんな建前はいいよ」
かすみ「え……?」
侑(歩夢の言葉にかすみちゃんは顔を上げる。驚きの表情を見せていた)
歩夢「私はかすみちゃんの“本音”が知りたいの」
侑(私は歩夢が何を言ってるのかわからなかった)
かすみ「……」
かすみ「私だって……」
かすみ「私、だって……侑先輩が好きなのに……」
かすみ「歩夢先輩だけ……侑先輩を独り占めするなんて、そんなの……ずるいじゃん……」
かすみ「ずるいよ……ずっと前からの幼馴染みで……。恋人なんて、ずるいよ……。ずるい……」
かすみ「わたし、だって……もっと前から知り合いたかった……」
かすみ「わたしが……侑先輩と、先に知り合ってたら……きっと……」
262
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 17:57:42 ID:W0ovu46I
かすみ「きっと、わたしが……侑先輩の隣に……いた、のに……」
かすみ「侑先輩の恋人は……わたしだったのに……」
かすみ「浮気なんて……しなかったのに……」
かすみ「どうして……わたしじゃなくて、歩夢先輩なの……」
かすみ「……っ、ひっ、うぅ……」
かすみ「わたしの方が……いい彼女、なのに……」
かすみ「わたしの方が……彼女にふさわしいのに……」
かすみ「ぐすっ、ひっく……うぁぁぁ……」
侑(かすみちゃんは泣きながらぽつりぽつりとつぶやいた。私が流すような涙じゃなくて、本物の涙だった)
侑(かすみちゃんがそんなことを思ってたなんて……)
侑(かすみちゃんには悪いけど、もし仮に、先に出会ったとしても、私は歩夢と結ばれてたはずだよ)
侑(だって、私の運命の相手は歩夢なんだから。それ以外は考えられない。歩夢以外と結ばれる運命は存在しない)
侑(本人には恥ずかしくて言えないけどさ♪)
侑(かすみちゃんと目が合った。大きな瞳から大粒の涙を流している)
かすみ「ゆう先輩……」
263
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 18:04:57 ID:W0ovu46I
かすみ「ねぇ、ゆう先輩……」
かすみ「こんな人のどこがいいんですか……」
かすみ「あんな大量のメッセージを……何も考えないで、自分の都合だけで送って……頭おかしいですよ……」
かすみ「重くて……小さな事ですぐ浮気だって喚いて、被害妄想が激しい……こんな、こんな……」
かすみ「こんな、重すぎる、最低な人の……どこがいいんですか……」
かすみ「わたしなら……そんなことしません……」
侑(他の人には歩夢がそんな風に見えるんだ。間違ってないとは思うけどね。実際歩夢は重いだろうし)
侑(でも、それがいいんだよ。重くて、束縛してくれて、私だけを想ってくれる歩夢がね。それが私の理想だよ)
侑(それに、歩夢の良さを理解できるのは私だけでいい)
かすみ「わたしなら……」
侑(かすみちゃんは私の方へと手を伸ばす。私の頬に触れる直前、歩夢に手首を掴まれ、小さく悲鳴をあげた)
かすみ「なんですか……」
歩夢「……」
かすみ「は、離して……」
侑(かすみちゃんが手を振りほどこうとするが、ビクともしない。手の甲には血管が浮き出ていた)
264
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 18:16:28 ID:W0ovu46I
かすみ「痛い……。ゆ、ゆう先輩……助けて……」
侑(涙を流しながら私を見つめている。瞳には恐怖や憎悪などの感情が入り乱れていた)
侑(歩夢の力で思いきり掴まれたら痛いのは経験済みだ。手首に痣ができるかもしれない。それはさすがにかわいそうだから、助け船を出すことにしよう)
侑「歩夢、離しなよ。痛がってる」
歩夢「……」
侑(歩夢の手首を握る力が強まる。かすみちゃんの顔が苦痛に歪んだ)
侑「歩夢、聞いてるの?」
侑(歩夢はこちらを一瞥すると、微笑んでいた。口に出すなと目で訴えていた。私はそれに従うことにした)
侑(まあ、歩夢なら傷つけたりはしないよね)
歩夢「好き勝手言ってくれるね。ひどいなぁ」
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」
歩夢「そんなに私のことが嫌いなの?」
侑(歩夢は掴んでいた手を離した。かすみちゃんは手首を押さえている。痛そうだった)
かすみ「……」
265
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 18:49:05 ID:W0ovu46I
かすみ「先輩として、尊敬していますよ」
侑(痛みを堪えながら答える。歩夢はじっと見つめ――)
