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Desperado Chariots

1 ◆L6OaR8HKlk:2021/03/28(日) 22:38:02 ID:1hwLgNFI0
新連載です。よろしくお願いします

727 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:33:48 ID:pdeLbfIc0
クワイエットの『矢』がつがれ、鏃がBlack Sheepの眼前へと向けられる。放たれれば一撃貫通は免れない
射線から逃れようにも、D-Octの拘束を振り解かねばならない。これはクワイエットのような『腕』という抵抗手段の無い車体にとっては至難の技である
人同士の取っ組み合いで例えるなら、掴まれた側が身体の押し引きだけで逃れようとするものだ。掴んでいる側は当然、放さないように追随する
離脱の為に必要な動作は、『腕』自体にダメージ与えて彼方から手放すようにするか、あるいは瞬発的な動きで振り払うかである
『自転車』を始め『乗り物全般』において、動物的な瞬発力を発揮するのは至難である。その殆どは、効率的な車輪運動を実現するため段階的に加速する設計がされているからだ
では、Black Sheepは成す術なく額を貫かれ、横っ腹を串刺しにされてしまうのだろうか?
Desperado Chariotsは十話にして、選択肢をミスったギャルゲーのように呆気なく最終回を迎えてしまうのだろうか?否―――――


「前門の王者、側面の蛇!!Black Sheep万事休……いや、アレはーーーーーーーーッ!!!!!!!」


Black Sheepの車体が高速回転。四点を捉えていた爪は、弾けるように振り解かれる
同時に発射された矢は、6shooterの砲身を僅かに削り逸れていく
D-Octからの離脱と射線切りと並行して、側面から迫るバジリスクに標準を合わせ


「Black Sheepここでフルバースト!!しかし!?」


残り五発を全弾発射。元チームメイトだった文彦の才能を知るバジリスクはこれを読んでいたのか、ハンドルを切って回避
Black Sheepは回転が収まるのを待たず、ガムシャラにその場から離れる。戦況はこれでまた平衡に戻った


「バジリスク躱すーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!Black Sheepも絶体絶命の状況から逃れた!!」

「ヒリつく騙し討ちですね。これね、普通の胆力じゃできませんね」


(;@з@)そ「うおーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!惜しいでござる!!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「いや、かなり余裕を持って避けてるよ」


盛岡の言う通り、バジリスクは早い段階で首を振っていたが、それでも観る者に『惜しい』と思わせるほどにギリギリの回避であった

728 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:35:38 ID:pdeLbfIc0
(;@з@)「『当たらなければ、どうという事はない』でござるか?」

(´・_ゝ・`)「そうだね……バジリスクは予め文彦くんの実力を把握してる分、警戒の度合いも段違いだ。二回戦までは初見殺しが通用してたけど、これからはそうはいかないだろうね」


砲塔の回転よりも遥かに早く、車体ごと砲口を向けられるのだ。相手からすれば不意打ちに等しい、言わば『未知の挙動』
『予測可能回避不可能』というネットスラングにあるように、スピンミキサーによる高速エイムは予測だけで回避できるような代物ではない
求められるのはジョッキーの直感力。ある種、未来視にも等しい『避け勘』を培わねばならない


(´・_ゝ・`)「流石、国内二位の実力と言ったところかな。それに……」


バジリスクのキャプテンである『宝木 蕗也』は新たなジョッキーに、徳雄の過去に関わりある人物を指名した
プロ選手でありながら、三対一、それも相手はキャプテン落ちという圧倒的な戦力差で臨みながら、公衆の面前で屈辱的な敗北を喫した、ネットニュースにすら上がった半年前の一戦
Black Sheep結成前から『擬似的な6shooter+スピンミキサー』の砲撃を、その身と頭に刻み込まれた唯一の対戦相手


(´・_ゝ・`)「『腐っても鯛』、か」


バジリスクの新ジョッキー『高城 貴虎』。対文彦攻略の要として、これ以上無い人材であった

729 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:37:33 ID:pdeLbfIc0
(;@з@)「半年の間で見違えたのは、宇都宮氏だけでは無いのでござるな……」

(´・_ゝ・`)「ドン底から這い上がった人物は例外なく強くなるものだ。それを見越した采配だとすると、宝木選手はかなりの切れ者だよ」


事実、文彦との対戦前の高城は、蟒蛇所属でありながらパッとした成績を残してはいなかった
アマチュアより才能はあったのだろうが、プロの世界では掃いて捨てるほどでしかなく、そのまま埋もれていくだけの選手だった筈が
『あの日』をきっかけに弾みをつけ、今や突進力と回避力を併せ持つ、蟒蛇筆頭チームの一員である
バジリスクは彼の採用によって、因縁にせよ技術面にせよ、Black Sheepにとって最も手強い相手と成ったのだ


(;@з@)「文字通り、藪を突いて蛇を出してしまったわけですな」

(´・_ゝ・`)「上手いねぇ。座布団一枚」


盛岡は木本という善性とコミュ力に溢れた有能との束の間のストレスフリーな会話に人知れず癒された

730 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:38:35 ID:pdeLbfIc0
「さぁ仕切り直しですEブロック予選最終戦。Black Sheepは距離を取りながらリロードに移っております」

「長いリロードタイムはね、6shooterの弱点でもありますね。うん。しかし……えー……内藤選手、凄まじい早撃ちですね」

「この隙をどう凌ぐかが、チームの力量を……おっと!?」


Black Sheepの進路を妨害するかのように地面が爆ぜる。クワイエットとバジリスクを警戒して少し離れた場所に降り立った他チームが、この機を逃さんと砲撃を開始した


「Black Sheepへ集中砲火!!休む暇は与えられません!!」


(´・_ゝ・`)「どのチームかな?」

(;@з@)「59番『歩苦歩苦』、8番『インビジブル』、31番『三木ONE』にござる!!」


Black Sheepに向かって正面、変形機能を持つ『歩苦歩苦』。右側面に光学迷彩装甲によるステルス戦法を得意とする『インビジブル』
そして左方に車体を黒と赤のカラーリングで二分し、砲塔に二つの円形レーダーを耳のように搭載した、何がとは言わんがミッキーマウスを彷彿とさせる『三木ONE』が待ち構えている
尚、2121年現在、黒赤カラーのミッキーはパブリックドメイン化している為、杞憂は不要である


(;@з@)「クワイエットはっ……!!」


クワイエットは背を見せたBlack Sheepを深く追うことはしなかった
この場に置いて最も警戒しなければならない脅威が、すぐ側で鎌首を擡げているのだ。これを無視して羊を追えるほど、大蛇は優しくはない
それはバジリスクにも言える事であり、この二大チームはBlack Sheepの離脱によって膠着を余儀なくされた


(;@з@)「よし!!」

(´・_ゝ・`)「後門の虎は避けられたか……」


共闘の可能性は万が一であったが、二人はひとまず胸を撫で下ろす。最悪の状況は免れた
1対3の戦況ではあるが、クワイエットかバジリスクのどちらかと対峙するよりは遥かにマシなのだ
Black Sheepは脇目も振らず、正面の歩苦歩苦へと突っ込んで行く。無勢に置いても一切の躊躇いも見せなかった


(´・_ゝ・`)「キマってんね。合宿の成果か」


『歩苦歩苦』は某機動戦士をイメージした白、青、赤のカラーリングが特徴のアマチュアチームである
主砲も長射程高威力を誇る『ビームキャノン』を搭載しており、その弾道はショッキングピンクの閃光を描く
先ほどBlack Sheepを狙った砲撃に、そこまで目を惹くものは無かった

731 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:40:09 ID:pdeLbfIc0
(´・_ゝ・`)「撃ち損ねているね。チャンスだ」

(;@з@)「しかし、食らえば一撃死でござるよ」

(´・_ゝ・`)「さっき言ってたろ?『当たらなければどうと言うことは無い』って」


ビームキャノンは高威力を誇る反面、再装填に時間が掛かる主砲である為、牽制として気安く使うにはリスクがある
このような主砲は、長距離からのスナイプで仕留める『ワンショットワンキル』を主として立ち回らねばならない。相手の砲撃が届く場所にいる時点で、その強みを殺してしまっているのだ

そしてもう一つ、ビームキャノンには致命的な弱点がある。砲弾が光を放つ『光線』であることだ


「歩苦歩苦、向かってくるBlack Sheepへ発射!!しかしこれを難なく避ける!!」


ビームキャノンは発射時、砲身の奥からせり上がるように発光するという特徴がある。マズルフラッシュのような瞬間的なものではなく、『動作の溜め』に近い挙動だ。正面から対峙した場合、発射タイミングが他の主砲よりも掴みやすくなる
原作再現としてのこだわりであったが、こと実用においては『あからさま過ぎる予備動作』として大いに足を引っ張る要素なのだ


(;@з@)「あっ……」


流れ弾は後方のクワイエットとバジリスクの間を通り抜け、更に奥の一際大きな建造物を貫く
瓦礫と共に建物内に眠っていたであろう書物の紙吹雪が舞い上がり、そこに身を潜めていた複数のチームが慌てて飛び出した
睨み合いから解かれた二強は、標的を移し替えてそれぞれ撃破へと向かう―――――


(;@з@)「『違う』!!!!」


否、狙いは『いつでも殺せるような雑兵』ではなく、紙吹雪と共に舞った『一つの書物』


(;@з@)「『トレジャー』でござる!!!!!!!!!!!!」

(;´・_ゝ・`)「オイオイマジか……」

732 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:41:26 ID:pdeLbfIc0
『トレジャー』。ステージ内に点在する超強力なアイテム。ボス級エネミーから確定でドロップする物もあれば、建造物や洞窟、宝箱の中でひっそりと眠っている物もある
入手難易度によってグレードや効力に差はあるが、優位に立つために是が非でも手に入れたい強力な代物である。それが今、クワイエットとバジリスクの手が届きそうな場所で、光輪を纏いはためいている


「早々に現れた円落街のトレジャーの一つ『魔導書アーウィン』!!強力な召喚獣を一定時間使役出来る効果を持っています!!心強い味方!!是非とも手にしたいところ!!」

「下手なボスクラスエネミーより厄介な相手となりますね。何といってもね、倒した所で得るものはありませんからね」

「クワイエットかバジリスク!!どちらかが手にすれば均衡が崩れるのは必須!!しかし届くか間に合うか!?」


(´・_ゝ・`)「いや、こっち見てる場合じゃないよね」


盛岡は少しの狼狽こそ見せたが、国内二強と数多の強豪たちによるトレジャー争奪戦からBlack Sheepへと視点を戻す


(;@з@)「そ、そうでござったな」


木本も『絶対面白い所でござるよ!?』という言葉を辛うじて飲み込んだ

733 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:42:56 ID:pdeLbfIc0
(´・_ゝ・`)「おっと、少し目を離した隙に……」


Black Sheepはワイヤーを使い、歩苦歩苦を引き摺り回している最中であった
固定砲である6shooterの照準を素早く合わせる手段である1コストアビリティ『スピンミキサー』
抜群の汎用性でサポートが可能な3コストアビリティ『ブラックマーケット』
そして残りを、『副砲』兼1コストアビリティ『ハープーン』で埋めた
ワイヤーを結びつけた銛の発射とウィンチによる巻取りが可能で、射程はおよそ10メートルと短いが
取り付け位置を自由に決められるのと、広い視界を持つキャプテンが発射を担うという利点を持ち
尚且つ1コストという手軽さもあって、使い勝手の良い装備として広く重宝されている
これをリアに取り付け、牽引能力を獲得。『押す力』であるチャージの他に『引く力』も扱えるようになった


(´・_ゝ・`)「それにしても……」


牽引に求められるのは足腰の『粘り強さ』。水泳を中心としたスタミナトレーニングに注力した徳雄には、それを引き出すインナーマッスルが十分に備わっていた
そこに着目したBlack Sheepの参謀、木本が提案した『ハープーン』は、ブスの持ち味を存分に活かせる最後の1ピースとして収まったのだ


(´・_ゝ・`)「すごいね」

(;@з@)「はぁ…………」


そう、罪人を市中で見せしめにするべく引き摺り回すかの如く―――――


(;@з@)そ「いやここまでするとは想定してはござらんよ!!!!!!!!???????」

734 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:44:46 ID:pdeLbfIc0
幾ら徳雄がブスの化け物と言っても、フルパーティの車体を縦横無尽に振り回すのは無理がある
木本も、ハープーンはあくまで後続の走行妨害や装甲の一部分を引き剥がすといった補助的な役割担うものとして提案したのだが


(´・_ゝ・`)「いやでも、ハンマーみたく振り回してるけど……」


Black Sheepは孤を描くように走行し、繋がれた歩苦歩苦は廃墟を巻き込みながら振り回されている
その様を、キャプテンの本八はハッチにしがみつきながらゲラゲラ嗤った。人が苦しむ様を娯楽として楽しめるタイプのクズである。こういうクズはインターネットに広く棲息しているので特段珍しくは無かった


(;@з@)「幾らハープーンのワイヤーが強靭といえども、耐荷重というものがあるでござる!!いえ、それより先に装甲が剥がれるのが先……」

(´・_ゝ・`)「ならカラクリがあるね」

(;@з@)「待てよ……歩苦歩苦の主力アビリティは確か……『ムーングラビティ』!!車体に掛かる重力を一時的に6分の1まで軽減する能力!!それを発動しているならあれだけ振り回されるのも説明が付きますぞ!!」

(´・_ゝ・`)「しかし見ての通り、今の状況下での重力軽減は歩苦歩苦にとって悪手でしかない」

(;@з@)「となれば、アイテムによってアビリティを強制的に発動させられたのでござろう。該当するのは恐らく……『暴発剤』にござる」


『暴発剤』。キャプテンがハッチから投擲して使用する手榴弾型アイテムである。これを浴びせられた車体は、最も重たいコストのアビリティを一回限り強制的に発動させられる
妨害系のアイテムとしてシンプルかつ優秀な性能ではあるが、接近しなければ届かない点や、暴発したアビリティに巻き込まれて自滅するリスクがある為、使い所は限られる


(;@з@)「運動補助系アビリティへの効果は的面でござるな」

(´・_ゝ・`)「さぁ、ここからどう返すか……」

735 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:46:05 ID:pdeLbfIc0
歩苦歩苦は遅きに失した。ハープーンに捕えられた時点で、すぐさま装甲を捨てて離脱するべきであった
『振り回される』という未経験の攻撃に、冷静さを欠いた歩苦歩苦のキャプテンはようやく判断の遅れに気づき、反射的にハープーンが突き刺さった装甲部位をパージする


(´・_ゝ・`)「あーあ……」


解放はされたものの、今度は地面を転げ回るハメになる。ムーングラビティの効力も切れ、石畳と装甲の摩擦で火花を散らしながら建造物へと突っ込んだ
瓦礫と土埃に埋もれた車体は横転し、土手っ腹を曝け出している。そこにトドメと言わんばかりに6shooterの砲撃が一発撃ち込まれた


(;@з@)「よし!!ファースト……」


「ファーストキルはなんとVIP Library!!泥男を堕としトレジャー獲得!!二強を出し抜いた!!」


(;@з@)そ「ああ〜!!惜しかった〜!!」

(´・_ゝ・`)「一歩出し抜かれたか。しかし、『競うのは早さじゃあない』」

(;@з@)「そ、その通りでござる!!」


歩苦歩苦の流れ弾が口火を切ったトレジャー争奪戦の盛り上がりと比べ、Black Sheep側の戦況は目立つものでは無かった
ダークホース扱いと言えども、優勝候補の二強と比べれば霞む存在で、実況の目が向いていたのも正直な話『オマケ扱い』に寄る所が大きい


(´・_ゝ・`)「さて、乗ってくれるかな……」


本八の策は、ここからが本番であった

736 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:47:16 ID:pdeLbfIc0
―――――
―――



一方その頃。徳雄、文彦の両名と馴染み深い彼らもまた、Eブロックの行末を観戦していた


「バジリスク、VIP Libraryを撃破ァァァ!!同時に、クワイエットも召喚竜『ジャバウォック』を撃退!!早い、早過ぎる!!これが国内二強の実力かァァァ!!!!!」


(,,゚-゚)「すげー」

(´・_・`)「バジリスクが一枚上手だったな。面倒をクワイエットに押し付けた」


鬼ヶ村スポーツセンターねぐらのオーナーにして、二人の世話を焼いた教官。そして作中一の敏感乳首を持つ薄顔マッチョ『小練 詩音』と、ゲロゲロに甘やかされたが故にデロデロの自己肯定感の塊と化したメスガキ『儀杜 しずく』である
現在、彼らはEブロック最終戦を三画面展開で眺めていた。一つはフィールドカメラで全体の戦況を。残りはそれぞれクワイエットとBlack Sheepのフォーカスカメラである


(´・_・`)「そんでこっちも……」


Black Sheepも実況のマークから外されたものの、歩苦歩苦撃破後に結託した三木ONE、インビジブルも立て続けに撃破。現在、キル数トップである


(´・_・`)「見事なもんだな」

737 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:48:40 ID:pdeLbfIc0
(,,゚-゚)「宇都宮くんのチームは元から攻撃力はあったんでしょ?」

(´・_・`)「それに加え、キャプテンのアシストも光ってる。あのやり方はカラス戦術の『源流』だ」

(,,゚-゚)「源流?」

(´・_・`)「今でこそカラス戦術は蔑称として知られてるが、『Three Robbers』っつーチームが考案した『ワタリガラス戦術』が元となってる。彼らもバトロワで鳴らした猛者でな。NPCには目もくれず、次から次へとプレイヤーを撃破していく様からそう呼ばれるようになった」

(,,゚-゚)「カラス戦術って、アイテムを買い溜めするやり方って言ってたよね?荒稼ぎ無しでどうにかなったの?」

(´・_・`)「言わずもがな、ザコNPCよりプレイヤーを狩る方がGの稼ぎはデカい。1チームにつき1アイテムだけ使用するなら、プレイヤーキルだけでギリギリ賄えんだよ。Three Robbersのキャプテンは、その時々に応じて最適格なアイテムを見極める選択眼に優れてた。荒稼ぎの枠を他のアビリティで埋めることで戦術の幅を広げていたんだ」

(,,゚-゚)「それって有名な話なの?」

(´・_・`)「いいや。当時は『蠱毒』のようなバトロワの大型大会が無かったのもあり、Three Robbersは日の目を見ずにひっそりと引退した。カラス戦術の由来も、環境が荒れたことで歪んだ形で後世に伝わっちまった。俺もこの話は三浦さんから聞いて初めて知ったからな」

(,,゚-゚)「じゃあ三浦のおっちゃんの差金かな」

(´・_・`)「だろうな。普通に考えて辿り着ける答えじゃあねえ。あのオッサン、よっぽど大潮の旦那を気に入ってんだろうよ」

(,,゚-゚)「変わってんね」

(´・_・`)「そうだね」

738 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:49:57 ID:pdeLbfIc0
(´・_・`)「しかしわっかんねえな……」


二回戦の戦果とカラス戦術による挑発を小練も見抜いてはいたが、真意までは未だ計りかねていた
予選の段階でクワイエット、バジリスクを堕とす腹積りであったなら、最序盤の誘い込みとカラス戦術は相性が悪い
ブラックマーケットは資金が尽きない限り汎用性を発揮する息の長いアビリティだが、瞬発火力に置いては劣る。短期決戦を挑む気であるなら、悠長に小銭を稼いでいる暇はない
アイテムの買い込み目的で大勢を誘い出す算段だったのなら、序盤での接触は避けたい二強を呼び出すのは逆効果だ。現に中途半端な数が安全地帯周辺へと散り散りになっている
そもそも、今のBlack Sheepの実力なら、セオリー通り過疎地からじっくりと安全地帯を目指すやり方でも危なげなく予選を突破出来る筈である