歩夢「私は“本音”が知りたいって言ったはずだよ」
かすみ「……」
侑(かすみちゃんは涙を拭い、歩夢を見つめた)
かすみ「大嫌い」
かすみ「あなたなんか、大嫌い」
かすみ「私の侑先輩と付き合ってる、あなたが憎い」
かすみ「侑先輩が一番大好きな、あなたが大嫌い」
かすみ「憎くて、大嫌いです」
侑「……」
侑(歩夢を嫌いな人がいるなんて、驚きを隠せなかった。歩夢はこんなにも素敵で、とてもかわいいのに……)
侑(いや、かすみちゃんが歩夢を嫌いな理由の大半は私か。完全な八つ当たりだと思うけどね。歩夢は何も悪くないよ)
歩夢「そっか。私はかすみちゃんのこと、好きだったよ。初めての後輩だし、私にもよく懐いてくれたし」
侑(歩夢は微笑み、かすみちゃんは睨んでいた)
266
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 18:55:07 ID:W0ovu46I
歩夢「結果がどうであれ、かすみちゃんの本音が聞けてよかった。嬉しかったよ」
歩夢「だけどね――」
歩夢「侑ちゃんはあなたのモノじゃない」
侑(歩夢は鋭く言い放った。かすみちゃんは目を伏せる)
かすみ「……」
かすみ「そんなの、わかってますよ」
かすみ「私のことなんて、好きでもなんでもないって」
かすみ「私はただ、都合よく利用されてるだけだって」
かすみ「歩夢先輩には、私では絶対に勝てないって」
かすみ「最初から、わかってました」
かすみ「ちょっとくらい夢を見たかったんです」
かすみ「好きな人と結ばれる夢を見たかったんです」
かすみ「本当に、幸せな夢でした」
侑(そう言うと、かすみちゃんは涙を流しながら微笑んだ)
267
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 19:00:37 ID:W0ovu46I
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」
かすみ「わかってますよ」
侑(かすみちゃんはゆっくりと立ち上がり、バッグを肩に掛けた)
侑「かすみちゃん?」
侑(私が話しかけると、涙を拭い、物悲しげに微笑んだ)
かすみ「侑先輩」
かすみ「ありがとうございました」
侑「え?」
侑(私は間の抜けた返事をした。かすみちゃんはそれを見てクスリと笑う)
かすみ「この2日間、本当に楽しかったです」
かすみ「侑先輩のおかげで幸せな夢を見れました」
かすみ「本当はデートにも行きたかったですけど、ふふ、もう諦めることにしました」
268
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 19:09:49 ID:W0ovu46I
侑(最初は何を言ってるのかよくわからなかった)
かすみ「お泊まりデートもしたかったです」
かすみ「一緒にお風呂に入ったり、同じ布団で寝たり」
かすみ「一緒に料理を作るのもいいですね。侑先輩の唐揚げ、食べたかったです」
かすみ「えへへ。考えれば考えるほど、止まらなくなっちゃいますね」
侑(でも――)
かすみ「侑先輩。楽しくて、幸せで、とっても甘くて、大切な思い出を、本当にありがとうございました」
侑(かすみちゃんの表情を見て、これは“別れの言葉”だとなんとなく理解できた)
かすみ「さようなら」
侑(かすみちゃんはお辞儀をして、入口へと歩いていく)
侑「かすみちゃん、待って」
侑(私の呼びかけに一瞬足を止めたが、こちらには振り返らず、そのままゆっくりとした足取りで去っていった)
侑「……」
侑(私はとりあえず、自販機で買ったお茶を一口飲んだ。苦いお茶の味が口の中に広がった)
269
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 19:18:57 ID:W0ovu46I
侑(私達は別れたってことになるんだと思う。さっきのは“別れの言葉”だ。私達の恋人としての関係は終わった)
侑(初めて恋人と別れた感想は、特になかった。悲しくもないし、嬉しくもない。普通だった)
侑(無理もないと思う。私に恋愛感情はないんだから)
侑(かすみちゃんと付き合った理由は、歩夢がどんな反応をするか知りたかったから。それだけだった)
侑(そこには恋愛感情なんてものは存在しなかった)
侑(それよりも私が驚いたのは、かすみちゃんが全て知ってたことだ。私に恋愛感情がないこことを気づいていた)
侑(表情や態度には出てないはずなのに、どうしてバレたんだろう。そこは人一倍気を使ってた)
侑(恋人として装うために、したくもないキスや、好きって言葉を何度も言ったのに。いつ見破られたの?)
侑(私はふと、今朝のLINEや花言葉を思い出した。気づかれる要素はそれしか思い浮かばなかった)
侑(完全に誤魔化せたと思ってたのにな。LINEの件は少しやりすぎたかもしれない)
侑(どうやら私は、かすみちゃんを甘く見ていたみたいだね。私の詰めも甘かった。反省しないといけないな)
侑(私がまだまだ未熟なのを今回で思い知った。いい勉強になったよ。かすみちゃんには感謝しないとね)
270
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 19:26:41 ID:W0ovu46I
侑(1回くらいはデートしてあげればよかったね。まさか2日で別れるとは思わないもん)
侑(歩夢に付き合ってることを告げた時点で、こうなるのは想定してたけどさ。歩夢は嫉妬深いし♪)
侑(好きだったよ、かすみちゃん。“友達として”、だけど)
歩夢「かすみちゃん、気づいてたよ」
歩夢「侑ちゃんに恋愛感情がないって」
侑(歩夢の言葉に顔を上げる。私は「そうみたいだね」と言った。一応申し訳なさそうにうつむく)
侑(私に恋愛感情がないのを知ってるのに、それでも付き合いたかったんだね。恋は盲目ってやつかな)
侑(そこまで好かれるなんて、悪い気はしないよ。だからと言って、私は別に好きにはならないけどね)
侑(私が好きなのは歩夢だけだもん。歩夢以外は愛さないって心に決めてるから。それは絶対に揺るがないよ)
歩夢「どうして好きでもないのに付き合ったの?」
歩夢「どうなるか考えなかったの?」
侑(「歩夢がどんな反応をするか知りたかったから」……なんて、言えるわけないよね)
271
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 19:39:49 ID:W0ovu46I
歩夢「かすみちゃんの心を弄んで、なんとも思わないの?好きでもないのに付き合って、キスして、えっちして」
歩夢「かすみちゃんの言葉を聞いて、涙を見て、何も思わなかったの?」
侑(なんて答えようか悩んでいると、歩夢は更に質問を投げかけてきた。私は「ごめん」と謝る)
侑(大嫌いって言われた子のために、そこまで怒るなんてね。さすが歩夢だよ。私には到底真似できそうにないや)
侑(普通だったら、申し訳ない気持ちになったり、罪悪感を感じたりするんだろうけど、私は何も感じなかった)
侑(蟻をうっかり踏み潰しても、申し訳ない気持ちにはならない。地面に頭を擦り付けて土下座なんてしない)
侑(きっと、私にとって歩夢以外の人はその程度の認識なんだろうね。道端に落ちてる石ころと同じ)
侑(自分の未熟さに気づけたから、感謝はしてるけどね。次はもっと上手にやれるはずだ。こんなミスはもうしない)
侑(それに、かすみちゃんのおかけで、歩夢の色々な表情が見れた。作戦は大成功だったね♪)
侑(もう少し付き合ってたら、もっと歩夢の嫉妬心を燃やせたかもしれないと思うと、残念だよ)
侑(軽いキスじゃなくて、舌も絡めたらよかったな。さすがにえっちは図書室だとできないけどさ)
侑(まあ、別れたあとだから、何を考えても遅いけどね。あとでLINE送ったら復縁できないかな?)