(´・_・`)「んー……」


単純に目立ちたいからという理由も、本八の人物像を鑑みればあり得なくはない。一見くだらなく思えるが、実力の誇示は立派な戦術の一つである
クワイエットやバジリスクが真っ先に狙われないのと同じく、周りに脅威であると知らしめることで、競合相手から狙われる確率を減らせるのだ
だがBlack Sheepは実績のないルーキーだ。幾ら実力を見せつけようとも、彼らに並び立てるほどの迫力を放つのは難しい
むしろ危機感を煽り、要注意チームとして早々に処理すべきと判断され、狙われるリスクが増すこともある


(´・_・`)「いや、そもそも『目立たない』方が無理か……?」

(,,゚-゚)「また一人でブツブツ言ってる……」


6shooterという主砲は、性能を象徴する回転式弾倉を搭載した特徴的なビジュアルである
特徴的であるとは即ち、長所短所が一目でわかるという事。対処照準合わせの難易度はアビリティでカバーしたが、『有効射程』までは補えない
『射程で勝るのならば、手の届かぬ範囲から狙撃すればいい』。6shooterより射程の長い主砲など、数えれば切りがない。ほとんどのチームは、Black Sheepに対して埋め難いアドバンテージを握っているのだ
選手の能力はさて置き、車体の見た目から侮られると最初から理解していたBlack Sheepは、思い切って実力を誇示する方向へと舵を切ったのではないか。ここから導き出される答えは―――――


(;´・_・`)「まさかあいつら、舐められるのが我慢ならねえから見せつけたんじゃねえだろうな……?」

(,,゚-゚)「そんなガキみたいな理由ある?」

(;´・_・`)「少なくとも、あの中の一人はやりかねねえだろ」

(,,゚-゚)「あー……」


ブスのことである。ヤンキーはメンツにこだわるクソしょうもない生き物なのだ

739 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:50:42 ID:pdeLbfIc0
(,,゚-゚)「あ、また狙われだした」

(;´・_・`)「お、おお……」


Black Sheepへの『ヘイト』は鎮まることなく、二強と離れたことで散り散りになっていた他チームがこれ幸いと集い始めていた
ジャパンカップのルールはソロプレイ前提だが、利害一致による一時的な共闘は暗黙の了解とされている。よほど悪質で無い限り、咎められる事はない
既に三チームも下したBlack Sheepは、『私刑』の大義名分として通用するほど充分な脅威なのだ


(,,゚-゚)「ひーふーみー……うわ、完全に囲い込みじゃん」

(´・_・`)「……」


マップ上では、Black Sheepを取り囲むように複数のマーカーが動いている。建物の影や入り組んだ路の中など、すぐさま距離を詰められないような位置に陣取り始めた
姿を見せれば速攻で狩られるのは、先程の『デモンストレーション』で明らかとなっている。ワタリガラスに吹く追い風を阻む包囲網が出来上がりつつあった
と、ここで小練はクワイエットとバジリスク側の戦況にも緩やかだが動きがあるのに気づく。Black Sheepと同じく、彼らにも『囲い』が出来つつあった
この状況を訝しんだ彼は、少しの時間を分析に費やし、そして―――――


(;´・_・`)そ「あいつらマジかよ!!」

(,,゚-゚)そ「え!?何が!?」


Black Sheepの狙いに気付き、思わず大声を張り上げた

740 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:51:42 ID:pdeLbfIc0
歩苦歩苦の流れ弾が引鉄となり起こったトレジャー争奪戦。ジャパンカップ出場経験もある強豪VIP Libraryが、果敢にも二強に挑み返り討ちに遭った
だが、その無念を晴らさんと続々と各チームが集まっている。VIP Libraryの散華は決して無駄ではなく、挑戦者達に火を着けたのだ


「これは……ある意味、想定内の事態ではありますね」

「はい。強豪を蹴落とすならね、大勢が共闘出来る予選が一番成功確率が高いですからね。結果論ですが、密集が予想される地点に降り立ったのは不味かったですね」


実況解説の言う通り、格上に対して最も高い勝算を叩き出すなら予選で袋叩きがベストだろう。この予選三回戦は、一時的共闘という形で集団戦に持ち込める唯一の機会だ
これまで今回の状況が発生しなかったのは、競合チームが二強との接触に強い危機意識を抱いていたのと、密集地帯を避けるというセオリーがあったからである。もしも二強が過疎地帯からスタートしていたなら、まず発生しなかった状況なのだ
トレジャーの出現こそ偶然の産物だろうが、Black Sheepは『二強をまとめて密集地へ誘い込む』事に成功している。この段階で、『多数の囲い込みによる一網打尽』を想定させるシチュエーションを用意出来たのだ
何より、VIP Libraryよりも先んじて挑んだのは彼らである。一連のやり取り自体は、Black Sheepとクワイエットをよく知る小練にとっては『小手調べ』程度にしか見えなかったが
現役のプレイヤー達にとっては、『ポッと出のルーキーが、前年度の覇者と準覇者と対峙して生き残る』という快挙として映っている筈だ


(;´・_・`)「Black Sheepが生き残った時点で、クワイエットとバジリスクのイメージは『格落ち』したんだ。『俺らでもやれるんじゃねえか』と欲が出る程度にまでな」

(,,゚-゚)「でも実際に実力が劣ったわけじゃないよね?」

(;´・_・`)「たりめーだ。あん中にはコテンパンにされた連中もワンサカいるだろうよ。だが現に、戦況は二強とBlack Sheep撃破に動き出している。そういう『流れ』が出来ちまってるんだ」


恐らくは、彼らへの挑戦に内心警鐘を鳴らしているプレイヤーもいる事だろう。しかし、川の流れに逆らうのが困難であるのと同じく、一方向を向いた集団心理に抗うのもまた困難である
しかも、『全くの無謀』でないのも強く作用している。勝敗を左右する最も原始的な要素は、結局の所『数』なのだ。彼らはこの局面で、それを思い出した
その上、二強のどちらかを撃破したなら、本戦出場を逃してもお釣りが出る程の大金星である。知名度の向上に、これほどお誂え向きな獲物はそういない
魔境とも称されるEブロックが、大勢が手を組むことで早い者勝ちのボーナスブロックへと転じたのだ


(;´・_・`)「Black Sheepの狙いは、『1対1対1対その他』の構図に持ち込むことだったんだ」

(,,゚-゚)「待ってよ。それってドチャクソ不利じゃない?」

(;´・_・`)「勿論だ。『単体のまま』ならまず勝ち目はない。幾らクワイエットやバジリスクが化け物でもな。だが、この不利な状況を緩和できる、最も手っ取り早い方法がある」


「これは……嘘でしょう、我々は夢でも見ているのでしょうか!?あのクワイエットとバジリスクが!!宿敵である彼らが!!『背中を預け合っている』ッ!!」


(;´・_・`)「『一時的な共闘』だ」

741 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:53:01 ID:pdeLbfIc0
彼らが取ったのは合理的判断である。観客にしてみても、ライバル同士の共闘はボルテージが跳ね上がる最高のシチュエーションだ。だが当人達にとっては不本意であるに違いない。誘いに乗らなければこのような危機的状況に陥らなかったのだから
しかし、それぞれの聡明なキャプテンがこの展開を予測出来なかったとも考えづらい。こうなると理解した上で誘いに乗ったか。あるいは、日本一の頂を目指すライバル達の、内に燻る熱い野望を見くびったかの二択である
そして恐るべくは、本戦出場安全圏内にいた彼らを一転して窮地にまで追いやった大潮 本八の策と、『トレジャー出現』という火に注ぐ油を見事に掘り当てた強運だ


(,,゚-゚)「結局クワイエットとバジリスクを陥れただけで、Black Sheepに得はないんじゃないの?やる意味あった?」

(;´・_・`)「何言ってんだ。あいつらにだけ特大のメリットがあんだろうが。これで『国内No.1とNo.2から狙われることはなくなった』んだからよ。少なくとも、今はな」


彼らを陥れた張本人であるが、同じく窮地の立場にある。生き残る為に少しでも人手が欲しい状況で、憤りのままに潰しに走るのは合理的とは言えない。断腸の思いで受け入れる他ないのだ


(;´・_・`)「やるとするなら数が減った終盤、梯子外すみたく唐突に襲ってくる筈だ。だが、Black Sheepがそれをしないという保証もねえ。各々が眉間に銃を突きつけながら共闘するようなもんだ。しかも、この場合最も不利になるのは『クワイエット』だ」

(,,゚-゚)「なんで?」

(;´・_・`)「『強化手段が乏しい』。レースモードならステージクリア時のショップで安全に補給したり、NPCや他チームの撃破でアイテムを得られる事もあるが、今回はバトロワ。それも息つく暇もないであろうラッシュが予想される。敵の死体を漁ってる暇なんてねえんだ」


アイテムの入手は主にショップでの購入、NPC撃破時に確率でドロップ、撃破した車体から奪うという三つの方法がある
今回のバトルは参加数が多いことから、NPCの出現率は低く設定されている為、ドロップでの入手は望み薄だ
また、ショップに関してもステージ内の『隠しショップ』を見つけない限り購入は出来ない
プレイヤー撃破時にGこそ自動で支給されるが、アイテムに関しては撃破した車体に近づきBOXウィンドウを開く必要がある。大勢から襲われる中で、悠長に漁る暇など無いのだ


(;´・_・`)「Black Sheepは言わずもがな、ブラックマーケットで状況を選ばずショップを利用出来る。バジリスクもクワイエットと同じくアイテムの補給こそ出来ないが、『あのアビリティ』はキルを取れば取るほど強く使える蓄積型だ。あの三チームの中で、ただ消耗を強いられるのはクワイエットだけなんだ」

(,,゚-゚)「最後の狙い目を『移した』の?」

(;´・_・`)「そうだ。大潮の旦那は、終盤のリスクケアまで勘定に入れてたのさ」


怨みを買う首謀者でありながら、損する役回りは他所へと押し付ける。クズの体現者たる男、大潮 本八らしい悪どい手口である

742 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:55:19 ID:pdeLbfIc0
「Black Sheepに動きがありました!!煙幕です!!逃げの一手を打つ気でしょうか!!」


ブラックマーケットで買い込んだであろうアイテム、『スモークグレネード』の煙幕がBlack Sheepの車体を覆い隠す
包囲網を形成していた競合チームが、牽制の為に砲撃を放つ。側面装甲に被弾したのか、大きな火花が弾けたものの、致命的なダメージには至らなかったようで、フォーカス画面から口汚い罵倒が聞こえた
続け様にもう一つスモークグレネードが炸裂する。安全圏を中心に、色濃い煙が辺りに充満した
クワイエット、バジリスクはすぐさま車体を方向転換させ、煙の中へと飛び込み姿を隠す。彼らの背中を追うように砲弾が撃ち込まれるが、此方は空を切るに終わった
追撃はされず、示し合わせたように包囲網は縮まっていく。一時の静けさが訪れた


「煙が晴れるのを待って、一斉射で仕留める算段でしょうか。一方的な展開になりそうですね」

「そうとも限らないですね。少なくとも、三組にとって最悪の展開にはなってませんね」

「と、仰られますと?」

「一斉に飛び掛かられたらひとたまりもね、ありませんからね」


(,,゚-゚)「そうなの?」

(´・_・`)「ああ。煙に巻いたのが功を奏したな」


ゲームであれ何であれ、複数人から敵意を向けられるのは相当なストレスであり、戦わずして戦意を喪失させるのに最も効率的な手段である
一方で『数の優位』を握る側は、見えている勝ち目に戦意が大幅に上昇し、気も大きくなる。精神的余裕はリラックスに繋がり、パフォーマンスを引き出す助けにもなるだろう
しかし勘違いしてはならないのは、予選三回戦に置いて『集団の強み』が万全に発揮できるわけではないという事である


(´・_・`)「二強とBlack Sheep撃破の流れになった所で、結局個人戦であることにゃ変わりねえ。裏切りの可能性は全チームにある。なんせ、椅子は三つしか用意されてねえんだからな」

(,,゚-゚)「そんな上手くいかないってこと?」

(´・_・`)「集団を『組織』として機能させるには、指揮官の役立が不可欠だ。だが指揮を執り行うには主従関係や明確な役割をハッキリさせないとならない。対等な立場で一時的に手を組んでいる中、一人だけ偉そうに指図する奴が出てきたらどう思う?」

(,,゚-゚)「ぶっ殺す」

(´・_・`)「え、嘘……そんな嫌?ともあれ指示に従ったら自分だけ損をするかもしれない、騙されるかもしれないという疑念は常について回る。競い合う相手である以上、避けては通れないもんだ」

743 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:56:16 ID:pdeLbfIc0
全員が蹴落とし合うライバルであることが、集団の強みである『結束』を形成できない原因となっている
この点に関して言えば、逆境の立場にある三組に分がある。現状打破の為に手を組む必要があるのは共通しているからだ
もしも彼らが、終盤まで誰一人裏切ることなく試合を終えたとしても、それぞれが決勝の椅子に収まるだけで損をする者はいない
しかしそれ以外のチームは、三組を排除し終えた後にもゲームは続く。予選三回戦の勝利条件は、撃破した数や質ではなく『生存』だ
結託もあくまで、勝率が極めて高い脅威を排除して、椅子を空ける為の行動に過ぎない。目的は、『その椅子に座ること』なのだから


(´・_・`)「三組にとって最悪の展開は、解説が言ったように全員が後先考えずにガムシャラに突っ込んでくることだった。指揮の必要もなく、シンプルに物量差で押し潰されるほど怖いもんはない。だがこれも煙幕で出鼻を挫かれた。『様子見』という余地を与えられたことで、揃いも揃ってバカになり損ねてやがる」

(,,゚-゚)「これも計算のう……」

(´^_^`)「当たりまえだぜッ!!このJOJOはなにからなにまで計算づくだぜーッ!!」(ほんとはちがうけどカーズがくやしがるならこういってやるぜ。ケッ!!)


二世紀前の漫画の場面が出た


「ですが、突っ込みたくない気持ちもね、わからなくないですね。あの煙の中にいるのは三頭の虎ですからね」

「安全圏から砲撃で仕留めたいという気持ちがあるわけですね」

「はい。そう易々とね、やられるようなチームじゃないですからね」

「さぁ、煙が晴れようとしています。誰が先に……おっと!?」


(,,゚-゚)「出た!!」


膠着を解いたのは、三組からであった。先頭をBlack Sheep、その後をクワイエットとバジリスクが横並びで追走する
三角形のフォーメーションで、より多くの敵が集まっていた『Black Sheep側』の集団へ向かって突撃する


「Black Sheepが先陣を切る!!二強を差し置いて今回初参戦のルーキーが!!『俺が主役だ』と言わんばかりに突っ込んで行くーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」


(´^_^`)「ハハ!!違いねえ!!」

744 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:11:14 ID:pdeLbfIc0
Black Sheepは前面装甲に『ゴートヘッド』を採用した。砲弾を弾き易い頭蓋骨のような丸みと、軽量クラスでありながら高い硬度を誇る攻防一体の鎧である
中、低威力の砲撃なら数発喰らっても影響は少ないが、先のビームキャノンのような大型砲の一撃には心許なく、防ぐにはアイテムやアビリティによる補強が必須となる
長所はあるがなんて事のないありふれた装甲で、これを一撃で貫ける大型主砲もまた、ありふれている
元より足りない物を補い続けるのがワタリガラス戦術。しかしBlack Sheepは直前にスモークグレネードを二つ購入している。闇市場を賑わせる資金は、とっくに底を尽きていた

その代わりを、後ろの二車輌が担った


「クワイエット、バジリスクの同時発砲!!9番男魂魂(だんこんこん)大破!!25番エスパーク撃破!!」


バジリスクの主砲から放たれた砲弾は、二度の跳弾の後に男魂魂の左側面に直撃し、破裂する
辛うじて撃破は免れたものの、装甲とキャタピラに重大なダメージが残り、戦闘継続は困難となった
クワイエットの矢は真っ直ぐ飛翔し、今まさに放たれようとしていたエスパークの砲口へと吸い込まれるように飛び込んでいく
砲身が鏃に沿って花が咲くように裂けていき、矢に先端が砲弾の雷管と接触し内部で暴発。爆発と共に砲塔が吹っ飛び、走行不能となった


「高火力を誇る2チームが瞬殺!!だが弾幕は避けられない!!どうする気だーーーーーーー!!!!!!!!?????」


二強が撃破したのは、その集団の中で最高の火力を持つ2チームである。言わば、『必要最低限の削り』であり、後の対処は各々の手腕に委ねられる
前後方から三組へ向けて疎に砲弾が発射される。共闘する意識こそ同じだが、息を合わせて一斉射とはいかなかった
それでも十分に脅威だが、着弾までそれぞれにラグがある。百戦錬磨の二強にとって、やり過ごすのは容易かった


「クワイエット!!物ともしない!!降り注ぐ砲弾を四つ脚で捌くーーーーーーーーーーーッ!!」


クワイエットは四脚装甲『D-Oct』を展開し、飛来する砲弾をパンチングの要領で弾いていく
耐久値は平凡なD-Octだが、『装甲』である事に代わりない。中でも先端の四つ爪は、握りしめることで強度を増し、中威力程度の砲撃なら受け流せる


(´・_・`)「いつ見ても凄まじいな」


しかし、音速を越える砲弾を『殴り弾く』など、普通に考えれば現実的ではない。闇雲に振り回せば万に一つの確率で弾けるだろうが、クワイエットは飛来する砲弾を一つ一つ確実に防いでいる
チートの使用を疑うほどの神業は、キャプテンの長いプレイ歴によって培われた『当て勘』によるものだ
敵対車輛の位置や砲撃距離から割り出される着弾のタイミングや位置を、大体の感覚で捉えて爪を『置き』に行く。彼女はこれを四脚全て同時に操作して防いでいる
無論、D-Octの耐久値は徐々に削られる上、一撃の威力が大きな砲撃には一溜りもない。バジリスクのような跳弾による変速軌道を描く砲弾や、Black Sheepのような超高速連射は被弾する事もある

それでも、この唯一無二の防御術はクワイエットが絶対王者たる所以であった

745 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:13:20 ID:pdeLbfIc0
「そしてバジリスク!!『ウルトラファントム』を発動!!砲弾は虚しく空を切るーーーーーーーーーーッ!!」


2コストアビリティ『ウルトラファントム』。0.3秒間だけ車体を透過させる回避アビリティ
砲弾は当然のこと、進路場の障害物をすり抜けて通過する事が出来る。言わば、『無敵』の状態になれる
発動タイミングはシビアであり、90秒という長いCTを要する為、使いこなすのは至難だが、ランク上位勢の中では一定数の使い手がいるトップTierアビリティである
バジリスクは回避行動を取ることなく、着弾ギリギリのタイミングでウルトラファントムを発動し、弾幕を無傷で潜り抜けた
発動が早くても遅くても完全な回避は不可能で、これもまた長いプレイ歴によって培われた『見切り』の能力による賜物であった


「そしてBlack Sheepは……こ、これはーーーーーーーーーッ!!!!!!?????」


文彦こそ二強に引けを取らない『射撃』という類希なる能力を有しているが、これまでメンバーに恵まれなかったキャプテンである本八のプレイ歴は浅く、ジョッキーの徳雄に到っては半年程度である
膂力、攻撃性こそ特出しているが、応用的な技術は身に付いておらず、またアビリティも強力とは言いがたい


「躱しながら突っ込んでいく!!多少の被弾を物ともせず、弾幕の嵐の中を突っ切っていくーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」


あるのは基礎的な操縦技術と、『やられたら殺してでもやり返す』という病的なまでの意地である


(;´・_・`)「あいつスイッチ……」


「衝突ーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!55番天炎BOYZ、大きく吹っ飛ばされるーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


(,,゚-゚)「すげー」

(;´・_・`)「うーわやってるわ…………」


集団の懐に入ったのは、六連射が可能な近距離最速の獰猛な獣である。6shooterの射程に入りさえすれば、一方的に殴られるだけだった黒羊は一変して『鬼』と化す
それだけに止まらず、後からはクワイエットとバジリスクが追いついてくるのだ。初撃で仕留め損ねたツケが何倍にもなって跳ね返ってくるに等しい
ゲームを支配する大潮 本八は、被弾して凹みが目立つ装甲の上で、生来の性悪さを感じさせる下劣な笑い声をあげた。そして―――――

746 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:13:53 ID:pdeLbfIc0




(#´^ω^`)「皆 殺 し だ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」




これから起こす惨劇を、声高らかに宣言したのだった

747 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:14:40 ID:pdeLbfIc0
―――――
―――



同時刻、鮨屋『くおうち』にて


@#_、_@
 (  ノ`)「終いだね。消しとくれ」

( ゚д゚ )「いいのか?まだわからんぞ」

@#_、_@
 (  ノ`)「時間の無駄さね。既に場が『呑まれちまってる』よ。多少は保つかと思ったが、とんだ期待外れさ」

( ゚д゚ )「相変わらず手厳しいな、千母(ちほ)」


窮屈そうにカウンターに座る、身の丈2メートルを越すパンチパーマ・マダムは、脂の滴るようなトロ・マグロスシを一度に二つ食べた


@#_、_@
 (  ノ`)「アンタのお気に入りのボウヤだけが、大局を見据えたゲームプランを企てていた。クワイエットもバジリスクも、まんまとしてやられたね」

( ゚д゚ )「私はあまり褒められたものじゃないと思うがな。彼らもその気になれば、初対面で狩ることも出来ただろう」

@#_、_@
 (  ノ`)「本当にそう思うのかい?」


三浦が浮かべた苦笑いの返答に、彼女は剛気にガハハと笑った


@#_、_@
 (  ノ`)「相変わらず嘘のつけない野郎だね。仮面を被ってた頃が懐かしいよ。しっかし、アンタがそこまで肩を持つたぁ意外だね」

( ゚д゚ )「『我々』のファンと言われちゃあな……多少の情も湧いてくるもんさ」

@#_、_@
 (  ノ`)「ハハハ!!そりゃ、大衆に嫌われた甲斐があったってもんだよ!!」

748 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:17:10 ID:pdeLbfIc0
三浦が淹れなおした熱い茶を、喉を鳴らして飲み干した千母は、湯呑が叩き割れんほど強く叩きつけた

@#_、_@
 (  ノ`)「嫌になるねえ、新時代!!ロートルは忘れ去られ、新たな勇士が時代を築く!!逃れられない新陳代謝さ!!」

( ゚д゚ )「よく言うよ。四十年近く現役を続けている『生きる伝説』と呼ばれるお前が」


『SASUGA×FAMILY』のジョッキーにして、元『アンラ・マンユ』メンバーである流石 千母は、猛獣が震え上がるほど獰猛な笑みを浮かべた

@#_、_@
 (  ノ`)「私はね、勘違いした若造共に身の程を理解らせるのが生き甲斐なのさ。この身体が朽ち果てるまで、チャリオッツから降りる気は無いよ」

( ゚д゚ )「いい趣味していらっしゃるな……」


かつての戦友の悪癖に溜息が漏れるが、年々落ちていく彼女の戦績を思うと、半ば意地もあるのだろうと察せられた
チームを解散してそれぞれ別の道を歩み、結婚して子どもが産まれ、人生の折り返しを過ぎて尚、千母だけがチャリオッツの第一線へと喰らいついている
稀有な女性ジョッキーでありながら、男性顔負けの体躯を活かした古強者。彼女の挑戦は、誰しも逃れることのできない『老い』への挑戦なのだ

@#_、_@
 (  ノ`)「長居しちまったね。ごっそさん」

( ゚д゚ )「まいど。ご家族にもよろしくな」


電子決済で会計を済ませた彼女は、ビニール風呂敷に包まれた家族への手土産を取って席を立つ。去り際に一度だけ振り返って、こう訊いた

@#_、_@
 (  ノ`)「紘一。『トップ・ギア外部顧問』のアンタから見て、次のジャパンカップはどこが勝つと思う?」

( ゚д゚ )「クワイエットだ。それがどうした?」


淀みのない即答に、今年度ジャパンカップ本戦出場チームのジョッキーはギラリと眼光を光らせた

@#_、_@
 (  ノ`)「楽しみにしてると、伝えとくれ」

( ゚д゚ )「ああ」

749 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:19:01 ID:pdeLbfIc0
三浦は軽く洗い物と、『夜の貸し切り営業』に向けた簡単な仕込みを済ませた後、再びホログラムビジョンを起動させた
千母が去ってから二十分ほど経過しただろうか。映像内では既にゲームは終了し、ハイライトシーンと共にEブロック突破チームの名が映し出されていた


( ゚д゚ )「『期待外れ』ね……」


目の肥えた千母が、早々に見切りをつけた気持ちもわからなくはない。Eブロックの前評判は、そう簡単に覆るものではないのだから
だが三浦は、徳雄、文彦に修行の場を与え、本八に『ワタリガラス』というアンティーク戦術へ繋がる助言をした張本人は、彼女とは真逆の感想を抱いていた


( ゚д゚ )「たった半年でここまでとはな……『期待以上』だ」


クワイエット、バジリスクと並ぶもう一つの名前。彼の胸中には誤魔化しきれない歓心と、少しの後悔が湧き上がった


( ゚д゚ )「Black Sheep……なるほどな」


『暗雲』を形容する名を背負った連中が、かつての自分を深く抉ったあの景色が見たいと宣った不躾な男が、かつての自分と同じ舞台に立つ
紛れもなく自身が導いてしまったダークホースは、大晦日の戦場を荒しまわる『災害』を思わせる程に成長してしまったのだ


( ゚д゚ )「これは、楽しみだな」


クワイエットの偉業を阻む存在を招き入れた後悔以上に、『チャリオッツファン』としての興奮は膨れ上がっていく一方だった
かつてないほどの激戦を目の当たりに出来るだろうという期待に、三浦は思わず顔を綻ばせてしまう


( ゚д゚ )「おっと、まずいまずい」


強敵の出現に喜んでいては、外部顧問として示しがつかない。一先ず気持ちを切り替えて、『クワイエット予選突破祝勝会』に向けた準備に取り掛かるのであった

750 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:19:47 ID:pdeLbfIc0
かくして、魔と称されたEブロック予選は幕を閉じ


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ハーッハ!!お客さん!!あれね、俺が名付けたチームなんすよ!!」

爪*'ー`)「え!!!!!????アレは私の教え子とダチが所属してるチームなのだが!!!!!!????」

⌒*リ*´・-・リ 「もしもし、しずくちゃん?観てた?勝ったよ!!」


たった三席の出場枠は


(,,゚-゚)「観てた観てた。先生もご満悦だよ。事件解決した後のぬ〜べ〜みたいになってる」

(´^_^`)「よーし、ラーメンでも食いに行くかーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


大衆の期待を裏切ることなく、クワイエットとバジリスクが


(;@з@)「フゥー、気が気ではござらんかった……」

(´・_ゝ・`)「ハハ、本戦が思いやられるね」


そしてBlack Sheepという『異物』も同じく、その席に着いた


(* ФωФ)「母さん!!文彦がやったぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

川*д川「今夜はあの子の大好物、トンカツのバター漬けよーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

751 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:20:27 ID:pdeLbfIc0
彼らの予選での活躍は、メディアでも大々的に取り上げられ


i!iiリ゚ ヮ゚ノル ♪〜


あのハヤテの話題を一時的に霞ませるほどの騒ぎにまで発展した


(,,;Д;)「うおおおおおおおおおおおん!!!!!!うおおおおおおおおおおおん!!!!!!文彦ぉ!!お前は俺の誇りだァ!!!!!!」

(’e’)「カスカスカスカスカスカスカスカスカスカス」

从;゚∀从「ちょ……落ち着けって……こんな両極端の反応になることある?なぁ、モラっち……」


( ・∀・)「ウフフフフフフフ」


从;゚∀从そ「うおお!!お前が一番キメェーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

752 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:25:33 ID:pdeLbfIc0
数日後、第四十四回ジャパンカップ予選の全日程が終了した


 Aブロック出場チーム

・ネイキッド・オッキイ・オッパイ・ダイスキー
・レッドシューズ
・バーダラ・ブギ

 Bブロック出場チーム

・ハヤテ
・ムシキング
・SUPER VOYAGER

 Cブロック出場チーム

・SASUGA×FAMILY
・朧
・センチピード

 Dブロック出場チーム

・シュガー&スパイス
・トリプルスレット
・禁愚堕霧(キングダム)

 Eブロック

・クワイエット
・バジリスク
・Black Sheep

 Fブロック

・OVER ZENITH
・Thunder Bird Rider
・A to Z


参加総数36216チームから勝ち抜いた、日本のTOP18チームが出揃ったのだ
本八がジャパンカップ制覇を志して三十二年。仲間に恵まれず、指を咥えて眺めるしかなかった夢の舞台まで



残り一か月半にまで迫っていた



.

753 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:27:24 ID:pdeLbfIc0
次回予告


(´・ω・`)「実に、長かった。あまりにも、長すぎた」

(´・_ゝ・`)「黙れゴミカス!!いよいよ本番が近づいて来ましたが、その前に一仕事ですね」

(´^ω^`)「取材に記者会見とやること目白押しだ!!おい!!あの豚は絶対にメディアに露出させるなよ!!炎上待ったなしだ!!」

(´・_ゝ・`)「実は、予選が終わってすぐに配信活動を始めてしまったようです」

(;´^ω^`)「終わった……………………」

(´・_ゝ・`)「登録者数と再生数は、どちらも片手で数えられるほどではありますが」

(´^ω^`)「ギャハハハハハハ!!!!!!!!誰もオタクのキモ豚になんざ興味ないってのが数字で表れてんなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「マジで仲悪いなお前ら」

(´^ω^`)「ジャパンカップの醍醐味はゲームだけじゃねえ!!バチバチのトラッシュトークバトルも見物なんだよなぁ!!」

(´・_ゝ・`)「徳雄くんに到っては獏良くんとの決着、そして高城選手との因縁がありますからね」

(´^ω^`)「くぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!血が見てぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「どこで争わせようとしてんだよ」

(´^ω^`)「次回、『Desperado Chariots』第十一話!!『フェイス・オフ』!!」

(´・_ゝ・`)「大晦日まで、何事も無ければいいですね」

(´^ω^`)「無理じゃね?」

754 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:46:22 ID:pdeLbfIc0
オマケ

チーム名由来集

・Anker Take
( ^ω^)はあらゆるチート使いと戦うようです
モララーが嫌

・青春真っ只中!!
('A`)は青春真っ只中です
オタクブスが急に美少女と同棲するのが嫌

・VIP Library
ζ(゚ー゚*ζあな素晴らしや生きた本のようです
ニュッくんの煮え切らない態度が嫌

・DDDD
/*゚、。 /だし!だし!ダイオードだし!のようです
こさえたガキを他人に預けてる分際で殴られたから殴り返したジョルジュとかいうカスが死ぬほど嫌い
こんなクソ野郎口から内臓出るまで蹴り飛ばして然るべきだろ何一発貰っただけでダウンしとんねん刺し違えてもぶっ殺すくらいの気概見せんかい

・北猛那
( ´∀`)ぼくはモナー
女が軒並み嫌だしデブは嫌通り越して最悪

・厄姫連合
lw´‐ _‐ノv厄姫様は別に不幸では無いようです
読んだことない

・Good Bad Normal
よい('A`)わるい( ゚∀゚)ふつうの( ^ω^)のようです
顔は悪いんじゃないですかね?

・歩苦歩苦
会員制おさんぽクラブ「歩苦歩苦(ほくほく)」のようです
レストランが最悪

・インビジブル
( ^ω^)は見えない敵と戦うようです。
"無貌の怪物(インヴィジブル・ステルス)"が嫌

・三木一
( ・∀・) ミッキ一マウスの力を借りて戦うようです
ディズニーネタを使ったら消されるみたいな風潮が嫌
蒸気船ウィリーはパブリックドメイン化したんだから今後はガタガタ抜かすなよ

755 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:50:10 ID:pdeLbfIc0
・CHERRY CHASER
童貞鬼ごっこのようです
原作は追われる側じゃねえかって思ったけどめんどいからこのままいった

・泥男
泥男はいないようです
沼男おるやんけ。タイトル詐欺か?人を舐め腐るのも大概にせえよ

・マッハブロー
音速パンチのようです
ブスとデブに彼女いたり恋の予感がするのが嫌

・天炎BOYZ
(´・ω・`)しょぼんはあまえんぼうのようです
子どもが酷い目に遭うのが嫌

・拳応
( ^ω^)が拳の王となるようです
幼稚園児の割に語彙が達者

・コタツとキング
( ^ω^)(´・ω・`)('A`)こたつ話のようです
ブスがなよなよしてて嫌

・七大生徒会
( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
デブの分際で十字架の首飾りしてるのが嫌

・Three Robbers
何がとは言わんがそういう話があった

・男魂魂
(*‘ω‘ *) < 男根根
男根は流石にチャリオッツ運営も許さなかった

・エスパーク
川 ゚ -゚)エスパークーのようです
エスパークスってなんだよ結局

756 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:52:25 ID:pdeLbfIc0
終わりですお疲れさまでした
本戦出場チーム名の由来は後日発表します

今日NIKKEのアップデートしたらロビー画面からソラが消えました

757名無しさん:2025/07/19(土) 17:48:38 ID:dHVtCBt20
おつ!

758名無しさん:2025/07/19(土) 21:00:46 ID:yv3TNJwI0
ワクワクしてきた おつ
誤爆といいチーム名由来集といい色んなとこに喧嘩売りまくるのも草

759 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 20:56:12 ID:.buPtdi60

ジャパンカップ予選を、『二強との共闘』というドラマチックな形で突破したBlack Sheepだったが、世間の評判は芳しくはなかった
それというのも、やはり『出る杭は打つ国民性』というのが大きな要因の一つであった。日本国に限った話では無いかもしれないが、『推し』を持つスポーツファンはしばしば熱狂しやすい。良い意味でも悪い意味でも
惜しくも予選敗退となったチームにはそれぞれ
ファンがいて、本戦での活躍を見られなかった彼らの鬱憤は『格好の的』へとぶつけられた。その殆どが、名も実績もない新参者の目を張るほどの活躍への懐疑的な『お気持ち』であった
本八が日本有数の資産家であるのもマイナスに働いた。しばしばネット民は、金と権力を持つ者が都合の良いように世界を支配していると、『都合良く』解釈してしまう。Black Sheepの活躍も、大いなる邪悪の力によってもたらされた物だという、根も葉もない噂も流布された

同じく新参でありながら破竹の勢いで予選を突破した『ハヤテ』だが、此方は肯定的な意見と優勝への絶大な期待を寄せられている。立場こそ同等の両者だが、扱いの差は明確であった
そう、言うまでもなくビジュアルである。一方は国宝クラスのアイドルグループで、もう一方はドブでも眺めてた方が遥かにマシな連中だ。どちらが好印象かなど、問うまでもない
元から知名度に大きな差があるのも要因だった。人気アイドルグループの挑戦は、当然各メディアで大々的かつ好意的に取り上げられる。対してBlack Sheepは参羽鴉グループとは全く関係のない一個人の新造チームである。本八が経営者であろうとなかろうと、周囲へ告知する必要も意味もない
最初から好印象スタートで始まったハヤテはヒーローとして持て囃され、片やビジュアルと活躍が悪い意味で目立ったBlack Sheepは相対的にヒールとして扱われるようになった


(´^ω^`)「やったぁ!!」


やったぁだった


そしてもう一つ、Black Sheepの評判を著しく下げる出来事が起こっていた

760 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 20:57:16 ID:.buPtdi60



第十一話



『フェイス・オフ』



.

761 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 20:59:04 ID:.buPtdi60
(´・ω・`)「『宇都宮 徳雄、荒れた学生時代。当時の同級生へ電撃取材』」


本八はホログラムディスプレイをスワイプする


(´・ω・`)「『同門、獏良 良樹への嫉妬か?ヒルクライム大会での事故と宇都宮 徳雄の密接な関係に迫る』」


またスワイプする


(´・ω・`)「『名門サッカー部員が暴露。合宿中に見せた宇都宮 徳雄の問題行動』……」


ウィンドウを閉じ、天井を見上げた


(´・ω・`)「キリねぇな……」


自然と溢れ出たボヤきに、隣で座る徳雄は肩を竦めた


('A`)「暇人って多いんだな……」

762 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:00:20 ID:.buPtdi60

宇都宮 徳雄は、ヘドロとゲロのシェイクを腐乱死体にぶっかけたような顔面から、イジメの標的にされる為に産まれてきたような男である
彼はその境遇を腕っぷし一本で捩じ伏せ、気が済むまで殴り、その『自己防衛』を大人たちにはバレないように狡猾に立ち回ってきた
徳雄に痛い目に遭わされた者は数多く存在し、その数だけ恨まれている。そんな彼がジャパンカップの本戦に出場するとなれば、是が非でも貶めたいと願うだろう
その結果が、三流ネットニュースメディアや暴露系配信者によって広められている数多のスキャンダルである。無名だった徳雄は、瞬く間に本八を凌ぐ悪名高い男になったのだ

だが、規模こそ大きいものの深刻な問題へと発展してはいなかった


(´・ω・`)「笑えるぜ。話が『盛れ過ぎて』信憑性が薄いと思われてるなんてな。ザコ顔面が功を奏したじゃねえか」

('A`)「羨ましいなら取り替えてやろうか?」

(´;ω;`)「ヒグッ……い、嫌だぁ……こんな顔になるくらいならケツをほじくり返された上に死んだ方がマシだぁ……」

('A`)「ハァ…………」


顔のとんでもないゲロブスさにばかり囚われてはいるが、徳雄は本来真面目で謙虚な性格である。どこかのイキリおじさんのように、過去の『ヤンチャ』をさも武勇伝が如く酒の席で語ったりはしない
だが実際やってきた事は、イキリおじさんの悪行すら霞む暴力行為の数々である。それを包み隠さずありのまま伝えたとしても、一見小柄で如何にもいじめられっ子な徳雄が起こしたものとは信じられない。人は見た目で判断する生き物であるからだ
この信憑性の無さ故に、徳雄がどれほど暴れようとも人畜無害な弱者男性として扱われ続け、提供された情報の数々は、大手メディアが見向きもしないようなゴシップとして扱われているのだった
しかし現在はネット社会。人間のド汚い悪意の見本市であるSNSというドブの薄汚い住民には、信憑性があろうとなかろうと関係ない。『疑わしきは罰せよ』と、アンチ活動は徳雄の悪評を薪にして更に大炎上した


(´^ω^`)「めっちゃ炎上しとるけど感想は????????」

('A`)「炎上って何?」

(´^ω^`)「お前本当に現代人??????????」


当の本人はどこ吹く風である。顔の見えない匿名の誰かにネット上で叩かれようと、そもそもSNSをやっていない徳雄にとっては対岸の火事であった。賢明なブスである

763 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:01:13 ID:.buPtdi60
本来ならBlack Sheep陣営は声明を出すなり開示請求をするなり、然るべき対処を行い事態の沈静化を図るべきだが、いかんせん本戦までの時間がない
アンチの目的は、攻撃対象の破滅である。Black Sheepにとっての破滅は、ジャパンカップへの出場停止に他ならない
『ならもう本人に効いてる様子もないし本戦終了まで放っといていいんじゃねえの?』が、彼らが下した狂気の決断であった