歩夢「侑ちゃん、聞いてるの?」
侑「え?」
侑(歩夢の顔を見ると、少し怒っていた。無視されたと思っているのかもしれない)
272
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/11(日) 19:46:50 ID:W0ovu46I
侑「ごめん、考え事してた。かすみちゃんの件は、その、本当に申し訳ないと思ってるよ。反省してる」
歩夢「……そっか」
侑(歩夢はつぶやくと、うつむいてしまった)
侑「歩夢?」
侑(歩夢の髪に触れようとすると、顔を上げた。目が少し潤んでいる。頬を撫でようとしたら、手を振り払われた)
歩夢「私、信じてたんだよ」
歩夢「今朝、約束したよね。一緒に変わろうって」
歩夢「私、信じてたんだよ。侑ちゃんのこと、信じてたんだよ。信じてた、のに……」
歩夢「どうして、約束破ったの……。好きでもないのに、かすみちゃんと付き合って……。ひどいよ……」
歩夢「一緒に、変わろうって、約束したのに……。ゆ、指切りも、したのに……。どうして……」
歩夢「侑ちゃん、どうして……」
侑(歩夢は涙声になり、次第に涙をぽろぽろと流していた。大粒の涙が頬を伝い、スカートにこぼれ落ちた)
侑(歩夢の表情に私はとても興奮した)
273
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 09:59:41 ID:fvv89IYw
侑「ごめんね、歩夢」
侑(目に溜まった涙を指でそっと拭う。頬に触れると、涙でうっすらと濡れていた。歩夢の瞳は私をずっと見つめていた)
歩夢「どうして、約束破ったの……。今朝、指切りで約束したのに……。約束したばかりなのに……」
歩夢「私を何度も裏切って、ひどいよ……。さっきも、私の目の前でかすみちゃんとキスして……」
歩夢「ねぇ、侑ちゃん……。私がどんな気持ちで……2人のキスを見てたと思うの……?」
侑「ごめんね」
侑(もう一度謝ると、私は歩夢の頬にキスした。キスの味は涙でしょっぱかった)
歩夢「謝るならしないでよ……。わ、わざと見せつけるように、キスして……私の反応を見て、楽しんでるの……?」
歩夢「私、信じてたんだよ……?」
歩夢「今度こそは……って、信じてたのに……」
歩夢「平気で約束破って、また裏切って……。どうして、そんなひどいことができるの……」
侑(そんなに私を信じてくれてたんだね。嬉しいよ)
侑(好きな人の泣いてる姿を見て、喜びや興奮を感じてる私は異常なのかな?ううん、私は正常だよね)
侑(「約束破ってごめん」と言いながら、歩夢を抱き寄せる。歩夢は胸に顔を埋めた。相変わらず好きみたいだ)
274
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 10:05:16 ID:fvv89IYw
歩夢「侑ちゃん……」
侑「うん?」
侑(歩夢の頭を撫でながら微笑む。歩夢は顔を埋めたまま話を続けた。制服の胸部分が涙で濡れてるのがわかる)
歩夢「私、不安なの……。これ以上裏切られたら、侑ちゃんを信じられないかもしれない……」
歩夢「侑ちゃんを信じたいのに……好きな人を、恋人を、信じ、たいのに……。ぅ、うぅ……」
歩夢「……っ。ぐすっ、ひっく……」
歩夢「侑ちゃん、私を……」
歩夢「私を……信じさせて……」
歩夢「二度と約束を破らないって、裏切らないってこの場所で誓ってよ……。お願いだから……」
侑「歩夢……」
侑(歩夢の抱きしめる力が強くなる。どんな表情をしてるかわからないけど、きっと涙でくしゃくしゃだろう)
侑(ふふ、かわいいなぁ。顔を見れないのが残念だよ)
275
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 10:13:56 ID:fvv89IYw
侑「歩夢、不安にさせてごめんね」
侑「何度も悲しい思いをさせるなんて、恋人失格だよね。ごめんね。もう絶対に約束破らないから」