(´・ω・`)「これでデブに飛び火しねえのが凄いよな……」

('A`)「あいつなんか悪いことしたの?」

(´・ω・`)「性格が悪い」

('A`)「文彦もアンタには言われたくないだろうよ……」

(´・ω・`)「それにな、情弱のオメーは知らねーと思うが、インターネットってのはイキってるだけのガキにもよーく噛み付くんだ」


世間知らず故にビックマウスな小中学生、語彙と教養の無い罵倒を繰り広げるティーン配信者。果てはあざといだけの子役にすら攻撃対象にするのがSNSというドブの薄汚い住民である
全人類から嫌われる為に産まれてきたような豚が、悪評を一身に集めるBlack  Sheepのメンバーと公言すれば、ありとあらゆる方面から攻撃されるのは目に見えている
豚も豚で、ブスほど脛に傷を負っているわけではないが、蟒蛇の早期脱退や、才能を鼻にかけた立ち振る舞い、そして汚いキモオタの豚の分際で人気絶頂のアイドルグループのリーダー、猫山 義古の従兄弟であるなど、突ける箇所は幾らでもある
その他に取り上げられるとするならば、唯一の取り柄であり、辛うじて存在理由にもなっている射撃の腕前である。此方はまだポジティブな話題となる可能性も無くはない
これだけの材料が揃っていながら、予選突破後に許可なく行った配信では、なんと同接4人、視聴回数9回という目も当てられない結果に終わったのだ。9回!!!!!!!!!!!??????????多くね!!!!!!!!??????????
個人の初配信ならこんなものでは?と思う者もいるかも知れないが、豚も出場したEブロック最終戦の最大同接人数がおよそ150万人である。これは国内二強であるクワイエットとバジリスクの存在が大きかったが、彼らと肩を並べたBlack  Sheepもこれだけの人数に認知されているのだ
にも関わらず、豚の配信がまっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったく伸びなかったのは、単に配信の才能が無いか、世間が豚個人などこれっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぽっっっっっっっっっっっっっっっっちも関心が無いか、あるいはその両方である
『好きの対義語は嫌いではなく無関心』を見事に体現した配信だった。因みに同接4人の内訳は木本、両親、猫山と、夏合宿で仲良くなった男子アーティスティックスイミング部のキャプテンである。身内や友人から視聴されているだけ恵まれているのだが、承認欲求に飢えた性格ブスの豚がそのありがたみに気づく筈も無かった

764 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:04:34 ID:.buPtdi60
とは言え、Black  Sheep陣営にとっては急死に一生であった。万が一配信がバズってしまえば、文彦も攻撃の対象となってしまう
文彦はクズのようにアンチが増えて大喜びするような逆張りのキショい変態おじさんでもなければ、ブスのように無関心を貫けるほど強メンタルでもない
寝食を惜しんでSNSでのエゴサは当たり前。とにかく世間から認められたくて仕方のない『特別』に強い憧れを持つ身の程知らずの豚である。オタクは日陰で慎ましく生きて人知れずくたばっとけや
そんな子どもが、殆ど事実であるとは言えアンチによる攻撃を目の当たりにすればどうなるかは、想像に難く無いだろう
本八と徳雄が特別悪意に対しての耐性が強いキチのガイなだけであって、多くの人間は見ず知らずの他人の、軽い気持ちで投稿された誹謗中傷で心に深い傷を刻まれるのだ。それは驚くべきことに、人語を介する豚である文彦も同じであった
『膨大なバッシングによる、文彦のジャパンカップへのモチベーション消失』こそ、Black  Sheep陣営にとって最も避けねばならない事態。文彦の無許可配信は最大の危機だった

幸いにも伸びなかった配信は文彦に多大なショックを与えたが、それは単なる無関心に寄るもので、明確に拒絶を突きつけられたのではない。つまり、『本戦で優勝すれば世間に認められる』とフォローできる範疇だったのだ
親友の木本と、豚に嫌な顔せずに話し掛けられる稀有な女性である高梨、そしておってもおらんでもあんま変わらへん榊原の尽力により、文彦はどうにか立ち直った
後は文彦がアンチの攻撃対象にならないように、『秘密兵器』という体の良い言葉で本戦まで目立たぬようにひた隠しに努めた。本人には、『本戦が終わるまで我慢してくれ』としっかりと釘を刺すのも忘れていない
本戦が終わればクソ生意気で不愉快なデブのオタク豚が燃えようが叩かれようがのたれ死のうがどうなろうと知ったこっちゃ無いので、それまでの辛抱であった。家畜の豚さんより手の掛かる豚であった


('A`)「まだかよ……」

(´・ω・`)「そろそろ来るんじゃねえの」


この日も、チャリオッツ界隈最大のメディア『月刊チャリオッツ』の取材が入っていたが、文彦の姿は無い
うまいこと皆鳴ミセリのポップアップショップの開催初日と重なっていた為、木本に多めの小遣いを握らせて連れ出して貰っているのである。豚には丁度いい目眩しであった
後でブヒブヒと耳障りな文句を鳴かれるのは目に見えているが、取材の中で射撃の腕を少し褒めれば木に登るのは目に見えているので、二人とも大して気にはしなかった

一方で、文彦と違って悪い意味で注目されている徳雄は、担当記者からの要望で渋々連れ出された
その担当記者というのが、二ヶ月ほど前に名刺を受け取った顔見知りだったのだ。律儀な徳雄は無碍には出来なかった

765 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:05:46 ID:.buPtdi60
('A`)「ハァ……」

(´・ω・`)「まぁ楽にしとけや。向こうはプロなんだし、適当に受け答えしても上手いこと捏造してくれるだろうよ」

('A`)「捏造はダメだろ」


今回は半ばBlack Sheepの本拠地になっている『OHANAMI』ではなく、高級茶房『天華』の一室を貸し切っている
『最上級のおもてなしを日常に』をコンセプトにしたこの店舗は、記念日のちょっとした贅沢や、アルコールを苦手とする取引先との接待、海外から派遣された要人との会談の場として幅広く活用されている
全席個室のプライバシー空間で、料亭ほど畏まる必要も無く、比較的リーズナブルな値段で最高級の和菓子、和食を味わえるとあって、国内外問わず人気を博していた


(´・ω・`)「なんか……頼むか?」

('A`)「カレーある?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「味噌ラーメンあります?」

(´・ω・`)「ねえよ」

('A`)「大したことねえな……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ガッカリですよねえ」

(#´゚ω゚`)「もしもし開発部!!!!!!!?????天華の新メニューに相応しいカレーと味噌ラーメンを今すぐ考案しとけや!!!!!!!!!!!!ブスとクソアマに舐められたままで堪るか!!!!!!!!!」


オッサンガキなんですぐムキになった

766 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:06:59 ID:.buPtdi60
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「はい、それじゃあ始めちゃいますかぁ?」

(´・ω・`)「よろしk…………………」

('A`)「…………」


(;´゚ω゚`)そ「うおおヌルッと現れるな!!!!!!!!!!!!なんだオメェ!!!!!!!!!??????」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ご無沙汰してます青葉 青花です!!この度はお時間割いて頂きありがとうございます!!」

(;'A`)「し、心臓に悪いんだよ毎度毎度……」


二人が気付かぬ間に『ぬらり』と上座に着いていたのは、夏合宿最終日の打ち上げにも(何故か)参加していたフリージャーナリストの『青葉 青花』である
相変わらずの神出鬼没振りに、結構呑気していた本八と徳雄の心臓は早鐘を打った。そんな事などお構いなしに、青葉は座卓に内臓されたメニューウィンドウを立ち上げる


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「好きなの頼んじゃっていいですか?朝から働きづめでなーんにも食べて無くて。お、このフルーツ大福なんて良さげですねぇ。オプションで金箔付けられるのマジ?奢りじゃないと出来ないですねぇこんな贅沢」

(´・ω・`)「無敵か???????」

('A`)「そんなんだからしずくに嫌われてんじゃねえの?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「私はあの子好きですけどねぇ。なんで嫌われてんでしょうね?まぁ、妬まれるほど可愛い自覚はありますけどね」

('A`)「すげえなアンタ」

(´・ω・`)「小練先生の周りにゃ愉快な女が大勢いるな」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まだまだこんなもんじゃ無いですよぉ〜?」

('A`)「なんで自慢げなんだよ」

(´・ω・`)「照明に集まる蛾か???????」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まぁまぁヤな喩えですが、否定できないのも悔しいですねぇ……」

767 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:07:46 ID:.buPtdi60
青葉は運ばれてきた季節のフルーツ黄金大福(4個入2200円+金箔料5000円)を抹茶で流し込むと、『さて』と切り替えて、自動運転式小型ドローンカメラを飛ばし、テキストアプリとボイスレコーダーを立ち上げた


(#´゚ω゚`)「味わえや…………」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「え?美味しかったですよ?金箔は正直いりませんでしたけど」

('A`)「いいからとっとと始めてくれ」


ぞんざいにも映った食べ方に、自社の商品に並々ならない情熱と偏愛を持つ本八はブチギレ寸前までいったが、隣の徳雄が脇腹に肘を打ち込んで事なきを得た ※本八は死んだ

768 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:10:37 ID:.buPtdi60
と、出だしで一悶着あったので、取材も滞るのではと懸念した徳雄だったが


(;'A`)「……」


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ブラックマーケット採用の決め手は何でしょうか?」

(´・ω・`)「ご存知の通り、ウチのメイン火力である6shooterはピーキーな主砲です。強みと弱みがハッキリしていて、予選三回戦まで勝ち上がった強豪たちにとっては対策も打ち易い。そこでブラックマーケットの汎用性に着目しました」


一度始まってしまえば、すぐさま考えを改めた。スムーズかつ端的なやり取りは、二人が紛れも無い『業界人』であることの証明で、一介の若造である徳雄はすぐさま置き去りにされた
本八は丁寧な口調で身振りを混え、訊かれた質問にあらかじめ回答を用意していたかのように澱みなく返答した。
青葉は記事の下地となる文章を打ち込みながら、時折人差し指をトンと弾ませ、様々な画角から遠隔操作でカメラのシャッターを切った
まるで既に編集を済ませたインタビュー映像を見ているかのような、絶え間ない言葉の応酬。ぽつねんと取り残されていた徳雄だったが、遂に手番が巡ってきた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それでは宇都宮さん、よろしいでしょうか?」

(;'A`)「アッワッハイ」


ちいぶさである ※なんかちいさくて救いようのないブス

769 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:22:08 ID:.buPtdi60
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「宇都宮さんのチャリオッツ歴は僅か半年とお聞きしましたが、始められたきっかけをお聞かせ願えますでしょうか?」

(;'A`)「……」


思えば、この半年間は徳雄の人生において最も色濃い日々だった。隣にいる元凶と始めて出会ったのは、職場のトイレであった


【/;,' 3「金なら払う!!!!!!!金なら払うーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」】


普通に最悪の誘い方だったのを覚えている


【(´^ω^`)「自転戦車やれやァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」】


その最悪をずっと更新し続けたまま


【(#・∀・)「僕とチャリオッツの舞台で戦え!!!!!!宇都宮 徳雄!!!!!!」】


まんまと、ずっと目を背け続けていた因縁と引き合わされた


('A`)「……」


それをここで、話していいものか。誰よりも期待され、誰よりも夢を背負った親友の妨げにならないだろうか
『何を馬鹿な』。徳雄は親友への余計な思慮を払拭した。どの道、自分は彼の期待も夢もぶち壊す為にチャリオッツを始めたのだから


('A`)「ハヤテ……獏良 良樹との決着をつける為です」


青葉の瞳孔が、グワリと大きくなる。彼女が徳雄を指名したのは、何よりも『その答え』を望んでいたからだ

770 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:25:37 ID:.buPtdi60
('A`)「高校三年生の時に、共に挑んだヒルクライムの大会。俺は崖下に転落した彼を追って棄権となりました。でも、本当はそうすべきじゃなかった。大怪我を負おうが、死んでしまおうが、俺は『勝つべき』だった。彼の身を案じた事は、彼にとって最大の侮辱だと気づいたんです」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「その決着を、ジャパンカップでつけると?」

('A`)「別に競技は何でも良いんです。彼がたまたまチャリオッツをプレイしていて、そしてオッサ……大潮社長がチームメンバーを募集していた。そういう巡り合わせの結果、ジャパンカップが舞台になったってだけです」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「宇都宮さん本人にとって、チャリオッツは手段であって、ジャパンカップ自体に特別な想いは無いと?」

('A`)「その通りです」


即答して、余りにも礼を欠いているかと思ったが、目の前の記者も本八も、嫌な顔一つしていない。むしろ両者共に『もっと寄越せ』と、爛々と目を輝かせていた
徳雄は真面目で、そして少々古い人間であった。スポーツというものは神聖で、それが大きな栄誉が懸かった大会であるなら、真摯な態度で挑まねばならないという固定観念があった
間違ってはいない。実際、歴史に名を残したスポーツマンの多くは、後輩の手本となるような立ち振る舞いを心がけていた事だろう
だがスポーツには、色濃いエンタメの要素もある。謙虚なだけの選手が集う競技が、盛り上がる筈もない
剥き出しのエゴ、燃え盛る野望、薄汚い欲望。清濁がぶつかり合うことで、色華やかな『火花』が散るのだ
徳雄が、ひいてはBlack  Sheepというチームに求められているものは、謙虚さでも礼節でもなく、大衆の感情を駆り立てるようなバチバチの『生意気さ』である。これは本八と、記者でありムーブメントの火付け役である青葉の共通認識であった

771 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:27:20 ID:.buPtdi60
i!iiリ゚ ヮ゚ノル(やーっぱり、私の目に狂いはありませんでしたねぇ)


ハヤテが配信活動の一環としてチャリオッツを始めた時から、その動向は逐一チェックしていた。獏良に仲違いした親友がいたことも、猫山 義古にガンナーとして天賦の才を持つ従兄弟がいたことも調査済みであった
だがそれらは、あくまで複数あるネタ候補の一つでしかなく、話題性を爆発的に盛り上げられるほどの威力は無かった。『あの日ゲームセンターで、徳雄と文彦の両名が蟒蛇の二軍チームと対戦するのを目の当たりにするまでは』
一対三、加えてキャプテンの一枚落ちという圧倒的不利を、目を張る程の膂力と才能で覆した、お世辞にも華やかとは言えない二人組に、ハヤテには放てない輝きを見た

日陰者を照らす鈍色の輝きである

誰もが眩しい太陽のような偶像を崇め奉るわけではない。眉目秀麗として生まれ、愛嬌を振り撒き、歌と踊りで魅了する人気者を妬ましく思う者もいるだろう
持たざる者は、成功者の破滅を目の当たりにしたいという黒い願望を多少なりとも抱いているものである。そうでなければ、スキャンダルが『飯の種』になりはしない
大勢の期待を背負ったアイドルを、誰からも見向きされそうにない連中が蹴散らしていく様は、彼らにとって胸のすくような光景に違いない
世間では、Black  Sheepをヒールとして取り沙汰されているが、青葉の見解は少し異なる。愛される者が全ての人間から愛されているワケではないように、嫌われ者も全ての人間から嫌われるているワケではない

捻くれ、蔑まれ、爪弾きにされた者たちの希望となる存在、『ダークヒーロー』であると

772 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:29:03 ID:.buPtdi60
!iiリ゚ ヮ゚ノル(貴方にはその象徴になってもらいますよぉ。宇都宮選手)


徳雄本人にその自覚はないだろう。彼はただ、親友との決着をつけたいだけの男に過ぎない。自身の生い立ちに負い目を感じている様子はなく、日陰者を導こうなんて思い上がりなど微塵も抱いていない
肝心なのは、彼が世間に『どう映るか』である。一見すれば国民的アイドルの対極に位置する小さく醜い男でしかない。チャリオッツに興味はなく、あくまで獏良 良樹への執着しかない徳雄の姿は、アイドルの大舞台を潰そうとする嫉妬に囚われた男に映るだろう
それは大勢の反感を買うが、同時に共感も得られる。持たざる者、負け続けてきた者たちにとって、弱小たる人間が『スター』を蹴散らす姿は、彼らに希望を与えてくれる筈だ
オマケに、徳雄のポジションはチャリオッツの華、『ジョッキー』である。獏良への対抗馬として、これ以上の逸材は無い


i!iiリ゚ ヮ゚ノル(お膳立てに見合う活躍を期待してますよぉ〜♪)


今年度のジャパンカップは、ハヤテ参戦によって大量の新規視聴者の流入が見込まれている。クワイエットの前人未到三連覇への挑戦もあり、注目度は例年の比では無い
数々の『主役たち』を目当てに集まった彼らの心を最も揺さぶるのは、背筋を凍らせるような実力を持つ『刺客』の存在であると青葉は考えている
その為に記者が出来るのは、生身の刃物のように鋭く突き刺さる『情報』を配信し、大衆が抱く本戦への期待と不安を更に駆り立てることである


(;'A`)(本当に大丈夫かな……) ※Aqua Timez 虹


ここ半年で癖の強い人物と関わりまくった徳雄は、今回も何となく面倒が発生しそうだなと薄々察したのであった

773 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:30:55 ID:.buPtdi60
―――――
―――



十二月初週に発売された月刊チャリオッツ特別号は、これまでに無い規模の反響を呼んだ。従来のファンは勿論、今大会においては『ハヤテ』と『S&S』という国民的アイドルグループの参戦により、より多くの人々が手に取ったのである
その集客力は出版社の予想を遥かに上回り、書店では早朝から長蛇の列が形成され、開店早々に即完売。フリマアプリでは定価の五倍で取引されるなど、瞬く間に社会現象となった
今回発刊された特別号は、単なるチャリオッツ情報誌に留まらず、アイドルオタク達にとってのコレクター・アイテムとして映ったのだ。これまで筋トレに一切向き合わなかった多くの学マスオタクが、花海咲季がバックカバーを飾るフィットネス総合誌Tarzanを挙って購入するようなものである。アイドルをプロデュースするより先にセルフプロデュースをするべきでは???????
ジャパンカップが国内最大のグランプリであるのも、売上に拍車を掛けた要因の一つだろう。WBC、サッカーワールドカップ、有馬記念など、普段なら興味の薄いスポーツでも、大きな大会とあれば視聴者数は跳ね上がる
もしもアイドルグループが栄冠を勝ち得たのならば、『歌って踊れるメジャーリーガー』の誕生に等しい。否が応でも、世間の注目度は高まった

兎にも角にも、ジャパンカップ特集は想定より多くの人々が購読したのである。その中で、大舞台に挑むハヤテのインタビューを読んだ多くのアイドルファン達の目に、一つの見慣れない『異物』が飛び込んできた

774 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:31:40 ID:.buPtdi60
(´・_ゝ・`)「『ハヤテ、最注目チームに今大会のダークホースBlack Sheepを指名』……」


野球に興味がない人種であろうとも、阪神タイガースや読売ジャイアンツなどの球団名くらい答えられるだろう。チャリオッツにおいては正しく『トップ・ギア』や『蟒蛇』が該当する
しかしハヤテが指名したのは、誰もが知る有名団体のチームではなく、無名のルーキーチームの名である。俄然興味を惹かれた読者達は、眼中に無かったはずのBlack Sheepのインタビューページを開いたことであろう
そこで彼らは、巷を賑わせている獏良 良樹と宇都宮 徳雄の因縁が、でっち上げの与太話では無かったと知ることになる。高校時代の彼らは、良き友人であり、そしてライバルであったことを

ハヤテファンの反応は二分化された。意外な事に、好意的な意見が多く挙げられたのだ
これは記事を担当した青葉 青花の手腕の賜物でもあるが、インタビュー記事から徳雄の真摯な人柄と、スポ根漫画を連想させるような二人の関係に熱いものを感じたのである
勝って欲しい対象こそ揺るぎないが、徳雄、ひいてはBlack  Sheepへの評価と声援の数は、ハヤテファンの民度の高さが伺えた。あと薄い本が厚くなるとかなんかゴチャゴチャ言ってた
一方で、少なからず良く思わないファンがいたのも事実である。所謂、『狂信者』や『強火勢』とも称される面々は、ハヤテという絶対的存在に異物が紛れ込むのが我慢ならなかったのだ
そこに、元々少なからず存在したBlack  Sheepアンチが便乗。SNSというドブは月刊チャリオッツ発刊を機に更に大きく燃え上がる事態にまで発展した


(´・ω・`)「まさか明言しやがるとはな」

(´・_ゝ・`)「同じ土俵に立った以上、隠し立ては不要との判断でしょうかね」


盛岡は月刊チャリオッツを畳み、テーブル上のカップとソーサーを持ち上げて紅茶を啜った
その向かいに座る本八の前には、湯呑と和菓子が置かれている。客の好みに合わせてサービスを変える臨機応変さは、高級店ならではであった

775 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:32:56 ID:.buPtdi60
(´・ω・`)「店は?」

(´・_ゝ・`)「今の所、大きな問題には発展していません。先手を打っておいて正解でしたね」

(´・ω・`)「バカとハサミは使い様ってな……」


月刊チャリオッツ発刊前、本八は徳雄が勤務する『OHANAMI』に、売り込みに優れたベテラン店員を複数人配置した。目的は、アポ無しで訪れる配信者対策である
話題のネタには『鮮度』がある。特に注目度がピークになるのは、インタビュー記事が掲載された月刊チャリオッツ発刊から一日〜二日。詳細な情報に乏しいBlack Sheepは金の鉱脈である。マスコミやジャーナリスト、そして個人配信者が徳雄が勤務するOHANAMIに大挙するのが予測出来た
特に厄介なのは、手順を踏まずに訪れる個人配信者である。再生数の為なら手段を問わないバカは、22世紀になっても失くなりはしなかった
そこで本八は、彼らの暴走を最大限利用する策を講じる。その為に配備されたのが弁の立つベテラン店員である


(´・_ゝ・`)「個人配信者を言葉巧みに個室へと誘導。そこで『未発表の新商品』によるおもてなしを行い、彼らを無償の広告塔として機能させる。凸してきた者の中には大物インフルエンサーもいましたから、宣伝効果は抜群でしたね」

(´・ω・`)「ああいう輩を上手く扱うコツは損をさせない事だからな」


下手に追い返せば逆恨みを買う可能性を考慮し、本八は『Win-Win』で手打ちにする方法を取ったのである。徳雄という特ダネの代わりに、美味い和菓子とそこそこの情報を提供してお帰り頂いたのだ
配信者の殆どはライブ中継を行っていたのも功を奏し、編集する隙を与えず伝えたい情報だけを一方的に押し付けられた。通常、インフルエンサーへの依頼は大なり小なり宣伝費用がコストとして掛かるが、これを飲食代だけで抑えられたのである
『求めていたネタではないが、損はしていない』。そう思わせた時点で、無法者達は溜飲を下げる他無い。本八の経営者としての手腕に、まんまとしてやられたのであった


「大潮様、盛岡様。お連れ様のご試着がお済みになりましたので、ご確認を」


コンシェルジュが二人を呼び出しに上がると、会話を切り上げて立ち上がる
案内に従い待合室を出て、広々とした『試着室』へ辿り着くと、バシッとキメたスーツに身を包む―――――


(;'A`)「……」

(;^ω^)「……」


緊張した面持ちの若者二人の姿があった

776 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:34:25 ID:.buPtdi60
(´・ω・`)「どうだよ。大潮家御用達、高級テーラーが仕立てたスーツの着心地は?」

(;'A`)「わからん」

(;^ω^)「ただでさえ美男子の僕が更に際立って自分で自分が恐ろしいお……」

(´・ω・`)「ハハッ、どっちも正気じゃねえぞオイ」


この日は来るべき記者会見に向けて仕立てたスーツを受け取りに来ていたのであった
文彦は学生服でも構わなかったが、徳雄は元フリーター故にまともな就活を行っておらず、成人してから冠婚葬祭の場に呼ばれた事もなかった為、スーツを一着も持っていなかった
記者会見に服装の指定こそは無いが、折角の晴れ舞台ということで、本八が半ば強制的に銀座にある店舗まで連れ出したのである


(;'A`)「しっかし……大袈裟じゃねえか?豚に真珠というか……」

( ^ω^)「ブヒッwwwwwwwww確かに見た目Tierワーストのとっくんには勿体無いおwwwwwwwwwヨレヨレの黄ばんだTシャツと毛玉まみれのスウェットがお似合いだおwwwwwwwww」

(´・_ゝ・`)「ここで殴るのやめてね。シミになるからね」

('A`)「はい」


豚は合計11キロの減量に成功したのと、ジャパンカップ本戦出場もあってか最近クソほど調子に乗っていた


(´・ω・`)「まぁそれは否定しねえけどよ」

(;'A`)「だったらなんでわざわざ用意したんだよ……」

(´・ω・`)「馬子にも衣装って慣用句があるだろ?どんなザコでも身なりさえ整えときゃあヒトカドの野郎には見えるんだよ。ヤクザの服装で考えてみろ。スーツ着てる奴とだっせえ柄シャツの奴なら、どっちが兄貴分に見えるかって話だ」

(;'A`)「喩えが悪ぃな……」

(´・ω・`)「それにな、こいつは悪意に対する反撃術でもあるのさ」

777 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:36:24 ID:.buPtdi60
一張羅に身を包む二人は顔を見合わせた。『防衛術』ではなく、『反撃術』と称したのは激情的な本八らしいが、着飾る事が何故反撃に繋がるかまではわからなかった


(´・ω・`)「メディアの前でビシッとキメて堂々と現れりゃ、破滅を目論んでボロクソに叩いてた連中は途端に惨めになる。その瞬間、奴らの誹謗中傷は自傷行為に成り下がるのさ。周りから見りゃ滑稽に映るだろうぜ。鋼鉄の砦に丸めた紙クズを投げて壊そうとしてるようなもんだ」


衆目監視の前で披露することを前提とした、広範囲かつ効果的な『無言の反撃』である。後ろめたいものを抱えていない限り、集団が放つ言葉の矢を受けた所で俯く必要など無く
匿名の場で小さなデバイスを頼りに、遠くからネチネチと暴言を吐く矮小な卑怯者と、同じ土俵に付き合ってやる義理も無い。遥か高みから捻じ伏せてしまえばいいというのが、本八の自論であった


(´・ω・`)「言わば一張羅ってのは、ギャーギャー喚くザコ共を一撃でぶち殺す『見せる暴力』なんだよ。だが、当の本人が服に着られちゃあ逆効果だ。当日はカメラの前で緊張もするだろうが、オメーらのいつもの不遜なクソ態度を存分に見せつけろ。それで初めて威力が発揮される」

(´・_ゝ・`)「折角の晴れ舞台だしね。良い物着て、楽しんで参加すれば問題ないよ」


これは二人からの『処世術』であると察した徳雄は、改めて姿見鏡で自身の格好を見返す
今まで目立たぬよう、そして弱者に見えるように『爪を隠して』生きてきた。その長年の所作が、無意識のうちに背中を丸めていた
『服に着られちゃあ逆効果』。徳雄は、贈られた一張羅に負けぬよう、胸を張ってみる


(´・ω・`)「着心地はどうだよ?」


本八はもう一度、スーツの着心地を訊いた


('A`)「悪くねえ」


徳雄は着心地に、そして自分を偽らなくていい生き方に、そう応えたのであった

778 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:41:06 ID:.buPtdi60
―――――
―――



かつて日本一の台所として名を馳せた築地市場は、二度に渡る再開発によって統合型リゾートと化した
日本で二つ目のカジノを目玉に、ハイブランドが軒を連ねるショッピングモール。幾つもの『星』を冠するレストランにホテル。そして最大八万人の収容が可能な超巨大スタジアムと、東京を代表する大型商業施設である
その中で一際高く聳え立つ日本屈指の最高級ホテルが、この『ホテル トロマグロ・スシ』である。一度に二つ食べそうな名前だが、これは創業者である世界有数の実業家『Raomoto=Kan』が、築地で食べた寿司に感銘を受けたのが由来となっている。築地資料館には当時の彼が脂の滴るようなオーガニック・トロマグロ・スシを一度に二つ食べた映像が展示されている

この日、国内最大級のクリスマスツリーが輝くホテル トロマグロ・スシは警備員の数を大幅に増強していた。事情の知らない海外客は、お忍びでサンタ・クロースが滞在しているのかと疑うほどの厳戒態勢であった
事実、ホテル上階に位置するグランドサロン『Tokujo』と『Edomae』では、各報道陣がギッチリと集まっている。彼らのお目当ては、年末の大一番に挑む国内TOP18のチャリオッツ精鋭チーム達である
特設された登壇者席には、各グループ突破チームがそれぞれ順に上がり、会見を受ける形式となっている。時間の関係上、A〜CチームはTokujo、D〜FチームはEdomaeと、会場を分けて同時進行で行われる



(;^ω^)「……」


つまり、一足早く


(#=゚д゚) 「……」

('A`)「……」


控室の段階で、因縁あるバジリスクのメンバーと鉢合わせるのである
Black Sheepとバジリスクのジョッキーは、会話こそ交わそうとしないが、高城 貴虎の一方的な殺意だけはヒシヒシとブサイクに向けられていた

779 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:49:10 ID:.buPtdi60
(´^ω^`)「サインおくれやす!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

( ^Д^)「喜んで。いやぁ、予選はお見それ致しました。やはり文彦はあなた方に拾われて正解だったようだ。最近京都行きました?」

(´^ω^`)「よせやいよせやい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!アンタらが意図を汲んでくれなかったら今ここにいねえって!!!!!!!!!!!!」


一方で、社交的なキャプテン二人は朗らかに会話を酌み交わす。特に年季の入ったチャリオッツファンである本八にとっては、国内二強チームとの同室はこれ以上ない贅沢であった


(;^ω^)「人の気持ちも知らないで……ね、ねぇ?守ちゃん」

(-_-)「…………」


そしてバジリスクのガンナーは、豚の鳴き声をシカトして携帯ゲームから目を離そうとしなかった。ちゃん付けが気持ち悪いのである
余りの居心地の悪さに、着地点を求めて泳いだ文彦の視線は、『もう一つ』のチームへと吸い込まれる

780 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:49:49 ID:.buPtdi60
(//‰ ゚)


黒革のライダースジャケットに身を包み、鉄帯を包帯代わりに顔へ乱雑に巻きつけたようなマスクを被る『ジョッキー』
表情の中で唯一、露出している左目は鮮やかな青色をしており、会見場のライブ映像へと向けられている


(・(エ)・)


その隣には、遊園地などで見かけるようなデフォルメされたクマのマスクを被る、長い金髪の『ガンナー』
その可愛らしい覆面とは裏腹に、脚のラインを強調するようなタイトなレザーパンツと、女児向けデザインのヘソだしキャミソールにメンズジャケットを合わせた煽情的なファッションを着こなしている。そのバストは豊満であった


|::━◎┥


そして、上座にある一人掛けソファーに鎮座するのは、某量産型モビルスーツを彷彿とさせるモノアイマスクの『キャプテン』
三人の中では最も小柄であるが、全身を覆い隠すような漆黒のケープが威圧感を強調している
視線に気付いたのか、赤黒く光るモノアイが、ギョロリと文彦の方を向く。普段目にすることのない無機質でカラクリめいた挙動に、文彦は反射的に視線を逸らした


彼らこそ、最古参プロ団体『トップ・ギア』歴代最強にして、前人未到、ジャパンカップ三連覇に王手を掛けた『静かなる王者』―――――


(//‰ ゚) 『ジャンクヘッド』

(・(エ)・) 『29号』

|::━◎┥ 『Q』


『クワイエット』である

781 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:51:07 ID:.buPtdi60
('A`)(すげえカッコしてんな……)


マスク・プレイヤーについては前々から耳にしていたが、控室に置いても一貫して沈黙と体裁を貫く姿勢に、徳雄は大いに感心した
学生スポーツやメジャー球技では絶対に有り得ない『コスチューム文化』。着飾ることで、ヒーロー性がより際立つのだ
象徴的なヒーロー、ヒロインは世代を問わず突き刺さる人気ジャンルの一つである。そして象徴であり続ける為には、他の追随を許さない活躍と徹底した姿勢が求められる
その点に置いて、彼らは紛れもない『プロ』として徳雄の目に映ったのだ。決して29号の爆発しそうな豊満に目を奪われたワケではない


(´^ω^`)「サインおくれやす!!!!!!!!!!!!!」


('A`)「うわ行きやがった」


そして王者だろうと豊満だろうとクズには関係なかった。絶好の機会を逃すまいと、持参した色紙とペンを手に有無をも言わせぬ圧で迫る
クワイエットの面々は『嫌がる顔一つ見せず』、坦々と色紙にペンを走らせた。無言の鉄面皮だがファンサは拒まないギャップに、徳雄は苦笑いを浮かべてしまう


(´^ω^`)「握手しておくれやす!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


それを良い事にクズの要求はエスカレートしたが、これも『難色を示すことなく』受け入れた。盛岡からお目付を頼まれていた徳雄だったが、あの程度なら放って置いてもいいかと中継映像へと目を戻した
会見は始まったばかりで、Aブロックから順に30分程の質問時間が設けられている。徳雄はi-ringを立ち上げ資料を確認した


('A`)「ふむ……」

( ,,^Д^)「熱心だね」

('A`)「お呼びじゃねえよすっこんでろ」


本八から解放された宝木が気安く話し掛けて来たが、徳雄はにべもなくあしらう。その様子を見ていた高城が、小馬鹿にするように鼻で笑った
宝木は芝居めいた態度で肩をすくませ、許可も得ずに徳雄の隣へと座った


( ,,^Д^)「同じブロックのよしみだろう?呉越同舟、仲良くしてもバチは当たらないんじゃないか?」

('A`)「お前らは予選の椅子が三つもあった事に感謝すべきなんじゃねえか?一つだったら今頃ここにはいねえんだからよ」

782 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:58:28 ID:.buPtdi60
この場にいる全員が、部屋の空気がピリッと張り詰めたのを肌で感じ取った。今大会が初の公式戦であるルーキーが、バジリスクのみならず国内王者であるクワイエットまで挑発したのだから
徳雄が切った火蓋に、文彦はフッと気が遠くなり、ジャンクヘッドと握手をしていた本八は、右手の急激な圧力にトムみたいな悲鳴をあげた


(;´゚ω゚`)そ「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッホゥホゥホーーーーーーーーーーーーーウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(//‰ ゚)「……」


(-_-)「……聞き捨てならないんだけど」


真っ先に反応したのは、バジリスクの小さな天才ガンナー『柊木 守』だった。彼女はゲーム画面から顔を上げ、目元を覆い隠す長い前髪の隙間から苛立ちを込めた眼光を投げつける
何かと因縁のあるBlack Sheepとバジリスクであるが、彼女だけはフラットな立ち位置にいた。キャプテンやジョッキーがあれほど『お熱』でなければ、予選で早々に叩き潰すべきだとも考えていたのだ
正直な所、本八の作戦に乗った結果、前年より『楽』に突破出来たのは否定できない。これは恐らく、クワイエットも同意見だろう。『運悪く同ブロックになった国内二強が、やむを得ず手を組まねばならない窮地』が起こったが故に、最も手強い相手と争わずに済んだのだ
だからと言って、今現在何のタイトルも実績もない、ポッと出のルーキーにデカい口を叩かれて黙ってはいられない。新参は新参らしく、下手に出ていればいいのだ


('A`)「コケにされるのは我慢ならねえが、格下が企てた策には乗っかるのか。ご大層なプライドだな」

(#´゚ω゚`)「誰が格下だもういっぺん言ってみろブサイク!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

('A`)「嘘じゃん……」


あらぬ方向へと飛び火した


( ,,^Д^)「アハハハハ!!まぁまぁ大潮さん。この場にいる以上、僕らは対等なライバルですよ。クワイエットもそう思うだろう?」


『沈黙の王者』は誰一人としてうんともすんとも言わなかったが、唯一29号だけは軽く手を振って応えた
宝木が和らげた場の空気に文彦は少しだけ気が抜けたのか、29号の豊満をチラチラ見始めた。今日はこれでいいやだった

783 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 21:59:21 ID:.buPtdi60
(=゚д゚) 「アホくせぇ。手心を与えられたのもわかってねえ脳無しのカス共と対等だ?心にもねぇ世辞なんてやめとけよ蕗也。ザコが更に付け上がるだろ」


しかし今度は高城が挑発し、再び空気が張り詰める。前回の対戦時より一回りほど大きくなったように見える身体つきは、半年の間に積み重ねてきたであろう壮絶な鍛錬を想起させた
そして拳には、まだ治りきってない『擦り傷』があった。徳雄にとってその傷は、馴染みの深いものであった


('A`)「相変わらず吠えることだけは一丁前ですね高城センパイ。対等扱いされて気が大きくなっちゃったんすか?」


この容赦ない切り返しに


(´^ω^`)「ヒュー!!」


クズは囃し立て


(;^ω^)「ヒュッ……」


デブは息を飲んだ

784 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:05:06 ID:.buPtdi60
(=゚д゚) 「言っておくがな」


高城椅子が倒れるほど勢いよく立ち上がると、宝木を押し退けて徳雄を真正面から見下した
ブスは頭上から降り注ぐ憤怒の視線に、何一つ変わらず涼しくブサイクな顔を保っている。一髪触発の空気に、文彦の股間は萎びた


(=゚д゚) 「俺はあの時、お前に負けたんじゃねえ。そこのデブの横槍が無けりゃ、無様を晒してたのはテメエの方だ」

('A`)「だったら俺に当たんのはお門違いだろ。そこにデブがいるんだから構ってもらえよ。それとも、怖くて声も掛けられねえか?」

(;^ω^)「おいふざけんなブス」


高城は横目でジロリと文彦を睨めつける。そこらの半グレより頭おかしいブスと半年を過ごして多少は肝が肥えた(元々脂肪肝の疑いはあった)文彦でも、震え上がるほどの殺意が込められていた


(´^ω^`)「そうだぜ!!ここにいる文彦さんは『1 対 3』かつ『一 枚 落 ち』で『プ ロ チ ー ム』を『大 勢 の 前』で『ブ ラ ン ク が あ る に も 関 わ ら ず 瞬 殺 し た』天才の中の天才!!お前みたいなイキってるだけのザコなんて眼中に無いってよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(;^ω^)そ「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


この絶好の煽りチャンスを逃すクズではない。高城のチャリオッツ人生最大の汚点を容赦なく言葉のナイフで抉り出し、文彦を追い詰めた

785 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:05:40 ID:.buPtdi60
この人でなし集団Black Sheepの華麗な連続攻撃に、『俺キレたら何すっかわっかんねえぞオオンアオン??????ガムクッチャクッチャナイフペロリンチョ』という小物のセリフが似合いそうな登場人物No.1の高城は、額に青筋を浮かべながら鼻で笑い返した


(=゚д゚) 「どうして予選でお前らを見逃してやったか教えてやろうか?」

('A`)「言いたきゃどうっ……」


徳雄は胸倉を掴まれ、強制的に言葉を詰まらされた。小柄な身体はソファーから浮き上がるが、依然としてブサイクな顔面は目の前の男に微塵の興味も示さない


(=゚д゚) 「お前に恨みを抱く全ての連中に、お前とお前のチームの破滅を見せつけてやりてぇからだよ……」

('A`)「健全じゃねえなぁセンパイ。一つに固執すれば横から足下を掬われるぜ?」


(´^ω^`)「ッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


『おめえが言うなよ親友コンプキモブサイク』が口から飛び出る所であったが、鋼の意志で押し留めた ※レース序盤または中盤に前が詰まった時に強い意志を持ち持久力が回復する


(=゚д゚) 「二度と面前に出れない程に辱めて、お前が本来歩むべきだった人生に戻してやるよ。大衆から後ろ指差されて嘲笑われる、憐れな人生にな」

('∀`)「ハハ、たのしそー。せいぜい頑張ってくださーい」


(;^ω^)「うわ……」


文彦は『このブス絶対刺されて死ぬんだろうな。むしろ死ねよ今すぐ』と思った

786 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:06:57 ID:.buPtdi60
部屋の緊張が憎悪に囚われた男と、それを歯牙にもかけないブサイクにより最高潮に達したその時、礼儀正しいノックの音が打ち破った


「失礼します。Eブロックの……」


扉から顔を覗かせたスタッフは室内の剣呑とした雰囲気にすぐさま血の気が引いていき


「ス、スタンバイお願いします!!」


要件だけ手短に伝えると、亀が頭を引っ込めるようにすぐさま廊下へと逃げていった。そう、亀頭である。このスタッフはチンチンであった


|::━◎┥「……」


Qは颯爽と立ち上がり、Black Sheepとバジリスクのいざこざに目も向けず部屋を後にする。チームメイト達も続けて退出した


( ,,^Д^)「高城先輩、行きますよ」

(-_-)「めんど……」

(=゚д゚) 「……チッ」


高城は唾でも吐き捨てそうな態度で徳雄を突き飛ばし、文彦、本八と順にガンを飛ばして荒々しく退室した
Black Sheepだけが残った室内で、豚はようやく大きく臭い豚息を吐く機会を手に入れた


(;^ω^)「ブフー………全く、野蛮人共と一緒の部屋に入れないで欲しいお」


残念ながら、日本屈指の高級ホテルに豚小屋は備わっていなかった

787 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:07:22 ID:.buPtdi60
('A`)「俺らも行くか」

(´・ω・`)「ちょっと待てやブス」

('A`)「何だよクズ」


本八は徳雄の首元に手を伸ばすと


(´^ω^`)「タイが……曲がっていてよ」


乱れた襟元を整えた


(;'A`)「お、おう……キショ……」

( ^ω^)「ご令嬢ムーブやめろ」

(´・ω・`)「ご令息やぞ」

( ^ω^)「なんで神はこんなクズを日本有数の金持ちにさせたんだお……」

(´^ω^`)「その血の運命(さだめ)」


クズのジョースター家だった

788 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:10:27 ID:.buPtdi60
―――――
―――



i!iiリ゚ ヮ゚ノル「あらら、ごっそり移動しましたねぇ」


フリージャーナリストである青葉 青花は当然の如く『Edomae』記者席の一つを陣取っていた。彼女の活動はスポーツ、芸能、政治にエンタメと多岐に渡るが、最も心血を注いでいるのがチャリオッツ関連である
その功績は難攻不落と称されたクワイエットの専属記者の座の獲得に始まり、日本へ遠征に訪れた海外プロチームの独占インタビュー、野良試合で活躍する『ダイヤの原石』の発掘と、今やチャリオッツ業界にとって無くてはならない人材であった
月刊チャリオッツのジャパンカップ特集でも、彼女は2チームのインタビュー記事を担当した。一つは専属であるクワイエット。そしてもう一つが、言わずもがなBlack  Sheepである
現在、Dブロック突破チームのインタビューが終わった所で、十分間の休憩と登壇席の準備時間が設けられていた


(;;・∀・;;)「S&Sとハヤテ目当ての芸能報道陣でしょうね。全く、節操の無いコト」


彼女の隣に腰を下ろす、浅黒い肌にツーブロックの髪型をした、濃いアイシャドウと艶のある口紅が目を惹く筋骨隆々の『オネエさん』は、そそくさと『Tokujo』へと移っていく記者団に溜息を投げ掛けた
彼(女)こそ、月刊チャリオッツ編集長、『黒間 蘭(くろま らん)』である。そう、今は22世紀。ジェンダーレスの時代なのである。ポリコレポリコレ!!!!!!!白人と黒人の夫婦の間に産まれた息子をゲイにして飼っている犬を理由も無く三本脚にしようぜ!!!!!!!レリゴー!!!!!!!!!!!!