侑「浮気なんてしない。歩夢を裏切ったりしないから」
侑(歩夢はゆっくりと顔を上げると、やはり涙を流していた。唇にキスしたかったが、なんとか我慢した)
侑(キスする代わりに、頬を優しく撫でる。歩夢はくすぐったそうに目を細めた。かわいい)
歩夢「信じていいの……?」
侑「うん。私が言っても説得力ないと思うけど、信じてほしい。今度こそ歩夢に相応しい恋人になってみせるよ」
歩夢「侑ちゃん……」
侑(涙を拭い、嬉しそうに微笑んだ。私も微笑み返すと、歩夢は私の右手を掴んだ)
侑「歩夢?」
侑(歩夢の目を見る。瞳には軽蔑の色が強く浮かんでいた)
侑(そして、小指を握ると、躊躇することなくへし折った。ぽき、と小さな音がした。手の甲に指がくっつきそうだった。私はその光景をただ見つめていた)
276
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 10:25:09 ID:fvv89IYw
侑(最初は何が起きたのかわからなかった。でも、折れた指と、歩夢の軽蔑に満ちた瞳を見ると、歩夢が折ったのだと理解した)
侑(痛みがじわじわとやってくる。指に触れると、激痛が走った。顔が苦痛に歪んでいるかもしれない)
侑(汗が、涙が止まらない。自分の意思と関係なく涙を流すのは久しぶりだった。こんなに痛いとは思わなかった)
侑(昨日のは痛みよりも苦しさの方が強かった。今回の痛みは想像を絶するものだった)
侑(小指が折れただけなのに……)
侑(小指には触れられないから、手首を押さえる。歩夢と目が合った。無表情で私を見つめていた)
歩夢「嘘つき」
侑「わ、私は嘘、なんて……」
侑(途切れ途切れ言うと、歩夢は折れた指を強く握った。声にならない悲鳴をあげそうになるも、口を押さえられ、小さなうめき声にしかならなかった)
歩夢「嘘つき、嘘つき、嘘つき。そんな薄っぺらい言葉でまた私を騙そうとしたんだね」
歩夢「昨日、約束を破ったら、絶対に許さないって言ったよね。だから侑ちゃんが全部悪いんだよ」
侑(歩夢は微笑んでいる。私も同じように微笑み返そうと思うも、痛みで苦笑いにしかならなかった)
277
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 10:34:30 ID:fvv89IYw
歩夢「反省してるなら、今回限りは許そうと思ったよ。だけど、侑ちゃんには反省の色が全然見られないんだもん」
侑「あゆ、む――」
歩夢「――侑ちゃん」
侑(歩夢の声は酷く冷たかった。怒った歩夢は何度も見てきたけど、これほど怒ってるのは初めて見たかもしれない)
侑(歩夢はこれまで、私に危害を加えたことは一度もなかった。浮気をしても、叱られるだけだった)
侑(喧嘩をしたとしても、手を出すことは絶対になかった。歩夢はそういうことはできない優しい子だと思っていた)
侑(今回の件で、歩夢の堪忍袋の緒が切れてしまったみたいだ。優しい歩夢でも、ついに我慢の限界を超えた)
侑(まるで小枝を折るように、私の小指を何の躊躇もなく折っちゃうんだもんね。歩夢に指を折られるのは構わないけど、痛いものは痛い)
歩夢「痛い?」
侑(歩夢は微笑みながら問いかける。「痛くないよ」と言った。私の声は震えていた)
歩夢「痛いよね。でもね、私の方がもっと痛いよ」
歩夢「好きな人に何度も裏切られて、私の心は痛みでいっぱいだよ。大好きな人に裏切られる気持ち、わかる?」
歩夢「わからないよね。わからないから平気で約束を破ったり、裏切ったりするんだもんね」
278
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 10:46:26 ID:fvv89IYw
歩夢「これはお仕置きだよ。侑ちゃんに対するお仕置き」
歩夢「そして、警告。二度と浮気をしないようにね」
侑「……」
侑(歩夢を見つめる。涙で視界が歪んでいてよく見えないけど、声色や話し方を聞く限り、上機嫌みたいだ)