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「とか言っちゃってぇ、蘭姐さんもハヤテを拝みたいんじゃないんですかぁ?」

(;;・∀・;;)「バカね。アタシの好みは文彦ちゃんみたいなオトコノコよ」


ここに蓼食う虫ならぬ豚食うオネエがいた。文彦みたいなゴミカスキショオタク汚豚でも好きになる人間が地球上に一人くらいいる。それがオネエよ。残念だったわね(笑)

789 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:11:40 ID:.buPtdi60
(;;・∀・;;)「それにしても、アンタの先見の明には相変わらず寒気がするわね。大潮 本八なんて、飲食業界じゃビッグネーム中のビッグネームよ?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「日頃の行いですかねぇ」

(;;・∀・;;)「だとすると、とんでもない災難の前触れの可能性があるわね……」


黒間は呆れたような視線を青葉へと投げかけ、丈の短いタイトスカートから覗く脚を組み替えた
黒タイツが悲鳴を上げるほど鍛え上げられた脚は、彼(女)が元プロジョッキーだった頃の名残である
残念ながら、膝の故障により泣く泣く現役引退せざるを得なくなったが、その肉体の美しさは、数十年経った今でも維持し続けている
彼(女)は月刊チャリオッツの編集長を勤める傍ら、美容、ダイエット、そしてワークアウトに関する著書を続々と出版し、22世紀に置ける『美の第一人者』として名を馳せていた。オトコの趣味が最悪な意外の欠点が無いのであった


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「もしもBlack Sheepが天下を獲ったりなんかしたら、どうなると思います?」


軽い気持ちで投げかけたつもりの質問だったが、周りにいる記者達は雑踏の中で一言も聞き漏らすまいと耳を澄ませる気配がした
月刊チャリオッツは、界隈で最も大きな情報誌である。それを執り仕切るボスの意見は、どんなものでも値千金に等しい


(;;・∀・;;)「新たな伝説として語り継がれるか、史上類を見ないほどの大炎上するかのどっちかでしょうね」


黒間は記者達の隠しきれないギラつきを感じ取ってはいたが、さして気にもせずに答えた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「『アンラ・マンユ』の再来ですか?」

(;;・∀・;;)「そんな比じゃないわよ。今大会に限っては、優勝を期待するチームのファン総数が多過ぎる。向こうに移った報道陣の数、見たでしょ?言わば、報道の数だけ注目度が高いってコト」


「そしてもう一つ」と、指を立てた

790 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:15:57 ID:.buPtdi60
(;;・∀・;;)「スキャンダルに代表されるように、『炎上』ってのは閲覧数を稼ぎやすい一種の娯楽よ。つまり報道陣達は、栄誉を讃えるより『燃料をばら撒く』ように差し向けた方が儲かると踏む。言わば世論誘導、プロパカンダね。そんな恥知らずな連中、ここには居ないと思いたいけれど」


何人かの記者が、ビクリと肩を弾ませ、そそくさと気配を消す。その様子に、青葉は小さくクスリと笑った


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それを理解していないお方じゃありませんよ。大潮さんは」

(;;・∀・;;)「でしょうね。むしろ、ちゃぶ台をひっくり返す事に喜びを感じるような御仁に思えるわ。だからこそ、アタシは今日の会見で何を語るのかに強く興味を惹かれたのよ」


登壇席からスタッフが捌けて行き、司会者が舞台袖から登場した。雑談に興じていた報道陣は口を黙み、本日の主役と言っても差し支えないチームの登壇を、息を潜めて待った


「皆様、大変長らくお待たせいたしました。只今より、Eブロック代表チームの記者会見を始めさせて頂きます。それでは早速、ご登場頂きましょう。『Black Sheep』から、キャプテン、大潮 本八選手。ガンナー、内藤 文彦選手。ジョッキー、宇都宮 徳雄選手です」


名前を呼ばれた順に、Black Sheepのメンバーが登場する。衆目監視に慣れている本八は堂々とした脚振りで、慣れていない青年二人は、かなり緊張した面持ちであった
しかし身なりは傍目から見ても分かるほどに高級感のあるスーツで整えてあり、この会見の場に礼節を持って臨むという意思を感じ取れた
続けて、今大会で三連覇に王手を掛けたクワイエットと、クワイエット最大のライバルであるバジリスクが登壇。記者団に向かって一礼した後、それぞれ着席した


i!iiリ゚ ヮ゚ノルノシ


徳雄、文彦は突き刺さる視線に相変わらずソワソワと落ち着きなくしていたが、記者席の中に見知った顔を発見すると、少しだけ緊張が和らいだようであった


(;;*・∀・;;)「今文彦ちゃんこっち見て笑ったわよね!?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「そーですね」


隣のミーハーが興奮したので適当にあしらった

791 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:18:18 ID:.buPtdi60
「それでは早速、質疑応答に移ります。質問者の方は挙手をお願い致します。尚、お時間の関係上、ご質問は一社につき一つとさせて頂きます」


競い合うように、報道陣が一斉に手を挙げる。しかし直前のDブロックの会見と比べると、ほんの少しだけ余裕があるように見えた
その理由は、登壇する三チームの内、クワイエットだけは言葉による回答が無いからだ。沈黙を貫く王者は、記者会見でも例外なく口を開かない。出来ることは、簡単なボディランゲージくらいであった
即ち、設けられた時間内でBlack Sheepとバジリスクに割ける時間が必然的に多くなると言うことである


i!iiリ゚ ヮ゚ノル(お手並拝見っと……)


月刊チャリオッツのインタビューと違って、記者会見では黒間が言った通り炎上目的で悪意ある質問する記者もいる
青葉が期待しているのは、それを『どう躱すか』ではなく、『どう斬り返すか』である。大潮本八はチャリオッツではルーキーに違いないが、一社会人としては経験豊富な著名人であり、傑物である
徳雄と文彦の若者二人にとっては過剰とも言えるほどの立派なスーツも、本八による防衛術の一つであり、会見でも何かしらの策を打ってきたに違いない
ジャパンカップの醍醐味は、試合のみにあらず。プレイヤーの人となりが垣間見えるこの記者会見から始まっている
ファンを増やすもアンチを増やすも、この一時間足らずの僅かな時間だけで決するのだ。青葉にとっては、試合以上に高揚するイベントであった


「では、そちらの黄色い腕章の女性の方、どうぞ」


指名された女性記者は立ち上がり、所属と氏名を述べた。定期的に世間を騒がせる記事を掲載する有名な週刊誌であった


「Black Sheepの宇都宮選手にお伺いします。ここ一ヶ月の間に噂されている過去の悪行は事実でしょうか?その上でジャパンカップに参戦する事に罪悪感はございますか?また、過去の被害者についてどう思われているのでしょうか?」


一発目で早々にルールを破るのは、他人の噂や悪評で飯を食っているゴシップ誌らしい厚顔さである。青葉は苦笑いを浮かべ、黒間は嫌悪感を眉間の皺へと変えた
当の徳雄はやや面食らった表情をしていたが、隣の本八に小脇を突かれ、慌てて卓上のマイクを引き寄せる


('A`)「身に覚えがありません。無いです。どうでもいいです」


一息でこう答えると、マイクを置いた。女記者は侮辱と捉えたのか、見る見る内に顔が赤く染まっていく。徳雄は慣れない場で緊張こそしているものの、質問に対しては全くと言っていいほど気にしていない素振りであった

792 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:20:15 ID:.buPtdi60
「ですが、我々が調査した所、過去の暴力事件については裏取りが……」

「静粛に願います。再度申し上げますが、質問は一社につき一つです。ルールが守れないようであればご退出願います」


女記者は司会に釘を刺され、下唇を噛み締めて礼も述べずに着席する。記者席からは所々で失笑と動揺が起こっていた。それは徳雄の反射的かつ機械的な返答に、一切の感情が込められていなかったからである
過去の悪行を指摘されれば、真偽問わず誰しも多少なりとも揺らぎを見せる。記者達はそこを突いてさらに情報を引き出そうとするものだが、徳雄の感情はさながら鋼鉄の城門のように固く閉ざされている
徳雄にとっては捨てたゴミの事を一々覚えていないようなものであるのだが、彼の本質など知る由もない報道陣は、胆力に舌を巻いたのであった


(;;・∀・;;)「これで一つ敵を作ったわね」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まだまだこんなもんじゃ済まないでしょうねぇ」


「再開いたします。青いネクタイの方、どうぞ」


今度は年配の男性記者が立ち上がる。所属は某有名経済新聞社であった。22世紀現在、新聞の主流は電子デバイスに移ったが、新聞紙も一定の需要があった。丸めてケツをしばくのに重宝するのである


「大潮選手は参羽鴉グループ代表取締役という立場ですが、今回の参戦にあたって経営目的の意図はございますでしょうか?」


(´・ω・`)「全くありません。これは私の個人的な挑戦で、参羽鴉グループは一切関係ありません。また、スポンサーとしてなんらかの出資をする予定も無いです」

(´^ω^`)「だって……儲かってるもんネ!!」


会場がドッと沸き上がる。クズと言えどもやり手の経営者。人心掌握などお手の物である。こうして世界はまた邪悪に染まるのであった


(´・ω・`)「それと、ご贔屓にしてくださっているお客様には残念なお知らせとなりますが、優勝時にセールを行ったりも致しません。だから道頓堀にダイブとかすんなよなマジで」

( ,,^Д^)「フリですか?」

(´^ω^`)「はいここにウチを炎上させようとする不届者がいまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーす!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


大潮節炸裂である。宝木のアシストも手伝って会場の雰囲気は和やかになっていく。文彦は陽キャ特有のノリと緊張で吐き気を催していた
しかし報道陣が、ひいては視聴者が見たいのは、こんな『おままごと』では無く、度肝が凍りつくような、実力者同士の火花の散らしあいなのだ

793 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:24:16 ID:.buPtdi60
(;;・∀・;;)「はい」


そこに一石を投じようと、チャリオッツ界隈のジャーナル・クイーンは右手を掲げた


「はい、そちらの方。どうぞ」

(;;・∀・;;)「どうも。月刊チャリオッツ編集長、黒間 蘭です。先ずは皆様方、本戦出場おめでとう御座います。そして先日は我が誌の取材に応じて頂き、誠に感謝申し上げます」


黒間は両手を下腹部の辺りで重ねると、キッチリ45度頭を下げる。洗練された所作に、世間知らずのブスとデブも思わず深々と頭を下げた


(;;・∀・;;)「バジリスクの皆さまにお伺いします。Black  Sheepの内藤 文彦選手は短い期間ですが蟒蛇に籍を置いておられました。かつての戦友が大晦日の戦場で牙を剥きますが、今の心境をお聞かせ願えますでしょうか?」


(;^ω^)「っ……」


避けては通れぬ質問である。文彦は月刊チャリオッツのインタビューには応じなかった(させなかった)為、互いの心境はチャリオッツファンにとっては注目の一つであった
超攻撃型プロ団体『蟒蛇』は、文彦の憧れであった。しかし生来の性格の悪さや才能に胡座を描いた傲慢さが災いし、看板に泥を塗って去るというおよそ考えうる中でも最悪の脱退をしている
本来なら、『どの豚面を下げて』と罵られても仕方がない。豚生(とんせい)丸ごと恥晒しな文彦が今、ここにいられるのも蟒蛇のトップである宝木の寛容さあってのものだ。少なくとも、文彦はそう捉えていた

794 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:25:01 ID:.buPtdi60
( ,,^Д^)「では……」


宝木はマイクを取ると、起立して報道陣に軽く頭を下げた。モデルを兼業しているだけあって、容姿、所作共に洗練されており、打ちつける豪雨の如くフラッシュが焚かれた
撮影が落ち着くのを待ってから、宝木は口元に微笑みを携えて、元チームメンバーへの心境を語り始めた


( ,,^Д^)「最初に、Black  Sheepの大潮さん、宇都宮さんに感謝を申し上げます。文彦の才能は国内でも唯一無二です。生憎、その才能は蟒蛇では活かし切ることが出来ませんでしたが、こうして僕らに並び立つ『強敵』として、彼をここまで連れて来てくれて嬉しく思います」


('A`)「……」


『いけしゃあしゃあと』。宝木の真意を知る徳雄は、内心で失笑した
文彦が早々に蟒蛇を脱退させられたのは、宝木自身が文彦をチームメンバーでは無く『敵』として相対したかったからと語っている
ほとんど文彦の自業自得であったのは否定しないが、宝木の我儘が文彦を失意のドン底へと突き落とす一因となったのも間違いはないのだ


( ,,^Д^)「そして、かつて同じ釜の飯を食った間柄だからこそ、僕らは彼の強さ、恐ろしさを身をもって知っています。当然、チームとしては新米であろうと容赦はしません」

( ,,^Д^)「バジリスクはBlack  Sheepを、クワイエットと比肩し得るライバルとして、完膚なきまでに叩き潰します」


会場がどよめきに包まれる。その穏やかで力強い口調は、単なるリップサービスでないことを悠然と物語っている
バトルロワイアル最強チームによる宣言は、ルーキーとっては名誉でもあり、同時に死刑宣告にも等しい。文字通り蛇に目をつけられた蛙であった。その時―――――


(;^ω^)「い、いいですか!?」


文彦が、挙手にて発言を求めた

795 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:26:03 ID:.buPtdi60
(;;・∀・;;)「あらあら……」


黒間は思わず上唇を這おうとしていた舌を寸でのところで引っ込めた。ドラマが一歩踏み出した足音を、確かに耳にしたのだ
文彦はマイクを取りこぼしそうになりながら掴み上げ、テーブルに膝を打ちながら立ち上がった。記者の中にはその滑稽な様子に失笑を漏らす者もいたが


('A`)「……」


傍らのジョッキーが放った鋭い眼光に、咄嗟に目を伏せた


(;^ω^)「えと、あの、Black  Sheepの内藤 文彦ですお……です」


目は泳ぎ、照明が顔面を滴り落ちる汗を映し出す。傍目から見ても挙動不審な姿に、会場のあちこちから小さく嘲笑が聞こえて来たが、宝木は茶化す事なく静かに耳を傾けた


(;^ω^)「えと、その…………僕らのような新参をライバルと呼んで貰えて、光栄です。それで、その、あの……」


文彦はモゴモゴと口籠った後に、何かを言いづらそうに目を伏せる。少しの間の沈黙に痺れを切らしたのが


(#=゚д゚) 「とっとと喋れやグズが!!何も言えねえなら最初から出しゃばってんじゃねえ!!」


仏頂面で押し黙っていた高城である。苛立ちを拳に乗せて叩いたテーブルの音に、報道陣はビクリと肩を弾ませた


(;^ω^)そ「ご、ごめ……」

('A`)「文彦」


反射的に謝ろうとした文彦を、ドッシリと構える徳雄が止めた。そして、年長者の本八も


(´・ω・`)「ぶちかましてやれや」


珍しく、背中を後押しした

796 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:27:16 ID:.buPtdi60
(;^ω^)「ッ〜〜〜〜〜〜……」


会見に向けた話し合いの中で、文彦は一つだけ要望を出した。それは、跡を濁す形で去った古巣への『けじめ』をつけたいといったものである
Black  Sheep陣営は当初、歩く炎上仕掛け豚(焼豚)である文彦に、会見すら一言も喋らせない方針で貫き通そうとしたのだが、これまで見せたことのない真剣な態度だったのと、何よりここ半年間、文彦の成長を間近で見ていた徳雄の支持、そして親友である木本の懇願もあってか、『それ以外の関係ない事を一言でも抜かしたらミンチ機に放り込んで殺す』という条件の下、特別に許可を出したのだ。そう、キングスマン ゴールデンサークルである
本八も態度こそ渋々であったが、内心では豚に喧嘩を売られるという人生最大最悪の屈辱を味わうバジリスクの苦々しい面を、この日一番の楽しみにしていたのであった

文彦は目を瞑って深呼吸をする。大して緊張は取れなかったが、ようやく踏ん切りはついた


( ^ω^)「ご存知の通り、僕は自分勝手な理由で蟒蛇を早期脱退し、宝木さんを始め沢山の方々にご迷惑をお掛けしました。この場を借りて、謝罪させてください。申し訳ありませんでした」


深々と頭を下げると、シャッターがその姿を照らす。宝木は変わらず微笑みを携えたまま、文彦に向かって顔を上げろと言おうとしたその時


( ^ω^)「ですが」

( ,,^Д^)「っ……?」


これまで聞いたことのないほど力が込められた声に、言葉を詰まらせた


( ^ω^)「宝木さんが先程仰った通り、あの団体には『僕の才能について来れるプレイヤー』は一人もいなかった。ハッキリ言って、期待外れもいい所でしたお」

( ,,;^Д^)「ふ、文彦……?」


宝木の声は、戸惑いで裏返った。彼が文彦に見せる寛容さは、単に『上の立場』から見下す余裕の表れだ
しかし今、文彦は彼の顎下に『銃口』を突きつけようとしている。それは宝木だけでなく、もう一人にも向けられようとしていた

797 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:29:20 ID:.buPtdi60
( ^ω^)「お集まりの皆様の中には、今年五月にネットニュースにもなった野良試合をご存知の方もいらっしゃる筈ですお。僕と、ここにいるとっく……宇都宮さんだけの、キャプテン落ちチームで、バジリスクの現ジョッキー、高城選手含む蟒蛇二軍の三チームに勝利を納めました。いいですか、1対3、ですお」


凍りつく会場内の雰囲気と相反して、名指しされた高城は怒髪が天を突く勢いでいきり立つ


(#=゚д゚) 「何が言いてえんだ!?アァ!?」


ドンとテーブルを叩いて恫喝する高城に




(# ゚ω゚ )「お前みたいな雑魚を連れて来た分際で僕らを『叩き潰す』なんざ片腹痛いっつってんだお!!!!!!!!!!!」




今度は、一歩も退かなかった

798 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:29:56 ID:.buPtdi60
(#=゚д゚) そ「なっ、あ……?」

( ,,;^Д^)「は……?」

(;-_-)「……」


この場にいる全員だけじゃない。中継を見ている視聴者全員が、オタク丸出しの若者が放つ『覇気』に圧倒された
誰も予想だにしない事態だったのだ。破天荒な本八でも、数々の曰くが付き纏う徳雄でもなく、強者に歯向かう度胸がなさそうな『子ども』が仕掛けるなどと
人とは他人をカテゴライズし、優劣をつけ、カーストという枠組みに嵌めたがるものである。だがこの日、とくと知ったのだ

負け犬にも『牙』がある。一寸虫にも『魂』がある。それがいつ強者へと剥かれても可笑しくはないのだと

799 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:32:12 ID:.buPtdi60
感情の堰が切れた文彦は、もう止まらない。相手に反論の余地を与えず、立て続けに啖呵を切った


(#^ω^)「『強さ、恐ろしさを身をもって知っている』!?バカ言ってんじゃねえお!!未だかつて誰一人として、僕を使いこなせたチームはいなかった!!蟒蛇に在籍している連中だって、固定砲という個性を持つ6shooterを時代遅れの骨董品と見下した!!」


暑苦しいとでも言いたげに、文彦は首元のネクタイを緩めた


(#^ω^)「本当に死ぬほど不本意で気に食わないけど、Black  Sheepというチーム、メンバーによって、ようやく僕のやりたい事が『形を成した』お!!だけど、『完成』はしていない!!チーム結成から予選まで、予選から今日まで、そして今日から本戦まで!!Black  Sheepは成長し続ける!!喰らえば喰らうほど大きくなる!!」


(;; ;・Д・;;)「……」


黒間もまた、呆気に取られている一人であった。投じた一石が、これほどの奔流を引き出すとは予想していなかったからだ
視線を隣にいる青葉へと移すと、彼女もまた期待以上の反応に目を輝かせていた。文彦とバジリスクの『化学反応』は、Black  Sheep推しの青葉にとっても賭けであったからだ
『内藤 文彦』という男子高校生は、見た目を裏切らない子どもである。強きにへつらい弱きをいびり、キャパを超える事態に遭えば幼稚に喚き散らす『主人公とは程遠いモブ』と、多くの者がそのような印象を抱く筈だ
青葉は違った。内藤 文彦に限らず、どのような人種であっても、内に燻る炎が眠っていると信じていた。それが最も熱く爆発する適齢期こそ―――――


(#^ω^)「僕はこの大会で、首級の数を以て6shooterの価値を示す!!誰であろうと、二度と、今後永久に!!時代遅れの骨董品などと呼ばせない!!そして……」

(#^ω^)「蟒蛇の『戦闘最強』という称号を奪い取ってやるお!!!!!!!!!!」


『10代』である

800 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:34:18 ID:.buPtdi60
(;; ;・Д・;;)「……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ひゅー♪」


ほとんど暴走と言ってよい文彦の宣言を嘲笑う者はいなかった。過ちを犯した若き選手の雄叫びは、自身の腕前と愛銃への絶大な信頼に満ち溢れていたからだ
それを何よりも裏付けるのは、Black  Sheepのたった三回の公式記録である。6shooterという使い手を選ぶ武器で、名のあるプロチームを撃破し続けている『実績』が、文彦の宣戦布告が只の虚勢でない事を雄弁と物語っているのだ
ジャパンカップの本戦へ駒を進めたチームは、例外なく全てが『脅威』である。文彦はその存在感を、誰よりも先んじて強烈にアピールしたのだった


(#^ω^)「ブヒー、ブヒー………」

(#^ω^)「…………」

(;^ω^)「…………????????」


放った一撃の威力を知ってか知らずか、我に返った文彦は、自分が今し方なにをしでかしたのかわからなくなっていた。豚にしては上出来だったが、所詮豚は豚であった


(#=゚д゚) 「こっ……がっ……!!」

(#=゚д゚) 「テメェもういっぺん言ってみろガキィ!!!!!!!!!!!!」


ようやく理解が追いつき、理性を追い抜いて立ち上がった高城が、文彦へと詰め寄ろうとする


( ,,;^Д^)「落ち着いてくださいセンパイ!!」


傍らの宝木が咄嗟に抑え込もうとしたが、怒髪天を突く高城の勢いは留まることなく、舞台袖で控えていたスタッフ数名まで慌てて飛び出す事態となった
騒然とする会場内。宝木は視界の端で、変わらず動じる事無く着席する徳雄の姿を捉えた



('∀`)

( ,,;^Д^)そ「ッ……!!」



地獄の業火で踊る罪人を嗤うがごとく醜悪に歪んだ表情が、『お望み通り、敵を連れてきてやったぞ』と伝えていた―――――

801 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:42:48 ID:.buPtdi60
続きは明日

802名無しさん:2025/10/14(火) 23:39:34 ID:fZkbkktQ0
ひゃっほおおおおおお!
これを待ってた!!!!

803 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:06:44 ID:wAK9t/h.0
―――――
―――



「乾杯!!」


( ^ω^)そ「フゴッ!?」


銅鑼を鳴らしたかのように力強く取られた乾杯の音頭により、長い時間呆けていた文彦もようやく正気を取り戻した


(´・ω・`)「うわ起きやがった最悪」

(;^ω^)「オッサン……? あれ、記者会見は……?」

(´・ω・`)「記者会見どころか説明会も終わってんだよ。お前立ったまま白目剥いてたぞ」

(;^ω^)「なん…………?」


ここで、文彦のちっちゃいオツムが数時間前の出来事をフラッシュバックする
生中継のカメラの前、全国へ向けて堂々たる大見得を切り、あろうことかバジリスクへの侮辱とも取れる発言をしたのだ
自分がしでかした事態を思い出した文彦の豚面から、サァっと血の気が引いていった。白豚である


(;^ω^)そ「ややややややや、やっちまったおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!え、悪夢これ!!!!!!!?????蟒蛇に喧嘩売ったのマジ!!!!!!????あ、終わったわジャパンカップ。死兆星が見える」

(´^ω^`)「そうやってお前は何回、感情の赴くままに自制もせず暴走して人生の選択を間違えてきたんだろうな?少しは辛抱ってもんを覚えたらどうだ?三歳児じゃねんだからよ」


蹲って頭を抱える文彦に、他人の苦しむ顔を見るのが大好きなクズによるチクチク言葉が浴びせられる
周りにいる参加者は、その光景を怪訝な表情で眺めていた。帰れよもう

804 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:09:07 ID:wAK9t/h.0
(;'A`)「みっともねえ真似してんじゃねえよ……」


そこへ、山盛りのカレーを手に徳雄が戻る。スパイシーな香りが豚の鼻を擽り、今現在何が行われているかを理解した
周りの人々はグラスや皿を手に歓談と飲食を楽しみ、最上階からの夜景が一望できる広いホールの中央では和洋中問わず料理の大皿がズラリと並んでいる


(;^ω^)「晩餐会始まってるのかお!?」

('A`)「おー、楽しみにしてただろ。行ってこいよ」

(;^ω^)「うう…………今は飯が喉を通る気がしないお…………」


口ではそう言いつつも、颯爽と立ち上がって料理の並ぶテーブルへと早豚足で向かっていった。豚なだけあって餌を前にすれば本能が身体を動かすのである


('A`)「たまには面と向かって褒めてやればどうだよ」

(´・ω・`)「なんでわざわざマウント取られるような事を社員でもねえキモオタのクソガキにしなきゃならんの?」

('A`)「チームメイトって言葉わかる?」

805 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:09:46 ID:wAK9t/h.0
本八は側を通ったウエイターアンドロイドのトレーからシャンパングラスを受け取った


(´・ω・`)「で、お前はこの晩餐会、何の為に開催されてると思う?」

('A`)「あ?チーム同士の交流会じゃねえの?」

(´・ω・`)「ま、半分は正解だな。よく観察してみろ」


徳雄はビーフカレーを頬張りながら、辺りを見渡した。参加しているのは本戦出場チームだけでなく、その傍らには恰幅の良い中年男性や、長い口髭を蓄えた老人。落ち着いた和装の御婦人等、社会的地位の高さが伺える人物が半分以上を占めている


('A`)「偉そうな連中が多いな」

(´・ω・`)「だろ?ジャパンカップ協賛企業や大会運営委員会、報道各社の重役に始まり、各プロチームのスポンサー達が一堂に会してる。この晩餐会は交流会であると同時に、金持ちや権力者共の自慢大会でもあるのさ」

('A`)「ハッ、良いご趣味をしてらっしゃる」

(´・ω・`)「ジャパンカップともなりゃ、参加チームの半数以上が常連だからな。その年の順位に応じて、スポンサー間のヒエラルキーも変動する」

('A`)「つまり、牽制も兼ねていると」

(´・ω・`)「腹の探り合いってやつだよ。折角の機会だ。お前も『社会』に揉んでもらえ」


本八は徳雄の肩をポンと叩くと、見栄の火花が飛び交う社交の場へと悠然とした足取りで向かっていった
すぐさま何人かが歩み寄り、賑やかな会話の輪が形成される。普段の有様からは想像できない処世術のなし得る業である

806 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:10:59 ID:wAK9t/h.0
('A`)「社会ねぇ…………」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「右から業務用アンドロイドシェアトップ企業『スターク&キハラ』の専務取締役に、オスカー受賞経歴を持つ大物俳優の上条氏。それと……おお!!eスポーツ庁長官の素直氏ですよ!!錚々たる面子ですねぇ宇都宮さん!!」

('A`)「いや知らんけど……」



i!iiリ゚ ヮ゚ノル

('A`)



i!iiリ゚ ヮ゚ノル「慣れました?」

('A`)「そろそろ来るだろうなと予想はしてた」


複数回の遭遇を経て、徳雄は青葉の神出鬼没に慣れ始めていたのであった

807 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:13:34 ID:wAK9t/h.0
('A`)「来てもらってなんだが、もうあんまり話のネタもねえぞ?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「またまたぁ。月チャリの編集長もベタ褒めでしたよぉ?特に文彦くんの宣戦布告には惚れ直したと仰ってましたし」

('A`)「編集長って、アレか?」


徳雄が指す先には


(;;*・∀・;) ;^ω゜)<ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!????????


文彦に頬擦りする屈強な色黒オネエの姿があった。一見すると豚と美ゴリラの絡み合いである。動物たちのじゃれあいに人々は思わず撮影を始めた。そう、さながら檻のない動物園。愛は種族の垣根を越えるのである


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「年下が好みのようでして」

('A`)「ふーん」


ふーんだった

808 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:17:28 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「どうですか?対戦相手を目の当たりしたご感想は」

('A`)「取材か?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「いえいえ、ただの世間話ですよぉ。Black Sheepは国内二強と控室一緒だったんでしょう?王者とお近づきになれた感想、気になるじゃないですかぁ♪」

(;'A`)「いけしゃあしゃあとよ……そうだな……」


画面越しと実際に目の当たりにするのとでは、言うまでもなく感じ取れる印象に天と地ほどの差がある
これまでオンラインプレイでの対戦が主だった徳雄にとって、生のプレイヤーとの『険悪さの無い』交流は初めての経験であった


('A`)「迫力あったよ。『お喋り』と『怒りんぼ』がいるバジリスクと違って、徹底して孤高を貫くスタンスが気に入った。静かだしな」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ほほう、落ち着いた感想ですねぇ。古参ファンの大潮さんや文彦くんは、はしゃいでたんじゃないですか?」

('A`)「文彦はどうかしらんが、オッサンは楽しそうだったな。この後も全チームにサイン貰いに回るっつってたぜ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ある種、推し活の究極形態ですねぇ」

('A`)「何それ?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「え?皆鳴ミセリのライブ行ってませんでした?」

('A`)「あれは…………………………」


(;'A`)「………………………」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「……」


(;'A`)「く、苦行ってこと?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「なんか嫌なことあったんですか?」

809 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:18:39 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まぁいいや。他のチームの皆様とご挨拶は?」

('A`)「いや、してねぇ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それはいけませんねぇ。これから潰し合う仲になるんですから、最低限の礼儀は払いませんと。宜しければ、仲介致しましょうか?」

('A`)「見返りは?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「善意!!私、そんな信用ありません?」

('A`)「うん」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「うん?????????いいからもう行きますよ!!」


顔が良くて胡散臭い女記者の信用度など、峰不二子と同レベルである。徳雄は怪訝なブサ顔を隠そうともせず、やや強引に腕を引かれて会場内を巡り始めた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まずはー……あ、千母さーん!!ご無沙汰しております青葉ですぅ!!」


ライブキッチンにてシェフと会話していた『巨人』が、ゆっくりと振り返る

@#_、_@
 (  ノ`)「おや、青花かい。それと……今話題のBlack Sheepジョッキー様ときたか」

(;'A`)「ど、どうも……」

810 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:19:32 ID:wAK9t/h.0
小柄な徳雄がスッポリと覆い隠せそうなほど背が高く、百戦錬磨のヒットマンが如く彫りの深い表情。そしてバシッと決まったパンチパーマのマダムは、フライパンすら容易く丸められそうな掌を差し出した

@#_、_@
 (  ノ`)「SASUGA×FAMIRYのジョッキー、流石 千母だ。予選での活躍、拝見させて貰ったよ」


『SASUGA×FAMIRY』。ジャパンカップ出場常連チームの一角である
超重量級装甲と超高火力砲を搭載した車体を転がすのは、国内最年長プレイヤーにして四人の子持ちである『流石 千母』
男性顔負けの体躯と、長距離でも一切ペースを落とさず進軍する様から、『不沈古城』の異名を持つ。夫(ハゲ)とは結婚三十五周年を迎えた今でもラブラブのラブである


(;'A`)「あ、ぶ、Black Sheepの宇都宮 徳雄です。よろしくお願いします」


徳雄が手を握り返すと、試すように力強く握り締められた


(;'A`)「うおっ、すげえ…………」

@#_、_@
 (  ノ`)「おや、肝も据わってるようだね」


徳雄は驚きの声こそ上げたものの、退く事も慄く事もなく握手を受け入れた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「悪い癖ですよぉ、千母さん」

(;'A`)「え?な、何が?」

@#_、_@
 (  ノ`)「ハハ、何でもないよ!!思った通り、大した男だ!!ウチのバカ息子共にも見習って貰いたいよ!!」

811 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:20:56 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「SASUGA×FAMIRYのガンナーとキャプテンは、千母さんの双子のご兄弟が担当してらっしゃるんですよ」

('A`)「ああ、それでFAMIRYなんですね。息子さん方はどちらに?」

@#_、_@
 (  ノ`)「どっかほっつき歩いてるよ。全く、幾つになっても落ち着きのない……ああ、すまないね。歳を取るとどうも愚痴っぽくなる」

('A`)「いえ、ウチも手の掛かるガキを抱えてますんで」

@#_、_@
 (  ノ`)「ハハハ!!それだけ頼られてるってことさ!!胸を張りな大将!!」


バンと背中を叩かれ、その力強さに思わず苦笑いした。きっぷの良い、ズッシリと根を張った大木のような『おかみさん』である。軽薄な本八にも見習って欲しかった
これまで蟒蛇のチンピラ連中くらいしかプレイヤーとの接触がなかった徳雄にとって、初めての交流相手としてはピッタリの人選と言えた

@#_、_@
 (  ノ`)「ゆっくり語り合いたいところだが……すまないね。ひと足先にお暇しなきゃならないのさ」


ウエイターアンドロイドが、レストランのロゴが印刷された大きめの紙袋を手に現れる
千母はそれを受け取ると、土産を手配してくれたであろうシェフに礼を言った

@#_、_@
 (  ノ`)「会えて良かったよ。あとこれ。アンタのボスに渡しておいてくれ」


手渡されたのは色紙である。達筆で『流石 千母』と記されていた。世相に疎い徳雄でも「サインってもっと崩した感じのやつじゃね?」と思った

812 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:21:26 ID:wAK9t/h.0
@#_、_@
 (  ノ`)「それじゃあ、お次は本戦で会おう。お互い、ベストを尽くそうじゃあないか」

('A`)「はい。楽しみにしてます」

@#_、_@
 (  ノ`)「青花、あんまりオイタするんじゃないよ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「わかってますってぇ」


去り際に、千母は身を屈めて徳雄の耳元へと顔を寄せた
先ほど美ゴリラと豚の絡みを目撃していた為、僅かに身体を硬直させたが、彼女はたった一言ーーーー

@#_、_@
 (  ノ`)「『NOOD』の相手はするな」


と、忠告だけ言い残して去っていった

813 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:24:31 ID:wAK9t/h.0
(;'A`)「NOOD……って、確か……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「あー、まぁー……色々いますからねぇ」


何でもかんでも全肯定の青葉ですら、言葉を濁した。徳雄は盛岡と木本の二大参謀が仕入れた参加チームの情報は一通り頭に入れていたが、主に『戦術』や『カスタマイズ』など、ゲームプレイに関する事柄である
プレイヤーについては、それぞれの名前だけうっすら覚えてるくらいで、性格や趣味嗜好等の人柄まで踏み込んではいない。あくまで『そこ』を突くのは、脚を使うジョッキーではなく頭を使うキャプテンの領分であるからだ


('A`)「……」


NOODについては、一つだけ気になる点がある。彼らは一足先に『ハヤテ』と対戦し、敗北しているのだ
親友との決着がぶっつけ本番な今、対戦経験のある相手との対話は貴重な情報源となり得る。本八ほどの社交性はないが、挑んでみて損ではない


('A`)「……青葉さん、そいつらってさ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「はい?」


誰しも『色々』ある。本八には業界人としての大人の余裕が。文彦には土壇場でみせる青い熱さがある。クズとデブにだって、驚くべき事に褒められる点はある
そして徳雄というブスには、並大抵のことでは揺るがない胆力の強さと、『相手から喧嘩を売るように仕向ける』という悪癖があった


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ええと……まぁ、そうですね。概ねそんなタイプです」


徳雄の耳打ちに、青葉が怪訝な表情を浮かべながらも同意すると、ブスの頭の中で大体のプランが決まった


('A`)「じゃあ、NOOD以外のチームの紹介を頼めるか?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「うーわ、いじめっ子のやり口」

('∀`)「『経験豊富』でね」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「笑えませんね」


口ぶりではそう言ったが、意地の悪い笑顔は本心を隠しきれていなかった
こうしてブスと記者による『NOOD釣り上げ大作戦』が人知れず始まったのである

814 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:27:04 ID:wAK9t/h.0
―――――
―――



一方その頃


(;^ω^)「や、やっと解放された…………」


文彦は美ゴリラの襲撃から、這う這うの体で逃れられた。頬にベッタリと付着したファンデーションが、その激しさを『色濃く』物語っている。宮川大輔があの光景を見たらきっと「こんなん凌辱ですやん!!」とツッコむことであろう
しかし美ゴリラはタダの美ゴリラではない。全身脱毛は当然の事、肌艶は二十代と遜色なく、オトコを惑わすコロンも欠かさない
文彦が最も恐ろしかったのは、不覚にも美ゴリラに『ドギマギ』させられた事であった。非モテのキモオタらしくルッキズムに囚われた豚にとって、中年オネエに胸を高鳴らせてしまった経験は、深いトラウマとして刻まれてしまった