歩夢「言葉でわからないなら、行動で示すしかないもんね。今までの私は優しすぎたんだと思う。だから侑ちゃんも調子に乗っちゃったんだよね」
歩夢「何度も浮気をしても、謝ったら許してた。いつか変わってくれるのを信じて、ずっと待ってた」
歩夢「それだけだとダメだったね。恋人の私が正してあげないと」
歩夢「片方が間違えたのなら、もう片方が正せばいい。それが恋人の正しい姿なんだよね。ただ愛し合うだけが恋人じゃない。その事にようやく気づけたよ」
歩夢「私が侑ちゃんの歪んだ心を、きちんと正してあげるからね。歪んだ方法でしか愛情表現ができない――」
歩夢「かわいそうな侑ちゃんを、私が元に戻してあげる」
歩夢「二度と浮気をしたいなんて思わないように、私のことだけしか考えられないように」
侑(歩夢の言葉に、胸の鼓動が早くなるのを感じた。私は何も間違えていなかった。私は全て正しかった)
侑(これでようやく、私の想いが叶ったよ。歩夢が元に戻ってくれた。前よりも更に歪んで状態になって)
279
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 10:59:45 ID:fvv89IYw
侑(歩夢の言う通りだよ。片方が間違えたのなら、もう片方が正せばいい。それが恋人の正しい姿だもんね)
侑(歩夢が間違えそうになったから、私が正したんだよ。歩夢は私のために変わろうとしてくれたけど、そんなの私は望んでいなかった)
侑(歩夢は今のままで十分に魅力的なんだからさ、変わる必要なんてない。私に相応しい彼女になりたいなら、もっと束縛したり、愛してくれるだけでいいんだよ♪)
侑(さっきまで小指に激痛が走ってたのに、いつの間にか痛みが和らいでいた。痛みよりも快楽の方が勝っていた)
侑(歩夢の愛情表現だと思ったら、痛みなんて全然感じないよ。えへへ、なんか頭がふわふわしてきた)
侑(歩夢、歩夢、歩夢♡)
侑(私は歩夢にキスをしていた。最初は歩夢も驚いていたが、腰に手を回し、舌を絡ませてきた)
侑(ちゅぷちゅぷと舌と唾液を絡ませ合う音が図書室に響く。人に見られる心配もあったけど、そんなのはどうでもよかった。私はただ歩夢とキスしたかった)
侑(3分近くキスしてたと思う。唇を離すと、どろっとした唾液が糸を引いていた。こんなに長いキスは久しぶりだった)
侑(肩でゆっくりと息をする。垂れた唾液を指で拭い、口に含むと甘かった。歩夢の唾液は甘くて大好きだ)
侑(さっきよりも頭がふわふわしてる。キスをするだけでとても幸せな気持ちになれた)
侑(それにしても、歩夢は本当にキスが上手になったよね。昔は私の方が歩夢にキスの仕方を教えてたのに)
侑(付き合い始めの頃は、舌を絡めるのも恥ずかしがってたっけ。歩夢の成長を実感できて、私の頬は自然と緩んでいた)
280
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 11:08:58 ID:fvv89IYw
歩夢「侑ちゃん?」
侑(不思議そうに私を見つめる。私は微笑み、歩夢の髪を優しく撫でた。シャンプーの香りがふわりと漂った)
侑「歩夢、大好きだよ」
歩夢「私も大好き」
侑(歩夢は私に顔を近づけ、頬にキスをした。キスされた部分が少しずつ熱くなっていくのを感じる)
歩夢「ごめんね。指、痛かったよね」
侑(私の指をそっと握る。小指の付け根が紫色に変色していた。こんな短時間で腫れるものなんだ)
歩夢「私だってこんなことしたくないよ。だけどね、全部侑ちゃんのためなんだよ。わかってくれるよね?」
侑「わかってるよ。今までごめんね。これから先、歩夢には絶対に悲しい想いなんてさせないから」
侑(これは本音だ。もう浮気をする必要はない。だって、歩夢は私だけを見てくれるはずだもんね)
侑(私が浮気をしないように、ずっと監視しないといけないもん。他のことを考えてる暇なんてないよ♪)
侑(歩夢の悲しい顔が見れないのは残念だけど、しかたないか。歩夢の笑顔も同じくらい好きだから、それで我慢しよう)
侑(歩夢は頷くと、私に小指を差し出してきた)
281
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 11:16:51 ID:fvv89IYw
歩夢「今度こそ約束しよう?」
侑(歩夢は微笑みながら私を見つめている。いつもの癖で右手を出そうとしたが、左手の小指を差し出した)
侑「歩夢、一緒に暮らさない?」
歩夢「へ?」
侑(歩夢は顔を真っ赤に染め、ぽかんとした表情をしていた)
侑「卒業するまでどっちかの家で一緒に暮らして、卒業したら2人で部屋を借りようよ。小さなアパートでもなんでもいいからさ」
歩夢「き、急だね。いきなりでびっくりしちゃった」
侑「急じゃないよ。ずっと前から考えてた。歩夢と一緒に暮らしたいなって。歩夢は私と暮らしたくない?」
歩夢「そういうわけじゃないけど……」
侑(歩夢は差し出した小指を引っ込め、もじもじとさせていた。このしぐさも本当にかわいい)
侑「一緒に暮らしてくれないなら、また浮気しちゃうかも」
侑(私が悪戯っぽく微笑むと、歩夢は顔をムッとさせた。さすがに本気じゃないとわかってるらしい)
282
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 11:25:53 ID:fvv89IYw
歩夢「そうしたら、次は左手の小指を折っちゃうよ?」
侑「歩夢になら何本でも折られていいよ」
歩夢「侑ちゃん?」
侑(歩夢は頬を膨らませ、こちらを見つめている。私は「ごめん」と謝り、頬を優しく撫でた)
侑「冗談だよ。あ、一緒に暮らしたいっていうのは本気だけどね。私と一緒に暮らしてくれる?」
侑(歩夢は顔を真っ赤にさせてうつむいた。えっちもキスもしてるし、ほくろの数だって知ってる仲なのに、一緒に暮らす程度で今更恥ずかしがる必要なんてないと思うけどな)
侑(そのまま見つめていると、歩夢はゆっくりと顔を上げ、頬を赤らめながらコクコクと頷いた)
侑「いいの?」
歩夢「……うん。私も、侑ちゃんと一緒に暮らしたい。卒業したあとも賛成だよ。2人でいい部屋探そうね」
侑「ありがとう」
侑(私は微笑み、もう一度小指を差し出した。歩夢も恥ずかしそうに小指を差し出す。そして、指を絡めた)
侑(歩夢の指は、やっぱりいつ見ても綺麗だった)
283
:
◆RZWV3S9lzE
:2022/12/12(月) 11:37:36 ID:fvv89IYw
侑(指切りの約束を終えると、どちらからともなく、唇を重ねた。歩夢とキスする瞬間が一番幸せだ)
歩夢「もう約束破ったらダメだからね?」
侑「もちろん♪」
侑(私達はもう一度キスをした。今度は舌を絡めるキスで、さっきよりも濃厚だった)
侑(音で気づかれちゃうかもな。まあ、いいか)
侑(今は歩夢とのキスを楽しもう)
侑(目をつぶってキスに集中する。私はふと、心の隅からドス黒い感情が沁み込んでくるのを感じた)
侑(歩夢と約束したんだ。もう浮気なんてしない。する必要がない。それはわかってるのに――)
侑(また浮気をしたらどうなるんだろう。次は指だけじゃ済まないかもしれない。大変なことになるかも)
侑(もっと愛してくれるかもしれない。もっとお仕置きしてくれるかもしれない。そう考えると、ドス黒い感情は更に膨れ上がった。なぜか心がときめいていた)
侑(馬鹿は死ななきゃ治らないって言うけど、本当かもね)
侑(目を開けると、歩夢も同じように目をつぶっていた。私は心の中で歩夢の名前を何度も呼んだ)
侑(歩夢、歩夢、歩夢。大好きだよ――)
侑(私の“歪んだ愛情”は、もう自分の意思では止められそうにないみたいだ。私は再び目をつぶり、歩夢とのキスに集中した。――もっと愛してね、歩夢。私はただ、歩夢に愛してほしいだけなんだよ♡)
おしまい
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