(;^ω^)そ「うわああああああああああああ!!!!!!!!!!!!忘れろ忘れろ忘れろーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


かぁいそ(笑)


「キミ、大丈夫?」


ボコボコと頭を殴って自傷を繰り返す滑稽な豚に、背後から優しく声が掛けられる


(;^ω^)「大丈夫じゃ………!!」


八つ当たり気味に振り返った文彦は、その姿を目の当たりにして言葉を失った
グリッターチュールのボレロとキャミソールワンピースを合わせた清楚な出立ちで、緩く巻かれた金髪が、灯りに照らされ輝きを放っている
表情はあどけないが、左の口元にだけインクを一滴垂らしたように存在する艶ほくろが、色気のギャップを引き出している
黄金色した瞳は吸い込まれそうなほど大きく映り、視線を逸らすには惜しいと思わせた

815 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:33:23 ID:wAK9t/h.0
(;^ω^)「あ………」


心配そうに小首を傾げた彼女は、日本でハヤテに次ぐ人気のアイドルユニットの一人
そしてBlack Sheepと同じく、今大会がジャパンカップ初出場。チーム名はユニットと同じく『S&S』のガンナー担当―――――


ζ(゚ー゚;ζ「気分悪いの?係員さん、呼ぶ?」


『天ノ川デレ』であった


(;^ω^)そ「ススススススス、スイスイスイスイ!!!!!!!??????」

ζ(゚ー゚;ζ「わっわっ、ごめんね!!急に話しかけちゃって!!」


文彦の最推しは皆鳴ミセリだが、アイドル(女性限定)であるならば一通り網羅している。『S&S』、『スイート&スパイス』は双子姉妹のアイドルユニットである
スイートを担当するのは妹である天ノ川デレ。常に笑顔を絶やさない朗らかな性格と、可愛らしい高音かつ感情豊かな歌声で、ファンを『甘く』魅了する。そのバストは豊満であった
スパイスを担当するのが、姉の『天邪鬼ツン』。此方は対照的に、鋭い眼つきと冷徹とも取れるクールな態度が売りである。しかし一度マイクを握れば一変、大気を震わす熱いハスキーボイスが、観客達の脳を強烈に『刺激』する。そのバストは平坦であった
人は時として相反する二つの要素に惹かれるものである。隠と陽、矛と盾、天使と悪魔、ギャルとオタク。そして『甘さ』と『刺激』
その二つを絶妙なバランスで成り立たせた『一粒で二度美味しい』アイドルユニット。それがスイート&スパイスなのである


(;^ω^)「だいだいだいだい!!!!!!!!!」

ζ(゚ー゚;ζ「おおおおおおお落ち着いて!!ほら深呼吸!!」


極アームズになりかけていた文彦は、天ノ川デレの「すー、はー」という合図と共に豚深呼吸をする。先ほどの淫靡なコロンとは違うソープ系の甘い香りが、美ゴリラのトラウマを上書きしていくのを感じた


(;^ω^)「もっ、もう大丈夫……ありがとうございます……」

ζ(゚ー゚;ζ「ホント?良かったぁ〜……」


バチっと視線が合うと、デレは飛び切りの笑顔をお見舞いする。バクバクと高鳴る鼓動が、もう一段階ギアを上げた。そのまま爆発して死ねばいいのに

816 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:35:13 ID:wAK9t/h.0
(;^ω^)「あっはっ、な、内藤ひゅみ、文彦とと申しますお、申します」

ζ(゚ー゚*ζ「知ってる!!EブロックはBlack Sheepの話題で持ちきりだもんね!!私、天ノ川デレ!!よろしくね、文彦くん!!」


名前呼びである。母親と高岡波音とかいう人類の変異種を除けば、文彦にとって初めての経験であった
これだけでも舞い上がりそうだが、デレは何かに気づいたかのように目を丸くさせると、ハンドバッグからハンカチを取り出して


ζ(゚ー゚*ζ「ほっぺ汚れてるよ?」

(;^ω^)そ「頬ほほほほほアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!???????」


嫌がる素振り一つ見せず、文彦の顔を拭った。天使はライブハウスじゃなくて築地にいるのである
その瞬間僕が見てるものは、間違いなく奇跡で、天使だった。そうじゃなきゃ誰がキモオタの豚なんて相手するかよ


(;^ω^)「いやっ、もっ、大丈夫!!大丈夫ですお!!」

ζ(゚ー゚*ζ「フフ、そう?」


取り繕う余裕もない。目の前にいるのは、アイドル界のトップtierに君臨する一人である。ハヤテのリーダーが従兄弟であろうと、文彦自身は一般豚である。天上人との謁見にも等しかった。賤しい豚は頭を垂れてつくばえ


「デレ!!」


極楽のような一時は、頬を叩くような厳しい声色によって引き裂かれた

817 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:39:00 ID:wAK9t/h.0
灰色を基調としたチャイナドレスに、黒レースのストールをフワリと見に纏い、デレとは対照的な銀髪を縦ロールに巻き上げている
顔の作りこそ妹と瓜二つだが、キュッと結び上がった口元と、吊り上がった目尻から放たれる鋭い眼光が、銀雪に佇む誇り高い狼を連想させる
スイート&スパイスの『刺激』担当、天邪鬼ツンが、平たい胸の前で腕を組んで二人をジロリと睨め付けていた


( `ー´)


その傍らには、付き従うかのように一歩引いた位置で脂が滴るようなトロマグロ・スシを一度に二つ食べる若い男が佇んでいる
此方はツンとは違い、何やら面白そうな表情で行末を眺めていた。男には興味ない文彦はすぐさま視界から消し去った


ζ(゚ー゚*ζ「待っててお姉ちゃん!!ごめんね、呼び出されたみたい。ほら、私って人気者だから」

(;^ω^)「ぞ、存じておりますお」

ζ(゚ー゚*ζ「えへへー、良かったらこれ使って。返さなくていいから」


デレはハンカチを文彦に押し付けると、断る隙も与えず姉の元へと駆けて行った
そして去り際にクルリと振り返ると、両手を背中に回して満面の笑みを浮かべ―――――


ζ(^ワ^*ζ「本戦、お互い楽しもうねっ!!文彦くん!!」


ダメ押しを放った


(* ^ω^)ノシ「は、はひっ!!はいですお!!ブヒュ!!ブュヒヒヒィ!!!!!!!!」


文彦は殺しても殺し足りないほど気持ち悪く鳴きながら手を振って見送る。美ゴリラのトラウマは、もうすっかり頭から消えていた。単純な作りである


( `ー´)ノシ

( ^ω^)凸

(;`ー´)そ


小さく手を振りかえしてくれた気さくな兄ちゃんには瞬く間に真顔になって中指を立てた。なんかモテそうだしS&Sと一緒に行動してる時点で死ねって感じだった
そうやって男女で露骨に態度を変えるところが女子にウザがられる原因の一つなのを自覚していないのである。つくづく救えない豚であった

818 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:46:19 ID:wAK9t/h.0
興奮する豚を尻目に、デレは姉の腕に絡みついて連れ歩く。人懐っこい妹の姿に、ツンは眉尻を下げて溜息を吐いた


ξ゚⊿゚)ξ「ヒトを誑かすのはやめなさいって、いつも言ってるでしょ……」

ζ(゚ー゚*ζ「えー?親切だよぅ。あ、根野くん、替えのハンカチ貰える?」

( `ー´)「はいよ」


文彦の姿が死角に入ったタイミングで、デレは新しいハンカチを『マネージャー』から受け取り、バッグにしまう妹の『誘惑』は今に始まった事じゃない。詐欺をしただとか、他人の恋人を奪っただとか、悪どい行為に及んでいるわけではないが、真面目かつ誠実な性格の姉にとっては目に余る行動だった
反面、妹は自らの全てを『武器』として使い、世渡りをするべきという強かな思想の持ち主であった。S&Sのマネージャー兼ジョッキーの『根野 誠(ねの まこと)』は、どちらの意見も尊重し、デレをキツく諌めたりもしなかった


ξ゚⊿゚)ξ「貴方が甘やかすから増長するのよ。お小言くらい言って欲しいものだわ」

( `ー´)「でもよツンちゃん。今回に限ってはデレデーレ・デーレレのやり方も一理あるんじゃねーの?」

ζ(゚ー゚*ζ「え?なんで今鼻毛神拳伝承者みたいに呼んだの?」

ξ゚⊿゚)ξ「何が言いたいの?」

ζ(゚ー゚*ζ「あれあれお姉ちゃん?ツッコミ放棄ですか?」

819 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:48:44 ID:wAK9t/h.0
( `ー´)「正味な話よ、俺らの実力はトップクラスの連中より一歩劣ってるワケよ。運良く予選は突破出来たけど、正攻法じゃ優勝は夢のまた夢なんじゃねーの?」

ξ゚⊿゚)ξ「ジョッキーがそんな弱気でどうするのよ……」


ツンは苦言を漏らしたが、キッパリと否定出来ない自分が歯痒かった。先ほど妹が誑かした内藤 文彦だって、この場ではタダのモテなさそうな男子でしか無いが、一度戦場に立てば、あのクワイエットとバジリスクの二強と真正面からやり合えるほどの猛者と化す
S&Sの戦術スタイルはBlack Sheepとは異なるが、『あの2チーム』と対峙して生き残るビジョンは殆ど見えない。もし万が一そのような事態に陥った場合、チームのキャプテンとして『戦う』という判断を下せる自信も度胸も持ち合わせていない
悔しいが、『盤外戦術』に頼らざるを得ないという根野の意見は、現状の実力差を鑑みれば認める他なかった


ζ(゚ー゚*ζ「私もね、ハナから優勝出来るなんて思ってないよ」


縋り付くように、ツンの腕に掛かる力が強くなる。声のトーンは僅かに落ち、不安気に掌が握られる。姉はそれを振り解こうとはせず、優しく握り返した
ハヤテと同じくアイドルとして出場権を勝ち取り、記者会見では多くの報道陣に囲まれた。しかし、確かな実績と実力を持つハヤテとは違い、誰一人として『S&S』が優勝出来るとは思っていないだろう
メディアは挙って、彼女達の本戦出場を『奇跡』というワードを何度も繰り返して取り上げた。まるで実力ではなく、偶然の産物であるかのように

SNSのチャリオッツファンは、残酷な言葉で気軽にTLを賑わせた。『じゃない方』、と


ζ(゚ー゚*ζ「でも、やれることは全部やって、後悔が残らないようにしたいんだ。せっかく授かったチャンスだもん。正々堂々とは程遠いかもしれないけど、悪足掻きくらいさせてよ」


傷つかないわけが無いのだ。実力がハヤテに劣っていようとも、運で勝ち上がったと思われようとも、チャリオッツに懸ける想いは負けていないのだから
姉は妹の覚悟を汲んで、もう一度深く溜息を吐いた。これまでそうだったように、これからもーーーーー


ξ゚⊿゚)ξ「程々にしなさいよ……」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがと、お姉ちゃん♪」


自分の信念より妹を優先するのだろうと、いつも通り諦めながら


( `ー´)「ありがと、お姉ちゃん♪」


ξ#゚⊿゚)ξ「キモいわ!!」


キモいわだった

820 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:50:18 ID:wAK9t/h.0
―――――
―――



それはさて置き


(´^ω^`)「ガーーーーーーーーーハッッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!!チンポ!!!!!!!!!!!!」


チンポチンポ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


|(^),  、(^)、|「ダーーーーーーーーーッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!!チンポ!!!!!!!!!!!!」


チンポチンポ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「アレが『パーダラ・ブギ』のキャプテン、『西山 伊達昌(だてまさ)』さんですけど、挨拶します?」

('A`)「しない」


ブス&ジャーナリストはオッサンチンポ祭を華麗にスルーして挨拶回りに奔走していた

821 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:52:46 ID:wAK9t/h.0
晩餐会が始まって、既に一時間が経過。徳雄らはこれまで4チームのメンバー挨拶を交わした
一つ目は、機動力なら出場チームの中でも随一。自爆特攻すら厭わない『最狂』の呼び声高い超攻撃型チーム、『レッドシューズ』


(*゚∀゚)「ねぇねぇ、これ見てよ」


ガンナー、『桐見 鶴(きりみ つる)』


('A`)「はぁ……ナイフすか……」


なんかナイフを持ち歩いてるファッションキチゲェだった


(*゚∀゚)「これってねぇ、よく切れるんだよ」

('A`)「そっすか……」

(*゚∀゚)「皮膚をね、スパって切ると、血がプシュってでてくるんだよ」


自分の手首を切るような動作。その異常とも言える動作と言動に、徳雄は―――――


('A`)「切ったことあるんすか?」


一切動じる事なく冷静に返した


(*゚∀゚)「」


桐見は黙った

822 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:53:34 ID:wAK9t/h.0
('A`)「変な人だな……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ああいうキャラで売ってるんです。中高生には人気のインフルエンサーでもあるんですよ、彼女」

('A`)「あのナイフ偽物だよな」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「そりゃそうですけど、全く動じませんでしたね。多少はビビりますよ普通」

('A`)「向けられ慣れてるんで」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「そんな人います??????????」


2つ目は、ジャパンカップ最年少キャプテンが在籍する『ムシキング』


(=゚ω゚)ノ「オッサン虫好き!!!!!!!!!??????」

('A`)「声デカ」


U12限定大会『金の卵杯』優勝者でもある、『大森 壱与(いよ)』


(=゚ω゚)ノ「僕はねぇ!!!!!!!!!!アトラスオオカブトが好き!!!!!!!!!!!!オッサンは!!!!!!!?????」

('A`)「うーん……」


徳雄は暫し思案した後


('A`)「蟻かな……」


幼き頃、蝉の死骸を解体する蟻の群れを眺めるのが好きだったのを思い出した。歪んだ幼少期であった


(=゚ω゚)ノ「きっめーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!顔とおんなじくらいきめえーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

('A`)「親御さんどこ?ツラ見せて貰える?」


親の顔が見たかった

823 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:54:25 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「金の卵杯では同年代のジョッキーと組んでいましたが、年齢制限のない大会では召使いの方が担当してらっしゃるようです」

('A`)「ボンボンかよ……クソガキがよ……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まだ十歳ですしねぇ。でも、将来有望な選手ですよ」


アルバイターで結成された、今大会初出場のアマチュアチーム『朧』


( ><)「あ、青葉さん!!ご無沙汰してるんです!!」


最高で一日37軒の配達記録を叩き出したUberライダーの『輪入道 広人(わにゅうどう ひろと)』
彼も千母と同じく青葉との知り合いだったが、徳雄の目にはより親し気に見えた


('A`)「お友達なんすか?」

( ><)「頼りになるセンパイなんです!!なんてったって青葉さんは、ぬら……ぬら……」


急にヌラヌラ言い出してセクハラかと思い徳雄はとりあえず拳を握った


(;><)「とにかく、僕らの業界では凄い人なんです!!」

('A`)「そうなんだ……バイトの?」

(;><)「いやっ……その……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「言っちゃっていいですよぬらりひょんの孫だって」

(;><)そ「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!なんでもないんです!!!!!!!!」


なんかよくわからないけど、なんかよくない設定があるんだなぁと徳雄は思った

824 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:55:29 ID:wAK9t/h.0
('A`)「もしかして広人くん、小練さんとも知り合いだったりする?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「おお、よくわかりましたねぇ」

('A`)「あの人の周り変な人ばっか集まるじゃん」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「何でこっちを真っ直ぐ見つめるんです?喧嘩か?やるか?」


クワイエットと同じく『トップ・ギア』所属、前大会は五位に終わった強豪『SUPER VOYAGER』


( ^ν^)「……なんか用?」


出会い頭からつっけんどんな態度を取るのは、ジョッキーの『穴本 新(あなもと あらた)』
前三組がイロモノばかりだった為、態度が悪い程度はむしろ可愛く見えた


('A`)「ええと、ご挨拶に伺いました。Black Sheepの……」

( ^ν^)「知ってるよ。随分と持て囃されてるみたいだし」

('A`)「そうっすかね」


穴本は小さく舌打ちをすると、徳雄を真正面から見据えた。表情こそ冷めたような真顔だが、目の奥では確かな闘志が燃え滾っている。初対面だが、徳雄は既に穴本を気に入っていた


( ^ν^)「クワイエットの三連覇を阻むのは俺達だ。邪魔すんなら潰す」

('∀`)「ハハッ、いいねぇド直球で。やってみろやコラ」


人知れず散る火花に、青葉は鼻息を荒くした


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「おっほほぉ〜〜〜〜〜!!!!!いいですねいいですねぇ!!やっぱこういうのが晩餐会の醍醐味ですよねぇ!!!!!!おもしれ〜〜〜〜〜〜ッ!!この仕事やっててよかった〜〜〜〜〜ッ!!!!!」


え!!!!!!!!!??????次に来るマンガ大賞2025第一位、ジャンプ+が産んだ稀代の天才漫画家『住吉九』先生の最新作、野球漫画の歴史を変えた『サンキューピッチ』伊能商人のセリフパロディ!!!!!!!??????
サンキューピッチとハイパーインフレーションは名作中の名作なので22世紀でも大人気漫画なのであった。やっぱさぁ、名作ってのは時代を越えて愛されるんだよね。ブラックジャックとかドラゴンボールとかさぁ


(;^ν^)「……」

(;'A`)「……」


そしてバチってた二人は次第に気が抜けていくのであった

825 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:58:36 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「順調ですねぇ」

('A`)「良かったまともな人もいて」


面識があるハヤテとバジリスク、一足先に対面したクワイエットを加えれば、既に半分のチームと顔合わせした事となる ※チンポチンポは除く
二人はここで一旦の休憩を取り、ウエイターからドリンクを受け取って窓際へと移った
国内でも五指に入る超高層ホテル、そして首都東京なだけあって、街の光が彩る地上の景色は絶景で
遠くからでもよく目立つスカイツリーはクリスマスカラーに彩られており、イベントか何かをしているのか、ドローンが編隊を組んで飛び回っているのが見えた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「良い夜景ですねぇ。飛んでるサンタさんとか見れないもんですかね?」

('A`)「ああ……しかしアンタ、どうしてここまで親切にしてくれるんだ?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ヤですねぇ水臭い。もうお友達じゃないですかぁ♪」

('A`)「……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「え?なんで目を逸らすんです?イジメか?泣くが?」

('A`)「俺に友情を騙って近づいてきたのは、大抵が悪意ある連中ばかりだったよ」

i!iiリ゚ ー゚ノル「……」

('A`)「否定しろや…………」

826 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:59:43 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「冗談はさておき」


徳雄は儀杜しずくが彼女を嫌っているのもなんとなく納得出来た


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「別に宇都宮さんだけってワケじゃ無いんですよ。良い記事が書けるなら誰にだって手助けするし、コネを作るために恩も売ります」

('A`)「そりゃ…………良い事だな」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「へへ、でしょう?それとね、宇都宮さん」


ここで二人は互いに目配せした。ばら撒いた餌に食いついた獲物が、ゆっくりと近づいてくる気配を察知したのだ。人の少ない場所へ移動したのが功を奏した
「仕掛けましょうか?」という青葉の無言の問いかけに、徳雄は視線を切って夜景へと向ける。「気付かぬふり」と判断した青葉は、そのまま会話を続けた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「私はですねぇ、『善い人』が」


「あーおばちゃーん♪」


間に割り込んできた色黒の男が、覆い被さるように両腕で二人の肩を抱く。酔っている様に見せたいのか、ズシリとのし掛かってきた
アロハシャツにステテコとビーチサンダルといった、クリスマスには程遠い南国スタイルの出立ちで、焼けた肌にはウサギモチーフのタトゥーが刻まれている
眉と唇にはそれぞれピアスが施され、高城とはまた違った反社的な近寄り難さを演出していた

  _
( ゚∀゚)「色男と逢瀬の最中か?相変わらず罪な女だねぇ」


彼こそ、NOODこと『ネイキッド・オッキイ・オッパイ・ダイスキー』のジョッキー、『ジョルジュ・ナガオカ』である


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